説明

混成回路

【課題】配置面積の増大抑制とショートの発生を防止するとともに、汎用性の高い高圧系回路と低圧系回路の混成回路を提供する。
【解決手段】互いの電源電圧が異なる高圧系回路と低圧系回路とを有する混成回路1において、高圧系回路である電圧測定回路26と、これとリチウムイオン電池Bとを接続するための高圧コネクタ21と、低圧系回路の一部であり、電圧測定回路26の内部スイッチのオンオフ切替制御を行う制御ユニット36とを、ハイブリッドIC5上に実装する。ハイブリッドIC5は、他の低圧系回路を実装する基板3のハイブリッドIC実装エリア3a上に重ねて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いの電源電圧が異なる高圧系回路と低圧系回路の混成回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
互いの電源電圧が異なる高圧系回路と低圧系回路の混成回路においては、従来から、例えば、特開平11−176479号公報(特許文献1)、及び、特開2006−009687号公報(特許文献2)に記載された混成回路が提案されている。特許文献1及び特許文献2では、高圧系回路と低圧系回路を別々の基板に実装し、階層状に重ねて配置することにより、基板の配置面積の増大を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−176479号公報
【特許文献2】特開2006−009687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように高圧系回路と低圧系回路の混成回路が使用される分野の一例として、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV、エンジンとモータ−ジェネレータの併用車)が挙げられる。これらの車両では、従来のエンジンを動力源とする車両と同じ電圧(例えば、実効電圧12V)で作動する低圧系回路が、制御系や車内電装品に関連して設けられる。また、低圧系回路よりも高い(例えば、実効電圧200V)電圧で作動する高圧系回路が、動力源であるモータ(又はモータジェネレータ)やその周辺機器に関連して設けられる。
【0005】
上述した電気自動車やハイブリッド車の混成回路においては、回路及び基板の設計上、ショートによる異常放電を防止するための対策が特に重要となる。それは、車両に搭載されるバッテリが鉛蓄電池から電圧の高いリチウムイオン電池に移行することに起因する。つまり、リチウムイオン電池では、異常放電により生じる電池機能のダメージが鉛蓄電池に比べて大きく、また、異常放電時の自身や配線の発熱も鉛蓄電池の場合に比べて高いからである。
【0006】
また、車両以外の分野でも、高圧系回路と低圧系回路の混成回路は、低圧系回路を単独で基板に実装する場合に比べて、回路及び基板の設計において、より一層ショートを防止できるように留意することが必要となる。それは、ショート時に大きな損傷を受けるリチウムイオン電池を電源としているか否かに関係なく重要なことである。
【0007】
その点、先に挙げた先行技術文献(特許文献1、及び特許文献2)では、基板の配置面積を抑制する設計上の方策が提示されているだけで、上述したようなショート対策については何ら解決策が示されていない。
【0008】
また、このような高圧系回路と低圧系回路の混成回路では、高圧系回路と高圧系回路の動作を制御する低圧系回路が別々の基板に実装されているため、高圧系回路に設計変更等が生じた場合、混成回路全体を変更しなければならいといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、配置面積の増大抑制とショートの発生を防止するとともに、汎用性の高い高圧系回路と低圧系回路の混成回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の混成回路は、
互いの電源電圧が異なる高圧系回路と低圧系回路とを有する混成回路において、
前記低圧系回路にその外部要素を電気的に接続するための低圧系接続用コネクタが実装された低圧系基板と、
前記低圧系基板に重ねて配置されたハイブリッドICとを備え、
前記低圧系回路は、前記高圧系回路の動作を制御する制御ユニットを有しており、
