説明

液滴吐出装置及びキャッピング方法

【課題】キャップオフ時にメニスカスの破壊を抑制する。
【解決手段】インクジェットプリンタ1は、インクを貯留するタンク3と、タンク3から供給されたインクを、複数のノズル2aが形成されたノズル面2bからインク液滴として吐出するインクジェットヘッド2と、タンク3における上部空間Aの圧力を調節することで、ノズル面2bにおけるインクの圧力を調節する調圧ポンプ4と、インクジェットヘッド2のノズル面2bをキャッピングするキャッピングユニット5と、インクジェットヘッド2、調圧ポンプ4及びキャッピングユニット5を制御する制御部10と、を備える。そして、制御部10は、キャッピングユニット5によるキャッピングにおいて、キャップオフを行う際に、調圧ポンプ4による上部空間Aの圧力制御により、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力よりも高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する液滴吐出装置及びキャッピング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクジェットプリンタなどの液滴吐出装置では、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドのノズル周りに液体や液体の凝集物などが付着すると吐出不良の原因になるため、定期的に、キャッピングによるクリーニングが行われている(例えば、特許文献1,2参照)。このキャッピングは、樹脂などの弾性素材で形成された椀状のキャップ液滴吐出ヘッドの下面に押圧し、ノズル面を気密に覆った状態でキャップ内を負圧にすることで、ノズルに詰まった凝集物などを吸引除去するものである。
【0003】
一方、液滴吐出装置では、液滴の吐出を良好にすべく、ノズル内のインクを所定のメニスカスに形成する必要がある。メニスカスの形成は、ノズル径や使用する液体の種類など、様々なパラメータによって変化するため、液滴吐出ヘッド毎に、ノズル面におけるインクの圧力(指定圧力)が指定されている。なお、この指定圧力は負圧となる。そこで、液滴吐出ヘッドに液体を供給するタンクをノズル面よりも下方に配置したり、このタンクの上部空間を負圧にしたりすることで、ノズル面におけるインクの圧力を指定圧力に保持し、メニスカスの形成を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−044005号公報
【特許文献2】特開2002−127390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したキャッピングは、ノズル面を気密に覆った状態でキャップ内を負圧にするため、ノズルから凝集物などを吸引除去した後に、キャップを液滴吐出ヘッドから離間させるキャップオフを行うと、キャップ内に急激な圧力変動が生じる。このため、キャップオフ時に、急激な圧力変動によりノズル内に気泡が入り込み、形成されたメニスカスが破壊されてノズル抜けが発生する可能性がある。また、キャップ内に気泡が発生していた場合も、キャップオフを行うと、急激な圧量変動により気泡が破裂し、この気泡の破裂の衝撃で形成されたメニスカスが破壊されてノズル抜けが発生する可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、キャップオフ時にメニスカスの破壊を抑制することができる液滴吐出装置及びキャッピング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る液滴吐出装置は、液体を貯留する液体貯留容器と、液体貯留容器から供給された液体を、複数のノズルが形成されたノズル面から液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、ノズル面における液体の圧力を、ノズルに供給された液体がメニスカスを形成する指定圧力に保持する調圧手段と、キャップを液滴吐出ヘッドに押圧してノズル面を気密に覆うキャッピング手段と、を有し、液滴吐出ヘッドに押圧されたキャップを液滴吐出ヘッドから離間させる際、ノズル面における液体の圧力を指定圧力よりも高くする。
【0008】
本発明に係る液滴吐出装置では、液滴吐出ヘッドに押圧されたキャップを液滴吐出ヘッドから離間させる際、ノズル面における液体の圧力を指定圧力よりも高くする。このように、ノズル面における液体の圧力を指定圧力よりも高くすることで、ノズル内に液体を引き込む力が弱くなるため、キャップを液滴吐出ヘッドから離間させる際に急激な圧力変動や気泡の破裂が生じても、メニスカスが破壊されてノズル抜けが生じるのを抑制することができる。
