説明

温室の暖房設備

【課題】化石燃料以外の燃料を燃焼させた熱を利用して加温する加温装置を利用し、該加温装置を利用して温室を効率良く暖房できる温室の暖房設備を得ることにより、省エネルギー化を図る。
【解決手段】化石燃料を燃焼させた熱を利用して温水を加温する第一加温装置131と、化石燃料以外の燃料を燃焼させた熱を利用して温水を加温する第二加温装置132を設け、温水の温度と設定される温水の目標温度の差が大きいほど加温管133側から合流する流量の割合が多くなるように加温管133側からの設定流量割合を設定し、前記加温管133側からの設定流量割合が所定の割合よりも大きく設定されるときは第一加温装置131及び第二加温装置132を共に燃焼運転し、前記加温管133側からの設定流量割合が所定の割合よりも小さく設定されるときは第二加温装置132のみを燃焼運転して第一加温装置131の燃焼運転を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温室の暖房設備に関し、植物の栽培の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料を燃焼させた熱を利用して温水を加温するボイラーである第一加温装置と、化石燃料以外から発生する熱を利用して温水を加温する太陽熱温水器である第二加温装置と、第一加温装置及び第二加温装置に温水を供給する加温管と、加温管により加温された温水をポンプへ供給するための第一供給管と、ポンプからの温水を温室内の暖房用管へ供給するための第二供給管と、暖房用管から加温管へ温水を戻すための戻り管を設け、加温管、第一供給管、第二供給管、暖房用管及び戻り管を経由する温水の循環経路を構成した温室の暖房設備が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−220217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、二酸化炭素の増加による地球温暖化等の環境問題に鑑み、植物の残渣やおがくず等の製材副産物を圧縮成形した木質ペレットを燃料としたボイラー等の化石燃料以外の燃料を燃焼させた熱を利用して加温する加温装置を利用し、該加温装置を利用して温室を効率良く暖房できる温室の暖房設備を得ることにより、省エネルギー化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、化石燃料を燃焼させた熱を利用して温水を加温する第一加温装置(131)と、化石燃料以外の燃料を燃焼させた熱を利用して温水を加温する第二加温装置(132)と、第一加温装置(131)及び第二加温装置(132)に温水を供給する加温管(133)と、加温管(133)により加温された温水をポンプ(134)へ供給するための第一供給管(135)と、ポンプ(134)からの温水を温室内の暖房用管(137)へ供給するための第二供給管(136)と、暖房用管(137)から加温管(133)へ温水を戻すための戻り管(138)を設け、加温管(133)、第一供給管(135)、第二供給管(136)、暖房用管(137)及び戻り管(138)を経由する温水の循環経路を構成すると共に、第一供給管(135)と戻り管(138)を繋ぐバイパス管(172)を設け、加温管(133)を経由せずにバイパス管(172)、第一供給管(135)、第二供給管(136)、暖房用管(137)及び戻り管(138)を経由する温水の循環経路を構成し、バイパス管(172)と第一供給管(135)の接続部には、加温管(133)側から合流する流量の割合とバイパス管(172)側から合流する流量の割合を調節する流量割合調節可能な切替弁(173)を設け、第二供給管(136)を流れる温水の温度を検出する温水温度センサ(175)を設け、該温水温度センサ(175)により検出される温水の温度と設定される温水の目標温度の差が大きいほど加温管(133)側から合流する流量の割合が多くなるように設定される加温管(133)側からの設定流量割合に基づいて切替弁(173)を制御すると共に、前記加温管(133)側からの設定流量割合が所定の割合よりも大きく設定されるときは第一加温装置(131)及び第二加温装置(132)を共に燃焼運転し、前記加温管(133)側からの設定流量割合が所定の割合よりも小さく設定されるときは第二加温装置(132)のみを燃焼運転して第一加温装置(131)の燃焼運転を停止させる制御装置を設けた温室の暖房設備とした。
【0006】
従って、第二供給管(136)を流れる温水の温度が高くなって、該温水の温度と温水の目標温度の差が小さくなると、切替弁(173)が作動して加温管(133)側から合流する流量の割合が少なくなると共にバイパス管(172)側から合流する流量の割合が多くなり、第一加温装置(131)又は第二加温装置(132)で加温される温水が第二供給管(136)ひいては暖房用管(137)に供給される量を抑え、熱量を無駄に消費しないようにし、省エネルギー化が図れる。第二供給管(136)を流れる温水の温度が低くなって、該温水の温度と温水の目標温度の差が大きくなると、切替弁(173)が作動して加温管(133)側から合流する流量の割合が多くなると共にバイパス管(172)側から合流する流量の割合が少なくなり、第一加温装置(131)又は第二加温装置(132)で加温される温水が第二供給管(136)ひいては暖房用管(137)に多量に供給されるようにし、温室を能率良く暖房できる。また、加温管(133)側からの設定流量割合が所定の割合よりも小さく設定されるときは第二加温装置(132)のみを燃焼運転して第一加温装置(131)の燃焼運転を停止させ、限りある資源である化石燃料の消費を抑え、省エネルギー化が図れる。そして、加温管(133)側からの設定流量割合が所定の割合よりも大きく設定されるときは第一加温装置(131)及び第二加温装置(132)を共に燃焼運転し、温水の加温量を増大させて温室を能率良く暖房できる。
【発明の効果】
【0007】
よって、化石燃料以外の燃料を燃焼させた熱を利用して加温する加温装置を利用して温室を効率良く暖房できると共に、省エネルギー化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】栽培施設を判り易く示す平面図
【図2】養液供給装置の養液移送系統を判り易く示す図
【図3】通風管を示す図
【図4】暖房設備を判り易く示す図
【図5】接木苗製造装置の要部を示す側面図
