説明

液状油脂とその製造法

【課題】安価なパーム系油脂を原料とし、特段に高い液状性と酸化安定性を兼ね備えた安価な液状油脂と、PPPを多く含む固体脂とを提供する。
【解決手段】構成脂肪酸中の飽和脂肪酸70重量%以下のパーム系油脂を主原料とし、油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまで、かつ反応中にSSSが31重量%を越えることなくS2Uが14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応した後、液状油脂と固体脂とに分別する、また、前記パーム系油脂を主原料とする油脂に外部から力を加えて流動させつつ前記ダイレクトエステル交換反応した後、固体脂含量を1重量%以下にすることなく液状油脂と固体脂とを分別することで、SU2/UUUが1.9以下、SSS含量が2重量%以下、2位にパルミチン酸が結合したグリセライドを10〜30重量%含む液状油脂と、PPPを多く含む固体脂と、を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーム系油脂を主原料とする液状油脂およびその製造方法並びに前記液状油脂を含有する食品に関する。また、本発明は、固体脂の製造方法及び固体脂並びにこれを含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
低温で高い液状性を持つ大豆油やナタネ油は、サラダ油など液状油脂として幅広い用途に利用されている。これら大豆油やナタネ油は、低温でも液状性は良好であるが、酸化安定性が悪く、加熱や保管中に風味が劣化しやすい。このため、酸化安定性が高く、液状性の高い油脂が求められている。
【0003】
一方、常温で固体であるパーム油は、安定性が高く、価格競争力もあることから、年々生産量が増加している。そのため、パーム油を原料として、液状油脂を作る多くの試みが行われている。
【0004】
パーム油から液状油脂を得るためには、溶剤あるいは無溶剤下で、硬質部を除く方法が、広く行われている。しかし、これらの方法で得られる液状油脂は、低温で結晶が発生するため、十分な液状性がない。また、更に分別を繰り返すことでパーム油から高ヨウ素価(ヨウ素価70)の液状部を得て、低温での結晶の発生量を抑制し、サラダ油に近い特性を持つ液状油脂が得られる製法がある(非特許文献1)。しかし、この方法は、分別を繰り返す為に収率が低い。更に、同様の方法で作製した高ヨウ素価(ヨウ素価70)のパーム系油脂由来液状油脂を分析したところ、液状油脂中のトリ不飽和酸グリセライド(UUU)含量は11.5重量%と低く、SU2(モノ飽和脂肪酸ジ不飽和脂肪酸グリセライド)/UUU(重量比)は5.3、SSS(トリ飽和酸グリセライド)含量は0.02重量%であり、曇点は2.5℃であり、液状性は十分ではない。
【0005】
また、ダイレクトエステル交換反応は油脂中のトリ飽和酸グリセライドなどの高融点成分を結晶として析出させながらエステル交換反応を行なう反応であり、油脂中のトリ飽和酸グリセライド(SSS)とトリ不飽和酸グリセライド(UUU)を増加させ、液状油脂を得ることが可能である。例えば、パーム油を原料にしてダイレクトエステル交換反応を行なった後に硬質部を分別除去することで液状油脂を得る方法がある(非特許文献2)。しかし、この方法は、静置したままダイレクトエステル交換反応を進行させているため、ダイレクトエステル交換反応により流動性を失った分離性の悪い結晶が発生している。このため、液状油脂を得るには、分離性の悪い結晶を、一旦全て溶解させた後、再結晶させて硬質部を分別除去しなければならず、工程が煩雑であり、製造時間、製造コストの点で問題である。また、トリ飽和酸グリセライド含量が2重量%を超えており、液状性も不十分であった。
【0006】
また、アルカリ触媒を用いてパーム油をエステル交換した後、硬質油を除去することで液状油脂を得る方法もある(特許文献1)。しかし、この方法も、収率が悪く、液状性も十分ではない。
【0007】
また、ランダムエステル交換能を有するリパーゼを用いてパームオレインをエステル交換する工程と、高融点部を分別除去する工程を、複数回繰り返すことにより、液状性の良いヨウ素価70以上の油脂を得る方法が開示されている(特許文献2)。しかし、この方法は、エステル交換と、高融点部を除去するための晶析、分別ろ過とを複数回行う必要があり、非常に手間がかかり、且つ収率も悪く、液状性も不十分であった。
【0008】
更に、安定性の低い大豆油やナタネ油を水素添加した後、ダイレクトエステル交換反応し、その後、硬質部を分別除去することで、安定性の高い液状油脂を得る方法も試みられている(特許文献3)。しかし、この方法も、静置して20℃でダイレクトエステル交換反応を進行させており、ダイレクトエステル交換反応により発生した分離性の悪い結晶を分別して液状油脂を得るために、結晶を、一旦全て溶解した後、再結晶を行い、硬質部を分別除去しなければならない。このため、この方法も、溶剤の添加、結晶の溶解、再結晶および分別を行う必要があり、工程が煩雑で、製造時間の長さおよび製造コストの点で問題がある。
【0009】
上記のように、パーム油から液状油脂を得るこれまでの方法は、いずれも、分別を何度も繰り返すか、あるいは条件を特に規定せずにダイレクトエステル交換反応後、結晶を、一旦全て溶解して再結晶した後、分別している。このため、工程が煩雑で、製造時間の長さおよび製造コストの点で問題があった。
【0010】
また、2位(β位)にパルミチン酸が結合したトリグリセライドは、α位にパルミチン酸が結合したトリグリセライドにくらべ、はるかに高い吸収性を示すことが知られている(特許文献4、[0003])。
【0011】
ところが、パ−ム油を原料として液状油脂を作製する際にろ別される固体脂及び該液状油脂は、構成脂肪酸としてパルミチン酸が多いものの、その殆どが1、3位に結合している。
固体脂の場合、2位にパルミチン酸を有するグリセライドは、母乳の油脂成分に多く含まれるOPO(2−パルミトイル−1,3−ジオレイルトリグリセライド)構造の原料や、マーガリンやチョコレートの原料に利用されるPPO(1,2−ジパルミトイル−3−ジオレイルトリグリセライド)構造の原料になる。これらは、例えば、オレイン酸と、トリパルミチン酸グリセライド(PPP)のように2位にパルミチン酸を有するトリグリセライドとから、1,3位特異的酵素などによって1,3位を特異的にエステル交換することで作製される。
【0012】
高純度なPPPを得る方法として、パーム油を原料として溶剤を用いて繰り返し分別する方法がある(特許文献5)。しかし、パーム油自体には構成脂肪酸としてパルミチン酸が多く含まれているものの、PPPの形としては多く含まれないため、高純度のPPPを得るには溶剤を用いて繰り返し分別する必要がある。このため、最終的に得られる収率も低く、また、溶剤を使用しているため溶剤を除去する必要があり、生産性が悪い。また、油脂中のPPP以外の油脂組成はPOPやPOOなど2位にパルミチン酸を含まないグリセライドが殆どであるため、油脂中の2位にパルミチン酸を有するグリセライドの含量は低い。
【0013】
別の方法としてグリセリンとパルミチン酸のエステル合成反応により合成する方法もある。しかし、この方法は、高純度なPPPが得られるが、純度の高い脂肪酸、グリセリンが必要であったり、反応後に脂肪酸を除去する必要があるなど、非常にコストがかかるといったデメリットがあった。
【0014】
2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含む天然の油脂としては、ラードが挙げられる。しかし、ラードは独特の獣臭が発現し、更に時間の経過と共に戻り臭が発生し、また宗教上の理由で使用が困難な場合がある、といろいろな問題がある。そこで、植物油を原料として、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含む油脂を製造する方法の開発が望まれている。
【0015】
自然界に豊富にあるオレイン酸やリノール酸を多く含んだ油脂を水素添加して得られる、ステアリン酸を有するグリセライドを含む油脂とは異なり、パルミトオレイン酸などの炭素数16の不飽和脂肪酸含量は自然界に極端に少ない。このため、天然原料を水素添加して2位にパルミチン酸を有するグリセライドを得ることは出来ない。
【0016】
OPOを得る方法として、パルミチン酸の含量が多いが、2位にパルミチン酸を有するグリセライドが少ないパーム油を化学的にランダムエステル交換することで、2位のパルミチン酸含量を増加させる方法がある(特許文献6)。しかし、この方法で得られたOPOは液状性が低く、サラダ油などには使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第2,442,531号明細書
【特許文献2】特開2008−194011号公報
【特許文献3】特開昭57−165491号公報
【特許文献4】特許第3120906号公報
【特許文献5】特開平9−75015号公報
【特許文献6】特開昭61−209544号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Gijs H.Calliauw.et.al., “Principles of palm olein fractionation:a bit of science behind the technology”, Lipid Technology, July 2007, Vol.19, No.7, p.152-155
【非特許文献2】Regina C. A. Lago and Leopold Hartman,“Directed Interesterification of a Brazilian Palm Oil and Analysis of the Original and Interesterified Oil and its Fractions” J. Sci. Food Agric, 1986, 37, p.689-693
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、安価なパーム系油脂を主原料として特段に高い液状性と酸化安定性を兼ね備えた安価な液状油脂、並びに該液状油脂を高収率で製造することができ、且つ従来法に較べて製造コスト、製造時間を削減でき、生産性の高い製造方法を提供することを目的とする。
