説明

減圧創傷療法における感染症の検出

創傷部位において起炎菌の感染によって引き起こされる創傷の感染症を検出する方法を提供する。また、創傷部位の創傷の感染症を検出するためのシステムを提供する。さらに、ルシフェラーゼを含む多孔質パッドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2008年6月4日提出の米国暫定特許出願第61/058,819号、及び2008年11月26日提出の米国暫定特許出願第61/118,161号の利益を主張するものであり、いずれの暫定出願も、参照により本書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、一般に組織治療システムに関し、特に、創傷における感染を検出するための方法及び構成に関する。
【背景技術】
【0003】
臨床研究及び診療により、組織部位の近くに減圧治療を提供するためのシステムが、組織部位での新たな組織の成長を増大且つ加速させることが分かってきている。このような現象の適用は数え切れないが、減圧の適用は、創傷の治療において特に成功している。このような治療(医学界で、しばしば「負圧創傷治療」、「減圧治療」、又は「真空治療」と称される)は、素早い回復及び肉芽組織形成の増大を含む、多くの利点を提供する。一般に、減圧は、多孔質パッド又は他の吸い込み器具を介して組織に適用される。多孔質パッドは、組織に減圧を供給して組織から吸引される流体を導き得るセル又は空孔を含んでいる。多孔質パッドは、多くの場合、治療を促進する他の成分を有する包帯剤に組み込まれる。
【0004】
このようなシステムの使用に関する1つの難しさは、創傷を覆っている密着した包帯剤を乱さずに、創傷内の感染の存在又はタイプを見付けることである。微生物の検出に関する多くの方法が開発されている。これらの方法の様々な方式は、分光計、クロマトグラフ、及び微生物の存在を検出するための他の電子的なセンサの使用を含んでいる。典型的な米国特許は、2000年1月25日に取得されたLewisらの米国特許第6,017,440号;2001年2月13日に取得されたChutjianらの米国特許第6,188,067号;1998年9月22日に取得されたHunterらの米国特許第5,811,255号;1997年5月18日に取得されたOvertonらの米国特許第5,611,846号;及び1996年12月10に取得されたYuの米国特許第5,583,281号を含む。
【0005】
このようなシステムは、以前は治療不可能であると考えられた多くの創傷を回復させ、創傷の閉合の促進の点で大いに成功している一方、いくつかの難しい点が依然として残っている。このようなシステムの性質は、雰囲気から密封された創傷部位を要するため、傷の包帯剤を除去せずに、創傷部位に存在する可能性のある細菌といった微生物の存在又は濃度を検出するのが難しい。従来は創傷部位を乱すことが必要となっているため、細菌感染の存在又は濃度の検査をするために、治療を妨げてしまう。さらに、創傷部位への何らかの乱れが、創傷部位への感染の可能性を増大させてしまう。また、創傷の包帯剤の除去により、患者に痛みや不快感を与える可能性がある。
【0006】
参照することによりここに盛り込まれた米国特許出願公開US2002/0143286に記載された発明が、これらの問題を避けるべく進展している。その出願は、創傷部位における細菌又は他の形式の感染の存在を任意に検出する検出器具の使用を記載している。感染性病原菌をより具体的に特定且つ定量化するための他の方法が望ましい。
【0007】
したがって、本発明の主要な目的は、創傷部位において包帯剤を乱さずに、密着する包帯剤の使用の際に、創傷部位における感染の存在を検出するための手段を用いる創傷の閉合器具を補助する真空を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、創傷部位において包帯剤を乱さずに、密着する包帯剤の使用の際に、創傷部位に存在する感染の特性又は特定型式を特定するための手段を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる目的は、創傷部位において包帯剤を乱さずに、密着する包帯剤の使用の際に、創傷部位における感染性病原菌の濃度を検出するための手段を手段を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
