説明

混合物の分離回収装置、ならびにそれを用いたプラスチック原料またはプラスチック成形体の製造方法、およびプラスチック原料またはプラスチック成形体

【課題】 混合プラスチック部材をプラスチック組成物の系統ごとに分離でき、該プラスチック組成物からマテリアルリサイクルによりプラスチック原料またはプラスチック成形体を製造でき、サーマルリサイクルされるプラスチック廃材を低減することができる、簡易かつ効率のよい分離回収装置、従来よりも効率的なプラスチック原料またはプラスチック成形体、ならびにプラスチック原料またはプラスチック成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】 比重の異なる複数種の材料で構成された混合物を湿潤液に曝し、その後気体雰囲気に曝すための湿潤手段と、湿潤手段で気体雰囲気に曝された後の混合物を、液体で高比重物と低比重物に分離するための比重分離手段とを備える分離回収装置であって、前記湿潤手段にポンプを配設してなる分離回収装置、ならびにそれを用いたプラスチック原料またはプラスチック成形体の製造方法、プラスチック原料またはプラスチック成形体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合物の分離回収装置に関する。また、本発明は、上記混合物の分離回収装置を用いた、プラスチック原料またはプラスチック成形体の製造方法、および得られたプラスチック原料またはプラスチック成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、わが国では所得水準の向上に伴い、エアコンディショナ(本明細書においては、「エアコン」と呼称する。)、テレビジョン受信機(本明細書においては、「テレビ」と呼称する。)、冷蔵庫、洗濯機などの家電製品、パーソナルコンピュータ、ワードプロセッサなどの情報機器、プリンタ、ファックスなどの事務用機器、その他の各種の家具、文具、玩具などが、一般家庭に高い普及率で備えられるようになっており、家庭生活における利便性は飛躍的に向上しつつある。
【0003】
一方、その結果、これらの家電製品をはじめとする各種製品の廃棄量も年々増加する傾向にある。ここで、従来は、これらの家電製品をはじめとする製品の廃棄物の再資源化は、鉄くずの回収ルートを通して行われる場合が多かった。
【0004】
しかし近年では、家電製品をはじめとする各種製品の部材の構成材料が変化し、鉄をはじめとする金属からなる部材が減少してプラスチック組成物からなる部材の割合が増加する傾向にある。プラスチック組成物は、鉄をはじめとする金属よりもデザインの自由度が大きく、構成成分の調製や添加剤の使用などにより金属では実現の難しい種々の特性を付与することができ、軽量であり耐久性が高いことなどの多くの利点を有するためである。
【0005】
なお、本明細書においては、プラスチック組成物からなる部材を「プラスチック部材」と呼称する。また、本明細書においては、プラスチック部材を備えた製品を「プラスチック製品」と呼称する。さらに、本明細書においては、プラスチック製品の廃棄物を「プラスチック廃棄物」とも呼称する。
【0006】
近年の家電製品をはじめとする各種製品の廃棄物は、各種構成部材の材質構成が複雑化しており、鉄や銅をはじめとする有価金属からなる部材の割合が少なく、有価性が低く、かつ従来の処理方法では多大の手間と経費がかかるプラスチック部材の割合が多くなっており、従来の鉄くずの回収ルートではこのような廃棄物を再資源化しても採算がとれないため、対応が難しい状況になりつつある。
【0007】
そして、これらのプラスチック部材は、原油などの埋蔵化石燃料を基礎原料として合成されるものが多く、資源の有効活用の観点から、これらのプラスチック製品の再資源化の推進が近年強く要求されてきている。
【0008】
また、原油などの埋蔵化石燃料の燃焼による二酸化炭素および硫黄酸化物の放出による地球温暖化、酸性雨といった環境破壊や、塩素化合物を含むプラスチック組成物の焼却処理によるダイオキシンの生成、飛散といった環境汚染、さらには嵩の大きいプラスチック廃棄物の増大によるゴミ埋立処理場の不足といった問題を抑制するという観点からも、これらのプラスチック廃棄物の再資源化が重要かつ緊急の課題となってきつつある。
【0009】
ここで、上記の状況を受けて、2001年4月に家電リサイクル法が施行された。ここで、家電リサイクル法においては、2002年1月現在においては、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の家電4品目のリサイクルが義務付けられ、また、それぞれの製品の再商品化率については、エアコン60%以上、テレビ55%以上、冷蔵庫50%以上、洗濯機50%以上の法定基準値が定められている。
【0010】
しかし、これらの家電製品をはじめとするプラスチック製品は、一般に複数のプラスチック部材を備えており、それらのプラスチック部材はプラスチック組成物の材質が異なることも多く、異なる材質のプラスチック組成物からなる複合部材であることも多い。
【0011】
なお、本明細書においては、材質が異なる複数のプラスチック組成物からなる部材または異なる材質のプラスチック組成物からなる複合部材を、「混合プラスチック部材」と呼称する。また、本明細書においては、混合プラスチック部材を備えた製品を「混合プラスチック製品」とも呼称する。さらに本明細書においては、混合プラスチック製品の廃棄物を「混合プラスチック廃棄物」とも呼称する。
【0012】
ここで、これらの混合プラスチック廃棄物に含まれる混合プラスチック部材を再度加工して、家電製品をはじめとする各種の混合プラスチック製品の部材またはその原料として使用するには、これらの混合プラスチック部材をプラスチック組成物の系統ごとに分離した上で、再度加工する必要がある。なお、本明細書においては、このように、廃棄物を処理した後、製品の部材またはその原料に再び加工して使用することを、サーマルリサイクルと対比して、「マテリアルリサイクル」と呼称する。
【0013】
一方、従来から提案されているプラスチック廃棄物の再資源化方法には、単独の材質のプラスチック組成物だけを含むプラスチック廃棄物を、手解体で分離して再資源化する方法が多い。しかし、このように手解体で分離して再資源化する方法には、多大の手間と経費がかかるという問題がある。さらに、このような方法では混合プラスチック廃棄物には対応できないという問題がある。
【0014】
また、このような問題を回避するための方法としては、混合プラスチック廃棄物から、プラスチック組成物の系統別に分別することなく、混合プラスチック部材を分離して燃料として使用するという、いわゆるサーマルリサイクルに関する方法も従来から多く提案されている。
【0015】
このようにして、混合プラスチック廃棄物をサーマルリサイクルにより再資源化する方法としては、たとえば特許文献1に、混合プラスチック廃棄物から分離した混合プラスチック部材を熱分解炉で加熱乾留分解し、分解ガスおよび油を燃料として使用する方法が開示されている。しかしこの方法によれば、混合プラスチック廃棄物のサーマルリサイクルによる再資源化は可能であるが、燃料による炭酸ガスの発生などの問題があるため、社会的要請に充分に沿った方法であるとはいえない。