前記制御ユニットと、前記高圧系回路と、該高圧系回路にその外部要素を電気的に接続するための高圧系接続用コネクタとは、前記ハイブリッドICに実装されている、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載した本発明の混成回路によれば、混成回路の低圧系回路をその外部要素に接続するための低圧系接続用コネクタが実装された基板に、高圧系回路とその外部要素接続用の高圧系接続用コネクタとが実装されたハイブリッドICが、重ねて配置される。そのため、混成回路の基板を配置するのに要する面積は、基板に混成回路の全構成要素を実装する場合に比べて大きくなることはない。
【0012】
また、高圧系回路はハイブリッドICに実装されているので、高圧系回路に異物が混入することによるショート故障を回避することができる。
【0013】
さらに、高圧系回路の動作を制御する制御ユニットと高圧系回路、及び、高圧系接続用コネクタはハイブリッドICに実装されているので、ハイブリッドICを別のものに交換することで、高圧系回路とその制御ユニット、及び、高圧系接続用コネクタを別の仕様のものに交換することが可能となる。従って、高圧系回路に設計変更等が生じた場合、混成回路全体を変更することなく、ハイブリッドICの交換のみで対応することができるので、汎用性の高い高圧系回路と低圧系回路の混成回路を提供することが可能となる。
【0014】
以上により、配置面積の増大抑制とショートの発生を防止するとともに、汎用性の高い高圧系回路と低圧系回路の混成回路を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載した本発明の混成回路は、請求項1に記載した本発明の混成回路において、前記低圧系基板と前記ハイブリッドICの基板との間隔方向において、前記高圧系接続用コネクタの少なくとも一部を、前記ハイブリッドICの基板の前記低圧系基板に対向する面とは反対の面側に配置していることを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載した本発明の混成回路によれば、請求項1に記載した本発明の混成回路において、ハイブリッドICの低圧系基板に対向する面とは反対側の面側に、高圧系接続用コネクタの少なくとも一部が配置されている。このため、低圧系基板とハイブリッドICとの間隔を高圧系接続用コネクタの寸法が上回る場合でも、低圧系基板とハイブリッドICとの間隔を拡げずに高圧系接続用コネクタを配置することが可能となる。言い換えると、高圧系接続用コネクタの寸法よりも短い間隔で、低圧系基板とハイブリッドICとを配置することができる。従って、混成回路全体のコンパクト化を図ることができる。
【0017】
請求項3に記載した本発明の混成回路は、請求項1又は請求項2に記載した本発明の混成回路において、前記高圧系回路及び前記高圧系接続用コネクタは前記ハイブリッドICの基板の対向する一対の辺のうち一辺側に配置され、前記制御ユニットは他辺側に配置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載した本発明の混成回路によれば、請求項1又は請求項2に記載した本発明の混成回路において、ハイブリッドICの対向する二つの辺のうち一辺側に高圧系回路と高圧系接続用コネクタとが配置され、他辺側に制御ユニットが配置されている。このため、高圧系回路や高圧系接続用コネクタと低圧系回路の制御ユニットとを、物理的に位置を離してハイブリッドICの基板上に配置することができる。よって、高圧系回路と低圧系回路とのショートを回避するのに適したレイアウトを実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の混成回路によれば、配置面積の増大抑制とショートの発生を防止するとともに、汎用性の高い高圧系回路と低圧系回路の混成回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る混成回路の一部分解平面図である。
【図2】(a),(b)は本発明の一実施形態に係るハイブリッドICの平面図及び側面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る混成回路の平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るハイブリッドICの回路配置図である。
【図5】(a),(b)は図2(b)に示す高圧コネクタのハイブリッドICにおける配置の変更例を示す側面図である。
