説明

混合装置、グラデーション混合物及び混合物製造方法

【課題】混合物において全体的にも局所的にも混合精度を向上させること。
【解決手段】 第1被混合物と第2被混合物とを混合するための混合装置であって、第1被混合物を投入する第1投入口と、該第1投入口から投入された第1被混合物が分割されて排出される少なくとも2つの第1排出口と、を備えた第1分割流路と、第2被混合物を投入する第2投入口と、該第2投入口から投入された第2被混合物が分割されて排出される少なくとも2つの第2排出口と、を備えた第2分割流路と、第1排出口の1つ及び第2排出口の1つに連結され、第1排出口から排出された第1被混合物と第2排出口から排出された第2被混合物とを混合させて部分混合物を生成する少なくとも2つの混合流路と、混合流路から排出された混合物を凝集する凝集流路と、凝集流路で凝集された混合物を収容部まで搬送する搬送路と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体や液体等を混合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、粉粒体や液体等の流体を混合する技術として様々なものが知られている。例えば、粉粒体を混合する場合に一般的に用いられる混合機としては、V型ベッセルやボールミルと呼ばれるものがある。或いは、液体を混合する場合には、容器内に貯留した液体内でプロペラを回転させるミキサーが知られている。
【0003】
しかしながら、この種の混合機は、大量の流体を大まかに混ぜるのには適しているものの、局所的な混合比率の偏りを回避することができない。
【0004】
一方、例えば、特許文献1には、生産ロット、取り扱いロットごとの特性のばらつきを無くすため、一旦、各ロットを数等分したのち、それらの一つずつを寄せ集めて少量ずつ混合していく多ロット部分混合方式について記載がある。そして、特許文献1の図1には、各ロットを数等分するための分割縮分器1、2、2'について開示がある。
【0005】
このように、流路を繰り返し2分割する流路分割機構については、特許文献2にも開示がある。特許文献2では、複数種類の流体を小さな流れに分けてから混合させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭59-160521号公報(2頁右上欄2〜4行目、図1)
【特許文献2】米国公開公報 US2003/0039169A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した第1特許文献では、粉体の混合自体は従来型の混合機で行なっており、排出された1ロットの粉体が、混合機内で均一に混ざっていることは何ら保証されていない。そもそも、特許文献1の表1乃至表7でその効果について説明しているように、特許文献1は、異なるタイミングで各ロットを投入して積層させたのちに混合機に投入することによって、設備の小規模化、ロット間のバラツキの低下を図るものであるため、1ロット内で粉体を均一に混合しようとするものではない。
【0008】
また、特許文献2でも、混合自体は、1箇所の大きな混合室(cylindrical mixing chamber 5)で行なっているため、やはり従来と同様に局所的な混合精度を担保できるものではなかった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、全体的にも局所的にも混合精度を向上させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る装置は、
第1被混合物と第2被混合物とを混合するための混合装置であって、
前記第1被混合物を投入する第1投入口と、該第1投入口から投入された前記第1被混合物が分割されて排出される少なくとも2つの第1排出口と、を備えた第1分割流路と、
前記第2被混合物を投入する第2投入口と、該第2投入口から投入された前記第2被混合物が分割されて排出される少なくとも2つの第2排出口と、を備えた第2分割流路と、
前記第1排出口の1つ及び前記第2排出口の1つに連結され、前記第1排出口から排出された前記第1被混合物と前記第2排出口から排出された前記第2被混合物とを混合させて部分混合物を生成する少なくとも2つの混合流路と、
前記混合流路から排出された混合物を凝集する凝集流路と、
前記凝集流路で凝集された混合物を収容部まで搬送する搬送路と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
上述の混合装置に対して投入される前記第1被混合物と前記第2被混合物の割合を徐々に変化させることにより生成されたことを特徴とするグラデーション混合物。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
第1被混合物と第2被混合物とを混合するための混合物製造方法であって、
