説明

清拭用ウェットタオルの収容容器

【課題】内部の清拭用ウェットタオルを確実且つ適温に温めることのできる簡易な構成のタオル加熱機構を備えた清拭用ウェットタオルの収容容器を提供すること。
【解決手段】清拭用ウェットタオルTを収容する収容室12と、該収容室12の下側に設けられた有底の下部空間部50と、収容室12と下部空間部50を仕切り、複数の通気用孔30が略全域に亘り形成された仕切壁12aと、下部空間部50に収納された水と反応して発熱する水発熱体hと、を有することを特徴とする清拭用ウェットタオル収容容器10を提供する。これにより、下部空間部50の水発熱体hから発せられて熱を、仕切壁12aを介して清拭用ウェットタオルTに伝達させることで、該清拭用ウェットタオルを確実且つ適温に加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清拭用ウェットタオルの収容容器に関し、特に収容された状態の清拭用ウェットタオルを温める機能を有する清拭用ウェットタオル収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
老人ホームや障害者施設等の介護施設、或いは病院などにおいて、被介護者又は患者の臀部等を拭くための清拭用ウェットタオルが使用されている。この清拭用ウェットタオルには、例えば、使い捨てタイプのペーパータオルが用いられ、施設内の所定位置において、専用ディスペンサ等の収容容器に収容された状態で取り出し可能に配置される。
【0003】
清拭用ウェットタオルを収容する収容容器の形態は種々のものが知られている。例えば、特許文献1には、ペーパー状の清拭用ウェットタオルをトイレットペーパのようなロール状に巻いた状態で容器に収容し、このタオルの一枚を容器に形成されたスリット型の開口から引き出して使用するタオルディスペンサが開示されている。
【0004】
一方、例えば、冬等の気温が低い場合には容器内の清拭用ウェットタオルが冷たくなってしまい、そのまま使用すると被介護者や患者に過度な刺激を与えることとなる。従って、このような被介護者等の負担を考慮して清拭用ウェットタオルを予め温めた状態にしておくことが望ましい。このような要求に対して、上記特許文献1は、清拭用ウェットタオルディスペンサにおいて清拭用ウェットタオルを加温する手段を備えたことも開示されている。
【0005】
当該文献1に記載のタオルディスペンサは、容器においてタオルが配置されている底部部分に、タオルを加温するシート状の加温手段(当該文献図1の符号13参照)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−204547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のタオルディスペンサにおける加温手段については、加温シートと記載されているのみであり、具体的な材質等は明らかにされていない。そして、現実的に、このようなシート状の加熱手段で被介護者等の体を拭くための大きさのタオルを加温するための十分な熱量を確保することは困難であり、タオルの温め温度に大きなムラも生じるものと考えられる。
【0008】
特に、上述のように、介護施設等で使用される清拭用ウェットタオルについて、例えば、看護士や介護者が、体の自由が効かない高齢の被介護者の体を拭くような場合において、十分に温められていない清拭用ウェットタオルを用いたり、温度ムラのあるタオルを用いたりすると被介護者への負担が大きいものと考えられる。従って、清拭用ウェットタオルを十分に温めることは、被介護者等の健康に直結する極めて重要な事項である。
【0009】
一方で、タオルを加温するための十分な熱量を得るために、専用のヒータを用いてディスペンサ内を加熱することも考えられる。しかし、このようなヒータ等の加熱機構を用いる場合には、構造が大がかりになり温め作業も煩雑となり、また、製造コストも増大する。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、内部の清拭用ウェットタオルを確実且つ適温に温めることのできる簡易な構成のタオル加熱機構を備えた清拭用ウェットタオルの収容容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載の清拭用ウェットタオル収容容器は、内部に装填された清拭用ウェットタオルを上部の取出し口から必要量だけ取り出し可能な清拭用ウェットタオル収容容器において、前記清拭用ウェットタオルを収容する収容室と、該収容室の下側に設けられた有底の下部空間部と、前記収容室と前記下部空間部を仕切り、複数の通気用孔が略全域に亘り形成された仕切壁と、前記下部空間部に収納された水と反応して発熱する水発熱体と、を有することを特徴とする。なお、本明細書において、「清拭用ウェットタオル」という用語は、ペーパータオル等の使い捨てタイプのタオルや選択して繰り返し使えるタイプの布製タオル等の種々の拭き取り具を意味する。
