説明

液滴移送装置、バルブ、記憶装置、及び表示装置

【課題】流路内の気泡の滞留をより確実に防止することが可能な液体流路構造、及び、液滴噴射装置を提供すること。
【解決手段】流路ユニット内のインク流路は、互いに異なる平面に沿ってインクが流れる圧力室16及び絞り流路20と、圧力室16と絞り流路20とを連通させる連通孔18とを含んでいる。連通孔18の中心線C3は、圧力室16の中心線C1に対して、圧力室16の幅方向にずれており、さらに、連通孔18の中心線C3は、絞り流路20の中心線C2に対しても、絞り流路20の幅方向にずれている。そのため、圧力室16及び絞り流路20の連通孔18との接続部分16a,20aにおいて渦流が発生することになり、気泡の滞留が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロウェッティング現象を利用して液滴を移送する液滴移送装置、バルブ、記憶装置、及び、表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、絶縁層の両側に電位差が生じたときに絶縁層の表面における撥液性(濡れ角)が変化する現象(エレクトロウェッティング現象)を利用して、液滴を移送する技術が知られている。例えば、特許文献1(特開2005−257569号公報)に記載の微量液滴輸送デバイスは、基板の表面に離間して設けられた2つの電極(第1の電極及び第2の電極)と、第1の電極を被覆する誘電体膜と、誘電体膜と第2の電極を一面に覆う疎水性膜(絶縁層)を備えている。この液滴輸送デバイスにおいて、2つの電極の配置領域の双方に接触しつつ、それらの間に液滴が配置された状態で、2つの電極間に電圧が印加されると、誘電体膜が設けられた第1の電極の配置領域における疎水性膜表面の濡れ角が、誘電体膜が設けられていない第2の電極の配置領域における疎水性膜表面の濡れ角よりも低下する。従って、この濡れ角の差が駆動力となり、液滴が第2の電極から第1の電極に向けて一方向に移送される。
【特許文献1】特開2005−257569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述の特許文献1に記載の微量液滴輸送デバイスは一方の電極から他方の電極へ液滴を一方向に移動させるものである。一方、このような装置の他に、2つの電極配置領域間で微小な液滴を移送する装置も様々な分野において渇望されている。その場合、2つの電極配置領域のうちの何れの領域に液滴が存在しているかを検出することができれば、その装置の利用価値は一段と高いものとなる。
【0004】
本発明の目的は、エレクトロウェッティング現象を利用して2つの領域間で液滴を移送するとともに、2つの領域のうちの何れの領域に液滴が存在しているかを検出することが可能な液滴移送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0005】
なお、以下に示す各要素に付した括弧付き符号は、その要素の例示に過ぎず、各要素を限定するものではない。
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、基材(10a)の表面(10b)に配置された第1電極(22)と、前記基材の表面において、第1電極の近傍に第1電極から所定距離離れて配置された第2電極(23)と、第1電極と第2電極とをそれぞれ覆うように配置され、その表面に存在する導電性を有する液滴(21)と前記電極(22又は23a)との間の電位差に応じて、表面における撥液性が変化する絶縁層(24)と、第2電極と共働して第2電極上に液滴が存在することを検知する第3電極(23b)とを備える液滴移送装置(20)が提供される。
【0007】
本発明の液滴移送装置によれば、第1電極と第2電極の電位を変化させることにより、これらの電極を覆う絶縁層の表面における撥液性(濡れ角)を変化させることができる。したがって、第1電極の配置領域と第2電極の配置領域との間で、撥液性の高い領域から低い領域へ液滴を移送させることができる。つまり、2つの電極と絶縁層とからなる簡単な構成により、2つの領域間における液滴の移送が可能となる。なお、本発明において「第1電極の配置領域」とは、絶縁層における、第1電極と重なる領域を意味し、「第2電極の配置領域」とは、絶縁層における、第2電極と重なる領域を意味する。
【0008】
さらに、第2電極と共働して第2電極上に液滴が存在することを検出する第3電極を備えているため、第2電極上に導電性を有する液滴が存在する場合、第2電極と第3電極の間の所定の静電容量を検出することができる。一方、第2電極上に液滴が存在しない場合は、第2電極と第3電極の間の静電容量が所定値未満の検出値しか得られない。したがって、第2電極と第3電極の間の静電容量を検出することにより、第2電極上に液滴が存在するか否かを判別することができる。その結果、第1電極と第2電極の何れの配置領域に液滴が存在しているかを判別することが可能となる。
【0009】
本発明の液滴移送装置(20)において、第1電極(22)と第2電極(23)のうちの少なくとも一方が、前記基材(10a)の表面(10b)において互いに離間して配置された少なくとも2つの分割電極(23a,23b)として分割されていてもよい。この場合、2つの分割電極上に導電性を有する液滴が存在する場合、2つの分割電極の間の所定の静電容量を検出することができる。一方、2つの分割電極上に液滴が存在しない場合は、2つの分割電極の間の静電容量が低下する。したがって、2つの分割電極の間の静電容量を検出することができるか否かにより、2つの分割電極上に液滴が存在するか否かを判別することができる。この場合、前記分割電極の一方が第3電極(23b)であってもよい。
【0010】
本発明の液滴移送装置(20)において、第1電極(22)と第2電極(23)に対してそれぞれ電位を付与する電位付与機構(25)をさらに備えてもよく、前記電位付与機構により第1電極と第2電極に対してそれぞれ異なる電位を付与し、一方の電極を覆う部分の前記絶縁層(24)の表面における撥液性を他方の電極を覆う部分よりも低下させて、第1電極と第2電極をそれぞれ覆う前記絶縁層の間で前記液滴を移送させてもよい。この場合、第1電極と第2電極に対してそれぞれ異なる電位を付与することにより、一方の電極を覆う前記絶縁層の部分の表面における撥液性を他方の電極を覆う部分よりも低下させて、第1電極の配置領域と第2電極の配置領域の間で液滴を移送させることができる。
【0011】
本発明の液滴移送装置(20)において、前記分割電極(23a,23b)は、前記分割電極が配置された領域に前記液滴(21)が移送されたときに、前記液滴が前記分割電極の双方に接触しつつ、それらの間に位置するように配置されてもよく、前記分割電極間の静電容量に基づいて、前記液滴が、第1電極が配置された領域と第2電極が配置された領域の何れの領域に存在するかを検出する液滴位置検出器(26)をさらに備えてもよい。この場合、導電性を有する液滴が、2つの分割電極の双方に接触しつつ、それらの間に存在している場合には、これら2つの分割電極と液滴の間にそれぞれ絶縁層が挟まれて静電容量が生じるが、液滴が存在していない状態ではこの静電容量は低下する。そこで、2つの分割電極間の静電容量を検出することにより、第1電極と第2電極の何れの配置領域に液滴が存在しているかを検出することが可能となる。
【0012】
本発明の液滴移送装置(20)において、第1電極(22)と第2電極(23)を覆う前記絶縁層(24)の表面(24c)に、グランド電極(27)がそれぞれ配置され得る。この場合、液滴がグランド電極に接して所定電位に保持されることにより、電極と液滴との間の電位差が安定する。したがって、液滴の移送動作を確実に行うことができる。
【0013】
本発明の液滴移送装置(20)において、第3電極(124)は前記基材(10a)の表面(10b)から離隔し且つ第2電極(123)と対向するように延在し得る。第3電極をこのように配置することにより、第2電極上に液滴が存在する場合、第2電極と第3電極の間の静電容量を検出することができる。一方、第2電極上に液滴が存在しない場合、検出される静電容量が低下する。したがって、静電容量を測定することにより、第1電極と第2電極の何れの配置領域に液滴が存在しているかを判別することができる。
【0014】
本発明の液滴移送装置(20)において、第3電極(224)は、第1電極(22)の一部及び第2電極(123)と対向するように延在し且つグランド電極として設置され得る。この場合、液滴は、第1電極上に存在する場合も、第2電極上に存在する場合も、第3電極に接触して常に所定電位に保持される。したがって、電極と液滴との間の電位差が安定するため、液滴の移送動作を確実に行うことができる。さらに、第2電極上に液滴が存在する場合、第2電極と第3電極の間の静電容量を検出することができる。一方、第2電極上に液滴が存在しない場合、所定の静電容量を検出することができない。したがって、静電容量を測定することにより、第1電極と第2電極の何れの配置領域に液滴が存在しているかを判別することができる。
【0015】
本発明の液滴移送装置(20)において、前記基材(10a)の表面(10b)の、第1電極(22)と第2電極(23)の外側の領域に、常に前記絶縁層(24)の撥液性以上に高い撥液性を有する第1撥液膜(40)が形成されてもよい。この場合、液滴の振動等により液滴が不意に電極の範囲外に移動するのを防止できる。尚、第1電極と第2電極よりも外側の領域の撥液性は、絶縁層の撥液性以上であればよい。この場合、第1電極と第2電極を覆う絶縁層自身が第1電極と第2電極の外側までさらに延びて第1撥液膜を構成している形態にし得、あるいは第1電極と第2電極の外側に絶縁層とは別の第1撥液膜が形成されてもよい。
【0016】
本発明の液滴移送装置(20)において、第1電極(22)と第2電極(23)の間における、第1撥液膜(40)が形成されていない領域の幅が局所的に狭まっていてもよい。この場合、液滴の振動等により液滴が反対側の電極に不意に移動してしまうのを防止できる。
【0017】
本発明の液滴移送装置(20)において、前記基材(10a)の表面(10b)の、第1電極(22)と第2電極(23)の間の領域に、常に前記絶縁層(24)の撥液性以上に高い撥液性を有する第2撥液膜(41)が形成されていてもよい。この場合、液滴の振動等により液滴が反対側の電極に不意に移動してしまうのを防止できる。尚、第1電極と第2電極の間の領域の撥液性は、絶縁層の撥液性以上であればよく、第1電極と第2電極を覆う絶縁層が第1電極と第2電極の間にも形成されて第2撥液膜を構成している形態にし得、あるいは第1電極と第2電極の間に絶縁層とは別の第2撥液膜が形成されてもよい。
【0018】
