説明

混合/気化装置

【課題】処理剤の種類に拘わらず、液相の処理剤の投入点とそれが消費される箇所との間で処理剤が十分に気化し、気相となった処理剤が排ガス流と十分に混ざる混合/気化装置の提供。
【解決手段】混合/気化装置12内の流路の、混合/気化装置12の軸方向20と交差して広がる扁平な断面を周方向32に取り囲む支持体19を備える。支持体19は対向する2つの長側壁21,22と対向する2つの短側壁23,24を有し、短側壁23,24の各々により長側壁21,22同士が接続される。長側壁21,22の少なくとも一方の少なくとも一軸方向端26,27に複数のガイド羽根25が設けられ、ガイド羽根25は他方の長側壁21,22に向かって突出し、軸方向20に対して角度が付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関、特に自動車の内燃機関、の排気システム用の混合/気化装置に関する。本発明はまたそのような装置を備えた排気システムおよびSCR触媒コンバーターに関する。
【0002】
内燃機関の排気システムには通常、内燃機関が排出する排気ガスを浄化あるいは再処理するための装置が備えられる。このような装置においては、液体の処理剤を排気ガス流内に導入しそこで気化させて排気ガスと混合することが必要となることがある。例えば酸化触媒コンバーターの上流で燃料を排気ガスに投入して、酸化触媒コンバーター内での燃料の発熱反応により排気ガスを昇温するような場合である。昇温した排気ガス流は酸化触媒コンバーターの下流でさらなる排気ガス再処理装置、例えば別の触媒コンバーターや粒子フィルター、を動作温度あるいは再生温度まで昇温するのに用いられる。一方で選択触媒還元(SCR)の原理で機能する、排気ガス中のNOxを吸収するSCR触媒コンバーター(選択還元触媒コンバーター)を備えたSCRシステムが知られている。SCR触媒コンバーターの上流で適切な還元剤、例えばアンモニアや尿素、好ましくは尿素の水溶液、を排気ガス流に投入する。するとSCR触媒コンバーター内でアンモニアにより含有窒素酸化物が窒素と水に分解される。
【0003】
排気ガス流中に投入される処理剤の種類に拘わらず、満足な効果を得るためには、液相の処理剤の投入点とそれが消費される箇所との間で処理剤が十分に気化し、気相となった処理剤が排ガス流と十分に混ざる必要がある。この目的に用いられるのが冒頭で触れた混合/気化装置であり、これはしたがって排気ガスの経路中の、処理剤の投入点と消費点との間に設けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は冒頭で触れたような混合/気化装置、そのような装置を備えたSCR触媒コンバーター、およびそのような装置を備えた排気システムの、改善された、あるいは少なくとも新たな、実施形態を提供することであり、この実施形態は簡素な、したがって費用効率の良い、構成を特徴としつつ、流れ抵抗の低減をも目指している。さらには断面内の排気の配分の改善も目指しており、これは背圧の低減につながる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、上記の目的は独立請求項に記載の構成により達せられる。より好ましい構成は従属請求項に記載のとおりである。
【0006】
本発明の基本となる技術思想は次のとおりである。混合/気化装置に支持体を設け、この支持体を、混合/気化装置内の流路の、混合/気化装置の軸方向と交差して広がる扁平な断面を周方向に取り囲むように構成する。支持体がこのように円形ではなく、横長の、あるいは扁平な、断面を有しているので、支持体は対向する2つの長側壁と対向する2つの短側壁を有し、短側壁の各々により長側壁同士が接続されている。本発明におけるように支持体を断面扁平に構成することにより、支持体の長側壁の少なくとも一方の少なくとも一軸方向端に、他方の前記長側壁に向かって突出し、軸方向に対して角度が付けられた複数のガイド羽根を設けることができる。この構成では、ガイド羽根は軸方向と交差する方向に延び、かつ軸方向とガイド羽根自体の長さ方向との両方と交差する方向に並んでいる。ここで混合/気化装置の軸方向とは混合/気化装置を通る排気ガスの主流方向であり、乱流、横断流、逆流、渦流などは考慮に入れていない。
【0007】
