説明

淫羊霍抽出物の薬物調製上における応用

本発明は,淫羊霍属植物中より抽出した重量比2〜8割の総フラボノイドと8〜2割の多糖類を含む成分を前立腺肥大症の治療薬の配合に用いることである。この抽出成分の総フラボノイド中のフラボノイドの含量は20〜90%,多糖類の分子量範囲は1000〜700000である。また淫羊霍フラボノイドと多糖類成分を人参,花粉,オウギ,黄柏の抽出物と組み合わせ,前立腺肥大症と慢性前立腺炎の治療薬の調製に用いることである。これらは臨床実験により顕著な治療効果が確認されており,また一切の毒性及び副作用反応はみられていない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,淫羊霍抽出物の前立腺肥大症の治療及び薬物調製への応用に関し,より具体的には淫羊霍のフラボノイドと多糖類成分を担体,或いはその他の中薬抽出物と組み合わせ,前立腺肥大症及び前立腺炎の治療に用いる薬物を調製することに関する。
【背景技術】
【0002】
淫羊霍はメギ科(Berberidaceae),淫羊霍属植物(Epimedium barrenwort)である。淫羊霍(Epimedium brevicornum),箭葉淫羊霍(E. sagittatum),柔毛淫羊霍(E. pubescens),烏山淫羊霍(E.wushanense),及び(朝鮮淫羊霍E. koreanum)等の種類があり,地上部の茎葉を中薬として用いる。補腎壮陽,筋骨を強め,風湿を取り去る効能があり,インポテンツ,遺精,筋萎縮,リューマチ麻痺等の治療に使用される。淫羊霍には主にフラボノイド,多糖類,リグナン,アルカロイド等の化学成分が含まれる。臨床応用と薬理実験のルポにより,淫羊霍フラボノイド類成分と多糖類成分は循環器疾病への治療効果,人体免疫力の増強効果,性機能の向上,骨粗しょう症への治療効果,及び抗酸化作用を有することが認められている。但し,これらの臨床,及び薬理実験においては,現在もなおすべてこのフラボノイドと多糖類を個々に分別し研究が進められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする技術課題は,淫羊霍の有効部位を使用し,通常の担体,或いはその他の協同作用を持つ中薬抽出物と組み合わせ,前立腺肥大症,及び前立腺炎の治療に用いる一種の配合薬物を調製し提供することにある。さらにその薬物は明らかな治療効果を有し,かつ基本的に毒性,副作用が無く,特に高齢者への使用,及び長期服用に適するものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述の技術問題を解決すべく,本発明は以下の技術方案を提供する。
【0005】
一種の前立腺肥大症治療に用いる配合薬物の特徴として,淫羊霍属植物の抽出物中に重量比2〜8割の総フラボノイドと8〜2割の多糖類を含み,総フラボノイド中のフラボノイドの含量は20〜90%,多糖類の分子量範囲は1000〜700000,ということがあげられる。
【0006】
配合薬物中における淫羊霍総フラボノイドと多糖類の成分比率は3〜6割対7〜4割という範囲が可能であり,また総フラボノイド中における淫羊霍配糖体(icarrin),及び淫羊霍配糖体I(icarisid I)の含有量は10〜90%,多糖類の分子量範囲は45000〜62000に達する。
【0007】
前述の配合薬物中の淫羊霍抽出物の調製方法は以下のとおりである。
【0008】
淫羊霍薬材を60〜90%有機溶剤水溶液を用いて抽出し,抽出液中の有機溶剤を減圧回収した後の残留物を多孔性吸着樹脂カラム(D101或いはD140)に吸着させる。水とエチルアルコールの混合溶液を用い,グラジェント溶出法により洗浄を行い,30〜85%濃度のエチルアルコール液部分を収集し,減圧回収,乾燥後,総フラボノイドを採取する。総フラボノイド中のフラボノイド含有量は20〜90%である。
【0009】
60〜95%有機溶剤水溶液にて淫羊霍を抽出した残留薬液を,水を用いて再度抽出し,濃縮する。液全体のアルコール濃度が70〜85%になるようエチルアルコールを加え,静置後,濾過し,多糖類粗製物を採取する。