本発明の液滴移送装置(20)において、第2撥液膜(41)の一部が、第1電極(22)と第2電極(23)がそれぞれ配置されている領域内へ突出していてもよい。この場合、液滴の振動などにより不意に液滴が反対側の電極に移動するのを防止しつつ、2つの電極配置領域の間における液滴移送をスムーズに行うことが可能になる。
【0019】
本発明の液滴移送装置(20)は、バルブ(11)に設けられてもよい。本発明の液滴移送装置を備えたバルブにおいて、前記基材(10a)には、第1電極(22)が配置されている領域において開口する流体通路(19)が形成されてもよく、第1電極が配置された領域に前記液滴(21)が存在するときには前記液滴により前記流体通路の開口(19a)が閉止されてもよく、第2電極(23)が配置された領域に前記液滴が存在するときには前記流体通路の開口が開放されてもよい。この場合、液滴を第1電極の配置領域に移送することにより流体通路の開口を閉止し、液滴を第2電極の配置領域に移送することにより流体通路の開口を開放することができる。つまり、バルブは2つの電極と絶縁層とからなる簡単な構成の液滴移送装置を備えているため、流体通路の開閉を行うことができる。
【0020】
本発明の液滴移送装置(20)を備えたバルブ(11)は、インク(I)を収容するインク収容空間(12)と、前記インク収容空間と大気とを連通させる大気連通路(19)とを有するインクカートリッジ(5)に設けられてもよく、前記液滴(21)を第1電極(22)と第2電極(23)との間で移送することにより、前記大気連通路を開閉してもよい。この場合、インクカートリッジから供給先へインクを供給しないときには液滴を第1電極に移送して大気連通路を閉止し、インクを供給するときにのみ液滴を第2電極に移送して大気連通路を開放する。つまり、簡単な構成の液滴移送装置により、インク供給不足を生じさせることなく、インクの乾燥(増粘)を効果的に防止することができる。
【0021】
本発明の液滴移送装置(20)を備えたバルブ(11)は、記録媒体(P)に対してインク(I)を噴射するインクジェットヘッド(1)のインク噴射面(1a)を覆うキャップ(60)であって、前記インク噴射面と前記キャップとによって形成される空間(64)と、キャップの外部とを連通させる連通路(65)を有するキャップに設けられてもよく、前記液滴(21)を第1電極(22)と第2電極(23)との間で移送することにより、前記連通路を開閉してもよい。キャップがインクジェットヘッドのインク噴射面に装着されている状態では、液滴を第1電極に位置させることによりキャップの連通路を閉止してインクの乾燥を防止することができる。一方、キャップをインク噴射面に対して着脱する際は、液滴を第2電極に移送して連通路を開放して、装着時におけるキャップ内の空間の圧力変動によるノズルのメニスカス破壊を防止する。このように、簡単な構成の液滴移送装置により、インクの乾燥とメニスカス破壊を防止することができる。
【0022】
本発明の液滴移送装置(20)は、記憶装置(70)に設けられてもよい。本発明の液滴移送装置を備えた記憶装置において、前記液滴移送装置は、前記記憶装置に記憶させるデータに応じて前記液滴(21)を第1電極(22)と第2電極(23)の間で移送し得る。この場合、記憶装置に記憶させるデータに応じて、液滴を第1電極の配置領域と第2電極の配置領域の何れかに移送することができる。つまり、記憶装置は簡単な構成の液滴移送装置を備えているため、1ビットのデータを記憶することが可能である。また、第1電極と第2電極の何れの配置領域に液滴が存在しているかを検出することができるため、記憶されているデータを判別して読み出すことが可能となる。さらに、本発明の記憶装置は、通常の半導体記憶装置において用いられるシリコン基板は必須ではないため、例えば合成樹脂からなる基板を用いて、より安価に製造することができる。
【0023】
本発明の液滴移送装置(20)と、前記基材(81)の表面(81a)と対向して配置され、第1電極(22)と対応する位置に形成された透過孔(83a)を有するカバープレート(83)とを備えた表示装置(80)において、前記液滴(21)は有色であってもよく、前記液滴移送装置は、前記表示装置に表示させるデータに応じて、前記液滴を、第1電極と第2電極(23)との間で移送してもよい。この場合、有色の液滴が第1電極の位置に移送されたときには、カバープレートを透過して液滴の色が表示される。一方、液滴が第2電極の位置に移送されたときには、カバープレートにより遮られて液滴の色が表示されない。従って、簡単な構成の液滴移送装置により、所望の文字や画像等を表示させることができる。また、本発明の液滴移送装置を用いた表示装置においては、第1電極に与える電位と第2電極に与える電位とが異ならない限り、液滴は第1電極の位置、又は第2電極の位置から移動しない。つまり、同じ表示状態を維持するために、常時電力を供給する必要がない。したがって、電力を消費せずに、同じ表示状態を維持することができる。
【0024】
本発明の液滴移送装置(20)を備えた表示装置(80)において、前記液滴(21)は有色であってもよく、第1電極(22)、第1電極に対応する前記基材(81)の部分、及び、第1電極に対応する前記絶縁層(24)の部分が全て透明であってもよく、第2電極(23)、第2電極に対応する前記基材の部分、及び、第2電極に対応する前記絶縁層の部分のうち、少なくとも1つが非透過性を有してもよい。この場合、第1電極と、これに対応する基材及び絶縁層が全て透明であるため、有色の液滴が第1電極の配置領域に移送されたときには、この液滴の色が表示される。一方、第2電極と、これに対応する基材及び絶縁層の、少なくとも1つが非透過性(光を透過させない性質)を有するため、有色の液滴が第2電極の配置領域に移送されたときには、基材の電極と反対側の面から見ると、この液滴の色は表示されないことになる。従って、有色の液滴を、第1電極の位置と第2電極の位置との間で移送することにより、所望の文字や画像等を表示させることができる。
【0025】
本発明の第2の態様に従えば、バルブ(11)であって、その表面(10b)において開口する流体通路(19)を有する基材(10a)と、前記基材の表面において、前記流体通路の開口(19a)を含む領域に配置された第1電極(22)と、前記基材の表面において、第1電極の近傍に第1電極から所定距離離れて配置された第2電極(23)と、第1電極と第2電極をそれぞれ覆うように配置され、その表面に存在する導電性を有する液滴(21)と前記電極との間の電位差に応じて、表面における撥液性が変化する絶縁層(24)とを備え、第1電極が配置された領域に前記液滴を移送することにより前記流体通路の開口を閉止するとともに、第2電極が配置された領域に前記液滴を移送することにより前記流体通路の開口を開放するバルブが提供される。
【0026】
本発明のバルブによれば、第1電極と第2電極の電位を変化させて、これらの電極を覆う絶縁層の表面における撥液性(濡れ角)を変化させることにより、第1電極の配置領域と第2電極の配置領域との間で液滴を移送する。そして、液滴を第1電極の配置領域に移送することにより流体通路の開口を閉止し、一方、液滴を第2電極の配置領域に移送することにより流体通路の開口を開放する。つまり、2つの電極と絶縁層とからなる簡単な構成により、流体通路の開閉を行うことができる。
【0027】
本発明によれば、本発明のバルブ(11)を備えるインクカートリッジ(5)が提供される。この場合、本発明のバルブによって、インクカートリッジの大気連通孔を開閉することができる。したがって、インクカートリッジから供給先へインクを供給しないときには大気連通孔を閉止し、インクを供給するときには開放することにより、インクの乾燥を効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の第1実施形態について説明する。この第1実施形態は、インクカートリッジの大気連通孔開閉用バルブに本発明を適用した一例である。
【0029】
まず、インクカートリッジ5が装着されるインクジェットプリンタ100について簡単に説明する。図1に示すように、インクジェットプリンタ100は、図1の左右方向に移動可能なキャリッジ2と、このキャリッジ2に設けられて記録用紙Pに対してインクを噴射するシリアル型のインクジェットヘッド1と、記録用紙Pを図1の前方へ搬送する搬送ローラ3と、プリンタ100の各部の制御を行う制御装置4(図4参照)等を備えている。
【0030】
インクジェットヘッド1は、インクを貯留するインクカートリッジ5とチューブ6を介して接続される。そして、このインクジェットヘッド1は、キャリッジ2と一体的に左右方向へ移動して、その下面に配置されたノズル(図示省略)から記録用紙Pに対してインクを噴射して所望の文字や画像等を記録する。また、インクジェットヘッド1により画像等が記録された記録用紙Pは、搬送ローラ3により前方へ排出される。
【0031】
次に、インクカートリッジ5について説明する。図2に示すように、インクカートリッジ5は、インク収容空間12を有するカートリッジ本体10と、インク収容空間12と大気とを連通させる大気連通孔19を開閉するバルブ11とを備えている。
【0032】
カートリッジ本体10は、インクの濡れ性に優れる合成樹脂材料(例えば、ポリプロピレン)により直方体形状に形成されている。また、このカートリッジ本体10の内部にはインクIを収容するインク収容空間12と、このインク収容空間12の上部と連通する大気導入路13が形成されている。より具体的には、インク収容空間12と大気導入路13は、カートリッジ本体10の底面から天井面付近まで延びる隔壁14により隔てられており、隔壁14の上端とカートリッジ本体10の天井面との間の隙間15を介して連通している。
【0033】
インク収容空間12は、カートリッジ本体10の底壁10aに貫通状に形成されたインク供給孔16に連通している。また、このインク供給孔16は、シール部材17を介してインクジェットプリンタ100のインク供給管18に接続されている。つまり、インク収容空間12内のインクIは、インク供給孔16及びインク供給管18を介してインクジェットヘッド1に供給される。
【0034】
大気導入路13は、カートリッジ本体10の底壁10aを貫通する大気連通孔19(流体通路、大気連通路)に連通している。そのため、インク収容空間12のインクIが排出される(インクジェットヘッド1へ供給される)際に、大気連通孔19及び大気導入路13を介して、大気がインク収容空間12の上部に導入される。尚、この大気連通孔19は、インク収容空間12内のインクIの乾燥及び増粘を極力防止するために、インクジェットプリンタ100の使用時(インクジェットヘッド1のインク噴射動作時)にのみバルブ11により開放され、それ以外の状態では閉止される。これについては、次のバルブ11の説明と合わせて後ほど詳しく説明する。
【0035】