減圧治療において感染の検出のための既存の手段によってもたらされる問題は、ここで説明される具体的な実施例の本方法及び本装置によって解決される。一実施例では、創傷部位の起炎菌によって引き起こされる創傷の感染症を検出する方法が、創傷部位に減圧を適用するステップと、減圧に応じて創傷部位から流体を抜くステップと、創傷部位から抜かれた流体を採取するステップと、創傷部位から採取した流体について、感染症の生成物又は起炎菌の成分の検査を行うステップとを具えており、生成物又は成分の存在が、創傷の感染症の存在を示す。
【0011】
さらなる実施例では、創傷部位の創傷の感染症を検出するためのシステムが、減圧源と、創傷部位に減圧を供給するよう構成された多孔質パッドと、パッド及び創傷部位の上を実質的に気密カバーするよう構成されたドレープと、多孔質パッドを減圧源に流体接続させることにより、減圧に応じて流体が創傷部位から抜かれる導管と;創傷部位から抜かれる流体を分析して感染症の生成物又は起炎菌の成分を特定するための器具と、を具えており、生成物又は成分の存在が、創傷の感染症の存在を示す。
【0012】
さらなる実施例では、創傷部位に減圧を適用するよう構成される多孔質パッドが、ルシフェラーゼを含んでいる。
【0013】
具体的な実施例の他の目的、態様、及び利点が、図面及び以下の詳細な説明を参照することにより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、感染を検出するための減圧治療システムの具体例の部分断面図を示す。
【図2】図2は、感染を検出するための減圧治療システムの具体例の部分断面図を示しており、減圧治療源がチップを受容するための区画を有する。
【図3】図3は、薬物を含むパッドを有する減圧治療システムの具体例の部分断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明の具体的な実施例では、この実施例に関する添付図面を参照することとする。これらの実施例は、当業者が本発明を実施し得るよう十分詳細に説明されており、他の実施例を使用し得ること、及び本発明の精神又は範囲から逸脱せずに、論理構成、機械的、電気的、及び化学的変更が可能であることが理解されよう。当業者がここで説明されている実施例を実施し得るのに不要な詳細を避けるために、この説明は当業者が既知の特定の情報を省略し得る。このため、以下の詳細な説明は限定する趣旨として捉えるべきではなく、具体的な実施例の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって既定される。
【0016】
図1を参照すると、減圧治療システム100の具体的な実施例が、創傷111を含む組織部位110に減圧治療を提供するものであり、組織部位110での感染を検出する。減圧治療システム100は、減圧治療源128と、流体が流れるよう接続され包帯剤108を介して組織部位110に減圧を供給する導管122とを有する。包帯剤108は、創傷111の中に配置されるパッド112を有する。患者の表皮114にドレープ116が付着され、創傷111の周りを流体シールして、創傷111おける減圧の保持が可能となる。減圧により、滲出液といった流体が創傷111から装置118に吸い出され、装置118が、吸い出された流体又はその抽出物について、感染症の生成物又は起炎菌又は起炎菌群の成分を分析する。
【0017】
創傷111は、骨組織、脂肪組織、筋肉組織、皮下組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱又は靱帯といったものを含む、これらに限定されない何らかの組織部位110に又はその内部に存在する損傷又は欠陥である。また、創傷111は、必ずしも負傷又は損傷している組織ではなくてもよく、付加的な組織の成長を与えるのが又は促すのが望ましい部分である。
【0018】
本書で用いられる「起炎菌」は、創傷の感染症を引き起こす微生物(細菌、菌類、原生生物、古細菌、ウイルス)である。非限定的な例が、黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、大腸菌、緑膿菌、ミラビリス変形菌、肺炎桿菌、カンジダ菌及びバクテロイデスを含んでいる。これは、(a)例えば、毒素性ショック症候群毒素1型(TSST−1)を生成する黄色ブドウ球菌;コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、又はD群連鎖球菌;といった、検査することによって特性又は生成物を検出することができるある特性を有し又は特異的な生成物を形成する特定種又は特定遺伝子の特定のバイオタイプと;(b)例えば、グラム陰性菌、コリネバクテリア種、腸球菌、腸内細菌種、連鎖球菌種といった2以上の生物種を含む群を含んでいる。ある実施例では、起炎菌又は起炎菌群が細菌である。
