説明

渦電流探傷試験装置およびその試験方法

【課題】巻線径による励磁電流や幾何的制約による巻線数の制限のもとで、検出感度を高めることのできる渦電流探傷試験装置を提供する。
【解決手段】被検査体2に直接磁場を付与して渦電流を発生させるn個の励磁コイルが各コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となるように配置された励磁コイル群12と、渦電流から誘導される磁場を検出するn個の検出コイルが各コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となるように配置された検出コイル群13a、13bとを備える。nは少なくとも3以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上置型コイルを備えた渦電流探傷試験装置およびその試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気発生器伝熱管などの小口径配管の外面あるいは内面の欠陥検査には、磁場を利用した渦電流探傷試験(Eddy Current Testing:ECT)が用いられる。
【0003】
このECTは、探傷に利用する磁場形態によってニアフィールドECT(Near Field Eddy Current Testing:NF−ECT)とリモートフィールドECT(Remote Field Eddy Current Testing:RF−ECT)とに大別される。
【0004】
NF−ECTは、励磁コイルより発生する直接磁場が形成する渦電流が欠陥により乱されることを検出コイルにより検出する探傷法である。RF−ECTは、直接磁場が形成する渦電流が管外部に副次的に間接磁場を発生させ、この間接磁場が管内部へと戻る過程において形成する渦電流が欠陥により乱されることを検出コイルにより検出する探傷法である。
【0005】
上記探傷原理から、NF−ECTは内面欠陥の検出に高い感度を持ち、RF−ECTは外面欠陥の検出に対して有効である。従来、欠陥検出感度を向上させるため、渦電流探傷に関する種々の技術が知られている。
【0006】
特許文献1においては、励磁コイルと検出コイルとを同心構造とし、磁心を用いることで微小欠陥に対する感度を向上させる技術が開示されている。
【0007】
特許文献2においては、検出コイルのコイル芯として磁性体を用いることで微小欠陥に対する感度を向上させるプローブ構造が開示されている。
【0008】
特許文献3においては、フォトグラフィ技術を用いた積層型コイルを用いることで容易に感度調整が可能なコイル構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−160709号公報
【特許文献2】特開平10−288606号公報
【特許文献3】特開2008−197016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ECTにおいては、検出感度を高める手法として、励磁電流を大きくする、または励磁コイルの巻線数を増やすことで発生磁場強度を高める手法が用いられる。しかし、励磁コイルを形成する線材の線径により励磁電流の上限値が決定されたり、被検査体の形状や周辺領域による励磁コイル形状の幾何的制約から巻線数の可能最大数が決定されたりするため、前述の手法では高感度化に対して制限を受けてしまう。
【0011】
特許文献1における励磁コイルを小口径管検査用内挿型プローブとして用いる場合に、励磁コイルを周方向に複数個配置する必要がある。この場合、1個の励磁コイル形状が小さくなるため高感度化に課題がある。
【0012】
特許文献2の技術は、検出コイルのコイル芯を直方体あるいは細棒状としており、巻線および励磁磁場分布の均一化の観点から非効率的である。
【0013】
特許文献3においては、励磁コイルの上に検出コイルが積層されており、RF−ECTとして用いることは不可能である。
