説明

混合式ミクロ流動方法

相互に連結されたチャンネル・ネットワークを供給する工程であって、該ネットワークは、第一流動ジャンクションで相交わる第一(1208)、第二(1210)、第三(1212)チャンネルセグメントを備え、第二チャンネルセグメントは、第一流動リザーバ(1204)に一端で終端し、第一流動ジャンクションに他端で相交わり、該ネットワークは更に第四チャンネルセグメントを備え、第四チャンネルセグメント(1214)は、一端で第二流動ジャンクション(1215)にて第三チャンネルセグメントと相交わり、他端で第一バッファーを含んだ第二流動リザーバ(1206)に終端している工程、等を含むサンプルから帯電した種を抽出し、それを濃縮する方法。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
発明の背景
ミクロ流動工学は、一層の迅速性、正確性、容易に自動化可能な小型化実験を約束することにより、生物学及び化学的研究における次の技術革新として報告されてきた。ミクロ流動実験の利点の多くは、市場で明らかである。例えば、Caliper Technologies Corp.から供給されるAgilent 2100 Bioanalyzer並びにそのミクロ流動装置及び試薬キットメニューは、生命科学研究者に重要な多数の異なる分析を行うための多目的実験台を提供する。これらのシステムで作られたデータは、デジタル化された高再現性状態で容易に得られる。
【0002】
高スループット実験もミクロ流動生成物により処理(address)されている。Caliper 250 High Throughput Screening Systemは、連続流ミクロ流動アッセイフォーマット中の多数の異なるサンプル、例えば薬剤テスト化合物を選別して、これらテスト化合物から可能な治療剤を同定する。このようなシステムは、単独のミクロ流動装置で1日当り数千、数万のアッセイを行い、従来の選別システムに比べて、プロセスのスループットを増大させながら、使用試薬のフットプリント及び量を減少させる能力を有する。
【0003】
ミクロ流動システムは、その約束を果たしているが、開発されたシステムにおけるミクロ流動チャンネルネットワークの相互連絡した性質は、システムの操作性に幾つかの制限を招いている。例として、初期のミクロ流動システムは、完全に動電的な駆動流システムを採用した。これらのシステムは、装置の相互連絡したチャンネルの全てにおいて、平坦なプラグ流れプロファイルにより材料を移動させる間中、拡散が制限された分散により流体、その他の材料の移動について精密制御性を与えた。しかし、材料の移動を駆動させるため、電場を使用することも、装置のチャンネル内に差別的に(異なるように)帯電した種の電気泳動的分離又は偏りを駆動して、一層複雑なデータの脱繰り込み(deconvolution)を必要とするデータを生じる。更に、このような動電的流れシステムは、長いチャンネル距離を渡るべき所では、材料の移動が遅くなり、スループットを低下させる恐れがある。ミクロ流動システムに圧力による流れを用いると、差別的に帯電した材料の偏った移動はなくなるが、放物線の流れを持つシステム中で生じるTaylor−Aris分散の増大により、一層高度に分散した流れのプロファイルを作る。
【特許文献1】USP 6,012,902
【特許文献2】USP 6,171,067
【特許文献3】PCT出願公開No.WO 02/10732
【特許文献4】USP 5,942,443
【特許文献5】USP 6,046,056
【特許文献6】USP 6,267,858
【特許文献7】USP 5,885,470
【特許文献8】USP 6,156,181
【特許文献9】USP 6,238,538
【特許文献10】USP 5,948,227
【特許文献11】USP 6,042,710
【特許文献12】国際出願公開No.WO98/00231
【特許文献13】PCT出願公開No.WO 99/39190
【特許文献14】USSN 60/362,291
【特許文献15】USP 5,872,010
【特許文献16】PCT出願公開No.WO 01/63270
【非特許文献1】Taylor等,Proc.Roy.Soc.London,(1953)219A:186−203
【非特許文献2】Aris,Proc.Roy.Soc.London,(1956)A235:67−77
【非特許文献3】Chatwin等,J.Fluid mech.(1982)120:347−358
【非特許文献4】Doshi等,Chem,Eng.Sci.(1978)33:795−804
【非特許文献5】Guell等,Chem.Eng.Comm.(1987)58:231−244
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、各タイプの流れプロファイルの有利な面を利用しながら、各プロファイルの魅力の劣る特徴を除去するか又は最小にするように最適化されたミクロ流動システムを提供することが望ましい。本発明は、これら及びその他の各種要求を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
本発明は、一般に、チャンネルネットワーク中で材料の最適移動を行うため、混成流体流れプロファイルを用いる方法及びシステムを提供する。これらのシステムは、各種チャンネルセグメント間の相互連絡を維持しながら、材料を相互連絡したチャンネルネットワーク中で移動させるため、圧力及び動電による混成流れシステムを用いる。特に本発明は、一般に、第一チャンネルセグメントでの流れが、圧力流により駆動され、その結果、放物線状流れプロファイルが得られる場合のチャンネルネットワークに向けたものである。相互連絡したチャンネルセグメントでは、材料の流れは、動電的に駆動され、その結果、プラグ流れプロファイルを生じる。本方法及びシステムは、圧力流をタップオフすると共に、接続部を通る動電的流れに置換するため、異種の流れプロファイルを持つチャンネルの該接続部に、通常、アクセスチャンネル又はタッピングチャンネルを用いる。これは、材料の移動下で流れプロファイルを変えながら、材料を第一チャンネルセグメントから第二チャンネルセグメントに流す競争試験(passing off)を保証する。
【0006】
本発明装置は、加える圧力又は電場を制御するか、或いは加える圧力、電場の両方を制御して、異なる種の流れプロファイルを管理することにより、サンプル混合物から差別的に帯電した種を分離するためにも有用である。多数の圧力及び電圧源を持った流体制御システムを用いて、ミクロ流動チャンネルネットワークのいずれかの部分の流体力学流及び電場が所望値に設定できるように、装置のいずれかの所定のチャンネルセグメント中で圧力及び/又は電圧を制御できる。本発明は、2つの異なる流れプロファイル、即ち、圧力による駆動及び動電的駆動のプロファイルを重複させ、同時に各流れプロファイル下で、流速を制御して、この流体中に、流体で運ばれたサンプル中に含まれる差別的に帯電した種を容易に分離及び単離するのに十分な量で含有する所定種について正味速度を得ることにより、チャンネルネットワークの異なるセグメント中の流体流を独立に制御する装置を提供する。こうして、以下に説明するT−交差点のようなチャンネル交差点に送られた、異なる電気泳動移動度を有する2つ以上のサンプル種の混合物(例えば中性基質及び酵素反応の負帯電生成物)は、サンプル種の異なる電気泳動移動度に基づいて、交差点の別々のチャンネル内の分離成分に完全に分離できる。
【0007】
前述の選択的イオン抽出と同様に、異なる移動度(例えば異なる電荷及び/又は質量)を有するアナライトを分離、抽出する他の新規な技術もここで説明する。この技術では、ミクロ流動チャンネルネットワークは、数を減らした外部圧力源及び電圧源を利用することにより、例えば先に説明した実施態様と比べて、流体制御に必要な流体リザーバーの数を減らして分離を行うことにより、流動駆動力を配分して、流体サンプル中の差別的に帯電した種を分離するように、構成、寸法化される。この方法では、流体輸送に必要な過剰のハードウエアーは、最小化でき、またミクロ流動装置は、先に説明した設計に比べて少数の流体リザーバーで操作できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面の簡単な説明
図1は、放物線状の圧力駆動流れプロファイル(図1A)及び動電的駆動プラグ流れプロファイル(図1B)を示す。
【0009】
図2は、本発明による混成又は混合式の圧力及び動電的駆動ミクロ流動チャンネルシステムの概略図である。
【0010】
図3は、図2に示したネットワークでの各チャンネルセグメントの流れプロファイルの概略図である。
【0011】
図4は、サンプル導入に続いて分離による分析を利用した連続選別アッセイを行う操作での本発明装置の概略図である。
【0012】
図5は、本発明方法を実施するためのシステムの概略図である。
【0013】
図6のA及びBは、それぞれ平面的及び一部立体的(sipper)なフォーマットミクロ流動装置を示す。
【0014】
図7のA〜Dは、選択的イオン抽出を行うためのシステムの概略図である。
【0015】
図8は、圧力及び電圧処理により中間電荷を有する種を抽出する本発明装置を用いた、混合物からの帯電種の多段選択イオン抽出を示す。
【0016】
図9は、選択的イオン抽出による混合物からの帯電種の分離に使用される通常のチップ設計を示す。
【0017】
図10は、2つの差別的に帯電した種の流束(flux)モデルを圧力変化の関数として示す。
【0018】
図11のA、B、Cは、装置のT−交差点における分離前後の多数の帯電種の蛍光強度を示す。
【0019】
図12Aは、一形態の選択的イオン抽出を用いて、サンプル中の2つの差別的に帯電した種を互いに分離、抽出するのに使用されるチップチャンネル設計の他の一実施態様である。図12Bは、図12Aの装置の12B−12B線部分の横断面図である。図12Cは、2つの差別的に帯電した種の分離、抽出を示す図12Aのチャンネル配置構成(configuration)の拡大図である。
【0020】
図13Aは、一形態の選択的イオン抽出を用いて、サンプル中の複数(例えば2以上)の差別的に帯電した種を互いに分離、抽出するのに使用されるチップチャンネル設計の他の一実施態様である。図13Bは、図13Aの装置の13B−13B線部分の横断面図である。
【0021】
図14Aは、図12Aに示したものと同様な縦つなぎの(a cascade of)平行分離チャンネルを用いた一形態の選択的イオン抽出を用いて、サンプル中の2つの差別的に帯電した種を互いに分離、抽出するのに使用されるチップチャンネル設計の他の一実施態様である。図14Bは、2つの差別的に帯電した種を互いに分離する際の分離効率の向上を示す、図14Aのチャンネル配置構成の部分拡大図である。
【0022】
図15は、ミクロ流動装置に於けるサンプルから以後の分析の為の(DNA及びRNAのような)電気泳動の流動種を検出し、前もって濃縮する本発明の教示により使用することの出来るミクロ流動装置チャンネル配置の一概略図である。
【0023】
図16Aは、図15が装置のさまざまなチャンネルセグメントを通じて、圧力より生じた速度の例示を示しているミクロ流動装置チャンネル配置の一概略図である。図16Bは、図15が電気分野で装置のリザーバ1204及び1206との間に適用される際に、装置のさまざまなチャンネルセグメントを通じて、動電学的な速度の例示を示しているミクロ流動装置チャンネル配置の一概略図である。そして、図16Cは、図15が装置のさまざまなチャンネルセグメントを通じて、包括的な全種の速度をチャンネル配置の一概略図である。
【0024】
図17は、図15に示されているように一チャンネル配置を使用して一サンプル内にDNAをおおよそ7つに折り畳んでスタック(stacking)を示している一電子フェログラム(electropherogram)である。
【0025】
発明の詳細な説明
I.総論
一般に本発明は、第一のチャンネルセグメント中に主として非動電的圧力駆動流を含み、一方、接続した第二のチャンネルセグメント中に動電的駆動流を含むミクロ流動チャンネルシステムで材料を移動させる方法及びシステムを提供する。ミクロ流動チャンネルネットワークの異なる部分で異なる種類の流れプロファイルを付与することにより、特殊な流れプロファイルにより生じる恐れがある悪影響を最小にしながら、全体の操作により各セグメントを最適化できる。
【0026】
ここで使用した語句“非動電的圧力流”とは、チャンネルセグメント外部の圧力源により駆動される流れを言い、この流れは、チャンネルセグメントを介して駆動され、問題のチャンネルセグメントに電場を加えることにより、このチャンネルセグメントを介して発生する流れ(ここでは、“動電的駆動流”と言う)とは対照的のものである。圧力源の例としては、動電的圧力ポンプ、例えば問題のチャンネルセグメントとは離れたポンプ作用性チャンネル中で動電的駆動流により圧力を発生するポンプ(但し、このようなポンプは、問題のチャンネルセグメントの外部にある)を含む、問題のチャンネルセグメント外部の負圧及び正圧の供給源又はポンプが挙げられる(USP 6,012,902及び同6,171,067参照、これらの各文献は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した)。
【0027】
ここで使用した用語:動電的流れは、一般に、加えた電場下での流体又は流体運搬材料の移動を説明するために使用する。動電的流れは、一般に、電気泳動、例えば帯電種が配置される媒体又は流体を介した帯電種の移動、及び電気浸透、例えば流体の全成分を含む塊状流体の電気駆動移動の一方又は両方を包含する。したがって、動電的流れについて言及する際、予想されるものは、種の主として又はほぼ完全に電気泳動的移動から、例えば非帯電材料の場合、材料の主として電気浸透的な駆動移動までの動電的流れの全範囲、及びこれらの両極端部間に入る2つのタイプの動電的移動の範囲全体及び比率全体であると理解されよう。
【0028】
ここで使用した用語“流れプロファイル”とは、一般に、通路、導管、チャンネルを通るか、又は表面を横断する流体流又は他の材料流の特徴の全てを言う。このような特徴としては、限定されるものではないが、流速、流量、流れる流体又は他の材料の配座(conformation)及び同伴する分散プロファイルや、その他、流れの更に一般化した特徴、例えば層流、沿面(creeping)流、乱流等が挙げられる。
【0029】
II.圧力駆動流対動電的駆動流