このようにして長側壁の軸方向端に一連のガイド羽根が並べて、特には互いに平行に、設けられ、各ガイド羽根が気流を短側壁の方へ向ける働きをする。ガイド羽根は一つには上流で排気ガス流に投入された液体の処理剤に対して広い衝突面積を提供することで液体がガイド羽根に当たって気化するのを助け、二つには気流の向きを急に変えることで気化した処理剤と排気ガスとの混合を促進する。
【0008】
好ましくは、ガイド羽根を側壁から略直角に、すなわち90°±10°の角度で、突出させる。そうすればガイド羽根は支持体が取り囲む範囲からはみ出さない。
【0009】
好ましくは、支持体をウェブ状(巻物状)の板材を変形して作製し、該ウェブ状の板材の長さ方向が上述の周方向と一致するように側壁を形成し、該ウェブ状の板材の幅方向を上述の軸方向と平行にする。そうすれば混合/気化装置が据え付けられた状態において、支持体は、その径方向外側の面が、排気ガスを導くラインの内側の面、つまり流路に臨む面、にびったりと沿う。
【0010】
特に好ましくは、ガイド羽根をウェブ状の板材から一体に成形して曲げて形成する。そうすれば混合/気化装置を安価に製造することができる。
【0011】
流路が上に述べたように「扁平」な断面を持つということはすなわち、この断面の、軸方向と直交する第1方向の直径が、軸方向と第1方向との両方と直交する第2方向の直径より大きいということである。特には、一方向の直径がもう一方向の直径の少なくとも2倍である。これら2方向の直径は断面の中心で交わる。よって円形の断面は扁平な断面から除外される一方、長円形あるいは楕円形の断面は扁平のうちに入る。「長」、「短」という字句は絶対表現ではなく相対表現と理解されるべきであり、したがって長側壁は単に短側壁より周方向に長いというだけのことである。混合/気化装置内の流路の断面形状によっては、実際には長側壁が平面で短側壁が曲面であってもよい。
【0012】
特に好ましくは、ガイド羽根を各ガイド羽根列内において、排気ガスが渦流を生じずに通れるように配置し、特にはそのような角度を付けて設ける。これにより排気ガス流はガイド羽根列を通るときに渦流を生じずガイド羽根によって単に向きが横に変えられるだけとなる。ガイド羽根列が複数設けられる場合、各ガイド羽根列を排気ガスが渦流を生じずに通れるように構成すればよい。
【0013】
各ガイド羽根は平らに形成してよい。平らなガイド羽根は排気ガス流や軸方向に対する角度が自らの長さ方向に沿って一定となる。ガイド羽根の少なくとも1つあるいは全てに捻りを付けてもよい。このようなガイド羽根の角度は自らの長さ方向に沿って変化する。
【0014】
好ましくは、ガイド羽根を長側壁の流入側のみ、または流出側のみ、または流入側と流出側の両方に設ける。これにより長側壁に流入側のガイド羽根列あるいは流出側のガイド羽根列が形成される。長側壁にガイド羽根列を2つ、つまり長側壁の両軸方向端に1つずつ、設けてもよい。
【0015】
好ましくは、ガイド羽根を長側壁の両方の少なくとも一軸方向端に設ける。これにより両方の長側壁の流入側、または流出側、または流入側と流出側の両方にガイド羽根が、対向する長側壁に向かって突出して設けられる。このようにして例えば、各軸方向端で両長側壁のガイド羽根を共通のガイド羽根列内に交互に設けることができる。言い換えれば、両長側壁のガイド羽根が、ガイド羽根列の長さ方向に横に並べて設けられる。
【0016】
あるいは、両長側壁各々のガイド羽根をその長さ方向に、両長側壁間の中心面まで延ばしてもよい。そうすると両長側壁各々のガイド羽根がその長さ方向の中心面の両側にガイド羽根列を1つずつ形成する。結果、各軸方向端において、互いに平行な2列のガイド羽根列が設けられる。
【0017】
特に好ましくは、各ガイド羽根の先端を自由端とする。これにより各ガイド羽根はその基端側である長側壁とは反対側が自由端となる。よってガイド羽根は対向する長側壁と接触せず、非接触に留まり、かつ同じ長側壁のガイド羽根とも対向する長側壁のガイド羽根とも非接触に留まる。
【0018】
各ガイド羽根列において、ガイド羽根には軸方向に対して同じ角度を付けるとよい。同じ長側壁あるいは対向する長側壁の異なる軸方向端に設けられたガイド羽根列において、ガイド羽根には軸方向に対して互いに反対方向に角度を付けるとよい。そうすると排気ガス流は最初に通過するガイド羽根列にてそのガイド羽根によって一様に向きを一方向に変えられ、そのあとで通過するガイド羽根列にてそのガイド羽根によって一様に向きを他方向、つまり反対方向、に変えらる。これにより気化した処理剤が排ガス流に十分に混合される。
