説明

添加剤を伴う金属効果顔料

本発明は、添加剤を伴うメタリック効果顔料に関するが、その添加剤は、少なくとも部分的にメタリック効果顔料の上に塗布され、構造単位として、少なくとも1種の少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸と、さらに少なくとも1種のポリグリコールエーテルとを含み、そのカルボン酸とポリグリコールエーテルは相互に共有結合している。
本発明はさらに、このメタリック効果顔料を製造するための方法に関し、さらにはその使用にも関する。
本発明はさらに、本発明のメタリック効果顔料を含む印刷インキにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添加剤を伴うメタリック効果顔料、それを製造するための方法およびその使用、ならびにさらには、添加剤を伴うメタリック効果顔料を含むコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
メタリック効果顔料は、独特のメタリック光沢およびカラー効果を特徴とする、微小板形状のメタリック顔料である。メタリック効果顔料は、それが、独特の光学効果、特にカラー効果および光沢効果を生み出すので、ペイント、ワニス、印刷インキ、プラスチック、化粧品などにおいて使用される。
【0003】
メタリック効果顔料は、従来から、アトマイズされた金属粉体から、ボールミル中での研磨により製造されている。この操作をするために必要とされる金属粉体は、融解金属のアトマイゼーションにより得ることができる。アトマイズされた金属粉体を変形性研磨する過程において、通常は潤滑剤を添加して、金属粒子が相互に冷間圧接することを防止する。一般的に使用される潤滑剤としては、オレイン酸およびステアリン酸が挙げられる。メタリック効果顔料の研磨において、オレイン酸は非リーフィング性を与え、ステアリン酸はリーフィング性を与える。これらの脂肪酸に代えて、それぞれの場合において、潤滑剤として、より高級またはより低級の同族体、たとえばパルミチン酸を使用することもまた可能であるのは言うまでもないことである。工業グレードの脂肪酸は、通常、広く各種の同族脂肪酸の混合物からなっていて、飽和脂肪酸にも必ずある程度の割合の不飽和脂肪酸が含まれ、逆もまた同じである。メタリック効果顔料の製造を行う場合には、故意に飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との混合物、別の言い方をすれば、たとえばステアリン酸とオレイン酸との混合物を使用するのもまた普通のことである。
【0004】
特に、潤滑物質として不飽和脂肪酸を使用する場合には、メタリック効果顔料の貯蔵寿命についての問題が発生する。不飽和脂肪酸は、重合しやすいという傾向を有している。顔料は、ほとんどの場合に顔料ペーストまたは顔料粉体の形態で貯蔵されるが、このことによって、不可逆的な集塊が起きる。
【0005】
DE 30 02 175によれば、潤滑剤としてジカルボン酸を使用することも可能である。
【0006】
メタリック効果顔料が、塗布媒体中、たとえばペイントまたはインキ中で特に視覚的に訴える効果を有するようにするためには、メタリック効果顔料は、入射光を鏡面反射させる目的で、塗布媒体中でほとんどが面に平行に配向されている必要がある。塗布媒体の中でメタリック効果顔料がランダムに配向していると、入射光が全方向に非鏡面的に反射されるので、観察者に与える視覚的印象のグレードが低下する。
【0007】
塗布媒体、たとえばペイントまたはインキの中では、メタリック効果顔料は異質の物体または外乱を構成するので、それによって、たとえば乾燥させたインキまたは硬化させたペイントにおいては、機械的性質が損なわれる可能性がある。このように機械的性質が損なわれると、たとえば耐摩耗性の低下、たとえば熱、低温、湿気などのような環境的な影響に対する安定性の低下などが現れる。メタリック効果顔料が配向された面に沿って、印刷インキまたはペイントの膜の剥離がおきて、そのために広範囲の層剥離となる可能性もある。
【0008】
WO 99/57024には、表面変性剤を用いてコーティングした効果顔料が開示されている。この表面変性剤は、顔料表面に結合する第一の反応性官能基と、たとえば、ペイントまたはインキのバインダーシステムに結合する、第一の官能基とは異なる少なくとも1種の第二の反応性官能基とを有している。この表面変性は、ペイントコーティングまたはインキの膜の機械的な安定性は向上させるものの、この化学的な表面変性は、別な工程で実施しなければならず、時間がかかり、コストが高くつく。
【0009】
DE 24 36 902には、ポリオキシアルキレングリコール基、単官能アルコール基、および二塩基酸を含むエステル組成物が開示されているが、そのエステルは25未満の酸価および25未満のヒドロキシル価を有し、2%〜40重量%のポリオキシアルキレングリコール基を含んでいる。このエステル組成物は、鉄系および非鉄系金属の機械加工における潤滑剤として、水とのエマルションの形態で使用される。
【0010】
WO 2006/070108 A1には、脂肪酸エステルR−COOR(ここでRは、1〜8個のC原子を有するアルキル基である)の存在下で微粉砕された金属粒子を用いて製造された、金属顔料組成物が開示されている。
【0011】
WO 1998/17731には、粉塵飛散が少ないかまたは粉塵飛散のないメタリック効果顔料組成物を製造するための方法が開示されているが、その金属粒子は、腐食防止剤および潤滑剤の存在下で水性液体の中で研磨されている。使用可能な腐食防止剤には、有機リン化合物が含まれ、例としては、長鎖エトキシル化アルコールのリン酸エステルが挙げられる。
【0012】
EP 1 304 210 A1には、プラスチックの塊状物を加工するための加工助剤が開示されている。その加工助剤には、ポリカルボン酸の部分エステルが含まれている。ポリカルボン酸は、30〜60個のC原子を有するダイマー酸またはトリマー酸であってよい。
【0013】
従来技術においては、金属またはプラスチックの機械加工または加工のための潤滑剤または加工助剤が開示されているものの、メタリック効果顔料の製造または使用に関する記載はまったくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
今日まで、メタリック効果顔料を製造するために使用されている潤滑剤では、予めメタリック効果顔料の表面に高コストで利便性の悪い表面変性をしない限り、メタリック効果顔料を塗布媒体の中に組み入れた後に、改良された機械的性質、より詳しくはインキの層またはペイントの膜における低剥離性を有するコーティングを得ることは不可能であった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明の一つの目的は、製造することが容易であり、その後で高コストで利便性の悪い再加工をしなくても塗布媒体の中で使用することが可能であり、そして改良された貯蔵寿命を有する、メタリック効果顔料を提供することである。そのメタリック効果顔料で着色された塗布媒体を使用して得られるコーティングは、極めて良好な、たとえば高光沢のような視覚的性質と、改良された機械的性質とを合わせ持つものである。
【0016】
本発明がその上に基礎をおく目的は、添加剤を伴うメタリック効果顔料を提供することにより達成されるが、その添加剤は、少なくとも部分的にメタリック効果顔料の上に塗布され、少なくとも1種の少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸とさらに少なくとも1種のポリグリコールエーテルとを構造単位として含み、そのカルボン酸とポリグリコールエーテルは相互に共有結合している。
【0017】
本発明のメタリック効果顔料の好適な展開法は、従属請求項2〜12に規定されている。
【0018】
その目的はさらに、本発明のメタリック効果顔料を製造するための方法を提供することによっても達成されるが、その方法には以下の工程が含まれる:
a)構造単位として少なくとも1種の少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸とさらに少なくとも1種のポリグリコールエーテルとを含む添加剤(そのカルボン酸とポリグリコールエーテルとは相互に共有結合している)、および研磨媒体、および場合によってはさらに液相の存在下で、金属粒子を研磨してメタリック効果顔料とする工程、
b)工程a)において得られ、添加剤を備えたメタリック効果顔料を、研磨媒体から、そして場合によっては液相から分離する工程、
c)場合によっては、工程b)において分離され、添加剤を備えたメタリック効果顔料を圧密化する工程。
【0019】
本発明の方法の好適な展開法は、従属請求項14および15に規定されている。
【0020】
その目的はさらに、コーティング組成物、より詳しくはペイント、コーティング、印刷インキ、プラスチックまたは化粧品配合物を製造するための本発明のメタリック効果顔料の使用、ならびに本発明のメタリック効果顔料を含むコーティング組成物の提供により達成される。
【0021】
「構造単位」は、本発明においては、添加剤が、少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸を含むということを意味している。このカルボン酸は、そのままで存在していてもよいし、あるいはたとえば側鎖の形で置換基として存在していてもよい。いずれの場合においても、使用される添加剤が、少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸の形態の少なくとも1つの構造単位を有しているということが重要である。
【0022】
驚くべきことには、本発明において使用される添加剤が、改良された貯蔵寿命をメタリック効果顔料のペーストまたは粉体に与えるということを本発明者らは見出した。さらに、本発明において使用される添加剤は、塗布され、乾燥されるか、および/または硬化された本発明のメタリック効果顔料を含むコーティング組成物の機械的安定性を改良する結果も与える。
【0023】
さらに驚くべきことには、構造単位として、少なくとも1種の少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸と、さらに少なくとも1種のポリグリコールエーテルとを含む添加剤(そのカルボン酸とポリグリコールエーテルとは相互に共有結合している)が、金属粒子、好ましくはアトマイズされた金属粉体を機械的に研磨することによってメタリック効果顔料を製造する際に必要となる潤滑剤として抜群に好適であるということも見出された。驚くべきことには、機械的変形によって得られるメタリック効果顔料を、高光沢および高光輝を示す、厚みが極端に薄い金属微小板に成形することが可能である。
【0024】
同様の好ましい実施態様においては、添加剤が、メタリック効果顔料のための分散性添加剤として、極めて好適である。この場合、この添加剤を添加するのが、メタリック効果顔料ペーストおよび/またはメタリック効果顔料フィルターケーキであるのが特に好ましい。このタイプのペーストは、顕著に延長された貯蔵寿命を特徴とする。
【0025】
「貯蔵寿命」が延長されるということは、メタリック効果顔料が、貯蔵の過程において、集塊をまったく示さないか、または集塊を実質的に示さないということを意味している。より詳しくは、本発明のメタリック効果顔料を圧縮化した形態、より具体的にはペーストとして、または粉体として貯蔵したときに、集塊をまったく起こさないか、または集塊を実質的に起こさない。
【0026】
本発明の一つの変法においては、メタリック効果顔料の表面のかなりの割合に、本発明において使用するための添加剤が存在している。一つの好ましい実施態様においては、メタリック効果顔料の表面の少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%が、本発明において使用するための添加剤を備えている。
【0027】
それぞれの場合において、メタリック効果顔料および添加剤の量を基準にして、好ましくは0.2%〜5重量%の添加剤、より好ましくは0.4%〜4重量%、極めて好ましくは0.5%〜3重量%の添加剤が、メタリック効果顔料の表面に結合されている。
