説明

液滴吐出装置ならびにそれを備えたインクジェット記録装置

【課題】液滴の吐出特性を安定させ、高速、高精密に液滴の吐出ができる液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】ノズル25に連通した圧力室32と、各圧力室32にわたって設けられた振動板37と、振動板37を駆動する圧力発生素子28と、圧力発生素子駆動部46と、記録用紙搬送手段と、圧力発生素子駆動部46に対して記録用紙の搬送に同期して駆動波形を送信する液滴吐出制御部40を備え、液滴吐出制御部40に駆動波形の中間電位の補正量を算出する中間電位補正量算出手段41を設け、中間電位補正量算出手段41で算出された中間電位の補正量で圧力発生素子28に印加する駆動電圧を補正する構成になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット記録装置などに用いる液滴吐出装置に係り、特に液滴の吐出特性を安定させ、高速、高精密に液滴の吐出ができる液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写機、これらの複合機などの画像形成装置として、インクジェット記録装置が知られている。このインクジェット記録装置は、インクジェット記録ヘッドからインク滴を用紙やOHPなどの被記録媒体上に吐出して所望の画像を形成するものである。
【0003】
ライン走査型インクジェット記録装置には、記録用紙(被記録媒体)の幅方向に延びる長尺状のインクジェット記録ヘッドが用いられ、この記録ヘッドには記録用紙の幅方向に沿って多数のインク滴吐出用のノズル孔が配置されている。この記録ヘッドのノズル孔を記録用紙面に対向させた状態で、記録用紙を連続的に移動させ、同時に前記ノズル孔からインク滴を吐出させることにより、記録用紙上に画像を形成する。
【0004】
ライン走査型インクジェット記録装置は、画質が安定するように、通常は記録用紙が加速し終わった後から減速を開始する前までの、安定した速度で用紙搬送が行われている状態で印刷を行う。しかし、特に連続紙に印刷する場合、記録用紙の加速中あるいは(および)減速中(以下、まとめて加減速中という)に記録ヘッドを通過する記録用紙は印刷されずに無駄紙(損紙)となる。
【0005】
これを解消するため、加減速中にも印刷を行うことのできるインクジェット記録装置が提案されている。しかし、今までの技術は、記録用紙の搬送速度に応じてインク滴の吐出タイミングを決定しているが、加減速中などの定速で搬送されている時よりも搬送速度が遅いときには、吐出駆動周波数が低くなるといったことについては特別に考慮されていなかった。
【0006】
そのため吐出タイミングのメニスカスの状態がばらついて、インク滴吐出の変動などが発生し、インク滴の吐出特性が安定しない可能性があり、インク滴のドット径のばらつきや着弾位置ずれなどによる画像品質の低下をきたしていた。
【0007】
そこで、吐出駆動周波数が一定でないような場合にもインク滴の吐出特性を安定させるインクジェット記録装置が、既に特開2010−274637号公報(特許文献1)として提案されている。
【0008】
この提案は、被記録媒体が一定速度で搬送されている場合に、インクジェット記録装置の解像度と走査速度から算出される駆動タイミングの周期を規定速度として、n(nは1以上の整数)の駆動タイミングに続くn+1回目の駆動タイミングよりも規定時間前に追加タイミングを設定して、その追加タイミングで圧力室内の微駆動を行なうことを特徴としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記提案は、インク滴の吐出と吐出の間隔が規定時間よりも長い場合に、その間に新たな駆動タイミングを設けるというものであった。そのため、駆動周期を駆動波形の周期よりも十分長くする必要があり、駆動周期を短くすることができない。そのため、印刷の高速化や高解像度化が難しいという問題があった。
【0010】
本発明の目的は、液滴の吐出特性を安定させ、高速、高精密に液滴の吐出ができる液滴吐出装置ならびにそれを備えたインクジェット記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、