【0009】
そして、液滴吐出ヘッドに押圧されたキャップを液滴吐出ヘッドから離間させる際、ノズル面における液体の圧力をノズル面に液体が滲まない圧力以下とすることが好ましい。このように、液滴吐出ヘッドからキャップを離間させる際に、ノズル面における液体の圧力を、ノズル面に液体が滲まない圧力以下とすることで、キャッピング終了後に、ノズル面が液体で汚れるのを防止することができるとともに、液滴が漏れ落ちるのを防止することができる。
【0010】
この場合、ノズル面における液体の圧力を略大気圧とすることが好ましい。このように、液滴吐出ヘッドからキャップを離間させる際に、ノズル面における液体の圧力を略大気圧とすることで、キャッピング終了後に、ノズル面が液体で汚れるのを確実に防止することができるとともに、液滴が漏れ落ちるのを確実に防止することができる。
【0011】
そして、液滴吐出ヘッドに押圧されたキャップを液滴吐出ヘッドから離間させた後、液滴吐出ヘッドによる液滴の吐出が開始されるまでの間に、ノズル面における液体の圧力を指定圧力に戻すことが好ましい。このように、液滴吐出ヘッドからキャップが離間してから液滴吐出ヘッドによる液滴の吐出が開始されるまでの間に、ノズル面における液体の圧力を指定圧力に戻すことで、ノズル内の液体がメニスカスに形成された状態で液滴吐出ヘッドから液滴を吐出することができる。
【0012】
上記の液体貯留容器は、液滴吐出ヘッドの上方に配置されており、調圧手段は、液体貯留容器の上部空間の圧力を調整することで、ノズル面における液体の圧力を調整することが好ましい。このように、液体貯留容器を液滴吐出ヘッドの上方に配置すると、液滴吐出ヘッドのノズル面に液体の水頭圧が作用するが、液体貯留容器の上部空間の圧力を調整することで、簡易に、ノズル面における液体の圧力を調整することができる。
【0013】
本発明に係るキャッピング方法は、複数のノズルが形成されたノズル面から液滴を吐出する液滴吐出ヘッドにキャップを押圧して、ノズル面を気密に覆うキャッピング方法であって、ノズル面における液体の圧力を、ノズルに供給された液体がメニスカスを形成する指定圧力よりも高くした状態で、液滴吐出ヘッドに押圧されたキャップを液滴吐出ヘッドから離間させる。
【0014】
本発明に係るキャッピング方法では、ノズル面における液体の圧力を指定圧力よりも高くした状態で、液滴吐出ヘッドに押圧されたキャップを液滴吐出ヘッドから離間させる。このように、ノズル面における液体の圧力を指定圧力よりも高くすることで、ノズル内に液体を引き込む力が弱くなるため、キャップを液滴吐出ヘッドから離間させる際に急激な圧力変動や気泡の破裂が生じても、メニスカスが破壊されてノズル抜けが生じるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、キャップオフ時にメニスカスの破壊を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】調圧ポンプによる上部空間の制御圧を説明するための模式図である。
【図3】インクジェットプリンタの動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る液滴吐出装置及びキャッピング方法の好適な実施形態について詳細に説明する。本実施形態は、本発明に係る液滴吐出装置及びキャッピング方法を、液滴吐出装置であるインクジェットプリンタに適用したものである。なお、同一又は相当部分には同一符号を付すこととする。
【0018】
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、インクジェットヘッド2と、タンク3と、調圧ポンプ4と、キャッピングユニット5と、制御部10と、を備えている。
【0019】
インクジェットヘッド2は、タンク3から供給されたインクを液滴状のインク液滴として吐出する液滴吐出ヘッドある。このインクジェットヘッド2は、その下面に、多数のノズル2aが形成されたノズル面2bが配置されている。そして、タンク3からインクジェットヘッド2に供給されたインクは、インクジェットヘッド2内の共通流路(不図示)を通って各ノズル2aに分配供給され、圧電素子などの駆動制御によりノズル面2bからインク液滴として吐出される。
【0020】