【0028】
添加剤のメタリック効果顔料に対する比率は、特に、金属の性質および金属の比表面積に依存する。
【0029】
見方を変えて、添加剤の量(単位、ng)を、顔料の表面積1cmあたりの添加剤の量として表してもよい。この場合、好ましくは10〜3000ng/cm、より好ましくは30〜2000ng/cm、極めて好ましくは50〜1000ng/cmの添加剤を、メタリック効果顔料の表面の上に結合させる。
【0030】
印刷分野における適用においては、さらなる利点が生じる:
メタリック効果顔料を含む印刷インキに添加された分散性添加剤は、一般的には、金属顔料の表面の上に結合される程度がかなり低い。しかしながら多くの場合、この効果は破滅的であるが、その理由は、メタリック効果顔料を印刷インキの中に組み入れたときに、多くの分散性添加剤が起泡剤として機能し、そのために望ましくない大量の気泡が発生するからである。それとは対照的に、本発明のメタリック効果顔料はこの欠点を有していないが、その理由は、一つの好ましい実施態様においては、添加剤を研磨自体を行う間に添加するので、その結果としてメタリック効果顔料の表面に結合されているからである。したがって、印刷インキの中に本発明のメタリック効果顔料を組み入れる場合、別途に添加する分散性添加剤の割合を減らすことが可能である。本発明の一つの好ましい変法においては、印刷インキの中で追加の分散性添加剤を使用する必要がまったくない。
【0031】
本発明において使用される添加剤が、一方では、アトマイズされた金属粉体を機械的研磨してメタリック効果顔料とする際に極めて良好な潤滑性を有しており、他方では、そのようにして製造されたメタリック効果顔料の、塗布媒体、たとえば、ペイント、印刷インキ、ワニスなどへの挿入または組み込みを改良することができるということの理由は、いまだによく確立されてはいないものの、少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸がポリグリコールエーテルと協同して、極めて良好な潤滑性を作り出しているものと推測されるが、本発明者らは、この推測に拘束されることを望むものではない。
【0032】
さらに、カルボン酸とポリグリコールエーテルとの間の相乗効果によって、潤滑性が強化されているとも推測される。この場合、カルボン酸とポリグリコールエーテルとの共有結合が、添加剤の面から極めて良好な潤滑性を与えるには重要と考えられる、有利な三次元的な密接性を作り出しているケースかもしれない。
【0033】
塗布媒体の中への挿入性または組み込み性が良好であること、ならびに貯蔵寿命が長いことも同様に、カルボン酸とポリグリコールエーテルが同時に存在していて、密接な三次元的な結合をしているためかもしれない。特性の面からは、カルボン酸は疎水性分子であって、より無極性の有機溶媒に対して強い親和性を有している。このことは、長鎖カルボン酸の場合には特にあてはまる。炭化水素鎖の中に存在する酸素原子の点から、ポリグリコールエーテルは性質としてより極性が高く、そのために親水性の分子である。それは、数多くの極性、無極性両方の溶媒に極めて高い溶解性を有している。特に、それは水溶性が高く、そのために、水性用途のための界面活性剤の中に見出されることが多い。疎水性と親水性とが組み合わさった結果として、本発明のメタリック効果顔料は、塗布媒体の疎水性成分および親水性成分のいずれもと相互作用を有することが可能であり、このことが理由となって、本発明のメタリック効果顔料が、多分、ペイント、ワニス、印刷インキなどによって極めて効果的に包み込まれ、その結果、実質的な外乱としてまたは異質の物体として作用することなく、塗布媒体の中に挿入されたり、組み込まれたりするのであろう。塗布媒体の中に良好に挿入されたり、組み込まれたりした結果として、ペイント層、ワニス層、印刷インキ層などにおいて観察される改良された機械的安定性が得られるのであろう。驚くべきことには、これらの性質は、水系および溶媒系両方の塗布システムに適用される。
【0034】
本発明の一つの好ましい展開法においては、メタリック効果顔料の金属が、アルミニウム、銅、亜鉛、スズ、金青銅、鉄、チタン、クロム、ニッケル、銀、金、鋼、ならびにそれらの合金およびこれらの金属の混合物からなる群より選択される。
【0035】
アルミニウム、鉄、銅、または金青銅を含むかまたはそれらからなるメタリック効果顔料を使用するのが、極めて好ましい。ここにおける金青銅とは、黄銅、すなわち銅と亜鉛との合金である。
【0036】
本発明のメタリック効果顔料の平均厚みh50は、好ましくは15nm〜5μm、より好ましくは20nm〜2μm、さらにより好ましくは30nm〜1μmの範囲に設定する。50nm〜500nmまたは70nm〜150nmの範囲の厚みが極めて適していることも判明した。
【0037】
一つの特に好ましい実施態様においては、メタリック効果顔料が研磨法により製造される。本発明のメタリック効果顔料は、原理的には、「コーンフレーク状物」として知られているもの、そうでなければ「シルバードル状物」として知られているものであってよい。コーンフレーク状物というのは、主として微粉砕的な摩砕で得られ、ほつれた縁部とかなり粗い表面とを有するメタリック効果顔料である。光学的品質がより高いシルバードル顔料は、主として変形性研磨により得られ、丸い縁部と実質的に滑らかな表面とを有している。この理由から、それには散乱中心がほとんどなく、その結果、光沢と明暗フロップ性が向上する。
【0038】
近年になってさらに、極めて薄いアルミニウム効果顔料が報告されているが、そのものは、視覚的に極めて高いグレードのPVD顔料と、もう一方の従来からの研磨顔料との間にこれまで存在していたギャップを埋めるものであると、ますます考えられるようになっている。
【0039】
たとえば、EP 1 621 586 A1には、20〜80nmの厚みを有するアルミニウム顔料が記載されている。WO 2004/087816 A2には、同様に薄く、平均厚みが30〜100nmで、その上に、表面が極めて滑らかで、顔料の厚み分布が狭いアルミニウム顔料が記載されている。
【0040】
まったく驚いたことには、本発明のメタリック効果顔料は、本発明において使用するための添加剤の傑出した潤滑性のために、極めて容易に顔料の厚みを極めて薄いものへと成形することが可能である。このことは、決してアルミニウム効果顔料に限定されるものではなく、それに代えて、極めて薄い金青銅顔料または鉄顔料を得ることもまた可能である。
【0041】
アルミニウム、金青銅、および/または鉄効果顔料の場合、本発明においては、好ましくは15〜100nm、より好ましくは17〜80nm、極めて好ましくは20nm〜50nmの平均厚みh50を有する、極めて薄いメタリック効果顔料である。
【0042】
メタリック効果顔料の平均サイズは、好ましくは1μm〜200μm、より好ましくは3μm〜150μm、さらにより好ましくは5μm〜100μmの範囲である。
【0043】
メタリック効果顔料は、微小板形状であり、そのため、平均サイズ/厚みの比率(形状因子)は、好ましくは少なくとも5:1、より好ましくは少なくとも10:1、さらにより好ましくは少なくとも20:1、よりさらに好ましくは少なくとも50:1である。サイズ/厚みの比率が、100:1または1500:1であれば、極めて好適であることも判明した。
【0044】
また別な好ましい実施態様においては、メタリック効果顔料が、PVD法によって製造されたメタリック効果顔料である。この文脈において特に好ましいのは、特にアルミニウム効果顔料である。
【0045】
これらの実施態様の場合においては、言うまでもないことであるが、添加剤は、潤滑剤として使用されるのではなく、存在しているメタリック効果顔料の分散体に添加されるのが好ましい。
【0046】
本発明のメタリック効果顔料は、好ましいことには、可能な限り極めて薄い平均厚みを有していることの結果として、極めて高い不透明性を有している。顔料の不透明性は、典型的には、単位重量の顔料量で被覆できる表面積の大きさとして認識される。メタリック効果顔料の平均厚みが薄いほど、顔料(メタリック効果顔料の単位重量あたり)によって被覆される表面積が大きくなり、その結果メタリック効果顔料の不透明性が高くなる。
【0047】
特に印刷物においては、厚みが薄いということが極めて大きい利点となるが、その理由は、印刷物では、たとえばペイントコーティングに比較して、実質的に厚みが薄く、バインダーの割合が低いからである。
【0048】
したがって、本発明のメタリック効果顔料は、印刷インキにおいて使用するのに極めて適している。本発明において使用するための添加剤の効果は、印刷された印刷インキ層の内部への本発明のメタリック効果顔料の挿入が改良されることである。
【0049】
本発明のメタリック効果顔料は、尋常でない光輝と傑出した特有の不透明性とを特徴とする。印刷用途においては特に、光輝な色相が作り出される。たとえば本発明のアルミニウム効果顔料の場合においては、高光沢のシルバーカラーのコーティングを作り出すことができる。本発明の黄銅または金青銅効果顔料を使用すれば、高光沢のゴールドカラーのコーティングが作り出される。
【0050】
フィルム、たとえばポリマーフィルムに、面反転(reverse−face)塗布物の形態でメタリック効果顔料を塗布した場合、特に前面から見たときに、尋常でないメタリックな光輝を有するフィルムが得られる。
【0051】
フィルム材料に対して本発明のメタリック効果顔料を面反転塗布したものは、特に下記のものにおいて好適である:柔軟性のある包装材、収縮フィルム、積層材(たとえばカードに対する)、包装フィルム、ラベル、スクリーン印刷におけるインモールド装飾フィルム(たとえば携帯電話の表面板)など。
【0052】
本発明のメタリック効果顔料を、印刷インキの中に組み込んでから、従来からの印刷機を用いて、紙、カード、フィルム、織物などの上に印刷するのが好ましい。
【0053】
一つの好ましい実施態様においては、本発明において使用するための添加剤の存在下で金属粒子を機械的に研磨することが、添加剤を、得られるメタリック効果顔料の表面に塗布することになる。添加剤は、メタリック効果顔料の表面に、物理的な効果および/または化学的な結合によって結合される可能性がある。
【0054】
一つの好ましい実施態様においては、本発明のメタリック効果顔料が、機械的研磨の後に、本発明において使用するための添加剤の存在下において、さらにコーティングされることはない。したがって、本発明のメタリック効果顔料は、適切であるならば溶媒を交換するかまたは除去して、塗布媒体の中に直接的に組み込まれてもよい。
【0055】
本発明のメタリック効果顔料をさらにコーティングして、メタリック効果顔料の表面に有機化学的な変性を与えることも可能であることは言うまでもない
【0056】
本発明の一つの好ましい実施態様においては、メタリック効果顔料が非リーフィング性の顔料である。非リーフィング性のメタリック効果顔料は、メタリック効果顔料が、塗布媒体の表面またはその近傍、すなわち、基材から遠い方にある塗布媒体、たとえばワニス、ペイントまたは印刷インキの膜の表面の上ではなく、塗布媒体の内部でそれが配列することを意味している。したがって、本発明のメタリック効果顔料は、塗布媒体(たとえば、バインダー)によって包み込まれて、乾燥または硬化の過程で、封入されるかまたは組み込まれる。したがって、本発明の非リーフィングメタリック効果顔料は、ワニス、ペイントまたは印刷インキによって、機械的または化学的な暴露からすでに保護されている。
【0057】
本発明のメタリック効果顔料を含むコーティングに対して、たとえばクリヤーコートなどの保護コーティングを適用することもまた可能であることは言うまでもない。
【0058】
たとえば、顔料表面に対して、少なくとも12個のC原子を有する飽和脂肪酸、好ましくはパルミチン酸またはステアリン酸をさらに適用することによって、本発明のメタリック効果顔料にリーフィング特性を与えることもまた可能である。
【0059】
本発明において使用するための添加剤は、カルボン酸とポリグリコールエーテルとを反応させることによって得ることができる。このカルボン酸とポリグリコールエーテルとの反応は、エステル化および/またはアミド化によって起こさせるのが好ましい。
