説明

混合無機/有機層を含む金属効果顔料、そのような金属効果顔料を製造するための方法、およびそれらの使用

本発明は、微小板形状の基材を含む、コーティングを有する金属効果顔料に関し、そのコーティングは、少なくとも1層のハイブリッド無機/有機層を含むが、そのハイブリッド層は、1種または複数の無機酸化物成分を有する無機ネットワークを少なくとも部分的に有し、かつ、少なくとも1種の有機成分を有し、その有機成分が少なくとも部分的には、有機オリゴマーおよび/またはポリマーであって、それが、1種または複数の有機ネットワーク形成成分を介して無機ネットワークに少なくとも部分的に共有結合的に結合している。本発明はさらに、それらの金属効果顔料の製造方法およびそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド無機/有機層を有する微小板形状の金属効果顔料およびそれらを製造するための方法に関する。本発明はさらに、それらの金属効果顔料の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
金属効果顔料の光学的な効果は、それらの微小板形状の(または薄片状の)構造に基づくものであって、それらの構造のために、塗布媒体中で基材に対して実質的に平行な配向が得られる。そのため、配向された金属効果顔料の微小板形状構造が、効果付与的な性質たとえば、明暗フロップ性、さらには高光沢性を与える。
【0003】
特定の光学的効果は、顔料サイズおよび顔料サイズ分布、さらには金属効果顔料の平均厚みによってほとんど決まってくる。その微小板形状構造に関連して言えば、金属効果顔料は機械的な力、特に剪断力の影響を受けやすい。過度の剪断操作を加えると、それらが崩壊したり変形したりして、その結果、その効果付与的な性質が損なわれる。金属効果顔料における影響の受けやすさについては、たとえば、金属効果顔料が、自動車用仕上げ設備の循環ラインシステムでポンプ輸送されると容易に損傷を受けたり、崩壊したりするという事実からも明らかである。さらに、慣用される着色顔料とは対照的に、金属効果顔料は、湿式コーティング材料の中への組み入れを穏やかに行って、その金属効果顔料に損傷が及ばないようにしなければならない。さらに、金属効果顔料は、粉体コーティング材料のベースワニスの中へは、有彩顔料の場合のように押出しをした後でピン付きディスクミル中で摩砕するような方法では組み入れることはできない。そのような方法では一般的に、それらが微粉砕されてしまって、その特徴的な光学的効果がほぼ完全に失われてしまう。
【0004】
さらなる重要な点は、金属効果顔料の耐腐食性に関する。この点については、たとえば、アルカリ性の水性ワニス中におけるアルミニウム顔料のガス発生に対する安定性を挙げることができる。そのような媒体中では、保護されていないアルミニウム顔料は腐食し、水素ガスを発生するが、この現象は「ガス発生」とも呼ばれている。この望ましくない事象は爆発の可能性を伴うし、さらに酸化のために、そのアルミニウム顔料から、それらに典型的な光学的性質が失われる。さらに、発生した水素が、そのコーティング材料のレオロジー的性質に悪影響を与える。
【0005】
したがって、かなりの長期間にわたって、金属効果顔料は、純粋に無機のまたは純粋に有機の、三次元架橋コーティングと共に使用されてきた。それらのコーティングは一般的に、過酷な媒体における腐食に対する保護として役立つが、多くの場合、機械的な安定化作用も有している。さらに、粉体コーティング材料中において使用される金属顔料には、誘電コーティングの手段による適切な帯電性を与えてもよい。
【0006】
金属顔料は、たとえば二酸化ケイ素(US2,885,366およびUS3,954,496)を用いるか、アクリレートポリマー(DE40 30 727)を用いてコーティングすることができる。SiOコーティングされた金属顔料は商業的に入手可能であって、Eckart GmbH & Co.KGから、PCR、Hydrolan(登録商標)、さらにはResistおよびDorolan(登録商標)の名前で販売されている。二酸化ケイ素コーティングによって、アルミニウム顔料に、たとえば、水性ワニス系における優れたガス発生に対する安定性が与えられる。さらに、そのようなコーティングの硬さが、たとえば自動車用仕上げ設備における循環ラインシステム中で起きる種類の剪断力の影響に対して、延性があり剪断の影響を受けやすいアルミニウムフレークを安定化させる(A.Kiehl and K.Greiwe、Progress in Organic Coatings、37(1999)179)。
【0007】
酸化アルミニウムコーティングの場合においても同様の効果が起きる(DE195 20 312、H.Birner and K.Greiwe、Coating、11(1997)432)。クロメート処理アルミニウム顔料もまた公知であるが(EP0 259 592)、この場合は酸化アルミニウムと酸化クロムの不浸透性の混合層がガス発生に対する安定性を与えている。
【0008】
金属効果顔料上の純粋に無機のまたは純粋に有機の三次元架橋コーティングによって得られる有利な性質は、顔料の上での他の表面コーティングとは区別されなければならない。そのような表面コーティングが目的としているのは、いずれの場合も、金属効果顔料の表面化学反応により影響を受ける性能特性を改良することである。したがって、たとえば金属顔料の濡れ性は、まわりのワニス媒体の影響を直接受ける。それ故、DE198 20 112A1には、金属効果顔料の表面上の官能基に化学的に結合し、ワニスのまた別な官能基にも結合することが可能な、反応性有機配向助剤が記載されている。その有機配向助剤は、無機酸化物コーティングまたは有機ポリマーコーティングがすでに施されている金属効果顔料に独立したコーティングとして適用される。その配向助剤が金属効果顔料の表面特性を変化させ、ワニスのバインダーに共有結合的に結合することを可能とするので、それによって、一方ではワニス中における顔料の配向性、他方では硬化したワニスの縮合抵抗性を改良する。
【0009】
DE196 35 085A1には、不動態化保護コーティングでコーティングされ、物理蒸着法(PVD)により製造されたアルミニウム顔料が開示されている。相互に共有結合的に結合された無機酸化物および有機オリゴマーおよび/またはポリマーの保護層についての記述はない。
【0010】
DE40 30 727A1には、樹脂コーティングされた金属顔料が含まれていて、その表面上には、まず、共有結合的に結合されたシロキサン層を有し、それに対して三次元架橋合成樹脂コーティングが共有結合的に結合されている。そのような顔料の欠点は、それらが腐食に対して極めて安定という訳ではないということである。さらに、このシロキサン層は、その合成樹脂コーティングの金属顔料に対しての効果的な機械的接着性を与えない。
【0011】
EP1 322 714A2には、ケイ素−酸素マトリックスを用いてコーティングされた金属顔料を含む顔料調製が開示されている。この特許に示されているのは、純粋なSiOコーティングと、その中に有機官能性シランが予め組み込んであるSiOマトリックスを有するコーティングとである。
【0012】
WO03/014228A1には、リン酸塩またはホウ酸塩の第一のコーティングと、SiOの第二のコーティングを用いてコーティングされた金属顔料が開示されている。その明細書の教示によれば、そのSiO層には有機官能性シランがさらに含まれていてもよい。
【0013】
純粋に無機のコーティングを有する金属効果顔料、またはオルガノシランを予め組み込んである無機のコーティングの欠点は、それらのコーティングが極めて脆いということである。過酷な機械的な応力下では、それらのコーティングが損傷を受けて、所望の性質が失われることが判明した。
【0014】
したがって、たとえば、シリケートコーティングされた金属効果顔料をミキサーの中で加工すると、顔料の部分でガス発生に対する安定性が損なわれる可能性がある。そのような操作においては、たとえば、粉体としての顔料がミキサーの中の溶媒と一緒になって、ペースト化される。そのようなペーストは極端に粘度が高い。その結果、ミキサーのブレードでの機械的な剪断エネルギーが金属効果顔料に強力な剪断力を加える。そのような剪断力が働くことによって、脆いSiOコーティングが機械的に破壊される可能性がある。そのために、ある種の環境下においては、微小板のごくわずかな部分のコーティングが傷ついただけでも、周囲にある水分子との反応が起きるには十分であって、それが、第一には爆発の危険性を伴い、第二には腐食の結果としての光学的な性質における劣化を招くが、そのような劣化は望ましいものではない。しかしながら、品質にばらつきのない金属効果顔料を製造するためには、ミキサー中での加工は省略することができない製造工程である。
【0015】
このタイプの品質低下は、使用される基材が酸化鉄コーティングされたアルミニウム顔料(「Paliocrom」)の場合であっても同様である。それらの顔料は、さらにSiOコーティングにより、ガス発生に対して極めて安定なものとすることができる。この場合、連続した2層の無機コーティングが存在するが、それらはいずれも脆い。
【0016】
他の性能特性における顕著な劣化を受けることなく、脆さの問題を解決することは、単にSiOコーティングの厚みを増やしたり、同様の手段によったりするだけでは不可能である。コーティングの厚みが増すと顔料の不透明度が損なわれ、その金属顔料の光学的性質における劣化が増大する。さらに、その表面にさらに有機官能性を与えても、SiOコーティングの本質的な脆さには何の変化も起きない。
【0017】
金属効果顔料を純粋に有機コーティングすることの欠点は、それらがガス発生に対して十分には安定でないという点にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、改良された機械的性質を有する金属効果顔料を提供することである。その金属効果顔料は、強力な剪断力にさらされた後であってさえも、塗布媒体中で良好な光学的性質を示し、また良好なガス発生に対する安定性を有している。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の基礎となっている目的は、微小板形状の基材を含む、コーティングを有する金属効果顔料を提供することにより達成される。そのコーティングは、少なくとも1層のハイブリッド無機/有機層を含むが、そのハイブリッド層は、1種または複数の無機酸化物成分を有する無機ネットワークを少なくとも部分的に有し、かつ、少なくとも1種の有機成分を有し、その有機成分が少なくとも部分的には、有機オリゴマーおよび/またはポリマーであって、それが、1種または複数の有機ネットワーク形成成分を介して無機ネットワークに少なくとも部分的に共有結合的に結合されている。
【0020】
好適な展開法を、従属請求項2〜21において明示している。
【0021】
その目的はさらに、ハイブリッド無機/有機層を有する金属効果顔料を製造する方法の提供により達成されるが、その方法には以下の工程が含まれる:
・液相中で、少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分と、少なくとも1種の有機ネットワーク形成成分と、少なくとも1種の反応性有機成分と、を反応させてコーティング組成物を形成させる工程、
・ハイブリッド層として、そのコーティング組成物を微小板形状の金属基材に適用する工程であるが、
その微小板形状の金属基材は、液相に、少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分の添加または反応、少なくとも1種の有機ネットワーク形成成分の添加または反応、および少なくとも1種の反応性有機成分の添加または反応の、前、途中、または後に添加され、
ハイブリッド層は、1種または複数の無機酸化物成分を有する無機ネットワークを少なくとも部分的に有し、かつ、少なくとも1種の有機成分を有し、その有機成分が少なくとも部分的に有機オリゴマーおよび/またはポリマーであって、それが無機ネットワークに少なくとも部分的に共有結合的に結合する。
【0022】
少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分と、少なくとも1種の有機ネットワーク形成成分と、少なくとも1種の反応性有機成分とは、相互にいかなる順で組み合わせてもよい。しかしながら、その反応条件は、それらの成分の間で反応を起こすことが可能であるように設定しなければならない。その反応は、加水分解および/または成分相互の間での縮合によって実施するのが好ましい。したがって、それらの成分は加水分解性および/または縮合性である。加水分解および/または縮合の過程で形成されるコーティング組成物を次いで、金属顔料の表面に、好ましくは沈降法により適用する。
【0023】
金属顔料は、液相に、少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分の添加または反応、少なくとも1種の有機ネットワーク形成成分の添加または反応、および少なくとも1種の反応性有機成分の添加または反応の、前、途中、または後に添加される。したがって、金属顔料を最初に液相の中に導入し、次いで、無機ネットワーク形成成分(1種または複数)、有機ネットワーク形成成分(1種または複数)、および反応性有機成分(1種または複数)を、順不同に添加することができる。別な方法として、金属顔料を反応中または反応後のコーティング組成物に添加することもできる。添加の順および適用される反応条件に依存して、ハイブリッド無機/有機層を適用するより前に、主として無機層または主として有機層をまず金属顔料の表面に適用してもよい。言うまでもないことであるが、無機/有機層は、コーティング無しまたはプレコーティングされた金属顔料の表面に直接適用してもよい。
【0024】
一つの好適な展開においては、本発明の方法には以下の工程が含まれる:
(a)液相中に微小板形状の金属基材の反応混合物を準備する工程、
(b1)工程(a)からの反応混合物に少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分を添加する工程、
(c1)工程(b1)において添加された無機ネットワーク形成成分を加水分解および/または縮合させる工程、
(d1)工程(c1)の加水分解および/または縮合の、前、途中および/または後に、少なくとも1種の反応性有機ネットワーク形成成分および少なくとも1種の反応性有機成分を添加する工程、
または
(b2)工程(a)からの反応混合物に少なくとも1種の反応性有機ネットワーク形成成分および少なくとも1種の反応性有機成分を添加する工程、
(c2)工程(b2)からの反応混合物に少なくとも1種の加水分解性または縮合性の無機ネットワーク形成成分を添加する工程、
(d2)工程(c2)において添加された無機ネットワーク形成成分を加水分解および/または縮合させる工程、
そして