【0019】
ここで使用される「感染症の生成物」は、感染の際に宿主(すなわち、患者)又は起炎菌のいずれかによって形成される特別に特定可能な生成物である。また、宿主の生成物は感染していない場合にも形成されるが、本方法ではこのような生成物を有用にするために、それは、非感染の創傷から吸引される流体よりも感染した創傷から吸引される流体で多くの量生成する必要がある。感染症の生成物の非限定的な例は、(細菌によって生成される)アデノシン−5’−三リン酸(ATP)及び特定のサイトカイン、フィブロネクチン断片、好中球プロテアーゼ、及び(宿主によって生成される)マクロファージプロテアーゼを含んでいる。特別に特定可能な生成物は、特定配列の抗体又は核酸プローブといった、特定の試薬にその化学的組成又は反応性によって個別に特定し得る化合物である。
【0020】
包帯剤108のドレープ116は、流体シールを与える任意の材質とし得る。ドレープ116は、例えば、不透水性又は半透水性のエラストマー材料とすることができる。「エラストマー」は、エラストマーの特性を有することを意味する。それは一般に、ゴム状の特性を有する高分子材料に関する。特に、大部分のエラストマーは、100%よりも高い伸び率からなる相当量の弾性を有する。材料の弾性は、弾性変形からの材料の回復能力に関する。エラストマーの例は、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエン、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンモノマー、クロロスルホン化ポリエチレン、多硫化ゴム、ポリウレタン、EVAフィルム、コポリエステル、シリコーン含んでいるが、これらに限定されない。ドレープ116の材質の特定の例は、シリコーンドレープ、3M Tegaderm(登録商標)ドレープ、Avery Dennisonから市販されているものといったアクリルドレープ、又は切開用ドレープを含んでいる。ドレープ116は、中に接続部133が挿入される開口部131を含め得る。接続部133は、導管122とドレープ116によって形成される密閉空間との間を流体接続させ得る。
【0021】
ここで使用される「パッド」という用語は、一般に、組織部位110に減圧を供給する際に、又は組織部位110に流体を送出する際に、又は組織部位110から流体を除去する際に補助するよう供される物質又は構造に関する。パッド112は、一般に、パッド112の周辺の組織部位110に流体を提供する又は組織部位110から流体を除去する複数の流路又は経路を有する。具体的な一実施例では、流路又は経路が内部接続されており、組織部位110に供され組織部位110から除去される流体の送出を改善する。パッド112は、組織部位110に接触するよう配置し、組織部位110に減圧を供給し得る生体適合性材料とすることができる。パッド112の例は、例えば、多孔質発泡体、オープンセル発泡体、多孔組織の集合体、液体、ゲル、及び流路を含む又は含むよう処理された発泡体といったものを含むがこれらに限定されない、流路を形成するよう構成される構成要素を有する器具を含んでいる。パッド112は多孔質とすることができ、発泡体、ガーゼ、フェルトマット、又は特定の生物学的適用に適する他の材質で作製し得る。一実施例では、パッド112は多孔質発泡体であり、流路として機能する複数の相互結合したセル又は空孔を含んでいる。多孔質発泡体は、ポリウレタン、オープンセル、テキサス州サンアントニオ所在のKinetic Concepts,Incorporatedによって製造されているGranuFoam(登録商標)材料といった網状発泡体とし得る。他の実施例は、「クローズドセル」を含んでいる。パッド112のこれらのクローズドセル部分は複数のセルを含んでおり、その大部分は隣接するセルと流体接続しない。パッド112の周囲面を通って流体が通り抜けるのを防止するよう、パッド112にクローズドセルを選択的に配置し得る。ある状況では、薬剤、抗菌剤、成長因子、及び組織部位110への様々な溶液といった流体を送出するようパッド112を使用することも可能である。パッド112の中に又はそれに、吸収物質、ウィッキング(Wicking)材料、疎水性材料、及び親水性材料といった他の層を含めることができる。
【0022】
