説明

混合装置

【課題】 容器内を加圧した状態で、容器内の被混合物を攪拌混合する安全性に優れた混合装置を提供する。
【解決手段】 容器2のジャケット部29内に飽和水蒸気を給送することにより、容器2内を加圧し、加圧状態の容器2を回転及び揺動させて、容器2内の被混合物を攪拌混合する。容器2の上部には、容器2を上方から下方へ押え付ける押え車輪51を配置して、容器2の前後面、両側面、上面を覆う囲繞体3の存在とともに、容器2が揺動台6上から脱落することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の粉体原料又は粒体原料等を加圧状態で攪拌・混合する混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数種類の粉体原料や粒体原料等を攪拌・混合する場合、これら原料を円筒状の混合容器内に投入し、該混合容器を回転・揺動させながら攪拌・混合する混合装置が知られている。
【0003】
近年、前記混合装置の用途拡大に伴い混合容器内を加圧した状態で混合したいとの要望がある。ここで容器内を加圧する場合、容器としては労働安全衛生法で第一種圧力容器を用いなければならないと規定されている(労働安全衛生法施行令第1条第5号)。
【0004】
然るに、従来、第一種圧力容器は、使用時の安全性を確保するため、容器自体を固定した状態で使用するのが通常であった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3005737号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
つまり、第一種圧力容器は、これを回転又は揺動させて、容器内の原料を攪拌・混合する用途には用いられてこなかった。
【0007】
本発明は、加圧した容器(第一種圧力容器)内に粉体又は粒体原料を投入し、当該容器を回転及び揺動させて、これら原料を攪拌混合することのできる混合装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、容器を揺動及び回転させながら容器内の被混合物を攪拌混合する混合装置において、当該容器内を加圧する手段を備え、該容器の回転を確保しつつ容器を上方より下方へ押付する押え車輪を備えて構成したことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記容器内を加圧する手段は、容器のジャケット内に飽和蒸気を給送することによって容器内の水分を加熱し、当該水分を水蒸気として加圧するように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2の何れかに記載の発明において、前記容器は、これを覆う囲繞体を備え、該囲繞体は、前記容器の蓋体前方を開放する脱着可能の開放部を備え、該開放部は、囲繞体への脱着時に操作される操作部を具備し、該操作部は、前記容器の内圧を開放した状態でのみ操作可能に構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、第一種圧力容器を用いた場合でも、当該容器を回転及び揺動させて、容器内に投入した原料等を攪拌・混合することができ、かつ、容器の脱落を確実に防止して、使用時の安全性を十分確保することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、容器内の圧力はジャケット内の飽和水蒸気圧以上に上昇することはないので、容器の内圧を開放する安全弁の取り付けが不要となる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、容器内が加圧した状態で容器の蓋体が開放されることを確実に防止できるので、蓋体の開放時の危険性を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の混合装置を示す正面図である。
【図2】本発明の混合装置を示す側面図である。
【図3】本発明の混合装置を示す平面図である。
【図4】本発明の混合装置を構成する容器を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図1乃至図3を用いて説明する。図1は本発明の混合装置を示す正面図であり、図2は混合装置の側面図、図3は混合装置の平面図を示している。図1乃至図3において、1は本発明の混合装置であり、2は混合装置の容器を示している。
【0016】
3は容器2の前面、後面、側面、上面を覆う囲繞体であり、囲繞体3には、その前面を開放する開放部4が具備されている。5は開放部4の囲繞体3への脱着を行なう操作部を示しており、6は容器2の下方に位置し、容器2の回転車輪7を回転させる図示しない電動機(以下、第1の駆動源という)を収容する揺動台である。
【0017】
8は揺動台6とともに容器2を揺動軸9を中心にして、シーソーの如く揺動させる図示しない電動機(以下、第2の駆動源という)を収容する固定台である。10は第1の駆動源や第2の駆動源、或いは、後述する各種バルブ類を制御する制御盤であり、11は容器2に開閉自在に取り付けた投入蓋である。
【0018】
12は投入蓋11の開閉時に操作する操作ハンドルであり、13は容器2の側面に取り付けた一対の起立板14間に介在し、容器2の揺動に伴い、起立板14の一方と接触し回転する補助車輪である。
