説明

液滴吐出装置及び液滴吐出方法

【課題】インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正をし、所望の印刷品質を得ることが可能な液滴吐出装置及び液滴吐出方法を提供する。
【解決手段】光硬化型インクを吐出させる複数のノズルと、複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッド5と、複数のノズルから吐出された光硬化型インクを着弾させる被記録体15を載置するワークステージ16と、複数のノズルから吐出される光硬化型インクの温度を測定する温度測定手段34と、温度測定手段34により測定された光硬化型インクの温度変化に基づいて、ワークステージ16に載置された被記録体15に対して複数のノズルから吐出された光硬化型インクの着弾径を測定する着弾径測定手段32と、複数のノズルにおける着弾径のばらつきを調整するように複数の駆動素子に印加する駆動波形を調整する制御手段31と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出装置及び液滴吐出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のICチップを単一パッケージに搭載してシステムを構成するSiP(System in a Package)等のICパッケージが普及している。このようなICパッケージへのマーキング技術としては、ICパッケージの薄型化、小型化に伴いレーザーマーキング技術が用いられている。一方、ICパッケージへのダメージレス、マーキングの視認性、生産効率等の観点から、レーザーマーキング技術に替えて、紫外線照射によって硬化する光硬化型(紫外線硬化型)インクを用いた液滴吐出法によるマーキング技術が注目されている。
【0003】
紫外線硬化型インクが通常の水性インクや油性インクと異なるところは、ICパッケージ(被記録体)に配した後、適量の紫外線を照射することによって速やかに硬化できる点である。このような特性によって、紫外線硬化型インクは、インク浸透性等の被記録体の物性に左右されることなく、例えば非受容層メディアにインクを配した場合においても、安定した印刷品質が得られる。
【0004】
ところで、紫外線硬化型インクを用いたICパッケージへのマーキング技術においては、一般に発熱源としてUVランプを搭載している。これに伴い、装置内の温度変化が大きくなり、液滴吐出ヘッドの複数のノズルから紫外線硬化型インクが吐出される際にインク吐出量にばらつきが生じる。そして、インク吐出量にばらつきを有した状態で描画した場合には、所望の印刷品質が得られない場合がある。一方、UVランプとともにサーマルチャンバーを搭載することにより、装置内の温度変化を一定に管理する技術がある。しかしながら、サーマルチャンバーを用いると高コストとなってしまう。
【0005】
このような問題点を解決するための技術が検討されており、例えば特許文献1及び2では、インクが高粘度となる低温度域においては、液滴吐出ヘッドの発熱量を増加させ、かつインクの吐出速度を大きくする第1の駆動波形を用いて駆動している。一方、インクが低粘度となる高温度域においては、液滴吐出ヘッドの発熱量を低下させ、かつインクの吐出速度を小さくする第2の駆動波形を用いて駆動している。これにより、インクの吐出速度、液滴吐出ヘッドの温度及び吐出されるインクの温度を安定した値に保ちながらインクの吐出を行い、印刷品質の低下を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−174831号公報
【特許文献2】特開平9−201962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び2の技術にあっては、印刷品質の低下を抑えることができると考えられるが、以下のように問題点もある。
特許文献1及び2では、液滴吐出ヘッドの複数のノズルからインクが吐出される前に、インクの粘度に対応する温度を検出し、インクの低温度域及びインクの高温度域において所定の駆動波形を用いて駆動している。このため、インク吐出前における精度の高い温度の検出が必要となり、インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正をし、印刷品質の低下を抑えようとするにも限界がある。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、紫外線硬化型インクを使用した場合であっても、インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正をし、所望の印刷品質を得ることが可能な液滴吐出装置及び液滴吐出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の液滴吐出装置は、光硬化型インクを吐出させる複数のノズルと、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッドと、前記複数のノズルから吐出された前記光硬化型インクを着弾させる被記録体を載置するワークステージと、前記複数のノズルから吐出される前記光硬化型インクの温度を測定する温度測定手段と、前記温度測定手段により測定された前記光硬化型インクの温度変化に基づいて、前記ワークステージに載置された前記被記録体に対して前記複数のノズルから吐出された前記光硬化型インクの着弾径を測定する着弾径測定手段と、前記複数のノズルにおける前記着弾径のばらつきを調整するように前記複数の駆動素子に印加する駆動波形を調整する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、温度測定手段により複数のノズルから吐出される光硬化型インクの温度が測定される。