説明

減圧装置

【課題】アキュムレータ式冷凍サイクルに適用される減圧装置において、サイクル運転効率の向上を図りつつ、従来のレシーバ式冷凍サイクルに対して他の構成部品の仕様を大幅に変更することなく置き換え可能とする。
【解決手段】上流側絞り手段32と固定絞りである下流側絞り手段34とを備え、上流側絞り手段32を、上流側絞り通路321と、上流側絞り通路321の開度を調整する開度調整部322aを有する弁体322と、弁室323とを備えて構成し、弁体322に、弁室323を入口側圧力室324と中間部通路33から冷媒が流入する中間側圧力室325とに区画する区画部322bを設け、上流側絞り手段32から中間部通路33を介して下流側絞り手段34へ至る冷媒通路313に2つの屈曲部を設け、上流側絞り手段32、中間部通路33および下流側絞り手段34をブロック状に形成されたボデー部31の内部に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両空調用冷凍サイクルに適用される減圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用空調装置には、放熱器から流出した冷媒の気液を分離して余剰液相冷媒を溜めるレシーバを配置する冷凍サイクル装置(レシーバ式冷凍サイクル)が用いられている。レシーバ式冷凍サイクルにおいては、減圧装置として温度式膨張弁を用い、蒸発器出口冷媒の過熱度が予め定めた所定値に維持されるように冷媒流量を自動調整するようにしている。
【0003】
この種の温度式膨張弁では、一般的に、その外殻を形成するブロック状のボデー部の内部に高圧冷媒を流通させる冷媒通路、高圧冷媒を減圧膨張させる絞り通路、蒸発器流出冷媒を流通させる冷媒通路等が形成され、感温棒、弁体等もボデー部の内部に収容される。さらに、蒸発器流出冷媒の温度および圧力に応じて変位動作するエレメント部が、ボデー部の外部に配置される。このように構成された温度式膨張弁は、一般にボックス型膨張弁と称されている。
【0004】
ところで、近年、蒸発器出口と圧縮機吸入側との間に、冷媒の気液を分離して液冷媒を溜めるアキュムレータを配置する冷凍サイクル装置(アキュムレータ式冷凍サイクル)が実用化されている。アキュムレータ式冷凍サイクルにおいて、冷凍サイクルの効率化のためには、凝縮器出口冷媒の過冷却度を適切な範囲(7〜15℃程度)に維持することが有効である。
【0005】
このため、特許文献1には、広範な運転条件の変動があっても、凝縮器出口冷媒の過冷却度を適切な範囲に維持しながら冷媒流量を制御することで、サイクル運転効率の向上を図ることができる減圧装置が開示されている。
【0006】
この特許文献1に記載の減圧装置では、冷媒流れ上流側に配置された可変絞り手段と、その下流側に配置された固定絞り手段とを備えている。そして、ノズル形状等の固定絞り手段では、冷媒の乾き度の微小域(例えば、乾き度0<x<0.1)において流量変化が大きい、すなわち流量調整ゲインが大きい点に着目し、冷媒流れ上流側に配置した可変絞り手段により凝縮器出口の過冷却液相冷媒を所定量減圧して微小乾き度域に変化させ、この微小乾き度域にある気液2相冷媒を固定絞り手段に流入させ、再度減圧するように構成している。
【0007】
これによると、固定絞り手段では、丁度、流量調整ゲインの大きい冷媒状態にて冷媒流量調整作用を行うことができるので、固定絞り手段において、過冷却度の微小な変化幅によって大きな冷媒流量調整幅を得ることができる。したがって、冷凍サイクル運転条件の広範な変動に対しても、凝縮器出口冷媒の過冷却度の微小変化幅により冷媒流量を広範囲に調整できる。このため、凝縮器出口冷媒の過冷却度をサイクル運転の高効率化のための適切な範囲に維持して、サイクル運転の高効率化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3757784号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1に記載の減圧装置は、可変絞り手段および固定絞り手段が同一直線上に配置されているので、冷媒配管の軸方向の体格が大型化し、ブロック形状のボデー部の内部に収容することができない。
【0010】
このため、従来一般に用いられていたボックス型膨張弁に代えて、上記特許文献1に記載の減圧装置をアキュムレータ式冷凍サイクルに適用する場合、減圧装置を冷凍サイクル装置の冷媒配管内に搭載、または、冷媒配管間に接続する必要があり、空調装置を構成するその他の部品(例えば、空調ユニット(HVAC)やジョイント等)の仕様を大幅に変更しなければならないという問題がある。そのため、設計変更や生産設備変更等の費用がかかり、生産コストが増大する。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、アキュムレータ式冷凍サイクルに適用される減圧装置において、サイクル運転効率の向上を図りつつ、従来のレシーバ式冷凍サイクルに対して他の構成部品の仕様を大幅に変更することなく置き換え可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、冷媒流れの上流側に配置された上流側絞り手段(32)と、上流側絞り手段(32)の下流側に設けられ、上流側絞り手段(32)を通過した冷媒が流入する中間部通路(33)と、中間部通路(33)の下流側に配置され、中間部通路(33)内の冷媒が流入する下流側絞り手段(34)とを備え、上流側絞り手段(32)から中間部通路(33)を介して下流側絞り手段(34)へ至る冷媒通路(313)は、少なくとも1つの屈曲部を有しており、上流側絞り手段(32)は、冷媒を減圧膨張させる上流側絞り通路(321)と、上流側絞り通路(321)の開度を調整する開度調整部(322a)を有する弁体(322)と、弁体(322)が摺動可能に収納された弁室(323)とを備える可変絞りにより構成されており、弁体(322)は、弁室(322)を入口側圧力室(324)と中間側圧力室(325)とに区画する区画部(322b)を有しており、入口側圧力室(324)は、上流側絞り手段(32)に冷媒を流入させる入口側通路(317)および上流側絞り通路(321)と連通し、入口側通路(317)から冷媒が流入するようになっており、中間側圧力室(325)は、中間部通路(33)と中間側圧力室(325)とを連通させる均圧ポート(35)が接続され、中間部通路(33)から冷媒が流入するようになっており、弁体(322)は、区画部(322b)が入口側圧力室(324)と中間側圧力室(325)との圧力差に応じて変位することにより、開度調整部(322a)が上流側絞り通路(321)の開度を調整するように構成されており、下流側絞り手段(34)は、固定絞りにより構成されており、上流側絞り手段(32)、中間部通路(33)および下流側絞り手段(34)は、ブロック状に形成されたボデー部(31)の内部に位置していることを特徴としている。