投入した前記第1被混合物を第1分割流路によって分割して排出する第1分割工程と、
投入した前記第2被混合物を第2分割流路によって分割して排出する第2分割工程と、
前記第1分割流路で分割された前記第1被混合物と前記第2分割流路で分割された前記第2被混合物とを少なくとも2つの混合流路内で混合させつつ流動させて部分混合物を生成する混合工程と、
前記混合流路から排出された前記部分混合物を凝集流路内で凝集させる凝集工程と、
凝集した前記部分混合物を搬送して一箇所に収容する収容工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、混合物において全体的にも局所的にも混合精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態としての混合装置の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態としての混合装置に含まれる分割ブロックの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態としての混合装置に含まれる混合流路の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態としての混合装置に含まれる混合流路の他の構成を示す図である。
【図5】本発明の第1実施形態としての混合装置に含まれる混合流路の様々な構成を示す図である。
【図6】本発明の第1実施形態としての混合装置に含まれる凝集流路の構成を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態としての混合装置の全体構成を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態としての混合装置の全体構成を示す図である。
【図9】本発明の第1乃至第3実施形態としての混合装置の変形例を説明する図である。
【図10】本発明の第1乃至第3実施形態としての混合装置の変形例を説明する図である。
【図11】本発明の第1乃至第3実施形態としての混合装置を用いたグラデーション混合物の製造方法を説明する図である。
【図12】本発明の第1乃至第3実施形態としての混合装置を用いたグラデーション混合物の製造方法を説明する図である。
【図13】本発明の第1乃至第3実施形態としての混合装置を用いたグラデーション混合物の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
(概要)
以下に説明する本発明の実施形態は、第1被混合物と第2被混合物とを混合するための混合装置に係るものである。この混合装置は、少なくとも、第1、第2分割流路、少なくとも2つの混合流路、及び凝集流路を有する。これらのうち、第1分割流路は、第1被混合物を投入する第1投入口と、第1投入口から投入された第1被混合物が分割されて排出される少なくとも2つの第1排出口と、を備える。また、第2分割流路は、第2被混合物を投入する第2投入口と、第2投入口から投入された第2被混合物が分割されて排出される少なくとも2つの第2排出口と、を備える。更に、混合流路は、第1排出口の1つ及び第2排出口の1つに連結され、第1排出口から排出された第1被混合物と第2排出口から排出された第2被混合物とを混合させ混合物を生成する。一方、凝集流路は、混合流路から排出された混合物を凝集する。
つまり、本実施形態に係る混合装置は、分割流路、混合流路、凝集流路の3段階の流路で構成され、流路分割によって被混合物を少量化し、少量化された2種の被混合物同士を混合流路内で混合し、凝集させる。
【0017】
このように、分割流路を用いて被混合物を少量化し、少量化された被混合物同士を混合して混合物を生成し、生成した混合物を凝集することにより、局所的な少量の混合物における混合比を担保しつつ、混合物を得ることができる。つまり、全体的に見ても第1被混合物と第2被混合物とのモザイク模様になっており、かつ、どの一部を拡大してみても、第1被混合物と第2被混合物とのモザイク模様になっているような混合精度の高い混合物を得ることができる。特に、混合物を搬送又は収容する前に凝集流路内で凝集させるため収容後又は搬送中の偏析分離を防止することができる。
【0018】
(第1実施形態)
[全体構成]
図1は、本発明の第1実施形態としての混合装置1の概略構成を示す図である。混合装置1は、被混合物A用の分割流路としての分割ボード1001と、被混合物B用の分割流路としての分割ボード1002と、複数の混合流路を含む混合ブロック1003と、複数の凝集流路を含む凝集ブロック1004と、搬送路としてのベルトコンベア1005と、収容部としての容器1006を含む。
【0019】