ある実施例では、パッド112が、創傷111の起炎菌又は感染症の生成物の成分と反応する化合物を含んでいる。上述のように、感染症の生成物は、宿主から(例えば、サイトカイン、フィブロネクチン断片、好中球プロテアーゼ、又はマクロファージプロテアーゼといった感染に反応して生成される宿主タンパク質といった化合物)又は(例えば、ATPといった)起炎菌からのいずれかからとすることができる。これらの実施例では、化合物と起炎菌又は感染症の生成物の成分との間の反応生成物が、導管122に引き込まれて装置118によって検出される。そして、装置118は、接続部124とのやりとりを介して反応生成物が検出された場合に、コンピュータといったデータ処理システム126に報知する。通信接続部124は、有線及び無線の通信方式の双方を含んでいる。データ処理システム126は、データを記憶し、例えば、検査された成分又は生成物の濃度、又は感染の程度を計算するための演算を実行し得る。
【0023】
別の実施例では、装置118が、起炎菌又は感染症の生成物の成分を検出するための反応性化合物を有する;このような実施例では、創傷111からの流体がパッド112を通して装置118の中に引き込まれ、化合物の中に流体を持って行く。また、装置118は、反応の結果を検査するための手段(例えば、マイクロアレイ、化学的チップ又はマイクロ流体デバイスからの結果を測定するための電荷結合素子[CCD]カメラ、又はルシフェラーゼ反応からの光を測定するための光検出器)を有する。
【0024】
具体的な実施例で検出し得る細菌感染の一般的生成物は、アデノシン−5’−三リン酸(ATP)である。これらの方法では、当技術分野で知られた任意の手段によってATPを検出し得る。ある実施例では、Mg+2の存在下で以下のようなルシフェラーゼ−ルシフェリン反応を用いてATPを検出する:
ATP+ルシフェラーゼ+ルシフェリン+O → AMP+CO+2Pi+光
例えば、光検出器を用いて、光を可視化及び任意に定量化し得る。一実施例では、装置118は光検出器である。
【0025】
このように、ある実施例では、創傷111から引き出される流体又はその抽出物を、ルシフェラーゼ及びルシフェリンと組み合わせ、その後でその後の反応で発生した光を測定することによってATPを検出する。発生した光が感染していない創傷によって発生する光を超える場合に、創傷111は感染している。様々な実施例では、放射光を測定することによってATPを定量化し、引き出される流体又はその抽出物におけるATPの増加量が創傷111の感染の増加する深刻度を示す。ATPを定量化して流体中の細菌の存在を判定する方法の例として、例えば、米国特許第4,833,075号;第5,756,303号;及び第5,916,802号及び欧州特許出願0025351A1を参照されたい。
【0026】
他の実施例では、感染症の生成物は炎症反応に関連する宿主タンパク質である。これらの実施例では、装置118によってこのような宿主タンパク質を検出し得る。これらの実施例のうちのいくつかでは、宿主タンパク質は、サイトカイン、フィブロネクチン断片、好中球プロテアーゼ、又はマクロファージプロテアーゼである。例えば、PCT特許公報WO2004/086043及び米国特許出願公報US2005/0079542Alを参照されたい。
【0027】
また、装置118は、起炎菌又は起炎菌群の成分を検査することによって、創傷の流体又は抽出物における感染を判定し得る。ここで使用されているように、「起炎菌の成分」は、創傷の感染症の原因となり得る特に識別可能な微生物の一部である。このような成分の非限定的な例は、リポ多糖体(LPS)、リポタイコ酸(LTA)、抗原、及び特異的な生物に特有な特異的な配列を有するDNAである。
【0028】
グラム陰性細菌を検査する特定の実施例では、引き出された流体又はその抽出物を、グラム陰性細菌のリポ多糖体(LPS)に感度が良いリムルス変形細胞溶解物と組み合わせる。また、例えば、Endotoxin Activity Assay(商標)(Hilmiら、J.Organ Dysfunction,advanced online publication,23 March 2009)といった、補体オプソニン化LPS−IgM免疫複合体を介したプライミング宿主好中球呼吸バースト活性による、内毒素活性を測定する検査を含む既知の免疫学的検査法によって抗体でLPSを検出し得る。
【0029】
グラム陰性細菌を検査する様々な実施例では、検査される成分は、当技術分野で既知の方法によって検出されるリポタイコ酸(LTA)である。これらの実施例のいくつかは、LTAが、引き出された流体又はその抽出物と特にLTAに結合される抗体との組み合わせを含む検査で検出される。
【0030】
