説明

混練機

【課題】混練時における混練ロータの加振により生じる慣性力により発生する軸受荷重を低減させることによって、ケーシングの振動を抑えることができるようにする。
【解決手段】ケーシング3内に設けられた混練ロータ2と、この混練ロータ2を回転自在に支持する軸受と、混練ロータ2に回転駆動を付与する駆動装置4とを備え、混練ロータ2において駆動装置4とは反対側を軸芯方向に延設し、この延設部10に混練時に発生する混練ロータ2の慣性力による軸受の荷重を低減させる加重部材11を設けている。加重部材11の重量は、軸受間の混練ロータ2の質量に応じて求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、樹脂等の材料を混練ロータによって混練する混練機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、混練機は混練ロータを備えており、この混練ロータは、ケーシング内に収容されて、ケーシング内に設けられた複数の軸受により回転自在に支持されている。このような混練機において、混練を行う際は、混練ロータを駆動モータの駆動力により回転させることによりケーシング内に投入された材料を混練するのが一般的である(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−7658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1などに示すような混練機では、材料を溶融しながら混練・押出しを行う性質上、混練ロータの混練部分には周期的な加振力が発生する。この加振力が小さい場合には問題がないが、混練機が大型化するにつれ、加振力も大きくなっていることが実情である。混練時における大きな加振力によって、混練ロータには一次モードの振動が発生してしまい、その振動により軸受部に多大な荷重がかかることになる。このように、混練時に大きな軸受部がかかると、加振力が外部へ伝達して、その結果、ケーシングが振動してしまうという問題がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示すような混練機においては、一次モードの振動、加振力による振動に起因してケーシングに発生する振動を抑えるという対策は未だされていないのが実情である。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、混練時における混練ロータの加振により生じる慣性力により発生する軸受荷重を低減させることによって、ケーシングの振動を抑えることができる混練機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は次の技術的手段を講じている。
即ち、ケーシング内に設けられた混練ロータと、この混練ロータを回転自在に支持する軸受と、前記混練ロータに回転駆動を付与する駆動装置とを備え、前記混練ロータにおいて前記駆動装置とは反対側を軸芯方向に延設し、この延設部に混練時での前記混練ロータの慣性力により発生する前記軸受の荷重を低減させる加重部材を設けた点にある。
【0007】
前記加重部材の重量は、前記軸受間の混練ロータの質量に基づいて求めることが好ましい。例えば、混練ロータの回転時の挙動をシミュレーション可能なモデルにより数値計算で求めてもよいし、混練ロータの挙動を表す運動方程式を立てて、この式から求めても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、混練時における混練ロータの加振により生じる慣性力により発生する軸受荷重を低減させることによって、ケーシングの振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の混練機の全体図である。
【図2】混練ロータの振動を説明するものであって、(a)加重部材を設けない場合の振動、(b)加重部材を設けた場合の振動を示すものである。
【図3】2軸混練機における振動モデルを示したものである。
【図4】一次モードの振動における軸受部にかかる荷重を示したものである。
【図5】加振力と軸受加重との差を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、第1実施形態の混練機1を図面に基づき説明する。
図1に示すように、混練機1は、一対の混練ロータ2を備えた異方向回転型の2軸混練機1(以降、単に混練機1という)である。混練機1は、一対の混練ロータ2と、各混練ロータ2を支持するケーシング3と、混練ロータ2を回転駆動させる駆動装置4とを備えている。なお、説明の便宜上、図1の紙面の右側を上流側又はドライブエンド側とし、紙面の左側を下流側又はウォータエンド側とする。
【0011】
混練ロータ2は、駆動装置4からの動力により回転することによって樹脂等を混練するもので、ウォータエンド側(WE側)はケーシング3内に設けられた第1軸受部5により回転自在に支持され、ドライブエンド側(DE1、DE2)もケーシング3内に設けられた第2軸受部6及び第3軸受部7により回転自在に支持されている。なお、混練ロータ2の内部を冷却するために外部から冷却水等を供給する供給部が、混練ロータ2のウォータエンド側に設けられている。
【0012】
混練ロータ2は、樹脂等を混練するためのロータ部8を有していて、当該ロータ部8は、ケーシング3内部に形成された混練室9に配置されている。第1軸受部5と第2軸受部6との距離(WE〜DE1)は、第2軸受部6と第3軸受部7との距離(DE1〜DE2)の距離よりも大きく設定されている。