分割ボード1001、1002には、被混合物を分割して少量化する分割流路が施されている。ここでは分割ボード1001、1002は、それぞれ、3段階に2分割して計8分割する。分割ボード1001、1002による分割数は同数である。分割ボード1001、1002はそれぞれ角度を変化させることが可能である。例えば比重の小さい被混合物に対しては、図中縦方向に分割ボード1001、1002を立てて、比重の大きい被混合物に対しては、図中横方向に分割ボード1001、1002を寝かせることが望ましい。これは、比重の小さい被混合物は、空気抵抗を受けて分割流路内で分散しやすいのに対して、比重の大きい被混合物は、分割流路内で遍在しやすいからである。分割ボード1001、1002を寝かせれば、被混合物が自重によって分割流路の壁面に接触したりぶつかったりする回数又は確率があがるため、比重の大きい被混合物が、分割流路内で偏って流れることを防止できる。一方、比重の小さな被混合物の場合、分割ボード1001、1002を寝かせると、流速が極端に小さくなる恐れがあるため、分割ボード1001、1002を立てることが好適である。つまり、分割ボード1001と分割ボード1002とは、左右対称配置でなくともよい。なお、図1では示されていないが、それぞれの分割ボード1001、1002には、蓋が設けられていても良い。
【0020】
分割ボード1001、1002によって分割された被混合物は、次に、混合ブロック1003に投入される。混合ブロック1003では、分割ボード1001の排出口から排出された被混合物Aと分割ボード1002の排出口から排出された被混合物Bとを混合し、混合物を生成する。これらの被混合物は少量化されているため、被混合物Aと第2被混合物Bとを流れの中で少量ずつ混合することができ局所的な混合比を担保できる。混合ブロック1003は、分割ボード1001、1002の分割数と同数の投入口を有している。分割ボード1001の1つの排出口と分割ボード1002の1つの排出口とが1つの混合流路に接続され、各混合流路内で部分混合物が生成される。
【0021】
生成された部分混合物は、凝集ブロック1004に送られ、各凝集流路内で凝集される。凝集ブロック1004は、混合ブロック1003の各排出口から排出された、混合されたばかりの部分混合物に対して凝集処理を加え、部分混合物の粒子が容易に分離しないように塊を生成するものである。凝集とは、被混合物が粉粒体の場合、粒子同士を付着させて塊を生成することを示し、被混合物が流体の場合には、ゲル化させる等の方法で流体内の分離を防止させることを示す。凝集ブロック1004から排出された部分混合物は、ベルトコンベア1005上に載置される。ベルトコンベア1005は、不図示のモータによって矢印方向に駆動しているため、載置された部分混合物は収容部1006に送られ収容される。この時、凝集流路での凝集が搬送中の偏析を防止する。
【0022】
[分割流路の構成]
図2は分割ボード1001の構成を示す斜視図である。分割ボード1002の構成は、分割ボード1001と同様であるためここでは説明を省略する。分割ボード1001は、被混合物Aを投入する1つの投入口1001aと、流路を構成する溝とが形成されている。溝は逆Y字形状であり、1つの上流流路が2つの下流流路に接続される。これにより、流れてきた被混合物は、分岐にぶつかって、繰り返し2分割される。そして、流路の最下流側に、投入口1001aから投入された被混合物Aが分割されて排出される少なくとも2つの排出口1001bが設けられている。上述したように、本実施形態では、被混合物の2分割を3回繰り返すことにより計8分割するため、排出口1001bは8個設けられる。
【0023】
分割流路1001の各排出口1001bに対して流量計(例えば本発明者が提案した特開2004−138574号公報に開示の衝撃式流量計など)を配して、それぞれの排出量が望ましい量になるようにリアルタイムで角度調整を行なう角度調整機構を設けてもよい。また、分割流路では流動性が高いほうがよく、塊にならないように高温乾燥環境を実現することが望ましい。
【0024】
分割流路1001は、3段階の2分割によって被混合物を8分割する形状となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、4段階以上の2分割で、2のn乗分割してもよい。例えば、5段階の分岐構造にすれば、32分割を可能とする。
【0025】
分割流路は、1つの板に対して切削によって形成した溝と蓋によって構成されてもよいし、1つの板に対して複数の仕切板を取り付けることによって流路を形成する構成でも良い。更には、パイプのような流路管をつなぎ合わせて形成された流路でも良い。
【0026】
更に、壁面に粉粒体が付着しにくくするため、分割流路において垂直往復振動又は水平往復振動又は水平円振動を加えることも好適である。真空環境化において、凝集した粉粒体をバラバラにしてうまく分散させるためにも振動は有効である。更には、流体の壁面部材を弾性体で作って振動させればより効果的に壁面に付着した粉粒体等を落とすことができる。なお、流路内壁への粉粒体付着を防止するためには、流路表面を摩擦係数の小さい部材でコーティングすることも重要である。そのようなコーティングにより、流路内壁の耐摩耗性を向上させることもできる。例えば、分岐箇所のくさび状部分の上側のみ、摩擦係数を減らすコーティングすることも好適である。その部分が最も被混合物による衝突を受ける部分だからである。