【0060】
この文脈において特に好ましいのは、エステル化によってポリグリコールエーテルをカルボン酸と共有結合させることである。この場合、カルボン酸官能基が、全部または少なくとも部分的に、ポリグリコールエーテルとエステル化する。
【0061】
たとえば、カルボン酸とポリグリコールとを、たとえば昇温および水除去による従来からのエステル化反応により、相互に反応させることができる。そのようなエステル化反応のための条件は当業者には公知であり、たとえば、EP 1 304 210 A1またはDE 24 36 902にも記載がある(参照することにより本明細書に取り入れたものとする)。
【0062】
この際のエステル化度は、好ましくは10%〜90%、より好ましくは20%〜80%、極めて好ましくは25%〜75%である。これらの範囲の中であれば、添加剤の疎水性成分と親水性成分との間で、満足のいくバランスが得られる。
【0063】
また別な実施態様においては、カルボン酸が飽和または不飽和である。しかしながら、この場合においては飽和カルボン酸が好ましいが、その理由は、より長い貯蔵寿命が得られるからである。
【0064】
カルボン酸は、好ましくは6〜130個の炭素原子、より好ましくは8〜100個の炭素原子、極めて好ましくは10〜96個の炭素原子、特に好ましくは20〜80個の炭素原子を有する。この炭素原子の数は、カルボキシレート官能基を含めたカルボン酸の炭化水素骨格に関するものであって、ポリグリコールエーテル単位には関係ない。
【0065】
カルボン酸の構造単位、好ましくはカルボン酸またはカルボン酸基における炭素原子が4個未満では、金属顔料と組み合わせた場合の添加剤の有利な効果が認められない。C原子が130個を超えると、添加剤が次第に大部分の溶媒に溶けなくなってくる。そのために、合成が困難になるとともに、メタリック効果顔料と組み合わせた場合の有利な効果をほとんど示さなくなる。
【0066】
カルボン酸はモノカルボン酸であってもよい。本発明の文脈において、ポリグリコールエーテルと共有結合することが可能な少なくとも4個の炭素原子を有するモノカルボン酸として好適であることが判明した酸としては、飽和脂肪酸が挙げられる。好ましくは6〜30個の炭素原子、より好ましくは10〜24個の炭素原子、さらにより好ましくは14〜22個の炭素原子を有する脂肪酸を使用する。異なったモノカルボン酸の混合物を使用することもまた可能であるが、その場合、炭素原子の数について先に特定した数値は、2種以上のモノカルボン酸の混合物の平均値と理解するべきである。
【0067】
脂肪酸は、以下のものからなる群から選択するのが好ましい:吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、およびこれらの脂肪酸の混合物。
【0068】
少なくとも4個の炭素原子を有するモノカルボン酸として、本発明においては、不飽和脂肪酸を使用することもまた可能である。好ましくは6〜30個の炭素原子、より好ましくは10〜24個の炭素原子、さらにより好ましくは14〜22個の炭素原子を有する不飽和脂肪酸を使用する。
【0069】
不飽和脂肪酸は、たとえば、以下のものからなる群から選択すればよい:ウンデシレン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、エイコセノイック酸、セトレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸、チムノドン酸、クルパノドン酸、ドコサヘキサエン酸、およびこれらの脂肪酸の混合物。
【0070】
また別な好ましい実施態様においては、使用されるカルボン酸には、ジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸、またはそれらの混合物が含まれる。ポリグリコールエーテルに共有結合させることができるジカルボン酸および/またはトリカルボン酸として、飽和および/または不飽和カルボン酸を使用することも同様に可能である。
【0071】
使用可能なジカルボン酸としては、たとえばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸および/またはセバシン酸が挙げられる。
【0072】
本発明の一つの特に好ましい展開法においては、かなり長い炭素骨格を有するジカルボン酸、トリカルボン酸、またはテトラカルボン酸を使用する。これらのジカルボン酸、トリカルボン酸、またはテトラカルボン酸は、好ましくは、不飽和脂肪酸を二量化、三量化、または四量化することによって得られる。この目的のために使用する脂肪酸は、好ましくは11〜30個の炭素原子、より好ましくは12〜24個の炭素原子、さらにより好ましくは14〜22個の炭素原子を有している。二量化、三量化、または四量化をするのに好適な不飽和脂肪酸の例としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、またはこれらと類似の酸が挙げられる。非分岐状の脂肪酸を使用するのが好ましいが、分岐状の脂肪酸も使用可能であることは言うまでもない。
【0073】
このタイプの化合物は、天然物として得られ、好ましくは、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、もしくはテトラカルボン酸、またはより高級な同族体の混合物で代表される。特に好ましくは、ポリカルボン酸は、ジカルボン酸の形態で主として存在する。
【0074】
18個の炭素原子の炭素骨格を有するジカルボン酸が極めて好適であることがわかった。したがって、このジカルボン酸は36個のC原子を有し、対応するトリカルボン酸は54個のC原子を有する。
【0075】
ポリグリコールおよび/またはポリグリコールエーテルとの反応においてジカルボン酸を使用するのが好ましい。ここでは、部分的にのみエステル化させて、主としてジカルボン酸のモノグリコールエステルを得るのが好ましい。ジカルボン酸のモノグリコールエステルは、遊離のカルボキシレート基を介して、メタリック効果顔料の表面に結合することができる。この結合は共有結合が好ましい。
【0076】
ポリカルボン酸は、単量体、二量化、三量化、または四量化脂肪酸であるのが好ましい。脂肪酸としては、先に挙げた脂肪酸で、二量化、三量化、または四量化されたものを使用することができる。これらの各種の脂肪酸の混合物が好適に使用される。
【0077】
本発明のこれらの好ましい実施態様においては、カルボン酸が、2個〜8個のカルボン酸基を有する少なくとも1種のポリカルボン酸である。ポリカルボン酸が2〜4個のカルボキシル基を含んでいれば、さらに好ましい。これらの数値は、極めて広く各種のポリカルボン酸のいかなる混合物の場合においても、その平均値を指している。
【0078】
ポリカルボン酸が、10〜96個、好ましくは12〜76個の炭素原子、より好ましくは24〜60個の炭素原子、さらにより好ましくは36〜54個の炭素原子を含んでいれば、さらに好ましい。ここでもまた、各種の異なったポリカルボン酸のいかなる混合物の場合であっても、その炭素原子の数は、そのような混合物の中での平均値を指している。
【0079】
好ましくは30〜60個の炭素原子、より好ましくは36〜54個の炭素原子を有する二量化または三量化された脂肪酸を使用するのが好ましい。平均36個の炭素原子を有するダイマー酸が、極めて好適であることがわかった。このダイマー酸は、好ましくは、トリマー酸、モノ酸、またはテトラマー酸をある程度の割合でさらに含んでいてよい。
【0080】
そのようなポリカルボン酸は、Empol(Cognis、Adhesives & Sealants)、またはPripol(Unichema)、またはVersadyne(Henkel Hakusui Kabushiki Kaisha)の商品名で市販されている。これらの製品の例としては以下のものが挙げられる:Empol 1018、Empol 1045、Pripol 1013、Pripol 1006、Pripol 1022、Pripol 1009、Pripol 1010、Pripol 1040、Pripol 1010、またはVersadyme 216。
【0081】
本発明の一つの好ましい展開法においては、ポリグリコールエーテルが、基R−X−(R−O)−(R−O)−(R−O)−を含んでおり、ここでR−O、R−O、およびR−Oのポリエーテル単位は、ランダムに配列されていても、交互に配列されていても、あるいはブロックコポリマーとして配列されていてもよい。
【0082】
基Rは、1〜30個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族基、または芳香脂肪族もしくは芳香族有機基である。
【0083】
基R、R、およびRは、同一であってもよいし、あるいは相互に独立して異なっていてもよいが、それぞれの場合において、1〜12個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族有機基、または芳香脂肪族もしくは芳香族有機基である。
【0084】
個々の重合度y、z、およびkは自然数であって、相互に独立して0〜200であるが、ただしy+z+k=2〜600である。
【0085】
基Xは、O、S、(CO)O、またはNRを表すが、ここでRは、H、または1〜20個の炭素原子を有する脂肪族基である。ここにおけるXは、好ましくは酸素原子であるかまたはカルボキシル官能基であるが、酸素原子であればより好ましい。
【0086】
カルボン酸との共有結合に使用するポリグリコールエーテルは、好ましくは、出発分子としてのアルコールR−OH、チオールR−SH、カルボン酸R−COOH、またはアミンRNHRを、それぞれの場合において、過剰のグリコールと、当業者には公知の適切な反応条件下で反応させることにより得られる。
【0087】
本発明のポリグリコールエーテルは、ほとんどが単官能のポリグリコールの形態であるが、その理由は、これらのポリグリコールが、あいまいでない形で、カルボン酸と共有結合できるからである。ここでの「ほとんどが単官能」は、0%から最大10%までの割合で、二官能のポリグリコールエーテルを同様に含んでいるということを意味している。その場合、基Rが、カルボン酸との反応性を有する基を含むか、あるいは基Rに代えて、単に水素原子が存在しているか、のいずれかである。たとえば後者の場合は、アルコール、チオールなどとグリコールとの不完全な反応による。
【0088】
基Rは、好ましくは2〜16個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐状の脂肪族基または芳香脂肪族もしくは芳香族有機基であり、より好ましくは1〜12個のC原子を有する脂肪族基である。
【0089】
基R、R、およびRは、相互に独立して、好ましくは2〜8個のC原子、より好ましくは2〜4個のC原子を有する。
【0090】
基R、R、およびRが、相互に独立して、エチル、イソプロピル、プロピル、またはブチルであれば、特に好ましい。たとえばエチル、イソプロピル単位の、交互コポリマーまたはブロックコポリマー、いわゆるEO/POポリエーテルであれば、特に好ましい。
【0091】
エーテル単位の長さy+z+kは、好ましくは5〜300、より好ましくは7〜100、特に好ましくは10〜50である。
【0092】
エーテル単位が長すぎると、メタリック効果顔料の表面に対する添加剤の親和性が低下する。したがって、特に、ペースト、または既製の塗布媒体、たとえば印刷インキの中で、添加剤がメタリック効果顔料から剥がれたり、メタリック効果顔料の表面に十分に結合しなかったりする危険性がある。その一方で、エーテル単位が短すぎると、添加剤が、メタリック効果顔料の性質に及ぼす効果の面で、もはや公知の潤滑剤と差別化できないか、あるいはほとんど差別化できないことになる。
【0093】
好適なポリグリコールエーテルの例としては、メトキシポリエチレングリコール、ブトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、またはブトキシポリプロピレングリコールが挙げられる。
