説明

減速装置

【課題】組み立て及び運搬作業が容易で、施工性及びメンテナンス性の向上を図るとともに、入力軸が減速機構側の歯との噛み合いにおいて干渉を生じ難く入力駆動力を安定して効率よく伝達できる減速装置を提供する。
【解決手段】リング状の入力側シール部材14が、モータ出力軸100aが挿入される軸挿入孔21bにおいて、ケース12内の潤滑油を封止するように、ケース12に対して取り付けられる。入力軸13には、モータ出力軸100aに嵌合により連結される入力側連結部13aと、減速機構11に対して駆動力を伝達する入力ギア部13bとが設けられる。入力側シール部材14は、入力側連結部13aの側面に対して全周に亘って密着して当接する。入力軸13は、入力ギア部13aが設けられた端部にて、減速機構11に向かう軸方向の移動が規制された状態で回転自在に支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油が封止されたケースの内側に減速機構が配置され、ケースに取り付けられた電動機の出力軸に連結される入力軸から入力された駆動力を減速機構により減速してピニオンから出力する減速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種産業用機械等においては、潤滑油が封止されたケースの内側に減速機構が配置され、ケースに取り付けられた電動機の出力軸に連結される入力軸から入力された駆動力を減速機構により減速してピニオンから出力する減速装置が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に開示された減速装置は、風車用の減速装置として用いられ、円筒体(11)及び上カバー(14)によって構成されたケース(外側ケース15)の内側には、出力軸(基台部22)にピニオン(伝達歯車75)が固定された揺動減速機構が配置され、潤滑油が封止されている。そして、この減速装置においては、ケースの上カバーに電動機が取り付けられ、この電動機の出力軸(46)であるモータ出力軸が、中間軸(47)にカップリングにより連結されている。この中間軸は、遊星歯車減速機構(61)及び回転軸(55)を介して揺動減速機構に駆動力を伝達するように構成されている。この中間軸が、上記の減速装置において、モータ出力軸に連結されて駆動力が入力される直接の入力軸を構成している。
【0003】
また、特許文献1に開示された減速装置においては、ケースの上カバーの内部において、内側に向かってフランジ状に形成された環状の内壁が設けられている。そして、上記の中間軸は、この内壁に対して、貫通するよう配置されるとともに、その軸方向の中央部分において軸受(48)を介して回転自在に支持されている。尚、この内壁においては、中間軸の周囲に密着してケース内の潤滑油を封止するオイルシール(50)も取り付けられている。また、中間軸は、減速機構側の端部においても軸方向の移動が規制された状態で回転自在に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4004256号公報(第3−5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された減速装置は、モータ出力軸と連結される入力軸(中間軸47)が、ケースの内側のフランジ状の内壁に取り付けられた軸受によって支持されるとともにケースの内側においてカップリングによってモータ出力軸と連結される。このため、入力軸とモータ出力軸とを連結して組み立てる作業が難しく手間を要するという問題がある。そして、減速装置に入力軸が設置された状態で入力軸とモータ出力軸とを連結する作業も困難であり、減速装置と電動機とを分離した状態で減速装置及び電動機が据付けられる施工現場に運搬してその施工現場で組み立てることが難しく、施工性の低下を招いてしまうという問題がある。更に、減速装置と電動機とを一体のまま運搬することが必要となると、運搬作業の制約を増大させてしまう要因ともなる。また、据付けられて使用が開始された後に電動機に故障が発生した場合、上記のように、減速装置に入力軸が設置された状態で入力軸とモータ出力軸とを連結する作業が困難であるため、減速装置の分解作業も必要となり、電動機をすぐに交換するメンテナンス作業が難しくなってしまうという問題がある。従って、組み立て及び運搬作業が容易で、施工性及びメンテナンス性に優れた減速装置が望まれる。また、特許文献1の減速装置では、入力軸は、モータ出力軸に連結される