そして、光硬化型インクの温度変化に基づいて、着弾径測定手段により複数のノズルから吐出される光硬化型インクの着弾径が測定される。すると、制御手段により駆動素子へ印加する駆動波形が調整され、複数のノズルにおける着弾径のばらつきが調整される。つまり、制御手段により複数のノズルにおけるインク吐出量のばらつきが補正されることになる。このため、液滴吐出ヘッドの各ノズルから均一な量の光硬化型インクを吐出することが可能となる。本発明の液滴吐出装置は、特許文献1及び2のようにインク吐出前における精度の高い温度の検出を必要としない。すなわち、印刷品位に直接寄与するインク吐出後の光硬化型インクの着弾径を測定し、着弾径のばらつきを補正している。したがって、インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正をし、所望の印刷品質を得ることができる。また、サーマルチャンバーを搭載していないので、低コスト化を図ることができる。
【0011】
本発明の液滴吐出方法は、光硬化型インクを吐出させる複数のノズルと、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出法であって、前記複数のノズルから吐出される前記光硬化型インクの温度を測定する第1温度測定工程と、前記複数の駆動素子に印加する駆動波形を一定にして前記光硬化型インクを被記録体に着弾する第1着弾工程と、前記第1着弾工程の後に、前記第1温度測定工程により測定された前記光硬化型インクの温度変化に基づいて、前記被記録体に対して前記複数のノズルから吐出された前記光硬化型インクの第1着弾径を測定する第1着弾径測定工程と、前記第1着弾径測定工程の後に、前記複数のノズルにおける前記第1着弾径のばらつきを調整するように前記複数の駆動素子に印加する駆動波形を調整して前記光硬化型インクを前記被記録体に着弾する第2着弾工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
この製造方法によれば、第1温度測定工程によって複数のノズルから吐出される光硬化型インクの温度が測定される。そして、第1着弾工程の後の第1着弾径測定工程により、光硬化型インクの温度変化に基づいて、着弾径測定手段により複数のノズルから吐出される光硬化型インクの着弾径が測定される。そして、第2着弾工程により複数のノズルにおける第1着弾径のばらつきが調整されるように各ノズルに対応する駆動素子に印加する駆動波形が調整されて、光硬化型インクが被記録体に着弾される。つまり、第2着弾工程により複数のノズルにおけるインク吐出量のばらつきが補正されることになる。このため、液滴吐出ヘッドの各ノズルから均一な量の光硬化型インクを吐出することが可能となる。本発明の液滴吐出方法は、印刷品位に直接寄与するインク吐出後の光硬化型インクの着弾径を測定し、着弾径のばらつきを補正している。したがって、インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正をし、所望の印刷品質を得ることができる。
【0013】
また、上記液滴吐出方法においては、前記第2着弾工程の後に、前記複数のノズルから吐出される前記光硬化型インクの温度を測定する第2温度測定工程と、前記第2温度測定工程により測定された前記光硬化型インクの温度変化に基づいて、前記被記録体に対して前記複数のノズルから吐出された前記光硬化型インクの第2着弾径を測定する第2着弾径測定工程と、前記第2着弾径測定工程の後に、前記複数のノズルにおける前記第2着弾径のばらつきを調整するように前記複数の駆動素子に印加する駆動波形を調整して前記光硬化型インクを前記被記録体に着弾する第3着弾工程と、を少なくとも1回有することが望ましい。
この製造方法によれば、第2着弾工程の後に、温度測定工程と着弾径測定工程と着弾工程とを複数回繰り返して行うことにより、複数のノズルにおけるインク吐出量のばらつきが確実に調整される。このため、液滴吐出ヘッドの各ノズルから格段に均一な量の光硬化型インクを吐出することが可能となる。したがって、インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正を確実にし、所望の印刷品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の液滴吐出装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】液滴吐出ヘッドの概略構成を示す模式図である。
【図3】ICパッケージ上にマーキングを形成する方法の説明図である。
【図4】液滴吐出方法の工程を示すフローチャートである。
【図5】駆動素子に印加する駆動波形を示す図である。
【図6】着弾径のばらつきの補正前後の光硬化型インクの配置状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
【0016】
以下の説明においては、図1中に示されたXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がワークステージ16に対して平行な方向に設定され、Z軸がワークステージ16に対して直交する方向に設定されている。図1中のXYZ座標系は、実際にはXY平面が水平面に平行な面に設定され、Z軸が鉛直上方向に設定される。
