説明

清拭具

【課題】側注装置に備えた受口に注射器の先管を結合するに先立って、予め、清拭具を滅菌封入していた封緘用容器を開封するだけの手間で、忙しい看護師をして手早くしかも清潔にして面倒なく受口の清拭ができるようにした清拭具を提供する。
【解決手段】本願清拭具1は、注射器Cの先管C′をすり合わせ結合できるルアテーパ状の受口7を備えた側注装置6を通して側注するに先立って前記受口7を清拭するための清拭具であって、前記受口7に被冠螺合できるキャップ4と、該キャップ4に離脱可能に結合させた液浸透体5とからなる清拭具本体2を封緘用容器3に滅菌封入してなることを特徴とし、封緘用容器3を開放して取り出した本体2のキャップ4を持ち、その液浸透体5に含浸させた清拭液で側注装置6の受口7を清拭後、該受口7に注射器Cの先管を結合側注し、しかる後、液浸透体5を離脱させたキャップ4で前記受口7を防塵できるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、体外血液回路の導液チューブ、又は点滴セットの導液チューブなどへ適時施療に必要な薬液などを側注(混注)するための側注装置の受口を清拭(滅菌・消毒等)するための清拭具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、腎不全患者の治療に用いられる体外血液回路の導液チューブや輸血又は輸液セットの導液チューブ等の途中には、その患者の施療に必要な薬液や栄養剤などを適時側注するための側注装置が備えられている。この側注装置には例えば特開平7−328118号公報のものがある。この側注装置は、図5に示す如く導液チューブ61の切断端61′、61″の接続部62、62′を両端に有するハウジング部63の上面に、注射器Cの先管C′が結合できる受口64を有している。この受口64はハウジング部63内に設置した弁手段65を介して導液チューブ61に連通している。ここに示す弁手段65はハウジング部63の管内に密着しているゴム管からなり、したがって、受口64に先管C′を結合した注射器Cからの薬液などの圧(矢印)が掛かると、弁手段65は二点鎖線の如く変形して流路を開放して側注させる一方、注射器Cからの圧が停止すると弁手段65がゴム弾性の作用により旧形状に復帰して流路を閉じ、導液チューブ61側からの逆流を阻止するようになっている。
【0003】
上記側注装置を通して行われる薬液などの側注は、その必要が生じたときに行われるから、その待機中、前記受口64には通常、キャップ(図示せず)が施され、人の手が直に触れたり、埃塵などが付着しないようにしている。このキャップには、前記受口64に設けた雄ネジに螺合できる雌ネジが設けられ、締め付けて固定できるようにし、待機中の受口64の清潔さを保っている。しかるに、上記側注に際して前記受口64に注射器Cの先管C′を結合するときはこれに先立って必ず受口64(特に内面)を滅菌・消毒剤による清拭が義務付けられている。
【0004】
上記側注装置に備えた受口を清拭するには、通常、綿棒のような清拭具が利用されている。すなわち、その清拭具の綿塊部位にアルコール液などの清拭液を含浸させて上記受口を丁寧に拭くことによって滅菌・消毒等をしていた。
【特許文献1】特開平7−328118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記清拭具は常に清潔に保たれていることが院内感染などを防止する上に必要であったが、忙しい看護師にとって上記清拭具を清潔に管理することは物理的に困難であったばかりでなく甚だ面倒な作業であった。
【0006】
本発明は、上記課題を解消するためのもので、その目的とするところは、上記側注装置に備えた受口に注射器の先管を結合するに先立って、予め、清拭具を滅菌封入していた封緘用容器を開封するだけの手間で、忙しい看護師をして手早くしかも清潔にして面倒なく受口の清拭ができるようにした清拭具を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る清拭具は、注射器の先管をすり合わせ結合できる受口を備えた側注装置を通して側注するに先立って前記受口を清拭するための清拭具であって、前記受口に被冠螺合できるキャップと、該キャップに離脱可能に結合させた液浸透体とからなる清拭具本体を封緘用容器に滅菌封入してなることを特徴とし、封緘用容器を開放して取り出した本体のキャップを持ち、その液浸透体に含浸させた清拭液で側注装置の受口を清拭後、該受口に注射器の先管を結合側注し、しかる後、液浸透体を離脱させたキャップで受口を防塵できるように構成した。