【図6】接木苗製造装置の要部を示す平面図
【図7】台木前処理部、穂木前処理部及び接着処理部を示す平面図
【図8】台木切断装置を示す側面図
【図9】穂木切断装置を示す側面図
【図10】一部省略した取込部を示す平面図である。
【図11】接木苗製造装置の要部拡大による平面図である。
【図12】接木苗製造装置の要部拡大による側面図である。
【図13】把持ハンドの拡大側面図である。
【図14】上段と中段の把持状態のハンド機構平面図(a)(b)である。
【図15】カッタ機構の作動状態平面図(a)とそのB一B線断面図(b)である。
【図16】第一の持上げ具の動作平面図である。
【図17】第一の持上げ具の動作側面図である。
【図18】第一の持上げ具の起立動作の正面図である。
【図19】第一及び第二の持上げ具を示す平面図である。
【図20】異なる第二の持上げ具を示す平面図である。
【図21】中段ハンド機構のハンド先端部を示す平面図である。
【図22】穂木苗の取込動作の動作手順図である。
【図23】把持ハンドの準備状態(a)と把持状態(b)の動作平面図である。
【図24】苗分離具を示すハンド機構の平面図である。
【図25】移送行程における方向修正動作の平面図である。
【図26】整列保持手段の要部平面図である。
【図27】整列保持手段の要部側面図(a)とそのB一B線断面図(b)である。
【図28】整列保持手段の受渡し動作の前後を示す側面図(a)(b)である。
【図29】穂木苗の受渡し動作の動作手順図である。
【図30】第一の整列動作の前後の平面図(a)(b)である。
【図31】第二の整列動作の前後の平面図(a)(b)である。
【図32】主整列部材及び副整列部材の整列動作の前後の平面図(a)(b)である。
【図33】操作パネルを示す図である。
【図34】異なる副整列部材を示す側面図である。
【図35】異なる副整列部材を示す平面図である。
【図36】異なる副整列部材を示す平面図である。
【図37】異なるハンド機構のハンド先端部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
図1は栽培施設の一例を示すものであり、この栽培施設は、暖房機や加湿機等により温度及び湿度等の室内環境が管理される温室である栽培室101と、該栽培室101に隣接する出荷室102とを備えている。前記栽培室101内の中央には作業者又は作業移動車となる作業台車103あるいは防除作業車等が通過できるメイン通路104を設けており、このメイン通路104は、路面がコンクリートで構成されたコンクリート通路である。メイン通路104の両側の側方位置には、栽培条となる栽培ベッド105を多数列配置した作物を栽培するための栽培スペース106を構成している。尚、前記栽培ベッド105はロックウールで形成され、出荷室102内の養液供給装置107から各栽培ベッド105へ養液が供給される構成となっている。また、メイン通路104の両端には開閉扉を備える栽培室101への出入り口108を設け、一方の出入り口108を介して隣接する出荷室102へ行き来できる構成となっている。尚、他方の出入り口108は、栽培施設の屋外から出入りできる構成となっている。そして、作業移動車をメイン通路104から各栽培条(各栽培ベッド105)の間のサブ通路109に移動させ、該サブ通路109で栽培条(栽培ベッド105)に沿って作業移動車103を移動させながら栽培条に対する各種作業を行うことができる。
【0010】
前記出荷室102内には、前述した養液供給装置107と、収穫されたトマト等の収穫物(果実)を重量や大きさあるいは等級別に選別する選別装置110とを備えている。尚、該選別装置110が、栽培された作物を出荷前に処理する前処理装置となる。選別装置110は、収穫物を搬送して選別する選別コンベア111と、該選別コンベア111の両側の側方に設けられた各階級毎の収穫物収容部112とを備えて構成され、選別コンベア111から各収穫物収容部112へ収穫物を供給して各階級に選別する構成となっている。尚、前記選別コンベア111は、平面視でL字状に屈曲した構成となっている。また、各々の収穫物収容部112には収穫物を収容する収容箱を設けて、この収容箱ごとに収穫物を出荷すればよい。
【0011】
栽培過程において、サブ通路109で葉取り作業(例えば、ミニトマトの場合では、1枝に3枚の葉がある状態が良くて、それ以上に葉がついた場合は取り除く)や芽欠き作業をしたとき、葉や芽の重量が多い場合は、果実が生育する環境ではなくて、葉や茎が生育する環境になっているのが原因であるから、栽培室(温室)101の環境を下記のようにすることが望ましい。
1.温度を上げる。
2.昼と夜の温度差を5度くらいに大きくする。
3.養液温度を上げる。
4.湿度を下げる。
5.養液のEC値を上げる。
6.灌水回数を少なくして栽培ベッド5を乾燥ぎみにする。
すると、葉や茎が生育する環境から果実が生育する環境になり、収穫が増える。
【0012】
また、サブ通路109で腐れ果取り作業(生育せずに腐ってしまった果実を取り除く)をしたとき、腐れ果の重量が多い場合は、栽培室101の環境を下記のようにすることが望ましい。
1.天井部に設けた遮光カーテンを閉めて遮光時間を長くする。
2.養液のEC値を下げる。
3.養液の灌水回数を多くする。若しくは、1回の養液供給量を増やす。
4.カルシウムを葉面に散布する。若しくは、養液中のカルシウム濃度を上げる。
5.湿度を上げる。
すると、腐れ果の発生が少なくなって、収穫が増える。
【0013】
ところで、養液供給装置107は、図2に示すように、養液を貯留する第一タンク141並びに第二タンク142、硝酸を貯留する酸タンク143及び原水を貯留する原水タンク144を備え、これらのタンク141,142,143,144内に貯留する液が各主開閉バルブ145,146,147,148を介して混合装置149に供給され、該混合装置149で混合される構成となっている。尚、前記第一タンク141と第二タンク142とは、互いに肥料成分の異なる養液を貯留している。第一タンク141、第二タンク142並びに酸タンク143から混合装置149への供給経路(供給パイプ150,151,152)において、前記各主開閉バルブ145,146,147の供給上手側には、各々混合前のフィルター153,154,155を設けている。更に、該混合前フィルター153,154,155の供給上手側には、各々副開閉バルブ156,157,158を設けている。混合装置149で混合された養液は、養液ポンプ159及び混合後のフィルター160を介して給液パイプ161により栽培室101内の各栽培ベッド105へ供給される。