(e)加水分解および/または縮合された無機ネットワーク形成成分を、反応性有機ネットワーク形成成分と、さらには反応性有機成分と反応させ、同時におよび/またはそれに続けてハイブリッド無機/有機層を沈着させる工程、
(f)場合によっては、工程(e)においてコーティングされた微小板形状の基材を反応混合物から分離する工程。
【0025】
従属請求項23〜45に、本発明の方法の好適な展開法を示している。
【0026】
本発明の意味合いにおいて「無機ネットワーク形成成分」という用語は、その無機ネットワーク形成成分が無機ネットワークを構築することが可能であることを意味している。無機ネットワーク形成成分は、たとえば加水分解することが可能な金属塩であるか、そうでなければ完全に加水分解することが可能な有機金属化合物であってよい。
【0027】
本発明の意味合いにおいて「有機ネットワーク形成成分」という用語は、その有機ネットワーク形成成分が、反応性有機成分と組み合わさって、有機または有機金属ネットワークを構築することが可能であることを意味している。有機ネットワーク形成成分は、ほんの部分的にしか加水分解されず、そのため無機ネットワークを構築することが不可能な有機金属化合物であるのが好ましい。
【0028】
本発明の基礎となっている目的はさらに、ワニス、自動車用仕上げ剤、塗料、印刷インキ、粉体コーティング材料、建築用塗料、プラスチック、機密保護印刷インキ、セラミックス、ガラスまたは化粧品において、請求項1〜21のいずれか1項に記載の微小板形状の金属効果顔料を使用することにより達成される。
【0029】
本発明の基礎となっている目的はさらに、石造物用塗料および/または建築用塗料におけるIR(赤外光)反射顔料として、請求項1〜21のいずれか1項に記載の微小板形状の金属効果顔料を使用することにより達成される。
【0030】
驚くべきことには、金属効果顔料が、有機オリゴマーおよび/またはポリマーのハイブリッド層とさらに無機酸化物の無機ネットワークとによって包み込まれていると、機械的に安定でかつガス発生に対しても安定である金属効果顔料を得ることが可能であることが明らかになった。その有機オリゴマーおよび/またはポリマーは、無機ネットワークに少なくとも部分的に共有結合的に結合されている。その無機ネットワークは、少なくとも部分的に共有結合的に結合された有機オリゴマーおよび/またはポリマーによって相互貫入されているのが好ましい。したがって、本発明の意味合いにおいて、無機酸化物ならびに有機オリゴマーおよび/またはポリマーの層が形成されると、それらが互いに分離することはない。無機ネットワークと有機オリゴマーおよび/またはポリマーとが互いに相互貫入されるように、層が形成されるのが好ましい。
【0031】
驚くべきことには、本発明の金属効果顔料のハイブリッド層は、純粋な無機酸化物層に比肩できるような機械的硬度を有している。純粋な無機酸化物層と対比させると、本発明の金属効果顔料のハイブリッド無機/有機層は、実質的により弾性がある、すなわち実質的に脆くない。したがって、本発明の金属効果顔料は実質的に扱いがより簡単で、機械的な作用たとえば剪断力の影響を実質的に受けにくい。驚くべきことには、ガス発生に対する安定性に何の悪影響も与えることなく、改良された機械的安定性が達成される。
【0032】
たとえば、SiOと有機オリゴマーおよび/またはポリマーとのハイブリッド層を金属効果顔料に適用すると、ガス発生に対して安定であり、ミキサーの中で加工をした後でさえもガス発生に対する安定性を維持している顔料が得られる、ということが明らかになった。この場合の有機オリゴマーおよび/またはポリマーは、少なくとも部分的に、SiO層と共有結合的に結合されている。その有機成分が、機械的な硬度に悪影響を実質的に与えることなく、コーティングの弾性を向上させている。それの結果がコーティングの部分での摩耗安定性であって、純粋に無機の層に比較して顕著に改良されている。
【0033】
驚くべきことには、1種(または複数)のさらなる純粋に無機の酸化物層をこのハイブリッド層の上に沈着させた場合においてさえも、ハイブリッド無機/有機層を介しての機械的安定性における改良が得られるということもさらに判明した。
【0034】
さらに驚いたことには、ハイブリッド無機/有機層の場合には、実際のところ、純粋な有機層または無機層の場合に比較して、腐食に対する金属効果顔料の改良された保護を達成することも可能なのである。
【0035】
したがって、無機酸化物層の中に有機オリゴマーおよび/またはポリマーを組み入れることによって、金属効果顔料の性能特性を各種の点で改良することが可能である。
【0036】
本発明においては、無機酸化物ネットワークの有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対する少なくとも部分的な共有結合が、少なくとも1種の有機ネットワーク形成成分を介して起きている。有機ネットワーク形成成分は、無機ネットワークと、有機オリゴマーおよび/またはポリマーとのいずれに対しても結合することが可能な反応剤である。
【0037】
一つの好ましい実施態様においては、無機酸化物成分と有機オリゴマーおよび/またはポリマーとの少なくとも部分的な共有結合は、少なくとも部分的には、1種または複数の有機ネットワーク形成成分を介して達成されるが、その有機ネットワーク形成成分は好ましくは一般式(I)
SiX(4−n−m−o) (I)
[式中、Xは、それを加水分解させた後で有機ネットワーク形成成分の無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、加水分解性基であり、
そしてRは、有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能な、反応性有機基であり、
およびRは互いに独立して、それぞれ、有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能であってもよい有機基であるが、
ただし、
n、m、およびoは整数であって、n+m+o=1〜3、n=1〜3、m=0〜2、そしてo=0〜2である]
および/または一般式(II)
(RO)(RO)(RO)MX(k−n−m−o) (II)
[ここで、この有機金属化合物は、それを加水分解させた後で有機ネットワーク形成成分の無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、少なくとも1種の加水分解性基Xと、有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能な反応性有機基である、少なくとも1種の有機ラジカルRと、互いに独立して、それぞれ有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能であってもよい有機基であってもよいRおよびRとを有しており、
式中、
kは、Mの形式上の酸化数であり、
Mは、Al、ZrまたはTiであり、
nは、1〜(k−1)の整数であり、
mは、0〜(k−2)の整数であり、
oは、0〜(k−2)の整数であり、そして
n+m+oは1〜(k−1)の整数である]を有する。
【0038】
本発明においては、「形式上の酸化数」とは、アルミニウムは酸化数IIIを、ジルコニウムは酸化数II、IIIまたはIVを、チタンは酸化数II、IIIまたはIVを有することができるということを意味している。ジルコニウムおよびチタンはいずれも、酸化数IVを有しているのが好ましい。
【0039】
本発明の一つの好ましい展開においては、反応性基Rまたは反応性有機ラジカルRが重合可能である。ラジカルRが、たとえばさらなるラジカルRと重合可能であってもよく、それにより有機ネットワーク形成成分が、ハイブリッド無機/有機層の中でそのままオリゴマー化またはポリマー化された形態で存在していてもよい。別な態様においては、ラジカルRが他のモノマーと重合することが可能であってもよく、それにより有機ネットワーク形成成分が、ハイブリッド無機/有機層の中で、さらなるモノマーから構築されたポリマーの中で共重合された形態で存在していてもよい。
【0040】
有機ネットワーク形成成分として特に好ましいのは、有機官能性シランである。それらは、加水分解性基Xが加水分解した後で、無機ネットワークに結合することが可能である。加水分解の結果として、一般的には基XがOH基によって置換され、次いでそれが無機ネットワークのOH基と縮合して共有結合を形成する。ここでその基Xは、ハロゲン、ヒドロキシル、直鎖状であっても分岐状であってもよく、炭素鎖の中にあってもよい1〜10個のC原子を有するアルコキシ、およびそれらの混合物を表しているのが好ましい。
【0041】
有機ネットワーク形成成分は、少なくとも官能基Rを介して、有機オリゴマーおよび/またはポリマーに結合している。Rが反応性官能基であるのが好ましい。
【0042】
反応性の、好ましくは重合可能な、有機ラジカルRは、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、およびカルバメート基、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される1個または複数の置換基を有しているのが好ましい。有機ラジカルRは、共有結合のC−Si結合を介して中央のケイ素原子に結合しているのが好ましい。
【0043】
ラジカルRおよびRは互いに独立して、H−、(C〜C40)−アルキル−、(C〜C40)−フッ素化アルキル−、(C〜C40)−部分フッ素化アルキル−;(C〜C40)−アルケニル−、(C〜C40)−アルキニル−;(C〜C36)−アリール−、フッ素化(C〜C36)−アリール−、部分フッ素化(C〜C36)−アリール−;(C〜C40)−アルキルアリール−、(C〜C40)−アリールアルキル−、フッ素化(C〜C40)−アルキルアリール−、部分フッ素化(C〜C40)−アルキルアリール−;(C〜C40)−アルケニルアリール−、(C〜C40)−アリールアルキニル−、−;(C〜C40)−アルキニルアリール−;(C〜C40)−シクロアルキル−、(C〜C40)−アルキルシクロアルキル−、(C〜C40)−シクロアルキルアルキルシラン、からなる群より選択されるが、それらはそれぞれ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、カルバメート、および/またはエステル基により置換されていてもよく、また炭素鎖および炭素環構造の中にヘテロ原子としてO、N、およびSを含んでいてもよい。ラジカルRおよびRは、好ましくは3〜20個の炭素原子、より好ましくは5〜18個の炭素原子の鎖長を有する。ラジカルRおよびRは、分岐状であっても、および/または直鎖状であってもよい。アルキル鎖の場合においては、それらの鎖がヘテロ原子たとえばO、S、またはNで中断されていてもよい。
【0044】
有機基またはラジカルRはいずれの場合においても、その有機オリゴマーおよび/またはポリマーを共有結合させることが可能な反応性を有する。
【0045】
有機基またはラジカルRおよび/またはRがさらに反応性を有していて、有機オリゴマーおよび/またはポリマーが共有結合できるようになっていてもよい。しかしながら、有機基RまたはラジカルRとは対照的に、有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対する共有結合が、ラジカルRおよび/またはRとの間で形成される必要はない。したがって、ラジカルRおよび/またはRは非反応性であってもよい。より具体的には、適用される反応条件下では、ラジカルRおよびRは非重合性であるのが好ましい。したがって、ラジカルRおよびRは、ラジカルRとは対照的に、互いに重合することができないのが好ましく、より具体的には、適用される反応条件下ではモノマーと反応してポリマーを形成することができないのが好ましい。
【0046】
好適な有機官能性シランは、たとえば、Degussa(Untere Kanalstrasse 3、D−79618 Rheinfelden)で製造され、「Dynasylan」の商品名で販売されている各種の代表的製品である。たとえば、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO)を使用して(メタ)アクリレートまたはポリエステルを構築することが可能であり、ビニルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン(Dynasylan VTMOまたはVTEO)からはビニルポリマー、3−メルカプトプロピル−トリエトキシ[またはメトキシ]シラン(Dynasylan MTMOまたは3201)はゴムポリマーの中へ重合的に組み入れられ、アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO)またはN2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan DAMO)からはβ−ヒドロキシアミン、あるいは3−グリシジルオキシ−プロピルトリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO)からはウレタンまたはポリエーテルネットワークを構築することができる。
【0047】
ビニルおよび/または(メタ)アクリレート官能性を有するさらなるシランの例としては以下のものが挙げられる:イソシアナトトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロポキシトリエトキシシラン、ビニルエチルジクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、フェニルビニルジエトキシシラン、フェニルアリルジエトキシシラン、フェニルアリルジクロロシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、2−アクリロイルオキシエチルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(ブトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(プロポキシ)シラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリス(ブトキシ)シラン。
【0048】
有機ネットワーク形成成分としては、たとえば、Kenrich Petrochemicalsにより製造され、Ken−React(登録商標)の商品名で提供されているタイプの、適切な有機官能性チタネート、ジルコネートまたはアルミネートを使用することも可能である(Nordmann、Rassman GmbH、Kajen 2、20459 Hamburgから購入可能)。より具体的には、「KEN−REACT(登録商標) Reference Manual Titanate、Zirconate and Aluminate Coupling Agents、第2改訂版」(1993夏)の2〜21ページに挙げられているカップリング剤を、ほとんどの場合、有機ネットワーク形成成分として使用することができる。上述のKEN−REACT(登録商標)リファレンス・マニュアルの2〜21ページに開示されている内容を、ここに引用することにより本明細書に取り入れたものとする。