先に述べたように、微小規模の流動チャンネルでは、圧力駆動流は、動電的駆動流とは異なる特徴を有する。特に、これらシステムでの圧力駆動流は、通路又は導管の中央部の流体が最も速く移動する所では、流体が側壁に接近するのに従って減少する流れ速度勾配により放物線流となり、また壁での流体は、流れ速度が0又は0に近くなる(図1Aの放物線流の概略図参照)。放物線流の結果の一つは、材料の流速に関連する分散水準の増大であり、チャンネルを流通する際、別の流体又は他の材料の広がりが増大する。分散、特にTaylor−Aris分散についての検討は、例えばTaylor等,Proc.Roy.Soc.London,(1953)219A:186−203;Aris,Proc.Roy.Soc.London,(1956)A235:67−77;Chatwin等,J.Fluid mech.(1982)120:347−358;Doshi等,Chem,Eng.Sci.(1978)33:795−804;及びGuell等,Chem.Eng.Comm.(1987)58:231−244参照。これらの各文献は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した。
【0030】
この分散の増大は、ミクロ流動規模では分析の解析力(resolution)低下(別のやり方で解析された種の分散で生じる)や、所定の分析に要する時間の増大(異なる流体又は材料サンプル間に必要な空間の増大で生じる)となる可能性がある。圧力駆動流は、分散の増大という欠点を有するが、高速流であり、また差別的に帯電した種に加えた電場が装置の複数のチャンネルを移行することにより生じる動電的偏り効果がないという利点がある。
【0031】
圧力駆動流の特徴とは対照的に、動電的駆動流、特に電気浸透駆動流は、流体の大部分が導管を同じ速度で移行する所では、“プラグ”流れプロファイルが生じ、外装層で少量の流体だけが低速で移動するか又は流速0に近づく(図1Bのプラグ流参照)。プラグ流は、分散水準を実質的に低下させて、導管内で別の材料領域を一層高分解能輸送すると共に、一層高分解能で種を解析できる。しかし、前述のように、動電的駆動流は、この方法で輸送される差別的に帯電した種を電気泳動的に分離又は偏らせることができる。多数の分析、例えば材料混合物の分離による電荷又は大きさに依存する分析には、電気泳動分離は有利である。しかし、分子の複雑な混合物の塊状移動による分析又は他の操作には、電気泳動偏りは、最適分析条件が少なくなり、及び/又はデータの翻訳が困難となる可能性がある。
【0032】
分析操作では、所定の操作において、異なる箇所での異なる各流れプロファイルの利点及び欠点をそれぞれ最大化、最小化したいという状況が多数ある。本発明は、これを行う手段を提供する。
【0033】
IV.混成流れプロファイル及び混成操作装置/システム
圧力流れプロファイル及び動電的流れプロファイルの異なる特徴にも拘わらず、幾つかの場合には、これらの異なる特徴から、単独の接続したチャンネルネットワークに両方の流れプロファイルを付与できることが望ましい。例えば同時係属PCT出願公開No.WO 02/10732には、この目的は、一般に、高流れ抵抗性接続チャンネルを用いて、或る領域を他の領域から流れとして実質的に単離することにより達成されると記載されている。特にサンプル導入チャンネルに負圧を加えることにより、サンプルは、装置内に引き込まれる。サンプル材料の一部は、高流れ抵抗性接続チャンネルにより分離チャンネル中に注入される。高流れ抵抗性接続チャンネルを組み入れることにより、圧力駆動サンプル装填用チャンネルから動電的駆動分離チャンネルを効果的に脱結合(decouple)することができる。前記システムの有用性にも拘わらず、一般に、これらの目的は、異なるチャンネルセグメントを、例えば高抵抗性チャンネルセグメントにより、互いに実質的に単離する必要もなく、一層簡単なチャンネルネットワーク内で達成することが望ましい。
【0034】
高スループット選別操作の場合、動電的注入又は装填に起因するサンプル偏り効果を防止するため、サンプルプラグは、圧力駆動流を用いてサンプル導入チャンネルを通って装置中に引き込まれる。圧力駆動流は、これらのプラグを相互連絡したチャンネルネットワークを通って、真空の廃棄物リザーバーに向けて移動させるのにも使用される。多く利用するため、電場は、チャンネルネットワークの少なくとも一部にも加えて、例えば帯電差により異なる電気泳動移動度を有する種の電気泳動分離を行う。電場は、圧力駆動流の他、電気浸透流を作る。動電的流れは、最小分散のプラグ流れプロファイルを作るという利点を有するが、圧力による流れが存在すると、なおTaylor分散の負の効果を与える。したがって、操作、例えば薬剤化合物の高スループット選別を一層高い解析力で達成するには、圧力駆動流の分散的寄与を最小にしなければならない。この目的は、全ての圧力流の除去で達成できるが、高スループット操作の実用性、例えば材料の過度な電気泳動偏りなく、迅速な流れを求める要求には、材料流の少なくとも一部は、圧力系システムによる駆動を必要とすることが多い。
【0035】
本発明は、一般に第一のチャンネルセグメントでは圧力駆動流を利用しながら、他の1つの接続したチャンネルセグメントでは実質的に動電的な駆動流を付与する混成方法及びシステムを提供する。ミクロ流動チャンネルネットワークの相互連絡性を考慮すると、2つの異なる種類の流れを1つの相互連絡したチャンネル構造中に一緒に組合わせるのは、各局面の制御を他方の制御から完全に分離することが困難なので、望ましくなかった。しかし、意外にも、本発明は、相互連絡したチャンネルネットワークの異なるセグメントが独立に制御可能な流れプロファイル、即ち、一方は圧力で駆動され、他方は動電的に駆動される流れプロファイルを有する相互連絡したチャンネルネットワークを供給する方法及びシステムを提供する。更に本発明は、このように独立に制御された流れプロファイルを巧みに操作して、選択された帯電種の流れを混合物から別のチャンネルセグメント中に誘導し、これにより該選択された帯電種を混合物の中から抽出する装置を提供する。
【0036】
本発明の方法及び装置は、全操作の一部の操作での圧力による流れの利点及び全操作の他の一部の操作での動電的流れの利点を利用することが望ましい場合、流体又は他の材料の輸送に特に有用である。一例として、本発明の混成システムは、装置のチャンネルに迅速な材料導入を必要とするが、放物線又は圧力による流れ条件下で行うと、分散の増大が生じる可能性がある長時間の分離、反応又は加温を要する分析を行うのに特に有用である。
【0037】
多くの薬剤目標物選別アッセイでは、ミクロ流動反応での通常の時間−フレーム(frame)が非常に遅いので、満足な検出及び分析に十分な生成物を生じないほど、反応動力学は非常に遅い。特にミクロ流動システム、例えばUSP 5,942,443;同6,046,056;同6,267,858(これらの各文献は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した)に記載の連続流選別システム、反応剤、例えば目標物及び基質、又は配位子等は、反応チャンネル内に入れて流通させ、検出窓を過ぎ、この点で反応生成物が観察される。定期的にテスト化合物、例えば薬剤候補ライブラリー中の候補化合物を流れに導入し、これら化合物の反応への影響を観察する。反応時間量を増大させるため、所定長さのチャンネル中の流速を低下させるか、或いは所定流速下でチャンネルの長さを大きくする。いずれにしても、流れが圧力駆動の場合、移動(transit)時間量に関連する実質的な分散を生じる可能性がある。分散が増大すると、連続的に導入したテスト化合物プラグ間の間隔を更に大きくする必要があるので、システムのスループットは低下する。
【0038】
テスト化合物を含む反応混合物を圧力による流れから動電的流れに移行させることにより、テスト化合物プラグの分散を顕著に増大させることなく、動電的流れ条件下で反応時間を一層長くしたチャンネルネットワークを設計することにより、反応時間は実質的に増大できる。詳しくは、Taylor−Aris分散は、もはやテスト化合物プラグの広がり要因ではなく、分子拡散が残るだけである。
【0039】
この混成システムは、例えば分離すべき材料を導入する際、又は分離した種をチャンネルネットワークの検出領域に移動する際、電気泳動分離工程の前後で材料の迅速な移動を必要とする操作にも有用である。特にサンプル材料は、圧力によりチャンネルネットワーク中に導入し、次いで、分離する種に圧力による影響なく、かつ完全に別のチャンネル構造を必要とすることなく、材料のアリコートを別の電気泳動分離チャンネルに注入することができる(例えばPCT出願公開WO 02/10732参照、この文献はあらゆる目的のため、全体をここに援用した)。同様に、検出前に圧力流れ条件下で後電気泳動分離操作を行うことができる。
【0040】
一例として、通常、材料を圧力による流れ下に分離導管中に導入する際は、この圧力流は、流れる材料に対し電場を加えている間、続ける。この圧力流のため、加えた電場下で電気泳動的に分離されている種束(species bands)を含む、導管中を移動する材料は、分離操作の解析力を低下させる可能性があるTaylor−Aris分散を受ける。この分散を最小にするため、一層高圧下で材料を更に速くチャンネル内を移動させ、滞留時間を低下させるようにすることができる。不幸にも、この方法は、分離時間の減少により、分離の解析力を低下させる。或いは、サンプルを一層低速かつ低圧で移動させ、分離時間を増大させることができるが、この方法は、放物線流れ条件下では対流時間が増大するという逆の結果を生じる上、Taylor−Aris分散が増大する。いずれの例でも、一方のパラメーターを変えることにより得られた利益は、他方のパラメーターの犠牲により、実質的に失われる。圧力系と動電的流れプロファイルとを脱結合することにより、本発明により包含されるように、例えば注入のための圧力系流れを増大させて、滞留時間を減少させることができる。更に、この圧力流れは、動電的に駆動した流れ領域又はチャンネルに結合していないので、材料を分離できる時間の長さに影響を与えない。同様に、分離される材料は、いかなる圧力流れによっても駆動されないので、分散の増大を生じることなく、分離時間を延長することができる。
【0041】
前述のように、後分離方法は、ここで説明したように構成したシステムでも任意に行われる。例えば電気泳動的に分離した蛋白質は、相対分離を変えることなく、抗体で標識できる。これは、蛋白質の電気泳動分離後に標識が起こるからである。動電的駆動の移動下で行った場合、抗体標識は、実質的に蛋白質の電気泳動移動度を変えることができ、これにより分離を大きく無効にしない。抗体標識について説明したが、この方法は、例えば大きさ、電荷又は配座による変性分子の移動度を変える、いかなる後分離改変に対しても特に有益であることが理解されよう。
【0042】
簡単に討議するため、チャンネルネットワークに材料を圧力により迅速に導入し、次いで材料を動電的に移動させるという点から混成システムを一般的に説明する。しかし、これら混成システムの異なる流れプロファイルは、いずれの順序、例えば圧力の次に動電が続き、又は動電の次に圧力が続いても、或いは異なる流れプロファイル、例えば圧力/動電/圧力を有する3つ以上の領域で生じてよいことは理解されよう。更に、異なるチャンネルセグメントは、例えば主として圧力駆動流れプロファイルから主として動電的駆動流れプロファイルに変えるか、或いはその比率を実質的に逆に変更するなど、単に、他の連結したチャンネルセグメントに比べて、圧力による流れと動電的駆動流との比を考慮して調節するだけでよいことは理解されよう。
【0043】
一例のチャンネルネットワークを図2に示す。図示のように、ネットワーク200は、第一及び第二端部を有する第一チャンネルセグメント202を有し、該第一チャンネルセグメントは、第一及び第二端部を有する第二チャンネルセグメント204と第一流動接続部206で連結している。ここでは“端部”と言ったが、チャンネルセグメントの端部は、若干、任意的であり、また任意的であってもよいが、チャンネルの実際の終点を必要としないことは理解されよう。こうしてチャンネルセグメント端部は、1つのチャンネルセグメントから他の1つのチャンネルセグメントまでの遷移部分(transition)を含むことができる。これらのチャンネルセグメントは、共直線的であり得るし、及び/又は、さもなければ等質であり得る。第三チャンネルセグメント208も一端部で流動接続部206と接続している。第三チャンネルセグメント208は、中間接点(tap−off)への通路を供給するか、或いは圧力又は動電的力を第一及び第二チャンセグメントに加えるためのアクセスチャンネルとして機能する。
【0044】
操作時、第一チャンネルセグメント202の第一端部とアクセスチャンネル208間に(実線で示すように)圧力差を加える。第二チャンネル204の第二端部とアクセスチャンネル208間に電気システム218により電圧勾配を加え、圧力駆動流で生じる第一チャンネルセグメント202からアクセスチャンネル208に入る流れに、少なくとも或る程度逆らうアクセスチャンネル208からの流れを生じる。幾つかの場合、動電的流れは、例えばチャンネル208に逆流するチャンネル204内のいかなる流体力学流にも完全に逆らう。或いは、このチャンネル内のいかなる流体力学流に逆らわせるため、チャンネルセグメント204の端部に追加の圧力又は真空源を加えてもよい。特定の好ましい局面では、アクセスチャンネル208からの動電的駆動流は、第一チャンネルを移行する材料を、例えばアクセスチャンネル208中に移動することなく、接続部206を通って第二チャンネルセグメント204内に確実に円滑に移動させると共に、第二チャンネルセグメント204中の流体に対し、圧力差による影響を確実に受けさせないため、例えばチャンネルセグメント202からアクセスチャンネル208に入る圧力駆動流にほぼ完全に逆らうように調節される。前述のように、この調節は、任意に又は更にチャンネルセグメント204に正又は負の圧力を加えることにより行われる。
【0045】