【0012】
これによれば、清拭用ウェットタオルが収容される収容室の下部に取り付けられる下部空間部の水発熱体収容領域に水を供給することで、該領域に配置された水発熱体が発熱し、発せられた熱は、収容室と前記下部空間部を仕切る仕切壁の略全域に設けられた通気用孔を通って収容室内部に在る清拭用ウェットタオルに伝達される。
【0013】
このように、本発明にかかる清拭用ウェットタオル収容容器では水発熱体から発せられる熱を、収容室と有底下部空間部の間における仕切壁の略全域に形成された通気用孔を通して、収容室内部に伝達することができる。従って、収容室内部に在る清拭用ウェットタオルを全体的にムラ無く、確実且つ適温に温めることができる。
【0014】
特に、本発明では、清拭用ウェットタオルを加熱する熱源が水発熱体であり、熱を伝える手段としては仕切壁の通気用孔が形成されるという簡易な構成で、複雑な装置を採用することなく加熱機構が構成される。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の清拭用ウェットタオル収容容器において、前記収容室の内壁には、断熱性材料で形成された断熱保護体が装着されたことを特徴とする。
【0016】
これによれば、上述のように通気用孔を介して収容室内部に流入した熱の一部が、外部へ流出して清拭用ウェットタオルの温度が低下してしまうことを防止することができる。従って、清拭用ウェットタオルを加熱する効率及びその加熱温度の維持の効率をより向上させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の清拭用ウェットタオル収容容器において、前記仕切壁は、格子状に形成されたことを特徴とする。
【0018】
このように、仕切壁を格子状に形成することにより、水発熱体からの熱の収容室内への伝達効率を高い水準に確保しつつも、仕切壁の清拭用ウェットタオルの置かれる載置部としての機能も損なわれることないように、上記通気用孔を形成することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の清拭用ウェットタオル収容容器において、前記収容室と前記下部空間部が、相互に着脱可能であることを特徴とする。
【0020】
これによれば、収容室と下部空間部を着脱して、下部空間部の水発熱体収容領域に配置された水発熱体への水の供給をスムーズに行うことができる。また、水発熱体を交換する場合には、収容室を下部空間部から取外して、下部空間部の水発熱体を取出し新たな水発熱体を設置することができる。すなわち、水発熱体が消耗品である場合には、その交換作業を極めて容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る清拭用ウェットタオル収容容器によれば、下部空間部の水発熱体から発せられた熱を、収容室の下部の仕切壁を介して清拭用ウェットタオルに伝達させることができるので、該清拭用ウェットタオルを確実且つ適温に加熱することができる。
【0022】
従って、老人ホームや障害者施設等の介護施設や病院などにおいて、被介護者等に対して、適温に維持された清拭用ウェットタオルを使用させることができる。これにより、被介護者等が十分に温められていない或いは温めムラのある清拭用ウェットタオルを我慢して使用することを防ぐことができ、被介護者等の日々の生活の快適性の改善に寄与することができる。
【0023】
特に、被介護者が高齢である場合などにおいて、十分に温められていない或いは温めムラのある清拭用ウェットタオルを使用して被介護者等の体が拭かれることで、意図しない被介護者への負担による心臓麻痺などの重大な疾患の誘発を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態にかかる清拭用ウェットタオル収容容器の構成を説明する図である。
【図2】タオル収容体の構成を説明する図である。