【0014】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、効率よく検出感度を高めることができる渦電流探傷試験装置およびその試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る渦電流探傷試験装置は、上述した課題を解決するために、被検査体に直接磁場を付与して渦電流を発生させるn個の励磁コイルが各コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となるように配置された励磁コイル群と、前記渦電流から誘導される磁場を検出するn個の検出コイルが各コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となるように配置された検出コイル群とを備え、nが少なくとも3以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る渦電流探傷試験装置およびその試験方法においては、巻線径による励磁電流や幾何的制約による巻線数の制限のもとで、検出感度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態における渦電流探傷試験装置におけるプローブが配管に挿入された場合の、管軸方向に沿う概略的な断面図。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図。
【図4】プローブの距離制御機構の一例を示す構成図。
【図5】(A)は位相角調整前の渦電流探傷信号リサージュ波形の一例、(B)は位相角調整後の渦電流探傷信号リサージュ波形の一例。
【図6】(A)は微分処理前の検出信号チャート図の一例、(B)は微分処理後のチャート図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る渦電流探傷試験装置およびその試験方法の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
本実施形態における渦電流探傷試験装置およびその試験方法は、小口径配管の検査に用いられ、例えば新型高速炉の蒸気発生器の伝熱管(例えば口径約18mm)の内外面の検査に好適である。なお、被検査体としての配管は、単管のみならず二重管に対しても適用することができる。以下、被検査体を、単に「配管」という。
【0020】
図1は、本実施形態における渦電流探傷試験装置1におけるプローブ11が配管2に挿入された場合の、管軸方向に沿う概略的な断面図である。
【0021】
図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、図1のIII−III線に沿う断面図である。
【0022】
渦電流探傷試験装置1は、励磁コイル群12および検出コイル群13a、13bを有するプローブ11、励磁器14、検出器15、データ処理機構16、およびデータ表示機17を備える。
【0023】
励磁コイル群12は、4個の励磁コイル21a〜21dを有する。励磁コイル21a〜21dは、配管2に直接磁場を付与して渦電流を誘導する。励磁コイル21a〜21dは、同一線材からなり、巻数が等しいコイルである。
【0024】
励磁コイル21a〜21dは、励磁コイル芯22に巻き回される。この励磁コイル芯22は、例えば炭素鋼からなる磁性体であり、励磁コイル群12により磁場が誘起される場合には強制的に磁路を形成する。励磁コイル芯22(図2参照)は、配管2の周方向に沿って配置された励磁コイル群12で形成される空間を占める本体部23と、励磁コイル21a〜21dの巻芯となる4つの突起部24a〜24dとを有する。
【0025】
励磁コイル21a〜21d(突起部24a〜24d)は、配管2への内挿時、配管2の内壁の周方向に対してほぼ均等に配置される。すなわち、励磁コイル21a〜21d(突起部24a〜24d)の中心軸P、Qに沿う断面形状が、4相対称となる。また、励磁コイル21a〜21d(突起部24a〜24d)は、中心軸P、Qが管径方向と平行となる(中心軸P、Qが配管2表面の法線に対してほぼ直交する)。
【0026】
検出コイル群13a、13bは、それぞれ4個の検出コイル25a〜25d、検出コイル26a〜26dを有する。検出コイル25a〜25d、26a〜26dは、直接または間接磁場により誘起される渦電流を検出する。検出コイル25a〜25b、26a〜26dは、同一線材からなり、巻数が等しいコイルである。検出コイル群13a、13bは、配管2の中心軸R方向(走査方向)に2列設けられる。検出コイル群13a、13bは、ほぼ同様の構成を有するため、以下検出コイル群13a、13bをまとめて検出コイル群13として説明する。また、検出コイル25a〜25bと検出コイル26a〜26dとを区別しない場合には、単に検出コイル25a〜25dという。
【0027】
検出コイル25a〜25dは、それぞれボビン27a〜27dに巻き回される。また、検出コイル26a〜26dは、それぞれボビン28a〜28dに巻き回される。ボビン27a〜27d、28a〜28d(以下、単にボビン27a〜27dという。)は、励磁コイル芯22と同様に例えば炭素鋼などからなる磁性体であり、磁路を形成し磁束を収束させることで検出感度を高める。