【図6】図2(a)に示す高圧コネクタのハイブリッドICにおける配置の変更例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。はじめに、図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る混成回路の実装構造について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る混成回路の一部分解平面図である。図2は、本発明の一実施形態に係るハイブリッドICの平面図及び側面図である。
【0022】
図1に示すように、混成回路1は、複数のセルからなるリチウムイオン電池B(外部要素に相当)の出力電圧を測定する電圧測定装置に設けられるもので、基板3とハイブリッドIC5を有している。
【0023】
基板3には、基板3には、例えば、車両(図示せず)に搭載されたECU(Electronic Control Unit、外部要素に相当)に接続するための低圧コネクタ31(低圧系接続用コネクタに相当)と、低圧コネクタ31に電力を供給する電源32と、低圧コネクタ31に接続されたインターフェース33が実装されている。
【0024】
また、基板3には、ハイブリッドIC5が重ねて実装されるハイブリッドIC実装エリア3aが設けられている。
【0025】
平面視矩形を呈するハイブリッドIC5の上面5a(ハイブリッドICの基板の低圧系基板に対向する面とは反対の面に相当)には、高圧系回路と低圧系回路の一部を実装するための高圧系実装エリア6aと、低圧系回路の残りの一部を実装するための低圧系実装エリア6bが設けられている。
【0026】
図2(a),(b)に示すように、ハイブリッドIC5には、その長手方向における対向する二つの辺のうち一辺側に高圧系実装エリア6aが、他辺側に低圧系実装エリア6bが設けられている。
【0027】
高圧系実装エリア6aには、リチウムイオン電池Bの出力電圧を測定する電圧測定回路(高圧系回路に相当)26が実装されている。また、高圧系実装エリア6aには、高圧系回路をリチウムイオン電池Bの各セルに接続するための高圧コネクタ21(高圧系接続用コネクタに相当)が実装されている。
【0028】
低圧系実装エリア6bには、低圧系回路の構成要素のうち、高圧系回路の動作を制御する制御ユニット36が実装されている。制御ユニット36は、電源32により作動するマイコン34と、マイコン34から出力された制御信号により電圧測定回路26に設けられたスイッチS1〜S4のオンオフ状態を切り替えるロジックIC35と、マイコン34に所定以上の電圧が入力されるのを防止するために入力電圧のオンオフ状態を切り替えるアナログSW(以下、A−SWと称する)37を有している。
【0029】
このように、低圧コネクタ31と、電源32と、インターフェース33が実装された基板3に、電圧測定回路26と、制御ユニット36と、高圧コネクタ21が実装されたハイブリッドIC5が重ねて配置される。そのため、混成回路1の基板3を配置するのに要する面積は、基板3に混成回路1の全構成要素を実装する場合に比べて大きくなることはない。また、電圧測定回路26はハイブリッドIC5に実装されているので、電圧測定回路26に異物が混入することによるショート故障を回避することができる。
【0030】
さらに、制御ユニット36と、高圧コネクタ21及び電圧測定回路26とはハイブリッドIC5に実装されており、ハイブリッドIC5自体が一つの部品となるので、ハイブリッドIC5を単品で販売することができる。また、ハイブリッドIC5又は基板3を別のものに交換することで、混成回路1を別の仕様のものに変更することが可能となる。従って、混成回路1に設計変更等が生じた場合、混成回路1全体を変更することなく、ハイブリッドIC5又は基板3の交換のみで対応することができるので、汎用性の高い高圧系回路と低圧系回路の混成回路1を提供することが可能となる。
【0031】
また、ハイブリッドIC5は、モールド成形されているので、耐ノイズ性を向上させることができる。
【0032】
さらに、ハイブリッドIC5の長手方向に対向する二つの辺のうち一辺側に高圧コネクタ21や電圧測定回路26を配置し、他辺側に制御ユニット36を配置することにより、高圧系回路の構成要素である高圧コネクタ21や電圧測定回路26と、低圧系回路の構成要素の一部である制御ユニット36との絶縁距離を、十分に確保することが可能となる。従って、高圧コネクタ21や電圧測定回路26と制御ユニット36の電位差によるショートの発生を回避することができる。
