説明

液滴吐出装置

【課題】インクジェット式の記録装置のキャリッジにおいて発生し、浮遊する微小な液滴(ミスト)によるキャリッジ内での電気的短絡現象を防止できるものでありながら、液滴吐出装置を小型軽量化できる構成を提供する。
【解決手段】電気回路基板30は、その片面に設けられた電気回路及び回路素子31をヘッドホルダ3内に向け、かつ電気回路及び回路素子が設けられておらず電気的に導通する部位も露出していない上面を外向きにしてヘッドホルダ3の開口部3cに固定され、ヘッドホルダ3内を気密的に閉鎖している。また、電気回路基板30と吐出ヘッドユニット4とがヘッドホルダ3内を通るフレキシブル配線部材23を介して電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出する吐出ヘッドユニットを備えた液滴吐出装置に関し、特にノズルから液滴を吐出する際に付随して発生する微小な液滴(ミスト)が吐出ヘッドユニットを備えたヘッドホルダ内へ侵入するのを防止できる構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置、例えば、特許文献1に示すインクジェット式の記録装置では、液滴(インク滴)を吐出する吐出ヘッドユニット(記録ヘッド)が箱状のヘッドホルダの下面側に設けられており、ヘッドホルダ内の上部側には、電気回路基板が配置され、この電気回路基板の上面側にて、カバーがヘッドホルダの開口部を覆うように閉止させている。
【0003】
ところで、記録ヘッドのノズルからインク滴を吐出する際に、記録用紙上にドットを形成する主たるインク滴に付随して、微細な霧状のインク滴すなわちインクミストを発生させる。このインクミストは、狭い隙間でも通過できるため、上記カバーとヘッドホルダの開口部との隙間から入り込み、電気回路基板の導電部にインクミストが付着すると、イオン・マイグレーションを起こし、電気的短絡が発生するおそれがある。
【0004】
この現象を回避するため、特許文献1では、インクミストの侵入を遮断する遮断部材を、電気回路基板における電気回路形成領域を囲む周縁と、カバーの裏面との間に形成される隙間に介在させることが開示されている。
【特許文献1】特開2006−123246号公報(図2〜図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、記録装置においては、近年、記録の高速化や高密度化が求められ、液体を吐出するノズル数が増加し、吐出ヘッドユニットの大型化の傾向に伴い、ヘッドホルダも大型になる傾向がある。従って、特許文献1のようにカバーを設けると、当該カバーも大きくする必要があり、これらを搭載するキャリッジの重量が大きくなると、キャリッジの移動の高速化(記録の高速化)のために、キャリッジモータも大型になるというように、記録装置全体が大型化し重量も大きくなって、製造コストも高くなるという問題を生じる。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するものであり、液滴吐出装置において発生し、浮遊する微小な液滴(ミスト)による電気回路基板の短絡現象を防止できるものでありながら、液滴吐出装置を小型軽量化できる構成を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明における液滴吐出装置は、液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッドユニットと、前記吐出ヘッドユニットに接続される電気回路及び回路素子が設けられ、片面に、前記電気回路及び回路素子に対し電気的に絶縁した表面を有する電気回路基板と、前記吐出ヘッドユニット及び前記電気回路基板を支持する箱状のヘッドホルダとを備えた液滴吐出装置であって、前記吐出ヘッドユニットと前記電気回路基板とが前記ヘッドホルダ内で電気的に接続され、前記吐出ヘッドユニットが前記ヘッドホルダに、前記ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定され、前記ヘッドホルダの開口部には、前記電気回路基板が、前記電気回路及び回路素子に対し電気的に絶縁した表面を前記ヘッドホルダ外に向けた状態で、前記ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液滴吐出装置において、前記吐出ヘッドユニットと前記電気回路基板とを接続する第1配線部材をさらに備え、前記第1配線部材自体と、その第1配線部材の前記吐出ヘッドユニットと接続する端部及び前記電気回路基板と接続する端部を、それぞれ前記ヘッドホルダ内に配置したものである。
【0009】