更に、本発明は、2位(β位)にパルミチン酸が結合し、高い吸収性を示すグリセライドを多く含む液状油脂を提供することを目的とする。
更に、本発明は、パーム系油脂から、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含有し、中でもトリパルミチン酸グリセライド(PPP)を多く含む固体脂を、安価に、且つ液状性、酸化安定性に優れた液状油脂と同時に製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下のような知見を得た。
【0021】
第一の製造方法として、パーム系油脂を主原料とし、ダイレクトエステル交換反応を実施する際、油脂中のSSS/S2Uが0.5以上、特に好ましくは2.0以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、反応を停止することで、その後、硬質部を除去する際に、通常は分離効率の悪い乾式分別を用いても、1回の分別で、液状性が高く、且つ酸化安定性も高い液状油脂を高収率で得ることが出来る。
【0022】
第二の製造方法として、外部から力を加えることで油脂を流動させながらダイレクトエステル交換反応を行なうことで、前記エステル交換反応中に分離性の良い結晶を発生させることができ、また、固体脂含量を1%以下にすることなく分別することで、ダイレクトエステル交換反応で発生した結晶を晶析せずにそのまま効率良く分取できるため、分別のための加熱、冷却を無くしても高収率で液状油脂が得られる。
【0023】
更に、上記方法によれば、2位(β位)にパルミチン酸が結合し、高い吸収性を示すグリセライドを多く含み、液状性が高く、且つ酸化安定性が高い液状油脂が得られる。
【0024】
また、本発明者らは、パーム油脂を原料にしてダイレクトエステル交換反応を行ない、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを増加させた後、分別することで、2位(β位)にパルミチン酸が結合し、液状性が高く、且つ酸化安定性も高い液状油脂と同時に、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを高含有する固体脂を安価に得られることが出来ることを見出した。
【0025】
本発明は、上記のような種々の知見に基づき、完成されたものである。
【0026】
即ち、本発明の第一は、パーム系油脂を主原料とし、SU2/UUU重量比が1.9以下且つSSS含量が2重量%以下であり、2位にパルミチン酸が結合したグリセライドを10〜30重量%含むパーム油由来の液状油脂に関する。好ましい実施態様は、SSS含量が0.5重量%以下且つS2U含量が10重量%以下である上記記載の液状油脂に関する。より好ましい実施態様は、UUU含量が25重量%以上である上記記載の液状油脂に関する。更に好ましい実施態様は、また、好ましい実施態様では、曇点が0℃〜−12℃の範囲内である上記記載の液状油脂に関する。
【0027】
本発明の第二は、SU2/UUU重量比が1.9以下、SSS含量が2重量%以下である液状油脂の製造方法であって、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が70重量%以下であるパーム系油脂を主原料として用い、油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行い、反応を停止させた後、硬質部を分別除去することを特徴とする液状油脂の製造方法に関する。好ましい実施態様は、油脂中のSSS/S2Uが2.0以上になるまでダイレクトエステル交換反応させてから反応を停止させる上記記載の液状油脂の製造方法に関する。更に、好ましい実施態様は、反応中の油脂中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、その後、硬質部を分別除去する上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、前記パーム系油脂の構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸量が3〜52重量%である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、前記パーム系油脂がパームオレインである上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、パーム系油脂以外の油脂として大豆油および/またはナタネ油を用いてなる上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、ダイレクトエステル交換反応温度が0℃〜40℃である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、分別が乾式分別である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。更に、好ましい実施態様は、乾式分別の温度が0℃〜45℃である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。より好ましい実施態様は、乾式分別の温度が0℃〜10℃である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。
【0028】
また、本発明の第三は、SU2/UUU重量比が1.9以下、SSS含量が2重量%以下である液状油脂の製造方法であって、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が70重量%以下であるパーム系油脂を主原料として用い、外部から力を加えることで油脂を流動させながらダイレクトエステル交換反応を行なった後、固体脂含量を1重量%以下にすることなく分別することを特徴とする液状油脂の製造方法に関する。好ましい実施態様は、油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応させてから反応を停止させる上記記載の液状油脂の製造方法に関する。更に、好ましい実施態様は、反応中の油脂中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、その後、硬質部を分別除去する上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、前記パーム系油脂の構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸量が3〜52重量%である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、前記パーム系油脂がパームオレインである上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、パーム系油脂以外の油脂として大豆油および/またはナタネ油を用いてなる上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、ダイレクトエステル交換反応温度が0℃〜40℃である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。また、好ましい実施態様は、分別が乾式分別である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。更に、好ましい実施態様は、乾式分別の温度が0℃〜45℃である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。より好ましい実施態様は、乾式分別の温度が0℃〜10℃である上記記載の液状油脂の製造方法に関する。
【0029】
本発明の第四は、上記記載の製造方法により製造された液状油脂に関する。
【0030】
本発明の第五は、上記記載の液状油脂を含有する食品に関する。
【0031】
また、本発明は、ヨウ素価55以上のパーム系油脂を原料にして得られる、固体脂全体中のトリパルミチン酸グリセライド含量が45重量%以上である固体脂に関する。好ましい実施態様は、固体脂全体中のトリパルミチン酸グリセライド含量が60重量%以上である上記記載の固体脂に関する。より好ましくは、固体脂全体中に、2位の構成脂肪酸がパルミチン酸であるグリセライドの含量が65重量%以上である上記記載の固体脂に関する。
【0032】
更に、本発明は、上記のような本発明の液状油脂の製造方法において、ダイレクトエステル交換反応した後、液状油脂(軟質部)を分別除去することで、液状油脂と同時に固体脂を製造する方法に関する。好ましい実施態様は、反応物中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、その後、軟質部を分別除去することを特徴とする上記記載の固体脂の製造方法に関する。より好ましくは、ダイレクトエステル交換後の油脂を0〜40℃で冷却結晶化し、その後、乾式分別により軟質部を分別除去することを特徴とする上記記載の固体脂の製造方法、更に好ましくは、乾式分別温度が、0〜30℃である上記記載の固体脂の製造方法、特に好ましくは、軟質部を乾式分別により分別除去して得た固体脂を、40〜60℃まで昇温した後、乾式分別により再び軟質部を除去することを特徴とする上記記載の固体脂の製造方法、に関する。
【発明の効果】
【0033】
本発明に従えば、安価なパーム系油脂を主原料として、特段に高い液状性と酸化安定性を兼ね備えた安価な液状油脂を高収率で得ることができる。更に、本発明に従えば、2位(β位)にパルミチン酸が結合した、高い吸収性を示すグリセライドを多く含む液状油脂を得ることができる。
また、本発明の液状油脂の製造方法は、従来法に較べて、製造コスト、製造時間を削減でき、生産性が高い。
また、本発明に従えば、パーム系油脂を原料として、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含有し、中でもトリパルミチン酸グリセライド(PPP)を多く含む固体脂を安価に、しかも液状油脂と同時に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。