チャンネルセグメント208及び204を通る動電的流れの速度は、チャンネル内に配置された特定流体におけるチャンネル表面上の電荷水準とチャンネルに加えた電場水準の両方により指令される。所定流体での表面電荷は、表面のゼータ電位とも呼ばれる。前述のように、チャンネルネットワークにおける電気浸透流の水準は、圧力による流れの水準を相殺する(cancel out)するように構成できる。或いは、チャンネルセグメント202からチャンネルセグメント204に1つ以上の異なる種を移送するため、電気泳動に依存しながら、電気浸透流を減少できる。電気浸透流の減少は、低ゼータ電位を持つようにチャンネル及び/又は流体材料を選択するか、或いはコーティング用ポリマー等のような表面改質剤をチャンネル中に取り込むことにより達成できる。低EO流チャンネル組立用の各種の異なる材料は、USP 5,885,470、同6,156,181及び同6,238,538に記載されている。これらの各文献は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した。一方、各種の異なる表面改質用ポリマー溶液は、USP 5,948,227及び同6,042,710に記載されている。これらの各文献は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した。
【0046】
図3に第一及び第二チャンネルセグメント202、203の各流れプロファイルを各々概略的に示す。図示のように、第一チャンネルセグメント202では、圧力駆動流は、放物線流れを生じ、一方、第二チャンネルセグメント204の動電的流れは、プラグ流を生じる。アクセスチャンネル208は、該チャンネル208内の圧力流及び外の動電的流れが正味0の流速になると仮定すると、正味の流れなしで示される。
【0047】
流動可能に接続したチャンネル中で圧力及び/又は動電的流れの水準を別々に制御する能力には、相互連絡したチャンネル中での動電的流れプロファイルと圧力駆動流れプロファイルとの完全な分離から、相互連絡したチャンネル内の動電的駆動流と圧力駆動流との相対比の適度な変化に亘る広範な各種の異なる用途がある。
【0048】
本発明のシステム及び方法の利用例としては、長い分離時間を必要とする分析による分離、例えば最小限に異なる種の分離、分離された種の電気泳動移動度に影響を与える後分離反応、又は材料が電気泳動的に容易に偏る材料、例えば材料中の異なる種の間で広範に変化する電荷を有する材料を含まない場合、長い距離に亘る材料の移動が挙げられる。
【0049】
本発明により特に利益を受けるシステムの一例は、連続入力ミクロ流動高スループット薬剤選別システム、特に移動度シフトによる検出計画を行う選別システムである。要約すると、これらのシステムは、薬剤テスト化合物の別々のプラグを標的反応剤の流動流中に連続的に導入して、これら反応剤との相互作用に対するテスト化合物の効果(あれば)を決定する。通常、反応剤としては、酵素基質対、受容体配位子対又はその他の相補的結合対、又は細胞等が挙げられる(例えばUSP 6,046,056参照)。異なるテスト化合物は、システムの複数のチャンネルを流通するので、これらテスト化合物間で間隔を維持することにより、効果の同定及び効果と特定テスト化合物との相関関係は、通常、促進される。特定反応の場合、反応の進行の唯一の徴候は、標識した反応剤によっても、標識反応剤の電荷水準の変化である。標識反応剤は、その電気泳動移動度に変化を生じる。このような反応例としては、ホスフェート基の付加及び除去により、生成物に比べて基質の電荷を変化させるホスファターゼ及びキナーゼ反応が挙げられる。他の多数の反応は、この配置構成に適合するか、或いはこの配置構成に適合するように容易に構成され、例えばプロテアーゼアッセイ、非帯電標識の同族体、即ち、PNAを用いた核酸アッセイ等がある。
【0050】
同様に、長い反応時間を要するシステムでは、長い流動時間と共に分散が増大するので、隣接して導入したプラグ間で分離を維持するのは、一層難しくなる。したがって、テスト化合物間の間隔を増大して、システムのスループット速度を低下させなければならない。しかし、反応剤及びテスト化合物の流動流を動電的又は電気浸透的流れプロファイルに遷移させることにより、これに応じて分散を増大させることなく、流れ時間を増大し、これにより隣接する入力テスト化合物プラグの間隔又はピッチを維持すると共に、スループットを保持することができる。
【0051】
要するに、テスト化合物は、サンプリングシステム、例えばミクロ流動装置中に一体化したピペッターエレメントでシステムに真空を加えてテスト化合物に引き入れることにより、システム中に取り入れる。チップ中にサンプルプラグを引き入れる上記真空下では、反応成分、例えばチップ上に一体化され、異なるウエルから酵素及び基質を副チャンネル経由で主チャンネルに接続した酵素及び基質も引かれる。これらの試薬は主チャンネル中で混合し、別の反応プラグ中の異なるサンプルプラグと混合される。所定の加温又は反応時間後、反応混合物プラグは、電場を加えた時だけ実質的に移動する場合、検出点を過ぎて移動するまで、本発明による動電的流れプロファイルに遷移させてもよい。伝場を加えると、Taylor分散により生じる解析力に伴う低下もなく、種の電気泳動分離が可能である。別の局面では、材料の検出又は他の特定の操作前に、材料を圧力による流れプロファイルに戻し遷移させてもよい。
【0052】
a.流れプロファイル跳躍
移動度変化検出計画を利用した連続流アッセイフォーマットの一例を図4に概略的に示す。このアッセイフォーマットでは、アッセイ用試薬、例えば基質及び酵素、又は相補的結合パートナー、即ち、受容体/配位子又は核酸は、通常、反応中、電荷の変化を受ける、例えば標識された反応剤から帯電部分が付加されるか除去される標識反応剤を含む。一例として、通常のキナーゼアッセイでは、標識されたキナーゼ基質は、キナーゼ酵素と接触させる。このキナーゼ酵素は、基質に比べて生成物の電荷にかなりの変化を生じる高帯電のホスフェート基を基質に付加する。この電荷差は、バックグラウンドの基質水準から生成物を分離するのに使用される。これらの試薬は、流動チャンネルと平行に連続的に流れ、これにより反応の定常状態水準は、連続的に反応し分離する試薬の結果である一定の信号を生じる。問題の反応の作動体を例えばスラッグ中の反応に導入すると、作動体は、定常状態の反応/分離を乱し、チャンネルから検出された信号水準に指示的変化又はサインを生じる。連続流移動度変化アッセイの概略は、USP 5,942,443、同6,046,056及び同6,267,858に記載されている。これら文献の全内容は、ここに援用した。
【0053】
本発明と関連する図4を参照すると、一例のアッセイ装置400は、第一チャンネルセグメント404と流動可能に連絡するサンプリングエレメント402、例えばミクロ流動装置に取付けたピペット用毛管を有する。第一チャンネルセグメント404は、第一流動接続部408で第二チャンネルセグメント406と連結している。第一流動接続部408には、第三チャンネルセグメント410も流動可能に連結している。これらの交差するチャンネルは、図1に示すような基本的制御構造を形成する。移動度変化による薬剤選別アッセイ用の操作では、アッセイ試薬は、それぞれリザーバー/試薬源416、418に連結した副チャンネル412、414からチャンネルセグメント404内に導入される。
【0054】
再び図4を参照すると、テスト化合物450は、サンプリングエレメント402を通って流体スラッグとしてサンプリングされ、圧力駆動流下でチャンネルセグメント404中に移動する。チャンネルセグメント404では、テスト化合物450は、リザーバー416、418からの試薬と混合し、反応混合物スラッグ452中のこれら試薬と相互作用し、その結果、テスト化合物が、関連の反応の作動体、例えば禁止剤であれば、テスト化合物は、反応の水準を変える。前記キナーゼ反応の場合、禁止剤は、低帯電の生成物を生成させる。
【0055】
関連の反応スラッグ(例えばテスト化合物を含有するスラッグ)は、第一流動接続部408中に移動すると、スラッグは、圧力駆動流から動電的駆動流に移行する。特に、チャンネル404から出る圧力駆動流の水準に合わせるため、チャンネルセグメント406中に移動する動電的流れ水準を調節することにより、チャンネルセグメント404から流動接続部408を経由してチャンネルセグメント406に至る材料の継ぎ目のないハンドオフ(hand−off)が保証できる。
【0056】
いったん反応混合物がチャンネルセグメント406中に移動すると、混合物は、例えば電気制御システム420により動電的力を受け、この動電的力は、チャンネルセグメントを通る流体を直ちに移動させ、反応混合物中の差別的に帯電した種を、分離された種454として示すように、電気泳動的に分離する。このシステムは、連続流動システムなので、電気泳動分離は、定常状態では余目立たない。これは、例えば基質よりも速く移動する生成物は、単に遅い移動を追い越すだけで、所定の場所では、生成物及び基質の水準に正味の効果的変化が生じないからである。しかし、テスト化合物が、この定常状態の反応を乱す場合には、得られる生成物の水準を局部的に増大又は減少させる。定常状態に比べて増大した種、例えば生成物又は基質の電気泳動移動度により、テスト化合物を含む反応混合物スラッグの前又は後に検出可能な標識濃度を生じる。例えばテスト化合物が反応の禁止剤である場合、禁止剤のスラッグは、基質を局部的に増大させる。基質の生成物に対する電気泳動移動度の差により、例えば検出窓456での信号の増大又は減少のような、定常状態の標識に偏差が生じる。
【0057】
任意の場合、チャンネル410の中からチャンネル406に入る動電的駆動流は、電気浸透流により多かれ少なかれ支配できる。特に、関連の種の電気泳動移動度が圧力流向流を克服するほど十分高いと、分散の水準が一層大きくなるが、一層低い電気浸透速度が使用できる。
【0058】
同様に、高感度を要するアッセイを行なう場合、生成物よりも低い電荷を有する基質をチャンネルセグメント404からセグメント410中に優先的にサイホン吸引し、これによりチャンネル406への流入を防止するように、異なる流れの水準を調節できる。一方、生成物の電荷及び電気泳動移動度を高くすると、生成物を優先的にチャンネルセグメント406に移行させ、ここで標識した基質バックグラウンドの不存在下に生成物を検出し、これによりアッセイの感度を向上できる。例えば2001年7月31日出願の同時係属US特許出願No.60/309,113参照。この文献は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した。上記方法は、低速動力学による酵素反応等を使用するアッセイに特に有用である。
【0059】
b.選択的イオン抽出
本発明装置は、加えた圧力又は電場の制御、或いは加えた圧力、電場の両方の制御で差別的に帯電した種の流れプロファイルを管理することにより、サンプル混合物からこれら各種の種を分離するのにも有用である。多数の圧力及び電圧源を備えた流体制御システムを用いると、ミクロ流動チャンネルネットワークのいずれの部分での流体力学流及び電場も所望値に設定できるように、装置のいずれの所定チャンネルセグメントでの圧力及び/又は電圧も制御できる。本発明は、2つの異なる流れプロファイル、即ち、圧力による及び動電的駆動のプロファイルを重複させ、同時に各流れプロファイル下で、流速を制御して、この流体中に、流体で運ばれたサンプル中に含まれる差別的に帯電した種を容易に分離及び単離するのに十分な量まで含有する所定種について正味速度を得ることにより、チャンネルネットワークの異なるセグメント中の流体流を独立に制御する装置を提供する。こうして、以下に説明するT−交差点のようなチャンネル交差点に送られた、異なる電気泳動移動度を有する2つ以上のサンプル種の混合物(例えば中性基質及び以下の実施例1で説明するような酵素反応の負帯電生成物)は、サンプル種の異なる電気泳動移動度に基づいて、交差点の別々のチャンネル内の分離成分に完全に分離できる。
【0060】
特に、所定種の分離は、圧力駆動又は流体力学流の速度を動電的速度と釣合せてその流れを所定の方向に向け、これにより第一の電気泳動移動度を持った種を分離して装置の第一領域中に流入させながら、第二の電気泳動移動度を持った第二の種を装置の第二領域中に流入させることにより達成される。種の流体力学又は圧力駆動速度は、圧力で誘引された流れによる流速である。種の電気泳動速度は、加えた電場を掛けた電気泳動移動度(μep)である。所定チャンネルセグメントにおいて、圧力による流れと動電的流れとの重複を用いた実施態様では、このチャンネルセグメントで移行する種又は材料の正味速度は、水田津流の速度と動電的速度との総合計である。以下の例は、チャンネル領域における所定種の正味速度についての計算法を示す。
【0061】
例えば種Aに−1psiの圧力を加えて流体力学流速度を0.1cm/sとし、2000V/sの電場(E)で電気泳動移動度(μep)を1.4×10−4cm/V−sVとし、流体力学流と同じ方向にした場合、種の正味流れは、次の通りである。
正味流れ=流体力学流の速度+〔電気泳動移動度(μep)×E〕
Aの正味流れ=0.1cm/s+0.28cm/s
Aの正味流れ=0.38cm/s
【0062】
本発明は、相互連絡したチャンネルネットワークの各種チャンネルセグメントにおいて、加えた圧力及び加えた電場を制御して所定の種を分離することにより、多数の流体で運ばれた種の流速を巧みに操作できる。図7は、帯電した種をマルチポート(multiport)圧力及び電圧制御により連続的に制御する酵素アッセイ用の装置及び操作を概略的に示す。装置700は、サンプル源702に接続した第一端部と、廃棄物リザーバー728中で終わる第二端部とを有する主チャンネルを備える。主チャンネルは、チャンネルセグメント702、705、706を有する。副チャンネル714、716は、チャンネルセグメント702で主チャンネルと交差する。副チャンネル704は、チャンネルセグメント705で主チャンネルと交差し、リザーバー726内で終わる。操作中、例えば基質と酵素との相互作用の、流体で運ばれた禁止剤用のような一連のサンプルプラグは、リザーバー726(又はチャンネルシステム中のリザーバー728のような他のリザーバー)に負圧を加えることにより、サンプル源720、例えばピペット用毛管又はリザーバーを通って主チャンネル中に引き込まれる。副チャンネル714、716からチャンネルセグメント702中にアッセイ試薬を導入し、セグメント702内のサンプルと相互作用させて、差別的に帯電した種を含む混合物を形成する。例えばキナーゼ酵素アッセイのような酵素アッセイでは、アッセイ試薬は、酵素及び基質を含み、これらはテスト化合物の存在下で相互作用して、生成物、酵素及び基質を含む混合物を形成する。これにより、生成物及び基質は、異なる電荷、したがって異なる電気泳動移動度を有する。サンプルプラグのサンプリング及び主チャンネルへのアッセイ試薬の流れは、リザーバー726に負圧を加え、この圧力をリザーバー722、724、728で維持することにより達成される。チャンネルセグメント702の混合物に含まれる各異なる種の正味速度は、全てのリザーバーに加えた圧力の組合せにより誘引された流体力学速度に等しい。しかし、いったん流体混合物が接続部705に入ると、リザーバー726、728において加えた電圧勾配により作られた電場も受ける。電圧勾配は、チャンネルセグメント704、705、706において電場を作る。接続部705では、基質及び生成物分子の電気泳動移動度が同等でないため、分離を起こす生成物、基質の両方の正味速度に有限の差が生じる。分離された種は、リザーバー726に加えた圧力を調整することにより、ほぼ即座に更に別々に方向転換され、これにより、所定値未満の電気泳動移動度を有する種は、分離され、チャンネルセグメント706中に方向転換され、一方、所定値よりも大きい電気泳動移動度を有する種は全て、チャンネルセグメント704中に流入する。或いはリザーバー726に加えた電場は、所定値を超える電気泳動移動度を有する種が、分離され、一方、所定値未満の電気泳動移動度を有する種は全て、チャンネルセグメント706中に流入するように、調整される。
