説明

混合窒化ホウ素組成物およびその製造方法

特性、例えば表面積、粒度、タップ密度などが異なる少なくとも2種の異なる窒化ホウ素粉体材料を含む窒化ホウ素組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年10月7日に本出願の発明者等によって出願された「Mixed Boron Nitride Composition and Method for Making Thereof」と題する仮特許出願第60/828,634号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、ポリマーベースのコンパウンドの形成を含む用途に使用するための、異なる窒化ホウ素粉体の混合物を含む窒化ホウ素組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
窒化ホウ素(「BN」)には様々な結晶構造のものがあり、研磨剤から潤滑剤までの様々な用途がある。六方晶窒化ホウ素(「hBN」)は非常に望ましい形態をしており、黒鉛に類似した六方晶層状構造を有する白色組成物である。その特性により、hBNは、熱伝導用、絶縁用、耐食性用、潤滑用、および可塑性添加剤としての用途がある。窒化ホウ素は、これを成形して複合材料に使用することができ、あるいは立方晶窒化ホウ素の原料として使用することもできる。窒化ホウ素は、電子材料、非酸化性セラミックス焼結フィラー粉体、メーキャップ材料、医用添加剤などを含む多くの用途に使用されている。
【0004】
BNは、無機原料同士の高温反応で、プレートレット形態の黒鉛に類似した六方晶構造を有するBN粒子の白色粉体組成物として製造することができる。プレートレットBNをフィラーとしてポリマーに加えると、レオロジー特性の劣るブレンド材料が形成される。BNの添加量が30重量%を超えると、ブレンド材料は非常に粘稠となり、シリンジなどの機械的ディスペンサーから分配するのが困難になる。
【0005】
米国特許第6,731,088号には、バインダーで結合したのち噴霧乾燥した、不規則な非球状BN粒子の球状凝集体の乾燥粉体が開示されている。この球状BN凝集体を35〜50重量%の濃度でコンパウンディングしてポリマー組成物にすると、粘度が約300cp未満の組成物を得ることができる。米国特許第6,652,822号には、BN粒子の前駆体を含むエアロゾルを発生させ、プラズマを発生させ、プラズマホットゾーンにこのエアロゾルを導入した後そこから取り出すことにより生成したBNの結晶粒子が開示されている。このBNは形が球状であり、直径が約1〜1000ミクロンである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仮特許出願第60/828,634号
【特許文献2】米国特許第6,731,088号
【特許文献3】米国特許第6,652,822号
【特許文献4】米国特許出願公開第US2001/0021740号
【特許文献5】米国特許第5,898,009号
【特許文献6】米国特許第6,048,511号
【特許文献7】米国特許出願公開第2005.0041373号
【特許文献8】米国特許出願公開第US20040208812号A1
【特許文献9】米国特許第6,951,583号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
改善された特性を有する、改善されたBN組成物が求められている。さらに、電子材料、熱伝導性組成物などの用途にフィラーとして大量に使用することができるBN組成物も求められている。本発明の混合窒化ホウ素ブレンドのように、既存のBN原料から改善されたBN組成物が製造されることが特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料を含む窒化ホウ素組成物を対象とする。
【0009】
本発明は、少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料を含有する窒化ホウ素フィラーを含むポリマー組成物をさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】2種の異なる窒化ホウ素粉体材料、PTX60およびPT110の粘度のグラフである。
【図2】2種の異なる窒化ホウ素粉体材料、PTX60およびPT110の熱伝導率のグラフである。
【図3】ポリマー組成物に種々の比および種々の添加量でブレンドした、2種の窒化ホウ素粉体材料PTX60とPT110のブレンドの熱伝導率のグラフである。