【0019】
15は容器2を加熱又は冷却する媒体を供給又は排出したり、容器2内部に液体を噴霧或いは真空引きする際に利用する配管部を示しており、16は冷却媒体の供水口、17は冷却媒体の排水口を示している。
【0020】
18は飽和水蒸気の供気口であり、19は飽和水蒸気の排気口である。21は冷却媒体の供給路上に配設した手動式バルブであり、22は冷却媒体の排出路上に配設した手動式バルブを示している。23は飽和水蒸気の供給路上に配設した手動式バルブであり、24は飽和水蒸気の供給路上に配設した安全弁である。
【0021】
25は飽和水蒸気の供給路上に配設した圧力計であり、26は配管部15の上部と下部間に取り付けられ、上部の揺動が下部に伝達されることを防止する揺動継手(スイベルジョイント)を示している。27は配管部15の上部配管上に配設した圧力計であり、28は前記上部配管上の開放弁(図示せず)を操作する操作レバーを示している。
【0022】
次に、図4を用いて容器2の詳細構造について説明する。容器2は略中空筒状に形成したジャケット部29と、投入蓋11と相反する方向に取り付けた回転継手(ロータリージョイント)30及び回転継手30に軸受31を介して内挿された回転筒32を備えて概略構成されている。
【0023】
回転筒32の中空部には、一方端を容器2内に配置した熱電対33に接続された配線34と、容器2内に配置した液噴霧ノズル35の液供給管36、及び、容器2内に配置したフィルタ37の気体流通管38が挿通している。
【0024】
回転継手30には、前述した飽和水蒸気や冷却媒体の供給路に接続された図3に示す給送管39が接続される流通口40と、流通口40から導入され、回転筒32内部の流通路41から給送路42を介してジャケット部29内に送られ、反対側に位置する給送路43から回転筒32内部の流通路44を通過する飽和水蒸気や冷却媒体を図3に示す排送管45に排出する排出口46が具備されている。
【0025】
また、回転継手30には、液噴霧ノズル35の液供給管36が接続される液供給口47(図3参照)が備えられており、液供給口47は、図3に示す液噴霧タンク48に接続されている。
【0026】
図4に示すフィルタ37の気体流通管38の他方端は、気体吸引口49から図3に示す気体吸引管50に接続され、図1,図2に示す気体吸引端51と連通している。なお、図4に示す熱電対33の配線34は、図3に示すように、制御盤10に接続され、制御盤10によって容器2内の温度管理が適宜行われる。
【0027】
つづいて、本発明に係る混合装置1の構造的な特徴について説明する。本発明に係る混合装置1の容器2は、容器2内を加圧して使用するため、労働安全衛生法に規定される第一種圧力容器が用いられる。
【0028】
第一種圧力容器等を使用する場合、前述したように、安全性を確保するため従来では容器自体を固定して使用することが通常であり、本発明の如く、容器を回転及び揺動させるものは存在しない。
【0029】
そこで、本発明では、第一種圧力容器等を使用する際の安全性を確保するため、図1,図2に示すように、容器2を上方から下方へ押し付ける押え車輪51を備えて構成した。これにより、容器2が回転車輪7の回転によって回転したり、或いは、揺動軸9を中心に揺動した場合においても、押え車輪51の存在を始め、囲繞体3や補助車輪13の存在によって、容器2が揺動台6上から脱落することを確実に防止することが可能となる。
【0030】
その他、構造上の特徴として、操作レバー28の先端に隠し板52を取り付けたことがある。つまり、本発明の混合装置1は、容器2内を加圧して使用するので、容器2の投入蓋11の開放操作には十分注意する必要がある。
【0031】
そこで、容器2を覆う囲繞体3から開放部4を取り外す操作部5が隠し板52によって隠れるように配置して、操作レバー28を操作して図示しない開放弁を開放することにより、容器2内の圧力を開放した状態でのみ開放部4の操作部5の操作を可能とした。
【0032】
つづいて、本発明の混合装置1の動作について説明する。初めに、操作レバー28を図2の矢印の方向に操作して、隠し板52裏に配置される操作部5を操作する。同様に、他の2箇所に配置される操作部5も操作して、開放部4を囲繞体3から取り外す。
【0033】
次に、容器2の投入蓋11の操作ハンドル12を操作して、容器2本体との締結状態を解き、取っ手53を利用して投入蓋11を開放する。投入蓋11を開放したら、図4に示す容器2の内部に、攪拌混合する粉体や粒体(以下、被混合物という)を投入し、再び、投入蓋11を封止し、操作ハンドル12によって容器2本体と確実に締結する。
【0034】
その後は、再度、囲繞体3の前面に開放部4を配置し、操作部5を利用して囲繞体3に止着することにより、容器2を囲繞体3によって前後面、左右側面、上面を確実に覆う。そして、操作レバー28を図2に示す矢印と逆方向に操作することにより、容器2内の圧力開放状態を解消する。
【0035】
次に、図3に示す液噴霧タンク48から液供給口47を介して図4に示す液噴霧ノズル35から液体を容器2内に噴霧すると、図1に示す給気口18からは、配管部15を通って図3に示す給送管39を介して、飽和水蒸気が図4の流通口40に供給され、回転筒32内の流通路41から給送路42を通ってジャケット部29内に供給される。