【0013】
これによれば、可変絞りである上流側絞り手段(32)と、固定絞りである下流側絞り手段(34)の2段の絞り手段を備えることで、上記特許文献1に記載の従来技術と同様に、サイクル運転効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、上流側絞り手段(32)から中間部通路(33)を介して下流側絞り手段(34)へ至る冷媒通路(313)に少なくとも1つの屈曲部を設ける、すなわち上流側絞り手段(32)、中間部通路(33)および下流側絞り手段(34)を同一直線上に配置しないことで、減圧装置の体格を小型化するとともに、上流側絞り手段(32)、中間部通路(33)および下流側絞り手段(34)をブロック状に形成されたボデー部(31)の内部に位置させることで、減圧装置の外形を従来のボックス型膨張弁の外形と同様とすることができる。したがって、レシーバ式冷凍サイクルに対して他の構成部品の仕様を大幅に変更することなく、アキュムレータ式冷凍サイクルに適用することができる。
【0015】
このとき、上流側絞り手段(32)の中間側圧力室(325)と中間部通路(33)とを連通させる均圧ポート(35)を設けることにより、上流側絞り手段(32)、中間部通路(33)および下流側絞り手段(34)が同一直線上に配置されていない場合でも、上流側絞り手段(32)を、その上流側と下流側との圧力差に応じて絞り開度が変更される差圧弁として構成することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の減圧装置において、下流側絞り手段(34)は、冷媒を減圧膨張させる下流側絞り通路(342、342a)が形成された下流側絞り通路形成部材(340)をボデー部(31)に取り付けることにより構成されていてもよい。
【0017】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1に記載の減圧装置において、下流側絞り手段(34)は、ボデー部(31)に冷媒を減圧膨張させる下流側絞り通路を形成することにより構成されていてもよい。これによれば、部品点数を増加させることなく、下流側絞り手段(34)を構成することができる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1に記載の減圧装置において、ボデー部(31)は、被取付部材(5)に取り付けられるようになっており、被取付部材(5)は、ボデー部(31)に向かって突出する突出部(53)を有しており、ボデー部(31)における中間部通路(33)の下流側には、被取付部材(5)の突出部(51)が挿入される挿入穴(312)が形成されており、突出部(51)には、挿入穴(312)に突出部(51)を挿入した状態において、中間部通路(33)から流出した冷媒が流れる冷媒通路(53a)が形成されており、突出部(51)内の冷媒通路(53a)には、冷媒を減圧膨張させる突出部側絞り通路(53b)が設けられており、下流側絞り手段は、突出部側絞り通路(53b)であってもよい。これによれば、部品点数を増加させることなく、下流側絞り手段(34)を構成することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の減圧装置において、弁室(323)には、弁体(322)の中間側圧力室(325)側に配置され、入口側圧力室(324)と中間側圧力室(325)との間をシールする膜状のシール部材(328c)と、シール部材(328c)における中間側圧力室(325)側の面の外周縁部と接触し、ボデー部(31)との間にシール部材(328c)を挟み込んで固定する支持部材(326b)とが設けられていてもよい。
【0020】
また、請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の減圧装置において、弁室(323)と弁体(322)との間には、弾性変形可能な環状のシール部材(328)が配置されており、シール部材(328)により、入口側圧力室(324)と中間側圧力室(325)との間がシールされていてもよい。
【0021】
また、請求項7に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の減圧装置において、弁体(322)は、その摺動方向に第1弁体部(322d)と第2弁体部(322e)とに分割されており、第1弁体部(322d)と第2弁体部(322e)との間には、入口側圧力室(324)と中間側圧力室(325)との間をシールする膜状のシール部材(328a)が配置されていてもよい。
【0022】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の減圧装置において、中間側圧力室(325)には、弁体(322)に対して上流側絞り通路(321)を閉弁させる側に付勢する荷重をかけるバネ(326)が収容されており、ボデー部(31)には、バネ(326)による荷重を調整可能な調整ネジ(326a)が設けられていることを特徴としている。
【0023】
これによれば、減圧装置の製造後においても、バネ(326)による荷重を調整して、上流側絞り手段(32)の上流側絞り通路(321)を開弁するための設定差圧を調整することができる。
【0024】
また、請求項9に記載の発明のように、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の減圧装置において、中間側圧力室(325)には、弁体(322)に対して上流側絞り通路(321)を閉弁させる側に付勢する荷重をかけるバネ(326)が収容されており、ボデー部(31)には、バネ(326)における弁体(322)と反対側の端部を支持するバネ受け部材(326d)がカシメ固定されていてもよい。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る減圧装置3が適用される車両用空調装置を示す構成図である。