【図4】ポリマー組成物に種々の比および種々の添加量でブレンドした、2種の窒化ホウ素粉体材料PTX60とPT110のブレンドの粘度のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書では、それが関連する基本的機能を変えることなく変化できる任意の量的表現を修飾するために、近似的用語を用いることができる。したがって、「約」および「実質的に」などの1つまたは複数の用語で修飾された値は、ある場合には、指定された厳密な値に限定されることはない。
【0012】
本明細書で用いる「官能化された」という用語は、カップリング剤またはコーティング剤による、凝集体形態またはプレートレット形態の窒化ホウ素成分のコーティングに関して、「表面を官能化した」、「官能化された表面」、「被覆した」、「表面処理した」または「処理した」という用語と互換的に用いることができる。
【0013】
本明細書で用いる「官能化」または「官能化された」という用語は、BN表面に複数の官能基を設けるようにBN表面を改質することをいう。本明細書で用いる「官能化された表面」とは、複数の官能基が表面に直接または間接的に共有結合しているように改質されたコーティングをいう。
【0014】
本明細書で用いる「有効量」または「十分量」とは、所望の効果をもたらすのに十分な量、例えば、こうした有効量を含んでいないポリマー組成物の粘度に比べて、ポリマー組成物の粘度を少なくとも20%低下させるのに十分な量を意味する。
【0015】
六方晶窒化ホウ素(「h−BN」)は、板状の六方晶結晶構造を有する不活性で滑らかなセラミック材料であり、黒鉛の構造に類似している。特定の一実施形態では、本発明は、相乗効果(すなわち改善された特性)を目的とした、少なくとも2種の異なる窒化ホウ素粉体材料の混合物(またはブレンド)に関する。これらの異なる窒化ホウ素粉体材料は、プレートレット窒化ホウ素および非プレートレット窒化ホウ素から選択される。本明細書では、非プレートレット窒化ホウ素は、プレートレット窒化ホウ素以外の任意の窒化ホウ素として定義される。例えば、非窒化ホウ素粉体材料は、窒化ホウ素プレートレットから構成された窒化ホウ素凝集体を含むことができる。この窒化ホウ素粉体材料凝集体は、形が球状でもまたは不規則でもよく、大きさが互いに異なっていてもよい。その他の非プレートレット窒化ホウ素粉体材料としては、それだけに限らないが、例えば、部分結晶性窒化ホウ素、非晶質窒化ホウ素、乱層構造窒化ホウ素、およびナノ窒化ホウ素粉体材料が挙げられ、これらは、それだけに限らないが、表面積、大きさ、アスペクト比、タップ密度を含めて異なる特性を有する。一実施形態では、これらの2種の異なる窒化ホウ素粉体材料は、粒度が異なる窒化ホウ素粉体材料からなる2種の異なる球状凝集体とすることができる。
【0016】
窒化ホウ素粉体成分
一実施形態では、2種の異なるBN粉体材料のうち少なくとも1種は、当技術分野で公知の方法で製造された結晶性または部分結晶性窒化ホウ素粒子を、凝集体窒化ホウ素の形態またはプレートレット窒化ホウ素の形態で含む。これらとしては、米国特許第6,652,822号に開示されているようなプラズマガスを利用した方法で製造されたミクロンサイズ範囲の球状BN粒子;米国特許出願公開第US2001/0021740号に開示された、バインダーで結合したのち噴霧乾燥した不規則な非球状BN粒子から形成された、球状窒化ホウ素凝集体を含むhBN粉体;米国特許第5,898,009号および同第6,048,511号に開示された、加圧成形法で製造されたBN粉体;米国特許出願公開第2005.0041373号に開示されたBN凝集粉体;米国特許出願公開第US20040208812A1に開示された、高い熱拡散率を有するBN粉体;および米国特許第6,951,583号に開示された、著しく層状剥離したBN粉体が挙げられる。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、窒化ホウ素組成物は、プレートレット窒化ホウ素粉体材料、窒化ホウ素粉体材料凝集体、部分結晶性窒化ホウ素粉体材料、非晶質窒化ホウ素粉体材料、乱層構造窒化ホウ素粉体材料、およびナノ窒化ホウ素粉体材料からなる群から選択される少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料を含む。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、窒化ホウ素組成物は、窒化ホウ素粉体材料が互いに異なる粒度分布を有する、少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料を含む。