本発明の液状油脂は、パーム系油脂を主な原料としながらも、液状性、酸化安定性に優れていて、液状油脂中のトリグリセライド組成に特徴がある。
【0035】
本発明におけるトリグリセライドの脂肪酸組成は、以下のように記する。
S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸
SSS:トリ飽和脂肪酸グリセライド
SU2:モノ飽和脂肪酸ジ不飽和脂肪酸グリセライド
S2U:ジ飽和脂肪酸モノ不飽和脂肪酸グリセライド
UUU:トリ不飽和脂肪酸グリセライド
【0036】
また、本発明において、前記各トリグリセライド含量を測定する方法は、以下のとおりである。
<油脂中の各トリグリセライド含量の測定>
油脂中の各トリグリセライド含量は、HPLCを用いて、AOCS Official Method Ce 5c−93に準拠して測定し、各ピークのリテンションタイムおよびエリア比から算出した。以下に、分析の条件を記す。
溶離液 :アセトニトリル:アセトン(70:30、体積比)
流速 :0.9ml/分
カラム :ODS
カラム温度:36℃
検出器 :示差屈折計
【0037】
更に、本発明において、油脂中の脂肪酸組成を測定する方法は、以下のとおりである。
<油脂中の脂肪酸組成の測定>
油脂中の脂肪酸組成の測定は、FID恒温ガスクロマトグラフ法により行うことができる。FID恒温ガスクロマトグラフ法とは、社団法人日本油化学協会編「基準油脂分析試験法」(発行年:1996年)の「2.4.2.1 脂肪酸組成」に記載された方法である。
【0038】
本発明で使用する原料油脂は、パーム系油脂、好ましくはヨウ素価55以上のパーム系油脂が主である。前記パーム系油脂としては、パーム由来であれば特に限定はなく、パーム精製油、未精製のクルード油、一回以上の分別によって得られたパームオレインなどの分画油、などが例示される。
【0039】
原料として使用するパーム系油脂の構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量は70重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3〜70重量%、更に好ましくは3〜52重量%、特に好ましくは30〜52重量%である。飽和脂肪酸含量が70重量%より多いと、ダイレクトエステル交換中に硬質部が多くなり過ぎ、分離性の良い結晶を得ることが困難になり、液状性の高い液状油脂を高収率で得ることが困難な場合がある。しかし、飽和脂肪酸含量が3重量%より少ないものだと、原料が高価になり、得られた油脂も高価なものになる為、製造コストがあがり、本発明の効果を享受しにくい場合がある。パーム系油脂の好ましい実施態様はパームオレインである。本発明における前記パームオレインとは、パームの果肉から採取した脂を分離して得られ、ヨウ素価が55以上のものを指す。
【0040】
本発明の液状油脂の製造方法においては、原料油脂としてパーム系油脂以外の油脂を更に用いても良い。但し、本発明の効果をより享受するためにはパーム系油脂以外の油脂の含有量は、原料油脂全体中50重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下、更に好ましくは10重量%以下、最も好ましくは0重量%である。パーム系油脂以外の油脂の含有量が50重量%より多いと、原料が高価になり、得られた油脂も高価なものになる為、製造コストがあがり、本発明の効果を享受しにくい場合がある。
【0041】
前記パーム系油脂以外の油脂としては、最終的に得られる液状油脂中のSU2/UUU重量比が1.9以下、より好ましくは1.1以下、且つSSS含量が2重量%以下となる食用油脂であれば特に限定はない。そのような油脂の例としては、大豆油、ナタネ油、ひまわり油、オリーブ油、ごま油、キャノーラ油、綿実油、こめ油、サフラワー油、やし油、パーム核油、シア油、サル脂、イリッぺ脂、カカオ脂、牛脂、豚脂、乳脂、これらの油脂の分別脂、硬化油、エステル交換油などが挙げられる。これらの中でも、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が20重量%よりも低い大豆油やナタネ油などが本発明の効果を発現し易いために好ましい。
【0042】
本発明で原料として使用するこれらの油脂の構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量は、パーム系油脂について述べたのと同様の理由により、70重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3〜70重量%、更に好ましくは3〜52重量%である。
【0043】
本発明のパーム油由来の液状油脂は、液状性が高いほど好ましく、該液状油脂のトリグリセライド組成は、SU2/UUU重量比が1.9以下であることが好ましい。サラダ油など高い液状性が求められる用途向けには1.3未満が好ましく、より好ましくは1.1以下である。また、SSS含量が2重量%以下であることが好ましい。前記SU2/UUU重量比は、更に高い液状性を求めると、1.0以下がより好ましく、0.95以下が更に好ましく、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下と、小さくなるほど好ましい。一方、製造のし易さと酸化安定性を考慮すると、前記SU2/UUU重量比の下限値は、0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.65以上が更に好ましく、0.7以上が特に好ましい。液状性と製造のし易さのバランスを考慮すると、前記SU2/UUU重量比は、1.1〜0.5の範囲が好ましく、1.0〜0.6がより好ましく、0.95〜0.65が更に好ましく、0.9〜0.7が最も好ましい。
【0044】
また、液状性を高めるのに最も効果の大きいものは、油脂中におけるSSS含量をできるだけ少なくすることであり、該液状油脂のSSS含量は、0.5重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以下であることが更に好ましく、0.05重量%以下であることが特に好ましく、0.03重量%以下が最も好ましい。更に、液状性を高めるためには、S2U含量が液状油脂全体中10重量%以下であることが好ましく、S2U含量が5重量%以下であることがより好ましい。またUUU含量は12重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがより好ましく、35重量%以上であることが更に好ましく、40重量%以上であることが最も好ましい。
【0045】
また、本発明の液状油脂は、パーム系油脂、好ましくはヨウ素価55以上のパーム系油脂を主原料とし、特定の脂肪酸組成を有する。更に、本発明の液状油脂は、2位にパルミチン酸が結合し、高い吸収性を示すグリセライドを多量に含む。
【0046】
本発明のパーム油由来の液状油脂は、一般的に吸収性が高いといわれている2位(β位)にパルミチン酸が結合したグリセライドの含量が多いほど好ましいが、液状性も考慮にいれると10〜30重量%が好ましく、13〜30重量%がより好ましく、16〜30重量%が更に好ましく、16〜25重量%が特に好ましく、16〜20重量%が最も好ましい。
【0047】
液状油脂中の多価不飽和脂肪酸含量は、酸化安定性の観点からは少ないほど良く、従って21重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、19重量%以下が更に好ましく、18重量%以下が特に好ましく、17重量%以下が最も好ましい。多価不飽和脂肪酸量を減らすには、ダイレクトエステル交換反応を停止するタイミングを早めるか、分別温度を高くすればよい。
【0048】
また、本発明のパーム油由来の液状油脂の曇点は、前記液状油脂組成を満たしていれば特に問題はないが、液状性の観点から0〜−12℃が好ましく、製造のし易さと酸化安定性の観点から0〜−10℃がより好ましく、0〜−9℃が更に好ましい。サラダ油など高い液状性が求められる用途向けには−2℃〜−12℃が好ましく、−2.5℃〜−12℃がより好ましい。
【0049】
本発明のパーム油由来の液状油脂は、他の液状油脂と混合した混合液状油脂として使用してもなんら問題ない。しかし、コストや酸化安定性の面から他の液状油脂の混合量は少ない程良く、パーム油由来の本発明の液状油脂を混合液状油脂全体中50重量%以上混合することが好ましく、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、最も好ましくは100重量%である。パーム油由来の液状油脂の含有量が50重量%より少ないと、酸化安定性が悪くなり、また原料が高価となり、得られた油脂も高価なものになる為、製造コストがあがり、本発明の効果を享受しにくい場合がある。
【0050】
前記他の液状油脂としては、大豆油、ナタネ油、ひまわり油、オリーブ油、ごま油、キャノーラ油、綿実油、こめ油、サフラワー油などが例示できる。
【0051】
本発明における液状油脂の製造方法としては2つある。第一の製造方法は、ダイレクトエステル交換反応をどこで停止させるかに特徴がある。また、第二の製造方法は、ダイレクトエステル交換反応中に生成する結晶の分離性が良いことに特徴があり、その後、その結晶を全て溶解させず分別を行なうことに特徴がある。
【0052】
第一の製造方法では、前記原料油脂を用い、油脂中のSSS/S2Uが大きくなるほど分離性の高い結晶が発生しやすくなり、分離効率が上がることから、SSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行い、反応を停止させた後、硬質部を分別除去する。前記油脂中のSSS/S2Uが0.75以上、1.0以上、1.25以上、1.5以上、1.75以上と大きくなるほど好ましく、油脂中のSSS/S2Uが2.0以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行うことが最も好ましい。好ましい実施態様では、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が70重量%以下であるパーム系油脂を主原料としたダイレクトエステル交換反応を、少なくとも反応中の油脂組成物中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になり、反応を停止させるまで行うことが好ましく、その後、分別する。前記を満たせば、ダイレクトエステル交換反応はどれだけ行っても良いが、コストを考え、前記を満たせば直ぐに停止させることが好ましい。