とともに反対側である減速機構側の端部で支持されることに加え、ケースの内部でフランジ状に形成された内壁に取り付けられた軸受によっても中央部分で回転自在に支持される。このため、支持位置が中央部分にも設けられて多くなることに伴って、各支持位置間において軸心の歪みが生じ易くなる虞があり、入力軸の回転動作の際に減速機構側の歯との噛み合いにおいて干渉を生じてしまい易いという問題がある。この場合、入力駆動力が安定して効率よく伝達されることが損なわれてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、組み立て及び運搬作業が容易で、施工性及びメンテナンス性の向上を図るとともに、入力軸が減速機構側の歯との噛み合いにおいて干渉を生じ難く入力駆動力を安定して効率よく伝達できる減速装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための第1発明に係る減速装置は、電動機の出力軸であるモータ出力軸に連結される入力軸と、前記入力軸から入力された回転駆動力を減速して伝達するとともに、ピニオンが設けられた出力軸から出力する減速機構と、前記電動機が取り付けられるとともに、前記減速機構が内側に配置されたケースと、を備えている減速装置に関する。そして、第1発明に係る減速装置は、前記ケースの前記電動機に対向する端部に形成されて前記モータ出力軸が挿入される軸挿入孔において、当該ケース内の潤滑油を封止するように、当該ケースに対して取り付けられるリング状の入力側シール部材を更に備え、前記入力軸には、前記モータ出力軸に対して嵌合により連結される入力側連結部と、前記入力側連結部に対して軸方向における前記減速機構側に配置されるとともに当該減速機構に対して駆動力を伝達する入力ギア部と、が設けられ、前記入力側シール部材は、前記入力側連結部の側面に対して全周に亘って密着して当接するように配置され、前記入力軸は、前記入力ギア部が設けられた端部において、前記減速機構に対して、当該減速機構に向かう軸方向の移動が規制された状態で回転自在に支持されるとともに、前記入力側連結部における前記電動機に対向する側の端部が、前記ケースにおける前記電動機に対向する端面よりも当該ケースの内側に位置するように、配置されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によると、ケースに対して軸挿入孔でケース内の潤滑油を封止する入力側シール部材が取り付けられ、この入力側シール部材が入力側連結部の側面に全周に亘って当接することで入力側連結部が位置決めされることになる。そして、モータ出力軸が入力側連結部に嵌合するように軸挿入孔に挿入され、モータ出力軸と入力軸とが連結されることになる。このため、入力軸とモータ出力軸との嵌合作業を行うことで、入力軸とモータ出力軸とを連結して組み立てる作業を容易に行うことができる。尚、入力側連結部の端部がケースの電動機側の端面よりもケース内側に位置しているため、入力軸と電動機とが干渉することもなく嵌合作業を行うことができる。また、減速装置に入力軸が設置された状態で入力軸とモータ出力軸とを連結する作業も容易であるため、減速装置と電動機とを分離した状態で施工現場に運搬してその施工現場で組み立てることが容易であり、施工性の向上を図ることができる。更に、減速装置と電動機とを一体のまま運搬することが要求されるような運搬作業の制約を伴わないため、運搬作業も容易に行うことができる。また、据付け後に電動機に故障が発生した場合においても、減速装置の分解作業を行わずに容易に入力軸とモータ出力軸とを連結でき、電動機をすぐに交換するメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、入力側連結部の周囲と軸挿入孔との間が入力側シール部材で密封されてケース内の潤滑油が封止されているため、運搬作業又は組み立て作業或いはメンテナンス作業の際にケース内に異物が侵入することも確実に防止することができる。また、入力軸は、入力側連結部でモータ出力軸に連結されて支持されるとともに反対側の入力ギア部の端部で支持された2点支持の状態となる。このため、従来のように入力軸の中央部分でも支持されることがなく、軸心の歪みが生じ難く、入力軸の回転動作の際に入力ギア部の歯と減速機構側の歯との噛み合いにおいて干渉を生じ難い。これにより、入力駆動力