このインクジェットヘッド2には、各ノズル2aにおいて所定のメニスカスを形成するために、ノズル面2bにおけるインクの圧力(指定圧力)が指定されている。なお、指定圧力は、負圧となっており、ノズル径や使用するインクの種類など、様々パラメータに応じて適宜設定される。このため、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に保持することで、各ノズル2aに供給されたインクが所定のメニスカスに形成される。なお、一般に、指定圧力は所定の幅で指定されている。このため、指定圧力が所定の幅で指定されている場合に、指定圧力よりも高い圧力とは、指定圧力の範囲において最も高い圧力よりも高い圧力となる。例えば、指定圧力が−1.0kPa±400Paの範囲で指定された場合、指定圧力よりも高い圧力は、−600Pa(−1.0kPa+400Pa)よりも高い圧力となる。但し、本実施形態では、説明の便宜上、指定圧力に幅がなく一定の値であるものとして説明する。
【0021】
また、このインクジェットヘッド2は、図示しないキャリッジにより走査方向において移動可能となっており、インクジェットヘッド2の移動する端部が、インクジェットヘッド2をキャッピングするためのメンテナンス位置となっている。そして、インクジェットヘッド2は、このメンテナンス位置において、上下方向に移動可能となっている。なお、インクジェットヘッド2の上下動は、図示しない駆動装置により、キャリッジに対してインクジェットヘッド2を上下動させることにより実現されるが、キャリッジ自体を上下動させても良い。
【0022】
タンク3は、インクジェットヘッド2に供給するインクを一時的に貯留するものである。このタンク3は、図示しないインクタンクやインクカートリッジなどのインク貯留容器から供給されるインクを貯留するタンクであって、サブタンクや、インクジェットヘッド2に供給するインクの圧力変動を抑制するダイアフラム膜が設けられたダンパなどの中間タンクとして機能する。このタンク3は、オンキャリッジ型を採用している。すなわち、タンク3は、インクジェットヘッド2が搭載されるキャリッジに搭載されて、インクジェットヘッド2の上方に配置されている。そして、タンク3は、インクジェットヘッド2に連通されたチューブを介して、貯留しているインクをインクジェットヘッド2に供給する。このため、インクジェットヘッド2のノズル面2bには、タンク3に貯留されたインクの水頭圧が作用する。
【0023】
調圧ポンプ4は、タンク3における上部空間Aの圧力を調節することで、ノズル面2bにおけるインクの圧力を調節する調圧手段である。調圧ポンプ4は、定圧ポンプなどで構成されており、タンク3の上部空間Aに連通されている。このため、調圧ポンプ4は、制御部10による駆動制御により、上部空間Aの圧力を調節することが可能となっている。
【0024】
ここで、図2を参照して、調圧ポンプ4による上部空間Aの制御圧Pcについて説明する。図2は、調圧ポンプによる上部空間の制御圧を説明するための模式図である。図2に示すように、ノズル面2bには、ノズル面2bからタンク3の液面に至るインクの水頭圧(正圧)が作用する。このため、インクの水頭圧(正圧)の正負を逆にした圧力(負圧)を、調圧ポンプ4による上部空間Aの制御圧Pc(負圧)とすることで、ノズル面2bに作用するインクの水頭圧が上部空間Aの負圧により相殺され、ノズル面2bにおけるインクの圧力が大気圧となる。ここで、大気圧とは、ゲージ圧が0Pa(gauge)である状態をいう。そこで、インクの水頭圧を相殺する圧力(負圧)とインクジェットヘッド2の指定圧力(負圧)とを加算した標準制御設定圧(負圧)を、調圧ポンプ4による上部空間Aの制御圧Pc(負圧)とすることで、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力(負圧)となる。例えば、インクの水頭圧が1kPa、インクジェットヘッド2の指定圧力が−300Paであった場合を考える。この場合、インクの水頭圧を相殺する圧力は、−1kPaとなる。このため、上部空間Aの制御圧Pcを、指定圧力(−300Pa)にインクの水頭圧を相殺する圧力(−1kPa)を加えた−1.3kPaとすることで、ノズル面2bにおけるインクの圧力を、指定圧力である−300Paにすることができる。
【0025】
なお、インクジェットヘッド2内のインク流路又はインクジェットヘッド2の近傍のインク流路に圧力計(不図示)を取り付けておき、この圧力計の測定結果をフィードバックすることにより、ノズル面2bにおけるインクの圧力を確認することができる。
【0026】
キャッピングユニット5は、インクジェットヘッド2のノズル面2bを気密に覆い、ノズル2aからインクを吸引するキャッピング手段である。キャッピングとは、キャップでノズル面2bを気密に覆ってインクの乾燥を防止するとともに、ノズルに詰まった凝集物などを除去する動作である。このため、キャッピングユニット5は、インクジェットヘッド2に押圧されてノズル面2bを気密に覆うキャップ5aと、キャップ5aに吸引力を発生させる吸引ポンプ5bと、キャップ5aから吸引したインクを貯留する廃液タンク5cと、を備えている。
