説明

混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法

【課題】原料ガスの稀釈化設備を用いずに設備のシンプル化を図ること、及び、下流工程の気相を生成工程の気相と同じ平衡状態の組成にすることで、ガスハイドレート製造設備の運転を安定化させる。
【解決手段】混合ガスハイドレート生成工程の気相を下流工程の気相に循環させることにより、各工程の気相を生成工程の気相と同じ平衡状態の組成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガスを水と反応させて混合ガスハイドレートを生成する混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ガスと水とを氷点よりも高温、かつ、大気圧よりも高圧下で反応させ、水を凍らせることなく天然ガスハイドレートを生成し、生成された天然ガスハイドレートを物理的に脱水し、さらに、この物理脱水の過程もしくは脱水後において天然ガスハイドレートに含まれる残存水分を天然ガスと反応させて天然ガスハイドレートを生成することによって天然ガスハイドレートの含水率を低下させ、これを氷点よりも低温にまで冷却したのち減圧する天然ガスハイドレートの生成システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、この生成システムでは、物理脱水手段や輸送箇所等において、その気相が天然ガス組成である場合、そこに含まれる重質成分(エタン、プロパン、ブタンなど)により、新たにガスハイドレート生成が起こることもある。そうした場合、輸送不良等の運転トラブルを生ずる虞れがある。
【0004】
このような運転トラブルの発生を抑制するには、生成工程よりも下流の設備の気相、ハイドレート、水を平衡状態、すなわち、気相を生成槽のガス組成にしておくことが必要であり、これに類似する発明としては、例えば、特許文献2が知られている。しかし、この発明は、生成槽に供給する混合ガスを混合ガスの主成分で稀釈調整するための付帯設備、すなわち、制御系を含めた付帯設備が大掛かりになるに加え、生成条件での平衡組成に調整することが困難であり、下流設備での前記ガスハイドレート生成の虞れが依然として残ることなどの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−105362号公報
【特許文献2】特開2008−248190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような課題を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、原料ガスの稀釈化設備を用いずに設備のシンプル化を図ること、及び、下流工程の気相を生成工程の気相と同じ平衡状態の組成にすることで、ガスハイドレート製造設備の運転を安定化させることができる混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法は、混合ガスハイドレート生成工程の気相を下流工程の気相に循環させることにより、各工程の気相を生成工程の気相と同じ平衡状態の組成にすることを特徴とするものである。
【0008】
本願の請求項2に係る混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法は、下流工程が脱水工程であることを特徴とするものである。
【0009】
本願の請求項3に係る混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法は、下流工程が脱水工程、成形工程、及び冷却工程であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、混合ガスハイドレート生成工程の気相を下流工程の気相に循環させることにより、各工程の気相を生成工程の気相と同じ平衡状態の組成にするので、生成工程より下流の物理脱水設備や輸送設備で混合ガスハイドレートの新たな生成が抑制されて、混合ガスハイドレートの生成に起因する閉塞や機器の不具合など、運転トラブルが発生する虞れを未然に解消することができた。また、従来の発明のように、原料ガスを稀釈する設備が不要になり、設備のシンプル化を図ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法の基本プロセスを示すブロック図である。
