説明

混晶および着色顔料分散組成物

【課題】青色顔料として色再現性に優れる吸収特性を有する混晶を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で示される化合物と、下記一般式(II)で示される化合物とを含む混晶とする。



(一般式(I)、(II)中、Xは、−SO−Z、−SO−Z、−SONR、−SO、−CONR、または−COを表す。Z、RおよびRは、水素原子、アルキル基、アリール基、複素環基等を表す。Yは1価の置換基を表す。a、bは0〜16で0≦a+b≦16を満たす。
〜GおよびQ〜Qは、炭素原子または窒素原子を表す。A〜Aは、G〜GおよびQ〜Qと共に芳香族環または複素環を形成するのに必要な原子群を表す。但し、形成される4つの環のうち少なくとも1つは複素環である。前記芳香族環または複素環は置換基を有してもよい。
、Mは水素原子、金属元素等を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混晶および着色顔料分散組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フタロシアニン顔料は有機顔料の中でも最も生産量が多く、青色から緑色の幅広い色相を備え、かつ非常に鮮明で着色力が大きく各種堅牢度が高い。加えて比較的安価に製造されることから、着色分野で広く使われている重要な顔料である。フタロシアニン顔料の中でも銅フタロシアニン顔料は色相と鮮明さが特徴で、カラー印刷の三原色の一つでもあるシアンの色を出すため最も適している。
【0003】
銅フタロシアニン顔料はδ型とε型、α型とγ型、β型の3タイプ結晶型に大別でき、色相もこの順で緑味に移行することが知られている。このように結晶型と色相には相関があり、このため銅フタロシアニンは結晶型によって用途が異なる。例えば、ε型はカラーフィルター等に、α型は捺染、インキ、塗料等に、β型はトナー、グラビア印刷等に使用されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
しかし、技術の多様化により要求される青色顔料としての色相は、一種類の銅フタロシアニン顔料では表現できないのが現状である。例えばカラーフィルターとして使用されるε型銅フタロシアニンは、やや赤味が不足するため現在ではPigment Violet 23と併用することで使用されている。このように、色相を好ましい領域に調色するために2種以上の顔料を混合する着色組成物の作製方法がいくつか知られている。
【0005】
2種以上の顔料の混合には、異種顔料分散物の混合、昇華による混合、再沈による混合等が一般的に知られている。
異種顔料分散物の混合する技術として、銅フタロシアニン顔料分散物と銅アザフタロシアニン顔料分散物を混合する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。この方法は、高品質なカラーフィルター、特に青色画像部における透過率を改良するための方法で、両顔料分散物を混合することで最大透過率を与える波長を調整することで、三波長管に合う、即ち三波長管において透明性の高い青色画像部の形成に好適な技術である。
【0006】
分散物の凝集性改良に加え諸性能を改良するための方法として、再沈法により混晶を得る技術が知られている。例えば、自動車塗料としてキナクリドン系混晶顔料についてアシッドペースティング法により光堅牢性、耐候性を改良する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)である。また、塩基と有機溶剤に溶解させた顔料溶液を酸で中和することで得られるキナクリドン系顔料の混晶は顔料の粒子サイズを制御する技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、フタロシアニン系化合物として、水素フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニルフタロシアニン及びバナジルフタロシアニンから選ばれ、無機酸あるいはアルキルスルホン酸に溶解後、析出させることによりフタロシアニン混晶体の製造方法が知られている(例えば、特許文献4参照)。この混晶体を感光体として使用すると、レーザーによるデジタル記録において所定の入力光量に対し基底電位(残留電位)に達するまで一気に流れるといった特性(高γ特性と呼ぶ)の改良が達成されるとされている。
さらに、フタロシアニン化合物に、チタニルフタロシアニン、中心金属が3価の金属であるハロゲン化金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニンの混晶を電子写真感光体に応用した例が知られている(例えば、特許文献5参照)である。この混晶体の使用で、電子写真感光体として高感度化が達成されるとされている。
更に、トリフルオロメチル基を有し、中心金属がコバルト、ニッケルまたは銅であるフタロシアニンと、トリフルオロメチル基以外の置換基を有していてもよい、中心金属がコバルト、ニッケルまたは銅であるフタロシアニンとからなるフタロシアニン混晶を応用する例が知られている(例えば、特許文献6、7参照)。この技術により、カラーフィルターにおける鮮明性すなわちフォトリソグラフィー法で青色フィルタセグメントの光選択性が向上するとされている。
【0008】
一方、半導体レーザー用の誘起光導電体を得る技術であり、異種フタロシアニン誘導体の昇華法による混晶の作製方法が知られている(例えば、特許文献8参照)。詳細には、銅フタロシアニン顔料と無金属フタロシアニン顔料とを一端、硫酸ペースティング法で分子状混合物とし、それを真空中で昇華温度まで加温し、アルミニウム板上に蒸着する方法である。この技術は2種類以上のフタロシアニンを分子レベルで混合し、一つの結晶体(顔料体)を形成する有力な方法である。
【0009】
また上記に示した顔料の混合や顔料混晶体は、一般に顔料分散物としての取り扱いが必要となるが、該顔料分散物として、例えば、(1)赤味の強い青色を呈すること、(2)容易に分散が可能なこと、(3)分散物の保存安定性が良好であること、などの特性が要求される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】有機顔料ハンドブック カラーオフィス編
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−302548号公報
【特許文献2】特開昭62−62867号公報
【特許文献3】特開昭60−35055号公報
【特許文献4】特開平8−67829号公報
【特許文献5】特開2002−251027号公報
【特許文献6】特開2005−133023号公報
【特許文献7】特開2005−134781号公報
【特許文献8】特開平2−84661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、従来の顔料分散物はこれら全ての特性を満足するに至っていない。
例えば、特許文献1に記載の方法では、混合による色相のブロード化や分散物の凝集、更には混合による低濃度化のため過剰な顔料混合分散物を必要とするなど、要求に十分に対応できるとは言えなかった。また、特許文献2、3に記載の方法では、青色顔料の作製には短波な色相のため好ましくなかった。
また、特許文献4〜8に記載の方法では、フタロシアニン系化合物を所望の赤味に富んだ青色顔料として得ることはできなかった。さらに、特許文献8に記載の方法では、昇華設備が必要となり、製造工程が煩雑になるという問題点があった。
本発明は、青色顔料として色再現性に優れる吸収特性を有する混晶と、該混晶を含む分散安定性に優れる着色顔料分散組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を達成するために、鋭意検討した結果、本発明者らは、従来にない赤味に富んだ青色を呈する新規な特定構造のフタロシアニンによる混晶体によって、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。前記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
【0014】
即ち、
<1>下記一般式(I)で示される化合物と、下記一般式(II)で示される化合物と、を含む混晶。
【0015】
【化1】

【0016】
(一般式(I)中、Xは、−SO−Z、−SO−Z、−SONR、−SO、−CONR、または−COを表す。Zは置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の複素環基を表す。RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の複素環基を表す。Yは1価の置換基を表す。aおよびbは、それぞれXおよびYの置換基数を表し、aは0〜16の整数を表し、bは0〜16の整数を表し、0≦a+b≦16を満たす。aまたはbが2以上の場合、2以上のXまたはYは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す)
【0017】
【化2】