【0027】
キャップ5aは、樹脂などの弾性素材により、上方に開放された椀状に形成されており、メンテナンス位置に移動したインクジェットヘッド2の下方に配置されている。このため、メンテナンス位置に移動したインクジェットヘッド2を下方に移動させることで、インクジェットヘッド2の下面にキャップ5aが押圧され、ノズル面2bをキャップ5aで気密に覆うことができる。このように、インクジェットヘッド2にキャップ5aを押圧してキャップ5aでノズル面2bを気密に覆うことを“キャップオン”という。一方、キャップオンしている状態でインクジェットヘッド2を上方に移動させることで、キャップ5aをインクジェットヘッド2から離間させることができる。このように、キャップ5aをインクジェットヘッド2から離間させることを“キャップオフ”という。なお、キャップオン及びキャップオフは、キャップ5aを上下動させることにより行っても良い。
【0028】
制御部10は、インクジェットヘッド2、調圧ポンプ4及びキャッピングユニット5などと電気的に接続されており、インクジェットプリンタ1の印刷処理やキャッピング処理などを行うものである。なお、制御部10は、例えば、CPU、ROM、RAMを含むコンピュータを主体として構成されている。そして、後述する制御部10の各制御は、CPUやRAM上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませ、CPUの制御のもとで動作させることで実現される。
【0029】
次に、図3を参照して、インクジェットプリンタ1の動作について説明する。図3は、インクジェットプリンタの動作を示したフローチャートである。なお、以下に説明するインクジェットプリンタ1の処理動作は、制御部10の制御により行われる。すなわち、制御部10において、CPUなどで構成される処理部が、ROMなどの記憶装置に記録されたプログラムに従い、各機能を統括管理することで、以下の処理が行われる。
【0030】
図3に示すように、制御部10は、まず初期設定として、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に設定する(ステップS1)。すなわち、制御部10は、調圧ポンプ4の駆動制御を行い、上部空間Aの制御圧Pcを標準制御設定圧に保持する。これにより、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力に保持され、各ノズルにおいてメニスカスが形成される。このとき、制御部10は、インクジェットヘッド2内のインク流路又はインクジェットヘッド2の近傍のインク流路に取り付けられた圧力計(不図示)の測定圧力をフィードバックすることにより、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力になっているか否かを判断することが好ましい。
【0031】
なお、ステップS1により、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力に保持された後、印刷動作などの様々な処理が行われる。
【0032】
次に、制御部10は、キャッピングを行うか否かを判断する(ステップS2)。なお、ステップS2では、操作者による操作入力の有無や、予め設定されたシーケンスなどに基づいて、キャッピングを行うか否かを判断する。
【0033】
そして、キャッピングを行うと判断するまでは(ステップS2:NO)、制御部10は、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に保持しておく。
【0034】
一方、キャッピングを行うと判断すると(ステップS2:YES)、制御部10は、キャリッジの駆動制御を行い、インクジェットヘッド2をメンテナンス位置に移動させる(ステップS3)。
【0035】
次に、制御部10は、キャップオンを行う(ステップS4)。すなわち、制御部10は、インクジェットヘッド2の駆動制御を行い、インクジェットヘッド2を下降させる。そして、インクジェットヘッド2にキャップ5aを押圧して、ノズル面2bをキャップ5aで気密に覆う。なお、ステップS4のキャップオンは、キャップ5aを上方に移動させることにより行っても良い。
【0036】
次に、制御部10は、ノズル面2bにおけるインクの圧力を上げ、指定圧力より高い圧力に設定する(ステップS5)。すなわち、制御部10は、調圧ポンプ4の駆動制御を行い、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力よりも高くなるように、上部空間Aの制御圧Pcを標準制御設定圧よりも高くする。このとき、上部空間Aの制御圧Pcは、ノズル面2bにインクが滲まない程度の圧力以下とする。この範囲の中でも、特に、ノズル面2bにおけるインクの圧力が略大気圧になる圧力とすることが好ましい。
