混合するためのデバイス、システムおよび方法
本発明は、ならびに少なくとも2つの個別成分流を混合する各種の構成、デバイス、システム、および方法を含む。本発明の1つの局面では、混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を混合するデバイスが提供される。このデバイスは、それら少なくとも2つの個別流の一方と連通するように適合された第1の流路、およびそれら少なくとも2つの個別流の他方と連通するように適合された第2の流路を備える。このデバイスは、第1および第2の流路の各々と連通し、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた混合機をさらに備える。この混合機は、平均流孔径、厚さ、および孔隙率から選択される1つ以上を含む物理的特徴を有し、第3の流路の排出端の上流に位置し、複合流体流中の成分流を混合する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年1月17日に出願された米国仮特許出願第60/759,695号の利益およびそれへの優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示は、一般に、シーラント等の複合流体流または複数の成分から構成される他の複合流体流中の複数の成分を混合する直列混合機に関する。より詳細には、本開示は、そのような直列混合機、そのような直列混合機を利用するシステム、ならびに、例えば、フィブリンを用いて創傷および組織を封止する分野における直列混合法に関する。さらにより詳細には、本発明は、そのような直列混合により調製したフィブリン組成物に関する。
【0003】
粘度が異なる流体流を含む複合流体流の直列混合は、医療分野、食品産業、電子工学、自動車、エネルギー、石油、医薬、化学産業、製造、およびその他の産業を含む幅広い条件において有用である。医療分野での適用例では、2つ以上の複合流体流の直列混合を用いて、ヒトおよび動物組織に塗布する組織シーラント等のシーラントを形成する。そのようなシーラントは、組織の手術または創傷部位の封止または処置、止血、創傷の封止、火傷または植皮片の治療、ならびに各種の他の目的のために用いることができる。食品産業では、2つ以上の成分の直列混合は、食品および飲料組成物のブレンドに有用である。電子工学および/または製造産業では、2つ以上の成分の組み合わせを用いて、特定の用途に所望されるコーティングまたはシーラントを生成することができる。これには、任意で、透明、導電性もしくは絶縁性、熱伝導性、または耐熱性であるか、または極低温もしくは低温用途で有用なコーティングまたはシーラントが含まれる。眼科分野では、2つ以上の成分の直列混合は、眼の治療のために相対的に少量のまたは低流量の治療薬を提供する際に所望される。燃料またはエネルギー産業では、空気、水、または他の成分と燃料を直列混合することが、環境的に安全またはクリーンな燃料の生成に役立つ。直列混合はまた、医療(薬物送達等)の分野で用いるナノサイズまたは微小サイズの粒子、および粒子懸濁液の製造にも役立つ。
【0004】
医療分野、より詳細には、生物組織を封止または処置するために用いられる組織シーラントの分野では、そのようなシーラントは、典型的には、混合時に、皮膚もしくは他の組織の封止または処置等の所望の用途において十分な密着性を有するシーラントを形成する2つ以上の成分から形成される。そのようなシーラント成分は、生体適合性を有することが好ましく、体に吸収することが可能であるか、または吸収できなくても体に無害であるため、後で除去する必要がない。例えば、フィブリンは、温度に応じてそれぞれ約200cPおよび15cPの異なる粘度を有する少なくとも2つの主要成分(フィブリノゲンおよびトロンビン)の組み合わせから構成される周知の組織シーラントである。フィブリノゲンおよびトロンビン成分は、相互に接触すると相互作用を起こし、粘度が高い組織シーラントであるフィブリンを形成する。
【0005】
シーラント成分は、別々の容器に収納してもよく、塗布前に組み合わせてもよい。しかしながら、フィブリノゲンおよびトロンビン等のシーラント成分は粘度が異なるため、完全かつ徹底した混合が困難であることが多い。これらの成分の混合が不十分であれば、組織の作用表面を封止または結合するシーラントの有効性が損なわれる。
【0006】
上記のようなタイプの不十分な混合は、相対的に粘度が異なる2つ以上の成分を混合する必要がある他の医療および/または非医療分野に存在する問題でもある。このような成分は、少なくとも部分的には、それらの粘度および流量が異なることに起因して、そのような混合物が使用前に収納される際の温度および時間によっては、使用前に相互に分離するか、混合流が徹底的に混合されないまま排出される傾向がある。
【0007】
医療分野では、組織シーラントを提供する際に粘度が高いフィブリンを形成するという困難を克服するために、作用表面への塗布の直前に、それらの成分を一括してまたはタンク内で混合する代わりに、2つ以上の成分を直列混合して組織シーラントを形成することが一般的である。そのようなシーラントは、組織または他の基材もしくは作用表面上に直接シーラントを吐出するディスペンサーによって塗布してもよい。組織シーラントディスペンサーの例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および特許文献10、ならびに特許文献11に示されており、これらの全てを本明細書において参考として援用する。そのようなディスペンサーのさらなる例としては、Baxter AGによって市販されているTissomat(登録商標)およびDuploject(登録商標)という商標名で販売されているものがある。典型的には、これらの先行技術によるデバイスでは、フィブリノゲンおよびトロンビンの2つの個々の成分流を組み合わせ、その複合流が作用表面に排出される。これらフィブリノゲンおよびトロンビンの流れを組み合わせることにより、フィブリンシーラントを形成する反応が開始される。フィブリンの形成には徹底的に混合することが重要であるが、ディスペンサー先端の汚染または目詰まりによって、フィブリンを適切に排出することが妨げられる可能性がある。そのような目詰まりまたは汚染は、排出端からシーラント成分を吐出する前に、シーラント成分がディスペンサー内で長時間接触するかまたは混合されることにより生じる。
【0008】
現在の混合システムでは、粘度が異なる2つ以上の成分の混合品質は、流量に応じて変化する。例えば、特定の流動条件下では、これらの成分は、混合が徹底されていない混合流として排出されることがある。従って、流量に依存することなく十分な混合を行なう混合システムを提供することが所望されている。
【0009】
先行デバイスは、程度の違いはあるが、混合物の形成および排出に関して機能していたが、(例えば、組織シーラント用等の)少なくとも2つの成分を、所望の作用表面への塗布のためまたは他の分野における他の用途のために、確実かつ徹底して混合する混合排出システムが引き続き必要とされている。そのような混合システムを、その目的とする使用または塗布の直前にまたは少なくともできるだけ寸前に混合物を排出するために提供することが可能である。そのような混合排出システムはまた、ディスペンサーの過度の汚染または目詰まりを回避することが好ましい。
【特許文献1】米国特許第4,631,055号明細書
【特許文献2】米国特許第4,846,405号明細書
【特許文献3】米国特許第5,116,315号明細書
【特許文献4】米国特許第5,582,596号明細書
【特許文献5】米国特許第5,665,067号明細書
【特許文献6】米国特許第5,989,215号明細書
【特許文献7】米国特許第6,461,361号明細書
【特許文献8】米国特許第6,585,696号明細書
【特許文献9】米国特許第6,620,125号明細書
【特許文献10】米国特許第6,802,822号明細書
【特許文献11】国際公開第96/39212号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
1つの局面では、本開示は、混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を混合する組織シーラントデバイスに関する。このデバイスは、少なくとも2つの個別流の一方と連通するように適合された第1の流路、および少なくとも2つの個別流の他方と連通するように適合された第2の流路を含む。第1および第2の流路の各々と連通する混合機が提供される。上記混合機は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を含む。上記混合機は、複合流体流中の成分流を十分に混合するために選択される物理的特徴を有する。特徴としては、小さな孔径、厚さ、および孔隙率のうちの1つ以上が挙げられる。
【0011】
他のより特定的な局面では、上記混合機の特徴は、全体に均質な混合流を可能にする孔隙率および平均孔径を含む。例えば、平均流孔径は、約5〜300ミクロンであってもよい。他の特定の例では、上記混合機は、約15〜100ミクロンの範囲内の平均流孔径を有する。さらなる例では、上記混合機は、約20%〜60%の孔隙率、より詳細には、約20%〜40%の範囲内の孔隙率を有する。他の例では、上記混合機は、約1.5〜3.0ミリメートルの範囲内の厚さを有する。他の例では、上記混合機の平均流孔径、厚さ、および孔隙率の積は、約0.016〜0.055の範囲内である。
【0012】
上記のデバイスは、下記でさらに詳細に説明するダーシーの法則で決定される約5〜17の範囲内のK値をさらに有してもよい。
【0013】
他の局面では、本開示は、選択される量のフィブリノゲンとトロンビンの混合物であるフィブリンの複合流体流を提供するデバイスに関する。このフィブリン混合物は、当該フィブリン混合物中の構成鎖の量とフィブリノゲン中に存在する同じ構成鎖の量の比で測定した架橋度または架橋率を特徴としてもよい。上記構成鎖は、アルファモノマー鎖を含んでもよい。さらに、上記フィブリノゲンおよびフィブリン混合物は、少なくとも1つのアルファモノマー鎖、アルブミン、およびベータモノマー鎖を含み、Xn/X1(ここで、X1およびXnは、それぞれ、上記フィブリノゲンおよび混合物について、アルファ鎖とアルブミンおよびベータ鎖の総量との比を表す)の商であるQ値で測定される架橋率を有する。例えば、構成鎖がアルファモノマー鎖である場合のフィブリノゲン中の構成鎖の量は、上記フィブリン混合物中の構成鎖の量より多くてもよい。他の例では、上記複合流体流が選択される量のフィブリノゲンとトロンビンのフィブリン混合物である場合、上記フィブリンおよび/または成分の混合度は、第1の光学特性を特徴としてもよい。上記複合流体流により、第1および第2の成分が十分に混合されフィブリン混合物を形成することを示す比較的均質な光学特性が得られる。上記第1および第2の光学特性の一方は、蛍光性であってもよい。
【0014】
他の局面では、本開示は、直列に位置する2つの混合機を含むデバイスに関する。さらなる例では、上記混合機は多孔質部材であってもよく、さらなる例では、複数の混合機を相互に離れた関係で配置してもよい。他の例では、上記混合機を相互に隣接して配置してもよい。さらなる例では、上記混合機は、少なくとも2つの個別流が最初に組み合わされる場所の下流にあってもよい。他の例では、上記混合機は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される多孔質材料を含んでもよい。さらなる例では、上記混合機は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される焼結材料であってもよい。上記混合機は、焼結重合体であってもよく、より詳細には、上記混合機は、センターポリプロピレンまたはポリエチレン(centered polypropylene or polyethylene)から構成されてもよい。
【0015】
他の局面では、本開示は、フィブリン組成物に関する。上記フィブリン組成物は、選択される量のフィブリノゲンとトロンビンの混合物であり、上記混合物は選択される量の構成鎖を含んでおり、この構成鎖はフィブリノゲン中にも存在する。上記混合物は、Xn/X1(ここで、Xnは、少なくとも部分的に、上記混合物中の構成鎖の量に基づいており、X1は、少なくとも部分的に、上記フィブリノゲン中に存在する構成鎖の量に基づく)の商で測定されるQ値で測定した架橋率を有する。上記Q値は、少なくとも約0.91未満である。
【0016】
他の局面では、上記フィブリノゲンおよび混合物は、少なくとも、アルファモノマー鎖、アルブミン、およびベータモノマー鎖を含み、X1およびXnは、それぞれ、上記フィブリノゲンおよび混合物について、アルファ鎖とアルブミンおよびベータ鎖の総量の比を表す。さらなる局面では、上記構成鎖は、アルファモノマーである。他の局面では、フィブリノゲンのアルファモノマー鎖の量は、上記フィブリン混合物中のアルファモノマー鎖の量よりも多い。特定の例では、上記Q値は約0.9未満であり、約0.8未満であってもよい。
【0017】
さらなる局面では、本開示は、第1の光学特性を有するフィブリノゲンからなる第1の成分、および第2の光学特性を有するトロンビンからなる第2の成分を含むフィブリン組成物に関する。これら第1および第2の成分は、混合時に第1および第2の成分が十分に混合されたことを示す比較的均質な光学特性を与える複合流体流を形成する。1つの例では、上記第1および第2の光学特性は蛍光性であってもよい。上記フィブリン組成物のより特定的な例では、上記トロンビンは高い蛍光性を有し、上記フィブリノゲンは低い蛍光性を有する。上記フィブリン組成物では、上記フィブリノゲンは蛍光性を有さなくてもよい。さらなる例では、上記フィブリンの蛍光性は複合流体流全体に分布し、当該流体流の選択中間地点で観察される蛍光性の度合いがより大きくなるようにしてもよい。
【0018】
本開示はまた、組織シーラント組成物の少なくとも2つの個別成分を組み合わせる方法にも関する。上記方法は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた混合機を提供する工程を含む。上記方法は、上記混合機の材料を、当該材料の物理的特徴に基づいて選択する工程を含む。上記特徴は、平均流孔径、厚さ、および孔隙容積から選択される1つ以上を含む。
【0019】
さらなる局面では、上記方法は、全体に均質な混合流を形成するために十分な平均孔径の孔隙率を選択する工程を含む。1つの例では、上記方法は、約5〜300ミクロンの平均流孔径、より詳細には、約15〜100ミクロンの範囲内の孔径を選択する工程を含む。
【0020】
他の局面では、上記方法は、約20%〜60%の孔隙率、より詳細には、約20%〜40%の範囲内の孔隙率を選択する工程を含む。最後に、上記方法は、約1.5〜3.0ミリメートルの範囲内の厚さを選択する工程を含んでもよい。他の局面では、上記方法は、混合機の平均流孔径、厚さ、および孔隙率の積が約0.016〜0.055の範囲内である混合機を選択する工程を含む。
【0021】
さらなる局面では、上記方法は、上記2つの成分のうちの少なくとも一方が液体、固体、または気体を含み、各成分は、固体、液体、または気体の組み合わせであってもよい。他の局面では、上記2つの成分は、フィブリノゲンおよびトロンビンを含んでもよい。さらなる局面では、上記方法は、直列に配置された少なくとも2つの混合機を含み、上記混合機を介して上記2つの成分を流し、上記第1および第2の成分を混合する工程をさらに含む。またさらなる局面では、上記方法は、下記でより詳細に説明するK値を決定することにより、または上記混合機の平均流孔径、厚さ、および孔隙率の積を決定することにより上記混合機を選択する工程を提供する。さらに、上記方法は、上記組織シーラントがフィブリン混合物であり、かつQ値を測定する場合、下記で前述した他の局面に従って、上記組織シーラントの架橋度を決定することにより上記混合機を選択する工程を含んでもよい。また、上記方法の他の局面は、下記でさらに詳細に説明するように、上記2つの成分が順次1回以上、複数回に限定されない回数だけ上記混合機を通過する工程を含んでもよい。さらに他の局面では、上記方法は、上記混合機の近傍であって当該混合機の上流の選択位置で上記2つの成分を組み合わせる工程を含んでもよい。
【0022】
他の局面では、本開示は、複合流体流を組み合わせて排出する組織シーラントシステムであって、それぞれが個別に1つ以上の成分を入れた少なくとも2つの容器を備えるシステムに関する。上記システムは、少なくとも2つの容器の一方と連通する第1の流路、および上記少なくとも2つの容器の他方と連通する第2の流路を含む。上記第1および第2の流路の各々と連通する混合機は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えるかまたは含む。上記混合物は、K=Q*η*L/(S*ΔP)であるダーシーの法則によって定義される約5〜17の範囲内のK値を有する。
【0023】
他の局面では、本開示は、混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を混合するデバイスに関する。上記デバイスは、上記少なくとも2つの個別流の一方と流体連通状態にある第1の流路、および上記少なくとも2つの個別流の他方と流体連通状態にある第2の流路を含む。上記デバイスは、少なくとも2つの相互に離れた関係で配置された混合機を含み、一方の混合機は他方の混合機の上流に位置し、上記第1および第2の流路の各々と連通する。各混合機は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を有する。上記少なくとも2つの混合機の下流にある第3の流路により、上記複合流体流の流出が可能になる。さらなる局面では、上記混合機の少なくとも一方は多孔質部材を備える。他の局面では、上記混合機の少なくとも一方は、上記少なくとも2つの個別流が最初に組み合わされる場所の下流にある。上記混合機は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される多孔質材料で構成されてもよく、より詳細には、上記混合機の少なくとも一方は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される焼結材料であってもよい。より特定的な例では、上記混合機の少なくとも一方は、例えば、焼結ポリプロピレンまたはポリエチレン等の焼結重合体で構成される。
【0024】
他の局面では、本開示は、1つ以上の成分を組み合わせる方法に関する。上記方法は、少なくとも2つの混合機を相互に離された関係で提供する工程であって、一方の混合機は他方の上流に位置し、各混合機は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備える、工程を含む。上記方法は、混合機を介して第1の成分および第2の成分を同時に流して上記第1および第2の成分を混合する工程をさらに含む。
【0025】
さらなる局面では、本開示は、混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分を混合するデバイスに関する。上記デバイスは、第1および第2の側面を有し、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた少なくとも1つの混合機を含む。上記デバイスは、上記混合機の第1の側面と流体連通し、第1の成分の供給源と連通するように適合された第1のポートを含む。上記デバイスは、上記混合機の第2の側面と流体連通し、第2の成分の供給源と連通するように適合された第2のポートをさらに含む。各ポートは、混合機を介して他方のポートと流体連通し、上記第1および第2の成分の一方を、上記混合機の第1および第2の側面のうち選択した一方から他方の側面に流し、上記第1および第2の成分の両方を当該他方の側面から混合機に還流(return flow)させることができる。上記デバイスは、複合流体流を排出または回収するディスペンサーまたは容器をさらに含んでもよい。1つの局面では、上記2つの成分のうちの少なくとも一方は液体、固体、または気体を含み、各成分は、さらに、固体、液体、または気体の組み合わせであってもよい。他の局面では、上記2つの成分は、ディーゼル、オイル、ガソリン、水、および空気から選択される少なくとも1つを含んでもよい。さらなる局面では、上記2つの成分は、卵白および空気を含んでもよい。またさらなる局面では、上記2つの成分は、フィブリノゲンおよびトロンビンを含んでもよい。
【0026】
他の局面では、本開示は、2つ以上の成分を組み合わせる方法に関する。上記方法は、上記第1および第2の流路の間に位置し、それらと流体連通状態にある少なくとも1つの混合機を提供する工程を含む。上記第1および第2の流路は、それぞれ、上記第1および第2の成分と流体連通状態にある。上記方法は、上記第1の成分が順次上記混合機を上記第1の流路から第2の流路に向かって通過し、上記第1および第2の成分の両方が上記混合機を上記第2の流路から第1の流路に向かって通過する工程を含む。この方法に従って、上記第1および第2の成分が混合物を複数回(例えば、少なくとも3回)通過するようにしてもよいがこれに限定されない。上記方法のさらなる局面では、組み合わせた第1および第2の成分を、それらの組み合わせた成分を排出する出口と接続するように構成された上記第1および第2の流路の一方に収納する。1つの局面では、上記第1および第2の成分の少なくとも一方は液体、固体、または気体である。他の局面では、上記第1および第2の成分はともに液体、固体、または気体である。さらなる局面では、上記成分の少なくとも一方は、液体、固体、または気体の組み合わせであってもよく、上記第1および第2の成分の他方は液体、固体、もしくは気体またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
さらなる局面では、本開示は、混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を組み合わせるデバイスに関する。上記デバイスは、上記少なくとも2つの個別流の一方と流体連通状態にある第1の流路を含む。上記デバイスは、上記少なくとも2つの個別流の他方と流体連通状態にある第2の流路をさらに含む。上記デバイスは、第1および第2の流路と、それらの下流において流体連通し、少なくとも2つの個別流を選択位置で合流させる第3の流路をさらに含んでもよい。上記デバイスは、上記選択位置の下流であり、かつその近傍の少なくとも1つの混合機を含む。上記混合機は、その内部を通る上記複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子、および上記混合機の下流に位置し上記複合流体流の流出を可能にする出口を備える。1つの局面では、上記2つの成分の少なくとも一方は液体、固体、または気体を含み、各成分は、さらに、固体、液体、または気体の組み合わせであってもよい。他の局面では、上記2つの成分は、ディーゼル、オイル、ガソリン、水、および空気から選択される少なくとも1つを含んでもよい。さらなる局面では、上記2つの成分は、卵白および空気を含んでもよい。またさらなる局面では、上記2つの成分は、フィブリノゲンおよびトロンビンを含んでもよい。
【0028】
他の局面では、本開示は、少なくとも2つの個別成分流を混合する方法に関する。上記方法は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた混合機を提供する工程を含む。上記方法は、上記混合機の近傍において、該混合機に対して上流の選択位置で少なくとも2つの個別成分流を組み合わせ、上記少なくとも2つの個別成分流が上記混合機を通過する工程を含む。上記方法はまた、上記第1の混合機の下流に、上記成分流がその内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた第2の混合機を通過する工程を含む。
【0029】
他の局面では、上記方法は、上記組み合わせた少なくとも2つの流体流を所望の作用表面に塗布する工程を含む。上記混合機は、平均孔径が約5〜300ミクロンの複数の孔を有する多孔質部材であってもよい。上記混合機はまた、約20%〜40%の孔隙率を有する多孔質部材であってもよい。上記混合機は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される多孔質材料を含んでもよく、より詳細には、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される焼結材料であってもよい。上記方法はまた、上記混合機を介した上記少なくとも2つの成分流を停止させた後、上記少なくとも2つの成分流が上記混合機を繰り返し通過する工程を含んでもよい。
【0030】
本開示のデバイス、システム、方法、および組成物のこれらおよび他の局面を下記においてより詳細に説明する。
【0031】
本発明のデバイス、システム、および方法の特定の構造について後述するが、記載するものと同一の構造に限定するものではなく、本発明の範囲は、出願時または出願後の請求項によって規定されることは言うまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
好適な実施形態の説明
本発明の一実施形態に従って、図1は、シーラントまたは組織シーラント等の複合流体流または他の複合流体流の少なくとも2つの成分を混合する全体において2で示すディスペンサーを示す。ディスペンサー、システム、および方法を、一般に、組織シーラントディスペンサーに関して例示説明するが、本発明がそのようなディスペンサーまたは組織シーラント成分の混合に限定されるものではなく、本発明が成分流体流の混合が所望される様々な分野に適用されることは言うまでもない。
【0033】
図1に示すように、ディスペンサー2は、中空のシリンダー、すなわち、円筒6および8として示される少なくとも2つの流体成分源を含むが、流体成分を提供する他の供給容器を用いてもよい。図1の実施形態では、各円筒は、フィブリノゲンまたはトロンビン等、フィブリン組織シーラントを形成する流体成分の一方を収納する全体にシリンダー形状の内部または孔を有する。各円筒のそれぞれの遠位端7、9は、それぞれ、全体において4で示す排出端構造と連通する出口11、13を有する。
【0034】
図1では、各円筒6、8の孔は、それら孔のそれぞれからシーラント成分を吐出するために、それぞれ、ピストンまたはプランジャ10、12を摺動自在に収容することが好ましい。プランジャまたはプッシャ14、16は、各ピストンと関連づけられ、それぞれの孔の近位に延在している。親指当て18、20は、各プランジャ14、16と関連づけられることが好ましく、成分を吐出するために手動または自動のいずれで作動または押動されてもよい。親指当て18、20は、個別または同時のいずれで作動させてもよく、例えば、共通アクチュエータまたはヨークによってプランジャを結合して同時に移動させてもよい。
【0035】
図1に示すように、例示する先端組立部または構造は、多数の部品からなる組立部であり、フローディレクタ26を含む。このフローディレクタ26は、近位端22および遠位端24を有し、それぞれ、第1および第2の流路28および30を画定する。各流路28、30は、それぞれ、円筒6、8の孔と連通することにより、それぞれの成分を遠位端24から流出することができる。図1に示すように、各流路28および30への入口は、例えば、ルアーフィッティング、または関連分野の当業者には明白な他の取り付け具による円筒から6、8への出口の一方への取り付けに適している。
【0036】
流体成分を排出するために手動で作動させるプランジャを例示しているが、本発明とともに、手動または電動で作動させるディスペンサーを含む他のタイプのデバイスを用いてもよい。さらに、上述したように、本発明は、シーラント用ディスペンサーに限定されるものではなく、医療分野内外の他の用途における他の複合流体流として2つ以上の成分を組み合わせるために用いることが企図される。
【0037】
図1において、第1および第2の流路28、30の各々は、個別流体流である上記成分の一方と、そのような流体流が遠位端24に接近または到達するまで連通する。図1に示すように、第1および第2の流路28、30は、組み合わせた第3の流路32に対して、各成分流を、それら2つの成分流の組み合わせが助長されるような角度で方向づけるように、互いに平行でなく、かつ相互接続しないようにしてもよい。例えば、図1に示すように、上記流路は、上記成分流がそれぞれの流路から流出するまで別々の状態(一方の流路28または30が他方からずれた相互接続しない状態)にする。図1では、それら流出流は、最初に、個別流を偏向させ、かつそれらを収束させる第3の流路32の対向する表面に向けて、互いに離れていくように方向づけられる。遠位端24の下流に位置する第3の流路32内の流体成分流の流動は乱流であってもよく、それ以外の場合には、この領域において流体成分の流出流がある程度混合されるような流体流動条件を与える。
【0038】