請求項3に記載の発明における液滴吐出装置は、液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッドユニットと、前記吐出ヘッドユニットに接続される電気回路及び回路素子が設けられ、片面に、前記電気回路及び回路素子に対し電気的に絶縁した表面を有し、その片面と反対側の面に前記電気回路及び回路素子と電気的に接続した複数のコネクタが設けられている電気回路基板と、前記吐出ヘッドユニット及び前記電気回路基板を支持する箱状のヘッドホルダとを備えた液滴吐出装置であって、前記吐出ヘッドユニットが前記ヘッドホルダに、前記ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定され、前記複数のコネクタのうち少なくとも1つのコネクタに接続した第1配線部材を介して前記吐出ヘッドユニットと電気回路基板とが前記ヘッドホルダ内で電気的に接続され、前記複数のコネクタのうち他のコネクタに接続した第2配線部材を介して前記ヘッドホルダ外の装置と電気回路基板とが電気的に接続され、前記ヘッドホルダの開口部には、前記電気回路基板が、前記コネクタの設けられた側の面を前記ヘッドホルダ内に向けた状態で、前記ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の液滴吐出装置において、前記電気回路基板は前記ヘッドホルダに対して着脱可能に設けられているものである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の液滴吐出装置において、前記電気回路基板には、前記片面と反対側の面に、前記電気回路及び回路素子が、前記片面へそれらと電気的に導通した部位が露出することなく設けられているものである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の液滴吐出装置において、前記電気回路基板における前記片面には、前記電気回路及び回路素子と電気的に導通した部位を覆って電気絶縁性材料による膜が形成され、その絶縁膜の表面によって前記片面の絶縁された表面が形成されているものである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の液滴吐出装置において、前記ヘッドホルダ内には、前記吐出ヘッドユニットに供給する液体を収容する液体タンクが配置されているものである。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の液滴吐出装置において、前記ヘッドホルダと前記電気回路基板との互いに対面する箇所には、前記電気回路基板における電気回路及び回路素子が設けられた領域を囲むように、シール体が介挿されているものである。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の液滴吐出装置において、前記電気回路基板と前記ヘッドホルダ外の装置とを電気的に接続する第2配線材が、前記ヘッドホルダ内から、前記ヘッドホルダと前記電気回路基板との間の前記シール体を介して外部へ引き出されているものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、箱状のヘッドホルダの開口部に、電気回路基板が、電気回路及び回路素子に対し電気的に絶縁した表面をヘッドホルダ外に向けた状態で、ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定されているから、ノズルから吐出され且つ吐出対象物に着弾せずに浮遊する微小な液滴(ミスト)はヘッドホルダ内に侵入することがない。またヘッドホルダ外に露出する電気回路基板の表面が電気回路及び回路素子に対し電気的に絶縁されているので、微小な液滴(ミスト)による電気的短絡事故を無くすることができる。しかも、電気回路基板がヘッドホルダの開口部を塞ぐカバーの役割も果たすことができるから、部品点数を少なくして、軽量化及び製造コストの低減にも寄与できるという効果を奏する。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、前記吐出ヘッドユニットと前記電気回路基板とを接続する第1配線部材をさらに備え、前記第1配線部材自体と、その第1配線部材の前記吐出ヘッドユニットと接続する端部及び前記電気回路基板と接続する端部を、それぞれ前記ヘッドホルダ内に配置したものであるので、それらの接続部に微小な液滴(ミスト)が侵入せず、電気的短絡事故を無くすることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、ヘッドホルダの開口部に、電気回路基板が、コネクタの設けられた側の面をヘッドホルダ内に向けた状態で、前記ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定されているので、ノズルから吐出され且つ吐出対象物に着弾せずに浮遊する微小な液滴(ミスト)はヘッドホルダ内に侵入することがない。