【0017】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る液滴吐出装置1の概略構成を示す模式図である。液滴吐出装置1は、マガジンP上のICパッケージCA(図3参照)に光硬化型インクを吐出し、吐出した光硬化型インクに光照射を行って該光硬化型インクを硬化させ、ICパッケージCA上に文字・数字や各種の模様等のマーキングを描画するものである。
【0018】
この液滴吐出装置1は、ワークステージ16、液滴吐出ヘッド5、チューブ45、タンク33、着弾径計測用カメラ14、制御ユニット(制御手段)31、解析ユニット(着弾径測定手段)32、温度計測ユニット(温度測定手段)34、熱電対46、第1配線41、第2配線42、第3配線43、第4配線44を備えている。
【0019】
ワークステージ16は、ステージ移動装置(図示略)によってX軸方向に移動可能に設置されている。また、ワークステージ16は、搬送装置(図示略)から搬送されるマガジンPを、真空吸着機構(図示略)によりXY平面上に保持する。
【0020】
液滴吐出ヘッド5は、第1配線41を介して制御ユニット31に電気的に接続されている。液滴吐出ヘッド5は、複数のノズルN(図2参照)を有し、制御ユニット31から入力される描画データや駆動制御信号に基づいて、光硬化型インクの液滴を吐出するものである。また、液滴吐出ヘッド5は、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(黒)に対応した光硬化型インクをそれぞれ吐出するもので、チューブ45を介してタンク33と連結されている。
【0021】
液滴吐出ヘッド5は、Y軸方向及びZ軸方向に対してポールネジまたはリニアガイド等の軸受け機構(図示略)を備えている。そして、液滴吐出ヘッド5は、制御ユニット31から入力されるY座標及びZ座標を示す位置制御信号に基づいて、Y軸方向及びZ軸方向に移動可能になっている。
【0022】
チューブ45は、タンク33と液滴吐出ヘッド5とを連結する光硬化型インクの供給用チューブである。タンク33は、Y(イエロー)用の光硬化型インク、C(シアン)用の光硬化型インク、M(マゼンタ)用の光硬化型インク、K(黒)用の光硬化型インクの4色の光硬化型インクを貯蔵している。タンク33は、4色の光硬化型インクを貯蔵するとともに、チューブ45を介して4色に対応する液滴吐出ヘッド5に光硬化型インクを供給する。
【0023】
ここで、光硬化型インクは、例えば紫外線硬化型のインクなど、所定波長の光を受けて硬化するタイプのもので、モノマーと光重合開始剤と各色に対応する顔料とを含有し、さらに必要に応じて、界面活性剤や熱ラジカル重合禁止剤などの各種添加剤が配合されたものである。なお、このような光硬化型インクは、通常はその成分(配合)等によって吸収する光(紫外線)の波長域等が異なることから、硬化する波長の最適値、すなわち最適硬化波長も、インク毎に異なっている。
【0024】
例えば、紫外線硬化型インクは、ビヒクル、光重合開始剤および顔料の混合物に、消泡剤、重合禁止剤等の補助剤を添加して調合される。ビヒクルは、光重合硬化性を有するオリゴマー、モノマー等を、反応性希釈剤により粘度調整して調合される。
【0025】
ビヒクルとしては、単官能あるいは多官能の重合性化合物が使用できる。より具体的には、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等のオリゴマー(プレポリマー)を例示でき、インクとしての粘度を調整する反応性希釈剤もこれらの材料を用いることができる。
【0026】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾイン系、アセトフェノン系、チオキサントン系が広く用いられる。より具体的には、4−benzoyl−N,N,N−trimethyl benzene methaneannmonium chloride、2−hydroxy 3−(4−benzoyl−phenoxy)−N,N,N−trimethyl 1−propane annmonium chloride、4−benzoyl−N,N−dimethyl N−[2−(1−oxo−2−propenyloxy) ethyl] benzene methammonium bromide等、第4級アンモニウム塩型の水溶性有機物等を用いることができる。この種の光重合開始剤は、その組成に応じて、紫外線吸収特性、反応開始効率、黄変性等が異なるので、インクとしての色等に応じて使い分けられる。
【0027】
重合禁止剤としては、ラジカル捕捉能力を有してラジカル重合を阻害する化合物であれば何れも使用できる。ただし、液滴吐出装置1における吐出適性等を配慮すると、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類から選択された少なくとも1種類以上の化合物が好ましい。
【0028】
ハイドロキノン類としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチルハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等を例示できる。カテコール類としては、カテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール等を例示できる。ヒンダードアミン類としては、テトラメチルピペリジニル基を有する化合物等を例示できる。
【0029】