【0016】
そこで、混合プラスチック廃棄物から混合プラスチック部材を分離して、さらにその混合プラスチック部材をプラスチック組成物の系統ごとに分離することのできる方法について、各方面で多くの開発努力がなされている。
【0017】
たとえば、混合プラスチック部材の比重差を利用し、液体中でプラスチック組成物の系統ごとに分離する方法が、従来より広く用いられてきた。つまり、液体中に混合プラスチック部材または混合プラスチック部材の破砕物を投入した際、液体比重より小さな物は浮遊し、液体比重より大きな物は沈降することを用いて分離する方法である。しかし、この方法によれば、プラスチックに付着する気泡の影響が大きく、特に混合プラスチック部材の破砕物を分別するのに十分な選別能力を有するとはいえない。
【特許文献1】特開平6−226242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本出願人は、上記従来の問題点に鑑み、プラスチックに付着する気泡の影響を少なくするために、複数種のプラスチックで構成されたプラスチック廃材を液体雰囲気に曝した後に気体雰囲気に曝し、プラスチック廃材表面を十分に湿潤させた後に、再度プラスチック廃材を液体にて分離回収する方法を提案している。当該方法によれば、プラスチック廃材から、プラスチック廃材を主原料とするマテリアルリサイクルにより、多様な用途に適用可能な高品質のプラスチック成形体を得ることができ、サーマルリサイクルされるプラスチック廃材を低減することができる、効率的なプラスチック廃材の再資源化方法を提供することができる。
【0019】
本出願人は、プラスチック廃材を液体雰囲気に曝す方法として、湿潤液中にプラスチック廃材を沈降させ、湿潤液中で振動させる方法を提案した。また、プラスチック廃材を気体雰囲気に曝す方法として、ザルやメッシュ、布地、紙等で湿潤液中から取り出す方法を提案した。しかしながら、上記方法を簡易に自動的に行うには、少なくともプラスチック廃材を湿潤液中に沈降させる装置と、湿潤液中で振動させる装置、湿潤液中から取り出す装置が必要であり、装置が大型化してしまう傾向にある。また、上記方法を自動で行う装置の開発が大いに望まれるところである。
【0020】
このように、市場から回収される比重の異なる複数種の材料で構成された混合物、特に混合プラスチック廃材を、液体雰囲気に曝した後に気体雰囲気に曝し、プラスチック廃材表面を十分に湿潤させた後に、再度プラスチック廃材を液体にて分離回収することができる、簡易な効率のよい分離回収装置の開発が望まれているにもかかわらす、そのような装置は未だ提案されていないのが現状である。
【0021】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、市場から回収される比重の異なる複数種の材料で構成された混合物、特にプラスチック廃材から混合プラスチック部材を分離して、さらにその混合プラスチック部材をプラスチック組成物の系統ごとに分離することができ、該プラスチック組成物からマテリアルリサイクルによりプラスチック原料またはプラスチック成形体を製造することができ、サーマルリサイクルされるプラスチック廃材を低減することができる、簡易かつ効率のよい分離回収装置を提供することである。
【0022】
より詳しく述べると、本発明の目的は、複数種の材料で構成された混合物、特に混合プラスチック部材の比重差を利用し、液体中でプラスチック組成物の系統ごとに分離する方法において好適に用いられ得る分離回収装置であって、処理すべき混合物、特にプラスチック廃材の表面に付着する気泡を簡易かつ効率的に除去することにより、市場から回収された混合物、特に混合プラスチック廃棄物から混合プラスチック部材を分離して、さらにその混合プラスチック部材をプラスチック組成物の系統ごとに分離することができ、該プラスチック組成物からマテリアルリサイクルによりプラスチック原料またはプラスチック成形体を製造することができ、サーマルリサイクルされるプラスチック廃材を低減することができる、簡易かつ効率のよい分離回収装置を提供することである。
【0023】
また、本発明の別の目的は、市場から回収された混合プラスチック廃棄物から混合プラスチック部材を分離して、さらにその混合プラスチック部材をプラスチック組成物の系統ごとに分離することができ、該プラスチック組成物からマテリアルリサイクルによりプラスチック原料またはプラスチック成形体を製造する方法を提供することにある。
【0024】
また本発明のさらに別の目的は、市場から回収された混合プラスチック廃棄物からマテリアルリサイクルにより得られる、プラスチック原料またはプラスチック成形体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、上記課題を解決するために、比重の異なる複数種の材料で構成された混合物を湿潤液に曝し、その後気体雰囲気に曝すための湿潤手段と、湿潤手段で気体雰囲気に曝された後の混合物を、液体で高比重物と低比重物に分離するための比重分離手段とを備える、比重の異なる複数種の材料で構成された混合物の分離回収装置であって、簡易かつ効率よく該混合物を、湿潤手段で用いる湿潤液と攪拌し、搬送すればよいとの着想を得、そのような混合物の分離回収装置を開発すべく、前記湿潤手段での該混合物と該湿潤液の攪拌方法や搬送方法、あるいは湿潤手段から該混合物を取り出す方法など、多くの種類の方法について実験を行い、鋭意検討を重ねた。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0026】
本発明の分離回収装置は、比重の異なる複数種の材料で構成された混合物を湿潤液に曝し、その後気体雰囲気に曝すための湿潤手段と、湿潤手段で気体雰囲気に曝された後の混合物を、液体で高比重物と低比重物に分離するための比重分離手段とを備える、比重の異なる複数種の材料で構成された混合物の分離回収装置であって、前記湿潤手段にポンプを配設してなることを特徴とするものである。
【0027】
ここにおいて、前記ポンプは、前記混合物と前記湿潤液とを攪拌し得、かつ、該混合物を該湿潤液とともに搬送し得るものであることが好ましい。
【0028】
本発明の分離回収装置における前記ポンプは水中ポンプであることが好ましい。
本発明の分離回収装置における湿潤手段は、前記ポンプを用いて搬送された前記混合物と前記湿潤液とを分離し得る搬送手段を有することが好ましい。
【0029】
前記搬送手段は、前記混合物と前記湿潤液とを分離すると同時に、分離された混合物を気体雰囲気に曝すように構成されたものであることが好ましい。
【0030】
また前記搬送手段は、搬送方向に向かうにつれて上方に向かうように5°〜45°の角度をなして傾斜するものであることが好ましい。
【0031】
本発明の分離回収装置は、前記ポンプを用いて搬送された前記混合物と前記湿潤液とを貯留するための湿潤液貯留槽を有し、当該湿潤液貯留槽より前記搬送手段に前記混合物と前記湿潤液とを供給するように構成されたものであることが、好ましい。
【0032】
本発明の分離回収装置においては、前記ポンプを用いて搬送された前記混合物と前記湿潤液とが、前記搬送手段に直接搬出されるように構成されたものであることが好ましい。