【0018】
(一般式(II)中、G〜GおよびQ〜Qはそれぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表す。A〜Aはそれぞれ独立に、それぞれが結合するG〜GおよびQ〜Qと共に芳香族環または複素環を形成するのに必要な原子群を表す。但し、形成される4つの環のうち少なくとも1つは複素環である。前記芳香族環または複素環は、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、複素環オキシ基、アルキルおよびアリールアゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、ホスホリル基、アシル基ならびにイオン性親水性基から選ばれる置換基を有してもよい。Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す)
【0019】
<2> 前記A〜Aで表される原子群はそれぞれ独立して、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子の少なくとも1種を含むことを特徴とする前記<1>に記載の混晶。
【0020】
<3> 前記Mは、銅原子、鉄原子、亜鉛原子、ニッケル原子またはコバルト原子であることを特徴とする前記<1>または<2>に記載の混晶。
【0021】
<4> 一般式(I)で示される化合物に対する一般式(II)で示される化合物の混合率が、質量基準で0.1〜50%であることを特徴とする前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の混晶。
【0022】
<5> CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)23.5°〜29.0°の範囲に最大回折ピーク強度の10%以上の回折ピーク強度を与える回折ピークを4以上有することを特徴とする前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の混晶。
【0023】
<6> 分散状態における吸収スペクトルは、400nm以上の領域における最大吸収波長が630nm以下であって、前記最大吸収波長における吸光度の半吸光度を与える前記最大吸収波長よりも短波の吸収波長が560nm以下であることを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の混晶。
【0024】
<7> 前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の混晶と、媒体とを含む着色顔料分散組成物。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、青色顔料として色再現性に優れる吸収特性を有する混晶と、該混晶を含む分散安定性に優れる着色顔料分散組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】水性顔料分散体AのUV−Vis吸収スペクトルである。
【図2】水性顔料分散体BのUV−Vis吸収スペクトルである。
【図3】水性顔料分散体CのUV−Vis吸収スペクトルである。
【図4】水性顔料分散体DのUV−Vis吸収スペクトルである。
【図5】水性顔料分散体FのUV−Vis吸収スペクトルである。
【図6】水性顔料分散体GのUV−Vis吸収スペクトルである。
【図7】水性顔料分散体HのUV−Vis吸収スペクトルである。
【図8】水性顔料分散体IのUV−Vis吸収スペクトルである。
【図9】水性顔料分散体JのUV−Vis吸収スペクトルである。
【図10】混晶Aの粉末X線回折スペクトルである。
【図11】混晶Bの粉末X線回折スペクトルである。
【図12】混晶Cの粉末X線回折スペクトルである。
【図13】混晶Dの粉末X線回折スペクトルである。
【図14】比較化合物Eの粉末X線回折スペクトルである。
【図15】比較化合物Fの粉末X線回折スペクトルである。
【図16】比較化合物Gの粉末X線回折スペクトルである。
【図17】比較化合物Hの粉末X線回折スペクトルである。
【図18】比較化合物Iの粉末X線回折スペクトルである。
【図19】比較化合物Jの粉末X線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔混晶〕
本発明における混晶とは、2種類以上の異種化合物の1つ1つの分子が、ある規則性を持って配列して結晶を構成した状態、もしくは2種以上の異種化合物が分子レベルで相互作用することで、ある規則性を持った結晶を構成した状態をいう。このような結晶状態は、X線回折パターンを測定し、それぞれの単独化合物のX線回折パターンからの変化を観測することで容易に確認することができる。すなわち混晶のX線回折パターンは、混晶を構成するそれぞれの顔料単独のX線回折パターンとは異なるパターンを示す。
【0028】
混晶の作製方法としては、一般的な方法として、例えば再沈殿法を用いることができる。以下詳細に説明する。
再沈殿法とは、顔料または顔料を含む混合物の少なくとも一部を、酸や塩基を含んでいても良い溶媒や高分子化合物などの液状化合物に溶解させ、その後、外的因子により、顔料あるいは顔料混合物を溶解状態から析出状態に移行させる方法である。外的因子としては例えば、顔料が溶解しないような溶媒(以下、「貧溶媒」ということがある)を添加したり、顔料を構成する化合物の一部が中和されたり、顔料を構成する化合物の一部を置換あるいは分解などにより改変するための試薬、光、熱等を挙げることができる。
以下に再沈殿法による顔料化について詳細に述べる。
【0029】
顔料を構成する化合物を濃硫酸などの酸に溶解させ、これを氷水中に投入して顔料を結晶化させ、その後、撹拌下沈殿を分散させることにより、有機顔料を精製・微細化する方法が挙げられる。この方法は一般的にはアシッドペースティング法として知られている。
【0030】
再沈殿法のもう一つの例として、塩基に溶解後、析出させる方法がある。具体的には例えば、ジメチルスルホキシドなどの極性有機溶媒に水酸化ナトリウムのような塩基の存在下で有機顔料を溶解させ、均質な混合溶液とした後、酸を用いて中和再沈を行うことで再び結晶化させる方法である。
【0031】
また、顔料を構成する化合物がカルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などの酸基を有する場合において、該顔料を構成する化合物を溶媒に溶解後、水酸化ナトリウムなどの無機塩基や酢酸ナトリウムなどの有機塩基を添加することで中和し、溶解度を小さくして析出させる方法が挙げられる。
【0032】
更に、顔料を構成する化合物の母体骨格に溶媒可溶性を促進させる保護基が導入された溶媒可溶性顔料誘導体(顔料前駆体)を溶媒に完溶させ、導入された保護基を、化学的処理、光分解的処理、熱処理などにより脱離させて、母体骨格からなる顔料を結晶化する方法が挙げられる。この方法は一般にラテントピグメント法として知られる。
【0033】
その他、再沈殿法とは少し異なるが、化合物の合成過程で析出させる方法も挙げられる。具体的には例えば、フタロシアニン誘導体の原料としてのフタロニトリル誘導体は、反応溶媒によっては完溶する。その状態からフタロシアニン誘導体を合成する工程において、生成するフタロシアニン誘導体の反応溶媒に対する低い溶解性を利用して、反応系から析出させる方法である。この方法はフタロシアニンの合成に限らず、アゾ顔料やキレート顔料においても同様に実施できる。
【0034】
本発明における混晶の作製方法は、顔料または顔料を含む混合物の少なくとも一部を溶解させて顔料溶液を得る溶解工程と、前記顔料溶液から混晶を析出させる析出工程とを含み、必要に応じてその他の工程を含んで構成することができる。
【0035】
前記溶解工程は、顔料または顔料を含む混合物の少なくとも一部が溶解されればよく、顔料または顔料を含む混合物が完全に溶解した顔料溶液を得る工程であっても、顔料または顔料を含む混合物の一部のみが溶解した顔料懸濁液を得る工程であってもよい。
また溶解に用いる溶媒としては、酸、塩基、中性溶媒のいずれであってもよい。
【0036】
本発明において、顔料または顔料を含む混合物の溶解に用いることができる酸としては、顔料が溶解する酸であれば特に制限はない。本発明において酸とは、顔料を完溶できる酸であっても、顔料の一部を溶解できる酸であってもよい。好ましくは顔料を完溶させる酸である。酸には無機酸(鉱酸とも呼ばれる)および有機酸が使用できる。無機酸としては塩酸、リン酸、硫酸等が挙げられ、好ましくはリン酸、硫酸であり、更に好ましくは硫酸である。また有機酸には蟻酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸等が挙げられ、好ましくは酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸であり、更に好ましくはメタンスルホン酸である。
また、これらの酸は単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
本発明において全顔料量に対する酸の使用量は、1〜500質量倍であることが好ましく、より好ましくは1〜200質量倍であり、更に好ましくは1〜100質量倍である。1質量倍以上とすることで顔料の溶解性が良好になる。また500質量倍以下とすることで作業性が良好になり、コスト的にも有利である。
【0037】
また、顔料および顔料を含む混合物の溶解に用いることができる塩基としては、顔料が溶解する塩基であれば特に制限はない。塩基としては例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ナトリウムメトキシド等を使用することができる。
これらの塩基は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
また、全顔料量に対する塩基の使用量は、1〜500質量倍であることが好ましく、より好ましくは1〜200質量倍であり、更に好ましくは1〜100質量倍である。1質量倍以上とすることで顔料の溶解性が良好になる。また500質量倍以下とすることで作業性が良好になり、コスト的にも有利である。
【0038】
顔料および顔料を含む混合物の溶解に用いることができる中性溶媒としては、顔料が溶解する溶媒であれば特に制限はない。例えば極性溶剤(具体的には、アセトニトリル、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、プロピレンカーボネート、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N,N−ジエチルドデカンアミド、水等)、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、ハロゲン系溶媒、エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0039】