またヘッドホルダ外に露出する電気回路基板の表面が電気回路及び回路素子に対し電気的に絶縁されているので、微小な液滴(ミスト)による電気的短絡事故を無くすることができる。そして、電気回路基板がヘッドホルダの開口部を塞ぐカバーの役割も果たすことができるから、部品点数を少なくして、軽量化及び製造コストの低減にも寄与できるという効果を奏する。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、気密的に閉鎖・固定する電気回路基板がヘッドホルダに対して着脱可能であるので、吐出ヘッドユニットと電気回路基板との接続を行って電気回路基板をヘッドホルダへ固定することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、電気回路基板には、片面と反対側の面に、電気回路及び回路素子が、片面へそれらと電気的に導通した部位が露出することなく設けられているので、電気回路基板をヘッドホルダに固定した際に、電気回路、回路素子及びそれらと電気的に導通した部位が外部に露出することがなく、微小な液滴(ミスト)による電気的短絡事故を無くすることができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、電気回路基板をヘッドホルダに固定した際に、外部に露出する電気回路基板の片面に電気回路や回路素子に導通する部位が存在しても、その電気回路基板の片面を電気的絶縁性材料による膜にて覆うことで、微小な液滴(ミスト)による電気的短絡事故を無くすることができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、ヘッドホルダ内に吐出ヘッドユニットに供給する液体を収容する液体タンクが配置されるものにおいて、ヘッドホルダの開口部が電気回路基板により閉鎖され、微小な液滴(ミスト)がヘッドホルダ内に侵入するのを防ぐことができる。
【0023】
請求項8に記載の発明によれば、前記ヘッドホルダと前記電気回路基板との互いに対面する箇所には、前記電気回路基板における電気回路及び回路素子が設けられた領域を囲むように、シール体が介挿されているものであるから、電気回路基板によるヘッドホルダの閉鎖箇所の気密性が向上し、微小な液滴(ミスト)がヘッドホルダ内に侵入するのを防ぐことができるという効果を奏する。
【0024】
請求項9に記載の発明によれば、電気回路基板とヘッドホルダ外の装置とを電気的に接続する第2配線材が、ヘッドホルダ内から、ヘッドホルダと電気回路基板との間のシール体を介して外部へ引き出されているから、第2配線材の引き出し箇所から微小な液滴(ミスト)がヘッドホルダ内に侵入するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の基本的な実施形態を説明する。図1は、本発明の液滴吐出装置としてのインクジェット式の記録装置1の概略平面図である。この記録装置1は、単独のプリンタ装置に適用しても、あるいは、ファクシミリ機能やコピー機能等の複数の機能を備えた多機能装置のプリンタ機能(記録部)に適用してもよい。
【0026】
記録装置1には、図1及び図2に示すように、キャリッジ2を構成する箱状のヘッドホルダ3が備えられている。このヘッドホルダ3の下面側には、吐出ヘッドユニット4がそのノズル(図示せず)を下向きに露出させて搭載されている。キャリッジ2は、第1ガイド部材5及び第2ガイド部材6に主走査方向(Y軸方向)に往復移動可能に支持され、キャリッジモータ8に連結された駆動プーリ9と、従動プーリ10とに掛け渡されたタイミングベルト11によってY軸方向に沿って往復移動する。
【0027】
記録媒体である用紙は、キャリッジ2の下方に配置された平板状のプラテン7の上面に載った状態で、主走査方向(Y軸方向)に直交する副走査方向(X軸方向)に搬送される。
【0028】
記録装置本体12内には、交換式のインクカートリッジ13が静置されており、ここではインク色の数に応じて、ブラックインク用、シアンインク用、マゼンタインク用、イエローインク用の4つのインクカートリッジ13が備えられている。各インクカートリッジ13のインクは、可撓性を有する樹脂製のインク供給チューブ15を介して、それぞれ独立してキャリッジ2の後述する液体タンク24に供給される。
【0029】