【0094】
カルボン酸とカップリングさせる前は、ポリグリコールエーテルまたはポリグリコールは、典型的には、先に示した構造式の開放末端に、水素原子またはアミン官能基またはエポキシドを有している。したがって、カルボン酸と反応させる前は、以下の分子であるのが好ましい。
−X−(R−O)−(R−O)−(R−O)−H(エステルの生成)
−X−(R−O)−(R−O)−(R−O)−N(H)(R)R(アミドの生成)
【化1】

(α−ヒドロキシエステルの生成)
【0095】
上の構造式において、R、R、およびRは、相互に独立して、Hまたは1〜6個の炭素原子を有する分岐状もしくは非分岐状の炭素基であるのが好ましい。炭素基は、1〜6個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基であるのが好ましい。炭素基R、R、およびRは、相互に独立して、飽和であっても、不飽和であってもよい。たとえば、R、R、およびRが、相互に独立して、フェニル基であってもよい。特に好ましくは、RおよびRがHで、RがHまたはメチルである。
【0096】
ポリグリコールエーテルをカルボン酸と反応させた後では、末端の酸素原子を介した共有結合が存在しているのが好ましい。
【0097】
一つのさらなる変法においては、カルボン酸が、部分的または全面的にエステル化またはアミド化される。
【0098】
驚くべきことには、カルボキシル基のいくつかだけがエステル化されて、(1個または複数の)カルボン酸、好ましくは(1個または複数の)ポリカルボン酸が、部分エステルの形態で存在していることが、特に有利であるということが見出された。カルボキシル基の少なくとも10%、かつ90%以下がエステル化されているのが好ましい。さらに好ましくは約15%〜80%、より好ましくは約20%〜70%のカルボキシル基がエステル化されている。
【0099】
したがって、メタリック効果顔料の表面にカップリングさせるためには、好ましくは、添加剤の中にほんの数個のカルボキシル基が必要とされる。
【0100】
カルボン酸、好ましくはポリカルボン酸が部分エステルとして存在していると、乾燥または硬化させた塗布媒体、たとえば乾燥させたペイントもしくは印刷インキまたは硬化させたワニスの貯蔵寿命ならびに機械的性質、特に剥がれ抵抗性が改良されるということが見出された。
【0101】
したがって、この好ましい変法の場合、カルボン酸のいくつかはまだカルボキシル官能基の形態で存在している。本発明における混合物の中でのそのようなカルボキシル官能基を有する添加剤が、メタリック顔料の表面に対して特に効果的に結合することができると考えられる。
【0102】
したがって、本発明において使用するための添加剤は、好ましくは5〜140、より好ましくは6〜100mgKOH/g添加剤、極めて好ましくは8〜50KOH/g添加剤の酸価を有する。これらの酸価は、DIN 53402に従って決定するのが好ましい。
【0103】
本発明の一つのさらなる変法においては、カルボン酸とポリグリコールエーテルとの共有結合が、カルボン酸のカルボキシル官能基のエステル化またはアミド化を介して得られたものではない。
【0104】
この変法においては、たとえば、添加剤が、一方がヒドロキシル官能基を有するカルボン酸(たとえば、酒石酸)であり、他方が末端エポキシド基を有するポリグリコールエーテルである出発物質から調製される。そのカルボン酸においては、遊離のカルボキシル官能基が、適切な保護基によって、エポキシド基との反応性を抑制されるので、ポリグリコールエーテルが、そのエポキシ官能基によって、カルボン酸のヒドロキシル官能基に共有結合して、α−ヒドロキシルエーテル結合が生成する。
【0105】
本発明の一つのさらなる変法においては、カルボン酸とポリグリコールエーテルとを、炭化水素基を介して相互にカップリングさせることができる。この炭化水素基は、飽和であっても、不飽和であってもよく、好ましくは2〜100個のC原子を含む。炭化水素基は、さらに好ましくは4〜50個、さらにより好ましくは6〜20個の炭素原子を含む。特に好ましくは、炭化水素基は、好ましくは2〜10個の炭素原子の範囲の鎖長を有している。炭化水素基は、酸素原子を含んでいてもよいし、および/または置換されていてもよい。炭化水素基は直鎖であるのが好ましいが、分岐状であってもよい。カルボン酸とポリグリコールエーテルとの共有結合をもたらすために、それらを二官能の反応性炭化水素と反応させる。一つの好ましい変法においては、ジグリシジル化合物、好ましくはジグリシジルエーテルを使用する。
【0106】
好ましい実施態様においては、添加剤が、カルボン酸またはポリカルボン酸の疎水性の炭化水素骨格に対して、ある程度の比率の親水性ポリエーテル基を有している。この文脈においては、ポリエーテル単位の長さy+z+k(重合度)の、ポリカルボン酸中の炭素原子個数に対する比率が、好ましくは0.1〜4.0、より好ましくは0.15〜3.0、極めて好ましくは0.2〜2.0、特に好ましくは0.25〜1.0である。
【0107】
比率が0.1未満では、添加剤が、脂肪酸と比較して本発明の利点を与えなくなる可能性がある。比率が4.0を超えると、同様に、もはや何の利点も観察できなくなる可能性がある。この場合においては、添加剤がもはやメタリック効果顔料の表面にしっかりと結合しなくなる傾向がある。
【0108】
一つのさらなる変法においては、カルボン酸が単官能アルコールで部分的にエステル化されていてもよい。単官能アルコールによるエステル化の程度は、存在しているカルボン酸官能基の0%〜50%とするのが好ましい。
【0109】
単官能アルコールには、1〜20個のC原子を有する炭化水素基が含まれる。炭化水素基は、直鎖であっても分岐状であってもよく、また飽和であっても不飽和であってもよい。
【0110】
好適なアルコールの例としては以下のものが挙げられる:イソプロパノール、ブタノール、tert−ブタノール、アミルアルコール、イソアミルアルコール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサン、ミリスチルアルコール、n−オクタノール、イソオクタノール、イソデカノール、カプリリルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、トリデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、およびこれらのアルコールの混合物。
【0111】
メタリック効果顔料の上で本発明において使用するための添加剤の平均分子量は、好ましくは200〜20000g/mol、より好ましくは300〜10000g/molの範囲である。500〜8000g/molの範囲の平均分子量が極めて適していることが見出され、1000〜4000g/molの分子範囲が特に好ましい。
【0112】
本発明の一つのさらなる変法においては、カルボン酸が、部分的または全面的にカルボン酸塩として存在している。
【0113】
カルボン酸塩には、カチオンとして、アルカリ金属カチオンおよび/またはアルカリ土類金属カチオンを含んでいてよい。カルボン酸塩のカチオンは、Li、Na、K、Mg2+および/またはCa2+、ならびにこれらの混合物であるのが好ましい。
【0114】
カルボン酸塩が、カルボン酸のカルボキシレートと1種または複数の金属カチオンの塩であるのが好ましいが、その金属カチオンは、メタリック効果顔料の金属コアの中に存在している金属から選択するのが好ましい。
【0115】
カルボン酸塩、たとえば金属セッケンを使用する場合、1種または複数のカチオンがメタリック効果顔料の1種または複数の金属に合致するようにして、塗布媒体の中に不必要に余分なイオンを導入しないように、それを選択するのが有利であることが判明した。
【0116】
一つの好ましい変法においては、カルボン酸塩の1種または複数の金属カチオンが、一価、二価および/または三価の金属カチオンの群から選択される。
【0117】
したがって好適なカチオンは、Al3+、Fe3+、Fe2+、Cu2+および/またはZn2+である。
【0118】
これらのカルボン酸の金属塩は、メタリック顔料の上に塗布されたカルボン酸からインサイチューで形成させてもよい。時間の経過と共に、カルボン酸がメタリック顔料と反応して金属セッケンが生成してもよい。この挙動は、潤滑剤として標準的な基材の上で使用される脂肪酸、たとえばステアリン酸またはオレイン酸に関しては公知でもある。
【0119】
一つの好ましい実施態様においては、メタリック顔料を研磨する際の潤滑剤として、添加剤を使用する。さらに好ましい実施態様においては、この潤滑剤に対して、ステアリン酸またはオレイン酸のような飽和または不飽和の脂肪酸をさらに加えることはない。研磨の際に従来からの脂肪酸を添加すると、本発明の潤滑剤の有利な効果が損なわれてしまう傾向があるということが見出された。
【0120】
さらなる実施態様においては、研磨の途中では添加剤を添加せず、その代わりに研磨が終了した後にだけ添加する。この場合、すぐれた分散助剤として機能するという事実から、この添加剤の効果が特に発揮される。この場合においては、メタリック顔料が、溶媒系および水系両方の塗布システムの中に顕著に組み込まれる可能性がある。添加剤は、メタリック顔料のフィルターケーキ、またはメタリック効果顔料のペーストもしくは粉体に添加するのが好ましい。特に、この様にして処理したメタリック効果顔料は、顕著に改良された貯蔵寿命を示す。
【0121】
本発明の一つの有利な展開法においては、メタリック効果顔料を、圧密化した形態、好ましくは粒状物、ペレット、タブレット、ブリケット、ソーセージ状物の形態、またはペーストとして存在させる。
【0122】
上に挙げた提供形態によって、本発明のメタリック効果顔料の粉塵飛散の少ない取扱い、好ましくは粉塵飛散のない取扱いが可能となる。そうしたメタリック効果顔料では、輸送、計量および加工が容易となり、人間または環境に対するリスクをなくすことができる。
【0123】
圧密化した形態においては、メタリック効果顔料は、好ましくは約15重量%まで、より好ましくは約0.1%〜約10重量%、さらにより好ましくは約0.2%〜約8重量%の残存水分量を有しているが、その重量%の数字は、圧密化したメタリック効果顔料調製物の全重量を基準にしたものである。
【0124】
本発明の金属効果顔料を製造するための本発明の方法には以下の工程が含まれる:
a)少なくとも1種の少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸とさらに少なくとも1種のポリグリコールエーテルとを含む添加剤(そのカルボン酸とポリグリコールエーテルとは相互に共有結合している)、および研磨媒体、および場合によってはさらに液相の存在下で、金属粒子を研磨してメタリック効果顔料とする工程、
b)工程a)において得られ、添加剤を備えたメタリック効果顔料を、研磨媒体から、そして場合によっては液相から分離する工程、
c)場合によっては、工程b)において分離され、添加剤を備えたメタリック効果顔料を圧密化する工程。
【0125】
本発明のメタリック効果顔料に関して、および使用される添加剤に関してこれまで記述されたすべての実施態様は、方法の文脈においては、対応して適用される。
【0126】
使用する金属粒子は、アトマイズされた金属粉体、フォイルの残物、そうでなければ、予め予備成形されている金属微小板などであってよい。アトマイズされた金属粉体は、不規則な形状であるか、またはほとんど丸い形状であってよい。アルミニウム顔料または鉄顔料を製造する場合には、ほとんど丸いアトマイズされた金属粉体の形状であるのが好ましい。
【0127】
アトマイズされた金属粉体を変形させることは、乾式研磨法または湿式研磨法として実施すればよい。湿式研磨法として、アトマイズされた金属粉体の変形を起こさせるのが好ましい。
【0128】
使用する溶媒は、有機溶媒、溶媒混合物、たとえば有機溶媒と水との混合物、または水性溶媒であってよい。水性溶媒を使用する場合には、さらに腐食防止剤を添加するのが好ましい。
【0129】
しかしながら、有機溶媒の存在下で湿式研磨を行うのが好ましい。使用する有機溶媒は、好ましくは、ソルベントナフサ、ナフサ、ホワイトスピリット、エステル、エーテル、ケトン、アルコール、もしくはグリコール、またはそれらの混合物である。