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る清拭具は、前記キャップの頂部内面に形成した管部に結合させるための芯部を突出させてなる液浸透性を有するフェルトからなることを特徴とし、受口の清拭に際しその都度アルコールなどの清拭液を浸透させて使用するように構成した。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明に係る清拭具は、前記キャップが、スポイト型の清拭液溜を備えるとともに該液溜を押し潰したときに収容液を液浸透体へ送り込む連通路を備えていることを特徴とし、受口の清拭に際しその都度スポイトを押すだけで、液溜から連通路を通して液浸透体に送り込んだ清拭液で受口の清拭ができるように構成した。
【0010】
さらにまた、請求項4に記載の清拭具によれば、前記封緘用容器が、プラスチック製袋で、その適所に開封用切り込みを備えたものであることを特徴とし、清拭具本体を嵩張らずに保管管理でき、しかも、簡単に開封して使用できるように構成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る清拭具によれば、注射器の先管をすり合わせ結合できる受口を備えた側注装置を通して側注するに先立って前記受口を清拭するための清拭具であって、前記受口に被冠螺合できるキャップと、該キャップに離脱可能に結合させた液浸透体とからなる清拭具本体を、封緘用容器に滅菌封入してなることを特徴としているから、封緘用容器を開封し、本体をそのキャップを把持して取り出し、その液浸透体に含浸させた清拭液で、前記側注装置の受口を簡単に清拭することができる。また、かかる清拭後、該受口に注射器の先管を結合し、該注射器の操作により側注を完了させることができるため院内感染などの原因を未然に防止できる。しかも、前記受口は、前記液浸透体を離脱させたキャップにより螺合できるため次の側注まで防塵しておくことができる。したがって、本体を封入した封緘用容器を常に手近に用意しておけば、忙しい看護師をして簡単かつ面倒なくしかも手早く側注装置の受口の清拭作業を行い得るという優れた効果を奏するものである。
【0012】
また、請求項2に記載の清拭具によれば、前記液浸透体が前記キャップの頂部内面に形成した管部に結合させるための芯部を突出させてなる液浸透性を有するフェルトからなることを特徴としているから、受口の清拭に際しその都度アルコールなどの清拭液を含浸使用するためアルコールなどによる消毒効果をより高め得、しかも、消毒のために使用した後、液浸透体を離脱させたキャップは受口の防塵のために使用できるという優れた効果を奏するものである。
【0013】
さらに、請求項3に記載の清拭具によれば、前記キャップがスポイト型の清拭液溜を備えるとともに該液溜を押し潰したときに収容液を液浸透体へ送り込む連通路を備えていることを特徴としているから、受口の清拭に際しその都度スポイトを押すだけで、液溜から連通路を通して液浸透体に送り込んだ清拭液で受口の清拭ができるため、清拭作業をより簡易に行えるという優れた効果を奏するものである。
【0014】
さらにまた、請求項4に記載の清拭具によれば、前記封緘用容器がプラスチック製袋であることを特徴としているから、本体を嵩張らずに保管管理できるため、側注現場や看護師のユニホームのポケットなど手近なところに準備しておくことができ、しかも、簡単に開封して使用できるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施の態様を添付図面に基づいて説明する。図1は本願清拭具の一部切欠斜視図、図2は清拭具本体の断面図で、(a)は通常形、(b)は特殊形、図3は清拭具本体の機能を示す断面図で、(a)は受口清掃時、(b)は側注時、(c)は防塵時、図4は液浸透体を輪切りにした断面図で、(a)は真円、(b)は楕円、(c)は襞状である。
【0016】
本願清拭具1は、図1の如く、清拭具本体2を封緘用容器3に滅菌封入してなる。清拭具本体2は、図2の如く、キャップ4と、該キャップ4に離脱可能に結合させた液浸透体5とからなる。このキャップ4は、側注装置6の受口7(特に内面)を清拭するためのものである。側注は、図3(b)の如く、注射器(シリンジ)Cの先管C′を側注装置6の受口7にすり合わせ結合して行われる。
【0017】
前記側注装置6は、体外血液回路や輸血又は輸液セットの導液チューブ8の途中の切断端8′、8″を繋ぐための接続部9、9′と、該接続部9、9′に導通するハウジング部10を備え、該ハウジング部10には前記受口7との連通孔11を有し、内部には弁手段12を備えている。前記受口7は前記注射器Cの先管C′のルアテーパにすり合わせ結合できるようにルアテーパになっている。