【0053】
また、第二の製造方法では、前記した原料油脂を用い、外部から力を加えることで油脂を流動させながらダイレクトエステル交換反応を行い、その後、固体脂含量を1%以下にすることなく分別する。好ましい実施態様では、油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行う。前記油脂中のSSS/S2Uが0.75以上、1.0以上、1.25以上、1.5以上、1.75以上と大きくなるほど好ましく、油脂中のSSS/S2Uが2.0以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行うことが最も好ましい。また、ダイレクトエステル交換反応中の油脂組成中のSSS含量が31重量%を超えないことがより好ましく、且つ、S2U含量が14重量%以下になることが更に好ましい。
【0054】
外部から力を加えて油脂を流動させるためには、攪拌する、反応管などにポンプなどの外圧で油脂を通す、高所から自然落下させるなど、各種の方法を採用しうる。具体的には、撹拌するには、攪拌翼を有しているタンクやピンマシンなどの装置を用いることにより、反応させる油脂を流動させる。反応管などにポンプなどの外圧で油脂を通すには、スタティックミキサーなどの手段により、反応させる油脂を流動させることができる。もし、反応開始時や途中で撹拌などによる外部からの力を加えず、油脂を流動させないでダイレクトエステル交換反応を行うと、分離性の悪い結晶が生成し、反応中の油脂が固形状になってしまい、分別が困難となる場合がある。
【0055】
前記外部から力を加えて油脂を流動させてダイレクトエステル交換反応を行う第二の製造方法において、更に液状性を高めるためには、ダイレクトエステル交換反応後、分別処理するまでに、晶析することが好ましく、収率を高めるためには昇温することが好ましい。但し、昇温のみする場合は液状性が低くなる場合がある。昇温する場合の条件は、固体脂含量が1重量%以下にならないようにすることである。もし、固体脂含量が1重量%以下になるまで昇温すると、加熱ためのコストが高くなり、また晶析も行う場合に種晶としての効果がなくなる場合がある。晶析速度は0.01℃/分〜5℃/分が好ましく、0.1℃/分〜2℃/分がより好ましい。晶析速度が前記範囲を外れると、生成する結晶の分離性が悪い場合がある。
【0056】
上記のような、本発明のパーム由来の液状油脂の製造方法におけるダイレクトエステル交換反応とは、エステル交換能を有する触媒下で油脂結晶を発生させながらエステル交換を行う反応である。本発明におけるダイレクトエステル交換反応の方法は、バッチ式、連続式を問わない。更に、前記ダイレクトエステル交換反応は、循環式であってもよい。循環式のダイレクトエステル交換反応としては、例えば、特定の温度に調整した原料油タンクAで析出したパーム系油脂中のSSS及びSS(飽和脂肪酸2つで構成されるジグリセライド)を沈降させ、上澄み液をエステル交換装置Bに連続的に移送する工程(1)と、エステル交換装置Bにおいて、移送された上澄み液をリパーゼの至適温度でエステル交換反応し、その後、再び原料油タンクAに移送する工程(2)を繰り返すことで、原料油タンクAにある油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行う。より好ましくは、前記油脂中のSSS/S2Uが、0.75以上、1.0以上、1.25以上、1.5以上、1.75以上、最も好ましくは前記油脂中のSSS/S2Uが2.0以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行う。更に好ましくは、油脂中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応を行う。その後、原料タンクA中の油脂を液状油脂(軟質部)と固体脂(硬質部)とに分別する。
【0057】
前記ダイレクトエステル交換反応に使用する触媒は特に限定せず、エステル交換能を有していれば化学触媒、酵素触媒など何を使用しても良い。化学触媒の中でもカリウムナトリウム合金は低温での活性が高いことから好ましく、ナトリウムメチラートは経済性や扱い易さからより好ましい。化学触媒の使用量は特に限定されず、通常のエステル交換で使用される量で良いが、反応効率と経済性からは反応油脂100重量部に対して0.01重量部〜1重量部が好ましい。ナトリウムメチラートでは、反応効率と分別効率、液状油脂の収率の観点から反応油脂100重量部に対して0.05重量部〜0.5重量部が好ましく、0.1重量部〜0.3重量部がより好ましい。
【0058】
酵素触媒は、エステル交換能を有するリパーゼであれば特に限定されず、位置特異性が全くないランダムエステル交換酵素でも、1,3位特異性を有するエステル交換酵素でも良い。但し、所望の2位のパルミチン酸量によっては、ランダムエステル交換反応を行うか、位置特異的エステル交換反応を行うかは、使い分けたほうが好ましい。酵素触媒の使用量はエステル交換反応が進行する量であれば良く特に限定されないが、反応効率と経済性から反応油脂100重量部に対して0.5重量部〜20重量部が好ましい。
【0059】
本発明において、ダイレクトエステル交換反応温度は、高融点グリセライドが結晶化する温度であれば特に限定されないが、反応開始時は効率良く反応を行なうために触媒活性が最も高くなる温度が好ましい。具体的には、ナトリウムメチラートを使用する場合は50℃〜120℃が好ましく、カリウムナトリウム合金を使用する場合は25〜270℃が好ましい。また、酵素触媒を使用する場合は50℃〜70℃が好ましい。また、化学触媒を使用する場合は、反応開始から5〜20分後に、ダイレクトエステル交換反応温度を0〜40℃にすることが好ましく、更には10℃〜40℃にすることがより好ましい。酵素触媒を使用する場合は、反応開始から3〜18時間後に、ダイレクトエステル交換反応温度を0℃〜40℃にすることが好ましく、更には10℃〜40℃にすることがより好ましい。なお、本発明では、最終的な反応温度をダイレクトエステル交換反応温度とする。
【0060】
本発明の製造方法におけるダイレクトエステル交換反応において、攪拌する場合は、油脂に流動性を与え、また分離性の良い結晶を生成させる観点から、1000rpm以下の速度で攪拌を行うことが好ましく、より好ましくは600rpm以下、更に好ましくは300〜1rpmである。
【0061】
ダイレクトエステル交換反応後の最終的な結晶量は、分別効率の観点からは反応油脂全体中、3重量%〜60重量%が好ましく、より好ましくは5重量%〜40重量%である。前記結晶量は、反応時間でコントロールすれば良く、前記0〜40℃、好ましくは10℃〜40℃でのダイレクトエステル交換反応を、化学触媒使用の場合は1〜48時間、酵素触媒使用の場合は3〜120時間行うことが好ましい。
【0062】
ダイレクトエステル交換反応を停止する方法は、反応が停止しさえすれば特に問わないが、化学触媒であれば水やクエン酸水の添加などが挙げられ、分別時の機器の劣化を防ぐ観点から酸性物質で中和停止することが好ましい。停止剤の添加量は、分別効率の観点から反応油脂100重量部に対して0.1重量部〜5重量部が好ましく、0.2重量部〜1重量部がより好ましい。5重量部より多いと、分別時のろ過効率が悪くなる場合があり、液状油脂の収率が低下する場合がある。一方、停止剤の添加量が0.1重量部より少ないと、色調が悪くなったり、反応が停止しない場合がある。
【0063】
ダイレクトエステル交換反応を停止するタイミングは、液状油脂の収率の観点からは、反応中の油脂組成中のSSS含量が31重量%以下且つS2U含量が14重量%以下になるまで反応した後が好ましい。より好ましくは液状油脂の液状性の観点から、SU2/UUU(重量比)が1.9以下、更には1.1以下になるまで反応した後であることが好ましい。
【0064】
一方、ダイレクトエステル交換反応を続けるほど反応中の油脂中のSSS含量が増えてゆくため、反応系中に固体脂が増えすぎて分別しにくくなる。従って、分別効率の観点からは、反応中の油脂中のSSS含量が50重量%を越えることなく反応を停止することが好ましく、SSS含量が31重量%を越えることなく反応を停止することがより好ましく、SSS含量が1重量%〜31重量%の間で反応を停止することが更に好ましく、1重量%〜25重量%がより好ましく、1〜20重量%が特に好ましく、1重量%〜15重量%が最も好ましい。
【0065】
また、ダイレクトエステル交換反応を続けるほど反応中の油脂中のS2U含量が減ってゆき、反応後の分別で得られる液状油脂の液状性の観点からは、反応中の油脂中のS2U含量が14重量%以下になるまで反応させてから停止することが好ましく、10重量%以下になるまでがより好ましく、7重量%以下になるまでが更に好ましく、5重量%以下になるまでが最も好ましい。
【0066】
本発明の液状油脂の製造方法における分別の方法は、溶剤分別、乾式分別を問わないが、溶剤分別は溶剤の使用により設備費やランニングコストがかかるため、溶剤を使用しない乾式分別が好ましい。溶剤を使用する場合は、ヘキサン、アセトンなどを用いることができる。乾式分別の場合は、分別温度は、0〜45℃が好ましく、より高い液状性を得るために30℃以下が好ましく、より好ましくは20℃以下、更には10℃以下がより好ましく、収率の観点も含めると0〜10℃が最も好ましい。
【0067】
本発明のパーム油由来の液状油脂は、大豆油やナタネ油の様に一般的な液状油脂で利用されている方法で利用することが出来、主にドレッシング、マヨネーズ、クリーム、マーガリン、ショートニングなどの加工油脂製品の原料として、或いはそのまま、サラダ油、フライ油などとして利用することが出来る。
【0068】
また、本発明の固体脂は、パーム軟質油を原料にして得られ、特定量のトリパルミチン酸グリセライドを含有することを特徴とする。
【0069】