また、フェノール類としては、フェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸アルキルエステル等を例示できる。フェノチアジン類としては、フェノチアジン等を例示できる。前記縮合芳香族環のキノン類としては、ナフトキノン等を例示できる。
【0030】
更に、重合禁止剤は、カーボンブラックまたは表面に重合防止官能基を導入した無機・有機微粒子であってもよい。重合防止官能基としては、例えば、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、テトラメチルピペリジニル基、縮合芳香族環等を例示できる。
【0031】
ワークステージ16上のマガジンPに隣り合う位置には、被記録体15が配置されている。被記録体15は、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNから吐出された光硬化型インクの着弾径が記録可能な記録媒体である。この被記録体15としては、例えばガラスや金属からなる基板、PETフィルムや写真用光沢紙等の記録紙を用いることができる。
【0032】
また、被記録体15は、生産前、つまりワークステージ16上のマガジンPへの描画前に、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNの吐出状態(ノズル抜け、曲がり)を確認するために用いられるものでもある。
【0033】
温度計測ユニット34は、熱電対46を介して液滴吐出ヘッド5に接続されている。温度計測ユニット34は、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNから吐出される光硬化型インクの温度を測定する機能を有するものである。温度計測ユニット34は、第4配線44を介して制御ユニット31に電気的に接続されている。温度計測ユニット34は、測定した光硬化型インクの温度データを制御ユニット31に出力する。
【0034】
着弾径計測用カメラ14は、ワークステージ16上の被記録体15の記録面(上面)に対向する位置に配置されている。着弾径計測用カメラ14は、温度計測ユニット34により測定された光硬化型インクの温度変化に基づいて、複数のノズルNから被記録体15に吐出された光硬化型インクの着弾径を撮影するカメラである。着弾径計測用カメラ14は、第2配線42を介して解析ユニット32に電気的に接続されている。着弾径計測用カメラ14は、撮影した光硬化型インクの着弾径の画像データを解析ユニット32に出力する。
【0035】
解析ユニット32は、着弾径計測用カメラ14によって撮影された光硬化型インクの着弾径の画像データを画像処置して着弾径を測定する機能を有するものである。解析ユニット32は、第3配線43を介して制御ユニット31に電気的に接続されている。解析ユニット32は、測定した複数のノズルNにおける光硬化型インクの着弾径の測定データを制御ユニット31に出力する。
【0036】
制御ユニット31は、解析ユニット32から入力される着弾径の測定データに基づいて、駆動素子PZ(図2参照)を有する液滴吐出ヘッド5に印加する駆動波形を調整する。そして、駆動素子PZにより複数のノズルNにおける光硬化型インクの着弾径のばらつきが調整される。つまり、複数のノズルNにおける光硬化型インクの着弾径のばらつきが補正される。
【0037】
駆動素子PZにより複数のノズルNにおける光硬化型インクの着弾径のばらつきが補正された後、ワークステージ16がステージ移動装置によって移動される。そして、液滴吐出ヘッド5のノズル面(下面)とマガジンP上面とが対向する位置に配置される。その後、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNからマガジンP上の所定の位置に光硬化型インクが吐出される。
【0038】
また、液滴吐出ヘッド5の全てに対して、該液滴吐出ヘッド5の近傍にそれぞれ光照射装置(図示略)が配置されている。光照射装置は、マガジンP上のICパッケージCAに吐出された光硬化型インクを硬化させるためのもので、本実施形態では多数のLED(発光ダイオード)からなっている。ただし、本発明では、LEDに限定されることなく、これ以外にも例えばレーザーダイオード(LD)や、さらには水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ等を光照射装置として用いることができる。
【0039】
本実施形態のLEDからなる光照射装置は、それぞれ照射する光が、対応する液滴吐出ヘッド5が吐出する光硬化型インクの、最適硬化波長に対応した波長を有している。つまり、前述したように各光硬化型インクは、その成分(配合)等によって最適硬化波長が異なっており、これに対して光照射装置は、対応する光硬化型インクの最適硬化波長を有した光を照射するようになっている。
【0040】
図2は液滴吐出ヘッド5の概略構成を示す模式図である。図2(a)は液滴吐出ヘッド5をワークステージ16(光硬化型インクが吐出される側)から見た平面図、図2(b)は、液滴吐出ヘッド5の部分斜視図、図2(c)は液滴吐出ヘッド5の1ノズルの部分断面図である。
【0041】
図2(a)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、Y軸方向に配列された複数(例えば180個)のノズルN〜N180を備えている。ノズルN〜N180によってノズル列NAが形成されている。図2(a)では1列分のノズルを示しているが、液滴吐出ヘッド5に設けるノズル数及びノズル列数は任意に変更可能であり、Y軸方向に配列した1列分ノズルをX軸方向に複数列設けても良い。