アルコール系溶媒の例としては、メタノール、エタノール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、フェニルプロピルアルコール、フルフリルアルコール、アニスアルコール等のモノアルコール類が挙げられる。
またモノ、オリゴ(特にジ−及びトリ−)及びポリ−C〜C−アルキレングリコール、すなわち「グリコール類」、並びにこれらのモノ−C〜C−アルキル−及びモノアリールエーテル、すなわち、「グリコールモノエーテル類」、グリセリン等の糖アルコール類も挙げられる。
【0040】
グリコール類の具体例としては、エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ジ−、トリ−及びテトラ−エチレングリコール、ジ−、トリ−及びテトラ−プロピレングリコール、ポリエチレン−及びポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0041】
また、グリコールモノエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル及びエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル及びプロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジ−、トリ−及びテトラ−エチレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル及びモノブチルエーテル、ジ−、トリ−及びテトラプロピレングリコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル及びモノブチルエーテル、並びにエチレン−及びプロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0042】
また、エステル系溶媒として、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。ケトン系溶媒として、例えばアセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが挙げられる。ハロゲン系溶媒として、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエタン、クロルベンゼンが挙げられる。エーテル系溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンが挙げられる。
また本発明では、工業的に使用される不活性溶剤を使用することもできる。例としてニトロベンゼン、トリクロロベンゼン、クロロナフタレン、メチルナフタレン、ナフタレン、アルキルベンゼン、パラフィン、ナフテン、ケロシンが挙げられる。
【0043】
本発明における中性溶媒として好ましくは、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、水、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、クロロナフタレンが好ましく、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロベンゼン、クロロナフタレンである。
これらは1種もしくは互いに影響しない組み合わせであれば2種以上を任意に混合していて用いても良い。溶媒の使用量は全顔料量に対し1〜500質量倍であることが好ましく、より好ましくは1〜200質量倍であり、更に好ましくは1〜100質量倍である。1質量倍以上とすることで顔料の溶解性が良好になる。また1000質量倍以下とすることで作業性が良好になり、コスト的にも有利である。
【0044】
また本発明に用いることができる溶媒は、以下に示す酸や塩基との混合溶媒でも良い。酸としては、塩酸、リン酸、硫酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸等を挙げることができ、塩基としては例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等を挙げることができる。
好ましい例としては、酸として酢酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸であり、塩基としては水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドであり、より好ましくは酸として硫酸、メタンスルホン酸であり、塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシドであり、更に好ましくは酸として硫酸、メタンスルホン酸であり、塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0045】
また本発明に用いることができる溶媒は、酸または塩基を含む溶媒であることもまた好ましい。好ましい酸または塩基を含む溶媒例としては、硫酸/メタノール、塩酸/メタノール、リン酸/ジエチレングリコール、硫酸/テトラヒドロフラン、メタンスルホン酸/メタノール、メタンスルホン酸/テトラヒドロフラン、ナトリウムメトキシド/エチレングリコール、トリエチルアミン/ジメチルスルホキシド、ピリジン/クロロナフタレン、ピリジン/N−メチル−2−ピロリドンであり、より好ましくは硫酸/メタノール、硫酸/テトラヒドロフラン、メタンスルホン酸/メタノール、メタンスルホン酸/テトラヒドロフラン、ナトリウムメトキシド/エチレングリコール、トリエチルアミン/ジメチルスルホキシド、ピリジン/クロロナフタレン、ピリジン/N−メチル−2−ピロリドンであり、さらに好ましくは硫酸/メタノール、硫酸/テトラヒドロフラン、メタンスルホン酸/メタノール、メタンスルホン酸/テトラヒドロフラン、ナトリウムメトキシド/エチレングリコール、ピリジン/クロロナフタレンである。
【0046】
本発明において顔料または顔料を含む混合物を溶解させる溶解方法は、顔料が溶ける操作であれば特に限定は無い。具体的には例えば、中性溶媒、酸、塩基あるいはそれらの混合物に、ある程度粉砕した顔料粉末(例えば、メノウ乳鉢等を用いて粉砕できる)を攪拌しながら徐々に添加し、数時間攪拌して溶解させることができる。完全に溶解したか否かは、例えば、ガラスフィルター等で濾過した場合に残渣が残るか否かで判断できる。
【0047】
また溶解の際の温度は、顔料が溶解する限り特に制限はないが、−20℃〜40℃が好ましく、−10〜30℃が好ましく、更に好ましくは−5〜25℃である。−20℃以上とすることで製造設備としての負荷を軽減でき、40℃以下とすることで顔料化合物の分解や置換反応を抑制することができる。
【0048】
前記析出工程は、顔料または顔料を含む混合物の少なくとも一部が溶解した顔料溶液から、顔料を混晶として析出させることができれば特に制限はない。顔料の析出は、例えば、一度溶解させた顔料溶液を攪拌した別の溶媒中に注ぐことで達成できる。前記別の溶媒としては、顔料の溶解性が乏しい(一般には貧溶媒という)溶媒が好適である。
使用可能な溶媒としては、上記の溶解時に使用することができる溶媒として例示した溶媒から選択される貧溶媒を挙げることができる。また、酸と溶媒の混合溶液に溶解させた顔料溶液であれば、塩基もしくは塩基を含む溶媒中に注ぐことで混晶を析出させことができる。逆に塩基と溶媒の混合溶液に溶解させた顔料溶液であれば、酸もしくは酸を含む溶媒中に注ぐことで混晶を析出させることも可能である。
【0049】
以上は混晶の構成成分である2種以上の異種化合物を同時に溶解し、同時に析出させる方法である。この方法に対し、一方の化合物を上述の方法で溶解させ、他方の化合物が溶解あるいは懸濁した混合液中に注ぐことで、混晶を得ることも可能である。
例えば、一方の化合物の硫酸溶液を、他方の化合物が溶解した水溶液に注ぐ方法を挙げることができる。この場合、例えば、顔料の表面(界面)へ、溶液中の他方の化合物が、ある結晶型を構築しながら顔料表面に被覆されると考えられる。
【0050】
本発明の混晶は、一般式(I)で示される化合物の少なくとも1種と、一般式(II)で示される化合物の少なくとも1種とを含む。
本発明における一般式(I)で示される化合物と一般式(II)で示される化合物とを含む混晶の作製方法としては、一般式(I)で示される化合物と一般式(II)で示される化合物の少なくとも一部を溶解する溶解工程と、前記溶解工程で得られた溶液と貧溶媒とを混合して混晶を析出させる析出工程とを含む作製方法であっても、一般式(I)で示される化合物と一般式(II)で示される化合物のうち、一方の化合物の少なくとも一部を溶解する溶解工程と、前記溶解工程で得られた溶液と他方の化合物が溶解した溶液とを混合して混晶を析出させる析出工程とを含む作製方法であってもよい。
本発明においては、一般式(I)で示される化合物と一般式(II)で示される化合物の少なくとも一部を溶解する溶解工程と、前記溶解工程で得られた溶液と貧溶媒とを混合して混晶を析出させる析出工程とを含む作製方法であることが好ましく、前記溶解工程に酸を含む溶媒を用いる作製方法であることがより好ましい。
【0051】
本発明の混晶において好適な一般式(I)で示される化合物に対する一般式(II)で示される化合物の混合比率は、質量基準で0.1〜50%が好ましい。より好ましくは0.2〜40%であり、更に好ましくは0.3〜30%である。前記範囲内とすることで、色相のコントロールをより容易に行うことができ、所望の色相を有する混晶を得ることができる。
【0052】
混晶における2種以上の異種化合物の具体的な組み合わせについては、所望の色相が得られる限り、特に限定されない。しかし、例えば混晶が異種化合物間のπ−πスタッキングによる相互作用で形成されると仮定した場合、相互作用する部分の電子的な差、すなわち電子的に欠乏している部分と電子的に豊富な部分とが、重なり合い、引付け合うためのドライビングホースとなると考えられる。従って異種化合物間に微弱でも電子的な差が生ずるような組み合わせが好ましい。例えば一方の化合物に電子求引性基あるいは電子供与性基を導入する方法が一つとして考えられる。
尚、本発明における混晶作製に好適に用いられる2種以上の異種化合物の具体的な組み合わせについては後述する。
【0053】
〔一般式(I)で示される化合物〕
本発明の混晶に含まれる化合物の少なくとも1種は、下記一般式(I)で示される化合物であることを特徴とする。
【0054】
【化3】