【0019】
さらには、同じ軸方向端の対向する長側壁に設けられたガイド羽根列において、ガイド羽根に軸方向に関して互いに反対方向に角度を付けてよい。こうしても十分な混合が可能である。
【0020】
好ましくは、同じ長側壁の同じ軸方向端に設けられる少なくとも2つのガイド羽根の羽根長および/または羽根幅を異ならせる。羽根長とはガイド羽根の、対応する長側壁からの突出の寸法である。羽根幅とはガイド羽根の、その長さ方向と交差する方向の寸法である。言い換えれば、各ガイド羽根列においてガイド羽根の各々の長さおよび/または幅が異なっていてよい。そうすると、一つに、長側壁を軸方向と交差する方向に曲面とすることができる。二つに、ガイド羽根の長さおよび/または幅を変化させることにより、混合/気化装置において所望の低流れ抵抗を実現することができる。
【0021】
好ましくは、同じ長側壁の同じ軸方向端に設けられる少なくとも2つのガイド羽根に軸方向に関して互いに異なる、または互いに反対方向の、角度を付ける。この場合、各ガイド羽根列内のガイド羽根に同一ではない、軸方向に関して異なる角度が付けられる。これにより、混合/気化装置の位置で生じる、排気ガス経路の断面内の速度あるいは流量の不均一性を考慮して、均一な排気ガス流を比較的低い流れ抵抗で実現することができる。例えば、混合/気化装置を排気ガス経路の直線でない、曲がった箇所に設置すると、その曲がった箇所を通過する排気ガス流の速度は半径方向内側より外側の方が速い。
【0022】
好ましくは、軸方向端において、長側壁に沿って、軸方向と交差する方向に複数のガイド羽根座を規則的に並べて配し、ガイド羽根座に個別に設けられるガイド羽根の数をガイド羽根座自体の数より少なくし、その結果ガイド羽根座の少なくとも1つに空隙が残るようにするとよい。言い換えれば、各ガイド羽根列において、ガイド羽根座がガイド羽根の配置位置を決め、ガイド羽根座がガイド羽根の規則的、等間隔な配置を可能にする。ガイド羽根を少なくとも1つ省くことにより、当該ガイド羽根座に空隙が残る。空隙のあるところは流れ抵抗が下がるので、これにより混合/気化装置の流れ抵抗の調節が可能になる。あるいは、そのようにガイド羽根座によりガイド羽根と空隙を規則的に配置するのではなく、隣接するガイド羽根をそれらの各ガイド羽根列内における間隔に関して任意の位置に配置して間隔を変化させてもよい。
【0023】
好ましくは、全てのガイド羽根をそれぞれに対応する長側壁と一体に形成してもよい。これにより混合/気化装置を容易に、したがって費用効率よく製作することができる。特に効率の良い実施形態においては、全ての側壁を支持体と一体に形成する。これにより簡素で、費用効率の良い構成が得られる。特にこの構成をウェブ状の板材を成型して作製される板金成形部材とするとよい。これは一枚の板金材料またはウェブ状の板材から、打抜きと成型によって作製される。好ましくは混合/気化装置の各部品は金属で作製する。長尺の板金片を出発材料とし、そこからガイド羽根を切り離して曲げて起こし、それから板金を折り曲げて、長側壁と短側壁を有する支持体を形成する。さらに支持体が周方向に閉じるように、一方の短側壁において元の板金片の長さ方向の両端を突き合わせるか重ね合わせるかして継ぎ合わせる。
【0024】
本発明に基づく排気システムは、少なくとも1つのSCR触媒コンバーターと、SCR触媒コンバーターの上流において還元剤を排気ガス流に投入するためのインジェクターを少なくとも1つ備えた還元剤投入装置と、
少なくとも1つの、上に述べたような混合/気化装置とを備える。混合/気化装置は少なくとも1つのインジェクターと少なくとも1つのSCR触媒コンバーターとの間に設けられる。
【0025】
また、本発明に基づくSCR触媒コンバーターは、SCR触媒コンバーターエレメントを少なくとも1つ設けたハウジングと、少なくとも1つの、上に述べたような混合/気化装置とを備える。混合/気化装置はハウジング内の、少なくとも1つのSCR触媒コンバーターエレメントの上流に設けられる。
【0026】
本発明の他の重要な特徴や効果は、従属請求項、図面、および図面に基づいた本明細書内の記載の該当箇所から理解されるとおりである。