【0033】
次に、図3及び図4を参照して、本発明の実施形態に係るハイブリッドICの実装構造について詳細に説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る混成回路の平面図である。図4は、本発明の一実施形態に係るハイブリッドICの回路配置図である。
【0034】
図3に示すように、電圧測定回路26は、両極性のフライングキャパシタC1と、フライングキャパシタC1の両極をリチウムイオン電池Bの正極及び負極にそれぞれ選択的に接続するスイッチS1、S2と、フライングキャパシタC1の両極をマイコン34及び接地電位部に選択的に接続するスイッチS3、S4とを有している。各スイッチ27(S1〜S4)は、オンオフが光信号によって切り替え制御される半導体スイッチであり、例えば、フォトMOSFETで構成されている。
【0035】
図3に示す電圧測定回路26では、リチウムイオン電池Bの電圧を測定する際に、まず、マイコン34の制御により、スイッチS1、S2をオンさせると共にスイッチS3、S4をオフさせる。これにより、リチウムイオン電池Bの正極から、スイッチS1、抵抗R1、フライングキャパシタC1の一端、他端、抵抗R2、及び、スイッチS2を経て、リチウムイオン電池Bの負極に至る充電回路を形成する。そして、この充電回路において、フライングキャパシタC1をリチウムイオン電池Bの電圧に応じた電荷量で充電する。この充電により、フライングキャパシタC1の一端が正極、他端が負極となる。
【0036】
続いて、マイコン34の制御により、スイッチS1、S2をオフさせると共にスイッチS3、S4をオンさせる。これにより、フライングキャパシタC1が、抵抗R5、抵抗R3、及び、抵抗R4の直列回路と並列接続される。そして、フライングキャパシタC1の充電電圧を抵抗R5、R3、R4で分圧したうち抵抗R3の両端電圧の差に相当する電位が、マイコン34に入力されて計測される。この計測値と、抵抗R5、R3、R4の分圧比とから、フライングキャパシタC1の充電電圧をマイコン34で計測させることにより、リチウムイオン電池Bの電圧を測定する。
【0037】
このように、電圧測定回路26は、マイコン34の制御によりリチウムイオン電池Bの正極に接続された正極側部分26a(スイッチS1、抵抗R1、及び、フライングキャパシタC1の一端)と、マイコン34の制御によりリチウムイオン電池Bの負極に接続された負極側部分26b(フライングキャパシタC1の他端、抵抗R2、及び、スイッチS2)を有することとなる。
【0038】
そして、図4に示すように、ハイブリッドIC5の長手方向とは異なる方向に対向する二つの辺のうち一辺側に、電圧測定回路26の正極側部分26aを配置し、他辺側に電圧測定回路26の負極側部分26bを配置することにより、正極側部分26aと負極側部分26bの絶縁距離を十分に確保することが可能となる。従って、正極側部分26aと負極側部分26bの電位差によるショートの発生を回避することができる。
【0039】
また、図4に示すように、電圧測定回路26と制御ユニット36の間には、オンオフ状態が光信号によって切り替え制御される半導体スイッチ27(S1〜S4)が配置されている。この光信号によってオンオフ制御される半導体スイッチ27(S1〜S4)は、電気的に互いに絶縁された部分を有している。このような絶縁部分が電圧測定回路26と制御ユニット36との間に存在することで、両者間の放電経路が遮断されることになる。このため、確実に電圧測定回路26と制御ユニット36の絶縁を確保することができる。
【0040】
さらに、正極側部分26aと負極側部分26bの間にも半導体スイッチ27(S1〜S4)が配置されている。この光信号によってオンオフ制御される半導体スイッチ27(S1〜S4)は、電気的に互いに絶縁された部分を有している。このような絶縁部分が正極側部分26aと負極側部分26bとの間に存在することで、両者間の放電経路が遮断されることになる。このため、確実に電圧測定回路26の正極側部分26aと負極側部分26bの絶縁を確保することができる。
【0041】
