説明

淡水生成装置および淡水生成方法

【課題】 過剰に大きな貯留槽のための巨大なスペースを要せず、しかも、安定して所定量の淡水を効率よく得ることができる淡水生成装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明は、海水よりも低塩濃度の低塩濃度廃水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第1処理部と、該第1処理部にて生成した濃縮水を希釈用として海水に混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第2処理部とを備え、各処理部にて分離された透過水が淡水として得られる淡水生成装置であって、前記第1処理部には、流入した低塩濃度廃水の流入量を測定する流量測定手段が備えられてなり、得られた測定値に基づいて、前記第1処理部及び前記第2処理部でのろ過処理量を制御できるように構成されていることを特徴とする淡水生成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、淡水生成装置および淡水生成方法に関し、詳しくは、逆浸透膜を用いたろ過によって淡水を生成する淡水生成装置および淡水生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化等により雨が局所的に若しくは短時間に降ってしまい水資源が地理的若しくは時間的に偏在してしまうことや、林業衰退や森林伐採等により山間部の保水力が低下してしまうこと等により、水資源を安定的に確保することが難しいという問題がある。
【0003】
水資源を安定的に確保すべく、例えば、臨海地域では、逆浸透膜を用いたろ過処理によって海水を淡水化することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−55317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の海水淡水化技術では、海水を逆浸透膜でろ過処理するのに海水を加圧してポンプ等で逆浸透膜ユニットに圧送する必要があることから、海水の塩濃度が高いほど多大なエネルギーが必要となるという問題を有している。
【0006】
一方、上記の海水とは別に、例えば下水に代表される有機物を含有する有機性廃水や、有機性廃水が生物処理された生物処理廃水、更には、鉄鋼等の金属製造工場等の廃水に代表される金属等の無機物を含有する無機性廃水や、無機性廃水をpH調整等の前処理を施し固形化させたのち、沈殿処理した後の沈殿処理廃水は、海洋や河川に放出されているなど、ほとんど有効利用されていないという現状がある。
【0007】
これらの廃水または処理廃水等は、通常、塩濃度が海水よりも低い低塩濃度廃水であり、淡水資源として有効利用すれば、逆浸透膜ろ過を比較的低圧のポンプでもって効率よく淡水としうるはずである。
ところが、これらの低塩濃度廃水は、状況によって取水量が大きく変動するものである。例えば、下水であれば時間帯や季節により変動し、工場廃水であれば生産量、生産工程等により変動するものである。
即ち、低塩濃度廃水は、海水の如く無尽蔵に存在するものではないことから淡水資源として必要量を安定して確保できないケースや、貯留槽を有していても取水量が多い場合には適宜廃棄しなければならないケースも発生する。
従って、安定して所定量の淡水を得ることができなかったり、低コストで淡水を生成しうる淡水資源を十分に利用しきれずに効率が悪くなるという問題も生じうる。
このような問題に対して、過剰に大きな貯留槽を備えた装置を用いる対策も考えられるが、このためには、巨大なスペースを要することとなる。
【0008】
本発明は、上記問題点等に鑑み、過剰に大きな貯留槽のための巨大なスペースを要せず、しかも、安定して所定量の淡水を効率よく得ることができる淡水生成装置及び淡水生成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、海水よりも低塩濃度の低塩濃度廃水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第1処理部と、該第1処理部にて生成した濃縮水を希釈用として海水に混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第2処理部とを備え、各処理部にて分離された透過水が淡水として得られる淡水生成装置であって、前記第1処理部には、流入した低塩濃度廃水の流入量を測定する流量測定手段が備えられてなり、得られた測定値に基づいて、前記第1処理部及び前記第2処理部でのろ過処理量を制御できるように構成されていることを特徴とする淡水生成装置を提供する。
【0010】
斯かる淡水生成装置に於いては、第1処理部にて低塩濃度廃水を淡水資源として利用することから、その分だけ海水のみを淡水資源とするものに比して低エネルギーで淡水を生成することができる。