このような混練機1において、駆動装置4の駆動力により混練ロータ2を回転させて混練室9の樹脂を混練したときの状態を考えると、ケーシング3や混練ロータ2の剛性等により混練ロータ2に2次モード以上の振動は発生しないようになっているが、1次モードの振動はある程度発生してしまい、その1次モードの振動がケーシング3に伝わってしまうことがある。
【0013】
そこで、本発明では、混練ロータ2のウォータエンド側において、第1軸受部5よりも外側の部分(反駆動側)を軸心方向に延設し、混練ロータ2の延設部10に加重部材11を設けることにより1次モードの振動がケーシングへ伝わるのを出来るだけ抑制している。
以下、本発明の混練機について詳しく説明する。
【0014】
ケーシング3は、内部が空洞状に形成されて混練室9を形成する複数のバレル12と、第1軸受部5が設けられた第1支持フレーム13と、第2軸受部6が設けられた第2支持フレーム14と、第3軸受部7が設けられた第3支持フレーム15とを備えている。
各バレル12は、ドライブエンド側からウォータエンド側に向けて順に隣接するように配置され、互いのバレル12が連結することにより混練室9が形成されている。ドライブエンド側のバレル12aには、混練室9に樹脂等の材料を投入するためのホッパ17が設けられている。ウォータエンド側に隣接するバレル12b、12c間には、混練度調整部18が設けられている。混練度調整部18は、混練室9の内周面と混練ロータ2との間に形成される材料の流路を開閉して材料の混練度を調整するものである。
【0015】
第1支持フレーム13は、ウォータエンド側のバレル12cに隣接して配置され、設置台20に固定されている。第2支持フレーム14は、ドライブエンド型のバレル12aに隣接して配置され、設置台20に固定されている。第3支持フレーム15は、第2支持フレーム14に対して駆動装置4側に離間して配置され、設置台20に固定されている。
第2支持フレーム14と第3支持フレーム15との間には、両者を連結する筒状の連結部材21が設けられ、当該連結部材21内にも混練ロータ2が設けられている。なお、第1支持フレーム13、第2支持フレーム14、第3支持フレーム15、各バレル12は同一軸芯上に配置されている。
【0016】
混練ロータ2は、大別して、材料の混練や送り出しを行う混練部22と、この混練部22の軸方向両側に設けられた軸部23とから構成されている。
混練部22は、混練室9に設けられて、当該混練部22の軸方向中央部側には樹脂を混練するロータ部8が形成され、ロータ部8の軸方向両側には樹脂を送る送り部24が形成されている。
【0017】
混練部22のウォータエンド側に設けられた軸部23a(第1軸部ということがある)は、第1支持フレーム13の第1軸受部5に回転自在に支持されている。図1の拡大図に示すように、第1軸部23aは、第1軸受部5の下流側端部から、さらに、下流側に延びたものとされていて、その延設部10に数百kgの加重部材11が設けられている。言い換えれば、第1軸部23aは、第1支持フレーム13を軸方向に貫通していて当該第1支持フレーム13から外部に露出したものとなっており、露出した部分(延設部10)に数百kgの加重部材11が設けられている。
【0018】
例えば、加重部材11は、筒状に形成されて円柱状の延設部10に嵌り込む凹部を有しており、凹部を円柱状の延設部10に嵌め込んで固定することにより、延設部10に加重部材11が取り付けられるようになっている。なお、混練ロータ2(延設部10)が回転したときを考えると、加重部材11の重心と延設部10の重心とは一致するように(延設部10の軸芯と加重部材11の軸芯とが一致するように)、延設部10に加重部材11が取り付けられるようになっている。また、加重部材11は、回転時に軸芯がずれないように回転対称の形状となっている。
【0019】
混練部22のドライブエンド側に設けられた軸部23b(第2軸部ということがある)は、第2支持フレーム14の第2軸受部6及び第3支持フレーム15の第3軸受部7に回転自在に支持されている。また、第2軸部23bは、減速機25を介して駆動装置4(駆動モータ)に連結され、駆動装置4の動力を混練部22に伝達するように構成されている。
【0020】
以上により、駆動装置4を駆動すると、第2軸部23bに駆動装置4からの動力が伝達され、混練部22が回転することにより樹脂等の材料を混練することができる。
図2は、混練を行ったときの混練ロータ2の振動を模したものである。
図2(a)に示すように、このように混練ロータ2が回転して混練室9にて材料を混練している状態では、混練ロータ2の中央部付近にて径外方向に加振力が働く。また、加振力が加わりながら混練ロータ2には慣性力Fが働くことから、この慣性力Fの影響によりウォータエンド側(WE側)の第1軸受部5、ドライブエンド側(DE1、DE2)の第2軸受部6及び第3軸受部7が振動の節となって1次モードの振動が発生する。
【0021】
このとき、混練ロータ2の加振によって生じる慣性力により、第1軸受部5に大きな荷重が掛かることになり、その結果、この第1軸受部5を介して、この力がケーシング3(第1支持フレーム13)に伝達してしまい、第1支持フレーム13が振動してしまう。
しかしながら、本発明では、図2(b)に示すように、ウォータエンド側(WE側)の混練ロータ2側を延設して加重部材11を設けている(ウォータエンド側の第1軸部23aを軸方向に延長してその延設部10に加重部材11を設けている)ために、加振によって生じる慣性力の影響により掛かっていた第1軸受部5への荷重が相殺され、その結果、この第1軸受部5から第1支持フレーム13への加振力の伝達(加振の影響による振動の伝達)を抑えることができ、第1支持フレーム13の振動を防止することができる。