【図2】本発明に係る混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法の実用化に向けたプロセスを示すブロック図である。
【図3】本発明に係る混合ガスハイドレート製造プラントの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0013】
(1)実施形態1
図1に示すように、本発明に係る基本的な混合ガスハイドレート生成プラントAは、ガスハイドレート生成槽1及び脱水塔2より構成され、ガスハイドレート生成槽1の気相部1aは、第1配管25aを介して脱水塔2の気相部2aと連通し、脱水塔2の気相部2aは、第2配管30aとブロア51と循環パイプ52とを介してガスハイドレート生成槽1の気相部1aと連通している。
【0014】
他方、ガスハイドレート生成槽1の固液部1bは、第5配管25bを介して脱水塔2の固液部2bと連通し、脱水塔2の固液部2bは、第6配管30bを介して次工程の設備と連通している。また、ガスハイドレート生成槽1は、原料ガス供給管7及び原料水供給管8を具備すると共に、固液相を攪拌する攪拌機(図示せず)を備えている。
【0015】
次に、上記混合ガスハイドレート生成プラントの運転方法を説明する。原料ガス供給管7からガスハイドレート生成槽1内に供給された混合ガス、例えば、天然ガスgは、原料水供給管8から供給された水wと反応して天然ガスハイドレートになる。ガスハイドレート生成槽1内の天然ガスハイドレートは、水wと一緒に脱水塔2に供給されて脱水される。脱水された天然ガスハイドレートnは、第6配管30bを経て次工程の設備に導出される。
【0016】
他方、ブロア51を駆動することによってガスハイドレート生成槽1の気相部1a内の未反応ガスは、ガスハイドレート生成槽1の気相部1a、第1配管25a、脱水塔2の気相部2a、第4配管30a、ブロア51及び循環パイプ52を経てガスハイドレート生成槽1の気相部1aに強制的に循環される。
【0017】
したがって、脱水塔2の気相部2aの気相が、ガスハイドレート生成槽1の気相部1aの気相(未反応ガス)と同じ平衡状態の組成になることから、脱水塔2などの下流設備における新たなガスハイドレートの生成が抑制され、閉塞や機器の不具合など、運転上のトラブルが抑制される。
【0018】
尚、原料ガス供給管7に循環パイプ52を接続し、原料ガス供給管7によって供給される天然ガスgに循環パイプ52によって循環される未反応ガスを予混合しても同様の効果が得られる。
【0019】
(2)実施形態2
図2に示すように、本発明に係る混合ガスハイドレート生成プラントA’は、ガスハイドレート生成槽1、脱水塔2、ペレット成形装置3及びペレット冷却槽4により構成され、ガスハイドレート生成槽1の気相部1aは、第1配管25aを介して脱水塔2の気相部2aと連通し、脱水塔2の気相部2aは、第2配管30aを介してペレット成形装置3の気相部3aと連通し、ペレット成形装置3の気相部3aは、第3配管34aを介してペレット冷却槽4の気相部4aと連通し、ペレット冷却槽4の気相部4aは、第4配管43aとブロア51と循環パイプ52とを介してガスハイドレート生成槽1の気相部1aと連通している。
【0020】
他方、ガスハイドレート生成槽1の固液部1bは、第5配管25bを介して脱水塔2の固液部2bと連通し、脱水塔2の固液部2bは、第6配管30bを介してペレット成形装置3の固液部3bと連通し、ペレット成形装置3の固液部3bは、第7配管34bを介してペレット冷却槽4の固液部4bと連通し、ペレット冷却槽4の固液部4bは、第8配管43bを介して次工程の設備と連通している。
【0021】
また、ガスハイドレート生成槽1は、原料ガス供給管7及び原料水供給管8を具備すると共に、固液相を攪拌する攪拌機(図示せず)を備えている。
【0022】
次に、上記混合ガスハイドレート生成プラントの運転方法を説明する。原料ガス供給管7からガスハイドレート生成槽1内に供給された混合ガス、例えば、天然ガスgは、原料水供給管8から供給された水wと反応して天然ガスハイドレートになる。ガスハイドレート生成槽1内の天然ガスハイドレートは、水wと一緒に脱水塔2に供給されて脱水される。脱水された天然ガスハイドレートは、第6配管30bを経てペレット成形装置3に供給されて所定の形状及び寸法のペレットに成形される。ペレットは、第7配管34bを経てペレット冷却槽4に供給されて所定の温度に冷却される。冷却されたペレットpは、第8配管43bを経て次工程の設備に導出される。