次に、バルブ11について説明する。このバルブ11は、カートリッジ本体10の底壁10aの内側の面(上面)において、大気連通孔19の上端開口19aと重なる(開口19aを塞ぐ)位置と、上端開口19aからずれた位置の、2つの位置の間で導電性を有する液滴21を移送する液滴移送部20(液滴移送装置)を備えている。そして、液滴移送部20が2つの位置の間で液滴21を移送することにより、大気連通孔19の開閉状態を切り替えるように構成されている。また、液滴移送部20の上方には、導電性を有する液滴21にインクミストが直接降りかかるのを防止する保護部28が設けられている。
【0036】
ここで、導電性を有する液滴21としては、例えば、水や、水にグリセリン等を溶かした水溶液等の液滴21を使用できる。あるいは、イオンのみからなるイオン性液体(常温溶融塩)を使用することもできる。このイオン性液体は、一般的に、不揮発性であることから、大気に長期間さらされていても蒸発しにくいという長所がある。
【0037】
図3(a),3(b)に示すように、液滴移送部20は、合成樹脂材料からなるカートリッジ本体10の底壁10a(基材)の上面の、大気連通孔19の上端開口19aを含む領域に配置された第1電極22と、この第1電極22と同じく底壁10aの上面に、第1電極22の近傍に所定の間隔で配置された第2電極23と、底壁10aの上面において第1電極22と第2電極23の両方を完全に覆うように形成された絶縁層24を有する。
【0038】
第1電極22は、略正方形の平面形状を有する。また、平面視で、この第1電極22のほぼ中心部に大気連通孔19の上端開口19aが位置している。従って、第1電極22の配置領域に液滴21が存在しているときには、液滴21により大気連通孔19が確実に塞がれることになる(図6(a),6(b)参照)。なお、本発明において「第1電極の配置領域」とは、絶縁層における第1電極と重なる領域を意味する。本実施形態において、第1電極22の一辺の長さは約1〜2mmであり、上端開口19aの直径は約0.3mmである。尚、液滴21が大気連通孔19に流れ込まないように、大気連通孔19の内面の濡れ角は90度以上になっていることが好ましい。
【0039】
また、第2電極23も、第1電極22と同様に略正方形の平面形状を有し、第1電極22の図3(a)における右側に所定の間隔で配置されている。さらに、この第2電極23は、互いに離間して配置された同一形状の2つの分割電極23a(第2電極),23b(第3電極)に分割されている。これら2つの分割電極23a,23bは、第1電極22の重心と第2電極23の重心を通る直線Lに関して対称に配置されている。なお、2つの分割電極23a,23bは、図26(a),26(b)に示すように、第1電極22と第2電極23とが配置される方向と同じ方向に配置されてもよい。つまり、第2電極23は、第1電極22と第2電極23とが配置される方向に対して直交する方向に分割されていてもよい。本実施形態において、第2電極23の一辺の長さは約1〜2mmである。
【0040】
そして、インクカートリッジ5がインクジェットプリンタ100に装着された状態では、第1電極22と、第2電極23の2つの分割電極23a,23bは、インクジェットプリンタ100に設けられた電位付与部25(電位付与機構、図4参照)に独立して接続されて、電位付与部25からこれらの電極22,23(23a,23b)に対して所定の電位がそれぞれ付与される。但し、電位付与部25は、第2電極23を構成する2つの分割電極23a,23bに対しては同じ電位を同時に付与する。
【0041】
絶縁層24は、フッ素系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂等からなる比較的撥液性の高い薄膜である。そして、絶縁層24は、カートリッジ本体10の底壁10aの内面の第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域を含む所定領域の全面に形成されている。即ち、図3(a),3(b)に示すように、絶縁層24は、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域に加え、さらに、第1電極22及び第2電極23の外側の領域24aにも形成され(第1撥液膜)、さらに、第1電極22と第2電極23の間の領域24bにも形成されている(第2撥液膜)。なお、本発明において「第2電極の配置領域」とは、絶縁層における、第2電極と重なる領域を意味する。
【0042】
この絶縁層24の表面に導電性を有する液滴21が存在する状態で、液滴21と電極(第1電極22又は第2電極23)との間に電位差が生じたときには、その電位差が大きいほど絶縁層24の表面における撥液性(濡れ角)が低下する(エレクトロウェッティング現象)。
【0043】
そこで、電位付与部25は、プリンタ100の制御装置4(バルブ制御部31)からの指令に基づいて、第1電極22と第2電極23に対してそれぞれ異なる電位を付与するように構成されており、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の間で絶縁層24の撥液性を異ならせることにより、2つの領域の間で液滴21を移送する。
【0044】
より具体的に説明すると、電位付与部25は、第1電極22と第2電極23のうち、一方にグランド電位ではない所定電位を付与するとともに、他方にグランド電位を付与する。すると、所定電位が付与された一方の電極を覆う絶縁層24の部分の表面における撥液性が、グランド電位が付与された他方の電極を覆う部分よりも低下し、他方の電極の配置領域から一方の電極の配置領域へ液滴21が移動する。
【0045】
尚、図3(a),3(b)に示すように、第1電極22と第2電極23を覆う絶縁層24の部分には2つのグランド電極27がそれぞれ配置されており、これら2つのグランド電極27は常にグランド電位に保持されている。そして、第1電極22の配置領域、又は、第2電極23の配置領域に存在する液滴21は、グランド電極27に接触することから、液滴21の電位はグランド電位に保持されて変動することがない。
【0046】
ところで、第2電極23の2つの分割電極23a,23bは、図4に示す液滴位置検出部26(液滴位置検出器)に接続されている。液滴位置検出部26は、2つの分割電極23a,23bの間の静電容量を検出する。図3(a)に示すように、2つの分割電極23a,23bは、第1電極22の重心と第2電極23の重心を通る直線Lに関して対称に配置されている。この場合、第1電極22の配置領域から第2電極23の配置領域へ液滴21が移送されると、この液滴21は、2つの分割電極23a,23bを跨ぐように位置する、すなわち、2つの分割電極23a,23bに接触しつつ、それらの間に位置することになる(図9(a),9(b)参照)。このとき、分割電極と導電性を有する液滴21と、これらの間に挟まれた絶縁層24(誘電体)とから1つのコンデンサが構成される。即ち、2つの分割電極23a,23bと絶縁層24と液滴21とからなる系は、図5に示すように、直列接続された2つのコンデンサC1,C2からなる回路で表すことができる。
【0047】
つまり、第2電極23の配置領域に液滴21が存在する場合には、液滴位置検出部26により2つの分割電極23a,23bの間にコンデンサC1,C2の静電容量(例えば、フッ素系樹脂からなる絶縁層24の厚さが0.5μmの場合には、40nF程度)が検出される。一方、液滴21が第2電極23の配置領域にない場合(第1電極22の配置領域に位置する場合)には、液滴21が第2電極23の配置領域に位置する場合と比べて、液滴位置検出部26により検出される静電容量は、2つの分割電極23a,23bの間の距離に依存して低くなるかゼロになる。
【0048】
従って、本実施形態では、液滴位置検出部26は、検出された2つの分割電極23a,23b間の静電容量に基づいて、第1電極22と第2電極23の何れの領域に液滴21が存在しているかを検出することができるように構成されている。より具体的には、液滴位置検出部26は、静電容量の検出値がある所定の値以上である場合には、液滴21が第2電極23の配置領域に存在しており、大気連通孔19が開放されていると判定する。一方、静電容量の検出値が所定の値未満(例えば、0に近い値)である場合には、液滴21が第2電極23の配置領域に存在しておらず(第1電極22の配置領域に存在しており)、大気連通孔19が閉止されていると判定する。即ち、2つの分割電極は、共働して液滴の存在を検知するセンサとして機能する。
【0049】
次に、液滴移送部20の液滴移送動作について図6(a)〜図10(b)を参照して説明する。尚、図6(a)〜図10(b)において、“+”は電極に所定電位が付与されていることを示し、“GND”はグランド電位が付与されていることを示す。
【0050】
図6(a),6(b)に示すように、第1電極22の配置領域に液滴21が存在している状態では、液滴21により大気連通孔19が塞がれて閉止されている。また、第1電極22と第2電極23(2つの分割電極23a,23b)にはそれぞれグランド電位が付与されており、液滴21はその濡れ角が高い状態となって、第1電極22の配置領域内に収まっている。また、液滴21はグランド電極27に接触しており、グランド電位に保持されている。なお、液滴21の直径は、第1電極22、及び第2電極23からはみ出さない大きさであればよく、本実施形態においては、約1〜2mmである。
【0051】
図6(a),6(b)の状態から、液滴21を第2電極23の配置領域に移送する場合には、まず、図7(a),7(b)に示すように、電位付与部25により第1電極22に所定電位が付与される。すると、所定電位が付与された第1電極22とグランド電位に保持された液滴21との間に電位差が生じるため、第1電極22の配置領域における絶縁層24の撥液性(液滴21の濡れ角)が低下し、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の間まで液滴21が濡れ広がる。
【0052】
次に、図8(a),8(b)に示すように、電位付与部25により、第1電極22の電位が所定電位からグランド電位に切り替えられると同時に、第2電極23の電位がグランド電位から所定電位に切り替えられる。すると、第1電極22の配置領域における絶縁層24の撥液性が高くなると同時に、第2電極23の配置領域における絶縁層24の撥液性が低下する。そのため、第1電極22の配置領域から第2電極23の配置領域との間の領域まで濡れ広がっていた液滴21が、撥液性が低い第2電極23側へ移動し、図9(a),9(b)に示すように、大気連通孔19が開放される。
【0053】
そして、液滴21が第2電極23の配置領域へ完全に移動すると、図10(a),10(b)に示すように、電位付与部25により、第2電極23の電位が所定電位からグランド電位に切り替えられる。すると、第2電極23の配置領域の撥液性が高くなり、液滴21の濡れ角が大きくなって、液滴21が第2電極23の配置領域内に収まった状態となる。