【0033】
また前記湿潤手段は、前記搬送手段により分離された湿潤液を回収するための回収手段をさらに有することが、好ましい。
【0034】
また前記搬送手段は、ポンプの上方に設置されたものであることが好ましい。
本発明の分離回収装置において、前記ポンプは、その内部に湿潤液を収容する湿潤液貯蔵槽内に配設されてなり、当該湿潤液貯蔵槽内には前記ポンプに混合物を投入するための混合物投入部が配設され、この混合物投入部内と湿潤液貯蔵槽内とは湿潤液が通過可能に互いに連通していることが、好ましい。
【0035】
また本発明の分離回収装置は、前記混合物投入部内の湿潤液の液面高さを調整するための液面調整手段をさらに有することが好ましい。
【0036】
前記液面調整手段は、前記湿潤液貯蔵槽内の湿潤液の液面付近であって、前記湿潤液が湿潤液貯蔵槽から前記混合物投入部へ連続的に流入される高さに少なくとも1個設置されたものであることが好ましい。
【0037】
また本発明の分離回収装置は、前記混合物投入部内において、投入された混合物と湿潤液とがサイクロン流を形成するものであることが好ましい。
【0038】
また前記混合物投入部は、その一部が略円錐形状に形成されたものであることが好ましい。
【0039】
また前記混合物投入部内の湿潤液の液面高さは、前記湿潤液貯蔵槽内の湿潤液の液面高さよりも低く調整されることが好ましい。
【0040】
本発明の分離回収装置においては、前記回収手段で回収された湿潤液が、前記混合物投入部内に投入されるものであることが好ましい。
【0041】
また本発明の分離回収装置において、前記湿潤液は水であることが好ましい。
また前記混合物が、複数種のプラスチックで構成されたプラスチック廃材を含むことが好ましく、当該前記プラスチック廃材は、プラスチック成形体またはプラスチック成形体を備えた製品の破砕物であることが好ましい。ここにおいて、前記破砕物の粒径が5〜30mmであることが好ましい。また、前記プラスチック成形体を備えた製品は、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機よりなる群から選ばれる製品であることが好ましい。
【0042】
本発明において、前記プラスチック廃材はポリオレフィン系プラスチック組成物、ポリスチレン系プラスチック組成物およびその他の系統のプラスチック組成物よりなる群から選ばれる少なくともいずれかであるのが、好ましい。
【0043】
また本発明の分離回収装置においては、ポリオレフィン系プラスチック組成物および/またはポリスチレン系プラスチック組成物および/またはその他の系統のプラスチック組成物が分離回収されるものであることが好ましい。
【0044】
また本発明は、上述した本発明の分離回収装置を用いたプラスチック原料の製造方法、およびそれにより得られたプラスチック原料を提供する。本発明のプラスチック原料は、ペレット状であるのが好ましい。
【0045】
本発明はまた、上述した本発明の分離回収装置を用いたプラスチック成形体の製造方法、およびそれにより得られたプラスチック成形体も提供する。本発明のプラスチック成形体は、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機よりなる群から選ばれる製品に用いられることが、好ましい。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、市場から回収される比重の異なる複数種の材料で構成された混合物、特にプラスチック廃材から、混合物、特にプラスチック廃材を主原料とするマテリアルリサイクルにより、多様な用途に適用可能な高品質のプラスチック成形体を得ることができ、サーマルリサイクルされるプラスチック廃材を低減することができる、簡易な効率のよい混合物の分離回収装置を提供することができる。
【0047】
また本発明によれば、プラスチック廃材から、プラスチック廃材を主原料とするマテリアルリサイクルにより、多様な用途に適用可能な高品質のプラスチック原料の製造方法、ならびに、プラスチック成形体の製造方法を提供することができる。
【0048】
さらに、本発明によれば、プラスチック廃材を主原料とするマテリアルリサイクルにより得られる、多様な用途に適用可能な高品質のプラスチック原料およびプラスチック成形体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
図1は、本発明の好ましい一例の混合物の分離回収装置を模式的に示す図である。本発明の分離回収装置は、比重の異なる複数種の材料で構成された混合物を湿潤液に曝し、その後気体雰囲気に曝すための湿潤手段1と、湿潤手段で気体雰囲気に曝された後の混合物を、液体で高比重物と低比重物に分離するための比重分離手段2とを、基本的に備える。
【0050】
本発明の分離回収装置は、湿潤手段1にポンプ7を配設してなることをその大きな特徴とするものである。ポンプ7としては、従来公知の適宜のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、前記混合物と前記湿潤液とを攪拌し得、かつ、該混合物を該湿潤液とともに搬送し得るものであることが好ましい。また、ポンプ7として水中ポンプを用いることが好ましい。水中ポンプで強力に吸引することにより、水中ポンプの羽根車を通過する際に湿潤液4と混合物がよりよく攪拌されるためである。
【0051】
図1に示す例の分離回収装置における湿潤手段1は、その内部に湿潤液4が収容された湿潤液貯蔵槽13を有する。この湿潤液貯蔵槽13内には、ポンプ7が配設されてなるとともに、当該ポンプ7に混合物を投入するために一方側(湿潤液4の液面側)で開口した混合物投入部12が設置されてなる。混合物投入部12内と湿潤液貯蔵槽13内とは、湿潤液が通過可能に互いに連通してなる。ポンプ7は、配管5を介して、湿潤液貯蔵槽13とは別に設置された湿潤液貯留槽8に連結されてなる。このようにして、混合物投入部12の内容物(投入された混合物)は、湿潤液4とともに、ポンプ7、配管5を介して、湿潤液貯留槽8に搬送されるように構成される。また、混合物投入部12は、その内部の湿潤液4の液面高さを調整するための液面調整手段6を有する。
【0052】
本発明の分離回収装置において、混合物投入部12は、その内部で湿潤液4と混合物とがサイクロン流を形成し得るものであることが好ましい。湿潤液4と混合物とがサイクロン流を形成することで、混合物と湿潤液4が攪拌されやすくなり、また混合物投入部12の内壁に接する湿潤液の液面が混合物投入部12の中央部付近の湿潤液の液面と比較して高くすることができるので、液面調整手段6から湿潤液4が流入することによる気泡の噛み込み量を減らす効果がある。サイクロン流を形成する手段としては特に制限されるものではないが、混合物投入部12の一部を図1に示すように、上側(投入口側)に向かって徐々に径が大きくなるような略円錐体に形成する例が挙げられる。また、図1に示すように液面調整手段6を湿潤液貯蔵槽13内の湿潤液4の液面3付近に設置し、かつ、混合物投入部12の略円錐体に形成された壁面に沿って湿潤液4を流入させる構成とすることが考えられる。
【0053】