【0049】
これらの有機ネットワーク形成成分の加水分解性または縮合性の基Xはアルコキシであるのが好ましいが、それに代えてヒドロキシルまたはハロゲンであってもよい。アルコキシの場合には、中心原子Mに2個の酸素原子を介して結合された環状基、たとえばオキソエチレンまたはシクロネオペンチルを存在させることも可能である。この場合、その中心原子Mがさらに有することができる置換基は2個だけである。加水分解性の基は、中心原子にさらなる酸素原子を介して配位結合的に結合されている環状単位の一部であってもよく、したがって、加水分解の後でもその分子から除去されなくてもよい。
【0050】
さらなる形態においては、配位結合的に中心原子に結合された2個の有機ホスファイトリガンドが存在していてもよい。この場合、中心原子に結合した4個のアルコキシリガンドが存在する。
【0051】
これらのAl−、Zr−またはTi−有機ネットワーク形成成分は、キレート錯体または配位錯体の形態で存在していてもよい。その場合、それらのリガンドがヘテロ原子、好ましくはN、SまたはOを含んでいてもよい。
【0052】
そのような有機ネットワーク形成成分の例として以下のものが挙げられる(KEN−REACT(登録商標) Reference Manual−Titanate、Zirconate and Aluminate Coupling Agents by Salvatore J.Monteを参照):
イソプロピルジメタクリロイルイソステアロイルチタネート(IV)(KR7)、アルコキシトリメタクリロイルチタネート(KR 33DS)、イソプロピルトリ(N−エチレンジアミノ)エチルチタネート(IV)(KR 44)、トリス(2−プロペノアト−0)メトキシグリコリトチタネート(KR 39DS)、メタクリラトトリイソプロポキシチタネート、メタクリロイルオキシエチルアセトアセトナトトリイソプロポキシチタネート、(2−メタクリロイルオキシエトキシ)トリイソプロポキシチタネート、チタン(IV)2,2(ビス2プロペノラトメチル)ブタノラトトリス(ジオクチル)ピロホスファト−0(LICA 38J)、メタクリロイルオキシエチルアセトアセトナトトリ−n−プロポキシジルコネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシ−トリ(N−エチレンジアミノ)エチル−ジルコネート(IV)(NZ 44)、9−オクタデセニルアセトアセタトジイソプロポキシアルミネート。
【0053】
ハイブリッド層の無機成分は、金属酸化物および/または金属酸化物水和物および/または金属亜酸化物および/または金属水酸化物からなっていて、少なくとも部分的には互いに二次元または三次元ネットワークを形成するのが好ましい。
【0054】
金属酸化物および/または金属酸化物水和物および/または金属亜酸化物および/または金属水酸化物および/または金属過酸化物からなるハイブリッド層の無機部分は、好ましくはケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、クロム、マンガン、アンチモン、亜鉛、ホウ素、マグネシウム、鉄、ならびにそれらの混合物および合金、からなる群より選択される。
【0055】
それらの酸化物からなる無機ネットワーク形成成分として機能する出発化合物としては、それらの金属のアルコキシド、水酸化物、およびハロゲン化物を使用するのが好ましい。
【0056】
無機ネットワーク形成成分は、次の一般式を有しているのが好ましい:
MX
[式中、Xは独立してその都度、ハロゲン、ヒドロキシルまたは1〜10個のC原子を有するアルコキシからの、場合によっては加水分解性および/または縮合性の基であるが、そのアルコキシ基は炭素鎖中にヘテロ原子、好ましくはO、Sおよび/またはNを有していてもよい]。
【0057】
金属Mは、好ましくはSi、Al、Ti、Zr、B、Fe、Mg、Mn、Sb、Cr、Znおよび/またはCeであるが、ただし、
MがSb(V)ならば、
nは5であり、そして
MがSi、TiまたはZrならば、
nは4であり、そして
MがAl、Ce、Fe(III)、Sb(III)またはBであれば、
nは3であり、そして
MがZn、Fe(II)またはMgであれば、
nは2である。
【0058】
MがAl、Ti、ZrまたはFeである場合には、Xが、キレート化リガンドたとえばアセチルアセトネートまたはアセト酢酸エステルを表していてもよい。
【0059】
MがSi、Al、Tiおよび/またはZrであり、Xが1〜6個のC原子を有するアルコキシ基であるような無機ネットワーク形成成分を使用するのが好ましいが、そのアルコキシ基は炭素鎖中にヘテロ原子、好ましくはO、Sおよび/またはNを有していてもよい。SiO層を構築させるためには、特に好ましくはテトラアルコキシシラン、より具体的にはテトラメトキシ−および/またはテトラエトキシシランを使用する。
【0060】
SiOとアクリレートおよび/またはメタクリレートとのハイブリッド層によって得られた金属効果顔料、より具体的にはアルミニウム効果顔料は機械的に極めて安定であり、またガス発生に対しても極めて安定である。もし、たとえばテトラエトキシシランを加水分解させることにより無機ネットワークを生成させると、アクリロシランならびにアクリルモノマーおよび/またはメタクリルモノマーを添加することによって、それらの性質をさらに改良することが可能であることが明らかになった。このアプローチには、一方ではアクリロシランを生成したSiOネットワークにカップリングさせる方法、他方ではアクリルモノマーおよび/またはメタクリルモノマーを重合させる方法、さらには、アクリロシランのアクリル基をアクリルモノマーおよび/またはメタクリルモノマーから構築されたアクリルオリゴマーおよび/またはポリマーおよび/またはメタクリルオリゴマーおよび/またはポリマーの中に重合的に組み入れる方法などがある。
【0061】
金属効果顔料の上にこの種の金属出発化合物から純粋に無機のコーティングを沈着させることは、典型的には、特定のpHレベルとすることにより実施される。これらおよびその他の典型的な反応条件たとえば、温度や時間は当業者には公知である。
【0062】
微小板形状の基材の上に適切な無機ネットワーク形成成分から金属酸化物を沈着させることを、適切なモノマーと、場合によっては重合開始剤と、さらには有機ネットワーク形成成分の存在下に実施すると、無機酸化物ネットワークと有機オリゴマーおよび/またはポリマーとを形成させるための目標を同時に達成することが可能となる。無機ネットワークと、有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、互いに相互貫入しているのが好ましい。
【0063】
本発明の一つの好適な展開の場合においては、無機ネットワークだけではなく、オリゴマーおよび/またはポリマーの有機ネットワークもまた存在していて、好ましくはそれらが互いに相互貫入している。
【0064】
反応条件、使用する反応物の比率、および起きる反応の動力学に依存するが、ハイブリッド無機/有機層は実質的に均質であってよい。しかしながら、ハイブリッド層の中に無機ネットワークおよび/または有機オリゴマーおよび/またはポリマーの小さな領域を存在させることもまた可能である。
【0065】
本発明においては、「ハイブリッド層の中の有機オリゴマー」という用語は、通常のポリマー化学における概念、すなわち2個〜20個のモノマー単位の結合を意味している(Hans−Georg Elias、「Makromolekuele」、第4版 1981年、Huethig & Wepf Verlag、Basle)。ポリマーとは、20個を超えるモノマー単位の結合である。
【0066】
有機モノマーの多様性と、各種の金属酸化物または金属酸化物混合物の使用という観点から、ハイブリッド無機/有機層を形成させるためのバリエーションの可能性は、原理的には広い範囲で存在する。モノマー濃度の有機ネットワーク形成成分の濃度に対する比率によって、有機セグメントの平均鎖長を変化させることが可能である。したがって、多様な観点から、所望の性質を有する金属効果顔料を与えるようなコーティングを製造することが可能である。有機セグメントの平均鎖長は、2〜10000、好ましくは10〜1000、より好ましくは40〜200のモノマー単位である。
【0067】
ハイブリッド層の中の有機オリゴマーおよび/またはポリマーは、適切なモノマーを重合させることによって構築することができる。それらのモノマーは、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、カルバメート、およびエステル基、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される官能性を有していてよい。
【0068】
一つの好ましい実施態様においては、ハイブリッド無機/有機層は、有機および無機ネットワークの共有結合のための有機ネットワーク形成成分を使用し、有機モノマーを重合させることによって得られる。たとえば有機ネットワーク形成成分としてのDynasylan MEMOのような(メタ)アクリレート官能基を有するシランと、モノマーとしてのメタクリレートとを使用するのが特に好ましい。
【0069】
より具体的には、モノマーまたは反応性オリゴマーまたはポリマーとして好適なものは、架橋性(メタ)アクリレートすなわち、多官能(メタ)アクリレートである。そのような化合物の例としては:
テトラエチレングリコールジアクリレート(TTEGDA)、トリエチレングリコールジアクリレート(TIEGDA)、ポリエチレングリコール−400ジアクリレート(PEG400DA)、2,2’−ビス(4−アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)、ジエチレングリコールジメタクリレート(DEGDMA)、トリエチレングリコールジメタクリレート(TRGDMA)、テトラエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)、ブチルジグリコールメタクリレート(BDGMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、1,3−ブタンジオールジメタクリレート(1,3−BDDMA)、1,4−ブタンジオールジメタクリレート(1,4−BDDMA)、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(1,6−HDMA)、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(1,6−HDDA)、1,12−ドデカンジオールジメタクリレート(1,12−DDDMA)、ネオペンチルグリコールジメタクリレート(NPGDMA)などが挙げられるが、特に好ましいのはトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)である。
【0070】
これらの化合物は、Elf Atochem Deutschland GmbH、D−40474 Duesseldorf、Germany、またはRohm & Haas、In der Kron 4、60489 Frankfurt/Main、Germanyから市販されている。
【0071】
ハイブリッド層の有機成分、すなわち有機オリゴマーおよび/またはポリマーを構築するためのモノマーとして、非架橋性(メタ)アクリレートを使用することもできる。これらの(メタ)アクリレートのさらなる官能基に依存することによって、次いで、化学的な組成、従ってハイブリッド層を用いることにより得られる金属効果顔料の性能特性に関して、極めて広く多様にバリエーションの可能性を与えうることが可能となる。架橋性および単官能性のビニルおよび/または(メタ)アクリレートモノマーの混合物もまた好適である。
【0072】
単官能性の(メタ)アクリレートの例としては、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロピル、メタクリル酸イソボルニル、およびメタクリル酸ヒドロキシルエチルイミダゾリンなどが挙げられる。
【0073】
それらの化合物は同様にして、Elf Atochem Deutschland GmbH、Uerdingerstr.4 D−40474 Duesseldorf、またはRohm & Haas、In der Kron 4、60489 Frankfurt/Main、Germanyから市販されている。
【0074】
ハイブリッド無機/有機層を構築する際のビニル官能性および/または(メタ)アクリレート官能性モノマーの重合は、熱重合により実施することができる。重合開始剤、好ましくはフリーラジカル開始剤を使用するのが好ましい。そのようなものとしては、市販されている、慣用される一般的な有機または無機過酸化物またはジアゾニウム化合物が挙げられる。そのような化合物の例を挙げれば以下のようなものがある:
過酸化アセチルシクロヘキサンスルホニル、過酸化ビス(2,4−ジクロロベンゾイル)、過酸化ジイソノナニル、過酸化ジオクタノイル、過酸化ジアセチルおよび過酸化ジベンゾイル;ペルオキシジカーボネート(たとえば、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ−n−ブチルペルオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート)、アルキルパーエステル(たとえば、クミルパーネオデカノエート、t−ブチルパーネオデカノエート、t−アミルパーピバレート、t−ブチルパー−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーイソブチレート、t−ブチルパーベンゾエート)、ジアルキルペルオキシド(たとえば、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシド、ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、もしくは2,5−ジメチルヘキセ−3−イン−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシド)、ペルケタール(たとえば、1,1’−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド)、アルキルヒドロペルオキシド(たとえば、ピナンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロペルオキシド、もしくはt−ブチルヒドロペルオキシド)、アゾ化合物(たとえば、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、1,1’−アゾビス(イソブチロアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、または過硫酸塩たとえば、ペルオキソ二硫酸ナトリウムおよびペルオキソ二硫酸カリウム。好ましいのは、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)である。