このようにして、本発明の実施形態に係る混成回路1は、低圧コネクタ31と、電源32と、インターフェース33が実装された基板3に、高圧系回路の構成要素である高圧コネクタ21及び電圧測定回路26と、低圧系回路の構成要素である制御ユニット36が実装されたハイブリッドIC5が重ねて配置される。そのため、混成回路1の基板3を配置するのに要する面積は、基板3に混成回路1の全構成要素を実装する場合に比べて大きくなることはない。
【0042】
また、電圧測定回路26はハイブリッドIC5に実装されているので、異物が混入することによるショート故障を回避することができる。
【0043】
さらに、電圧測定回路26と、電圧測定回路26の動作を制御する制御ユニット36、そして、電圧測定回路26にリチウムイオン電池Bを接続するための高圧コネクタ21が、ハイブリッドIC5に実装されているので、ハイブリッドIC5又は基板3を別のものに交換することで、混成回路1を別の仕様に変更することが可能となる。従って、混成回路1に設計変更等が生じた場合、混成回路1全体を変更することなく、ハイブリッドIC5又は基板3の交換のみで対応することができるので、汎用性の高い高圧系回路と低圧系回路の混成回路1を提供することが可能となる。
【0044】
以上により、本発明の混成回路1によれば、配置面積の増大抑制とショートの発生を防止するとともに、汎用性の高い高圧系回路と低圧系回路の混成回路1を提供することができる。
【0045】
また、本発明の実施形態に係る混成回路1は、ハイブリッドIC5の長手方向に対向する二つの辺のうち一辺側に電圧測定回路26が配置され、他辺側に制御ユニット36が配置されているので、電圧測定回路26と制御ユニット36の絶縁距離を十分に確保することが可能となる。従って、電圧測定回路26と制御ユニット36の電位差によるショートの発生を回避することができる。
【0046】
さらに、本発明の実施形態に係る混成回路1は、電圧測定回路26と制御ユニット36の間には、オンオフ状態が光信号によって切り替え制御される半導体スイッチ27(S1〜S4)が配置されている。この光信号によってオンオフ制御される半導体スイッチ27(S1〜S4)は、電気的に互いに絶縁された部分を有している。このような絶縁部分が電圧測定回路26と制御ユニット36との間に存在することで、両者間の放電経路が遮断されることになる。このため、確実に電圧測定回路26と制御ユニット36の絶縁を確保することができる。
【0047】
また、本発明の実施形態に係る混成回路1は、ハイブリッドIC5の長手方向とは異なる方向に対向する二つの辺のうち一辺側に、マイコン34の制御によりリチウムイオン電池Bの正極に接続される電圧測定回路26の正極側部分26aが配置され、他辺側にマイコン34の制御によりリチウムイオン電池Bの負極に接続される電圧測定回路26の負極側部分26bが配置されているので、正極側部分26aと負極側部分26bの絶縁距離を十分に確保することが可能となる。従って、正極側部分26aと負極側部分26bの電位差によるショートの発生を回避することができる。
【0048】
さらに、本発明の実施形態に係る混成回路1は、正極側部分26aと負極側部分26bの間には、オンオフ状態が光信号によって切り替え制御される各半導体スイッチ27(S1〜S4)が配置されている。この光信号によってオンオフ制御される半導体スイッチ27(S1〜S4)は、電気的に互いに絶縁された部分を有している。このような絶縁部分が正極側部分26aと負極側部分26bとの間に存在することで、両者間の放電経路が遮断されることになる。このため、確実に電圧測定回路26の正極側部分26aと負極側部分26bの絶縁を確保した安全性の高い混成回路を提供することができる。
【0049】
また、本発明の実施形態に係る混成回路1は、高圧回路が全てハイブリッドIC5としてパッケージングされ、モールド成形により周辺と絶縁されているので、低圧回路側に対する絶縁性の向上と、メンテナンス時等における感電防止面から見た安全性の向上を図ることができる。しかも、高圧コネクタ21を含む高圧回路が全て基板3の実装対象から除外されるので、基板3の小型化を図ることができ、また、高圧回路を低圧回路と基板3上で混在させる必要がないので、基板3の部品実装効率を高めることができる。
【0050】
以上、本発明の混成回路を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0051】
例えば、上記した実施形態では、図2(a),(b)に示すように、高圧コネクタ21を、電圧測定回路26や制御ユニット36等と共に、ハイブリッドIC5の上面に配置した場合を説明した。