図1及び図2に示すように、記録装置1の装置本体12内で、用紙のY軸方向の幅(記録領域)よりも外側における一方の側(図1の右側)には、メンテナンスユニット16が設けられている。メンテナンスユニット16は、後述する吐出ヘッドユニット4の吐出機能を回復させるための回復動作(パージング)を行う。
【0030】
次に、キャリッジ2の構成について説明すると、図4及び図5に示すように、上面が開放された箱状のヘッドホルダ3の下面に吐出ヘッドユニット4が固定され、ヘッドホルダ3内にて吐出ヘッドユニット4の上側に液体タンク24が配置され、さらにその上側であって、ヘッドホルダ3の上面を塞ぐように、電気回路基板30が配置されている。ヘッドホルダ3は合成樹脂製の射出成形品であり、4方の側壁3aと底板3bとからなり、上面開口部3cを有する。
【0031】
電気回路基板30の一方の扁平面30a(図3では下面)には、その面30aに沿って公知のプリント配線により電気回路(図示せず)が形成され、その電気回路に接続して、バイパス用のコンデンサ、抵抗器等の複数の回路素子31、第1コネクタ34及び第2コネクタ35が設けられている。電気回路基板30自体は、ガラス繊維とエポキシ樹脂等からなる電気絶縁性材料にてほぼ剛体の板状に構成されている。電気回路基板30の上記と反対側の面30b(図3では上面)は、上記電気回路、回路素子31及びコネクタ34,35と電気的に導通する部位を露出しない、つまりそれらの電気回路及び回路素子31に対して電気的に絶縁された表面とされている。
【0032】
なお、電気回路基板30の下面30aの電気回路上に導電性ろう材、導電性接着剤を介して回路素子31及びコネクタ34,35を載せて接合することで、電気回路基板30に貫通孔をあけることなく、つまり上記のように上面30bに導電部を露出させることのない構成とすることができる。また、回路素子31の端子部を電気回路に接続する際に、回路素子31の端子部を電気回路基板30にあけた貫通孔を通して上面30bに露出させるものでは、その露出した部位を覆って耐インク性を有する電気絶縁性材料による絶縁膜47を形成するようにしても良い。電気回路が上面30bに形成されたものでは、その電気回路全体を覆って絶縁膜47を形成するようにしても良い。これらの場合、絶縁膜47の表面が上面30bの絶縁された表面を形成することになる。
【0033】
そして、電気回路、回路素子31及び及びコネクタ34,35がヘッドホルダ3の内部に向くように、つまり下面30aを下向きにした電気回路基板30が、ヘッドホルダ3の上面開口部3cを塞ぐように装着される。このとき、ヘッドホルダ3の側壁3aの上端面3dと電気回路基板30の下面30aとの互いに対面する箇所、さらに詳細にはヘッドホルダ3の開口部周囲と電気回路基板30の外周との間には、その全周に沿って平面視枠状のシール体33が介挿され、電気回路基板30がねじ32等の締結手段にてヘッドホルダ3に着脱可能に固定されている。このように、ヘッドホルダ3内をその上方の外部空間に対して閉鎖するように、電気回路基板30がヘッドホルダ3の開口部に気密的に固定されている。
【0034】
吐出ヘッドユニット4は、特開2005−322850号公報に記載の公知のものと同様で、図3に示すように、下面側にノズルを開口し且つ上面側に圧力室を有する平板状のキャビティ部21と、アクチュエータ22とを積層して構成されている。アクチュエータ22の上面には、第1配線部材としての可撓性を有するフレキシブル配線材23が接続され、さらに、アクチュエータ22と重なる上面に金属板からなる放熱板25が積層接合されている。
【0035】
キャビティ部21は、複数の薄いプレートを積層して形成されており、その内部にはインク供給路が形成されている。インク供給路は、インク取入口21aから液体タンク24内のインクの供給を受け、多数のノズルにインクを分配する。
【0036】
アクチュエータ22は、図3に示すように、全てのノズルにわたる大きさを有する扁平形状で且つその扁平な方向と直交する方向に積層された複数のセラミックス層と、この複数のセラミックス層間に配置された複数の内部電極とから構成されている。
【0037】
内部電極は、多数のノズルに対応する位置毎に、セラミックス層を挟む対の電極として構成され、その一方は、アクチュエータ22の最上面に形成された個別外部電極22aに、他方はコモン外部電極22bにそれぞれ接続されている。これら個別外部電極22a、コモン外部電極22bはそれぞれフレキシブル配線材23の配線パターンに接続されている。
【0038】
このように電極が設けられたアクチュエータ22では、公知のように個別外部電極とコモン外部電極との間に電圧を印加することで、内部電極に挟まれたセラミックス層の部分が伸長し対応するノズル内のインクに圧力を加え、ノズルからインク(液滴)を吐出することができる。