【0063】
本発明の教示を一層良く理解するため、流動接続部705における差別的に帯電した種の分離について、以下、更に詳細に説明する。図示のように、T−交差点チャンネルネットワークは、共通の交差点又は流動接続部705で出会うセグメント702、704、706を有する。これらの各チャンネルセグメントは、流体出入口又はリザーバー、或いは前述のような、また図7Aに示すような外部サンプリングエレメントに接続している。マルチポート圧力兼電圧制御器は、各チャンネルセグメントに接続した異なるリザーバー又は流体ポートで加えた圧力及び加えた電場を制御するのに使用される。明確化のため、各チャンネルセグメントに対し加える電圧及び圧力を言うために、下に小さく書いた表記を用いる。例えばV及びPは、チャンネルセグメント702に対し加えた電圧及び圧力を言い、V及びPは、チャンネルセグメント704に対し加えた電圧及び圧力を言う。個々のチャンネルセグメントに対し、独立に制御された圧力及び電圧を付与できるマルチポートモジュールを用いることにより、本発明のシステムは、各チャンネルセグメント内の流れパターンを制御し、これにより特定量を超えた電気泳動移動度(μep)を有する種は全て、一方向に流れ、また上記特定量未満の電気泳動移動度(μep)を有する種は全て、第二の方向に流れる。
【0064】
更に図7のB、C、Dは、差別的に帯電した種708、710の流れに対するマルチポート圧力兼電圧制御の効果を示す。ここで特定の仮定を行う。例えば種708は、電荷が0(例えばZ=0)で、一方、種710は、高度に負帯電した(例えばZ=−2)ものと仮定する。これらの仮定は、簡易化及び明確化の目的で行ったが、選択的イオン抽出の原理は、複数の種が、差別的に帯電しているか、或いはこれらの種が同じ電荷を有するが、異なる質量を有する限り、混合物からいずれの種の分離にも利用できることに注目すべきである。異なる電荷は、正電荷対負電荷、高正電荷対低正電荷及び高負電荷対低負電荷を包含する。
【0065】
更に、塊状流体の電気導電率は、T−交差チャンネルネットワーク中で均一であると予想される。また電気浸透流は、例えば前述のようなチャンネル壁上への表面電荷の堆積を抑えるように、チャンネル壁に適当な表面コーティングを付与することにより、最小にするか又は中和することが好ましい。しかし、本発明が電気浸透流条件下でも使用できることは、理解すべきである。これらの仮定下では、種708、710の圧力駆動流は、P1=P、P2=0、P3=P/2と設定することにより確定される。この場合、各チャンネルセグメント702、704、706において対応する流速Qは、それぞれQ1=−Q2、Q3=0である。換言すれば、チャンネルセグメント702を通ってチャンネルネットワークに入る流体は全て、チャンネルセグメント704を通って出るし、したがって両種708、710は、図7Bに示すように、チャンネルセグメント704に入る。同様に、電場は、例えばチャンネルセグメント704、706間にV2=V、V3=0、V1=V/2を適用することにより確定できる。電圧V1は、リザーバー722、724のいずれか1つ、又はチャンネルセグメント720と流動可能に連結したリザーバー(又は毛管エレメント)にこの適当な電圧を加えることにより設定できる。交差点705に入ると、流体混合物は、V2、V3で作られた電圧勾配により電場を受ける。したがって、ここで流体種は、圧力誘引流と動電的流れとの組合せによる正味流れを経験する。換言すれば、種の平均流体力学速度(V)と平均電気泳動速度(Vep)との比に従って、この種は、チャンネルセグメント704又は706に完全に移送されるか、或いはチャンネルセグメント704、706間に分割できる。この説明は、各種チャンネルセグメントでの圧力設定の変化を参照して行ったが、この点で本発明を限定する意図がないことを理解すべきである。同様な分離を達成するため、電圧又は圧力或いは電圧、圧力の両方に変更を行うことは可能である。
【0066】
本発明の非限定的教示の一例として、図7のB〜Dは、他のバラメーターを一定に維持しながら、副腕チャンネルセグメント704に加えた圧力を変化させた図7Aに示すチャンネルネットワークのT−交差点の概略図である。チャンネルセグメント704に加えた圧力が極めて低い場合、図7Bに示すように、チャンネルセグメント706には逆の流体力学速度が確立する。この速度は、種710の正味速度が流体力学速度で支配されて、チャンネルセグメント704に入る種710の流れを生じるように、帯電種の電気泳動速度よりも大きい。種708は、Z=0の正味電荷を有し、したがって正味速度は、チャンネルセグメント704中にも流入させる流体力学速度に等しいと予想される。したがって、両種708、710はチャンネルセグメント704中に流入し、チャンネルセグメント706沿いに設けた検出窓では種は殆ど又は全く検出されない。
【0067】
P2を徐々にP3に向けて増大させると、電気泳動速度は一定に保持しながら、流動接続部705及び次にチャンネルセグメント706における流体力学速度は低下する。特定の圧力設定では、帯電種710の電気泳動速度は、正味速度が、帯電種をチャンネルセグメント704中に流入させる電気泳動速度により支配されるように、流動接続部705における流体力学速度を超え、一方、非帯電(又は低帯電)の種708は、図7Cに示すように、チャンネルセグメント704中に流入し続ける。図7B及び図7Cに示した流れパターン間の遷移のための正確な圧力設定は、前述のように、流体力学速度と電気泳動速度との合計である各々の種の正味速度に依存し、これにより最高電気泳動移動度を持った種は、まずチャンネルセグメント706中に抽出される。
【0068】
“分離窓”は、副腕チャンネルセグメント704に対する圧力が変化し、これにより高帯電の種710が検出チャンネルセグメント706中に抽出される際に作られ、一方、低帯電の種708、したがって低電気泳動移動度は副腕704中に流入し続けることに注目すべきである。副チャンネルセグメント704への圧力P2が更に増大すると、流体力学流は、このチャンネルセグメント中で向きを逆転し、また両種708、710が、図7Dに示すように、チャンネルセグメント706中に流入するように、流動接続部705及びチャンネルセグメント706には、正味の前進圧力駆動速度が作られる。
【0069】
この流体分割技術の原理は、1つ以上の種が帯電するか(単一種について)又は差別的に帯電する(2つ以上の種について)限り、或いは2つ以上の種が同じ電荷を有するが、異なる質量を有する限り、混合物から1つ以上の種を分離又は抽出するために利用できることに注目すべきである。例えば本発明の教示は、例えばDNA、RNA、又はその他の帯電ポリマー等の帯電分子のようなサンプル溶液中の単独の帯電種を抽出する(例えば濃縮する)のに使用できる。このような帯電分子は、例えばT−チャンネル交差点の一チャンネルセグメント中に抽出(したがって濃縮)でき、次いでここで、例えば更に分析及び/又は検出のために流し、或いはこの装置中で更に濃縮できる。
【0070】
本発明の教示は、特にペプチド、蛋白質、ヌクレイン酸(例えば、DNA或いは、RNA)及び多糖類のような帯電した生体分子を含む、帯電した合成ポリマー及び以後の分析等、即ち癌スクリーニングに於いて発生する稀な分子の事象の為のプローブDNAも又同様に、電気泳動技術によって典型的に分離されて抽出し及び、前濃縮している複数のサンプルの為に役立つものである。例えば、2002年12月20日に出願した「ミクロ流動装置に於けるDNAの単一分子増幅と検出」というアメリカ合衆国優先権番号60/436,098号の共同特許出願により十分に開示されており、ここに参照されたことによって組み込まれている全含有物の単一分子増幅は、一つのサンプルに於いて、例えば病原診断(例えば、癌診断)、病原体の検出、稀に環境ヌクレイン酸の検出等、稀にヌクレイン酸の利点である検出及び統計的な特徴の為に使用されるはずである。例えば、多くの個体増幅反応は、例えば反応混合物に於けるヌクレイン酸の利点が同定されるまで、各々の反応混合物の殆ど、稀にヌクレイン酸の利点(例えば1で)はなく、或いは稀にヌクレイン酸の利点の複製もなく、稀にヌクレイン酸の利点からなる一つのサンプルから誘導されてきた反応混合物上で機能されるはずである。
そのような応用に於いて、ミュータントDNA分子への自然タイプの割合については、100:1となるように期待されている。稀な事象を算出する為、遺伝子タイプシステム(a genotyping system)を使用する際には、該システムの処理量を増加させるのに出来る限り、迅速に外部のミクロ滴定濃度プレート(或いは、他の外部のサンプル・ソース)から吸収されてきた一DNAサンプルを処理するのが望ましい。
【0071】
高処理量ミクロ流動システムに於けるこうして組み入れられた、高処理量増幅システムは、例えば該ヌクレイン酸の利点が検出されるまで、多くの低複製数増幅反応を機能する事によって、そして/或いは、依存可能で統計的な有利な点が機能されているヌクレイン酸の利点の十分な複製を検出されるまで、分析される一サンプルに於いて実際極めて低濃縮にあるヌクレイン酸の利点を検出するのに有用とされるこうした方法を機能することが特に良く適用されている。稀にヌクレイン酸を検出するのに有用とされる統合されたミクロ流動遺伝子タイプ・システムの一例として、例えば、2002年4月11日に出願した「高処理量遺伝子分析の為のシステム及び方法」というアメリカ合衆国優先権番号10/123,100号の共同特許出願に記述されており、ここの全ての含有物は、ここに参照されているように組み込まれている。該システムは、試薬アッセンブリー、ヌクレイン酸増幅、そして該’100アプリケーションの図面第7図及び第8図に図示されているように一つのミクロ流動チップ上に遺伝子を全て読み出す事を統合しています。該チップ上に置かれるPCRに必要な該試薬、そして試験されるべき該ヌクレイン酸(例えば、DNA)複数のサンプルは、一つのミクロ滴定濃度プレートから該チップに存在している。該チップは、それに添付されるよう細孔を持ち、緩衝器を交互にする(例えば、自然タイプ及びミュータントDNAの何れをも含んでいる)該ヌクレイン酸の複数サンプルは、該細孔を通じてチップ上にもたらされるのである。ヌクレイン酸の複数サンプル、ポリメラーゼ、そしてプライマー(primers)及びプローブ(probes)のような他のPCR試薬は、メイン・ミクロ流動チャンネルに吸引、圧力、電気浸透或いは、電気連動性流出等により引き寄せられ、そして全ての構成成分を該メイン・チャンネルに流入後、最初の2〜3秒で混合します。これらは、電気の流れの応用によって熱せられたチップ上に於いて、鉄の痕跡を持つ反応部分或いは、チャンネルにそれから移動します。反応チャンネルを通じて反応混合プラグが動くので、反応チャンネルはDNAのようなサンプルに於いてヌクレイン酸を増幅し熱せられ、そして冷却される。チップの複数のチャンネルが、形成されそして、各々のサンプルが特殊な数の増幅サイクルを経験出来るように、流動制御システム(例えば、吸引)が駆動する。増幅によって発生したフッ素の臭気信号は、サンプルにヌクレイン酸分子を検出する為に流動小径の末端にて検出される。
【0072】
本発明の教示は、ユニット時間(unit time)につき遺伝子タイプシステムに於いて、ミクロ滴定濃度プレートに一或いは、それ以上帯電した構成成分を含んでいる一つのサンプルの大きな容積を処理する手段として使用されるのである。’100アプリケーションと、通常上記に記述した例えば、熱した(熱サイクル化した)反応チャンネルは、およそ40mmの長さを持つ記述されたチップのチャンネル内に機能された増幅サイクルの望ましい数に基づいて、計算されており、修正を行った長さである。典型的なミクロ流動チャンネル外形にとって、(例えば、およそ200ミクロン以下のチャンネルの幅、そして/或いは深さを持つチップ、例えばおよそ100ミクロン以下のもの)これは、熱せられた反応チャンネルを通じて、割合に低流動レートへ置き換えている。相対的に大きなオリジナルDNAサンプル容積に含まれていた単に、2〜3の稀なミュータント分子があるならば、(例えばおよそ5つのミクロ滴定濃度の注文に於いて)ミクロ滴定濃度プレートの床に配列させ、それからこれらの複数の分子に接することは、とても長い時間を費やすことになる。
【0073】
‘100アプリケーションに記述されていた遺伝子タイププラットホームにとって、例えば(DNAのような)サンプル内に一つ、或いは多くの帯電種の抽出及び前濃縮は、サンプルが熱せられた反応チャンネルに流入する前に継続的な流れの下で発生しており、ミクロ流動チップ配置は、前端抽出及び前濃縮として使用される図15及び図16に図示されている。図15に図示されているように、疾病のDNAサンプル(或いは帯電した複数の分子を含んでいる如何なるサンプル)は、相対的に低電気伝導率を持ちながら低イオン強力バッファーに於いて、