【0052】
しかし、図5(a)の側面図に示すように、ハイブリッドIC5の基板3と対向する下面5b(ハイブリッドICの基板の低圧系基板に対向する面に相当)に高圧コネクタ21を配置してもよい。このように配置すれば、上面5aに高圧コネクタ21の配置スペースを必要としないので、上面5aを電圧測定回路26や制御ユニット36等の配置スペースとして有効活用することができる。
【0053】
あるいは、図5(b)の側面図に示すように、ハイブリッドIC5の基板に切り欠きを設けて高圧コネクタ21を嵌め込むことで、高圧コネクタ21の一部をハイブリッドIC5の上面側に、他の一部をハイブリッドIC5の下面側に、両面に跨がるように配置してもよい。このように配置すれば、高圧コネクタ21の高さよりも短い間隔で、基板3とハイブリッドIC5とを配置することができ、混成回路1全体のコンパクト化を図ることができる。
【0054】
また、図6の平面図に示すように、ハイブリッドIC5の長手方向の一辺側ではなく、長手方向とは異なる方向に対向する二つの辺のうち一辺側に高圧コネクタ21を配置してもよい。その場合にも、図5(a),(b)に示すように、高圧コネクタ21をハイブリッドIC5の下面5b側に配置したり、ハイブリッドIC5に切り欠きを設けて高圧コネクタ21を嵌め込み、上面5aと下面5bとに跨がるように高圧コネクタ21を配置することができる。
【0055】
また、上記した実施形態では、リチウムイオン電池Bの各セルの電圧を測定する混成回路1を例に取って説明したが、本発明は、電源電圧が高い高圧系回路と電源電圧が低い低圧系回路とが混在する混成回路を基板に実装する場合の構造として、広い分野に適用可能である。
【0056】
例えば、ニッケル水素組電池や燃料電池等の高圧電池全般の電源モニタ用の混成回路にも本発明は適用可能である。また、電源モニタ用に限らず、例えば漏電センサ用の混成回路にも本発明は適用可能である。さらに、本発明の混成回路は、車両に搭載される電池に限らず、あるいは、車両以外で用いる電池にも限定されず、高圧電源系のシステムで各種の用途に用いられる混成回路として広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、互いの電源電圧が異なる高圧系回路と低圧系回路との混成回路を基板に実装する上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 混成回路
3 基板
3a ハイブリッドIC実装エリア
5 ハイブリッドIC
5a ハイブリッドIC上面
5b ハイブリッドIC下面
6a 高圧系回路実装エリア
6b 低圧系回路実装エリア
21 高圧コネクタ
26 電圧測定回路
26a 正極側部分
26b 負極側部分
27 半導体スイッチ
31 低圧コネクタ
32 電源
33 インターフェース
34 マイコン
35 ロジックIC
36 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いの電源電圧が異なる高圧系回路と低圧系回路とを有する混成回路において、
前記低圧系回路にその外部要素を電気的に接続するための低圧系接続用コネクタが実装された低圧系基板と、
前記低圧系基板に重ねて配置されたハイブリッドICとを備え、
前記低圧系回路は、前記高圧系回路の動作を制御する制御ユニットを有しており、
前記制御ユニットと、前記高圧系回路と、該高圧系回路にその外部要素を電気的に接続するための高圧系接続用コネクタとは、前記ハイブリッドICに実装されている、
ことを特徴とする混成回路。
【請求項2】
前記低圧系基板と前記ハイブリッドICの基板との間隔方向において、前記高圧系接続用コネクタの少なくとも一部を、前記ハイブリッドICの基板の前記低圧系基板に対向する面とは反対の面側に配置していることを特徴とする請求項1記載の混成回路。
【請求項3】
前記高圧系回路及び前記高圧系接続用コネクタは前記ハイブリッドICの基板の対向する一対の辺のうち一辺側に配置され、前記制御ユニットは他辺側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の混成回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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