本発明の固体脂は、トリパルミチン酸グリセライド(PPP)含量が、45重量%以上であることが好ましく、60重量%以上がより好ましい。PPP含量が45重量%未満であると、2位の構成脂肪酸がパルミチン酸である油脂組成物を、該固体脂を原料として効率的に作製できない。また、該固体脂全体中には、2位の構成脂肪酸がパルミチン酸であるグリセライドを65重量%以上含有することが好ましい。2位の構成脂肪酸がパルミチン酸であるグリセライドが65重量%未満であると、該固体脂を原料として2位の構成脂肪酸がパルミチン酸である油脂組成物を効率的に作製できない場合がある。
【0070】
前記のような本発明の固体脂は、液状性、酸化安定性に優れた本発明の液状油脂と同時に製造できる。従って、本発明によれば、パーム系油脂を原料として、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含有し、中でもPPPを多く含む油脂を容易に安価で製造することができる。
【0071】
本発明の固体脂の製造に使用する原料は、パーム系油脂が主である。前記パーム系油脂としてはパーム精製油、未精製のクルード油および一回以上の分別によって得られた分画油などが例示される。また、パーム系油脂のヨウ素価は55以上であることが好ましい。ヨウ素価が55未満の場合は、同時に製造されるパーム系油脂由来液状油脂の量が少なくなりすぎる場合がある。
【0072】
本発明の固体脂の第一の製造方法では、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が70重量%以下であるパーム系油脂を主原料として用い、油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、反応を停止させた後、液状油脂を分別除去することにより、液状油脂と同時に固体脂を製造する。好ましい実施態様では、油脂中のSSS/S2Uが0.75以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行う。該ダイレクトエステル交換反応は、油脂中のSSS/S2Uが1.0以上、1.25以上、1.5以上、1.75以上、2.0以上と大きくなるまで行うほどより好ましい。更に好ましくは、該ダイレクトエステル交換反応を、反応中の油脂組成物中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になり、反応を停止させるまで行う。また、本発明の固体脂の第二の製造方法では、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が70重量%以下であるパーム系油脂を主原料として用い、外部から力を加えることで油脂を流動させながらダイレクトエステル交換反応を行なった後、固体脂含量を1重量%以下にすることなく液状油脂を分別除去することにより、液状油脂と同時に固体脂を製造する。好ましい実施態様では、油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行う。該ダイレクトエステル交換反応は、油脂中のSSS/S2Uが0.75以上、1.0以上、1.25以上、1.5以上、1.75以上、2.0以上と大きくなるまで行うほどより好ましい。また、更に好ましい実施態様では、パーム系油脂を原料としたダイレクトエステル交換反応を、反応中の油脂組成物中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になり、反応を停止させるまで行い、その後、液状油脂を分別除去する。前記を満たせば、ダイレクトエステル交換反応はどれだけ行っても良いが、コストを考え、前記を満たせば直ぐに停止させることが好ましい。本発明の固体脂を製造する際のダイレクトエステル交換反応とは、エステル交換能を有した触媒下で油脂結晶を発生させながらエステル交換を行う反応のことである。
【0073】
本発明の固体脂の製造方法におけるダイレクトエステル交換反応の方法はバッチ式、連続式を問わない。更に、前記ダイレクトエステル交換反応は、循環式であってもよい。また、ダイレクトエステル交換反応を停止するタイミングは、前記のように、液状油脂の収率の観点から反応中の油脂中のSSS含量が31重量%以下且つS2U含量が14重量%以下になるまで反応した後が好ましい。循環式のダイレクトエステル交換反応としては、例えば、特定の温度に調整した原料油タンクAで析出したパーム系油脂中のSSS及びSS(飽和脂肪酸2つで構成されるジグリセライド)を沈降させ、上澄み液をエステル交換装置Bに連続的に移送する工程(1)と、エステル交換装置Bにおいて、移送された上澄み液をリパーゼの至適温度でエステル交換反応し、その後、再び原料油タンクAに移送する工程(2)を繰り返すことで、原料油タンクAにある油脂中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、その後、原料タンクA中の油脂を液状油脂(軟質部)と固体脂(硬質部)とに分別する。
【0074】
本発明の液状油脂および固体脂の製造方法における分別の方法は、溶剤分別、乾式分別を問わないが、溶剤分別は溶剤の使用により設備費やランニングコストがかかるため、溶剤を使用しない乾式分別が好ましい。
【0075】
溶剤を使用する場合は、ヘキサン、アセトンなどを用いることができる。乾式分別の分別温度は、液状油脂を十分な液状性で得るためには0℃〜30℃が好ましく、20℃以下がより好ましく、収率の観点も含めると0℃〜10℃が更に好ましい。
【0076】
また、固体脂中における、2位にパルミチン酸を有するグリセライドの含有量を高めるためには、一旦前記乾式分別を行った後、分別温度を上昇させて、40℃〜60℃で再度分別することが好ましく、2位にパルミチン酸を有するグリセライドの含有量と収率を考慮すると45℃〜55℃で再度分別することがより好ましい。
【0077】
本発明の固体脂は、クリーム、マーガリン、ショートニング、チョコレートなどの加工油脂製品の原料に利用したり、そのままマイクロカプセルの基材などに利用したりすることが出来る。また、本発明の固体脂は、OPO(2−パルミトイル−1,3−ジオレイルトリグリセライド)構造油脂の原料や、PPO(1,2−ジパルミトイル−3−ジオレイルトリグリセライド)構造油脂の原料などに利用することも出来る。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0079】
<脂肪酸組成の測定>
油脂中の脂肪酸組成は、既述の方法により測定した。
【0080】
<油脂中の各トリグリセライド含量の測定>
油脂中の各トリグリセライド含量は、既述の方法により測定した。
【0081】
<2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量の測定>
分析対象の油脂7.5gとエタノール22.5gを混合しノボザイム435(ノボザイムジャパン社製)を1.2g加えて30℃で4時間反応させ、反応液を濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(型番:シリカゲル60(0.063−0.200mm)カラムクロマトグラフィー用、メルク社製)によりトリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライドの各成分に分離し、そのうちモノグリセライド成分を回収した。そのモノグリセライド0.05gをイソオクタン5mlに溶解し、0.2mol/Lナトリウムメチラート/メタノール溶液1mlを加えて70℃で15分間反応させることによりメチルエステル化し、酢酸により反応液を中和した後に適量の水を加え、有機相をガスクロマトグラフ(型番:6890N、Agilent社製)によるリテンションタイム及びピークエリア面積により2位にパルミチン酸を有するグリセライド含有量を決定した。
【0082】
<曇点>
基準油脂分析試験法「2.2.7−1996 曇り点」に準じて行なった。
【0083】
<サラダ油規格の判定>
基準油脂分析試験法「2.2.8.1−1996 冷却試験(その1)」に準じて測定を行い、5.5時間以上曇らなかったものを○とした。
【0084】
<CDM試験(酸化安定性)>
基準油脂分析試験法「2.5.1.2−1996 CDM試験」に準じてCDM値を測定した。
【0085】
<ヨウ素価>
基準油脂分析試験法「3.3.3−1996 ヨウ素価(ウィイスーシクロヘキサン法)」に準じて測定を行なった。
【0086】
(実施例1) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ18重量%、13.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後、加熱して全ての結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加え、20分間攪拌後、ろ過することで白土を除き、脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、10℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が1.1の液状油脂を3200重量部(収率:64%)得た。
【0087】
(実施例2) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ27重量%、11.6重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が1.1の液状油脂を2700重量部(収率:54%)得た。
【0088】
(実施例3) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で約8時間行った後、更に25℃で約24時間該反応を行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ22重量%、9.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が0.9の液状油脂を3100重量部(収率:62%)得た。
【0089】
(実施例4) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で約8時間行った後、更に25℃で約24時間該反応を行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ30重量%、9.4重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が0.9の液状油脂を2640重量部(収率:53%)得た。