また、第2処理部では、海水を希釈できることから塩濃度を下げることができ、この点に於いても低エネルギーで淡水を生成することができる。
更に、低塩濃度廃水の取水量が減少しても、第1処理部での処理量を減少させ、海水を淡水資源として用いる第2処理部での処理量を増加させるように制御することもでき、逆に取水量が増大しても、第1処理部での処理量を増大させ、第2処理部での処理量を減少させることができ、過剰に大きな貯留槽のための巨大なスペースを要せずとも得られる淡水量を安定化させることができる。
また、低塩濃度廃水を廃棄しなければならないようなことを防止でき、低コストで淡水を生成しうる低塩濃度廃水を十分に有効利用でき、効率よく淡水を得ることができる。
【0011】
本発明の淡水生成装置に於いて、前記第1処理部及び第2処理部は、それぞれ逆浸透膜ろ過を行う複数の逆浸透膜ユニットを備えてなり、前記測定値に基づいて、前記第1処理部及び前記第2処理部で逆浸透膜ろ過を行う逆浸透膜ユニットの数を制御できるように構成されているものが好ましい。
斯かる淡水生成装置に於いては、各処理部でのろ過を行う逆浸透膜ユニットの数を制御することにより、容易に各処理部での処理量を制御することができる。
更に、斯かる態様に於いては、前記測定値が上昇する場合には、前記第1処理部での逆浸透膜ろ過を行う逆浸透膜ユニット数が増加し、前記第2処理部での逆浸透膜ろ過を行うユニット数が減少するように制御されるものが好ましい。
斯かる淡水生成装置に於いては、流入する低塩濃度廃水量が増大しても、第1処理部での逆浸透膜ユニット数が増加することにより、増大した低塩濃度廃水を淡水資源として十分に利用することができ、一方、第2処理部での逆浸透膜ユニット数が減少することにより、コストのかかる海水の処理量を減らすことができ、効率よく所定量の淡水を得ることができる。
【0012】
また、本発明は、海水よりも低塩濃度の低塩濃度廃水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第1処理部と、該第1処理部にて生成した濃縮水を希釈用として海水に混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第2処理部とを備え、前記第1処理部での低塩濃度廃水の一部をバイパスさせて前記第2処理部での海水に希釈用として供給しうるように構成され、各処理部にて分離された透過水が淡水として得られる淡水生成装置であって、
前記第1処理部には、流入した低塩濃度廃水の流入量を測定する流量測定手段が備えられてなり、得られた測定値に基づいて、前記低塩濃度廃水のバイパス量を制御できるように構成されていることを特徴とする淡水生成装置を提供する。
斯かる淡水生成装置に於いては、流入した低塩濃度廃水の量が多い場合には、その一部をバイパスさせて海水希釈用として利用することができ、それによって第2処理部での海水の塩濃度を低下させることができ、結果として、第2処理部での逆浸透膜ろ過に要する動力コストを低減することができる。
【0013】
更に、本発明は、海水よりも低塩濃度の低塩濃度廃水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第1処理工程と、該第1処理工程にて生成した濃縮水を希釈用として海水に混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第2処理工程とを実施し、各処理工程にて分離した透過水を淡水として得る淡水生成方法であって、
処理される低塩濃度廃水の量を測定し、得られた測定値に基づいて、前記第1処理部及び前記第2処理部でのろ過処理量を制御することを特徴とする淡水生成方法を提供する。
また、海水よりも低塩濃度の低塩濃度廃水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第1処理工程と、該第1処理工程にて生成した濃縮水を希釈用として海水に混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第2処理工程とを実施し、各処理工程にて分離した透過水を淡水として得る淡水生成方法であって、
処理される低塩濃度廃水の量を測定し、測定値に基づいて、その一部を前記第2処理工程での海水希釈用として海水に混合するように制御することを特徴とする淡水生成方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、過剰に大きな貯留槽のための巨大なスペースを要せず、しかも、安定して所定量の淡水を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る淡水生成装置の概略ブロック図。
【図2】他実施形態に係る淡水生成装置の概略ブロック図。