【0130】
もし必要なことがわかれば、研磨の後に、メタリック効果顔料を、典型的には、再湿潤させてもよい。このことは、減圧下において高温で、溶媒をほとんど除去し、次いで特定の末端用途に支障のない(そしてユーザーが望む)溶媒を用いて、再びペースト化を行うということを意味している。
【0131】
しかしながら、(平均厚みが100nm未満、特に50nm以下の)極めて薄いメタリック効果顔料を製造する場合には、再湿潤工程は、その顔料の比表面積が極めて高いために、メタリック顔料が集塊するという、望ましくない事象を伴う可能性がある。この場合には、好ましくはその後で予定されている用途で支障がない溶媒の中で、研磨を実施するべきである。
【0132】
たとえば、グラビア印刷インキの用途の場合には、酢酸エチル、酢酸n−プロピルまたは酢酸イソプロピルのような溶媒が好ましい。
【0133】
一つの好ましい変法においては、研磨媒体、好ましくは球状の研磨媒体の存在下で、ボールミル中で工程a)を実施する。
【0134】
使用する球状の研磨媒体、好ましくはボールは、ガラス製ボール、鋼製ボールおよび/またはセラミック製ボールであるのが好ましい。使用するセラミック製ボールは、コランダムまたは酸化ジルコニウムのボールであるのが好ましい。
【0135】
ボールの平均直径は、好ましくは0.3〜5.0mm、より好ましくは0.5〜4.5mm、極めて好ましくは0.6〜2mmである。
【0136】
アトマイズされた銅粉体または黄銅粉体を湿式研磨するために使用する研磨媒体は、個々の重量が85μg〜515mgであるのが好ましい。
【0137】
本発明の一つの好ましい展開法においては、研磨媒体が0.8〜180mgの個々の重量を有している。
【0138】
鋼製ボールの場合、その個々の平均重量は、1〜180mg、好ましくは1.2〜150mg、より好ましくは2.0〜120mgの範囲であるのが好ましい。ガラス製ボールの場合には、その個々の平均重量は、1.0〜12.5mgの範囲である。
【0139】
変形性研磨をしている間の温度は、好ましくは10℃〜70℃、より好ましくは25℃〜45℃の範囲である。この場合の研磨時間は、2〜120時間、好ましくは5〜100時間、さらにより好ましくは8〜80時間の範囲とするのが好ましい。
【0140】
極めて薄いメタリック効果顔料(平均厚みが100nm未満)を製造する好ましい場合においては、極めて長い研磨時間を想定する必要がある。この場合、顔料を注意深く成形しなければならない。メタリック効果顔料のための好ましい研磨時間は、少なくとも15時間、より好ましくは少なくとも20時間である。これらの時間は、研磨時間を合計したものと理解するべきである。二段またはそれ以上の工程で研磨を実施するとすれば、個々の工程の研磨時間を相応に加え合わせるべきである。
【0141】
本発明のさらに好ましい方法においては、メタリック顔料を研磨するための潤滑剤としては、添加剤を使用しない。この場合の方法には、以下の工程を含む:
a)研磨媒体および場合によっては溶媒の存在下で、潤滑剤と共にアトマイズされた金属粉体または金属フォイルの破片を研磨して、微小板形状のメタリック効果顔料を得る工程、
b)研磨媒体および場合によっては大部分の溶媒から、微小板形状のメタリック効果顔料を分離する工程、
c)工程b)からのメタリック顔料粉体、または場合によってはフィルターケーキに、本発明において使用するための添加剤を添加して、組み合わせる工程。
【0142】
この場合における溶媒または研磨媒体(研磨ボール)の選択は、先に説明したのと同じである。
【0143】
本発明のメタリック効果顔料と添加剤とのこのタイプの混合物は、塗布媒体の中にメタリック効果顔料を特に効率的に分散させることが特徴である。添加剤を用いて処理した結果として、メタリック効果顔料が集塊することはほとんどない。そのメタリック効果顔料は、貯蔵寿命が極めて長いこと、および塗布媒体、たとえば印刷インキまたはペイントの中での処理が容易であることを特徴とする。たとえば、具体的には、ペイントにメタリック効果顔料を使用する場合に典型的に実施され、溶媒(一般的にはブチルグリコール)および場合によっては湿潤剤と共にメタリック効果顔料を予備分散させておく分散工程を、ほとんど湿潤剤なしですますことができるか、あるいは湿潤剤なしで極めて順調に実施することができる。分散剤として機能する添加剤により、メタリック効果顔料を極めて簡単に分散させることができる。
【0144】
この文脈において使用する添加剤の量は、末端用途、および特にメタリック効果顔料の比表面積に依存する。
【0145】
粒状化、ペレット化、タブレット化、ブリケット化、濾過、加圧、および/または押出加工によって実施できる圧密化をすることもさらに好ましい。
【0146】
粒状化は、たとえばスプレー造粒法によって実施することができる。ペレット化させるには、ペレット化プレートを使用するのが好ましい。タブレット化およびブリケット化は、相当する形状の中に圧縮成形することにより実施するのが好ましい。ソーセージ状の形状は、メタリック効果顔料を押出加工することにより製造するのが好ましい。
【0147】
請求項1〜12のいずれかに記載の添加剤を含む本発明のメタリック効果顔料は、コーティング組成物、特にペイント、コーティング、印刷インキ、プラスチックまたは化粧品配合物を製造するのに使用するのが好ましい。
【0148】
したがって、本発明は、コーティング組成物、たとえば、ペイント、コーティング、印刷インキ、プラスチックまたは化粧品配合物もまた提供するが、それらには、請求項1〜12のいずれかに記載の添加剤を含む本発明のメタリック効果顔料が含まれる。
【0149】
一つの好ましい実施態様においては、本発明は、本発明の添加剤とメタリック効果顔料との混合物を含む印刷インキを提供する。この場合においては、添加剤を、研磨、好ましくは湿式研磨によりメタリック効果顔料を製造する際に潤滑剤として使用するのが特に好ましい。
【0150】
印刷インキは、液状印刷インキ、たとえば、グラビア印刷、フレキソ印刷またはスクリーン印刷用のインキであるのが好ましい。言うまでもないことであるが、それがオフセット印刷インキまたはデジタル印刷インキであってもよい。
【0151】
デジタル印刷インキの場合においては、インクジェット印刷インキが特に好ましい。この場合には、極めて微細なメタリック効果顔料のみを使用するのがよい。この微細なメタリック効果顔料は、0.65〜10μm、好ましくは0.7〜8μm、より好ましくは0.8〜6μmの平均サイズd50を有するものである。ここではそのように微細なメタリック効果顔料が必要であるが、その理由は、そうしないと、フィードラインおよび/または吐出ノズルにおける閉塞が起きるからである。
【0152】
本発明のグラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキまたはスクリーン印刷インキには、溶媒または溶媒混合物が含まれる。これらが使用されるのは、とりわけバインダーを溶解させるため、さらには、印刷インキにおける重要な塗布性能、たとえば、粘度または乾燥速度を設定するためである。
【0153】
液状印刷インキ、たとえば、フレキソ印刷インキおよびスクリーン印刷インキのために使用される溶媒としては、特に低沸点溶媒が挙げられる。その沸点は、通常、140℃以下である。高沸点溶媒は、乾燥速度を設定する目的で、かなり少量で使用されるだけである。スクリーン印刷インキの配合は、フレキソ印刷インキまたはグラビア印刷インキと同様であるが、ただし粘度がやや高く、そして通常はある程度高い沸点を有する溶媒を含んでいる。液状印刷インキに適した溶媒の例としては、エタノール、1−プロパノールもしくは2−プロパノール、置換アルコール、たとえばエトキシプロパノール、またはエステル、たとえば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピルもしくは酢酸n−ブチルなどが挙げられる。言うまでもないことであるが、複数の溶媒の混合物を使用することもまた可能である。たとえば、溶媒が、エタノールと、エステル、たとえば酢酸エチルまたは酢酸プロピルとの混合物を含んでいてもよい。フレキソ印刷版を用いて印刷するためには、一般的にエステルの割合が、全溶媒に対する比率として、約20%〜25重量%を超えないようにすることが推奨される。液状印刷インキのための溶媒として、水、または水性溶媒を主とする混合物を使用することも可能であり、好ましい。
【0154】
印刷インキのタイプに応じて、全成分を合計したものに対して、10%〜60重量%の溶媒を通常は使用する。しかしながら、本発明の印刷インキの場合、溶媒の範囲を60%〜80重量%とするのが特に有利であることが見出される。
【0155】
放射線硬化が可能な印刷インキは、通常、上述のような溶媒を含まず、代わりに反応性希釈剤を含む。反応性希釈剤は、典型的には二つの機能を果たす。第一には、それは印刷インキを架橋または硬化させる機能を果たすが、第二には、しかしながら、それが従来からの溶媒(DE 20 2004 005 921 UI 2004.07.1)のように粘度を調節する機能も果たす。その例としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、ならびに特に多官能アクリレート、たとえば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートまたはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0156】
本発明のメタリック印刷インキのためのバインダーとしては、原理的には、液状印刷インキに典型的に使用されているバインダーを使用することができる。所望の末端用途および所望の性質に応じて、当業者は適切な選択をする。好適なバインダーの例としては、ポリエステル、ポリアミド、PVCコポリマー、脂肪族および芳香族ケトン樹脂、メラミン−尿素樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、マレイン酸エステル、ロジン誘導体、カゼインおよびカゼイン誘導体、エチルセルロース、ニトロセルロース、または芳香族および/もしくは脂肪族ポリウレタンが挙げられる。酢酸ビニル、ビニルアルコール、アクリレート、メタクリレート、ビニルピロリドン、またはビニルアセタールのポリマーまたはコポリマーを使用してもよい。特に有利には、官能基を含む超分岐状ポリマーを使用することが可能であるが、その例としては、WO 02/36695およびWO 02/36697に開示されているような、超分岐状のポリウレタン、ポリウレアまたはポリエステルアミドが挙げられる。言うまでもないことであるが、複数のポリマーバインダーの混合物を使用することもまた可能であるが、ただし、選択された複数のバインダーが、相互に組み合わさったときに、望ましくない性質を有していないことが必要である。バインダーをすべて合計した量は、典型的には、その印刷インキの全成分を合計した量を基準にして5%〜40重量%である。
【0157】
特に好ましいバインダーとしては、たとえば、ニトロセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アクリレート、ポリビニルブチラール、ならびに脂肪族および芳香族のポリウレタンおよびポリウレア、特に超分岐状のポリウレタンおよびポリウレア、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0158】
水希釈性メタリック印刷インキのためのバインダーとして考えられるのは、特に、(メタ)アクリル酸および/またはそのエステルとスチレンとをベースとするコポリマーである。このタイプのバインダーは、印刷インキに使用するための溶液または分散体として、たとえばZinpol(登録商標)(Worlee)の名称で市販されている。さらなる例としては、芳香族および/または脂肪族の水性ポリウレタン、ポリエステル、ならびに水性ポリアミドが挙げられる。
【0159】