【図2】第1実施形態に係る減圧装置3を示す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る減圧装置3を取付ブロック5に取り付けた状態を示す断面図である。
【図4】図2のA矢視図である。
【図5】(a)は第2実施形態に係る減圧装置3の上流側絞り手段32近傍を示す断面図、(b)は第2実施形態に係る減圧装置3のフィルム328aを示す斜視図である。
【図6】第3実施形態に係る減圧装置3の上流側絞り手段32近傍を示す断面図である。
【図7】第4実施形態に係る減圧装置3の上流側絞り手段32近傍を示す断面図である。
【図8】第5実施形態に係る減圧装置3の下流側絞り手段34近傍を示す断面図である。
【図9】第6実施形態に係る減圧装置3の下流側絞り手段34近傍を示す断面図である。
【図10】他の実施形態に係る減圧装置3を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0028】
(第1実施形態)
図1は本第1実施形態に係る減圧装置3が適用される車両用空調装置を示す構成図である。本実施形態の車両用空調装置は、図1に示す室内空調ユニット10等を備えている。まず、室内空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機12、蒸発器13、ヒータコア14等を収容したものである。
【0029】
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱20が配置されている。
【0030】
より具体的には、内外気切替箱20には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口21および外気を導入させる外気導入口22が形成されている。さらに、内外気切替箱20の内部には、内気導入口21および外気導入口22の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア23が配置されている。内外気切替ドア23は、図示しない内外気切替ドア23用の電動アクチュエータによって駆動される。
【0031】
内外気切替箱20の空気流れ下流側には、内外気切替箱20を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)12が配置されている。この送風機12は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機である。
【0032】
送風機12の空気流れ下流側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器13は、圧縮機(コンプレッサ)1、凝縮器2、減圧装置3、アキュムレータ4等とともに、冷凍サイクル30を構成している。
【0033】
圧縮機1は、エンジンルーム内に配置され、冷凍サイクル30において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機1は、図示しないエンジン(内燃機関)から電磁クラッチ等を介して駆動力を得ている。
【0034】
凝縮器2は、エンジンルーム内に配置されて、内部を流通する冷媒と、図示しない送風ファンから送風された車室外空気(外気)とを熱交換させることにより、圧縮された冷媒を凝縮液化させるものである。
【0035】
本実施形態の蒸発器13は、熱交換コア部(図示せず)と、この熱交換コア部の上下両側に位置して水平方向に延びるタンク部(図示せず)とを備えている。熱交換コア部は、上下方向に延びる多数のチューブ(図示せず)を備えている。チューブ内には、熱交換媒体である冷媒が通る通路が形成されている。
【0036】
減圧装置3は、凝縮器2で凝縮した液冷媒を減圧して霧状の気液2相状態とするものである。この減圧装置3は、冷媒流れ方向に2段の絞り手段を配置したもので、その詳細は後述する。
【0037】
蒸発器13は、冷媒と送風空気との熱交換により、減圧装置3で減圧された冷媒を蒸発気化させるものである。アキュムレータ4は、蒸発器13の出口冷媒の液冷媒とガス冷媒とを分離してサイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離手段である。アキュムレータ4のガス冷媒出口には、圧縮機1の冷媒吸入口が接続されている。
【0038】
また、ケーシング11内において、蒸発器13の空気流れ下流側には、蒸発器13通過後の空気を流す加熱用冷風通路16、冷風バイパス通路17といった空気通路、並びに、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17から流出した空気を混合させる混合空間18が形成されている。
【0039】
加熱用冷風通路16には、蒸発器13通過後の空気を加熱するための加熱手段としてのヒータコア14が配置されている。ヒータコア14は、エンジンの冷却水と蒸発器13通過後の空気とを熱交換させて、蒸発器13通過後の空気を加熱する加熱用熱交換器である。
【0040】
一方、冷風バイパス通路17は、蒸発器13通過後の空気を、ヒータコア14を通過させることなく、混合空間18に導くための空気通路である。したがって、混合空間18にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路16を通過する空気および冷風バイパス通路17を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0041】
そこで、本実施形態では、蒸発器13の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17の入口側に、加熱用冷風通路16および冷風バイパス通路17へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させるエアミックスドア19を配置している。
【0042】
さらに、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には、混合空間18から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出す吹出口24〜26が配置されている。この吹出口24〜26としては、具体的に、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口24、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口25、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口26が設けられている。