【0037】
ここで、ノズル面2bにインクが滲まない状態とは、ノズル2aに供給されたインクが、ノズル2a内に納まっている状態のほか、ノズル2aから飛び出しているものの、インクの表面張力によりノズル2aから溢れ出していない状態をいう。一方、ノズル面2bにインクが滲む状態とは、インクの表面張力の限界を超えて、インクがノズル2aから溢れ出して広がる状態をいう。なお、上部空間Aの制御圧Pcの最大値は、使用するインクの種類やノズル径などによって変わり、粘度の極端に高いインクを使用する場合などは、ノズル面2bにおけるインクの圧力が100kPa程度になる圧力とする場合も考えられる。また、略大気圧とは、大気圧を中心とした約±300Paの範囲内の圧力をいう。
【0038】
次に、制御部10は、吸引処理を行う(ステップS6)。すなわち、制御部10は、吸引ポンプ5bの駆動制御を行い、キャップ5a内に吸引力を発生させる。すると、ノズル面2bとキャップ5aとの間の空間が負圧状態となり、ノズル2aからインクと一緒にインクの凝集物なども吸引除去される。そして、ノズル2aから吸引除去されたインクや凝集物などは、キャップ5aから廃液タンク5cに運ばれて貯留される。
【0039】
次に、制御部10は、キャップオフを行う(ステップS7)。すなわち、制御部10は、インクジェットヘッド2の駆動制御を行い、インクジェットヘッド2を上昇させて、インクジェットヘッド2からキャップ5aを離間させる。このとき、前工程であるステップS5において、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力よりも高く設定しているため、ノズル内にインクを引き込む力が弱くなっている。このため、キャップオフに伴い、キャップ5a内に急激な圧力変動が生じたり、キャップ5a内の気泡が破裂したりしても、メニスカスが破壊されてノズル抜けが生じるのが抑制される。なお、ステップS7のキャップオフは、キャップ5aを下方に移動させることにより行っても良い。
【0040】
次に、制御部10は、ステップS7のキャップオフが終了した後、印刷が行われる前に、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に戻す(ステップS8)。すなわち、制御部10は、調圧ポンプ4の駆動制御を行い、ノズル面2bにおけるインクの圧力が指定圧力となるように、上部空間Aの制御圧Pcを標準制御設定圧に設定する。なお、ステップS8の圧力制御は、ステップS7のキャップオフが終了した後、且つ、印刷が行われる前であれば、如何なるタイミングで行っても良い。
【0041】
このように、本実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、キャップオフ時にノズル面2bにおけるインクの圧力を正圧側に加圧して指定圧力よりも高くすることで、ノズル2a内にインクを引き込む力が弱くなるため、キャップオフに伴い、キャップ5a内に急激な圧力変動が生じたり、キャップ5a内の気泡が破裂したりしても、メニスカスが破壊されてノズル抜けが生じるのを抑制することができる。
【0042】
また、キャップオフ時の制御圧Pcを、ノズル面2bにインクが滲まない圧力以下とすることで、キャッピング終了後に、ノズル面2bがインクで汚れるのを防止することができるとともに、液滴が漏れ落ちるのを防止する。特に、キャップオフ時の制御圧Pcを、ノズル面2bにおけるインクの圧力が略大気圧となる圧力とすることで、これらの効果がより顕著となる。
【0043】
そして、印刷が開始される前に、ノズル面2bにおけるインクの圧力を指定圧力に戻すことで、ノズル2a内のインクが所定のメニスカスに形成された状態で印刷を行うことができる。
【0044】
更に、調圧ポンプ4により上部空間Aの圧力制御を行うことで、タンク3の位置に関わらず、ノズル面2bにおけるインクの圧力を調整することができる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態において、ノズル面2bにおけるインクの圧力を上げる処理(ステップS5)を行うタイミングは、キャップオン(ステップS4)の後であるものとして説明したが、キャップオフ(ステップS7)より前であれば、如何なるタイミングであってもよい。例えば、ノズル面2bにおけるインクの圧力を上げる処理(ステップS5)を、キャップオン(ステップS4)の前に行ってもよく、インクジェットヘッド2をクリーニング移動させる処理(ステップS3)の前に行ってもよい。但し、吸引を行う処理(ステップS6)では、ノズル2aからインクや凝集物などを吸引するため、この吸引を促進するためにも、ノズル面2bにおけるインクの圧力を上げる処理(ステップS5)を、この吸引を行う処理(ステップS6)よりも前に行うことが好ましい。