【0055】
一般式(I)においてXは、−SO−Z、−SO−Z、−SONR、−SO、−CONR、または−COを表す。これらの置換基の中でも、−SO−Z、−SO−Z、−SONR、−SOおよび−COが好ましく、−SO−Z、−SONR、−SOおよび−COがより好ましく、−SO−Z、−SONR、−SOHおよび−COHがさらに好ましい。
Xが−SOHまたは−COHを表す場合、これらは塩を形成していてもよい。塩を形成する対イオンとしてはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよびアンモニウムイオンが好ましい。
aは0〜16の整数を表し、Xの置換基数を表す。後述の置換基Yの置換基数を表すbとの関係は、0≦a+b≦16である。従って、aは0も表し、Xで表される置換基を有さないこともある。
また、Xの置換基数を表すaが2以上の整数の場合、2以上のXは同一でも異なっていても良い。2以上のXが互いに異なる場合、2以上のXはそれぞれ独立に上記のいずれかの基を表す。また、2以上のXは同じ一般式で表される置換基であってもよい。例えば2以上のXが全て−SO−Zであってもよい。この場合、2以上のXにおけるそれぞれのZは互いに異なる基でも、同じ基であっても良い。
【0056】
上記Zは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の複素環基を表す。好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の複素環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、または置換複素環基がより好ましい。
上記R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の複素環基を表す。なかでも、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、および置換もしくは無置換の複素環基が好ましく、その中でも水素原子、置換アルキル基、置換アリール基、または置換複素環基がさらに好ましい。
【0057】
、RおよびZが表す置換もしくは無置換のアルキル基としては、炭素原子数が1〜30のアルキル基が好ましい。アルキル基は直鎖のアルキル基であっても、分岐のアルキル基でもよく、また不斉炭素を有する基でもよい。好ましくは炭素数が1〜20のアルキル基であり、更に好ましくは炭素数が1〜15のアルキル基である。
前記アルキル基の置換基の例としては、後述のZ、R、R、およびYが更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。中でもヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基が特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基をさらに有していても良い。なお、前記アルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含まず、以下他の基の説明おいても同様である。
【0058】
、RおよびZが表す置換もしくは無置換のシクロアルキル基としては、炭素原子数が5〜30のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基は不斉炭素を有していても良い。好ましくは炭素数が5〜20のシクロアルキル基が好ましく、更に好ましくは炭素数が5〜15のシクロアルキル基である。置換基の例としては、後述のZ、R、R、およびYが更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。なかでも、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アシルアミノ基、およびスルホンアミド基が特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基をさらに有していても良い。
【0059】
、RおよびZが表す置換もしくは無置換のアルケニル基としては、炭素原子数が2〜30のアルケニル基が好ましい。アルケニル基は分岐のアルケニル基でも良く、不斉炭素を有していても良い。好ましくは炭素数が2〜20のアルケニル基が好ましく、更に好ましくは2〜15のアルケニル基である。置換基の例としては、後述のZ、R、R、およびYが更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。なかでも、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基が特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基をさらに有していてもよい。
【0060】
、RおよびZが表す置換もしくは無置換のアラルキル基としては、炭素原子数が7〜30のアラルキル基が好ましい。アラルキル基としては分岐のアラルキル基でも良く、不斉炭素を有していても良い。好ましいアラルキル基は炭素数が7〜20のもので、更に好ましくは炭素数が7〜15のアラルキル基である。置換基の例としては、後述のZ、R、R、およびYが更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。なかでも、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、シアノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基が特に好ましい。この他、ハロゲン原子やイオン性親水性基をさらに有していてもよい。
【0061】
、RおよびZが表す置換もしくは無置換のアリール基としては、炭素原子数が6〜30のアリール基が好ましい。更に好ましくは炭素数が6〜25のアリール基であり、更に好ましくは炭素数が6〜20のアリール基である。置換基の例としては、後述のZ、R、R、およびYが更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。アリール基の置換基としてはハロゲン原子、複素環基、シアノ基、カルボキシ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホ基、および4級アンモニウム基が好ましく、シアノ基、カルボキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、アシル基、スルホ基、および4級アンモニウム基がより好ましく、さらに好ましくはシアノ基、カルボキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、イミド基、スルホ基、および4級アンモニウム基である。
【0062】
、RおよびZが表す複素環基としては、5員または6員環のものが好ましく、それらは更に縮環していてもよい。また、芳香族複素環であっても非芳香族複素環であっても良い。以下にR、RおよびZで表される複素環基を、置換位置を省略した複素環化合物の形で例示するが、置換位置は限定されるものではなく、例えばピリジンであれば、2位、3位、4位で置換することが可能である。ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。
なかでも、芳香族複素環基が好ましく、その好ましい例を先と同様に例示すると、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールが挙げられ、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールがより好ましい。
また、複素環基は置換基を有していても良く、置換基の例としては、後述のZ、R、R、およびYが更に置換基を持つことが可能な場合の置換基と同じものが挙げられる。好ましい置換基も前記アリール基の置換基と同様である。
【0063】
Yは1価の置換基を表し、具体的には、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、アルキルオキシカルボニル基、複素環オキシ基、アルキルおよびアリールアゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、ホスホリル基、およびアシル基を挙げることができる。各々はさらに置換基を有していてもよい。
【0064】
中でも、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルキルオキシ基、アシルアミノ基、ウレイド基、およびアルキルオキシカルボニル基が好ましく、特にハロゲン原子、およびシアノ基が好ましい。
【0065】
またZ、R、R、およびYが更に置換基を有することが可能な基であるときは、以下に挙げる置換基を更に有してもよい。
炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数7〜18の直鎖または分岐鎖アラルキル基、炭素数2〜12の直鎖または分岐鎖アルケニル基、炭素数2〜12の直鎖または分岐鎖アルキニル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐鎖シクロアルキル基、炭素数3〜12の直鎖または分岐鎖シクロアルケニル基(以上の各基の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルスルホニルエチル基、3−フェノキシプロピル基、トリフルオロメチル基、シクロペンチル基)、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)、アリール基(例えば、フェニル基、4−t−ブチルフェニル基、2,4−ジ−t−アミルフェニル基)、複素環基(例えば、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基)、
【0066】
シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メタンスルホニルエトキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−t−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、3−t−ブチルオキシカルバモイルフェノキシ基、3−メトキシカルバモイル基)、アシルアミノ基(例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、4−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)ブタンアミド基)、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルブチルアミノ基)、アニリノ基(例えば、フェニルアミノ基、2−クロロアニリノ基)、ウレイド基(例えば、フェニルウレイド基、メチルウレイド基、N,N−ジブチルウレイド基)、スルファモイルアミノ基(例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、オクチルチオ基、2−フェノキシエチルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、2−ブトキシ−5−t−オクチルフェニルチオ基、2−カルボキシフェニルチオ基)、アルキルオキシカルボニルアミノ基(例えば、メトキシカルボニルアミノ基)、アルキルおよびアリールスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、p−トルエンスルホンアミド基)、
【0067】
カルバモイル基(例えば、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基)、スルファモイル基(例えば、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基)、アルキルおよびアリールスルホニル基(例えば、メタンスルホニル基、オクタンスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基)、複素環オキシ基(例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、アルキルおよびアリールアゾ基(例えば、フェニルアゾ基、4−メトキシフェニルアゾ基、4−ピバロイルアミノフェニルアゾ基、2−ヒドロキシ−4−プロパノイルフェニルアゾ基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基)、カルバモイルオキシ基(例えば、N−メチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基)、
【0068】
シリルオキシ基(例えば、トリメチルシリルオキシ基、ジブチルメチルシリルオキシ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、イミド基(例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、複素環チオ基(例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2,4−ジ−フェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ基、2−ピリジルチオ基)、スルフィニル基(例えば、3−フェノキシプロピルスルフィニル基)、ホスホニル基(例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、アシル基(例えば、アセチル基、3−フェニルプロパノイル基、ベンゾイル基)、イオン性親水性基(例えば、カルボキシ基、スルホ基、ホスホノ基および4級アンモニウム基)が挙げられる。
【0069】
Z、R、R、およびYが更に置換基を有することが可能な基としての好ましい基は、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、複素環オキシ基、アルキルおよびアリールアゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、ホスホニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、イオン性親水性基が挙げられ、より好ましくは、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、複素環オキシ基、アルキルおよびアリールアゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、ホスホニル基、アリールオキシカルボニル基、イオン性親水性基が挙げられる。
【0070】
前記一般式(I)で表されるフタロシアニン誘導体が水溶性である場合には、イオン性親水性基を有することが好ましい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシ基、ホスホノ基等のアニオン性基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシ基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシ基、スルホ基が好ましい。ここでカルボキシ基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンとしてはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよびアンモニウムイオンであることが好ましい。より好ましくは、リチウムイオン、カリウムイオンおよびアンモニウムイオンであり、さらに好ましくはリチウムイオンおよびアンモニウムイオンである。
【0071】
aおよびbは、それぞれXおよびYの置換基数を表す。aは、0〜16の整数を表し、bは、0〜16の整数を表す。好ましくはaは、0〜8の整数を表し、bは、0〜8の整数を表し、更に好ましくは、aは、0〜4の整数を表し、bは、0〜4の整数を表す。なお、aおよびbのいずれかが2以上の整数であるときは、XおよびYのいずれかは複数個存在することになるが、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0072】
は水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す。本発明においてMとして好ましいものとしては、水素原子の他に、金属元素として、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。また、酸化物としては、VO、GeO等が好ましく挙げられる。また、水酸化物としては、Si(OH)、Cr(OH)、Sn(OH)等が好ましく挙げられる。さらに、ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl、VCl、VCl、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が挙げられる。なかでも、Fe、Cu、Ni、Zn、Al、Si等が好ましく、Fe、Cu、Siがより好ましい。
【0073】
また、2以上の一般式(I)で示される化合物(以下、「Pc−M」と略記することがある)が、それぞれのMと結合するL(2価の連結基)を介して多量体を形成していてもよい。例えば、Pc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L−M−Pc)または3量体を形成してもよく、その場合のMはそれぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
【0074】
前記Lで表される2価の連結基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH−、およびこれらを組み合わせて形成される2価の連結基であることが好ましい。
【0075】
以上纏めると、本発明において、前記一般式(I)表される化合物の好ましい態様としては、以下の(イ)〜(ヘ)に記載の好ましい態様の少なくとも2つを充足することが好ましく、以下の(イ)〜(ヘ)に記載の好ましい態様のすべてを充足することがより好ましく、以下の(イ)〜(ヘ)に記載のより好ましい態様またはさらに好ましい態様の少なくとも2つを充足することがさらに好ましく、以下の(イ)〜(ヘ)に記載のより好ましい態様のすべてを充足することがさらに好ましく、以下の(イ)〜(ヘ)に記載のより好ましい態様およびさらに好ましい態様のすべてを充足することが特に好ましい。
【0076】
(イ)Xは、−SO−Z、−SO−Z、−SONR、−SOまたは−COが好ましく、−SO−Z、−SONR、−SOおよび−COがより好ましく、−SO−Z、−SONR、−SOHおよび−COHがさらに好ましい。Xが−SOHまたは−COHを表す場合、これらは塩を形成していてもよい。塩を形成する対イオンとしてはリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンおよびアンモニウムイオンが好ましい。
【0077】
(ロ)Zは、好ましくは、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の複素環基であり、その中でも置換アルキル基、置換アリール基、または置換複素環基がより好ましい。
【0078】
(ハ)Yは、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、シアノ基、アルキルオキシ基、アシルアミノ基、ウレイド基、カルバモイル基、またはアルキルオキシカルボニル基が好ましく、ハロゲン原子、またはシアノ基がより好ましい。
【0079】
(ニ)Z、R、R、およびYが更に置換基を有することが可能な基として好ましい基は、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、複素環オキシ基、アルキルおよびアリールアゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、スルフィニル基、ホスホニル基、アリールオキシカルボニル基、イオン性親水性基が挙げられ、より好ましくは、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アニリノ基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルおよびアリールスルホンアミド基、カルバモイル基、イオン性親水性基が挙げられる。
【0080】
(ホ)aおよびbは、好ましくは、aが0〜8の整数であって、bが0〜8の整数である。より好ましくは、aが0〜4の整数であって、bが0〜4の整数である。
【0081】
(ヘ)Mとして好ましいものは、水素原子の他に、金属元素として、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。酸化物としては、VO、GeO等が好ましく挙げられる。また、水酸化物としては、Si(OH)、Cr(OH)、Sn(OH)等が好ましく挙げられる。さらに、ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl、VCl、VCl、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が好ましく挙げられる。なかでも、Fe、Cu、Ni、Zn、Al、Si等がより好ましく、Fe、Cu、Siが特に好ましい。
【0082】
〔一般式(II)で示される化合物〕
本発明の混晶に含まれる化合物の少なくとも1種は、下記一般式(II)で示される化合物であることを特徴とする。
【0083】
【化4】