図5〜図8では、各図は、フローディレクタの成分流路に関して代替的な方向づけがなされているが、他の向きを用いてもよい。図5および図8におけるそれぞれの代替的な排出デバイス50、60、および70は、直線的かつ平行する向きを示しており、流体成分流は、フローディレクタから、一般に平行する経路に沿って流出する。図6は、図1と同様の流路を、平行でなく、かつ相互接続していない状態で示している。図7は、デバイスの遠位端で直角をなす平行な流路を示している(図7では、一方の流路が他方の前に位置しており、1つの流路だけが示されている)。他の向きも可能である。
【0039】
上記およびさらには図1〜図4に示すように、第3の流路32は、第1および第2の流路28、30と連通する。第3の流路32の最遠位にある排出端34は、混合成分流の流出を可能にし、複合混合物を塗布する際の所望の形態および/または作用表面に応じて、任意の所望形状の開口部または管状部、カニューレ、噴霧デバイス、噴霧ヘッド、もしくは他のタイプの排出デバイス等の排出構造を備えてもよい。
【0040】
本発明に従って、全体として36で示す混合機は、第3の流路32の排出端34の上流に位置し、成分流を混合する。成分流は、混合機36を介して流れる際に混合されることにより2つ以上の成分が徹底して混合され、実質的に均質な複合流体流が生成されて排出端34から排出される。
【0041】
本明細書に記載の混合機36は、当該混合機を通る複数の蛇行相互接続流路を画定する3次元格子またはマトリックスで形成されることが好ましい。この構造により、成分流体流は、混合機を通過する際に密に混合される。混合機36は、流体成分流の層流を可能にし、流体成分流の混合を促進するか、または、それ以外の場合には、好ましくは流体成分流の有意な混合を助長する流体流動条件を与えてもよい。
【0042】
混合機の1つの好適な材料を図9〜図16の断面図に示す。図示した材料は、焼結により形成され一体多孔質構造を画定する重合体材料である。この重合体材料の格子またはマトリックスは、混合機を通る複数の本質的に不規則形状をなす蛇行相互接続流路を形成する。混合機36の材料は、例えば、以下の1つ以上から選択してもよい:ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、PVdF、ポリエステル、環状オレフィン共重合体(COC)、EVAを含む熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリエチルエーテルケトン(PEEK)、ガラス、セラミック、金属、ポリエチレンもしくはポリプロピレン以外の重合体材料、または他の同様の材料。混合機36はまた、吸収分子を有する炭素粒またはリン酸カルシウム微粒子等の活性粉状材料を含有する重合体材料から構成されてもよい。他のタイプの材料も利用可能である。本発明に適した焼結ポリプロピレン材料は、Bio−Rad Laboratories(Richmond,California,United States)、Porex ManufacturingのPorex Porous Products Group(Fairbum,Georgia,United States)、Porvair Technology(Wrexham,United KingdomのPorvair Filtration Group Ltd.の一事業部(Porvair Vyon Porvent、PPF、またはPPHP材料を含む))、またはMicropore Plastics,Inc.(5357 Royal Woods,Parkway,Tucker,GA 30084、http://www.microporeplastics.com/)等の商業供給源から入手可能である。
【0043】
混合機36を、成分流の混合を助長する1つ以上の特徴を有する1つ以上の材料から構成することも可能である。限定ではなく一例として、上記材料は、本質的に水を吸収するかまたは結合する親水性材料、本質的に水に溶解しない疎水性材料、本質的にオイル等を吸収しない疎油性材料であってもよく、および/または成分の混合を促進するために所望される他の特徴を有してもよい。
【0044】
上記のように、混合機36は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子またはマトリックスの全体または一部であることが好ましい。図9〜図16では、成分流が複数の蛇行相互接続通路を画定する図中の3次元格子またはマトリックスを通過することにより、当該成分流が徹底して混合され、本質的に均質な複合流体流を生成することができる。図9〜図12では、走査電子写真が、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約30倍、100倍、350倍、および200倍に拡大した横断面をそれぞれ示している。図13〜図16では、走査電子写真が、図9〜図12に示したものと同じ材料を約30倍、100倍、250倍、および350倍にした縦断面をそれぞれ示しており、3次元格子の他の図を示している。図9〜図16に示すように、図示した経路は、混合機全体における1つ以上の無作為な位置で相互接続し、それによって、上記2つの成分流が混合機を流動する際にそれらの位置で無作為に組み合わせられるようにすることが好ましい。3次元格子またはマトリックスは、各種の方法で形成可能であり、図9〜図16に示すような焼結重合体材料の不規則構造に限定されないことは言うまでもない。
【0045】
図1〜図4に図示した混合機36は、多孔質材料から構成されており、用途に応じて異なる孔隙率を有してもよい。そのような多孔質材料は、成分流が通過することにより徹底的に混合した状態で複合流体流を生成できる孔隙率を有することが好ましい。材料の孔隙率は、当該材料の総容積に対する空隙容積の割合をパーセンテージで表してもよい。材料の孔隙率は、使用材料およびその流体流動に対する抵抗(流動抵抗による過剰な背圧の生成は通常回避しなければならない)、使用混合成分の粘度および他の特徴ならびに数、所望の混合品質、ならびに所望の塗布および/または作用表面を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に応じて選択してもよい。限定ではなく一例として、フィブリン成分の混合に使用可能な材料の孔隙率は、約20%〜60%、好ましくは、約20%〜50%、より好ましくは、約20%〜40%としてもよい。
【0046】
図17には、Micromeritics(Norcross,GA)によって製造された製品であるAutopore III装置で水銀孔隙率試験を行って得た選択材料(Bio−Rad Laboratories製)の孔隙率測定値が示されている。選択材料の孔隙率を他の方法または他の試験を用いて判定することも可能である。図17では、そのような孔隙率測定値により、約33%の孔隙率、約0.66の見かけ密度、および約64.75ミクロンの平均孔径を得る材料サンプルに対する水銀侵入の総容積が示されている。所望の用途に応じて、フィブリンの混合またはフィブリン以外の複合流体流の混合に他の性質を有する材料を用いてもよい。
【0047】
また、混合機の平均孔径範囲を変更してもよい。図9〜図16に示す3次元格子では、混合機36は、成分流が流動する流路の少なくとも一部を画定する複数の孔を画定してもよい。平均孔径範囲は、そのような成分流に対する流動抵抗が必要以上に大きくならないように選択してもよい。さらに、平均孔径範囲は、孔隙率に関して上述したものを含むいくつかの要因に応じて変更してもよい。混合機の異なる材料について、表1に平均孔径範囲をいくつか示すが、16番は混合機を用いない「対照」例を示している。
【0048】
【表1】
表1は、PorexまたはPorvairによってPorventまたはVyonという商標名で製造された市販の焼結ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)材料をいくつか含んでいる。この表は、対照実験である混合機を用いない1つの実験(ID26)を除いて、フィブリノゲンおよびトロンビン(4国際単位(IU)/ml)が図1に示すような単一の混合機を有するデバイスを通過した後に得られたフィブリンの品質に基づいて各材料から得た混合結果をまとめている。平均孔径範囲としては、約5〜300ミクロンまでのものが示されている。表1では、2番、21番、6番、19番、22番、24番、8番〜9番、16番、18番、20番、14番、17番、および27番の材料の範囲が、それぞれ、フィブリンについて、一般に良好な混合品質を示している。表1は、そのような平均孔径範囲が完全なものであることを示すものではなく、他の平均孔径範囲も可能であり、かつ混合に有用である。表1に示す平均孔径範囲は、記載した材料について、供給元であるPorvairおよびPorexによって提供された技術データシートから得たものである。
【0049】
混合機は、さらに、成分流を十分に徹底して混合できる大きさに構成されてもよい。混合機の大きさは、ディスペンサーの大きさおよび/もしくは構成、混合機孔隙率および平均孔径、使用混合機材料、所望の混合度、混合成分、ならびに/または所望の用途を含む要因等に応じて変更してもよい。上記の例示的な範囲の孔隙率および平均孔径を有する混合機については、表1に示すように、混合機の厚さを約1.5mm〜3.0mmの範囲にしてもよい。変化するまたは不均一な厚さを含む他の厚さも可能である。
【0050】
また、混合機の形状および構成は、図1〜図4に示す全体に円形状の断面または円盤形状から変更してもよい。混合機が、楕円形、長円形、四辺形、または他の形状を含むがこれらに限定されない他の形状または構成を有することも可能である。図1〜図4に示す実施形態では、混合機の半径を約3mm〜5mmの範囲としているが、他の寸法も可能である。
【0051】
図1に示すように、混合機36は、遠位端24の下流において個別成分流が最初に合流する場所から約Lの距離に位置することが好ましいが、合流する位置にあってもよい。設計要件および必要とされる混合の程度に応じて距離Lを変更することが企図される。一例としては、フィブリンの送達に用いられる図1〜図4に示すタイプの携帯用ディスペンサーでは、距離Lは、約0〜6mm以上、好ましくは、約1〜6mmの範囲としてもよい。一般的に言えば、例示した混合機によって生成されるフィブリンの均質性は、図1〜図4に示すタイプのディスペンサーを使用することによって、距離Lが減少する(例えば、4mm以下)につれて低減する。より好ましくは、図1〜図4に示す実施形態には約5〜6mmの距離Lが好ましいが、他の距離も可能である。上記に示すY形状の流路構造以外の設計を使用し、かつ/またはそのような構造に、図5〜図8に示すような他の直径、長さ、流路数、および/または流路方向等の他の物理的パラメータを使用して、距離Lの値を上記範囲に限定することなく上記と異なる範囲とすることが企図される。
【0052】
また、混合機は、混合機に用いる1つまたは複数の材料の所望する形状、厚さ、および/または他の特徴に応じて、各種の方法で製造してもよい。限定ではなく一例として、混合機は、当該混合機に対して所望の大きさ、厚さ、および/または他の特徴を有する1つ以上の材料片から作製または区分されてもよい。あるいは、混合機は、所望の大きさ、厚さ、および/または他の特徴を有する混合機を形成する1つ以上の成形加工を含む処理によって予め作製されてもよい。他の方法で混合機を製造することも可能である。混合機は、カニューレ、ルアー、噴霧端、管、または他のデバイスの一部として、例えば、成形超音波溶接、機械継手、または他の取付技術によって予め組立てられてもよい。限定ではなく一例として、図18は、カニューレ型デバイス82内に位置する図1の混合機36と類似の混合機80を示す。あるいは、この混合機は、使用前にユーザによって適切なデバイスの一部として組み立てられてもよいが、他の用途に用いてもよい。
【0053】
混合機の材料は、1つ以上の物理的特徴に基づいて、所与の用途のために、当該混合機の下流において、成分流が当該混合機を通る際に十分かつ相対的に均質な複合流体流を得ることを特徴とし、そのように選択されてもよい。一例として、表2は、本明細書に記載のディスペンサーシステムおよび方法での使用に適した混合機について、各種の焼結重合体材料およびそれらの物理的特徴を示す。表2に示す特定の材料は、例えば、PorvairFiltration Group Ltd.(Hampshire,United Kingdom)、またはPorex Corporation(Fairburn,Georgia,USA)によって製造される。この表に表すデータは、下記式に示すようなダーシーの法則によるK値を含む:
Q=(K*S*ΔP)/(η*L)
ここで、Qは、材料を通る流動流の流量であり;
Sは、材料の表面積であり;
ΔPは、材料の上流と下流位置間の圧力の変化であり;
Lは、材料の厚さであり;
ηは、材料を流れる流体の粘度であるか、または1つより多くの流体が流れる場合には、より粘度が高い成分の粘度である。
【0054】
K値は、典型的には、浸透性の値を表し、表2では、μm2の単位で表されるK値とともに漸増する浸透性の値を表している。表2はまた、最小孔径(min.)、平均流孔径、最大孔径(max.)、平均泡立ち点(または液体に気泡を生成させる圧力)、厚さ、および孔隙率に対する相対値を含む材料の物理的特徴のいくつかをまとめている。表2の材料各々の物理的特徴は、当業者に公知の方法を用いた試験に基づいて得られた。
【0055】
限定ではなく一例として、表2のK値は、水が記載する物理的特徴を有する材料を通過する浸透性試験によって得られた。浸透性試験は、材料をそれらのK値に基づいて特徴付ける際に役立っており、表2では、それらの材料をK値の昇順で示している。浸透性の測定のために、使用した材料について、PorvairおよびPorexによる焼結多孔質材料シートが与えられた。浸透性試験は、水を充填したシリンジで行った。減圧弁を閉じて、シリンジの下流の全ての接続部を開いた。次いで、シリンジの上下間の圧力降下が約0になるまでシリンジに水を流した。次いで、減圧弁を開き、圧縮空気を注入し、シリンジから一定の流量で水を押し出した。シリンジ上の上側と下側の容積表示間の水流を監視して、注入した空気の容積を判定した。水のメニスカスが上側の印を越えるとすぐに、その時間および圧力を記録した(P1)。水のメニスカスがシリンジ本体の下側の印を越えたときに、合計時間(t)、圧力(P2)、および水の容積(V)を記録した。既知の値であるP1、P2、t、およびV以外で浸透性の計算に用いた残りのパラメータで既知であったものには以下の物が含まれていた:焼結材料円盤の直径は約10mm、厚さは約1.5mm、焼結材料円盤の表面は約78.54mm2、水の動的粘度10−3パスカル秒(Pa.s)。この試験を用いて表2のK値を決定した。
【0056】
本明細書に記載するように、他の液体、気体、および固体を用いて、それらの材料または他の材料についてダーシーの法則によりK値を決定することが企図される。異なる液体、気体、および固体がダーシーの法則の粘度値(η)を変化させることにより、使用可能な材料の所与の物理的特徴(厚さLおよび表面積S)の組、流量Q、および圧力差ΔPについて異なるK値またはその範囲が得られることが分かる。さらに、粘度が一定となるように同じ液体、気体、または固体を用いる場合であっても、他のパラメータを変更して異なるK値を得てもよい。限定ではなく一例として、流量、表面積、厚さ、および/または圧力差のうちのいずれか1つ以上を変更することにより、結果的に決定されるK値を変更してもよい。
【0057】
図64〜図65を手短に見てみると、3次元曲線において、一方の軸に沿って浸透性またはK値が示され、第2の軸に沿って圧力値が示され、第3の軸に沿って粘度値が示されている(図65は、曲線をより見やすくするために浸透性および圧力の軸を右回りに回転させていることを除いて図64と同一である)。一般的に言えば、図示した曲線は、所与の材料の浸透性試験に使用可能なあらゆる液体、気体、または固体に適用可能である。一例として、図64〜図65は、浸透性またはK値、圧力値、および粘度について、表面積S、流量Q、および材料厚さL等、ダーシーの法則の他のパラメータが一定に保たれると仮定して場合の変化を示している。図64〜図65に示すように、所与の粘度および圧力値に対する浸透性またはK値は、図示した曲線に従って知ることができる。浸透性、圧力、または粘度値のうちの1つだけが一定である場合でも、上記曲線は、上述したダーシーの法則に基づくそれらの相互関係により、その図示した曲線に沿って変化し得る他の2つの値を示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
表3には、表に記載の材料のK値が表されている。限定ではなく一例として、表2〜表3における概ね5〜17の間のK値を有する材料から作られた混合機または円盤を用いて、フィブリノゲンとトロンビンを組み合わせた混合物の良好で均質な混合が観察された。また、表3は、平均流孔径(MFP)と、厚さと、孔隙率容積(PV)の積に(この積の漸増値に基づいて)1000を掛けた数値を含んでいる。約16〜55の範囲内のMFP*厚さ*PV*1000の値を有する混合機を用いることで、フィブリンが良好かつ均質に混合されることも観察された。混合機材料はまた、上記物理的特徴または他の特徴のうちの1つ以上に基づいて選択してもよい。上述したように、浸透性またはK値は、例えば、水以外の液体を用いる場合、または浸透性試験に気体および固体を使用する場合、または異なる物理的特徴もしくはパラメータを使用する場合には、上記表2〜3において示した値から変更してもよい。そのような場合、適切なK値の範囲が決定され、混合機の材料が、十分な混合品質が得られると判定されるK値の範囲に基づいて適切に選択できることが企図される。
【0060】
図19〜図21は、全体に102で示す組織シーラントディスペンサーを含む本発明の他の実施形態を示す。図1〜図4に示すディスペンサー2と同様に、図19〜図21のディスペンサー102は、一対の中空円筒または管106、108、ピストン110、112、プランジャ114、116、および親指当て118、120、ならびにフローディレクタ126を含む。フローディレクタ124は、遠位端124、ならびに第1、第2、および第3の流路128、130、および132を有する。図21に示すように、第1および第2の流路128、130のそれぞれの開口部A、Bは、上述したように、2つの個別流が遠位端124から流出するときにそれらの組み合わせを助長するように配置される。より詳細には、図19〜図21では、出口が相対的にずれた関係で位置し、管132の壁部に向かうように外側に向かって流動が生じるが、他の位置および/または向きを用いてもよい。
【0061】
図19を参照して、ディスペンサーは、混合を促進するために2つ以上の混合機を有することが好ましく、第1および第2の混合機136Aおよび136Bの2つを有することが好ましい。図19では、そのような混合機136Aおよび136Bは、排出端134の上流において流路132に沿って相互に距離Vだけ離れた直列に間隔を空けた関係で配置される。一般的に言えば、フィブリンの混合の均質性または品質は、例えば、混合機を2つにする等、混合機の台数の増加とともに向上するが、任意の数の混合機を用いてもよい。
【0062】
流路132は、一体構成のものかまたは個別の部分もしくは管状区間132A、132B、および132Cから構成されてもよく、この場合、混合機136A、136Bは、図19に示すように、混合機136A、136Bの間、上流混合機136Aと遠位端124の間、および下流混合機136Bと排出端134の間に確実に所望の間隔が空けられるように区間132A、132B、および132Cの間に位置する。外部筐体138は、混合機136A、136B、および管状区間132A、132B、132Cを支持し、位置決めするために、管状区間132A、132B、および132C、ならびに混合機136Aおよび136B上に密着するような大きさにしてもよい。
【0063】
混合機136A、136B間の距離Vは、それら混合機が相互に隣接する約0mm〜6mm以上の間で変更してもよい。図22〜図27は、混合機136A、136B間で実現可能な異なる間隔距離をいくつか示している。2つの混合機136A、136B間の距離Vとしては、約0mm、1mm、2mm、3mm、4mm、および5mm(それぞれ、図22〜図27に示す)が示されている。一般的に言えば、組織シーラント用途で使用する場合、2つの混合機間に存在するフィブリンは、それらの間の距離Vの増加とともに増加することが分かった。図示する実施形態において距離Vが約3mm以上になると、良好なフィブリンが形成され、十分に均質な複合流体流が形成された。上述したように、第1の混合機の上流の長さLは、約0mm〜6mm以上の間で選択してもよい。例えば、上記の範囲の大きさを有する2つの混合機を用いる場合、1つの組み合わせとしては、混合機136A、136Bのいずれの側面におけるフィブリン形成、および/または混合機136A、136Bの孔の目詰まりを抑えるように、混合機136A、136B間の距離Vが約4mm以下で、上流混合機136Aと遠位端124の間の長さLが約6mm以下としたものが挙げられる。距離Vおよび長さLの他の変形例または組み合わせも可能である。値Lについて先に述べたように、異なる設計および/またはそのような設計に使用する異なるパラメータに基づいて値Vを変更してもよく、値Vは上記の値または範囲に限定されない。
【0064】
本明細書に記載の混合および排出システムは、流体成分流の流動が間欠的に開始および停止される「ストップ・アンド・ゴー(Stop and Go)」デバイスまたはプロセスを可能にする。そのような「ストップ・アンド・ゴー」デバイスまたはプロセスには、長さLおよび/または距離Vが、1つまたは複数の混合機の上に、または1つより多くの混合機を使用する場合には、それら混合機間に顕著なフィブリン形成を発生させないことが好ましい。少なくとも2つの混合機を使用する「ストップ・アンド・ゴー」デバイスについては、長さLおよび距離Vを変更してもよい。限定ではなく一例として、2つの混合機デバイスについては、約3mmの長さLおよび約4mmの距離Vにより、十分に徹底して混合を行なうことができ、2つの混合機の上にまたはそれらの間における顕著なフィブリンの発生を回避することができる。長さLおよび距離Vについては、所望の用途および/または使用可能な他の設計およびパラメータに応じて、上述したもの以外の変更も可能であり、それらを使用してもよい。
【0065】
図28〜図29は、2つの混合機を示しおり、それらの間の距離Vは、それぞれ、約2mmと3mmであり、長さLは約6mmである。流動が過度に制限されなければ、任意の適当な数の混合機によって混合を促進することも可能である。また、図30〜図32は、それぞれ、1つの混合機136A、2つの混合機136Aおよび136B、ならびに3つの混合機136A、136B、および136Cを有する混合機構成を示しており、それらの間に距離または間隔(V)がなく、長さLは約6mmである。1つより多くの混合機を用いる場合、それらの混合機は、上述したように同じ特徴(例えば、孔隙率、平均孔径、または長さ)を有さなくてもよい。混合機の特徴を変更して、流体流がディスペンサーを通過する際に、さらに徹底して混合を行なうことが望ましい。
【0066】
図33では、本発明のさらなる実施形態が、全体に202で示すディスペンサーを含む。先に説明した実施形態と同様に、ディスペンサー202は、一対の中空円筒または管206、208、ピストン210および212、プランジャ214および216、親指当て218、220、ならびにフローディレクタ226を備える。ディスペンサー202の近位端222は、プランジャ214および216の近位端を端部222で結合し、成分を遠位端224から同時に排出する共通アクチュエータを提供する。遠位端224は、単一の混合機236が排出端234の上流に位置し、かつ遠位端224の下流から長さLの地点に配置される第3の流路232内に、それぞれの成分を個別に吐出する個別流路228および230を画定する。上記のように、混合機の数および長さLの変更を含めた他の変更も可能である。
【0067】
図33では、遠位端224に第4の流路240が画定されており、導管(例えば、図10に342で示す導管)を介して遠位端と連通する空気等の無菌気体の供給源と流体連通するように適合されている。この気体の供給源は、2006年1月12日に出願され、本明細書中において参考として援用する米国特許出願シリアル番号11/331,243号に記載説明されるように、空気圧、機械、電気、および/またはそれらの組み合わせにより作動してもよい。
【0068】
図33では、上記のようなディスペンサー202は、2つの成分が気体に助力されてデバイスから吐出され、ディスペンサー202の遠位端234から気体と混合された成分流体流が与えられることを除いて、図1〜図4で説明したディスペンサー2と同様に動作する。流路240が気体または水を導入し、混合機の流路および/または排出端234および/または下流に位置する他の導管またはカニューレ構造を洗浄することも可能であり、これによって、間欠的な流体流動の開始および停止中に、「ストップ・アンド・ゴー」デバイスの動作が容易になる。
【0069】
図34では、全体において302で示す改変ディスペンサーは、第3の流路332が排出端334の上流で間隔を空けながら直列するように配置された2つの混合デバイス336A、336Bを含むことを除いて、図33に関して上述したものと同一の部材を有する。先に説明した本発明の局面に従って、上流混合機336Aと遠位端324間の長さL、ならびに上流および下流混合機336Aおよび336B間の距離Vについて変更が可能である。
【0070】
他の改変も可能である。例えば、図33〜図34または上記実施形態のいずれかに示すガスアシスト式噴霧ディスペンサーを、例えば、図5〜図8に示す向きを含むがこれらに限定されない各種の代替的な向きの成分流路を含むように改変してもよい。例えば、改変ディスペンサーは、腹腔鏡噴霧デバイス、または他の低侵襲性手術器具および/もしくは手順の一部として用いられるような所望の長さを有するカテーテルまたは他の同様の構造を用いるような個別成分流体流のための平行成分流路を提供することができる。ガスアシスト方式を使用する場合、混合機の上流もしくは下流、および/または流体成分流が合流する場所の上流もしくは下流のいずれかの位置に気体流体流を配置させてもよい。上記の改変に他の変更を加えることも可能である。
【0071】
図35〜図36は、上記図1、図19、図33または図34に関して上述したものと同様の部材を含み、全体に402で示す他のディスペンサーを示しているが、当該デバイスは、空気および/または水とともに成分(例えば、フィブリノゲンおよびトロンビン)を噴霧可能であり、本明細書中において参考として援用する米国特許第6,835,186号に記載説明されるMBUとして公知のメカニカルブレークアップユニットを含む噴霧ヘッド438を使用可能である。他の実施形態に関して上述したように、図35のコネクター438は、フィブリノゲンまたはトロンビンを組み合わせる流路432に位置する1つ以上の混合デバイス436を使用してもよい。上記空気および/または水は、そのような混合の上流または下流のいずれかにおいて複合流に導入可能である。
【0072】
本発明の他の局面に従って、図37〜図40は、内部に混合デバイス502が配置され、全体において500で示すコネクターを示す。図37では、コネクター500は、本明細書において先に述べたように、単一または複数の円筒を有する排出デバイス等の排出デバイスと流体連通状態となるような位置にあってもよいが、他のデバイスを利用することも可能である。図37に示すように、上記コネクターは、単一の容器を有する回収/排出デバイス504の遠位端に設けられるが、このデバイスは、例えば、十分に混合された成分が混合機を通過した後にそれらを収納または回収するために、図1〜図4の排出デバイスの下流に配置してもよい。他の構成も可能であり、説明記載したデバイスに限定されない。
【0073】
先行する実施形態において示したように、混合デバイス502は、相互に間隔を空けた関係で直列に配置してもよい。コネクター500はまた、図39〜図40に示すような、それぞれが図示する排出デバイス504および/または他の排出デバイスとの接続のために雄および/または雌ルアーロック機構と関連する第1および第2の端部(それぞれ、506および508)を含む。図39〜図40では、500で示すコネクターは、混合デバイスが挿入される流体流路512がその内部で画定されるスリーブ510を含む。スリーブ510は、デバイス504と流体連通状態となるチャネルまたは導管を画定する延長部516の一部が挿入されるように当該スリーブの内部表面上に画定される溝514を含んでもよい。それらの溝は、例えば、延長部516内に画定される突起518を備えてもよく、この延長部は、溝514(図中において514示す)の曲面に沿って突起を回転させることにより挿入されルアーロック方式で接続される。所望であれば、コネクター500のいずれかの端部において、流体流路が不用意に取り外されることを防ぐ他の形状、構成、および/またはタイプの接続を行なうことが可能であり、上記で説明記載した接続に限定されない。
【0074】
図41および図42は、代替的なコネクター600を示しており、当該コネクター600内に画定される流体流路604内には単一の混合デバイス602が配置されている。コネクター600は、当該コネクターの両側において、シリンジまたは他のデバイス等の排出デバイスに取付可能な2つの雌ルアーロックが可能な第1および第2の端部(それぞれ、606および608)を含む。
【0075】
図43〜46は、さらに他の改変コネクター700を示しており、当該コネクター内に画定される流体流路704内に直列に配置される2つの混合デバイス702が使用されている。図44に示すように、コネクター700は、それぞれ、雌および雄ルアーロック機構に関連する第1および第2の端部706および708を含む。このコネクターは、図44〜図46に示すように、例えば、機械接続または超音波溶接によって結合可能な1つ以上の導管区間710、712、および714から構成されてもよい。例えば、導管区間710の内部表面は、導管区間706に取付可能なロックシステムを含み、導管区間710のそれぞれの端部714は、導管区間706とカニューレ、針、シリンジ、または他のデバイスとのロック式接続を行なうことができる。一般的に言えば、医療用途に使用する場合、上記コネクターがルアーロック機構を有することが好ましいが、他の用途には他の接続が可能である。
【0076】
本発明のさらなる局面に従った方法によって、例えば、シーラント成分等の少なくとも2つの個別成分流が混合される。この方法は、上記実施形態のいずれかのように、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子またはマトリックスを含む少なくとも1つの混合機36、236、または1つより多くの混合機136A、136B、336A、336B等の混合機を設けることによって行ってもよい。この方法では、さらに、シーラント成分等の少なくとも2つの個別成分流が混合機を通過する。
【0077】
上記のように、この方法は、少なくとも1つの混合機または複数の混合機(例えば、相互に隣接するかまたは間隔を空けるかのいずれかの状態で直列に配置した2つ以上の混合機)を用いて行ってもよい。この方法を複数回繰り返して行い、2つの成分流の流動を停止した後、それら成分流の流動を再開して、それらの成分流が混合機の目詰まりを抑えながら混合機を通過するようにしてもよい。
【0078】
図1〜図21、図33〜図35のディスペンサー2、102、202、302、402の動作中、2つの個別流が、それぞれの第1および第2の流路28、30、128、130、228、230(図34には1つの流路330のみを示す)から第3の流路32、132、232、332、432まで流動する。それらの個別流が、単一の混合機36、236、436、または直列する混合機136A、136B、336A、336B内を通る蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を通過すると、それらの個別流が混合されて本質的に均質な複合流体流となる。
【0079】
一例として、図47は、コネクター800(例えば、上記した少なくとも1つの混合機を有するもののいずれか)を使用して少なくとも2つの個別成分を混合する方法を示しており、このコネクターは、一端が、2つの個別容器806および808を有するデバイス802に取り付けられ、他端がディスペンサー804に取り付け可能である。上述したように、上記成分は、個別容器806および808から対応する個別流路810および812を介して、コネクター800まで延在する複合流路814まで流動することが可能である。上記成分の混合物は、所望であれば、少なくとも内部に混合機が配置されたコネクター800を介してコネクター800の反対側に取り付けられたディスペンサーの流路816まで流動して排出される。
【0080】
図48を見ると、混合/排出システムの他の実施形態が示されている。図48に見られるように、混合デバイス900が、各々が流体(液体または気体)を保持する2つの容器(例えば、ディスペンサー)の間に配置されている。複合デバイスにおける混合デバイス900を保持する部分は、ディスペンサーの一方と一体化することができるか、またはコネクターとすることができ、内部に少なくとも1つの混合機901を配置している。そのようなコネクターは、各々がそれぞれ単一の容器910および912を有するディスペンサー906および908に接続された第1および第2の端部902および904を有するように示されている。限定ではなく一例として、本発明は、流体成分の少なくとも2つの個別流を混合する方法を提供するが、ここで、各成分は、ディスペンサー906および908の一方に別々に配置される。各容器は、それぞれ、各々が図48に示すように、2つの雌ルアー取付を行う混合デバイス900の一方の側面と流体連通する遠位流路914および916を含むが、他の取付を所望する場合、混合デバイス900は、その端部902および904および/またはそれらの組み合わせに2つの雄ルアーを備えてもよい。成分を混合することが所望される場合、例えば、左ディスペンサーに位置するフィブリノゲン等の一方の成分は、混合機の一方の(または第1の)側面から混合機の他の(または第2の)側面に、これによって、例えば、トロンビンが位置する混合機の右側に位置する他方の容器908に流れ込むことが可能である。上記容器のいずれか一方または両方が、混合前に部分的に満たされ、他方の成分の容積を付加的に収容することが企図される。上記2つの成分は、容器908から混合機を介して混合機の左側に流動可能であることが好ましい。上記成分が混合デバイス900を通過するごとに、それらの成分がさらに混合される。所望であれば、または十分な混合を得るために必要に応じて、上記成分が混合デバイス900を少なくとも1回通過するか、好ましくは、数回通過することが企図される。
【0081】
例えば、フィブリノゲンおよびトロンビンを使用する場合、成分を十分に混合するために、2つの容器間を少なくとも2、3回行き来しながら混合デバイスを通過させることが所望される場合がある。次いで、混合物を容器906、908の一方に収納し、他方から取り外して、所望の位置で排出してもよい。あるいは、図50A〜図50Cに示し下記で説明するようなデバイスは、混合流体を排出可能な個別のノズルまたは吐出口移動部を含んでもよい。さらに、図48の混合デバイスを使用して、フィブリノゲンおよびトロンビンと空気を混合することが所望される場合がある。例えば、容器910、912の一方には、約100mg/mlの濃度のフィブリノゲンを1ml入れ、他方には、例えば、4IUトロンビン濃度のトロンビンを1mlと、空気を2.5ml入れ、混合デバイスをそれら2つの容器に間に配置した状態で、それらの成分を当該2つの容器間を少なくとも1回、好ましくは、数回、より好ましくは、少なくとも4回行き来させて、相対的に容積が高く(例えば、上記例では125気積%)、空気なしで混合したフィブリンより密度が低い空気を有するフィブリン混合物である「フィブリンムース」を生成させてもよい。フィブリンムースは、例えば、足部潰瘍等の急性または慢性損傷の治療のために、患者の体の下側への塗布を可能にする。他の容積のフィブリノゲンおよびトロンビンを異なる相対量で、異なる容積の空気と組み合わせて、複合フィブリン混合物に含有される空気のパーセンテージを増減させてもよい。このようにして得たフィブリンムースを、本明細書において参考として援用する米国特許第7,135,027号に記載されるように、凍結乾燥してスポンジを形成するか、またはそれらを挽いて止血パウダー(hemaostatic powder)(乾燥フィブリン接着剤)を得てもよい。例えば、食品産業については卵白とオイルおよび/または水、自動車産業についてはオイルおよび水またはディーゼルおよび水等、他の適用分野およびさらに後述する他の用途については、異なる液体成分の混合を含む他の変形例も可能である。あるいは、図48の混合デバイスを使用して2つ以上の気体を混合することも可能である。
【0082】
先に説明したように、本明細書に記載のデバイスおよびシステムは、液体成分の混合に限定されない。上記成分の一方または両方は、実際、空気等の気体、または他の気体であってもよい。図48に示す実施形態は、特に、液体と気体の混合によく適している。フィブリン形成を伴う例では、フィブリン形成成分は、選択される量の空気を含んでもよく、それらのいくつかについてはさらに後述するが、他の液体−気体混合物も利用可能である。上記成分の1つ以上を、本明細書に記載のデバイスおよびシステムのいずれか1つにおける混合機を通過可能な固体とすることも可能である。この固体を、混合機の最小孔径よりも相対的に小さい大きさまたは直径を有する粒子で構成することで、そのような固体が混合機を通過できるようにすることができる。例えば、1つ以上の固体を、例えば、ナノまたはマイクロサイズの粒子およびそれらの懸濁液を作成する方法で、他の固体、液体、または気体と混合してもよい。
【0083】
本発明の他の局面に従って、上述の実施形態等のいずれかを用いて、3つ以上の成分を混合してもよい。例えば、図49は、内部に配置された少なくとも1つの混合機1008を使用する混合デバイス1006を介して互いに接続された第1および第2のデバイス1002および1004を示す。上記のディスペンサー2、102、202、および302と類似する第1のデバイス1002は、各々が個別の成分(例えば、フィブリノゲンまたはトロンビンの一方)を入れた少なくとも2つの容器を混合に用いてもよい。第2のデバイス1004は、二相性リン酸カルシウム微粒子を入れていてもよい。混合が所望される場合、フィブリノゲンおよびトロンビンを、第1のデバイス1002から混合デバイス1006の混合デバイスを介して流動させ、上記2つの成分を混合してフィブリン混合物を得た後、第2のデバイス1004に流れ込むようにして、粒子周囲の孔状の隙間を埋めるようにしてもよい。第2のデバイス1004は、例えば、患者の骨成長を助長する等の用途のために取り外してもよい。本発明の他の混合法も利用可能である。
【0084】
図50A〜図50Cを見ると、改変混合デバイス1050は、2つの容器1052および1054の間に設けられているため、図48に示す混合デバイスと類似しているが、第3の容器1056をさらに含んでいる。容器1052、1054、および1056は各々、三方弁、止水栓、または選択した時点において少なくとも2つの容器間の連通を選択的に可能にする他の適切な弁構造等の弁1058を介して接続される(混合デバイス1050は弁の左側に示されている)。例示した構成に対して他の変更を行なうことも可能である。例えば、弁のいずれかの側面に1つ以上の混合デバイスを使用すること、および/または弁のいずれか一方の側面に2つ以上の混合デバイスを使用することが可能である。
【0085】
一例として、図50Aは、流体流路1060を介して弁1058を渡って相互に流体連通状態にある第1の容器1052および第2の容器1054を示す。図50Aでは、弁を開放して上記2つの容器間の流体流動を可能にする一方で、弁1058を渡った第3の容器1056への流体流動は閉鎖されている。各容器1052および1054は、それぞれ、AおよびBとして特定する複合混合物に混合するための少なくとも一方の成分を含んでいる。
【0086】
図50Aおよび図50Bに示すように、容器1054からの成分Aは、弁1058を渡って開放された流体流路1060および混合デバイス1050を通過して、混合デバイス1050の反対側の容器1052に流動し、成分A+Bの両方が同じ容器内に存在するようにすることが可能である。図50A〜図50Cでは、成分A+Bは、第1および第2の容器1052および1054間を複合混合物として少なくとも1回(すなわち、容器1054に対して)、場合によっては、数回流動し(すなわち、容器1052および1054の間を行き来し)、混合デバイスを用いてそのような成分を十分に混合する流動方向を所望の回数だけ変更可能にしてもよい。単一の混合デバイスが使用される図50A〜図50Cでは、流動方向を数回切り替えることが所望される場合があるが、流動方向の変更回数は使用可能な混合デバイスの数の増加に応じて低減してもよい。流動方向を所望の回数変更したときに、成分A+Bが、成分A+Bを同じ容器1052内に示す図50Bに示すように、容器1052および1054の一方に存在することが好ましい。
【0087】
図50Cでは、弁1058の位置を回転して、容器1052の一方と第3の容器1056との間に流体流路1062を設ける。次に、複合混合物A+Bの流動が、貯水槽または複合混合物を利用する他の構造物であり得る第3の容器1056内に流れ込むようにすることができる。限定ではなく一例として、第3の容器1056は、エンジンの気筒、またはエンジンと流体連通状態にある貯水槽であってもよく、各成分A、Bは、液体もしくは気体、または水、空気、アルコール、ガソリンオイル、および/もしくはディーゼルオイル等の液体もしくは気体の混合物、またはそれらの組み合わせから1つを選択したものである。このような適用は、バイオディーゼル燃料、高含酸素燃料(super oxygenated fuel)、燃料添加剤、または他の所望の自動車用混合物を直列混合する場合に有効である。図50A〜図50Cに示すデバイスを用いてバイオディーゼル燃料を形成する一例としては、0.13mlの水および0.77mlガソリンオイルまたはディーゼルを容器AおよびBの間を「勢いよく」行き来させた後、直ちに利用するために第3の容器に回収するかまたは後で使用するために第3の容器に収納するようにすることができる。図50A〜図50Cのデバイスで使用する高含酸素燃料の一例としては、2.0mlの空気および1.0mlのディーゼルを同様に「勢いよく」2つの容器間を所望の回数だけ行き来させた後、使用のために第3の容器に移するようにすることができる。他の分野への適用も可能である。自動車内に配置され、運転手が家またはガソリンスタンドで満水にすることが可能な貯水槽から水を得たり、空調システム、雨、および/または他の方法によって水を回収することがさらに企図される。
【0088】
使用者が燃料成分を使用するために自動車内に入れる直前にそれらの成分を混合するサービスまたは給油ステーションで上述の混合システムを利用できるようにすることが好ましい。あるいは、上記混合システムを、燃料成分を自動車で使用する直前に(例えば、燃料混合物を気筒または他の内燃デバイスに導入する直前に)混合する自動車給油システムの一部とすることがより好ましい。
【0089】
本明細書に記載の直列混合デバイスいずれかを、すでに上述した医療および自動車用途以外の他の用途に使用してもよい。そのような他の用途の例としては、航空宇宙(例えば、宇宙推進)、化学(例えば、化粧品、塗料、洗剤の混合物)、食品(例えば、飲料混合物、食品添加剤)、PVCまたは重合体エマルジョン化粧品、歯科用、健康または医薬接着剤および水処理(水添加剤)、オイル掘削流体(混合加圧水)が挙げられる。さらに、そのような直列混合デバイスを、典型的には、患者に対して相対的に遅い流量で投薬することを必要とする眼科用途に使用してもよく、混合および投薬を相対的に少量(例えば、約50マイクロリットル)で行なうようにしてもよい。下記で記載説明するように、本明細書に記載の混合機を1つまたは2つ使用するディスペンサーは、使用流量とは別に、相対的に良好な混合品質を達成した。この点で、本明細書中に記載の混合機を他の医療および非医療用途に使用し、使用可能な流量が相対的に高くても低くても十分に良好な混合品質を得ることが企図される。
【0090】
例えば、図48または図50A〜図50Cのような混合デバイスを用いて卵白と空気を混合し、卵白ムースを生成してもよい。そのような例では、容器AおよびBの一方に2.5mlの空気を入れ、他方に0.5mlの卵白を入れてもよい。あるいは、卵黄とオリーブオイル等の他の食品混合物に対して混合デバイスを用いてマヨネーズ混合物を作ったり、植物油および酢でビネグレットソースまたは他の食品混合物を作ってもよい。
【0091】
図51〜図52は、例えば、患者に対する点滴送達中に2つ以上の液体を混合するための直列導管装置または方法において使用可能なさらに他のコネクター1100を示す。図51では、2つの容器またはバッグ1102および1104は、患者に対する送達または点滴のために、各々個別に異なる流体を入れている。限定ではなく一例として、それらの流体は、デキストロースおよび重炭酸塩を含んでもよいが、他の流体も利用可能である。点滴は、重力、ポンプ、および/または他の従来法によって助力されてもよい。各容器は、コネクター1100に向かって下流へと延在するそれぞれの流路1106および1108と流体連通する。上記実施形態について先に説明したように、コネクター1100は、少なくとも1つ以上の混合デバイスを備えてもよく、図52では、一例として、2つの混合デバイス1110を示している。個別流路1106および1108は、コネクター1100の上流における選択位置1112で合流可能であることが好ましい。流体流は、混合デバイス1110を介してコネクター1100の下流に位置する流路1114に流れて患者に混合物を送達する。
【0092】
本明細書中に記載のデバイスおよびシステムのいずれかを、医療用途の無菌使い捨てキット等の使い捨てキットの一部として使用してもよい。このキットは、例えば、図1〜図8および図18〜図52に示す排出/回収デバイスまたは容器であって、図1〜図4または図18〜52に示すように混合機構成とともにパッケージ化されたデバイスまたは容器の1つ以上を備えていてもよい。上記混合機は、排出/回収デバイスと予め接続するか、またはそのようなデバイスに組み立て可能な個別にパッケージ化した物品もしくは独立した物品であってもよい。
【0093】
上述のデバイスおよびシステムを用いてフィブリン組織シーラントを調製する場合、高品質な複合フィブリン流体流の混合は、本質的に均質な品質(低トロンビン濃度で得たフィブリンの場合には白色であり、トロンビン濃度が相対的に高いフィブリンの場合には、外観がより透明である)およびフィブリノゲン成分がトロンビン成分と本質的に均質に重合化された場合に発生する最小量の透明な自由液体を特徴とする。従って、図53に示すように、フィブリンの混合品質は、フィブリンマトリックスの光吸収度をグラフで表す比濁測定によって推定することができる。図52では、横座標は、フィブリン等の排出成分の光学濃度(OD)に基づく濁度の変化を表しており、これは、分光光度計を用いて405ナノメートル(nm)で観測され、縦座標は、時間を分の単位で表す。フィブリン複合流体流の比濁測定については、本明細書において参考として援用するAndras Gruberらによる「Alteration of Fibrin Network by Activated Protein C」、Blood,Vol.83,No.9(1994年5月1日);2541〜2548ページにおいてさらに説明されている。
【0094】
図53に示すように、このような比濁測定を、例えば、4国際単位(IU)等の本質的に同等の濃度のフィブリノゲンおよびトロンビンで作ったフィブリンマトリックスに基づいて行ったが、各成分について他の濃度または異なる濃度の組み合わせを使用してもよい。混合は、基本的に、例えば、約15〜25℃の室温で行った。図53では、曲線番号1は、いずれの混合機(すなわち、混合デバイス)も有さない対照ディスペンサーを表す。曲線番号2〜4は、図1〜図4に示すような混合機36を含む3つのディスペンサーを表しており、当該混合機は、それぞれ、サンプル2(PE、Porvairにより販売される製品)(曲線番号2);Porvairにより販売されるような他のPP製品(曲線番号3);およびサンプル7(Porexにより販売される商品)(曲線番号4)の3つの異なる材料から構成される。図53のグラフは、基本的に、混合機の使用(曲線番号2〜4)と本質的に均質な混合に必要な時間の低減の相関関係を示す。図53では、曲線番号2、3、および4は、混合機を有するディスペンサーについては、一定した光学濃度を表すプラトーに達するまでに必要な時間、すなわち、本質的に均質な混合を達成するためにに必要な時間が、そのような混合機を有さない対照ディスペンサーが必要とする時間(>10分)と比較して少ない(2〜3分)ことを示す。
【0095】
図54では、図19〜図21に示し、先に説明したように、約4mmの間隔を空け、上流混合機136Aと遠位端124の間の長さLが約6mmである2つの混合機を表す比濁曲線により、フィブリンの混合品質を特徴付けて判定する。図53の比濁曲線は、上記で示した混合機の実施形態と同様に、複合フィブリン流体流の光吸収度が約2〜3分で本質的に均質な混合を示すプラトーに達することを示す。
【0096】
本発明はまた、温度に関わらず一定した粘度を有することが好ましい複合流体流を提供可能である。一般に、温度上昇により、フィブリノゲンおよびトロンビン等の成分の混合が改善される。フィブリノゲンの粘度は、温度に応じて約10〜20センチポアズ(cP)または約0.1〜0.2g/(cm*秒)となるトロンビンの粘度と大きく異なり(概ね一桁程度)、温度に応じて約150〜250センチポアズ(cP)または約1.5〜2.5g/(cm*秒)の間で変化することに留意されたい。本発明は、例えば、上述の実施形態を使用することにより、成分を一切加熱する必要なくほぼ室温で本質的に均質な混合を行なうことができる。
【0097】
フィブリン等の複合流体流の混合品質はまた、成分の混合前に、例えば、lohexol等の造影剤または放射線不透剤をトロンビン濃度に添加することにより特徴付けて判定される。例えば、50、100、200、300、400、500、および600mg/ml濃度のlohexolを個別に、75IU等の本質的に同様のトロンビン濃度に添加したが、lohexol等の造影剤または放射線不透剤の濃度は、約50〜1200mg/mL、好ましくは、約300〜400mg/mLの範囲としてもよい。各トロンビン/lohexolの組み合わせを、距離Vが約4mmで長さLが約6mmの2つの混合機を用いた構成等の混合機を用いてフィブリノゲン成分と混合してもよい。上記成分がそのような混合機を通過した後、lohexolとフィブリンサンプルを並べて配置することにより、白色で濁度が大きく示されている(「+」と示すか、または600mg/mlサンプルと並べて配置される)混合機を用いてlohexolと組み合わせずに得たフィブリンサンプルと比較して、より透過度の高い均質に混合されたフィブリン流動が得られる。上述のサンプルはまた、lohexolおよび混合機を用いない「対照」フィブリンサンプルとも比較した。ここに示す対照サンプルでは、不十分な混合に典型的な一定しない濁度、粘度、および色を有するフィブリン流が得られる。所望の用途および使用する複合流体流に応じて、他の造影剤または放射線不透剤を用いることが可能である。
【0098】
抗生物質、医薬品、またはホルモン等の他の添加剤を1つ以上の流体成分流に添加することも可能である。例えば、Kuros Biosurgery AG(Zurich,Switzerland)で製造されるような血小板由来増殖因子(PDGF)または副甲状腺ホルモン(PTH)等の添加剤を、フィブリノゲン等のフィブリン形成成分の1つに添加してもよい。骨形態形成タンパク質(BMP)を使用してもよい。限定ではなく一例として、他の薬剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、キトサン、トロンビンおよびトロンビン様分子の感光性阻害剤、凝集コラーゲン繊維(細胞外基質)を模倣するように設計された自己集合性両親媒性ペプチド、第13因子、架橋剤、顔料、繊維、重合体、共重合体、抗体、抗菌剤、構造の生体適合性を改善する薬剤、タンパク質、抗凝固剤、抗炎症性化合物、組織不適合性を低減する化合物、生体細胞、細胞増殖阻害剤、内皮細胞を刺激する薬剤、抗生物質、防腐剤、鎮痛薬、抗新生物薬、ポリペプチド、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、サイトカイン、細胞毒素、ミネラル、インターフェロン、ホルモン、多糖、遺伝素材、架橋フィブリン上での内皮細胞の増殖および/または癒着を促進または刺激するタンパク質、増殖因子、ヘパリン結合のための増殖因子、抗コレステロール物質、痛み止め、コラーゲン、骨芽細胞、医薬品等、およびそれらの混合物が挙げられる。そのような薬剤の更なる例としては、テトラサイクリン、シプロフロキサシン等の抗生物質を含む抗菌性組成物;抗筋原性組成物(antimycogenic compounds);ガングシクロビル(gangcyclovir)、ジドブジン、アマンチジン、ビダラビン、リバラビン(ribaravin)、トリフルリジン、アシクロビル、ジデオキシウリジン等、およびウイルス成分または遺伝子産物に対する抗体等の抗ウイルス剤;ダイフルカン、ケタコニゾール(ketaconizole)、ナイスタチン等の抗真菌剤;ならびにペンタミジン等の駆虫剤が挙げられるがこれらに限定されない。他の医薬品としては、さらに、アルファ−またはベータ−またはガンマ−インターフェロン、アルファ−またはベータ−腫瘍壊死因子、およびインターロイキン等の抗炎症薬が挙げられる。
【0099】
そのような1つまたは複数の薬剤を、フィブリノゲンおよび/またはトロンビン等の1つ以上の流体成分とそれぞれの成分容器において予め混合することが可能である。あるいは、そのような1つまたは複数の薬剤を液体として個別容器に収納するか、またはディスペンサーおよび/または混合機の使用中に1つ以上の成分と凍結乾燥混合することが可能である。1つ以上の薬剤を使用する上述の実施形態のいずれかのディスペンサーまたは混合機については、複合流体流によって、抗生物質、医薬品、ホルモン、または他の薬剤が本質的にシーラント全体に渡って十分に分散可能な十分に徹底的に混合したシーラント(例えば、フィブリンシーラント)を提供することが好ましい。そのような抗生物質、医薬品、ホルモン、または他の薬剤は、塗布作用表面に対して経時的な制御放出を行なって、例えば、術後または外科治療に役立てることができる。所望の用途および複合流体流に応じて各種の医薬品を使用することが企図される。
【0100】
本発明について、混合機の上流に少なくとも2つの個別の流体源を使用すると説明したが、そのような流体源の一方を省略し、1つ以上の混合デバイスの形成にそのような供給源を用いてもよい。例えば、フィブリン等の組織シーラントを形成するために、トロンビンを液体として浸すか、または固体として組み込んで1つ以上の混合機に吸着させ、凍結乾燥させてトロンビンの供給源を提供してもよい。そのような混合デバイスは、45mg/mLのフィブリノゲンを入れた単一のシリンジ等のフィブリノゲンの単一の供給源と接続するかまたは流動連通状態して、フィブリノゲンが混合機を通過させられる際に発生する混合により組織シーラントを生成することが可能である。他の湿潤または乾燥成分を1つ以上の混合機とともに使用したり、または1つより1つの混合機を使用する場合には、異なる成分を異なる混合機上で用いてもよい。
【0101】
混合品質を判定および特徴付ける他の方法としては、複合流体流の機械式試験が挙げられる。そのような試験としては、張力または圧縮力等の力に対する複合流体流の反応性試験が挙げられる。一般的に言えば、十分に徹底的に混合して重合体化した均質なフィブリン流は、混合、重合体化、および均質性が不十分なフィブリン流よりも耐張力および耐圧縮力が大きくすることができる。例えば、フィブリン流については、張力をフィブリン流の長さ方向に沿って与えて、流れが分離しないフィブリン伸張の範囲を判定してもよい。一例としては、距離Vが約0〜5mm、好ましくは、約3〜4mm、長さLが約2〜6mm、好ましくは、約5〜6mmの2つの混合機については、結果的に得られるフィブリン流によって、約100%〜130%のフィブリン伸張が得られるが、他の伸張も可能である。他のタイプの試験を使用して混合品質を判定してもよい。
【0102】
図55〜図60は、例えば、本発明の混合デバイスによるフィブリン混合物の混合品質を特徴付け、判定する他の方法、および好適と思われる方法を示す。架橋度は、混合前に、フィブリン混合物に含有される構成成分鎖の選択される量を、例えば、フィブリノゲンに含まれる同じ構成成分の選択される量に対して測定することが可能である。フィブリノゲンは、選択される量のアルファ(α)モノマー鎖、アルブミン、ベータ(β)鎖、およびガンマ(γ)鎖を含有する。トロンビンと混合してフィブリンを形成した後、当該フィブリンは、発生した架橋により、上記のような成分鎖を異なる量で含有する。典型的には、フィブリンは、重合化によってアルファ−アルファ対または重合体、およびガンマ−ガンマ対または重合体(またはガンマ二量体)鎖となったアルファモノマーおよびガンマモノマー鎖の含有量が低減している。限定ではなく一例として、架橋度または架橋率は、フィブリン混合物に存在するアルファモノマー鎖について、混合前にフィブリノゲンに存在するそのようなアルファモノマーの量と比較して低減した量を測定することができる。
【0103】