混合物投入部12に設けられた液面調整手段6は、混合物投入部12内の湿潤液の液面の高さを調整し得るものであれば特に制限されるものではないが、湿潤液貯蔵槽13内の湿潤液の液面付近であって、前記湿潤液4が湿潤液貯蔵槽から前記混合物投入部へ連続的に流入される高さに少なくとも1個設置されたものであるのが好ましい。このような液面調整手段6は、たとえば、湿潤液貯蔵槽13内と混合物投入部12内とを湿潤液4が通過可能に互いに連通可能なように混合物投入部12の壁面に設置された孔であって、その開孔量を調整可能に形成された孔で実現される。上記開孔量は、孔を複数個あけてそのうちのいくつかを塞ぐことにより調整するようにしてもよいし、孔の大きさそのものを調整するようにしてもよい。また、その両方により開孔量を調整するようにしてもよい。
【0054】
液面調整手段6によって、混合物投入部12内の湿潤液の液面9は、湿潤液貯蔵槽13内の湿潤液4の液面よりも低く調整される。このように混合物投入部12内の湿潤液の液面9の高さが調整されることにより、湿潤液4よりも比重の軽く、沈みにくいポリオレフィン系プラスチック組成物が簡易にかつ効率よくポンプ7へ吸引される。
【0055】
湿潤液貯留槽8には、湿潤液貯蔵槽13とは別個に設けられた箱体であって、上述したように混合物投入部12内の混合物および湿潤液4が、ポンプ7および配管5を介してその内部に搬送される。湿潤液貯留槽8の底部には、排出口8aが設けられ、排出口より混合物および湿潤液4が排出され、湿潤液である液体雰囲気に曝された後の混合物を、気体雰囲気に曝すことができるように構成されている。
【0056】
本発明の分離回収装置によれば、上述したような湿潤手段1を有することによって、混合物を、湿潤液4(すなわち、液体雰囲気)に曝した後、気体雰囲気に曝すという工程を自動的に行うことが可能となる。混合物は、液体雰囲気に曝されることによって、混合物の表面のうち、細孔などの存在により水が浸透しにくい箇所に気泡が発生する。こうして表面の水の浸透しにくい箇所に気泡が付着した混合物を気体雰囲気に曝すことで、上記気泡は破裂するが、この際気泡内の圧力は雰囲気圧力より高圧であるため、より強い圧力でプラスチック表面に水が広がる。このため、細孔などの存在により水が浸透しにくいプラスチック廃材の表面にも水が浸透しやすくなるという利点がある。
【0057】
本発明の分離回収装置において用いられる湿潤液は、特に限定されるものではないが、水を用いることが好ましい。水を用いることで、液体自体を低コストで入手することが可能であり、また廃水処理も容易にかつ低コストで行うことができるという利点がある。前記液体は、水にNaClやその他の有機物あるいは無機物などを溶解させた溶液あるいはその混合溶液でもよい。
【0058】
本発明の分離回収装置における湿潤手段1は、前記ポンプを用いて搬送された前記混合物と前記湿潤液とを分離するための手段をさらに備えるのが好ましい。図1に示す例においては、湿潤液貯留槽8から供給された混合物と湿潤液とを分離し得る搬送手段11を有する場合を示している。搬送手段11は、搬送している間に混合物と湿潤液とを分離すると同時に、分離された混合物を気体雰囲気に曝すように構成することが好ましい。このような搬送手段11は、たとえば、ベルトコンベア(好ましくはメッシュベルトコンベア)を用いることで実現することができる。
【0059】
搬送手段11としてメッシュベルトコンベアを用いる場合、目合が1〜6mm(より好ましくは2〜4mm)のものを用いることが好ましい。目合が6mmを超えると、前記混合物のうち、メッシュから零れ落ちる粒径の小さな物の割合が多くなり、湿潤液と共に湿潤液回収手段10を通じて混合物投入部12に返送されてしまうため、効率が悪くなるという傾向にあり、1mm未満であっても混合物と湿潤液の分離能には大きく影響しないが、メッシュベルトの価格が高くなる、トルクのより大きなモータが必要となる、といったデメリットがある。また、次工程である比重分離手段へ搬送されるに要する搬送時間は、特に制限されるものではないが、5〜60秒(より好ましくは10〜30秒)であることが好ましい。搬送時間が5秒より短いと、混合物と湿潤液が十分に分離されない傾向にあり、搬送時間が60秒より長くても、混合物と湿潤液の分離能には改善がみられない。上記範囲の目合を有するメッシュベルトコンベアとしては、具体的には、サン付耐水ベルトコンベアFB2S−OD−109−190−100DC25(マルヤス機械株式会社製)などを好適に用いることができる。
【0060】
本発明の分離回収装置において、湿潤液貯留槽8の排出口8aの幅と、搬送手段の幅(搬送方向に垂直な方向における長さ)とは、同程度に設計されるのが好ましい。これにっより、搬送手段11の幅を十分に使用して混合物を拡散することができ、簡易に効率よく混合物を空気に曝すことができる。
【0061】
搬送手段11は、簡易かつ効率的に湿潤液と混合物とを分離することができるように、搬送方向に向かうにつれて上方に向かうような傾斜を有するように設置されることが好ましい。当該搬送手段11は、水平方向と搬送方向とのなす角度(図1における角度θ)が好ましくは5°〜45°、より好ましくは10°〜20°となるように傾斜させて設置される。搬送手段11の前記角度θが5°未満であると、湿潤液と混合物とが十分に分離されない傾向にあり、また、角度θが45°を超えると、搬送手段11の上流側から混合物が零れ落ちたり、混合物が搬送手段11上を滑降して搬送できないような虞があるためである。
【0062】
また本発明の分離回収装置において、搬送手段11は、ポンプ7よりも上方に設置されるのが好ましく、混合物投入部12よりも上方に設置されるのがより好ましい。搬送手段11がポンプ7(より好ましくは混合物投入部12)の上方に設置されてなることにより、分離された湿潤液を簡易に効率よくポンプ7に返送することができ、湿潤液を循環的に利用することができる。
【0063】
ここで、図2は、本発明の好ましい他の例の分離回収装置を模式的に示す図である。本発明の分離回収装置はまた、図2に示すように、ポンプ7を用いて搬送された前記混合物と前記湿潤液4とが、前記搬送手段11に直接搬出されるように(すなわち、湿潤液貯留槽8を介さないように)構成されてもよい。この場合、混合物と湿潤液の搬出口を搬送手段11の上方に設け、かつ、混合物と湿潤液の搬出方向が搬送手段11の搬送方向と略平行となるように設置するのが好ましい。これにより、搬送手段11の幅を十分に使って混合物を搬送手段11上に拡散することができ、混合物を簡易かつ効率的に気体雰囲気(空気)に曝すことができる。
【0064】
本発明の分離回収装置は、好ましくは、搬送手段11で分離された湿潤液を回収するための湿潤液回収手段10をさらに備える。図1に示す例において、湿潤液回収手段10は、搬送手段11の下方、かつ、混合物投入部12の上方において搬送手段11の搬送方向全域にわたるように設置され、搬送手段11により分離された湿潤液を集め、混合物投入部12に投入し得るように構成されている。このような湿潤液回収手段10をさらに備えることで、湿潤液を無駄なく循環させて使用することができる。
【0065】