【0043】
次に、本実施形態の減圧装置3の構成について説明する。
【0044】
図2は本第1実施形態に係る減圧装置3を示す断面図である。図2に示すように、減圧装置3は、ボデー部31、上流側絞り手段32、中間部通路33、下流側絞り手段34、均圧ポート35等を有して構成されている。
【0045】
ボデー部31は、ブロック状に形成されており、減圧装置3の外殻および減圧装置3内の冷媒通路等を構成するものである。より詳細には、ボデー部31は、角柱状あるいは円柱状の金属(本実施形態ではアルミニウム)製のブロックに穴開け加工等を施して形成されている。ボデー部31には、冷媒流入口・流出口311〜316、入口側通路317等が形成されている。
【0046】
冷媒流入口・流出口としては、凝縮器2から流出した高圧冷媒を流入させる第1流入口311、第1流入口311から流入した冷媒を蒸発器13入口側へ流出させる第1流出口312が形成されている。従って、本実施形態では、第1流入口311から第1流出口312へ至る冷媒通路によって、第1冷媒通路313が形成される。
【0047】
また、他の冷媒流入口・流出口として、蒸発器13から流出した低圧冷媒を流入させる第2流入口314、第2流入口314から流入した冷媒をアキュムレータ4の入口側へ流出させる第2流出口315が形成されている。従って、本実施形態では、第2流入口314から第2流出口315へ至る冷媒通路によって、第2冷媒通路316が形成される。
【0048】
第1冷媒通路313には、入口側通路317、上流側絞り手段32、中間部通路33、下流側絞り手段34が設けられている。入口側通路317は、第1流入口311と上流側絞り手段32とを連通し、第1流入口311から流入した冷媒を上流側絞り手段32に流入させるものである。上流側絞り手段32は、入口側通路317から流入した高圧冷媒を減圧膨張させる可変絞り手段である。中間部通路33は、上流側絞り手段32の下流側に設けられ、上流側絞り手段32を通過した冷媒が流入するようになっている。下流側絞り手段34は、中間部通路33の下流側に配置され、中間部通路33から流入した冷媒をさらに減圧膨張させる固定絞り手段である。
【0049】
上流側絞り手段32から中間部通路33を介して下流側絞り手段34へ至る冷媒通路である第1冷媒通路313には、冷媒流れを屈曲させる屈曲部が2つ設けられている。換言すると、上流側絞り手段32、中間部通路33および下流側絞り手段34は、同一直線上に配置されていない。
【0050】
具体的には、上流側絞り手段32の紙面上側に中間部通路33が配置されており、中間部通路33の紙面左側に下流側絞り手段34が配置されている。すなわち、第1流入口311からの冷媒流れは、上流側絞り手段32にて約90°屈曲して中間部通路33に流入し、さらに中間部通路33内で約90°屈曲して下流側絞り手段34に流入するようになっている。換言すると、上流側絞り手段32および中間部通路33において、冷媒流れが屈曲するようになっている。したがって、上流側絞り手段32および中間部通路33が、本発明の屈曲部に相当している。
【0051】
次に、上流側絞り手段32の詳細な構成について説明する。
【0052】
上流側絞り手段32は、冷媒を減圧膨張させる上流側絞り通路321と、上流側絞り通路321の開度を調整する開度調整部322aを有する弁体322と、弁体322が摺動可能に収納された弁室323とを備えて構成されている。
【0053】
弁体322は、弁室323を後述する入口側圧力室324と中間側圧力室325とに区画する区画部322bを有している。この区画部322bは、接続部322cを介して開度調整部322aに接続されている。開度調整部322aは、球状に形成されている。
【0054】
開度調整部322a、接続部322cおよび区画部322bは、この順に同一直線上に配置されており、ステンレス等の金属により一体に形成されている。また、開度調整部322a、接続部322cおよび区画部322bの配置方向は、弁体322の摺動方向と平行になっている。
【0055】
入口側圧力室324は、区画部322bの上流側絞り通路321側に配置されている。入口側圧力室324は、入口側通路317および上流側絞り通路321を連通するものであり、入口側通路317から冷媒が流入するようになっている。
【0056】
入口側圧力室324における入口側通路317との接続部、および入口側圧力室324における上流側絞り通路321との接続部は、同一直線上に配置されていない。したがって、入口側圧力室324において、冷媒流れが屈曲するようになっている。
【0057】
中間側圧力室325は、区画部322bの上流側絞り通路321と反対側に配置されている。中間側圧力室325には、一端部が中間部通路33に接続された均圧ポート35の他端部が接続されている。この均圧ポート35は、中間部通路33と中間側圧力室325とを連通し、中間部通路33から中間側圧力室325に冷媒を流入させるための冷媒通路である。本実施形態では、均圧ポート35は、弁体322の摺動方向と平行に延びている。
【0058】
なお、弁体322の区画部322bは弁室323に摺動可能に支持されているので、区画部322bと弁室323との摺動部には隙間が構成される。そこで、本実施形態では、摺動部から冷媒が漏れないように、弾性変形可能な環状のシール部材であるゴム製のOリング328を介して、区画部322bを弁室323に摺動可能に支持している。すなわち、Oリング328により、入口側圧力室324と中間側圧力室325との間をシールしている。
【0059】
また、中間側圧力室325には、コイルバネ326が収容されている。このコイルバネ326は、弁体322(開度調整部322a)に対して上流側絞り通路321を閉弁させる側に付勢する荷重をかけている。さらに、コイルバネ326による荷重は、調整ネジ326aによって調整可能となっている。
【0060】
以上により、弁体322の区画部322bの入口側圧力室324側の面が、入口側圧力室324の冷媒圧力を受ける受圧部となり、区画部322bの中間側圧力室325側の面が、コイルバネ326の荷重と中間側圧力室325の冷媒圧力を受ける受圧部となる。そして、区画部322bが入口側圧力室324と中間側圧力室325との圧力差に応じて変位することにより、区画部322bと一体に形成された開度調整部322aも変位し、これにより上流側絞り通路321の開度が変更される。
