説明

混合の改善された分析方法

本発明は、溶液中の1種以上の化学種とフローセルの表面に固定化された標的との間の液体環境中での相互作用を特徴付ける方法である。この方法は、(a)フローセルの表面を活性化し、標的を表面に固定化する段階と、(b)液体の流れの中に化学種の1種以上を供給する段階と、(c)固定化された標的を含むフローセルの表面に、化学種の1種以上を含有する液体の流れを通す段階と、(d)表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて1種以上の化学種と標的との間の相互作用の結果を検出する段階とを含む。この方法の改良は、段階(a)又は段階(b)の少なくともいずれかにおいて、2種以上の液体溶液をインライン混合して混合溶液を生じさせておいてから、該混合溶液をフローセルの表面に通すことを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体環境中の分子間相互作用特性を改善する方法及びシステムに関する。より詳細には、本発明は、SPR法の前に溶液をインライン混合する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面プラズモン共鳴(SPR)は基板と標的との間のアフィニティーを研究するための強力な技術である。SPRの原理を利用する機器は、表面における質量濃度の変更から生じる、センサーチップに隣り合う媒体の屈折率の変化を測定する。
【0003】
SPRは、抗体と抗原(例えば、タンパク質)の間の相互作用を検出するために広く使用される。通常、分析されるタンパク質に向けられた抗体は、アミンカップリング法を用いてセンサーチップに固定化される。センサーチップは、EDC/NHS混合物を用いてまず活性化され、このEDC/NHS混合物は、不安定であり、したがって混合後に比較的素早くセンサーチップに送られなければならない。高度な液体処理方法を欠く機器では、EDCとNHSの混合は、アッセイの直前に作業者によって現在なされている。このことは、時間による活動性の減少をもたらす。
【0004】
SPRの別の用途は、免疫原性アッセイである。薬物治療は、場合によっては薬物に対する抗体反応を引き起こし、これにより薬物効果が阻止されることになる。したがって、患者の血清試料中のこれらの抗体の存在を分析することが重要である。分析の前に、そこで試料は、薬物及び抗体を分離状態で保つように酸性化されなければならない。次いで試料は、固定化された薬物と共にセンサーチップに送られる。しかし、酸性試料は、まず、センサー表面に結合できるように中和されなければならない。抗体が溶液中で薬物に再結合し始めるので、試料は、中和後に比較的素早くセンサー表面を通らなければならない。中和段階は、アッセイの直前に現在日常的に作業者によってなされている。これによって時間が経過することになり、それによってアッセイの結果の正確さの低下をもたらす。
【0005】
SPRのさらに別の用途は、ある特定の試料の濃度分析である。抗体に基づく薬物は、とても高濃度(mg/ml域)に純化及び調製され、これらの調製品は、SPR法を実行する前にとても高い程度まで希釈されなければならない。典型的な用途は、クロマトグラフィからの試料の小部分の分析であり、ただしpH又はイオン強度が極端であり得ると同時に、濃度は、通常のアッセイにとって高くなりすぎ得る。したがって、ある特定の試料に対してアッセイのダイナミックレンジを増大させ、一部の用途では、pH及びイオン強度の観点で試料マトリックスを制御することも一般に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004109295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SPR技術及び他の生物学的分析機器は、通常、層流条件において働くマイクロ流体システムを使用する。層流において、混合は複雑なフローチャネル特徴又はアクティブ混合要素を必要とするので、混合は一般に問題がある。したがって、フローセルの用途にもよく適している素早くて実行しやすい混合方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、SPR法のための改善した混合のためのシステム及び方法に関する。したがって、第1の態様では、本発明は、溶液中の1種以上の化学種とフローセルの表面に固定化された標的との間の液体環境中での相互作用を特徴付ける方法である。この方法は、(a)フローセルの表面を活性化し、標的を表面に固定化する段階と、(b)液体の流れの中に化学種の1種以上を供給する段階と、(c)固定化された標的を含むフローセルの表面に、化学種の1種以上を含有する液体の流れを通す段階と、(d)表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて1種以上の化学種と標的との間の相互作用の結果を検出する段階とを含む。この方法の改良は、段階(a)又は段階(b)の少なくともいずれかにおいて、2種以上の液体溶液をインライン混合して混合溶液を生じさせておいてから、該混合溶液をフローセルの表面に通すことを含む。
【0009】
一実施形態では、インライン混合は、(1)統合流体カートリッジ(IFC)内にマルチチャンバー式フローセルを配置する段階と、(2)複合針及びチューブブロックを統合流体カートリッジに接続する段階であって、管路が、各針及び接続したチューブ、IFCのチャネル、並びにフローセルチャンバーの間に形成されている、段階と、(3)ポンプ手段を用いて針の中に第1の液体溶液を吸引する段階と、(4)気泡を導入せずに、第2の液体溶液を吸引する段階と、(5)段階(3)及び段階(4)を適宜繰り返す段階とを含み、この場合第1及び第2の液体溶液の混合は、混合溶液がフローセルの表面に届く前に管路内で生じる。好ましくは、これらの段階は、コンピュータプログラムによって制御される。
【0010】