を安定して効率よく伝達することができる。
【0009】
従って、本発明によると、組み立て及び運搬作業が容易で、施工性及びメンテナンス性の向上を図るとともに、入力軸が減速機構側の歯との噛み合いにおいて干渉を生じ難く入力駆動力を安定して効率よく伝達できる減速装置を提供することができる。
【0010】
第2発明に係る減速装置は、第1発明の減速装置において、前記入力側連結部は、前記モータ出力軸の先端側が挿入されて嵌合するとともにキー結合用のキー溝が設けられた嵌合穴が凹み形成されたカップ状の部分として設けられ、前記入力ギア部と一体に形成されていることを特徴とする。
【0011】
この発明によると、入力側連結部が、嵌合穴が凹み形成されたカップ状に形成されてキー結合によりモータ出力軸と連結され、更に、入力ギア部と一体に形成されている。このため、軸挿入孔において入力側シール部材が周囲に当接して密封されるとともにモータ出力軸と嵌合し、更に減速機構に駆動力を伝達する入力軸を1つの部材で簡素な構造によって実現することができる。
【0012】
第3発明に係る減速装置は、第1発明又は第2発明の減速装置において、前記ケースに対して前記軸挿入孔において取り付けられ、前記入力側連結部に係止することで当該入力側連結部の当該ケースの外部への移動を規制する抜け止め部材を更に備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明によると、軸挿入孔において入力側連結部に係止して入力軸の外部への移動を規制する抜け止め部材が更に設けられ、入力軸がケースの外部へ脱落してしまうことが確実に防止される。このため、減速装置を電動機と分離した状態で運搬する作業の際において、入力軸が減速装置から脱落してしまうことを確実に防止できる。また、故障した電動機を交換するために電動機を減速装置から取り外す作業を行う際において、入力軸が減速装置から抜けてしまうことがないため、作業が更に容易となり、メンテナンス性の更なる向上を図ることができる。
【0014】
第4発明に係る減速装置は、第3発明の減速装置において、前記抜け止め部材は、前記軸挿入孔の内周において周方向に延びるように形成された溝に対して、一旦弾性変形した後に弾性回復することで係合して嵌め込まれるリング状に形成され、前記入力側連結部の端部における縁部分と周方向に沿って係止可能であることを特徴とする。
【0015】
この発明によると、抜け止め部材を軸挿入孔に取り付ける際、作業者は、リング状の簡素な構造に形成された抜け止め部材を一旦弾性変形させてまた元に戻すことで、軸挿入孔の内周の溝に容易に嵌め込んで取り付けることができる。そして、リング状の抜け止め部材は、入力側連結部の縁部分と周方向に沿って係止するため、入力軸に連結されるモータ出力軸に対して干渉することのない近傍の位置でスペース効率よく入力軸と係止して確実に抜け止め機能を発揮することができる。従って、簡素な構造で構成できるとともに、取り付け作業が容易であって、スペース効率よく配置できる抜け止め部材を実現することができる。
【0016】
第5発明に係る減速装置は、第1発明乃至第4発明のいずれかの減速装置において、前記ケースは、筒状に形成されるとともに前記減速機構が内側に配置されたケース本体と、前記電動機が取り付けられるとともに、前記ケース本体に形成された開口部を覆うように当該ケース本体に対して取り付けられ、中央部分に前記軸挿入孔が形成されたモータフランジと、を有し、前記入力軸は、前記入力側連結部における前記電動機に対向する側の端部が、前記モータフランジにおける前記電動機に対向する端面よりも前記ケース本体側に
位置するように、配置され、前記モータフランジには、前記軸挿入孔の周囲で周方向に亘って延びるとともに前記ケースの内側に向かって突出するように形成された環状壁部が設けられ、前記入力側シール部材が、前記環状壁部の内周に密着した状態で嵌め込まれて配置されていることを特徴とする。
【0017】
この発明によると、モータフランジにおいて、中央に軸挿入孔を形成し、その軸挿入孔の周囲に内側に向かって突出する環状壁部を設けて入力側シール部材を嵌め込むことで、ケース内に挿入されるモータ出力軸に連結される入力軸の周囲を密封する構造を簡素な構成で実現することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、組み立て及び運搬作業が容易で、施工性及びメンテナンス性の向上を図るとともに、入力軸が減速機構側の歯との噛み合いにおいて干渉を生じ難く入力駆動力を安定して効率よく伝達できる減速装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態に係る減速装置を示す正面側から見た断面図である。
【図2】図1のA−A線矢視位置から見た平面図であって、一部切欠き状態で示す図である。
【図3】図1における一部を拡大した断面図であって、入力軸とその近傍の部分とを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態に係る減速装置は、潤滑油が封止されたケースの内側に減速機構が配置され、ケースに取り付けられた電動機の出力軸に連結される入力軸から入力された駆動力を減速機構により減速してピニオンから出力する減速装置に関して、広く適用することができるものである。例えば、本発明に係る減速装置は、風車、建設機械、産業用ロボット、種々の工作機械等の各種産業用機械、各種車両、等において広く適用することができる。
【0021】
図1は、本発明の一実施の形態に係る減速装置1を示す正面側から見た断面図である。また、図2は、図1のA−A線矢視位置から見た減速装置1の平面図であって、一部切欠き状態で示す図である。図1及び図2に示す減速装置1は、例えば、風車に適用され場合であれば、風車のナセルを旋回させるためのヨー駆動装置やブレードのピッチ角を制御するためのピッチ駆動装置として用いられる。尚、図1では、減速装置1と電動機100(図1では、一部のみ図示)とが一体に組み立てられた状態を図示しており、図2では、減速装置1のみ図示している。
【0022】
図1及び図2に示す減速装置1は、減速機構11、ケース12、入力軸13、入力側シール部材14、抜け止め部材15等を備えて構成されている。この減速装置1は、図1にて上側に配置されるように図示された一端側においてケース12に対して電動機100が取り付けられ、図1にて下側に配置されるように図示された他端側においてケース12から突出するように位置する出力軸17にピニオン16が取り付けられる。そして、減速装置1は、電動機100から入力された回転駆動力を減速して伝達してピニオン16に出力し、このピニオン16に噛み合う歯車要素(図示せず)との間で、図示しない所定の機器等を駆動する駆動力を発生させる。尚、以下の説明においては、減速装置1において、電動機100が取り付けられる側である入力側を一端側として、出力軸17が配置される側である出力側を他端側として説明する。
【0023】
図1に示す減速機構11は、後述する入力軸13から入力された回転駆動力を減速して
伝達するとともに、ピニオン16が設けられた出力軸17から出力するように構成されている。尚、ピニオン16は、出力軸17の他端側の端部にスプライン結合を介して取り付けられるとともに、出力軸17の端部に螺合するリングナットとリング状のプレート部材とを有するピニオン固定機構18によって出力軸17に固定されている。
【0024】
また、減速機構11は、平歯車を備えて構成された平歯車減速機、太陽ギアと遊星ギアと遊星枠とを備えて構成された遊星歯車減速機、クランク軸と外歯歯車とキャリアとを備えて構成された偏心型減速機、又は、これらの任意の組み合わせによる減速機等を備えて構成される。この減速機構11としては、例えば、後述する入力軸13の入力ギア部13bに噛み合うスパーギア19、スパーギア19に連結される偏心型減速機、偏心型減速機に連結される出力軸17、を備えた機構として構成することができる。尚、図1では、一端側に配置されたスパーギア19及び出力軸17以外の部分については破線で示し、詳細な図示を省略している。
【0025】
図1及び図2に示すケース12は、ケース本体20とモータフランジ21とを備えて構成されている。ケース12には、電動機100が取り付けられるとともに内側に減速機構11が配置される。また、このケース12の内部は外部に対して後述する複数のシール部材(14、23、24、27)によって密封されており、この密封されたケース12の内部には潤滑油が充填されている。尚、図1では、ケース12内の潤滑油の図示を省略している(図3も同様)。
【0026】
ケース本体20は、両端部が開口した筒状に形成されている。そして、ケース本体20において一端側に向かって開口するように形成された開口部20aはモータフランジ21により覆われている。一方、ケース本体20において他端側に向かって開口するように形成された開口部からは出力軸17が突出している。また、ケース本体20の内側には減速機構11が配置されている。尚、ケース本体20は、ケース12の軸方向(図1において一点鎖線で示す減速装置1の回転中心線Pの方向と同一方向)と垂直な断面の外形が円形となるように形成されている。また、ケース本体20の他端側の端部の内周には軸受22が嵌め込まれるとともに、出力側シール部材(23、24)が取り付けられている。軸受22を介して、出力軸17がケース本体20に対して回転自在に保持されている。そして、出力側シール部材(23、24)は、リング状に形成され、それぞれの内周に設けられたリップ部が出力軸17側に対して摺接する状態で当接し、ケース12内の潤滑油を封止している。尚、出力側シール部材23のリップ部は、出力軸17の外周に当接し、出力側シール部材24のリップ部は、出力軸17に螺合して軸受22を保持するリング状の軸受保持部材25の外周に当接している。
【0027】
図3は、図1における一部を拡大した断面図であって、入力軸13及びモータフランジ21とその近傍の部分とを示す拡大断面図である。図1乃至図3に示すように、モータフランジ21は、ケース本体20の一端側の開口部20aを覆うようにケース本体20に対して取り付けられる円盤状の蓋部材として形成されている。そして、モータフランジ21は、その外周側の縁部分において、ケース本体20の一端側の端部に対して複数のボルト26により固定されている。尚、複数のボルト26に対してケース12の径方向(回転中心線Pと垂直な方向)における内側には、ケース本体20とモータフランジ21とに当接するOリングシール部材27が配置されている。このOリングシール部材27は、ケース本体20の一端側の端部の周方向に沿って延びるとともに略円形断面又は略楕円形断面を有するリング状に形成され、ケース本体20とモータフランジ21との間でケース12内の潤滑油を封止している。
【0028】
また、図3によく示すように、モータフランジ21には、その一端側の端面(即ち、モータフランジ21における電動機100に対向する端面)21aにおいて、電動機100
が取り付けられている。尚、電動機100は、電動機100における他端側に設けられた取り付けプレート100bを貫通する複数のボルト28によってモータフランジ21に対して固定されている。そして、各ボルト28は、モータフランジ21に螺合する他端側の端部がモータフランジ21の内部に埋設された状態となっており、ケース12内に貫通することのない位置に配置されている。
【0029】
また、ケース12における電動機100に対向する端部を構成するモータフランジ21には、その中央部分において、電動機100の出力軸であるモータ出力軸100aが挿入される軸挿入孔21bが貫通形成されている。また、モータフランジ21には、軸挿入孔21bの周囲で周方向に亘って延びる環状壁部21cが設けられている。この環状壁部21cは、モータフランジ21の他端側の端面において、軸挿入孔21bに対してケース12の径方向の外側に配置されるとともにケース12の内側に向かって(即ち、他端側に向かって)突出するように形成されている。
【0030】
図1乃至図3に示す入力軸13は、入力側連結部13aと入力ギア部13bとが設けられ、モータ出力軸100aに連結されるように構成される。入力側連結部13aと入力ギア部13bとは、一体に形成され、回転中心線Pを軸心として直列に配置されている。
【0031】
入力側連結部13aは、モータ出力軸100aに対して嵌合により連結される部分として設けられている。そして、入力側連結部13aは、モータ出力軸100aの先端側が挿入されて嵌合するとともにキー結合用のキー溝29が設けられた嵌合穴29が凹み形成されたカップ状の部分として設けられている。即ち、入力側連結部13aとモータ出力軸100aとは、入力側連結部13a側のキー溝30とモータ出力軸100a側のキー溝100cとに嵌まり込むキー31を介したキー結合によって連結される。入力ギア部13bは、入力軸13における他端側の端部に配置されるとともに外周に歯が形成されて、減速機構11のスパーギア19に噛み合う部分として設けられている。即ち、入力ギア部13bは、入力側連結部13aに対して軸方向における減速機構11側に配置されるとともに減速機構11に対して駆動力を伝達する部分を構成している。