多数のノズルに連通して吐出すべき液体を蓄える多数の圧力室と、
前記各圧力室の弾性壁を形成するように各圧力室にわたって配置された振動板と、
前記振動板を介して前記圧力室とそれぞれ対向するように配置された例えばピエゾ素子などの圧力発生素子と、
前記圧力発生素子を駆動する圧力発生素子駆動部と、
前記ノズルに対して例えば記録用紙などの被着弾体を搬送する被着弾体搬送手段と、
前記圧力発生素子駆動部に対して、前記被被着弾体搬送手段による被着弾体の搬送に同期して駆動波形を送信する液滴吐出制御部を備えた液滴吐出装置を対象とするものである。
【0012】
そして、前記液滴吐出制御部に前記駆動波形の中間電位の補正量を算出する中間電位補正量算出手段を設け、その中間電位補正量算出手段によって算出された中間電位の補正量で前記圧力発生素子に印加する駆動電圧を補正する構成になっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は前述のような構成になっており、液滴の吐出特性を安定させ、高速、高精密に液滴の吐出ができる液滴吐出装置ならびにそれを備えたインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例に係るライン走査型インクジェット記録装置の全体構成を示す概略構成図である。
【図2】そのインクジェット記録装置のヘッドモジュールの配置を示す平面図である。
【図3】そのヘッドモジュールの拡大底面図である。
【図4】そのヘッドモジュールの拡大断面図である。
【図5】インクジェット記録装置での記録用紙の搬送速度の変化を説明するための図である。
【図6】従来のインクジェット記録装置の加速時のインク滴吐出制御を説明するための図である。
【図7】本実施例に係るインクジェット記録装置における加速時のインク滴吐出制御について説明するための図である。
【図8】本発明の実施例において圧力発生素子(ピエゾ素子)への駆動波形の電圧補正について説明するための拡大図である。
【図9】本発明の実施例に係るインク滴吐出制御部のブロック図である。
【図10】本発明の実施例に係るインク滴の吐出制御方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施例を図面とともに説明する。
図1は、本発明の実施例に係るライン走査型インクジェット記録装置の全体構成を示す概略構成図である。
【0016】
このインクジェット記録装置は、ロール状に巻かれた記録用紙1を印刷装置2へ供給する巻き出し装置3と、印刷装置2で印刷された印刷用紙1を巻き取る巻き取り装置4を備えており、巻き出し装置3から巻き取り装置4まで帯状に繋がった連続紙からなる記録用紙1を印刷装置2において印刷する構成になっている。
【0017】
この印刷装置2は、インフィードローラ5と、ヒートローラ6と、アウトフィードローラ7の3つのローラ対を駆動して、記録用紙1を所定の方向に搬送する。
巻き出し装置3から供給された記録用紙1は、最初にインフィードローラ5により搬送される。インフィードローラ5は駆動ローラ5aと従動ローラ5bを有しており、両ローラ5a,5bで記録用紙1を挟持して、駆動ローラ5aを駆動するインフィードモータ8を回転することで記録用紙1を下流方向(矢印方向)へ搬送する。図中の符号9はインフィードモータ8の駆動制御部、符号10はインフィードモータ8の回転速度を検出するパルスエンコーダである。
【0018】
インフィード張力検出器11は、記録用紙1の搬送経路上で前記インフィードローラ5とヒートローラ6の間に配置されており、この間の記録用紙1の張力を計測している。インフィード張力検出器11は、例えば、記録用紙1の張力によってローラが受ける圧力を、歪みゲージなどの圧力センサにより計測する構成になっている。インフィード張力検出器11は制御部12と接続しており、記録用紙1の圧力(張力)を電気信号に変換して制御部12へ出力する。
記録ヘッド13はインクジェット方式により記録用紙1へ印刷するものであり、上位装置14からの印刷データに基づきインク滴を吐出して、記録用紙1上に画像を形成する。
【0019】