【0027】
[混合流路の構成]
混合ブロック1003の詳細構成について、図3に示す。混合ブロック1003は、分割流路における分割数に応じた仕切板1003a〜gを備えた管状部材である。被混合物A、Bが1つの開口部に飛び込む構成でも良いし、別体の仕切板1101を挿入することによって、混合ブロック内で確実に被混合物A、Bが混ざる構成にしてもよい。仕切板1101は、隣り合う分割流路から排出された被混合物が混合流路に投入される前に混ざることを防止する機能も有する。図4に、図3とは異なる流路形状を有する混合ブロック1401を示す。この混合ブロック1401は、図3に示したものに比べて排出口が小さく形成されている。そのため、被混合物同士がぶつかり合う確率が高く、混合効果が高くなる。この混合ブロック1401に対して、図3に示す仕切り板1101を組み合わせても良い。
【0028】
被混合物同士の混合効果を促進させる様々な機構について、図5に示す。図5(a)は、混合流路内で、被混合物A、Bが、角度を付けてぶつかるように構成したものである。基本的に混合を促進するには、被混合物同士の流路同士(粉粒体であれば飛翔経路)が交差した方がよい。図5(b)、(c)は、混合物A、Bがぶつかる板や凸部を壁面から突出させて乱流を起こし、混合を促進させるものである。図5(d)は、混合流路全体を流路方向又は流路に垂直な方向に振動させて、流路内の被混合物が流路内で動き、結果として良く混ざるように構成したものである。
【0029】
図5(e)は、混合流路内にエアーを送り込むことにより、乱流を起こし、混合を促進させるものである。ここで送り込む気体は、空気に限らず、被混合物の比重や性質に合わせて、窒素ガスやヘリウムガスなどを用いても良い。例えば、被混合物の比重が軽い場合には、やはり比重の軽いヘリウムガスを流入させて、流速を確保することが望ましい。或いは、空気と反応する粉粒体、例えば酸化しやすい金属などの場合にはアルゴンなどの不活性ガスを用いてもよい。
【0030】
図5(f)〜(h)は、磁界又は電界を生成して、粉粒体などの被混合物に力を加えるものである。例えば、図5(f)では、混合流路を挟む位置に配置された2つの電磁石に対し、交互に通電することにより、磁性体をなす被混合物を図中左右方向に動かすことができ、混合を促進させることができる。また同様に、図5(g)のように混合流路を挟む位置に配置された2つの電極に対して、交互に通電することにより、微細な被混合物を図中左右方向に電気泳動させることができ、混合を促進させることができる。さらには、図5(h)に示すように、電極又は電磁石を流路に沿って複数配置し、位相を変えて順次通電させることにより、流路中の被混合物を加速又は減速させることもでき、結果として、混合を促進させることができる。
【0031】
[凝集流路の構成]
具体的な凝集ブロック1004内の凝集流路の様々な構成例を図6に示す。図6(a)の凝集流路では、混合物同士を、偏析が起こらないように凝集すべく、水やエタノール等の液体或いは接着剤を噴霧する。図6(b)の凝集流路では、静電気力やファンデルワールス力による凝集を助けるため、減圧して粒間の気体を減らす。これは特に被混合物が粒の小さな粉粒体であって、比重も小さい場合に有効である。図6(c)は帯電によって混合物同士を凝集させる電極及び帯電装置を用いる。図6(d)、(e)は、溶融によって混合物同士の凝集を促進すべく、加熱装置を用いて直接加熱又は誘導加熱を行なう。図6(f)の凝集流路では、凝固によって混合物同士の凝集を促進すべく、冷却装置を用いる。
【0032】
[本実施形態の効果]
以上のように、本実施形態に係る混合装置は、分割流路を用いて被混合物を少量化し、少量化された被混合物同士を混合して混合物を生成し、生成した混合物を凝集する。これにより、少量の混合物における局所的な混合比を担保しつつ、全体としても混合精度の高い混合物を得ることができる。また、本混合装置によれば、量の異なる被混合物同士、形の異なる被混合物同士、大きさの異なる被混合物同士、或いは重さの異なる被混合物同士を高い混合精度で混合することができる。特に、本実施形態では各流路を平面的に構成したので、省スペースで単純な構成によって混合精度の高い混合装置を提供することができる。更に、混合後、搬送の前に、凝集流路において集中的に凝集を行なうことにより、偏析を防止し、最終的な混合の精度を一層向上させることができる。なお、ここでの凝集処理として、いわゆる固結処理を利用しても良い。
【0033】