【0018】
前記弁手段12としては傘型のものが示されている。この形状の弁手段12は前記受口7に注射器Cの先管C′をすり合わせ結合した後、該注射器CのプランジャC″を押し込んで薬液などの圧が掛かると、図3(b)の如く、首部が固定手段10′により固定されているため傘部が反転するように変形して流路を開き、薬液(矢印)などを導液チューブ8へ導いて側注させる一方、前記注射器Cからの圧が解除されると、図3(a)の如く、傘部が素材の弾性により旧形状に即座に復帰して導液チューブ8側からの逆流を阻止できるようになっている。勿論、前記弁手段12は同効のものであれば、図示した形態のものに限らない。
【0019】
前記清拭具本体2は、図2(a)の如く、前記受口7に被冠螺合できるキャップ4の筒部4aの内周面に受口7の上縁外周に設けた雄ネジ7′に螺合できる雌ネジ4a′を有しているとともに、頂部4bの内面に前記液浸透体5から突出させた芯部5′を離脱可能に受け入れる管部4b′を有している。勿論、前記筒部4aと頂部4bとは一体成形物でもよい。
【0020】
前記清拭具本体2は、図2(b)の如く、キャップ4にスポイト型の清拭液溜13を備えるように構成してもよい。すなわち、前記頂部4bの外面にスポイト型の清拭液溜13を備えるとともに該液溜13と前記液浸透体5とを連通路14を介して連通(連通路は一本とは限らない)させてなる。なお、図2(a)の通常形の清拭具本体2の場合は、前記受口7の清拭に際して別に用意されているアルコール等の清拭液を液浸透体5に含ませて清拭作業をすることとなるが、図2(b)の特殊形の場合は、前記受口7の清拭に際してスポイトを押し潰すだけで、液溜13内に収容しているアルコール等の清拭液を前記連通路14を通して液浸透体5へ供給できるようになる。受口7の清拭は清拭液を浸透させた液浸透体5にて行うことは共通である。
【0021】
前記液浸透体5は、アルコールなどの清拭液(滅菌消毒剤)による清拭に際して浸透させるまでは未浸透のフェルトからなる。このフェルトとしてはフェルトペン、すなわち、マーキングペン、サインペン、チップペンなどと呼ばれる筆記具のペン芯に用いられる繊維性又は吸液性プラスチックを用いて満足できる。すなわち、フェルトペン系のフェルトは清拭液の浸透性がよく、しかも、ある程度の硬さがあって形態が安定しているので清拭し易く作業性も良好である。勿論、フェルトペン系以外のフェルトであってもよいし、綿棒に使われているような繊維塊であってもよい。
【0022】
前記液浸透体5の形状は、図2の場合には紡錘状になっている。尤も、図示していないが、丸棒状でも、球状でもその他でもよい。また、この液浸透体5の輪切り断面形状は、図4(a)〜(c)の如く、真円、楕円、襞状が好ましい。特に、真円及び楕円は、前記受口7への清拭に適しているし、襞状は表面積が多くなる点で塗り易い点で好ましい。勿論、液浸透体5の形状は、これらに限定されるものではない。
【0023】
前記封緘用容器3は、清拭具本体2を滅菌状態で収容できるものであれば、その構造は箱状のものでもよいが、図1の如く、プラスチック製袋3′にするときは箱状のものに比して、清拭具本体2を嵩張らずに保管管理できる点で好ましい。すなわち、袋3′であれば、側注現場(ベッド付近の各種置台)や看護師のユニホームのポケットなど手近なところに常に準備(保管)し易いからである。また、プラスチック製袋3′には、その適所に開封用切り込み3″を備えておけば、側注作業に際して簡単に開封(切り裂いて)できるようになる点で好ましい。
【0024】
前記封緘用容器3は、その全体又は一部が透明材で形成されていると、これに収納した清拭具本体2の形態や収納姿勢などが外から確認できる点で好ましい。また、プラスチック袋3′の素材は、これを開封するまでは清拭具本体2を滅菌状態に保つ性能を有するものであれば特に問わない。
【0025】
次に、本発明の作用について、図3(a)〜(c)に沿って述べる。いま、腎不全患者の治療に用いられる体外血液回路の導液チューブ8や輸血または輸液セットの導液チューブ8の途中に備えられている側注装置6の受口7から患者への施療に必要な薬液などを側注(混注)する場合において、まず、側注現場に備えられているプラスチック袋3′を切り込み3″より開封し、これに収容されていた清拭具本体2をそのキャップ4を摘まんで取り出す。この場合、液浸透体5にはなるべく触れないことが好ましい。
【0026】