(商業的に入手する事が可能な従来型96,384,或いは1536床プレートとして)ミクロ滴定濃度プレート1200の一つ、或いは多くの床に位置している。複数のサンプルは、大きな圧力駆動流れが、チャンネルセグメント1202,1208,そして1210に沿って、そしてリザーバ1204方向というようにリザーバ1204へ吸引を適用する事によって相対的に高い流れの割合(例えば、約3Nl/s)で細孔1202を通じて吸収されている。二次元チップの配置の為に細孔1202は、サンプルが置かれているリザーバの中にサンプルを置き換える事が出来、そしてそれからリザーバ1204に適用された吸引は、チャンネルネットワークに流れるようにサンプルリザーバ内にサンプルを生じさせる事が示されている。同時に、大体低い正の圧力或いは、吸引は、反応チャンネル内の圧力流れを作動するように反応チャンネル1216に流動的に一対となった装置の一つ、或いは多くのリザーバに応用されるはずである。例えば、以下に記述されているように、かすかな正の圧力は、連続的な流れの状態の下では反応チャンネル内で発生する熱循環運動(例えば、PCRによる)にとって十分である反応チャンネル1216を通じて正の圧力流れを立てるようリザーバ1206(そして、反応チャンネル1216の下流にある図示されていないリザーバにかすかな吸引が適用され)に応用されるはずである。かくして、図16Aに記されているように適用された圧力そして/或いは、吸引(そして、さまざまなチャンネルセグメントの範囲)に基づいて、チップのさまざまなチャンネルセグメントの各々に、圧力駆動速度(Vp)が確立されるはずである。即ち、圧力駆動速度とは、装置の反応チャンネル領域にある(例えば、反応チャンネル1216内の一秒間に約0.4mm)よりも装置の前端にある(例えば、チャンネルセグメント1208内の一秒間に約3.2mm)ようにかなり高い水準にあるのである。例えば、適用された圧力そして/或いは吸引は、チャンネルセグメント1208内の全流れの割合が、チャンネルセグメント1216内の流れの割合の約二倍であり、例えば、チャンネルセグメント1216内の流れの割合の約五倍であり、例えば、チャンネルセグメント1216内の流れの割合の約十倍かそれ以上であるようにチャンネルの次元が選択され、確立されるはずである。
【0074】
イオン抽出の選択性は、それからサンプルの他のコンテンツから帯電したDNAを抽出するのに使用される。図16Bに示されているように、電気分野ではDNAの電気泳動速度(Vep)が、圧力駆動速度よりも大きいと仮定した場合、サンプル内のDNAを以下のリザーバ1204方向へ、かなりの圧力駆動流れ小径から妨げる為に、リザーバ1204及び1206との間に応用されるのである。
換言すれば、リザーバ1204及び1206との間で適用された電気分野ではサンプル内の帯電したDNAは、全ての種が電気泳動の可動性を以下の与えられた数値によって、チャンネルセグメント1210に流れながら、チャンネルセグメント1212に分離され、そして監理されるよう調整されるはずである。かくして、例えば電気分野でリザーバ1204及び1206の間に確立されたもの、つまりサンプル内の帯電したDNA電気泳動速度(Vep)は、チャンネルセグメント1210に於いて一秒間に約4.2mmのようであり、(図16Aに示されている一秒間に約3.1mmの圧力駆動速度より優れている)こうして、図16Cに示されているように強いてDNAをチャンネルセグメント1212に入れる事により一秒間に約1.1mmもの総合的な全速度(VT)を産み出している。
DNAの電気泳動の可動性は、おおよそサイズの機能(例えば、ベース・ペアーの数)としての連続性であり、自由な区域である為に多種なDNAサイズを含む疾病のサンプルの異質性にも拘わらず、選択的なイオン抽出プロセスのとても
素晴らしい調節を提供する必要はないのである。
【0075】
チャンネルセグメント1212内に抽出されたDNAを濃縮する為に、床1206内の流体は、高度な塩バッファーにあって(例えば、その高度なイオン強さに基づく比較的高度な電気伝導性を持ち)二つの目的を供給する。第一には、ボルトの低下及びしかもチャンネルセグメント1214に於ける電気分野を最小にすることであり、そして第二にはチャンネル交差1215で発生する分野で増幅された積み重ねにとっての高度な塩/低度な塩の境界を確立することである。床1206からの高度な塩の流体のかすかな正圧の流れ(例えば、図16Aに示されているようにチャンネルセグメント1214内に一秒間に約0.3mmのようである圧力駆動速度を産み出している。)は、チャンネル交差1215で発生する積み重ねにとって高度な塩/低度な塩の境界が必要とされ、そして更にはDNAをチャンネルセグメント1214へ導入するのを妨げている事が持続し、構想されている。こうして、サンプル内のDNAはチャンネル交差での高度な塩/低度な塩の境界の実在によってチャンネル交差1215に積み重ねられるのである。
そして、以後処理及び/或いは検出(例えば、癌スクリーニングの目的の為に稀にヌクレイン酸分子の検出)の為に増幅されるチャンネルセクション1216に継続的な流れの下に相対的に高度な濃縮にて流れているのである。
【0076】
かくして、図15のチャンネル配置は、本質的には反応チャンネル1216に於けるそれから圧力駆動流れを細孔1202に上げ、分断することである。総合的な流れの確率(或いは速度、さまざまなチャンネルセグメントが、全く同じか、或いは部分的に同じ横断する次元を持っていると仮定した場合)の割合を細孔1202にまで上げ、DNAの全てが選択的なイオン抽出ステップの間に抽出されていると仮定した場合、将来発生するであろう前濃縮の量である熱を帯びたチャンネル領域1216に送り込む流れの率(或いは速度)を表示するものである。
総合的な流れの確率(或いは速度、さまざまなチャンネルセグメントが、全く同じか、或いは部分的に同じ横断する次元を持っていると仮定した場合)の割合を細孔1202にまで上げ、前濃縮の量である熱を帯びたチャンネル領域1216に送り込む流れの率(或いは速度)を好ましくは約二のようであり、例えば約五、例えば約十或いは、それ以上である。例えばもし、流体の3Nl/sが、細孔1202を通じて処理されており、一秒間に約0.4mmの熱せられたチャンネル領域の丁度前に全種の速度とを比較してみた処、1208が一秒間に約3.2mmである(図16Cに示されている)事を通じて種の全速度(VT)にあり、
それから、種の保存がDNAの濃縮(チャンネル領域1208及び1216が、全く同じチャンネルを横断する次元にあると仮定した場合)におおよそ8つのフォールド(fold)を必要とする。もし、チャンネル領域1208及び1216が、全く同じチャンネルを横断する次元にない場合、それから、こうしたチャンネル領域を通じた流れの率は、チャンネル領域の間で濃縮要素を正確に予言する事を比較される必要があるであろう。図17は、図15に示されているような同様のチャンネル配置を使用するDNAのおおよそ7個から8個にフォールド(fold)積み重ねて示されたエレクトロフェログラム(electropherogram)である。上記で記されているように、本発明の方法によって、濃縮され、抽出された複数のサンプルは、典型的には電気泳動技術によって分離され、こうしたものを含んでおり、帯電した合成ポリマーと同様にペプチド、蛋白質、ヌクレイン酸、そして多糖類のような帯電した生体分子をも含んでいる。
【0077】
本発明の教示は、2つ(又はそれ以上)の差別的に帯電した、いかなる種も互いに分離及び単離するのにも使用でき、また例えば生成物が基質とは異なる電荷を持つ場合、基質及び生成物を互いに分離するという特定の利用可能性を与える。基質としては、一般に、例えば特異的結合対、即ち、抗体/抗原対、受容体/配位子対、相補的核酸又はそれらの同族体、結合性蛋白質及びそれらの結合性部位、の一部材が挙げられる。或いは、又は更に、該基質は、関連の反応、例えば基質の化学構造への付加、該構造からの減少(subtracton)又は該構造の変更により改質した基質を含んでもよい。このような基質の幾つかの具体例としては、例えばホスホリル化可能部分、例えばセリン、スレオニン及びチロシンホスホリル化部位等を含むキナーゼ基質、ホスファターゼ酵素用ホスホリル化基質、アミノトランスフェラーゼ、カルボキキシルに転化されたアルコール(例えばグルコース−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼによる)に従属する(subject to)アミノ又はケト含有基質や、スルファターゼ、ホスホリラーゼ、エステラーゼ、ヒドロラーゼ(例えばプロテアーゼ)及びオキシダーゼ等用の基質が挙げられる。
【0078】
基質は、実施するアッセイの性質に従って、正又は負のいずれかに帯電していても、或いは中性であってもよい。基質は、装置の検出窓で検出できるように、検出可能な標識を含むことが好ましい。基質上の蛍光標識は、各種異なる蛍光標識性化合物のいずれからも選んでよい。一般にこのような蛍光標識性材料は、例えばMolecular Probes(Eugene,OR)から市販されている。通常、フルオレッセン又はローダミン誘導体が特に好適である。これらの蛍光標識は、基質と、例えば周知のカップリング化学により共有結合している。標識用の基及び化学についての討議は、例えば国際特許出願公開No.WO98/00231参照。この文献は、ここに援用した。
【0079】
いったん試薬と混合した基質は、一般に試薬と反応するか、相互作用するか、さもなければ会合するか、又は結合して、基質とは実質的に異なる電荷を有する蛍光生成物を生じる。基質と同様(as with)、試薬は、特異的結合対の一部材、例えば基質に対し相補的な部材を任意に含有する。但し、この場合、結合対の2つの部材の混成物は、基質の電荷とは異なる電荷を有する。多くの場合、これは、試薬は帯電し、一方、基質は中性であるか、或いは基質は、単に中程度に帯電しているのに比べて、試薬は高度に帯電していることを意味する。或いは基質と試薬との会合により、構造変化が起こり、帯電生成物を生じるか、或いは基質に結着して帯電残留物をマスクする。
【0080】
次に、流体流のマルチポート圧力及び電気制御を利用して、異なる移動度(例えば異なる電化及び/又は質量)を有するアナライトを分離、抽出する、前述の選択的イオン抽出に類似した他の新規な技術を図12〜14について説明する。本発明のこの実施態様では、ミクロ流動チャンネルネットワークは、数を減らした外部圧力源及び電圧源を利用することにより、例えば先に説明した実施態様と比べて、流体制御に必要な流体リザーバーの数を減らして分離を行うことにより、流動駆動力を配分して、流体サンプル中の差別的に帯電した種を分離するように、構成、寸法化される。この方法では、流体輸送に必要な過剰のハードウエアーは、最小化でき、またミクロ流動装置は、先に説明した設計に比べて少数の流体リザーバーで操作できる。
【0081】
まず図12A及び図12Bに示すように、ミクロ流動装置1000は、2つの流体リザーバー、例えばサンプルリザーバー1006(これはサンプル入口チャンネル1007と流動可能に連結している)及び廃棄物リザーバー1008に接続した少なくとも2つの平行なチャンネル1002、1004のネットワークを有する。これらのリザーバーは、次に圧力(又は真空)源及び電圧(又は電流)源(それぞれ参照文字P/Pで示す)に各々操作可能に連結している。図12A、12Bでは、便宜上、同じ長さの2つの平行なチャンネル1002、1004しか示さないが、ミクロ流動チャンネルネットワークは、以下に説明するように、特定のアッセイシステムの要件及び分離すべき種の数に従って、3つ以上のチャンネルでも、また各種長さのチャンネルでも、構成できることを理解すべきである。更に、これら2つのチャンネルは、図示のような平行の配置構成である必要はなく、互いにいかなる配置構成、例えばy形配置構成、チャンネル1002、1004を互いに相対して配置したチャンネル“T”配置構成等で配列でき、これらの配置構成で、種の分離に使用される2つ(又はそれ以上)のチャンネルは、同じ廃棄物リザーバーと流動可能に連結する必要はなく、個々にそれ自身のリザーバー又はチップ上のウエルに連結してもよい。
【0082】
平行チャンネルネットワークの各チャンネル中で圧力駆動流と動電的駆動流との比を変えることにより、異なる電気泳動移動度又は速度を有するアナライトは、互いに分離、抽出できる。例えばサンプルリザーバー1006に対し1つの圧力差及び電圧電位を加えると、サンプルリザーバー1006の流体材料は、平行チャンネル1002、1004中に、これらチャンネルの流れ抵抗、及び次に例えばそれぞれのチャンネルの深さ、幅及び/又は長さに関連の比率で流入する。特に所定の電圧勾配に対する電気浸透的流体推進又は方向では、流速(量/時間)は、一般に、10を超えるアスペクト比(幅:深さ)を有するチャンネルについては、チャンネルの深さと共に変化し、例えばチャンネルの単位長さ当りの電気抵抗は、このチャンネルの断面積(幅×深さ)に比例する。計算上の特定の小さい、取るに足らぬ誤差により、この一般的な比は、更に低いアスペクト比、例えば>5のアスペクト比についても当てはまる。逆に、同じチャンネルについての流体力学抵抗は、チャンネルの深さの3乗に反比例する(例えばR=d)。こうして、例えばチャンネル1004の深さ“d”がチャンネル1002に比べて2倍であれば、チャンネル1004の幅は、両チャンネル1002、1004で同じ電気抵抗を維持するため、半分となり得る。したがって、加える電場は同じであるが、圧力駆動流の量は変化させる平行なセットのチャンネルを作るのは可能である。例えば、図12Bに示すように、チャンネル1004の幅は75μで、深さは10μであり、一方、チャンネル1002の幅は150μで、深さは5μである(図12Bには寸法は引いていない)と仮定する。チャンネル1002、1004の断面積は、同じ(例えば750μ)であるから、両チャンネル1002、1004は、同じ電気抵抗を有する。しかし、チャンネル1002の流体力学抵抗は、チャンネル1004よりも約8のファクター大きい(例えばRh1002/Rh1004=10/5=8)。このタイプの幾何学を用いて、以下に更に説明するように、2つ(又はそれ以上)の差別的に帯電した種を互いに分離することが可能である。
【0083】
例えばサンプルリザーバー1006から廃棄物リザーバー1008までの圧力駆動流をP>Pに設定し、リザーバー1006からリザーバー1008に亘るチャンネル1002、1004中の電場をV>Vとする。この状況は、図12Cに示すように、2つの差別的に帯電した種1010、1012を互いに分離するのに適当である。なお、図12Cは、図12Aの平行チャンネル配置構成の拡大図である。ここでは、特定の仮定、例えば種1010は、電荷が0(例えばZ=0)であり、一方、種1012は、高度に負帯電している(例えばZ=−2)ものと仮定した。これらの仮定は、簡略化及び明確化の目的で行ったが、この流体分割技術は、1つ以上の種が、帯電しているか(単独の種について)又は差別的に帯電している(2つ以上の種について)限り、或いは2つ以上の種が同じ電荷を有するが、異なる質量を有する限り、混合物から1つ以上のいずれの種の分離にも利用できることに注目すべきである。異なる電荷は、正電荷対負電荷、高正電荷対低正電荷及び高負電荷対低負電荷を包含する。
