説明

混合液分離装置

被連れ回り特性が異なる少なくとも2種の物質(C,O)からなる混合液から特定の物質Oを分離する混合液分離装置であって、円筒形で、その一端部に混合液の吸入口11を有し、他端部に分離された物質Oの吐出口16を有する外側部材1と、外側部材1と同軸的に配置され外側部材1内で相対回転可能な棒状の内側部材2と、外側部材1と内側部材2とを相対回転させる駆動手段3と、を有し、外側部材1の内周側および内側部材2の外周側の少なくとも一方は外側部材1および内側部材2の相対回転により物質Oを一端部から他端部に案内するラセン状の案内壁を有し、相対回転により物質Oを案内壁に沿って他端部に送ることにより分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、工場の廃液などの、特性が異なる少なくとも2種の物質からなる混合液から、特定の物質を分離する装置に関する。
【背景技術】
製鉄業や金属加工業では、加工時の表面潤滑や機械潤滑に用いる油が表面に浮上したクーラント液や、切り粉や切削粉などの粉体が混じったスラッジ、金属加工品の洗浄・脱脂工程の排液等、2種以上の物質からなる混合液が発生する。これらの混合液から、油や粉体を分離してリサイクル利用するために、従来より各種の装置が用いられている。
たとえば、使用済みクーラント液から水面に浮上した油分(浮上油)を回収する代表的な装置に、ベルトスキマーがある。ベルトスキマーは、使用済みクーラント液のタンクの上方に配設された駆動プーリとタンク内の液に浸された従動プーリとの間に張設された無端ベルトを連続回転させることにより、ベルトの表面に浮上油を連続的に付着させてタンク外へ送る。しかしながら、上記方法によりタンク外へ送られた浮上油は、通常、油分の他にクーラントを多く含む。そのため、ベルト表面に付着したクーラントを含む浮上油を回収し、油分とクーラントとの比重差を用いて両者を分離する必要がある。
油分とクーラントとの分離には、一般に、比重差分離タンクが用いられる。比重差分離タンクは、たとえば図10に示すように、タンク8内にタンク内を二か所に区画する隔壁88を有する。隔壁88で区画された左右二か所の部屋81,82は、隔壁88の下部で連通している。そのため、右側の部屋82の矢印より供給されたクーラントCを含む浮上油は、比重差により、部屋81,82の下方にクーラントCが、右側の部屋82の上方に油分Oがたまり、それぞれ吐出口86,87から回収される仕組みである。しかしながら、分離中に表面の油分が酸素と長時間接触すると、油分が固化したり、使用済みクーラント液にゴミやスラッジなどが含まれていた場合には、吐出口に溜まるなどして、比重差分離タンクが上手く機能しないことがあった。
また、特開2003−71205号公報では、油分を含む粒子と水とを混合したスラリーから、遠心分離の原理を利用して、予め粒子を分離し、その後、比重差分離タンクを用いて水油を分離している。この方法によれば、比重差分離タンク内に粒子がたまって、タンクの機能を低下させることはないが、依然として、油分が固化する問題点は改善されない。
【発明の開示】
前述のように、従来法では、比重差分離タンクのような比重差を用いた分離手段が必須であった。そこで、本願発明者等は、簡単な構成で、上記問題点を有する比重差分離タンクを用いなくとも、被連れ回り特性が異なる少なくとも2種の物質からなる混合液から特定の物質を分離できる装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の混合液分離装置は、被連れ回り特性が異なる少なくとも2種の物質からなる混合液から特定の物質を分離する混合液分離装置であって、円筒形で、その一端部に前記混合液を吸入する吸入口を有し、他端部に分離された前記特定の物質を吐出する吐出口を有する外側部材と、該外側部材と同軸的に配置され該外側部材内で相対回転可能な棒状の内側部材と、前記外側部材と前記内側部材とを相対回転させる駆動手段と、を有し、前記外側部材の内周側および前記内側部材の外周側の少なくとも一方は該外側部材および該内側部材の相対回転により該特定の物質を前記一端部から前記他端部に案内するラセン状の案内壁を有し、前記外側部材と前記内側部材の相対回転により前記特定の物質を前記案内壁に沿って前記他端部に送ることにより分離することを特徴とする。