【0010】
この多糖類粗製物を水に溶かし,体積比3〜6割のクロロフィルと1割のブチルアルコールの混合液を加え,たんぱく質を取り除き,分子量1000の限外濾過膜を用いて濾過し,分子量1000以下の成分を除き去る。濃縮液をさらに濃縮し乾燥させた後,分子量範囲1000〜700000の淫羊霍多糖類を採取する。重量比にして2〜8割の淫羊霍総フラボノイドと,8〜2割の多糖類を混合する。
【0011】
この配合薬物中の淫羊霍抽出物の調製方法において,抽出に使用される60〜95%有機溶剤水溶液は,アセトン,プロピルアルコール,イソプロピルアルコール(或いはメチルアルコール)から成り,淫羊霍総フラボノイドと多糖類の組成比率は3〜6割対7〜4割である。
【0012】
この配合薬物中の淫羊霍抽出物の調製方法において,淫羊霍抽出物の総フラボノイド中の淫羊霍配糖体(icarrin)と,配糖体I(icarisid I)の含有量は10〜90%である。また淫羊霍多糖類の調製方法において,多糖類粗製物は,再び水に溶かし,液全体のアルコール濃度が70〜85%になるようにエチルアルコールを加え,静置,濾過した後,分子量45000〜620000の多糖類抽出物の採取が可能である。
【0013】
前述の配合薬物の特徴として,淫羊霍総フラボノイドと多糖類の成分比率は3対8,或いは4対6,5対5,6対4,7対3であり,薬学上,担体との組み合わせ,またはその他の補助薬材との混合が可能であることがあげられる。
【0014】
一種の前立腺肥大症,及び前立腺炎治療に用いる配合薬物は,その特徴として,人参,花粉,オウギ,黄柏,淫羊霍フラボノイド(或いは淫羊霍多糖類)を含むことがあげられる。
【0015】
この中薬複方の配合薬物の特徴として,重量比にして,人参抽出物(ニンジンサポニン含有量6〜10%)を1〜6割,花粉或いは花粉抽出物(フラボノイド含有量10〜20%)を1〜8割,オウギ抽出物(オウギサポニン3〜5%,及びオウギ多糖類20〜30%)を1〜4割,黄柏抽出物(アルカロイドベルベリン10〜15%)を1〜6割,淫羊霍総フラボノイド(フラボノイド含有量20〜90%),或いは淫羊霍多糖類を4〜16割含むことがあげられる。
【0016】
この中薬複方の配合薬物の特徴として,人参抽出物1〜2割,花粉,或いは花粉抽出物2〜4割,オウギ抽出物1〜2割,黄柏抽出物1〜2割,淫羊霍フラボノイド(或いは淫羊霍多糖類)5〜10割を含むことがあげられる。
【0017】
前述の中薬複方の配合薬物の特徴として,薬学上,担体との組み合わせ,或いは補助薬材との混合により,各種口服製剤の製造が可能であることがあげられる。淫羊霍抽出物調合方法の詳細説明は以下のとおりである。
【0018】
淫羊霍の葉を粗くきざんだ粉末を,60〜95%の有機溶剤水溶液を用い1〜4回に分けて抽出する。一回に使用する溶剤の量は6〜10ml/g,抽出時間は1〜3時間,抽出液を濾過し,全部合わせて減圧し,有機溶剤を回収する。その水溶液を多孔性吸着樹脂カラム(D101或いはD140)に注入し,水とエチルアルコールの混合溶剤で洗浄し,30〜85%エチルアルコール液の部分を収集し,減圧回収し,乾燥させ,A部分を採取する。A部分抽出物は総フラボノイド(即ち粗製フラボノイド,或いはフラボノイド粗製品)であり,そのうちフラボノイドの含有量は20〜90%,淫羊霍配糖体(icarrin),及び淫羊霍配糖体I(icarisid I)の含有量は10〜90%になる。
【0019】
淫羊霍の葉を粗くきざんだ粉末を,60〜95%の有機溶剤水溶液で抽出した後の残留薬液を,水を用い3回に分けて抽出する。一回に使用する水の量は6〜10ml/g,抽出時間は1〜2時間,抽出液を濾過し,全部合わせて濃縮し,液全体のアルコール濃度が70〜85%になるようエチルアルコールを加え,攪拌し,12〜24時間静置した後,濾過して沈殿物を採取する。同様に繰り返し3回精製を行い,赤褐色の多糖類粗製物を採取する。この粗製多糖類を500mlの水に溶かし,クロロフォルムとブチルアルコールを3〜6対1の割合で混合した溶剤100〜200mを加え,蛋白質を濾して取り除いた後,分子量1000の限外濾過膜を用いて濾過し,分子量1000以下の成分を除き去る。濃縮乾燥させた後,多糖類分子量範囲1000〜700000の淫羊霍多糖部分Bを採取する。この多糖部分は通常の測定方法により,EPS−1及びEPS−2の2つの多糖類成分が鑑定され,各分子量はそれぞれ45000,及び620000である。多糖類はフコース,ラムノース,アラビノース,キシロース,マンノース,ブドウ糖,ガラクトースの7つの単糖類により組成され,本発明はそれ以外にも4つの多糖類成分を鑑定しており,各分子量はそれぞれ3400,25000,45000,520000である。