【0022】
混練機1において、混練ロータ2のウォータエンド側(WE側)を延設して、延設部10に加重部材11を設けることは、混練機1の大型化を招いたり、混練機1の停止時においては第1軸受部5の荷重が増加することになるが、本発明では、混練ロータ2が回転したときの混練ロータ2の加振によって生じる慣性力を考慮して(混練機1の運転時を考慮して)、敢えて混練ロータ2を延設した上で加振によって生じる慣性力により発生していた第1軸受部5への加重を打ち消すための加重部材11を設けている。
【0023】
図3は、コンピュータシュミュレーションを行うべく図1に示した混練機1(3翼の2軸混練機)をモデル化したものである。図3のモデルでは、各混練ロータ2を梁で表現している。軸受部7は、軸方向の移動と軸廻りの回転を不可能とする固定端(DE2)として表現されている。また、混練ロータ2の長さは6.3mであり、WE〜DE1の距離は5.1m、DE1〜DE2の距離は1.2mである。混練ロータ2表す梁の略中央部には、加振力10000kgfが加えられる。延設部の長さは1.0mであり、その延設部に0〜500kgfの加重部材を設けている。このように表現されたモデル(方程式群)を差分法等などの数値解法により解いた。
【0024】
図4、図5は、図3のモデルを用いて混練ロータ2を加振したときの各軸受部にかかる荷重をコンピュータシュミュレーションにより求めたものである。
図4に示すように、延設部10に加重を設けない場合(0kg)、第1軸受部5、第2軸受部6、第3軸受部7に掛かる荷重(軸受荷重)は大きいが、延設部10に設けた加重部材11の質量を大きくすればするほど第1軸受部5、第2軸受部6、第3軸受部7に掛かる軸受荷重が減少する傾向にある。
【0025】
さて、混練機1の混練ロータ2の回転数(運転回転数)は、大凡、360〜1000rpm程度であり、図4に示すように、周波数に置き換えると、18Hz〜48Hz(約20Hz〜40Hz)である。
ここで、図4及び図5に示すように、運転回転数に対応する周波数(20Hz〜40Hz)に着目すると、第1軸受部5では、加重部材11の質量が300kg以上であると、特に、軸受荷重を抑えることができる。加重部材11の質量が300kgであれば、加重部材11を設けない場合(0kg)に比べ、第1軸受部5にかかる軸受加重を1/2にすることができる。なお、周波数が20Hz〜40Hzの範囲においては、加重部材11の質量を500kgにすると最も第1軸受部5に掛かる軸受加重を小さくすることができるが、周波数が40Hz前後では、第1軸受部5の軸受加重が若干増えている。このことから、仮に周波数が40Hz前後となる範囲にて混練機1を運転する場合には、加重部材11の質量は300kgにすることが好ましい。
【0026】
本発明の混練機1によれば、ケーシング3内に設けられた混練ロータ2と、この混練ロータ2を回転自在に支持する軸受と、混練ロータ2に回転駆動を付与する駆動装置4とを備え、混練ロータ2において駆動装置4とは反対側を軸芯方向に延設し、この延設部10に混練時での混練ロータ2の加振によって発生する慣性力により生じる第1軸受部5の荷重を低減させる加重部材11を設けている。
【0027】
これによれば、混練を行った際に、混練ロータ2に1次モードの振動が発生したとしても第1軸受部5に掛かる荷重が少なくなり(第1軸受部5が慣性力が略0の振動の節になる)、その結果、第1軸受部5から第1支持フレーム13への慣性力、即ち、加振の影響による振動の伝達を抑えることができ、第1支持フレーム13の振動を防止することができる。また、混練時における第1軸受部5にかかる荷重を抑えられるために、第1軸受部5の寿命を長くすることができる。
【0028】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0029】
1 混練機
2 混練ロータ
3 ケーシング
4 駆動装置
5 第1軸受部
6 第2軸受部
7 第3軸受部
8 混練部
9 混練室
10 延設部
11 加重部材
12 バレル
13 第1支持フレーム
14 第2支持フレーム
15 第3支持フレーム
17 ホッパ
18 混練度調整部
20 設置台
21 連結部材
22 スクリュ部
23a ウォータエンド側の軸部
23b ドライブエンド側の軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に設けられた混練ロータと、この混練ロータを回転自在に支持する軸受と、前記混練ロータに回転駆動を付与する駆動装置とを備えた混練機であって、
前記混練ロータにおいて前記駆動装置とは反対側を軸芯方向に延設し、この延設部に混練時に発生する前記混練ロータの慣性力による前記軸受の荷重を低減させる加重部材を設けたことを特徴とする混練機。
【請求項2】
前記加重部材の重量は、前記軸受間の混練ロータの質量に基づいて求めることを特徴とする請求項1に記載の混練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−83700(P2011−83700A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238537(P2009−238537)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】