【0084】
一般式(II)において、G〜GおよびQ〜Qは、それぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表すが、炭素原子であることが好ましい。またGとQ、GとQ、GとQ、GとQのそれぞれの結合は、それぞれの原子種およびA〜Aで表される原子群とともに形成する複素環の種類に応じて、単結合または二重結合を表す。
【0085】
上記一般式(II)において、A〜Aは、それぞれ独立して、G〜GおよびQ〜Qと共に芳香族環あるいは複素環(更に他の環と縮合環を形成しても良い)を形成するのに必要な原子群を表す。但し、形成される4つの環のうち少なくとも1つは複素環である。
また本発明において、A〜Aで表される原子群はそれぞれ独立して、炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる原子の少なくとも1種を含むことが好ましく、A〜Aで表される原子群のうち環の骨格を形成する原子群は、炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選ばれる3または4の原子からなることがより好ましい。
【0086】
前記芳香族環とは、特に明示しない限り、環を構成する原子が炭素原子のみである芳香族環を指し、具体的にはベンゼン環が挙げられる。芳香族環は、さらに他の芳香族環、複素環、脂肪族環と縮環していてもよい。
また、A〜A、G〜GおよびQ〜Qが複素環を形成する場合、A〜Aで表される原子群は、炭素原子、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子から選択される少なくとも2種から構成されることが好ましい。より好ましくはA〜Aで表される原子群は、炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択される少なくとも2種から構成されることが好ましい。A〜A、G〜GおよびQ〜Qで形成される複素環としては、5あるいは6員環の複素環が好ましい。
【0087】
〜A、G〜GおよびQ〜Qから形成される複素環の好ましい例としてはピリジン、ピラジン、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、ピロール、ピラゾロン、インドール、イソオキサゾール、チオフェン、フラン、ピラン、ペンチオフェン、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、ピリミジン、ピリドン等を挙げることできる。
【0088】
また、A〜A、G〜GおよびQ〜Qから形成される芳香族環または複素環は置換基を有していてもよく、置換基を有していても良い場合の置換基(以下、「一般式(II)における置換基」ということがある)としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、複素環オキシ基、アルキルおよびアリールアゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、ホスホリル基、アシル基、またはイオン性親水性基が好ましい。またこれらの置換基は、さらに置換基を有していてもよい。
【0089】
一般式(II)における置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、アルキルオキシ基、アシルアミノ基、ウレイド基、アルキルおよびアリールスルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、またはイオン性親水性基がより好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、またはイオン性親水性基がさらに好ましく、置換基を有しても良いスルファモイル基、置換基を有しても良いアルキルおよびアリールスルホニル基、またはイオン性親水性基が特に好ましい。
【0090】
尚、上記置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシ基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。該イオン性親水性基としては、カルボキシ基およびスルホ基が好ましく、特にスルホ基が好ましい。
【0091】
カルボキシ基、ホスホノ基、スルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルグアニジニウムイオン)が含まれる。
【0092】
一般式(II)における置換基としてのアルキル基には、置換基を有するアルキル基および無置換のアルキル基が含まれる。アルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜20のアルキル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が1〜12のアルキル基が好ましい。特に炭素原子数が1〜8の直鎖アルキル基及びまたは分岐のアルキル基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基、シアノ基、およびハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。アルキル基の例には、メチル、エチル、ブチル、イソプロピル、t−ブチル、ヒドロキシエチル、メトキシエチル、シアノエチル、トリフルオロメチル、3−スルホプロピルおよび4−スルホブチルが含まれる。
【0093】
一般式(II)における置換基としてのシクロアルキル基には、置換基を有するシクロアルキル基および無置換のシクロアルキル基が含まれる。シクロアルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が3〜20のシクロアルキル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が5〜12のシクロアルキル基が好ましい。特に炭素原子数が4〜8の分岐のシクロアルキル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。シクロアルキル基の例には、シクロヘキシル基が含まれる。
【0094】
一般式(II)における置換基としてのアルケニル基には、置換基を有するアルケニル基および無置換のアルケニル基が含まれる。アルケニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜20のアルケニル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が2〜12のアルケニル基が好ましい。特に炭素原子数が3〜12の分岐のアルケニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基等が含まれる。
【0095】
一般式(II)における置換基としてのアルキニル基には、置換基を有するアルキニル基および無置換のアルキニル基が含まれる。アルキニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜20のアルキニル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が2〜12のアルキニル基が好ましい。特に炭素原子数が4〜12の分岐のアルキニル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。
【0096】
一般式(II)における置換基としてのアラルキル基には、置換基を有するアラルキル基および無置換のアラルキル基が含まれる。アラルキル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が7〜20のアラルキル基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が7〜12のアラルキル基が好ましい。特に、炭素原子数が9〜12の分岐のアラルキル基が好ましい。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アラルキル基の例には、ベンジル基、および2−フェネチル基が含まれる。
【0097】
一般式(II)における置換基としてのアリール基には、置換基を有するアリール基および無置換のアリール基が含まれる。アリール基としては炭素原子数が6〜40のアリール基が好ましい。その中でも特に炭素原子数が6〜12のアリール基が好ましい。特に好ましい置換基の例としては溶解性の理由から、炭素原子数が3〜12の分岐のアルキル基が好ましい。置換基の例には、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子、アルキルアミノ基およびイオン性親水性基が含まれる。アリール基の例には、フェニル、p−トリル、p−メトキシフェニル、o−クロロフェニルおよびm−(3−スルホプロピルアミノ)フェニル、m−スルホフェニルが含まれる。
【0098】
一般式(II)における置換基としての複素環基には、置換基を有する複素環基および無置換の複素環基が含まれ、さらに他の環と縮合環を形成していてもよい。複素環基としては、5員または6員環の複素環基が好ましい。また、芳香族複素環基であっても非芳香族複素環基であっても良い。
【0099】
前記複素環基は、複素環化合物から少なくとも1つの原子を取り除いて形成される。前記複素環化合物としては、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、シンノリン、フタラジン、キノキサリン、ピロール、インドール、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、ベンズオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、イミダゾリジン、チアゾリンなどが挙げられる。尚、複素環基の置換位置には特に制限はなく、例えばピリジンであれば、2位、3位、4位で置換することが可能である。
【0100】
前記複素環化合物の中でも芳香族複素環化合物が好ましく、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、トリアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、およびチアジアゾールであることがより好ましく、更に好ましくはピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、ピラゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イソチアゾール、ベンズイソチアゾール、チアジアゾールである。
【0101】
一般式(II)における置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。
【0102】
一般式(II)における置換基としてのアルキルアミノ基には、置換基を有するアルキルアミノ基および無置換のアルキルアミノ基が含まれる。アルキルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数1〜30のアルキルアミノ基が好ましく、より好ましくは炭素原子数が1〜20のアルキルアミノ基であり、更に好ましくは1〜10のアルキルアミノ基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルアミノ基の例には、メチルアミノ基およびジエチルアミノ基が含まれる。
【0103】
一般式(II)における置換基としてのすアルキルオキシ基には、置換基を有するアルキルオキシ基および無置換のアルキルオキシ基が含まれる。置換基を除いたときのアルキルオキシ基としては、炭素原子数が1〜30のアルキルオキシ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のアルキルオキシ基であり、更に好ましくは1〜10のアルキルオキシ基である。置換基の例には、アルキルオキシ基、ヒドロキシ基およびイオン性親水性基が含まれる。アルキルオキシ基の例には、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、メトキシエトキシ基、ヒドロキシエトキシ基および3−カルボキシプロポキシ基が含まれる。
【0104】
一般式(II)における置換基としてのアリールオキシ基には、置換基を有するアリールオキシ基および無置換のアリールオキシ基が含まれる。アリールオキシ基としては、炭素原子数が6〜30のアリールオキシ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が6〜20のアリールオキシ基であり、更に好ましくは6〜10のアリールオキシ基である。置換基の例には、アルキルオキシ基およびイオン性親水性基が含まれる。アリールオキシ基の例には、フェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基およびo−メトキシフェノキシ基が含まれる。
【0105】
一般式(II)における置換基としてのアシルアミノ基には、置換基を有するアシルアミノ基および無置換のアシルアミノ基が含まれる。アシルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜30のアシルアミノ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が2〜20のアシルアミノ基であり、更に好ましくは2〜10のアシルアミノ基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルアミノ基の例には、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ベンズアミド基および3,5−ジスルホベンズアミド基が含まれる。
【0106】
一般式(II)における置換基としてのアリールアミノ基には、置換基を有するアリールアミノ基および無置換のアリールアミノ基が含まれる。アリールアミノ基としては、炭素原子数が6〜30のアリールアミノ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が6〜20のアリールアミノ基であり、更に好ましくは6〜15のアリールアミノ基である。置換基の例としては、ハロゲン原子およびイオン性親水性基が含まれる。アリールアミノ基の例としては、アニリノ基および2−クロロアニリノ基が含まれる。
【0107】
一般式(II)における置換基としてのウレイド基には、置換基を有するウレイド基および無置換のウレイド基が含まれる。置換基を有するウレイド基としては、置換基の炭素原子数が1〜30のウレイド基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のウレイド基であり、更に好ましくは1〜10のウレイド基である。置換基の例には、アルキル基およびアリール基が含まれる。ウレイド基の例には、3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基および3−フェニルウレイド基が含まれる。
【0108】
一般式(II)における置換基としてのスルファモイルアミノ基には、置換基を有するスルファモイルアミノ基および無置換のスルファモイルアミノ基が含まれる。置換基を有するスルファモイルアミノ基としては、置換基の炭素原子数が1〜30のスルファモイルアミノ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のスルファモイルアミノ基であり、更に好ましくは1〜10のスルファモイルアミノ基である。置換基の例には、アルキル基が含まれる。スルファモイルアミノ基の例には、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基が含まれる。
【0109】
一般式(II)における置換基としてのアルキルチオ基には、置換基を有するアルキルチオ基および無置換のアルキルチオ基が含まれる。アルキルチオ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜30のアルキルチオ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のアルキルチオ基であり、更に好ましくは1〜10のアルキルチオ基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基およびエチルチオ基が含まれる。
【0110】
一般式(II)における置換基としてのアリールチオ基には、置換基を有するアリールチオ基および無置換のアリールチオ基が含まれる。アリールチオ基としては、炭素原子数が6〜30のアリールチオ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が6〜20のアリールチオ基であり、更に好ましくは6〜15のアリールチオ基である。置換基の例には、アルキル基、およびイオン性親水性基が含まれる。アリールチオ基の例には、フェニルチオ基およびp−トリルチオ基が含まれる。
【0111】