【0020】
A部分のフラボノイド類とB部分の多糖類を一定の比率で混合し,配合薬物を調合するにあたり,良好な治療効果が得られるA部分とB部分の混合比率とは,2対8,3対7,4対6,5対5,6対4,7対3,8対2であることが実験により証明されている。
【発明の効果】
【0021】
臨床実験研究により,本発明の淫羊霍フラボノイドと多糖類の一定量の組成による配合薬物は,良性前立腺肥大疾病に対し,93.7%に達する治療効果率があり,患者の臨床症状の積分下降も顕著であり(P<0.01),日常生活レベルも明らかな改善が確認されている。主な効果作用として夜尿回数の減少,排尿の改善があり,尿流率の明らかな向上(P<0.01)が尿の詰まりの軽減を示しており,膀胱残尿量も減少(P<0.01)している。PSA(前立腺特異性抗原)値も治療前(3.31±3.68ug/L)に比べ治療後(3.03±3.84ug/L)に顕著な下降がみられた。ただしこれらの数値は統計学的意義を持たない。
【0022】
臨床実験研究により,本発明の淫羊霍抽出物と人参抽出物,花粉,花粉抽出物,オウギ抽出物,黄柏抽出物の組み合わせによる中薬複方は,前立腺肥大と慢性前立腺炎の合併症に対し顕著な治療効果がみられることが明らかであり,その総治療効果率は75.0%に達する。また患者の臨床症状の積分下降は顕著であり(P<0.01)日常生活レベルの明らかな改善が確認されている。主な効果作用として,夜尿回数の減少,排尿の改善があり,尿流率の明らかな向上が(P<0.01)尿の詰まりの軽減を示しており,膀胱残尿量も減少(P<0.01)している。PSA(前立腺特異性抗原)値も,治療前(4.41±5.28mg/L)に比べ治療後(1.84±1.07mg/L)に顕著な下降がみられる。
【0023】
本発明の淫羊霍抽出物の調合法は容易であり,各有効成分の構成も簡潔明瞭である。有効成分のフラボノイドと多糖類は協同の治療作用を持ち,相応の配分比率がその協同作用を増進させ,良性前立腺肥大症に対し著しい治療効果をあらわす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に,本発明にかかる淫羊霍抽出物の調製方法と前立腺肥大症治療の薬物調合上における応用,及び淫羊霍抽出物,人参抽出物,花粉と花粉抽出物,オウギ抽出物,黄柏抽出物の複方による前立腺肥大,慢性前立腺炎合併症治療の薬物調合上における応用の説明を好適な実施形態に即して行う。
【0025】
(実施形態1)
各種淫羊霍植物のフラボノイド及び多糖類含有量の測定淫羊霍抽出物の調製に使用する植物には,淫羊霍(Epimedium brevicornum),箭葉淫羊霍(E. sagittatum),柔毛淫羊霍(E. pubescens),烏山淫羊霍(E. wushanense),及び朝鮮淫羊霍(E. koreanum)があり,地上部の茎葉を用いる。それぞれ,四川,陝西,湖南,湖北,貴州,遼寧等の省にて採集される。総フラボノイドの測定にはUV法,淫羊霍配糖体(icarrin)と淫羊霍配糖体I(icarisid I)の測定にはHPLC法,多糖類含有量測定にはフェノール硫酸法を用いる。測定結果により,総フラボノイドの含有量は6〜20%,総多糖類の含有量は13〜26%であることが示された。
【0026】

【0027】
(実施形態2)淫羊霍抽出物の調製