【0042】
図2(b)に示すように、液滴吐出ヘッド5は、チューブ45と連結される材料供給孔20aが設けられた振動板20と、ノズルN〜N180が設けられたノズルプレート21と、振動板20とノズルプレート21との間に設けられた液溜まり22と、複数の隔壁23と、複数の収容室24とを備えている。振動板20上には、各ノズルN1〜N180に対応して駆動素子PZ〜PZ180が配置されている。駆動素子PZ〜PZ180は、例えばピエゾ素子である。
【0043】
液溜まり22には、材料供給孔20aを介して供給される光硬化型インクが充填されるようになっている。収容室24は、振動板20と、ノズルプレート21と、1対の隔壁23とによって囲まれるようにして形成されている。また、収容室24は、各ノズルN〜N180に1対1に対応して設けられている。また、各収容室24には、一対の隔壁23の間に設けられた供給口24aを介して、液溜まり22から光硬化型インクが導入されるようになっている。
【0044】
図2(c)に示すように、駆動素子PZは、圧電材料25を一対の電極26で挟持されたものである。この駆動素子PZは、一対の電極26に駆動信号を印加すると圧電材料25が収縮するよう構成されている。そして、このような駆動素子PZが配置されている振動板20は、一対の電極26に駆動信号を印加すると駆動素子PZと一体になって同時に外側(収容室24の反対側)へ撓曲するようになっており、これによって収容室24の容積が増大するようになっている。
【0045】
収容室24の容積が増大すると、収容室24内に増大した容積分に相当する光硬化型インクが、液溜まり22から供給口24aを介して流入する。また、このような状態から駆動素子PZへの駆動信号の印加を停止すると、駆動素子PZと振動板20はともに元の形状に戻り、収容室24も元の容積に戻る。これにより、収容室24内の光硬化型インクの圧力が上昇し、ノズルNからマガジンPに向けて光硬化型インクの液滴Lが吐出されるようになっている。
【0046】
図3は、液滴吐出ヘッド5を用いてマガジンP上のICパッケージCAにマーキングを形成する方法の説明図である。図3(a)は、光硬化型インクの吐出対象物であるマガジンPの概略平面図である。図3(b)は、マガジンPの部分拡大平面図である。
【0047】
図3(a)において、ガラス、プラスチック等によって形成された大面積のマガジンPの表面には複数のICパッケージCAが配置されている。各ICパッケージCAには、図3(b)に示すように、ドット状に配列された複数のマーキングエリアPXが設けられている。マーキングエリアPXは各ICパッケージCA上にマトリクス状に配列されており、それぞれのマーキングエリアPX毎に光硬化型インクが吐出されて所定のマーキングが形成される。
【0048】
図3(b)の図示上下方向(矢印A1及び矢印A2で示す方向)を主走査方向とし、主走査方向と直交する方向(図示左右方向)を副走査方向として、液滴吐出ヘッド5をマガジンP上に配置する。そして、マガジンPを液滴吐出ヘッド5に対して主走査方向及び副走査方向に相対的に移動(走査)させながら、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNから光硬化型インクを吐出させ、マガジンP上のICパッケージCAにおける各マーキングエリアPXに光硬化型インクを配置してマーキングを形成する。
【0049】
液滴吐出ヘッド5の走査は、1つのICパッケージCAに関して複数回行う。例えば、主走査方向に液滴吐出ヘッド5を走査した後、副走査方向に液滴吐出ヘッド5を移動(走査)し、再度主走査方向に走査を行う。1つのICパッケージCAの左端から右端まで移動(副走査)したら、再びICパッケージCAの左端に戻り、既に吐出を行った位置とは若干異なる位置で主走査方向に走査を行う。そして、このような走査を複数回行うことによって、ICパッケージCA内の所定のマーキングエリアPXに選択的に光硬化型インクを吐出させ、所望のマーキングを形成する。
【0050】
なお、図3(b)において液滴吐出ヘッド5が副走査方向に対して斜めに傾いているのは、液滴吐出ヘッド5のノズルNのピッチをマーキングエリアPXのピッチに合わせるためである。ノズルNのピッチとマーキングエリアPXのピッチとが所定の対応関係を満たして設定されていれば、液滴吐出ヘッド5を斜めに傾ける必要はない。
【0051】
マーキングは、Y(イエロー)、C(シアン)、M(マゼンタ)、K(黒)の各色をいわゆるストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列等といった適宜の配列形態で配列することによって形成される。したがって、図3(b)に示すインクの吐出工程においては、Y、C、M、Kの光硬化型インクを吐出する液滴吐出ヘッド5を、Y、C、M、Kの4色分だけ予め用意する。そして、これらの液滴吐出ヘッド5を順次に用いて1つのマガジンP上にY、C、M、Kの4色のマーキングの配列を形成する。
【0052】
ところで、光硬化型(紫外線光硬化型)インクを用いたICパッケージへのマーキング技術においては、一般に発熱源としてUVランプを用いている。これに伴い、装置内の温度変化が大きくなり、液滴吐出ヘッドの複数のノズルから紫外線硬化型インクが吐出される際にインク吐出量にばらつきが生じる。そして、インク吐出量にばらつきを有した状態で描画した場合には、ICパッケージへの光硬化型インクの配置量(着弾径)がばらついてしまい、所望の印刷品質が得られない場合がある。
【0053】