第2の態様では、本発明は、高濃縮された試料の化学種を分析する方法であって、化学種とフローセルの表面に固定化された標的との間の相互作用を特徴付けるためのSPR法に試料を付すことを含む方法を提供する。この方法は、(a)フローセルの表面を活性化し、標的を表面に固定化する段階と、(b)液体の流れの中に適切な濃度の化学種を供給する段階と、(c)固定化された標的を含むフローセルの表面に、化学種を含有する液体の流れを通す段階と、(d)表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて化学種と標的との間の相互作用の結果を検出する段階とを含む。この方法の改良は、コンピュータの制御下で高濃縮された試料の化学種と緩衝液をインライン混合して、段階(b)のために混合溶液を生じさせることを含む。インライン混合は、(1)統合流体カートリッジ(IFC)内にマルチチャンバー式フローセルを配置する段階と、(2)複合針及びチューブブロックを統合流体カートリッジに接続する段階であって、複合針及びチューブブロック内の針が、標準的なマルチウェルプレート内の別個の試薬ウェル、例えば96ウェルプレート内のウェルなどに各針が届くことができるように間隔をおいて配置され、さらに、管路が、各針及び接続したチューブ、IFCのチャネル、ならびフローセルチャンバーの間に形成されている、段階と、(3)ポンプ手段を用いて針の中に緩衝溶液を吸引する段階と、(4)気泡を導入せずに、所望の量の高濃縮された試料を吸引する段階と、(5)気泡を導入せずに、第2の容積の緩衝溶液を吸引する段階とを含む。高濃縮された試料の希釈は、試料がフローセルの表面に届く前に管路内で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるインライン混合のための注入及びフローシステムの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態による方法のための注入及びフローシステムの変形例を示す図である。オートサンプラー台が、フローシステムの一部として示されている。
【図3】短注入の原理の概略図である。実際には2種類の試薬がセンサーチップに到着する前に混ぜ合わされている。
【図4】それぞれ(A)10μl/分及び(B)60μl/分であり、それぞれ2μlセグメントを用いたランニング緩衝液(HBS EP+)と水のインライン混合についてのセンサーグラムである。
【図5】いくらかのセグメント容積及び流量についてそれぞれ、平均混合レベルからの偏差を示すグラフである。
【図6】異なる流量及びセグメント容積でインライン混合を用いる混合能力を示すグラフである。
【図7】アミンカップリング法を用いてヒト血清アルブミンを固定化する場合のEDC及びNHSのインライン混合の結果を示すグラフであり、図7Aは、EDC及びNHSのインライン混合を含む8つの並列なフローセルのうちの4つで得られた結果のグラフであり、図7BはEDC及びNHSの手動混合を含んだ他の4つの並列なフローセルで得られた結果を示すグラフである。
【図8】ヒト血清アルブミンの固定化レベルに関する、図7に説明するようなEDC及びNHSの手動混合とインライン混合の間の比較図である。
【図9】一例による、短注入応答が試料容積とよく相関していることを示すグラフである。
【図10】一例による、バルク応答を示すBiatest溶液を用いた2つの注入、並びにプロテインAを固定化したセンサーチップに関するゾレア抗体を用いた2つの注入の重ね合わせグラフである。
【図11】ゾレア抗体結合の複製からの平均応答(A)及び標準偏差(B)を示すグラフである。種々の試料濃度1〜1000μg/ml、混合流量10〜60μl/分、接触時間フロー25〜100μl/分、及び注入容積1〜4μl、1000μg/mlでの短注入についてのゾレア抗体の結合レベルを示す。
【図12】最低濃度で精度が低いが、短注入によるゾレア抗体の種々の濃度の結合レベルを示すグラフである。
【図13】種々の濃度及び試料容積でのゾレア抗体の短インジェクト後の応答の精度のグラフである。各主要素は、2つの測定値から計算される。
【図14】超短注入が0.25μlの試料注入から線形応答を与え、40倍以上の希釈をもたらす(図14)ことを示すグラフである。点線は99%の信頼区間の限界を表す。
【図15A−B】ポンプの変動についての試験の結果を示すグラフである。10μl/分及び20μl/分の両方についてのボトム流量とトップ流量の間で約1μlの頻度で、±4.5μl/分の流量変化が、使用したポンプで確認された。
【図16】統合インライン混合の原理の概略図である。(A)セグメントの吸引、(B)混合ウェルへの試料の供給、(C)混合ウェルからの試料の吸引及び混合試料の注入である。
【図17】緩衝液及び15%の糖それぞれの統合インライン混合についてのセンサーグラムを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
本願では、「化学種」は、分子、化合物、物質、抗体、抗原、細胞、細胞断片、又は液体環境中に用意され得る任意の他の部分などの任意の実在しているものである。検出可能であるために、好ましくは、この化学種は、別の化学種(又は標的)とのある種の相互作用が可能であるべきであり、相互作用の結果は、いくつかの手段によって検出可能である。しかし、もちろん場合によっては、分析物は、関心の別の化学種とおそらく相互作用しないかもしれず、したがって相互作用の明確な結果は、測定することができないが、この結果の欠如も検出可能であり、したがってこの種の非相互作用化学種も、化学種の定義に含まれる。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明による方法は、標識の使用に基づく様々な検出システムを用いて使用することができ、又は好ましくは無標識であってもよい。好ましくは、検出は、バイオセンサーなどのセンサーを用いて実行され、この場合、固体支持面が(バイオ)センサーのセンサー面である。
【0014】
バイオセンサーは、固体物理化学変換器か、変換器と併用される移動担体ビーズ/粒子のどちらかと直接関連した分子認識のための構成要素(例えば、固定化抗体を有する層)を使用する装置として大まかに定義される。典型的にはそのようなセンサーは、固定化層の質量、屈折率又は厚さの変化を検出する無標識技術に基づいているが、ある種の標識付けに頼るバイオセンサーもある。本発明のための典型的なセンサーには、例えば、表面弾性波(SAW)法及び水晶振動子マイクロバランス(QCM)法を含む光学的方法及び圧電又は音波的方法などの質量検出法が含まれるが、これらに限定されない。代表的な光学的検出法には、角度、波長、偏光又は分解した位相でよい、外部反射法と内部反射法を共に含む反射光学法などの質量表面濃度を検出するもの、例えばエバネセント波楕円偏光法及びエバネセント波分光(EWS、又は内部反射分光法)が含まれ、それらはいずれも、表面プラズモン共鳴(SPR)、ブルースター角屈折率測定法、臨界角屈折率測定法、漏れ全反射(FTR)、散乱全内部反射法(STIR)(散乱強化標識を含み得る)、光学導波管センサー、外部反射イメージング、エバネセント波ベースのイメージング、例えば臨界角分解イメージング、ブルースター角分解イメージング、SPR角分解イメージングなどによるエバネセント場の増強を含み得る。さらに、例えば表面増感ラマン分光法(SERS)、表面増感共鳴ラマン分光法(SERRS)、エバネセント波蛍光(TIRF)、及びリン光に基づいた測光的方法及びイメージング法/顕微鏡法が、「それ自体で」又は反射方法と組み合わせて言及され得るものであり、導波路干渉計、導波路漏えいモード分光法、反射干渉分光法(RIfS)、トランスミッション干渉分光法、ホログラフィック分光法、及び原子間力顕微鏡(AFR)も言及され得る。