【0014】
そして、酸タンク143からの供給経路(供給パイプ152)において、副開閉バルブ158及び混合前フィルター155より供給下手側で主開閉バルブ147より供給上手側には、分岐パイプ162(分岐経路)を接続している。この分岐パイプ162(分岐経路)は、第一タンク141及び第二タンク142からの供給経路(供給パイプ150,151)における副開閉バルブ156,157及び混合前フィルター153,154より供給下手側で主開閉バルブ145,146より供給上手側の各々の位置に接続され、酸タンク143内の硝酸を第一タンク141及び第二タンク142からの供給経路(供給パイプ150,151)へ供給可能に構成している。尚、前記分岐パイプ162の中途部には、電磁式の分岐用の開閉バルブ163を設けている。第一タンク141及び第二タンク142からの供給パイプ150,151において、分岐パイプ162の接続部より供給下手側で主開閉バルブ145,146より供給上手側には、供給パイプ150,151内の流量を検出する流量センサ164,165を各々設けている。また、養液ポンプ159及び混合後のフィルター160より供給下手側には栽培室101内の各栽培ベッド105すなわち給液パイプ161へ液を供給せずに排出するための排出パイプ166を接続しており、該排出パイプ166に設けた電磁式の排出用の開閉バルブ167により、養液ポンプ159から吐出する液を給液パイプ161へ供給する給液状態と排出パイプ166を介して外部に排出する排出状態とに切替可能に構成している。
【0015】
従って、栽培室101内の各栽培ベッド105へ養液を供給する通常状態では、分岐用開閉バルブ163及び排出用開閉バルブ167を閉じ、混合装置149で混合された養液を給液パイプ161へ供給する。この養液供給時に、各々の流量センサ164,165により第一タンク141及び第二タンク142からの供給パイプ150,151内の流量を逐次検出する。そして、養液供給時の供給パイプ150,151内の流量が所定値以下になった場合は、栽培室101内の各栽培ベッド105への養液供給を停止しているときに、制御装置により自動的に分岐用開閉バルブ163及び排出用開閉バルブ167を開いて養液ポンプ159を駆動し、酸タンク143内の硝酸を分岐パイプ162を介して第一タンク141及び第二タンク142からの供給パイプ150,151へ供給し、該硝酸を排出パイプ166を介して外部に排出する。このとき、第一タンク141及び第二タンク142からの供給パイプ150,151において各々の副開閉バルブ156,157を自動的に閉じ、前記供給パイプ150,151に供給される硝酸が該供給パイプ150,151を逆流して第一タンク141及び第二タンク142へ供給されないようにしている。よって、第一タンク141及び第二タンク142からの供給パイプ150,151において、養液中の不溶解物や不純物が詰まるおそれがあるが、流量センサ164,165により供給パイプ150,151内の詰まりを検出すると自動的に該供給パイプ150,151内へ洗浄液となる硝酸を注入して該供給パイプ150,151を自動洗浄することができ、従来のように供給パイプを分解して該パイプ内を洗浄するようなメンテナンスの手間が省けて作業能率が向上する。また、洗浄液(硝酸)は、排出パイプ166を介して外部に排出され、栽培ベッド105に直接供給されないので、上記の洗浄により植物の成育を阻害することがない。
【0016】
また、養液ポンプ159の供給下手側で混合後のフィルター160の供給上手側には、養液ポンプ159から吐出される養液を分岐して養液ポンプ159の供給上手側で混合装置149の供給下手側に戻す循環経路(循環パイプ168)を接続している。この循環経路(循環パイプ168)には電磁式の戻り用の開閉バルブ169を設けており、混合後フィルター160の供給下手側に設けた圧力センサ170により給液パイプ161への養液供給における圧力変動が大きいことを検出すると、制御装置により自動的に前記戻り用の開閉バルブ169を開いて養液を循環経路(循環パイプ168)を介して循環させ、給液パイプ161内の圧力を安定させる構成となっている。これにより、養液ポンプ159起動時やエアがみ等によるウォーターハンマー現象を防止すると共に、養液ポンプ159供給下手側の配管(給液パイプ161)の破損を防止できる。従来は、ポンプ起動時やエアがみ等によるウォーターハンマー現象が発生して栽培室内の各栽培ベッドへの養液供給量が不適正になったり、ポンプ供給下手側の地下に埋設される配管(給液パイプ)が破損するおそれがある。また、前記循環経路(循環パイプ168)には循環される養液の温度を検出する温度センサ171を設けており、該温度センサ171により養液の温度が所定値以上に上昇したことを検出すると、制御装置により強制的に養液ポンプ159を停止させて循環パイプ168で養液を循環させないようにして養液の温度低下を促すように構成している。これにより、養液の熱で配管内のバルブやパッキン等の構造物が溶解して破損するようなことを防止できる。従来、給液パイプ内の養液の圧力調整のために、栽培室内の各栽培ベッドへ養液を供給する給液パイプを介する長い循環経路を設けて該循環経路の養液の戻り経路部分に圧力調整バルブを設けたものがあるが、循環により養液の温度が上昇すると、養液の熱で配管内のバルブやパッキン等の構造物が溶解して破損したり養液の熱で栽培作物に悪影響を与えたりするおそれがある。
【0017】
また、栽培ベッド105からの排液は、原水タンク144に回収され、栽培ベッド105への給液に再利用される。栽培室101内には原水タンク144を通る通風管127を設け、ファン128の駆動により通風管127内に通風する。これにより、栽培室101内の空気が積極的に温度の低い原水タンク144に当たって結露し、栽培室101内の空気を簡易的に除湿できると共に、後述する暖房設備により暖房された栽培室101内の空気で原水タンク144内の原水及び養液を昇温させることができる。尚、結露した水は、通風管127に設けた排水口129を介して栽培室101外へ排出される。よって、後述する天窓制御における天窓130が開く頻度又は天窓130の開度を低く抑えることができるので、栽培室101内の室温低下を抑えることができ、暖房設備の暖房の負荷を抑えて省エネルギー化が図れる。
【0018】