淫羊霍(陝西にて採集の葉を粗くきざんだ粉末500gを,60%エチルアルコール溶液3リットルを用い,60℃で2時間かけ,3回に分けて抽出する。抽出液を濾過して全部合わせ,減圧し有機溶剤を回収し,水溶液を多孔性吸着樹脂カラム(D101或いはD140,湿潤重量1000g)に吸着させる。まず3リットルの水で洗浄し,再度30〜85%エチルアルコール溶液にて洗浄し,エチルアルコール洗浄液を減圧回収し,乾燥させた後,A部分20gを採取する(採取率3%,フラボノイド含有量45.8%,主要成分は淫羊霍配糖体イカリインと淫羊霍配糖体イカリシドI)。濾過後の残留薬液を3リットルの水で50分間煎じ,3回に分けて抽出を行い,抽出液を濾過し全部あわせ,1リットルになるまで濃縮する。再度濾過し,95%のエチルアルコールを加え,液全体のアルコール濃度を75%にして攪拌し,12時間静置後,濾過し,沈殿物を採取する。水溶アルコール沈殿法による精製を2回繰り返し,赤褐色の多糖類粗製物(56g)を採取する。この多糖類粗製物を500mlの水に溶かし,クロロフォルムとブチルアルコールを5対1の割合で混合した有機溶剤100mlを加え,よく振り混ぜ蛋白質を取り除く。この水溶液を分子量1000の限外濾過膜を用い,分子量1000以下の成分を除き去り,濃縮乾燥させた後,精製淫羊霍多糖類部分B(36.5g)を採取する。この採取物中の多糖類の分子量は1000〜700000である。EPS−1及びEPS−2の2つの多糖類成分が鑑定され,各分子量はそれぞれ45000,及び620000である。多糖類はフコース,ラムノース,アラビノース,キシロース,マンノース,ブドウ糖,ガラクトースの7つの単糖類により組成され,本発明はそれ以外にも4つの多糖類成分を鑑定しており,各分子量はそれぞれ3400,25000,45000,520000である。
【0028】
A 部分とB部分をそれぞれ2対8,3対7,4対6,5対5,6対4,7対3,8対2の比率で混合し,淫羊霍抽出物を調整する。
【0029】
淫羊霍抽出物の調製に使用する植物には,淫羊霍(Epimedium brevicornum),箭葉淫羊霍(E. sagittatum),柔毛淫羊霍(E. pubescens),烏山淫羊霍(E. wushanense),及び朝鮮淫羊霍(E. koreanum)があり,地上部の茎葉を用いる。それぞれどの植物も500gを使用量とし,上述の方法にそって調製を行う。総フラボノイド中のフラボノイド含有量は20〜90%,A,B各部分の採取率の結果については以下のとおりである。
【0030】

【0031】
(実施形態3)淫羊霍抽出物と人参,花粉,オウギ,黄柏の複方調製
この複方は以下の5種類の成分を組み合わせて行う。
【0032】
淫羊霍抽出物(総フラボノイド中のフラボノイド含有量40%,総フラボノイド中のフラボノイド配糖体20%,多糖類40%)を5割,人参抽出物(ニンジンサポニン含有量6〜10%)を1割,花粉或いは花粉抽出物(フラボノイド含有量10〜20%)を2割,オウギ抽出物(オウギサポニン3〜5%以上,オウギ多糖類20〜30%)を1割,黄柏抽出物(アルカロイドベルベリン10〜15%)を1割。
【0033】
淫羊霍抽出物を実施形態2の方法により調製する。人参抽出物(ニンジンサポニン含有量6〜10%)の調製方法は以下のとおりである。500gの人参を粗くきざんだものを70%のエチルアルコール1〜2リットルを用いて,加熱,冷却,リフラックスさせ,2〜3回抽出し,減圧してエチルアルコールを回収する。これを濾過し,その濾過液の水分を蒸発させ,人参抽出物160gを採取する。
【0034】
花粉或いは花粉抽出物(フラボノイド含有量10〜20%)の調製方法は以下のとおりである。500gの花粉を75%のエチルアルコール水溶液1〜2リットルを用いて,加熱,冷却,リフラックスさせ,2〜3回抽出し,減圧してエチルアルコールを回収する。これを濾過し,その濾過液の水分を蒸発させ,花粉抽出物126gを採取する。
【0035】