【図3】実施例に係る淡水生成装置の概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
先ず、本実施形態に係る淡水生成装置について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態の淡水生成装置の概略ブロック図である。
本実施形態の淡水生成装置1は、図1に示すように、海水Aよりも低塩濃度の低塩濃度廃水Bを逆浸透膜ろ過によって第1透過水と第1濃縮水とに分離する第1処理部2と、該第1処理部で生成された第1濃縮水を希釈水として海水Bに混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2処理部3とを備えてなる。
【0019】
本実施形態の淡水生成装置1は、第1処理部2に低塩濃度廃水Bが供給され、濃縮水貯留槽(図示せず)に第2濃縮水を濃縮水Eとして移送されるように構成されてなる。
【0020】
また、本実施形態の淡水生成装置1は、第1透過水が淡水Cとして得られ、第2透過水が淡水Dとして得られるように構成されてなる。
【0021】
前記海水Aは、塩を含む水であり、例えば、塩濃度が1.0〜8.0質量%程度の水であり、一般的には、塩濃度が2.5〜6.0質量%である。
本明細書において、海水Aは、海に存在する水に限定されず、塩濃度が1.0質量%以上の水であれば、湖(塩湖、汽水湖)の水、沼水、池水等の陸に存在する水も含む。
【0022】
前記低塩濃度廃水Bは、海水よりも塩濃度が低い水である。低塩濃度廃水Bは、例えば、海水Aの塩濃度に対する低塩濃度廃水Bの塩濃度の比が0.1以下のもの、より一般的には、海水Aの塩濃度に対する低塩濃度廃水Bの塩濃度の比が0.01以下のものである。
前記低塩濃度廃水Bとしては、有機物を含む有機性廃水や無機物を含む無機性廃水を挙げることができる。
前記有機性廃水は、例えば、有機物濃度の指標としてのBOD(生物化学的酸素要求量)が2000mg/L以下の廃水であり、より一般的には、200mg/L程度の廃水である。有機性廃水としては、下水(生活廃水や雨水が下水道に流れた水等)や、工業廃水(食品工場、化学工場、電子産業工場、パルプ工場等の工場から排出される廃水)等が挙げられる。
前記無機性廃水は、例えば、有機物濃度が低い廃水で、有機物の指標であるBODが50mg/L以下、より好ましくは10mg/L以下の廃水である。無機性廃水としては、工業廃水(鉄鋼工場、化学工場、電子産業工場、等の工場から排出される廃水)等が挙げられる。
さらに、前記低塩濃度廃水Bは、廃水(有機性廃水または無機性廃水)が沈殿分離槽で沈殿分離された上澄水、精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)、砂ろ過池等でろ過され除濁された透過水であってもよい。また、前記低塩濃度廃水Bは、有機性廃水の場合、生物種により浄化処理された生物処理水であってもよい。
尚、本明細書に於いて、除濁とは逆浸透膜ろ過よりも粗いろ過、即ち、逆浸透膜装置でろ過処理する前に実施され、逆浸透膜で分離するよりも粗い不純物(例えば、固形物質等)を除去することを意味する。
また、本明細書に於いて、生物種による浄化処理とは、細菌、原生動物、後生動物等の生物種によって水に含まれる有機物を分解することを意味する。具体的には、活性汚泥を用いた曝気処理等を挙げることができる。
【0023】
前記逆浸透膜としては、中空糸膜と呼ばれるタイプのものや、チューブラー膜と呼ばれるタイプのもの、スパイラル膜と呼ばれるものなど従来公知のものを採用することができる。
【0024】
前記第1処理部2は、前記低塩濃度廃水Bを逆浸透膜ろ過によって第1透過水と第1濃縮水とに分離する複数の第1逆浸透膜ユニット21と、それぞれ各第1逆浸透膜ユニット21に低塩濃度廃水Bを圧送する複数の第1ポンプ22と、第1処理部2に供給される低塩濃度廃水Bの流量を測定する流量測定手段としての第1流量測定装置23とを備えてなる。
【0025】
前記第2処理部3は、海水Aに希釈水としての第1濃縮水を混合して混合水を得る混合槽36と、該混合水を逆浸透膜ろ過によって第2透過水と第2濃縮水とに分離する複数の第2逆浸透膜ユニット31と、それぞれ各第2逆浸透膜ユニット31に混合水を圧送する複数の第2ポンプ32とを備え、該第2ポンプ32を介して前記混合水が第2逆浸透膜ユニット31に圧送されるように構成されてなる。
【0026】
本実施形態の淡水生成装置1は、前記混合槽36に海水Aがポンプ(図示せず)によって供給され、該混合槽36に希釈水としての第1濃縮水が移送されるように構成されてなる。
【0027】
前記第2処理部3は、海水Aの流量を測定する第2流量測定装置35と該海水Aの混合槽36へ流量を調節する流量調整機構34としてのコントロールバルブとを備えてなる。
【0028】
本実施形態の淡水生成装置1は、前記第1流量測定装置23によって測定された流量の測定値に基づいて、第1処理部2及び第2処理部3でのろ過処理量が制御されるようになっている。