【0039】
ヘッドホルダ3の底板3bの下面側には、補強フレーム36を介在させて、吐出ヘッドユニット4が接着剤40にて固着されている。そのため、底板3bには、接着剤40を流し込むための貫通孔41が複数個穿設されている(図5参照)。
【0040】
なお、ヘッドホルダ3の下面には、吐出ヘッドユニット4を囲むように、記録媒体側(下側)に突出するリブ3eが設けられている。換言すれば、吐出ヘッドユニット4は、底板3bの下面側に形成された凹所の内側に配置されている。
【0041】
ヘッドホルダ3の下面(記録媒体と対向する面)側における段差(凹凸)を緩和させるために、リブ3eの内側において吐出ヘッドユニット4を囲むようにフロントフレーム37が設けられている。このフロントフレーム37は補強フレーム36の下面に接着剤にて貼着されている。
【0042】
フロントフレーム37の外周及び吐出ヘッドユニット4の外周と、ヘッドホルダ3のリブ3eの内周との間の隙間は、インクにより侵されないシリコーン樹脂等のシール38により封止されている。なお、ヘッドホルダ3の底板3bには、液体タンク24から吐出ヘッドユニット4へインク供給する液体流路管(図示せず)を挿通するための開口(図示せず)、フレキシブル配線材23を挿通するためのスリット孔42が形成されている。これらをヘッドホルダ3の下方の外部空間に対して閉鎖するように、上記のように吐出ヘッドユニット4の外周はヘッドホルダ3に気密的に固定されている。
【0043】
フレキシブル配線材23は、吐出ヘッドユニット4の上面から、ヘッドホルダ3の底板3bに穿設されたスリット孔42に挿通され、ヘッドホルダ3内に引き回される。フレキシブル配線材23の端部の端子23bは電気回路基板30の下面30aに設けられた第1コネクタ34に接続される(図5参照)。そして、電気回路基板30は、装置本体12に静置された制御装置(図示せず)から可撓性のある配線ケーブル39(図2参照、第2の配線部材)を介して駆動信号を受ける。そのため、配線ケーブル39はその端部の端子39aを電気回路基板30の下面30aに設けられた第2コネクタ35に接続し、ヘッドホルダ3の一側壁3aの上端面3dと電気回路基板30との間からシール体33を介してヘッドホルダ3の外に引き出され、制御装置に接続される。この場合、配線ケーブル39の引出部は、シール体33によってヘッドホルダ3内の気密性を確保している(図4参照)。
【0044】
なお、配線ケーブル39は、ヘッドホルダ3の側壁3aの上端面3dと電気回路基板30との間からヘッドホルダ3の外に引き出すのではなく、ヘッドホルダ3の側壁3aに穿設した貫通孔に挿通するようにしてもよい。この場合、配線ケーブル39と貫通孔との間は気密性を確保するため、シール材で閉鎖される。
【0045】
フレキシブル配線材 23の中途部には、アクチュエータ22を駆動するためのICチップ化された駆動回路素子23aが実装されている(図3及び図5参照)。駆動回路素子23aは、装置本体12内の制御装置からシリアル伝送された駆動信号を、多数のノズルに対応したパラレル信号に変換し、セラミックス層の駆動に適した電圧として出力する。
【0046】
駆動回路素子23aの熱を放熱するために、放熱体43が底板3bの上面側に図示しないピンに固定されている。駆動回路素子23aを放熱体43に熱伝導可能に密着させるように底板3bとフレキシブル配線材23との間に、ゴム状の弾性部材44が配置されている。この放熱体43の熱をヘッドホルダ3の外に導いて外気に放散するため、ヘッドホルダ3の側壁3aを貫通して放熱体43の側部43bに接続する接続部45aと側壁3aの外面に平行な放散部45bとからなる放散板45が設けられている(図5参照)。この側壁3aを貫通する部分も、気密的に閉鎖される。
【0047】
吐出ヘッドユニット4が記録動作を行うときには、ノズルから吐出対象物である用紙に向かってインクを吐出するが、用紙に着弾するインク滴に付随して、霧状の微小なインク滴(インクミスト)が発生する。このような浮遊するインクミストは、前述のように液滴吐出装置(記録装置1)のヘッドホルダ3の内部に侵入した場合、導電部分に付着すると、電気的な短絡事故を生じる。しかし、吐出ヘッドユニット4及び電気回路基板30がヘッドホルダ3に、ヘッドホルダ3内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定されているので、電気回路基板30の電気回路及び回路素子31、アクチュエータ22の外部電極22a,22b及びコネクタ34,35と配線部材23,39との接続箇所などの導電部分がインクミストに触れることがない。また、電気回路基板30がヘッドホルダ3の開口部を閉鎖する作用を兼ねているが、電気回路基板30において外部に露出する表面が電気回路及び回路素子31と電気的に絶縁されている。したがって、これらの部品や接続箇所が腐食されたり、電気的に短絡するという事故がなくなる。
【0048】
また、電気回路基板30がヘッドホルダ3に対し着脱可能であることで、電気回路基板30をヘッドホルダ3から外した状態で、コネクタ34,35と配線部材23,39の端子とを接続し、その接続箇所を上記のようにヘッドホルダ3外に露出させないで、電気回路基板30をヘッドホルダ3に固定することができる。また、その際、ヘッドホルダ3内の点検や部品交換を容易に行うことができる。好ましくは、コネクタ34,35と配線部材23,39の端子とは着脱可能に接続されることで、電気回路基板30及び配線部材23,39の交換を容易に行うことができる。
【0049】
図6及び図7は第2実施形態を示す。この実施形態では、電気回路基板30の、外部に露出する上面30bに電気回路(図示せず)や回路素子31が配置されており、この上面面30bに電気回路や回路素子31を覆うように、耐インク性を有する電気的絶縁性被膜47が設けられている。電気回路基板30の、ヘッドホルダ3内に向く下面30aには、第1配線部材としてのフレキシブル配線材 (COF) 23の端部の端子23bに接続される第1コネクタ34と、第2配線部材としての配線ケーブル39の端子39aが接続される第2コネクタ35とが設けられている。上面30bの電気回路とコネクタ34,35とは、電気回路基板30を厚さ方向に貫通する導電材により接続されている。上記電気回路は、上面30bでなく下面30aに形成することもできる。
【0050】
その他の構成は第1実施形態と同じであるので、同じ構成には同じ符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0051】
この実施形態でも、第1コネクタ34と第2コネクタ35とが、ヘッドホルダ3の内部に配置されていることになるので、インクミストがフレキシブル配線材23の端部の端子23bと第1コネクタ34との接続部や、配線ケーブル39の端子39aと第2コネクタ35との接続部に触れず、インクミストによる悪影響、つまり、部品が腐食されたり、電気的に短絡するという事故がなくなる。
【0052】
また、電気回路基板30の上面に設けた電気回路と回路素子31とがヘッドホルダ3の外面に露出しているけれども、これらの部分は耐インク性を有する電気絶縁性材料の絶縁膜47で被覆されているから、インクミストによる悪影響、つまり、部品が腐食されたり、電気的に短絡するという事故がないのである。
【0053】
上述した各実施形態では、ヘッドホルダ3の上面開口部を電気回路基板30で閉鎖しているが、ヘッドホルダ3の側壁3aに開口部を設けてその開口部を電気回路基板30で閉鎖するように構成することもできる。また、吐出ヘッドユニット4をヘッドホルダ3の側壁3aまたは上面に配置して、電気回路基板30をヘッドホルダ3の下面に配置することもできる。いずれの場合においても、電気回路基板30は、導電部分がヘッドホルダ3外に露出しないように配置される。
【0054】
また、吐出ヘッドユニット4のアクチュエータ22として圧電セラミックスだけでなく、静電気により振動板を駆動するもの、ヒータによりインクを沸騰させるものなど、公知の各構成を利用することができる。
【0055】
また、上述した各実施形態では、記録装置を例示して説明したが、本発明は、インク以外の液体、例えば液晶表示装置のカラーフィルタなどを着色する着色液を吐出する液滴吐出装置に適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の液滴吐出装置としての記録装置の概略平面図である。
【図2】液滴吐出装置による記録部の斜視図である。
【図3】吐出ヘッドユニットの分解斜視図である。
【図4】液滴吐出装置のヘッドホルダの内部を示す一部切欠き断面図である。
【図5】図4のV−V線矢視断面図である。
【図6】第2実施形態における図4に相当する断面図である。
【図7】第2実施形態における図6のVII−VII線矢視断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 記録装置
2 キャリッジ
3 ヘッドホルダ
4 吐出ヘッドユニット
21 キャビティ部
22 アクチュエータ
23 第1配線部材としてのフレキシブル配線材
24 液体タンク
30 電気回路基板
31 回路素子
32 ねじ
33 シール体
34 第1コネクタ
35 第2コネクタ
39 第2配線部材としての配線ケーブル
47 絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッドユニットと、
前記吐出ヘッドユニットに接続される電気回路及び回路素子が設けられ、片面に、前記電気回路及び回路素子に対し電気的に絶縁した表面を有する電気回路基板と、
前記吐出ヘッドユニット及び前記電気回路基板を支持する箱状のヘッドホルダとを備えた液滴吐出装置であって、
前記吐出ヘッドユニットと前記電気回路基板とが前記ヘッドホルダ内で電気的に接続され、
前記吐出ヘッドユニットが前記ヘッドホルダに、前記ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定され、
前記ヘッドホルダの開口部には、前記電気回路基板が、前記電気回路及び回路素子に対し電気的に絶縁した表面を前記ヘッドホルダ外に向けた状態で、前記ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドユニットと前記電気回路基板とを接続する第1配線部材をさらに備え、前記第1配線部材自体と、その第1配線部材の前記吐出ヘッドユニットと接続する端部及び前記電気回路基板と接続する端部を、それぞれ前記ヘッドホルダ内に配置したことを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
【請求項3】
液滴を吐出するノズルを有する吐出ヘッドユニットと、
前記吐出ヘッドユニットに接続される電気回路及び回路素子が設けられ、片面に、前記電気回路及び回路素子に対し電気的に絶縁した表面を有し、その片面と反対側の面に前記電気回路及び回路素子と電気的に接続した複数のコネクタが設けられている電気回路基板と、
前記吐出ヘッドユニット及び前記電気回路基板を支持する箱状のヘッドホルダとを備えた液滴吐出装置であって、
前記吐出ヘッドユニットが前記ヘッドホルダに、前記ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定され、
前記複数のコネクタのうち少なくとも1つのコネクタに接続した第1配線部材を介して前記吐出ヘッドユニットと電気回路基板とが前記ヘッドホルダ内で電気的に接続され、
前記複数のコネクタのうち他のコネクタに接続した第2配線部材を介して前記ヘッドホルダ外の装置と電気回路基板とが電気的に接続され、
前記ヘッドホルダの開口部には、前記電気回路基板が、前記コネクタの設けられた側の面を前記ヘッドホルダ内に向けた状態で、前記ヘッドホルダ内を外部に対して気密的に閉鎖するように固定されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
前記電気回路基板は前記ヘッドホルダに対して着脱可能に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項5】
前記電気回路基板には、前記片面と反対側の面に、前記電気回路及び回路素子が、前記片面へそれらと電気的に導通した部位が露出することなく設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項6】
前記電気回路基板における前記片面には、前記電気回路及び回路素子と電気的に導通した部位を覆って電気絶縁性材料による絶縁膜が形成され、その絶縁膜の表面によって前記片面の絶縁された表面が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項7】
前記ヘッドホルダ内には、前記吐出ヘッドユニットに供給する液体を収容する液体タンクが配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項8】
前記ヘッドホルダと前記電気回路基板との互いに対面する箇所には、前記電気回路基板における電気回路及び回路素子が設けられた領域を囲むように、シール体が介挿されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の液滴吐出装置。
【請求項9】
前記電気回路基板と前記ヘッドホルダ外の装置とを電気的に接続する第2配線材が、前記ヘッドホルダ内から、前記ヘッドホルダと前記電気回路基板との間の前記シール体を介して外部へ引き出されていることを特徴とする請求項8に記載の液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−978(P2009−978A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166615(P2007−166615)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】