【0075】
これらの化合物はAldrich Chemie、D−89552、Steinheimから市販されている。
【0076】
さらに、ハイブリッド無機/有機層を構築する際のビニル官能性および/または(メタ)アクリレート官能性モノマーの重合は、ATRP(原子移動ラジカル重合)、いわゆるリビングフリーラジカル重合によって実施してもよい。この場合、使用される有機ネットワーク形成成分は、好ましくは、アルキルハライド、好ましくはエステル基がα位にある臭化アルキルを末端に備えたRを有するシラン化合物である。この場合、場合によってはCu(II)塩または金属Cuとの混合物中のCu(I)塩と、さらには銅化合物と錯体を形成する適切なリガンドをさらに加える。これに関するさらなる詳細は、DE198 38 241A1に見出される。
【0077】
有機ネットワーク形成成分としてエポキシシランを使用する場合には、それらを架橋剤としての多官能性のアミンと反応させることができる。多官能性のエポキシ化合物を使用すれば、さらなるバリエーションの可能性を得ることもできる。言うまでもないことであるが、アミノ官能性シランをカップリング剤として使用する場合においても、多官能性のエポキシ化合物と多官能性のアミノ化合物とを組み合わせて使用することもできる。
【0078】
そのような反応に好適で、商業的に入手可能な多官能性のアミンの例としては次のものが挙げられる:3,3−ジメチル−4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、メタ−キシリレンジアミン、N−アミノエチルピペラジン、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジアミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、またはイソホロンジアミン。
【0079】
商業的に入手可能で好適な多官能性のエポキシ化合物の例としては次のものが挙げられる:1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、またはトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル。
【0080】
これらの多官能性のアミンおよびエポキシ化合物は、UPPC社:(U.Pruemmer Polymer−Chemie GmbH;Muehlhalde 8 in D−88487 Baltringen)から市販されている。
【0081】
本発明のさらなる実施態様においては、反応の間には有機ネットワークを調製しない。その代わりに、使用される有機成分には、有機ネットワーク形成成分の少なくとも1種の基Rを介して酸化物ネットワークに結合することを可能とする反応性の基を有する、反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーが含まれる。より具体的には、有機ネットワーク形成成分の基Rと確実に効果的に反応させることを目的として、オリゴマーおよび/またはポリマーを、ハイブリッド層の中に導入するより前に、有機ネットワーク形成成分と直接反応させることも可能である。その目的のためには、オリゴマーおよび/またはポリマーを適切な溶媒の中に溶解させ、有機ネットワーク形成成分を加え、それらの成分を反応させる。次いで、有機ネットワーク形成成分と組み合わせた有機オリゴマーおよび/またはポリマーを、無機ネットワークを生成させるために使用される金属酸化物形成性化合物と反応させて、ハイブリッド無機/有機層を形成させることができる。
【0082】
反応の間に形成される無機ネットワークの中に直接組み入れることが可能な反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーの例としては、以下のものが挙げられる:
シラノールまたはメトキシ基末端のシリコーン、シラン変性ポリエチレンイミンまたはポリブタジエン、ポリアリールアルキルシラセスキオキサンまたはアミノシラン変性ポリエチレンオキシドウレタン。これらの化合物の場合、100〜1000g/モルの範囲の特に低い分子量であるのが好ましい。このタイプの低分子量化合物は、無機酸化物ネットワークに対する結合部位の数を特に多く有し、そのため、より均一に分散されたハイブリッド無機/有機層が得られる。
【0083】
このタイプの市販されている化合物の例としては以下のものが挙げられる:
反応性シリコーンたとえば、1,7−ジクロロオクタメチルテトラシロキサン、シラノール基末端のジフェニルシロキサン、シラノールおよび/またはメトキシ基末端のジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンのコポリマー、シラノール基末端のポリトリフルオロプロピルメチルシロキサン、トリメトキシシリルプロピル置換ポリエチレンイミン、ジメトキシメチルシリルプロピル置換ポリエチレンイミン、トリエトキシシリル変性ポリブタジエン、ジメトキシメチルシリル変性ポリブタジエン、ビニルメトキシシロキサンオリゴマー、(N−トリエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン、およびポリ(トリメチルシリルプロピン)(いずれもたとえばABCR GmbH & Co.Postfach 210135、Hansastr.29c、D−76151 Karlsruhe、Germanyから入手可能である)。さらなる例としては、Bakelite AG(Gennaer Strasse 2−4、D−58642 Iserlohn−Letmathe)からResoleまたはNovolackeとして製造、販売されているタイプのシラン変性フェノール−ホルムアルデヒドオリゴマーが挙げられる。
【0084】
本発明のさらなる実施態様においては、反応性オリゴマーおよび/またはポリマーとして、反応性、好ましくは重合性の官能基を有する化合物を使用することも可能である。重合性の官能基は、たとえばオリゴマーおよび/またはポリマーの続けての反応により(たとえばポリマー類似の反応の手段により)調製することができる。それらの反応性オリゴマー/ポリマーは、適切な有機ネットワーク形成成分の官能性有機基と反応し、そして同様にして無機酸化物ネットワークに、またはその中で共有結合的に結合される。
【0085】
それらの反応性オリゴマーおよび/またはポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、およびポリオレフィンの群からの反応性ポリマーであってよい。
【0086】
適切な官能基を介してハイブリッド層の中に直接組み入れることが可能な有機オリゴマーおよび/またはポリマーは、好ましくはポリマーと化学的に融和性のある官能基を有するもの、たとえば有機ネットワーク形成成分である。したがって、エポキシ基含有シランの場合には、エポキシ樹脂またはアミノ基含有樹脂を使用するのが好ましく、(メタ)アクリル基含有シランの場合には、(メタ)アクリレートなどを使用するのが好ましい。有機オリゴマー/ポリマーの官能基と有機ネットワーク形成成分の反応性の基Rとの反応が、縮合メカニズムまたは付加メカニズムにより起きる場合には、それらの官能基が互いにそれなりに適合していることが好ましい。たとえば、エポキシド含有ポリマーは、エポキシ官能化またはアミノ官能化シランとは特に良好に反応させることができる。このようにして、ポリマーをアルコキシシランにより変性させ、それによって、たとえばテトラアルコキシシランと極めて良好に反応させて、ハイブリッド無機/有機層を得ることができる。
【0087】
このようにして使用することができるプレポリマー/プレオリゴマーの一例は、エポキシ樹脂D.E.R:330(Dow Corning;Rheingaustr.53 in D−65201 Wiesbaden、Germany)である。さらなる例としては、ABCRからの(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、アミノプロピルメチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、およびさらにはポリブタジエン−ポリ(2,3−エポキシ)ブタジエンコポリマー(Aldrich、D−89552 Steinheim、Germanyから入手可能)が挙げられる。
【0088】
本発明のさらなる実施態様においては、有機ネットワーク形成成分の官能基だけを互いに重合させることによって、無機酸化物の中で有機オリゴマーおよび/またはポリマーの生成を行わせる。この方法では、たとえば、その中の反応性、好ましくは重合性の基Rが好ましくはメタクリレート、アクリレートまたはビニル基である有機ネットワーク形成成分を、適切な重合開始剤を添加することによって、オリゴマー化またはポリマー化させる。たとえばエポキシド含有シランを、酸化物ネットワークの中に組み入れる前に互いに反応させて、オリゴマー性/ポリマー性ポリエーテル単位を形成させることも可能である。適切なエポキシ官能化シランとアミノ官能化シランの混合物を、ハイブリッド無機/有機層の中に組み入れる前に、少なくとも部分的に反応させて、オリゴマー性/ポリマー性β−ヒドロキシアミンを形成させることも可能であって、この方法で、擬似二次元有機ネットワークを予め形成させてもよい。次いで、それらのシラン混合物を得られた酸化物ネットワークと反応させて、ハイブリッド無機/有機層を形成させることができる。
【0089】
しかしながら、この方法で形成させたハイブリッド無機/有機層は、有機成分のコンテクストにおいては、さらに有機モノマーを共重合させる、すなわちその重合の間に追加して添加する場合よりは、重合度が低い。
【0090】
したがって、本発明のさらなる実施態様においては、有機モノマーをさらに使用して有機ネットワークを構築させるのが好ましい。
【0091】
有機オリゴマーおよび/またはポリマーの有利な効果だけではなく、無機酸化物ネットワークの効果もまた確実に利用できるようにするためには、微小板形状の基材に適用されたハイブリッド無機/有機層の有機部分を、好ましくは4〜85重量%、より好ましくは5〜75重量%、特に好ましくは10〜50重量%の範囲で存在させるが、これらの重量%の数値はハイブリッド層全体の重量を基準にしたものである。
【0092】
有機成分が4重量%未満では、有機オリゴマーおよび/またはポリマーの有利な、すなわち弾性向上効果がほとんど発揮されない。その一方で、ハイブリッド層中の有機部分が85重量%を超えると、無機成分の有利な、すなわち摩耗抵抗性向上効果が失われる。
【0093】
それら有機成分の量は、効果顔料のC含量を基準として、簡単な方法で分析して求めることができる。
【0094】
純粋に有機または無機の層をさらに有する複合層構成の場合、そのような層を分析するには、スパッタリング手法と表面感度の高い分析方法たとえばESCAおよび/またはSIMSとを組み合わせて用いることが推奨される。
【0095】
機械的安定化および/または疎水化増進の観点から、ハイブリッド無機/有機層の有利な効果を発展させるためには、ハイブリッド層の平均厚みは、好ましくは少なくとも2nm、より好ましくは少なくとも3nm、特に好ましくは少なくとも10nmである。2nm未満になると、ハイブリッド無機/有機層の有利な効果がほとんど認められなくなる。
【0096】
そのハイブリッド無機/有機層は、層の厚みが極めて厚くなっても依然として機械的には安定化されている。ハイブリッド無機/有機層の厚みは典型的には、約10nm〜50nmの範囲内である。しかしながら、最大の層の厚みが800nm、好ましくは700nm、極めて好ましくは600nmであっても、その有利な効果が依然として存在している。これらの範囲を超える層の厚みとなると、金属効果顔料の厚みを過度に増大させるという全体的な影響が生じる。この場合、光学的効果を生むには決定的に重要な、塗布媒体中における金属効果顔料の配向性能がますます制限されるようになる。さらに、極めて厚いコーティングでは、顔料の不透明度に悪影響が出る。
【0097】
層の厚みの点から見ると、ハイブリッド無機/有機層の二つの成分は、均質な分布で存在していてもよいし、あるいはそうでなければ、不均質な分布たとえば勾配を有するような形態で存在していて、層の厚み方向でその二つの成分の比率が変化していてもよい。個々の成分が不均質に分布しているような場合には、ハイブリッド層の組成に関する先に述べたような限定が、ハイブリッド層の厚み方向での平均値に当てはめられる。しかしながら、本発明においては、無機ネットワークならびに有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、実質的に均質、好ましくは均質に分布しているのが好ましい。
【0098】
有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、たとえば、無機ネットワークの中で少なくとも部分的にはナノ粒子の形態で存在していて、ハイブリッド無機/有機層を形成していてもよい。また別な可能性としては、無機酸化物成分が有機オリゴマーおよび/またはポリマーの中で少なくとも部分的にはナノ粒子の形態で存在していて、ハイブリッド無機/有機層を形成していてもよい。本発明のさらなる変法においては、ナノスケールレンジのハイブリッド無機/有機層が実質的に均質な構成を有していて、そのために、オリゴマーおよび/またはポリマーの実質的に有機的な環境中における無機ナノ粒子の形成、あるいは、無機的な環境中におけるオリゴマーおよび/またはポリマーの形態での有機ナノ粒子の形成は、比較的に起こりにくい。均質な構成は、特に、ハイブリッド無機/有機層を得る際に有機ネットワーク形成成分を高い割合で使用した場合に得られる。
【0099】
微小板形状の基材は一般に、市販されている金属効果顔料からなる。そのようなものには、純粋な金属顔料、コーティングされた金属顔料、および金属を含む干渉顔料が含まれる。
【0100】
微小板形状の基材は、3〜10000、好ましくは5〜5000、極めて好ましくは10〜4500の形状因子(長さ方向の平均値の厚みの平均値に対する比率)を有しているものである。
【0101】
微小板形状の基材のサイズの関係は、典型的にはレーザー回折法により測定されるタイプの、累積分布曲線の平均値(d50値)で特性表示される。この文脈においては、サイズ、すなわち長さ方向で、好ましくは2〜2000μm、より好ましくは3〜1000μm、さらに好ましくは4〜200μm、極めて好ましくは5〜100μmのd50を有している。
【0102】