【0054】
逆に、図10(a),10(b)に示すように、第2電極23の配置領域に液滴21が存在しており、大気連通孔19が開放されている状態から、電位付与部25により、第1電極22に所定電位が付与されると同時に、第2電極23にグランド電位が付与されると、液滴21が第2電極23の配置領域から第1電極22の配置領域へ移動し、図6(a),6(b)に示すように、液滴21により大気連通孔19が閉止される。
【0055】
次に、制御装置4を中心とするインクジェットプリンタ100の電気的構成について、図4のブロック図を参照して説明する。制御装置4は、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、インクジェットプリンタ100の各部の制御を行うためのプログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)、CPUで処理されるデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等を備えている。また、図4に示すように、制御装置4はインクジェットヘッド1のインク噴射動作を制御するヘッド制御部30と、バルブ11の開閉動作を制御するバルブ制御部31とを有する。
【0056】
ヘッド制御部30は、PC33から入力された印字データに基づいてインクジェットヘッド1を制御して記録用紙Pに対してインクを噴射させ、記録用紙Pに所定の文字や画像等を記録させる。
【0057】
また、バルブ制御部31は、インクジェットヘッド1のインク噴射動作が行われる場合にのみ大気連通孔19を開放し、それ以外では大気連通孔19を閉止するように、バルブ11の開閉動作を制御する。
【0058】
より具体的に説明すると、図11に示すように、大気連通孔19が閉止されている状態で、バルブ制御部31は、PC33から印字指令が入力されたときには、インクジェットヘッド1のインク噴射動作が行われる前に、電位付与部25に大気連通孔19を開放する信号を出力する。このとき、電位付与部25は、第1電極22にグランド電位を付与するとともに、第2電極23に所定電位を付与する。すると、図12に示すように、第1電極22から第2電極23へ液滴21が移送され、大気連通孔19が開放される。
【0059】
また、記録用紙Pへの記録が完了したときには、バルブ制御部31は、電位付与部25に大気連通孔19を閉止する信号を出力する。このとき、電位付与部25は、第1電極22に所定電位を付与するとともに、第2電極23にグランド電位を付与する。すると、図11に示すように、第2電極23から第1電極22へ液滴21が移送され、この液滴21により大気連通孔19が閉止される。このように、バルブ11は、インクジェットヘッド1からインクが噴射されるときにのみ大気連通孔19を開放する。したがって、インクジェットヘッド1へのインクIの供給不足を生じさせることなく、インクの乾燥(増粘)を効果的に防止することができる。
【0060】
また、前述したように、液滴位置検出部26により、2つの分割電極23a,23bの間の静電容量が検出され、検出された静電容量に基づいて液滴21の位置(即ち、大気連通孔19の開閉状態)が検出される。そして、この検出結果は、バルブ制御部31に出力される。
【0061】
従って、バルブ制御部31は、液滴位置検出部26による検出結果により、大気連通孔19の開閉状態を監視することができる。バルブ制御部31は、監視結果に基づいて、前述した記録動作の際だけでなく、パージ動作の際にもバルブ11を制御することができる。例えば、インクカートリッジ5をインクジェットプリンタ100から外して、再度装着した場合、図示しないインクカートリッジ脱着検知器が、インクカートリッジ5がインクジェットプリンタ100から外れていた時間の長さを検知する。さらに、インクカートリッジ5が外れていた時間が所定の値を超えると、インクカートリッジ5内のインクの乾燥が進んでいると判断し、パージ動作が行われる。この際、液滴位置検出部26により、大気連通孔19が閉じているという検出結果が出力されている場合、パージを行うためには大気連通孔19を開く必要がある。したがって、バルブ制御部31は電位付与部25に、大気連通孔19を開放する信号を出力する。一方、大気連通孔19が開いているという検出結果が出力されている場合、大気連通孔19はそのままの開いた状態でパージを行えばよい。したがって、バルブ制御部31は電位付与部25に、信号を出力せず、大気連通孔19はパージが行われるまで開いている状態で維持される。また、インクカートリッジ5が外れていた時間が所定の値を超えていない場合は、パージ動作を行う必要がない。したがって、液滴位置検出部26により、大気連通孔19が開いているという検出結果が出力されている場合、バルブ制御部31は電位付与部25に、大気連通孔19を閉止する信号を出力する。一方、大気連通孔19が閉じているという検出結果が出力されている場合、バルブ制御部31は電位付与部25に信号を出力せず、大気連通孔19は次の記録動作時、又はパージ時まで閉じた状態で維持される。
【0062】
以上説明した第1実施形態によれば次のような効果が得られる。第1電極22と第2電極23に異なる電位を付与することにより、これら電極22,23を覆う絶縁層24の表面における撥液性(濡れ角)を異ならせることで、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域との間で、撥液性の高い領域から低い領域へ液滴21を移送させることができる。つまり、2つの電極22,23と絶縁層24とからなる簡単な構成の液滴移送部20により、大気連通孔19を開閉することが可能となる。また、絶縁層24の、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域に、グランド電位に保持されたグランド電極27がそれぞれ配置されているため、液滴21の電位が常にグランド電位に保持される。従って、電極22,23と液滴21との間の電位差が安定するため、液滴21の移送動作を確実に行うことができる。
【0063】
さらに、第2電極23が、互いに離間して配置された2つの分割電極23a,23bに分割されているため、液滴位置検出部26により、2つの分割電極23a,23bの間の静電容量に基づいて、第1電極22と第2電極23の何れの配置領域に液滴21が存在しているかを検出することができる。
【0064】
また、インクカートリッジ5の大気連通孔19を開閉するためのバルブ11に本発明を適用することにより、インクカートリッジ5からインクジェットヘッド1にインクを供給しないときには液滴21を第1電極22に移送して大気連通路19を閉止することができる。一方、インクを供給するときは、液滴21を第2電極23に移送して大気連通路19を開放することができる。つまり、簡単な構成の液滴移送部20、又はバルブ11により、インク供給不足を生じさせることなく、インクの乾燥(増粘)を効果的に防止することができる。
【0065】
次に、前述した第1実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記第1実施形態と基本的に同じ構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0066】
変更実施形態1
第1実施形態においては、第2電極23は2つの分割電極23a,23bに分割され、第1電極22とともにカートリッジ本体10の底壁10aの上面10bに配置されていた。しかし、図27(a),27(b)に示すように、単一の第2電極123が、第1電極22とともにカートリッジ本体10の底壁10aの上面10bに配置され、第2電極123とは異なる第3電極124が、底壁10aの上面10bに対して平行に、且つ第2電極123から離間して配置されてもよい。この場合、第1実施形態における分割電極の一方23a、及び他方23bはそれぞれ、本変更実施形態における第2電極123、及び第3電極124に対応する。図27(a),27(b)は、第2電極123と、第3電極124の配置関係を示すための図である。図27(a)は、液滴移送装置20の上面図であり、図27(b)は図27(a)のXXVIIB−XXVIIB線断面図である。
【0067】
この形態の液滴移送部20は、第1実施形態と同様にカートリッジ本体10の底壁10aに大気連通孔19が形成される。前記底壁10aの上面10bには、第1電極22が配置される。また、底壁10aの上面10bにおいて、第1電極22の近傍には、第1電極22から所定距離離れて単一の矩形の第2電極123が配置される。そして、第1電極22と第2電極123の両方を完全に覆うように絶縁層24が形成されている。第1電極22と第2電極123を覆う絶縁層24の部分には、2つのグランド電極27がそれぞれ配置されている。さらに、底壁10aの上面10bに対して平行に、且つ第2電極123に対向するように第3電極124が配置される。つまり、液滴移送部20を上(図27(a)の紙面上方)から見た場合、第3電極124は、第2電極123を覆うように配置されている。(図27(a)においては、第2電極123は第3電極124に完全に重なっている。)第3電極124の平面形状は、第2電極123の平面形状と同一の矩形である。第3電極124は、第2電極123とともに、図4に示す液滴位置検出部26に接続されている。液滴位置検出部26は、第2電極123と第3電極124との間の静電容量を検出する。
【0068】
第1実施形態で説明した原理に従って、第1電極22から第2電極123へ液滴21が移送されると、液滴21は第2電極123とそれに対向する第3電極124との間に存在し、双方の電極123,124に接触する。このとき、第2電極123、第3電極124、導電性液体21、及び絶縁層24により、コンデンサが構成される。したがって、第2電極123に液滴21が存在する場合には、液滴検出部26により、第2電極123、第3電極124の間に所定の静電容量が検出される。一方、液滴21が第2電極123にない場合、液滴位置検出部26により静電容量が検出されないか、検出される値が所定の値よりもかなり低い値となる。つまり、変更実施形態1によれば、静電容量を測定することにより、第2電極123上に液滴21が存在するか否かを検知することができる。また、液滴移送部20を上から見た場合、第3電極124は第2電極123を覆うように配置されているので、液滴21が第2電極123上に存在しさえすれば、第2電極123の中心から外れた位置に存在しても、第3電極124は液滴21に接触することができる。したがって、液滴21が第2電極の中心から外れた位置に存在したとしても、液滴21の存在を確実に検知することができる。なお、第1電極22、及び第2電極123上には第1実施形態と同様に絶縁層24が形成されている。したがって、第3電極124の第2電極123と対向する面に、絶縁層24が形成されていなくても、第1電極22と第2電極123に異なる電位を付与することにより、第1電極22が配置された領域と第2電極123が配置された領域との間で、液滴21を移動させることができる。