【0027】
上に述べた、また下にこれから述べるいずれの特徴も、具体的に言及されている組み合わせ以外のどのような組み合わせでも、あるいは単独でも、本発明の範囲を逸脱しない限り実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】排気システムを備えた内燃機関を極めて単純化して示す回路図様の模式図
【図2】SCR触媒コンバーターを極めて単純化して示す回路図様の模式図
【図3】それぞれ異なる実施形態A,BにおけるSCR触媒コンバーターの、図2中の切断線III-IIIに沿った断面図
【図4】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第1の斜視図
【図5】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第2の斜視図
【図6】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第3の斜視図
【図7】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第4の斜視図
【図8】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第5の斜視図
【図9】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第6の斜視図
【図10】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第7の斜視図
【図11】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第8の斜視図
【図12】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第9の斜視図
【図13】それぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の第10の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。同一、類似、または機能上同等の部材は同一の参照符号で示す。
【0030】
図面は全て模式図であり、各図の内容は以下のとおりである。図1は排気システムを備えた内燃機関を極めて単純化して示す回路図様の模式図である。図2はSCR触媒コンバーターを極めて単純化して示す回路図様の模式図である。図3A,図3Bはそれぞれ異なる実施形態A,BにおけるSCR触媒コンバーターの、図2中の切断線III-IIIに沿った断面図である。図4〜図13はそれぞれ異なる実施形態における混合/気化装置の斜視図である。
【0031】
図1に示すように、内燃機関1は一般にエンジンブロック(シリンダーブロック)2を備え、エンジンブロック2は複数のシリンダー3を備える。吸気系4からエンジンブロック2のシリンダー3に外気が供給される。外気の流れを矢印11で示す。内燃機関1の動作時には、排気システム5により燃焼排気ガスがエンジンブロック2のシリンダー3から排出される。排気システム5はまた排気ガス浄化あるいは排気ガス再処理をも行う。この目的のため排気システム5は少なくとも1つのSCR(Selective Catalytic Reduction、選択触媒還元)触媒コンバーター(選択還元触媒コンバーター)6を備える。触媒コンバーター6は排気システム5の排気ガスライン7に適切な態様で組み込まれている。排気システム5はさらに還元剤投入装置8を備える。還元剤投入装置8は少なくとも1つのインジェクター9を備え、インジェクター9の働きにより還元剤を排気ガス流10中に投入することができる。排気ガス流10は内燃機関1の動作時に排気ガスライン7を通り、その流れを矢印で示す。液状の還元剤の排気ガス流10への投入はSCR触媒コンバーター6の上流において行われる。
【0032】
排気システム5はさらに少なくとも1つの混合/気化装置12を備える。混合/気化装置12は排気ガスライン7内の、インジェクター9とSCR触媒コンバーター6の間に設けられるので、排気ガスとそれに投入された還元剤はSCR触媒コンバーター6に達する以前にまず混合/気化装置12を通ることになる。
【0033】