一般式(II)における置換基としてのアルキルオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアルキルオキシカルボニルアミノ基および無置換のアルキルオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アルキルオキシカルボニルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜30のアルキルオキシカルボニルアミノ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が2〜20のアルキルオキシカルボニルアミノ基であり、更に好ましくは2〜10のアルキルオキシカルボニルアミノ基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルオキシカルボニルアミノ基の例には、エトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0112】
一般式(II)における置換基としてのアルキルおよびアリールスルホンアミド基(以下、単に「スルホンアミド基」ということがある)には、置換基を有するスルホンアミド基および無置換のスルホンアミド基が含まれる。スルホンアミド基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜30のスルホンアミド基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のスルホンアミド基であり、更に好ましくは1〜10のスルホンアミド基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、および3−カルボキシベンゼンスルホンアミドが含まれる。
【0113】
一般式(II)における置換基としてのカルバモイル基には、置換基を有するカルバモイル基および無置換のカルバモイル基が含まれる。カルバモイル基としては、置換基の炭素原子数が1〜30のカルバモイル基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のカルバモイル基であり、更に好ましくは1〜10のカルバモイル基である。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジメチルカルバモイル基が含まれる。
【0114】
一般式(II)における置換基としてのスルファモイル基には、置換基を有するスルファモイル基および無置換のスルファモイル基が含まれる。置換スルファモイル基としては、置換基の炭素原子数が1〜30のスルファモイル基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のスルファモイル基であり、更に好ましくは1〜10のスルファモイル基である。置換基の例には、アルキル基、アリ−ル基が含まれる。スルファモイル基の例には、ジメチルスルファモイル基およびジ−(2−ヒドロキシエチル)スルファモイル基、フェニルスルファモイル基が含まれる。
【0115】
一般式(II)における置換基としてのアルキルおよびアリールスルホニル基(以下、単に「スルホニル基」ということがある)には、置換基を有するスルホニル基および無置換のスルホニル基が含まれる。スルホニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜30のスルホニル基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のスルホニル基であり、更に好ましくは1〜10のスルホニル基である。スルホニル基の例には、3−スルホプロピルスルホニル基および3−カルボキシプロピルスルホニル基が含まれる。
【0116】
一般式(II)における置換基としてのアルキルオキシカルボニル基には、置換基を有するアルキルオキシカルボニル基および無置換のアルキルオキシカルボニル基が含まれる。アルキルオキシカルボニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が2〜30のアルキルオキシカルボニル基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が2〜20のアルキルオキシカルボニル基であり、更に好ましくは2〜10のアルキルオキシカルボニル基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アルキルオキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
【0117】
一般式(II)における置換基としての複素環オキシ基には、置換基を有する複素環オキシ基および無置換の複素環オキシ基が含まれる。複素環オキシ基としては、5員または6員環の複素環を有する複素環オキシ基が好ましい。置換基の例には、ヒドロキシ基、およびイオン性親水性基が含まれる。複素環オキシ基の例には、2−テトラヒドロピラニルオキシ基が含まれる。
【0118】
一般式(II)における置換基としてのアルキルおよびアリールアゾ基(以下、単に「アゾ基」ということがある)には、置換基を有するアゾ基および無置換のアゾ基が含まれる。置換アゾ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜30のアゾ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のアゾ基であり、更に好ましくは1〜10のアゾ基である。アゾ基の例には、p−ニトロフェニルアゾ基が含まれる。
【0119】
一般式(II)における置換基としてのアシルオキシ基には、置換基を有するアシルオキシ基および無置換のアシルオキシ基が含まれる。アシルオキシ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数1〜30のアシルオキシ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のアシルオキシ基であり、更に好ましくは1〜10のアシルオキシ基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシルオキシ基の例には、アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基が含まれる。
【0120】
一般式(II)における置換基としてのカルバモイルオキシ基には、置換基を有するカルバモイルオキシ基および無置換のカルバモイルオキシ基が含まれる。置換基を有するカルバモイルオキシ基としては、置換基の炭素原子数2〜30のカルバモイルオキシ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が2〜20のカルバモイルオキシ基であり、更に好ましくは2〜10のカルバモイルオキシ基である。置換基の例には、アルキル基が含まれる。カルバモイルオキシ基の例には、N−メチルカルバモイルオキシ基が含まれる。
【0121】
一般式(II)における置換基としてのシリルオキシ基には、置換基を有するシリルオキシ基および無置換のシリルオキシ基が含まれる。置換基を有するシリルオキシ基としては、置換基の炭素原子数1〜30のシリルオキシ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のシリルオキシ基であり、更に好ましくは1〜10のシリルオキシ基である。置換基の例には、アルキル基が含まれる。シリルオキシ基の例には、トリメチルシリルオキシ基が含まれる。
【0122】
一般式(II)における置換基としてのアリールオキシカルボニル基には、置換基を有するアリールオキシカルボニル基および無置換のアリールオキシカルボニル基が含まれる。アリールオキシカルボニル基としては、炭素原子数が7〜30のアリールオキシカルボニル基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニル基であり、更に好ましくは7〜10のアリールオキシカルボニル基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニル基の例には、フェノキシカルボニル基が含まれる。
【0123】
一般式(II)における置換基としてのアリールオキシカルボニルアミノ基には、置換基を有するアリールオキシカルボニルアミノ基および無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が7〜30のアリールオキシカルボニルアミノ基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が7〜20のアリールオキシカルボニルアミノ基であり、更に好ましくは7〜15のアリールオキシカルボニルアミノ基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アリールオキシカルボニルアミノ基の例には、フェノキシカルボニルアミノ基が含まれる。
【0124】
一般式(II)における置換基としてのイミド基には、置換基を有するイミド基および無置換のイミド基が含まれる。置換基を有するイミド基としては、置換基の炭素原子数が2〜30のイミド基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が2〜20のイミド基であり、更に好ましくは2〜15のイミド基である。イミド基の例には、N−フタルイミド基およびN−スクシンイミド基が含まれる。
【0125】
一般式(II)における置換基としての複素環チオ基には、置換基を有する複素環チオ基および無置換の複素環チオ基が含まれる。複素環チオ基としては、5員または6員環の複素環を有することが好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20の複素環チオ基であり、更に好ましくは1〜10の複素環チオ基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。複素環チオ基の例には、2−ピリジルチオ基が含まれる。
【0126】
一般式(II)における置換基としてのアルキルおよびアリールスルフィニル基(以下、単に「スルフィニル基」ということがある)には、置換基を有するスルフィニル基および無置換のスルフィニル基が含まれる。スルフィニル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が1〜30のスルフィニル基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のスルフィニル基であり、更に好ましくは1〜15のスルフィニル基である。スルフィニル基の例には、3−スルホプロピルスルフィニル基および3−カルボキシプロピルスルフィニル基が含まれる。
【0127】
一般式(II)における置換基としてのホスホリル基には、置換基を有するホスホリル基および無置換のホスホリル基が含まれる。置換基を有するホスホリル基としては、置換基の炭素原子数が1〜30のホスホリル基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が1〜20のホスホリル基であり、更に好ましくは1〜15のホスホリル基である。ホスホリル基の例には、フェノキシホスホリル基およびフェニルホスホリル基が含まれる。
【0128】
一般式(II)における置換基としてのアシル基には、置換基を有するアシル基および無置換のアシル基が含まれる。アシル基としては、置換基を除いたときの炭素原子数が3〜30のアシル基が好ましい。より好ましくは炭素原子数が3〜20のアシル基であり、更に好ましくは3〜10のアシル基である。置換基の例には、イオン性親水性基が含まれる。アシル基の例には、アセチル基およびベンゾイル基が含まれる。
【0129】
一般式(II)における置換基としてのイオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシ基、および4級アンモニウム基等が含まれる。イオン性親水性基としては、カルボキシ基およびスルホ基が好ましく、特にスルホ基が好ましい。カルボキシ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルグアニジニウムイオン)が含まれる。
【0130】
前記一般式(II)で表されるフタロシアニン化合物は、イオン性親水性基を有していてよい。イオン性親水性基には、スルホ基、カルボキシ基、ホスホノ基および4級アンモニウム基等が含まれる。前記イオン性親水性基としては、カルボキシ基、ホスホノ基、およびスルホ基が好ましく、特にカルボキシ基、スルホ基が好ましい。カルボキシ基、ホスホノ基およびスルホ基は塩の状態であってもよく、塩を形成する対イオンの例には、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)および有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジニウムイオン、テトラメチルホスホニウム)が含まれる。対イオンの中でもアルカリ金属塩が好ましい。
【0131】
は、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す。Mとして好ましいものは、水素原子の他に、金属元素として、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。なかでも、Fe、Cu、Ni、Zn、Al、Siが好ましく、Fe、Cu、Siが特に好ましい。
【0132】
金属酸化物としては、VO、GeO等が好ましく挙げられる。また、金属水酸化物としては、Si(OH)、Cr(OH)、Sn(OH)等が好ましく挙げられる。さらに、金属ハロゲン化物としては、AlCl、SiCl、VCl、VCl、VOCl、FeCl、GaCl、ZrCl等が好ましく挙げられる。
【0133】
また、一般式(II)で表される化合物(以下、「Pc−M」と略記することがある)が、それぞれのMと結合するL(2価の連結基)を介して多量体を形成していてもよい。例えば、Pc(フタロシアニン環)が2量体(例えば、Pc−M−L−M−Pc)または3量体を形成してもよく、その場合のMはそれぞれ同一であっても異なるものであってもよい。
【0134】
Lで表される2価の連結基は、オキシ基−O−、チオ基−S−、カルボニル基−CO−、スルホニル基−SO−、イミノ基−NH−、メチレン基−CH−、及びこれらを組み合わせて形成される基が好ましい。
【0135】
以上纏めると、本発明において前記一般式(II)で示される化合物好ましい態様としては、以下の(イ)〜(ニ)に記載の好ましい態様の少なくとも2つを充足することが好ましく、以下の(イ)〜(ニ)に記載の好ましい態様のすべてを充足することがより好ましく、以下の(イ)〜(ニ)に記載のより好ましい態様の少なくとも2つを充足することがさらに好ましく、以下の(イ)〜(ニ)に記載のより好ましい態様のすべてを充足することが特に好ましい。
【0136】
(イ)G〜GおよびQ〜Qは、一方が炭素原子で他方が窒素原子であることが好ましく、すべて炭素原子であることがより好ましい。
【0137】
(ロ)A〜Aで表される原子群はそれぞれ独立して、炭素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる原子の少なくとも1種を含むことが好ましく、A〜Aで表される原子群のうち環の骨格を形成する原子群は、炭素原子、窒素原子、及び硫黄原子から選ばれる3または4の原子からなることがより好ましい。
【0138】
(ハ)A〜A、G〜GおよびQ〜Qから形成される芳香族環または複素環が置換基を有する場合、前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、アルキルオキシ基、アシルアミノ基、ウレイド基、アルキルもしくはアリールスルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基またはイオン性親水性基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基またはイオン性親水性基がより好ましく、置換基を有しても良いスルファモイル基、置換基を有しても良いアルキルもしくはアリールスルホニル基、またはイオン性親水性基が特に好ましい。
【0139】
(ニ)Mとして好ましいものは、水素原子の他に、金属元素として、Li、Na、K、Mg、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi等が挙げられる。なかでも、Fe、Cu、Ni、Zn、Al、Siがより好ましく、Fe、Cu、Siが特に好ましい。
【0140】
以下、一般式(I)で示される化合物について具体例を示すが、本発明はこれらに限られることはない。尚、一般式(I)で示される化合物および一般式(II)で示される化合物は、フタロシアニン誘導体を合成する通常の方法、例えば特開2005−41856に記載の方法で合成できる。
また、以下の具体例において、一般式(I)におけるXが2種以上存在する場合、それぞれをX、X’、X”等で表し、それぞれの置換数をa、a’、a”等で表す。
【0141】
【化5】