【0069】
変更実施形態1において、第3電極124と絶縁層24との間隔は、第2電極123上に液滴21が存在するときに、第3電極124が液滴21に確実に接触できる間隔であればよい。また、第3電極124の平面形状は、この例では第2電極123と同様に矩形であったが、第2電極123上に液滴21が存在するときに、第3電極124が液滴21に確実に接触できる形状であれば、第2電極123の平面形状とは異なる形状であってもよい。
【0070】
変更実施形態2
変更実施形態1を変更した変更実施形態2について、図28(a),28(b)を参照して説明する。図28(a),28(b)は、変更実施形態1における第2電極123と、第3電極224の配置関係を示すための図である。図28(a)は液滴移送装置20の上面図であり、図28(b)は図28(a)のXXVIIIB−XXVIIIB線断面図である。変更実施形態2においては、2つのグランド電極27が液滴移送装置に存在していない点で、変更実施形態1とは異なる。また、液滴移送装置20を上(図28(a)の紙面上方)から見た場合、第3電極224が、大気連通孔19の上端開口19a付近まで、すなわち、第1電極123の一部を覆うように延在している点が、変更実施形態1と異なる。さらに、第3電極224は、常にグランド電位に保持されている。第3電極224は、第2電極123とともに、図4に示す液滴位置検出部26に接続されている。液滴位置検出部26は、第2電極123と第3電極224との間の静電容量を検出する。その他の構造については、変更実施形態1と同様なので、説明は省略する。
【0071】
変更実施形態2において、第3電極224は、底壁10aの上面10bに対して平行に、且つ第1電極22の一部及び第2電極123と対向するように延在する。このため、第3電極224は、液滴21が、第1電極22が配置される領域に存在する場合でも、第2電極23aが配置される領域に存在する場合でも、液滴21に接触する。また、第3電極224は常にグランド電位に保持されている。したがって、前述の実施形態におけるように、グランド電極27を別途設ける必要がない。第1実施形態で説明した原理に従って、第1電極22から第2電極123へ液滴21が移送されると、液滴21は第2電極123とそれに対向する第3電極224との間に存在し、双方の電極123,224に接触する。この結果、第2電極123、第3電極224、液滴21及び、絶縁層24とからなるコンデンサが構成される。したがって、第2電極123に液滴21が存在する場合には、液滴検出部26により、所定の静電容量が検出される。一方、液滴21が第2電極123にない場合、液滴位置検出部26により静電容量が検出されないか、極めてわずかな静電容量しか検出されない。以上説明した原理により、変更実施形態2においても、簡易な構成により第2電極23a上に液滴21が存在するか否かを検知することができる。さらに、グランド電極を別途設ける必要がないので、部品点数を減らし、よりシンプルな構造のバルブ11及び液滴移送装置20を構成することができる。したがって、製造コストを削減することができる。
【0072】
変更実施形態3
前記第1実施形態においては、第2電極23が2つの分割電極23a,23bに分割されているが、第1電極22が分割されていてもよい。また、第1電極22と第2電極23の両方が分割されていてもよい。さらに、第1電極22、第2電極23の分割数は2つである必要は特になく、3以上の複数の分割電極に分割されていてもよい。一方で、液滴21の位置を検出する必要がない場合には、第1電極22と第2電極23の両方とも分割されている必要はない。また、液滴21の電位の変動が電極22,23に付与される所定電位に対して十分に小さく、液滴21の移送にほとんど影響を及ぼさない場合には、液滴21をグランド電位に保持するためのグランド電極27を省略してもよい。
【0073】
変更実施形態4
液滴移送部は、液滴21の振動等に起因して、液滴21が、第1電極22及び第2電極23の配置領域よりも外側の領域、あるいは、反対側の電極の配置領域へ移動することを防止できることが好ましい。例えば、図13(a),13(b)に示すように、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の外側に、常に絶縁層24よりも高い撥液性を有する撥液膜40(第1撥液膜)が、2つの電極配置領域の両方を囲うように形成されていてもよい。この構成によれば、液滴21の電極配置領域外への移動が撥液膜40により防止される。尚、図13(b)に示すように、撥液膜40は絶縁層24の上に重なるように形成されてもよいし、あるいは、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の外側に絶縁層24が形成されておらず、撥液膜40が底壁10a(基材)の表面に直接形成されていてもよい。
【0074】
また、図14(a),14(b)に示すように、第1電極22と第2電極23の互いに隣接する側の端部の幅が狭まっており、第1電極22と第2電極23の間において、撥液膜40が形成されていない領域の幅が局所的に狭まった構成となっていてもよい。この構成では、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の間の、液滴21が移動する領域の幅が狭くなるため、振動等により液滴21が不意に反対側の電極に移動しにくくなる。
【0075】
あるいは、図15(a),15(b)に示すように、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の間の領域に、常に絶縁層24よりも高い撥液性を有する撥液膜41(第2撥液膜)が形成されていてもよい。この構成では、撥液膜41により、振動等により液滴が不意に反対側の電極に移動するのが防止される。また、この撥液膜41も、前述した撥液膜40(図13,図14参照)と同様に、絶縁層24の上に重なるように形成されてもよいし、あるいは、底壁10aの表面に直接形成されていてもよい。
【0076】
さらに、図16(a),16(b)に示すように、絶縁層24の上面の第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の外側に撥液膜40が形成されるとともに、これら2つの電極配置領域間に撥液膜41が形成されていてもよい。この構成では、液滴21の電極配置領域外への移動と、反対側の電極の配置領域への移動の両方が防止される。
【0077】
尚、絶縁層24として、例えば、ポリイミド系樹脂やエポキシ系樹脂を使用し、一方、撥液膜40,41として、例えば、フッ素系樹脂を使用すれば、撥液膜40,41の撥液性を絶縁層24よりも高くすることができる。
【0078】
また、液滴21の絶縁層24の表面における濡れ角が90度よりも大きい場合には、振動等が生じても液滴21が不意に移動しにくいため、撥液膜40,41の表面粗さは絶縁層24の表面粗さよりも大きくてよい。一方、液滴21の絶縁層24の表面における濡れ角が90度よりも小さい場合には、振動等により液滴21が不意に移動しやすいため、撥液膜40,41の表面粗さは絶縁層24の表面粗さよりも小さいことが好ましい。
【0079】
また、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の間に撥液膜41が形成されている場合、この撥液膜41は、第1電極22と第2電極23の間での本来の液滴移送の抵抗にもなる。そのため、移送先の電極の電位を比較的高めに設定して、その電極の配置領域における撥液性を十分に低下させて、液滴21が撥液膜41を確実に乗り越えることが可能な移送力を発生させることが好ましい。
【0080】
あるいは、図17(a),17(b)に示すように、第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の間に設けられた撥液膜41(第2撥液膜)の一部が、第1電極22の配置領域内と第2電極23の配置領域内へそれぞれ突出していてもよい。この構成によれば、振動などにより不意に液滴21が反対側の電極に移動するのを撥液膜41により防止しつつ、2つの電極配置領域の間における液滴移送の際には、液滴21が、電極配置領域内に突出した部分から撥液膜41を乗り越えやすくなり、両電極22,23の配置領域の間をスムーズに移動することができるようになる。
【0081】
尚、以上説明した図13(a)〜図17(b)には、第2電極23が分割されていない形態が示されているが、第2電極23が分割されている場合にも上述の構成を適用可能であることは言うまでもない。
【0082】
変更実施形態5
バルブ11が、定期的に大気連通孔19を開放するように構成されていてもよい。長期間印字が行われていない場合には、バルブ11により大気連通孔19が長期間開放されないことになるため、大気の温度変化や気圧変化に起因して、カートリッジ本体10内のインク収容空間12の圧力が過度に高くなったり、あるいは、負圧になったりする虞がある。そこで、例えば、制御装置4のヘッド制御部30により、前回の印字が終了した時刻から所定の時間が経過していると判断されたときに、バルブ制御部31が電位付与部25に対して大気連通孔19を開放する信号を出力するように構成されていると、大気連通孔19が定期的に開放されることになり、カートリッジ本体10の内外の気圧差が小さく抑えられる。
【0083】
変更実施形態6
前記第1実施形態においては、第1電極22及び第2電極23に電位を付与する電位付与部25や、2つの分割電極23a,23bの間の静電容量から液滴21の位置を検出する液滴位置検出部26が、プリンタ100側に設けられているとしているが、これらがインクカートリッジ5側に設けられて、プリンタ100側の制御装置4(バルブ制御部31)と接続されていてもよい。つまり、インクカートリッジ5のバルブ11が、電位付与部25及び液滴位置検出部26を含む液滴移送部20を備えていてもよい。
【0084】
第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、インクジェットヘッドのインク噴射面に装着されるノズルキャップに本発明を適用した一例である。尚、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0085】