本発明の分離回収装置において、搬送手段11により搬送されながら湿潤液4と分離された混合物(湿潤混合物)は、比重分離手段2に投入される。比重分離手段2は、比重分離液24が収容された比重分離液貯蔵槽25と、前記搬送手段11により搬送された混合物を比重分離液貯蔵槽25に投入するための湿潤混合物投入部23とを備える。比重分離液貯蔵槽25に投入された湿潤混合物は、低比重物と高比重物とに比重分離される。
【0066】
比重分離液としては、たとえばポリオレフィン系プラスチック組成物を分離回収する際には比重分離液の比重は0.92以上であることが好ましく、特に0.95以上であることがより好ましい。また、この比重は1.01以下であることが好ましく、特に1.00以下であることがより好ましい。この比重が0.92未満の場合には、ポリオレフィン系プラスチックの一部が沈降し回収率が低下するという傾向があり、この比重が1.01を超えると、ポリスチレン系プラスチックの一部が混入するという傾向があるためである。ここで、比重が0.92以上かつ1.01以下の比重分離液は、特に限定するものではないが、水であることが望ましい。
【0067】
さらに、たとえばポリオレフィン系やポリスチレン系以外の、その他の系統のプラスチック組成物を分離回収する際には、比重分離液の比重は1.00以上であることが好ましく、特に1.01以上であることがより好ましい。また、この比重は1.10以下であることが好ましく、特に1.08以下であることがより好ましい。この比重が1.00未満の場合には、ポリオレフィン系プラスチックが混入するという傾向があり、この比重が1.10を超えると、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ゴムなどが混入するという傾向がある。ここで、比重を1.10以下かつ1.00以上である比重分離液は、特に限定するものではないが、水にNaClを溶解した溶液であることが望ましい。あるいはその他の有機物あるいは無機物などを溶解させた溶液あるいはその混合溶液でもよい。
【0068】
さらに、該プラスチック廃材をポリオレフィン系プラスチック組成物、ポリスチレン系プラスチック組成物およびその他の系統のプラスチック組成物の3系統のプラスチック組成物に分離回収する際には、比重が0.92以上かつ1.01以下の上記液体および1.10以下かつ1.00以上である比重分離液の2種類を用いるのがよい。この際、特に順序を限定するものではないが、比重が1.00以上かつ1.10以下の比重分離液を用いてポリオレフィン系プラスチック組成物およびポリスチレン系プラスチック組成物と、その他の系統のプラスチック組成物とに分離した後、比重が0.92以上かつ1.01以下の比重分離液を用いてポリオレフィン系プラスチック組成物とポリスチレン系プラスチック組成物とを分離することが望ましい。
【0069】
図1および図2には、混合物がポリオレフィン系プラスチック組成物を含み、比重分離液として水を用いた例を示している。この場合、ポリオレフィン系プラスチック組成物は低比重物として、その他の系統のプラスチック組成物(高比重物)とは分離される。
【0070】
図1および図2に示す例の分離回収装置は、比重分離液貯蔵槽25に、比重分離液24の液面付近に低比重物を搬出するための低比重物搬送手段22が設けられ、かつ、比重分離液24の液底から比重分離液貯蔵槽25外にまで高比重物を搬出するための高比重物搬送手段26が設けられる。低比重物搬送手段22および高比重物搬送手段26はそれぞれ、たとえばベルトコンベアで形成され、搬送方向前方に向かうにつれて上方に傾斜するように設けられる。低比重物搬送手段22の搬送方向前方には低比重物回収コンテナ21が、高比重物搬送手段26の搬送方向前方には高比重物回収コンテナ27が、それぞれ設けられ、比重分離液貯蔵槽25内で分離された低比重物、高比重物がそれぞれ回収されるように構成される。
【0071】
上述してきた本発明の分離回収装置は、混合物の分離回収方法に好適に利用することができる。ここで、本発明により分離回収される混合物は、プラスチック部材を備えた使用済み製品の破砕物であることが望ましい。ここで、プラスチック部材を備えた使用済み製品とは、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機からなる群から選ばれる製品であることが推奨される。
【0072】
ここで、使用済み製品として廃棄されたエアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機(本明細書において「家電4品目」と呼称する)から回収されたプラスチック系破砕物のプラスチック組成物の系統別の構成比および比重の代表的な一例について、表1および表2を用いて説明する。
【0073】
表1には、家電4品目から回収されたプラスチック部材に用いられるプラスチック組成物の系統別の構成比の代表的な一例を示す。また、表2には、主要な系統別のプラスチック組成物の比重の範囲の代表的な一例を示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
表1から明らかなように、家電4品目から回収されたプラスチック部材において、ポリオレフィン系プラスチック組成物およびポリスチレン系プラスチック組成物からなるプラスチック部材をマテリアルリサイクルすることができれば、家電4品目のプラスチック部材の再資源化率は60%を超えるといえる。
【0077】
また、これらの表から明らかなように、家電4品目に多量に使用されているポリオレフィン系プラスチック組成物の比重の範囲は、一般に0.89〜0.91の範囲に含まれることが分かる。また、ポリスチレン系プラスチック組成物の比重の範囲は、一般に1.04〜1.05の範囲に含まれることが分かる。そして、その他の系統のプラスチック組成物からなる部材の大部分は、その比重が、一般に1.10〜2.00の範囲に含まれることが分かる。
【0078】
ここで、本明細書において、「プラスチック組成物」と呼称する際には、狭義のプラスチック組成物のみを示すのではなく、ゴム組成物や高分子組成物なども含む広い意味でのプラスチック組成物を示すものとする。
【0079】
そして、上記より、一般的には、比重が1.06〜1.10の範囲にある分離液を用いることにより、ポリオレフィン系プラスチック組成物およびポリスチレン系プラスチック組成物からなる部材と、その他の系統のプラスチック組成物からなる部材とを分離することが可能であることが分かる。また、上記より、一般的には、比重が0.92〜1.01の範囲にある分離液(中でも比重が0.95〜1.00の範囲にある分離液)を用いることにより、ポリオレフィン系プラスチック組成物からなる部材と、ポリスチレン系プラスチック組成物からなる部材とを分離することが可能であることが分かる。
【0080】
図3は、本発明の分離回収装置を利用した混合物の分離回収方法の好ましい一例を示すフローチャートである。以下、図3を用いて、本発明の分離回収装置を利用した混合物の分離回収方法を詳細に説明する。
【0081】
この具体例においては、まず、図3に示すように、家庭などから廃棄された使用済みの家電4品目を回収する(ステップ101)。そして、該家電4品目の廃棄物を解体して、コンプレッサ、熱交換器などの大型の金属部品や、洗濯機の水槽、冷蔵庫の野菜ケースなどの大型のプラスチック成形品を部品ごとに回収する(ステップ102)。