【0015】
SPR及び他の検出技術に基づくバイオセンサーシステムが、今日市販されている。例示的なそのようなSPR−バイオセンサーは、上記のBIACORE(登録商標)機器を含む。BIACORE(登録商標)機器の技術的側面及びSPRの現象の詳述は、米国特許第5313264号に見出すことができる。バイオセンサーセンサー面のマトリックスコーティングについてのより詳細な情報は、例えば、米国特許第5242828号及び米国特許第5436161号に与えられている。加えて、BIACORE(登録商標)機器に関連して使用したバイオセンサーチップの技術的側面の詳述は、米国特許第5492840号に見出すことができる。上記の米国特許の全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0016】
本発明は、SPRの使用を主に用いる例で説明されるが、このことは、本発明の範囲の限定であるととられるべきではない。
【0017】
まず、Biacore(登録商標)システムに使用されるようなSPR技術の簡単な説明を行う。
【0018】
SPRでは、表面における質量濃度の変更から生じる、センサーチップに隣り合う媒体の屈折率の変化を測定する。信号は反応単位RUで測定され、1RUは、おおよその表面濃度1pg/mm2に対応し、センサーグラムに時間の関数としてグラフで示される。本出願のための専門用語では、表面に取り付いた分子は標的と呼ばれ、一方、分析される化合物は、溶液中の分子(化学種)である。化合物を含有する溶液が、表面、典型的にはカルボキシメチルデキストランマトリックスでコーティングされたセンサーチップにわたって注入し、連続フローによって輸送される。このプロセスは、自動ポンプ及び試料ロボティクスのシステムによって駆動される。
【0019】
標的は、固定化と呼ばれるプロセスにおいてセンサーチップマトリックスに共有結合される。最も一般的に使用されている固定化技術は、反応性エステルがカルボキシメチル基の修飾によって表面マトリックスに導入されるアミンカップリングである。次いで、これらのエステルは、標的上のアミン及び他の求核基と自然に反応して共有結合を形成する。共有結合は、再生と呼ばれる標的と化合物の間の結合を破壊する条件に耐える。したがって、同じ表面を数回使用することができる。
【0020】
注入中、化合物分子は、継続的に表面へ運ばれ、標的分子と結合することができる。注入が止まると、緩衝液フローは、分離した化合物を洗い流す。会合相は、(1:1の結合については)次式で表される。
【0021】
【数1】

したがって、SPR法の第1の課題は、アミンカップリングのための表面処理中のEDC/NHS混合物の安定性の欠如に関連している。EDC/NHS混合物は、不安定であり、したがって混合後に比較的素早くセンサーチップに送られなければならない。これは、中間に気泡なくパルス列を用いるここに説明するようなインライン混合を用いることによって解決される。これは、とても簡単なやり方で標的のタンパク質又は抗体の固定化を自動化することを可能にする。
【0022】
したがって、本発明の一態様は、SPR法のための2種以上の溶液のインライン混合を実現するために使用できる方法及びシステムである。本発明によるシステム及び方法の原理及び動作は、図面及び付随する説明を参照してより良く理解できる。
【0023】
ここで図面を参照すると、図1は、本発明によるインライン混合の原理を用いる方法を実施するためのシステムの一部を概略的に示す。このシステムは注入システムを備え、本発明のためのこの注入システムは、マルチチャンバー式フローセル(すなわち、センサー)、統合流体カートリッジ(IFC)、複合針及びチューブブロック、並びに特徴付けられる液体が内部を流れるチュービング及びポンプを含む。注入システムは、試薬ブロック(すなわち、オートサンプラー台)を含むフローシステムをさらに備える。少なくとも第1の化合物と別の化学種(標的)の間の相互作用の結果を検出するセンサーデバイスの他の部品は、示されていない。
【0024】
インライン混合は、以下の段階、すなわち、(1)統合流体カートリッジ(IFC)内にマルチチャンバー式フローセルなどのフローセルを配置する段階と、(2)複合針及びチューブブロックをIFCに接続して各針及び接続したチューブ、IFCのチャネル、並びにフローセルチャンバーの間に管路を形成する段階と、(3)ポンプ手段を用いて試薬容器から針の中に第1の液体溶液を吸引する段階と、(4)気泡を導入せずに、種々の試薬容器から第2の液体溶液を吸引する段階と、(5)段階(3)及び段階(4)を繰り返す段階とを通じて実現され、この場合第1及び第2の液体溶液の混合は、溶液がフローセルの表面(図3)に届く前に管路内で生じる。好ましくは、複合針及びチューブブロックにおける針は、標準的なマルチウェルプレート内の別個の試薬ウェル、例えば96ウェルプレート内のウェルなどに各針が届くことができるように間隔をおいて配置される。適宜、複合針及びチューブブロックは、各針が96ウェルプレート内のウェルの列の別個のウェルに届くことができるように間隔をおいて配置される8本又は12本の針を収容する。ポンプ及び/又は弁は、管路を通じて流れを通すため、及び制御装置の制御下で各試薬容器(ウェル)から液体を吸引するために使用される。
【0025】
したがって、このシステムは、このシステムに結合した処理手段の内部メモリに直接読み込み可能なコンピュータプログラム製品の形態のソフトウェアの制御下で実行される。このプログラムは、本発明による方法の各段階を実行するためのソフトウェアコード手段を含む。
【0026】
ソフトウェアは、装置内の処理手段に本発明による方法の各段階の実行を制御させる可読プログラムを含むコンピュータ使用可能媒体に記憶されたコンピュータプログラムの形態であってもよい。