【0032】
また、入力軸13は、入力ギア部13bが設けられた他端側の端部において、減速機構11に対して、軸受32を介して、減速機構11に向かう軸方向の移動が規制された状態で回転自在に支持されている。尚、軸受32は、入力ギア部13bの他端側の端部に形成された凹みに対して当接する球状のボール部材32aと、このボール部材32aを転動自在に保持する凹みが形成されるとともに減速機構11に取り付けられる保持ケース32bと、を備えて構成されている。また、入力軸13は、入力側連結部13aにおける電動機100に対向する側の端部が、ケース12のモータフランジ21における電動機100に対向する端面21aよりもケース12の内側(即ち、ケース本体20側)に位置するように、配置されている。
【0033】
図1及び図3に示す入力側シール部材14は、リング状に形成され、モータフランジ21の軸挿入孔21bにおいて、ケース12内の潤滑油を封止するように、ケース12に対して取り付けられるよう構成されている。この入力側シール部材14は、その外周側において、モータフランジ21の環状壁部21cの内周に密着した状態で嵌め込まれて配置されている。そして、入力側シール部材14は、その内周に設けられたリップ部分において、入力側連結部13aの側面に対して全周に亘って密着して摺接する状態で当接するように配置されている。
【0034】
図1乃至図3に示す抜け止め部材15は、ケース12に対して軸挿入孔21bにおいて取り付けられ、入力側連結部13aに係止することで入力側連結部13aのケース12の外部への移動を規制する部材として設けられている。この抜け止め部材15は、周方向に
おける一部が切り欠かれたような形状のリング状に形成され、軸挿入孔21bの内周において周方向に延びるように形成された溝21dに対して、一旦縮径する方向に弾性変形した後に拡径する方向に弾性回復することで係合して嵌め込まれるように構成されている。そして、図2及び図3によく示すように、抜け止め部材15は、入力側連結部13aの端部における縁部分と周方向に沿って係止可能に配置されている。このため、入力軸13が軸方向における一端側に向かって変位した場合には、入力側連結部13aの縁部分の周方向に沿って係止して、確実に入力軸13の抜け止めが図られることになる。
【0035】
上述した減速装置1は、電動機100の運転が行われることにより作動する。電動機100の運転が開始されると、モータ出力軸100aから回転駆動力が入力軸13に入力され、この回転駆動力が、入力軸13から減速機構11に伝達され、更に、減速機構11において減速して伝達されて出力軸17に設けられたピニオン16から出力されることになる。
【0036】
以上説明した減速装置1によると、ケース12に対して軸挿入孔21bでケース12内の潤滑油を封止する入力側シール部材14が取り付けられ、この入力側シール部材14が入力側連結部13aの側面に全周に亘って当接することで入力側連結部13aが位置決めされることになる。そして、電動機100が減速装置1に取り付けられる際には、モータ出力軸100aが入力側連結部13aに嵌合するように軸挿入孔21bに挿入され、モータ出力軸100aと入力軸13とが連結されることになる。このため、入力軸13とモータ出力軸100aとの嵌合作業を行うだけで、入力軸13とモータ出力軸100aとを連結して組み立てる作業を容易に行うことができる。尚、入力側連結部13aの端部がケース12の電動機100側の端面21aよりもケース12の内側に位置しているため、入力軸13と電動機100とが干渉することもなく上記の嵌合作業を行うことができる。
【0037】
また、減速装置1によると、この減速装置1に入力軸13が設置された状態で入力軸13とモータ出力軸100aとを連結する作業も容易であるため、減速装置1と電動機100とを分離した状態で施工現場に運搬してその施工現場で組み立てることが容易であり、施工性の向上を図ることができる。更に、減速装置1と電動機100とを一体のまま運搬することが要求されるような運搬作業の制約を伴わないため、運搬作業も容易に行うことができる。また、据付け後に電動機100に故障が発生した場合においても、減速装置1の分解作業を行わずに容易に入力軸13とモータ出力軸100aとを連結でき、電動機100をすぐに交換するメンテナンス作業を容易に行うことができる。また、入力側連結部13aの周囲と軸挿入孔21bとの間が入力側シール部材14で密封されてケース12内の潤滑油が封止されているため、運搬作業又は組み立て作業或いはメンテナンス作業の際にケース12内に異物が侵入することも確実に防止することができる。