【0082】
次に、大型金属部材などが回収された家電4品目の廃棄物の残りの部材を、たとえば衝撃式破砕装置やせん断式破砕装置などの大型破砕機で粗破砕する(ステップ103)。ステップ103における破砕物の粒径は、特に制限されるものではないが、10mm以上であるのが好ましく、40mm以上であることがより好ましい。また、破砕物の粒径は80mm以下であることが好ましく、60mm以下であることがより好ましい。破砕物の粒径が10mm未満または80mmを超える場合には、次工程での金属の選別精度が低下するという傾向があり、さらに粒径が10mm未満の場合には、破砕に長時間を要するため、プラスチックが溶融あるいは熱酸化劣化を起こすという傾向があり、また、粒径が80mmを超えると、嵩比重が小さくなり以後の工程での作業性に悪影響を及ぼすという傾向がある。具体的には、粒径が60mm程度となるように破砕するのが特に好ましい。なお、コンプレッサ、熱交換器をはじめとする大型の金属部材などの破砕が困難な部材は、予め分解してプラスチック部材を含む廃棄物から取り外しておいてもよい。
【0083】
続いて、該家電4品目の廃棄物の破砕物を、鉄、銅、アルミニウムなどで形成された金属系破砕物とプラスチック系破砕物に選別する(ステップ104)。当該ステップにおける破砕された廃棄物を金属系破砕物とプラスチック系破砕物との選別には、たとえば、鉄の選別に適した磁力を用いた選別装置、アルミニウムや銅の選別に適した渦電流を用いた選別装置、粒度を均一にしてふるいにかけるトロンメル装置などを好適に用いることができる。
【0084】
次に、金属系破砕物を選別(ステップ104)した後のプラスチック系破砕物より、低嵩比重破砕物をさらに選別することが好ましい(ステップ105)。ここで、低嵩比重破砕物とは、嵩比重が0.3以下の破砕物を意味する。低嵩比重破砕物の具体例としては、ポリウレタン系断熱材の破砕物や発泡スチロール系の破砕物などが挙げられる。この低嵩比重破砕物は、たとえば風力を用いた選別装置や、振動ふるいを用いた装置により選別することができる。なお、破砕された廃棄物を金属系破砕物とプラスチック系破砕物と低嵩比重破砕物とに選別する際に、風力による選別、磁力による選別、渦電流による選別を行う場合には、その順序は特に特に制限するものではないが、選別の効率の観点からは、まず磁力により鉄系金属破砕物を分離し、次いで渦電流によりアルミニウム系金属や銅系金属の破砕物を選別し、続いて風力により低嵩比重破砕物を選別し、残った混合プラスチック系の破砕物を、以下のステップに供することが好ましい。
【0085】
前記で得られた混合プラスチック系の破砕物は、微破砕工程(ステップ106)に供される。この微破砕は、たとえば、せん断式破砕装置を用いて行うことができる(微破砕後のものを、以下「微破砕物」と呼ぶ。)。微破砕物の大きさに特に制限はないが、5mm以上であることが好ましく、特に8mm以上であることがより好ましい。また、この粒径は30mm以下であることが好ましく、特に20mm以下であることが好ましい。この粒径が5mm未満の場合には、破砕に長時間を要するためプラスチックが溶融あるいは熱酸化劣化を起こすという傾向があり、この粒径が30mmを超えると、加熱成形工程での作業性に悪影響を及ぼすという傾向があるためである。また、この粒径が5mm未満である場合でも30mmを超える場合でも、次以降のステップである湿式比重分離工程の選別能力に悪影響を及ぼす傾向がある。
【0086】
なお、手解体(ステップ102)により回収された水槽、冷蔵庫の野菜ケースなどの大型のプラスチック成形品を、上述したステップ103〜ステップ105のステップを経ることなく、そのまま微破砕工程(ステップ106)に供するようにしてもよい。
【0087】
続いて、複数種のプラスチックで構成されたプラスチック廃材を液体雰囲気に曝す工程(ステップ107)の後に、気体雰囲気に曝す工程を行う(ステップ108)。上述した本発明の分離回収装置は、このステップ107以降の工程を行うために好適に用いることができる。すなわち、本発明の分離回収装置の湿潤手段1により、ステップ107、108を自動的に行うことができる。
【0088】
そして、気体雰囲気に曝されたプラスチック廃材を、湿式比重分離工程に移す(ステップ109)。こうすることで、プラスチック廃材の表面に気泡が付着することなく湿式比重選別を実施することができ、より精度の高い比重選別が可能となる。かかる湿式比重分離工程は、上述した本発明の分離回収装置の比重分離手段2により自動的に行うことができる。
【0089】
そして、湿式比重分離工程により系統ごとに選別されたプラスチック廃材を、成形し、成形用プラスチック原料とし(ステップ110)、このプラスチック原料を射出成形機に投入しプラスチック成形体を作成する(ステップ111)のが、好ましい。このように、本発明の分離回収装置を用いて、系統別に分離されたプラスチック廃材を加熱溶融した後、特定の形状に成形することにより、マテリアルリサイクルを行うことが好ましい。
【0090】
マテリアルリサイクルされるプラスチックの具体例としては、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリカーボネート系、ポリメチルメタクリレート系などのプラスチックが挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン系やポリプロピレン系などのポリオレフィン系プラスチック、およびポリスチレン系、ABS系などのポリスチレン系プラスチックは、表3に示されるように、他のプラスチックに比べて加工性、経済性などの点で優れているので、本発明の分離回収装置を用いて好適にマテリアルリサイクルすることが可能である。
【0091】
すなわち、本発明の分離回収装置を用いて分離回収されるプラスチック廃材は、ポリオレフィン系プラスチック組成物、ポリスチレン系プラスチック組成物およびその他の系統のプラスチック組成物よりなる群から選ばれる少なくともいずれかであり、該ポリオレフィン系プラスチック組成物の比重が0.85〜1.00(より好適には0.89〜0.91)の範囲にあり、該ポリスチレン系プラスチック組成物の比重が1.00〜1.08(より好適には1.04〜1.05)にあり、該その他の系統のプラスチック組成物の大部分の比重が1.08〜2.00(より好適には1.10〜2.00)の範囲にあることが、好ましい。また、本発明における被回収物は、ポリオレフィン系プラスチック組成物および/またはポリスチレン系プラスチック組成物および/またはその他の系統のプラスチック組成物であることが、好ましい。
【0092】
ここで、プラスチックの融点をT℃とすると、この時の加熱温度はT℃以上であることが好ましく、特に(T+10)℃以上であることがより好ましい。また、このときの加熱温度は(T+120)℃以下であることが好ましく、特に(T+80)℃以下であることがより好ましい。このときの加熱温度がT℃未満の場合には、該プラスチックが十分に溶融しないために成形し難いという傾向があり、このときの加熱温度が(T+120)℃を超えると、該プラスチックが熱劣化するという傾向がある。