【0027】
システムの一例は、複合針及びチューブブロックが垂直に移動し、一方、試薬プレートを搬送するフローシステムの試薬ブロックが水平に移動するものを与える。
【0028】
このシステムのわずかに変形した例を図2に示す。
【0029】
好ましくは、針は、ステンレス鋼で作製される。さらに好ましくは、各針は、直径が0.4mmである。例示的なポンプ手段には、蠕動ポンプ、シリンジポンプ、又は任意の精密なポンプが含まれる。
【0030】
本発明によるインライン混合方法は、幅広い範囲の容積及び流量にわたって実現することができる。各段階中に、約0.1〜約10μlの溶液が、針の中に吸引される間に効果的な混合は実現される。好ましくは、各段階中に、約0.25〜約4μlの溶液が、針の中に吸引される間である。いっそうさらに好ましくは、各段階中に、約0.5〜約4μlの溶液が、針の中に吸引される間である。フローセルを通る試料液体の流量は、約10〜約100であってもよく、好ましくは約10〜約20であり、より好ましくは約10〜約30μl/分である。効果的な混合は、2種以上の溶液が、フローセルに届く前に管路内を移動する間に実現される。セグメントの大きさ及びフローラインを通じて輸送中の流量を制御することによってこの混合は実現される。
【0031】
図2に見られるように、試料及び緩衝液などの種々の溶液をそれぞれ収容する2種以上の試薬プレート(ラック)を保持するオートサンプラー台が提供される。溶液を吸引するための針、及び試薬プレートは、コンピュータプログラムによって制御され、針は必要な溶液を必要に応じて連続して及び繰り返して吸引することができるようになっている。
【0032】
針及びチューブブロックは、統合流体カートリッジ(IFC)に結合され、装置は、1つ以上のフローセルへの制御された液体の送達を可能にする。各フローセルは、センサー表面を有し、その表面に1つ以上の適切な標的が固定化される。流れは、精密なポンプによって調節され、それによって実際の流量を単調に調節して必要なゼロ流量から最大流量まで及ぶ、又はそれらの組み合わせで(図1)、所望の流量を供給する。
【0033】
手順の第1の段階は、少量の第1の溶液を針の中に吸引し、すなわち針を第1のチューブの中に突っ込んで、適当な容積を針に中に吸引することである。次いで、針は、第2のチューブへ移動され、適切な容積の第2の溶液が吸引される。実際の容積は、用途及び試料の種類によって決めることができ、幅広い限界内で変わり得るものであり、すなわち0.1μl〜10μlである。
【0034】
試料の吸引により、層流の放物線のフロープロファイル、及びチュービングにおける発散によって試料と緩衝液の混合物がもたらされる。
【0035】
したがって、一実施形態では、このシステムは、センサー表面の用意のためにEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl)及びNHS(N−ヒドロキシコハク酸イミド)をインライン混合するのに適切に使用される。混合は、液体がセンサー表面に到達する前にチュービング内で完了される。以下、本実施例に示すようなこのプロセスは、数秒(約1〜2分未満)かかるだけであり、混合物の不安定性の問題を回避する。したがって、アミンカップリングのための表面を用意するための自動化プロセスが提供される。
【0036】
別の実施形態では、このシステム及び方法は、一般に、任意の2種以上の液体溶液のインライン混合に適している。好ましくは、この方法は、溶液の1種以上が1種以上の化学的に不安定な成分を含有する場合に特に役立つ。したがって、この方法の一用途は、分析物が少なくとも一部、分析物に結合する化学種を有する複合体、典型的には免疫複合体として存在し得る、流体試料中の分析物の総濃度を決定する方法に関する。
【0037】
この場合、まず試料は、典型的には解離剤を試料に加えることによって、(分析物と分析物に結合する化学種の間の結合のアフィニティーを減少させることによって)試料中に存在する任意の複合体を解離する状態にかけられ、それによって全ての分析物は、自由な形態になる。次いで試料は、結合アフィニティーを回復させる状態にかけられ、試料中の自由な分析物の濃度は、好ましくはそれが分析物特異リガンドへ結合することによって、分析物の任意の実質的な再複合体化が行われるほぼ直前に決定される。
【0038】
試料は、少なくとも一部複合体の形態である関心の分析物を含有する又は含有している疑いがある任意の試料である得る。しかし、典型的には、試料は、哺乳類、好ましくは人間からの血清又は血漿の試料であり、複合体は、免疫複合体(すなわち抗原−抗体複合体)である。
【0039】
例えば、分析物は、薬物、例えばタンパク質薬物、例えば治療抗体などに応じて誘発された抗体であってもよい。
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「抗体」は、天然であってもよく、又は一部若しくは全部合成で製造されてもよい免疫グロブリンを指しており、Fab抗原結合断片、1価の断片、及び2価の断片を含む活性断片も含む。この用語は、免疫グロブリン結合領域に類似している結合領域を有する任意のタンパク質も包含する。そのようなタンパク質は、天然源から由来するものであってもよく、又は一部又は全部合成で製造されてもよい。例示的な抗体は、免疫グロブリンアイソタイプ、並びにFab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、dAb、及びFdの断片である。
【0041】
分析物の測定を可能にするために解離される必要があり得る他の分析物−複合体(通常、タンパク質−複合体)の例には、PSA(前立腺特異抗原)が含まれ、PSAは、そのかなりの範囲が複合体の形態であり、複合体の割合を決定できることを目的とするタンパク質である。血中で、PSAの約70〜90%が、α1アンチキモトリプシンを有する複合体中にあるが、PSAは、例えばプロテインCインヒビター、α1アンチトリプシン、及びα2マクログロブリンを有する複合体を形成することも知られている。自由PCAと総PCAの比は、前立腺がんのために役立つマーカとなるが、α2マクログロブリンを有する複合体を検出するために使用できる抗体が現在なく、PSAは複合体中のα2マクログロブリンによって完全に囲まれている(Balk et al. (2003) J. Clin. Oncology 21, 383-391)。これは、おそらく他のタンパク質複合体の場合でもある。