【0019】
一実施形態では、BN粉体のうち少なくとも1種は少なくとも50ミクロンの平均粒径を有する。別の実施形態では、BN粉体のうち少なくとも1種は5〜500ミクロンの平均粒径を有し、第3の実施形態では10〜100ミクロンである。
【0020】
一実施形態では、BN粉体のうち少なくとも1種は、10ミクロンを超える平均粒径を有する六方晶窒化ホウ素(hBN)プレートレットからなる不規則な形状の凝集体を含む。
【0021】
別の実施形態では、BN粉体のうち少なくとも1種は「球状」粉体、つまりhBNプレートレットの比較的球状の凝集体を含み、かつ第2のBN粉体はhBNプレートレットの形をしている。ブレンドの成分の1つとして球状BNを組み込むと、このブレンドは典型的な球状BN組成物の特性、例えば、増加した表面積および優れた熱伝導率を持つことができる。一実施形態では、球状BN粉体成分は、10〜500ミクロンの平均凝集体粒度分布(ASD)または直径を有する凝集体を含む。別の実施形態では、球状BN粉体成分は30〜125ミクロンの範囲のASDを有する。一実施形態では、球状BN粉体成分のASDは74〜100ミクロンであり、別の実施形態では10〜40ミクロンである。
【0022】
一実施形態では、ブレンド中のBN粉体のうちの1種は、少なくとも約1ミクロン、典型的には約1〜20μmの平均直径を有し、約50以下の厚さを有するプレートレットの形態である。別の実施形態では、粉体は、約50〜約300の平均アスペクト比を有するプレートレットの形態である。
【0023】
一実施形態では、BN粉体のうちの1種は、少なくとも0.12の結晶化指数を有する非常に規則的な六方晶構造を有するh−BN粉体である。別の実施形態では、BN粉体は、約0.20〜約0.55の結晶化度を有しており、さらに別の実施形態では約0.30〜約0.55の結晶化度を有している。
【0024】
BN粉体を、高分子複合材料(例えば、高い熱伝導率特性を必要とするマイクロプロセッサーパッケージング)にフィラーとして使用する用途では、ブレンド中のBN粉体のうちの1種は約5〜25ミクロンの平均粒径を示す。これらの粒子の約60〜90容量%は約40〜80ミクロンの平均粒径を示す。
【0025】
ブレンドの調製方法:
本発明のBNブレンドは、当技術分野で公知の混合方法および装置を使用して調製することができる。一実施形態では、少なくとも2種の異なるBN粉体材料(例えば、球状BNとプレートレットBN、大きさおよび/またはタップ密度が異なる球状BN粉体、大きさおよび/または表面積が異なるプレートレットBN粉体など)を含む混合物を、Vブレンダーで少なくとも15分間混ぜ合わせる。
【0026】
一実施形態では、混合またはブレンディングに先立って、各種のBN粉体材料を強制空気炉中で少なくとも6時間300°Fで乾燥した後120°Fに保持し、その後混合する。別の実施形態では、混合する前に、各種のBN粉体のうち少なくとも1種を、少なくとも1800℃の温度で約1〜4時間焼結させる。焼結に適した雰囲気としては、不活性ガス、窒素、およびアルゴンが挙げられる。一実施形態では、焼結は真空中で行われる。
【0027】
BNブレンドを含有するポリマーコンパウンドの調製:
BNブレンドは、粉体の形で使用してよく、あるいは、IPA、メタノール、エタノールなどからなる水性または非水性媒体に約60〜80重量%の固体BNを混ぜたペーストの形にしてもよい。ポリマーコンパウンドにおいては、約1W/mK〜約25W/mKの熱伝導率を得るために、ポリエステル、溶融加工性ポリマー、フェノール系ポリマー、シリコーンポリマー(例えば、シリコーンゴム)、アクリルポリマー、ワックス、熱可塑性ポリマー、低分子量液体、またはエポキシ成形材料などのポリマーマトリックス成分と共に、粉体またはペーストの形のBNをコンパウンド全重量に対してBN30〜80重量%使用する。
【0028】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーマトリックスは、液晶ポリマー;ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアミド;ポリフタルアミド;ポリイミド;ポリフェニレンスルフィド;ポリカーボネート;ポリエーテルエーテルケトン;ポリアリールエーテルケトン;ポリフェニレンオキシド;およびこれらの混合物のうち少なくとも1種を含む。
