説明

減肉の発生した配管を模した試験体、試験体の作成方法、試験方法

【課題】配管内部の減肉の進行状況と、配管に発生した振動との関係を特定するための試験に用いられる減肉の発生した配管を模した試験体を提供する。
【解決手段】減肉の発生した配管を模した試験体1は、減肉の発生した配管と略同径の一対の配管10と、一対の配管10の間に介装された、少なくとも一部の内径が配管10よりも大きい模擬配管11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内部の減肉の進行状況と、配管に発生した振動との関係を調べる試験に用いられる減肉の発生した配管を模した試験体及びその作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電所には配管が張り巡らされ、蒸気や冷却水などの気体又は液体が配管内部を通って輸送されている。このように気体や液体が通過する配管内部には気体や液体の流れの影響により配管の厚さが減少する現象(減肉)が発生する。減肉が発生すると、その箇所の強度が低下してしまい、配管の破裂などの原因となる。そこで、配管の肉厚を測定するため、例えば、特許文献1には、配管に超音波センサを押し当てながら配管に沿って上下方向にスライドすることにより、効率的かつ精度良く配管減肉量を測定するための装置が記載されている。
【特許文献1】特開2006−308555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、発電所には多数の配管があるため、上記の装置によりこれらの配管全ての配管減肉量を測定するには非常に手間がかかる。そこで、発明者らは、発電所内の各配管に振動計を設置しておき、振動計で測定された振動に基づき減肉の有無の判定を行うことを試みている。
ここで、このように減肉の有無の判定を配管の振動に基づき行うためには、試験的に減肉の発生状況と配管の振動との関係を特定し、配管に生じた振動に基づく減肉の有無の判定手法を確立しなければならない。従来、このような試験を行う場合には、発電所の減肉の生じた配管を取り外して、この取り外した配管を試験体として用いていた。しかしながら、この方法では、その都度、発電所を停止させて配管を取り外さなければならないという問題がある。
そこで、減肉の発生した配管を模した試験用の配管を作製し、この試験用の配管を用いることが考えられる。しかし、減肉が発生した状況を再現するために配管の内部を研削するには高い技術が必要となり、作製に手間とコストがかかる。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、配管内部の減肉の進行状況と、配管に発生した振動との関係を特定するための試験に用いられる減肉の発生した配管を模した試験体及びその作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の試験体は、減肉の発生した配管を模した試験体であって、前記減肉の発生した配管と略同径の一対の第1の配管と、前記一対の第1の配管の間に介装された、少なくとも一部の内径が前記第1の配管よりも大きい第2の配管とを備えることを特徴とする。
【0006】
上記の試験体において、前記第2の配管の内径は略一定であっても良い。また、前記第1の配管の接合端部の内面に、前記接合端部に向かって前記第1の配管の内径から第2の配管の内径へと次第に拡径するような傾斜が設けられていてもよい。
また、上記の試験体において、前記第2の配管は、接合端部における内径が前記第1の配管の内径と略等しく、中央に向かって次第に拡径していてもよい。
【0007】
また、本発明の試験方法は、配管の減肉の有無と、配管に発生する振動との関係を特定するための試験方法であって、前記第2の配管の内径が異なる複数の上記の試験体に、所定の圧力及び流速となるように調整した流体を流し込み、前記各試験体において発生する振動を測定し、この測定結果と前記第2の配管の内径に基づき配管の減肉の有無と、配管に発生する振動との関係を特定することを特徴とする。
【0008】
なお、本発明は、減肉の発生した配管を模した試験体の作製方法であって、前記装置の判定の対象となる配管と略同径の一対の第1の配管の間に少なくとも一部の内径が前記第1の配管よりも大きな第2の配管を介装することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡単な技術で試験体を作製することができるため、手間及びコストを削減できる。また、減肉状態の異なる試験体を容易に作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の減肉の発生した配管を模した試験体及びその作製方法の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の試験体1を示す断面図である。本実施形態の試験体は、例えば、発電所などにおける流体配管に減肉が発生しているか否かを配管に生じた振動に基づき判定する方法を確立するために、減肉の進行状況と配管に生じた振動との関係を調べる試験に用いられるものであり、減肉の生じた配管を模したものである。
図1に示すように、本実施形態の試験体1は、発電所などの配管と略同径の配管10と、配管10の間に介装された模擬配管11とからなる。模擬配管11には、外径が配管10と略等しく、内径が配管10に比べて大きい配管が用いられている。配管10と模擬配管11とは溶接接合12により接続されている。また、配管10の模擬配管11との接合端部は、模擬配管11に向かって次第に拡径するように斜めに研削されている。