ペースト状の印刷インキの場合、好適なバインダーとしては、たとえば、ロジンまたは変性ロジンが挙げられる。変性ロジンの例としては、たとえばグリセロールまたはペンタエリスリトールのようなポリオールを用いて全面的または部分的にエステル化されたロジンが挙げられる。
【0160】
放射線硬化が可能な印刷インキには、たとえばオレフィン基、ビニルエーテル基、またはエポキシド基のような架橋性の基を含むバインダーが含まれる。この場合、バインダー(反応性希釈剤を含む)を合計したものが、一般的には、印刷インキの成分全体の30%〜90重量%の範囲にある。
【0161】
本発明のメタリック印刷インキは、さらに、1種または複数の補助剤または添加剤を含んでいてもよい。添加剤および補助剤の例は、充填剤、たとえば、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム水和物またはケイ酸アルミニウムもしくはケイ酸マグネシウムである。ワックスは耐摩耗性を向上させ、潤滑性を上げるのに役立つ。その例としては、特に、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、石油ワックス、またはセレシンワックスが挙げられる。脂肪酸アミドを使用して、表面の平滑性を向上させることができる。可塑剤は、乾燥させた膜の弾性を向上させるのに役立つ。放射線硬化が可能な印刷インキの場合には、少なくとも1種の光重合開始剤または1種の光重合開始剤系を添加剤としてさらに使用する。効果顔料を分散させるために、分散助剤を使用することが可能である。印刷層の中でメタリック効果顔料のフローティングを起こさせることが、脂肪酸で達成することが可能で、印刷層の上側界面の中またはその部分に顔料を集めることができる。この手段によって、メタリック効果の改良を有利に行うことができる。さらに、沈降防止剤を添加してもよい。このタイプの添加をすることで、効果顔料の沈降が防止される。例としては、シリカ、セルロース誘導体、またはその他のワックス類が挙げられる。しかしながら、本発明のメタリック効果顔料を用いた場合、有利なことには、沈降防止剤を使用しないか、あるいは沈降防止剤の割合を減らすことができる。
【0162】
特に好ましい低粘度のフレキソ印刷、グラビア印刷、またはスクリーン印刷用のインキを配合するためには、通常は沈降防止剤を添加することが推奨されるが、常に絶対に必要であるという訳ではない。全部の添加剤と補助剤を合計した量は、印刷インキの全成分の合計を基準にして、典型的には20重量%を超えないようにするべきであり、0.1%〜10重量%とするのが好ましい。
【0163】
本発明のメタリック印刷インキは、原理的には公知の方法である、典型的な装置、たとえば、ディソルバーまたは攪拌装置の中で、構成成分を強力に混合および分散させることによって製造することができる。ディソルバーを使用する場合、当業者ならば、エネルギーの注入を高くしすぎないようにして、本発明のメタリック効果顔料に対する損傷を防止するであろう。その一方で、言うまでもないことであるが、顔料を適切に分散させるのに十分な程度のエネルギーは注入しなければならない。本発明のメタリック効果顔料に加えて慣用される着色顔料を使用する場合には、溶媒、バインダーおよび適切であればメタリック印刷インキの補助剤の一部または全部の中にそれを予備分散させておき、その後にのみ、本発明のメタリック効果顔料を添加することが推奨される。このようにすると、追加される顔料が特に効果的に分散され、過度の分散操作によるメタリック効果顔料の損傷が起きない。そうした顔料に代えて、予備分散させた顔料濃縮物を添加することも可能である。この場合には、特に手際のよい方法として、市販されている通常の印刷インキを少量使用することも可能であるが、ただし、追加する印刷インキがメタリック印刷インキ配合物と相溶性があり、その性質を損なわない必要がある。
【0164】
以下の実施例によって本発明を説明するが、これらは、本発明を限定するものではない。
【0165】
A アルミニウム効果顔料例
実施例1a:
50gのPripol 1009(Unichemaの水素化C36ダイマー酸)および89gのMPEG 750(メトキシポリエチレングリコール)をガラス製の反応容器の中に量り込み、N不活性ガス下、撹拌しながら加熱して80℃とした。次いで0.8gのp−トルエンスルホン酸(触媒)を加え、加熱して180℃とした。生成した反応水は、水セパレーターを用いて分離した。反応の進行状況は、酸価に基づいてモニターした。酸価は、DIN 53402に従って求めた。酸価が約24mgKOH/g添加剤に達したところで、反応を停止させた。これは、約67%のエステル化度に相当する。得られたエステルの平均分子量は約1750g/molであり、エーテル単位のC原子に対する比率は、約0.3であった。
【0166】
実施例1b:
100gのアトマイズされたアルミニウム粉体(粒子サイズ分布パラメーター(平均粒子サイズd50,powder=2.2μm、d10,powder=1.1μm、d90,powder=3.6μm))および440gの酢酸イソプロピル、およびさらに8gの実施例1aの添加剤をポットミル(長さ:32cm、幅:19cm)の中に入れ、ミルの蓋を閉じた。次いで、4.5kgの鋼製ボール(直径:1.8mm)を使用して、50rpmで12時間の研磨を行った。次いで、24rpmで13時間の第二の摩砕工程による研磨を行った。酢酸イソプロピルを用いて、ミルから取り出した研磨生成物を洗浄し、篩別(24μm)により、研磨ボールから分離した。サクションフィルターにより、その篩別した物質から酢酸イソプロピルをほとんど除去してから、ラボラトリーミキサーの中で酢酸イソプロピルを用いて再度ペースト化した(固形分割合は約65重量%)。
【0167】
実施例2:
実施例1bと同様の研磨配合であるが、ただし、潤滑剤として8gの市販の脂肪酸ポリグリコールエステルP4100(Byk、Wesel、Germany)を使用した。
【0168】
実施例3:
実施例1bと同様の研磨配合であるが、ただし、平均粒子サイズがd50,powder=1.7μm、d10,powder=0.4μm、d90,powder=2.3μmであるアトマイズされたアルミニウム粉体を使用した。
【0169】
実施例4:
実施例3と同様の研磨であるが、ただし、潤滑剤として8gの市販の分散性添加剤P4100(Byk、Wesel、Germany)を使用した。
【0170】
比較例5:
実施例1bと同様の研磨であるが、ただし、潤滑剤として3gの慣用されるステアリン酸とオレイン酸との混合物を使用した。
【0171】
比較例6:
実施例3と同様の研磨であるが、ただし、潤滑剤として3gの慣用されるステアリン酸とオレイン酸との混合物を使用した。
【0172】
比較例7:
市販のアルミニウム顔料(プラチナドル顔料)Platinvario 85001(Eckart、Germany)。この場合、潤滑剤としては、慣用されるステアリン酸とオレイン酸との混合物を使用した。
【0173】
比較例8:VP55000
市販の非リーフィングシルバードル顔料VP55000(Eckart、Germany)。この場合、潤滑剤としては、慣用されるステアリン酸とオレイン酸との混合物を使用した。
【0174】
慣用されるレーザー回折法(装置:Cilas 1064、Cilas、France)を使用して、アルミニウム効果顔料のサイズ分布を求めた。WO 2004/087816 A2に記載されている方法により、SEMによる計数に基づいて平均厚みh50を求めた。この顔料の特性の結果を表1に示す。
【0175】
【表1】

【0176】
光学的評価の結果:
本発明実施例および比較例の顔料について、以下の試験系でコーティング(NCワニス)および印刷物の評価をした。
【0177】
この場合、以下の系を使用した。
a)顔料着色レベルが11.0重量%でエタノール/酢酸エチル溶媒混合物を含む、市販のニトロセルロースH33をベースとするグラビア印刷インキ。
b)顔料着色レベルが10.8重量%でエタノール/酢酸エチル溶媒混合物を含む、市販のアクリレートバインダーをベースとするグラビア印刷インキ。
c)顔料着色レベルが9.8重量%でエタノール/酢酸エチル溶媒混合物を含む、市販のポリビニルブチラールバインダーをベースとする面反転塗布物(鏡面ワニス)。表2における面反転塗布物は、市販のポリビニルブチラールをベースとするグラビア印刷インキを使用し、MELINEX 400フィルム(PETフィルム、50μm)の上に、溝の深さ24μmのアプリケーターを使用して印刷することにより製造した。
d)市販のニトロセルロース(NC)ワニスであるDr.Renger Erco Bronzemischlack 2615e(Morton)を使用し、顔料着色レベルが7.1%でアプリケーターの深さが24μmのNCワニスドローダウン。
【0178】
光沢:
光沢値は、それぞれの場合において、Micro−Tri−Gloss装置(Byk−Gardner、Geretsried、Germany)を使用し、測定角60度で得た。この場合の装置は、ダークキャリブレーションにより、そしてさらに、60度で95.5の値を有する黒色ミラーガラス板によってキャリブレートした。
【0179】
剥がれ抵抗性:
本発明実施例および比較例における、顔料とバインダーとの間の剥がれ抵抗性を試験するために、上述のワニスおよびインキからドローダウンを作製した。インキまたはペイントコーティングを完全硬化させてから、ドローダウンの表面に粘着テープを気泡が入らないようにしてしっかりと接着させた。次いで、この粘着テープを再び剥がしたが、基材(たとえば紙)は損傷を受けなかった。剥がれ抵抗性を、目視により、等級付けに基づいて評価した。剥がれ抵抗性が不良ということは、印刷物またはコーティングが相応に酷く剥離されたことを反映している。
【0180】
隠蔽力/転写挙動:
本発明実施例および比較例の隠蔽力または転写挙動を、印刷物によって求めた。転写挙動は、印刷版(または印刷セル)から印刷される物品への金属顔料の転写を指している。転写挙動を、目視により、等級付けに基づいて評価した。転写挙動が不良な印刷物は、性能の観点から受容されない。言うまでもないことであるが、転写挙動が不良であるということは、塗布物の中に存在する顔料も少なくなることから、隠蔽挙動も不良となる影響力を有する。
【0181】
等級0:極めて良好
等級1:良好
等級2:満足
等級3:十分
等級4:不良
等級5:極めて不良
【0182】
いずれの場合においても、光沢値は、使用したワニスまたは印刷インキシステムに強く依存することが見出された。層間接着もまた、バインダーの関数として変化する。しかしながら、一般的に言えば、本発明の顔料を用いて塗布した場合には、良好〜極めて良好な剥がれ抵抗性と同時に、かなり高い光沢および満足〜極めて良好な隠蔽力/転写挙動を観察することができる。
【0183】
本発明実施例は、比較例の場合よりも、これらの性能の組合せがよりよく発揮される。
【0184】
詳しく説明すると、比較例7においては、極めて高い光沢値が、グラビア印刷インキにおいても観察することができる。しかしながら、この顔料は、剥がれ抵抗性が不良で、隠蔽力/転写挙動も不良である。
【0185】
比較例6の顔料サイズ分布は、実施例1bのそれと極めて類似している。しかしながら、グラビア印刷用途の場合においては、光沢が低く、いくつかの場合では転写挙動が不良である。ミラー用途においても、極めて高い光沢が達成されるが、剥がれ抵抗性がそれほどよくない。
【0186】
ニトロセルロースワニス用途においては、比較例5および6と比べると、光沢値における低下が存在せず、事実、30%の向上を達成することができる。
【0187】
【表2】

【0188】
本発明の添加剤を含むメタリック効果顔料の実施例および比較例:
研磨の際の潤滑剤として添加剤を使用することによってアルミニウム効果顔料の性能が改良されることに加えて、添加剤を、顔料フィルターケーキの事後の安定化のために使用してもよい。
【0189】
比較例9:
市販のシルバードル顔料MEX 2192(Eckart)。
この顔料は、ステアリン酸とオレイン酸との混合物を用いて研磨したものである。
【0190】
実施例10:
市販のシルバードル顔料MEX 2192を、研磨の後に、実施例1aの添加剤2重量%を含むフィルターケーキに組入れ、ミキサーの中でホモジナイズさせてから、さらに加工してメタリック効果顔料ペーストを得る。