図6は、複数のノズルNにおける光硬化型インクの着弾径のばらつきの補正前後の被記録体15上における光硬化型インクの配置状態を示す図である。図6(a)は着弾径のばらつきの補正前における光硬化型インクの配置状態を示している。また、図6(b)は着弾径のばらつきの補正後における光硬化型インクの配置状態を示している。図6において、M(M1〜M5)は、上述したY軸方向に配列された複数のノズルNに対応する光硬化型インクの配置状態を示している。また、MA(MA1〜MA5)は、上述したY軸方向に配列した1列分ノズルがX軸方向に複数列設けられた複数のノズル列NAに対応する光硬化型インクの配置列を示している。図6(a)に示すように、複数のノズルN及び複数のノズル列NAに対応する光硬化型インクの配置状態を見ると、全体的に着弾径のばらつきが存在することが確認される。
【0054】
そこで、本発明の液滴吐出方法では、補正前(生産前)となるマガジンP上への描画前に、液滴吐出ヘッド5の駆動素子PZに印加する駆動波形を調整して複数のノズルNにおける光硬化型インクの吐出特性を調整し、複数のノズルNにおける光硬化型インクの着弾径を調整する工程を設けている。以下、本発明の液滴吐出方法について一例を挙げて説明する。
【0055】
(液滴吐出方法)
図4は、本発明の液滴吐出方法の工程を示すフローチャートである。本発明の液滴吐出方法は、複数のノズルNから吐出される光硬化型インクの温度を測定する「第1温度測定工程」(ステップS1)と、駆動素子PZに印加する駆動波形を一定にして光硬化型インクを被記録体15に着弾する「第1着弾工程」(ステップS2)と、第1着弾工程の後に、第1温度測定工程により測定された光硬化型インクの温度変化に基づいて、被記録体15に着弾された光硬化型インクの第1着弾径を測定する「第1着弾径測定工程」(ステップS3)と、第1着弾径のばらつきを調整するように駆動素子PZに印加する駆動波形を調整して光硬化型インクを被記録体15に着弾する「第2着弾工程」(ステップS4)と、を有する。
【0056】
先ず、装置を所定の位置に配置して装置の位置合わせを行う。具体的には、ワークステージ16をX軸方向に移動させ、液滴吐出ヘッド5の直下に配置する。これにより、ワークステージ16上の被記録体15が液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNに対向するように配置される。
【0057】
次に、複数のノズルNから吐出される光硬化型インクの温度を測定する(図4のステップS1)。具体的には、複数のノズルNから吐出される前の液滴吐出ヘッド5の収容室24内に収容された光硬化型インクの温度を測定する。光硬化型インクの温度測定は、例えば液滴吐出ヘッド5のノズルプレート21に熱電対46を接続させて行う。なお、光硬化型インクの温度測定は常時行われ、光硬化型インクの温度変化が検出されるようになっている。
【0058】
次に、駆動素子PZに印加する駆動波形を一定にして、光硬化型インクを被記録体15に着弾させる(図4のステップ2)。光硬化型インクは、マーキングエリアPXにならって、ストライプ配列、デルタ配列、モザイク配列等といった適宜の配列形態で着弾するのがよい。これにより、液滴吐出ヘッド5の複数のノズルNの補正前(被記録体15への吐出時)の吐出状態と、補正後(マガジンPへの吐出時)の吐出状態と、が確実に整合するようになる。
【0059】
また、光硬化型インクを被記録体15に着弾させる際は、複数回に分けて着弾させるのがよい。具体的には、先ず、第1のインクを被記録体15上の所定の領域に着弾させる。次に、第2のインクを第1のインクの着弾されていない領域に着弾させる。これにより、インクを被記録体15へ複数回繰り返して着弾できるので、被記録体15を無駄なく有効に利用することができる。
【0060】
次に、第1温度測定工程により測定された光硬化型インクの温度変化に基づいて、被記録体15に着弾された光硬化型インクの着弾径を測定する(図4のステップ3)。具体的には、被記録体15の上面に対向する位置に配置された着弾径計測用カメラ14により、複数のノズルNから被記録体15に吐出された光硬化型インクの着弾径を撮影する。
【0061】
着弾径計測用カメラ14によって撮影された光硬化型インクの着弾径の画像データは、解析ユニット32に出力される。光硬化型インクの着弾径の測定は、マガジンP毎、ICパッケージCA毎、スキャン(描画)毎など任意のタイミングで行う。そして、解析ユニット32よって測定された複数のノズルNにおける光硬化型インクの着弾径の測定データは制御ユニット31に出力される。
【0062】
本実施形態では、特許文献1及び2に示す、インク吐出前にインクの粘度に対応する温度を検出し、インクの低温度域及びインクの高温度域において所定の駆動波形を用いて駆動する方法に対して、インク吐出後に着弾径に基づいて吐出量を測定する方法を用いている。これにより、インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正をすることが可能となる。
【0063】
次に、駆動素子PZに印加する駆動波形を調整して光硬化型インクを被記録体15に着弾させる(図4のステップ4)。具体的には、制御ユニット31によって複数のノズルN毎に備えられた駆動素子PZに印加する駆動波形が調整される。
【0064】
図5は、駆動素子PZに印加する駆動波形を示す図である。図5(a)は、液滴吐出ヘッド5の発熱量を抑え、収容室24内の収容された光硬化型インクの温度上昇を抑える第1駆動波形Waを示す図である。図5(b)は、液滴吐出ヘッド5の発熱量を増加し、収容室24内の収容された光硬化型インクの温度を上昇させる第2駆動波形Wbを示す図である。