【0028】
検出コイル25a〜25d(ボビン27a〜27d)は、励磁コイル群12と同様に、配管2への内挿時、配管2の内壁の周方向に対してほぼ均等に配置される。すなわち、図3に示すように、検出コイル25a〜25d(ボビン27a〜27d)の中心軸S、Tに沿う断面形状が4相対称となる。また、検出コイル25a〜25d(ボビン27a〜27d)は、中心軸S、Tが管径方向と平行となる(中心軸S、Tが配管2表面の法線に対してほぼ直交する)。
【0029】
ボビン27a〜27dは、配管2内壁の形状と相似な形状を有する(配管2と対向する面の形状が配管2内壁の形状と略一致する)上面29a〜29dを有する。上面29a〜29dは、配管2内壁とボビン27a〜27dとの距離(リフトオフ)を最小限にし、検出コイル群13による磁場検出領域内での感度分布の変動を抑制する。
【0030】
プローブ11は、励磁コイル群12と検出コイル群13との距離を制御する距離制御機構31を有する。
【0031】
図4は、プローブ11の距離制御機構31の一例を示す構成図である。
【0032】
距離制御機構31は、励磁コイル群12と検出コイル群13との走査方向における間隔Wを調整し保持する機械的な機構である。距離制御機構31は、例えば図4に示すように支持軸32に支持された励磁コイル群12と検出コイル群13との間隔Wを手動により調整可能なネジ式の調整部材33を採用し得る。距離制御機構31は、この他にも、間隔に応じて用意された距離調整部材を励磁コイル群12と検出コイル群13との間に所要個数挿入することにより間隔Wを調整することもできる。
【0033】
図1に示すように、励磁器14は、導線42を介して出力端子43と励磁コイル21a〜21dとを接続し、交流電流を各励磁コイル21a〜21dに流す(図面の都合上、励磁コイル21dと接続される導線および出力端子は図示省略。検出器15についても同様。)。励磁器14は、位相角制御機構45、周波数制御機構46、および電流振幅制御機構47を有する。励磁器14は、各励磁コイル21a〜21dに個別に接続され、これらの機構45、46、47を用いて各励磁コイル21a〜21dに流れる電流を個々に制御することができる。
【0034】
位相角制御機構45は、励磁コイル群12に流れる電流の位相角を調整する。周波数制御機構46は、数十kHz〜数MHzの範囲で検出コイル群13に誘起される静的な磁場強度が最大となる周波数を設定する。渦電流探傷試験における渦電流の浸透深さは1/√(周波数)に比例するため、拡管部などの肉厚変化に対して周波数を追従させて変化させることで大きな感度低下を抑制する。
【0035】
電流振幅制御機構47は、励磁コイル群12に流れる電流値をフィードバックし、所定の電流値が流れるように印加する電圧値を設定する。また、電流振幅制御機構47は、曲率を有する配管2の検査においては配管2の周方向に沿って配列された励磁コイル群12のリフトオフが一定とならないため、リフトオフ分布に従って電流振幅を変化させることで、検出する励磁磁束強度の周方向のばらつきを抑制する。
【0036】
検出器15は、導線50を介して出力端子55a〜55dと検出コイル25a〜25dとを接続し、検出コイル群13で誘起された電圧の変化を検出する。検出器15は、分配器51、位相器52、検波回路53を有する。
【0037】
分配器51は、検出コイル群13から出力された信号を指定した検出モードで検出するための切り替えスイッチである。分配器51を用いることによりモードを変更するたびに再配線を行うことなく、必要な検出信号を得ることができる。分配器51は、例えば「絶対値測定モード」、「差動測定モード」における検出を行うことができる。「絶対値測定モード」は、検出コイル群13aの検出コイル25dに接続された端子55dより検出コイル25d単体の電圧を測定するモードであり、励磁器14の周波数制御機構46へ出力するフィードバック信号を取得する場合などに用いられる。
【0038】
「差動測定モード」は、探傷試験を行う場合に2つの検出コイル26d、25dに接続された端子55bおよび55dより検出コイル26d、25dのそれぞれに誘起される電圧の差分を測定する。差動測定モードにおいては、これらの差分に基づいて、検出信号に含まれるノイズ信号を除去し欠陥信号を好適に取得することができる。
【0039】
なお、上記端子の接続先となる検出コイルは一例であり、他のコイルであってもよい。
【0040】