【0023】
他方、ブロア51を駆動することによってガスハイドレート生成槽1の気相部1a内の未反応ガスは、ガスハイドレート生成槽1の気相部1a、第1配管25a、脱水塔2の気相部2a、第2配管30a、ペレット成形装置3の気相部3a、第3配管34a、ペレット冷却槽4の気相部4a、第4配管43a、ブロア51及び循環パイプ52を経てガスハイドレート生成槽1の気相部1aに強制的に循環される。
【0024】
したがって、脱水塔2の気相部2a、ペレット成形装置3の気相部3a、ペレット冷却槽4の気相部4aの気相が、ガスハイドレート生成槽1の気相部1aの気相(未反応ガス)と同じ平衡状態の組成になることから、脱水塔2、ペレット成形装置3、ペレット冷却槽4などの下流設備における新たなガスハイドレートの生成が抑制され、閉塞や機器の不具合など、運転上のトラブルが抑制される。
【0025】
尚、原料ガス供給管7に循環パイプ52を接続し、原料ガス供給管7によって供給される天然ガスgに循環パイプ52によって循環される未反応ガスを予混合しても同様の効果が得られる。
【0026】
(3)実施形態3
本発明の混合ガスハイドレート生成プラントA”は、図3に示すように、ガスハイドレート生成槽1と、脱水塔2と、ペレット成形装置3と、ペレット冷却槽4と、ペレット貯槽5と、脱圧装置6により構成されている。
【0027】
ガスハイドレート生成槽1は、攪拌機12を具備すると共に、その下方にガス噴出ノズル13を備えている。このガスハイドレート生成槽1は、その頂部11aに原料ガス供給管7及び原料水供給管8を備えている。原料ガス供給管7は、流量調整弁9を備え、原料水供給管8は、バルブ10を備えている。
【0028】
ガスハイドレート生成槽1は、その頂部11aとガス噴出ノズル13とを連通するガス循環路14を具備し、気相部1aの未反応ガスg’を第1ブロワ15によってガス噴出ノズル13に供給すると共に、第1冷却器16によって所定の温度に冷却するようにしている。ガスハイドレート生成槽1の気相部1aは、第1配管25aを介して脱水塔2の気相部2aと連通している。
【0029】
他方、ガスハイドレート生成槽1の底部11bは、スラリーポンプ24を備えた第5配管(スラリー供給管)25bを介して脱水塔2の底部21aと連通し、スラリー供給管25bから分岐したスラリー循環路26は、ガスハイドレート生成槽1の側面に接続している。スラリー循環路26は、第2のスラリーポンプ27及び第2冷却器28を備え、スラリー循環路26を通過するスラリーsを冷却するようになっている。
【0030】
上記脱水塔2は、筒状の縦型の塔体21と、塔体21の外側に同心状に設けた中空状の排水部22と、排水部22に対峙する塔体部分に設けたスクリーン23によって構成され、排水部22は、排水管29を介してスラリー循環路26に連通している。脱水塔2は、第6配管(スクリューフィーダー)30bによって脱水されたガスハイドレートnをペレット成形装置3に供給するようになっている。また、脱水塔2の気相部2a及び排水部22の気相部2aは、第2配管30aを介してペレット成形装置3の気相部3aと連通している。
【0031】
上記ペレット成形装置3は、耐圧容器31内に一対のブリケッティングロール32,32を設けた高圧ペレタイザであり、粉末状のガスハイドレートを所定の形状のペレット(例えば、レンズ型、アーモンド型、ピロー型など)pに形成するようになっている。また、ペレット成形装置3の気相部3aは、第3配管34aを介してペレット冷却槽4の気相部4aと連通している。また、ペレット成形装置3の下端部は、第7配管(ペレット払い出しダクト)34bを介してペレット冷却槽4の上端部に接続している。
【0032】
上記ペレット冷却槽4は、ホッパー状の中空容器41と、その外側に設けた冷却ジャケット42より構成され、冷却ジャケット42によって中空容器41内のペレットpを冷却するようになっている。また、ペレット冷却槽4は、第4配管43a及び第2ブロワ51を備えた循環パイプ52を介してガスハイドレート生成槽1の頂部11aに接続している。
【0033】
上記ペレット冷却槽4の下端部とペレット貯槽5の上端部とを連通する第8配管(ダクト)43bの中間部に設けた脱圧装置6は、筒状容器61の上部に上部バルブ62を設け、筒状容器61の下部に下部バルブ63を設けている。
【0034】