【0065】
なお、図5(a)及び図5(b)において、横軸は時間、縦軸は電圧である。また、図5(a)において、符号Vaは第1駆動波形Waのパルス信号の波高値(電圧値)である。また、図5(b)において、符号Wb1は第2駆動波形Wbにおける第1パルス信号、符号Wb2は第2駆動波形Wbにおける第2パルス信号、符号Wb3は第2駆動波形Wbにおける第3パルス信号である。また、符号Vb1は第2駆動波形Wbにおける第1パルス信号Wb1の波高値(電圧値)、符号Vb2は第2駆動波形Wbにおける第2パルス信号Wb2の波高値(電圧値)、符号Vb3は第2駆動波形Wbにおける第3パルス信号Wb3の波高値(電圧値)である。
【0066】
図5(a)に示すように、第1駆動波形WaはノズルNから光硬化型インクの液滴Lを吐出させる1つのパルス信号からなっている。パルス信号は、電圧上昇部と、定電圧部と、電圧下降部とにより形成され、台形波となっている。そして、第1駆動波形Waのパルス信号の定電圧部の電圧Vaの値は、液滴吐出ヘッド5毎に異なる値となっている。
【0067】
図5(b)に示すように、第2駆動波形WbはノズルNから光硬化型インクの液滴Lを吐出させる第2パルス信号Wb2と、ノズルNから光硬化型インクの液滴Lを吐出させない第1パルス信号Wb1と、第3パルス信号Wb3と、の3つのパルス信号からなっている。各パルス信号は、電圧上昇部と、定電圧部と、電圧下降部とにより形成され、台形波となっている。
【0068】
第2駆動波形Wbにおける第2パルス信号Wb2の定電圧部の電圧Vb2は、第1駆動波形Waにおけるパルス信号の定電圧部の電圧Vaと略同じ値になっている(Vb2=Va)。第2駆動波形Wbにおいて、第1パルス信号Wb1の定電圧部の電圧Vb1は、第2パルス信号Wb2の定電圧部の電圧Vb2よりも小さい値になっている(Vb1<Vb2)。また、第3パルス信号Wb3の定電圧部の電圧Vb3は、第2パルス信号Wb2の定電圧部の電圧Vb2よりも小さい値になっている(Vb3<Vb2)。そして、第2駆動波形Wbの各パルス信号の定電圧部の電圧Vb1,Vb2,Vb3の値は、液滴吐出ヘッド5毎に異なる値となっている。
【0069】
複数のノズルN毎に備えられた駆動素子PZに印加する駆動波形の調整は、複数のノズルNにおける第1着弾径のばらつきを調整するように行われる。例えば、初期状態(図6中の補正前の光硬化型インクの配置状態)における光硬化型インクの着弾径が相対的に大きい領域のノズルNに対応する駆動素子PZに対して第1駆動波形Waを印加する。一方、初期状態における光硬化型インクの着弾径が相対的に小さい領域のノズルNに対応する駆動素子PZに対して第2駆動波形Wbを印加する。このようにして、駆動素子PZによって複数のノズルN間で生じている光硬化型インクの着弾径のばらつきが補正される。
【0070】
以上の工程により、複数のノズルN間で生じている光硬化型インクの吐出量のばらつきが調整される。これにより、複数のノズルNにおける光硬化型インクの吐出量のばらつきが補正される。つまり、図6(a)の初期状態(補正前)において複数のノズルN間で生じていた光硬化型インクの着弾径のばらつきを、図6(b)の補正後に示すように略平均化することができる。
【0071】
本実施形態の液滴吐出装置1によれば、温度計測ユニット34により複数のノズルNから吐出される光硬化型インクの温度が測定される。そして、光硬化型インクの温度変化に基づいて、解析ユニット32により複数のノズルNから吐出される光硬化型インクの着弾径が測定される。すると、制御ユニット31により駆動素子PZへ印加する駆動波形が調整され、複数のノズルNにおける着弾径のばらつきが調整される。つまり、制御ユニット31により複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきが補正されることになる。このため、液滴吐出ヘッド5の各ノズルNから均一な量の光硬化型インクを吐出することが可能となる。本発明の液滴吐出装置1は、特許文献1及び2のようにインク吐出前における精度の高い温度の検出を必要としない。すなわち、印刷品位に直接寄与するインク吐出後の光硬化型インクの着弾径を測定し、着弾径のばらつきを補正している。したがって、インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正をし、所望の印刷品質を得ることができる。また、サーマルチャンバーを搭載していないので、低コスト化を図ることができる。
【0072】
本実施形態の液滴吐出方法によれば、第1温度測定工程によって複数のノズルNから吐出される光硬化型インクの温度が測定される。そして、第1着弾工程の後の第1着弾径測定工程により、光硬化型インクの温度変化に基づいて、解析ユニット32により複数のノズルNから吐出される光硬化型インクの着弾径が測定される。そして、第2着弾工程により複数のノズルNにおける第1着弾径のばらつきが調整されるように各ノズルNに対応する駆動素子PZに印加する駆動波形が調整されて、光硬化型インクが被記録体15に着弾される。つまり、第2着弾工程により複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきが補正されることになる。このため、液滴吐出ヘッド5の各ノズルNから均一な量の光硬化型インクを吐出することが可能となる。本発明の液滴吐出方法は、印刷品位に直接寄与するインク吐出後の光硬化型インクの着弾径を測定し、着弾径のばらつきを補正している。したがって、インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正をし、所望の印刷品質を得ることができる。