位相器52は、入力された励磁信号をシフトして位相検波用の基準信号を生成する。検波回路53は、この基準信号を用いて励磁磁束に基づく検出信号を抽出する。抽出された検出信号は、電圧振幅や位相の変化によりリサージュ波形を描画することができる。
【0041】
データ処理機構16は、検出信号の位相角調整機構61と微分処理機構62を有する。
【0042】
位相角調整機構61は、検出コイル群13からの検出信号のリサージュ波形を表示する場合に、欠陥信号振幅がY成分に最大になるように位相角を調整する。
【0043】
図5(A)は位相角調整前の渦電流探傷信号リサージュ波形の一例、(B)は位相角調整後の渦電流探傷信号リサージュ波形の一例を示す。
【0044】
図5におけるリサージュ波形では、欠陥信号71、ノイズ信号72が表されている。位相角調整機構61は、探傷試験開始前に校正試験片を用いてリサージュ波形を取得し、欠陥信号のリサージュ波形における最大振幅点71aのデータ(X,Y)の位相角とπ/2との差θを取得する。位相角調整機構61は、差θを用いて+θだけ位相角回転した以下のX成分、Y成分を取得し位相角を調整する。
(X成分)=(検出信号のX成分)×cosθ+(検出信号のY成分)×sinθ
(Y成分)=(検出信号のX成分)×(−sinθ)+(検出信号のY成分)×cosθ
【0045】
微分処理機構62は、検出信号の電圧振幅Vの時間tに対する変化に対して微分処理を行い、検出信号の変化の割合を算出する。
【0046】
図6(A)は、微分処理前の検出信号チャート図の一例、(B)は微分処理後のチャート図の一例を示す。
【0047】
図6(A)に示すチャート図のように、欠陥を示す欠陥信号81と比較的周波数の小さい(周期の大きい)信号82(例えばドリフト)が混在し閾値で欠陥判定が困難な場合がある。この場合、微分処理機構62は、検出信号を時間で微分することにより検出信号の変化の割合を算出する。微分処理機構62は、図6(B)のチャート図に示す検出信号の変化の割合を求め、欠陥信号81aの判断を容易にすることができる。
【0048】
データ表示機17は、検出器15より得られるリサージュ波形やチャート図、および位相角調整機構61および微分処理機構62より得られる処理後のリサージュ波形やチャート図を表示する。
【0049】
次に、本実施形態における渦電流探傷試験装置1の動作について説明する。
【0050】
操作者は、被検査体の種類に応じてNF−ECTまたはRF−ECTのいずれで探傷試験を行うかを決定し、距離制御機構31により励磁コイル群12と検出コイル群13との間隔Wを調整する。
【0051】
NF−ECTで試験が行われる場合、距離制御機構31は走査可能な範囲で最小の値に間隔Wを制御する。NF−ECTにおいては、励磁コイル群12と検出コイル群13との間隔が小さいほど検出コイル群13における検出感度は高まるが、最小値となる間隔Wは例えば被検査体となる配管2の形状(U字管、直管など)や寸法に基づいて、配管2内の走査(移動)が可能な値に設定される。
【0052】
RF−ECTで試験が行われる場合、操作者は、管径の3倍からコイル間距離最短に至るまで距離制御機構31を用いて間隔Wを変動させ、静的な磁場分布を予め測定する。操作者は、測定結果に基づいて直接磁場が支配的な領域から間接磁場が支配的な領域へと遷移する距離を求める。これにより、励磁コイル群12と検出コイル群13とは、距離制御機構31により間接磁場の変化を高い感度で検出することができる距離を間隔Wに設定する。
【0053】
距離制御機構31により励磁コイル群12と検出コイル群13との間隔Wが設定されると、励磁器14により励磁コイル群12に交流電流が流される。励磁コイル群12は、各コイルの中心軸P、Qが配管2の内周面に向くため、図1に示す磁路Aを形成する。励磁コイル群12は、磁束密度の高い中心軸P、Q方向の磁束を利用して配管2に渦電流を発生させることができる。
【0054】
例えばNF−ECTの場合、励磁コイル群12により励磁された直接磁場により配管2の表面および内部に誘起される渦電流の変化を効率よく検出するため、励磁器14は、各励磁コイル21a〜21dに個別に電流を流す。RF−ECTの場合、直接磁場に基づいて誘起される渦電流により二次的に発生する間接磁場を効率よく発生させるために配管2に発生する渦電流を管周方向へ流す必要がある。この場合、励磁器14は、励磁コイル21a〜21dを直列に接続し、全ての励磁コイル21a〜21dに同位相、同周波数、同振幅の電流を流す。励磁コイル群12は対称形であるため、直接磁場により発生した個々の渦電流の合成により結果的に管周方向に渦電流を流すことができる。なお、NF−ECTにおいても、励磁コイル21a〜21dを直列に接続し電流を流して検査を行うことも可能である。