【0090】
(実施例5) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で約8時間、27.5℃で約2時間、25℃で約12時間、22.5℃で約24時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ23重量%、10.6重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が0.7の液状油脂を3000重量部(収率:60%)得た。
【0091】
(実施例6) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で約8時間、27.5℃で約2時間、25℃で約12時間、22.5℃で約24時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ30重量%、8.0重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が0.7の液状油脂を2600重量部(収率:52%)得た。
【0092】
(実施例7) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを10重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で約8時間、27.5℃で約2時間、25℃で約2時間、22.5℃で約5時間、18℃で約15時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ29重量%、3.8重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が0.5の液状油脂を2700重量部(収率:54%)得た。
【0093】
(実施例8) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を36℃で約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ13重量%、16.5重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が1.3の液状油脂を3200重量部(収率:64%)得た。
【0094】
(比較例1) 液状油脂の作製
パーム油(ヨウ素価52)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で約8時間行った後、更に25℃で約24時間該反応を行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ33重量%、8.6重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が0.9の液状油脂を1800重量部(収率:36%)得た。
【0095】
(比較例2) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを10重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で約8時間、27.5℃で約2時間、25℃で約2時間、22.5℃で約5時間、18℃で約15時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ37重量%、3.7重量%になったのを確認後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例1と同様にして、トリグリセライド組成中のSU2/UUU(重量比)が0.5の液状油脂を850重量部(収率:17%)得た。
【0096】
(実施例9〜18) 液状油脂の分析
実施例1〜8及び比較例1、2の製造方法で得られた液状油脂(実施例9〜18)について、脂肪酸組成、トリグリセライド組成、曇点、ヨウ素価、CDM値について分析を行い、またサラダ油規格の判定を行い、それらの結果を表1にまとめた。
【0097】
【表1】

【0098】
(実施例19) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、34℃でダイレクトエステル交換反応を24時間行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ20重量%、10.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として25%クエン酸水を15重量部添加して反応を停止した。その後、0.2℃/分で降温し、10℃で16時間晶析した後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を3200重量部(収率:64%)得た。
【0099】
(実施例20) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを10重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃到達後、トリパルミチン粉末(ナカライテクス社製)を25重量部加え、ダイレクトエステル交換反応を4時間行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ20重量%、11.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として25%クエン酸水を30重量部添加して反応を停止した。その後、0.2℃/分で降温し、10℃で16時間晶析した後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を3200重量部(収率:64%)得た。
【0100】
(実施例21) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて300rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、34℃でダイレクトエステル交換反応を24時間行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ20重量%、10.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として25%クエン酸水を15重量部添加して反応を停止した。その後、0.2℃/分で降温し、10℃で16時間晶析した後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を3200重量部(収率:64%)得た。
【0101】
(実施例22) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて600rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、34℃でダイレクトエステル交換反応を24時間行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ20重量%、10.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として25%クエン酸水を15重量部添加して反応を停止した。その後、0.2℃/分で降温し、10℃で16時間晶析した後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を3150重量部(収率:63%)得た。
【0102】
(実施例23) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、38℃でダイレクトエステル交換反応を18時間行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ16重量%、13.0重量%になったのを確認した後、反応停止剤として25%クエン酸水を15重量部添加して反応を停止した。その後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を3850重量部(収率:77%)得た。
【0103】
(実施例24) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、32℃でダイレクトエステル交換反応を16時間行なった後、更に降温し、10℃でダイレクトエステル交換反応を18時間行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ22重量%、9.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として25%クエン酸水を15重量部添加して反応を停止した。その後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を3100重量部(収率:62%)得た。
【0104】
(実施例25) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、32℃でダイレクトエステル交換反応を16時間行なった後、更に降温し、10℃でダイレクトエステル交換反応を18時間行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ22重量%、9.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として25%クエン酸水を15重量部添加して反応を停止した。その後、30℃まで昇温し、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を3350重量部(収率:67%)得た。
【0105】
(実施例26) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、32℃でダイレクトエステル交換反応を12時間行なった後、更に降温し、25℃でダイレクトエステル交換反応を20時間行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ30重量%、8.0重量%になったのを確認した後、反応停止剤として25%クエン酸水を15重量部添加して反応を停止した。その後、0.17℃/分で降温し、10℃で16時間晶析した後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を2700重量部(収率:54%)得た。