前記第1実施形態と同様に(図1参照)、インクジェットヘッド1は、インクジェットプリンタ100の制御装置4(図20参照)からの指令に基づいて、記録用紙P(記録媒体)に対してその搬送方向に直交する方向に移動しながらインクを噴射する。また、キャリッジ2は、記録用紙Pが搬送される領域よりもさらに幅方向(図1の左右方向)外側に位置する退避位置まで移動可能に構成されている。そして、この退避位置には、ノズルキャップ60が配設されており、このノズルキャップ60は、キャップ駆動部55(図20参照)により昇降駆動される。そして、ノズル52(図18参照)からインクを噴射しない場合には、インクジェットヘッド1はキャリッジ2とともに退避位置に移動し、その退避位置において、ノズルキャップ60が、複数のノズル52の出射口52aが配置されたインクジェットヘッド1の下面(インク噴射面1a)を下方から覆うようにインクジェットヘッド1に装着される。
【0086】
図18に示すように、インクジェットヘッド1の内部には、マニホールド50と、マニホールド50からそれぞれ分岐した複数の個別流路51と、複数の個別流路51の末端にそれぞれ設けられ、インクジェットヘッド1の下面(インク噴射面1a)において開口した複数のノズル52とを有する。マニホールド50には、その上部に設けられたインク供給孔53を介して外部のインクタンク(図示省略)からインクが供給される。そして、マニホールド50から複数の個別流路51を介して複数のノズル52にそれぞれインクが供給されて、複数のノズル52からインクが噴射されるように構成されている。
【0087】
ノズルキャップ60は、複数のノズル52を下方から覆うキャップ部61と、このキャップ部61の周縁部から上方に延びてインク噴射面1aに接触する環状のリップ部62と、キャップ部61を下方から支持する基部63を有する。
【0088】
キャップ部61は、複数のノズル52の出射口52aを下方から一度に覆うことができるように、インク噴射面1aの複数の出射口52aが配置された領域よりも大きい面積を有する。また、リップ部62は、インク噴射面1aの複数の出射口52aが配置された領域の周りに全周に亙って接触し、複数の出射口52aを密閉することが可能となっている。尚、キャップ部61とリップ部62は、合成樹脂材料などの弾力性を有する材料で形成されている。
【0089】
基部63の底壁63a(基材)には、キャップ部61の内部空間64(インク噴射面1a側の空間)と外部(大気)とを連通させる連通孔65(連通路)が貫通状に設けられている。この連通孔65は、ノズルキャップ60の装着時における、空間64の圧力上昇を緩和して、ノズル52内のメニスカスが破壊されるのを防止するためのものである。しかし、ノズルキャップ60が装着されている状態でも空間64が外部と連通していると、時間が経つにつれてノズル52内のインクが乾燥してしまう。そこで、基部63には、連通孔65を開閉するバルブ66が設けられている。
【0090】
このバルブ66は、前記第1実施形態のバルブ11(図2、図3参照)とほぼ同様の構成を有する。即ち、バルブ66は、底壁63aの内面(上面)において導電性を有する液滴21を移送する液滴移送部20を備えている。図19に示すように、この液滴移送部20は、底壁63aの内側の面(上面)において連通孔65の上端開口65aを囲むように配置された第1電極22と、同じく底壁63aの上面において、第1電極22に対して所定距離空けて近接配置された第2電極23と、底壁63aの上面において第1電極22と第2電極23の両方を完全に覆うように形成された絶縁層24を有する。また、第2電極23は互いに離間して配置された2つの分割電極23a,23bに分割されている。尚、液滴移送部20の上方には、導電性を有する液滴21にインクミストが直接降りかかるのを防止する保護部67が設けられている。
【0091】
プリンタ100の制御装置4(バルブ制御部69)からの指令に基づいて、電位付与部25により、第1電極22と第2電極23に互いに異なる電位(所定電位又はグランド電位)が付与されると、一方の電極配置領域における撥液性を低下することから、2つの電極配置領域の間で液滴21が移送される。そして、第1電極22の配置領域に液滴21が移送されたときにはこの液滴21により連通孔65が閉止され、第2電極23の配置領域に液滴21が移送されたときには連通孔65が開放される。
【0092】
また、第2電極23の2つの分割電極23a,23bは液滴位置検出部26に接続されている。そして、液滴位置検出部26は、2つの分割電極23a,23b間の静電容量に基づいて、第1電極22と第2電極23の何れの領域に液滴21が存在しているか(即ち、連通孔65の開閉状態)を検出することができるように構成されている。
【0093】
図20に示すように、プリンタ100の制御装置4は、CPU、RAM、ROM等で構成されている。さらに、この制御装置4は、PC33から入力された印字データに基づいてインクジェットヘッド1を制御してインクを噴射させるヘッド制御部30と、キャップ駆動部55を制御してノズルキャップ60を昇降させるキャップ制御部68と、ノズルキャップ60を制御してバルブ66を開閉させるバルブ制御部69を備えている。
【0094】
バルブ制御部69は、ノズルキャップ60がインクジェットヘッド1に装着される際には、その装着直前に電位付与部25に対して連通孔65を開放する信号を出力する。このとき、電位付与部25は、第1電極22にグランド電位を付与するとともに、第2電極23に所定電位を付与する。すると、図18に示すように、第1電極22から第2電極23へ液滴21が移送され、連通孔65が開放される。そのため、キャップ部61内の空間64の圧力上昇が緩和され、ノズル52内に形成されたメニスカスの破壊が防止される。
【0095】
一方、ノズルキャップ60がインクジェットヘッド1に装着された後には、バルブ制御部69は、電位付与部25に連通孔65を閉止する信号を出力する。このとき、電位付与部25は、第1電極22に所定電位を付与するとともに、第2電極23にグランド電位を付与する。すると、図21に示すように、第2電極23から第1電極22へ液滴21が移送され、この液滴21により連通孔65が閉止される。そのため、ノズル52内のインクの乾燥が防止される。
【0096】
さらに、バルブ制御部69は、ノズルキャップ60がインクジェットヘッド1から取り外される(インク噴射面1aから離間する)際にも、その直前に電位付与部25に対して連通孔65を開放する信号を出力してもよい。この場合には、ノズルキャップ60がインク噴射面1aから離間する際のキャップ部61内の空間64の圧力変動を小さくすることができるため、メニスカスの破壊がさらに防止される。
【0097】
以上説明した第2実施形態の構成によれば、2つの電極22,23と絶縁層24とからなる簡単な構成の液滴移送部20により、インクの乾燥とメニスカス破壊を防止することができる。また、第2電極23が、互いに離間して配置された2つの分割電極23a,23bに分割されているため、液滴位置検出部26により2つの分割電極23a,23bの間の静電容量に基づいて、第1電極22と第2電極23の何れの配置領域に液滴21が存在しているかを検出することができる。
【0098】
尚、この第2実施形態についても、液滴移送部20に関する前記第1実施形態に対する変更と同様の変更(電極分割や撥液膜40,41(図13(a)〜図17(b)参照)の付加等)を加えることが可能である。
【0099】
第3実施形態
次に、本発明の第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置に本発明を適用した一例である。
【0100】
図22(a),22(b)に示すように、記憶装置70は、合成樹脂材料からなる基板71(基材)と、この基板71の表面の2つの領域に亙って導電性を有する液滴21を移送する複数の液滴移送部20からなり、複数のビットデータを記憶可能な記憶部72と、複数の液滴移送部20をそれぞれ制御する制御部73(図23参照)を備えている。尚、図22(a)では複数の液滴移送部20のうちの3つが示されている。
【0101】
記憶部72の各液滴移送部20は、前記第1実施形態とほぼ同様の構成を有するものである。即ち、図22(a),22(b)に示すように、液滴移送部20は、合成樹脂材料からなる基板71の表面に配置された第1電極22と、同じく基板71の表面に、第1電極22に対して所定距離空けて近接配置された第2電極23と、基板71の表面に第1電極22と第2電極23の両方を完全に覆うように形成された絶縁層24を有する。また、第2電極23は互いに離間して配置された2つの分割電極23a,23bに分割されている。さらに、第1電極22と第2電極23の配置領域における絶縁層24の表面にはグランド電極27がそれぞれ配置されている。そして、複数の液滴移送部20のグランド27が配線74を介して互いに導通しており、全てのグランド27は常にグランド電位に保持されている。
【0102】
また、図23に示すように、各液滴移送部20は、第1電極22と第2電極23に電位を付与する電位付与部25と液滴位置検出部26とを備えている。電位付与部25は、記憶されるデータに応じて、第1電極22と第2電極23に互いに異なる電位(所定電位又はグランド電位)をそれぞれ付与して、2つの電極配置領域の間で液滴21を移送させる。具体的には、第1電極22の配置領域に液滴21が存在している状態(図22(a)の下側2つの液滴移送部20の状態)が、ビットデータの“0”に対応し、第2電極23の配置領域に液滴21が存在している状態(図22(a)において一番上の液滴移送部20の状態)が、ビットデータの“1”に対応している。そして、1つの液滴移送部20により2つの電極配置領域の何れかに液滴21を移送することによって、1ビットのデータ(“0”または“1”)を記憶することが可能となっている。
【0103】
また、液滴位置検出部26は、2つの分割電極23a,23b間の静電容量に基づいて、第1電極22と第2電極23の何れの領域に液滴21が存在しているか(即ち、“0”と“1”の何れが記憶されているか)を検出し、その検出結果を制御部73へ出力する。
【0104】
図23に示すように、制御部73は、外部のデータ入出力装置75と接続されている。そして、データ入出力装置75から制御部73に対して、記憶すべき複数のビットデータが入力されると、制御部73は、これら複数のビットデータにそれぞれ対応する複数の液滴移送部20の電位付与部25に対して、記憶するビットデータに関する情報(“0”か“1”か)を出力する。そして、記憶するデータが“0”である場合には、電位付与部25は、第1電極22に所定電位を付与すると同時に、第2電極23にグランド電位を付与し、第1電極22の配置領域に液滴21を移送する(図22(a)の下側2つの液滴移送部20)。一方、記憶すべきデータが“1”である場合には、電位付与部25は、第1電極22にグランド電位を付与すると同時に、第2電極23に所定電位を付与し、第2電極23の配置領域に液滴21を移送する(図22(a)において一番上の液滴移送部20)。このようにして、入力された複数のビットデータを記憶部72に記憶させる。尚、液滴21の移送が完了した後は、第1電極22と第2電極23の電位は共にグランド電位に切り替えられて、その状態が保持されるため、記憶装置70の電源を切っても記憶されたデータが消えることはない。