この栽培室101の暖房設備について説明すると、化石燃料である重油又は灯油等の石油を燃焼させた熱を利用して温水を加温する石油ボイラーである第一加温装置131と、化石燃料以外の燃料である植物の残渣やおがくず等の製材副産物を圧縮成形した木質ペレット等を燃焼させた熱を利用して温水を加温する木質ペレットボイラーである第二加温装置132と、第一加温装置131及び第二加温装置132に温水を供給する加温管133と、加温管133により加温された温水をポンプ134へ供給するための第一供給管135と、ポンプ134からの温水を温室内の暖房用管137へ供給するための第二供給管136と、暖房用管137から加温管133へ温水を戻すための戻り管138を設け、加温管133、第一供給管135、第二供給管136、暖房用管137及び戻り管138を経由する温水の循環経路を構成している。尚、第一加温装置131、第二加温装置132及び加温管133は栽培室101外の管理室125内に配置され、第一加温装置131及び第二加温装置132が加温管133に沿って直列状に配置され、暖房用管137は栽培室101内の各サブ通路109に沿って配置されている。また、第一供給管135と戻り管138を繋ぐバイパス管172を設け、加温管133を経由せずにバイパス管172、第一供給管135、第二供給管136、暖房用管137及び戻り管138を経由する温水の循環経路を構成し、バイパス管172と第一供給管135の接続部には、加温管133側から合流する流量の割合とバイパス管172側から合流する流量の割合を調節する流量割合調節可能な切替弁(三方弁)173を設けている。尚、第二供給管136には、該第二供給管136を流れる温水の温度を検出する温水温度センサ175を設けている。栽培室101には、栽培室101内の室温を検出する室温センサ174と、栽培室101内の湿度を検出する湿度センサ176を設けている。
【0019】
栽培室101の環境を制御する制御部(コントローラ)126は、栽培室101外の管理室125内に配置され、温水温度センサ175、室温センサ174及び湿度センサ176の検出値を入力し、第一加温装置131、第二加温装置132、ポンプ134、切替弁173及び栽培室101の天窓130を開閉する天窓開閉モータ177へ作動信号を出力する。また、例えば昼間は高めに夜間は低めにというように一日の時間帯に応じて目標室温を演算して設定すると共に、設定される目標温度に対応して目標温度が高いほど低くなるように目標湿度を演算して設定する。尚、目標温度及び目標湿度は、上述の一日の時間帯に基づく設定方法以外に、作物の栽培過程や季節等に基づいて設定値を変更したり、作業者が一定の設定値に設定したりしてもよい。そして、目標湿度よりも湿度センサ176で検出される検出湿度が高くなると、天窓開閉モータ177を作動させ、天窓130を開く(天窓制御)。尚、目標湿度と検出湿度の差が大きくなるにつれて天窓130の開度が比例して大きくなるよう、天窓開閉モータ177が作動する。また、目標室温よりも室温センサ174で検出される検出室温が低いとき、目標室温に基づいて第二供給管136を流れる温水の目標温度を演算する。尚、目標室温が高くなるにつれて一次関数的に(目標室温に拘らず目標室温の一定の変化量に対する前記目標温度の変化割合が同一となる演算式に基づいて)前記目標温度が高く設定される。更に、温水温度センサ175により検出される温水の検出温度が目標温度よりも低いと、検出温度と目標温度の差が大きくなるにつれて一次関数的に(前記差に比例して)加温管133側から合流する流量の割合が多くなるように加温管133側からの設定流量割合が演算されて設定される。従って、目標室温よりも室温センサ174で検出される検出室温が低く且つ温水の検出温度が目標温度よりも低いとき、検出温度と目標温度の差が大きいほど、加温管133側から合流する流量の割合が多くなるように設定される加温管133側からの設定流量割合に基づいて切替弁173が作動する。また、前記加温管133側からの設定流量割合が予め設定される第一の所定の割合(0%)以下のとき、第一加温装置131及び第二加温装置132の燃焼運転を共に停止させる。目標室温よりも室温センサ174で検出される検出室温が低く且つ温水の検出温度が目標温度よりも低いとき、加温管133側からの設定流量割合が予め設定される第一の所定の割合(0%)を超過し予め設定される第二の所定の割合(100%)未満のとき、第二加温装置132のみを燃焼運転して第一加温装置131の燃焼運転を停止させる。目標室温よりも室温センサ174で検出される検出室温が低く且つ温水の検出温度が目標温度よりも低いとき、加温管133側からの設定流量割合が予め設定される第二の所定の割合(100%)以上のとき、第一加温装置131及び第二加温装置132を共に燃焼運転する。尚、前述した割合とは、第二供給管136を流れる合流した合流量に対する加温管133側からの流量の割合である。尚、室温センサ174で検出される検出室温や温水温度センサ175により検出される温水の検出温度に関係なく、常にポンプ134を作動させる。
【0020】
従って、第二供給管136を流れる温水の温度が高くなって、該温水の検出温度と温水の目標温度の差が小さくなると、切替弁173が作動して加温管133側から合流する流量の割合が少なくなると共にバイパス管172側から合流する流量の割合が多くなり、第一加温装置131又は第二加温装置132で加温される温水が第二供給管136ひいては暖房用管137に供給される量を抑え、熱量を無駄に消費しないようにし、省エネルギー化が図れる。第二供給管136を流れる温水の温度が低くなって、該温水の検出温度と温水の目標温度の差が大きくなると、切替弁173が作動して加温管133側から合流する流量の割合が多くなると共にバイパス管172側から合流する流量の割合が少なくなり、第一加温装置131又は第二加温装置132で加温される温水が第二供給管136ひいては暖房用管137に多量に供給されるようにし、栽培室(温室)101を能率良く暖房できる。また、加温管133側からの設定流量割合が第二の所定の割合よりも小さく設定されるときは第二加温装置132のみを燃焼運転して第一加温装置131の燃焼運転を停止させ、限りある資源である化石燃料の消費を抑え、省エネルギー化が図れる。そして、加温管133側からの設定流量割合が所定の割合よりも大きく設定されるときは第一加温装置131及び第二加温装置132を共に燃焼運転し、温水の加温量を増大させて栽培室(温室)101を能率良く暖房できる。尚、目標湿度よりも湿度センサ176で検出される検出湿度が高くなって天窓130を開けば、栽培室101内の室温が低下するが、それにより目標室温よりも室温センサ174で検出される検出室温が低く且つ温水の検出温度が目標温度よりも低くなれば、前述と同様に暖房制御する。