なお、本実施形態では、搬送路としてベルトコンベアを採用した混合装置について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。他の形態の搬送路を凝集流路の下流に配置しても良いし、或いは凝集流路から直接収容部に混合物を収容する構成でもよい。その場合でも、少量ずつ混合して生成した部分混合物を凝集させるので、搬送中又は収容後の偏析を防止し、混合精度を向上させることができる。
【0034】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態としての混合装置2の概略構成を示す図である。混合装置2は、第1実施形態の混合装置1と比較した場合、搬送路として、ベルトコンベア1005に変えて、傾斜を付けて設けられた搬送流路2005を含むものである。
この方法で部分混合物の搬送を行なえば、搬送にモータなどの駆動源を必要としないため、エネルギー消費や振動による悪影響を抑えることができる。
【0035】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態としての混合装置3の概略構成を示す断面図である。本実施形態に係る混合装置3は、第1、第2実施形態の混合装置1、2に対し、被混合物C、D用の分割流路1801、1802を追加して、被混合物A、B、C、Dを混合させるものである。混合装置の他の構成は同じであるため、同じ構成には同じ符号を付して説明を省略する。混合装置3では、混合流路1003の1つの投入口に対して、4つの分割流路の排出口から同時に被混合物が流れ込む。
【0036】
本実施形態によれば、簡単かつ省スペースな構成で4種類の被混合物を精度良く混合させることができる。
【0037】
(その他の実施形態)
上述の第1乃至第3実施形態に示した混合装置に対して、以下のような変形例を考えることができる。
【0038】
[被混合物]
上記第1乃至第3実施形態では、混合対象となる物体を単に「被混合物」と称したが、実際には、被混合物には粉体、液体及び気体が含まれる。このうち、粉体としては、工業品、食品、医化学品が含まれる。工業品としての粉体には、カーボン、砂、セメント、硝子ビーズ、セラミックス、研磨剤、合成樹脂等の粉が含まれる。また、食品としての粉体には、小麦粉、コーヒー、乳製品、ビール酵母、香辛料、塩、砂糖、デンプン、その他調味料が含まれる。更に、医化学品としての粉体には、顆粒、化粧品、粉薬、飼料、洗剤、粉体塗料、DNA、タンパク質などが含まれる。また液体や気体としても同様に、工業品、食品、医化学品が考えられる。例えば、上記の粉体が溶融した液体が含まれる。
【0039】
[流路]
上記第1乃至第3実施形態では、分割流路、混合流路、凝集流路の生成方法や形状について詳しくは言及していないが、流路は、NCエンドミルで切削することによって成形した溝であっても、射出成形で製造した溝であってもよい。或いは板状部材に流路壁を接着することによって流路を形成しても良いし、パイプをつなげることで流路を形成してもよい。また、流路断面の形状としては、図9(a)に示すような角を有する溝の他に、図9(b)のような角にアールを有する溝であってもよいし、更に、図9(c)のように底面が円弧状の溝であっても良い。図9(b)、(c)のようにアールを有する溝であれば、流路の洗浄を容易に行なうことができるという効果がある。
【0040】
分割流路において、投入口からの距離によらず、流路の総断面積を一定にすることは好適である。これにより、単位面積当たりに流れる被混合物の密度(流体圧力)を入口から出口まで一定にすることができ、流路中の位置に拘わらず、被混合物の挙動を一定にすることができる。
【0041】
一方、被混合物が粉粒体であって、その粒子が直進運動を行なうと想定できる場合には、壁に当たる粒子の数を一定にするため、混合流路の流路長を断面の径に比例した流路長とすることが望ましい。つまり、混合流路では断面積が大きければ大きいほど、混合に長い流路とすることが好適である。壁に当たる粒子の個数は断面積に反比例するからである。粒子同士のぶつかり合いが多い方が良いため、2つ分割流路が混合流路の入口で交差する角度はある程度大きいほうがよい。特に被混合物の比重が大きい場合には、この交差角は大きい方が良い。逆に凝集流路では粒子同士のぶつかり合いは少ない方が良く、そのため、凝集の過程で流路同士が交わる角度は小さい方が良い。
【0042】
一方、分割流路において、分岐した各ルートでの流路長はそれぞれ同じである方がよい。つまり、どの流路を経過するルートでも被混合物が流路内の壁面に接する長さが同じである方がよい。そうすれば、例え被混合物が粘性流体であっても、最初に投入して途中で分かれた被混合物は、理論上、同じタイミングで出口に達することになり、混合精度を制御しやすくなる。
【0043】
第1乃至第3実施形態に記載の分割流路について、図10に示すように、分割流路のそれぞれの分岐箇所に回動可能な分割量調整部2301〜2307を設けてもよい。分割量調整部2301〜2307は、角部を有する板状部材が軸を中心に図中左右に回動することによって、分岐箇所での分割割合を調整する。基本的には、分割後の被混合物が等しい流量になるように調整を行なうが、意図的に分割割合を変えても良い。分割流路の各排出口に流量センサを設置して被混合物の流量を測定することにより、それぞれの分割量調整部の回動方向及び角度を決定することができる。