【0029】
本発明のBNブレンドを含有するポリマーコンパウンドは、ミル、バンバリー、ブラベンダー、一軸または二軸スクリュー押出機、連続ミキサー、ニーダーなどの装置で溶融混合する方法など、当技術分野で公知の技術によって調製することができる。
【0030】
本発明のBNパウダーブレンドを含む高分子複合材料は、マイクロプロセッサーパッケージング、ベアリングハウジング、マイクロプロセッサーおよび集積回路チップ用ヒートシンクなどの熱交換器用途、プラスチックボールグリッドアレイパッケージ、クワッドフラットパック、およびその他の一般の表面実装集積回路パッケージなどを含む多くの用途、特に、純粋なアルミナの熱伝導率(約25W/m°K)に近い高い熱伝導率を必要とする用途に使用することができる。
【0031】
本発明を例証するために本明細書に実施例を提供するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実施例においてブレンドに使用したBN粉体は、Momentive Performance Material of Strongsville,OHから市販されている。
[実施例1〜5]
【0032】
実施例の第1セットにおいて、球状BN粉体PTX60とプレートレット形状BN粉体PT110のブレンドを作製した。この混合物をVブレンダー(4クォーターのシェル)でブレンドした。各実施例において、材料を15分間ブレンドし、熱伝導率および粘度を調べた。実施例で使用したBN粉体の量は、各実施例において(各実施例におけるブレンド比に応じて)116.2グラム〜1046グラムの範囲であった。
【0033】
BN混合物を、ポリマーマトリックスとしてのシリコーン油(Dow200−100cst粘度)のフィラーとして使用した。シリコーン流体中のフィラー濃度はBN35〜55重量%の範囲とした。シリコーン+BN混合物は、ラボスケールのFlackTek高速ミキサーを用いておよそ3500rpmで20秒間混合した。AR−2000TAレオメーターを使用して、シリコーン油(Dow200−100cst粘度)中で粘度を2回測定し、煎断速度1s−1で記録した。
【0034】
熱伝導率測定については、BNブレンドを、ポリマーマトリックスとしてSylgard184シリコーン樹脂と硬化剤Sylgard184を用いて作製したパッドに使用した。このSylgard流体を、最初に高速ミキサーで3500RPMで20秒間混合した後BNフィラーを添加し、その後3500RPMで20秒間混合した。この混合物を、3”×5”の長方形のモールドに入れ、125℃で30分間プレスして、厚さ0.5〜1.5mmのパッドを形成した。Mathis(商標)Hot Disk Thermal Constant Analyzerを用いて、バルク熱伝導率を測定した。
【0035】
粘度および熱伝導率の結果を表1に示す。尚、BN40容量%はBN60重量%と等価である。
表1
【0036】
【表1】

【0037】
実施例2に示したように、プレートレット形状のBN PT110を球状BNに添加すると粘度は著しく低下する。実施例4の粘度は90%も低下している。熱伝導率試験では異なる量のBNを用いた(パッドを作るのに使用した)が、プレートレットBNの添加量が増加しても熱伝導率はわずかしか低下しなかった。これらの結果から、BNブレンドでポリマー組成物の粘度を低下させる一方で優れた熱伝導率を保持するには、球状BN組成物に相当量の(安価な)プレートレット形状のBNを添加することが適切であることが分かった。
[実施例6〜8]
【0038】
再びプレートレット形状のBN PT110と球状BN PTX60を使用してブレンドを作製し、実施例セットAと同じポリマーマトリックスに様々な量を添加して分析した。結果は、表2〜表4に示し、図1と図2にプロットした。
表2.球状BN粉体PTX60、プレートレットBN粉体PT110およびブレンドの1s−1での粘度(ポアズ)
【0039】
【表2】

【0040】
表3.球状BN粉体PTX60、プレートレットBN粉体PT110およびブレンドの熱伝導率(W/mK)
【0041】
【表3】

【0042】
表2に示したように、50/50ブレンドの熱伝導率は粘度1100ポアズ(約48重量%)でおよそ3.7W/mKであることが推測できる。これは、球状のBN粉体PTX60を40重量%で使用する(このとき粘度は1100ポアズ、熱伝導率は2.6W/mKである)より43%高い熱伝導率である。
【0043】