なお、内側部材は、棒状であれば円柱形状や中空円筒形状など、その形状に特に限定はない。そのため、内側部材の外周面にラセン状の案内壁を有する場合であっても、全体として棒状であればよく、たとえば、バネのように、ラセン状に巻かれた線材により案内壁が形成されているものも含む。
本発明の混合液分離装置において、前記外側部材および前記内側部材は、前記特定の物質に対してより強く連れ回しする性質をもつのが好ましい。
前記外側部材はその内周側がシリンダ状であり、前記内側部材はその外周側に前記ラセン状の案内壁を有するのが好ましい。また、前記内側部材はその外周側が雄螺子であるのが好ましい。
前記外側部材は、さらに、前記吐出口を有する他端部に形成され該吐出口から吐出する前記特定の物質を受ける特定物質受け部と、該特定物質受け部に形成され該特定物質受け部に溜まった該特定の物質を排出する特定物質排出部と、からなる排出手段を有するのが好ましい。
さらに、前記混合液は粘度の低い液体と粘度の高い液体とを含み、前記特定の物質は該粘度の高い液体であるのが望ましい。この際、前記粘度の低い液体はクーラント液であり、前記粘度の高い液は該クーラント液面上に浮遊した浮上油であるのが望ましい。
また、前記混合液は金属屑を含むスラッジであって、前記特定の物質は該金属屑であるのが望ましい。
本発明の混合液分離装置は、外側部材、内側部材および駆動手段からなる簡単な構成で、被連れ回り特性が異なる少なくとも2種の物質からなる混合液から特定の物質を分離することができる。
さらに、本発明では、外側部材および内側部材と、分離される特定の物質と、の連れ回り特性を利用して混合液を分離するため、粘度の異なる液体など、外側部材および内側部材への付着力の異なる物質を分離することができる。そのため、水と油、粘度の異なる油同士、スラッジ、ヘドロなどの各種の混合液から、特定の物質を分離することが可能である。そして、連れ回り特性を利用するため、混合液の種類に応じて外側部材や内側部材の回転数などの分離条件を選択することにより、特定の物質を効率よく回収することができ、比重差分離タンクなどの分離手段を必要としない。
また、外側部材と内側部材に、配管材など入手の容易な既存のシリンダと既存の雄螺子を用いてもよいので、装置を簡単に構成することができ、さらに、保全も容易である。
さらに、上記排出手段により、吐出口から吐出された特定の物質を効率よく排出することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1の混合液分離装置の正面図である。
図2は、実施例1の混合液分離装置の軸方向断面図であって、図1のX−X’における断面図である。
図3は、実施例1の混合液分離装置の径方向断面図であって、図1のY−Y’における断面図である。
図4は、実施例1の混合液分離装置を使用済みクーラント液タンクに設置した状態を示す模式図である。
図5は、実施例1の混合液分離装置を用いた場合の油の回収量を示すグラフであって、回転数依存性を示す。
図6は、実施例1の混合液分離装置を用いた場合の油の回収量を示すグラフであって、油の粘度依存性を示す。
図7は、実施例2の混合液分離装置の軸方向断面図であって、図8のW−W’における断面図である。
図8は、実施例2の混合液分離装置の軸方向断面図であって、図7のV−V’における断面図である。
図9は、実施例3の混合液分離装置の吸入口の一例であって、吸入口に整流板を設けた場合の径方向の断面図である。
図10は、比重差分離タンクの説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、本発明の混合液分離装置の実施の形態を説明する。
本発明の混合液分離装置は、被連れ回り特性が異なる少なくとも2種の物質からなる混合液から特定の物質を分離する混合液分離装置である。したがって、本発明の混合液分離装置で分離できる混合液としては、粘度の低い液体と粘度の高い液体とを含む混合液が望ましい。たとえば、水と油、粘度の異なる油、などである。また、混合液は、切り粉や切削粉などの金属屑を含むスラッジや、ヘドロ、また、水溶性と不水溶性の液体であってもよい。