【0044】
例えば、図10のように各排出口からの排出量をD1〜D8とすると、まず、D1=D2、D3=D4、D5=D6、D7=D8となるように分割量調整部2304〜2307のそれぞれの角度を決定する。次に、D1+D2=D3+D4、D5+D6=D7+D8となるように、分割量調整部2302、2303の角度を決定する。更に、D1+D2+D3+D4=D5+D6+D7+D8となるように、分割量調整部2301の角度を決定する。このように下流側の分割量調整部から徐々に上流側の分割量調整部へと調整を繰り返すことにより、設置時、或いはリアルタイムに、全ての排出口からの排出量が等しくなるように制御することができる。
【0045】
[特殊な混合物の製造方法]
一方、図11に示すように、各排出口からの排出量D1〜D8の比が、1:2:3:4:5:6:7:8となるように分割量調整部を制御することもできる。これにはまず、排出量D1:D2=1:2、D3:D4=3:4、D5:D6=5:6、D7:D8=7:8となるように、分割量調整部2304、2305、2306、2307を調整する。次に、排出量D1+D2:D3+D4=3:7、D5+D6:D7+D8=11:15となるように、分割量調整部2302、2303を調整する。最後に、排出量D1+D2+D3+D4:D5+D6+D7+D8=10:26となるように、分割量調整部2301を調整する。
【0046】
この考え方を応用すれば、分割流路の各排出口から排出される被混合物の割合を自由に変えることができる。そうすると、2つの分割流路から排出される被混合物AとBの混合比率を、混合流路ごとに変えることが可能となる。例えば、被混合物A:Bが1:8から8:1まで変化するような混合流路とすることができる。そして混合比率の異なる混合物を順次搬送して収容すれば、図12に示すようなグラデーションを有した混合物2701を得ることができる。
【0047】
図12のグラデーション混合物2701は、第1乃至第3実施形態の何れかに記載の混合装置に対して、投入する被混合物の比率を時間的に変化させることによっても製造可能である。被混合物A100%被混合物B0%の状態から、被混合物A0%被混合物B100%の状態まで徐々に被混合物の投入量を変えれば、混合比率が連続的に変化するグラデーション混合柱2701を生成することができる。
【0048】
さらには、図13に示すように、混合装置から排出された混合物から柱状部材を生成するための生成装置2801においては、その壁面から吸引する構成になっているため、先に排出された混合物が壁面に張り付き、徐々にその内部を満たすように混合物が配置される。図11、図12に示した構成によって、混合装置から排出される混合物の混合比率を時間的に変化させ、グラデーション混合物をこの生成装置2801に送り込めば、中心から外周に向けて被混合物の混合比率が徐々に変化するグラデーション混合柱2802を生成することができる。
【0049】
このようにグラデーション混合物の生成により、異種材料の結合を行なうことが可能となる。例えば、金属とセラミックとの結合は非常に困難とされているが、上述のように、金属粉とセラミック粉とを混合してグラデーション混合柱を生成すれば、1本の棒状部材であって、一端から他端へ連続的に材質が変化する物体を作ることができる。
【0050】
[雰囲気]
上記第1乃至第3実施形態では、混合装置の雰囲気については詳しくは言及していないが、上述の混合装置は真空ポンプにより排気した減圧又は真空環境下で混合処理を行なうこともできる。又は、ボンベから所望のガスを導入してガス雰囲気下に混合装置全体を配置し、混合処理を行なわせてもよい。ここでガスとしては窒素、アルゴン、水蒸気など、対象に応じて選択すればよい。
【0051】
被混合物の比重が非常に小さい場合、空気抵抗を過大に受けてしまって自重での流動速度が非常に小さい場合がある。この場合、装置全体を真空又は減圧環境下にして空気抵抗を抑えることが望ましい。真空又は減圧下では粒子が塊になるという現象も起こりえるが、第1乃至第3実施形態の分割流路であれば、分岐箇所に塊になった粒子群を衝突させて強制的に分割させることにより、減圧環境でも被混合物の少量化を図ることができる。
【0052】
[リニアモータ機構の追加]
図5(h)に示したような、流路中の混合物を加速又は減速させるリニアモータ機構は、混合流路のみならず分割流路や搬送路に対しても有効である。流路の片側又は両側に、電極又は電磁石を所定間隔に複数並べ、それぞれの電極又は電磁石を、位相をずらして駆動させることにより移動電界又は移動磁界を生成して、電気泳動又は磁力によって被混合物を加速又は減速させる。
【0053】