表4は、プレートレットBN粉体PT110、球状BN粉体PTX60およびこれらから作製したブレンドの特性を示す。PTX60とPT110の元の粒径(D50)はほぼ同じであるが、50/50でブレンドした後の粒径は45ミクロンに低下する(実施例4参照)。これらのブレンドは実際のところ粘度は変わらないが優れた熱伝導率を示す。すなわちブレンド(50/50−実施例4)を使用した場合はPTX60(実施例1)に対して熱伝導率は20%改善している。
表4.PTX60、PT110、およびこれら2種のBNグレードのブレンドの特性。
【0044】
【表4】

[実施例9〜18]
【0045】
これらの実施例では、NX1、PT120、およびPT110などのプレートレットBNグレードを、別個に、または一緒に使用して、熱伝導率と粘度の性能に対する粒度分布の影響を検討した。これらの粉体は、ラボスケールのFlackTek高速ミキサーで、およそ3500rpmで20秒間ブレンドした。AR−2000TAレオメーターを使用して、シリコーン油(Dow200−100cst粘度)中で粘度を2回測定した。報告された粘度を、煎断速度l/sで記録した。
【0046】
これらのフィラーまたはフィラーの混合物をシリコーンに添加し、ラボスケールのFlackTek高速ミキサーを用いて、およそ3500rpmで20秒間混合した。シリコーン流体中のフィラー濃度は38重量%であった。Sylgard184シリコーン樹脂と硬化剤Sylgard184を用いてパッドを作製した。このSylgard流体を、高速ミキサーで3500RPMで20秒間混合した後フィラーを添加し、その後高速ミキサーを再び使用して3500RPMで20秒間混合した。シリコーン中のフィラー濃度は40容量%(59重量%)であった。この混合物を、3”×5”の長方形のモールドに入れ、125℃で30分間プレスして、厚さ0.5〜1.5mmのパッドを形成する。Mathis(商標)Hot Disk Thermal Constant Analyzerを用いてバルク熱伝導率を測定する。
【0047】
使用した各グレードの窒化ホウ素の特性を表5に示す。1つの重要な知見は、この実験では、0.7〜41ミクロンの範囲の異なる粒径(D50)を有するプレートレットBNだけを使用したということである。表6は、これらのグレードを用いた10例の様々な実施例(実施例9〜18)の性能(粘度および熱伝導率(TC))データを示す。例えば、単にPT110(実施例12)を用いるだけでも、あるいはPT120とPT110の組合せ(実施例16)を用いても、同じようなTCおよび粘度を得ることができる。この場合、前者の粒度分布ではD50は41であり、後者ではD50は26である(表7)。
表5 実験で使用した各種のプレートレットBNグレードの特性
【0048】
【表5】

【0049】
表6−プレートレットBNを用いた10例の様々な実施例の粘度および熱伝導率。
【0050】
【表6】

【0051】
表7−プレートレットBNを用いた10例の様々な実施例の粒度分布。
【0052】
【表7】

[実施例19〜28]
【0053】
これらの実施例は、球状BN粉体を使う効果を検討するために行った。これらの実施例において、PTX25、PTX60、および大きなPTXなどの球状BNグレードを、別個に、または一緒に使用して、熱伝導率と粘度の性能に対する粒度分布の影響を検討した。これらの粉体は、ラボスケールのFlackTek高速ミキサーで、およそ3500rpmで20秒間ブレンドした。AR−2000TAレオメーターを使用して、シリコーン油(Dow200−100cst粘度)中で粘度を2回測定した。報告された粘度は、煎断速度l/sで記録した。
【0054】
これらのフィラーまたはフィラーの混合物をシリコーンに添加し、ラボスケールのFlackTek高速ミキサーを用いて、およそ3500rpmで20秒間混合した。シリコーン流体中のフィラー濃度は38重量%であった。Sylgard184シリコーン樹脂と硬化剤Sylgard184を用いてパッドを作製した。このSylgard流体を、高速ミキサーで3500RPMで20秒間混合した後フィラーを添加し、その後高速ミキサーを再び使用して3500RPMで20秒間混合した。シリコーン中のフィラー濃度は40容量%(59重量%)であった。この混合物を、3”×5”の長方形のモールドに入れ、125℃で30分間プレスして、厚さ0.5〜1.5mmのパッドを形成する。Mathis(商標)Hot Disk Thermal Constant Analyzerを用いてバルク熱伝導率を測定する。レーザーフラッシュ、Netzsch LFA447を用いて面貫通導電率を測定した。