【0093】
本発明の分離回収装置を用いた混合物の分離回収方法は、図3に示されていないステップが必要により付加、あるいは削除されていても構わない。なお、本発明においては、ステップ101、102を省略し、プラスチック廃材を粗破砕工程(ステップ103)あるいは微破砕工程(ステップ106)に供するようにしてもよい。
【0094】
本発明はまた、上述した本発明の分離回収装置を用いたプラスチック原料の製造方法、および当該製造方法で得られたプラスチック原料をも提供する。本発明のプラスチック原料は、ペレット状であることが好ましい。このとき、このペレットの粒径は1mm以上であることが好ましく、特に2mm以上であることがより好ましい。また、このペレットの粒径は8mm以下であることが好ましく、特に5mm以下であることがより好ましい。このペレットの粒径が1mm未満の場合には、浮遊するため作業性が低下するという傾向があり、このペレットの粒径が8mmを超えると、成形機のシリンダー内で十分に溶融しないため均一混練されないという傾向があるためである。
【0095】
なお、ペレット状のプラスチック原料を成形する場合、押出成形した後に、シートカット、ストランドカット、ホットエアカット、アンダーウォーターカットなどのいずれの方法により造粒してもよい。これらの造粒方法の中でも、後に射出成形により特定の形状に成形する場合には、樹脂原料の供給が円滑に行え、大量処理にも対応できるアンダーウォーターカットが特に好ましい。
【0096】
なお、本発明のプラスチック原料の形状としては、ペレット状に特に限定されるものではなく、たとえばシート状、フィルム状、パイプ状などいずれの形態であってもよく、押出成形機の種類、使用の態様あるいは求められる特性などから適宜決定すればよい。
【0097】
さらに、本発明のプラスチック原料には、熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー、銅害防止剤、抗菌剤、着色剤などの添加剤を、必要により、本発明の効果を害しない範囲の量で添加してもよい。
【0098】
さらに本発明は、上述した本発明の分離回収装置を用いたプラスチック成形体の製造方法、ならびに当該製造方法で製造されたプラスチック成形体も提供する。本発明の方法により製造されたプラスチック成形体は、プラスチックからなる部材(プラスチック部材)であってもよい。この場合、このプラスチック部材は、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機よりなる群から選ばれる製品に用いられることが好ましい。
【0099】
前記プラスチック部材は、上記のプラスチック原料から、射出成形などの方法を用いて成形することができる。このとき用いる射出成形機としては、特に限定するものではないが、たとえばスクリューインライン式射出成形機、プランジャ式射出成形機などが挙げられる。
【0100】
また、このプラスチック部材の成形のステップをより簡略化するために、ペレット状などの形状を有するプラスチック原料を作製することなく、破砕したプラスチックを射出成形機にそのまま投入し、プラスチックからなる部材を直接作製しても構わない。
【0101】
さらに、このプラスチックからなる部材は、熱安定剤や光安定剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー、銅害防止剤、抗菌剤、着色剤などの添加剤を、必要により、本発明の効果を害しない範囲の量で添加した上で成形して作製してもよい。これらの添加剤を添加するステップとしては、押出成形機または射出成形機への上記のプラスチック原料または破砕したプラスチックの投入時が好ましい。
【0102】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0103】
<実施例>
図3の手順に従って、実験材料に含まれるポリオレフィン系プラスチック系組成物を分離回収した。なお、実験材料は、プラスチック組成物からなる成形体を備えた製品としてエアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機を入手し、その製品を廃棄物として用いて、手解体を行った(ステップ102)後、通常の破砕機を用いて粗破砕して(ステップ103)得られた破砕物を、通常の磁力を用いた選別機により金属系破砕物を選別し(ステップ104)、さらに通常の風力を用いた選別機により低嵩比重破砕物を選別した(ステップ105)。このようにして、破砕物より金属系破砕物および低嵩比重破砕物を除いた残りのプラスチック混合物を、通常の破砕機を用いて微破砕して(ステップ106)調製した。
【0104】
上述のようにして調製した実験材料を、図1に示した本発明の分離回収装置を用いて、混合物投入部12を介して湿潤液貯蔵槽13内の湿潤液4に投入後、ポンプ7、配管5および湿潤液貯留槽8を介して搬送手段11に排出することで、液体雰囲気に曝す工程(ステップ107)および気体雰囲気に曝す工程(ステップ108)を行った。湿潤液としては水を用い、ポンプ7としては水中ポンプを用いた。また、混合物投入部12はその内部の湿潤液がサイクロン流を形成するようにした。搬送手段11としてはメッシュベルトコンベア(サン付耐水ベルトコンベアFB2S−OD−109−190−100−DC25(マルヤス機械株式会社製)、目合:3mm)を用い、角度θ(水平方向と搬送方向とのなす角度)は15°に設定した。
【0105】
その後、搬送手段11により搬送された湿潤混合物を比重分離手段2に供し、比重分離工程(ステップ109)を行った。比重分離液としては、比重1.0の水を用いた。これにより、混合物は低比重物と高比重物とに分離され、混合物に含まれていたポリオレフィン系プラスチック組成物は低比重物として、低比重物搬送手段22により低比重物コンテア21に回収された。また、混合物のうちポリオレフィン系プラスチック組成物以外のその他の系統のプラスチック組成物は、高比重物搬送手段26により高比重物コンテア27に回収された。
【0106】
次に、低比重物コンテナ21に回収されたポリオレフィン系プラスチック組成物を脱水、乾燥した後、スクリュー径45mmの二軸溶融混練押出機を用いて230℃で溶融混練し、ペレット状のプラスチック原料を作成した。
【0107】
次に、作成したペレット状のプラスチック原料を10トン射出成形機をホッパーに投入し、成形温度230℃、金型温度40℃の射出成形条件で成形し、プラスチック成形体を作成した。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の好ましい一例の分離回収装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明の好ましい他の例の分離回収装置を模式的に示す図である。
【図3】本発明の分離回収装置を用いた分離回収方法の好ましい一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0109】