ある実施例では、創傷の流体又はその抽出物を、創傷の感染症の原因となり得る少なくとも1つの特異的な遺伝子又は例えば、連鎖球菌種、又は化膿連鎖球菌といった細菌種について検査する。このような検査は、細菌を特定して、例えば、狭い宿主域を有する抗生物質を使用する場合のような、狭い宿主域に影響する感染処置を判断する場合に望ましい。
【0031】
ある実施例では、創傷の感染症の原因となり得る特異的な遺伝子又は細菌種の検査が、創傷の流体の抽出物内で細菌又は細菌群に特有の核酸配列を特定する装置118を含んでいる。これらの方法のいくつかでは、引き出された流体を処理して起炎菌からDNA又はRNAを取り出す;DNA、又はRNAから逆転写されるcDNAに検出可能な標識を付け、少なくとも1の特異的な細菌又は細菌群に特異的な少なくとも1の固定化核酸に適用する;及び固定化核酸を評価して検出可能な標識が特別に結合しているか否かを判定する。ここで、検出可能な標識の固定化核酸への特異的な結合は、創傷111が特異的な細菌又は細菌群に感染していることを示す。マイクロアレイ又はマイクロ流体チップをこのような検査に使用し得ると考えられる。例えば、www.affymetrix.com.で、Affymetrix(2005)Application Notes,Microarray Applications in Infectious Diseaseを参照されたい。これらの実施例のある態様では、標識DNA又はcDNAを、少なくとも5、10、20、50、又は100の固定化核酸を含むマイクロアレイに適用し、各核酸は、創傷の感染症の原因となり得る様々な細菌又は細菌群に特異的である。
【0032】
他の実施例では、抗体又はアプタマーを使用して、細菌又は細菌群の抗原又はアプタマー結合部位を検出する。これらの実施例のいくつかでは、引き出された流体又はその抽出物を、遺伝子又は細菌群の細菌種に特異的な抗体又はアプタマーと組み合わせ、その後で、抗体又はアプタマーを評価して創傷111からの抗原が抗体又はアプタマーに結合しているか否かを判定する。さらに、抗体又はアプタマーを使用して複数の細菌を検査し得る。このため、これらの方法のいくつかでは、引き出された流体又はその抽出物を2以上の抗体又はアプタマーと組み合わせ、様々な遺伝子又は細菌種についての各抗体又はアプタマーは、創傷の感染症となり得る;さらには、2以上の抗体又はアプタマーをその後で評価して、2以上の抗体又はアプタマーのいずれかが創傷からの抗原又はアプタマー結合部位に結合しているか否かを判定する。
【0033】
当技術分野で、抗体又はアプタマーが抗原又はアプタマー結合部位に結合しているか否かを判定するための多くの検査が知られている。実施例は、ELISA、ウエスタンブロット、及び米国特許出願公開US2007/0292397Alに記載された検査を含んでおり、参照することによりここに盛り込まれている。
【0034】
一実施例では、装置118は、流体が創傷111から引き出される場合に流体が抗体の上を流れるように、結合した抗体を含む基板(図示せず)を配置するための区画(図示せず)を含んでいる。これらの方法は、装置118に関連する特定の基板に限定されない。実施例は、ポリスチレンマイクロタイタープレート、ニトロセルロース紙、及びマイクロチップを含んでいる。さらなる実施例では、器具はリムルス変形細胞溶解物を含んでいる。
【0035】
創傷111における感染を検出するための1つの方法は、創傷111から流体を引き出すのに十分な減圧に創傷111をさらすことを含んでいる。創傷111からの流体を装置118内又は他の場所で集めることができ、引き出された流体又はその抽出物を、感染症の生成物又は起炎菌又は起炎菌群の成分について検査し得る。生成物又は成分の存在は、創傷111における感染を示す。具体的な実施例は、創傷の包帯剤を除去することなしに、感染に関する創傷111の検査、及び特異的な細菌又は細菌群の検出を可能とする。
【0036】
代替的な実施例では、システム100が、さらに、創傷の流体を採取するよう構成されたリザーバ(図示せず)有する。このようなリザーバを使用して、装置118といったシステム100の別個の構成要素を用いて、検査される流体を採取し得る。別の実施例では、装置118又は減圧源128が、このようなリザーバを有し得る。
【0037】