混合/気化装置12が設けられている領域13において、排気ガスライン7は例えば扁平な流路断面形状を有する。一方、インジェクター9の上流の領域14において、排気ガスライン7は例えば円形の流路断面形状を有する。両領域13,14における流路断面積は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0034】
図1に示す実施形態において、混合/気化装置12は排気ガスライン7内のSCR触媒コンバーター6の上流に、したがってそれとは別に設けられている。特に、混合/気化装置12はSCR触媒コンバーター6のハウジング15外に設けられている。
【0035】
上記とは異なる実施形態を図2に示す。ここではSCR触媒コンバーター6と混合/気化装置12とが一体となっている。その実現のため、少なくとも1つのSCR触媒コンバーターエレメント16がSCR触媒コンバーター6のハウジング15内に設けられており、ハウジング15内のSCR触媒コンバーターエレメント16の上流に混合/気化装置12が追加して設けられている。このように混合/気化装置12とSCR触媒コンバーターエレメント16が共通のハウジング15内に収められている。図2の例において、ハウジング15は入口側テーパー部17と出口側テーパー部18を有し、混合/気化装置12とSCR触媒コンバーターエレメント16はそれら2つのテーパー部17,18の間に配されている。
【0036】
図3(A)、(B)に示すように、ハウジング15は例えば少なくとも混合/気化装置12が配される領域において扁平な断面形状を有し、この形状に合うように混合/気化装置12が構成される。図3(A)に示す実施形態においては、ハウジング15内の流路の断面を1つの混合/気化装置12でカバーしている。図3(B)に示す実施形態においては、ハウジング15内の流路の断面を2つの混合/気化装置12を並置してカバーしている。同様に、混合/気化装置12を排気ガスライン7に配する場合にも、少なくとも2つの混合/気化装置12を領域13に並置して排気ガスライン7内の流路の断面積をカバーしてもよい。ここで流路の断面形状が「扁平」であるというのは、図3(A)、(B)の紙面に直交する混合/気化装置12の軸方向(流路沿い方向)に各々直交しかつ互いに直交する2方向をそれぞれ第1方向、第2方向としたときに、その断面形状の第1方向直径33が第2方向直径34より大きいことを指す。特に第1方向直径33が第2方向直径34の少なくとも2倍あってもよい。ここで、これら2方向の直径33,34は該断面形状の中心で交わる。
【0037】
図4〜図13に示すように、各混合/気化装置12は支持体19を備える。支持体19は、図1,図2,図4〜13において両矢印で示す軸方向20まわりに、混合/気化装置12内の流路の扁平な断面を、その周方向に取り囲む形状を有している。軸方向20は排気システム5の動作時に混合/気化装置12を通る流路の主流方向にあたる。混合/気化装置12内の流路の断面形状が扁平であるので、支持体19は対向する2つの長側壁21,22と対向する2つの短側壁23,24を有する。2つの長側壁21,22は2つの短側壁23,24によって接続されている。
【0038】
混合/気化装置12はまた複数のガイド羽根25を備える。各ガイド羽根25は長側壁21,22の一方から他方に向かって突出しつつ、混合/気化装置12の、すなわち支持体19の、すなわち長側壁21、22の、軸方向端26あるいは27からは離れている。排気ガスが矢印10の方向に流れている場合、気流が先に通過する軸方向端26が流入側であり、これにも以下では番号26を充てる。また、気流が後で通過する軸方向端27が流出側であり、これにも以下では番号27を充てる。
【0039】
各ガイド羽根25は真っ直ぐ、互いに平行に延びる。また、各図に示す実施形態において、ガイド羽根25は平らに形成されている。ガイド羽根25はさらに軸方向20に関して角度を付けて設けられてる。各図の例において、ガイド羽根25の軸方向20に対する角度は45度±通常の製造誤差範囲内である。
【0040】
ガイド羽根25は軸方向20と交差する方向に延びる。またガイド羽根25はそれ自身の長さ方向と軸方向20との両方と交差する方向に一列に並べて配されている。このような列を以下において羽根列28とも言う。
【0041】