【0011】
試験体1は、配管10の中間部を切除し、配管10の切除した端部を模擬配管11の内径と等しくなるまで拡径するように研削し、中間部を切除することにより分割された一対の配管の間に、切除した部分と同じ長さの模擬配管11を介装させて、接合部を溶接接合することにより作製できる。なお、内径の異なる配管を模擬配管11として用いることにより、減肉の進行状況の異なる条件を再現することができる。
【0012】
以下、上記のように作製した模擬配管11を用いて、減肉の有無と配管に生じる振動との関係を特定する試験について説明する。
図2は、減肉の発生した配管に生じる振動を再現するための試験装置20の構成図である。同図に示すように、試験装置20は、水中ポンプ21及び昇圧ポンプ22と、試験体1とが配管26により接続されて構成され、配管26には、圧力計23と、流量計24と調整バルブ25とが取り付けられている。試験体1には、水中ポンプ21により吸い上げられ、昇圧ポンプ22により加圧された流体が流れ込む。また、試験体1に流れる流体の流量は調整バルブ25により調整することができる。
【0013】
配管の減肉の有無と振動との関係を特定する試験を行う際には、予め、発電所の配管内部における流体の圧力や流量を測定しておき、試験体1を流れる流体の圧力及び流量が測定した結果と等しくなるように昇圧ポンプ22及び調整バルブ25を調整しておく。これにより、試験体1内の流体の圧力や流量が実際の発電所の配管内部と略等しくなり、実際の発電所における減肉の生じた配管に生じる振動を再現することができる。
次に、上記の方法により減肉の進行状況の異なる試験体1を作成し、各試験体1を試験装置20に取り付けて、試験体1に発生した振動を振動計により測定する。測定された振動をウェーブレット変換などにより分析し、減肉の進行状況と、減肉の発生した配管に発生する振動との関係を比較する。これにより、配管における減肉の有無を配管の振動に基づいて判定する判定手法を確立することができる。
【0014】
本実施形態の試験体1によれば、内径の異なる模擬配管11を配管10に接続するだけで、減肉の発生した配管を模した試験体を作製することができる。このため、試験体1の作製にかかる手間とコストを削減することができる。また、試験体1を用いることにより、異なる減肉の進行状況における振動を容易に再現することができるため、発電所などの配管に生じる振動に基づき減肉の有無を判定する方法を確立することができる。
【0015】
なお、本実施形態では、模擬配管11として、配管10に比べて内径の大きな配管を用いる構成としたが、これに限らず、例えば、図3に示すように、両端の内径は発電所などの配管と略等しく、中央に向かって次第に拡径するように内部を加工した配管13を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態の試験体を示す断面図である。
【図2】減肉測定装置の検討を行うための試験装置を示す図である。
【図3】別の実施形態の試験体を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
1 試験体
10 配管
11 模擬配管
12 溶接接続
13 配管
20 試験装置
21 水中ポンプ
22 昇圧ポンプ
23 圧力計
24 流量計
25 調整バルブ
26 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減肉の発生した配管を模した試験体であって、
前記減肉の発生した配管と略同径の一対の第1の配管と、
前記一対の第1の配管の間に介装された、少なくとも一部の内径が前記第1の配管よりも大きい第2の配管とを備えることを特徴とする試験体。
【請求項2】
前記第2の配管の内径は略一定であることを特徴とする請求項1記載の試験体。
【請求項3】
前記第1の配管の接合端部の内面に、
前記接合端部に向かって前記第1の配管の内径から第2の配管の内径へと次第に拡径するような傾斜が設けられていることを特徴とする請求項2記載の試験体。
【請求項4】
請求項1記載の試験体であって、
前記第2の配管は、接合端部における内径が前記第1の配管の内径と略等しく、中央に向かって次第に拡径していることを特徴とする試験体。
【請求項5】
配管の減肉の有無と、配管に発生する振動との関係を特定するための試験方法であって、
前記第2の配管の内径が異なる複数の請求項1から4何れかに記載の試験体に、
所定の圧力及び流速となるように調整した流体を流し込み、
前記試験体において発生する振動を測定し、
測定結果と前記第2の配管の内径に基づき配管の減肉の有無と、配管に発生する振動との関係を特定することを特徴とする試験方法。
【請求項6】
減肉の発生した配管を模した試験体の作製方法であって、
前記装置の判定の対象となる配管と略同径の一対の第1の配管の間に少なくとも一部の内径が前記第1の配管よりも大きな第2の配管を介装することを特徴とする試験体の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−241356(P2008−241356A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79910(P2007−79910)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】