【0084】
負帯電の種1012の電気泳動速度が圧力駆動速度よりも実質的に大きければ、この帯電種1012の電気泳動速度は、実質的に圧力駆動速度を超えている上、加えた電場は、これら両チャンネルで同一なので、帯電種1012は、チャンネル1002、1004中にほぼ均等に駆動される。一方、他の中性の種1010は、実質的に圧力駆動流について行き、前記計算したチャンネル中の流体力学抵抗の比により、流体力学抵抗の低い深いチャンネル1004中に実質的に駆動される(例えば中性種の全量の約89%は、チャンネル1004に入り、一方、全量の約11%だけがチャンネル1002に入る)。この簡略例では、分離効率は、完全ではないが、システム内で慎重に前記幾何学及び/又は加えた圧力及び/又は電圧を同調させることにより、分離効率は最大化できる。
【0085】
装置1000は、更に分析及び/又は検出を行うため、分離された種1010及び/又は1012の1つ以上を抽出、分離することが必要であるか、望ましい場合は、チャンネルセグメント1002及び/又は1004と流動可能に連結した1つ以上の副チャンネルを備えてもよい。また、チャンネルセグメント1002、1004の一方又は両方は、関連の分離した種を検出するため、検出システムと感知可能に連絡した検出窓を備えてもよい。検出システムは、蛍光分光分析法(レーザー誘引方法及び非レーザー方法)、紫外線分光分析法、電気化学的検出、熱的検出、キャパシタンスによる検出(PCT出願公開No.WO 99/39190参照)、質量分光分析法による検出、例えばMALDI−TOF及び電子噴霧(electrospray)(これは、材料を直接、毛管又はミクロ流動装置出口から受けるように、容易に構成できる)等、周知の各種検出方法によるものでよい。好ましい局面では、光学的検出方法、特に蛍光による検出方法が使用される。このような検出システムは、一般に検出すべき特定の蛍光種を励起させる適当な波長の光を与える励起光源を備える。この励起光は、次に、レンズ、フィルター(例えば波長及び/又は空間のフィルター)ビームスプリッター等を含む適当な光学系に通し、更に分離導管の半透明部分の所で例えば対物レンズに向ける。サンプル材料の蛍光種、成分又はフラクションが励起光を通過すると、これらは、蛍光を発する。次に、蛍光発光を集め、対物レンズ及び同じ又は代りの光学系に戻し、光センサー、例えば光ダイオード、光電子増倍管又はCCD等に送る。この装置は、USP No.6,100,531(本発明と同じ譲渡人に譲渡された)に更に十分に記載されるような、装置本体構造中に一体化した1つ以上の光変化性光学エレメント(例えばレンズ又は光学フィルター)も備えてよい。この文献の全内容は、ここに援用した。このような一体化光学エレメント付き装置は、光学的検出計画に使用される光学的操作の少なくとも一部を行う。
【0086】
このシステムの分離効率は、例えば図14A及び図14Bに示す通り、分離が複数(例えば2以上)の段階で起こるように、複数の平行チャンネルネットワークを一緒に直列に連結することにより向上できる。図14Aに示すように、このチップ設計は、複数の平行チャンネルネットワーク、例えばチャンネルネットワーク1020、1030、1040を備えることができる。これらのチャンネルネットワークは、一緒に直列に連結して、カスケード型チャンネル配置構成を形成している。これらチャンネルの流体力学抵抗は、例えば2つの差別的に帯電した種が、多段で、したがって高い効率で互いに分離できるように、選択(例えばそれぞれの深さ及び幅(及び/又は長さ))、変化できる。これは、例えばチャンネル1034、1044は、チャンネル1024(このチャンネルが、例えば図12A、12B、12Cと同様、チャンネル1022の半分の深さ及び2倍の幅を有する)と同じか又は類似の配置構成(例えば同じ又は類似の流体力学抵抗)を持ち、一方、チャンネル1032、1042が、チャンネル1022と同じか、類似の配置構成を持つように、チャンネル配置構成を設計することにより達成できる。
【0087】
例えばチャンネルネットワーク1020のチャンネル1018中に導入したサンプルが帯電種1012及び中性種1010をほぼ等量含有する(例えば各々の種を約50%)と考える。再び、負帯電種1012の電気泳動速度は、圧力駆動速度よりも実質的に大きいと仮定すると、帯電種1012は、チャンネル1022、1024中にほぼ均等に駆動され、こうしてチャンネル1022、1024は、ほぼ等量の帯電種1012を含有し、一方、チャンネル1024は、チャンネル1022に比べて、中性種1010全量の約11%しか含有せず、よって、チャンネル1024中の中性種に対するチャンネル1022中の中性種の全量は約8対1比となる。次に、チャンネルネットワーク1040の次の分離段階を通過した後、チャンネル1044は、チャンネル1042と等量の帯電種1012を含む。しかし、中性種は、更にチャンネル1042対チャンネル1044では8対1の比で分離され、よって、チャンネル1044中に流入するチャンネル1018中のもともと存在した中性種の約1/64が全量となる。こうして、チャンネル1044中の帯電種1012と中性種1010との比は、チャンネル1024中の帯電種と中性種との比よりも遥かに大きくなり、システムの分離効率を改善する。勿論、特定の利用に望ましいか、必要ならば、システムの下流に1つ以上の追加の分離段階(例えば平行チャンネルネットワーク)を付加して分離効率を更に改善できる。
【0088】
一般にチャンネルの深さは、差別的に帯電した種の所望の分離に最適の流れ条件を得るため、チャンネルの深さは、変化させてよい。したがって、所定の平行チャンネルネットワークについてこの利用によると、第一平行チャンネルの深さは、第二チャンネルより約2倍を超え、例えば第二チャンネルより約5倍を超え、例えば第二チャンネルより約10倍(又はそれ以上)を超える。しかし、チャンネルネットワークの平行な分岐中で相対流速を制御するための変数として、深さを増大させた場合の一つの潜在的な問題は、基質の厚さ及び電位を作る制約が、2つの平行チャンネルの相対深さを例えばファクター2又は3に制限できることである。更に、3つ以上の差別的に帯電した種を互いに分離することを必要とする場合、多数の異なるチャンネルを採用したチャンネル幾何構成は、圧力駆動速度が、チャンネルからチャンネルまで既知の量で異なること(及び電場は、前述のように全てのチャンネルに対し、一定に保持すること)が必要かも知れない。所定の基質配置構成には、チャンネル数は限定されないが、使用可能な異なる深さの数は、製造上の制約から、複数のチャンネルに対し3以下の異なる深さに制限してもよい。
【0089】
図13A及び図13Bは、チャンネルネットワークの長さ沿いに2つの異なる深さの組合せを用いて、差別的に帯電した多数の種を分離できる一方法を示す。図13A及び図13Bに示すように、チャンネルネットワーク1100は、各々、入力チャンネル1110(このチャンネルは、例えばサンプルリザーバー(図示せず)と流動可能に連結している)及び出力チャンネル1112(このチャンネルは、例えば廃棄物リザーバー(図示せず)と流動可能に連結している)と流動可能に連結した4つの平行なチャンネル1102、1104、1106、1108を有する。例えば図13Bに示すように、4つの各チャンネル1102〜1108に対し2つのチャンネル深さ(及び相当する2つのチャンネル幅)だけ使用したが、これらのチャンネル深さは、各チャンネルの長さ沿いに変化させて、それぞれの各チャンネルに加えた同じ電流電位を維持しながら(各チャンネルは、該チャンネルの長さ沿いに同じ断面積を有するため)、(例えば各チャンネルの流体力学抵抗を変えることにより)可変量の圧力駆動流を作る。チャンネルそれぞれの流体力学抵抗差は、例えば多数チャンネルに再び、同じ断面積であるが、異なる長さを持たせ、したがって更に互いに流れ抵抗を変えることにより、更に変形することも可能である。また、このシステムは、意図する分離効率を得るため、装置の各種チャンネルネットワークに対し圧力差及び/又は電圧差の1つ以上又は両方を変えるように構成できる。意図する分離を行うため、例えば電場は固定して、圧力流は変化できるし、或いは圧力流は固定して、電場は変化できるし、或いはまた電場及び圧力流の両方を同時に変化できる。更に、種の分離が望まれる2つ以上のチャンネルが、同じ廃棄物リザーバーと流動可能に連結していない場合、異なる電気泳動移動度により2つ以上の種の分離を行うため、電場は、この2つ(又はそれ以上)のチャンネルの少なくとも1つ(例えば深さが浅く、かつ幅が広い方のチャンネル)に対して変化させる(又は固定しておく)だけで済む。
【0090】
c.多段抽出
他の局面では、本発明は、前述の選択的イオン抽出法を用いて多段抽出を行う方法及び装置を提供する。多段抽出は、少なくとも2つの他の種の電荷の中間にある電荷を有する種を分離するという追加の利益を与える。例えば一段選択的イオン抽出は、最高又は最低のイオン移動度を持った種を分離するには好適であるが、多段抽出は、中間移動度の種や、最低速及び最高速の電気泳動移動度を持った種を分離するのに望ましい。したがって、多段選択的イオン抽出は、混合物中に含まれる流体で運ばれた種の分離を行う際、なお一層の多用性を与え、これにより、これまで実現された利用よりもなお一層広範な各種利用にミクロ流体技術を容易に使用できる。
【0091】
このような一利用は、外部装置による特定の分析を実施するため、ミクロ流動装置と二次分析機器とを組合せることである。非常に望ましい組合せ装置は、混合物中の成分の分離が、ミクロ流動装置で行われ、分離された材料が電子噴霧(又は他の手段)により更なる分析のため質量分析計中に装填されるように、ミクロ流動装置と質量分析計とを組合せたものである。このような組合せ及び質量分析計インターフェースへの各種チップは、2002年3月6日出願の共同(co−owned)係属出願USSN 60/362,291及びUSP 5,872,010に詳細に記載されている。これらの各文献は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した。
【0092】
従来、このような組合せ装置で作業する際の制限の1つは、ミクロ流動装置で使用する流体の量が極めて少ないため、分離された成分の収量が極めて少ないことであった。本発明の装置及びシステムにより行われる多段選択的イオン抽出は、第二の分析に十分な材料を集めるのに必要な時間の間、材料の連続的分離及び単離を行うことにより、このような障害を克服できる。
【0093】
図8は、多段抽出に好適なシステムを示す。前述のように、多段抽出は、前記選択的イオン抽出法を用いて一連の分離を行うことにより達成される。装置800は、主チャンネルと、該主チャンネルと交差する少なくとも2つの副チャンネルを有する。これら2つの副チャンネルは、例えば十字形となる4方向交差点の形成、分派型(offset)T交差点の形成、並列型(side by side)T交差点の形成、分派型Tの形成等のいかなるレイアウトで主チャンネルと交差してよい。各チャンネルに加える圧力及び電圧は、電気泳動移動度(μep)を有する種(B)を選択的に抽出するように構成される。種(B)の電気泳動移動度は、流体プラグ中に含まれる少なくとも2つの他の種(A、C)の電気泳動移動度の中間にある。この装置は、流体プラグを主分離チャンネル804中に連続的に導入するため、サンプル源、即ち、図示のようなリザーバー又は外部毛管エレメントを有する。装置の操作を説明するため、図8は、サンプル源経由で主チャンネル中に流入する成分A、B、Cを示す。チャンネルセグメント812への流体プラグの流入は、リザーバー806に加えた負圧により駆動される。したがって、流体プラグ中に含まれる全ての種の正味速度は、これら種の流体力学速度と同等であり、また、これによりチャンネルセグメント812中で同じである。流体プラグがセグメント814中に入ると、電場を受ける。電場は、リザーバー806に加えた電位で作られたものである。したがって、チャンネルセグメント814では、該セグメントに入る全ての種の流れは、流体力学流及び電気泳動流により制御される。各成分の正味速度は、これら成分の流体力学速度と電気泳動速度との総合計である。成分の電気泳動移動度の差により、成分がチャンネルセグメント814を流通する際、各種種を分離させるセグメント814において、成分の合計速度に限定的な差が生じる。また、リザーバー806を介して加える電位は、成分A、Bをチャンネルセグメント816中に流入させながら、成分A、Bよりも電気泳動移動度が遅い成分Cをチャンネルセグメント824中に引き入れるように、該リザーバーに加える負圧と釣合うのに十分な水準に設定される。しかし、成分A、Bは、電気泳動移動度が異なるため、異なる正味速度で流れ続ける。成分A、Bは、チャンネルセグメント818中に流入すると、リザーバー808、810を介して加えた負圧及び電位により、加えた圧力差及び電場差を受ける。リザーバー808、810での圧力及び電位の設定は、成分Bをチャンネルセグメント822中に流入させるだけとし、一方、成分A及び若干の成分Bはチャンネルセグメント820中に流入するように、もう一度構成される。
【0094】
通常、本発明により操作されるミクロ流動チャンネルネットワークは、前述の流れプロファイルを確立するため、必要な力をネットワークのチャンネルセグメントに配送するコントローラー設備とインターフェースされる。このような制御システムは、自給式ミクロ流動装置に、ポンプ、バルブ及び電気動力源の統合体の形態で一体化できるが、このような装置は、極めて高価で、かつ確実に製造することが困難であると思われる。本発明のミクロ流動チャンネルネットワークと共同で使用される設備システムは、通常、チャンネルネットワークの各所に圧力による流れプロファイルを発生させるための正及び/又は負の圧力源及びネットワークの他のセグメントに電気泳動的流れプロファイルを発生させるための電力源を備える。これらのシステムは、通常、圧力エネルギーをネットワークの1つ以上のチャンネルセグメントに配送すると共に、電気エネルギーをネットワーク中の他のチャンネルセグメントに配送するための1つ以上のインターフェース部品も有する。
【0095】