そして、本発明の混合液分離装置は、外側部材、内側部材および駆動手段からなる。
外側部材は、円筒形で、その一端部に混合液を吸入する吸入口を有し、他端部に分離された特定の物質を吐出する吐出口を有する。また、内側部材は、外側部材と同軸的に配置され、外側部材内で相対回転可能な棒状である。
外側部材および内側部材は、その材質に特に限定はないが、分離する混合液中に長期間浸されたり混合液と接触していても安定な材質が望まれる。したがって、その材質は混合液の種類に応じて適宜選択する必要があるが、たとえば、金属製や樹脂製が好ましい。また、外側部材および内側部材の大きさは、分離される混合液の種類や分離量に依存するものであるため、適宜決定すればよい。
外側部材の吸入口は、混合液を外側部材内に吸入できれば、その形状や大きさに特に限定はない。たとえば、円筒部材の一方の開口端部や、外周面に形成された開口部からなるのが好ましい。吸入口は、混合液に浸った状態で、外側部材および内側部材に対する被連れ回り力により吸入口から混合液を連続的に吸入させるのがよい。また、開口部は、軸方向に延びる開口であるのが好ましい。軸方向に延びる開口であれば、混合液分離装置を液面に対して交差するように設置した場合、液面の変動があっても、連続的に混合液の吸入が可能となる。
外側部材の吐出口は、分離された特定の物質を外側部材の外部へ吐出できれば、その形式に特に限定はない。たとえば、円筒部材の一方の開口端部や、外周面に形成された開口部からなるのが好ましい。特に、外側部材の外周面に開口した開口部からなる吐出口であれば、特定の物質を効率よく装置外へ吐出することができる。吐出口の大きさや形状に特に限定はなく、さらに、開口部から装置の外部に向かって延出する管状部材などを設け、特定の物質を回収箱などに搬送してもよい。
また、外側部材の他端部に形成され吐出口から吐出する特定の物質を受ける特定物質受け部と、特定物質受け部に形成され特定物質受け部に溜まった特定の物質を排出する特定物質排出部と、からなる排出手段を有する混合液分離装置であれば、特定の物質を効率よく装置外へ排出することができる。
特定物質受け部は、吐出口から吐出する特定の物質を受けることができれば、その形状や大きさに特に限定はないが、たとえば、外側部材と同軸的に固定された有底円筒形状部分を有すれば、特定物質排出部以外の場所から流出するのを防ぐことができる。また、円筒形状部品は、加工しやすく安価であるため、入手が容易である。さらに、後述の排出手段において移送手段として板状体を用いる場合には、特定物質受け部が円筒形であるのが好ましい。後述のように、板状体は特定物質受け部に対して回転するので、特定物質受け部が円筒形状でない(たとえば方形状)と、板状体が届かない場所ができ、排出されない特定物質が生じる可能性がある。
また、特定物質排出部は、特定物質受け部に溜まった該特定の物質を排出できれば、その形式に特に限定はない。たとえば、特定物質排出部として、特定物質受け部に開口部を形成すれば、特定物質受け部に溜まった特定の物質は、開口部に達したところから順次装置外へ吐出される。そのため、たとえば、有底円筒形状部分を有する特定物質受け部の底部や外周面に開口を設ければよい。また、装置を設置した際に、特定物質排出部が重力の作用方向に開口している排出口であれば、特定物質受け部に溜まった特定の物質が自重により効率的に排出されるため好ましい。また、排出口が重力の作用方向に開口していると、排出口の側面に特定の物質やゴミ等が滞り難くなるため、排出口で特定の物質が固化して固まったりゴミやスラッジが溜まったりなどして起こる排出口の詰まりを低減できる。