ヒートローラ6は、記録用紙1上に吐出したインクを加熱により乾燥させるためのものであり、ヒートローラ6は駆動ローラ6aと従動ローラ6bを有しており、両ローラ6a,6bで記録用紙1を挟持して、駆動ローラ6aを駆動するヒートローラモータ15を回転することで記録用紙1を下流方向へ搬送する。図中の符号16はヒートローラモータ15の駆動制御部、符号17はヒートローラモータ15の回転速度を検出するパルスエンコーダである。
【0020】
アウトフィード張力検出器18は、記録用紙1の搬送経路上で前記ヒートローラ6とアウトフィードローラ7の間に配置されており、この間の記録用紙1の張力を計測している。アウトフィード張力検出器18は、例えば、記録用紙1の張力によってローラが受ける圧力を、歪みゲージなどの圧力センサにより計測する構成になっている。アウトフィード張力検出器18は制御部12と接続しており、記録用紙1の圧力(張力)を電気信号に変換して制御部12へ出力する。
【0021】
アウトフィードローラ7は駆動ローラ7aと従動ローラ7bを有しており、両ローラ7a,5bで記録用紙1を挟持して、駆動ローラ7aを駆動するアウトフィードモータ19を回転することで記録用紙1を巻き取り装置4へ排出する機構になっている。図中の符号20はアウトフィードモータ19の駆動制御部、符号21はアウトフィードモータ19の回転速度を検出するパルスエンコーダである。
【0022】
図2は、前記記録ヘッド13でのヘッドモジュールの配置例を示す平面図である。
本実施例に係る記録ヘッド13では、1色分に10個のヘッドモジュール22を使用し、フルカラー画像を印刷するために40個のヘッドモジュール22を搭載している。図に示すように、10個のヘッドモジュール22を記録用紙1の幅方向に千鳥状に配列してヘッドモジュール群23を構成している。
【0023】
ヘッドモジュール群23Kはブラックのインク滴を吐出し、ヘッドモジュール群23Cはシアンのインク滴を吐出し、ヘッドモジュール群23Mはマゼンダのインク滴を吐出し、ヘッドモジュール群23Yはイエローのインク滴を吐出する。
【0024】
図3は、ヘッドモジュール22の拡大底面図である。
この図に示されているように、ヘッドモジュール22の底面にあたるインク滴吐出面24には、ヘッドモジュール22の長手方向に沿って多数のノズル25が列状に形成されている。本実施例の場合はノズル列は1列であるが、ノズル列を複数設ける場合もある。
【0025】
各ヘッドモジュール22のインク滴吐出面24は微小の隙間をおいて記録用紙1と対向するように配置され、図2に示されているように各色10個のヘッドモジュール22を千鳥状に配列することで、記録用紙1の全幅にわたって記録可能な領域を確保している。
【0026】
図4は、ヘッドモジュール22の拡大断面図である。
ヘッドモジュール22は、流路基板26と、高剛性プレート27と、圧力発生素子(ピエゾ素子)28とから主に構成されている。
【0027】
前記流路基板26は、前述のように多数のノズル25を形成したノズルプレート29と、各ノズル25と連通する連通流路30を有するチャンバープレート31と、圧力室32ならびにリストリクタ33を兼ねた開口穴34を有するリストリクタプレート35と、前記圧力室32ならびにリストリクタ33を封止する薄板のダイアフラムプレート36の積層体から構成されている。前記ダイアフラムプレート36は、振動板37を有している。この振動板37は、各圧力室32の弾性壁を形成するように、各圧力室32にわたって配置されている。
【0028】
前記高剛性プレート27は、前記流路基板26を保持するとともに、外部からインクを導入して貯留する共通インク室38が形成され、その共通インク室38の流路基板26側はインク供給のため開口している。共通インク室38の隣にインク溝39が形成され、そこに前記圧力発生素子(ピエゾ素子)28が挿入されて、圧力発生素子28は前記振動板37を介して圧力室32と対向するように配置されている。
【0029】
図5は、記録用紙の搬送速度の変化について説明するための図である。同図の横軸は記録用紙の搬送を開始してからの時間を示し、縦軸は記録用紙の搬送速度を示している。
【0030】
この図に示すように、記録用紙の搬送開始から定速Vcsに到達するまでに記録用紙が徐々に加速する期間(加速領域:時刻0〜時刻t1)と、定速Vcsから徐々に減速して記録用紙が停止するまでの期間(減速領域:時刻t2〜時刻t3)は、用紙搬送速度が定速Vcsよりも遅い。