【0055】
使用した各種の窒化ホウ素グレードの特性を表8に示す。1つの重要な知見は、この実験では、18〜200ミクロンの範囲の異なる粒径(D50)を有する球状BNだけを使用したということである。表9は、これらのグレードを用いた10例の様々な実施例(実施例16〜25)の性能(粘度および熱伝導率)データを示す。
【0056】
例えば、単に大きなPTX(実施例22)を用いただけでも、あるいはPTX25(17%)、PTX60(17%)および大きなPTX(66%)の組合せ(実施例20)を用いても、同じようなTCおよび粘度を得ることができる。この場合、前者の粒度分布ではD50は180であり、後者ではD50は26である(表10)。異なる粒度分布で同等の性能が得られる別の例としては、実施例21、23および24が挙げられる。PTX60の性能は、PTX25を50%と大きなPTXを50%混合したもの、またはPTX60を66%、PTX25を17%、および大きなPTXを17%混合したものと同等である。さらに、3種の異なる大きさの球体をそれぞれ1/3の濃度で含有する混合物(実施例28)は、実施例21、23および24と類似した特性になる。
表8.実験で使用した各種の球状BNグレードの特性
【0057】
【表8】

【0058】
表9−球状BNを用いた10例の様々な実施例の粘度および熱伝導率
【0059】
【表9】

【0060】
表10−球状BNを用いた10例の様々な実施例の粒度分布
【0061】
【表10】

【0062】
上記の実施例において明瞭に示されたデータは、低い粘度で優れた熱伝導率を達成するために、プレートレットと凝集体(PT110とPTX60)または様々な大きさの球状凝集体(PTX25、PTX60および大きなPTX)などの様々な形の窒化ホウ素粉体をブレンドすることの利点を実証するものである。これらの実施例は球状の窒化ホウ素凝集体を使用してこの概念を実証しているが、当技術分野で以前から公知のものものなどの不規則な形状の窒化ホウ素を使用しても同様の利点が実現されるであろう。例えば、Shafferの米国特許第5,898,009号を参照されたい。
【0063】
本明細書では、実施例を使用して、最良のモードを含めた本発明を開示し、かつ、すべての当業者が本発明から製造することができ、本発明を使用できるようにしている。本発明の特許の範囲は、特許請求の範囲によって定義されており、当業者が思いつく他の実施例を含んでもよい。他のこうした実施例は、それらが特許請求の範囲の文字言語から逸脱しない構造要素を有する場合、あるいは、それらが特許請求の範囲の文字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含んでいる場合は、特許請求の範囲の範囲内にあることを意図するものである。
【0064】
本明細書で参照された引用はすべて、参照により本明細書に明確に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料を含む窒化ホウ素組成物。
【請求項2】
少なくとも2種の窒化ホウ素粉体材料が、プレートレット窒化ホウ素粉体材料、窒化ホウ素粉体材料凝集体、部分結晶性窒化ホウ素粉体材料、非晶質窒化ホウ素粉体材料、乱層構造窒化ホウ素粉体材料、およびナノ窒化ホウ素粉体材料からなる群から選択される、請求項1に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項3】
前記窒化ホウ素凝集体が球状および/または不規則な形状である、請求項2に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項4】
前記凝集体がプレートレット窒化ホウ素を含む、請求項3に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項5】
前記窒化ホウ素粉体材料が、プレートレット窒化ホウ素粉体材料および窒化ホウ素粉体材料凝集体である、請求項1に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項6】
前記2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料が、形が球状であり大きさが異なる窒化ホウ素凝集体である、請求項3に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項7】