図55では、フィブリンの3つの流量について架橋率が示されており、グループ1は2ml/分、グループ2は4ml/分、グループ3は6ml/分である。各流量では、少なくとも1つのフィブリンサンプルを、以下のデバイス各々について個別に分析した:混合デバイスを有さない対照デバイス;ポリエチレン(PE)から構成され、厚さが1.5mm、遠位端から2mmの位置に配置された単一の混合デバイス(例えば、単一の混合機を有する針またはカニューレ上に遠位端を被覆させた排出ハウジング);およびポリエチレン(PE)から構成され、厚さが1.5mm、混合デバイス間の距離が約4mm、排出遠位端の端部と第1の混合デバイスの間の距離が約4mmである2台の混合デバイス。図55に示すように、非混合デバイスの架橋率は、約0〜2%の範囲である。単一の混合デバイスの架橋率は、約10〜20%、好ましくは、10〜16%の範囲である。2台の混合デバイスの架橋率は、約20〜30%、好ましくは、23〜36%の範囲である。図55に示すように、各流量において1つまたは2つの混合デバイスから得たフィブリンの架橋率は、使用流量に関わらず一般に一定している。
【0104】
アルファ(α)鎖の架橋度は、アルファ(α)鎖バンドの経時的な低減を、フィブリン−β鎖およびアルブミンを含むバンドと比較して測定することにより判定される。UREA/SDS電気泳動技術に基づいて、5%アクリルアミッド(acryl amid)分離ゲルを装填したDESAGA電気泳動システム(Sarstedt−Gruppe)で電気泳動法を行い、異なるフィブリノゲン鎖を特定した。フィブリノゲンおよびトロンビン成分を1:1の比で混合した後、その混合物を37Cで培養した。記載するサンプルの各々に使用したフィブリノゲン成分は、約3IUの第13因子(FXIII)を含有していたが、他の濃度のFXIIIを使用して異なる架橋率を得ることも考えられる。一般に、架橋は、FXIIIの量の増加とともに増大する。0〜120分の培養時間の後、変性剤サンプル緩衝剤を添加して反応を停止し、70Cで5分間加熱した。凝固物を一晩留置してサンプル緩衝剤中において室温で溶解させた。それらのサンプルを5%ポリアクリルアミド/尿素ゲル上に乗せた。図56に示すように、このゲルをCoomassie Brilliant Blue R250で着色し、Furlanの方法に従って脱色した。次いで、図55〜図60のサンプルにおけるアルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖、ガンマ(γ)鎖、フィブロネクチンおよびアルブミンを濃度測定により判定し、図57、図58、図59、および図60によって表される図面上に描画した。
【0105】
図56では、上記の電気泳動手順に従って準備した12レーンの水平バンドが示されており、そのような手順の品質管理のために第12レーンにはマーカーまたは基準線が含まれている。図56では、「ゼロサンプル1」および「ゼロサンプル2」が、0培養時間、つまり、トロンビンとの架橋が発生する前のフィブリノゲン中の構成成分の存在を分子量で示す。サンプル10〜18は、図55のグループ2に表される異なるデバイスによる120分の培養時間が経過した後にフィブリン混合物中に存在する構成成分を示す。より詳細には、サンプル10〜12は、混合デバイスを使用せずに得た結果に対応し(図55の4ml/分における「対照」に対応)、サンプル13〜15は、1つの混合デバイスを使用して得た結果を示し(図55の4ml/分における「ディスク1」に対応)、サンプル16〜18は、2つの混合デバイスを使用して得た結果を示す(図55の4ml/分の「ディスク2」に対応)。図56に示すように、「ゼロサンプル」およびサンプル10〜18の各々は、各サンプルについて示されるそれぞれのバンドによって示されるように、選択される量のアルファ(α)モノマー鎖、複合アルブミン+ベータ(β)鎖、およびガンマ(γ)鎖を含有する。図56ではまた、サンプル10〜18の各々について、サンプル10〜18の上側に示すようにアルファ(α)重合体鎖が存在し、ガンマ(γ)重合体(またはガンマ二量体)鎖がαモノマー鎖の上に存在する。このような鎖は、典型的には、フィブリノゲンおよびトロンビン成分の混合によって架橋が発生した後に存在するため、図56に示す「ゼロサンプル」では、一般には存在しないか、またはごく僅かである。典型的には、より暗いバンドは、より多くの量の構成鎖を示す。図56では、少なくとも1より多くの混合デバイスを使用するサンプル13〜18は、図55に示すより大きな架橋値に対応するより暗いアルファ(α)重合体およびガンマ(γ)重合体(またはガンマ二量体)鎖を有する。
【0106】
図57を見ると、グラフに沿って1、2、および3と表示された3つのピークを含む「ゼロサンプル」に含有される構成鎖の相対量が示されている。これらのピークは、それぞれ、ピーク1のガンマ(γ)モノマー鎖の量、ピーク2のアルブミン+ベータ(β)鎖の量、およびピーク3のアルファ(α)鎖の量に対応する。存在する場合には、ガンマ重合体またはガンマ二量体鎖の量がピーク4の表示の上に表され、α重合体鎖の量がピーク5の表示の上に示される(トロンビンとの混合がまだ発生していないため、測定可能なピークを見ることが可能であったとしても僅かである)。図57に表すデータに基づいて、下記のように各ピークのそれぞれの下の面積を積分することにより、アルファ(α)モノマー鎖とベータ(β)モノマー鎖およびアルブミンの相対量を計算することができる:
【0107】
【表4】
図58〜図60は、サンプル12(図56の対照サンプルの1つ)、サンプル13(単一の混合デバイスを用いたサンプルの1つ)、およびサンプル17(2つの混合デバイスを用いたサンプルの1つ)に含有される選択構成成分の相対量、ならびにそれら各々のピーク1、2、3、および4(それぞれ、ピーク1のガンマモノマー鎖の量、ピーク2のアルブミン+ベータ(β)鎖の量、およびピーク3のアルファ(α)モノマー鎖の量、ならびにピーク4のガンマ重合体またはガンマ二量体鎖の量に対応し、フィブリノゲンおよびトロンビンの混合による架橋反応を表す)を示している。図58〜図60のそれぞれのピーク下の面積の積分に基づいて、上記のような鎖の相対量を次のように計算する。
【0108】
【表5】
架橋度をQ値として表してもよい:
Q=Xn/X1、
ここで、X1は、培養時間ゼロ(0)(時間)、すなわち、トロンビンとの混合前のフィブリノゲンについて、表4のアルファα鎖の合計(ピーク3の合計)とアルブミン+β鎖の合計(ピーク2の合計)の比または商を表し;
Xnは、培養時間n、すなわち、トロンビンとの混合後のフィブリン混合物について、表5のアルファα鎖の合計(ピーク3の合計)とアルブミン+β鎖の合計(ピーク2の合計)の比または商を表す。
【0109】
上記サンプルに基づいて、推定架橋値またはQ値を以下のように表してもよい:
【0110】
【表6】
上記例に基づいて、X1は、「ゼロサンプル」、すなわち、混合前のフィブリノゲンから、X1=アルファ(α)鎖/アルブミン+β鎖と表すことができる。例えば、X1は、上記のように、約26.619/84.771、すなわち、約0.314の値を有し得る。Xnは、上記に示すように、サンプル12、13、または17のフィブリン混合物のいずれか1つについて、Xn=アルファ(α)鎖/アルブミン+β鎖と表すことができ、例えば、サンプル17では、Xnは、約19.444/77.378、すなわち、約0.251の値を有し得る。上記例で使用する培養時間は約120分であり、37℃の温度で観察したが、他の培養時間および温度を使用してもよい。架橋率は、さらに、上記表でも示されるパーセンテージで表すことができ、以下のように計算することができる:
架橋率[%]:100×(1−Q)
上記表6に示すように、アルファ鎖の架橋率によって判定される混合品質は、少なくとも1つの混合機を用いるデバイスにおいて改善され、2つの混合機を用いる場合にはさらに改善された。表6に示すように、報告された架橋%は概ね11%であり、典型的には、概ね10〜16%の範囲内であった。2つの混合機を用いるデバイスにおける架橋%は概ね21%であり、約20%〜30%の範囲内であった。
【0111】
図61に示されたデータは、図19〜図21に示すような2つの混合機を用いたデバイスで形成されたフィブリンの混合品質に対する温度の影響を示す。例えば、上記混合機間の距離を4mmとし、断片yから第1の混合機までの距離を4mmとし、厚さを1.5mmとしてもよい。このデータは、上述のように、混合機を有さない対照デバイス各々について、4℃、18℃、22℃、および37℃の各温度におけるフィブリン混合物の架橋率を、混合デバイスを用いる場合と比較して表している。
【0112】
図61に表すように、混合デバイスによって得たフィブリンの架橋%は約24〜33%の範囲であり、最大弁(highest valve)は4℃(フィブリノゲンが約500〜600cPの推定粘度を有する温度)で得られた。18℃および22℃では、フィブリノゲンの粘度は、約160cP〜120cPの範囲であり、37℃では、フィブリノゲンの粘度は、約70〜80cPの範囲であり、トロンビンは約5cPである。図示するように、上述の混合デバイスを用いた場合の架橋%は、上記各温度では、より低い4〜22℃の温度で架橋不良となる対照デバイスと比較して、相対的に一定している。
【0113】
表6に表すように、混合品質は、混合デバイスを用いた場合、架橋の値が21%となる37℃まで温度上昇する必要がある対照デバイスとは異なり、温度に依存しない。一例として、表6の混合デバイスを用いた場合のフィブリン混合物は、約18℃〜22℃の典型的な手術室温度を超える加熱または加温を必要としないが、これは、そのような温度範囲では27%〜33の架橋%が得られるためである。さらに、上述した架橋%は、一般に、医療分野に適用されるようなガンマ線照射または滅菌にによる影響を受けることはない。
【0114】
他の方法を用いて架橋度を測定してもよく、例えば、他の構成鎖の増減を測定してもよい。限定ではなく一例として、上記に加えてまたはその代わりに、ガンマ(γ)重合体(またはガンマ(γ)二量体)鎖およびアルファ(α)重合体鎖の一方または両方の増加を測定することにより架橋度を測定することもできるが、これは、いずれの成分も、一般に、架橋度の増加とともに増加し、フィブリノゲンおよびトロンビンの混合を示すことができるためである。架橋度を測定する他の方法は、架橋度の増加とともに減少するガンマ(γ)モノマー鎖の減少を測定するものであってもよい。
【0115】
図62〜図63は、例えば、フィブリン混合物について、本発明の混合デバイスによる混合品質を推定するさらに他の方法を示す。例えば、混合度は、フィブリノゲンの光学特性およびトロンビンの光学特性を、フィブリン混合物中に存在するそのような光学特性と比較して観測することにより判定してもよい。図62〜図63に示すように、そのような光学特性の1つとしては、流体流路内の複合フィブリノゲンおよびトロンビン流体流から、それらの成分の個別流を合流させた後に発せされる蛍光度が挙げられる。
【0116】
図62は、混合デバイスを有さない装置について、トロンビンおよびフィブリノゲンの複合流体流ならびに約0〜250の範囲の相対階調レベルに関して、(導管区間高さ1.2〜1.5mmの間の2本の黒線間に表される)導管断面における蛍光分布を示す。対照的に、図63は、混合デバイス(例えば、先に述べた混合デバイスのいずれかを用いる)の下流で観察される同様の導管区間における蛍光分布を示す。図62では、1、3、および20秒の流量について蛍光分布を評価している。約220〜250の相対的に高い蛍光分布は、一般に、Y軸に沿った導管区間の一方の側面において約0〜1.2の間に集中するが、これは、一般に蛍光度が高いトロンビンが存在することを意味する。相対的に低い蛍光分布は、当該導管区間の反対側において約0〜−1.5の間に示されるが、これは、一般に蛍光度が低いフィブリノゲンが存在することを意味する。図62に表すように、導管区間が一方の側面に沿って蛍光分布が高くなり、同じ導管区間の反対側で蛍光分布が低くなることは、一般に、トロンビンとフィブリノゲン流体流の混合が相対的にほとんど発生しないことを示している。
【0117】
対照的に、図63は、混合デバイスの下流におけるフィブリノゲンおよびトロンビンの複合流の蛍光分布を示しており、分布曲線は、それぞれ、1、3、および20秒について示されている。図63から分かるように、各曲線は、一般に、導管区間高さの約1.2〜−1.5mmの範囲において導管区間全体に渡って十分に分布している。例えば、上記成分の他の光学または物理的特徴等の混合品質を他の方法を用いて測定することも可能である。
【0118】
上記説明から分かるように、本発明は、添付図面の特定の構造に限定されない異なる局面をいくつか有している。これらの概念または構造に変更を加え、他の構造に組み込むことにより、付属する請求の範囲に規定するような本発明から逸脱することなく、医療または他の分野に組織シーラントを適用するかまたは他の適用を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、本開示において説明する組織シーラントディスペンサーの一実施形態の部分断面図である。
【図2】図2は、図1のディスペンサーの遠位端部分の拡大断面図であり、ディスペンサーの各部を省略して示している。
【図3】図3は、図2の遠位端部分の拡大遠位端図である。
【図4】図4は、図2に示す遠位端部分の斜視図である。
【図5】図5は、混合部を省略した図1と類似する代替的なディスペンサーの上面図であり、ディスペンサーの遠位端部分で画定される流体流路を示すために各部を断面で示している。
【図6】図6は、混合部を省略した図1のディスペンサーの上面図であり、ディスペンサーの遠位端部分で画定される流体流路を示すために各部を断面で示している。
【図7】図7は、混合部を省略した図1と類似する他の代替的なディスペンサーの上面図であり、ディスペンサーの遠位端部分で画定される流体流路を示すために各部を断面で示している。
【図8】図8は、図5のディスペンサーの遠位端図である。
【図9】図9は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約30倍に拡大した横断面を示す走査電子写真である。
【図10】図10は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約100倍に拡大した横断面を示す走査電子写真である。
【図11】図11は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約350倍に拡大した横断面を示す走査電子写真である。
【図12】図12は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約200倍に拡大した横断面を示す走査電子写真である。
【図13】図13は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約30倍に拡大した縦断面を示す走査電子写真である。
【図14】図14は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約100倍に拡大した縦断面を示す走査電子写真である。
【図15】図15は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約250倍に拡大した縦断面を示す走査電子写真である。
【図16】図16は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約350倍に拡大した縦断面を示す走査電子写真である。
【図17】図17は、水銀孔隙率試験を行って得た焼結ポリプロピレンからなる選択材料の孔隙率測定値を示す。
【図18】図18は、改変遠位端部分を使用する組織シーラントディスペンサーの部分断面図である。
【図19】図19は、本開示において説明する組織シーラントディスペンサーの他の実施形態の部分断面図である。
【図20】図20は、図19に示すディスペンサーの遠位部分の拡大断面図である。
【図21】図21は、混合部分を省略した図20の線21−21に沿った断面である。
【図22】図22は、図2と類似するが、2つの混合機間に間隔がない拡大側面図である。
【図23】図23は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図24】図24は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図25】図25は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図26】図26は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図27】図27は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図28】図28は、図20と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を用いた構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図29】図29は、図20と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を用いた構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図30】図30は、図20と類似するが、混合機間に間隔がない1つ、2つ、または3つの混合機を有する混合器構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図31】図31は、図20と類似するが、混合機間に間隔がない1つ、2つ、または3つの混合機を有する混合器構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図32】図32は、図20と類似するが、混合機間に間隔がない1つ、2つ、または3つの混合機を有する混合器構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図33】図33は、本開示において説明するディスペンサーの他の実施形態の部分断面図である。
【図34】図34は、本開示において説明する組織シーラントディスペンサーのさらなる実施形態の部分断面図である。
【図35】図35は、本開示において説明する組織シーラントディスペンサーのまたさらなる実施形態の上面図である。
【図36】図36は、図35の線36−36に沿った断面である。
【図37】図37は、本開示において説明する単一の容器を備えた排出デバイスに接続された単一の混合デバイスを有する組織シーラントディスペンサーの改変実施形態の上面図である。
【図38】図38は、図37の組織シーラントディスペンサーの断面である。
【図39】図39は、図37のディスペンサーの一部の拡大断面であり、他の部分を省略して示している。
【図40】図40は、図39のディスペンサーの一部の側面図であり、一部をさらに省略して示している。
【図41】図41は、排出装置から取り外した状態で示された改変混合デバイスの側面図である。
【図42】図42は、図41の線42−42に沿った断面である。
【図43】図43は、排出装置から取り外した状態で示された他の混合デバイスの側面図である。
【図44】図44は、図43の線44−44に沿った断面である。
【図45】図45は、図44のディスペンサーの一部の側面図であり、一部をさらに省略して示している。
【図46】図46は、図45の右端部の図である。
【図47】図47は、図39〜図46に示す混合デバイスのうちの1つによって接続された2つの排出デバイスを含む構成の上面図である。
【図48】図48は、図39〜図46に示す混合デバイスのうちの1つによって接続された2つの排出デバイスを含む代替構成の上面図である。
【図49】図49は、異なる混合デバイスによって接続された2つの排出デバイスをさらに他の構成の上面図である。
【図50】図50は、各種用途のために複合流体流を受け取るまたは収納する貯水槽をさらに含む図48と類似する改変実施形態の概略図である。
【図51】図51は、混合デバイスを使用する点滴システムを示す本開示において説明するさらなる実施形態の平面図である。
【図52】図52は、図50のシステムの一部の拡大断面であり、他の部分を省略して示している。
【図53】図53は、異なる排出装置を使用する異なるフィブリンマトリックスの比濁測定をグラフで示す。
【図54】図54は、異なる排出装置を使用する異なるフィブリンマトリックスの比濁測定をグラフで示す。
【図55】図55は、それぞれが異なる流量(2ml/分、4ml/分、および6ml/分)を使用し、3つの異なる排出デバイスに基づく結果で構成される3つの異なるグループについて、異なるフィブリン混合物中のアルファ(α)モノマー鎖の架橋%を示す。
【図56】図56は、フィブリノゲンまたはフィブリン混合物からなる10個の異なるサンプルについて、異なる構成成分の有無をそれらの成分の分子量に従って特定する電気泳動パターンを示す。
【図57】図57は、各々が異なる排出装置を用いるフィブリノゲンおよび3つの異なるフィブリン混合物からなるそれぞれのサンプル中に存在する構成成分の量を示すグラフである。
【図58】図58は、各々が異なる排出装置を用いるフィブリノゲンおよび3つの異なるフィブリン混合物からなるそれぞれのサンプル中に存在する構成成分の量を示すグラフである。
【図59】図59は、各々が異なる排出装置を用いるフィブリノゲンおよび3つの異なるフィブリン混合物からなるそれぞれのサンプル中に存在する構成成分の量を示すグラフである。
【図60】図60は、各々が異なる排出装置を用いるフィブリノゲンおよび3つの異なるフィブリン混合物からなるそれぞれのサンプル中に存在する構成成分の量を示すグラフである。
【図61】図61は、異なる温度(4℃、18℃、22℃、37℃)における異なるフィブリン混合物中のアルファ(α)モノマー鎖の架橋%を示す。
【図62】図62〜図63は、それぞれ、混合機を有さない装置(図62)および少なくとも1つの混合機を有する装置(図63)のフィブリン混合物について、導管の断面に沿った蛍光度を示すグラフである。
【図63】図62〜図63は、それぞれ、混合機を有さない装置(図62)および少なくとも1つの混合機を有する装置(図63)のフィブリン混合物について、導管の断面に沿った蛍光度を示すグラフである。
【図64】図64は、ダーシーの法則に基づいて、浸透性のK値、圧力値、および粘度値の相互関係のプロットを、残りの変数を一定に維持した状態で示すグラフである。
【図65】図65は、ダーシーの法則に基づいて、浸透性のK値、圧力値、および粘度値の相互関係のプロットを、残りの変数を一定に維持した状態で示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2006年1月17日に出願された米国仮特許出願第60/759,695号の利益およびそれへの優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
本開示は、一般に、シーラント等の複合流体流または複数の成分から構成される他の複合流体流中の複数の成分を混合する直列混合機に関する。より詳細には、本開示は、そのような直列混合機、そのような直列混合機を利用するシステム、ならびに、例えば、フィブリンを用いて創傷および組織を封止する分野における直列混合法に関する。さらにより詳細には、本発明は、そのような直列混合により調製したフィブリン組成物に関する。
【0003】
粘度が異なる流体流を含む複合流体流の直列混合は、医療分野、食品産業、電子工学、自動車、エネルギー、石油、医薬、化学産業、製造、およびその他の産業を含む幅広い条件において有用である。医療分野での適用例では、2つ以上の複合流体流の直列混合を用いて、ヒトおよび動物組織に塗布する組織シーラント等のシーラントを形成する。そのようなシーラントは、組織の手術または創傷部位の封止または処置、止血、創傷の封止、火傷または植皮片の治療、ならびに各種の他の目的のために用いることができる。食品産業では、2つ以上の成分の直列混合は、食品および飲料組成物のブレンドに有用である。電子工学および/または製造産業では、2つ以上の成分の組み合わせを用いて、特定の用途に所望されるコーティングまたはシーラントを生成することができる。これには、任意で、透明、導電性もしくは絶縁性、熱伝導性、または耐熱性であるか、または極低温もしくは低温用途で有用なコーティングまたはシーラントが含まれる。眼科分野では、2つ以上の成分の直列混合は、眼の治療のために相対的に少量のまたは低流量の治療薬を提供する際に所望される。燃料またはエネルギー産業では、空気、水、または他の成分と燃料を直列混合することが、環境的に安全またはクリーンな燃料の生成に役立つ。直列混合はまた、医療(薬物送達等)の分野で用いるナノサイズまたは微小サイズの粒子、および粒子懸濁液の製造にも役立つ。
【0004】
医療分野、より詳細には、生物組織を封止または処置するために用いられる組織シーラントの分野では、そのようなシーラントは、典型的には、混合時に、皮膚もしくは他の組織の封止または処置等の所望の用途において十分な密着性を有するシーラントを形成する2つ以上の成分から形成される。そのようなシーラント成分は、生体適合性を有することが好ましく、体に吸収することが可能であるか、または吸収できなくても体に無害であるため、後で除去する必要がない。例えば、フィブリンは、温度に応じてそれぞれ約200cPおよび15cPの異なる粘度を有する少なくとも2つの主要成分(フィブリノゲンおよびトロンビン)の組み合わせから構成される周知の組織シーラントである。フィブリノゲンおよびトロンビン成分は、相互に接触すると相互作用を起こし、粘度が高い組織シーラントであるフィブリンを形成する。
【0005】
シーラント成分は、別々の容器に収納してもよく、塗布前に組み合わせてもよい。しかしながら、フィブリノゲンおよびトロンビン等のシーラント成分は粘度が異なるため、完全かつ徹底した混合が困難であることが多い。これらの成分の混合が不十分であれば、組織の作用表面を封止または結合するシーラントの有効性が損なわれる。
【0006】
上記のようなタイプの不十分な混合は、相対的に粘度が異なる2つ以上の成分を混合する必要がある他の医療および/または非医療分野に存在する問題でもある。このような成分は、少なくとも部分的には、それらの粘度および流量が異なることに起因して、そのような混合物が使用前に収納される際の温度および時間によっては、使用前に相互に分離するか、混合流が徹底的に混合されないまま排出される傾向がある。
【0007】
医療分野では、組織シーラントを提供する際に粘度が高いフィブリンを形成するという困難を克服するために、作用表面への塗布の直前に、それらの成分を一括してまたはタンク内で混合する代わりに、2つ以上の成分を直列混合して組織シーラントを形成することが一般的である。そのようなシーラントは、組織または他の基材もしくは作用表面上に直接シーラントを吐出するディスペンサーによって塗布してもよい。組織シーラントディスペンサーの例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、および特許文献10、ならびに特許文献11に示されており、これらの全てを本明細書において参考として援用する。そのようなディスペンサーのさらなる例としては、Baxter AGによって市販されているTissomat(登録商標)およびDuploject(登録商標)という商標名で販売されているものがある。典型的には、これらの先行技術によるデバイスでは、フィブリノゲンおよびトロンビンの2つの個々の成分流を組み合わせ、その複合流が作用表面に排出される。これらフィブリノゲンおよびトロンビンの流れを組み合わせることにより、フィブリンシーラントを形成する反応が開始される。フィブリンの形成には徹底的に混合することが重要であるが、ディスペンサー先端の汚染または目詰まりによって、フィブリンを適切に排出することが妨げられる可能性がある。そのような目詰まりまたは汚染は、排出端からシーラント成分を吐出する前に、シーラント成分がディスペンサー内で長時間接触するかまたは混合されることにより生じる。
【0008】
現在の混合システムでは、粘度が異なる2つ以上の成分の混合品質は、流量に応じて変化する。例えば、特定の流動条件下では、これらの成分は、混合が徹底されていない混合流として排出されることがある。従って、流量に依存することなく十分な混合を行なう混合システムを提供することが所望されている。
【0009】
先行デバイスは、程度の違いはあるが、混合物の形成および排出に関して機能していたが、(例えば、組織シーラント用等の)少なくとも2つの成分を、所望の作用表面への塗布のためまたは他の分野における他の用途のために、確実かつ徹底して混合する混合排出システムが引き続き必要とされている。そのような混合システムを、その目的とする使用または塗布の直前にまたは少なくともできるだけ寸前に混合物を排出するために提供することが可能である。そのような混合排出システムはまた、ディスペンサーの過度の汚染または目詰まりを回避することが好ましい。