【0038】
また、減速装置1によると、入力軸13は、入力側連結部13aでモータ出力軸100aに連結されて支持されるとともに反対側の入力ギア部13bの端部で軸受32を介して減速機構11に支持された2点支持の状態となる。このため、従来のように入力軸13の中央部分でも支持されることがなく、軸心の歪みが生じ難く、入力軸13の回転動作の際に入力ギア部13bの歯と減速機構11側のスパーギア19の歯との噛み合いにおいて干渉を生じ難い。これにより、入力駆動力を安定して効率よく伝達することができる。
【0039】
従って、本実施形態によると、組み立て及び運搬作業が容易で、施工性及びメンテナンス性の向上を図るとともに、入力軸13が減速機構11側の歯との噛み合いにおいて干渉を生じ難く入力駆動力を安定して効率よく伝達できる減速装置1を提供することができる。
【0040】
また、減速装置1によると、入力側連結部13aが、嵌合穴29が凹み形成されたカッ
プ状に形成されてキー結合によりモータ出力軸100aと連結され、更に、入力ギア部13bと一体に形成されている。このため、軸挿入孔21bにおいて入力側シール部材14が周囲に当接して密封されるとともにモータ出力軸100aと嵌合し、更に減速機構11に駆動力を伝達する入力軸13を1つの部材で簡素な構造によって実現することができる。
【0041】
また、減速装置1によると、軸挿入孔21bにおいて入力側連結部13aに係止して入力軸13の外部への移動を規制する抜け止め部材14が更に設けられ、入力軸13がケース12の外部へ脱落してしまうことが確実に防止される。このため、減速装置1を電動機100と分離した状態で運搬する作業の際において、入力軸13が減速装置1から脱落してしまうことを確実に防止できる。また、故障した電動機100を交換するために電動機100を減速装置1から取り外す作業を行う際において、入力軸13が減速装置1から抜けてしまうことがないため、作業が更に容易となり、メンテナンス性の更なる向上を図ることができる。
【0042】
また、減速装置1によると、抜け止め部材14を軸挿入孔21bに取り付ける際、作業者は、リング状の簡素な構造に形成された抜け止め部材14を一旦弾性変形させてまた元に戻すことで、軸挿入孔21bの内周の溝21dに容易に嵌め込んで取り付けることができる。そして、リング状の抜け止め部材14は、入力側連結部13aの縁部分と周方向に沿って係止するため、入力軸13に連結されるモータ出力軸100aに対して干渉することのない近傍の位置でスペース効率よく入力軸13と係止して確実に抜け止め機能を発揮することができる。従って、簡素な構造で構成できるとともに、取り付け作業が容易であって、スペース効率よく配置できる抜け止め部材14を実現することができる。
【0043】
また、減速装置1によると、モータフランジ21において、中央に軸挿入孔21bを形成し、その軸挿入孔21bの周囲に内側に向かって突出する環状壁部21cを設けて入力側シール部材14を嵌め込むことで、ケース12内に挿入されるモータ出力軸100aに連結される入力軸13の周囲を密封する構造を簡素な構成で実現することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施することができる。
【0045】
(1)本実施形態では、入力側連結部と入力ギア部とが一体に形成された入力軸を例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、入力側連結部と入力ギア部とが別体に形成された入力軸であってもよい。また、入力側連結部の形状については、変更して実施してもよい。
【0046】
(2)本実施形態では、軸挿入孔の周囲に形成された環状壁部の内周に入力側シール部材を嵌め込むことで、入力側シール部材がケースに対して取り付けられているものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、入力側シール部材のケースへの取り付け形態については、種々変更して実施してもよい。また、抜け止め部材の形状については、本実施形態で例示したものに限らず、種々変更して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、潤滑油が封止されたケースの内側に減速機構が配置され、ケースに取り付けられた電動機の出力軸に連結される入力軸から入力された駆動力を減速機構により減速してピニオンから出力する減速装置として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 減速装置