また、排出手段は、さらに、特定物質受け部に溜まった特定の物質を排出口へ移送する移送手段を有するのが好ましい。移送手段としては、内側部材に固定され、外側部材と内側部材との相対回転により特定物質受け部と相対的に回転して特定物質受け部に溜まった特定の物質を特定物質排出部に押し集める板状体であるのが好ましい。本発明の混合液分離装置において、外側部材と内側部材とは相対回転するため、内側部材に固定された板状体は、外側部材に形成された特定物質受け部や排出部と相対回転する。板状体を特定物質受け部に対して回転することにより、特定物質受け部に溜まった特定の物質を板状体で押して排出部に集めることができ、効率よく排出を行うことができる。また、特定の物質が、長時間の放置により固化しやすい物質であっても、板状体により流動されるので、特定物質受け部に溜まった状態で固化するのを防止できる。
板状体は、特定の物質を押すことができる面を有するものであれば、その大きさや数に特に限定はない。また、板状体は、金属板やある程度の剛性を有する樹脂製板などの他、特定物質受け部と弾接するゴム板などの弾性体であってもよい。
また、外側部材および内側部材は、その設置方向に特に限定はないが、その軸方向が重力の作用方向であるのが好ましい。軸方向が重力の作用方向となるように設置すれば、設置場所が少なくて済む。また、外側部材および内側部材の回転が重力により偏芯し難くなる。この際、吸入口が下側に、吐出口が上側に位置するとよい。なお、外側部材および内側部材の軸方向が重力の作用方向に対して角度をもって設置される場合には、両部材を同軸的に相対回転可能に支持する支持具を用いれば、外側部材および内側部材の回転が重力により偏芯するのを防ぐことができる。
駆動手段は、外側部材と内側部材とを相対回転させる。回転手段は、モータからなるのが好ましい。また、混合液の種類に応じて装置の回転数を変更できるように、モータを制御する回路を有してもよい。さらに、外側部材および内側部材の回転が偏芯しないように、軸受けを設けてもよい。
なお、本発明の混合液分離装置は、混合液中の特定の物質が外側部材および内側部材に連れ回ることができる回転速度で相対回転する。そして、回転速度は、装置の寸法、また、混合液の種類や処理能力に依存するものであるが、10〜200rpmが好ましい。このとき発生する遠心力は0.002〜0.9G程度の弱いものである。したがって、物質を外側部材の内周面側に押し付けたり内側部材から遠ざけるような強い遠心力が発生する程早い回転ではない。ただし、物質の回収能力や装置の耐久性を考慮すると、30〜120rpmが好ましい。
外側部材の内周側および内側部材の外周側の少なくとも一方は、外側部材および内側部材の相対回転により特定の物質を外側部材の一端部から他端部に案内するラセン状の案内壁を有する。そして、外側部材と内側部材の相対回転により特定の物質を案内壁に沿って他端部に送ることにより分離する。
外側部材および内側部材は、混合液中の特定の物質に対してより強く連れ回しする性質を有するのが好ましい。たとえば、物理的または化学的に外側部材および内側部材に付着しやすい物質は、外側部材および内側部材に連れ回される。
また、外側部材および内側部材は、外側部材の内周側および内側部材の外周側の少なくとも一方にラセン状の案内壁を有する形状であれば、その形状に特に限定はない。すなわち、外側部材はその内周側がシリンダ状であり、内側部材はその外周側にラセン状の案内壁を有するものが好ましい。外周側にラセン状の案内壁を有する内側部材としては、雄螺子の他、バネや、ラセン状に巻いた線材であってもよい。この際、特定の物質は、その粘着力や摩擦力などにより、外側部材のシリンダ状の内周面および内側部材の案内壁(雄螺子)に連れ回される。より連れ回り特性を向上させたい場合は、外側部材の内周側または内側部材の外周側を起毛状やブラシ状の凹凸面としてもよい。特に、金属屑などの粉体は、凹凸面に付着し易いので好ましい。また、外側部材の内周側および内側部材の外周側の少なくとも一方を親水性または疎水性の面としてもよいし、磁力を有する面としてもよい。
そして、吸入口より吸入された混合液は、混合液のうち特定の物質を、外側部材と内側部材の相対回転により案内壁に沿って他端部に送る。この際、混合液中の特定の物質以外(以下「他の物質」とする。)は、外側部材および内側部材に連れ回され難いので、他の物質が吸入口から特定の物質と共に吸入されても、特定の物質が外側部材の一端から他端へと送られるうちに、外側部材および内側部材より脱離する。また、凹凸面を形成した場合であっても、凹凸面を弾性材料で形成すれば、凹凸面に付着した特定の物質はラセン状の案内壁に掻き取られ、掻き取られた特定の物質を案内壁に沿って、外側部材の一端部から他端部へ、滑らかに送ることができる。