【特許文献1】米国特許第4,631,055号明細書
【特許文献2】米国特許第4,846,405号明細書
【特許文献3】米国特許第5,116,315号明細書
【特許文献4】米国特許第5,582,596号明細書
【特許文献5】米国特許第5,665,067号明細書
【特許文献6】米国特許第5,989,215号明細書
【特許文献7】米国特許第6,461,361号明細書
【特許文献8】米国特許第6,585,696号明細書
【特許文献9】米国特許第6,620,125号明細書
【特許文献10】米国特許第6,802,822号明細書
【特許文献11】国際公開第96/39212号パンフレット
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
要旨
1つの局面では、本開示は、混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を混合する組織シーラントデバイスに関する。このデバイスは、少なくとも2つの個別流の一方と連通するように適合された第1の流路、および少なくとも2つの個別流の他方と連通するように適合された第2の流路を含む。第1および第2の流路の各々と連通する混合機が提供される。上記混合機は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を含む。上記混合機は、複合流体流中の成分流を十分に混合するために選択される物理的特徴を有する。特徴としては、小さな孔径、厚さ、および孔隙率のうちの1つ以上が挙げられる。
【0011】
他のより特定的な局面では、上記混合機の特徴は、全体に均質な混合流を可能にする孔隙率および平均孔径を含む。例えば、平均流孔径は、約5〜300ミクロンであってもよい。他の特定の例では、上記混合機は、約15〜100ミクロンの範囲内の平均流孔径を有する。さらなる例では、上記混合機は、約20%〜60%の孔隙率、より詳細には、約20%〜40%の範囲内の孔隙率を有する。他の例では、上記混合機は、約1.5〜3.0ミリメートルの範囲内の厚さを有する。他の例では、上記混合機の平均流孔径、厚さ、および孔隙率の積は、約0.016〜0.055の範囲内である。
【0012】
上記のデバイスは、下記でさらに詳細に説明するダーシーの法則で決定される約5〜17の範囲内のK値をさらに有してもよい。
【0013】
他の局面では、本開示は、選択される量のフィブリノゲンとトロンビンの混合物であるフィブリンの複合流体流を提供するデバイスに関する。このフィブリン混合物は、当該フィブリン混合物中の構成鎖の量とフィブリノゲン中に存在する同じ構成鎖の量の比で測定した架橋度または架橋率を特徴としてもよい。上記構成鎖は、アルファモノマー鎖を含んでもよい。さらに、上記フィブリノゲンおよびフィブリン混合物は、少なくとも1つのアルファモノマー鎖、アルブミン、およびベータモノマー鎖を含み、Xn/X1(ここで、X1およびXnは、それぞれ、上記フィブリノゲンおよび混合物について、アルファ鎖とアルブミンおよびベータ鎖の総量との比を表す)の商であるQ値で測定される架橋率を有する。例えば、構成鎖がアルファモノマー鎖である場合のフィブリノゲン中の構成鎖の量は、上記フィブリン混合物中の構成鎖の量より多くてもよい。他の例では、上記複合流体流が選択される量のフィブリノゲンとトロンビンのフィブリン混合物である場合、上記フィブリンおよび/または成分の混合度は、第1の光学特性を特徴としてもよい。上記複合流体流により、第1および第2の成分が十分に混合されフィブリン混合物を形成することを示す比較的均質な光学特性が得られる。上記第1および第2の光学特性の一方は、蛍光性であってもよい。
【0014】
他の局面では、本開示は、直列に位置する2つの混合機を含むデバイスに関する。さらなる例では、上記混合機は多孔質部材であってもよく、さらなる例では、複数の混合機を相互に離れた関係で配置してもよい。他の例では、上記混合機を相互に隣接して配置してもよい。さらなる例では、上記混合機は、少なくとも2つの個別流が最初に組み合わされる場所の下流にあってもよい。他の例では、上記混合機は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される多孔質材料を含んでもよい。さらなる例では、上記混合機は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される焼結材料であってもよい。上記混合機は、焼結重合体であってもよく、より詳細には、上記混合機は、センターポリプロピレンまたはポリエチレン(centered polypropylene or polyethylene)から構成されてもよい。
【0015】
他の局面では、本開示は、フィブリン組成物に関する。上記フィブリン組成物は、選択される量のフィブリノゲンとトロンビンの混合物であり、上記混合物は選択される量の構成鎖を含んでおり、この構成鎖はフィブリノゲン中にも存在する。上記混合物は、Xn/X1(ここで、Xnは、少なくとも部分的に、上記混合物中の構成鎖の量に基づいており、X1は、少なくとも部分的に、上記フィブリノゲン中に存在する構成鎖の量に基づく)の商で測定されるQ値で測定した架橋率を有する。上記Q値は、少なくとも約0.91未満である。
【0016】
他の局面では、上記フィブリノゲンおよび混合物は、少なくとも、アルファモノマー鎖、アルブミン、およびベータモノマー鎖を含み、X1およびXnは、それぞれ、上記フィブリノゲンおよび混合物について、アルファ鎖とアルブミンおよびベータ鎖の総量の比を表す。さらなる局面では、上記構成鎖は、アルファモノマーである。他の局面では、フィブリノゲンのアルファモノマー鎖の量は、上記フィブリン混合物中のアルファモノマー鎖の量よりも多い。特定の例では、上記Q値は約0.9未満であり、約0.8未満であってもよい。
【0017】
さらなる局面では、本開示は、第1の光学特性を有するフィブリノゲンからなる第1の成分、および第2の光学特性を有するトロンビンからなる第2の成分を含むフィブリン組成物に関する。これら第1および第2の成分は、混合時に第1および第2の成分が十分に混合されたことを示す比較的均質な光学特性を与える複合流体流を形成する。1つの例では、上記第1および第2の光学特性は蛍光性であってもよい。上記フィブリン組成物のより特定的な例では、上記トロンビンは高い蛍光性を有し、上記フィブリノゲンは低い蛍光性を有する。上記フィブリン組成物では、上記フィブリノゲンは蛍光性を有さなくてもよい。さらなる例では、上記フィブリンの蛍光性は複合流体流全体に分布し、当該流体流の選択中間地点で観察される蛍光性の度合いがより大きくなるようにしてもよい。
【0018】
本開示はまた、組織シーラント組成物の少なくとも2つの個別成分を組み合わせる方法にも関する。上記方法は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた混合機を提供する工程を含む。上記方法は、上記混合機の材料を、当該材料の物理的特徴に基づいて選択する工程を含む。上記特徴は、平均流孔径、厚さ、および孔隙容積から選択される1つ以上を含む。
【0019】
さらなる局面では、上記方法は、全体に均質な混合流を形成するために十分な平均孔径の孔隙率を選択する工程を含む。1つの例では、上記方法は、約5〜300ミクロンの平均流孔径、より詳細には、約15〜100ミクロンの範囲内の孔径を選択する工程を含む。
【0020】
他の局面では、上記方法は、約20%〜60%の孔隙率、より詳細には、約20%〜40%の範囲内の孔隙率を選択する工程を含む。最後に、上記方法は、約1.5〜3.0ミリメートルの範囲内の厚さを選択する工程を含んでもよい。他の局面では、上記方法は、混合機の平均流孔径、厚さ、および孔隙率の積が約0.016〜0.055の範囲内である混合機を選択する工程を含む。
【0021】
さらなる局面では、上記方法は、上記2つの成分のうちの少なくとも一方が液体、固体、または気体を含み、各成分は、固体、液体、または気体の組み合わせであってもよい。他の局面では、上記2つの成分は、フィブリノゲンおよびトロンビンを含んでもよい。さらなる局面では、上記方法は、直列に配置された少なくとも2つの混合機を含み、上記混合機を介して上記2つの成分を流し、上記第1および第2の成分を混合する工程をさらに含む。またさらなる局面では、上記方法は、下記でより詳細に説明するK値を決定することにより、または上記混合機の平均流孔径、厚さ、および孔隙率の積を決定することにより上記混合機を選択する工程を提供する。さらに、上記方法は、上記組織シーラントがフィブリン混合物であり、かつQ値を測定する場合、下記で前述した他の局面に従って、上記組織シーラントの架橋度を決定することにより上記混合機を選択する工程を含んでもよい。また、上記方法の他の局面は、下記でさらに詳細に説明するように、上記2つの成分が順次1回以上、複数回に限定されない回数だけ上記混合機を通過する工程を含んでもよい。さらに他の局面では、上記方法は、上記混合機の近傍であって当該混合機の上流の選択位置で上記2つの成分を組み合わせる工程を含んでもよい。
【0022】
他の局面では、本開示は、複合流体流を組み合わせて排出する組織シーラントシステムであって、それぞれが個別に1つ以上の成分を入れた少なくとも2つの容器を備えるシステムに関する。上記システムは、少なくとも2つの容器の一方と連通する第1の流路、および上記少なくとも2つの容器の他方と連通する第2の流路を含む。上記第1および第2の流路の各々と連通する混合機は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えるかまたは含む。上記混合物は、K=Q*η*L/(S*ΔP)であるダーシーの法則によって定義される約5〜17の範囲内のK値を有する。
【0023】
他の局面では、本開示は、混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を混合するデバイスに関する。上記デバイスは、上記少なくとも2つの個別流の一方と流体連通状態にある第1の流路、および上記少なくとも2つの個別流の他方と流体連通状態にある第2の流路を含む。上記デバイスは、少なくとも2つの相互に離れた関係で配置された混合機を含み、一方の混合機は他方の混合機の上流に位置し、上記第1および第2の流路の各々と連通する。各混合機は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を有する。上記少なくとも2つの混合機の下流にある第3の流路により、上記複合流体流の流出が可能になる。さらなる局面では、上記混合機の少なくとも一方は多孔質部材を備える。他の局面では、上記混合機の少なくとも一方は、上記少なくとも2つの個別流が最初に組み合わされる場所の下流にある。上記混合機は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される多孔質材料で構成されてもよく、より詳細には、上記混合機の少なくとも一方は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される焼結材料であってもよい。より特定的な例では、上記混合機の少なくとも一方は、例えば、焼結ポリプロピレンまたはポリエチレン等の焼結重合体で構成される。
【0024】
他の局面では、本開示は、1つ以上の成分を組み合わせる方法に関する。上記方法は、少なくとも2つの混合機を相互に離された関係で提供する工程であって、一方の混合機は他方の上流に位置し、各混合機は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備える、工程を含む。上記方法は、混合機を介して第1の成分および第2の成分を同時に流して上記第1および第2の成分を混合する工程をさらに含む。
【0025】
さらなる局面では、本開示は、混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分を混合するデバイスに関する。上記デバイスは、第1および第2の側面を有し、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた少なくとも1つの混合機を含む。上記デバイスは、上記混合機の第1の側面と流体連通し、第1の成分の供給源と連通するように適合された第1のポートを含む。上記デバイスは、上記混合機の第2の側面と流体連通し、第2の成分の供給源と連通するように適合された第2のポートをさらに含む。各ポートは、混合機を介して他方のポートと流体連通し、上記第1および第2の成分の一方を、上記混合機の第1および第2の側面のうち選択した一方から他方の側面に流し、上記第1および第2の成分の両方を当該他方の側面から混合機に還流(return flow)させることができる。上記デバイスは、複合流体流を排出または回収するディスペンサーまたは容器をさらに含んでもよい。1つの局面では、上記2つの成分のうちの少なくとも一方は液体、固体、または気体を含み、各成分は、さらに、固体、液体、または気体の組み合わせであってもよい。他の局面では、上記2つの成分は、ディーゼル、オイル、ガソリン、水、および空気から選択される少なくとも1つを含んでもよい。さらなる局面では、上記2つの成分は、卵白および空気を含んでもよい。またさらなる局面では、上記2つの成分は、フィブリノゲンおよびトロンビンを含んでもよい。
【0026】
他の局面では、本開示は、2つ以上の成分を組み合わせる方法に関する。上記方法は、上記第1および第2の流路の間に位置し、それらと流体連通状態にある少なくとも1つの混合機を提供する工程を含む。上記第1および第2の流路は、それぞれ、上記第1および第2の成分と流体連通状態にある。上記方法は、上記第1の成分が順次上記混合機を上記第1の流路から第2の流路に向かって通過し、上記第1および第2の成分の両方が上記混合機を上記第2の流路から第1の流路に向かって通過する工程を含む。この方法に従って、上記第1および第2の成分が混合物を複数回(例えば、少なくとも3回)通過するようにしてもよいがこれに限定されない。上記方法のさらなる局面では、組み合わせた第1および第2の成分を、それらの組み合わせた成分を排出する出口と接続するように構成された上記第1および第2の流路の一方に収納する。1つの局面では、上記第1および第2の成分の少なくとも一方は液体、固体、または気体である。他の局面では、上記第1および第2の成分はともに液体、固体、または気体である。さらなる局面では、上記成分の少なくとも一方は、液体、固体、または気体の組み合わせであってもよく、上記第1および第2の成分の他方は液体、固体、もしくは気体またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
さらなる局面では、本開示は、混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を組み合わせるデバイスに関する。上記デバイスは、上記少なくとも2つの個別流の一方と流体連通状態にある第1の流路を含む。上記デバイスは、上記少なくとも2つの個別流の他方と流体連通状態にある第2の流路をさらに含む。上記デバイスは、第1および第2の流路と、それらの下流において流体連通し、少なくとも2つの個別流を選択位置で合流させる第3の流路をさらに含んでもよい。上記デバイスは、上記選択位置の下流であり、かつその近傍の少なくとも1つの混合機を含む。上記混合機は、その内部を通る上記複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子、および上記混合機の下流に位置し上記複合流体流の流出を可能にする出口を備える。1つの局面では、上記2つの成分の少なくとも一方は液体、固体、または気体を含み、各成分は、さらに、固体、液体、または気体の組み合わせであってもよい。他の局面では、上記2つの成分は、ディーゼル、オイル、ガソリン、水、および空気から選択される少なくとも1つを含んでもよい。さらなる局面では、上記2つの成分は、卵白および空気を含んでもよい。またさらなる局面では、上記2つの成分は、フィブリノゲンおよびトロンビンを含んでもよい。
【0028】
他の局面では、本開示は、少なくとも2つの個別成分流を混合する方法に関する。上記方法は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた混合機を提供する工程を含む。上記方法は、上記混合機の近傍において、該混合機に対して上流の選択位置で少なくとも2つの個別成分流を組み合わせ、上記少なくとも2つの個別成分流が上記混合機を通過する工程を含む。上記方法はまた、上記第1の混合機の下流に、上記成分流がその内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた第2の混合機を通過する工程を含む。
【0029】
他の局面では、上記方法は、上記組み合わせた少なくとも2つの流体流を所望の作用表面に塗布する工程を含む。上記混合機は、平均孔径が約5〜300ミクロンの複数の孔を有する多孔質部材であってもよい。上記混合機はまた、約20%〜40%の孔隙率を有する多孔質部材であってもよい。上記混合機は、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される多孔質材料を含んでもよく、より詳細には、ガラス、セラミック、金属、または重合体からなる群から選択される焼結材料であってもよい。上記方法はまた、上記混合機を介した上記少なくとも2つの成分流を停止させた後、上記少なくとも2つの成分流が上記混合機を繰り返し通過する工程を含んでもよい。
【0030】
本開示のデバイス、システム、方法、および組成物のこれらおよび他の局面を下記においてより詳細に説明する。
【0031】
本発明のデバイス、システム、および方法の特定の構造について後述するが、記載するものと同一の構造に限定するものではなく、本発明の範囲は、出願時または出願後の請求項によって規定されることは言うまでもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
好適な実施形態の説明
本発明の一実施形態に従って、図1は、シーラントまたは組織シーラント等の複合流体流または他の複合流体流の少なくとも2つの成分を混合する全体において2で示すディスペンサーを示す。ディスペンサー、システム、および方法を、一般に、組織シーラントディスペンサーに関して例示説明するが、本発明がそのようなディスペンサーまたは組織シーラント成分の混合に限定されるものではなく、本発明が成分流体流の混合が所望される様々な分野に適用されることは言うまでもない。
【0033】
図1に示すように、ディスペンサー2は、中空のシリンダー、すなわち、円筒6および8として示される少なくとも2つの流体成分源を含むが、流体成分を提供する他の供給容器を用いてもよい。図1の実施形態では、各円筒は、フィブリノゲンまたはトロンビン等、フィブリン組織シーラントを形成する流体成分の一方を収納する全体にシリンダー形状の内部または孔を有する。各円筒のそれぞれの遠位端7、9は、それぞれ、全体において4で示す排出端構造と連通する出口11、13を有する。
【0034】
図1では、各円筒6、8の孔は、それら孔のそれぞれからシーラント成分を吐出するために、それぞれ、ピストンまたはプランジャ10、12を摺動自在に収容することが好ましい。プランジャまたはプッシャ14、16は、各ピストンと関連づけられ、それぞれの孔の近位に延在している。親指当て18、20は、各プランジャ14、16と関連づけられることが好ましく、成分を吐出するために手動または自動のいずれで作動または押動されてもよい。親指当て18、20は、個別または同時のいずれで作動させてもよく、例えば、共通アクチュエータまたはヨークによってプランジャを結合して同時に移動させてもよい。
【0035】
図1に示すように、例示する先端組立部または構造は、多数の部品からなる組立部であり、フローディレクタ26を含む。このフローディレクタ26は、近位端22および遠位端24を有し、それぞれ、第1および第2の流路28および30を画定する。各流路28、30は、それぞれ、円筒6、8の孔と連通することにより、それぞれの成分を遠位端24から流出することができる。図1に示すように、各流路28および30への入口は、例えば、ルアーフィッティング、または関連分野の当業者には明白な他の取り付け具による円筒から6、8への出口の一方への取り付けに適している。
【0036】
流体成分を排出するために手動で作動させるプランジャを例示しているが、本発明とともに、手動または電動で作動させるディスペンサーを含む他のタイプのデバイスを用いてもよい。さらに、上述したように、本発明は、シーラント用ディスペンサーに限定されるものではなく、医療分野内外の他の用途における他の複合流体流として2つ以上の成分を組み合わせるために用いることが企図される。
【0037】
図1において、第1および第2の流路28、30の各々は、個別流体流である上記成分の一方と、そのような流体流が遠位端24に接近または到達するまで連通する。図1に示すように、第1および第2の流路28、30は、組み合わせた第3の流路32に対して、各成分流を、それら2つの成分流の組み合わせが助長されるような角度で方向づけるように、互いに平行でなく、かつ相互接続しないようにしてもよい。例えば、図1に示すように、上記流路は、上記成分流がそれぞれの流路から流出するまで別々の状態(一方の流路28または30が他方からずれた相互接続しない状態)にする。図1では、それら流出流は、最初に、個別流を偏向させ、かつそれらを収束させる第3の流路32の対向する表面に向けて、互いに離れていくように方向づけられる。遠位端24の下流に位置する第3の流路32内の流体成分流の流動は乱流であってもよく、それ以外の場合には、この領域において流体成分の流出流がある程度混合されるような流体流動条件を与える。
【0038】
図5〜図8では、各図は、フローディレクタの成分流路に関して代替的な方向づけがなされているが、他の向きを用いてもよい。図5および図8におけるそれぞれの代替的な排出デバイス50、60、および70は、直線的かつ平行する向きを示しており、流体成分流は、フローディレクタから、一般に平行する経路に沿って流出する。図6は、図1と同様の流路を、平行でなく、かつ相互接続していない状態で示している。図7は、デバイスの遠位端で直角をなす平行な流路を示している(図7では、一方の流路が他方の前に位置しており、1つの流路だけが示されている)。他の向きも可能である。
【0039】
上記およびさらには図1〜図4に示すように、第3の流路32は、第1および第2の流路28、30と連通する。第3の流路32の最遠位にある排出端34は、混合成分流の流出を可能にし、複合混合物を塗布する際の所望の形態および/または作用表面に応じて、任意の所望形状の開口部または管状部、カニューレ、噴霧デバイス、噴霧ヘッド、もしくは他のタイプの排出デバイス等の排出構造を備えてもよい。
【0040】
本発明に従って、全体として36で示す混合機は、第3の流路32の排出端34の上流に位置し、成分流を混合する。成分流は、混合機36を介して流れる際に混合されることにより2つ以上の成分が徹底して混合され、実質的に均質な複合流体流が生成されて排出端34から排出される。
【0041】
本明細書に記載の混合機36は、当該混合機を通る複数の蛇行相互接続流路を画定する3次元格子またはマトリックスで形成されることが好ましい。この構造により、成分流体流は、混合機を通過する際に密に混合される。混合機36は、流体成分流の層流を可能にし、流体成分流の混合を促進するか、または、それ以外の場合には、好ましくは流体成分流の有意な混合を助長する流体流動条件を与えてもよい。
【0042】
混合機の1つの好適な材料を図9〜図16の断面図に示す。図示した材料は、焼結により形成され一体多孔質構造を画定する重合体材料である。この重合体材料の格子またはマトリックスは、混合機を通る複数の本質的に不規則形状をなす蛇行相互接続流路を形成する。混合機36の材料は、例えば、以下の1つ以上から選択してもよい:ポリエチレン(PE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ナイロン、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、PVdF、ポリエステル、環状オレフィン共重合体(COC)、EVAを含む熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリエチルエーテルケトン(PEEK)、ガラス、セラミック、金属、ポリエチレンもしくはポリプロピレン以外の重合体材料、または他の同様の材料。混合機36はまた、吸収分子を有する炭素粒またはリン酸カルシウム微粒子等の活性粉状材料を含有する重合体材料から構成されてもよい。他のタイプの材料も利用可能である。本発明に適した焼結ポリプロピレン材料は、Bio−Rad Laboratories(Richmond,California,United States)、Porex ManufacturingのPorex Porous Products Group(Fairbum,Georgia,United States)、Porvair Technology(Wrexham,United KingdomのPorvair Filtration Group Ltd.の一事業部(Porvair Vyon Porvent、PPF、またはPPHP材料を含む))、またはMicropore Plastics,Inc.(5357 Royal Woods,Parkway,Tucker,GA 30084、http://www.microporeplastics.com/)等の商業供給源から入手可能である。
【0043】
混合機36を、成分流の混合を助長する1つ以上の特徴を有する1つ以上の材料から構成することも可能である。限定ではなく一例として、上記材料は、本質的に水を吸収するかまたは結合する親水性材料、本質的に水に溶解しない疎水性材料、本質的にオイル等を吸収しない疎油性材料であってもよく、および/または成分の混合を促進するために所望される他の特徴を有してもよい。
【0044】
上記のように、混合機36は、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子またはマトリックスの全体または一部であることが好ましい。図9〜図16では、成分流が複数の蛇行相互接続通路を画定する図中の3次元格子またはマトリックスを通過することにより、当該成分流が徹底して混合され、本質的に均質な複合流体流を生成することができる。図9〜図12では、走査電子写真が、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約30倍、100倍、350倍、および200倍に拡大した横断面をそれぞれ示している。図13〜図16では、走査電子写真が、図9〜図12に示したものと同じ材料を約30倍、100倍、250倍、および350倍にした縦断面をそれぞれ示しており、3次元格子の他の図を示している。図9〜図16に示すように、図示した経路は、混合機全体における1つ以上の無作為な位置で相互接続し、それによって、上記2つの成分流が混合機を流動する際にそれらの位置で無作為に組み合わせられるようにすることが好ましい。3次元格子またはマトリックスは、各種の方法で形成可能であり、図9〜図16に示すような焼結重合体材料の不規則構造に限定されないことは言うまでもない。
【0045】
図1〜図4に図示した混合機36は、多孔質材料から構成されており、用途に応じて異なる孔隙率を有してもよい。そのような多孔質材料は、成分流が通過することにより徹底的に混合した状態で複合流体流を生成できる孔隙率を有することが好ましい。材料の孔隙率は、当該材料の総容積に対する空隙容積の割合をパーセンテージで表してもよい。材料の孔隙率は、使用材料およびその流体流動に対する抵抗(流動抵抗による過剰な背圧の生成は通常回避しなければならない)、使用混合成分の粘度および他の特徴ならびに数、所望の混合品質、ならびに所望の塗布および/または作用表面を含むがこれらに限定されないいくつかの要因に応じて選択してもよい。限定ではなく一例として、フィブリン成分の混合に使用可能な材料の孔隙率は、約20%〜60%、好ましくは、約20%〜50%、より好ましくは、約20%〜40%としてもよい。
【0046】
図17には、Micromeritics(Norcross,GA)によって製造された製品であるAutopore III装置で水銀孔隙率試験を行って得た選択材料(Bio−Rad Laboratories製)の孔隙率測定値が示されている。選択材料の孔隙率を他の方法または他の試験を用いて判定することも可能である。図17では、そのような孔隙率測定値により、約33%の孔隙率、約0.66の見かけ密度、および約64.75ミクロンの平均孔径を得る材料サンプルに対する水銀侵入の総容積が示されている。所望の用途に応じて、フィブリンの混合またはフィブリン以外の複合流体流の混合に他の性質を有する材料を用いてもよい。
【0047】