11 減速機構
12 ケース
13 入力軸
14 入力側シール部材
16 ピニオン
17 出力軸
21b 軸挿入孔
100 電動機
100a モータ出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の出力軸であるモータ出力軸に連結される入力軸と、
前記入力軸から入力された回転駆動力を減速して伝達するとともに、ピニオンが設けられた出力軸から出力する減速機構と、
前記電動機が取り付けられるとともに、前記減速機構が内側に配置されたケースと、
を備えている減速装置であって、
前記ケースの前記電動機に対向する端部に形成されて前記モータ出力軸が挿入される軸挿入孔において、当該ケース内の潤滑油を封止するように、当該ケースに対して取り付けられるリング状の入力側シール部材を更に備え、
前記入力軸には、前記モータ出力軸に対して嵌合により連結される入力側連結部と、前記入力側連結部に対して軸方向における前記減速機構側に配置されるとともに当該減速機構に対して駆動力を伝達する入力ギア部と、が設けられ、
前記入力側シール部材は、前記入力側連結部の側面に対して全周に亘って密着して当接するように配置され、
前記入力軸は、前記入力ギア部が設けられた端部において、前記減速機構に対して、当該減速機構に向かう軸方向の移動が規制された状態で回転自在に支持されるとともに、前記入力側連結部における前記電動機に対向する側の端部が、前記ケースにおける前記電動機に対向する端面よりも当該ケースの内側に位置するように、配置されていることを特徴とする、減速装置。
【請求項2】
請求項1に記載の減速装置であって、
前記入力側連結部は、前記モータ出力軸の先端側が挿入されて嵌合するとともにキー結合用のキー溝が設けられた嵌合穴が凹み形成されたカップ状の部分として設けられ、前記入力ギア部と一体に形成されていることを特徴とする、減速装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の減速装置であって、
前記ケースに対して前記軸挿入孔において取り付けられ、前記入力側連結部に係止することで当該入力側連結部の当該ケースの外部への移動を規制する抜け止め部材を更に備えていることを特徴とする、減速装置。
【請求項4】
請求項3に記載の減速装置であって、
前記抜け止め部材は、前記軸挿入孔の内周において周方向に延びるように形成された溝に対して、一旦弾性変形した後に弾性回復することで係合して嵌め込まれるリング状に形成され、前記入力側連結部の端部における縁部分と周方向に沿って係止可能であることを特徴とする、減速装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の減速装置であって、
前記ケースは、
筒状に形成されるとともに前記減速機構が内側に配置されたケース本体と、
前記電動機が取り付けられるとともに、前記ケース本体に形成された開口部を覆うように当該ケース本体に対して取り付けられ、中央部分に前記軸挿入孔が形成されたモータフランジと、
を有し、
前記入力軸は、前記入力側連結部における前記電動機に対向する側の端部が、前記モータフランジにおける前記電動機に対向する端面よりも前記ケース本体側に位置するように、配置され、
前記モータフランジには、前記軸挿入孔の周囲で周方向に亘って延びるとともに前記ケースの内側に向かって突出するように形成された環状壁部が設けられ、
前記入力側シール部材が、前記環状壁部の内周に密着した状態で嵌め込まれて配置され
ていることを特徴とする、減速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−163374(P2011−163374A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23775(P2010−23775)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】