図2は、チップ235のためのポート230を具える減圧源228を有する減圧治療システム200の具体的な実施例を示す。チップ235は、検出器(例えば、CCDカメラ)と同様に、マイクロ流体又はマイクロアレイ又はマイクロチップ又は化学チップとするとし得る。細菌又は細菌群に特有な特異的な抗原又は核酸を検出するためにチップ235を使用し得る。創傷の流体は導管122を通って引き出され、ポート230のチップ235とやり取りする。導管122の出口237は、チップ235が創傷の流体とやり取りするように、創傷の流体をチップ235に送出する。マイクロアレイ又はマイクロ流体データを分析するよう減圧源228を構成し得る。マイクロアレイを用いたある実施例では、標識DNA又はcDNAを、少なくとも5、10、20、50、又は100の固定化核酸を含むマイクロアレイに適用し、各核酸は創傷の感染症の原因となり得る様々な細菌又は細菌群に特異的である。そして、排出導管236を通して余分な流体を除去する。
【0038】
任意に、システム200は、装置118及び通信ケーブル224も有し得る。装置118又は別個のデータ処理システム(図示せず)を、マイクロアレイ又はマイクロ流体データを分析するよう構成し得る。システム200では、創傷の流体に関する2つの検査値を、装置118及びポート230のチップ235から検査し得る。
【0039】
図3は、ルシフェラーゼ及びルシフェリン334が含浸したパッド312を有する減圧治療システム300の具体的な実施例である。ある実施例では、例えば米国特許4,833,075に記載されているように、ルシフェラーゼはパッド312に共有結合的に結合している。減圧源128は創傷111の感染からパッド312の中にATPを引き出し、ATPがルシフェラーゼ及びルシフェリン334と反応して光を発生させる。ATP/ルシフェラーゼ/ルシフェリン反応によって発生した光は、光検出器を含む器具318によって検出され、光の測定値が任意に通信接続部124を介してデータ処理システム126に伝送される。そして、データ処理システム126は光の測定値を記録し得る。このような方法では、器具318による光の検出が、創傷111におけるATPの存在を示す。
【0040】
器具318は、ドレープ116と一体化して図示されている。しかしながら、ATP/ルシフェラーゼ/ルシフェリン反応からの光を検出し得るシステム300のいずれかの場所に器具318を配置し得る。
【0041】
ある実施例では、システム300が、さらに、リザーバ347からルシフェラーゼ及び/又はルシフェリン334を導入するための、パッド312に流体接続された供給ライン345を具える。供給ライン345も使用して、感染制御用化合物を創傷111に供給することができ、このようなケースではリザーバ347はこのような化合物を含んでいる。
【0042】
顕著な利点を有する発明が提供されていることが上記から明らかである。単にその形式で本発明を図示する一方、それは限定されないだけではなく、その精神から逸脱することなしに様々な変更及び修正をし易い。
【0043】
本明細書で引用された全ての参照は、参照することによりここに組み込まれている。参照の説明は、本発明者によってなされる主張を単に要約することを意図するものであり、任意の参照が従来技術を構成することを認めるものではない。本出願人は、引用文献の正確さ及び適切性を疑う権利を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷部位における起炎菌によって引き起こされる創傷の感染症を検出する方法であって、前記方法が:
前記創傷部位に減圧を適用するステップと;
前記減圧に応じて前記創傷部位から流体を抜くステップと;
前記創傷部位から抜かれた前記流体を採取するステップと;
前記創傷部位から採取した前記流体について、前記感染症の生成物又は前記起炎菌の成分の検査を行うステップと;
を具えており、
前記生成物又は前記成分の存在が、前記創傷の感染症の存在を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記起炎菌が、細菌であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記創傷が、皮膚組織、骨組織、軟骨、腱、靱帯、筋肉、神経組織、皮下組織、及び脂肪組織から成る群から選択される組織を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抜かれた流体ついて、前記感染症の生成物の検査を行うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記感染症の生成物が、アデノシン−5’−三リン酸(ATP)であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ATPが、前記抜かれた流体をルシフェラーゼ又はルシフェリンと混合し、次いで発生する光を測定することによって検出され、感染していない創傷からの流体によって発生するレベルよりも高い光が発生する場合に、前記創傷が感染していることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ATPが定量化され、