【0106】
(実施例27) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、50℃に降温してリパーゼ(ノボザイムズ社製「Lipozyme TL IM」)を500重量部加え、50℃で4時間保持した後、降温し、36℃でダイレクトエステル交換反応を38時間行なった後、更に降温し、10℃で18時間ダイレクトエステル交換反応を行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ22重量%、9.5重量%になったのを確認した後、酵素を含んだまま10℃でフィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を2850重量部(収率:57%)得た。
【0107】
(実施例37) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、34℃でダイレクトエステル交換反応を24時間行なった。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ20重量%、10.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として25%クエン酸水を15重量部添加して反応を停止した。その後、加熱して全ての結晶を溶解し、70℃の温水を加えてから静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで該温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌した後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の油脂温度を、40℃になるまでは1℃/分(設定値)で、40℃からは0.2℃/分(設定値)で降温し、10℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、液状油脂を3200重量部(収率:64%)得た。
【0108】
(比較例4) 液状油脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを10重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を1時間行なった後、攪拌を停止し、更にダイレクトエステル交換反応を3時間行った。その時点で反応中の油脂全体中のSSS含量及びS2U含量がそれぞれ22重量%、9.5重量%になったのを確認した。その油脂を分別しようとしたが、固形状になっており、フィルタープレスに送液することが出来ず、分別することが出来なかった。
【0109】
上記実施例19〜27、37及び比較例4で得られた液状油脂の分析値を表2にまとめた。
【0110】
【表2】

【0111】
(実施例28) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ27重量%、11.6重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後、加熱して全ての結晶を溶解し、70℃の温水を5000重量部加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行なった後、白土を2重量部加えて20分間攪拌し、その後ろ過することで白土を除き、脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で降温し、10℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、固体脂全体中のSSS含量が59重量%、PPP含量が45重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が76重量%である固体脂を2250重量部(収率:45%)得た。
【0112】
(実施例29) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で8時間行った後、更に25℃で約24時間該反応を行ってSSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ30重量%、9.4重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例28と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が64重量%、PPP含量が48重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が82重量%である固体脂を2300重量部(収率:46%)得た。
【0113】
(実施例30) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で8時間、27.5℃で2時間、25℃で12時間、22.5℃で約24時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ23重量%、10.6重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例28と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が59重量%、PPP含量が45重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が75重量%である固体脂を1950重量部(収率:39%)得た。
【0114】
(実施例31) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを10重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で8時間、27.5℃で2時間、25℃で2時間、22.5℃で5時間、18℃で約15時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ29重量%、3.8重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例28と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が64重量%、PPP含量が49重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が83重量%である固体脂を2250重量部(収率:45%)得た。
【0115】
(実施例32) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ27重量%、11.6重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後、加熱して全ての結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、30℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いてろ別することで、固体脂全体中のSSS含量が68重量%、PPP含量が52重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が70重量%である固体脂を2050重量部(収率:41%)得た。
【0116】
(実施例33) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ18重量%、13.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後、加熱して全ての結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、30℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いて軟質部をろ別後、圧力を開放した状態で温度を45℃まで昇温し再び3MPaまで加圧を行なった後、再び温度を60℃まで上昇させた後、再度3MPaまで加圧して、固体脂全体中のSSS含量が95重量%、PPP含量が78重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が91重量%である固体脂を400重量部(収率:8%)得た。
【0117】
(実施例34) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ18重量%、13.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後、加熱して全ての結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、20℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いて軟質部をろ別後、圧力を開放した状態で温度を45℃まで昇温し、再び3MPaまで加圧を行なった後、再び温度を55℃まで上昇させた後、再度3MPaまで加圧して、固体脂全体中のSSS含量が80重量%、PPP含量が61重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が82重量%である固体脂を1000重量部(収率:20%)得た。
【0118】
(実施例35) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ18重量%、13.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後、加熱して全ての結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、20℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いて軟質部をろ別後、圧力を開放した状態で温度を45℃まで昇温し、再び3MPaまで加圧を行なった後、再び温度を50℃まで上昇させた後、再度3MPaまで加圧して、固体脂全体中のSSS含量が73重量%、PPP含量が56重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が84重量%である固体脂を1150重量部(収率:23%)得た。