図4に示す実施形態においては、ガイド羽根25が一方の長側壁21のみに設けられている。ガイド羽根25はこの長側壁21の流入側26と流出側27の両側に設けられており、もう一方の長側壁22に向かって延びている。つまりここでは羽根列28が2列――流入側に1列と流出側に1列――設けられている。
【0042】
一方図5に示す実施形態においては、羽根列28が1列だけ設けられる。そのガイド羽根25は一方の長側壁22の流入側に設けられ、もう一方の長側壁21に向かって延びている。
【0043】
対して図6〜図13に示す実施形態においては、両長側壁21,22の各々の、両軸方向端26,27の少なくとも一方にガイド羽根25が設けられ、対向する長側壁22,21に向かって延びている。結果、これらの実施形態において、両軸方向端26,27、すなわち流入側26と流出側27、の両方において、羽根列28が2列、平行に並べて設けられる。例えば、対向するガイド羽根25同士は、各自側の長側壁21,22から各自の長さ方向に両長側壁間21,22の中心面まで延びるような寸法に形成される。あるいは両長側壁21,22から延びるガイド羽根25は、対向する長側壁22,21に向かって、一方の長側壁21から延びるガイド羽根25が他方の長側壁22の隣り合うガイド羽根25間の間隙に入り込むように形成される。この場合結局は共通の羽根列28が1列、両長側壁21,22のガイド羽根25によって形成され、この羽根列28内に両長側壁21,22のガイド羽根25が交互に配される。
【0044】
各図に示す実施形態において、各ガイド羽根25はその基端側の長側壁21,22から所定の距離延びて先端が自由端として終わるような寸法に形成される。したがってガイド羽根25は、特に図4,図5に示す実施形態においては反対側の長側壁21,22と接触せず、また特に図6〜図13に示す実施形態においては反対側から延びるガイド羽根25と接触しない。
【0045】
図4,図6,図8,図10,図12から明らかなように、ガイド羽根25が両軸方向端26,27に設けられる場合、それらを軸方向20に関して反対に角度を付けて設けるのがよい。そうすると、流入側の羽根列28のガイド羽根25が軸方向20に関してある方向に角度を持つのに対して、流出側の羽根列28のガイド羽根25が軸方向20に関してそれと逆の角度を持つ、つまり両者が軸方向20に関して反対に角度を持つ。
【0046】
図6,図8,図10,図12に示す実施形態において、同じ軸方向端26,27の別の長側壁21,22に設けられる、つまり2列の羽根列28に配される、ガイド羽根25は、すべて軸方向20に関して同じ角度を付けて設けられる。これに対して、図7,図9,図11,図13に示す実施形態において、同じ軸方向端26,27の対向する長側壁21,22に設けられるガイド羽根25は、すべて軸方向20に関して反対に角度を付けて設けられる。言い換えれば、流入側26および/または流出側27において、一方の長側壁21に設けられる、一方の羽根列28のガイド羽根25の軸方向20に対する角度が、もう一方の長側壁21に設けられる、もう一方の羽根列28のガイド羽根25の軸方向20に対する角度と反対である。
【0047】
少なくとも図5〜図13に示す実施形態において、少なくとも1列の羽根列28内で、一部のガイド羽根25aが他のガイド羽根25よりも短く形成されている。
【0048】
図11に示す実施形態において、羽根列28のうちの1列において、1つのガイド羽根25bが同じ羽根列28の他のガイド羽根25と軸方向20に関して反対の方向に角度が付けられている。
【0049】
図12,図13に示す実施形態において、一方の羽根列28の羽根幅が他方の羽根列28の羽根幅と異なっている。例えば、図13において流入側の一方の長側壁21に配されるガイド羽根25cの幅は他方の長側壁22に配されるガイド羽根25のほぼ2倍になっている。
【0050】
図8〜図13に示す構成においては、両軸方向端26,27それぞれの両長側壁21,22それぞれに沿って、軸方向20と交差する方向に、複数のガイド羽根座29が規則的に、つまり等間隔に並んでいる。図4〜図7に示す実施形態においてはガイド羽根座29の数がガイド羽根25の数と一致し、ガイド羽根座29の各々にガイド羽根25が1つ配される。対して図8〜図13に示す実施形態においてはガイド羽根25の数が少なくとも1つ足りず、よってガイド羽根座29のうちの少なくとも1つにおいて空隙30が残る。
