説明

渦電流センサおよび同センサのセンサ・コイル

【課題】温度以外の環境要因の影響を受け、測定回路内で変化する寄生容量を原因とするセンサ出力信号のドリフトを減少させ、渦電流センサの測定精度を向上させる。
【解決手段】ヘッド部分を持つセンサ回路を有する渦電流センサにおいて、センサ回路は、センサ・コイル、ベース部分、ヘッド部分をベース部分に接続する通信ケーブルを含む。センサ・コイルは、内部導体とケーブルの外側シールドとの間に接続される。ベース部分は、ケーブルの線路容量をセンサ・コイルから分離し中心導体の電圧を緩衝し、3軸ケーブルの内側シールドに印加する電圧フォロワを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載の渦電流センサと請求項5の前提部に記載のセンサ・コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
渦電流センサは、導電性検査対象内に渦電流を生成する手段と、この渦電流の磁界を検出するセンサ・コイルを有する。センサ・コイルは、センサ・コイルと検査対象との距離を表す出力信号を作り出すセンサ回路の一部である。
【0003】
既知のタイプの渦電流センサは、センサ・コイルを含むセンサ回路のヘッド部分を有するセンサ・ヘッドと、センサ回路のベース部分を有するベース・ユニットと、この回路のヘッド部分とベース部分を接続する通信ケーブルとを備える。センサ・コイルのほかに、センサ回路の部品の大部分は、ベース・ユニットに配置される。
【0004】
渦電流センサによる長期測定の精度は、センサの出力信号ドリフトの悪影響を受ける。
【0005】
本発明の目的は、渦電流センサの出力信号の長期ドリフトを減少させることである。
【0006】
上記目的は、請求項1記載の渦電流センサと請求項5記載の渦電流センサ用センサ・コイルによって達成される。
【0007】
本発明は、添付図面に表現された好ましい実施例を参照して、以下に詳細に説明する。
【0008】
図1は、渦電流センサの回路図である。センサ回路は、通信ケーブル3で相互接続したヘッド部分1とベース部分2を含んでいる。ヘッド部分1を、図示しないセンサ・ヘッド・ハウジングの中に配置してもよく、ベース部分を、図示しないベース・ユニット・ハウジングの中に配置してもよい。
【0009】
ヘッド部分1は、近くにある検査対象5内に渦電流を誘起する磁界を発生させるため、交流電流が供給されるセンサ・コイルを含む。交流電流は、発振器6によって生成される。この例では、このセンサは、自励発振する。センサ・コイル4は、発振器6の共振回路に含まれる。例えば、コルピッツ発振器を使用してもよい。
【0010】
発振器6の発振振幅は、センサ・コイル4と検査対象5との距離によって変調される。すなわち、検査対象5が近いほど、共振回路の損失が大きくなり、センサ・コイルの前後の電圧の振幅が低くなる。発振振幅は、信号コンディショニング回路7によって測定され、センサ出力信号に変換される。
【0011】
信号コンディショニング回路7は、測定信号の復調整流器と、復調された信号の発振器周波数成分を抑制する低域フィルタと、センサ・コイル4と検査対象5との距離に比例して変化する電圧を生成する線形回路と、感度を調整し信号オフセット補正する増幅器を備えてもよい。
【0012】
長期測定の精度を向上させるため、センサ回路は、温度変化の影響を受けない出力信号を供給するため、温度の影響を補正する手段を含んでもよい。コンデサ9によってブリッジされ、センサ・コイル4と直列に接続されたダイオード8は、センサ・ヘッド温度測定センサ回路のヘッド部分1に配列してもよい。
【0013】
しかし、出力信号のドリフトは、単に温度だけが原因ではない。センサ・コイル4の自己容量や通信ケーブル3の線路容量などの測定回路の寄生容量の変化の影響を受ける。これらは、補正が困難な空気湿度などの環境要因や、一部の材料の経年変化や、曲げによるケーブルの変形などに影響される。したがって、測定回路に対するこれらの影響を低減するため、寄生容量を低減する手段が推奨される。
【0014】
通信ケーブル3は、中心導体10、内側シールド11、外側シールド12を有する3軸ケーブルである。シールド11は、中心導体10と外側シールド12との間に配置される。センサ・コイル4は、中心導体10と外側シールド12の間に接続され、センサ回路のベース部分2は、中心導体10と内側シールド11との間で接続された電圧フォロワ13を有している。電圧フォロワ13は、中心導体10と外側シールド12の間の電圧を緩衝し、これを内側シールドに印加する。その結果、中心導体10と内側シールド11は、同電位になり、これらの間の線路容量には電流が流れない。内側シールド11と外側シールド12の間の線路容量を流れる電流は、電圧フォロワ13から供給される。そのため、電圧フォロワ13は、実質的にケーブルの線路容量をセンサ・コイル4から分離する。
【0015】
ダイオード8の両端で低下し温度測定信号として働く同相電圧を拒絶する高域フィルタ14は、電圧フォロワの前に配置される。
【0016】
図2では、渦電流センサの回路図は、センサ・コイル4が発振器の共振回路の部品ではない点で図1のものと異なることが示されている。すなわち、局部発振器6’が交流電圧を生成するために設けられ、電圧電流変換器15がセンサ・コイル4に電圧に対応する交流電流を供給するために接続される。3軸ケーブル3と電圧フォロワ13は、図1に関する記述と同様に接続され作動する。
【0017】
高温あるいは高精度で測定のための渦電流センサでは、センサ・コイルは、フェライト磁心の磁気特性がサンプルごとに異なり、温度の関数として変化するため、通常、空心コイルである。空心渦電流センサの発振器は、いわゆる搬送波周波数の少なくとも700kHzで作動する。このくらいの高周波数では、電圧フォロワの帯域が十分に高ければ、ケーブル容量を電圧フォロワで分離することが可能である。少なくとも150MHzの3db遮断周波数を有する電圧フォロワを使用することが望ましい。
【0018】
図1と図2に基づくセンサ・コイル4は、従来のソレノイド空心コイルでもある。しかし、特に外径が6mm以上のコイルであれば、図3を参照して以下に述べるコイル・デザインの場合、測定精度は、さらに向上する。
【0019】
図3は、渦電流センサのセンサ・コイルの長手方向断面図である。コイルの全長は、2つ以上のセグメントs〜sに分割される。各セグメントは、単一の巻き線層あるいは少なくとも2つの重なった巻き線層に配置した所定数の連続した巻き線を有する。図3に示した例では、各セグメントは、3つの重なった巻き線層を含む。分離壁19の厚みで定義されるこの例では、隣接するコイル・セグメント同士の隣接する巻き線間の距離は、各々のコイル・セグメント内において隣接する巻き線間の距離よりも大きい。
【0020】
センサ・コイルは、コイル・セグメントs〜sの軸と一致するセンサ・コイルの軸に沿って直列に接続され,隣り合って配列されたコイル・セグメントs〜sからなる。
【0021】
コイル・セグメントs〜sは、共通軸17上に一列に並ぶため、すべてのセグメントが同じ磁束を共有し、したがって、このセンサ・コイルの磁気特性は、同じ長さL、直径D、巻き線数、巻き線層数を有する従来のソレノイドの磁気特性と同様である。一方、自己容量は、上述の従来のソレノイドの自己容量よりも大幅に低いセグメントの数nで分割されたコイル・セグメントs1〜snの1つの自己容量の値とほぼ等しい。
【0022】
図3に示す好ましい実施例では、コイルは、共通ボビン18に1つの巻き線ワイヤから連続して巻かれる。コイルを作るとき、第2のコイル・セグメントsの第1の巻き線が巻かれる前に第1のコイル・セグメントsのすべての巻き線が巻かれる。続いて、第3のセグメントsの巻き線sが始まる前に、第2のコイル・セグメントsのすべての巻き線が巻かれる。各々のセグメントは、巻き線層の数が奇数であるので、1つのセグメントの最後の巻き線は、外のワイヤを横切らずに次ぎのセグメントの最初の巻き線につながる。すべてのセグメントは、同じ数の巻き線と巻き線層を有することが望ましい。
【0023】
コイル・ボビン18は、合成材料またはセラミックなどの非磁性材料で構成され、フェライト磁心を持たず、センサ・コイルは、空心コイルである。ボビンは、各セグメントの巻き線を保持する各コイル・セグメントs〜s用の円周溝が設けられている。隣接する溝は、互いに接近して設けられ、単に0.5mm以下の好ましい厚さの薄い壁19によって隔てられている。
【0024】
図3を参照して先に述べた分割されたセンサ・コイルは、外径6mm以上のセンサ・コイルを使用する場合に特に有用であることが分かった。センサ・コイルは、従来の渦電流センサ回路のヘッド部分の他の部品と共にセンサ・ヘッド・ハウジングに配置されてもよい。しかし、図1と図2を参照して説明したように、分割センサ・コイルは、渦電流センサ内に3軸通信ケーブルと電圧フォロワと結合すれば、最もよい測定精度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】自励発振渦電流センサの回路図である。
【図2】局部発振器を有する渦電流センサの回路図である。
【図3】渦電流センサ用分割センサ・コイルの長手方向断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象(5)内に渦電流を生成する手段を有するセンサ回路と、渦電流を検出するセンサ・コイル(4)を有し、このセンサ回路は、センサ・コイル(4)と、ベース部分(2)と、ヘッド部分(1)をベース部分(2)に接続する通信ケーブル(3)とからなる渦電流センサであって、
通信ケーブル(3)は、中心導体(10)、内側シールド(11)、外側シールド(12)を有する3軸ケーブルであり、センサ・コイル(4)は、中心導体(10)と外側シールド(11)との間で接続され、センサ回路のベース部分(2)は、ケーブル(3)の線路容量をセンサ・コイル(4)から分離する中心導体(10)と内側シールド(11)との間で接続された電圧フォロワ(13)を有していることを特徴とする渦電流センサ。
【請求項2】
請求項1記載の渦電流センサにおいて、センサ回路は、検査対象(5)に渦電流を生成するセンサ・コイル(4)に交流電流を供給するように配置され発振器(6、6’)を備えることを特徴とする渦電流センサ。
【請求項3】
請求項1または2記載の渦電流センサにおいて、渦電流は、少なくとも700kHzの周波数を有することを特徴とする渦電流センサ。
【請求項4】
請求項3記載の渦電流センサにおいて、電圧フォロワ(13)は、少なくとも150MHzの3db遮断周波数を有することを特徴とする渦電流センサ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の渦電流センサのセンサ・コイル(4)において、センサ・コイル(4)は、1つまたはいくつかの重なった巻き線層のそれぞれに配置した所定数の連続した巻き線を有する2つ以上のセグメント(s〜s)を含み、これらのコイル・セグメント(s〜s)は、コイル軸17沿って隣り合って配列され、直列に接続されることを特徴とするセンサ・コイル。
【請求項6】
請求項5記載のセンサ・コイルにおいて、コイル・セグメント(s〜s)は、奇数の巻き線層を有していることを特徴とするセンサ・コイル。
【請求項7】
請求項5または6記載のセンサ・コイルにおいて、コイル・セグメント(s〜s)は、1つの巻き線ワイヤから連続して巻かれることを特徴とするセンサ・コイル。
【請求項8】
請求項5から7のいずれかに記載のセンサ・コイルにおいて、コイル・セグメントは、共通のボビン(18)の周囲に巻かれることを特徴とするセンサ・コイル。
【請求項9】
請求項5から7のいずれかに記載のセンサ・コイルにおいて、コイル・セグメントの外径Dは、コイルの長さLよりも大きいことを特徴とするセンサ・コイル。
【請求項10】
請求項5から9のいずれかに記載のセンサ・コイルにおいて、各セグメントの巻き線は、少なくとも2つの重なった巻き線層に配置されることを特徴とするセンサ・コイル。
【請求項11】
請求項5から10のいずれかに記載のセンサ・コイルにおいて、隣接するコイル・セグメント同士の隣接する巻き線間の距離は、コイル・セグメント内において隣接する巻き線間の距離よりも大きいことを特徴とするセンサ・コイル。
【請求項12】
請求項5から11のいずれかに記載のセンサ・コイル(4)を有する渦電流センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−155727(P2007−155727A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325295(P2006−325295)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(506400421)ビブロ − メーター ソシエテ アノニム (1)
【Fターム(参考)】