オウギ抽出物(オウギサポニン3〜5%以上,オウギ多糖類20〜30%)の調製方法は以下のとおりである。500gのオウギを75%のエチルアルコール水溶液2〜4リットルを用いて,加熱,冷却,リフラックスさせ,2〜3回抽出し,減圧してエチルアルコールを回収する。これを濾過し,多孔性吸着樹脂(D101,1kg)に吸着させ,水とエチルアルコール水溶液を用い,グラジェント溶出法による洗浄を行い,30%〜85%のエチルアルコール部分を収集し,濃縮乾燥後,抽出物67gを採取する(オウギサポニン4.7%を含む)。75%エチルアルコールで抽出した後の残留薬液は1リットルずつ3回に分けて煮沸する。1リットルになるまで濾過濃縮し,全体のアルコール濃度が75〜85%になるようエチルアルコールを加え,沈殿精製した後,多糖類部分を採取する。これらのサポニン部分と多糖類部分を7対3の割合で混合したものがオウギ抽出物である。
【0036】
黄柏抽出物(アルカロイドベルベリン10〜15%)の調製方法は以下のとおりである。500gの黄柏を砕き,75%のエチルアルコール水溶液1〜2リットルを用いて,加熱,冷却,リフラックスさせ,2〜3回抽出し,減圧してエチルアルコールを回収,濾過し,その濾過液の水分を蒸発させ,黄柏抽出物96gを採取する。
【0037】
(実施形態4)急性毒性研究
淫羊霍抽出物
実験用動物として,SDマウス(昆明種)40匹を使用。体重20±2g,雄雌各半分,実験前に16時間の絶食を行い,飲水は自由にさせる。均等に2組に分け(n=20),第1グループに一回のみ,淫羊霍抽出物I(A対Bの混合比率は4対6。混合後のフラボノイド含有量40%,淫羊霍配糖体10%,多糖類60%)を6g/kg投与する。第2グループに一回のみ,淫羊霍抽出物Iを9g/kg投与する。投与後7日間の観察中に,マウスの食欲,自発活動,糞便,生長発育,及び死亡状況の記録を行う。また,同様の実験操作法と投薬量により,淫羊霍II(A対Bの混合比率は6対4。混合後のフラボノイド含有量40%,淫羊霍配糖体20%,多糖類40%),淫羊霍III,(A対Bの混合比率は7対3。混合後のフラボノイド含有量60%,淫羊霍配糖体60%,多糖類30%)及び実施形態3の淫羊霍複方(淫羊霍,人参,オウギ,花粉,黄柏)のマウスに対する急性毒性観察実験を行う。
【0038】
実験結果により,淫羊霍抽出物I,II,III,及び実施形態3の淫羊霍複方のマウスに対する経口投与ではLD50は確認されておらず,よって口服薬としてのLD50は9g/kg以上である。
【0039】
(実施形態5)臨床実験研究結果
1,臨床実験研究の目的
1)淫羊霍抽出物の良性前立腺肥大症に対する適切な治療効果,及び毒性,副作用反応の
観察。
2)前述の実施形態3の淫羊霍複方(淫羊霍,人参,オウギ,花粉,黄柏)の前立腺肥大
と慢性前立腺炎の合併症に対する治療効果,及び毒性,副作用反応の観察。
【0040】
2,基準とする患者
1)単純性前立腺肥大症に符合する年齢50歳以上の患者。
2)前立腺炎を伴う前立腺肥大症がある年齢30歳以上の患者。
3)症状,及び徴候の積分≧6分がみられ,また理化学的検査により相応の異常が確認された患者。
4)インポテンツ,早漏を伴う前立腺肥大症患者。
【0041】
患者の統計資料は以下のとおりである。

【0042】
3,治療方法
良性前立腺肥大グループ:淫羊霍抽出物(A対Bの混合比率は6対4。混合後のフラボノイド含有量40%,淫羊霍配糖体20%,多糖類40%)を使用。薬剤量は250mg/粒´3粒´2回/日。
【0043】
慢性前立腺炎を伴う前立腺肥大症グループ: 実施形態3の淫羊霍抽出物の複方を使用。薬剤量は250mg/粒´3粒´2回/日。
【0044】
4,観察方法:積分≧6分を観察対象とする。レベル分けは以下の表のとおりである。

【0045】
臨床症状制御:主要症状と徴候が改善される。積分率の降下は90%以上,理化学的指標による正常回復。
【0046】
著効: 主要症状と徴候がほとんど改善される。積分減少は60〜89%,理化学的指標よる基本的な回復。
【0047】
有効: 主要症状と徴候が部分的に軽減,または改善される。積分減少は15〜59%理化学的指標による多少の好転。
【0048】
無効:主要症状と徴候に変化無し。ひいてはさらなる悪化がみられる。
【0049】
6,毒性,及び副作用反応の観察
血液常用検査:治療前後のRBC,Hb,WBC,Pltの変化を観察する。
【0050】
尿常用検査: 治療前後の尿蛋白,及びRBCの変化を観察する。
【0051】