また、混合機の平均孔径範囲を変更してもよい。図9〜図16に示す3次元格子では、混合機36は、成分流が流動する流路の少なくとも一部を画定する複数の孔を画定してもよい。平均孔径範囲は、そのような成分流に対する流動抵抗が必要以上に大きくならないように選択してもよい。さらに、平均孔径範囲は、孔隙率に関して上述したものを含むいくつかの要因に応じて変更してもよい。混合機の異なる材料について、表1に平均孔径範囲をいくつか示すが、16番は混合機を用いない「対照」例を示している。
【0048】
【表1】
表1は、PorexまたはPorvairによってPorventまたはVyonという商標名で製造された市販の焼結ポリエチレン(PE)またはポリプロピレン(PP)材料をいくつか含んでいる。この表は、対照実験である混合機を用いない1つの実験(ID26)を除いて、フィブリノゲンおよびトロンビン(4国際単位(IU)/ml)が図1に示すような単一の混合機を有するデバイスを通過した後に得られたフィブリンの品質に基づいて各材料から得た混合結果をまとめている。平均孔径範囲としては、約5〜300ミクロンまでのものが示されている。表1では、2番、21番、6番、19番、22番、24番、8番〜9番、16番、18番、20番、14番、17番、および27番の材料の範囲が、それぞれ、フィブリンについて、一般に良好な混合品質を示している。表1は、そのような平均孔径範囲が完全なものであることを示すものではなく、他の平均孔径範囲も可能であり、かつ混合に有用である。表1に示す平均孔径範囲は、記載した材料について、供給元であるPorvairおよびPorexによって提供された技術データシートから得たものである。
【0049】
混合機は、さらに、成分流を十分に徹底して混合できる大きさに構成されてもよい。混合機の大きさは、ディスペンサーの大きさおよび/もしくは構成、混合機孔隙率および平均孔径、使用混合機材料、所望の混合度、混合成分、ならびに/または所望の用途を含む要因等に応じて変更してもよい。上記の例示的な範囲の孔隙率および平均孔径を有する混合機については、表1に示すように、混合機の厚さを約1.5mm〜3.0mmの範囲にしてもよい。変化するまたは不均一な厚さを含む他の厚さも可能である。
【0050】
また、混合機の形状および構成は、図1〜図4に示す全体に円形状の断面または円盤形状から変更してもよい。混合機が、楕円形、長円形、四辺形、または他の形状を含むがこれらに限定されない他の形状または構成を有することも可能である。図1〜図4に示す実施形態では、混合機の半径を約3mm〜5mmの範囲としているが、他の寸法も可能である。
【0051】
図1に示すように、混合機36は、遠位端24の下流において個別成分流が最初に合流する場所から約Lの距離に位置することが好ましいが、合流する位置にあってもよい。設計要件および必要とされる混合の程度に応じて距離Lを変更することが企図される。一例としては、フィブリンの送達に用いられる図1〜図4に示すタイプの携帯用ディスペンサーでは、距離Lは、約0〜6mm以上、好ましくは、約1〜6mmの範囲としてもよい。一般的に言えば、例示した混合機によって生成されるフィブリンの均質性は、図1〜図4に示すタイプのディスペンサーを使用することによって、距離Lが減少する(例えば、4mm以下)につれて低減する。より好ましくは、図1〜図4に示す実施形態には約5〜6mmの距離Lが好ましいが、他の距離も可能である。上記に示すY形状の流路構造以外の設計を使用し、かつ/またはそのような構造に、図5〜図8に示すような他の直径、長さ、流路数、および/または流路方向等の他の物理的パラメータを使用して、距離Lの値を上記範囲に限定することなく上記と異なる範囲とすることが企図される。
【0052】
また、混合機は、混合機に用いる1つまたは複数の材料の所望する形状、厚さ、および/または他の特徴に応じて、各種の方法で製造してもよい。限定ではなく一例として、混合機は、当該混合機に対して所望の大きさ、厚さ、および/または他の特徴を有する1つ以上の材料片から作製または区分されてもよい。あるいは、混合機は、所望の大きさ、厚さ、および/または他の特徴を有する混合機を形成する1つ以上の成形加工を含む処理によって予め作製されてもよい。他の方法で混合機を製造することも可能である。混合機は、カニューレ、ルアー、噴霧端、管、または他のデバイスの一部として、例えば、成形超音波溶接、機械継手、または他の取付技術によって予め組立てられてもよい。限定ではなく一例として、図18は、カニューレ型デバイス82内に位置する図1の混合機36と類似の混合機80を示す。あるいは、この混合機は、使用前にユーザによって適切なデバイスの一部として組み立てられてもよいが、他の用途に用いてもよい。
【0053】
混合機の材料は、1つ以上の物理的特徴に基づいて、所与の用途のために、当該混合機の下流において、成分流が当該混合機を通る際に十分かつ相対的に均質な複合流体流を得ることを特徴とし、そのように選択されてもよい。一例として、表2は、本明細書に記載のディスペンサーシステムおよび方法での使用に適した混合機について、各種の焼結重合体材料およびそれらの物理的特徴を示す。表2に示す特定の材料は、例えば、PorvairFiltration Group Ltd.(Hampshire,United Kingdom)、またはPorex Corporation(Fairburn,Georgia,USA)によって製造される。この表に表すデータは、下記式に示すようなダーシーの法則によるK値を含む:
Q=(K*S*ΔP)/(η*L)
ここで、Qは、材料を通る流動流の流量であり;
Sは、材料の表面積であり;
ΔPは、材料の上流と下流位置間の圧力の変化であり;
Lは、材料の厚さであり;
ηは、材料を流れる流体の粘度であるか、または1つより多くの流体が流れる場合には、より粘度が高い成分の粘度である。
【0054】
K値は、典型的には、浸透性の値を表し、表2では、μm2の単位で表されるK値とともに漸増する浸透性の値を表している。表2はまた、最小孔径(min.)、平均流孔径、最大孔径(max.)、平均泡立ち点(または液体に気泡を生成させる圧力)、厚さ、および孔隙率に対する相対値を含む材料の物理的特徴のいくつかをまとめている。表2の材料各々の物理的特徴は、当業者に公知の方法を用いた試験に基づいて得られた。
【0055】
限定ではなく一例として、表2のK値は、水が記載する物理的特徴を有する材料を通過する浸透性試験によって得られた。浸透性試験は、材料をそれらのK値に基づいて特徴付ける際に役立っており、表2では、それらの材料をK値の昇順で示している。浸透性の測定のために、使用した材料について、PorvairおよびPorexによる焼結多孔質材料シートが与えられた。浸透性試験は、水を充填したシリンジで行った。減圧弁を閉じて、シリンジの下流の全ての接続部を開いた。次いで、シリンジの上下間の圧力降下が約0になるまでシリンジに水を流した。次いで、減圧弁を開き、圧縮空気を注入し、シリンジから一定の流量で水を押し出した。シリンジ上の上側と下側の容積表示間の水流を監視して、注入した空気の容積を判定した。水のメニスカスが上側の印を越えるとすぐに、その時間および圧力を記録した(P1)。水のメニスカスがシリンジ本体の下側の印を越えたときに、合計時間(t)、圧力(P2)、および水の容積(V)を記録した。既知の値であるP1、P2、t、およびV以外で浸透性の計算に用いた残りのパラメータで既知であったものには以下の物が含まれていた:焼結材料円盤の直径は約10mm、厚さは約1.5mm、焼結材料円盤の表面は約78.54mm2、水の動的粘度10−3パスカル秒(Pa.s)。この試験を用いて表2のK値を決定した。
【0056】
本明細書に記載するように、他の液体、気体、および固体を用いて、それらの材料または他の材料についてダーシーの法則によりK値を決定することが企図される。異なる液体、気体、および固体がダーシーの法則の粘度値(η)を変化させることにより、使用可能な材料の所与の物理的特徴(厚さLおよび表面積S)の組、流量Q、および圧力差ΔPについて異なるK値またはその範囲が得られることが分かる。さらに、粘度が一定となるように同じ液体、気体、または固体を用いる場合であっても、他のパラメータを変更して異なるK値を得てもよい。限定ではなく一例として、流量、表面積、厚さ、および/または圧力差のうちのいずれか1つ以上を変更することにより、結果的に決定されるK値を変更してもよい。
【0057】
図64〜図65を手短に見てみると、3次元曲線において、一方の軸に沿って浸透性またはK値が示され、第2の軸に沿って圧力値が示され、第3の軸に沿って粘度値が示されている(図65は、曲線をより見やすくするために浸透性および圧力の軸を右回りに回転させていることを除いて図64と同一である)。一般的に言えば、図示した曲線は、所与の材料の浸透性試験に使用可能なあらゆる液体、気体、または固体に適用可能である。一例として、図64〜図65は、浸透性またはK値、圧力値、および粘度について、表面積S、流量Q、および材料厚さL等、ダーシーの法則の他のパラメータが一定に保たれると仮定して場合の変化を示している。図64〜図65に示すように、所与の粘度および圧力値に対する浸透性またはK値は、図示した曲線に従って知ることができる。浸透性、圧力、または粘度値のうちの1つだけが一定である場合でも、上記曲線は、上述したダーシーの法則に基づくそれらの相互関係により、その図示した曲線に沿って変化し得る他の2つの値を示す。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
表3には、表に記載の材料のK値が表されている。限定ではなく一例として、表2〜表3における概ね5〜17の間のK値を有する材料から作られた混合機または円盤を用いて、フィブリノゲンとトロンビンを組み合わせた混合物の良好で均質な混合が観察された。また、表3は、平均流孔径(MFP)と、厚さと、孔隙率容積(PV)の積に(この積の漸増値に基づいて)1000を掛けた数値を含んでいる。約16〜55の範囲内のMFP*厚さ*PV*1000の値を有する混合機を用いることで、フィブリンが良好かつ均質に混合されることも観察された。混合機材料はまた、上記物理的特徴または他の特徴のうちの1つ以上に基づいて選択してもよい。上述したように、浸透性またはK値は、例えば、水以外の液体を用いる場合、または浸透性試験に気体および固体を使用する場合、または異なる物理的特徴もしくはパラメータを使用する場合には、上記表2〜3において示した値から変更してもよい。そのような場合、適切なK値の範囲が決定され、混合機の材料が、十分な混合品質が得られると判定されるK値の範囲に基づいて適切に選択できることが企図される。
【0060】
図19〜図21は、全体に102で示す組織シーラントディスペンサーを含む本発明の他の実施形態を示す。図1〜図4に示すディスペンサー2と同様に、図19〜図21のディスペンサー102は、一対の中空円筒または管106、108、ピストン110、112、プランジャ114、116、および親指当て118、120、ならびにフローディレクタ126を含む。フローディレクタ124は、遠位端124、ならびに第1、第2、および第3の流路128、130、および132を有する。図21に示すように、第1および第2の流路128、130のそれぞれの開口部A、Bは、上述したように、2つの個別流が遠位端124から流出するときにそれらの組み合わせを助長するように配置される。より詳細には、図19〜図21では、出口が相対的にずれた関係で位置し、管132の壁部に向かうように外側に向かって流動が生じるが、他の位置および/または向きを用いてもよい。
【0061】
図19を参照して、ディスペンサーは、混合を促進するために2つ以上の混合機を有することが好ましく、第1および第2の混合機136Aおよび136Bの2つを有することが好ましい。図19では、そのような混合機136Aおよび136Bは、排出端134の上流において流路132に沿って相互に距離Vだけ離れた直列に間隔を空けた関係で配置される。一般的に言えば、フィブリンの混合の均質性または品質は、例えば、混合機を2つにする等、混合機の台数の増加とともに向上するが、任意の数の混合機を用いてもよい。
【0062】
流路132は、一体構成のものかまたは個別の部分もしくは管状区間132A、132B、および132Cから構成されてもよく、この場合、混合機136A、136Bは、図19に示すように、混合機136A、136Bの間、上流混合機136Aと遠位端124の間、および下流混合機136Bと排出端134の間に確実に所望の間隔が空けられるように区間132A、132B、および132Cの間に位置する。外部筐体138は、混合機136A、136B、および管状区間132A、132B、132Cを支持し、位置決めするために、管状区間132A、132B、および132C、ならびに混合機136Aおよび136B上に密着するような大きさにしてもよい。
【0063】
混合機136A、136B間の距離Vは、それら混合機が相互に隣接する約0mm〜6mm以上の間で変更してもよい。図22〜図27は、混合機136A、136B間で実現可能な異なる間隔距離をいくつか示している。2つの混合機136A、136B間の距離Vとしては、約0mm、1mm、2mm、3mm、4mm、および5mm(それぞれ、図22〜図27に示す)が示されている。一般的に言えば、組織シーラント用途で使用する場合、2つの混合機間に存在するフィブリンは、それらの間の距離Vの増加とともに増加することが分かった。図示する実施形態において距離Vが約3mm以上になると、良好なフィブリンが形成され、十分に均質な複合流体流が形成された。上述したように、第1の混合機の上流の長さLは、約0mm〜6mm以上の間で選択してもよい。例えば、上記の範囲の大きさを有する2つの混合機を用いる場合、1つの組み合わせとしては、混合機136A、136Bのいずれの側面におけるフィブリン形成、および/または混合機136A、136Bの孔の目詰まりを抑えるように、混合機136A、136B間の距離Vが約4mm以下で、上流混合機136Aと遠位端124の間の長さLが約6mm以下としたものが挙げられる。距離Vおよび長さLの他の変形例または組み合わせも可能である。値Lについて先に述べたように、異なる設計および/またはそのような設計に使用する異なるパラメータに基づいて値Vを変更してもよく、値Vは上記の値または範囲に限定されない。
【0064】
本明細書に記載の混合および排出システムは、流体成分流の流動が間欠的に開始および停止される「ストップ・アンド・ゴー(Stop and Go)」デバイスまたはプロセスを可能にする。そのような「ストップ・アンド・ゴー」デバイスまたはプロセスには、長さLおよび/または距離Vが、1つまたは複数の混合機の上に、または1つより多くの混合機を使用する場合には、それら混合機間に顕著なフィブリン形成を発生させないことが好ましい。少なくとも2つの混合機を使用する「ストップ・アンド・ゴー」デバイスについては、長さLおよび距離Vを変更してもよい。限定ではなく一例として、2つの混合機デバイスについては、約3mmの長さLおよび約4mmの距離Vにより、十分に徹底して混合を行なうことができ、2つの混合機の上にまたはそれらの間における顕著なフィブリンの発生を回避することができる。長さLおよび距離Vについては、所望の用途および/または使用可能な他の設計およびパラメータに応じて、上述したもの以外の変更も可能であり、それらを使用してもよい。
【0065】
図28〜図29は、2つの混合機を示しおり、それらの間の距離Vは、それぞれ、約2mmと3mmであり、長さLは約6mmである。流動が過度に制限されなければ、任意の適当な数の混合機によって混合を促進することも可能である。また、図30〜図32は、それぞれ、1つの混合機136A、2つの混合機136Aおよび136B、ならびに3つの混合機136A、136B、および136Cを有する混合機構成を示しており、それらの間に距離または間隔(V)がなく、長さLは約6mmである。1つより多くの混合機を用いる場合、それらの混合機は、上述したように同じ特徴(例えば、孔隙率、平均孔径、または長さ)を有さなくてもよい。混合機の特徴を変更して、流体流がディスペンサーを通過する際に、さらに徹底して混合を行なうことが望ましい。
【0066】
図33では、本発明のさらなる実施形態が、全体に202で示すディスペンサーを含む。先に説明した実施形態と同様に、ディスペンサー202は、一対の中空円筒または管206、208、ピストン210および212、プランジャ214および216、親指当て218、220、ならびにフローディレクタ226を備える。ディスペンサー202の近位端222は、プランジャ214および216の近位端を端部222で結合し、成分を遠位端224から同時に排出する共通アクチュエータを提供する。遠位端224は、単一の混合機236が排出端234の上流に位置し、かつ遠位端224の下流から長さLの地点に配置される第3の流路232内に、それぞれの成分を個別に吐出する個別流路228および230を画定する。上記のように、混合機の数および長さLの変更を含めた他の変更も可能である。
【0067】
図33では、遠位端224に第4の流路240が画定されており、導管(例えば、図10に342で示す導管)を介して遠位端と連通する空気等の無菌気体の供給源と流体連通するように適合されている。この気体の供給源は、2006年1月12日に出願され、本明細書中において参考として援用する米国特許出願シリアル番号11/331,243号に記載説明されるように、空気圧、機械、電気、および/またはそれらの組み合わせにより作動してもよい。
【0068】
図33では、上記のようなディスペンサー202は、2つの成分が気体に助力されてデバイスから吐出され、ディスペンサー202の遠位端234から気体と混合された成分流体流が与えられることを除いて、図1〜図4で説明したディスペンサー2と同様に動作する。流路240が気体または水を導入し、混合機の流路および/または排出端234および/または下流に位置する他の導管またはカニューレ構造を洗浄することも可能であり、これによって、間欠的な流体流動の開始および停止中に、「ストップ・アンド・ゴー」デバイスの動作が容易になる。
【0069】
図34では、全体において302で示す改変ディスペンサーは、第3の流路332が排出端334の上流で間隔を空けながら直列するように配置された2つの混合デバイス336A、336Bを含むことを除いて、図33に関して上述したものと同一の部材を有する。先に説明した本発明の局面に従って、上流混合機336Aと遠位端324間の長さL、ならびに上流および下流混合機336Aおよび336B間の距離Vについて変更が可能である。
【0070】
他の改変も可能である。例えば、図33〜図34または上記実施形態のいずれかに示すガスアシスト式噴霧ディスペンサーを、例えば、図5〜図8に示す向きを含むがこれらに限定されない各種の代替的な向きの成分流路を含むように改変してもよい。例えば、改変ディスペンサーは、腹腔鏡噴霧デバイス、または他の低侵襲性手術器具および/もしくは手順の一部として用いられるような所望の長さを有するカテーテルまたは他の同様の構造を用いるような個別成分流体流のための平行成分流路を提供することができる。ガスアシスト方式を使用する場合、混合機の上流もしくは下流、および/または流体成分流が合流する場所の上流もしくは下流のいずれかの位置に気体流体流を配置させてもよい。上記の改変に他の変更を加えることも可能である。
【0071】
図35〜図36は、上記図1、図19、図33または図34に関して上述したものと同様の部材を含み、全体に402で示す他のディスペンサーを示しているが、当該デバイスは、空気および/または水とともに成分(例えば、フィブリノゲンおよびトロンビン)を噴霧可能であり、本明細書中において参考として援用する米国特許第6,835,186号に記載説明されるMBUとして公知のメカニカルブレークアップユニットを含む噴霧ヘッド438を使用可能である。他の実施形態に関して上述したように、図35のコネクター438は、フィブリノゲンまたはトロンビンを組み合わせる流路432に位置する1つ以上の混合デバイス436を使用してもよい。上記空気および/または水は、そのような混合の上流または下流のいずれかにおいて複合流に導入可能である。
【0072】
本発明の他の局面に従って、図37〜図40は、内部に混合デバイス502が配置され、全体において500で示すコネクターを示す。図37では、コネクター500は、本明細書において先に述べたように、単一または複数の円筒を有する排出デバイス等の排出デバイスと流体連通状態となるような位置にあってもよいが、他のデバイスを利用することも可能である。図37に示すように、上記コネクターは、単一の容器を有する回収/排出デバイス504の遠位端に設けられるが、このデバイスは、例えば、十分に混合された成分が混合機を通過した後にそれらを収納または回収するために、図1〜図4の排出デバイスの下流に配置してもよい。他の構成も可能であり、説明記載したデバイスに限定されない。
【0073】
先行する実施形態において示したように、混合デバイス502は、相互に間隔を空けた関係で直列に配置してもよい。コネクター500はまた、図39〜図40に示すような、それぞれが図示する排出デバイス504および/または他の排出デバイスとの接続のために雄および/または雌ルアーロック機構と関連する第1および第2の端部(それぞれ、506および508)を含む。図39〜図40では、500で示すコネクターは、混合デバイスが挿入される流体流路512がその内部で画定されるスリーブ510を含む。スリーブ510は、デバイス504と流体連通状態となるチャネルまたは導管を画定する延長部516の一部が挿入されるように当該スリーブの内部表面上に画定される溝514を含んでもよい。それらの溝は、例えば、延長部516内に画定される突起518を備えてもよく、この延長部は、溝514(図中において514示す)の曲面に沿って突起を回転させることにより挿入されルアーロック方式で接続される。所望であれば、コネクター500のいずれかの端部において、流体流路が不用意に取り外されることを防ぐ他の形状、構成、および/またはタイプの接続を行なうことが可能であり、上記で説明記載した接続に限定されない。
【0074】
図41および図42は、代替的なコネクター600を示しており、当該コネクター600内に画定される流体流路604内には単一の混合デバイス602が配置されている。コネクター600は、当該コネクターの両側において、シリンジまたは他のデバイス等の排出デバイスに取付可能な2つの雌ルアーロックが可能な第1および第2の端部(それぞれ、606および608)を含む。
【0075】
図43〜46は、さらに他の改変コネクター700を示しており、当該コネクター内に画定される流体流路704内に直列に配置される2つの混合デバイス702が使用されている。図44に示すように、コネクター700は、それぞれ、雌および雄ルアーロック機構に関連する第1および第2の端部706および708を含む。このコネクターは、図44〜図46に示すように、例えば、機械接続または超音波溶接によって結合可能な1つ以上の導管区間710、712、および714から構成されてもよい。例えば、導管区間710の内部表面は、導管区間706に取付可能なロックシステムを含み、導管区間710のそれぞれの端部714は、導管区間706とカニューレ、針、シリンジ、または他のデバイスとのロック式接続を行なうことができる。一般的に言えば、医療用途に使用する場合、上記コネクターがルアーロック機構を有することが好ましいが、他の用途には他の接続が可能である。
【0076】
本発明のさらなる局面に従った方法によって、例えば、シーラント成分等の少なくとも2つの個別成分流が混合される。この方法は、上記実施形態のいずれかのように、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子またはマトリックスを含む少なくとも1つの混合機36、236、または1つより多くの混合機136A、136B、336A、336B等の混合機を設けることによって行ってもよい。この方法では、さらに、シーラント成分等の少なくとも2つの個別成分流が混合機を通過する。
【0077】
上記のように、この方法は、少なくとも1つの混合機または複数の混合機(例えば、相互に隣接するかまたは間隔を空けるかのいずれかの状態で直列に配置した2つ以上の混合機)を用いて行ってもよい。この方法を複数回繰り返して行い、2つの成分流の流動を停止した後、それら成分流の流動を再開して、それらの成分流が混合機の目詰まりを抑えながら混合機を通過するようにしてもよい。
【0078】
図1〜図21、図33〜図35のディスペンサー2、102、202、302、402の動作中、2つの個別流が、それぞれの第1および第2の流路28、30、128、130、228、230(図34には1つの流路330のみを示す)から第3の流路32、132、232、332、432まで流動する。それらの個別流が、単一の混合機36、236、436、または直列する混合機136A、136B、336A、336B内を通る蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を通過すると、それらの個別流が混合されて本質的に均質な複合流体流となる。
【0079】
一例として、図47は、コネクター800(例えば、上記した少なくとも1つの混合機を有するもののいずれか)を使用して少なくとも2つの個別成分を混合する方法を示しており、このコネクターは、一端が、2つの個別容器806および808を有するデバイス802に取り付けられ、他端がディスペンサー804に取り付け可能である。上述したように、上記成分は、個別容器806および808から対応する個別流路810および812を介して、コネクター800まで延在する複合流路814まで流動することが可能である。上記成分の混合物は、所望であれば、少なくとも内部に混合機が配置されたコネクター800を介してコネクター800の反対側に取り付けられたディスペンサーの流路816まで流動して排出される。
【0080】
図48を見ると、混合/排出システムの他の実施形態が示されている。図48に見られるように、混合デバイス900が、各々が流体(液体または気体)を保持する2つの容器(例えば、ディスペンサー)の間に配置されている。複合デバイスにおける混合デバイス900を保持する部分は、ディスペンサーの一方と一体化することができるか、またはコネクターとすることができ、内部に少なくとも1つの混合機901を配置している。そのようなコネクターは、各々がそれぞれ単一の容器910および912を有するディスペンサー906および908に接続された第1および第2の端部902および904を有するように示されている。限定ではなく一例として、本発明は、流体成分の少なくとも2つの個別流を混合する方法を提供するが、ここで、各成分は、ディスペンサー906および908の一方に別々に配置される。各容器は、それぞれ、各々が図48に示すように、2つの雌ルアー取付を行う混合デバイス900の一方の側面と流体連通する遠位流路914および916を含むが、他の取付を所望する場合、混合デバイス900は、その端部902および904および/またはそれらの組み合わせに2つの雄ルアーを備えてもよい。成分を混合することが所望される場合、例えば、左ディスペンサーに位置するフィブリノゲン等の一方の成分は、混合機の一方の(または第1の)側面から混合機の他の(または第2の)側面に、これによって、例えば、トロンビンが位置する混合機の右側に位置する他方の容器908に流れ込むことが可能である。上記容器のいずれか一方または両方が、混合前に部分的に満たされ、他方の成分の容積を付加的に収容することが企図される。上記2つの成分は、容器908から混合機を介して混合機の左側に流動可能であることが好ましい。上記成分が混合デバイス900を通過するごとに、それらの成分がさらに混合される。所望であれば、または十分な混合を得るために必要に応じて、上記成分が混合デバイス900を少なくとも1回通過するか、好ましくは、数回通過することが企図される。
【0081】
例えば、フィブリノゲンおよびトロンビンを使用する場合、成分を十分に混合するために、2つの容器間を少なくとも2、3回行き来しながら混合デバイスを通過させることが所望される場合がある。次いで、混合物を容器906、908の一方に収納し、他方から取り外して、所望の位置で排出してもよい。あるいは、図50A〜図50Cに示し下記で説明するようなデバイスは、混合流体を排出可能な個別のノズルまたは吐出口移動部を含んでもよい。さらに、図48の混合デバイスを使用して、フィブリノゲンおよびトロンビンと空気を混合することが所望される場合がある。例えば、容器910、912の一方には、約100mg/mlの濃度のフィブリノゲンを1ml入れ、他方には、例えば、4IUトロンビン濃度のトロンビンを1mlと、空気を2.5ml入れ、混合デバイスをそれら2つの容器に間に配置した状態で、それらの成分を当該2つの容器間を少なくとも1回、好ましくは、数回、より好ましくは、少なくとも4回行き来させて、相対的に容積が高く(例えば、上記例では125気積%)、空気なしで混合したフィブリンより密度が低い空気を有するフィブリン混合物である「フィブリンムース」を生成させてもよい。フィブリンムースは、例えば、足部潰瘍等の急性または慢性損傷の治療のために、患者の体の下側への塗布を可能にする。他の容積のフィブリノゲンおよびトロンビンを異なる相対量で、異なる容積の空気と組み合わせて、複合フィブリン混合物に含有される空気のパーセンテージを増減させてもよい。このようにして得たフィブリンムースを、本明細書において参考として援用する米国特許第7,135,027号に記載されるように、凍結乾燥してスポンジを形成するか、またはそれらを挽いて止血パウダー(hemaostatic powder)(乾燥フィブリン接着剤)を得てもよい。例えば、食品産業については卵白とオイルおよび/または水、自動車産業についてはオイルおよび水またはディーゼルおよび水等、他の適用分野およびさらに後述する他の用途については、異なる液体成分の混合を含む他の変形例も可能である。あるいは、図48の混合デバイスを使用して2つ以上の気体を混合することも可能である。