【0021】
よって、化石燃料以外の燃料(廃棄物や副産物等)を燃焼させた熱を利用して加温する加温装置を利用して温室を効率良く暖房できると共に、省エネルギー化が図れる。
この栽培施設で栽培するための苗は、次に説明する接木苗製造装置1により接木苗として製造することができる。
【0022】
接木苗製造装置1は、台木と穂木を接ぎ木する接木ロボット本体laを中心にその左側(図5の上側)に不図示の台木取込部(取込部)、同右側(図5の下側)に穂木取込部(取込部)2が配置され、接木ロボット本体laには、その前面の左右に台木取込部または穂木取込部2から台木、穂木としての苗をそれぞれ受ける台木前処理部(前処理部)3、穂木前処理部(前処理部)4、中央には、台木前処理部3または穂木前処理部4から受けた台木と穂木を接着する接着処理部7、この接着された接木苗を下方から送出する接木苗送出部8を配置して左右を略対称に構成し、穂木取込部2の手前側には操作パネルlpを設けたものである。
【0023】
台木前処理部3は、空気圧で作動する台木側のロータリーアクチュエータ60の駆動により回転作動する台木搬送アーム61を備え、該台木搬送アーム61により台木取込部からの台木苗を把持し、台木搬送アーム61が90度回転して台木苗を切断位置62に搬送し、その後台木搬送アーム61が更に90度回転して台木苗を接合位置63に搬送する。切断位置で台木切断装置64により台木苗を切断し、双子葉の片葉を切り落とす。尚、切断装置64で切断して切り落とすはずの切除部分が搬送する苗に付着して搬送されることがあるが、切断位置62から接合位置63への搬送経路上には、前記切除部分を取り除くための樹脂製のブラシ65を設けると共に、台木搬送アーム61にはエアを吹き付けるエアノズル66を設け、切除部分を確実に落として、接木苗の接合を適正に行えるようにしている。
【0024】
穂木前処理部4は、空気圧で作動する穂木側のロータリーアクチュエータ67の駆動により回転作動する穂木搬送アーム68を備え、該穂木搬送アーム68により穂木取込部2からの穂木苗を把持し、穂木搬送アーム68が90度回転して穂木苗を切断位置69に搬送し、その後穂木搬送アーム68が更に90度回転して穂木苗を接合位置63に搬送する。切断位置69で穂木切断装置70により穂木苗を切断し、胚軸の下側部を切り落とす。尚、切断装置69で切断して切り落とすはずの切除部分が搬送する苗に付着して搬送されることがあるが、切断位置69から接合位置63への搬送経路上には、前記切除部分を取り除くための樹脂製のブラシ71とエアを吹き付けるエアノズル72を設け、切除部分を確実に落として、接木苗の接合を適正に行えるようにしている。
【0025】
接着処理部7は、接木苗の接合用のクリップを一つずつ繰り出すクリップフィーダ73と、台木苗及び穂木苗が接合位置63に到達した状態で該クリップフィーダ73で繰り出されるクリップを一つずつ供給して台木苗及び穂木苗を固定するクリップ供給装置74を備えている。尚、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68が接合位置63に到達したとき、台木苗と穂木苗の各々の切断面が合致して苗を接合した状態となる。
【0026】
台木搬送アーム61による台木苗の切断位置62への搬送及び穂木搬送アーム68による穂木苗の切断位置69への搬送作動は、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68がそれぞれの苗を共に把持するのに伴って同期して作動を開始するが、穂木側の速度調整装置(流量制御弁)を作動させて穂木側のロータリーアクチュエータ67へのエア流量を少なくして穂木搬送アーム68の作動速度を台木搬送アーム61の作動速度よりも若干遅くして、穂木搬送アーム68が切断位置69に到達するタイミングを台木搬送アーム61が切断位置62に到達するタイミングよりも遅らせる。そして、穂木搬送アーム68が切断位置69に到達したことを穂木側のローリングアクチュエータ67に設けた穂木側の回転位置検出センサ(リードスイッチ)により検出すると、台木切断装置64及び穂木切断装置70が切断動作を開始する。これにより、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68が各々切断位置62,69に確実に到達した状態で各々の切断装置64,70を作動させることができ、適正に苗を切断することができると共に、台木側の切断位置検出用の回転位置検出センサ(リードスイッチ)を省略できてコストダウンが図れる。また、台木苗よりも軽い穂木苗をゆっくりと搬送させることにより、穂木苗のバランスが崩れて該苗の姿勢が悪化し、穂木苗における切断位置が不適正になって接木苗の接合状態が悪くなる不具合を防止できる。従来は、台木搬送アームと穂木搬送アームを同じ作動速度で作動させるようにしていたので、台木側と穂木側のエアホースの長さや屈曲度合や傷み具合の相違等により、台木搬送アームと穂木搬送アームの内の一方の作動速度が遅くなると、作動速度が速い側で切断位置に到達することを検出するようにしたとき、作動速度が遅い側が切断位置に到達する前に切断装置が作動して、苗の切断が不適正となるおそれがある。
【0027】
同様に、台木搬送アーム61による台木苗の接合位置62への搬送及び穂木搬送アーム68による穂木苗の接合位置69への搬送作動は、台木切断装置64及び穂木切断装置70の切断動作の完了に伴って同期して作動を開始するが、台木側の速度調整装置(流量制御弁)を作動させて台木側のロータリーアクチュエータ60へのエア流量を少なくして台木搬送アーム61の作動速度を穂木搬送アーム68の作動速度よりも若干遅くして、台木搬送アーム61が接合位置62に到達するタイミングを穂木搬送アーム68が切断位置69に到達するタイミングよりも遅らせる。そして、台木搬送アーム61が切断位置62に到達したことを台木側のローリングアクチュエータ60に設けた台木側の回転位置検出センサ(リードスイッチ)により検出すると、クリップ供給装置74がクリップ供給動作を開始する。これにより、台木苗及び穂木苗が各々接合位置63に確実に到達した状態でクリップを供給することができ、台木苗と穂木苗を適正に固定することができて接木苗の接合率の向上が図れると共に、穂木側の接合位置検出用の回転位置検出センサ(リードスイッチ)を省略できてコストダウンが図れる。また、片葉切断した状態の台木苗をゆっくりと搬送させることにより、台木苗のバランスが崩れて該苗の姿勢が悪化し、接木苗の接合状態が悪くなる不具合を防止できる。