圧力源及び電圧又は電流源の両方を使用する機器の例としては、Agilent 2100 Bioanalyzer、Caliper 100及びCaliper AMS 90 High Throughput Analysis Systemが挙げられる。両システムは、ミクロ流動システム装置上のリザーバーとインターフェースする電力源及び圧力源(通常、真空源)を有する。これらのリザーバーは、装置内のチャンネルネットワークと流動可能に連絡し、電気又は圧力エネルギーをこれらのチャンネルに伝達する。一般に、このような機器は、本発明に従って操作するため、ミクロ流動装置と一緒に使用できる。図5に、このようなシステム500を概略的に示す。説明の簡略化のため、ミクロ流動装置502内に、単純なTチャンネル構造を示す。装置502は、コントローラー504並びに該コントローラー中に入れた電力源506及び圧力源508と適当なインターフェース部品と適当なインターフェース部品を介してインターフェースしている。通常、このインターフェース部品は、圧力及び電気接続の両用インターフェースや、可能なその他のインターフェース、例えば温度制御、光学的検出、位置決定又は方位決定用のインターフェース等の適当なインターフェース部品中に収容されている。
【0096】
Agilent 2100 Bioanalyzerの場合、インターフェースモジュールは、圧力ポート510及び電極、例えば電極512、514が装置502と操作可能にはめ合うように、ミクロ流動装置の上面を閉鎖するクラムシェル(clamshell)を有する。圧力ポート510は、圧力ラインにより圧力源508と操作可能に接続し、また圧力源502の適当なリザーバーとも封止可能に噛み合っている。これは、圧力ポートを関連のリザーバーと封止可能にはめ合せる封止可能な取付け金具、例えばO−リングで行う。注入ポンプとして図示したが、コントローラー内には、各種異なる圧力源、例えば、ぜん動ポンプ、又はその他の容積移送式ポンプ、例えばダイアフラムポンプ、スクリューポンプ等を使用してよい。操作的な局面では、装置のチャンネルネットワーク中の圧力系流れを更に精密に調整するため、ミクロ流動装置502の他のリザーバーに追加の圧力源及び/又は真空源を連結して供給してもよい。
【0097】
電極512、514の場合、例えばUSP 5,955,028及び同6,071,478に記載されるような各種インターフェースが任意に採用される。これらの各文献は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した。通常、製造の簡素化のため、インターフェースモジュール上にピン電極を配置し、ミクロ流動装置502のリザーバー中に挿入して、この中に含まれる流体と接触させる。リザーバー中の流体と接触することにより、コントローラー504内の電力源506から電流が、装置のチャンネル内の流体に流れる。
【0098】
Caliper AMS 90 Systemの場合、インターフェースモジュールは、装置の頂部を閉鎖するクラムシェルとしてよりもむしろ、ミクロ流動装置を、インターフェース部品の下から振り上がる丁番式架台上に置いた他は、通常、2100 Bioanalyzerに類似する。このAMS 90システムは、高スループット用に利用されるので、インターフェースモジュールは、例えば装置の下面から伸びて、例えば図4及び図6Bに示すような、一連のサンプルを分析用の装置中に引き入れる、一体化した毛管エレメントを有するミクロ流動装置を保持するようにも構成される。したがって、インターフェース部品、特に装置を載せる架台は、ピペッター(pipettor)を挿入して、インターフェース部品の外側のサンプル源に接近させる開口を有する。低スループットの“平面的な”装置及び高スループット又は“一部立体的な”装置の例を、それぞれ図6A及び図6Bに示す。
【0099】
平面的装置602を図6Aに示す。図示のように、装置602は、外部サンプリング用ピペッターを備えない他は、図6Bに示す装置に類似する。分析すべきサンプルは、装置全体の本体構造604内に収容された1つ以上のリザーバー、例えば装置内のチャンネルネットワーク656と連絡するリザーバー608〜630中に入れる。通常、試薬及び緩衝液が、サンプルとの添加混合物として導入されるか、或いは別のリザーバー、例えばリザーバー632〜638経由で導入される。再び、これらリザーバーは、コントローラーシステムのインターフェース部品への流体アクセス及び流体アクセスの箇所を与える。Bioanalyzerの場合、AMS 90 High Throughputシステムと同様、電気アクセスポイントに対し多数のアクセス点が付与されるが、1つのリザーバーだけが、チャンネルに負圧を加えるのに使用される。商業的利用では、平面的及び一部立体的フォーマットを含むミクロ流動装置は、装置の取扱いを手伝うプラスチックキャディー(caddie)に取付けること、及び/又は装置の各種リザーバーに大容量を与えることが多い(例えばCaliper Technologies Corp.及びAgilent Technologies Inc.から入手できるLabChip(登録商標)ミクロ流動装置参照)。
【0100】
図6Bに示すように、高スループット装置652は、ミクロ流動チャンネルネットワーク656を有する概略平面的本体構造654を備える。サンプリング毛管又はピペッター658は、ピペッター658中のチャンネルが、チャンネルネットワーク656と流動可能に連絡するように、本体構造654に取付ける。ピペッター中に引き込まれた材料は、更なる処理及び/又は分析のため、チャンネルネットワークに移動する。チャンネルの端部には、複数のリザーバー、例えばリザーバー660、662が用意され、これらチャンネルと流動可能に連絡する。これらのリザーバーは、装置のチャンネルに異なる流体、例えば試薬、緩衝液、染料等を配送し、ピペッターエレメントを介して取り込まれたサンプル材料と混合するためのアクセス点を形成する。他の多数のリザーバー、例えばリザーバー666〜670も、追加の試薬、例えば希釈剤等のためのアクセスを与え、また圧力、電流等を駆動するためのアクセスを与える。図5については、前述のように、これらのリザーバーは、圧力及び電気的インターフェース部品用のアクセス点を与える。反応結果の検出は、一般に例えば光学的検出窓672により、ここで説明し、また当業者に一般に知られている検出システムを用いて任意に行われる。
【0101】
本発明を実施するため、適当なミクロ流動装置と一緒に市販のシステムを操作できるが、幾つかの場合、電力源の他に、多数の圧力源を使用したコントローラーシステムは、ここで述べた流れプロファイルを確立するのに使用できる。特にチャンネルネットワークの多数の結節部で相対圧力を制御することにより、装置に発生した流れプロファイルに対し一層精密な制御を得ることができる。図5を参照すると、例えばチャンネルセグメント518の両端部、例えばリザーバー522、524及び任意にリザーバー520に加えた圧力を、図5に示すようなやり方で制御することにより、チャンネルセグメント518での圧力流を一層精密に制御できる。このような設備の例としては、例えばミクロ流動アッセイ計画の開発及び設計に使用されるCaliper Technologies Corp.(Mt.View,CA)から市販のCaliper 42 Development Stationがある。これらのシステムは、マルチポート圧力制御、例えば装置の多数のリザーバーでの圧力制御や、マルチポート電気制御を含む。マルチポート圧力制御は、一般にPCT出願公開No.WO 01/63270に記載されている。この文献は、あらゆる目的のため、全体をここに援用した。
【実施例1】
【0102】
実施例1:マルチポート制御システム及びオフ−チップアッセイミクロ流動装置
試薬:
酵素:Protein Kinase A、camp−依存Protein Kinase(Promega,Madison,WI)
【0103】
基質:分子量1129.5dの5−FAM−LRRASLG−CONH1
【0104】
緩衝液:100mM HEPES緩衝液中、5mM MgCl2(Sigma,St.Louis,MO)、0.01%Triton−X(Sigma)、1mM DTT(Calbiochem)、10μM ATT(Sigma)、2%DMSO(Burdick & Jackson,Muskegon,MI)
【0105】
装置:
全ての実験は、マルチポートカートリッジ(Caliper Technologies Corp.,Mountain View,CA)を備えたCaliper 100開発システム又はCaliper 220高スループット選別システムのいずれかで行った。これらのシステムは、主アッセイ選別用完全一体化溶液を供給するように設計されている。各システムは、自動化サンプリングロボット、アーク灯又はレーザーによる蛍光検出システム、及び制御、分析用完全ソフトウエア包装を有する。カートリッジの内側にはチップが載せてあり、マルチポート圧力及び電圧コントローラーとのインターフェース及びアラインメントを与える。要するに、このマルチポート制御モジュールは、ミクロ流動チップに必要な基本的な制御能力を与える。制御媒体として、周囲の空気を用いた8つの独立ぜん動ポンプは、正又は負(真空)のいずれかの圧力で5psi供給できる。電圧コントローラーは、±3KVに達する8つの別々の高電圧を供給できる。マルチポートモジュールは、通常、圧力設定又は電圧設定のような、各ファンクションの順序、期間及び大きさを含む文字により制御される。
【0106】
チップの説明:
本実施例で使用したミクロチップの概略図を図9に示す。図示のように、ミクロ流動チップ装置900は、酵素リザーバー918と流動可能に連結したチャンネルセグメント902、基質リザーバー920と流動可能に連結したチャンネルセグメント904、T−交差点を有する主チャンネルセグメント910、及びそれぞれ廃棄物(及び/又はアナライト)リザーバー922、924と流動可能に連結したチャンネルセグメント912、914を備える。こうして、圧力駆動流又は動電的流れ等によりチャンネルセグメント902、904中に導入されたサンプル及び酵素は、主チャンネルセグメント910中で混合、相互作用して、基質、該基質とは異なる電荷を有する生成物、及び酵素を含む反応混合生成物を生成する。次に、この反応混合物は、本発明方法に従ってT−交差領域916で分離できる。Caliper 100及び220分析システムは、蛍光検出領域が、チャンネルセグメント912との交差点に近い主チャンネルセグメント910の端部に隣接して配置されるように、装置900を保持する。光学システムに接続されたビデオカメラ及びモニターにより、チップ上の検出器場所を見ることができる。検出器は、まず基準点としてT−接続部の内側の隅を用いて、T−交差接続部916の前0.2mmの所に置いた。図10の流束モデルに基づいて、チップ900に加える圧力及び電圧は、生成物又は基質がT−交差接続部を通るとは予想されないような条件を確定した。検出器での一連のピーク(図11A〜11Cの“前”ピーク)を集め、前接続ピーク特性を得た。次に、検出器をT−接続の内側の隅から下流0.5mmの所に再配置した。基質及び酵素を再び、混合して、反応生成物混合物とし、次いでこれをT−交差接続部916の下流に位置する検出領域で検出した。
【0107】
試薬の調製に使用した脱イオン水(25℃で18.2MΩ−cm)を、MilliQ(登録商標)システムを用いて精製した。遊離酸(Calbiochem,San Diego,CA)及びナトリウム塩(Calbiochem)の両形態のULTROLグレードHEPESを用いて、pH7.5の1M HEPES緩衝液を調製した。全ての溶液は、チップに添加する前に、0.2μmポリプロピレン注入フィルターでろ過した。Protein Kinase Aに特異的なペプチド基質及び生成物の水溶液をpH7.5のアッセイ緩衝液中で調製した。Protein Kinase A(PKA)、cAMP−依存Protein Kinasecamp−依存Protein Kinase(Promega,Madison,WI)を、注文合成した分子量1129.5の基質5−FAM−LRRASLG−CONH2(Caliper Technologies Corp.,Mountain View,CA)と反応させた。この5−FAMは、ペプチドのアミノ端部上のロイシンに結合したフルオレッセンNHSエステル部分(Molecular Probes,Eugene,OR)である。注文ペプチドの純度は、HPLCで測定して98%以上である。PKAアッセイ緩衝液は、100mM HEPES緩衝液中、5mM MgCl(Sigma,St.,Louis,MO)、0.01%Triton X(Sigma)、1mM DTT(Calbiochem)、10μM ATP(Sigma)、2%DMSO(Burdick & Jackson,Muskegon,MI)含むものである。電気浸透流を抑えるため、この緩衝液に動的コーティング試薬3(Caliper Technologies Corp.)を添加した。pH7.5で、PKA酵素は、中性帯電(Z=0)の基質を負帯電(Z=−2)の生成物に転化する。酵素及び基質の原料溶液のアリコートを、必要になるまで、−80℃で保存した。全溶液は、反応前に氷で保存した。ポリプロピレン遠心管に、基質100μM及び酵素25nMを含むアッセイ緩衝液100μLを室温で90分間、反応完結させた。アッセイ緩衝液は、酵素及び基質の添加前に0.2μMでろ過し、10mM EDTA 80μLを加えて反応を停止させた。生成物の純度は、毛管電気泳動によりチェックし、また濃度は、508nmでの吸収係数(ε)82,000M−1cm−1を用いた紫外線吸収により確認した。生成物及び基質のアリコートは、個々の実験で必要になるまで−80℃で保存した。
【0108】
基質の酵素反応による2つの帯電種の実際の分離、例えば中性帯電(例えばZ=0)のPKA基質(実線)と負帯電のペプチド生成物(点線)(例えばZ=−2)との分離を予測するため、単独種の流束及び流速計算を用いた。図10は、副チャンネルセグメント914の圧力の関数として、検出器領域におけるPKA生成物(点線)及び基質(実線)の濃度の予測流束モデルである。図11A〜11Cは、T−交差分離接続部の前後で記録したPKA化合物の選択的イオン抽出を用いる3つの操作領域を示すと共に、図10の流束モデルに基づいて、T−交差点916の“前”、“後”で記録したPKA基質及び生成物の蛍光強度ピークを示す結果を纏めたものである。図11A〜11Cの蛍光ピークは、それぞれ緩衝液、基質、並びに生成物及び基質に対応して、B(バックグラウンド)、S(基質)、P(生成物)、並びにS+P(基質及び生成物)と標識した。図中の小さいピークは、原型機械のロボット移動による光学ノイズである。
【0109】