【0036】
これにより、容器2内は加熱され、結果として加圧状態に移行する。なお、ジャケット部29内に供給された飽和水蒸気は、給送路43から回転筒32内の流通路44を通って排出口46から図3に示す排送管45に排出され、配管部15を介して図1に示す排気口19から外部へ排出される。
【0037】
このようにして、容器2内が加圧状態となったら、制御盤10を操作して、図2に示す揺動台6内の第1の駆動源(図示せず)を駆動させて、回転車輪7上で容器2を回転させ、併せて、固定台8内の第2の駆動源(図示せず)を駆動させて、容器2を揺動軸9を中心に揺動させる。
【0038】
これにより、加圧状態にある第一種圧力容器(容器2)を回転及び揺動させながら容器2内の被混合物を均一に攪拌混合させることができる。このとき、前述したように、容器2は押え車輪51によって上方から下方へ押え付けられているので、補助車輪13や囲繞体3の存在と相まって、容器2が揺動台6上から脱落することはなく、安全性を十分確保することができる。
【0039】
そして、本発明の混合装置1においては、容器2内の加圧状態を、ジャケット部29内に飽和水蒸気を給送することにより実現するので、容器2内部の水分が加熱されて水蒸気となった場合でも、容器2内部の圧力がジャケット部29内の飽和水蒸気圧以上に上昇することはなく、結果、容器2内の耐圧設計が、安全弁24の設定圧以上の耐圧性能を有していれば、容器2内の圧力を自動的に開放する安全弁を取り付ける必要がなくなる。
【0040】
混合処理が終了した後は、制御盤10を操作して、容器2の回転及び揺動を停止させる。その後は、図1,図2に示す操作レバー28を図2の矢印方向に操作して、容器2内の圧力を開放した後、操作レバー28の操作によって現れた操作部5及びその他の操作部5を操作して、囲繞体3の前面から開放部5を取り外す。
【0041】
開放部5を取り外すことにより、容器2の投入蓋11が露出するので、投入蓋11の操作ハンドル12を操作して容器2本体と投入蓋11間の締結状態を解除し、取っ手53を利用して投入蓋11を開放する。投入蓋11を開放した後は、容器2内から攪拌混合した被混合物を容器2外へ排出して、被混合物の混合作業を終了する。
【0042】
以上説明したように、本発明の混合装置は、容器内を加圧した状態とするため第一種圧力容器等を使用しなければならないが、従前の如く、容器自体を固定して使用することなく、回転及び揺動させながら容器内の被混合物を攪拌混合するとともに、容器の上方を押え車輪で下方へ押し付けることにより、容器が揺動台上から脱落することを確実に防止し、安全性を確保することができる。
【0043】
また、ジャケット部内に飽和水蒸気を供給することによって容器内の圧力を加圧状態とする構造であるので、容器内の圧力がジャケット部内の水蒸気圧以上となることを防止でき、容器内の圧力異常に伴って自動開放する安全弁の取り付けを不要とした。
【0044】
さらに、容器の内圧を開放した状態でのみ容器の投入蓋を開放可能に構成したので、加圧状態で投入蓋が開放されることを確実に防止でき、安全性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
加圧状態で攪拌混合する混合機に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 混合装置
2 容器
3 囲繞体
4 開放部
5 操作部
6 揺動台
7 回転車輪
8 固定台
9 揺動軸
10 制御盤
11 投入蓋
12 操作ハンドル
13 補助車輪
14 起立板
15 配管部
16 給水口
17 排水口
18 給気口
19 排気口
21,22,23 手動式バルブ
24 安全弁
25,27 圧力計
26 揺動継手
28 操作レバー
29 ジャケット部
30 回転継手
31 軸受
32 回転筒
33 熱電対
34 配線
35 液噴霧ノズル
36 液供給管
37 フィルタ
38 気体流通管
39 給送管
40 流通口
41,44 流通路
42,43 給送路
45 排送管
46 排出口
47 液供給口
48 液噴霧タンク
49 気体吸引口
50 気体吸引管
51 気体吸引端
52 隠し板
53 取っ手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を揺動及び回転させながら容器内の粉体又は粒体を攪拌混合する混合装置において、当該容器内を加圧する手段を備え、かつ、該容器の回転を確保しつつ容器を上方より下方へ押付ける車輪を備えて構成したことを特徴とする混合装置。
【請求項2】
前記容器内を加圧する手段は、容器のジャケット内に飽和蒸気を給送することにより、容器内を加圧するように構成したことを特徴とする請求項1記載の混合装置。
【請求項3】
前記容器は、これを覆う囲繞体を備え、該囲繞体は、前記容器の蓋体前方を開放する脱着可能の開放部を備え、該開放部は、囲繞体への脱着時に操作される操作部を具備し、かつ、前記容器の内圧を開放した状態でのみ前記操作部を操作可能に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2の何れかに記載の混合装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate