説明

液状有機廃棄物の酸化分解処理装置

【課題】被処理物としての液状有機廃棄物の処理経路における炭化を抑制し得るとともに、良好な酸化分解処理をより効率的に実現することのできる液状有機廃棄物の酸化分解処理装置を提供する。
【解決手段】液状有機廃棄物を炭化の抑制が可能な所定温度に予熱する予熱器1と、前記液状有機廃棄物を加熱しつつ、酸化分解処理を行う第1反応器13や第2反応器14などから構成される酸化分解処理器と、前記予熱器1と酸化分解処理器との間に配設された混合器8と、該混合器8に酸素を供給する酸素供給手段とを備え、前記予熱器1で予熱された液状有機廃棄物を混合器8内で酸素と混合させた上で、酸化分解処理器へ送液する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状有機廃棄物を酸化分解処理する液状有機廃棄物の酸化分解処理装置に関し、とりわけ被処理物としての液状有機廃棄物の処理経路における炭化現象を抑制するとともに、より効率的で良好な酸化分解処理を実現すべく改良を施した酸化分解処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状有機廃棄物の処理技術として、液状有機廃棄物を亜臨界状態において酸化分解処理することは従来から知られている(特許文献1参照)。その基本的な作業の流れは、被処理物としての液状有機廃棄物を無酸素状態において例えば約200度に予熱して反応器すなわち酸化分解処理器へ送り、その酸化分解処理器において酸素を供給しながら約300度に昇温して高圧の下に酸化分解処理を行うというものである。ところで、酸素が不十分な状態で高温まで加熱すると、液状有機廃棄物に炭化がおこりやすく、被処理物の流通路に固形物が固着して流通性を低下するという厄介な問題があった。このため、従来技術においては、予熱器で炭化が発生しない程度の温度まで被処理物を予熱し、酸化分解処理器において酸素を供給しながら更に加熱して酸化分解反応に適した温度に昇温させて被処理物の酸化分解処理を行うという処理システムが採用されている。なお、この酸化分解処理器においては、周囲から電気ヒータや蒸気などの熱媒体によって加熱するのが一般的であるが、酸化分解処理器に供給された被処理物を均一に加熱すること自体、技術的になかなか困難であった。しかも、従来の処理システムでは、予熱器において無酸素状態で予熱された被処理物を直接的に酸化分解処理器へ送液し、その酸化分解処理器において酸素を供給しながら加熱するという構成が採用されていたため、被処理物を酸素と均一かつ充分に接触した状態において酸化分解処理を行うこともまた困難であった。さらに、酸化分解処理器において被処理物を目標の例えば300度まで速やかに加熱することができれば、炭化現象の発生もある程度抑制することができるが、間接的な加熱では素早く加熱することは困難であった。このため、従来技術によって被処理物の炭化を的確に抑制することは容易ではなかった。
【特許文献1】特開2006−231119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来の技術的状況に鑑みて開発したものであり、被処理物としての液状有機廃棄物の炭化を抑制し得るとともに、良好な酸化分解処理をより効率的に実現することのできる液状有機廃棄物の酸化分解処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するため、請求項1の発明では、液状有機廃棄物を炭化の抑制が可能な所定温度に予熱する予熱器と、前記液状有機廃棄物を加熱しつつ、酸化分解処理を行う酸化分解処理器と、前記予熱器と酸化分解処理器との間に配設された混合器と、該混合器に酸素を供給する酸素供給手段とを備え、前記予熱器で予熱された液状有機廃棄物を混合器内で酸素と混合させた上で、酸化分解処理器へ送液するという技術手段を採用した。以上のように、本発明では、予熱器と酸化分解処理器との間に混合器を配設し、その混合器内で液状有機廃棄物に酸素を供給しながら混合するように構成したので、予熱器における予熱温度を液状有機廃棄物の炭化を抑制できる所定温度に抑えながら、しかも前記液状有機廃棄物を混合器において酸素とより均一にかつ充分混合した状態で酸化分解処理器へ供給することが可能となり、被処理物としての液状有機廃棄物の処理経路における炭化を抑制しながら、酸化分解処理器における効率的でかつ良好な酸化分解処理が可能な処理システムを実現することができる。
【0005】
請求項2の発明は、前記予熱器を第1熱交換器とするとともに、前記酸化分解処理器と予熱器との間に第2熱交換器を配設し、前記酸化分解処理器から排出された生成物を第2熱交換器を経由して第1熱交換器へ送液することにより、第1熱交換器にて液状有機廃棄物と熱交換するとともに、その第1熱交換器にて熱交換された生成物の一部を再度第2熱交換器へ環流することにより、前記酸化分解処理器から排出されて第2熱交換器を通る生成物と熱交換してから、混合器へ送液するという技術手段を採用した。本発明の場合には、生成物の熱を予熱器の昇温に利用した後、さらに第2熱交換器における冷却と混合器内の加熱に再利用しているので、熱効率の良い熱回収が可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、次の効果を得ることができる。
(1)請求項1の発明では、前記予熱器と混合器と酸化分解処理器との組合わせからなる処理システムを採用したので、予熱器における予熱温度を抑えて被処理物としての液状有機廃棄物の処理経路における炭化を抑制することができ、しかも混合器において予め酸素と混合することによって、酸素とより均一で充分な接触状態にある液状有機廃棄物を酸化分解処理器へ供給できることから、酸化分解処理器におけるより効率的で良好な酸化分解処理を実現することが可能である。
(2)請求項2の発明では、生成物の熱を予熱器の昇温に利用した後、さらに第2熱交換器における冷却と混合器内の加熱に再利用するように構成したので、熱効率の良い熱回収を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、生ゴミ、し尿、紙、木材、有機性産業廃棄物等の液状有機廃棄物を酸化分解処理するための液状有機廃棄物の酸化分解処理装置であれば、広く適用することが可能である。前記予熱器に関しては、その予熱温度が重要であり、液状有機廃棄物を炭化の抑制が可能な所定温度に予熱可能なものであれば、その発熱手段の種類等の具体的構成に限定されるものではない。因みに、液状有機廃棄物の炭化の抑制が可能な所定温度は、液状有機廃棄物の種類等の条件によっても変動し、また当該液状有機廃棄物の炭化を完全に抑制し得る温度であることが望ましいが、それに限定されるものではなく、一部に炭化が生じても実用的に支障のない程度の場合も含まれる。また、前記酸化分解処理器に関しても、液状有機廃棄物を加熱しつつ、酸化分解処理を行う酸化分解処理器であればよく、個々の酸化分解処理器の具体的な形態や設置台数、接続形態などに限定されるものではなく、触媒反応を含む異なる形態の酸化分解処理器を組合わせて構成したものでもよい。また、前記混合器は、前記予熱器と酸化分解処理器との間に配設され、少なくとも内部へ酸素を供給する酸素供給手段を備えたものであればよいが、さらに加熱手段を加えれば、効率的で良好な酸化分解処理を実現する上できわめて有効である。なお、前記予熱器を第1熱交換器とし、この第1熱交換器と前記酸化分解処理器と予熱器との間に配設した第2熱交換器との組合わせから熱回収回路を構築することも可能である。そして、酸化分解処理器から排出された生成物を第2熱交換器を経由して第1熱交換器へ送液することにより予熱器内の液状有機廃棄物と熱交換するとともに、その第1熱交換器にて熱交換された生成物の一部を再度第2熱交換器へ環流することにより、前記酸化分解処理器から排出されて第2熱交換器を通る生成物と熱交換し、その上で混合器へ送液するように構成することにより、熱効率の良い熱回収を実現することができる。
【実施例】
【0008】
図1は本発明の実施例に係る液状有機廃棄物の酸化分解処理装置における処理回路の要部を示した説明図である。図中1は予熱器、2は第2熱交換器であり、予熱器1は、第1流入口1aと第1流出口1bとの間に形成された第1流路と、第2流入口1cと第2流出口1dとの間に形成された第2流路を備え、また第2熱交換器2は、第1流入口2aと第1流出口2bとの間に形成された第1流路と、第2流入口2cと第2流出口2dとの間に形成された第2流路を備えている。そして、本実施例では、前記予熱器1を第1熱交換器として構成し、これと第2熱交換器2を組合わせて熱回収回路を構築して、酸化分解処理器からの生成物がもっている余熱を活用して液状有機廃棄物を所定温度に予熱したり、混合器内の液状有機廃棄物を予め適度に昇温して酸化分解処理器へ供給することにより、液状有機廃棄物の処理経路における炭化現象を抑制するとともに、酸化分解処理器における効率のよい良好な酸化分解処理を実現したものである。図示のように、例えば工場からの有機性産業廃棄物等の液状有機廃棄物は先ず貯留タンク3に貯留され、その貯留タンク3から途中のバルブ4や原液供給ポンプ5を経て管路6により前記予熱器1の第1流入口1aへ送液される。この予熱器1へ送られる液状有機廃棄物は一般的に約20度程度で送られ、その予熱器1の第1流路を通過中に当該液状有機廃棄物の炭化の抑制に有効な例えば約190度程度(この温度表示はあくまで一例で、以下の温度表示についても同様である)に予熱される。しかる後、予熱器1にて予熱された液状有機廃棄物は、管路7を経て混合器8へ送液され、この混合器8において、さらに酸素供給装置9から管路10を経て供給される酸素と混合されるとともに、前記第2熱交換器2の第2流出口2dから管路11を経て供給される生成物によって約215度程度に昇温される。この混合器8において予め酸素と混合され適度に昇温された液状有機廃棄物は、管路12を経て本実施例における酸化分解処理器を構成する、攪拌機能を備えた第1反応器13と触媒機能を備えた第2反応器14へ順に送液され、それらの第1反応器13及び第2反応器14において前記液状有機廃棄物の酸化分解処理が行われることになる。なお、第1反応器13と第2反応器14とは管路15によって接続され、本実施例ではその管路15の途中に管路16を経て前記酸素供給装置9から酸素を供給し得るように構成されている。因みに、第1反応器13及び第2反応器14において酸化分解処理反応を経た液状有機廃棄物は、約300度程度に昇温された状態で第2反応器14から生成物として管路17を経て排出される。
【0009】
以上のように、本実施例に係る液状有機廃棄物の酸化分解処理装置の場合には、前記予熱器1において、約20度程度で送られる液状有機廃棄物を、当該液状有機廃棄物の炭化の抑制に有効な所定温度、例えば約190度程度に予熱するとともに、その予熱器1にて予熱された液状有機廃棄物を、さらに酸化分解処理器の手前に配設した混合器8において、酸素と均一かつ充分に混合しながら約215度程度に予め昇温した上で、第1反応器13及び第2反応器14等から構成される酸化分解処理器へ送液して、液状有機廃棄物の酸化分解処理を行うように構成したので、液状有機廃棄物の処理経路における炭化現象を抑制し得るとともに、酸化分解処理器における効率のよい良好な酸化分解処理を実現することが可能である。すなわち、予熱器1における予熱温度は当該液状有機廃棄物の炭化の抑制に有効な所定温度に抑えたので、液状有機廃棄物の処理経路における炭化現象を的確に抑制することができる。しかも、酸化分解処理器の手前に配設した混合器8によって予め液状有機廃棄物を酸素と均一かつ充分に混合しながら適度に昇温した上で酸化分解処理器へ送液するように構成したので、従来技術において厄介な問題であった、酸化分解処理器内での液状有機廃棄物と酸素との不均一かつ不十分な混合状態や不均一な加熱状態から派生する酸化分解処理反応上の不具合は大幅に解消されることから、酸化分解処理器におけるより効率的で良好な酸化分解処理を実現することが可能である。
【0010】
次に、熱回収回路について説明する。図示のように、本実施例の場合には、前記管路17の下流側に冷却用の熱交換器である放熱器18を配設しており、この放熱器18により第2反応器14から管路17を経て排出される生成物の温度は約260度程度に下げられ、管路19を経て第2熱交換器2の第1流入口2aへ送液される。そして、その第2熱交換器2に送液された生成物は、該第2熱交換器2の第1流路を通過中に熱交換して第1流出口2bから排出され管路20を経て予熱器1の第2流入口1cへ送液され、さらに該予熱器1においても第2流路を通過中に第1流路中の液状有機廃棄物と熱交換してそれを予熱しながら第2流出口1dから排出され、管路21を経て分岐部22へ送液されることになる。この分岐部22においては、前記生成物が管路23と管路24とに分配され、管路23側に分配された一部の生成物は、さらにポンプ25により管路26を経て前記第2熱交換器2の第2流入口2cへ還流されることになる。以上のように、本実施例における基本的な熱回収回路は、それらの第2熱交換器2、管路20を経由して接続された第1熱交換器としての予熱器1、管路21を経由して接続された分岐部22、及び管路23、管路26からなる前記第2熱交換器2への還流用の管路を主要素として構成される。なお、前記分岐部22において管路24側に分配された一部の生成物は、その後適宜の処理装置へ送液されて回収されることになる。