具体的には、測定値の上昇に基づいて、第1処理部2で稼働する第1逆浸透膜ユニット21数が増加し、第2処理部3で稼働する第2逆浸透膜ユニット31数が減少するように制御されている。
この点について、更に詳細に説明すると、前記第1流量測定装置23と各第1ポンプ22とは電気的に接続されており、第1流量測定装置23による測定値に基づいて、必要数の第1ポンプ22が稼働するように制御されており、測定値が上昇すると稼働する第1ポンプ22数が増加し、それに対応して逆浸透膜ろ過を行う第1逆浸透膜ユニット21の数も増加し、第1処理部2における処理量が上昇することとなる。
また、前記第1流量測定装置23と流量調整機構34とが電気的に接続され且つ第2流量測定装置35と各第2ポンプ32とが電気的に接続されており、第1流量測定装置23による測定値に基づいて、第2処理部3の混合槽36に流入する海水Aの流量が制御されており、測定値が上昇すると第2処理部3では逆に海水Aの流量が減少し、それに応じて第2流量測定装置35による測定値が低下し、該測定値に基づいて(具体的には、該測定値及び第1濃縮水の流量を考慮して)稼働する第2ポンプ32の数(即ち稼働する第2逆浸透膜ユニット31の数)が減少するようになっている。
尚、当然ながら、測定値が下降した場合には、第1処理部2で稼働する第1逆浸透膜ユニット21数が減少し、第2処理部3で稼働する第2逆浸透膜ユニット31数が増加するように制御されている。
【0029】
更に、本実施形態に於いては、第1処理部2での低塩濃度廃水の一部をバイパスさせて前記混合槽36へ供給するバイパスライン40を備えており、前記第1流量測定装置23による測定値に基づいて、バイパス供給量を制御できるように構成されている。
例えば、第1処理部2での逆浸透膜ろ過処理能力を超える流量が測定された場合に、超える流量分がバイパスライン40を介して、混合槽36に供給されるように制御されている。
本実施形態に於いては、このようなバイパスライン40が備えられていることから、予期せぬ量の低塩濃度廃水Bが測定された場合でも、該低塩濃度廃水Bを廃棄すること無く淡水資源として利用することができる。
尚、本実施形態においては、第1処理部2での処理能力を超える流量を測定した場合にバイパスライン40を介して、混合槽36に供給するように制御されているが、本発明に於いては、これに限定されず、第1流量装置23による測定値が一定値以上となった場合に第1処理部2での低塩濃度廃水の一部をバイパスさせて前記混合槽36へと供給するように制御しても良い。
【0030】
本実施形態の淡水生成装置は、上記の如く構成されてなるが、次ぎに、本実施形態の淡水生成方法について説明する。
本実施形態の淡水生成方法は、図1の装置を用い、海水Aよりも低塩濃度の低塩濃度廃水Bを第1逆浸透膜ユニット21でのろ過によって第1透過水と第1濃縮水とに分離する第1処理工程と、該第1処理工程にて生成した第1濃縮水を希釈用として混合槽36に供給し該混合槽36にて海水Aと混合して混合水とし、該混合水を第2逆浸透膜ユニット31でのろ過によって第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2処理工程とを実施し、各処理工程にて分離した第1透過水及び第2透過水を淡水として得る淡水生成方法である。
本実施形態に於いては、第1流量測定装置にて低塩濃度廃水Bの流量を測定し、測定値に基づいて、前記第1処理部2及び前記第2処理部3でのろ過処理量を制御する。
具体的には、第1処理部2での稼働する第1ポンプ22数(第1逆浸透膜ユニット21数)および第2処理部3での水量調節機構34を制御し、結果的に第2ポンプ32数(第2逆浸透膜ユニット31数)を制御して淡水を得る。
なお、本実施形態における淡水生成方法においても、第1流量測定装置にて低塩濃度廃水Bの流量を測定し、測定値に基づいて、バイパスライン40を通じて混合槽36へ供給する低塩濃度廃水Bの水量を制御するようにしても良い。この場合、第1処理部2での逆浸透膜ろ過処理能力を超える流量が測定された場合に、超える流量分がバイパスライン40を介して混合槽36に供給されるように制御するのが好ましいが、これに限定されず、第1流量測定装置にて所定流量以上が測定された場合にバイパスライン40を介して、混合槽36に供給されるように制御してもよい。
【0031】
尚、本実施形態の淡水生成装置1及び淡水生成方法は、上記の通りであるが、本発明の淡水生成装置及び淡水生成方法は、上記構成に限定されず本発明の意図する範囲内に於いて適宜設計変更可能である。
例えば、図示していないが、バイパスライン40に流量調整バルブが設けられ、該流量調整バルブにより、バイパスライン40を介する混合槽36への供給量が制御されるように構成されていてもよい。