【0028】
台木切断装置64は、切断刃75と、切断する側の子葉の葉柄を支える葉柄支え具76と、残す側の子葉を上側から押さえる子葉押さえ具77を備える。切断刃75と葉柄支え具76は、空気圧で作動する前後移動用シリンダ78により移動して、切断位置62にある台木苗に近づき、葉柄支え具76が葉柄に接触して保持する(図8(2)参照)。尚、前後移動シリンダ78は台木苗側が高位となるよう傾斜しており、切断刃75と葉柄支え具76が下側寄りの位置から台木苗に近づいて苗の子葉に干渉しないように構成している。その後、空気圧で作動する子葉押さえ用ロータリーアクチュエータ79により子葉押さえ具77が下側に回動し、子葉押さえ具77の先端部に設けた子葉押さえローラ80により子葉を上側から押さえる(図8(3)参照)。その状態で、空気圧で作動する切断用シリンダ81により斜め上方向に直線移動軌跡で切断刃75を移動させ、苗の胚軸及び片葉を切断して切り落とす(図8(4)参照)。苗を切断すると、前後移動シリンダ78により切断刃75及び葉柄支え具76を台木苗から退避させ(図8(5)参照)、その後、子葉押さえ具77を上側へ回動して元の位置に戻すと共に、切断用シリンダ81により切断刃75を斜め下方向に移動させて元の位置に戻す(図8(1)参照)。
【0029】
よって、直線移動軌跡で苗を切断するので、切断面が平面状となり、接木苗の接合率の向上が図れると共に、残す側の子葉の付け根をできるだけ切除しないようにでき、接木苗の成育を良好に維持できる。従来は、切断刃を回転移動軌跡で移動させて苗を切断するので、切断面が曲面状となって接木苗の接合率向上を阻害し、残す側の子葉の付け根を抉り取るように切断して接木苗の成育を阻害するおそれがある。また、葉柄支え具76と子葉押さえ具77により適正な位置で苗を切断することができ、更に、切断用シリンダ81の取付角度を調節することにより、回転移動軌跡で苗を切断する構成と比較して切断角度を容易に調節できる。
【0030】
穂木切断装置70は、切断刃82と、切り落とす側(下側部)の胚軸を支える胚軸支え具83を備える。切断刃82と胚軸支え具83は、空気圧で作動する前後移動用シリンダ84により移動して、切断位置69にある穂木苗に近づき、胚軸支え具83が胚軸に接触して保持する(図9(2)参照)。尚、前後移動シリンダ84は穂木苗側が高位となるよう傾斜しており、切断刃82と胚軸支え具83が下側寄りの位置から穂木苗に近づいて苗の子葉に干渉しないように構成している。尚、穂木苗に近づいた状態で、切断刃82は、子葉の裏側(下側)に位置する。そして、空気圧で作動する切断用シリンダ85により斜め下方向に直線移動軌跡で切断刃82を移動させ、苗の胚軸の下側部を切断して切り落とす(図9(3)参照)。苗を切断すると、前後移動シリンダ84により切断刃82及び胚軸支え具83を穂木苗から退避させ(図9(4)参照)、切断用シリンダ85により切断刃82を斜め上方向に移動させて元の位置に戻す(図9(1)参照)。
【0031】
よって、直線移動軌跡で苗を切断するので、切断面が平面状となり、接木苗の接合率の向上が図れると共に、穂木苗に近づいた状態で、切断刃82は子葉の裏側(下側)に位置するので子葉を切除しないようにでき、接木苗の成育を良好に維持できる。従来は、切断刃を回転移動軌跡で移動させて苗を切断するので、切断面が曲面状となって接木苗の接合率向上を阻害し、子葉が大きくて垂れ下がるような苗では切断刃が子葉に接触して子葉を切除したり子葉に傷を付けるおそれがあり、接木苗の成育を阻害するおそれがある。また、胚軸支え具83により適正な位置で苗を切断することができ、更に、切断用シリンダ85の取付角度を調節することにより、回転移動軌跡で苗を切断する構成と比較して切断角度を容易に調節できる。しかも、穂木搬送ハンド68と胚軸支え具83の中間位置で切断刃82が苗を切断するので、苗の切断位置が安定する。
【0032】
尚、台木切断装置64の切断刃75と穂木切断装置70の切断刃82は、平面視で互いに接合位置63側ほど苗から離れるように斜めに配置され、切断する苗に対し前進角を有して移動して苗を切断する。これにより、苗の切断抵抗を抑えて苗の切断を円滑に行えると共に、接木苗を固定するクリップの把持部における先端側(接合位置における前側(切断位置側))から各々の苗を切断することになるので、切断時に苗の切断位置が位置ずれし易い切断終端がクリップの把持部における奥側(接合位置63における後側(切断位置62,69と反対側))となるが、クリップの把持部における奥側で苗の保持精度が高まるため、接木苗の接合率向上が図れる。
【0033】
尚、前記台木取込部及び穂木取込部は互いに左右対称で同様の構成であるので、以下は、穂木取込部2について説明する。
穂木取込側については、穂木取込部2は、接木ロボット本体laの側方で苗ポットに育成した多数の穂木苗(苗)Wを格子配列したセルトレイを順次搬入移送する搬入機構11と、この搬入機構11上の穂木苗Wに対して進退機構12bにより進退動作可能に穂木苗Wを穂木として個々の把持しつつ胚軸をカットして把持動作する把持ハンド12と、この把持ハンド12を左右方向に横移動可能に支持する移送機構13と、その移送行程上に配した方向修正部材14等から構成する。また、穂木取込部2と穂木前処理部4との間の穂木受渡し位置(受渡し位置)Rには、穂木取込部2から移送された穂木苗Wを一時的に保持する受渡保持機構15を設ける。
【0034】
詳細には、上記搬入機構11は、接木ロボット本体laの側方に沿って移送動作するべルトコンベヤ等により構成し、横一列の苗が取り出される度にセルトレイの配列ピッチで順次移送動作することにより、穂木苗Wを所定位置に搬入する。移送機構13は、接木苗製造装置1の片側位置で搬入機構11を横断して受渡保持機構15までの範囲で把持ハンド12を左右に位置制御可能に構成し、セルトレイの横一列の苗において受渡保持機構15側から苗を取り出すべく、把持ハンド12が受渡保持機構15へ苗を供給した後に次に取り出す苗(苗があるセル)の左右位置に順次左右移動する構成となっている。この移送機構13による移送行程に干渉するように、棒状部材または回動抵抗を抑えた縦軸ローラによる方向修正部材14を下垂状に配置する。この方向修正部材14は、移送機構13の左右移送経路の終端の直前位置で、受渡保持機構15に対向する位置より若干搬入機構11側に配置されている。また、受渡保持機構15には、把持ハンド12から受けた穂木苗Wを保持した際にその子葉展開方向を規制する整列部材16を設ける。これら受渡保持機構15と整列部材16とにより整列保持手段を形成する。