【0191】
公知のように、メタリック顔料ペーストは、長期間貯蔵すると、集塊を形成する傾向があり、集塊は、かなり強い分散力を与えても、もはや破壊できない。この挙動についての一般的に認められている試験としては、サンプルを、密閉したプレス・オン・リッド(press−on−lid)容器の中に50℃で貯蔵し、一定の間隔を空けて集塊を調べる(コントラストカード上へのアプリケータードローダウン)。温度を高くすることで、標準的な条件における顕著により長い貯蔵時間をシミュレートする。
【0192】
【表3】

【0193】
印刷用途に関連する、隠蔽力および光沢のパラメーターを求めるために、本発明のメタリック効果顔料を、上述の貯蔵期間の後に、市販のニトロバインダー(LQ 2903)をベースとするグラビア印刷インキの中で、フィルムに塗布した。光沢値および隠蔽力は、上述の方法により求めた。
【0194】
実施例11:
市販のシルバードル顔料IL Reflexal VP−62617/G(Eckart)を、研磨の後に、実施例1aの添加剤2重量%を含むフィルターケーキに組入れてから、さらに加工してメタリック効果顔料ペーストを得る。
【0195】
比較例12:
市販のシルバードル顔料IL Reflexal VP−62617/G(Eckart)。
【0196】
実施例13:
市販のシルバードル顔料AF Reflexal VP−58187/G(Eckart)を、研磨の後に、実施例1aの添加剤2重量%を含むフィルターケーキに組入れてから、さらに加工してメタリック効果顔料ペーストを得る。
【0197】
比較例14:
市販のシルバードル顔料AF Reflexal VP−58187/G(Eckart)。
【0198】
【表4】

【0199】
実施例11のメタリック効果顔料は、貯蔵後に、塗装物においてほぼ同等の隠蔽力といくぶん低い光沢とを有している。比較例12のメタリック効果顔料は、同様の光沢の低下を特徴としている。しかしながら、その光沢は、概して実施例1の場合よりも低い。それとは対照的に、比較例12の場合においては、不透明性が低下しているが、これは初期の集塊を示唆している。実施例13のメタリック効果顔料は、貯蔵した後でも、隠蔽力および光沢に関しては、視覚的にはまったく変化がないことを特徴としている。比較例14のメタリック効果顔料は、それとは対照的に、隠蔽力の挙動には何の変化も示していないが、光沢の顕著な低下を示している。
【0200】
B 金青銅効果顔料例
実施例15:
a)金属粉体アトマイゼーション:
誘導炉に銅70重量%、亜鉛30重量%で仕込み、この初期仕込み物を融解させることによって、本発明の黄銅顔料を製造した。次いでその黄銅融解物を、前炉を有するチャンネルタイプの誘導炉へ移した。前炉の中で約1050℃の温度で液体の形態で存在している黄銅融解物を、前炉に取り付けたアトマイジングノズルによって、垂直下方向にアトマイズさせた。黄銅融解物をアトマイズさせるのに使用したノズルは、クローズカップルドノズルであった。アトマイゼーションの過程で生成した黄銅粒子は、飛行中に固化し、冷却される。アトマイゼーションは、約400℃で加熱空気を供給しながら実施した。アトマイゼーションのために使用する加熱ガスは、圧縮してから、ガスヒーター中で加熱し、次いでアトマイズされる黄銅融解物に導入した。黄銅粒子は、遠心力により堆積させた。堆積したアトマイズされた黄銅粉体は、60μm未満のd50を有していた。気体/固体分離は、フィルターで実施した。このアトマイズされた黄銅粉体のさらなる分離を、追加の分級工程で実施した。得られたものは、超微細なアトマイズされた黄銅粉体(「黄銅、70:30、リッチゴールド」)であり、d10が1.4μm、d50が2.4μm、およびd90が4.0μm、さらにはd98が6μmとして製造された。
【0201】
b)研磨:
工程a)で製造された超微細なアトマイズされた黄銅粉体を湿式研磨するために、400gのこのアトマイズされた金属粉体を、10kgのクロム鋼製ボール(直径:3mm)および900gの酢酸イソプロピル、および30gの研磨添加剤(実施例1bによるもの)が入っているミル(長さ:32cm、幅:19cm)の中に導入し、80rpmで30時間の研磨を行った。溶媒を用いてリンスすることにより研磨生成物を研磨ボールから分離し、濾過により単離させた。次いでそのフィルターケーキを第二のミルの中に導入した。400gの量で、このミルに導入した黄銅ペーストを、10kgのクロム鋼製ボール(直径:1.3mm)を使用し、約900gの酢酸イソプロピル、および約25gの研磨添加剤(実施例1bによる)と共に、60rpmの回転速度で30時間かけて研磨した。次いで、溶媒を用いてリンスすることでその黄銅顔料ペーストを研磨ボールから分離し、次いで濃縮して、固形分含量を70重量%とした。
【0202】
実施例16:
実施例15と同様であるが、ただし、酢酸イソプロピルに代えて酢酸N−プロピルを溶媒として使用して、研磨を実施した。
【0203】
比較例17:
グラビア印刷およびフレキソ印刷用のインキのための、市販されている金青銅顔料粉体(Eckart GmbHの“Rotoflex”)は、ステアリン酸を研磨助剤として使用した、公知の多段乾式研磨プロセス(Hametagプロセス)により製造されている。使用される出発物質は、銅が70重量%、亜鉛が30重量%で、平均粒径d50が140μmのアトマイズされた黄銅粉体であった。分級された研磨物質として存在する、平均粒径d50=8μmの、リーフィング金青銅顔料を使用し、次いで2.5重量%のクエン酸を用いて表面変性を行うことにより、非リーフィング性を有する金青銅顔料を製造した。
【0204】
比較例18:
市販のPVD顔料Metalure A(Eckart GmbH、Germany)。
この顔料は、市販されているグラビア印刷およびフレキソ印刷のための印刷インキ(“ULTRASTAR”、Eckart)の中に使用されている。
【0205】
この印刷インキには、ゴールドの色調を出すために、イエローおよびオレンジのトナー染料がさらに含まれている。
【0206】
粒子の厚みを測定するために、実施例15〜18のサンプルについて、電界イオン走査型電子顕微鏡により、特性解析した。
【0207】
SEMによる厚み分布の測定では、サンプルを以下のようにして調製した。
【0208】
湿式研磨したアトマイズされた黄銅粉体から製造され、ペーストまたはフィルターケーキの形態で存在している板状の黄銅顔料を、アセトンを用いて洗浄してから、乾燥させる。
【0209】
電子顕微鏡法において慣用される樹脂、たとえばTEMPFIX(Gerhard Neubauer Chemikalien、D−48031 Muenster、Germany)を、サンプルプレートに塗布し、ホットプレート上で加熱して軟化させる。次いでそのサンプルプレートをホットプレートからおろし、軟化した樹脂の上に黄銅粉体を散布する。冷却すると、樹脂が再固化し、散布した黄銅顔料を、接着力と重力との間の相互作用のために、サンプルプレートの上にほとんど垂直に立った形で固定される様にして調製することができる。その結果、黄銅顔料は、電子顕微鏡において、側面から適切に測定することができる。厚みの測定においては、表面に対して垂直な面に対する顔料の方位角を推定し、次式に従って厚みの評価に組み入れる。
eff=hmeas/cosα
【0210】
計算したheff値から、相対度数を用いて累積分布曲線のプロットを行う。それぞれの場合において、50〜100個の粒子について計測する。
【0211】
以下の表5に、本発明の黄銅顔料(実施例15)の物理的特性を、市販のEckartの金青銅顔料粉体(比較例17)およびEckartのPVDアルミニウム顔料(比較例18)と比較して示すが、物理的特性の基準としては、SEMによる測定からの、d10、d50、およびd90値、ならびに特性値h10、h50、およびh90、ならびにそれらから計算した厚み測定のスパン値を用いた。h10、h50、およびh90値は、もとの厚み計測データから分位数関数により計算した。
【0212】
顔料の長さ方向の寸法dは、レーザー粒度計(Cilas 1064、Cilas、France)を用いて測定し、長さ方向の平均寸法のために選択した尺度は、常法どおり、累積篩下分布のd50値(単位、μm)とした。
【0213】
【表5】

【0214】
表5の数字から、実施例15および16の本発明の非リーフィング黄銅顔料は、比較例17のEckart GmbH、D−90763 Fuerthの安定化リーフィング金青銅顔料である“ROTOFLEX”よりも、平均厚みh50が低いだけではなく、h90値も低いということがわかる。驚くべきことには、それらは、比較例18のEckartのPVDアルミニウム顔料である“Metalure A”と比較しても、顔料の厚みが薄い。
【0215】
厚み分布のスパンは、本発明の顔料の場合は、PVDアルミニウム顔料と同等である。これは、これまで湿式研磨では得られなかったことである。従来からの湿式研磨による金青銅顔料(比較例17)は、顕著に大きいスパンを示している。
【0216】
実施例15の本発明の黄銅顔料が、比較例17の従来からの金青銅顔料よりは、実質的に狭い厚み分布(スパン)を有していることもまた、表5から明らかである。さらに、実施例15および16の本発明の黄銅顔料は、比較例17および18の顔料よりも低いパラメーターd90を有している。
【0217】
本発明の黄銅顔料のさらなる特性解析のために、透明なフィルムの上にいわゆるリバース塗布物を作製した。これは、MELINEX 400フィルム(PETフィルム、50μm)に、市販のポリビニルブチラール(PVB)およびメトキシプロパノールと酢酸エチルとの混合物をベースとするグラビア印刷インキを、印刷機を使用して印刷することにより実施した。
【0218】
その着色されたリバースフィルム塗布物は、DIN 67 530に従った60度での光沢測定により光学的に評価した(装置:Byk−Gardner、D−82538 Geretsried、Germanyのmicro−TRI−gloss)。キャリブレーションは、ダークキャリブレーション、そしてさらに、60度で92の値を有する黒色ミラーガラス板によって実施した。
【0219】
色濃度は、濃度計(装置:X−Rite、D−63263 Neu−Isenburgの濃度計)を使用して測定した。キャリブレーションは、イエロー領域の波長のところで、白色スタンダードおよび未印刷基材を使用して実施した。
色濃度=−lg反射率
【0220】
測定は、正面から見た面で実施している。
【0221】
印刷機による印刷物(印刷機:Rotova 300、Rotocolor、3インキユニット;印刷速度75m/分、粘度15秒 DIN 4 フローカップ、60、70、80および90ライン/cm;顔料着色レベル25%)に基づいて求めた、実施例15の本発明の黄銅顔料、および比較例17の従来からの金青銅顔料、および比較例18の着色させた従来からのPVDアルミニウム顔料を用いて着色されたリバースフィルム塗布物の光学的性質を以下の表6に示す。
【0222】
比較例18の場合においては、イエロー(イエロー79)染料およびオレンジ(ソルベントオレンジ41)染料の混合物を2種の異なった濃度で加えた印刷インキのULTRASTAR(Eckart)を使用した(実施例18aおよび18b)。UltraStarトナーシリーズ(UltraStar Toner TY−21およびTO−11;Eckart)の形態の染料を混合したが、このトナーシリーズは、それぞれにおいて、メトキシプロパノール中に染料の分散体を含んでいた。
【0223】
【表6】

【0224】
表6から、実施例15の本発明の黄銅顔料を含むリバースフィルム塗布物は、各種の印刷物すべてにおいて、比較例17および18の従来からの顔料を用いて顔料着色されたリバースフィルム塗布物よりも高い光沢を有していることがわかる。
【0225】
さらに、比較例17に比較すると、実施例15の本発明の顔料の塗布物は、より高い色濃度を有している。
【0226】
実施例15のリバースフィルム塗布物の光沢は、同様に、比較例18aおよび18bのものよりも高かった。しかしながら、比較例18aおよび18bの方が色濃度が高いことは、実施例15よりも、これらの塗布物の着色性が高いということを示唆している。しかしながら、実際には、これはあてはまらなかった。