1 湿潤手段、2 比重分離手段、4 湿潤液、5 配管、6 液面調整手段、7 ポンプ、8 湿潤液貯留槽、10 湿潤液回収手段、11 搬送手段、12 混合物投入部、13 湿潤液貯蔵槽、22 低比重物搬送手段、24 比重分離液、25 比重分離液貯蔵槽、26 高比重物搬送手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重の異なる複数種の材料で構成された混合物を湿潤液に曝し、その後気体雰囲気に曝すための湿潤手段と、湿潤手段で気体雰囲気に曝された後の混合物を、液体で高比重物と低比重物に分離するための比重分離手段とを備える、比重の異なる複数種の材料で構成された混合物の分離回収装置であって、
前記湿潤手段にポンプを配設してなることを特徴とする分離回収装置。
【請求項2】
前記ポンプは、前記混合物と前記湿潤液とを攪拌し得、かつ、該混合物を該湿潤液とともに搬送し得るものであることを特徴とする請求項1に記載の分離回収装置。
【請求項3】
前記ポンプが水中ポンプであることを特徴とする請求項1または2に記載の分離回収装置。
【請求項4】
湿潤手段が、前記ポンプを用いて搬送された前記混合物と前記湿潤液とを分離し得る搬送手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項5】
前記搬送手段が、前記混合物と前記湿潤液とを分離すると同時に、分離された混合物を気体雰囲気に曝すように構成されたものである、請求項4に記載の分離回収装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、搬送方向に向かうにつれて上方に向かうように5°〜45°の角度をなして傾斜するものである、請求項4または5に記載の分離回収装置。
【請求項7】
前記ポンプを用いて搬送された前記混合物と前記湿潤液とを貯留するための湿潤液貯留槽を有し、当該湿潤液貯留槽より前記搬送手段に前記混合物と前記湿潤液とを供給するように構成されたものである、請求項4〜6のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項8】
前記ポンプを用いて搬送された前記混合物と前記湿潤液とが、前記搬送手段に直接搬出されるように構成されたものである、請求項4〜6のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項9】
前記湿潤手段は、前記搬送手段により分離された湿潤液を回収するための回収手段をさらに有することを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項10】
前記搬送手段はポンプの上方に設置されたものである、請求項4〜9のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項11】
前記ポンプは、その内部に湿潤液を収容する湿潤液貯蔵槽内に配設されてなり、当該湿潤液貯蔵槽内には前記ポンプに混合物を投入するための混合物投入部が配設され、この混合物投入部内と湿潤液貯蔵槽内とは湿潤液が通過可能に互いに連通していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項12】
前記混合物投入部内の湿潤液の液面高さを調整するための液面調整手段をさらに有する、請求項11に記載の分離回収装置。
【請求項13】
液面調整手段は、前記湿潤液貯蔵槽内の湿潤液の液面付近であって、前記湿潤液が湿潤液貯蔵槽から前記混合物投入部へ連続的に流入される高さに少なくとも1個設置されたものである、請求項12に記載の分離回収装置。
【請求項14】
前記混合物投入部内において、投入された混合物と湿潤液とがサイクロン流を形成するものである、請求項11〜13のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項15】
前記混合物投入部は、その一部が略円錐形状に形成されたものである、請求項11〜14のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項16】
前記混合物投入部内の湿潤液の液面高さが、前記湿潤液貯蔵槽内の湿潤液の液面高さよりも低く調整される、請求項11〜15のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項17】
前記回収手段で回収された湿潤液が、前記混合物投入部内に投入されるものである、請求項11〜16のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項18】
前記湿潤液が水である、請求項1〜17のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項19】
前記混合物が、複数種のプラスチックで構成されたプラスチック廃材を含む、請求項1〜18のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項20】
前記プラスチック廃材は、プラスチック成形体またはプラスチック成形体を備えた製品の破砕物である、請求項19に記載の分離回収装置。
【請求項21】
前記破砕物の粒径が5〜30mmである、請求項20に記載の分離回収装置。
【請求項22】
前記プラスチック成形体を備えた製品は、エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機よりなる群から選ばれる製品である、請求項20または21に記載の分離回収装置。
【請求項23】
前記プラスチック廃材はポリオレフィン系プラスチック組成物、ポリスチレン系プラスチック組成物およびその他の系統のプラスチック組成物よりなる群から選ばれる少なくともいずれかである、請求項19〜22のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項24】
ポリオレフィン系プラスチック組成物および/またはポリスチレン系プラスチック組成物および/またはその他の系統のプラスチック組成物が分離回収されるものである、請求項19〜23のいずれかに記載の分離回収装置。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載された分離回収装置を用いたプラスチック原料の製造方法。
【請求項26】
請求項1〜24のいずれかに記載された分離回収装置を用いたプラスチック成形体の製造方法。
【請求項27】
請求項25に記載の方法により製造されたプラスチック原料。
【請求項28】
ペレット状であることを特徴とする請求項27に記載のプラスチック原料。
【請求項29】
請求項26に記載の方法により製造されたプラスチック成形体。
【請求項30】
エアコン、テレビ、冷蔵庫および洗濯機よりなる群から選ばれる製品に用いられることを特徴とする請求項29に記載のプラスチック成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−326448(P2006−326448A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151850(P2005−151850)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】