【0035】
次に、穂木取込部2の把持ハンド12について詳細に説明する。
把持ハンド12は、拡大側面図を図13に示すように、穂木苗Wの胚軸Aの上段部と中段部を把持する上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびその下方に開閉動作により穂木苗Wの胚軸Aの下段部を切断するカッタ機構23を三段重ねに進退機構12bにより一体に進退動作可能に配置し、その側方に独立して上下動作可能に持上げ具24を備えて構成する。また、把持した胚軸Aの近傍で子葉Lと干渉しうる位置に回り止め用の棒状のストッパ25をカッタ機構23から立設する。
【0036】
上段のハンド機構21は、把持状態の平面図を示す図14(a)のように、左右の開閉アーム21a,21aの先端の把持位置に穂木苗の肥軸Aの径寸法より大きく左右方向の切欠Bを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成し、その隙間限度設定用の調節ボルト21bを設ける。中段のハンド機構22は、その把持状態の平面図を示す図14(b)のように、左右の開閉アーム22a,22aのその先端の把持位置に穂木苗の肥軸Aの径寸法より大きく前後方向の切欠Cを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成する。これら両ハンド機構21,22により、穂木苗の把持位置精度を確保しつつ、穂木苗がその胚軸線で回動可能に把持する。
【0037】
カッタ機構23は、その作動状態平面図(a)とそのB−B線断面図(b)を図15に示すように、左右の開閉アーム23a,23aの先端部に穂木苗の胚軸Aを切断する刃23bを形成し、かつ、切断後の胚軸Aの移動を拘束するように外周縁を高く形成する。
【0038】
上記の両ハンド機構21,22とカッタ機構23は、穂木苗を穂木としてその根側を切断しつつその胚軸を回動可能に緩く把持する遊嵌把持機構を形成する。
前記持上げ具24は、第一の持上げ具41と第二の持上げ具42とを備えて構成される。前記第一の持上げ具41は、穂木苗Wの根元位置まで前下がりに傾斜するとともに、受渡保持機構15側すなわち苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動してくる側となる同穂木苗Wの側方から背後に達するように先端部41tを屈曲したロッドにより形成される。先端部41tとその基部に屈曲して延びる側部41sを略直角に設定することにより、図18の起立動作の正面図に示すように、持上げ具41の上行動作により倒れた胚軸Aを起立することができる。持上げ具41の支持部41bは、穂木苗に対する位置関係に合わせて前後位置と高さ位置を調節可能に構成する。
【0039】
また、苗Wに対して前記第一の持上げ具41と左右反対側に第二の持上げ具42を設けている。この第二の持上げ具42は、受渡保持機構15とは反対側で苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動する側となる苗の側方に位置するべく屈曲したロッドにより形成され、前後移動シリンダ43により進退動作可能に設けられている。苗の側方に位置する第二の持上げ具42の先端部42aは、前記第一の持上げ具41の先端部41tと同様に水平で、第一の持上げ具41の先端部41tより若干高位で且つ前後移動シリンダ43により突出させた状態で平面視で交差するように設けられている。従って、第一の持上げ具41の上行動作で第二の持上げ具42が共に上動し、苗の左右両側方及び後方の三方から苗を持ち上げて直立させることができ、把持ハンド12による穂木苗の把持を適正に行える。特に、セルのピッチが狭いセルトレイにおいて、第二の持上げ具42により把持ハンド12が左右移動した側の隣接苗側に苗が傾いたまま把持ハンド12で把持して移送するようなことを防止でき、苗が隣接苗と絡んだまま把持ハンド12で移送されて苗の把持姿勢が不適正になるようなことを防止できる。また、一方の持上げ具41の上下動機構で他方の持上げ具42も上下動させる構成としたので、この上下動機構の簡素化が図れる。また、第二の持上げ具42を平面視で中途部が把持ハンド12側(隣接苗から離れる側)に突出するように屈曲させた構成としているので、該第二の持上げ具42に干渉しないように把持ハンド12の開閉量を所定に維持できると共に、第二の持上げ具42が隣接苗と干渉しにくくなり、苗取り出しの円滑化が図れる。尚、第二の持上げ具42は、図20に示すように平面視で斜めの部分を設けて構成してもよい。
【0040】
上記の持上げ具24では三方から苗を持ち上げる構成であるので、残りの一方側(把持ハンド12側)に倒れる苗を直立させることはできない。そこで、搬入機構11のセルトレイ上には、該セルトレイの左右幅にわたる倒れ規制具44を設けている。この倒れ規制具44は、セル内の培土を荒らしたり搬入機構11によるセルトレイの搬送抵抗になったりしないように回転自在のローラで構成され、把持ハンド12で取り出す苗の把持ハンド12側で適確に作用するようにセルの上方に位置する。
【0041】
また、把持ハンド12の両ハンド機構21,22に各々において、左右一対の開閉アーム21a,22aのうち受渡保持機構15側(右側)に位置する一方の開閉アーム21a,22aには、受渡保持機構15と左右反対側(左側、他方の開閉アーム21a,22a側)に延びる苗分離具45を固着して設けている。この苗分離具45は、棒材で構成され、左右方向(左側)に延びる基部45aと該基部45aから前側に屈曲して延びる先端部45bとを備え、開閉アーム21a,22aより若干上位に配置されている。苗分離具45の先端部45bは、一対の開閉アーム21a,22aが開いた状態では、前記他方の開閉アーム21a,22aの上方に位置し、略前後真直方向で若干把持方向内側に向かって延び左右の開閉アーム21a,22aの角度に対して把持方向内側に向く角度となる。一方、一対の開閉アーム21a,22aが閉じた状態では、他方の開閉アーム21a,22aより把持方向外側(左側)に位置し、先端へいくほど把持方向外側となる外向きの角度となる。従って、セルトレイの苗を把持するべく進退機構12bにより把持ハンド12が前進するときは、一対の開閉アーム21a,22aが開き、苗分離具45の先端部45bは把持しようとする苗に干渉しないように当該苗と隣接苗との間に挿入される。そして、一対の開閉アーム21a,22aを閉じると、苗分離具45の先端部45bは隣接苗側(左側)に回動して移動し、把持する苗と隣接苗とを離して苗の絡みを解くようになっている。