【0042】
様々な試薬及び条件が、分析物含有複合体の解離を達成するために使用されてもよい。免疫複合体は、例えば、複合体に低pH条件又は高pH条件をそれぞれ受けさせる酸性剤又は基本剤によって解離されてもよい。次いで、分析物結合活性の回復は、酸性化試料又はアルカリ化試料を実質的に中性のpHにさせることによってもたらされ得る。他の試薬及び条件は、例えばカオトロピック塩、高イオン強度若しくは低イオン強度、有機塩を含む。
【0043】
本発明の実施形態の基本的な特徴は、本発明の実施形態は、酸性化試料又はアルカリ化試料の中和などによって(リガンド及び複合化学種に対する)結合能を回復させるために試料が処理されたほぼ直後に分析物の濃度の測定を可能にすることである。「ほぼ直」は、(とりわけ使用される分析物、複合化学種、及びアッセイ装置に応じた)分析物の再複合体化が、感知できる程度起こる時間を有するべきでないことを意味する。一方、中和などの分析物結合能を回復させるための試料の処理が実質的に完了するためには、(とりわけ使用される試薬及びアッセイ装置に応じて)測定が行われる前に十分な時間が与えられなければならない。しかし、特定のアッセイシステムごとに最適な測定時間を見出すことは、当業者の能力の範囲内である。好ましくは、約5%以下の分析物は、複合体の形態であるべきであり、より好ましくは、分析物濃度が測定されたときに約1%未満である。
【0044】
複合体を解離させずに分析物濃度を決定することによっても、試料中の複合体が結合した分析物に対する自由な分析物の割合を決定することもできる。
【0045】
好ましくは、分析物特異リガンドが固定化されたセンサー表面を備える異種のアッセイシステムが、分析物(サンドイッチアッセイを含む直接アッセイ、又は置換アッセイ)又は検出可能な分析物の類似体(競合アッセイ)の、表面への結合の量を直接的又は間接的に検出することによって分析物濃度を測定するために使用される。
【0046】
分析物が抗体である場合、固定化されるリガンドは、抗原であり得る。一方、分析物が例えばPSAであるとき、固体支持面は、例えばanti−PSAを有してもよく、好ましくはそこに固定化されるα1アンチキモトリプシン、プロテインCインヒビター、α1アンチトリプシン、及びα2マクログロブリンを有することもできる。
【0047】
本発明の概念に基づく異種のアッセイを、いわゆるリガンドフィッシングに使用することもできる。例えば、特定のタンパク質にin vivoで結合するタンパク質などどの化学種か知ることに関心があると仮定する。次いで、この特定のタンパク質は、センサー表面に固定化することができ、特定のタンパク質を含有する試料(例えば、細胞抽出物又は血漿)は、まず複合体を解離し次いで相互作用する化学種の結合アフィニティーを回復させるように表面が処理された直後に表面に接触させられる(試料をそのように処理をせずに、全て又は実質的に全ての結合タンパク質が、試料中の特定のタンパク質にすでに結合している場合、タンパク質を表面に結合する結合は全く又はほとんど得られない)。次いで、表面に固定化した特定のタンパク質に結合された(1種又は複数種の)タンパク質は、質量分析法などによって特定することができる。
【0048】
上記の通り、試料が分析物の結合能を回復させるために処理されたほぼ直後に、試料が固体支持面、すなわち検出領域に接触させられることが重要である。検出領域と針の間の距離、及び流体の流量は、混合流体が固体支持領域に届くときに分析物の結合能が実質的に回復させられているように、例えば、酸性化試料がアルカリ液によってほぼ中和させられるが、分析物の再複合体化が実質的に行われていないように、選択されるべきである。
【0049】
別の実施形態では、インライン混合するシステム及び方法は、高濃縮された試料の濃度分析に役立つ。具体的には、高濃度試料は、所望の比率で緩衝液にインライン混合され、混合物は、SPRタイプのアッセイを受ける。この方法は、高塩濃度又は低pHを含む試料の分析に特に適している。予想されるように、応答レベルは試料容積及び接触時間によって主に制御されたことが分かった。試料吸引及び混合流量は、それほど重要ではなかった。試験した試料容積は、SPR応答との線形関係、及び5〜10%CVの相対精度との線形関係を示した。5〜100倍、例えば5〜40倍の希釈係数を制御することが可能であった。精度は、蠕動ポンプの性能によって制限された。ピストン動作式ポンプなどのより精密なポンプを用いることによって、精度を少なくとも10倍改善することができる。したがって、短注入は、Biacore又は関連したSPRシステムにおいて同時に自動化された試料の希釈及び濃度分析に使用することができる。
【0050】
本実施形態の下では、試料は、たった1つの小さいセグメントとしてとられ、それはランニング緩衝液によって自動的に希釈されることに留意されたい。ランニング緩衝液は、1)試料濃度を下げる、及び2)試料マトリックス(溶液)は、必要ならば、結合分析に適した溶液に変更することができるという2つの機能を有する。典型的な用途は、pH又はイオン強度が極端であり得ると同時に濃度が通常のアッセイには高すぎ得る場合のクロマトグラフィからの試料の小部分の分析である。
【0051】
Biacoreシステムを用いるSPR法では、典型的には、結合速度は、5〜10(RU/秒)/( μg/ml)であり、典型的には、結合能が1000〜5000RUである。このことは、1mg/mlの濃度での試料について、アッセイが試料露出0.1〜1秒で十分に飽和することを意味する。Biacoreシステムでは、流量は、10〜100μl/分の範囲内であり、よって1秒の間にセンサー表面上に輸送される実際の容積は、1μlの範囲内である。従来技術のシステムでは、試料の接触時間は、10分の数ミリ秒まで低減される必要があり、大部分の流体系における精度では不可能であるサブミクロリットルの容積の取扱いが要求される。
【0052】
本発明は、非常に小さい容積を取扱い、インライン混合によって試料を希釈し、短期間の間にセンサー表面を露出することができる針を用いて問題を解決する。これは、非常に単純であるが完全に自動化された装置を用いて実現される。それは、フローライン、検出フローセル、及びポンプだけを必要とする。フローラインは、試料容積よりかなり大きい内部容積を必要とする。サブミクロリットルの試料容積の場合、内部容積の好ましい容積は、1μlより大きい。
【0053】