肝機能: 治療前後のALT,及びASTの変化を観察する。
【0052】
腎機能: 治療前後のBUN,及びCrの変化を観察する。
【0053】
7,統計処理
資料の計量にはX±SD表示,2標本のデータ比較にt−test,群間比較にはRidit分析を使用。
【0054】
8,結果
1)良性前立腺肥大症,及び前立腺肥大と慢性前立腺炎の合併症の両グループの治療前後の臨床症状積分変化は以下の表が示すとおりである。

【0055】
2)膀胱残尿量。両グループの治療前後の残尿量は明らかに減少傾向がみられた。

【0056】
3)尿流率。両グループの治療前後の尿流率は明らかに増加傾向がみられた。
【0057】

【0058】
4)前立腺特異性抗原(PSA)測定。前立腺肥大と慢性前立腺炎合併グループのPSAは明らかに下降がみられた。

【0059】
5)良性前立腺肥大症,及び前立腺肥大と慢性前立腺炎合併グループの総体的治療効果の評価。

【0060】
両グループの治療効果比較にはRidit分析を採用する。結果はP<0.05であり,良性肥大症グループの総体的治療効果は,炎症を伴う肥大症グループよりも良好であった。
【0061】
良性前立腺肥大症,及び前立腺肥大と慢性前立腺炎合併グループの症状改善,治療効果の評価:良性前立腺肥大症,及び前立腺肥大と慢性前立腺炎合併グループ中,実施形態3の淫羊霍複方(薬剤量250mg/粒×3粒×2回/日)を服用した患者において,総体治療効果の評価が28.6%である患者のインポテンツ症状,及び50%の早漏患者に改善がみられた。
【0062】
臨床実験研究により,淫羊霍抽出物の良性前立腺肥大症に対する総体治療効果率は93.7%に達することが明らかである。本グループの患者の臨床症状の積分下降は顕著であり(P<0.01),日常生活レベルも明らかな改善がみられる。主な効果作用としては夜尿回数の減少,排尿の改善があり,尿流率の明らかな向上が(P<0.01) 尿の詰まりの軽減を示しており,また膀胱残尿量も減少(P<0.01)している。PSA(前立腺特異性抗原)値も治療前(3.31±3.68ug/L)に比べ治療後(3.03±3.84ug/L)に顕著な下降がみられた。ただしこれらの数値は統計学的意義を持たない。
【0063】
臨床実験研究により,本発明の淫羊霍抽出物と人参抽出物,花粉或いは花粉抽出物,オウギ抽出物,黄柏抽出物との組み合わせによる中薬複方は,前立腺肥大と慢性前立腺炎の合併症に対し顕著な治療効果がみられることが明らかであり,その総治療効果率は75.0%に達する。本グループの患者の臨床症状の積分下降は顕著であり(P<0.01),日常生活レベルの明らかな改善がみられる。主な効果作用としては夜尿回数の減少,排尿の改善があり,尿流率の明らかな向上が(P<0.01)尿の詰まりの軽減を示しており,また膀胱残尿量も減少(P<0.01)している。PSA(前立腺特異性抗原)値も,治療前(4.41±5.28mg/L)に比べ治療後(1.84±1.07mg/L)に顕著な下降がみられる。これらのグループ中,インポテンツ及び早漏を伴う患者の治療効果率は,それぞれ28.6%及び50.0%である。
【0064】
臨床実験研究中において,すべての患者に一切の毒性及び副作用反応はみられず,また治療前後に行ったすべての血液常用検査,及び肝機能,腎機能,尿常用検査においても一切異常は確認されていない。
【0065】
淫羊霍抽出物の有効組成成分は簡潔明瞭,調合方法も容易であり,その加工法は工業化生産にたいへん適している。良性前立腺肥大症治療の薬剤としてもその臨床効果は明らかである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
淫羊霍属植物の抽出物中に重量比2〜8割の総フラボノイドと8〜2割の多糖類を含み,総フラボノイド中のフラボノイドの含量は20〜90%,多糖類の分子量範囲は1000〜700000であることを特徴とする,前立腺肥大症治療用配合薬物。
【請求項2】
淫羊霍総フラボノイドと多糖類の成分比率は3〜6割対7〜4割であり,総フラボノイド中における淫羊霍配糖体イカリイン及び淫羊霍配糖体イカリシドIの含有量は10〜90%,多糖類の分子量範囲は45000〜62000であることを特徴とする請求項1に記載の配合薬物。