次に、混合ガスハイドレート生成プラントの運転方法について説明する。
【0035】
先ず、スラリー循環路26に設けた第2スラリーポンプ27と第2冷却器28を駆動してガスハイドレート生成槽1内の水wを所定の温度(例えば、3℃)に冷却する。
【0036】
次に、原料ガス供給管7から所定圧(例えば、5MPa)の混合ガス、例えば、天然ガスgをガスハイドレート生成槽1に供給しながらガス循環路14に設けた第1ブロワ15と第1冷却器16を駆動してガスハイドレート生成槽1の気相部1aの未反応ガスg’をガス噴出ノズル13に供給する。
【0037】
ガス噴出ノズル13に供給された天然ガスgは、無数の微細な気泡となって水w内に噴出され、更に、攪拌機12によって攪拌されるため、水wと水和反応して天然ガスハイドレートに成る。
【0038】
天然ガスの組成は、メタン86.88%、エタン5.20%、プロパン1.86%、i−ブタン0.42%、n−ブタン0.47%、i−ペンタン0.15%、n−ペンタン0.08%、二酸化炭素1%、・・・であるが、エタン、プロパンなどの重質部は、水と反応し易いために、ガスハイドレート生成槽1の気相部1a内の気相は、メタンリッチになる。
【0039】
天然ガスハイドレートは、水wと共にスラリーsを構成し、スラリーポンプ24によって脱水塔2の底部21aに供給される。脱水塔2によって脱水されたガスハイドレートnは、脱水塔2の上部から第6配管(スクリューフィーダー)30bを通ってペレット成形装置3に供給され、所定の形状・寸法のペレットpに加工される。
【0040】
ペレット成形装置3によって成形されたペレットpは、第7配管(ペレット払い出しダクト)34bを通ってペレット冷却槽4に供給され、所定の温度(例えば、−20℃)に冷却される。ペレット冷却槽4によって冷却されたペレットpは、脱圧装置6によって所定圧(例えば、大気圧より少し高圧)まで脱圧されてペレット貯槽5に貯蔵される。
【0041】
他方、第2ブロア51が駆動されているため、ガスハイドレート生成槽1の気相部1a内の未反応ガスg’は、第1配管25a、脱水塔2の気相部2a、第2配管30a、ペレット成形装置3の気相部3a、第3配管34a、ペレット冷却槽4の気相部4a、第4配管43a及び循環パイプ52を経てガスハイドレート生成槽1の気相部1aに強制的に戻される。
【0042】
したがって、脱水塔2の気相部2a、ペレット成形装置3の気相部3a、ペレット冷却槽4の気相部4aの気相が、ガスハイドレート生成器1の気相部1aの気相(未反応ガスg’)と同じ平衡状態の組成になることから、脱水塔2、ペレット成形装置3、ペレット冷却槽4、或いは、第1〜第4配管25a,30a,34a,43aなどの下流設備における新たなガスハイドレートの生成が抑制され、閉塞や機器の不具合など、運転上のトラブルが抑制される。
【0043】
尚、原料ガス供給管7に循環パイプ52を接続し、原料ガス供給管7によって供給される天然ガスgに循環パイプ52によって戻される未反応ガスg’を予混合しても同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0044】
1 ガスハイドレート生成槽
2 脱水塔
3 ペレット成形装置
4 ペレット冷却槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合ガスハイドレート生成工程の気相を下流工程の気相に循環させることにより、各工程の気相を生成工程の気相と同じ平衡状態の組成にすることを特徴とする混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法。
【請求項2】
下流工程が脱水工程であることを特徴とする請求項1記載の混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法。
【請求項3】
下流工程が脱水工程、成形工程、及び冷却工程であることを特徴とする請求項1記載の混合ガスハイドレート製造プラントの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−105794(P2011−105794A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−259469(P2009−259469)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】