主チャンネルセグメント910を流下する生成物及び基質の混合サンプルに対しては、例えばチャンネルセグメント914では約−1.0psi未満の圧力(例えばリザーバー924、922で圧力勾配を制御することにより)は、負帯電ペプチド及び中性基質の両方が、T−交差点916を過ぎて検出器に到達するのを防止し、こうして生成物及び基質はチャンネルセグメント914中に流入する。このようにして、図11Aに示すように、例えば−1.5psiの圧力設定では、T−交差点916を過ぎて検出領域で検出される生成物及び基質はない。チャンネルセグメント914での圧力が、図10に示すように、約−1.0psiよりも高い水準に徐々に増大すると、負帯電の生成物だけが検出チャンネルセグメント912中に抽出され、一方、中性基質は、チャンネルセグメント914中に流入し続ける。こうして、図11Bに示すように、チャンネルセグメント914において、−1.0psiの圧力設定に対しては、生成物だけが、T−交差点916を過ぎて検出領域で検出される。したがって、副チャンネル914への圧力が約−1.0〜−0.6psiの範囲で変化すると、異なる電気泳動移動度を持った生成物と基質間には分離の観察機会(window)がある。副チャンネルセグメント914への圧力が、図10に示すように、約−0.6psiを超えて増大すると、流体力学流は、副腕チャンネルセグメント914では方向が逆転し、基質及び生成物の両方とも、図11Cに示すように、チャンネルセグメント914で−0.5psiの圧力が設定された場合、T−交差点を過ぎて検出される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1Aは、放物線状の圧力駆動流れプロファイルを示す。図1Bは、動電的駆動プラグ流れプロファイルを示す。
【図2】本発明による混成又は混合式の圧力及び動電的駆動ミクロ流動チャンネルシステムの概略図。
【図3】図2に示したネットワークでの各チャンネルセグメントの流れプロファイルの概略図。
【図4】サンプル導入に続いて分離による分析を利用した連続選別アッセイを行う操作での本発明装置の概略図。
【図5】本発明方法を実施するためのシステムの概略図。
【図6A】平面的なフォーマットミクロ流動装置を示す。
【図6B】一部立体的なフォーマットミクロ流動装置を示す。
【図7A】選択的イオン抽出を行うためのシステムの概略図。
【図7B】選択的イオン抽出を行うためのシステムの概略図。
【図7C】選択的イオン抽出を行うためのシステムの概略図。
【図7D】選択的イオン抽出を行うためのシステムの概略図。
【図8】圧力及び電圧処理により中間電荷を有する種を抽出する本発明装置を用いた、混合物からの帯電種の多段選択イオン抽出を示す。
【図9】選択的イオン抽出による混合物からの帯電種の分離に使用される通常のチップ設計を示す。
【図10】2つの差別的に帯電した種の流束モデルを圧力変化の関数として示す。
【図11A】本発明装置のT−交差点における分離前後の多数帯電種の蛍光強度を示す。
【図11B】本発明装置のT−交差点における分離前後の多数帯電種の蛍光強度を示す。
【図11C】本装置のT−交差点における分離前後の多数帯電種の蛍光強度を示す。
【図12】図12Aは、一形態の選択的イオン抽出を用いて、サンプル中の2つの差別的に帯電した種を互いに分離、抽出するのに使用されるチップチャンネル設計の他の一実施態様である。図12Bは、図12Aの装置の12B−12B線部分の断面図。図12Cは2つの差別的に帯電した種の分離、抽出を示す図12Aのチャンネル配置構成の拡大図である。
【図13】図13Aは、一形態の選択的イオン抽出を用いて、サンプル中の複数(例えば2以上)の差別的に帯電した種を互いに分離、抽出するのに使用されるチップチャンネル設計の他の一実施態様である。図13Bは、図13Aの装置の13B−13B線部分の横断面図。
【図14】図14Aは、図12Aに示したものと同様な縦つなぎの平行分離チャンネルを用いた一形態の選択的イオン抽出を用いて、サンプル中の2つの差別的に帯電した種を互いに分離、抽出するのに使用されるチップチャンネル設計の他の一実施態様である。図14Bは、2つの差別的に帯電した種を互いに分離する際の分離効率の向上を示す、図14Aのチャンネル配置構成の部分拡大図。
【図15】図15は、ミクロ流動装置に於けるサンプルから以後の分析の為の(DNA及びRNAのような)電気泳動の流動種を検出し、前もって濃縮する本発明の教示により使用することの出来るミクロ流動装置チャンネル配置の一概略図である。
【図16A】図16Aは、図15が装置のさまざまなチャンネルセグメントを通じて、圧力より生じた速度の例示を示しているミクロ流動装置チャンネル配置の一概略図である。
【図16B】図16Bは、図15が電気分野で装置のリザーバ1204及び1206との間に適用される際に、装置のさまざまなチャンネルセグメントを通じて、動電学的な速度の例示を示しているミクロ流動装置チャンネル配置の一概略図である。
【図16C】図16Cは、図15が装置のさまざまなチャンネルセグメントを通じて、包括的な全種の速度をチャンネル配置の一概略図である。
【図17】図17は、図15に示されているように一チャンネル配置を使用して一サンプル内にDNAをおおよそ7つに折り畳んでスタック(stacking)を示している一電子フェログラム(electropherogram)である。
【符号の説明】
【0111】
200 チャンネルネットワーク
202 第一チャンネルセグメント
204 第二チャンネルセグメント
206 第一流動接続部
208 第三チャンネルセグメント又はアクセスチャンネル
218 電気システム
400 アッセイ装置
402 サンプリングエレメント
404 第一チャンネルセグメント
406 第二チャンネルセグメント
408 第一流動接続部
410 第三チャンネルセグメント
412、414 副チャンネル
416、418 リザーバー/試薬源
420 電気制御システム
450 テスト化合物
452 反応混合物スラッグ
454 分離された種
456 検出窓
500 ミクロ流動装置と併用される、電力源及び圧力源を有するシステム
502 ミクロ流動装置
504 コントローラー
506 電力源
508 圧力源
510 圧力ポート
512、514 電極
518 チャンネルセグメント
520、522、524 リザーバー
602 平面的装置
604 本体構造
608〜638 リザーバー
652 高スループット装置又は一部立体的装置
654 概略平面的本体構造
656 ミクロ流動チャンネルネットワーク
658 サンプリング毛管又はピペッター
662〜670 リザーバー
672 光学的検出窓
700 酵素アッセイ用装置
702 サンプル源
702、705、706 主チャンネルのチャンネルセグメント
704、714、716 副チャンネルのチャンネルセグメント
708、710 差別的に帯電した種
722、724、726、728 リザーバー
728 廃棄物リザーバー
800 多段抽出用システム
804 主分離チャンネル
806、808、810 リザーバー
812〜824 チャンネルセグメント
900 ミクロ流動チップ装置
902、904、912、914 チャンネルセグメント
910 主チャンネルセグメント
916 T交差領域
918 酵素リザーバー
920 基質リザーバー
922、924 廃棄物(及び/又はアナライト)リザーバー
1000 ミクロ流動装置
1002、1004 平行なチャンネル
1006 サンプルリザーバー1006
1007 サンプル入口チャンネル
1008 廃棄物リザーバー
1010、1012 差別的に帯電した種
1018、1022、1024 チャンネル
1020、1030、1040 チャンネルネットワーク
1032、1034、1042、1044 チャンネル
1100 チャンネルネットワーク
1102、1104、1106、1108 平行なチャンネル
1110 入力チャンネル
1112 出力チャンネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に連結されたチャンネル・ネットワークを供給する工程であって、該ネットワークは、第一流動ジャンクションで相交わる第一、第二、第三チャンネルセグメントを備え、第二チャンネルセグメントは、第一流動リザーバに一端で終端し、第一流動ジャンクションに他端で相交わり、該ネットワークは更に第四チャンネルセグメントを備え、第四チャンネルセグメントは、一端で第二流動ジャンクションにて第三チャンネルセグメントと相交わり、他端で第一バッファーを含んだ第二流動リザーバに終端している工程、
第一チャンネルセグメント及び第二チャンネルセグメントに第一の圧力差、そして第三チャンネルセグメント及び第四チャンネルセグメントに第二の圧力差を加えることにより、第二バッファー中のサンプル中の帯電した種を相互連結されたチャンネル・ネットワークを通して流す工程であって、第一の圧力差は第二の圧力差よりも大きく、第一のバッファーは、第二のバッファーとは異なるイオン強度を持つ工程、及び
第一流動ジャンクションに於けるサンプル内の帯電した種の実質的な部分が第三チャンネルセグメントに流れ込むのに十分な電圧差を第一リザーバ及び第二リザーバに印加する工程、
を含むサンプルから帯電した種を抽出し、それを濃縮する方法。
【請求項2】
第一、第二、第三及び第四チャンネルセグメントが、ミクロ流動装置の本体構造内に配置される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一流動リザーバを減圧することにより第一圧力差を発生させる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第二流動リザーバに正圧を加えることにより第二の圧力差を少なくとも部分的に発生させる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第一バッファーが第二バッファーよりも高いイオン強度を持つ請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第一圧力差と第二圧力差との差は、第一チャンネルセグメント内の圧力によって駆動した流量又は流速が第三チャンネルセグメント内の圧力より駆動した流量又は流速よりも少なくとも約二倍大きくなるように設定される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第一圧力差と第二圧力差との差は、第一チャンネルセグメント内の圧力によって駆動した流量又は流速が第三チャンネルセグメント内の圧力より駆動した流量又は流速よりも少なくとも約五倍大きくなるように設定される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
第一圧力差と第二圧力差との差は、第一チャンネルセグメント内の圧力によって駆動した流量又は流速が第三チャンネルセグメント内の圧力より駆動した流量又は流速よりも少なくとも約十倍大きくなるように設定される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第一圧力差と第二圧力差との差は、第一チャンネルセグメント内の圧力によって駆動した流量又は流速が第三チャンネルセグメント内の圧力より駆動した流量又は流速よりも少なくとも約二十倍大きくなるように設定される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
第二チャンネルセグメント内の帯電した種の動電学的速度が、その圧力駆動速度よりも大きい請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第四チャンネルセグメント内の帯電した種の動電学的速度が、その圧力駆動速度よりも小さい請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第二流動ジャンクションに流動連結された第五チャンネルセグメントを更に備え、第五チャンネルセグメント内の帯電した種の全流量又は流速が第三チャンネルセグメント内の帯電した種の全流量又は流速よりも約五倍小さい請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第二流動ジャンクションに流動連結された第五チャンネルセグメントを更に備え、第五チャンネルセグメント内の帯電した種の全流量又は流速が第三チャンネルセグメント内の帯電した種の全流量又は流速よりも約十倍小さい請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記帯電した種がDNA又はRNAである請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記DNA又はRNAを相互連結されたチャンネル・ネットワークの第五チャンネルセグメント内にて1回以上増幅する工程を更に含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第二流動ジャンクション内又はその付近に帯電した種を十分に濃縮するために、第一バッファーが第二流動ジャンクション内で第二バッファーと流体境界を形成する請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記帯電した種を、第二流動ジャンクション内又はその付近に少なくとも約五倍濃縮させる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記帯電した種を、第二流動ジャンクション内又はその付近に少なくとも約十倍濃縮させる請求項16に記載の方法。
【請求項19】
帯電した種以外の第二バッファー内にあるサンプルの多くの部分を、第二チャンネルセグメントに流す請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【公表番号】特表2007−524086(P2007−524086A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547041(P2006−547041)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/040635
【国際公開番号】WO2005/066619
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(506076709)カリパー・ライフ・サイエンシズ・インク. (11)
【Fターム(参考)】