金属効果顔料は、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、スズ、チタン、クロム、銀、コバルト、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、ジルコニウム、およびケイ素、ならびにそれらの合金のような物質からなる。好適な合金はゴールドブロンズ(黄銅)であるが、加えて、鋼やステンレス鋼の顔料を使用することも可能である。純金属の場合、すなわち98重量%を超える超純度を有する金属としては、アルミニウム、銅、および鉄が好ましい。
【0103】
特に好ましいのは、アルミニウム、黄銅(ゴールドブロンズ)、および、DE101 14 446A1の教示に述べられているようなタイプの(還元)カルボニル鉄ペレットから製造された鉄顔料の微小板形状の基材である。
【0104】
それらの基材は、長さ方向が1〜1000μm、好ましくは5〜100μmである。それらの平均厚みは、30〜2000nm、好ましくは70〜800nm、より好ましくは150〜500nmである。湿式研磨プロセスにより製造される極めて薄いアルミニウム顔料が、たとえばDE103 15 755A1に記載されている(この特許を、ここに引用することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0105】
金属顔料は、対応する金属ペレットを湿式または乾式研磨するような従来技術によるか、あるいは、たとえばUS4,321,087に記載されているようなタイプの、PVD(物理蒸着)ベルトコーティングプロセスによるか、のいずれの方法によっても製造することができる。後者の場合、その金属顔料は、ベルトから剥がして機械的に微粉砕して顔料とした後で、ハイブリッド無機/有機層を与えることができる。この方法においては、それらの顔料を機械的に安定化させ、また、腐食の影響から保護することができる。
【0106】
さらなる好適な微小板形状の基材はコーティングされた金属顔料である。この文脈においては、たとえば、酸化鉄を用いてコーティングされたアルミニウム顔料(商品名:「Paliocrom(登録商標)」、BASF、Ludwigshafen、Germany)、クロメート処理アルミニウム顔料(商品名:「Hydrolux」、Eckart)、酸化アルミニウム顔料(商品名:「Aloxal」、Eckart)、酸化チタンを用いてコーティングされたアルミニウム顔料、および酸化物層を備えた鉄顔料(DE101 14 445A1)などを挙げることができる。
【0107】
特に好ましいのは、酸化鉄を用いてコーティングされたアルミニウム顔料(商品名:「Paliocrom(登録商標)」)である。それらは、純粋に無機の酸化鉄層を用いてコーティングされている金属顔料である。
【0108】
基材としてクロメート処理アルミニウム顔料を使用することによって、極めて高い耐候安定性を有する顔料が得られる。それらの顔料は、建築物の外装でIR反射顔料として使用することができる。この場合、アルミニウム顔料の赤外線領域における高い反射率を利用することで、断熱性を有する建築物の外装コーティングが得られる。しかしながら建築物の外装に使用するとなると、その顔料は極限的な条件に耐えるものでなければならない。驚くべきことには、ハイブリッド無機/有機層を有する本発明の金属効果顔料は、外壁を保護するために使用するのに特に適していることが明らかになった。
【0109】
本発明におけるさらなる展開においては、有機的/無機的に変性された層を、ネットワーク変性剤を用いてさらに変性する。有機ネットワーク形成成分とは対照的に、ネットワーク変性剤は有機オリゴマー/ポリマーを形成することはなく、また添加されている有機モノマーと重合したり、相互に重合したりすることもない。
【0110】
有機ネットワーク変性剤は、少なくとも1種の加水分解性基だけではなく少なくとも1種の有機基も含む反応剤ではあるが、必ずしも反応性や重合性を有している必要はない。
【0111】
有機ネットワーク変性剤は好ましくは、一般式(III)の化合物
SiX(4−n−m−o) (III)
[式中、Xは、それを加水分解させた後で有機ネットワーク変性剤の無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、加水分解性基であり、
そしてR、R、およびRは互いに独立して、それぞれ非反応性有機基であるが、
ただし、
n、m、およびoは整数であって、ここでn+m+o=1〜3、n=1〜3、m=0〜2、そしてo=0〜2である]
および/または一般式(IV)の化合物である。
MX(k−p) (IV)
[この化合物は、それを加水分解させた後で有機ネットワーク変性剤の無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、少なくとも1種の加水分解性基Xと、少なくとも1種の非反応性有機ラジカルRとを有しているが、ここで、
kは、Mの形式上の酸化数であり、
Mは、Al、ZrまたはTiであり、そして
pは、1〜(k−1)の整数である]
【0112】
有機ネットワーク変性剤の加水分解性または縮合性の基Xは、ハロゲン、ヒドロキシル、または1〜10個のC原子を有する直鎖状であっても分岐状であってもよいアルコキシからなる群より選択されるのが好ましい。
【0113】
有機官能性基であるR、RおよびRは、好ましくは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アリールアルキル、アルケニルアリール、アリールアルキニル、アルキニルアリール、シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、ヒドロキシル、チオール、メルカプタン、フッ素化アルキル、部分フッ素化アルキル、(部分)フッ素化アリール、(部分)フッ素化アルキルアリール、アクリレート、メタクリレート、ビニル、エポキシ、カルボキシル、およびエステル基、からなる群より選択される。ラジカルR、R、およびRは、好ましくは3〜20個の炭素原子、より好ましくは5〜15個の炭素原子の鎖長を有する。ラジカルR、R、およびRは、環状、分岐状および/または直鎖状であってよく、またその炭素鎖またはその炭素環構造の中にO、S、およびNのようなヘテロ原子が含まれていてもよい。官能基R、R、およびRの長さに関しては、有機ネットワーク形成成分に関連しての所見を参照されたい。
【0114】
上述の有機ネットワーク変性剤の官能性は、いくつかの場合においては、有機ネットワーク形成成分として使用された場合のそれと同一である。違っているのは、この場合においてはそれらの官能性が、相互の間、あるいは有機モノマーまたはポリマーとの間で反応させることを目的としていないという点である。このことがあてはまるのは、それらの化学的反応性で見ると、R、R、およびRの官能性が、モノマーの官能性や、そうでなければ有機オリゴマーおよび/またはポリマーの官能性とは異なっているという場合である。したがって、ネットワーク変性剤と適切なモノマーを選択することによって、反応を調節することにより、ネットワーク変性剤が相互の間やモノマーとの間で反応しないようにすることができる。
【0115】
たとえば、ハイブリッド層の有機成分、すなわち有機オリゴマーおよび/またはポリマーを構築するために、有機官能性シランの混合物だけを使用するような場合に、その官能基が相互に反応しないような有機官能性シランのすべてが、有機ネットワーク変性剤として機能する。
【0116】
純粋な有機ネットワーク変性剤として好適な有機官能性シランとは、とりわけ、強い化学的反応性を有する官能性を持たない化合物である。そのようなものとしては、とりわけ、ラジカルR、R、およびRとして(C〜C40)アルキル、(C〜C36)アリール、さらにはパーフルオロ化もしくは部分フッ素化(C〜C40)アルキルおよび/または(C〜C40)アリール官能性が挙げられる。それらのアルキルラジカルは、直鎖状であっても、分岐状であっても、あるいは環状であってもよい。例を以下に示す:
プロピルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、オクチルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、ドデシルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、オクタデシルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、フェニルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、ジフェニルジエトキシ[またはメトキシ]シラン、パーフルオロオクチルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、1−,1−,2−,2−,3−,3−,4−,4−フルオロオクチルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、5−,5−,6−,6−,7−,7−,8−,8−,8−フルオロオクチルトリエトキシ[またはメトキシ]シラン、1H−,1H−,2H−,2H−パーフルオロオクチルトリエトキシシラン(Dynasylan F8261)。
【0117】
中心原子としてTi、ZrまたはAlを有する有機ネットワーク変性剤の例としては以下のものが挙げられる(Ken−React Reference Manual−Titanate、Zirconate and Aluminate Coupling Agents by Salvatore J.Monte、増訂版(1993夏)を参照されたい):
イソプロピルトリイソステアリルチタネート(IV)(KR TTS)、イソプロピルトリ(ジオクチル)ホスファトチタネート(IV)(KR 12)、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート(IV)(KR 9S)、イソプロピルトリ(ジオクチル)ピロホスファトチタネート(IV)(KR 38S)、ジ(ジオクチル)ホスファトエチレンチタネート(IV)(KR 212)、ジ(ジオクチル)ピロホスファトエチレンチタネート(IV)(KR 238S)、ジ(ジオクチル)ピロホスファトオキソエチレンチタネート(IV)(KR 138S)、ジイソブチル(ステアリル)アセトアセチルアルミネート(KA 301)。
【0118】
本発明のさらなる展開においては、ハイブリッド層を適用するより前に、基材にまず、事実上、無機だけまたは有機だけのいずれでもよい1種または複数のコーティングを施してもよい。そのような純粋に無機または純粋に有機の層の調製法は、当業者には周知である。
【0119】
本発明のまたさらなる展開においてはさらに、純粋に無機および/または純粋に有機のコーティングを、ハイブリッド無機/有機層に対して適用してもよい。そのようなコーティングの調製法もまた、当業者には周知である。
【0120】
その純粋に無機または有機の層の厚みは、好ましくは3〜1000nmの間、より好ましくは4〜800nmの間、特に好ましくは5〜500nmの間、極めて特に好ましくは7〜50nmの間である。
【0121】
本明細書において「純粋に無機」の層とは、有機物の割合が4重量%未満である層である。「純粋に有機」の層とは、無機物の割合が4重量%未満である層である。上述の重量%で表した量は、いずれの場合も、それぞれの層の重量を参照している。
【0122】
ハイブリッド層を適用する前または後に純粋に無機または有機の層をコーティングするための反応条件は、ハイブリッド層を形成させるために必要な条件とは異なっていてもよい。したがって、たとえば、反応温度、溶媒あるいはpHが変化していてもよい。このことにより、適切であれば、基材に対してハイブリッド無機/有機層を沈着適用したり、たとえば濾過および真空乾燥の手段によって前駆体を加工したりする前または後に、反応を終了させておくことを必要とする場合もある。しかしながら、純粋に無機の層および/または純粋に有機の層を用いたコーティングを、ワンポット反応として、ハイブリッド無機−有機層を用いたコーティングと同じ媒体中で実施するのが好ましい。
【0123】
驚くべきことには、ハイブリッド無機/有機層の向上された機械的安定性および改良された腐食に対する保護性のような性能上の利点は、基材とハイブリッド層との間および/またはハイブリッド層そのものの上に純粋に有機または純粋に無機の層がさらに存在するかどうかとは、ほとんど無関係であるということが見出された。無機成分だけを用いてコーティングをまず開始させるのが、有利なこともあり得る。そのようにすると、その次のハイブリッド層の基材の上への接着性を改良することができる。このことは、ハイブリッド層が極めて疎水性の高い成分、たとえば有機フッ素化官能基を有しているような場合には、特にあてはまる。
【0124】
たとえば純粋な酸化物層を用いたハイブリッド層のさらなるコーティングも同様に有利である。ある種の環境においては、所望の表面変性を、ハイブリッド層の上での場合よりは、この酸化物層の上での方がより効率的に実施することができる。ハイブリッド層が極めて疎水性の高い成分を含んでいる場合および/または有機オリゴマーおよび/またはポリマーの割合が極めて高い(たとえば、>20重量%)場合には、特にこれがあてはまる。
【0125】
金属酸化物/水酸化物の純粋に無機のコーティングの場合においては、後者は、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、銅、スズ、コバルト、クロム、セリウム、ニッケル、スズ、バナジウム、タンタル、イットリウム、モリブデン、タングステンからなる群よりの元素およびそれらの混合物の、酸化物、金属酸化物水和物、亜酸化物および/または水酸化物から選択される。金属効果顔料の上にそのような層を沈着させることは、当業者には周知である。それは、以下の一般的なプロセスで進行させる;
(a)微小板形状の基材を溶媒の中へ分散させ、その懸濁液を反応温度とする。
(b)次いで式MXの1種または複数の金属化合物を添加し、適切な酸または塩基、さらに適切であれば水を添加して、好適なpH範囲に設定する。M、Xおよびnは、先に挙げたものと同じ定義を有する。さらに、MはCu、Co、Ni、Sn、V、Ta、Y、Moおよび/またはWでもよい。適切であるならば、ハイブリッド無機/有機層の沈着に続けて、酸化物層もまた同一の溶媒中でそのハイブリッド無機/有機層の上に沈着させることも可能である。
(c)最後に、その反応温度で所定の時間、反応を継続させてから、冷却して室温とする。次いでその生成物を溶媒から分離する。
【0126】
純粋に有機のコーティングは、たとえば、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオール、ポリエーテルまたはポリアミドからなっていてよい。金属効果顔料の上にそのような層を沈着させることは、同様に、当業者には周知である。それは、以下の一般的なプロセスで進行させる;