【0046】
また、上記実施形態では、調圧ポンプ4による制御圧Pcの最大値を、ノズル面2bにインクが滲まない程度の圧力以下とするものとして説明したが、キャッピングの後にノズル面2bをクリーニングする場合など、ノズル面2bにインクが滲んだりノズル2aからインクが漏れ落ちたりしても問題のない場合は、制御圧Pcの最大値は特に制限されない。
【0047】
また、上記実施形態では、オンキャリッジ型のタンク3を採用するインクジェットプリンタ1を用いて説明したが、インクジェットヘッド2に対するタンク3の上下方向の位置を移動させるなど、ノズル面2bにおけるインクの圧力を調整することができれば、タンク3の位置は特に限定されない。
【0048】
また、上記実施形態では、本発明の一例としてインク液滴を吐出するインクジェットプリンタについて説明したが、本発明を、食用オイルや接着剤などの高粘度液体を液滴として吐出する工業用液滴吐出装置などに適用してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…インクジェットプリンタ(液滴吐出装置)、2…インクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)、2a…ノズル、2b…ノズル面、3…タンク(液体貯留容器)、4…調圧ポンプ(調圧手段)、5…キャッピングユニット(キャッピング手段)、5a…キャップ、5b…吸引ポンプ、5c…廃液タンク、10…制御部、A…上部空間。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する液体貯留容器と、
前記液体貯留容器から供給された液体を、複数のノズルが形成されたノズル面から液滴として吐出する液滴吐出ヘッドと、
前記ノズル面における前記液体の圧力を、前記ノズルに供給された液体がメニスカスを形成する指定圧力に保持する調圧手段と、
キャップを前記液滴吐出ヘッドに押圧して前記ノズル面を気密に覆うキャッピング手段と、
を有し、
前記液滴吐出ヘッドに押圧された前記キャップを前記液滴吐出ヘッドから離間させる際、前記ノズル面における前記液体の圧力を前記指定圧力よりも高くする、液滴吐出装置。
【請求項2】
前記液滴吐出ヘッドに押圧された前記キャップを前記液滴吐出ヘッドから離間させる際、前記ノズル面における前記液体の圧力を前記ノズル面に液体が滲まない圧力以下とする、請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
前記液滴吐出ヘッドに押圧された前記キャップを前記液滴吐出ヘッドから離間させる際、前記ノズル面における前記液体の圧力を略大気圧とする、請求項2に記載の液滴吐出装置。
【請求項4】
前記液滴吐出ヘッドに押圧された前記キャップを前記液滴吐出ヘッドから離間させた後、前記液滴吐出ヘッドによる液滴の吐出が開始されるまでの間に、前記ノズル面における前記液体の圧力を前記指定圧力に戻す、請求項1〜3の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記液体貯留容器は、前記液滴吐出ヘッドの上方に配置されており、
前記調圧手段は、前記液体貯留容器の上部空間の圧力を調整することで、前記ノズル面における前記液体の圧力を調整する、
請求項1〜4の何れか1項に記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
複数のノズルが形成されたノズル面から液滴を吐出する液滴吐出ヘッドにキャップを押圧して、前記ノズル面を気密に覆うキャッピング方法であって、
前記ノズル面における前記液体の圧力を、前記ノズルに供給された液体がメニスカスを形成する指定圧力よりも高くした状態で、前記液滴吐出ヘッドに押圧された前記キャップを前記液滴吐出ヘッドから離間させる、キャッピング方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−218676(P2011−218676A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90740(P2010−90740)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】