【0105】
また、制御部73には、複数の液滴移送部20の液滴位置検出部26から、液滴21が第1電極22の配置領域と第2電極23の配置領域の何れに存在しているかの情報が入力される。つまり、制御部73は、記憶部72の1つの液滴移送部20により“0”と“1”の何れのデータが記憶されているかを検出できるようになっている。そして、制御部73は、データ入出力装置75からの要求に応じて、記憶部72に記憶されているデータを読み出し、データ入出力装置75へ出力する。
【0106】
以上説明した第3実施形態の構成によれば、2つの電極22,23と絶縁層24とからなる簡単な構成の液滴移送部20により、1ビットのデータを記憶することができる。また、第2電極23が、互いに離間して配置された2つの分割電極23a,23bに分割されているため、液滴位置検出部26により2つの分割電極23a,23bの間の静電容量に基づいて、第1電極22と第2電極23の何れの配置領域に液滴21が存在しているかを検出することができる。従って、記憶されている1ビットのデータ種別を判別することができ、データを読み出すことが可能となる。さらに、第3実施形態に係る記憶装置70は、通常の半導体記憶装置において用いられるシリコン基板とは異なり、合成樹脂からなる基板を用いているため、より安価に製造することができる。
【0107】
尚、この第3実施形態についても、液滴移送部20に関する前記第1実施形態に対する変更と同様の変更(撥液膜40,41(図13(a)〜図17(b)参照)の付加等)を加えることが可能である。但し、既に記憶部72に記憶されているデータを読み出すためには、第1電極22と第2電極23の少なくとも何れか一方が複数の分割電極に分割されて、第1電極22と第2電極23の何れに液滴21が存在しているかを検出できるように構成されていることが最低限必要である。また、第3実施形態において、記憶装置70はビットデータ(“0”か“1”かの2値)を記憶することができるが、第1電極と第2電極とが並ぶ方向に、それぞれが第2電極のように分割された電極を複数並べることにより、記憶装置70は、3値以上の多値情報を記憶することが可能となる。
【0108】
第4実施形態
次に、本発明の第4実施形態について説明する。この第4実施形態は、所望の文字や画像等を表示する表示装置に本発明を適用した一例である。
【0109】
図24に示すように、表示装置80は、基板81と、この基板81(基材)の表面の2つの領域に亙って導電性を有する有色の液滴21をそれぞれ移送する複数の液滴移送部20からなる表示部82と、基板81の表面と対向して配置されたカバープレート83と、表示部82の複数の液滴移送部20をそれぞれ制御する制御部84(図25参照)とを備えている。尚、図24では複数の液滴移送部20のうちの3つが示されている。
【0110】
表示部82の各液滴移送部20は、前記第1実施形態とほぼ同様の構成を有するものである。即ち、図24に示すように、液滴移送部20は、基板81の表面に配置された第1電極22と、同じく基板81の表面に、第1電極22に対して所定距離空けて近接配置された第2電極23と、基板81の表面に第1電極22と第2電極23の両方を完全に覆うように形成された絶縁層24を有する。また、第2電極23は互いに離間して配置された2つの分割電極23a,23bに分割されている。さらに、第1電極22と第2電極23の配置領域における絶縁層24の表面にはグランド27がそれぞれ配置されている。そして、複数の液滴移送部20のグランド27が配線85を介して互いに導通しており、全てのグランド27は常にグランド電位に保持されている。
【0111】
また、図25に示すように、各液滴移送部20は、第1電極22と第2電極23に電位を付与する電位付与部25と液滴位置検出部26とを備えている。電位付与部25は、制御部84からの指令に基づいて、第1電極22と第2電極23に互いに異なる電位(所定電位又はグランド電位)をそれぞれ付与して、2つの電極配置領域の間で液滴21を移送させる。また、液滴位置検出部26は、2つの分割電極23a,23b間の静電容量に基づいて、第1電極22と第2電極23の何れの領域に液滴21が存在しているかを検出し、その検出結果を制御部84へ出力する。
【0112】
図24に示すように、カバープレート83は、基板81の、第1電極22及び第2電極23が配置された面と対向している。また、このカバープレート83の、第1電極22と対向する位置には貫通状の透過孔83aが形成されている。そのため、カバープレート83の基板81と反対側から見たときに、第1電極22の配置領域は透過孔83aを通して見えるが、第2電極23の配置領域はカバープレート83により遮られて見えない。従って、第1電極22の配置領域に有色の液滴21が存在している状態(図24(a)の下側2つの液滴移送部20の状態)ではその液滴21の色が表示されるが、第2電極23の配置領域に液滴21が存在していない状態(図24(a)において一番上の液滴移送部20の状態)では液滴21の色が表示されず、下地である絶縁層24の色(例えば、白色)が表示される。
【0113】
図25に示すように、制御部84は、外部の入力装置85と接続されている。そして、表示される文字や画像等に関するデータが入力装置85から制御部84に入力されると、制御部84は、表示部82の複数の液滴移送部20のうちの、表示すべき文字や画像等に対応する液滴移送部20の電位付与部25に対して表示を行わせる信号を出力する。すると、信号が入力された液滴移送部20の電位付与部25は、第1電極22に所定電位を付与すると同時に、第2電極23にグランド電位を付与し、第1電極22の配置領域に液滴21を移送する。このとき、第1電極22の配置領域に移送された液滴21の色が、カバープレート83の透過孔83aを通して表示されることになる。
【0114】
また、制御部84には、液滴位置検出部26により検出された液滴21の位置情報が入力される。そのため、制御部84は、この液滴21の位置情報から、実際に表示されている文字や画像等を認識できるようになっている。
【0115】
以上説明した第4実施形態の構成によれば、2つの電極22,23と絶縁層24とからなる簡単な構成の液滴移送部20により、所望の文字や画像等を表示させることができる。また、第2電極23が、互いに離間して配置された2つの分割電極23a,23bに分割されているため、第1電極22と第2電極23の何れの配置領域に液滴21が存在しているかを検出することができ、実際に表示されている文字や画像等を認識できる。さらに、第1電極22と第2電極23に異なる電位を与えない限り、液滴21は第1電極22の配置領域、又は第2電極23の配置領域から移動しない。つまり、液滴21が第1電極22の配置領域に存在し、液滴の色が表示されている状態では、第1電極22に与える電位と第2電極23に与える電位とが異ならない限り、液滴は第2電極23の配置領域には移動しないため、表示状態が維持される。また、液滴21が第2電極23の配置領域に存在し、液滴の色が表示されていない状態では、第1電極22に与える電位と第2電極23に与える電位とが異ならない限り、液滴は第1電極22の配置領域には移動せず、液滴の色が表示されない状態が維持される。つまり、同じ表示状態を維持するために、常時電力を供給する必要がない。したがって、電力を消費せずに、同じ表示状態を維持することができる。
【0116】
尚、この第4実施形態についても、液滴移送部に関する前記第1実施形態に対する変更と同様の変更(電極分割や撥液膜40,41(図13(a)〜図17(b)参照)の付加等)を加えることが可能である。
【0117】
これらに加えて、前述した第4実施形態には、さらに、以下のような変更を加えることが可能である。例えば、カバープレートが、第2電極23の配置領域にのみ対向するように配置されており、第1電極22の配置領域と対向していない場合には、カバープレート83に透過孔83aが形成されている必要はない。
【0118】
また、第1電極22及び第2電極23を透明なITO(Indium-Tin Oxide:酸化インジウム−酸化スズ)薄膜等で形成するとともに、絶縁層24をほぼ透明なフッ素系樹脂等で形成し、さらに、基板81をガラス等の透明材料で形成すれば、基板81の電極22,23と反対側の面からでも液滴21の色が表示されることとなる。そのため、このような場合には、カバープレート83が基板81の電極22,23と反対側の面と対向するように(図24(b)において基板81の下側に)配置されていてもよい。
【0119】
さらに、第1電極22、この第1電極22の配置領域の基板81の部分、及び、第1電極22の配置領域の絶縁層24の部分が全て透明であり、一方、第2電極23、この第2電極23の配置領域の基板81の部分、及び、第2電極23の配置領域の絶縁層24の部分のうちの少なくとも1つが、非透過性(光を透過させない性質)を有するものであってもよい。この構成では、第2電極23の配置領域自体が非透過性を有するため、基板81の電極22,23と反対側(図24(b)において基板81の下側)から見た場合に、第2電極23の配置領域に存在する液滴21が見えなくなるため、カバープレート83が不要となる。
【0120】
上記実施形態及び変更形態では、電極や基材の形状、構造、材料を特定のものを例に挙げて説明してきたが、それらに限定されず、本発明の作用を生じるものであれば任意のものを使用できる。以上説明した実施形態及びその変更形態は、インクカートリッジに用いられるバルブ等に本発明を適用した一例であるが、本発明の適用可能な形態はこれらに限られるものではない。例えば、マイクロロボットや医療機器などに使用されるガス、液体のような流体供給装置に本発明の液滴移送装置又はバルブを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】インクカートリッジの縦断面図である。
【図3】(a)は第1実施形態の液滴移送部の平面図であり、(b)は(a)のIIIB−IIIB線断面図である。
【図4】第1実施形態のインクジェットプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】第2電極の配置領域に液滴が存在している状態において、第2電極、絶縁層、及び、液滴で構成される回路を概略的に示す図である。