また、本発明に於いては、第1流量測定装置23の測定値のみに基づいて稼働する第1ポンプ22数や第2ポンプ32数等を制御する態様に限定されず、他の場所に配された流量測定装置の測定値をも加味して稼働する第1ポンプ22数や第2ポンプ32数等を制御するものであってもよい。
例えば、第1逆浸透膜ユニット21の後段に第1濃縮水の流量を測定する流量測定装置が設置され、当該流量測定装置の値と、前記第1流量測定装置の測定値の両方に基づいて、稼働する第2ポンプの数やバイパスライン40を通じて混合槽36へ供給する低塩濃度廃水の量が調整制御されていてもよい。
また、本実施形態では第2流量測定装置35の測定値に基づいて(具体的には、該測定値及び第1濃縮水の流量を考慮して)稼働する第2ポンプ32の数が制御されているが、バイパスライン40を介して低塩濃度廃水Bが混合槽36にバイパス供給される場合を考慮して、第1濃縮水の流量、バイパス供給量を測定する流量測定装置が設けられ、第2流量測定装置35の測定値、第1濃縮水量の測定値及びバイパス供給量の測定値の合計値に基づいて稼働する第2ポンプ32の数が制御されていてもよい。なお、第1濃縮水量を測定する流量測定装置が設けられておらず、第1逆浸透膜ユニット21への供給量に応じて計算により求められた値を利用するものであっても良い。
さらに、本実施形態の淡水生成装置1は、第1処理部2に第1逆浸透膜ユニット21を複数備えてなるが、本発明の淡水生成装置は、図2に示すように、第1処理部2に第1逆浸透膜ユニット21を一つ備えてなるものであってもよい。斯かる装置は、測定値に基づいて、該一の第1逆浸透膜ユニット21でのろ過処理量が制御されるように構成されてなる。
また、本実施形態の淡水生成装置1は、第2処理部3に第2逆浸透膜ユニット31を複数備えてなるが、本発明の淡水生成装置は、図2に示すように、第2処理部3に第2逆浸透膜ユニット31を一つ備えてなるものであってもよい。斯かる装置は、測定値に基づいて、該一の第2逆浸透膜ユニット31でのろ過処理量が制御されるように構成されてなる。
また、本発明の淡水生成装置は、処理部に逆浸透膜ユニットを複数備えてなる場合でも、逆浸透膜ユニット数を制御するほか、逆浸透膜ユニット毎の処理水量を制御するように構成されてもよい。
【実施例】
【0032】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。
【0033】
(通常運転時)
海水Aよりも低塩濃度の低塩濃度廃水Bを逆浸透膜ろ過によって第1透過水と第1濃縮水とに分離する第1処理部2と、該第1処理部2で生成された第1濃縮水を希釈水として海水Bに混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって第2透過水と第2濃縮水とに分離する第2処理部3とを備えてなり、前記第1処理部2には、流入した低塩濃度廃水Bの流入量を測定する第1流量測定装置23が備えられてなり、得られた測定値に基づいて、前記第1処理部2及び前記第2処理部3でのろ過処理量を制御できるように構成されている淡水生成装置1(図3)を用いて、海水A(第2処理部3への供給水の一部)(塩濃度:3.5質量%)及び廃水B(第1処理部2への供給水)(塩濃度:0.035質量%)から淡水C、Dを得た。ここで、通常運転時は、海水Aは、15m3 /d、廃水Bは、50m3 /dで得られ、淡水生成装置1に移送されていた。運転時において、第1処理部2及び第2処理部3それぞれにおける透過水量(「淡水量」、「処理水量」ともいう。)、濃縮水量、処理圧力、及び動力(消費動力)を測定した。結果を表1に示す。
尚、第2処理部3への供給水量は、海水Aと、第1処理部2で得られた濃縮水のうち第2処理部3へ供給されたものとの合計を意味する。
【0034】
(実施例1:制御あり)
前記淡水生成装置1を用いて海水A及び廃水Bから淡水C、Dを得、単位時間に得られる廃水Bの量が50m3 /dから60m3 /dに増加した際に、この値に基づいて前記第1処理部2及び前記第2処理部3でのろ過処理量を制御した時において、第1処理部2及び第2処理部3それぞれの透過水量(淡水量)、濃縮水量、処理圧力、動力を測定した。ここでの制御では、第1処理部2での処理水量を増加し、第2処理部3での処理水量を低減して、所定の淡水量(50m3 /d)を確保した。結果を表1に示す。
【0035】
(比較例1:制御なし)
制御を実施しないように構成されたこと以外は実施例1と同じ淡水生成装置を用い、単位時間に得られる廃水Bの量が60m3 /dに増加した際における第1処理部2及び第2処理部3それぞれの透過水量(淡水量)、濃縮水量、処理圧力、動力を測定した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、単位時間に得られる廃水B(低塩濃度廃水B)の量が通常運転時から増加した時に、実施例1のように制御した場合には、単位時間に得られる総淡水量が通常運転時と同量であるにもかかわらず通常運転時よりも総消費動力を低減することができた。これは、海水Aを混合させたものを供給水としている第2処理部3と比して、海水Aよりも塩濃度が低い廃水Bを供給水としている第1処理部2は同程度の水量を低い圧力で処理でき、また、本制御において、この第1処理部2での処理量を増やしたためであると考えられる。