【図3】下部空間部の構成を説明する図である。
【図4】清拭用ウェットタオル収容容器の分解図である。
【図5】清拭用ウェットタオルの収容形態の変形例を説明する図である。
【図6】実施例1の結果を示すグラフである。
【図7】実施例2の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明にかかる実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態にかかる清拭用ウェットタオル収容容器の構成を説明する図である。清拭用ウェットタオル収容容器10は、収容室12と、該収容室12の底面部として構成される仕切壁12aと、この仕切壁12aに下方から装着された有底の下部空間部14と、収容室12の上方から装着される上部蓋体16と、を備えている。
【0027】
収容室12は、内部が空洞の略円筒形に形成されている。また、収容室12の側壁12bの下部には、その周囲に略一定のピッチで所定個数(本実施の形態では3個)の係止突起22が形成されている。また、収容室12の底部となっている仕切壁12aは、全体的に格子状に形成され複数個の通気用孔30を備えた構成となっている。そして、上記収容室12の内壁には、断熱保護体40が装着されている。
【0028】
図2は、断熱保護体40の形態を示す図である。断熱保護体40は、例えば、ポリウレタン (PUR)、ポリスチレン (PS)、又はポリオレフィン等の断熱性の発泡材料で形成される。本実施の形態では、特に、断熱保護体40の材料として発泡スチロールが用いられている。
【0029】
本実施の形態では、断熱保護体40は、収容室12の円筒体の径よりも若干小さい径の円筒状に形成されており、収容室12内部にほぼぴったりと嵌る状態で装着される。従って、この断熱保護体40の円筒内部の空間に清拭用ウェットタオルTを収容可能である。
【0030】
また、この断熱保護体40の上端には、外方に延出するフランジ部42が形成されており、断熱保護体40が収容室12に装着されている状態において該フランジ部42が、その側壁12bの上端部分に当接して係合される(図1参照)。
【0031】
更に、断熱保護体40の底部は開口形状に形成されており、この開口Oは、該断熱保護体40が収容室12内部に収容された状態で、上述の収容室14の仕切壁12aにおける複数の通気用孔30が形成されている部分に対向する。
【0032】
一方、収容室12の下部に取り付けられた下部空間部14は、収容室12の仕切壁12aの下部から装着される短背の上部開口円筒形状に形成されている。
【0033】
図3は、下部空間部14の構成を説明する図である。図示のように、下部空間部14は、外側の大円筒50内部に、小円筒52が形成されており、この小円筒52の内部が、水発熱体hを配置する水発熱体収容領域54として形成されている。 本実施の形態における水発熱体hは、酸化カルシウムを、水を通す半透性の繊維袋に収容して形成されたものであり、図では、2個の水発熱体hが配置されている。このように、水発熱体hとして酸化カルシウムをベースに構成された物質を用いることが、収容室12内を適温に保つために特に好適である。
【0034】
なお、この水発熱体hの配置数及び大きさは、必要な熱量や収容室12等の大きさなどに応じて適宜変更が可能である。また、下部空間部14における大円筒50の内側面には、周方向において等間隔に係合孔56が形成されている。この係合孔56は、下部空間部14の縦軸方向(鉛直方向)に沿って伸長する導入口56aと、この導入口56aに直交する方向(水平方向)に所定長さ伸長するスライド用孔部56bを有している(図4参照)。係合孔56は、図1に示されているように、収容室12の係止突起22が係止される。なお、図では、係合孔56が周方向において3か所形成されているが、この数も3か所に限定されるものではなく、収容室12の大きさや重さ等の要因に応じて、係止突起22の数に合わせて適宜最適に設定することが可能である。
【0035】
上部蓋体16は、収容室12の上端開口の大きさにあったサイズで形成されており、略円板形状を有している。上部蓋体16の縁部は、収容室12にかぶせられた状態で本体12の側壁12aの上端部分と係合する縁部フランジ16aが形成されている。また、上部蓋体16は、その中央部にキャップ部17が構成されており、キャップ部17を開放することで開口62が露出するようになっている。従って、キャップ17を開放することで開口62を介して内部の清拭用ウェットタオルTの必要量の取出しが可能である。