なお、混合液の粘度の差が小さい液体からなる混合液であっても、外側部材と内側部材との隙間の幅や、回転手段の回転数を調整することにより、分離が可能である。また、同一の混合液であっても、隙間の幅や、回転手段の回転数を調整することにより、分離量や、分離後の特定の物質に含まれる他の物質の量が変化するなど、処理能力に差が生じるため、分離後の特定物質の用途に応じて調整するとよい。
本発明の混合液分離装置は、たとえば金属加工工程において回収された廃液を回収したタンクに対し、少なくとも1つ設置すればよい。また、回収された特定の物質に、さらに他の物質が含まれている場合は、各部材の連れ回り特性や、部材間の隙間の幅や回転数といった条件を変えた混合液分離装置を用いて分離することも可能である。
以下に、本発明の混合液分離装置の実施例を図を用いて説明する。
【実施例1】
本実施例の混合液分離装置を図1〜3を用いて説明する。図1は、本実施例の混合液分離装置の正面図であって、図2および図3は、図1のX−X’およびY−Y’における断面図である。
本実施例の混合液分離装置は、外側部材1、内側部材2および駆動手段3からなる。
外側部材1は、外筒本体10と接続部15とからなる。外筒本体10は、樹脂製で円筒形の配管材である。外筒本体10の外周面には、吸入口11が形成されている。吸入口11は、外筒本体10の一端から軸方向に切断され形成された180°開口である。そして、吸入口11は、軸方向に延びる軸方向開口端面111,113と周方向開口端面112により区画されている。ここで、円筒形の部材の外周面に開口を形成する場合、軸方向の切断は、通常、径方向に切断される。しかしながら、図3の点線で示すように、その切断面111’は、吸入される混合液の流れSを妨げる方向に向く。そのため、180゜開口には、混合液が吸入される側に、先端が肉薄となったエッジ部110が設けられる。軸方向開口端面111を内周面側に傾斜する傾斜面としてエッジ部110を形成することにより、混合液の流れが滑らかになる。
そして、外筒本体10の他端部には、円形開口106が設けられており、円形開口106は、後述の吐出口の一部である。
接続部15は、外筒本体10と同じ樹脂製で、一端にフランジ部151をもつ円筒形である。接続部15の他端部は、その底面が、混合液タンク等に設置する際の被設置面150となる。
接続部15の外周面には、横方向筒部156が形成されている。横方向筒部156は、円筒形で、接続部15の外周面と一体的に形成され外側へ延出している。また、横方向筒部156は、その先端が被設置面150方向へ近づくように傾斜している。そして、接続部15は外筒本体10を同軸的に収納し、外筒本体10の円形開口106は横方向筒部156と連結され、吐出口16をなす。また、接続部15は、外筒本体10よりも軸方向に短いため、接続部15の被設置面150の下方より外筒本体10の吸入口11側が突出している。
内側部材2は、金属製の台形螺子からなる。内側部材2は、外側部材1(外筒本体10)と同軸的に配置される。この際、外側部材1と内側部材2との間に設けられた隙間が1mm以下となるように配置した。
駆動手段3は、ギヤードモータ30(図示せず)と、ギヤードモータ30を収納するケース31とからなる。ケース31は開口側にフランジ部315を有し、フランジ部315と外側部材1(接続部15)のフランジ部151とがボルト313により固定されている。ギヤードモータ30は、内側部材2の一端に接続され、内側部材2を回転駆動する。
また、ギヤードモータ30を制御する回路にはインバータを組み込み、モータの周波数を制御し、内側部材2の回転数を任意に設定できる。
《油回収量測定》
実施例1の混合液分離装置を用いて、クーラントと潤滑油の入ったタンクから浮上油を回収し、潤滑油を分離した。以下に図4を用いて分離手順を説明する。