【0082】
先に説明したように、本明細書に記載のデバイスおよびシステムは、液体成分の混合に限定されない。上記成分の一方または両方は、実際、空気等の気体、または他の気体であってもよい。図48に示す実施形態は、特に、液体と気体の混合によく適している。フィブリン形成を伴う例では、フィブリン形成成分は、選択される量の空気を含んでもよく、それらのいくつかについてはさらに後述するが、他の液体−気体混合物も利用可能である。上記成分の1つ以上を、本明細書に記載のデバイスおよびシステムのいずれか1つにおける混合機を通過可能な固体とすることも可能である。この固体を、混合機の最小孔径よりも相対的に小さい大きさまたは直径を有する粒子で構成することで、そのような固体が混合機を通過できるようにすることができる。例えば、1つ以上の固体を、例えば、ナノまたはマイクロサイズの粒子およびそれらの懸濁液を作成する方法で、他の固体、液体、または気体と混合してもよい。
【0083】
本発明の他の局面に従って、上述の実施形態等のいずれかを用いて、3つ以上の成分を混合してもよい。例えば、図49は、内部に配置された少なくとも1つの混合機1008を使用する混合デバイス1006を介して互いに接続された第1および第2のデバイス1002および1004を示す。上記のディスペンサー2、102、202、および302と類似する第1のデバイス1002は、各々が個別の成分(例えば、フィブリノゲンまたはトロンビンの一方)を入れた少なくとも2つの容器を混合に用いてもよい。第2のデバイス1004は、二相性リン酸カルシウム微粒子を入れていてもよい。混合が所望される場合、フィブリノゲンおよびトロンビンを、第1のデバイス1002から混合デバイス1006の混合デバイスを介して流動させ、上記2つの成分を混合してフィブリン混合物を得た後、第2のデバイス1004に流れ込むようにして、粒子周囲の孔状の隙間を埋めるようにしてもよい。第2のデバイス1004は、例えば、患者の骨成長を助長する等の用途のために取り外してもよい。本発明の他の混合法も利用可能である。
【0084】
図50A〜図50Cを見ると、改変混合デバイス1050は、2つの容器1052および1054の間に設けられているため、図48に示す混合デバイスと類似しているが、第3の容器1056をさらに含んでいる。容器1052、1054、および1056は各々、三方弁、止水栓、または選択した時点において少なくとも2つの容器間の連通を選択的に可能にする他の適切な弁構造等の弁1058を介して接続される(混合デバイス1050は弁の左側に示されている)。例示した構成に対して他の変更を行なうことも可能である。例えば、弁のいずれかの側面に1つ以上の混合デバイスを使用すること、および/または弁のいずれか一方の側面に2つ以上の混合デバイスを使用することが可能である。
【0085】
一例として、図50Aは、流体流路1060を介して弁1058を渡って相互に流体連通状態にある第1の容器1052および第2の容器1054を示す。図50Aでは、弁を開放して上記2つの容器間の流体流動を可能にする一方で、弁1058を渡った第3の容器1056への流体流動は閉鎖されている。各容器1052および1054は、それぞれ、AおよびBとして特定する複合混合物に混合するための少なくとも一方の成分を含んでいる。
【0086】
図50Aおよび図50Bに示すように、容器1054からの成分Aは、弁1058を渡って開放された流体流路1060および混合デバイス1050を通過して、混合デバイス1050の反対側の容器1052に流動し、成分A+Bの両方が同じ容器内に存在するようにすることが可能である。図50A〜図50Cでは、成分A+Bは、第1および第2の容器1052および1054間を複合混合物として少なくとも1回(すなわち、容器1054に対して)、場合によっては、数回流動し(すなわち、容器1052および1054の間を行き来し)、混合デバイスを用いてそのような成分を十分に混合する流動方向を所望の回数だけ変更可能にしてもよい。単一の混合デバイスが使用される図50A〜図50Cでは、流動方向を数回切り替えることが所望される場合があるが、流動方向の変更回数は使用可能な混合デバイスの数の増加に応じて低減してもよい。流動方向を所望の回数変更したときに、成分A+Bが、成分A+Bを同じ容器1052内に示す図50Bに示すように、容器1052および1054の一方に存在することが好ましい。
【0087】
図50Cでは、弁1058の位置を回転して、容器1052の一方と第3の容器1056との間に流体流路1062を設ける。次に、複合混合物A+Bの流動が、貯水槽または複合混合物を利用する他の構造物であり得る第3の容器1056内に流れ込むようにすることができる。限定ではなく一例として、第3の容器1056は、エンジンの気筒、またはエンジンと流体連通状態にある貯水槽であってもよく、各成分A、Bは、液体もしくは気体、または水、空気、アルコール、ガソリンオイル、および/もしくはディーゼルオイル等の液体もしくは気体の混合物、またはそれらの組み合わせから1つを選択したものである。このような適用は、バイオディーゼル燃料、高含酸素燃料(super oxygenated fuel)、燃料添加剤、または他の所望の自動車用混合物を直列混合する場合に有効である。図50A〜図50Cに示すデバイスを用いてバイオディーゼル燃料を形成する一例としては、0.13mlの水および0.77mlガソリンオイルまたはディーゼルを容器AおよびBの間を「勢いよく」行き来させた後、直ちに利用するために第3の容器に回収するかまたは後で使用するために第3の容器に収納するようにすることができる。図50A〜図50Cのデバイスで使用する高含酸素燃料の一例としては、2.0mlの空気および1.0mlのディーゼルを同様に「勢いよく」2つの容器間を所望の回数だけ行き来させた後、使用のために第3の容器に移するようにすることができる。他の分野への適用も可能である。自動車内に配置され、運転手が家またはガソリンスタンドで満水にすることが可能な貯水槽から水を得たり、空調システム、雨、および/または他の方法によって水を回収することがさらに企図される。
【0088】
使用者が燃料成分を使用するために自動車内に入れる直前にそれらの成分を混合するサービスまたは給油ステーションで上述の混合システムを利用できるようにすることが好ましい。あるいは、上記混合システムを、燃料成分を自動車で使用する直前に(例えば、燃料混合物を気筒または他の内燃デバイスに導入する直前に)混合する自動車給油システムの一部とすることがより好ましい。
【0089】
本明細書に記載の直列混合デバイスいずれかを、すでに上述した医療および自動車用途以外の他の用途に使用してもよい。そのような他の用途の例としては、航空宇宙(例えば、宇宙推進)、化学(例えば、化粧品、塗料、洗剤の混合物)、食品(例えば、飲料混合物、食品添加剤)、PVCまたは重合体エマルジョン化粧品、歯科用、健康または医薬接着剤および水処理(水添加剤)、オイル掘削流体(混合加圧水)が挙げられる。さらに、そのような直列混合デバイスを、典型的には、患者に対して相対的に遅い流量で投薬することを必要とする眼科用途に使用してもよく、混合および投薬を相対的に少量(例えば、約50マイクロリットル)で行なうようにしてもよい。下記で記載説明するように、本明細書に記載の混合機を1つまたは2つ使用するディスペンサーは、使用流量とは別に、相対的に良好な混合品質を達成した。この点で、本明細書中に記載の混合機を他の医療および非医療用途に使用し、使用可能な流量が相対的に高くても低くても十分に良好な混合品質を得ることが企図される。
【0090】
例えば、図48または図50A〜図50Cのような混合デバイスを用いて卵白と空気を混合し、卵白ムースを生成してもよい。そのような例では、容器AおよびBの一方に2.5mlの空気を入れ、他方に0.5mlの卵白を入れてもよい。あるいは、卵黄とオリーブオイル等の他の食品混合物に対して混合デバイスを用いてマヨネーズ混合物を作ったり、植物油および酢でビネグレットソースまたは他の食品混合物を作ってもよい。
【0091】
図51〜図52は、例えば、患者に対する点滴送達中に2つ以上の液体を混合するための直列導管装置または方法において使用可能なさらに他のコネクター1100を示す。図51では、2つの容器またはバッグ1102および1104は、患者に対する送達または点滴のために、各々個別に異なる流体を入れている。限定ではなく一例として、それらの流体は、デキストロースおよび重炭酸塩を含んでもよいが、他の流体も利用可能である。点滴は、重力、ポンプ、および/または他の従来法によって助力されてもよい。各容器は、コネクター1100に向かって下流へと延在するそれぞれの流路1106および1108と流体連通する。上記実施形態について先に説明したように、コネクター1100は、少なくとも1つ以上の混合デバイスを備えてもよく、図52では、一例として、2つの混合デバイス1110を示している。個別流路1106および1108は、コネクター1100の上流における選択位置1112で合流可能であることが好ましい。流体流は、混合デバイス1110を介してコネクター1100の下流に位置する流路1114に流れて患者に混合物を送達する。
【0092】
本明細書中に記載のデバイスおよびシステムのいずれかを、医療用途の無菌使い捨てキット等の使い捨てキットの一部として使用してもよい。このキットは、例えば、図1〜図8および図18〜図52に示す排出/回収デバイスまたは容器であって、図1〜図4または図18〜52に示すように混合機構成とともにパッケージ化されたデバイスまたは容器の1つ以上を備えていてもよい。上記混合機は、排出/回収デバイスと予め接続するか、またはそのようなデバイスに組み立て可能な個別にパッケージ化した物品もしくは独立した物品であってもよい。
【0093】
上述のデバイスおよびシステムを用いてフィブリン組織シーラントを調製する場合、高品質な複合フィブリン流体流の混合は、本質的に均質な品質(低トロンビン濃度で得たフィブリンの場合には白色であり、トロンビン濃度が相対的に高いフィブリンの場合には、外観がより透明である)およびフィブリノゲン成分がトロンビン成分と本質的に均質に重合化された場合に発生する最小量の透明な自由液体を特徴とする。従って、図53に示すように、フィブリンの混合品質は、フィブリンマトリックスの光吸収度をグラフで表す比濁測定によって推定することができる。図52では、横座標は、フィブリン等の排出成分の光学濃度(OD)に基づく濁度の変化を表しており、これは、分光光度計を用いて405ナノメートル(nm)で観測され、縦座標は、時間を分の単位で表す。フィブリン複合流体流の比濁測定については、本明細書において参考として援用するAndras Gruberらによる「Alteration of Fibrin Network by Activated Protein C」、Blood,Vol.83,No.9(1994年5月1日);2541〜2548ページにおいてさらに説明されている。
【0094】
図53に示すように、このような比濁測定を、例えば、4国際単位(IU)等の本質的に同等の濃度のフィブリノゲンおよびトロンビンで作ったフィブリンマトリックスに基づいて行ったが、各成分について他の濃度または異なる濃度の組み合わせを使用してもよい。混合は、基本的に、例えば、約15〜25℃の室温で行った。図53では、曲線番号1は、いずれの混合機(すなわち、混合デバイス)も有さない対照ディスペンサーを表す。曲線番号2〜4は、図1〜図4に示すような混合機36を含む3つのディスペンサーを表しており、当該混合機は、それぞれ、サンプル2(PE、Porvairにより販売される製品)(曲線番号2);Porvairにより販売されるような他のPP製品(曲線番号3);およびサンプル7(Porexにより販売される商品)(曲線番号4)の3つの異なる材料から構成される。図53のグラフは、基本的に、混合機の使用(曲線番号2〜4)と本質的に均質な混合に必要な時間の低減の相関関係を示す。図53では、曲線番号2、3、および4は、混合機を有するディスペンサーについては、一定した光学濃度を表すプラトーに達するまでに必要な時間、すなわち、本質的に均質な混合を達成するためにに必要な時間が、そのような混合機を有さない対照ディスペンサーが必要とする時間(>10分)と比較して少ない(2〜3分)ことを示す。
【0095】
図54では、図19〜図21に示し、先に説明したように、約4mmの間隔を空け、上流混合機136Aと遠位端124の間の長さLが約6mmである2つの混合機を表す比濁曲線により、フィブリンの混合品質を特徴付けて判定する。図53の比濁曲線は、上記で示した混合機の実施形態と同様に、複合フィブリン流体流の光吸収度が約2〜3分で本質的に均質な混合を示すプラトーに達することを示す。
【0096】
本発明はまた、温度に関わらず一定した粘度を有することが好ましい複合流体流を提供可能である。一般に、温度上昇により、フィブリノゲンおよびトロンビン等の成分の混合が改善される。フィブリノゲンの粘度は、温度に応じて約10〜20センチポアズ(cP)または約0.1〜0.2g/(cm*秒)となるトロンビンの粘度と大きく異なり(概ね一桁程度)、温度に応じて約150〜250センチポアズ(cP)または約1.5〜2.5g/(cm*秒)の間で変化することに留意されたい。本発明は、例えば、上述の実施形態を使用することにより、成分を一切加熱する必要なくほぼ室温で本質的に均質な混合を行なうことができる。
【0097】
フィブリン等の複合流体流の混合品質はまた、成分の混合前に、例えば、lohexol等の造影剤または放射線不透剤をトロンビン濃度に添加することにより特徴付けて判定される。例えば、50、100、200、300、400、500、および600mg/ml濃度のlohexolを個別に、75IU等の本質的に同様のトロンビン濃度に添加したが、lohexol等の造影剤または放射線不透剤の濃度は、約50〜1200mg/mL、好ましくは、約300〜400mg/mLの範囲としてもよい。各トロンビン/lohexolの組み合わせを、距離Vが約4mmで長さLが約6mmの2つの混合機を用いた構成等の混合機を用いてフィブリノゲン成分と混合してもよい。上記成分がそのような混合機を通過した後、lohexolとフィブリンサンプルを並べて配置することにより、白色で濁度が大きく示されている(「+」と示すか、または600mg/mlサンプルと並べて配置される)混合機を用いてlohexolと組み合わせずに得たフィブリンサンプルと比較して、より透過度の高い均質に混合されたフィブリン流動が得られる。上述のサンプルはまた、lohexolおよび混合機を用いない「対照」フィブリンサンプルとも比較した。ここに示す対照サンプルでは、不十分な混合に典型的な一定しない濁度、粘度、および色を有するフィブリン流が得られる。所望の用途および使用する複合流体流に応じて、他の造影剤または放射線不透剤を用いることが可能である。
【0098】
抗生物質、医薬品、またはホルモン等の他の添加剤を1つ以上の流体成分流に添加することも可能である。例えば、Kuros Biosurgery AG(Zurich,Switzerland)で製造されるような血小板由来増殖因子(PDGF)または副甲状腺ホルモン(PTH)等の添加剤を、フィブリノゲン等のフィブリン形成成分の1つに添加してもよい。骨形態形成タンパク質(BMP)を使用してもよい。限定ではなく一例として、他の薬剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、キトサン、トロンビンおよびトロンビン様分子の感光性阻害剤、凝集コラーゲン繊維(細胞外基質)を模倣するように設計された自己集合性両親媒性ペプチド、第13因子、架橋剤、顔料、繊維、重合体、共重合体、抗体、抗菌剤、構造の生体適合性を改善する薬剤、タンパク質、抗凝固剤、抗炎症性化合物、組織不適合性を低減する化合物、生体細胞、細胞増殖阻害剤、内皮細胞を刺激する薬剤、抗生物質、防腐剤、鎮痛薬、抗新生物薬、ポリペプチド、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、サイトカイン、細胞毒素、ミネラル、インターフェロン、ホルモン、多糖、遺伝素材、架橋フィブリン上での内皮細胞の増殖および/または癒着を促進または刺激するタンパク質、増殖因子、ヘパリン結合のための増殖因子、抗コレステロール物質、痛み止め、コラーゲン、骨芽細胞、医薬品等、およびそれらの混合物が挙げられる。そのような薬剤の更なる例としては、テトラサイクリン、シプロフロキサシン等の抗生物質を含む抗菌性組成物;抗筋原性組成物(antimycogenic compounds);ガングシクロビル(gangcyclovir)、ジドブジン、アマンチジン、ビダラビン、リバラビン(ribaravin)、トリフルリジン、アシクロビル、ジデオキシウリジン等、およびウイルス成分または遺伝子産物に対する抗体等の抗ウイルス剤;ダイフルカン、ケタコニゾール(ketaconizole)、ナイスタチン等の抗真菌剤;ならびにペンタミジン等の駆虫剤が挙げられるがこれらに限定されない。他の医薬品としては、さらに、アルファ−またはベータ−またはガンマ−インターフェロン、アルファ−またはベータ−腫瘍壊死因子、およびインターロイキン等の抗炎症薬が挙げられる。
【0099】
そのような1つまたは複数の薬剤を、フィブリノゲンおよび/またはトロンビン等の1つ以上の流体成分とそれぞれの成分容器において予め混合することが可能である。あるいは、そのような1つまたは複数の薬剤を液体として個別容器に収納するか、またはディスペンサーおよび/または混合機の使用中に1つ以上の成分と凍結乾燥混合することが可能である。1つ以上の薬剤を使用する上述の実施形態のいずれかのディスペンサーまたは混合機については、複合流体流によって、抗生物質、医薬品、ホルモン、または他の薬剤が本質的にシーラント全体に渡って十分に分散可能な十分に徹底的に混合したシーラント(例えば、フィブリンシーラント)を提供することが好ましい。そのような抗生物質、医薬品、ホルモン、または他の薬剤は、塗布作用表面に対して経時的な制御放出を行なって、例えば、術後または外科治療に役立てることができる。所望の用途および複合流体流に応じて各種の医薬品を使用することが企図される。
【0100】
本発明について、混合機の上流に少なくとも2つの個別の流体源を使用すると説明したが、そのような流体源の一方を省略し、1つ以上の混合デバイスの形成にそのような供給源を用いてもよい。例えば、フィブリン等の組織シーラントを形成するために、トロンビンを液体として浸すか、または固体として組み込んで1つ以上の混合機に吸着させ、凍結乾燥させてトロンビンの供給源を提供してもよい。そのような混合デバイスは、45mg/mLのフィブリノゲンを入れた単一のシリンジ等のフィブリノゲンの単一の供給源と接続するかまたは流動連通状態して、フィブリノゲンが混合機を通過させられる際に発生する混合により組織シーラントを生成することが可能である。他の湿潤または乾燥成分を1つ以上の混合機とともに使用したり、または1つより1つの混合機を使用する場合には、異なる成分を異なる混合機上で用いてもよい。
【0101】
混合品質を判定および特徴付ける他の方法としては、複合流体流の機械式試験が挙げられる。そのような試験としては、張力または圧縮力等の力に対する複合流体流の反応性試験が挙げられる。一般的に言えば、十分に徹底的に混合して重合体化した均質なフィブリン流は、混合、重合体化、および均質性が不十分なフィブリン流よりも耐張力および耐圧縮力が大きくすることができる。例えば、フィブリン流については、張力をフィブリン流の長さ方向に沿って与えて、流れが分離しないフィブリン伸張の範囲を判定してもよい。一例としては、距離Vが約0〜5mm、好ましくは、約3〜4mm、長さLが約2〜6mm、好ましくは、約5〜6mmの2つの混合機については、結果的に得られるフィブリン流によって、約100%〜130%のフィブリン伸張が得られるが、他の伸張も可能である。他のタイプの試験を使用して混合品質を判定してもよい。
【0102】
図55〜図60は、例えば、本発明の混合デバイスによるフィブリン混合物の混合品質を特徴付け、判定する他の方法、および好適と思われる方法を示す。架橋度は、混合前に、フィブリン混合物に含有される構成成分鎖の選択される量を、例えば、フィブリノゲンに含まれる同じ構成成分の選択される量に対して測定することが可能である。フィブリノゲンは、選択される量のアルファ(α)モノマー鎖、アルブミン、ベータ(β)鎖、およびガンマ(γ)鎖を含有する。トロンビンと混合してフィブリンを形成した後、当該フィブリンは、発生した架橋により、上記のような成分鎖を異なる量で含有する。典型的には、フィブリンは、重合化によってアルファ−アルファ対または重合体、およびガンマ−ガンマ対または重合体(またはガンマ二量体)鎖となったアルファモノマーおよびガンマモノマー鎖の含有量が低減している。限定ではなく一例として、架橋度または架橋率は、フィブリン混合物に存在するアルファモノマー鎖について、混合前にフィブリノゲンに存在するそのようなアルファモノマーの量と比較して低減した量を測定することができる。
【0103】
図55では、フィブリンの3つの流量について架橋率が示されており、グループ1は2ml/分、グループ2は4ml/分、グループ3は6ml/分である。各流量では、少なくとも1つのフィブリンサンプルを、以下のデバイス各々について個別に分析した:混合デバイスを有さない対照デバイス;ポリエチレン(PE)から構成され、厚さが1.5mm、遠位端から2mmの位置に配置された単一の混合デバイス(例えば、単一の混合機を有する針またはカニューレ上に遠位端を被覆させた排出ハウジング);およびポリエチレン(PE)から構成され、厚さが1.5mm、混合デバイス間の距離が約4mm、排出遠位端の端部と第1の混合デバイスの間の距離が約4mmである2台の混合デバイス。図55に示すように、非混合デバイスの架橋率は、約0〜2%の範囲である。単一の混合デバイスの架橋率は、約10〜20%、好ましくは、10〜16%の範囲である。2台の混合デバイスの架橋率は、約20〜30%、好ましくは、23〜36%の範囲である。図55に示すように、各流量において1つまたは2つの混合デバイスから得たフィブリンの架橋率は、使用流量に関わらず一般に一定している。
【0104】
アルファ(α)鎖の架橋度は、アルファ(α)鎖バンドの経時的な低減を、フィブリン−β鎖およびアルブミンを含むバンドと比較して測定することにより判定される。UREA/SDS電気泳動技術に基づいて、5%アクリルアミッド(acryl amid)分離ゲルを装填したDESAGA電気泳動システム(Sarstedt−Gruppe)で電気泳動法を行い、異なるフィブリノゲン鎖を特定した。フィブリノゲンおよびトロンビン成分を1:1の比で混合した後、その混合物を37Cで培養した。記載するサンプルの各々に使用したフィブリノゲン成分は、約3IUの第13因子(FXIII)を含有していたが、他の濃度のFXIIIを使用して異なる架橋率を得ることも考えられる。一般に、架橋は、FXIIIの量の増加とともに増大する。0〜120分の培養時間の後、変性剤サンプル緩衝剤を添加して反応を停止し、70Cで5分間加熱した。凝固物を一晩留置してサンプル緩衝剤中において室温で溶解させた。それらのサンプルを5%ポリアクリルアミド/尿素ゲル上に乗せた。図56に示すように、このゲルをCoomassie Brilliant Blue R250で着色し、Furlanの方法に従って脱色した。次いで、図55〜図60のサンプルにおけるアルファ(α)鎖、ベータ(β)鎖、ガンマ(γ)鎖、フィブロネクチンおよびアルブミンを濃度測定により判定し、図57、図58、図59、および図60によって表される図面上に描画した。
【0105】
図56では、上記の電気泳動手順に従って準備した12レーンの水平バンドが示されており、そのような手順の品質管理のために第12レーンにはマーカーまたは基準線が含まれている。図56では、「ゼロサンプル1」および「ゼロサンプル2」が、0培養時間、つまり、トロンビンとの架橋が発生する前のフィブリノゲン中の構成成分の存在を分子量で示す。サンプル10〜18は、図55のグループ2に表される異なるデバイスによる120分の培養時間が経過した後にフィブリン混合物中に存在する構成成分を示す。より詳細には、サンプル10〜12は、混合デバイスを使用せずに得た結果に対応し(図55の4ml/分における「対照」に対応)、サンプル13〜15は、1つの混合デバイスを使用して得た結果を示し(図55の4ml/分における「ディスク1」に対応)、サンプル16〜18は、2つの混合デバイスを使用して得た結果を示す(図55の4ml/分の「ディスク2」に対応)。図56に示すように、「ゼロサンプル」およびサンプル10〜18の各々は、各サンプルについて示されるそれぞれのバンドによって示されるように、選択される量のアルファ(α)モノマー鎖、複合アルブミン+ベータ(β)鎖、およびガンマ(γ)鎖を含有する。図56ではまた、サンプル10〜18の各々について、サンプル10〜18の上側に示すようにアルファ(α)重合体鎖が存在し、ガンマ(γ)重合体(またはガンマ二量体)鎖がαモノマー鎖の上に存在する。このような鎖は、典型的には、フィブリノゲンおよびトロンビン成分の混合によって架橋が発生した後に存在するため、図56に示す「ゼロサンプル」では、一般には存在しないか、またはごく僅かである。典型的には、より暗いバンドは、より多くの量の構成鎖を示す。図56では、少なくとも1より多くの混合デバイスを使用するサンプル13〜18は、図55に示すより大きな架橋値に対応するより暗いアルファ(α)重合体およびガンマ(γ)重合体(またはガンマ二量体)鎖を有する。
【0106】
図57を見ると、グラフに沿って1、2、および3と表示された3つのピークを含む「ゼロサンプル」に含有される構成鎖の相対量が示されている。これらのピークは、それぞれ、ピーク1のガンマ(γ)モノマー鎖の量、ピーク2のアルブミン+ベータ(β)鎖の量、およびピーク3のアルファ(α)鎖の量に対応する。存在する場合には、ガンマ重合体またはガンマ二量体鎖の量がピーク4の表示の上に表され、α重合体鎖の量がピーク5の表示の上に示される(トロンビンとの混合がまだ発生していないため、測定可能なピークを見ることが可能であったとしても僅かである)。図57に表すデータに基づいて、下記のように各ピークのそれぞれの下の面積を積分することにより、アルファ(α)モノマー鎖とベータ(β)モノマー鎖およびアルブミンの相対量を計算することができる:
【0107】
【表4】
図58〜図60は、サンプル12(図56の対照サンプルの1つ)、サンプル13(単一の混合デバイスを用いたサンプルの1つ)、およびサンプル17(2つの混合デバイスを用いたサンプルの1つ)に含有される選択構成成分の相対量、ならびにそれら各々のピーク1、2、3、および4(それぞれ、ピーク1のガンマモノマー鎖の量、ピーク2のアルブミン+ベータ(β)鎖の量、およびピーク3のアルファ(α)モノマー鎖の量、ならびにピーク4のガンマ重合体またはガンマ二量体鎖の量に対応し、フィブリノゲンおよびトロンビンの混合による架橋反応を表す)を示している。図58〜図60のそれぞれのピーク下の面積の積分に基づいて、上記のような鎖の相対量を次のように計算する。
【0108】
【表5】
架橋度をQ値として表してもよい:
Q=Xn/X1、
ここで、X1は、培養時間ゼロ(0)(時間)、すなわち、トロンビンとの混合前のフィブリノゲンについて、表4のアルファα鎖の合計(ピーク3の合計)とアルブミン+β鎖の合計(ピーク2の合計)の比または商を表し;
Xnは、培養時間n、すなわち、トロンビンとの混合後のフィブリン混合物について、表5のアルファα鎖の合計(ピーク3の合計)とアルブミン+β鎖の合計(ピーク2の合計)の比または商を表す。
【0109】
上記サンプルに基づいて、推定架橋値またはQ値を以下のように表してもよい:
【0110】
【表6】
上記例に基づいて、X1は、「ゼロサンプル」、すなわち、混合前のフィブリノゲンから、X1=アルファ(α)鎖/アルブミン+β鎖と表すことができる。例えば、X1は、上記のように、約26.619/84.771、すなわち、約0.314の値を有し得る。Xnは、上記に示すように、サンプル12、13、または17のフィブリン混合物のいずれか1つについて、Xn=アルファ(α)鎖/アルブミン+β鎖と表すことができ、例えば、サンプル17では、Xnは、約19.444/77.378、すなわち、約0.251の値を有し得る。上記例で使用する培養時間は約120分であり、37℃の温度で観察したが、他の培養時間および温度を使用してもよい。架橋率は、さらに、上記表でも示されるパーセンテージで表すことができ、以下のように計算することができる:
架橋率[%]:100×(1−Q)
上記表6に示すように、アルファ鎖の架橋率によって判定される混合品質は、少なくとも1つの混合機を用いるデバイスにおいて改善され、2つの混合機を用いる場合にはさらに改善された。表6に示すように、報告された架橋%は概ね11%であり、典型的には、概ね10〜16%の範囲内であった。2つの混合機を用いるデバイスにおける架橋%は概ね21%であり、約20%〜30%の範囲内であった。
【0111】
図61に示されたデータは、図19〜図21に示すような2つの混合機を用いたデバイスで形成されたフィブリンの混合品質に対する温度の影響を示す。例えば、上記混合機間の距離を4mmとし、断片yから第1の混合機までの距離を4mmとし、厚さを1.5mmとしてもよい。このデータは、上述のように、混合機を有さない対照デバイス各々について、4℃、18℃、22℃、および37℃の各温度におけるフィブリン混合物の架橋率を、混合デバイスを用いる場合と比較して表している。
【0112】
図61に表すように、混合デバイスによって得たフィブリンの架橋%は約24〜33%の範囲であり、最大弁(highest valve)は4℃(フィブリノゲンが約500〜600cPの推定粘度を有する温度)で得られた。18℃および22℃では、フィブリノゲンの粘度は、約160cP〜120cPの範囲であり、37℃では、フィブリノゲンの粘度は、約70〜80cPの範囲であり、トロンビンは約5cPである。図示するように、上述の混合デバイスを用いた場合の架橋%は、上記各温度では、より低い4〜22℃の温度で架橋不良となる対照デバイスと比較して、相対的に一定している。
【0113】
表6に表すように、混合品質は、混合デバイスを用いた場合、架橋の値が21%となる37℃まで温度上昇する必要がある対照デバイスとは異なり、温度に依存しない。一例として、表6の混合デバイスを用いた場合のフィブリン混合物は、約18℃〜22℃の典型的な手術室温度を超える加熱または加温を必要としないが、これは、そのような温度範囲では27%〜33の架橋%が得られるためである。さらに、上述した架橋%は、一般に、医療分野に適用されるようなガンマ線照射または滅菌にによる影響を受けることはない。
【0114】
他の方法を用いて架橋度を測定してもよく、例えば、他の構成鎖の増減を測定してもよい。限定ではなく一例として、上記に加えてまたはその代わりに、ガンマ(γ)重合体(またはガンマ(γ)二量体)鎖およびアルファ(α)重合体鎖の一方または両方の増加を測定することにより架橋度を測定することもできるが、これは、いずれの成分も、一般に、架橋度の増加とともに増加し、フィブリノゲンおよびトロンビンの混合を示すことができるためである。架橋度を測定する他の方法は、架橋度の増加とともに減少するガンマ(γ)モノマー鎖の減少を測定するものであってもよい。
【0115】
図62〜図63は、例えば、フィブリン混合物について、本発明の混合デバイスによる混合品質を推定するさらに他の方法を示す。例えば、混合度は、フィブリノゲンの光学特性およびトロンビンの光学特性を、フィブリン混合物中に存在するそのような光学特性と比較して観測することにより判定してもよい。図62〜図63に示すように、そのような光学特性の1つとしては、流体流路内の複合フィブリノゲンおよびトロンビン流体流から、それらの成分の個別流を合流させた後に発せされる蛍光度が挙げられる。
【0116】
図62は、混合デバイスを有さない装置について、トロンビンおよびフィブリノゲンの複合流体流ならびに約0〜250の範囲の相対階調レベルに関して、(導管区間高さ1.2〜1.5mmの間の2本の黒線間に表される)導管断面における蛍光分布を示す。対照的に、図63は、混合デバイス(例えば、先に述べた混合デバイスのいずれかを用いる)の下流で観察される同様の導管区間における蛍光分布を示す。図62では、1、3、および20秒の流量について蛍光分布を評価している。約220〜250の相対的に高い蛍光分布は、一般に、Y軸に沿った導管区間の一方の側面において約0〜1.2の間に集中するが、これは、一般に蛍光度が高いトロンビンが存在することを意味する。相対的に低い蛍光分布は、当該導管区間の反対側において約0〜−1.5の間に示されるが、これは、一般に蛍光度が低いフィブリノゲンが存在することを意味する。図62に表すように、導管区間が一方の側面に沿って蛍光分布が高くなり、同じ導管区間の反対側で蛍光分布が低くなることは、一般に、トロンビンとフィブリノゲン流体流の混合が相対的にほとんど発生しないことを示している。
【0117】
対照的に、図63は、混合デバイスの下流におけるフィブリノゲンおよびトロンビンの複合流の蛍光分布を示しており、分布曲線は、それぞれ、1、3、および20秒について示されている。図63から分かるように、各曲線は、一般に、導管区間高さの約1.2〜−1.5mmの範囲において導管区間全体に渡って十分に分布している。例えば、上記成分の他の光学または物理的特徴等の混合品質を他の方法を用いて測定することも可能である。
【0118】
上記説明から分かるように、本発明は、添付図面の特定の構造に限定されない異なる局面をいくつか有している。これらの概念または構造に変更を加え、他の構造に組み込むことにより、付属する請求の範囲に規定するような本発明から逸脱することなく、医療または他の分野に組織シーラントを適用するかまたは他の適用を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、本開示において説明する組織シーラントディスペンサーの一実施形態の部分断面図である。
【図2】図2は、図1のディスペンサーの遠位端部分の拡大断面図であり、ディスペンサーの各部を省略して示している。
【図3】図3は、図2の遠位端部分の拡大遠位端図である。
【図4】図4は、図2に示す遠位端部分の斜視図である。
【図5】図5は、混合部を省略した図1と類似する代替的なディスペンサーの上面図であり、ディスペンサーの遠位端部分で画定される流体流路を示すために各部を断面で示している。
【図6】図6は、混合部を省略した図1のディスペンサーの上面図であり、ディスペンサーの遠位端部分で画定される流体流路を示すために各部を断面で示している。
【図7】図7は、混合部を省略した図1と類似する他の代替的なディスペンサーの上面図であり、ディスペンサーの遠位端部分で画定される流体流路を示すために各部を断面で示している。
【図8】図8は、図5のディスペンサーの遠位端図である。
【図9】図9は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約30倍に拡大した横断面を示す走査電子写真である。
【図10】図10は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約100倍に拡大した横断面を示す走査電子写真である。
【図11】図11は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約350倍に拡大した横断面を示す走査電子写真である。
【図12】図12は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約200倍に拡大した横断面を示す走査電子写真である。
【図13】図13は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約30倍に拡大した縦断面を示す走査電子写真である。
【図14】図14は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約100倍に拡大した縦断面を示す走査電子写真である。
【図15】図15は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約250倍に拡大した縦断面を示す走査電子写真である。
【図16】図16は、概ね8.0ミリメートル(mm)の幅、および約1.0mmの厚さを有する焼結ポリプロピレン材料を約350倍に拡大した縦断面を示す走査電子写真である。
【図17】図17は、水銀孔隙率試験を行って得た焼結ポリプロピレンからなる選択材料の孔隙率測定値を示す。
【図18】図18は、改変遠位端部分を使用する組織シーラントディスペンサーの部分断面図である。
【図19】図19は、本開示において説明する組織シーラントディスペンサーの他の実施形態の部分断面図である。
【図20】図20は、図19に示すディスペンサーの遠位部分の拡大断面図である。
【図21】図21は、混合部分を省略した図20の線21−21に沿った断面である。
【図22】図22は、図2と類似するが、2つの混合機間に間隔がない拡大側面図である。
【図23】図23は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図24】図24は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図25】図25は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図26】図26は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図27】図27は、図2と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を有する異なる混合機構成を示す拡大側面図である。
【図28】図28は、図20と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を用いた構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図29】図29は、図20と類似するが、混合機間の間隔が相対的に異なる2つの混合機を用いた構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図30】図30は、図20と類似するが、混合機間に間隔がない1つ、2つ、または3つの混合機を有する混合器構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図31】図31は、図20と類似するが、混合機間に間隔がない1つ、2つ、または3つの混合機を有する混合器構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図32】図32は、図20と類似するが、混合機間に間隔がない1つ、2つ、または3つの混合機を有する混合器構成を有するいくつかの異なるディスペンサー先端部を示す側面図である。
【図33】図33は、本開示において説明するディスペンサーの他の実施形態の部分断面図である。
【図34】図34は、本開示において説明する組織シーラントディスペンサーのさらなる実施形態の部分断面図である。
【図35】図35は、本開示において説明する組織シーラントディスペンサーのまたさらなる実施形態の上面図である。
【図36】図36は、図35の線36−36に沿った断面である。
【図37】図37は、本開示において説明する単一の容器を備えた排出デバイスに接続された単一の混合デバイスを有する組織シーラントディスペンサーの改変実施形態の上面図である。
【図38】図38は、図37の組織シーラントディスペンサーの断面である。
【図39】図39は、図37のディスペンサーの一部の拡大断面であり、他の部分を省略して示している。
【図40】図40は、図39のディスペンサーの一部の側面図であり、一部をさらに省略して示している。
【図41】図41は、排出装置から取り外した状態で示された改変混合デバイスの側面図である。
【図42】図42は、図41の線42−42に沿った断面である。
【図43】図43は、排出装置から取り外した状態で示された他の混合デバイスの側面図である。
【図44】図44は、図43の線44−44に沿った断面である。
【図45】図45は、図44のディスペンサーの一部の側面図であり、一部をさらに省略して示している。
【図46】図46は、図45の右端部の図である。
【図47】図47は、図39〜図46に示す混合デバイスのうちの1つによって接続された2つの排出デバイスを含む構成の上面図である。
【図48】図48は、図39〜図46に示す混合デバイスのうちの1つによって接続された2つの排出デバイスを含む代替構成の上面図である。
【図49】図49は、異なる混合デバイスによって接続された2つの排出デバイスをさらに他の構成の上面図である。
【図50】図50は、各種用途のために複合流体流を受け取るまたは収納する貯水槽をさらに含む図48と類似する改変実施形態の概略図である。
【図51】図51は、混合デバイスを使用する点滴システムを示す本開示において説明するさらなる実施形態の平面図である。
【図52】図52は、図50のシステムの一部の拡大断面であり、他の部分を省略して示している。
【図53】図53は、異なる排出装置を使用する異なるフィブリンマトリックスの比濁測定をグラフで示す。
【図54】図54は、異なる排出装置を使用する異なるフィブリンマトリックスの比濁測定をグラフで示す。
【図55】図55は、それぞれが異なる流量(2ml/分、4ml/分、および6ml/分)を使用し、3つの異なる排出デバイスに基づく結果で構成される3つの異なるグループについて、異なるフィブリン混合物中のアルファ(α)モノマー鎖の架橋%を示す。
【図56】図56は、フィブリノゲンまたはフィブリン混合物からなる10個の異なるサンプルについて、異なる構成成分の有無をそれらの成分の分子量に従って特定する電気泳動パターンを示す。
【図57】図57は、各々が異なる排出装置を用いるフィブリノゲンおよび3つの異なるフィブリン混合物からなるそれぞれのサンプル中に存在する構成成分の量を示すグラフである。
【図58】図58は、各々が異なる排出装置を用いるフィブリノゲンおよび3つの異なるフィブリン混合物からなるそれぞれのサンプル中に存在する構成成分の量を示すグラフである。
【図59】図59は、各々が異なる排出装置を用いるフィブリノゲンおよび3つの異なるフィブリン混合物からなるそれぞれのサンプル中に存在する構成成分の量を示すグラフである。
【図60】図60は、各々が異なる排出装置を用いるフィブリノゲンおよび3つの異なるフィブリン混合物からなるそれぞれのサンプル中に存在する構成成分の量を示すグラフである。
【図61】図61は、異なる温度(4℃、18℃、22℃、37℃)における異なるフィブリン混合物中のアルファ(α)モノマー鎖の架橋%を示す。
【図62】図62〜図63は、それぞれ、混合機を有さない装置(図62)および少なくとも1つの混合機を有する装置(図63)のフィブリン混合物について、導管の断面に沿った蛍光度を示すグラフである。
【図63】図62〜図63は、それぞれ、混合機を有さない装置(図62)および少なくとも1つの混合機を有する装置(図63)のフィブリン混合物について、導管の断面に沿った蛍光度を示すグラフである。
【図64】図64は、ダーシーの法則に基づいて、浸透性のK値、圧力値、および粘度値の相互関係のプロットを、残りの変数を一定に維持した状態で示すグラフである。
【図65】図65は、ダーシーの法則に基づいて、浸透性のK値、圧力値、および粘度値の相互関係のプロットを、残りの変数を一定に維持した状態で示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を混合する組織シーラントデバイスであって、該デバイスは、
該少なくとも2つの個別流の一方と連通するように適合された第1の流路と、
該少なくとも2つの個別流の他方と連通するように適合された第2の流路と、
該第1および第2の流路の各々と連通し、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備える混合機であって、平均流孔径、厚さ、および孔隙率から選択される1つ以上を含む該複合流体流の成分流を十分に混合するための物理的特徴を有する混合機と、
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記混合機の平均流孔径と、厚さと、孔隙率の積は、約0.016〜0.055の範囲内である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記混合機は、ダーシーの法則:
K=Q*η*L/(S*ΔP)
[式中、Q=前記複合流体流の流量、
η=前記2つの成分のより粘度が高い成分の粘度、
L=該混合機の厚さ、
S=該混合機の表面積、
ΔP=該混合機の上流および下流位置間の圧力変化]
により測定される約5〜17の範囲内のK値を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複合流体流は、選択される量のフィブリノゲンおよびトロンビンのフィブリン混合物であり、該フィブリノゲンおよびフィブリン混合物の各々は、少なくとも1つのアルファモノマー鎖、アルブミン、およびベータモノマー鎖を含み、該フィブリン混合物は、Q値で測定したXn/X1(ここで、X1およびXnは各々、それぞれ、該フィブリノゲンおよび該混合物について、該アルファ鎖とアルブミンおよび該ベータ鎖の総量の比を表す)の架橋率を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記複合流体流は、それぞれ、第1および第2の光学特性を有する選択される量のフィブリノゲンおよびトロンビンのフィブリン混合物であり、該複合流体流により、前記第1および第2の成分が十分に混合されて該フィブリン混合物を形成するときを示す比較的均質な光学特性が得られる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1および第2の光学特性の一方は蛍光性である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
直列に配置された前記混合機を少なくとも2つ備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記混合機は、互いに間隔を空けた関係にある、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記混合機は、前記少なくとも2つの個別流が最初に組み合わされる場所の下流にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記混合機は、ポリプロピレンまたはポリエチレンから選択される材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を組み合わせるシステムであって、該デバイスは、
該少なくとも2つの個別流の一方と流体連通する第1の流路と、
該少なくとも2つの個別流の他方と流体連通する第2の流路と、
該第1および第2の流路と、それらの下流において流体連通し、該少なくとも2つの個別流を選択位置で合流させる第3の流路と、
該選択位置の下流であり、かつその近傍の少なくとも1つの混合機であって、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備える、混合機と
該混合機の下流に位置し該複合流体流の流出を可能にする出口と、
を備える、システム。
【請求項12】
前記2つの成分の少なくとも一方は液体を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記2つの成分の少なくとも一方は固体を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記2つの成分の少なくとも一方は気体を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記2つの成分は、ディーゼル、オイル、ガソリン、水、および空気から選択される少なくとも2つを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記2つの成分は卵白および空気を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記2つの成分はフィブリノゲンおよびトロンビンを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
直列に配置された前記混合機を少なくとも2つ備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分を混合するシステムであって、該デバイスは、
第1および第2の側面を有し、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた少なくとも1つの混合機と、
該混合機の該第1の側面と流体連通し、第1の成分の供給源と連通するように適合された第1のポートと、
該混合機の該第2の側面と流体連通し、第2の成分の供給源と連通するように適合された第2のポートと、を備え、
各ポートは、該混合機を介して他方のポートと流体連通し、該第1および第2の成分の一方を、該混合機の該第1および第2の側面のうち選択した一方から他方の側面に流し、該第1および第2の成分の両方を該混合機を介して他方の側面から還流させるようにした、システム。
【請求項20】
前記複合流体流を回収する容器をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【請求項1】
混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を混合する組織シーラントデバイスであって、該デバイスは、
該少なくとも2つの個別流の一方と連通するように適合された第1の流路と、
該少なくとも2つの個別流の他方と連通するように適合された第2の流路と、
該第1および第2の流路の各々と連通し、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備える混合機であって、平均流孔径、厚さ、および孔隙率から選択される1つ以上を含む該複合流体流の成分流を十分に混合するための物理的特徴を有する混合機と、
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記混合機の平均流孔径と、厚さと、孔隙率の積は、約0.016〜0.055の範囲内である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記混合機は、ダーシーの法則:
K=Q*η*L/(S*ΔP)
[式中、Q=前記複合流体流の流量、
η=前記2つの成分のより粘度が高い成分の粘度、
L=該混合機の厚さ、
S=該混合機の表面積、
ΔP=該混合機の上流および下流位置間の圧力変化]
により測定される約5〜17の範囲内のK値を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記複合流体流は、選択される量のフィブリノゲンおよびトロンビンのフィブリン混合物であり、該フィブリノゲンおよびフィブリン混合物の各々は、少なくとも1つのアルファモノマー鎖、アルブミン、およびベータモノマー鎖を含み、該フィブリン混合物は、Q値で測定したXn/X1(ここで、X1およびXnは各々、それぞれ、該フィブリノゲンおよび該混合物について、該アルファ鎖とアルブミンおよび該ベータ鎖の総量の比を表す)の架橋率を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記複合流体流は、それぞれ、第1および第2の光学特性を有する選択される量のフィブリノゲンおよびトロンビンのフィブリン混合物であり、該複合流体流により、前記第1および第2の成分が十分に混合されて該フィブリン混合物を形成するときを示す比較的均質な光学特性が得られる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1および第2の光学特性の一方は蛍光性である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
直列に配置された前記混合機を少なくとも2つ備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記混合機は、互いに間隔を空けた関係にある、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記混合機は、前記少なくとも2つの個別流が最初に組み合わされる場所の下流にある、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記混合機は、ポリプロピレンまたはポリエチレンから選択される材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分流を組み合わせるシステムであって、該デバイスは、
該少なくとも2つの個別流の一方と流体連通する第1の流路と、
該少なくとも2つの個別流の他方と流体連通する第2の流路と、
該第1および第2の流路と、それらの下流において流体連通し、該少なくとも2つの個別流を選択位置で合流させる第3の流路と、
該選択位置の下流であり、かつその近傍の少なくとも1つの混合機であって、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備える、混合機と
該混合機の下流に位置し該複合流体流の流出を可能にする出口と、
を備える、システム。
【請求項12】
前記2つの成分の少なくとも一方は液体を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記2つの成分の少なくとも一方は固体を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記2つの成分の少なくとも一方は気体を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記2つの成分は、ディーゼル、オイル、ガソリン、水、および空気から選択される少なくとも2つを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記2つの成分は卵白および空気を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記2つの成分はフィブリノゲンおよびトロンビンを含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
直列に配置された前記混合機を少なくとも2つ備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
混合時に複合流体流を形成する少なくとも2つの個別成分を混合するシステムであって、該デバイスは、
第1および第2の側面を有し、その内部を通る複数の蛇行相互接続通路を画定する3次元格子を備えた少なくとも1つの混合機と、
該混合機の該第1の側面と流体連通し、第1の成分の供給源と連通するように適合された第1のポートと、
該混合機の該第2の側面と流体連通し、第2の成分の供給源と連通するように適合された第2のポートと、を備え、
各ポートは、該混合機を介して他方のポートと流体連通し、該第1および第2の成分の一方を、該混合機の該第1および第2の側面のうち選択した一方から他方の側面に流し、該第1および第2の成分の両方を該混合機を介して他方の側面から還流させるようにした、システム。
【請求項20】
前記複合流体流を回収する容器をさらに備える、請求項19に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50A】
【図50B】
【図50C】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
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【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50A】
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【図50C】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【公表番号】特表2009−523576(P2009−523576A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551514(P2008−551514)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/060639
【国際公開番号】WO2007/084919
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/060639
【国際公開番号】WO2007/084919
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】
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