【0073】
なお、上記液滴吐出方法においては、第2着弾工程の後に、複数のノズルNから吐出される光硬化型インクの温度を測定する第2温度測定工程と、第2温度測定工程により測定された光硬化型インクの温度変化に基づいて、被記録体15に対して複数のノズルNから吐出された光硬化型インクの第2着弾径を測定する第2着弾径測定工程と、第2着弾径のばらつきを調整するように複数の駆動素子PZに印加する駆動波形を調整して光硬化型インクを被記録体15に着弾する第3着弾工程と、を少なくとも1回有していてもよい。
【0074】
この製造方法によれば、第2着弾工程の後に、温度測定工程と着弾径測定工程と着弾工程とを複数回繰り返して行うことにより、複数のノズルNにおけるインク吐出量のばらつきが確実に調整される。このため、液滴吐出ヘッド5の各ノズルNから格段に均一な量の光硬化型インクを吐出することが可能となる。したがって、インク吐出後のインク着弾時における精度の高い補正を確実にし、所望の印刷品質を得ることができる。
【0075】
なお、本実施形態の液滴吐出装置1においては、解析ユニット32は、温度計測ユニット34により測定された光硬化型インクの温度変化に基づいて、ワークステージ16に載置された被記録体15に対して複数のノズルNから吐出された光硬化型インクの着弾径を測定する機能を有しているが、これに限らない。例えば、解析ユニット32は、光硬化型インクの着弾径に替えて光硬化型インクの着弾面積を測定する機能を有していてもよい。
【0076】
なお、本実施形態の液滴吐出方法においては、駆動素子PZに印加する駆動波形を調整する工程において、駆動波形のパルス信号が台形波となっているが、これに限らない。例えば、駆動波形のパルス信号が台形波に替えて矩形波となっていてもよい。また、駆動素子PZに印加する駆動波形の波高値(電圧値)は、液滴吐出ヘッド5毎に適宜調整することができる。
【符号の説明】
【0077】
1…液滴吐出装置、5…液滴吐出ヘッド、15…被記録体、16…ワークステージ、31…制御ユニット(制御手段)、32…解析ユニット(着弾径測定手段)、34…温度計測ユニット(温度測定手段)、PZ…駆動素子、N…ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化型インクを吐出させる複数のノズルと、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッドと、
前記複数のノズルから吐出された前記光硬化型インクを着弾させる被記録体を載置するワークステージと、
前記複数のノズルから吐出される前記光硬化型インクの温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段により測定された前記光硬化型インクの温度変化に基づいて、前記ワークステージに載置された前記被記録体に対して前記複数のノズルから吐出された前記光硬化型インクの着弾径を測定する着弾径測定手段と、
前記複数のノズルにおける前記着弾径のばらつきを調整するように前記複数の駆動素子に印加する駆動波形を調整する制御手段と、
を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
光硬化型インクを吐出させる複数のノズルと、前記複数のノズルに対応して設けられた複数の駆動素子と、を有する液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出法であって、
前記複数のノズルから吐出される前記光硬化型インクの温度を測定する第1温度測定工程と、
前記複数の駆動素子に印加する駆動波形を一定にして前記光硬化型インクを被記録体に着弾する第1着弾工程と、
前記第1着弾工程の後に、前記第1温度測定工程により測定された前記光硬化型インクの温度変化に基づいて、前記被記録体に対して前記複数のノズルから吐出された前記光硬化型インクの第1着弾径を測定する第1着弾径測定工程と、
前記第1着弾径測定工程の後に、前記複数のノズルにおける前記第1着弾径のばらつきを調整するように前記複数の駆動素子に印加する駆動波形を調整して前記光硬化型インクを前記被記録体に着弾する第2着弾工程と、
を有することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項3】
前記第2着弾工程の後に、前記複数のノズルから吐出される前記光硬化型インクの温度を測定する第2温度測定工程と、
前記第2温度測定工程により測定された前記光硬化型インクの温度変化に基づいて、前記被記録体に対して前記複数のノズルから吐出された前記光硬化型インクの第2着弾径を測定する第2着弾径測定工程と、
前記第2着弾径測定工程の後に、前記複数のノズルにおける前記第2着弾径のばらつきを調整するように前記複数の駆動素子に印加する駆動波形を調整して前記光硬化型インクを前記被記録体に着弾する第3着弾工程と、
を少なくとも1回有することを特徴とする請求項2に記載の液滴吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−260294(P2010−260294A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114213(P2009−114213)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】