【0227】
実際のところ、リバースフィルム塗布物の鏡面効果の視覚的評価では以下のような結果が得られた。
実施例1 :クリアー、極めて良好な鏡面性
実施例4 :鏡面艶消し、曇りあり
実施例5a:弱い着色、シルバー鏡面
実施例5b:艶消し鏡面
【0228】
さらなる光学的特性として、顔料着色されたリバースフィルム塗布物の明度、彩度、および色相角を求めたが、その実験結果を以下の表7に示した。明度の測定は、市販のX−Riteの装置(光源D65、10度標準観測者)を使用し、散乱測定ジオメトリーで、8度の観測角で実施した。この場合、一例として、60ライン/cmにおける数値を測定した。
【0229】
表7に記載の彩度Cは、基準のホワイトに対する、別の言い方をすれば、色空間の中で定義された最も明るい点に比較した、相対的な彩度を表している。同様に表7に記載されている色相角hは、色のシェードに割り当てられた色値であって、これは、色相と同じである。
【0230】
【表7】

【0231】
表7から、実施例15の本発明の黄銅顔料が、比較例17ならびに18aおよび18bの顔料よりも強く着色されていたことが明らかである。これらの測定結果は、視覚的印象にもよく照応していた。このことは、実施例15の金青銅顔料が、その顔料厚みが薄いために、高い光沢を有し、さらにその固有の色彩のために、高い色値(彩度)を有しているということを意味している。表7からはさらに、実施例18aおよび18bのトナー着色されたリバースフィルム塗布物の光学的性質が、着色剤として使用されたトナーの量と相関があったということも明らかである。したがって、より多くの着色剤(トナー)を含む実施例18bのリバースフィルム塗布物の方が、より低いレベルの染料(トナー)を含む実施例18aのリバースフィルム塗布物よりも、彩度(C)は高いが、明度Lはより低く、実質的に光沢(60度)も低かった。明らかに、色素が光を散乱させすぎて、そのためにメタリック効果が低下している。本発明のメタリック効果顔料を用いれば、これらの欠点を克服することができる。
【0232】
評価のためのさらなる判定規準として、粘着テープ試験(剥がれ抵抗性)により、顔料着色されたリバース塗布物の接着強度を求めた。
【0233】
この目的のために、粘着テープを表面に気泡が入らないようにしてしっかりと接着させた。次いでこの粘着テープを再び剥がしたが、基材は損傷を受けなかった。剥がれ抵抗性を、目視により、等級1(極めて良好)から等級5(極めて不良)までの等級付けに基づいて評価した。剥がれ抵抗性が不良ということは、相応に高いレベルで印刷物が剥離されることを反映している。
【0234】
実施例15の本発明の黄銅顔料(等級2)は、比較例17の金青銅顔料(等級4)および比較例18のPVDアルミニウム顔料(等級3)よりも、良好な接着強度を有していることが見出された。
【0235】
実験結果を総合的に見ると、本発明の顔料が、乾式研磨法で製造された従来からのリーフィング金青銅顔料ではこれまで達成することができなかった、特に厚み、厚み分布、および不透明性に関わる顔料特性を示すということが注目される。本発明の顔料を用いて着色されたリバースフィルム塗布物は、魅力的な色彩的特性、特に高い色濃度を伴うゴールド色の鏡面効果の点で注目に値し、これは、着色顔料を含むPVDアルミニウム顔料では、今まで達成不可能であったものである。本発明の顔料を用いて着色されたリバースフィルム塗布物は、高い接着強度を有している。さらに、本発明の顔料の不透明性が高いことの結果として、塗布媒体中で使用されるそれらの量を抑制することも可能である。
【0236】
C PVD効果顔料例
実施例19:
400gの市販のPVD顔料(Metalure L55700、Eckart)を、2gの実施例1aの添加剤と共に、6.5kgの鋼製ボール(直径0.8mm)を含む実施例1bに記載のミルの中に導入し、ミルの蓋を閉じた。その混合物を、30rpmで3時間かけて研磨した。その研磨生成物を研磨媒体から分離し、固形分含量を10%に調節した。
【0237】
比較例20:
実施例19と同様の研磨であるが、ただし、潤滑剤として2gの慣用されるステアリン酸とオレイン酸との混合物を使用した。
【0238】
比較例21:
市販のPVD顔料Metalure L(Eckart GmbH)を実施例19と同様に処理したが、ただし、ミルの中に潤滑剤または添加剤を一切添加しなかった。
【0239】
特性解析を、すでに先に記述した方法に従って実施した。粒子サイズ、光沢(グラビア印刷(NC、アクリレート)、ミラー)、剥がれ抵抗性。
【0240】
【表8】

【0241】
実施例22:
市販のPVD顔料(Metalure L、Eckart)を、3%の実施例1aの添加剤と組み合わせ、さらに加工してメタリック効果顔料ペーストを得た。
【0242】
比較例23:
市販のPVD顔料(Metalure L、Eckart)、添加剤の添加なし。
【0243】
【表9】

【0244】
引用した実施例は、本発明の添加剤または潤滑剤、および研磨の後もしくは途中でそれらを使用した結果として、PVD顔料であってさえもその光学的性質が改良されることを示した。
【0245】
添加剤と共にPVD顔料を研磨すると、平均サイズ(d50)が低下した。このように粒子サイズが低下したにもかかわらず、グラビア印刷インキ用途およびミラーコーティング用途における顔料の光沢は改良される。ある種の用途、たとえばグラビア印刷インキでは、粒子サイズのより小さいPVD顔料が有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加剤を伴うメタリック効果顔料であって、
添加剤が、メタリック効果顔料の上に少なくとも部分的に塗布され、そして添加剤が、構造単位として、少なくとも1種の少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸と、さらに少なくとも1種のポリグリコールエーテルとを含み、カルボン酸とポリグリコールエーテルとが相互に共有結合していることを特徴とする、メタリック効果顔料。
【請求項2】
カルボン酸とポリグリコールエーテルとが、エステル結合またはアミド結合を介して、相互に共有結合していることを特徴とする、請求項1に記載のメタリック効果顔料。
【請求項3】
カルボン酸が、少なくとも1種の2〜8個のカルボン酸基を有するポリカルボン酸であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のメタリック効果顔料。
【請求項4】
カルボン酸が、飽和であるか、または不飽和であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のメタリック効果顔料。
【請求項5】
ポリカルボン酸が、二量化、三量化、もしくは四量化された脂肪酸であるか、またはこれらの形態の混合物であることを特徴とする、請求項3または4に記載のメタリック効果顔料。
【請求項6】
ポリカルボン酸が、10〜96個、好ましくは12〜76個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項3〜5のいずれかに記載のメタリック効果顔料。
【請求項7】
ポリグリコールエーテルが、基R−X−(R−O)−(R−O)−(R−O)−を含み、ここで、R−O、R−O、およびR−Oポリエーテル単位が、ランダムに、交互に、またはブロックコポリマーとして配列されていてよく、Xが、O、S、(CO)OまたはNR(ここで、RはH、または1〜20個の炭素原子を有する脂肪族基である)であり、そしてRが、1〜30個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族基、または芳香脂肪族もしくは芳香族有機基であり、そしてR、RおよびRが、同一であってもよいし、あるいは相互に独立して異なっていてもよいが、それぞれ、1〜12個の炭素原子を有する、直鎖状もしくは分岐状の脂肪族有機基、または芳香脂肪族もしくは芳香族有機基であり、そしてy、z、およびkが、自然数であって、相互に独立して0〜200であるが、ただし、y+z+k=2〜600であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のメタリック効果顔料。
【請求項8】
エーテル単位y+z+kの数の、カルボン酸もしくはポリカルボン酸、および、適切であれば、炭化水素基、脂肪族もしくは芳香脂肪族基R、および脂肪族基RのC原子の数に対する比率が、0.1〜4.0の数値となることを特徴とする、請求項7に記載のメタリック効果顔料。
【請求項9】
カルボン酸が、部分的または全面的にエステル化されていることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のメタリック効果顔料。
【請求項10】
カルボン酸が、部分的にエステル化され、添加剤が、5〜140mgKOH/g添加剤の酸価を有することを特徴とする、請求項9に記載のメタリック効果顔料。
【請求項11】
カルボン酸が、部分的または全面的にカルボン酸塩として存在していることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のメタリック効果顔料。
【請求項12】
メタリック効果顔料が、好ましくは粒状物、ペレット、タブレット、ブリケット、ソーセージ状物の圧密化した形態にあるか、またはペーストとしてあることを特徴とする、先行する請求項のいずれかに記載のメタリック効果顔料。
【請求項13】
先行する請求項のいずれかに記載のメタリック効果顔料を製造するための方法であって、
方法が、以下の工程:
a)構造単位として、少なくとも1種の少なくとも4個の炭素原子を有するカルボン酸と、さらに少なくとも1種のポリグリコールエーテルとを含む添加剤(そのカルボン酸とポリグリコールエーテルとは相互に共有結合している)、および研磨媒体、および場合によってはさらに液相の存在下で、金属粒子を研磨してメタリック効果顔料とする工程、
b)工程a)において得られ、添加剤を備えたメタリック効果顔料を、研磨媒体から、そして場合によっては液相から分離する工程、
c)場合によっては、工程b)において分離され、添加剤を備えたメタリック効果顔料を圧密化する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項14】
工程a)を、研磨媒体、好ましくは球状の研磨媒体の存在下で、ボールミル中で実施することを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
圧密化が、粒状化、ペレット化、タブレット化、ブリケット化、濾過、圧縮および/または押出加工によって実施されることを特徴とする、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
コーティング組成物、より詳しくはペイント、コーティング、印刷インキ、プラスチックまたは化粧品配合物を製造するための、請求項1〜12のいずれかに記載のメタリック効果顔料の使用。
【請求項17】
コーティング組成物であって、
コーティング組成物が、請求項1〜12のいずれかに記載のメタリック効果顔料を含むことを特徴とする、コーティング組成物。
【請求項18】
コーティング組成物が、印刷インキであることを特徴とする、請求項17に記載のコーティング組成物。

【公表番号】特表2011−521093(P2011−521093A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510896(P2011−510896)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003824
【国際公開番号】WO2009/144023
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【出願人】(596089399)ビック−ケミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (21)
【Fターム(参考)】