【0036】
また、上部蓋体16の内面には、断熱保護体40と同じ材質で形成される内蓋60が装着されている。この装着状態において、縁部の内蓋フランジ60aが上部蓋体16のはめ込み凹部16bにはまり込む。なお、内蓋60の中央部におけるキャップ部17の開口62に対向する部分には、清拭用ウェットタオルTを通過させる内開口64が形成されている。
【0037】
図4は、タオル収容容器10の組み立て状態を示す分解図である。本実施の形態においては、特に、収容室12と下部空間部14の結合が、収容室12の係止突起22を下部空間部14の係合孔56にはめ込むことで行われる。具体的には、係止突起22が係合孔56の導入口56aから導入され、スライド孔56bでスライドされることで、係止突起22の位置が導入口56aの位置からずれて掛止される状態となる。このように、水発熱体hを収容する下部空間部14を収容室12の底部に別体に構成されたことにより、収容室12内の清拭用ウェットタオルTを収容する空間を圧迫することなく確保することができる。
【0038】
これにより、収容室12の下部空間部14に対する着脱を容易に行うことができるので、小円筒50内に配置された水発熱体hの交換作業を簡易に行うことができる。なお、タオル収容容器10の現実的な設置例としては、先ず、介護施設や病院のリネン室の指定場所の床部分に、下部空間部14を固定しておき、その小円筒50内に水発熱体hを配置する。その後、収容室12を下部空間部14に取り付け、断熱保護体40、内蓋60、及び上部蓋体16が順次取り付けられる。
【0039】
なお、小円筒50内への水の供給、すなわち、水発熱体hに対する水の供給は、例えば、下部空間部14に収容室12を取り付ける前に行うか、或いは下部空間部14に収容室12を取り付けた後に、内収容室12の上方開口から、その底部の通気用孔30を介して行うようにしても良い。
【0040】
また、清拭用ウェットタオルTは、図1等から理解されるように複数枚のタオルを縦長のロール状に巻いた状態で形成し、内蓋60及び上部蓋体16を取り外した状態の収容室12に収容される。収容後、内蓋60及び上部蓋体16が取り付けられた後でも、上部蓋体16のキャップ部17を開放すれば、内蓋の開口から清拭用ウェットタオルTを一枚ずつ取り出すことができる構造となっている。
【0041】
上記構成を有する収容容器10を用いて清拭用ウェットタオルTの温めを行う際には、例えば、下部空間部14を取り外して下部空間部14の水発熱体収容領域である小円筒50内に定められた量の水を供給して、そこに配置された水発熱体hを発熱させる。
【0042】
これにより、水発熱体hから発せられた熱は、水発熱体hが配置された小円筒50に対向する収容室12の通気用孔30を通って収容室12内部に上昇し清拭用ウェットタオルTに接触する。従って、収容室12に収容されている清拭用ウェットタオルTは水発熱体hから発せられ上昇した熱により温められることとなる。
【0043】
以上により、上記構成を有する清拭用ウェットタオル収容容器10では、水発熱体hから発せられる熱を、収容室12と有底の下部空間部14の間における仕切壁12aの略全域に形成された通気用孔30を通して、収容室12内部に伝達することができる。従って、収容室12内部に在る清拭用ウェットタオルTを全体的にムラ無く、確実且つ適温に温めることができる。
【0044】
従って、本実施の形態にかかる清拭用ウェットタオル収容容器10を用いれば、老人ホームや障害者施設等の介護施設や病院などにおいて、被介護者等に対して、適温に維持された清拭用ウェットタオルTを使用させることができる。これにより、被介護者等が十分に温められていない或いは温めムラのある清拭用ウェットタオルを我慢して使用することを防ぐことができ、被介護者等の日々の生活の快適性の改善に寄与することができる。
【0045】
特に、被介護者が高齢である場合などにおいて、十分に温められていない或いは温めムラのある清拭用ウェットタオルを使用して被介護者等の体が拭かれることで、意図しない被介護者への負担による心臓麻痺などの重大な疾患の誘発を防止することができる。
【0046】
一方で、本実施の形態では、清拭用ウェットタオルTを加熱する熱源が水発熱体hであり、熱を伝える手段としては仕切壁12aの通気用孔30が形成されているだけという簡易な構成で、複雑な装置を採用することなく加熱機構が構成される。
【0047】