例えば120度ずつ位相がずれた三相交流を利用することでもこの機能を実現することができる。そのような構成により、流体抵抗を受けやすく、流れにくい被混合物又は混合物を所望の速度で流すことが可能となり、被混合物同士の高精度な混合を短時間に実現することが可能になる。このようなリニアモータの構成は、分割流路、混合流路、凝集流路のそれぞれに追加してもよく、例えば、分割流路で加速し、混合流路で減速し、更に、凝集流路で加速すれば、混合精度を保ちつつ、全体的な混合処理を高速化することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被混合物と第2被混合物とを混合するための混合装置であって、
前記第1被混合物を投入する第1投入口と、該第1投入口から投入された前記第1被混合物が分割されて排出される少なくとも2つの第1排出口と、を備えた第1分割流路と、
前記第2被混合物を投入する第2投入口と、該第2投入口から投入された前記第2被混合物が分割されて排出される少なくとも2つの第2排出口と、を備えた第2分割流路と、
前記第1排出口の1つ及び前記第2排出口の1つに連結され、前記第1排出口から排出された前記第1被混合物と前記第2排出口から排出された前記第2被混合物とを混合させて部分混合物を生成する少なくとも2つの混合流路と、
前記混合流路から排出された混合物を凝集する凝集流路と、
を備えたことを特徴とする混合装置。
【請求項2】
前記凝集流路で凝集された混合物を収容部まで搬送する搬送路をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
前記第1分割流路は、前記第1投入口から前記第1排出口まで2分割を複数回繰り返すことによって前記第1被混合物を分割する多段階分割流路であり、
前記第2分割流路は、前記第2投入口から前記第2排出口まで2分割を複数回繰り返すことによって前記第2被混合物を分割する多段階分割流路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の混合装置。
【請求項4】
前記第1、第2分割流路は、1つの第1投入口と1つの第2投入口から投入された前記第1、第2被混合物をそれぞれN等分して、N個の第1排出口及びN個の第2排出口から排出する流路であり、
前記混合流路はN個設けられ、1対の前記第1排出口及び前記第2排出口が1つの混合流路に接続され、
前記凝集流路もN個設けられ、それぞれの前記凝集流路は、それぞれの前記混合流路から排出された混合物を凝集することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の混合装置。
【請求項5】
前記凝集流路内に水、アルコール、又は接着剤を噴霧する方法、前記凝集流路内を減圧して粒間の気体を減らす方法、前記凝集流路内の被混合物を帯電する方法、前記凝集流路内を直接加熱又は誘導加熱する方法、及び、前記凝集流路内を冷却する方法の少なくとも何れか1つの方法によって前記混合物の凝集を促進させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の混合装置。
【請求項6】
前記混合流路内に、振動を加える方法、気体を噴射する方法、及び、磁界又は電界を付与する方法の少なくとも何れ1つの方法によって、前記混合流路内の前記第1、第2被混合物の混合を促進させることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の混合装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の混合装置に対して投入される前記第1被混合物と前記第2被混合物の割合を徐々に変化させることにより生成されたことを特徴とするグラデーション混合物。
【請求項8】
第1被混合物と第2被混合物とを混合するための混合物製造方法であって、
投入した前記第1被混合物を第1分割流路によって分割して排出する第1分割工程と、
投入した前記第2被混合物を第2分割流路によって分割して排出する第2分割工程と、
前記第1分割流路で分割された前記第1被混合物と前記第2分割流路で分割された前記第2被混合物とを少なくとも2つの混合流路内で混合させつつ流動させて部分混合物を生成する混合工程と、
前記混合流路から排出された前記部分混合物を凝集流路内で凝集させる凝集工程と、
凝集した前記部分混合物を収容する収容工程と、
を含むことを特徴とする混合物製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−206677(P2011−206677A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76866(P2010−76866)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(591037719)
【Fターム(参考)】