一方で、比較例1のように制御しない場合には、通常運転時に比して消費動力を低減することができなかった。
【符号の説明】
【0038】
1:淡水生成装置、2:第1処理部、3:第2処理部、21:第1逆浸透膜ユニット、22:第1ポンプ、23:第1流量測定装置、31:第2逆浸透膜ユニット、32:第2ポンプ、34:流量調整機構、35:第2流量測定装置、36:混合槽、A:海水、B:低塩濃度廃水、C:淡水、D:淡水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水よりも低塩濃度の低塩濃度廃水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第1処理部と、該第1処理部にて生成した濃縮水を希釈用として海水に混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第2処理部とを備え、各処理部にて分離された透過水が淡水として得られる淡水生成装置であって、
前記第1処理部には、流入した低塩濃度廃水の流入量を測定する流量測定手段が備えられてなり、得られた測定値に基づいて、前記第1処理部及び前記第2処理部でのろ過処理量を制御できるように構成されていることを特徴とする淡水生成装置。
【請求項2】
前記第1処理部及び第2処理部は、それぞれ逆浸透膜ろ過を行う複数の逆浸透膜ユニットを備えてなり、前記測定値に基づいて、前記第1処理部及び前記第2処理部で逆浸透膜ろ過を行う逆浸透膜ユニットの数を制御できるように構成されている請求項1記載の淡水生成装置。
【請求項3】
前記測定値が上昇する場合には、前記第1処理部での逆浸透膜ろ過を行う逆浸透膜ユニット数が増加し、前記第2処理部での逆浸透膜ろ過を行うユニット数が減少するように制御される請求項2記載の淡水生成装置。
【請求項4】
海水よりも低塩濃度の低塩濃度廃水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第1処理部と、該第1処理部にて生成した濃縮水を希釈用として海水に混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第2処理部とを備え、前記第1処理部での低塩濃度廃水の一部をバイパスさせて前記第2処理部での海水に希釈用として供給しうるように構成され、各処理部にて分離された透過水が淡水として得られる淡水生成装置であって、
前記第1処理部には、流入した低塩濃度廃水の流入量を測定する流量測定手段が備えられてなり、得られた測定値に基づいて、前記低塩濃度廃水のバイパス量を制御できるように構成されていることを特徴とする淡水生成装置。
【請求項5】
海水よりも低塩濃度の低塩濃度廃水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第1処理工程と、該第1処理工程にて生成した濃縮水を希釈用として海水に混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第2処理工程とを実施し、各処理工程にて分離した透過水を淡水として得る淡水生成方法であって、
処理される低塩濃度廃水の量を測定し、得られた測定値に基づいて、前記第1処理工程及び前記第2処理工程でのろ過処理量を制御することを特徴とする淡水生成方法。
【請求項6】
海水よりも低塩濃度の低塩濃度廃水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第1処理工程と、該第1処理工程にて生成した濃縮水を希釈用として海水に混合して混合水とし、該混合水を逆浸透膜ろ過によって透過水と濃縮水とに分離する第2処理工程とを実施し、各処理工程にて分離した透過水を淡水として得る淡水生成方法であって、
処理される低塩濃度廃水の量を測定し、測定値に基づいて、その一部を前記第2処理工程での海水希釈用として海水に混合するように制御することを特徴とする淡水生成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−207805(P2010−207805A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−28838(P2010−28838)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【特許番号】特許第4499835号(P4499835)
【特許公報発行日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】