従って、本実施の形態によれば、水発熱体hに供給する水の量を適宜調節することにより、水発熱体hから発せられる熱量及び熱を発する時間を調整して、清拭用ウェットタオルTに接触する熱の量を所望の量にコントロールすることができる。
【0048】
また、収容室12の内面の略全域に亘って、断熱保護体である断熱保護体40が装着されていることから、上述のように通気用孔30を介して収容室12内部に流入した熱の一部が、収容室12内から外部へ流出してしまうことを防止することができる。従って、清拭用ウェットタオルTの加熱する効率及びその加熱温度の維持の効率が高い水準に保たれる。
【0049】
更に、上述のように、収容室の底部を構成する仕切壁12aを格子状に形成されていることにより、水発熱体hからの熱の収容室12内への伝達効率を高い水準に確保しつつも、仕切壁12aの清拭用ウェットタオルTの置かれる載置部としての機能も損なわれることないように、上記通気用孔30を形成することができる。
【0050】
更に、本実施の形態では、収容室12の仕切壁12aにおける通気用孔30の数やサイズを変更することで、清拭用ウェットタオルTに直接的に伝達される熱を適宜コントロールして、収容室12内部の清拭用ウェットタオルTの温度制御を容易に行うことができる。
【0051】
そして、本実施の形態では、タオル収容容器10における収容室12の上部蓋体16と内蓋60、及び収容室12の側部と断熱性の断熱保護体40により、清拭用ウェットタオル収容容器10が全体として二重構造に形成されている。従って、清拭用ウェットタオル収容容器10内の密閉度をより向上させることができ清拭用ウェットタオルTの温度維持がより容易なものとしつつ、容器10の強度も十分に確保することができる。一方で、このような高い密閉度を確保しつつも、清拭用ウェットタオルTを容器10内に補充する場合には、上述の上部蓋体16と内蓋60を取り外してタオルの出し入れ作業も容易に行うことができる。
【0052】
また、本実施の形態では、収容室12と下部空間部14が、それぞれの係止突起22と係合孔56との係合により着脱可能に構成されている。従って、収容室12と下部空間部14を着脱して、下部空間部14の内筒50内に配置された水発熱体hへの水の供給をスムーズに行うことができる。また、水発熱体hを交換する場合には、収容室12を下部空間部14から取外して、下部空間部14の内筒50内の水発熱体hを取出し新たな水発熱体hを設置することができる。すなわち、消耗品である水発熱体hの交換作業を極めて容易に行うことができる。
【0053】
なお、上記実施の形態では、図1に示されているように、収容室12の側壁12aの内面に対してほぼ間隙を持たずに清拭用ウェットタオルTを配置したが、例えば、図5に示されるように、収容室12と清拭用ウェットタオルTとの間にある程度の隙間が形成されるように、清拭用ウェットタオルTの大きさを調整するか、収容室12の内径を調整するようにしてもよい。すなわち、通気用孔30を清拭用ウェットタオルTが置かれる仕切壁12aの領域よりも広く形成するようにしても良い。
【0054】
これにより、清拭用ウェットタオルTが置かれていない部分の通気用孔30を通った熱Aが、この隙間Cに入り込み、隙間C部分を上昇して内蓋60の内面に到達する。従って、特に、内蓋60の開口64の部分に熱が溜まることとなる。すなわち、上部蓋体16の開口62にさしかかり始めている清拭用ウェットタオルT1を重点的に温めることができる。すなわち、近々使用されるであろう清拭用ウェットタオルT1の部分を重点的に温めることができるので、使用時におけるタオルTの温度をより好適な温度とすることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明にかかる実施例1及び2について説明する。
【0056】
(実施例1)
収容室12、下部空間部14、及び上部蓋体16を、ポリプロピレンを成形することで形成した。内蓋60、及び断熱保護体40は、ポリウレタンを成形することで形成した。清拭用ウェットタオルTとして、レーヨン/スパンデックスの混合不織布からなるものを用いた。
【0057】
寸法: 上部蓋体16の厚さ(フランジ部16aの長さ)L1=約30mm、内蓋60の縦幅L2=約20mm、断熱保護体40が収容された状態の収容室12の全長L3=約240mm、下部空間部全体の高さL4=約60mm、内筒50の高さL5=約30mmにそれぞれ形成した。なお、収容室12の内径は、約300mmであり、断熱保護体40の内径は、約260mmであった。