【0055】
また他の走査方法として、走査の往路において、上述したように配管2の周方向へ渦電流を流すことにより欠陥の有無の検査を行い、復路において、励磁器14の制御により励磁コイル21a〜21dにそれぞれ異なる位相角を有する電流を流し局所的に高い密度の渦電流を発生させることにより欠陥指示箇所の詳細検査を行うこともできる。これにより、プローブの変更を要することなく異なる種類の検査を行うことができる点で有効である。
【0056】
励磁コイル群12の直接磁場または間接磁場により発生した渦電流の変化に基づく電流が検出コイル群13に流れると、検出器15は、ボビン27a〜27dの作用により図3に示す磁路Bを形成し磁束を収束させて、電圧を誘起させる。検出コイル群13は、中心軸S、Tが配管2の径方向と略一致するため、渦電流の変化を感度よく検出することができる。
【0057】
検出器15により検出された検出信号は、位相角調整機構61および微分処理機構62に出力される。位相角調整機構61は、リサージュ波形の位相角を調整することにより、欠陥信号をY軸に一致するよう調整する。微分処理機構62は、検出信号に対して微分処理を行い検出信号の変化の割合を算出する。所要の処理により得られた各データは、図5および図6に示すようにデータ表示機17に表示される。
【0058】
操作者は、データ表示機17に表示された検出結果を参照することにより、欠陥の有無や解析を行う。データ表示機17には欠陥信号がY成分に最大となるように表示されたリサージュ波形、および欠陥信号とノイズ信号との判別が容易なチャート図が表示されるため、試験経験の年数に依存することなく、容易に欠陥の判別を行うことができる。
【0059】
本実施形態における渦電流探傷試験装置1およびその試験方法は、励磁コイル群12と検出コイル群13とを配管2の周方向に均一に配置し、かつ各コイルの中心軸を配管2の径方向と一致させた。これにより、励磁コイル群12により誘起される高い磁束密度を有する磁束により配管2に効果的に渦電流を発生させることができる。また、検出コイル群13においても径方向において磁場の変化を感度よく検出することができる。この結果、コイル線材の線径による励磁電流の上限値や、幾何的制約による巻線数の制限が課される環境下においても、検出感度を高めることができる。
【0060】
また、励磁コイル群12と検出コイル群13とは、各コイルの中心軸に沿う断面が4相対称となっている。このため、例えばRF−ECTを行う場合において、励磁コイル21a〜21dを直列に接続し、かつ同位相、同周波数、同振幅の電流を流す際には、各励磁コイル21a〜21dにより誘起された渦電流の合成により配管2の周方向に電流を流すことができ、好適に探傷試験を行うことができる。
【0061】
さらに、渦電流探傷試験装置1は、距離制御機構31により励磁コイル群12と検出コイル群13との間隔を制御可能としたため、一台のプローブでNF−ECTおよびRF−ECTのいずれも実施することができる点で有効である。
【0062】
さらにまた、検出コイル群13のボビン27a〜27dは、上面29a〜29dの形状が配管2の内壁と相似するため、磁場検出領域内での感度分布の変動を抑制することができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0064】
例えば、励磁コイル群に含まれる励磁コイル数は4個に限らず、3個以上であればよい。励磁コイル数がn個である場合には、各励磁コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となる。これは、励磁コイルにより発生する渦電流の合成が、周方向に流れることを目的するものである。
【0065】
また、一の検出コイル群に含まれるコイル数は4に限らず、3個以上であればよい。この場合の、一の検出コイル群に含まれる各検出コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となる。なお、本実施形態においては検出コイルが配管の軸方向(走査方向)に沿って2列設けられる例を説明したが、これが一列であってもよい。
【0066】
励磁コイル群のコイル数と検出コイル群のコイル数とは、同一にする必要はなく、検出が好適に行われるよう適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 渦電流探傷試験装置
2 配管
11 プローブ
12 励磁コイル群
13a、13b 検出コイル群
14 励磁器
15 検出器
16 データ処理機構
17 データ表示機