セグメントが前後両方でランニング緩衝液に接触するときに試料は吸引される。層流の放物線のフロープロファイル及び拡散によって、試料セグメントは、ランニング緩衝液によって希釈される。セグメントの大きさ及びフローラインを通じて輸送中の流量を調節することによって希釈は制御され、試料露出中にセンサー表面への流量を制御することによって、接触時間が制御され、それによって結合レベルが制御される。
【0054】
このことを、Biacoreシステムを用いて説明したが、この方法は、改良した微小流体カートリッジ(IFC)の利点を伴って同様に他の機器に適用可能である。
【実施例】
【0055】
本実施例は、例示の目的で本明細書に示されるに過ぎず、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0056】
実施例1.概念実証 − 水とランニング緩衝液の混合
Biacore Q100機器(GE Healthcare、Uppsala、スウェーデン)において、水(試薬B)とランニング緩衝液(試薬A;0.01mMのHEPES、0.15MのNaCl、3mMのEDTA、及び0.05% v/v 界面活性剤P20、pH7.4)とのインライン混合を原理の証明として行った。
【0057】
以下は、Biacore Q100及び類似の機器において混合物を生成するためのシンプルなMDLコードである。これは、他の実施例にも同様に当てはまる。
【0058】
【表1】

混合域は15〜18μlであり、これは針先端からセンサー表面までの死容積である。本実施例は、試薬A及び試薬Bの7つのセグメントをそれぞれ有する。試料ポンプは、自動サンプラがAからBへ移動するときに停止し、この停止時間は約2〜3秒である。次いで10μL/分の混合時間は1.5〜1.8分、加えて7.5〜9回のポンプ停止について約24〜27秒であり、60μl/分では0.25〜0.3分、加えて約24〜27秒であった。もちろん、より速い自動サンプラは、これをさらにスピードアップすることができよう。図4は、結果を示す。ランニング緩衝液(HBS EP+)、試薬A及び水、試薬Bは、(A)10μl/分及び(B)60μl/分でそれぞれ、2μlのセグメントを用いてそれぞれ混合された。異なる流量及びセグメントの大きさでの混合は、精度は、10から60μl/分、及び2μlセグメントまでの流量で良好だったことを示した。予想されるように、低流量時により大きいセグメントはよく混合しなかった(10μl/分での4μlのセグメント参照)(図5)。理想的には、混合能力は、50%であることが予想された。得られた結果は、50%にとても近かった(図6)。
【0059】
実施例2.ヒト血清アルブミンの固定化
ヒト血清アルブミンは、EDC及びNHSのインライン混合を伴うアミンカップリング法を用いて8つの並列なフローセルのうちの4つで固定化された(図7A参照)。EDC及びNHSの手動混合は、同じ実行において残りの4つのフローセル内で実施された(図7B参照)。混合を除いて全ての段階が、HSAの固定化について同じであった。インライン混合については、EDC及びNHSのセグメント(21)2μl、それぞれ10μl/分であり、接触時間9分であった。HSA濃度は、10mMのアセテート緩衝液pH5.0で17μg/mlであった。ランニング緩衝液は、HBS EP+であった。固定化レベルは、手動混合した試薬とインライン混合した試薬の間でほとんど同じであり、インライン混合が少し優位であり、フローセル同士の間にはほとんど変化はなかった(図8参照)。(センサーグラムは、時間の関数としてSPR応答の記録を示す。この例示は、アミンカップリング法を用いたHSAの固定化からの典型的なセンサーグラムを示す。図の上部に示されるように、連続フローは、緩衝液、試料溶液及び試薬溶液の間で切り換えることによって実験中ずっとセンサー表面にわたって維持される。各注入の始めと終わりの応答の過渡的な変化は、注入した溶液をランニング緩衝液から分離するために導入された小さい気泡によって引き起こされた。固定化レベルは、センサーグラムの開始点とセンサーグラムの終了の間に差がある。)
実施例3.濃度分析
1.材料及び方法
1.1.材料
【0060】
【表2】

1.2.方法
1.2.1.固定化
活性化 EDC/NHSのインライン混合を用いて9分(活性化段階は実施例2と同じであった)。
固定化 10μgのプロテインA/ml固定化緩衝液を用いて7分。
非活性化 7分。
【0061】
1.2.2.短注入
非常に小さい試料セグメント0.25〜4μlを、正面でランニング緩衝液から空気セグメント分離せずに、注入した。それによって試料は、フローセルへの15〜18μlの輸送中にランニング緩衝液中で希釈された(混合された)。したがって、試料は、手動希釈なしで分析された。センサーチップにわたっての混合時間及び接触時間は、流量設定によって制御された。短注入の原理の略図を図3に示す。
【0062】
2.結果
2.1.1.固定化
プロテインAを固定化すると、4332RUの固定化したプロテインAになった。
【0063】
2.1.2.短注入
2.1.2.1.異なる試料濃度
図9は、短注入応答が試料容積とよく相関していることを示す。1000μg/ml抗体で得られた応答は、試料の高濃度によってRmaxに最も近く、したがって直線でない。2つのフローセルが、平行に走っており、応答はこれらのフローセル間でかなり類似した。接触フローは、100μl/分だった。混合及び試料吸引流量は10μl/分だった。
【0064】
10〜60μl/分の混合フローは、試料の混合に影響を及ぼさず、試料吸引時のポンプの変動(データは図示せず)は考慮しなかった。
【0065】
図10には、短注入が、バルク応答だけを示すBiatest溶液試料を用いた2つの等しい注入、並びにセンサーチップへの結合を示すゾレア抗体を用いた他の2つの等しい注入からの重ね合わせグラフで示される。Biatest溶液のバルク応答は、試料の実際の接触時間、及び接触時間中の試料の濃度プロファイルを表す。試料は、Biatest溶液のピーク応答時に測定したものの約5倍に希釈化される(22500RU/4300RU=5.2倍希釈)ことも示されている。試料セグメントは2μl、混合フロー30μl/分、及び接触フロー100μl/分であった。
【0066】
図11は、結合ゾレア抗体の複製からの平均応答及び標準偏差を示す。種々の試料濃度1〜1000μg/ml、混合流量10〜60μl/分、接触時間フロー25〜100μl/分、及び注入容積1〜4μl、1000μg/mlでの短注入についてのゾレア抗体の結合レベルを示す。