【0058】
内筒50内に、約350ccから400ccの水を供給した。
【0059】
図6に清拭用ウェットタオルTの時刻ごとにおける温度変化を示す。当図から理解されるように、清拭用ウェットタオルの温度を約12時間の間、約36℃〜49℃の間に維持することができた。従って、清拭用ウェットタオルTを、人が火傷するような高温ではなく、また、冷たいと感じる低温でもない適度な高温に長時間保持することに成功した。
【0060】
(実施例2)
供給する水の量を250ccから300ccとした以外は、実施例1と同様の条件で測定を行った。
【0061】
図7に清拭用ウェットタオルTの時刻ごとにおける温度変化を示す。実施例1の場合と比較して供給した水量が少ないことから、清拭用ウェットタオルTの温度は若干低くなったものの、少なくとも5時間以上の間、人肌程度の好適な温度範囲に維持された。
【0062】
以上、実施例1及び2の結果から理解されるように、供給する水の量を変えることで、清拭用ウェットタオルTの維持温度を変えることができる。
【0063】
上記実施例1及び2では、水の量を変化させてタオルの供給温度や容器内の温度維持時間を変更させているが、空孔30のサイズや数を変更することによってもそれらを調整することが可能である。
【0064】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記実施の形態では、収容室12を円筒状に形成したが、これに限られるものではなく、筒状であれば他の断面矩形状の筒体等の種々の形態に形成してもよい。また、上記実施の形態では、収容室12の内部に断熱保護体40を収容するとともに、上部蓋体16の内部に内蓋60を設けて断熱性能や強度を向上させているが、例えば、収容室12の材質や大きさにより十分な断熱性や強度が得られる場合には、断熱保護体40や内蓋60を設けずに、タオル収容容器10を構成してもよい。更に、水発熱体hは、酸化カルシウムを半透性の袋体に詰めることで構成したが、水と反応して発熱する酸化カルシウム以外の物質を袋体に詰めて水発熱体を構成してもよい。
【0065】
また、タオル収容容器10における収容室12等の各構成部材の寸法は、上記実施の形態で示したものに限られるものではなく、収容される清拭用ウェットタオルTの材質や大きさ等の要因に応じて種々変更調整が可能である。
【0066】
更に、タオル収容容器10における収容室12等の各構成部材の材質も、上記実施の形態に示したものに限られず、収容容器内部のタオルTの温度維持状態を考慮して、適宜、他の材質を適用しても良い。
【符号の説明】
【0067】
10 タオル収容容器
12 収容室
12a 仕切壁
14 下部空間部
16 上部蓋体
30 通気用孔
40 タオル収容体(断熱保護体)
h 水発熱体
T 清拭用ウェットタオル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に装填された清拭用ウェットタオルを上部の取出し口から必要量だけ取り出し可能な清拭用ウェットタオル収容容器において、
前記清拭用ウェットタオルを収容する収容室と、
該収容室の下側に設けられた有底の下部空間部と、
前記収容室と前記下部空間部を仕切り、複数の通気用孔が略全域に亘り形成された仕切壁と、
前記下部空間部に収納された水と反応して発熱する水発熱体と、
を有することを特徴とする清拭用ウェットタオル収容容器。
【請求項2】
前記収容室の内壁には、
断熱性材料で形成された断熱保護体が装着されたことを特徴とする請求項1に記載の清拭用ウェットタオル収容容器。
【請求項3】
前記仕切壁は、格子状に形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の清拭用ウェットタオル収容容器。
【請求項4】
前記収容室と前記下部空間部が、相互に着脱可能であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−90845(P2012−90845A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241753(P2010−241753)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(510287131)株式会社禄宏 (2)
【Fターム(参考)】