【0051】
以上図4〜図13に示す各実施形態に基づいてに説明した本発明の様々な特徴は、矛盾がない限り適宜組み合わせて実施してよい。
【0052】
例えば、支持体19はウェブ状の板金を成型した部材であり、4つの側壁21,22,23,24が一体に形成されている。さらにガイド羽根25も長側壁21,22と一体に形成されるので、結果として混合/気化装置12全体が一枚の板金成形部材からなる。その製造には長尺の板状あるいはウェブ状の板金を用い、まずガイド羽根25の形状にくり抜く。次にガイド羽根25を曲げて起こす。最後に板状あるいはウェブ状の板金を混合/気化装置12内の流路の扁平な断面形状に合わせて曲げることにより、支持体19の長短の側壁21,22,23,24を形成する。板金の長さ方向の両端は一方の短側壁23において継ぎ目31で継ぎ合わせる。曲げたあとの板金において、元の長さ方向36は周方向に相当し、元の幅方向37は軸方向20と平行になる。
【符号の説明】
【0053】
1 内燃機関
2 エンジンブロック
3 シリンダー
4 吸気系
5 排気システム
6 触媒コンバーター
7 排気ガスライン
8 還元剤投入装置
9 インジェクター
10 排気ガス流
11 外気の流れを矢印
12 混合/気化装置
13 領域
14 領域
15 ハウジング
16 SCR触媒コンバーターエレメント
17 入口側テーパー部
18 出口側テーパー部
19 支持体
20 軸方向
21,22 長側壁
23,24 短側壁
25 ガイド羽根
26,27 軸方向端
28 羽根列
29 ガイド羽根座
30 空隙
31 継ぎ目
32 周方向
33 第1方向直径
34 第2方向直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(1)、特に自動車の内燃機関、の排気システム(5)用の混合/気化装置(12)であって、
前記混合/気化装置(12)内の流路の、前記混合/気化装置(12)の軸方向(20)と交差して広がる扁平な断面を周方向(32)に取り囲む支持体(19)を備え、
前記支持体(19)は対向する2つの長側壁(21,22)と対向する2つの短側壁(23,24)を有し、
前記短側壁(23,24)の各々により前記長側壁(21,22)同士が接続され、
前記長側壁(21,22)の少なくとも一方の少なくとも一軸方向端(26,27)に複数のガイド羽根(25)が設けられ、該ガイド羽根(25)は他方の前記長側壁(21,22)に向かって突出し、前記軸方向(20)に対して角度が付けられていることを特徴とする混合/気化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の混合/気化装置において、
前記ガイド羽根(25)は前記長側壁(21,22)から略垂直に突出している。
【請求項3】
請求項1または2に記載の混合/気化装置において、
前記支持体(19)はウェブ状の板材を変形して作製し、該ウェブ状の板材の長さ方向(36)が前記周方向(32)と一致するように前記側壁(21,22,23,24)を形成し、該ウェブ状の板材の幅方向を前記軸方向(20)と平行にする。
【請求項4】
請求項3に記載の混合/気化装置において、
前記ガイド羽根(25)は前記ウェブ状の板材から一体に成形して曲げて形成する。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の混合/気化装置において、
前記扁平な断面の、前記軸方向(20)と直交する一方向の第1直径が、前記軸方向(20)と該一方向との両方と直交する第2直径の少なくとも2倍である。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の混合/気化装置において、
前記ガイド羽根(25)は前記長側壁(21,22)の流入側(26)のみ、または流出側(27)のみ、または流入側(26)と流出側(27)の両方に設けられる、かつ/または
前記ガイド羽根(25)は前記長側壁(21,22)の両方の少なくとも一軸方向端(26,27)に設けられる。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の混合/気化装置において、