【0031】
すなわち、記録用紙の加速および減速中における一画素分移動する期間と、一定の搬送速度Vcsである定速領域(時刻t1〜時刻t2)における記録用紙が一画素分移動する期間は異なる。加減速中と定速搬送中とでは、記録用紙の目標着弾位置に対するインク滴の吐出タイミングが異なる。
【0032】
図6は、従来のインクジェット記録装置におけるインク滴吐出制御について説明するための図である。
【0033】
この図には、用紙搬送速度a、駆動タイミングb、駆動波形c、共振波形dの変化ならびにタイミングを示している。なお、前記共振波形dは、メニスカスの振動周期と圧力発生素子(ピエゾ素子)の振動周期との共振波形である。
【0034】
オンデマンド方式のライン走査型インクジェット記録装置において、記録用紙の加速中あるいは減速中に印刷する際、記録用紙の加速中あるいは減速中における駆動タイミングbの時間間隔は、定速Vcs時の駆動タイミングbの時間間隔と比較して長い。この時間間隔がメニスカスの振動などのメニスカスの状態にうまくマッチングしていない場合は、インク滴の不吐出、インク滴量の変動、インク滴吐出速度の変動といった問題が発生する可能性がある。
【0035】
この図6に示すように、加速中に印刷を行うと、メニスカスの状態にかかわらず駆動タイミングbが決まるため、インク滴の吐出に最適なメニスカス状態でインク滴の吐出ができず、インク滴の不吐出、インク滴量の変動、インク滴吐出速度の変動といった問題が発生する。この問題は、記録用紙の減速中にも同様に発生する問題である。
【0036】
図7は、本実施例に係るインクジェット記録装置における加速時のインク滴吐出制御について説明するための図である。
この図7でも図6と同様に、用紙搬送速度a、駆動タイミングb、駆動波形c、共振波形dの変化ならびにタイミングを示している。
【0037】
記録用紙の加速中あるいは減速中など駆動タイミングbの時間間隔が定速Vcs時に比べて長くなる場合は、駆動波形cの中間電位を適正に補正することで、共振周波数を変化させ、次のインク滴吐出タイミングにおけるメニスカスの状態を、正常なインク滴吐出が行なえる状態に合わせこむことが期待できる。
【0038】
前記駆動波形cの中間電位は、非駆動時において圧電素子に印加している電圧のことで、駆動波形cの平らな部分に相当する。駆動間隔が短い場合に、電圧を0Vまで落とすように駆動すると、電圧変化を急にしなければならず、すなわち駆動波形の立ち上げを急峻にしなければならず、そうすると誤ってインク滴が吐出してしまうという不都合が生じる。そのため、予め中間的な電位で圧電素子に電圧を印加しておき、駆動時の電圧変化を低減している。
【0039】
一例であるが、例えば最下部電位を3V、中間電位を12V、駆動時電位を25Vに設定することができる。
【0040】
この図7を用いて、加速時のインク滴吐出制御について説明する。例えば1回目のインク滴吐出後に圧力発生素子(ピエゾ素子)に印加する電圧を、定速Vcs時の電圧よりも低くする。同じく次の吐出間でも時間間隔に応じて圧力発生素子(ピエゾ素子)に印加する電圧を調整する。用紙搬送速度が上がるにつれてインク滴吐出の時間間隔が短くなっていき、定速Vcsになり吐出周期が一定になれば、前記印加電圧の補正(調整)は不要となる。
【0041】
なお、吐出周期と共振周波数が、インク滴吐出に関して最適な形で一致していれば良いので、時間間隔が長くなった場合に必ずしも共振周波数が小さくなるように印加電圧に補正を掛けなくてもよい。
【0042】
この図7の例では本発明を明瞭にするため、単一の波形のみを使用して説明を行なっている。しかしながら、図では少なくとも大、中、小の3種類、またはそれ以上の種類のインク滴を吐出することが可能な駆動波形を用いており、実際にはインク滴の大きさを打ち分け可能になっている。
【0043】
図8は、本発明の実施例において圧力発生素子(ピエゾ素子)への駆動波形cの電圧補正について説明するための拡大図である。この図8は、図7の2〜4回目の吐出駆動波形c、すなわち加速領域から定速領域へ移るところの吐出駆動波形cを示している。
【0044】
この図に示すように、吐出駆動波形cの2回目と3回目の駆動間隔ΔT´は3回目と4回目の駆動間隔ΔTよりも長いので、吐出駆動波形cの中間電位に補正を掛けて、2回目の駆動波形の電圧をVcからVc´へ下げる。駆動波形内での電位差は変わらないように、前記補正は図8のx点からy点まで掛け続ける。これにより、共振周波数を変動させてインク滴吐出タイミングにおけるメニスカス状態を一定にすることができ、そのために安定したインク滴の吐出が可能となる。
【0045】
図9は、本発明の実施例に係るインク滴吐出制御部のブロック図である。
この図に示すように、インク滴吐出制御部40は、中間電位補正量算出部41を含む用紙搬送同期制御部42と、駆動波形生成部43と、駆動波形選択信号生成部44と、駆動波形選択部45とから構成され、各部は図に示すような接続関係になっている。またこのインク滴吐出制御部40は、図1に示すように制御部12内に設けられて記録ヘッド13に接続されている。
【0046】
この図に示すように、用紙搬送プロフィールgと、用紙搬送同期信号hと、画像データiを前記用紙搬送同期制御部42にそれぞれ入力する。前記用紙搬送プロフィールgは、具体的には図5に相当するような用紙搬送速度データのテーブルである。図1で示した用紙搬送装置(インフィードローラ5、ヒートローラ6、アウトフィードローラ7など)は、この用紙搬送プロフィールgに追従するように回転駆動される。
【0047】
前記用紙搬送同期制御部42では入力した用紙搬送同期信号hに基づいて用紙搬送に同期したヘッド駆動信号jを生成し、それを駆動波形生成部43に送信する。また、用紙搬送同期制御部42は、入力した画像データiと前記ヘッド駆動信号jを駆動波形選択信号生成部44へ送信する。
【0048】
前述のように用紙搬送同期制御部42内には、中間電位補正量算出部41が設けられている。この中間電位補正量算出部41では、用紙搬送プロフィールgと用紙搬送同期信号hから圧力発生素子(ピエゾ素子)の駆動タイミングを予測し、中間電位の補正量kを算出・決定する。圧力発生素子(ピエゾ素子)の駆動周期が短くなる場合は、共振周波数を短くするように中間電圧を上げるような補正量kとする。このようにして決定した補正量kは、駆動波形生成部43へ送信する。
【0049】
この駆動波形生成部43では、入力したヘッド駆動信号jと中間電位補正量kに基づいて駆動波形eを生成し、駆動波形選択部45へ送信する。駆動波形を実現する回路としては、例えばD/Aコンバータを使用していて、中間電位はデジタルデータをセットすることで、任意の中間電位に設定できる。
【0050】
駆動波形選択信号生成部44は、入力したヘッド駆動信号jと画像データiに基づいて駆動波形選択信号fを生成し、それを駆動波形選択部45へ送信する。
【0051】
駆動波形選択部45では前記駆動波形eと駆動波形選択信号fから駆動波形cを生成し、それを圧電素子駆動部46に送信して、圧力発生素子(ピエゾ素子)28を駆動し、ノズル25(ともに図4参照)から所定のタイミングでインク滴を吐出する。
【0052】
図10は、本発明の実施例に係るインク滴の吐出制御方法を説明するためのフローチャートである。
S1:入力した前記用紙搬送プロフィールgに基づいて、次回と次々回の駆動タイミング(例えば図8に示す2回目と3回目のインク滴の吐出タイミング)を予測する。
【0053】
ある予測タイミングで決定した前記補正量を反映できるのは、その次の駆動タイミング(ここでn回目とする)と、n+1回目の間の中間電位からであり、n回目とn+1回目の中間電位は、n回目とn+1回目の駆動間隔を基に算出するため、2つ先までの駆動タイミングの予測が必要となる。
【0054】
S2:予測した駆動タイミングから、次回と次々回の駆動タイミングの時間間隔を算出し、その時間間隔に最適な共振周波数になるように、圧力発生素子(ピエゾ素子)に印加する駆動電圧の補正量(バイアス値)を算出・決定する。
【0055】
S3:前述した駆動タイミングにおいて、圧力発生素子(ピエゾ素子)を駆動して、ノズルからインク滴を吐出する。
【0056】
S4:前記S2で決定した駆動電圧の補正量(バイアス値)に基づいて、圧力発生素子(ピエゾ素子)に印加する駆動電圧を補正して、圧力発生素子(ピエゾ素子)を駆動し、ノズルからインク滴を吐出する。
【0057】
S5:印刷が終了か否かの判定を行い、印刷中であればS1に戻り、印刷が終了するまでS1〜S5の動作を繰り返す。
【0058】
本実施例において駆動波形の中間電位を補正する場合、事前に駆動周波数毎に最適な中間電位を測定して、その値を補正値としてテーブル化しておき、図10で説明したS1の駆動タイミングの予測に合わせて、前記テーブルから補正値を取得して電圧補正(S4)をすれば、簡単でかつ適切な中間電位の補正ができる。
【0059】
前記実施例では液滴吐出装置としてインク滴吐出装置(インクジェット記録装置)の例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばインクジェット方式を適用した三次元造形装置など他の液滴吐出装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1・・・印刷用紙、2・・・印刷装置、12・・・制御部、13・・・インクジェッド記録ヘッド、22・・・ヘッドモジュール、23・・・ヘッドモジュール群、25・・・ノズル、28・・・圧力発生素子、32・・・圧力室、37・・・振動板、40・・・インク滴吐出制御部、41・・・中間電位補正量算出部、42・・・用紙搬送同期制御部、43・・・駆動波形生成部、44・・・駆動波形選択信号生成部、45・・・駆動波形選択部、46・・・圧電素子駆動部、a・・・記録用紙の搬送速度、b・・・圧力発生素子の駆動タイミング、c・・・圧力発生素子の駆動波形、d・・・共振波形、g・・・用紙搬送プロフィール、h・・・用紙搬送同期信号、i・・・画像データ、j・・・ヘッド駆動信号、k・・・中間電圧の補正量。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2010−274637号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のノズルに連通して吐出すべき液体を蓄える多数の圧力室と、
前記各圧力室の弾性壁を形成するように各圧力室にわたって配置された振動板と、
前記振動板を介して前記圧力室とそれぞれ対向するように配置された圧力発生素子と、
前記圧力発生素子を駆動する圧力発生素子駆動部と、
前記ノズルに対して被着弾体を搬送する被着弾体搬送手段と、
前記圧力発生素子駆動部に対して、前記被被着弾体搬送手段による被着弾体の搬送に同期して駆動波形を送信する液滴吐出制御部を備えた液滴吐出装置において、
前記液滴吐出制御部に前記駆動波形の中間電位の補正量を算出する中間電位補正量算出手段を設け、その中間電位補正量算出手段によって算出された中間電位の補正量で前記圧力発生素子に印加する駆動電圧を補正する構成になっていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
当該液滴吐出装置が前記被着弾体の加速中あるいは(ならびに)減速中にも前記被着弾体に対して液滴を着弾する構成になっており、
前記中間電位補正量算出手段に基づく駆動電圧の補正を前記被着弾体の加速中あるいは(ならびに)減速中に行ない、前記被着弾体の定速搬送中は前記中間電位補正量算出手段に基づく駆動電圧の補正は行なわないことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインク滴吐出装置において、
前記被着弾体の加速中あるいは(ならびに)減速中に前記圧力発生素子に印加する駆動電圧が、前記被着弾体の定速搬送中に前記圧力発生素子に印加する駆動電圧よりも低くなるように、前記中間電位補正量算出手段に基づいて駆動電圧が補正されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の液滴吐出装置を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−917(P2013−917A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131529(P2011−131529)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】