【図6】(a)は液滴が第1電極の配置領域に存在している状態の液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のVIB−VIB線断面図である。
【図7】(a)は第2電極への液滴移送を行う直前の液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のVIIB−VIIB線断面図である。
【図8】(a)は第2電極への液滴移送中の液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のVIIIB−VIIIB線断面図である。
【図9】(a)は第2電極への液滴移送直後の液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のIXB−IXB線断面図である。
【図10】(a)は液滴が第2電極の配置領域に存在している状態の液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のXB−XB線断面図である。
【図11】大気連通孔が閉止されている状態のインクカートリッジの縦断面図である。
【図12】大気連通孔が開放されている状態のインクカートリッジの縦断面図である。
【図13】(a)は第1実施形態の変更実施形態4において2つの電極の外側に撥液膜が形成された液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のXIIIB−XIIIB線断面図である。
【図14】(a)は第1実施形態の変更実施形態4において2つの電極の平面形状を変形した液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のXIVB−XIVB線断面図である。
【図15】(a)は第1実施形態の変更実施形態4において2つの電極の間に撥液膜が形成された液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のXVB−XVB線断面図である。
【図16】(a)は第1実施形態の変更実施形態4において2つの電極の外側及びその間に撥液膜が形成された液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のXVI−XVIB線断面図である。
【図17】(a)は第1実施形態の変更実施形態4において2つの電極の間に形成された撥液膜の一部がそれぞれの電極に突出している液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のXVIIB−XVIIB線断面図である。
【図18】第2実施形態に係るインクジェットヘッドとノズルキャップ(ノズルキャップ装着直前状態)の断面図である。
【図19】(a)は第2実施形態の液滴移送部を示す平面図であり、(b)は(a)のXIXB−XIXB線断面図である。
【図20】第2実施形態のインクジェットプリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図21】インクジェットヘッドとノズルキャップ(ノズルキャップ装着状態)の断面図である。
【図22】(a)は第3実施形態に係る記憶装置の一部を示す平面図であり、(b)は(a)のXXIIB−XXIIB線断面図である。
【図23】第3実施形態の記憶装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図24】(a)は第4実施形態に係る表示装置の一部を示す平面図であり、(b)は(a)のXXIVB−XXIVB線断面図である。
【図25】第4実施形態の表示装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図26】(a)は図3(a)における分割電極の配置方向の変形例を示す平面図であり、図(b)は(a)のXXVIB−XXVIB線断面図である。
【図27】(a)は第1実施形態の変更実施形態1に係る液滴移送部の図3(a)相当の平面図であり、(b)は(a)のXXVIIB−XXVIIB線断面図である。
【図28】(a)は第1実施形態の変更実施形態2に係る液滴移送部の図3(a)相当の平面図であり、(b)は(a)のXXVIIIB−XXVIIIB線断面図である。
【符号の説明】
【0122】
1 インクジェットヘッド
5 流路ユニット
6 圧電アクチュエータ
10 キャビティプレート(第1プレート)
11 ベースプレート(第3プレート)
12 絞りプレート(第2プレート)
16 圧力室(第1流路)
16a 接続部分
18 連通孔(連通流路)
20 絞り流路(第2流路)
20a 接続部分
23 マニホールド(共通液室)
25 ノズル
26 インク流路
40,41,42 ベースプレート(連通流路プレート)
50,51,52 連通孔
50a,51a,52a 中心孔部(主流領域)
50b,51b,52b 切欠部(支流領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴移送装置であって、
基材の表面に配置された第1電極と、
前記基材の表面において、第1電極の近傍に第1電極から所定距離離れて配置された第2電極と、
第1電極と第2電極とをそれぞれ覆うように配置され、その表面に存在する導電性を有する液滴と前記電極との間の電位差に応じて、表面における撥液性が変化する絶縁層と、
第2電極と共働して第2電極上に液滴が存在することを検知する第3電極とを備える液滴移送装置。
【請求項2】
第1電極と第2電極のうちの少なくとも一方が、前記基材の表面において互いに離間して配置された少なくとも2つの分割電極として分割されている請求項1に記載の液滴移送装置。
【請求項3】
前記分割電極の一方が第3電極である請求項2に記載の液滴移送装置。
【請求項4】
第1電極と第2電極に対してそれぞれ電位を付与する電位付与機構をさらに備え、前記電位付与機構により第1電極と第2電極に対してそれぞれ異なる電位を付与し、一方の電極を覆う部分の前記絶縁層の表面における撥液性を他方の電極を覆う部分よりも低下させて、第1電極と第2電極をそれぞれ覆う前記絶縁層の間で前記液滴を移送する請求項1に記載の液滴移送装置。
【請求項5】
前記分割電極は、前記分割電極が配置された領域に前記液滴が移送されたときに、前記液滴が前記分割電極の双方に接触しつつ、それらの間に位置するように配置されており、
前記分割電極間の静電容量に基づいて、前記液滴が、第1電極が配置された領域と第2電極が配置された領域の何れの領域に存在するかを検出する液滴位置検出器をさらに備える請求項2に記載の液滴移送装置。
【請求項6】
第1電極と第2電極を覆う前記絶縁層の表面に、グランド電極がそれぞれ配置されている請求項1に記載の液滴移送装置。
【請求項7】
第3電極は前記基材の表面から離隔し且つ第2電極と対向するように延在する請求項1に記載の液滴移送装置。
【請求項8】
第3電極は第1電極の一部及び第2電極と対向するように延在し且つグランド電極として設置される請求項7に記載の液滴移送装置。
【請求項9】
前記基材の表面の、第1電極と第2電極の外側の領域に、常に前記絶縁層の撥液性以上に高い撥液性を有する第1撥液膜が形成されている請求項1に記載の液滴移送装置。
【請求項10】
第1電極と第2電極の間において、第1撥液膜が形成されていない領域の幅が局所的に狭まっている請求項9に記載の液滴移送装置。
【請求項11】
前記基材の表面の、第1電極と第2電極の間の領域に、常に前記絶縁層の撥液性以上に高い撥液性を有する第2撥液膜が形成されている請求項1に記載の液滴移送装置。
【請求項12】
第2撥液膜の一部が、第1電極と第2電極がそれぞれ配置されている領域内へ突出している請求項11に記載の液滴移送装置。
【請求項13】
請求項1に記載の液滴移送装置を備えたバルブであって、前記基材には、第1電極が配置されている領域において開口する流体通路が形成され、第1電極が配置された領域に前記液滴が存在するときには前記液滴により前記流体通路の開口が閉止され、第2電極が配置された領域に前記液滴が存在するときには前記流体通路の開口が開放されるバルブ。
【請求項14】
インクを収容するインク収容空間と、前記インク収容空間と大気とを連通させる大気連通路とを有するインクカートリッジに設けられ、
前記液滴を第1電極と第2電極との間で移送することにより、前記大気連通路を開閉する請求項13に記載のバルブ。
【請求項15】
記録媒体に対してインクを噴射するインクジェットヘッドのインク噴射面を覆うキャップであって、前記インク噴射面と前記キャップとによって形成される空間と、キャップの外部とを連通させる連通路を有するキャップに設けられ、前記液滴を第1電極と第2電極との間で移送することにより、前記連通路を開閉する請求項13に記載のバルブ。
【請求項16】
請求項1に記載の液滴移送装置を備えた記憶装置であって、前記液滴移送装置は、前記記憶装置に記憶させるデータに応じて前記液滴を第1電極と第2電極の間で移送する記憶装置。
【請求項17】
請求項1に記載の液滴移送装置と、前記基材の表面と対向して配置され、第1電極と対応する位置に形成された透過孔を有するカバープレートとを備えた表示装置であって、前記液滴は有色であり、前記液滴移送装置は、前記表示装置に表示させるデータに応じて、前記液滴を、第1電極と第2電極との間で移送する表示装置。
【請求項18】
請求項1に記載の液滴移送装置を備えた表示装置であって、第1電極、第1電極に対応する前記基材の部分、及び、第1電極に対応する前記絶縁層の部分が全て透明であり、第2電極、第2電極に対応する前記基材の部分、及び、第2電極に対応する前記絶縁層の部分のうち、少なくとも1つが非透過性を有する表示装置。
【請求項19】
バルブであって、
その表面において開口する流体通路を有する基材と、
前記基材の表面において、前記流体通路の開口を含む領域に配置された第1電極と、
前記基材の表面において、第1電極の近傍に第1電極から所定距離離れて配置された第2電極と、
第1電極と第2電極をそれぞれ覆うように配置され、その表面に存在する導電性を有する液滴と前記電極との間の電位差に応じて、表面における撥液性が変化する絶縁層とを備え、
第1電極が配置された領域に前記液滴を移送することにより前記流体通路の開口を閉止するとともに、第2電極が配置された領域に前記液滴を移送することにより前記流体通路の開口を開放するバルブ。
【請求項20】
請求項17に記載のバルブを備えるインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−290366(P2007−290366A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67954(P2007−67954)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】