【0061】
また、入口側圧力室324には、一端部が中間部通路33に接続されたブリードポート327の他端部が接続されている。ブリードポート327は、入口側圧力室324と中間部通路33とを連通する冷媒通路である。本実施形態では、ブリードポート327は、中間部通路33側からボデー部31に直径0.5〜0.8mm程度の穴を開けることにより形成されている。
【0062】
このため、弁体322の開度調整部322aにより上流側絞り通路321が全閉された場合でも、ブリードポート327を介して、入口側圧力室324から中間部通路33に冷媒およびオイルを流すことができる。その結果、冷媒流量が所定流量に増加するまでの小流量時には、上流側絞り手段32を閉塞状態、すなわち上流側絞り通路321を全閉状態に維持して、小流量時における上流側絞り手段32のハンチングを防止できる。
【0063】
中間部通路33は、第1冷媒通路313における上流側絞り手段32と下流側絞り手段34との間に配置されている。中間部通路33における上流側絞り手段32の上流側絞り通路321との接続部、および中間部通路33における下流側絞り手段34との接続部は、同一直線上に配置されていない。したがって、中間部通路33において、冷媒流れが屈曲するようになっている。また、中間部通路33には、均圧ポート35の一端部、およびブリードポート327の一端部が接続されている。
【0064】
下流側絞り手段34は、第1通路341、下流側絞り通路342および第2通路343が形成された下流側絞り通路形成部材340を、ボデー部31の第1流出口312に取り付けることにより形成されている。すなわち、下流側絞り手段34は、ボデー部31とは別体に構成された下流側絞り通路形成部材340を、ボデー部31に取り付けることにより構成されている。
【0065】
第1通路341は、中間部通路33と連通しており、中間部通路33から冷媒が流入するようになっている。下流側絞り通路342は、中間部通路33から第1通路341を介して流入した冷媒を減圧膨張させるものであり、ノズル状に形成されている。第2通路343は、下流側絞り通路342で減圧膨張された冷媒を減圧装置3の外部へ流出させるようになっている。本実施形態では、第2通路343は、後述する取付ブロック5内の入口側通路51と連通しており、下流側絞り通路342で減圧膨張された冷媒を入口側通路51へ流出させるようになっている。
【0066】
以上の説明から明らかなように、上流側絞り手段32、中間部通路33および下流側絞り手段34は、ブロック状に形成されたボデー部31の内部に位置している。
【0067】
図3は、本第1実施形態に係る減圧装置3を取付ブロック5に取り付けた状態を示す断面図である。図3に示すように、減圧装置3は、被取付部材としての取付ブロック5に取り付けられている。この取付ブロック5は、ブロック状に形成されており、蒸発器13のタンク部に取り付けられている。
【0068】
取付ブロック5には、入口側通路51および出口側通路52が形成されている。入口側通路51は、蒸発器13の入口側に接続され、減圧装置3にて減圧された冷媒を蒸発器13に流入させる冷媒通路である。出口側通路52は、蒸発器13の出口側に接続され、蒸発器13出口冷媒が通過する冷媒通路である。本実施形態では、入口側通路51と出口側通路52とが平行になっている。
【0069】
また、取付ブロック5は、減圧装置3側に突出する第1突出部53および第2突出部54を有している。第1突出部53は、減圧装置3の第1流出口312に挿入されて嵌合するようになっている。第1突出部53と第1流出口312との間には、Oリング55が設けられている。このOリング55により、第1突出部53と第1流出口312との間をシールしている。
【0070】
第1突出部53には、減圧装置3の下流側絞り通路形成部材340が挿入されて嵌合する第1貫通孔53aが形成されている。第1貫通孔53aは、入口側通路51の一部を構成している。これにより、減圧装置3の下流側絞り手段34の第2通路343が、取付ブロック5の入口側通路51と連通し、下流側絞り通路342で減圧膨張された冷媒が入口側通路51に流入する。
【0071】
下流側絞り通路形成部材340と第1貫通孔53aとの間には、Oリング56が設けられている。このOリング56により、下流側絞り通路形成部材340と第1貫通孔53aとの間をシールしている。
【0072】
第2突出部54は、減圧装置3の第2流入口314に挿入されて嵌合するようになっている。第2突出部54と第2流入口314との間には、Oリング57が設けられている。このOリング57により、第2突出部54と第2流入口314との間をシールしている。
【0073】
第2突出部54には、第2貫通孔54aが形成されており、この第2貫通孔54aは、出口側通路52の一部を構成している。これにより、取付ブロック5の出口側通路52と減圧装置3の第2冷媒通路316とが連通し、蒸発器13出口冷媒が、取付ブロック5の出口側通路52を介して、減圧装置3の第2冷媒通路316に流入する。
【0074】
また、減圧装置3の第1流入口311には、減圧装置3と凝縮器2(図1参照)とを繋ぐ配管6が接続されている。
【0075】
図4は図2のA矢視図である。図4に示すように、ボデー部31における第1流入口311および第2流出口315が形成される面には、ボルト孔36が設けられている。ボルト孔36は、ボルト(図示せず)を貫通するために設けられている。ボルトは、ボルト孔36に貫通した状態で、ボデー部31を取付ブロック5に締結する。これにより、減圧装置3は、取付ブロック5に固定される。
【0076】
以上説明したように、本実施形態の減圧装置3では、上流側絞り手段32から中間部通路33を介して下流側絞り手段34へ至る冷媒通路である第1冷媒通路313に冷媒流れを屈曲させる屈曲部を設ける、すなわち上流側絞り手段32、中間部通路33および下流側絞り手段34を同一直線上に配置しないことで、減圧装置3の体格を小型化することができる。さらに、上流側絞り手段32、中間部通路33および下流側絞り手段34をブロック状に形成されたボデー部31の内部に位置させることで、減圧装置3の外形を従来のボックス型膨張弁の外形と同様とすることができる。したがって、レシーバ式冷凍サイクルに対して他の構成部品の仕様を大幅に変更することなく、アキュムレータ式冷凍サイクルに適用することができる。