【0011】
次に、上記熱回収回路の作用について説明する。上述のように、放熱器18にて約260度程度まで下げられた、酸化分解処理器からの生成物は、管路19を経て第2熱交換器2の第1流入口2aへ送液されると、その第2熱交換器2の第1流路を通過中に、前記管路26を経て第2流入口2cから第2流路へ還流される生成物によって更に冷却されて約210度程度に下がり、その状態で第1流出口2bから排出され、管路20を経て予熱器1の第2流入口1cへ送液される。この予熱器1においては、管路6を経て第1流入口1aから第1流路に供給される液状有機廃棄物と熱交換して、その液状有機廃棄物を炭化を抑制し得る約190度程度の所定温度に予熱する。以上の液状有機廃棄物との熱交換によって予熱器1の第2流出口1dから排出される生成物の温度は約135度程度に下がり、この一部が分岐部22において管路23側に分配され、管路26を経て前記第2熱交換器2の第2流入口2cへ還流し、該第2熱交換器2の第1流路中の生成物と熱交換してそれを冷却することになる。因みに、この分岐部22において、管路23側に一部を分配して管路26を経て第2熱交換器2へ還流する生成物の還流量は、第1熱交換器としての予熱器1の第2流路に供給される生成物、すなわち第2熱交換器2の第1流出口2bから管路20を経て送液される生成物の温度を、予熱器1の第1流路において加熱する液状有機廃棄物の所定温度に適合し得る温度に調整するために必要とされる、第2熱交換器2における冷却作用の大きさ等を勘案して決定されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る液状有機廃棄物の酸化分解処理装置における処理回路の要部を示した説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1…予熱器、2…第2熱交換器、3…貯留タンク、4…バルブ、5…原液供給ポンプ、6,7…管路、8…混合器、9…酸素供給装置、10〜12…管路、13…第1反応器、14…第2反応器、15〜17…管路、18…放熱器、19〜21…管路、22…分岐部、23,24…管路、25…ポンプ、26…管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状有機廃棄物を炭化の抑制が可能な所定温度に予熱する予熱器と、前記液状有機廃棄物を加熱しつつ、酸化分解処理を行う酸化分解処理器と、前記予熱器と酸化分解処理器との間に配設された混合器と、該混合器に酸素を供給する酸素供給手段とを備え、前記予熱器で予熱された液状有機廃棄物を混合器内で酸素と混合させた上で、酸化分解処理器へ送液するように構成したことを特徴とする液状有機廃棄物の酸化分解処理装置。
【請求項2】
前記予熱器を第1熱交換器とするとともに、前記酸化分解処理器と予熱器との間に第2熱交換器を配設し、前記酸化分解処理器から排出された生成物を第2熱交換器を経由して第1熱交換器へ送液することにより、第1熱交換器にて液状有機廃棄物と熱交換するとともに、その第1熱交換器にて熱交換された生成物の一部を再度第2熱交換器へ環流することにより、前記酸化分解処理器から排出されて第2熱交換器を通る生成物と熱交換してから、混合器へ送液されるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の液状有機廃棄物の酸化分解処理装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−226362(P2009−226362A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77803(P2008−77803)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(393028357)シブヤマシナリー株式会社 (77)
【出願人】(592148878)株式会社東洋高圧 (49)
【Fターム(参考)】