【0119】
(実施例36) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、30℃でダイレクトエステル交換反応を約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ27重量%、11.6重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後、加熱して全ての結晶を溶解し、70℃の温水を加え、静置して油層と水層を分離し、水を抜いて分離する温水洗浄を行った。分離した水層のpHが8以下になるまで温水洗浄を繰り返した後、油層の油脂を90℃に加熱し、真空脱水を行ない、白土を2重量部加えて20分間攪拌後、ろ過することで白土を除いて脱色を行なった。脱色後の温度を40℃までは1℃/分(設定値)、40℃から0.2℃/分(設定値)で下げ、20℃に到達したらその温度を保持し、降温開始時から計24時間になるまで晶析した。晶析後、フィルタープレス(3MPaまで加圧)を用いて軟質部をろ別後、圧力を開放した状態で温度を45℃まで昇温し、再び3MPaまで加圧を行なった後、再び温度を55℃まで上昇させた後、再度3MPaまで加圧して、固体脂全体中のSSS含量が83重量%、PPP含量が65重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が83重量%である固体脂を1500重量部(収率:32%)得た。
【0120】
(比較例5) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:57)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを10重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を30℃で8時間、27.5℃で2時間、25℃で2時間、22.5℃で5時間、18℃で約15時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ37重量%、3.4重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例28と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が44重量%、PPP含量が固体脂全体中33重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が36重量%である固体脂を4150重量部(収率:82%)得た。
【0121】
(比較例6) 固体脂の作製
パームオレイン(ヨウ素価:64)5000重量部をセパラブルフラスコに入れて100rpmで攪拌しながら、90℃で真空脱水を行なった後、ナトリウムメチラートを5重量部加え、90℃で20分間保持した後、降温し、ダイレクトエステル交換反応を36℃で約8時間行い、SSS含量及びS2U含量が反応中の油脂全体中それぞれ13重量%、16.5重量%になったのを確認した後、反応停止剤として水を50重量部添加して反応を停止した。その後は実施例28と同様にして、固体脂全体中のSSS含量が36重量%、PPP含量が27重量%、2位にパルミチン酸を有するグリセライド含量が47重量%である固体脂を1800重量部(収率:35%)得た。
【0122】
上記実施例28〜36及び比較例5、6で得られた固体脂の分析値を表3にまとめた。
【0123】
【表3】

【0124】
表3に示すように、本発明によれば、2位にパルミチン酸を有するグリセライドを多く含む固体脂を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーム系油脂を主原料とし、SU2/UUU重量比が1.9以下且つSSS含量が2重量%以下であり、2位にパルミチン酸が結合したグリセライドを10〜30重量%含むパーム油由来の液状油脂。
【請求項2】
SSS含量が0.5重量%以下且つS2U含量が10重量%以下である請求項1に記載のパーム油由来の液状油脂。
【請求項3】
UUU含量が25重量%以上である請求項1または2に記載の液状油脂。
【請求項4】
曇点が0℃〜−12℃の範囲内である請求項1〜3のいずれか1項に記載の液状油脂。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液状油脂の製造方法であって、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が70重量%以下であるパーム系油脂を主原料として用い、油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、反応を停止させた後、硬質部を分別除去することを特徴とする液状油脂の製造方法。
【請求項6】
油脂中のSSS/S2Uが2.0以上になるまでダイレクトエステル交換反応させてから反応を停止させる請求項5に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液状油脂の製造方法であって、構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が70重量%以下であるパーム系油脂を主原料として用い、外部から力を加えることで油脂を流動させながらダイレクトエステル交換反応を行なった後、固体脂含量を1重量%以下にすることなく分別することを特徴とする液状油脂の製造方法。
【請求項8】
油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応させてから反応を停止させる請求項7に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項9】
反応中の油脂中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、その後、硬質部を分別除去する請求項5〜8のいずれか1項に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項10】
前記パーム系油脂の構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸量が3〜52重量%である請求項5〜9のいずれか1項に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項11】
前記パーム系油脂がパームオレインである請求項5〜10のいずれか1項に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項12】
パーム系油脂以外の油脂として大豆油および/またはナタネ油を用いてなる請求項5〜11のいずれか1項に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項13】
ダイレクトエステル交換反応温度が0℃〜40℃である請求項5〜12のいずれか1項に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項14】
分別が乾式分別である請求項5〜13のいずれか1項に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項15】
乾式分別の温度が0℃〜45℃である請求項14に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項16】
乾式分別の温度が0℃〜10℃である請求項14に記載の液状油脂の製造方法。
【請求項17】
請求項5〜16のいずれか1項に記載の方法により製造された液状油脂。
【請求項18】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の液状油脂を含有する食品。
【請求項19】
請求項17に記載の液状油脂を含有する食品。
【請求項20】
構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が70重量%以下であるパーム系油脂を主原料として用い、油脂中のSSS/S2Uが0.5以上になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、反応を停止させた後、液状油脂を分別除去することにより、SU2/UUU重量比が1.9以下且つSSS含量が2重量%以下であり、2位にパルミチン酸が結合したグリセライドを10〜30重量%含む液状油脂と同時に固体脂を製造する方法。
【請求項21】
構成脂肪酸全体中の飽和脂肪酸含量が70重量%以下であるパーム系油脂を主原料として用い、外部から力を加えることで油脂を流動させながらダイレクトエステル交換反応を行なった後、固体脂含量を1重量%以下にすることなく液状油脂を分別除去することにより、SU2/UUU重量比が1.9以下且つSSS含量が2重量%以下であり、2位にパルミチン酸が結合したグリセライドを10〜30重量%含む液状油脂と同時に固体脂を製造する方法。
【請求項22】
反応中の油脂中のSSS含量が31重量%を越えることなく、S2U含量が14重量%以下になるまでダイレクトエステル交換反応を行ない、その後、液状油脂を分別除去する請求項20または21に記載の、液状油脂と同時に固体脂を製造する方法。

【公開番号】特開2012−65657(P2012−65657A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224619(P2011−224619)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【分割の表示】特願2011−544305(P2011−544305)の分割
【原出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】