前記抜かれた流体中のATPの増加量が、重度の前記創傷の感染症を示すことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記感染症の生成物が、炎症反応に関連する宿主タンパク質であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記宿主タンパク質が、サイトカイン、フィブロネクチン断片、好中球プロテアーゼ
、又はマクロファージプロテアーゼであることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抜かれた流体について、起炎菌の成分を検査することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
検査される前記起炎菌の成分が、グラム陰性細菌のリポ多糖体(LPS)であり、
前記LPSが、前記抜かれた流体とリムラス変形細胞溶解物とを混合するステップを具える検査、又は補体オプソニン化LPS−IgM免疫複合体を介した宿主好中球呼吸バースト活性を刺激(プライム)する検査によって検出されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
検査される前記起炎菌の成分が、グラム陰性細菌のリポタイコ酸(LTA)であり、
前記LTAが、前記抜かれた流体とLTAに特異的に結合する抗体とを混合した後に、前記抗体がLTAに結合しているかを判定するステップを含む検査で検出されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記抜かれた流体が、創傷の感染症を引き起こし得る少なくとも1の特異的な遺伝子又は生物種の成分について検査されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記抜かれた流体が、前記起炎菌からDNA又はRNAを取り出すよう処理され、
前記DNA、又は前記RNAから逆転写されるcDNAが、検出可能な標識で標識化され、前記少なくとも1の特異的な生物に対して特異的な少なくとも1の固定化核酸に適用され、
前記固定化核酸が、前記検出可能な標識が前記固定化核酸に特異的に結合するかどうかを判定するために検査され、
前記固定化核酸への前記検出可能な標識の特異的結合が、前記創傷が遺伝子又は生物種に感染していることを示すことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記標識化されたDNA又はcDNAが、少なくとも20の固定化核酸を含むマイクロアレイに適用され、
各核酸が、創傷の感染症を引き起こし得る異なる遺伝子又は生物種に対して特異的であることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抜かれた流体が、前記少なくとも1の特異的な遺伝子又は生物種に対して特異的な抗体又はアプタマーと混合し、
前記抗体又はアプタマーが、前記抗体又はアプタマーが前記創傷からの抗原又はアプタマー結合部位に結合するかどうかを判定するよう検査されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記抜かれた流体が、2以上の抗体又はアプタマーと混合し、各抗体又はアプタマーが、創傷の感染症を引き起こし得る異なる遺伝子又は生物種に対して特異的であり、
前記2以上の抗体又はアプタマーが、前記2以上の抗体又はアプタマーのいずれかが前記創傷からの抗原又はアプタマー結合部位に結合するかどうかを判定するよう検査されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
減圧源と;
前記創傷部位に前記減圧を供給するよう構成された多孔質パッドと;
前記パッド及び前記創傷部位の上をカバーするよう構成されたドレープと;
前記多孔質パッドを前記減圧源に流体接続させる導管と;
を具えた器具から前記減圧が適用され、これによって、
流体が前記減圧に応じて前記創傷部位から抜かれることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
さらに、前記器具が、前記流体を採取するよう構成されたリザーバを具えることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記多孔質パッドが、ルシフェラーゼ又はルシフェリンを含んでおり、