21a〜21d 励磁コイル
22 励磁コイル芯
25a〜25d、26a〜26d 検出コイル
27a〜27d、28a〜28d ボビン
31 距離制御機構
45 位相角制御機構
46 周波数制御機構
47 電流振幅制御機構
51 分配器
52 位相器
53 検波回路
61 位相角調整機構
62 微分処理機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体に直接磁場を付与して渦電流を発生させるn個の励磁コイルが各コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となるように配置された励磁コイル群と、
前記渦電流から誘導される磁場を検出するn個の検出コイルが各コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となるように配置された検出コイル群とを備え、
前記nが少なくとも3以上であることを特徴とする渦電流探傷試験装置。
【請求項2】
前記励磁コイル群と前記検出コイル群との走査方向の間隔を制御する距離制御手段をさらに備える請求項1記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項3】
各前記励磁コイルに流れる励磁電流の位相を変化させる位相制御手段をさらに備える請求項1または2記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項4】
各前記励磁コイルに流れる励磁電流を同振幅にし、または各前記励磁コイルに流れる励磁電流の振幅を個別に制御する振幅制御手段をさらに備える請求項1または2記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項5】
各前記励磁コイルに流れる励磁電流を同周波数にし、または各前記励磁コイルに流れる励磁電流の周波数を個別に制御する周波数制御手段をさらに備える請求項1または2記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項6】
前記励磁コイルは、直列に接続される請求項1〜5のいずれか一項記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項7】
前記検出コイル群は、走査方向に対して2個配列される請求項1〜6のいずれか一項記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項8】
磁場を検出する前記検出コイルより出力される検出信号を選択的に検出する分配器をさらに備える請求項1〜7のいずれか一項記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項9】
前記検出信号の位相角を調整する検出位相角調整手段をさらに備える請求項1または2記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項10】
前記検出信号の時間に対する変化の割合を求める信号処理機構を備える請求項1または2記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項11】
前記検出コイルは、前記被検査体の形状に相似する、被検査体に対する対向面を有するボビンに巻き回される請求項1または2記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項12】
前記励磁コイルは、磁性体である巻芯に巻き回される請求項1または2記載の渦電流探傷試験装置。
【請求項13】
n個の励磁コイルが各コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となるように配置された励磁コイル群により被検査体に直接磁場を付与して渦電流を発生させるステップと、
n個の検出コイルが各コイルの中心軸に沿う断面がn相対称となるように配置された検出コイル群前により記渦電流から誘導される磁場を検出するステップとを備え、
前記nが少なくとも3以上であることを特徴とする渦電流探傷試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−173121(P2012−173121A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35059(P2011−35059)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】