前記ガイド羽根(25)は前記長側壁(21,22)の両方の少なくとも一軸方向端(26,27)に設けられ、各前記ガイド羽根(25)は前記長側壁(21,22)間の中心面まで延びる。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の混合/気化装置において、
各前記ガイド羽根(25)は先端が自由端である。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の混合/気化装置において、
異なる前記軸方向端(26,27)に設けられた前記ガイド羽根(25)は軸方向(20)に対して互いに反対方向に角度が付けられている、かつ/または
同じ前記軸方向端(26,27)の対向する前記長側壁(21,22)に設けられた前記ガイド羽根(25)は軸方向(20)に対して互いに反対方向に角度が付けられている。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の混合/気化装置において、
同じ前記長側壁(21,22)および/または同じ前記軸方向端(26,27)に設けられる少なくとも2つの前記ガイド羽根(25)が異なる羽根長または異なる羽根幅を有する。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の混合/気化装置において、
同じ前記長側壁(21,22)の同じ前記軸方向端(26,27)に設けられる少なくとも2つの前記ガイド羽根(25)が軸方向(20)に対して互いに異なる、または互いに反対方向に、角度が付けられている。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の混合/気化装置において、
前記軸方向端(26,27)において、前記長側壁(21,22)に沿って、前記軸方向(20)と交差する方向に複数のガイド羽根座(29)が規則的に配され、該ガイド羽根座(29)に個別に設けられる前記ガイド羽根(25)の数が該ガイド羽根座(29)自体の数より少なく、その結果該ガイド羽根座(29)の少なくとも1つに空隙(30)が設けられる。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の混合/気化装置において、
全ての前記ガイド羽根(25)がそれぞれに対応する前記長側壁(21,22)と一体に形成され、かつ/または
全ての前記側壁(21,22,23,24)が前記支持体(19)と一体に形成され、かつ/または
全ての前記側壁(21,22,23,24)と全ての前記ガイド羽根(25)が1つのウェブ状の板材を変形して形成される。
【請求項14】
内燃機関(1)、特に自動車の内燃機関、の排気システムであって、
少なくとも1つのSCR触媒コンバーターと、
前記SCR触媒コンバーター(6)の上流において還元剤を排気ガス流(10)に投入するためのインジェクター(9)を少なくとも1つ備えた還元剤投入装置(8)と、
少なくとも1つの、請求項1〜13のいずれかに記載の混合/気化装置(12)と
を備え、
前記混合/気化装置(12)が前記少なくとも1つのインジェクター(9)と前記少なくとも1つのSCR触媒コンバーター(6)との間に設けられることを特徴とする排気システム。
【請求項15】
内燃機関(1)、特に自動車の内燃機関、の排気システム(5)用のSCR触媒コンバーターであって、
SCR触媒コンバーターエレメント(16)を少なくとも1つ設けたハウジング(15)と、
少なくとも1つの、請求項1〜13のいずれかに記載の混合/気化装置(12)と
を備え、
前記混合/気化装置(12)がハウジング(15)内の、前記少なくとも1つのSCR触媒コンバーターエレメント(16)の上流に設けられることを特徴とするSCR触媒コンバーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−72436(P2013−72436A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−214115(P2012−214115)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(505261612)ヨット・エーバーシュペッヒャー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー (53)
【Fターム(参考)】