(a)微小板形状の基材を溶媒の中へ分散させ、その懸濁液を反応温度とする。
(b)次いで、1種または複数の有機モノマーおよび、適切であれば重合開始剤を、好ましくは滴下により、添加し、有機ポリマー層を形成させる。有機ポリマー層を適用するより前に、場合によっては、適切な接着促進剤を添加して、そのポリマーが金属効果顔料の表面により確かに結合されるようにすることも可能である(この方法はDE40 30 727から公知である)。
(c)そのコーティングされた顔料を最後に、その反応媒体から分離させる。
【0127】
本発明のさらなる展開においては、ハイブリッド無機/有機層を有する金属効果顔料に、表面変性剤を加えてもよい。そのような表面変性剤の例はすでに、DE198 20 112から公知である。この表面変性剤を使用することによって、それらの性能特性の面から言えば、使用される具体的な適用媒体たとえば、ワニスまたは印刷インキに対する融和性を、その金属効果顔料に与えることができる。
【0128】
しかしながら、表面変性の手段だけでは、コーティングの腐食防止特性または機械的安定化における改良は達成できない。
【0129】
適切であるならば、表面変性剤の添加は、ハイブリッド無機/有機層の沈着、または1種または複数のさらなる無機層の沈着に続けて、同一の溶媒の中で実施してもよい。表面変性剤を適切な溶媒中に溶解させ、次いでそれをミキサーの中で金属効果顔料に適用することも可能である。他の可能性としては、表面変性剤を、適切であればたとえば噴霧乾燥の手段により、乾燥した形態で本発明の金属効果顔料に適用する方法もある。
【0130】
ハイブリッド無機/有機層を有する金属効果顔料を製造するための本発明のプロセスは、一つの変法として、以下の工程を含む:
(a)液相中に微小板形状の金属基材の反応混合物を準備する工程、
(b1)工程(a)からの反応混合物に少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分を添加する工程、
(c1)工程(b1)において添加された無機ネットワーク形成成分を加水分解および/または縮合させる工程、
(d1)工程(c1)の加水分解および/または縮合の、前、途中および/または後に、少なくとも1種の反応性有機ネットワーク形成成分および少なくとも1種の反応性有機成分を添加する工程、
または
(b2)工程(a)からの反応混合物に少なくとも1種の反応性有機ネットワーク形成成分および少なくとも1種の反応性有機成分を添加する工程、
(c2)工程(b2)からの反応混合物に少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分を添加する工程、
(d2)工程(c2)において添加された無機ネットワーク形成成分を加水分解および/または縮合させる工程、
そして
(e)加水分解および/または縮合された無機ネットワーク形成成分を反応性有機ネットワーク形成成分と、およびさらには反応性有機成分と反応させ、微小板形状の基材にハイブリッド無機/有機層を同時および/または逐次に沈着させる工程であるが、そのハイブリッド層は、少なくとも部分的には1種または複数の無機酸化物成分を有する無機ネットワーク、および少なくとも1種の有機成分を有しており、その有機成分は、少なくとも部分的には有機オリゴマーおよび/またはポリマーであって、それは少なくとも部分的には無機ネットワークに共有結合的に結合されている、工程、
(f)場合によっては、工程(e)においてコーティングされた微小板形状の基材を反応混合物から分離する工程。
【0131】
したがって、一つの変法においては、本発明のプロセスは、工程(a)、(b1)、(c1)、(d1)、(e)、および(f)に基づくか、あるいは工程(a)、(b2)、(c2)、(d2)、(e)、および(f)に基づいて実施することができる。
【0132】
その少なくとも1種の反応性有機成分は、反応性の重合性有機モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーの形態で添加するのが好ましい。
【0133】
さらに、反応性有機成分として少なくとも1種の反応性オリゴマーおよび/またはポリマーを添加するのが好ましい。
【0134】
本発明のプロセスの一つの好ましい展開においては、その反応性オリゴマーおよび/またはポリマーは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、その活性化のために場合によっては、反応混合物または液相に添加するより前に、有機ネットワーク形成成分と反応させる。
【0135】
さらに、添加する前に、場合によっては重合開始剤を添加して、1種または複数の異なった、反応性基Rを有する有機ネットワーク形成成分を互いに反応させることにより、反応性有機成分を形成させておいて、次いで添加を実施するのが好ましい。
【0136】
反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーは、シラノールおよび/またはメトキシ末端シリコーン、トリアルコキシシラン変性ポリエチレンイミン、ポリアリールアルキルシラセスキオキサン、アミノシラン変性ポリエチレンオキシドウレタン、からなる群より選択するのが好ましい。
【0137】
本発明のプロセスの一つのさらなる変法においては、反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、およびポリオレフィンからなる群より選択されるが、それらのオリゴマーおよび/またはポリマーは、反応性ではあるが、非重合性である。
【0138】
本発明のプロセスの一つのさらなる変法においては、反応性有機成分の添加の前、途中、および/または後に、追加の少なくとも1種の有機ネットワーク変性剤を添加する。
【0139】
本発明のプロセスに関して、その他の点については、本発明の金属効果顔料に関連しての所見を参照されたい。
【0140】
液相としては、水性および/または有機溶液を使用することができる。1〜80重量%、好ましくは2〜20%、より好ましくは3〜10重量%の含水量を有するアルコール性溶液の形態の有機溶液が好ましい。有機および無機ネットワーク形成成分を加水分解させるためには、少なくとも1重量%の含水量が必要である。いずれの場合も、重量%の数字は溶媒の全重量を基準にしたものである。
【0141】
使用可能な有機溶媒は、すべての慣用される溶媒たとえば、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、グリコールもしくは炭化水素、またはそれらの混合物である。使用するのに好適なアルコールは、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノールもしくは2−ブタノール、またはそれらの混合物である。
【0142】
コーティング反応の工程(b)〜(e)は、約0℃〜約100℃、好ましくは約10℃〜約80℃の範囲の反応温度で実施する。反応温度には、使用される溶媒または溶媒混合物の沸点による制限がある。
【0143】
工程(b)〜(e)におけるpHは、3〜12、好ましくは7〜10の範囲内とする。pHは酸性またはアルカリ性が強すぎてはならないが、その理由は、反応のために使用する水によって金属顔料が腐食されるからである。したがって、中性からややアルカリ性のpHレベルとするのが好ましい。
【0144】
任意の工程(f)の後で、本発明によりコーティングされた金属顔料を、たとえば篩によって分粒にかけることも可能である。さらに、それらを適切な設備の中で乾燥させることもできる。顔料を反応混合物から分離させた後で、乾燥させた顔料粉体に、反応に使用したのとは異なる溶媒を添加して溶媒の切り替えを行うことも可能である。そのようにすると、50〜90重量%、好ましくは60〜75重量%の金属顔料含量を有するペーストを調製することができる(重量%の数字はペーストの重量を基準にしたものである)。
【0145】
本発明によりコーティングされた金属効果顔料は、ワニス、塗料、印刷インキ、粉体コーティング材料、プラスチック、機密保護印刷インキ、ガラス、セラミック、建築物のコーティング、または化粧品に用途が見出される。
【0146】
本発明の顔料について、実験室用ニーダーで厳しい機械的負荷をかけた後で、そのガス発生に対する安定性について検討した。
【0147】
それらの検討のためには、以下の試験方法を使用した:
【0148】
黄色酸化鉄ガス発生試験:
38.8gの金属顔料粉体を、約40gの市販の下塗りワニスおよび41gの酸化鉄顔料を含む黄色着色水性ペーストと組み合わせた。次いで、240gの下塗りワニスを加え、歯付き溶解ディスク(Φ50mm)を2000rpmで使用して、30分かけてその混合物を分散させた。次いでその水性塗料を、予め2室式ガス気泡カウンターを取り付けた洗浄ビンの中に入れ、40℃に加温した。発生するガスの容量は、2室式ガス気泡カウンターのレベル(単位mm)から読み取ることができる。ガスのレベルを、7、14、21、および28日後に読み取った。28日後に水素の発生が20mm以下であれば、この試験で合格とした。
【0149】
実験室用ニーダー処理:
イソプロパノールを用いて、100gの顔料から、固形分含量65%のペーストを形成させた。このペーストを高性能実験室用ニーダー(IKA)中、室温で5分間混練させた。この金属効果顔料ペーストは高粘度であるために、2連混練羽根の機械的影響力により、極端に高い剪断力が顔料に作用する。そのようにして処理したメタリック顔料ペーストを次いで、上述のガス発生試験にかけたが、この場合、ペースの溶媒含量は初期質量に関して考慮した。
【0150】
以下にしめす実際の例は本発明を説明することを目的としているのであって、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0151】
実施例1:
95gのPaliocrom L2000(BASF)を310mLのイソプロパノール中に分散させ、その分散体を沸点にまで加熱する。次いで9gのテトラエトキシシランと、少し後に9gのHOを加える。次いで25%強度のNHOH水溶液を、3時間かけて、自動計量仕込みユニットを使用して、この時間の間pHを8.7とし、それを維持できるような速度で導入する。この計量仕込みの開始の1時間後に、さらに溶液A(下記参照)を、実験室用自動計量仕込みユニット(STEPDOS from IKA)を使用し85分かけて連続的に仕込む。この仕込みの開始の5分後に、スパチュラ先端量の2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を添加することにより重合を開始させる。次いでその反応混合物を88℃で4時間撹拌させておく。次いで、0.8gのDynasylan OCTEOと0.5gのDynasylan AMMOの混合物を添加する。その反応混合物を一夜撹拌し、翌日に濾過する。そのフィルターケーキを真空乾燥機の中で100℃で6時間かけて乾燥させる。
【0152】
溶液A:
116mLのエタノール中、0.59gのDynasylan MEMOおよび2.51gのトリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)の溶液。
【0153】
実施例2:
実施例1と同様に調製するが、溶媒としてイソプロパノールに代えてエタノールを使用する。
【0154】
実施例3:
実施例1と同様に調製するが、下記の溶液Bを使用する:
116mLのエタノール中、0.59gのDynasylan MEMO、2.51gのTMPTMA、および0.5gのメタクリル酸ラウリルの溶液。
【0155】
実施例4:
実施例2と同様に調製するが、下記の溶液Cを使用する:
116mLのエタノール中、0.59gのDynasylan MEMO、2.51gのTMPTMA、および0.5gのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)の溶液。
【0156】
実施例5:
実施例1と同様に調製するが、下記の溶液Dを使用する:
116mLのイソプロパノール中、0.59gのDynasylan MEMO、2.51gのTMPTMA、および0.47gのメタクリル酸アリルの溶液。
【0157】
実施例6:
実施例2と同様に調製するが、下記の溶液Eを使用する:
116mLのエタノール中、1.0gのDynasylan MEMO、5.2gのTMPTMAの溶液。
【0158】
実施例7:
実施例1と同様に調製するが、下記の溶液Fを使用する:
116mLのイソプロパノール中、1.0gのDynasylan MEMO、9.8gのTMPTMAの溶液。
【0159】
実施例8;
実施例2と同様に調製するが、開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を使用せず、および下記の溶液Gを使用する:
116mLのエタノール中、1.0gのDynasylan GLYMO、2.0gの1,6−ヘキサメチレンジアミン、および0.5gのペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルの溶液。
【0160】
実施例9:
実施例1と同様に調製するが、開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を使用せず、および下記の溶液Hを使用する:
116mLのイソプロパノール中、1.0gのDynasylan GLYMO、2.0gの1,6−ヘキサメチレンジアミン、および0.5gのトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの溶液。
【0161】
実施例10:
実施例1と同様に調製するが、開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を使用せず、および下記の溶液Iを使用する:
100gのイソプロパノール中、3.0gのエポキシ樹脂D.E.R:330の溶液。
【0162】
実施例11:
実施例1と同様に調製するが、開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を使用せず、および下記の溶液Jを使用する:
100gのイソプロパノール中、4.5gのエポキシ樹脂D.E.R:330の溶液。
【0163】
実施例12:
実施例1と同様に調製するが、開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を使用せず、および下記の溶液Kを使用する:
100gのイソプロパノール中、3.0gのジメチルジフェニルシロキサン(シラノール末端コポリマー)(No.PS084、ABCR)の溶液。
【0164】
実施例13:
実施例3と同様に調製するが、操作pHを8.4とする。
【0165】
実施例14:
実施例4と同様に調製するが、操作pHを8.4とする。
【0166】
実施例15:
実施例5と同様に調製するが、操作pHを8.7とする。
【0167】
実施例16:
実施例6と同様に調製するが、操作pHを8.4とし、塩基としてNHOHに代えて、20mLのイソプロパノール中、2.4gのメチルアミンの溶液を使用する。
【0168】
実施例17:
実施例6と同様に調製するが、操作pHを8.7とし、塩基としてNHOHに代えて、20mLのイソプロパノール中、2.4gのメチルアミンの溶液を使用する。
【0169】
比較例18(SiOコーティングのみ):
95gのPaliocrom L2000を310mLのイソプロパノール中に分散させ、その分散体を沸点にまで加熱する。次いで20gのテトラエトキシシランと、少し後に13gのHOを加える。次いで25%強度のNHOH水溶液を、3時間かけて、Dosimatを使用して、この時間の間pHを8.7とし、それを維持できるような速度で導入する。次いでその反応をさらに3時間続けてから、1gのDynasylan OCTEOと0.5gのDynasylan AMMOの混合物を添加する。その反応混合物を一夜撹拌し、翌日に吸引濾過する。そのフィルターケーキを真空乾燥機の中で100℃で6時間かけて乾燥させる。
【0170】
時間経過とともに発生するガスを表1に示す。
【0171】
【表1】

【0172】
本発明によるコーティングがされた実施例はすべて、実験室用ニーダーの中で処理をした後でもガス発生試験に合格した。対照的に、比較例18のSiOコーティングがされた金属顔料は、実験室用ニーダー内での剪断処理の後では、1日後には早くもガス発生試験に不合格となった。剪断力をかけない顔料は、ガス発生が実質的に測定不能であって、ガス発生試験に合格したので、このことは、もっぱら無機コーティングを用いて調製した金属顔料は、ガス発生に対する安定性の面においては実に優れたものであるが、機械的安定性の面では極めて不満足なものである、ということを示している。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングを有する金属効果顔料であって、微小板形状の基材を含み、前記コーティングが少なくとも1層のハイブリッド無機/有機層を含み、前記ハイブリッド層が、1種または複数の無機酸化物成分を有する無機ネットワークを少なくとも部分的に有し、かつ、少なくとも1種の有機成分を有し、前記有機成分が少なくとも部分的には、1種または複数の有機ネットワーク形成成分を介して前記無機ネットワークに少なくとも部分的に共有結合的に結合された有機オリゴマーおよび/またはポリマーであることを特徴とする、金属効果顔料。
【請求項2】
無機酸化物成分と、有機オリゴマーおよび/またはポリマーとの少なくとも部分的な共有結合が、一般式(I)
SiX(4−n−m−o) (I)
[式中、Xは、それを加水分解させた後で有機ネットワーク形成成分の前記無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、加水分解性基であり、
そしてRは、前記有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能な、反応性有機基であり、
およびRは互いに独立して、それぞれ、前記有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能であってもよい有機基であるが、
ただし、
n、m、およびoは整数であって、n+m+o=1〜3、n=1〜3、m=0〜2、そしてo=0〜2である]
および/または一般式(II)
(RO)(RO)(RO)MX(k−n−m−o) (II)
[ここで、この化合物は、それを加水分解させた後で有機ネットワーク形成成分の前記無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、少なくとも1種の加水分解性基Xと、前記有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能な反応性有機基である、少なくとも1種の有機ラジカルRと、互いに独立して、それぞれ、前記有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能であってもよい有機基であってもよいRおよびRとを有しており、
ここで、
kは、Mの形式上の酸化数であり、
Mは、Al、ZrまたはTiであり、
nは、1〜(k−1)の整数であり、
mは、0〜(k−2)の整数であり、
oは、0〜(k−2)の整数であり、そして
n+m+oは、1〜(k−1)の整数である]
の1種または複数の有機ネットワーク形成成分を介して少なくとも部分的に達成されることを特徴とする、請求項1に記載の金属効果顔料。
【請求項3】
前記ハイブリッド層の前記無機酸化物成分が、金属酸化物、金属亜酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の金属効果顔料。
【請求項4】
前記ハイブリッド層の前記無機酸化物成分が、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、鉄、セリウム、クロム、マンガン、亜鉛、スズ、アンチモン、ホウ素、マグネシウムからなる群よりの元素、およびそれらの混合物の金属酸化物および/または金属亜酸化物および/または金属水酸化物および/または金属酸化物水和物から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の金属効果顔料。
【請求項5】
前記有機ネットワーク形成成分が、一般式(I)のシランであり、その(1個または複数の)加水分解性基Xが互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、1〜10個のC原子を有し、直鎖状であっても分岐状であってもよいアルコキシ、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項6】
前記有機ネットワーク形成成分が、一般式(II)を有し、その(1個または複数の)加水分解性基Xが互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、1〜20個のC原子を有し、直鎖状であっても分岐状であってもよく、その炭素鎖の中にヘテロ原子、好ましくはO、Sおよび/またはNを含んでいてもよいアルコキシ、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項7】
が、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、およびカルバメート基、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される1個または複数の置換基を有する、反応性有機ラジカルであることを特徴とする、請求項2〜6のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項8】
およびRが互いに独立して、H−、(C〜C40)−アルキル−、(C〜C40)−フッ素化アルキル−、(C〜C40)−部分フッ素化アルキル−;(C〜C40)−アルケニル−、(C〜C40)−アルキニル−;(C〜C36)−アリール−、フッ素化(C〜C36)−アリール−、部分フッ素化(C〜C36)−アリール−;(C〜C40)−アルキルアリール−、(C〜C40)−アリールアルキル−、フッ素化(C〜C40)−アルキルアリール−、部分フッ素化(C〜C40)−アルキルアリール−;(C〜C40)−アルケニルアリール−、(C〜C40)−アリールアルキニル−、−;(C〜C40)−アルキニルアリール−;(C〜C40)−シクロアルキル−、(C〜C40)−アルキルシクロアルキル−、(C〜C40)−シクロアルキルアルキルシラン(それらはそれぞれ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、カルバメート、および/またはエステル基により置換されていてもよく、そして炭素鎖および炭素環構造の中にヘテロ原子としてO、N、およびSを含んでいてもよい)、およびそれらの混合物、からなる群より選択されることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項9】
前記有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、およびカルバメート基、ならびにそれらの混合物からなる群よりの官能性を備えたモノマーで構築されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項10】
前記有機成分が、前記無機ネットワークおよび/または少なくとも前記有機ネットワーク形成成分の基Rに結合することが可能な反応性基を有する、反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーから構築されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項11】
前記反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、シラノールおよび/またはメトキシ末端シリコーン、トリアルコキシシラン変性ポリエチレンイミン、ポリアリールアルキルシラセスキオキサン、アミノシラン変性ポリエチレンオキシドウレタン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項10に記載の金属効果顔料。
【請求項12】
前記反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、およびポリオレフィンからなる群より選択され、それらのオリゴマーおよび/またはポリマーが、前記無機ネットワークまたは有機ネットワーク形成成分に結合することが可能な反応性官能基を有していることを特徴とする、請求項10に記載の金属効果顔料。
【請求項13】
前記有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、前記ハイブリッド無機/有機層中で1種または複数の有機ネットワーク形成成分の官能基Rを介して共有結合的に結合されていることを特徴とする、請求項2〜12のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項14】
前記ハイブリッド無機/有機層が、一般式(III)を有する1種または複数の有機ネットワーク変性剤
SiX(4−n−m−o) (III)
[式中、Xは、それを加水分解させた後で有機ネットワーク変性剤の前記無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、加水分解性基であり、
そしてR、R、およびRは互いに独立して、それぞれ非反応性有機基であるが、
ただし、
n、m、およびoは整数であって、ここでn+m+o=1〜3、n=1〜3、m=0〜2、そしてo=0〜2である]
および/または一般式(IV)を有する1種または複数の有機ネットワーク変性剤
(RO)MX(k−p) (IV)
[この化合物は、それを加水分解された後で有機ネットワーク変性剤の前記無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、少なくとも1種の加水分解性基Xと、少なくとも1種の非反応性有機ラジカルRとを有しているが、ここで、
kは、Mの形式上の酸化数であり、
Mは、Al、ZrまたはTiであり、そして
pは、1〜(k−1)の整数である]
により、さらに変性されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項15】
前記微小板形状の基材が、アルミニウム、銅、鉄、亜鉛、スズ、チタン、クロム、コバルト、銀、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、ジルコニウム、ケイ素、ならびにそれらの混合物および合金、より具体的にはゴールドブロンズ、黄銅、ステンレス鋼、および鋼からなる群より選択される金属または金属化合物からなることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項16】
前記微小板形状の基材が、還元カルボニル鉄から製造された鉄から実質的になることを特徴とする、請求項15に記載の金属効果顔料。
【請求項17】
基材とハイブリッド無機/有機層との間に配置されるのが、少なくとも1種の独立した、実質的に純粋に無機の層および/または実質的に純粋な有機ポリマーを含む少なくとも1種の独立した層であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項18】
前記ハイブリッド無機/有機層の上に配置されるのが、少なくとも1種の独立した、実質的に純粋に無機の層および/または実質的に純粋な有機ポリマーを含む少なくとも1種の独立した層であることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項19】
前記少なくとも1種の独立した、実質的に純粋に無機の層が、ケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、鉄、銅、スズ、コバルト、クロム、セリウム、亜鉛、アンチモン、マンガン、ニッケル、イットリウム、モリブデン、バナジウム、タンタル、タングステンからなる群より選択される元素、およびそれらの混合物の金属酸化物および/または金属酸化物水和物および/または金属亜酸化物および/または金属水酸化物および/または金属過酸化物からなることを特徴とする、請求項17または18のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項20】
前記少なくとも1種の独立した、実質的に純粋な有機ポリマーの層が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、ポリフェノールホルムアルデヒド、ポリオレフィン、ポリ−1,2,3,4−テトラフルオロエチレン、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項17または18の1項に記載の金属効果顔料。
【請求項21】
1種または複数の表面変性剤を用いて、さらなる層が、前記コーティングされた金属効果顔料の表面に適用されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれか1項に記載の金属効果顔料。
【請求項22】
ハイブリッド無機/有機層を有する金属効果顔料を製造する方法であって、以下の:
・液相中で、少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分と、少なくとも1種の有機ネットワーク形成成分と、少なくとも1種の反応性有機成分と、を反応させてコーティング組成物を形成させる工程、
・ハイブリッド層として、そのコーティング組成物を微小板形状の金属基材に適用する工程
を含み、
前記微小板形状の金属基材が、前記液相に、前記少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分の添加または反応、前記少なくとも1種の有機ネットワーク形成成分の添加または反応、および前記少なくとも1種の反応性有機成分の添加または反応の、前、途中、または後に添加され、
前記ハイブリッド層が、1種または複数の無機酸化物成分を有する無機ネットワークを少なくとも部分的に有し、かつ、少なくとも1種の有機成分を有し、前記有機成分が少なくとも部分的には、前記無機ネットワークに対して少なくとも部分的に共有結合的に結合されている有機オリゴマーおよび/またはポリマーである、方法。
【請求項23】
以下の:
(a)液相中に微小板形状の金属基材の反応混合物を準備する工程、
(b1)工程(a)からの反応混合物に少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分を添加する工程、
(c1)工程(b1)において添加された無機ネットワーク形成成分を加水分解および/または縮合させる工程、
(d1)工程(c1)の加水分解および/または縮合の、前、途中および/または後に、少なくとも1種の反応性有機ネットワーク形成成分および少なくとも1種の反応性有機成分を添加する工程、
または
(b2)工程(a)からの反応混合物に少なくとも1種の反応性有機ネットワーク形成成分および少なくとも1種の反応性有機成分を添加する工程、
(c2)工程(b2)からの反応混合物に少なくとも1種の無機ネットワーク形成成分を添加する工程、
(d2)工程(c2)において添加された無機ネットワーク形成成分を加水分解および/または縮合させる工程、
そして
(e)加水分解および/または縮合された無機ネットワーク形成成分を、前記反応性有機ネットワーク形成成分と、さらには前記反応性有機成分と反応させ、同時におよび/またはそれに続けてハイブリッド無機/有機層を沈着させる工程、
(f)場合によっては、工程(e)においてコーティングされた微小板形状の基材を反応混合物から分離する工程、
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記反応性有機成分を、反応性の重合性有機モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーの形態で添加することを特徴とする、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1種の反応性オリゴマーおよび/またはポリマーを、反応性有機成分として添加することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1種の有機ネットワーク形成成分が、一般式(I)
SiX(4−n−m−o) (I)
[式中、Xは、それを加水分解させた後で有機ネットワーク形成成分の前記無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、加水分解性基であり、
そしてRは、有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能な、反応性有機基であり、
およびRは互いに独立して、それぞれ、有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能であってもよい有機基であるが、
ただし、
n、m、およびoは整数であって、n+m+o=1〜3、n=1〜3、m=0〜2、そしてo=0〜2である]を有するか
および/または、前記少なくとも1種の有機ネットワーク形成成分が、一般式(II)
(RO)(RO)(RO)MX(k−n−m−o) (II)
[ここで、この有機金属化合物は、それを加水分解させた後で有機ネットワーク形成成分の前記無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、少なくとも1種の加水分解性基Xと、有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能な反応性有機基である、少なくとも1種の有機ラジカルRと、互いに独立して、それぞれ、有機オリゴマーおよび/またはポリマーに対して共有結合的に結合することが可能であってもよい有機基であってもよいRおよびRとを有しており、
ここで、
kは、Mの形式上の酸化数であり、
Mは、Al、ZrまたはTiであり、
nは、1〜(k−1)の整数であり、
mは、0〜(k−2)の整数であり、
oは、0〜(k−2)の整数であり、そして
n+m+oは1〜(k−1)の整数である]
を有することを特徴とする、請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ハイブリッド層の前記無機酸化物成分が、金属酸化物、金属亜酸化物、金属水酸化物、金属酸化物水和物、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項22〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記ハイブリッド層の前記無機酸化物成分が、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、鉄、セリウム、クロム、マンガン、亜鉛、アンチモン、ホウ素、マグネシウムからなる群よりの元素、およびそれらの混合物の金属酸化物および/または金属亜酸化物および/または金属水酸化物および/または金属酸化物水和物から選択されることを特徴とする、請求項22〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記有機ネットワーク形成成分が、一般式(I)のシランであり、その(1個または複数の)加水分解性基Xが互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、1〜10個のC原子を有し、直鎖状であっても分岐状であってもよいアルコキシ、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項22〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記有機ネットワーク形成成分が、一般式(II)を有し、その(1個または複数の)加水分解性基Xが互いに独立して、ハロゲン、ヒドロキシル、1〜20個のC原子を有し、直鎖状であっても分岐状であってもよく、その炭素鎖の中にヘテロ原子、好ましくはO、Sおよび/またはNを含んでいてもよいアルコキシ、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項22〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
が、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、およびカルバメート基、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される1個または複数の置換基を有する、反応性有機ラジカルであることを特徴とする、請求項26〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
およびRが互いに独立して、H−、(C〜C40)−アルキル−、(C〜C40)−フッ素化アルキル−、(C〜C40)−部分フッ素化アルキル−;(C〜C40)−アルケニル−、(C〜C40)−アルキニル−;(C〜C36)−アリール−、フッ素化(C〜C36)−アリール−、部分フッ素化(C〜C36)−アリール−;(C〜C40)−アルキルアリール−、(C〜C40)−アリールアルキル−、フッ素化(C〜C40)−アルキルアリール−、部分フッ素化(C〜C40)−アルキルアリール−;(C〜C40)−アルケニルアリール−、(C〜C40)−アリールアルキニル−、−;(C〜C40)−アルキニルアリール−;(C〜C40)−シクロアルキル−、(C〜C40)−アルキルシクロアルキル−、(C〜C40)−シクロアルキルアルキルシラン(それらはそれぞれ、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、カルバメート、および/またはエステル基により置換されていてもよく、そして炭素鎖および炭素環構造の中にヘテロ原子としてO、N、およびSを含んでいてもよい)、およびそれらの混合物、からなる群より選択されることを特徴とする、請求項26〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、アミノ、ヒドロキシル、チオール、エポキシ、アクリレート、メタクリレート、ビニル、アリル、アルケニル、アルキニル、カルボキシル、カルボン酸無水物、イソシアネート、シアネート、ウレイド、およびカルバメート基、ならびにそれらの混合物からなる群よりの官能性を備えた反応性モノマーで構築されていることを特徴とする、請求項25〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記反応性オリゴマーおよび/またはポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびそれらの混合物からなる群より選択され、活性化させるために場合によっては、前記反応混合物に添加するより前に、有機ネットワーク形成成分と反応させることを特徴とする、請求項25〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
添加する前に、場合によっては重合開始剤を添加して、1種または複数の異なった、反応性基Rを有する有機ネットワーク形成成分を互いに反応させることにより、前記反応性有機成分を形成させておいて、次いで添加を実施することを特徴とする、請求項22〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、シラノールおよび/またはメトキシ末端シリコーン、トリアルコキシシラン変性ポリエチレンイミン、ポリアリールアルキルシラセスキオキサン、アミノシラン変性ポリエチレンオキシドウレタン、からなる群より選択されることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
前記反応性有機オリゴマーおよび/またはポリマーが、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミド、ポリオール、ポリウレタン、およびポリオレフィンからなる群より選択され、それらのオリゴマーおよび/またはポリマーが反応性官能基を有していることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
前記反応性有機ネットワーク形成成分の添加の前、途中、および/または後に、少なくとも1種の有機ネットワーク変性剤をさらに添加することを特徴とする、請求項22〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記さらに添加される少なくとも1種の有機ネットワーク変性剤が、一般式(III)
SiX(4−n−m−o) (III)
[式中、Xは、それを加水分解させた後で有機ネットワーク変性剤の前記無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、加水分解性基であり、
そしてR、R、およびRは互いに独立して、それぞれ非反応性有機基であるが、
ただし、
n、m、およびoは整数であって、ここでn+m+o=1〜3、n=1〜3、m=0〜2、そしてo=0〜2である]を有するか
および/または前記さらに添加される少なくとも1種の有機ネットワーク変性剤が、一般式(IV)
(RO)MX(k−p) (IV)
[この有機金属化合物は、それを加水分解させた後で有機ネットワーク変性剤の前記無機ネットワークに対する共有結合を形成させることが可能な、少なくとも1種の加水分解性基Xと、少なくとも1種の非反応性有機ラジカルRとを有しているが、ここで、
kは、Mの形式上の酸化数であり、
Mは、Al、ZrまたはTiであり、そして
pは、1〜(k−1)の整数である]
を有することを特徴とする、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ハイブリッド無機/有機層を前記微小板形状の基材に適用するより前に、1種または複数の実質的に純粋に無機の、および/または実質的に純粋に有機の層を適用することを特徴とする、請求項22〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記ハイブリッド無機/有機層を適用し、1種または複数の実質的に純粋に無機の、および/または実質的に純粋に有機の層を適用することを特徴とする、請求項22〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
適用される前記最外層が、1種または複数の表面変性剤を有する層であることを特徴とする、請求項22〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
液相として、水性および/またはアルコール性溶液を使用することを特徴とする、請求項22〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
工程(b)〜(e)における反応温度を、約0℃〜約100℃、好ましくは約10℃〜約80℃の範囲に設定することを特徴とする、請求項23〜43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
工程(b)〜(e)におけるpHを、1.5〜12、好ましくは7〜10の範囲に設定することを特徴とする、請求項23〜44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
ワニス、自動車用仕上げ剤、塗料、印刷インキ、粉体コーティング材料、建築用塗料、プラスチック、機密保護印刷インキ、セラミックス、ガラスまたは化粧品における、請求項1〜21のいずれか1項に記載の微小板形状の金属効果顔料の使用。
【請求項47】
石造物用塗料および/または建築用塗料におけるIR反射顔料としての、請求項1〜21のいずれか1項に記載の微小板形状の金属効果顔料の使用。




【公表番号】特表2009−503207(P2009−503207A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524447(P2008−524447)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007737
【国際公開番号】WO2007/017195
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【Fターム(参考)】