【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
【表3】

【0145】
【表4】

【0146】
【表5】

【0147】
【表6】

【0148】
【表7】

【0149】
【表8】

【0150】
【表9】

【0151】
【表10】

【0152】
【表11】

【0153】
【表12】

【0154】
【表13】

【0155】
【表14】

【0156】
【表15】

【0157】
【表16】

【0158】
【表17】

【0159】
【表18】



【0160】
【表19】

【0161】
【表20】

【0162】
【表21】

【0163】
【表22】

【0164】
【表23】

【0165】
【表24】

【0166】
【表25】

【0167】
【表26】

【0168】
【表27】




【0169】
次に、本発明における一般式(II)で示される化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらにより限定されることはない。
【0170】
【表28】



【0171】
【表29】



【0172】
【表30】



【0173】
【表31】

【0174】
【表32】

【0175】
【表33】

【0176】
【表34】

【0177】
【表35】



【0178】
以下に、本発明の混晶の構成成分である一般式(I)で示される化合物と一般式(II)で示される化合物とを含む2種以上の異種化合物の組み合わせとその構成比について具体的に例示する。
【0179】
【表36】



【0180】
【表37】



【0181】
【表38】



【0182】
【表39】



【0183】
【表40】



【0184】
【表41】



【0185】
【表42】



【0186】
【表43】



【0187】
【表44】



【0188】
【表45】



【0189】
【表46】



【0190】
【表47】



【0191】
【表48】




【0192】
本発明においては、混晶の色調と色再現性の観点から、一般式(I)で表される化合物のうち、Xが−SO−Z、−SONRまたは−SOであって、Zが置換アルキル基、置換アリール基、または置換複素環基であって、R、Rが水素原子、置換アルキル基、置換アリール基または置換複素環基であって、Yがハロゲン原子、またはシアノ基であって、a、bがそれぞれ独立に0〜4であって、MがFe、CuまたはSiである化合物と、一般式(II)で表される化合物のうち、G〜G、Q〜Qが炭素原子であって、A〜A、G〜G、Q〜Qから形成される環が5員または6員の複素環である化合物とから構成される混晶であることが好ましく、さらに前記一般式(I)で表される化合物と前記一般式(II)で表される化合物とを、酸を含む溶媒から析出させて得られる混晶であることがより好ましい。
【0193】
本発明の混晶の吸収特性については、混晶の分散状態におけるUV−Visスペクトル測定によって評価するものとする。スペクトルの測定は島津製作所UV−3100PCを用い、混晶の水性分散体200μLを10mLのメスフラスコに取り、超純水で10mLまでメスアップした後、光路長が1cmの石英セルに移し、温度25℃において測定した。
【0194】
本発明の混晶が所望の青色を呈する顔料である場合、その顔料分散物の吸収スペクトルの400nm以上の領域における最大吸収波長は570〜630nmの範囲内であることが好適である。より好ましくは575〜625nmに最大吸収波長を有することであり、特に好ましくは580〜620nmに最大吸収波長を有することである。最大吸収波長が570nm以上であることで、赤紫色を呈することを抑制し良好な青色色相を示す。また630nm以下であることでシアン色が強くなりすぎるのを抑制し、ブロード化による青色色相の鮮明性の低下を抑制できる。
【0195】
更に着色顔料分散物の吸収スペクトルにおいて、400nm以上の領域における最大吸収波長を示す吸収帯の半値幅が170nm〜70nmであることが好ましく、150nm〜75nmであることがより好ましく、更に130nm〜80nmが特に好ましい。半値幅が170nm以下の吸収帯であることで鮮明な青色を表現することができる。また半値幅が70nm以上の吸収帯であることでシャープ化しすぎることを抑制し、緑色や赤色との組み合せたときの色再現が良好になる。
【0196】
本発明の混晶の分散状態における吸収スペクトルは、400nm以上の領域における最大吸収波長が630nm以下であって、前記最大吸収波長における吸光度の半吸光度を与える前記最大吸収波長よりも短波の吸収波長が560nm以下であることが好ましい。
本発明において半吸光度とは、ある1つの吸収帯の最大となる吸光度を半値にした吸光度を意味する。例えば、ある1つの吸収帯の最大吸光度が1.0である場合には、半吸光度は0.5となる。この半吸光度を与える波長は、最大吸収波長の短波長側と長波長側の2波長あるが、本発明においては短波長側の波長を意味する。
本発明においては、前記半吸光度を与える波長が530〜560nmの領域にあることがより好ましく、さらに好ましくは533〜559nmに属することであり、特に好ましくは535〜558nmに属することである。530nm以上であることで青色に由来する吸収帯のブロード化を抑制し鮮明な青色となる。また560nm以下であることで、赤味が低下を抑制し、青色の色表現としてより良好な青色になる。
【0197】
本発明においては、一般式(I)で示される化合物と一般式(II)で示される化合物とを用いて、酸を含む溶媒から析出させた混晶であることで、上記の好ましい吸収スペクトル特性を得ることができる。
【0198】
本発明の混晶は、混晶を構成するそれぞれの顔料が示すX線回折スペクトルの単純な和とは、異なるX線回折スペクトルを示す。ここで本発明におけるX線回折スペクトルは、粉末X線回折装置を用い、日本工業規格(Japanese Industrial Standard;JIS)K0131−1996(X線回折分析通則)に従って測定行い、CuKα特性X線(波長0.1541nm)によるX線回折ピークが表示された粉末X線回折スペクトルを意味する。測定されたX線回折スペクトルからブラッグ角2θが求められる。なお、測定装置、条件の詳細は以下に記載のとおりである。
【0199】
(測定装置および条件)
装置名:RINT2000 縦型ゴニオメータ
使用電力:55kV、280mA
サンプリングステップ:0.1°
発散スリット:2°
散乱スリット:2°
受光スリット:0.60mm
モノクロ受光スリット:0.8mm
スキャンスピード:2°
【0200】
本発明における混晶は、CuKα特性X線(波長0.1541nm)によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)23.5°〜29.0°の範囲に最大回折ピークの強度の10%以上の回折ピーク強度を与える回折ピークを4以上有することが好ましい。前記ブラッグ角範囲に特徴的な回折ピークパターンを有することで本発明の混晶が特徴付けられることが好ましい。
【0201】
〔着色顔料分散物〕
本発明の着色顔料分散物は、前記一般式(I)で示される化合物と前記一般式(II)で示される化合物とを含む混晶の少なくとも1種と、媒体の少なくとも1種とを含む。上述した混晶を含むことで、青色顔料として色再現性に優れる吸収特性を有し、分散安定性に優れる着色顔料分散物を得ることができる。
【0202】
上述した混晶の作製方法によって、前記一般式(I)で示される化合物と前記一般式(II)で示される化合物とを含む混晶は粗顔料として得られるが、本発明の着色顔料分散物として用いる場合、後処理を行うことが望ましい。この後処理の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の摩砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤および分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0203】
本発明の前記一般式(I)で示される化合物と前記一般式(II)で示される化合物とを含む混晶は、後処理として溶媒加熱処理を行うことが好ましい。溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、またはこれらの混合物等が挙げられる。これらの後処理によって顔料の平均粒子径を0.01μm〜1μmに調整することが好ましい。
【0204】
本発明の着色顔料分散物において、前記媒体は、水系媒体であっても非水系媒体であってもよい。
本発明において混晶(顔料)を分散する水系媒体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。水系媒体に混晶を分散することで水系着色顔料分散物を得ることができる。
前記親水性有機溶剤としては,例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0205】
さらに、本発明における水系着色顔料分散物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては、水に溶解する水溶解性の樹脂、水に分散する水分散性の樹脂、コロイダルディスパーション樹脂、またはそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には、アクリル系、スチレン−アクリル系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0206】
さらに、顔料の分散および画像の品質を向上させるため、界面活性剤および分散剤の少なくとも1種を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性、または非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0207】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等が挙げられる。
また分散剤は、上記水性樹脂および界面活性剤から適宜選択した化合物を用いることができる。
【0208】
本発明において非水系着色顔料分散物は、前記一般式(I)で示される化合物と前記一般式(II)で示される化合物とを含む混晶を、非水系ビヒクル(非水系媒体)に分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0209】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0210】
本発明の着色顔料分散物は、上記の混晶と水系または非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得られる。使用できる分散装置としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アトライター、超音波分散機、ディスパー等が挙げられる。
【0211】
本発明において、顔料(混晶)の体積平均粒子径は10nm以上250nm以下であることが好ましい。なお、顔料粒子の体積平均粒子径とは、顔料そのものの粒子径、又は顔料に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒子径をいう。本発明において、顔料の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いた。その測定は、顔料分散体3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。尚、即提示に入力するパラメーターとしては、粘度には着色顔料分散物の粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。
【0212】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上250nm以下であり、更に好ましくは30nm以上230nm以下である。着色顔料分散物中の粒子の体積平均粒子径が10nm以上であることで、保存安定性が良好になる。一方、250nm以下であることで、良好な光学濃度が得られる。
【0213】
本発明の着色顔料分散物に含まれる顔料の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましい。濃度が1質量%以上であることで、例えば、インクとして着色顔料分散物を単独で用いる場合に十分な画像濃度を得ることができる。また、濃度を35質量%以下とすることで、より良好な分散安定性が得られる。
【0214】
本発明の混晶および着色顔料組成物の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、インクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等である。
【0215】
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルター、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
【実施例】
【0216】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<合成例>
【0217】
【化6】