【0077】
また、上流側絞り手段32の中間側圧力室325と中間部通路33とを連通させる均圧ポート35を設けることにより、本実施形態のように上流側絞り手段32、中間部通路33および下流側絞り手段34が同一直線上に配置されていない場合でも、上流側絞り手段32を、その上流側(すなわち入口側圧力室324)と下流側(すなわち中間部通路33)との圧力差に応じて絞り開度が変更される差圧弁として構成することができる。
【0078】
また、減圧装置3に、可変絞りである上流側絞り手段32と、固定絞りである下流側絞り手段34の2段の絞り手段を設けることで、上記特許文献1に記載の従来技術と同様に、サイクル運転効率の向上を図ることができる。
【0079】
すなわち、固定絞りである下流側絞り手段34は、冷媒の乾き度の微小域(例えば、乾き度0<x<0.1)において流量変化が大きい(流量調整ゲインが大きい)という特徴を有しているので、上流側絞り手段32により凝縮器2出口冷媒を所定量減圧して微小乾き度域に変化させ、この微小乾き度域にある気液2相冷媒を下流側絞り手段34に流入させ、再度減圧するようにしている。
【0080】
これによれば、下流側絞り手段34では、丁度、流量調整ゲインの大きい冷媒状態にて冷媒流量調整作用を行うことができる。特に、本実施形態では、上流側絞り手段32を可変絞りとしているので、凝縮器2出口冷媒の状態変化に応じて上流側絞り手段32の絞り開度を調整して、下流側絞り手段34の流量調整作用にとって適切な乾き度状態を作り出すことができる。
【0081】
その結果、冷凍サイクル運転条件の広範な変動に対しても、凝縮器2出口冷媒の過冷却度の微小変化幅により冷媒流量を広範囲に調整できる。このため、凝縮器2出口冷媒の過冷却度をサイクル運転の高効率化のための適切な範囲に維持して、サイクル運転の高効率化と冷房性能の確保を達成できる。
【0082】
また、中間側圧力室325に、弁体322に対して上流側絞り通路321を閉弁させる側に付勢する荷重をかけるコイルバネ326を収容するとともに、ボデー部31にコイルバネ32による荷重を調整可能な調整ネジ326aを設けることで、減圧装置3の製造後においても、調整ネジ326aを回すことでコイルバネ326による荷重を調整して、上流側絞り手段32の上流側絞り通路321を開弁するための設定差圧を調整することができる。
【0083】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図5に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、上流側絞り手段32の構造、より詳細には弁体322の形状、および入口側圧力室324と中間側圧力室325との間のシール構造が異なっている。
【0084】
図5(a)は本第2実施形態に係る減圧装置3の上流側絞り手段32近傍を示す断面図、図5(b)は本第2実施形態に係る減圧装置3のフィルム328aを示す斜視図である。
【0085】
図5(a)、(b)に示すように、本実施形態における弁体322の区画部322bは、弁体322の摺動方向に、第1区画部322dおよび第2区画部322eの2つに分割されている。第1区画部322dは入口側圧力室324側に配置されており、第2区画部322eは中間側圧力室325側に配置されている。
【0086】
本実施形態の弁室323は円筒状に形成されている。また、第1区画部322dと第2区画部322eとの間には、膜状のシール部材としてのフィルム328aが設けられている。このフィルム328aは、その中心部に貫通穴328bを有するドーナツ状(リング状)に形成されている。フィルム328aの外径は、弁室323の内径より若干大きくなっており、フィルム328aの外周端部は、全周に亘って弁室323の内壁面に接触している。したがって、このフィルム328aにより、入口側圧力室324と中間側圧力室325との間をシールすることができる。
【0087】
第1区画部322dおよび第2区画部322eには、ネジ322fが貫通されるネジ孔(図示せず)が形成されている。第1区画部322dと第2区画部322eとは、フィルム328aを挟んだ状態で、ネジ322fにより接合されている。なお、ネジ322fは、フィルム328aの貫通穴328bの内部を貫通している。
【0088】
本実施形態によれば、薄い膜状のシール部材であるフィルム328aにより、入口側圧力室324と中間側圧力室325との間をシールすることができる。このため、上記第1実施形態の上流側絞り手段32に対して、軽量化を図りつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0089】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図6に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記第1実施形態と比較して、上流側絞り手段32の構造、より詳細には入口側圧力室324と中間側圧力室325との間のシール構造が異なっている。
【0090】
図6は、本第3実施形態に係る減圧装置3の上流側絞り手段32近傍を示す断面図である。図6に示すように、弁室323における弁体322の中間側圧力室325側には、膜状のシール部材としてのフィルム328cが配置されている。このフィルム328cは、ボデー部31と、調整ネジ326bとに挟まれた状態で固定されている。すなわち、本実施形態の調整ネジ326bは、フィルム328cにおける中間側圧力室325側の面の外周縁部と接触し、ボデー部31との間にフィルム328cを挟み込んで固定する支持部材としての役割を果たす。
【0091】
コイルバネ326は、フィルム328cを介して区画部322bに荷重をかけるようになっている。調整ネジ326bには、中間側圧力室325と均圧ポート35とを連通させるための貫通孔326cが設けられている。
【0092】
なお、本実施形態の減圧装置3において、通常、弁体322は0.5〜1mm程度しか摺動しないので、弁体322の摺動によりフィルム328cが破れることはない。
【0093】