タンク5にクーラントCを18L、潤滑油Oを0.25L投入し、油膜厚を12mmとした。タンク5の上面には、装置を設置する設置面50が設けられる。設置面50は、装置の下端部(外筒本体10)を挿入できる挿入孔を有し、挿入孔に挿入された装置は、被設置面150が設置面50に載置されることにより、タンク5に固定される。この際、液面(潤滑油Oの表面)から吸入口11の周方向開口端面112までが90mm、周方向開口端面112から吐出口116(円形開口106の中心)までが100mmとなる。
装置を設置後、駆動手段3により内側部材2を回転駆動すると、タンク5の浮上油は内側部材2の回転に連れ回される。そのため、浮上油は、吸入口1より吸入されるが、吸入された浮上油には潤滑油OだけではなくクーラントCも含まれる。クーラントCよりも粘度の高い潤滑油Oは、静止している外側部材1からは抵抗力を、回転する内側部材2からは回転力を受けるため、外側部材1と内側部材2との間で連れ回されて、内側部材2の雄螺子に沿って吐出口16へと送られる。一方、潤滑油Oよりも粘度の低いクーラントCは、連れ回り特性が低いため、送られにくい。そのため、クーラントCは、隙間より徐々に脱落し、タンク5へと戻される。
<測定1>
実施例1の混合液分離裝置を用いて、クーラントから潤滑油を分離した。分離される潤滑油は、粘度グレード(ISOの潤滑油粘度の分類)がVG68であり、クーラントは粘度がVG1である。内側部材2の回転数を30,60,120rpm(1分間の回転数)とした。15分間で回収した結果を図5および表1に示す。
【表1】

実施例1の混合液分離装置を用いた場合、クーラントの含有量の少ない潤滑油を得たいときは、回転数を60rpmとすればよい。また、短時間で多くの潤滑油を得たい場合は、回転数を120rpmとすればよい。
<測定2>
実施例1の混合液分離装置を用いて、クーラントから潤滑油を分離した。分離される潤滑油は、粘度グレードがVG2,VG22,VG68で、内側部材2の回転数を120rpmとした。1時間で回収した結果を図6および表2に示す。
【表2】

回転数が120rpmとした実施例1の混合液分離装置に関しては、潤滑油のみを得たいときは、クーラントと潤滑油との粘度差が小さい方が好ましい。また、短時間で多くの潤滑油を得たい場合は、クーラントと潤滑油の粘度差が大きい方が好ましい。
【実施例2】
本実施例の混合液分離装置は、実施例1の混合液分離装置において、外側部材1の接続部15の代わりに排出手段4を設置したものである。以下に、排出手段4について図7および図8を用いて説明する。図7は図8のW−W’における断面図、図8は図7のV−V’における断面図である。なお、実施例1と構成が同じ部位については、同じ符号を付した。
排出手段4は、有底円筒形状の潤滑油受け部40と、潤滑油受け部40に形成された排出口46(潤滑油排出部)と、ステンレス製で平板状のスクレーパ6と、からなる。なお、潤滑油受け部および潤滑油排出部は、上記の特定物質受け部および特定物質排出部に相当する。
潤滑油受け部40は、有底円筒形状であって、外筒本体10の他端部に互いに同軸的に位置するように設置されている。潤滑油受け部40は、ステンレス製で円盤形状の底部41と、ゴム材(図示せず)を介して底部41の上面に固定されたアクリル製で筒状の下部カバー412と、からなる。底部41は、その厚さ方向に開口した円形の開口部416を有し、開口部416には円筒形の排出口46が固定されている。下部カバー412は、底部41よりも小径で、下部カバー412の固定位置を跨ぐ位置に排出口46が形成されている。
また、外筒本体10の他端部は、開口端161となっており、外筒本体10と同軸的に配置された内側部材2の一端部は、開口端161より突出して配置されている。そのため、外筒本体10の開口端161は、分離された潤滑油が吐出する吐出口(161とする)となる。
スクレーパ6は、吐出口161の上側に位置するように、内側部材2の一端部に固定されている。スクレーパ6は、スクレーパ本体61と、スクレーパ本体61より延出しネジ62により内側部材の外周面に固定された固定部63と、からなる。スクレーパ6は、スクレーパ本体61が潤滑油受け部40の底部41および下部カバー412と僅かな隙間をもたせて固定される。なお、内側部材2の一端部(スクレーパ6が固体されている部分も含む)には、その外周面に螺子は形成されていない。
潤滑油受け部40の上部には、ステンレス製で円盤形状のベアリングプレート42が同軸的に固定される。ベアリングプレート42には、内側部材2を回転可能に軸支する深溝玉軸受け22が載置される。そして、内側部材2の端部は、カップリング23により駆動手段3のギヤードモータ30の出力軸32と連結される。深溝玉軸受け22およびカップリング23の周囲は、アクリル製で筒状の上部カバー423により覆われる。上部カバー423は、ベアリングプレート42に載置され、さらに、上部カバー423にはステンレス製で円盤形状のモータプレート43が載置される。モータプレート43、ベアリングプレート42および底部41は、互いに同径であり、互いに同様の位置に配置され同一円周上に形成された4つの孔を有する。なお、底部41にあけられた孔の内周面には螺子が形成されている。これらの孔にボルト413(先端部のみに螺子が形成)を挿通し、底部41に形成された孔とナット431と螺合させることにより、モータプレート43、上部カバー423、ベアリングプレート42、下部カバー412および底部41を一体的に固定している。
駆動手段3は、フランジ部315と排出手段4のモータプレート43とがボルト313により固定されている。
また、排出部4の下部には、取り外し可能な設置具45を固定することができる。設置具45は、内部に外筒本体10を収納できる内部空間をもつ円筒部452と、円筒部452の両端部に形成されたフランジ部である被設置面450および装置保持面454を有する。フランジ部は、上記の底部41等と同径であり、装置保持面454は、それらと同様の位置に配置され同一円周上に形成された4つの孔を有する。
設置具を固定する場合には、外筒本体10を円筒部45に挿入し、モータプレート43から底部41までを一体的に固定しているボルト413からナット431を外し、装置保持面454に形成された孔にボルト413の先端を挿通し、その後、ナット431で固定する。この際、装置保持面454には開口部が形成されており、装置保持面454は排出口46を塞がない。なお、円筒部450の軸方向の長さが異なる設置具45をいくつか準備しておくことにより、排出口46から設置面50までの距離を変更することが可能である。
本実施例の混合液分離装置を用いて、クーラントと潤滑油の入ったタンクから浮上油を回収し潤滑油を分離する際には、タンク5(図4参照)の設置面50の挿入孔に装置を挿入し、被設置面450を設置面50に載置する。
装置を設置後、駆動手段3により内側部材2を回転駆動すると、実施例1と同様に、潤滑油Oが内側部材2の雄螺子に沿って吐出口161へと送られる。吐出口161から吐出された潤滑油Oは、渭滑油受け部40で受けられ、その底部41上に溜まる。潤滑油受け部40に溜まった潤滑油Oは、スクレーパ6の回転により潤滑油受け部40内を移送される。この際、スクレーパ6が潤滑油受け部40の径方向に対して角度をもって固定されているため、スクレーパ6が図8の矢印方向に回転すると、潤滑油Oはスクレーパ6の面に沿って底部41の外周側に移動する。そのため、潤滑油Oは、中心から離れた位置に形成された排出口46に押し集められる。
排出口46に押し集められた潤滑油Oは、その自重により排出口46から回収箱51へと落下する。
本実施例の混合液分離装置によれば、分離された潤滑油が排出手段4により効率よく装置外へ排出され、排出口46の内周面に固化した潤滑油は見られず、ベアリングプレート42やモータ3の底部より潤滑油が染み出すこともなかった。
【実施例3】
本実施例の混合液分離装置は、実施例1または実施例2の混合液分離装置において、外側部材1の吸入口11に整流板を設置したものである。以下に、整流板について図9を用いて説明する。
混合液分離装置において、整流板70は、樹脂製で、円弧面部71と平面部72とを有す。円弧面部71は外筒本体10と曲率が同一であって、平面部72は円弧面71の一端より接線方向に一体的に延出する。そして、平面部72の端部は、吸入口11のエッジ部110の外周面に固定される。
矢印方向へ吸入された混合液は、その一部が軸方向開口端面111に妨げられて吸入口11から溢れ出す。吸入口から溢れた混合液は、整流板70により取り囲まれ、吸入口11の周辺に蓄えられる。
特に、混合液が使用済みクーラント液の浮上油である場合、図9のZで示す部分に浮上油の濃度の濃い部分が形成される。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被連れ回り特性が異なる少なくとも2種の物質からなる混合液から特定の物質を分離する混合液分離装置であって、
円筒形で、その一端部に前記混合液を吸入する吸入口を有し、他端部に分離された前記特定の物質を吐出する吐出口を有する外側部材と、
該外側部材と同軸的に配置され該外側部材内で相対回転可能な棒状の内側部材と、
前記外側部材と前記内側部材とを相対回転させる駆動手段と、
を有し、
前記外側部材の内周側および前記内側部材の外周側の少なくとも一方は該外側部材および該内側部材の相対回転により該特定の物質を前記一端部から前記他端部に案内するラセン状の案内壁を有し、
前記外側部材と前記内側部材の相対回転により前記特定の物質を前記案内壁に沿って前記他端部に送ることにより分離することを特徴とする混合液分離装置。
【請求項2】
前記外側部材および前記内側部材は、前記特定の物質に対してより強く連れ回しする性質をもつ請求の範囲第1項に記載の混合液分離装置。
【請求項3】
前記外側部材はその内周側がシリンダ状であり、前記内側部材はその外周側に前記ラセン状の案内壁を有する請求の範囲第1項または第2項に記載の混合液分離装置。
【請求項4】
前記内側部材はその外周側が雄螺子である請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の混合液分離装置。
【請求項5】
前記駆動手段は前記外側部材を静止状態とし、前記内側部材を回転駆動させる請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の混合液分離装置。
【請求項6】
前記外側部材は、さらに、前記吐出口を有する他端部に形成され該吐出口から吐出する前記特定の物質を受ける特定物質受け部と、該特定物質受け部に形成され該特定物質受け部に溜まった該特定の物質を排出する特定物質排出部と、からなる排出手段を有する請求の範囲第1項に記載の混合液分離装置。
【請求項7】
前記特定物質排出部は、重力の作用方向に開口している排出口である請求の範囲第6項に記載の混合液分離装置。
【請求項8】
前記排出手段は、さらに、前記特定物質受け部に溜まった前記特定の物質を前記排出口へ移送する移送手段を有する請求の範囲第6項に記載の混合液分離装置。
【請求項9】
前記移送手段は、前記内側部材に固定され、前記外側部材と該内側部材との相対回転により前記特定物質受け部と相対的に回転して該特定物質受け部に溜まった前記特定の物質を前記特定物質排出部に押し集める板状体である請求の範囲第8項に記載の混合液分離装置。
【請求項10】
前記混合液は粘度の低い液体と粘度の高い液体とを含み、前記特定の物質は該粘度の高い液体である請求の範囲第1項または第2項に記載の混合液分離装置。
【請求項11】
前記粘度の低い液体はクーラント液であり、前記粘度の高い液は該クーラント液面上に浮遊した浮上油である請求の範囲第10項に記載の混合液分離装置。
【請求項12】
前記混合液は金属屑を含むスラッジであって、前記特定の物質は該金属屑である請求の範囲第1項または第2項に記載の混合液分離装置。

【国際公開番号】WO2005/038408
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514899(P2005−514899)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015977
【国際出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000179328)リックス株式会社 (33)
【Fターム(参考)】