【0067】
4桁である1000〜1μg/mlの濃度は、最も低い濃度で精度がより低いが、短注入によって決定できる(図12)。ゾレア抗体の結合は、短インジェクトによってランニング緩衝液中で希釈した。各主要素は、2つの測定値の平均である。図13に、種々の濃度及び試料容積でゾレア抗体を短インジェクトした後の応答の精度を示す。各主要素は、2つの測定値から計算されている。
【0068】
2.1.2.2.要因実験
短注入についての結合レベル及び結合レベルの変化に最も影響を及ぼすパラメータを見つけることが目標であった。設計における4つのパラメータの変化により、6回の反復で10個の実験に減少した。
【0069】
パラメータは、以下の通りであった。
【0070】
1.試料吸引流量
2.混合流量
3.接触流量
4.試料容積
5.フローセル(任意の追加パラメータ)
応答は、以下の通りであった。
1.抗体の相対応答値RUの結合レベル
2.結合抗体の相対応答値RUの標準偏差
3.結合抗体の相対標準偏差CV%。
【0071】
プロテインAの固定化の結果
注:非活性化は別個の実行でなされた。したがって、第1の実行による基準線絶対応答及び第2の実行による絶対応答を使用して固定化レベルを計算した。
表1に示すように、全フローセルは、プロテインAで固定化された。
【0072】
【表3】

短注入、実行順序及び結果
表2は、要因実験の実行順序及び結果を示す。接触フロー及び試料容積が応答レベルを調節し、混合フロー及び吸引フローが応答レベル及び応答の変化に小さな効果はあることが示されている。接触時間及び試料容積は応答レベルに正比例することも示されている。精度は、5%CV〜10%CVで変化した。
【0073】
【表4】

2.1.2.3.超短注入
小さい試料容積を使用することの制限は、1.5μlから0.25μlまで容積を減少させる一連のBiatest溶液の注入の実行、及び容積ごとに9回の反復を伴うことによってなされる試験だった。フローパラメータは、試料吸引フロー、混合フロー、及び接触フローそれぞれについて15、35及び50μl/分だった。平均ピーク相対応答、標準偏差、及びCV%を計算した。ピーク応答は、Biacore T100評価ソフトウェア(GE Healthcare、Uppsala、スウェーデン)中の結果ファイルを開くことによって見つけられた。
【0074】
各応答のコラム中の最大値を探す。この相対ピーク応答は、最小希釈係数であると考えられ、相対ピーク応答は、相対応答が22500RUである希釈していないBiatest溶液と比較された。
【0075】
表3には、1.5μlの試料は、5%の相対標準偏差(CV%)を伴う7倍希釈という結果になることが示されている。1.5μl未満の試料容積は、約10%CVという結果になった。応答の変化は、フローセル間よりもサイクル間でより大きい。このことは、蠕動ポンプの機能によって説明される。
【0076】
【表5】

希釈係数は、40倍希釈まで線形であった(図14)。Y軸は、全てのフローセル及びサイクルの全体的な平均応答であり、X軸は、表3に示される単位μlの試料容積である。点線は99%の信頼区間の限界を表す。
【0077】
2.1.3.流量変動
短注入のピーク応答の変化を理解するために、蠕動ポンプによって引き起こされる実際の流量変動を見ることが助けを与えることになり得る。ポンプ変動を試験した。
【0078】
流量計を用いて流量を測定した。通常の流量10μl/分及び20μl/分を試験した。短注入の吸引流量は、15μl/分である。図15A及び図15Bには、10μl/分及び20μl/分の両方についてのボトム流量とトップ流量の間で約1μlの頻度で、±4.5μl/分の流量変化があることが示される。吸引される容積は、吸引時間内の積算容積である。最悪の状況においては、0.25μlを吸引するとき、3倍標準偏差=99%信頼区間を選ぶ場合に、これは0.17〜0.33μl、又は±30%変化し得るものであり、このことは表3に示す結果とよく相関している。しかし、より大きい吸引容積については、変化はそれに応じて減少する。
【0079】
要するに、短注入は、Biacore Q100中の試料の同時に自動化された希釈及び濃度分析に使用することができる。このセットアップでは、試料は、40倍まで希釈することができる。10倍より大きい希釈で変化は比較的高いが、より精密なポンプは、例えばシリンジポンプ又は任意のより精密なポンプを用いて、この状況を緩和するのを助ける。
【0080】
実施例4.概念実証−15%糖とランニング緩衝液からなる統合インライン混合
材料及び方法
1.1 材料
【0081】
【表6】

1.2 方法
この実施例では、27回の試薬A及び試薬Bの2μlセグメントが、120μl/分でそれぞれ吸引され、合計混合物容積114μlになった。ランニング緩衝液からの分離が、第1の段階として3μlの空気セグメントを導入することによって実行された。92μlの一部は、1000μl/分の強制フローで別個の混合ウェルに送り戻された。残りの22μlは管路内に留まる。混合性能は、15μl/分で25μlの混合試料の即時注入によって試験された(供給ポンプは30μl/分で動作し、フローポンプは15μl/分で動作する)(図16)。
【0082】
2.結果
統合インライン混合の精度は非常に良く、目的の混合レベルが実現されたことが表4に示される。この結果は、図17にも示される。この新しい統合インライン混合方法によって混合した試料は、均一に混合される。
【0083】
【表7】

本明細書中に言及した全ての特許、特許、特許の公開、及び他の刊行された参照文献は、それぞれが個々に及び具体的に本明細書に参照により組み込まれるように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の好ましい例示的な実施形態を説明するが、本発明は説明した実施形態以外のものによって実施でき、説明した実施形態は例示のために示されているに過ぎず、限定するためのものではないことを、当業者は理解されよう。本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液中の1種以上の化学種とフローセルの表面に固定化された標的との間の液体環境中での相互作用を特徴付ける方法であって、
(a)フローセルの表面を活性化し、標的を表面に固定化する段階と、
(b)液体の流れ中に化学種の1種以上を用意する段階と、
(c)固定化された標的を含むフローセルの表面に、化学種の1種以上を含有する液体の流れを通す段階と、