【0218】
(化合物501の合成)
ジエチレングリコール250mLに2,3−ジシアノピリジン (東京化成工業(株)製)50gを添加し、攪拌しながら内温55℃に加温し完溶させた。そこへ塩化銅13.01gを加え115℃まで加熱した。2時間後、室温まで冷却し、析出した結晶を濾別した。メタノール200mLで2回洗浄した。この結晶をアセトン500mLに加え、30分還流させた。室温に冷却後濾別し、200mLのアセトンで洗浄した。乾燥後の重量は42gだった。
【0219】
(化合物507の合成)
ジエチレングリコール250mLに3,4−ジシアノピリジン (東京化成工業(株)製)50gを添加し、攪拌しながら内温55℃に加温し完溶させた。そこへ塩化銅13.01gを加え115℃まで加熱した。2時間後、室温まで冷却し、析出した結晶を濾別した。メタノール200mLで2回洗浄した。この結晶をアセトン500mLに加え、30分還流させた。室温に冷却後濾別し、200mLのアセトンで洗浄した。乾燥後の重量は39gだった。
【0220】
<実施例1>
(混晶Aの作製)
硫酸50mLを内温4℃で攪拌し、そこに化合物501 1.0gと化合物1(東京化成工業(株)製) 3.0gを内温が10℃を超えないように分割添加した。添加後、4℃にて30分攪拌した後、1000mLの氷水に3分かけて添加した。次いで内温10℃で30分攪拌し、吸引ろ過で結晶を濾別した。この結晶を100mLの超純水中で60分間攪拌し、濾別後に超純水100mLで洗浄した。この結晶をジエチレングリコール100mLに懸濁後、内温110℃で2時間攪拌した。室温に冷却後析出した固体を濾別し、イソプロパノール20mL続いて超純水500mLで洗浄し、ウエット混晶A16.7g(ドライ換算3.2g)を得た。この混晶をメタンスルホン酸に溶解し、吸収スペクトル測定を行った。化合物501および化合物1のそれぞれ単独のスペクトルから算出される混晶中の含有率はおおよそ化合物501/化合物1=1/3であることが分かった。
【0221】
<実施例2〜4>
(混晶B〜混晶Dの作製)
実施例1において、化合物501および化合物1の代わりに、表49に記載の化合物の種類と添加量に変更した以外は実施例1と同様にして混晶B〜混晶Dを作製した。
【0222】
【表49】

【0223】
<実施例5>
(水性顔料分散体Aの作製)
上記で得られたウエット混晶A 1.30gとオレイン酸ナトリウム0.05g、グリセリン0.5g、超純水3.13gを混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ10gとともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、6時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、濃青色の着色顔料分散組成物として水性顔料分散体Aを得た。
【0224】
<実施例6〜8>
(水性顔料分散体B〜Dの作製)
実施例5において、ウエット混晶Aの代わりに、下記表50に記載のウエット混晶の種類と添加量に変更し、さらに超純水量を変更した以外は実施例5と同様にして、着色顔料分散組成物として水性顔料分散体B〜Dを作製した。
【0225】
【表50】

【0226】
<比較例1>
実施例5において、混晶Aの代わりに、化合物501の0.25gと超純水4.20gを用いた以外は実施例5と同様にして、水性顔料分散体Eを作製したところ、水性顔料分散体Eは、分散安定性が不良で分散状態を維持することができなかった。
【0227】
<比較例2〜6>
実施例5において、混晶Aの代わりに、下記表51、表52に記載の化合物の種類および添加量に変更し、さらに超純水の添加量を変更した以外は実施例5と同様にして、水性顔料分散体F〜Jを作製した。
【0228】
【表51】

【0229】
【表52】



【0230】
<水性顔料分散物の吸収スペクトル測定>
上記で得られた水性顔料分散体A〜D、F〜Jについて、それぞれ200μLを10mLのメスフラスコに取り、超純水で10mLまでメスアップした。その後、光路長が1cmの石英セルに移し、UV−Visスペクトル測定装置(温度25℃)で測定した。測定したチャートを図1〜図9に示す。また、400nm以上の領域における最大吸収波長(λmax)および半吸光度を示した吸収波長を表53に示す。
【0231】
【表53】




【0232】
<粉末X線回折スペクトル測定>
各混晶A〜Dおよび比較化合物E〜Jの顔料について、CuKα線照射による粉末X線回折スペクトルを(株)リガク製 RINT2000を用いて下記測定条件により測定した。なお混晶A〜Dおよび比較化合物E〜Hについては、分散前の結晶を乾燥した後に測定した。また比較化合物IおよびJについては、分散した水性顔料分散体IおよびJを濃縮乾固して得られた結晶を用いて測定した。それぞれの粉末X線回折スペクトルを図10〜図18に示す。また、ブラッグ角(2θ±0.2°)23.5°〜29.0°の範囲に存在する回折ピークで、最大回折ピーク強度の10%以上の強度を有する回折ピーク数を表54に示す。
【0233】
〜測定装置および測定条件〜
装置名:RINT2000 縦型ゴニオメータ
使用電力:55kV、280mA
サンプリングステップ:0.1°
発散スリット:2°
散乱スリット:2°
受光スリット:0.60mm
モノクロ受光スリット:0.8mm
スキャンスピード:2°
【0234】
【表54】




【0235】
表53に示すとおり、比較顔料分散体は半吸光度の波長が559nm以上であるのに対し、本発明の混晶からなる分散体では、548〜551nmと著しく短波となることが明らかである。
さらに、粉末X線回折スペクトルでは、従来とは異なる回折パターンを示すことから、該混晶は新規な結晶型であり、この結晶型への転移が色相調整を可能にした。
以上の結果から、本発明の混晶は、従来に存在しない短波な色相を与えることが明白であり、該混晶の着色顔料分散組成物は多岐に渡る分野において利用価値が非常に高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される化合物と、下記一般式(II)で示される化合物と、を含む混晶。
【化1】



(一般式(I)中、Xは、−SO−Z、−SO−Z、−SONR、−SO、−CONR、または−COを表す。Zは置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の複素環基を表す。RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または置換もしくは無置換の複素環基を表す。Yは1価の置換基を表す。aおよびbは、それぞれXおよびYの置換基数を表し、aは0〜16の整数を表し、bは0〜16の整数を表し、0≦a+b≦16を満たす。aまたはbが2以上の場合、2以上のXまたはYは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Mは水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す)
【化2】



(一般式(II)中、G〜GおよびQ〜Qはそれぞれ独立に、炭素原子または窒素原子を表す。A〜Aはそれぞれ独立に、それぞれが結合するG〜GおよびQ〜Qと共に芳香族環または複素環を形成するのに必要な原子群を表す。但し、形成される4つの環のうち少なくとも1つは複素環である。前記芳香族環または複素環は、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、アリールアミノ基、ウレイド基、スルファモイルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルオキシカルボニルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、複素環オキシ基、アルキルおよびアリールアゾ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、シリルオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニルアミノ基、イミド基、複素環チオ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、ホスホリル基、アシル基ならびにイオン性親水性基から選ばれる置換基を有してもよい。Mは、水素原子、金属元素、金属酸化物、金属水酸化物、または金属ハロゲン化物を表す)
【請求項2】
前記A〜Aで表される原子群は、それぞれ独立して、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる原子の少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の混晶。
【請求項3】
前記Mは、銅原子、鉄原子、亜鉛原子、ニッケル原子またはコバルト原子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の混晶。
【請求項4】
一般式(I)で示される化合物に対する一般式(II)で示される化合物の混合率が、質量基準で0.1〜50%であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の混晶。
【請求項5】
CuKα線によるX線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角(2θ±0.2°)23.5°〜29.0°の範囲に最大回折ピーク強度の10%以上の回折ピーク強度を与える回折ピークを4以上有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の混晶。
【請求項6】
分散状態における吸収スペクトルは、400nm以上の領域における最大吸収波長が630nm以下であって、前記最大吸収波長における吸光度の半吸光度を与える前記最大吸収波長よりも短波の吸収波長が560nm以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の混晶。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の混晶と、媒体とを含む着色顔料分散組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−256663(P2009−256663A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77160(P2009−77160)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】