本実施形態によれば、薄い膜状のシール部材であるフィルム328cにより、入口側圧力室324と中間側圧力室325との間をシールすることができる。このため、上記第1実施形態の上流側絞り手段32に対して、軽量化を図りつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0094】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図7に基づいて説明する。本第4実施形態は、上記第1実施形態に対して、調整ネジ326bを廃止する代わりに、バネ受けプラグ326dを追加したものである。この減圧装置3は、例えば減圧装置3の製造後に上流側絞り手段32の上流側絞り通路321を開弁するための設定差圧を調整する必要がない場合に適用されるものである。
【0095】
図7は、本第4実施形態に係る減圧装置3の上流側絞り手段32近傍を示す断面図である。図7に示すように、本実施形態のコイルバネ326における弁体322と反対側の端部は、樹脂製のバネ受け部材326dにより支持されている。そして、ゴム製のパッキン326eをボデー部31とバネ受け部材326dとの間に挟んだ状態で、ボデー部31に設けられた突起片31aをバネ受け部材326dに押し付けるように塑性変形させて、バネ受け部材326dをボデー部31にカシメ固定している。
【0096】
本実施形態によれば、バネ受け部材326dをボデー部31にカシメ固定するだけで、コイルバネ326の弁体322と反対側の端部を支持することができるので、上記第1実施形態の上流側絞り手段32に対して、構成の簡素化を図りつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0097】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図8に基づいて説明する。本第5実施形態は、上記第1実施形態と比較して、下流側絞り手段34の構造が異なっている。
【0098】
図8は、本第5実施形態に係る減圧装置3の下流側絞り手段34近傍を示す断面図である。図8に示すように、本実施形態の下流側絞り手段34は、下流側絞り通路342aが形成された下流側絞り通路形成部材340aを、中間部通路33の第1流出口312側の端部に取り付けることにより形成されている。下流側絞り通路342aは、ノズル形状に形成されている。
【0099】
下流側絞り通路形成部材340aの外周面には、ボデー部31とネジ結合を行うためのネジ部340bが形成されている。下流側絞り通路形成部材340aの第1流出口312側の面には、六角形状の六角穴340cが形成されている。この六角穴340cは、下流側絞り通路形成部材340aをボデー部31にネジ結合する際に、六角レンチ等が装着されるようになっている。
【0100】
本実施形態によれば、下流側絞り通路342aが形成された下流側絞り通路形成部材340aをボデー部31にネジ結合するだけで、下流側絞り手段34を構成することができるので、上記第1実施形態の下流側絞り手段34に対して、構成の簡素化を図りつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0101】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図9に基づいて説明する。本第6実施形態は、上記第1実施形態に対して、下流側絞り通路形成部材340を廃止する代わりに、取付ブロック5の第1突出部53の内部に下流側絞り通路53bを形成している。
【0102】
図9は、本第6実施形態に係る減圧装置3の下流側絞り手段34近傍を示す断面図である。図9に示すように、取付ブロック5の第1突出部53は、ボデー部31の第1流出口312に挿入されている。なお、第1流出口312が本発明の挿入穴に相当している。
【0103】
第1突出部53の内部には、中間部通路33から流出した冷媒が流れる冷媒通路としての第1貫通孔53aが形成されている。第1貫通孔53aには、中間部通路33から流出した冷媒を減圧膨張させる突出部側絞り通路53bが形成されている。突出部側絞り通路53bは、ノズル形状に形成されており、ボデー部31を取付ブロック5に取り付けた状態において、ボデー部31の内部に配置されている。
【0104】
本実施形態によれば、下流側絞り通路形成部材340を廃止して、取付ブロック5の第1突出部53の内部に下流側絞り通路53bを形成しているので、上記第1実施形態の下流側絞り手段34に対して、部品点数を低減しつつ、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
【0105】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0106】
(1)上述の各実施形態では、ボデー部31に第2流入口314、第2流出口315および第2冷媒通路316を形成し、蒸発器13から流出した低圧冷媒を第2冷媒通路316を介してアキュムレータ4の入口側へ流出させるように構成した例について説明したが、これに限らず、図10に示すように、ボデー部31に第2流入口314、第2流出口315および第2冷媒通路316を形成しなくてもよい。この場合、蒸発器13の出口とアキュムレータ4の入口とを別の配管によって接続すればよい。
【0107】
(2)上述の第1、4〜6実施形態では、上流側絞り手段32の入口側圧力室324と中間側圧力室325との間を、ゴム製のOリング328によりシールした例について説明したが、これに限らず、樹脂製のピストンリングによりシールしてもよい。また、Oリングやピストンリング等のシール部材を配置せず、弁体322の区画部322bと弁室323との摺動部の距離(シール長さ)を充分に確保することにより、摺動部から冷媒が漏れないようにしてもよい。
【0108】
(3)上述の各実施形態では、下流側絞り手段34の下流側絞り通路342、342a又は突出部側絞り通路53bをノズル形状に形成した例について説明したが、これに限らず、オリフィス形状に形成してもよい。
【0109】
(4)上述した第1〜5実施形態では、下流側絞り手段34を、下流側絞り通路形成部材340、340aをボデー部31に取り付けることにより構成した例について説明したが、これに限らず、ボデー部31に穴開け加工等を施して、冷媒を減圧膨張させる下流側絞り通路を形成することにより構成してもよい。
【0110】
(5)上述した各実施形態は、可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0111】
31 ボデー部
32 上流側絞り手段
33 中間部通路
34 下流側絞り手段
35 均圧ポート
321 上流側絞り通路
322 弁体