次いで、液浸透体5に、別に用意されているアルコール等の清拭液を含ませる(清拭具本体2がスポイトを備えた特殊形であればスポイトを押し潰して清拭液を含ませる)。しかる後、図3(a)の如く、側注装置6の受口7(特に内面)を清拭する。なお、この清拭は、当該側注装置6の受口7に、これより以前の側注に際してキャップが施されているときはそのキャップを取り外すことは当然である。
【0027】
このようにして、側注装置6の受口7の清拭が終了した後、該受口7に注射器Cの先管C′を、図3(b)の如く、ルアテーパ同士をすり合せ結合する。勿論、該注射器Cには予め、患者の治療に必要な薬液等が吸引されている。
【0028】
しかる後、注射器CのプランジャーC″を押すと、注射器Cから吐出する液圧により弁手段12が変形して流路を開き、薬液(矢印)などを導液チューブ8へ導き、側注させることとなる。しかして、側注終了によりプランジャーC″の押し操作を止めると、前記弁手段12が素材の弾性により旧状態に即座に戻り、側注後の逆流を確実に防止できるようになっている(図3(a)参照)。
【0029】
次いで、側注装置6の受口7から注射器Cの先管C′を抜き取るとともに、受口7の清拭に使用した液浸透体5をキャップ4より離脱させるとともにキャップ4を、図3(c)の如く、受口7に被冠螺合させる。これにより、側注装置6の受口7は、次の側注までキャップ4により完全に防塵されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願清拭具1は、体外血液回路又は点滴セット等の導液チューブ内に適時施療に必要な薬液などを注射器により側注(混注)するための側注装置の受口に注射器の先管をすり合わせ結合させるに先立って、忙しい看護師をして面倒さがなく、手早くしかも簡単に清拭(滅菌、消毒等)作業ができる有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本願清拭具の一部切欠斜視図である。
【図2】清拭具本体の断面図で、(a)は通常形、(b)はスポイト式である。
【図3】清拭具本体の機能を示す断面図で、(a)は受口清掃時、(b)は側注時、 (c)は防塵時である。
【図4】液浸透体を輪切りにした断面図で、(a)は真円、(b)は楕円、(c)は 襞状である。
【図5】従来の側注装置の断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 本願清拭具
2 清拭具本体
3 封緘用容器
3′ プラスチック製袋
3″ 開封用切り込み
4 キャップ
4a 筒部
4a′ 雌ネジ
4b 頂部
4b′ 管部
5 液浸透体
5′ 芯部
6 側注装置
7 受口
7′ 雄ネジ
8 導液チューブ
8′、8″ 切断端
9、9′ 接続筒
10 ハウジング部
10′ 固定手段
11 管部
12 弁手段
13 スポイト型の清拭液溜
14 連通路
61 導液チューブ
61′、61″導液チューブの切断端
62、62 接続部
63 ハウジング部
64 受口
65 弁手段
C 注射器(シリンジ)
C′ 注射器の先管
C″ プランジャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器の先管をすり合わせ結合できる受口を備えた側注装置を通して側注するに先立って前記受口を清拭するための清拭具であって、前記受口に被冠螺合できるキャップと、該キャップに離脱可能に結合させた液浸透体とからなる清拭具本体を封緘用容器に滅菌封入してなることを特徴とする清拭具。
【請求項2】
前記液浸透体が、前記キャップの頂部内面に形成した管部に結合させるための芯部を突出させてなる液浸透性を有するフェルトからなることを特徴とする請求項1に記載の清拭具。
【請求項3】
前記キャップが、スポイト型の清拭液溜を備えるとともに、該液溜を押し潰したときに収容液を液浸透体へ送り込む連通路を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の清拭具。
【請求項4】
前記封緘用容器が、プラスチック製袋で、その適所に開封用切り込みを備えたものであることを特徴とする請求項1〜3のうちの1に記載の清拭具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−320430(P2006−320430A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−144726(P2005−144726)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(599163045)株式会社オーキス (4)
【Fターム(参考)】