前記器具が、さらに、前記多孔質パッドから放射される光を測定し得る光検出器を具えることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記ルシフェラーゼが、前記多孔質パッドに共有結合的に結合することを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに、前記器具が、前記光検出器に接続されるコンピュータを具えており、
前記コンピュータが、前記光検出器からの前記光の測定値を記録し得ることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】
さらに、前記コンピュータが、記録された前記光の測定値が前記創傷の感染症を示すかどうかを判定し得ることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
さらに、前記器具が、前記創傷への感染予防剤の導入のための前記多孔質パッドへの供給ラインを具えていることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項25】
創傷部位における創傷の感染症を検出するためのシステムであって、前記システムが:
減圧源と;
前記創傷部位に前記減圧を供給するよう構成された多孔質パッドと;
前記パッド及び前記創傷部位の上を実質的に気密カバーするよう構成されたドレープと;
前記多孔質パッドを前記減圧源に流体接続させることにより、前記減圧に応じて流体が前記創傷部位から抜かれる導管と;
前記創傷部位から抜かれる前記流体を分析して感染症の生成物又は起炎菌の成分を特定するための器具と;
を具えており、
これによって前記生成物又は前記成分の存在が、前記創傷の感染症の存在を示すことを特徴とするシステム。
【請求項26】
前記器具が光検出器を具えており、
前記パッドが、さらに、ルシフェラーゼ及びルシフェリンを含むことを特徴とする請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記ルシフェラーゼが、前記パッドに共有結合的に結合することを特徴とする請求項26に記載のシステム。
【請求項28】
前記流体が前記創傷から抜かれるときに前記流体が前記抗体の上を流れるように、前記器具が、結合した抗体を含む基板を配置するための区画を具えることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項29】
前記器具が、リムラス変形細胞溶解物を含むことを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項30】
前記器具が、マイクロ流体チップ、化学チップ又はマイクロアレイを具えることを特徴とする請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記マイクロ流体チップ、化学チップ又はマイクロアレイが、前記減圧源にあることを特徴とする請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
さらに、前記分析から得られる結果を記録し得るコンピュータを具えることを特徴とする請求項30に記載のシステム。
【請求項33】
創傷部位に減圧を供給するよう構成された多孔質パッドであって、ルシフェラーゼを含むことを特徴とするパッド。
【請求項34】
前記ルシフェラーゼが、前記パッドに共有結合的に結合することを特徴とする請求項33に記載のパッド。
【請求項35】
さらに、ルシフェリンを含むことを特徴とする請求項33に記載のパッド。
【請求項36】
創傷の治療のための請求項25に記載のシステムの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−523712(P2011−523712A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512623(P2011−512623)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2009/046160
【国際公開番号】WO2009/149203
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(508268713)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】