(d)表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて1種以上の化学種と標的との間の相互作用の結果を検出する段階とを含む方法において、
段階(a)又は段階(b)の少なくともいずれかにおいて、2種以上の液体溶液をインライン混合して混合溶液を生じさせておいてから、該混合溶液をフローセルの表面に通すことを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
インライン混合が(1)統合流体カートリッジ(IFC)内にマルチチャンバー式フローセルを配置する段階と、
(2)複合針及びチューブブロックを統合流体カートリッジに接続する段階であって、複合針及びチューブブロック内の針が、標準的なマルチウェルプレート内の別個の試薬ウェル、例えば96ウェルプレート内のウェルなどに各針が届くことができるように間隔をおいて配置され、さらに、管路が、各針及び接続したチューブ、IFCのチャネル、並びにフローセルチャンバーの間に形成されている、段階と、
(3)ポンプ手段を用いて試薬容器から針の中に第1の液体溶液を吸引する段階と、
(4)気泡を導入せずに、異なる試薬容器から第2の液体溶液を吸引する段階と、
(5)段階(3)及び段階(4)を適宜繰り返す段階とを含み、第1及び第2の液体溶液の混合が、混合溶液がフローセルの表面に届く前に生じる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
各段階がコンピュータプログラムによって制御され、複合針及びチューブブロックが垂直に移動し、一方、試薬容器を搬送する試薬ブロックが水平に移動する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
混合溶液が1種以上の化学的に不安定な成分を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
段階(a)において、抗体をフローセル表面にアミンカップリングするために、インライン混合を使用してEDC及びNHSを混合する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
酸性化抗体を含有する溶液及び高pH溶液の段階(b)中のインライン混合が、抗体を中和し、その後に抗体にフローセル表面上の標的との結合相互作用を受けさせる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
複合針及びチューブブロックが、96ウェルプレート内のウェルの列の別個のウェルに各針が届くことができるように間隔をおいて配置される8本又は12本の針を収容する、請求項2記載の方法。
【請求項8】
ポンプ手段が蠕動ポンプ又はシリンジポンプである、請求項2記載の方法。
【請求項9】
各吸引する段階が約0.1〜約10μlの溶液を取り込む、請求項2記載の方法。
【請求項10】
各吸引する段階が約0.25〜約4μlの溶液を取り込む、請求項2記載の方法。
【請求項11】
各吸引する段階が約0.5〜約4μlの溶液を取り込む、請求項2記載の方法。
【請求項12】
フローセルを通る液体の流量が約10〜約100μl/分である、請求項2記載の方法。
【請求項13】
フローセルを通る液体の流量が約10〜約60μl/分である、請求項2記載の方法。
【請求項14】
フローセルを通る液体の流量が約10〜約30μl/分である、請求項2記載の方法。
【請求項15】
高濃縮された試料の化学種を分析する方法であって、化学種とフローセルの表面に固定化された標的との間の相互作用を特徴付けるためのSPR法を試料に受けさせることを含み、
(a)フローセルの表面を活性化し、標的を表面に固定化する段階と、
(b)液体の流れ中に適切な濃度の化学種を用意する段階と、
(c)固定化された標的を含むフローセルの表面に、化学種を含有する液体の流れを通す段階と、
(d)表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて化学種と標的との間の相互作用の結果を検出する段階とを含む方法において、
コンピュータの制御下で高濃縮された試料の化学種と緩衝液をインライン混合して、段階(b)の前に混合溶液を生じさせ、インライン混合が、
(1)統合流体カートリッジ(IFC)内にマルチチャンバー式フローセルを配置する段階と、
(2)複合針及びチューブブロックを統合流体カートリッジに接続する段階であって、複合針及びチューブブロック内の針が、標準的なマルチウェルプレート内の別個の試薬ウェル、例えば96ウェルプレート内のウェルなどに各針が届くことができるように間隔をおいて配置され、さらに、管路が、各針及び接続したチューブ、IFCのチャネル、並びにフローセルチャンバーの間に形成されている、段階と、
(3)ポンプ手段を用いて針の中に緩衝溶液を吸引する段階と、
(4)気泡を導入せずに、所望の量の高濃縮された試料を吸引する段階と、
(5)気泡を導入せずに、第2の容積の緩衝溶液を吸引する段階とを含み、
高濃縮された試料の希釈が、試料がフローセルの表面に届く前に管路内で生じる
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
試料が5〜100倍に希釈される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
試料が10〜40倍に希釈される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
段階(5)の後に、管路から混合容器へ液体溶液を供給し、混合容器から試料を逆に吸引することをさらに含む、請求項2記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A−B】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2013−515260(P2013−515260A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545903(P2012−545903)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051446
【国際公開番号】WO2011/078777
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】