【請求項3】
淫羊霍薬材を60〜90%有機溶剤水溶液を用いて抽出し,抽出液中の有機溶剤を減圧回収した後の残留物を多孔性吸着樹脂カラム(D101或いはD140)に吸着させ,水とエチルアルコールによるグラジェント溶出法を用いて洗浄し,30〜85%濃度のエチルアルコール液部分を収集し,減圧回収,乾燥後,総フラボノイド中のフラボノイド含有量が20〜90重量%である総フラボノイドを採取し,60〜95%有機溶剤水溶液にて淫羊霍を抽出した残留薬液を,水を用いて再度抽出し,抽出液を濃縮し,液全体のアルコール濃度が70〜85%になるようエチルアルコールを加え,静置後,濾過し,多糖類粗製物を採取し,この多糖類粗製物を水に溶かし,体積比3〜6割のクロロフィルと1割のブチルアルコールの混合液を加え,たんぱく質を取り除き,分子量1000の限外濾過膜を用いて濾過し,分子量1000以下の成分を除き去る,濃縮液をさらに濃縮し乾燥させた後,分子量範囲1000〜700000の淫羊霍多糖類を採取し,重量比にして2〜8割の淫羊霍総フラボノイドと,8〜2割の多糖類を混合することにより調整された,請求項1または2に記載の配合薬物。
【請求項4】
淫羊霍の抽出において使用される60〜95%有機溶剤水溶液は,アセトン,プロピルアルコール,イソプロピルアルコール(或いはメチルアルコール)から成り,淫羊霍フラボノイドと多糖類の組成比率は3〜6割対7〜4割であることを特徴とする,請求項3に記載の配合薬物。
【請求項5】
淫羊霍抽出物の総フラボノイド中の淫羊霍配糖体(icarrin)と,配糖体I(icarisid I)の含有量は10〜90%であり,多糖類粗製物は,再び水に溶かし,液全体のアルコール濃度が70〜85%になるようにエチルアルコールを加え,静置,濾過した後,分子量45000〜620000の多糖類抽出物を採取することを特徴とする,請求項4に記載の配合薬物。
【請求項6】
淫羊霍総フラボノイドと多糖類の成分比率は3対8,4対6,5対5,6対4,7対3のいずれかであり,薬学上,担体との組み合わせ,またはその他の補助薬材との混合が可能であることを特徴とする,請求項5に記載の配合薬物。
【請求項7】
人参,花粉,オウギ,黄柏,淫羊霍フラボノイド(または淫羊霍多糖類)を含むことを特徴とする前立腺肥大症または前立腺炎治療用配合薬物。
【請求項8】
重量比にして,人参抽出物(ニンジンサポニン含有量6〜10%)を1〜6割,花粉また花粉抽出物(フラボノイド含有量10〜20%)を1〜8割,オウギ抽出物(オウギcサポニン3〜5%,及びオウギ多糖類20〜30%)を1〜4割,黄柏抽出物(アルカロイドベルベリン10〜15%)を1〜6割,淫羊霍総フラボノイド(フラボノイド含有量20〜90%),または淫羊霍多糖類を4〜16割含有することを特徴とする,請求項7に記載の配合薬物。
【請求項9】
人参抽出物1〜2割,花粉或いは花粉抽出物2〜4割,オウギ抽出物1〜2割,黄柏抽出物1〜2割,淫羊霍フラボノイド(或いは淫羊霍多糖類)5〜10割を含むことを特徴とする,請求項8に記載の配合薬物。
【請求項10】
薬学上の担体との組み合わせ,または補助薬材との混合により,各種口服製剤として構成されることを特徴とする,請求項7〜9のいずれかに記載の配合薬物。



【公表番号】特表2006−510678(P2006−510678A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559564(P2004−559564)
【出願日】平成15年11月24日(2003.11.24)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000994
【国際公開番号】WO2004/054596
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(505232896)澳美▲製▼▲薬▼▲ツァン▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】