前記窒化ホウ素材料が互いに異なる粒度分布を有する、請求項1に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項8】
前記窒化ホウ素粉体材料の少なくとも1種が、少なくとも5ミクロンの平均粒径を有する、請求項1に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項9】
前記プレートレットが少なくとも約1ミクロンの平均直径を有する、請求項2に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項10】
前記凝集体が5〜500ミクロンの平均粒径を有する、請求項2に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項11】
前記窒化ホウ素粉体の少なくとも1種が、5〜500ミクロンの平均粒径を有する球状凝集体である、請求項3に記載の窒化ホウ素組成物。
【請求項12】
少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料を含有する窒化ホウ素フィラーを含むポリマー組成物。
【請求項13】
前記ポリマーが、ポリエステル、溶融加工性ポリマー、フェノール系ポリマー、シリコーンポリマー、アクリルポリマー、ワックスポリマー、熱可塑性ポリマー、低分子量液状ポリマー、液晶ポリマー、およびエポキシポリマーからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記ポリマーが、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフタルアミド、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、およびポリフェニレンオキシドからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
前記少なくとも2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料が、プレートレット窒化ホウ素粉体材料、窒化ホウ素粉体材料凝集体、部分結晶性窒化ホウ素粉体材料、非晶質窒化ホウ素粉体材料、乱層構造窒化ホウ素粉体材料、およびナノ窒化ホウ素粉体材料からなる群から選択される、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項16】
前記窒化ホウ素凝集体が球状および/または不規則な形状である、請求項15に記載のポリマー組成物。
【請求項17】
前記凝集体がプレートレット窒化ホウ素を含む、請求項16に記載のポリマー組成物。
【請求項18】
前記窒化ホウ素材料が互いに異なる粒度分布を有する、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記窒化ホウ素粉体材料の少なくとも1種が少なくとも5ミクロンの平均粒径を有する、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
前記プレートレットが少なくとも約1ミクロンの平均直径を有する、請求項15に記載のポリマー組成物。
【請求項21】
前記凝集体が5〜500ミクロンの平均粒径を有する、請求項15に記載のポリマー組成物。
【請求項22】
前記窒化ホウ素粉体材料が、プレートレット窒化ホウ素粉体材料および窒化ホウ素粉体材料凝集体である、請求項12に記載のポリマー組成物。
【請求項23】
前記2種の異なるタイプの窒化ホウ素粉体材料が、形が球状であり大きさが異なる窒化ホウ素凝集体である、請求項l6に記載のポリマー組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−505729(P2010−505729A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531468(P2009−531468)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/021419
【国際公開番号】WO2008/042446
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(506390498)モーメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・インク (85)
【Fターム(参考)】