322a 開度調整部
322b 区画部
323 弁室
324 入口側圧力室
325 中間側圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルの高圧側冷媒を減圧する減圧装置であって、
冷媒流れの上流側に配置された上流側絞り手段(32)と、
前記上流側絞り手段(32)の下流側に設けられ、前記上流側絞り手段(32)を通過した冷媒が流入する中間部通路(33)と、
前記中間部通路(33)の下流側に配置され、前記中間部通路(33)内の冷媒が流入する下流側絞り手段(34)とを備え、
前記上流側絞り手段(32)から前記中間部通路(33)を介して前記下流側絞り手段(34)へ至る冷媒通路(313)は、少なくとも1つの屈曲部を有しており、
前記上流側絞り手段(32)は、
冷媒を減圧膨張させる上流側絞り通路(321)と、
前記上流側絞り通路(321)の開度を調整する開度調整部(322a)を有する弁体(322)と、
前記弁体(322)が摺動可能に収納された弁室(323)とを備える可変絞りにより構成されており、
前記弁体(322)は、前記弁室(322)を入口側圧力室(324)と中間側圧力室(325)とに区画する区画部(322b)を有しており、
前記入口側圧力室(324)は、前記上流側絞り手段(32)に冷媒を流入させる入口側通路(317)および前記上流側絞り通路(321)と連通し、前記入口側通路(317)から冷媒が流入するようになっており、
前記中間側圧力室(325)は、前記中間部通路(33)と前記中間側圧力室(325)とを連通させる均圧ポート(35)が接続され、前記中間部通路(33)から冷媒が流入するようになっており、
前記弁体(322)は、前記区画部(322b)が前記入口側圧力室(324)と前記中間側圧力室(325)との圧力差に応じて変位することにより、前記開度調整部(322a)が前記上流側絞り通路(321)の開度を調整するように構成されており、
前記下流側絞り手段(34)は、固定絞りにより構成されており、
前記上流側絞り手段(32)、前記中間部通路(33)および前記下流側絞り手段(34)は、ブロック状に形成されたボデー部(31)の内部に位置していることを特徴とする減圧装置。
【請求項2】
前記下流側絞り手段(34)は、冷媒を減圧膨張させる下流側絞り通路(342、342a)が形成された下流側絞り通路形成部材(340)を前記ボデー部(31)に取り付けることにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の減圧装置。
【請求項3】
前記下流側絞り手段(34)は、前記ボデー部(31)に冷媒を減圧膨張させる下流側絞り通路を形成することにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の減圧装置。
【請求項4】
前記ボデー部(31)は、被取付部材(5)に取り付けられるようになっており、
前記被取付部材(5)は、前記ボデー部(31)に向かって突出する突出部(53)を有しており、
前記ボデー部(31)における前記中間部通路(33)の下流側には、前記被取付部材(5)の前記突出部(51)が挿入される挿入穴(312)が形成されており、
前記突出部(51)には、前記挿入穴(312)に前記突出部(51)を挿入した状態において、前記中間部通路(33)から流出した冷媒が流れる冷媒通路(53a)が形成されており、
前記突出部(51)の前記冷媒通路(53a)には、冷媒を減圧膨張させる突出部側絞り通路(53b)が設けられており、
前記下流側絞り手段は、前記突出部側絞り通路(53b)であることを特徴とする請求項1に記載の減圧装置。
【請求項5】
前記弁室(323)には、
前記弁体(322)の前記中間側圧力室(325)側に配置され、前記入口側圧力室(324)と前記中間側圧力室(325)との間をシールする膜状のシール部材(328c)と、
前記シール部材(328c)における前記中間側圧力室(325)側の面の外周縁部と接触し、前記ボデー部(31)との間に前記シール部材(328c)を挟み込んで固定する支持部材(326b)とが設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の減圧装置。
【請求項6】
前記弁室(323)と前記弁体(322)との間には、弾性変形可能な環状のシール部材(328)が配置されており、
前記シール部材(328)により、前記入口側圧力室(324)と前記中間側圧力室(325)との間がシールされていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の減圧装置。
【請求項7】
前記弁体(322)は、その摺動方向に第1弁体部(322d)と第2弁体部(322e)とに分割されており、
前記第1弁体部(322d)と前記第2弁体部(322e)との間には、前記入口側圧力室(324)と前記中間側圧力室(325)との間をシールする膜状のシール部材(328a)が配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の減圧装置。
【請求項8】
前記中間側圧力室(325)には、前記弁体(322)に対して前記上流側絞り通路(321)を閉弁させる側に付勢する荷重をかけるバネ(326)が収容されており、
前記ボデー部(31)には、前記バネ(326)による荷重を調整可能な調整ネジ(326a)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の減圧装置。
【請求項9】
前記中間側圧力室(325)には、前記弁体(322)に対して前記上流側絞り通路(321)を閉弁させる側に付勢する荷重をかけるバネ(326)が収容されており、
前記ボデー部(31)には、前記バネ(326)における前記弁体(322)と反対側の端部を支持するバネ受け部材(326d)がカシメ固定されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の減圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−133168(P2011−133168A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292849(P2009−292849)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】