【0042】
上記構成の把持ハンド12による穂木苗の取込動作は、図22の動作手順図に従って行う。
まず、図23(a)の準備状態の動作平面図に示すように、後退位置で上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびカッタ機構23を開状態に準備(S1)した上で、接木苗製造装置1の外側方向への移送機構13の横移動により、搬入機構11上の穂木苗Wの側方から第一の持上げ具41の先端部41tを穂木苗Wの背面位置に挿し入れ、その後前後移動シリンダ43を伸長し第二の持上げ具42を前側に突出させて平面視で先端部が苗の側方に位置させると共に第一の持上げ具41の先端部41tと交差させ、第一の持上げ具41及び第二の持上げ具42の上行動作(S2)により穂木苗Wの倒れを修正する。尚、持上げ具24は、上行動作(S2)前において、カッタ機構23の略同じ高さに位置する。これにより、カッタ機構23をセルの上面に近づけることができて該カッタ機構23が苗の根元を切断でき、冬期に育苗されるような胚軸が短い苗でもハンド機構21,22で苗を適正に取り出すことができる。
【0043】
次いで、図23(b)の把持状態の動作平面図に示すように、ハンド機構21,22およびカッタ機構23を前進(S3)した上で両ハンド機構21,22を閉じる(S4)ことによりハンド機構21,22の先端の切欠B、Cに穂木苗Wの胚軸Aが遊嵌保持され、その後にカッタ機構23を閉じる(S5)ことにより、胚軸Aの下段部が切断されて穂木苗Wは回動可能に同カッタ機構23により下端が支持される。ここで、ハンド機構21,22およびカッタ機構23を後退(S6)した上で接木苗製造装置1の中心方向に横移動(S7)することにより、搬入機構11から穂木苗を個別に取込むことができる。尚、S6におけるハンド機構21,22およびカッタ機構23の後退距離すなわち進退機構12bによる進退作動ストロークは、S6の行程によりセルトレイから取り出すべく把持する苗が隣接苗と完全に干渉しない長さに設定されている。
【0044】
また、移送機構13による移送行程においては、図25の方向修正動作の平面図に示すように、穂木苗を把持した把持ハンド12が把持位置Bから受渡し位置Cまで横移動する際に、その移送行程に干渉するように配置した方向修正部材14の近傍を通過することにより、穂木苗Wの子葉展開方向が移送方向に対して大きく傾斜していると子葉が方向修正部材14と干渉することにより子葉展開方向が略移送方向に揃うように穂木苗が回動される。このとき、穂木苗が過大に回動されても、受渡保持機構15と対向する位置に設けた山形で平板状に構成される整列部材となる副整列部材46に苗の子葉が当たってその回動範囲が規制される。この副整列部材46は、上下位置を調節可能に設けられ、移送機構13で移送されてくる苗の胚軸Aや子葉が直接当たることで苗の姿勢又は子葉展開方向がかえって不適正にならないようにでき、苗の大きさや種類に応じて位置調節できる。
【0045】
前記移送機構13は、コンプレッサからの空気圧により摺動するエアシリンダにより把持ハンド12を横移動させる構成であり、前記シリンダに備えるストロークセンサにより把持ハンド12が搬入機構11及び該搬入機構11上のセルトレイの上方から離れて方向修正部材14の直前位置まで到達したことを検出すると、シリンダへ供給するエアの流量が少なく制御されて移送速度が減速され、移送終端部での移送速度が低速となる構成となっている。この移送速度が減速される位置は、取り出す苗(苗があるセル)の左右位置となる移送始端位置に拘らず同じ位置に設定されている。尚、把持ハンド12が次の苗を把持するべく受渡保持機構15の受渡し位置から搬入機構11上のセルトレイ側へ移動する戻り行程では、通常の速い移送速度で把持ハンド12が横移動する。持上げ具24は、移送機構13の移送速度が移送終端部で減速されるまでの間、持上げ状態に上昇したままであり、苗の移送で他の苗と干渉する等して該苗の姿勢が悪化するようなことを防止している。尚、移送機構13の移送速度が減速するのと同時にカッタ機構23より下位に下降し、苗受渡し行程において邪魔にならないようにしている。
【0046】
尚、把持ハンド12が苗を取り出して上昇した状態で異常停止やオペレータによる中断操作等の停止状態となった後、リセット操作をすると、把持ハンド12が移送機構13により元の原点位置である受渡し位置Rに戻ろうとするが、把持ハンド12が上昇している状態であるので受渡し保持機構15に干渉することになってしまう。そこで、把持ハンド12が下降位置にあることを検出するセンサを設けており、リセット操作をしたときに、該センサにより把持ハンド12が下降位置にあることを検出したときのみ、移送機構13により把持ハンド12を受渡し位置Rに横移動させる構成となっている。
【0047】
次に、受渡し位置Rに構成される受渡保持機構15と整列部材とによる整列保持手段について説明する。
受渡保持機構15は把持ハンド12の進出位置で穂木苗を受けるべく、進出動作する把持ハンド12に対向して配置される。その構成は、要部平面図を図26に、要部側面図(a)とそのB一B線断面図(b)を図27に示すように、受けた穂木苗の胚軸Aの上段部を把持する上段ハンド機構31と、その下方で胚軸Aの中段部を把持する中段ハンド機構32と、両ハンド機構31、32の中間高さ位置で胚軸Aの過大な進入を規制するストッパ33と、これらを一体に高さ位置を調節する昇降機構34とを受渡し位置Rに備える。
【0048】
前記中段ハンド機構32は、下動シリンダ(下動機構)により苗を把持した状態で下降動作する構成となっている。これにより、把持した苗の胚軸Aを苗の上部にある子葉展開基部が上段ハンド機構31の上面に当接するまで下側へ引き下げ、苗の上下位置が所定位置となるように位置決めする。尚、上段ハンド機構31の把持力は中段ハンド機構32の把持力より小さく設定されており、中段ハンド機構32で苗の胚軸Aを引き下げるとき、胚軸Aが上段ハンド機構31内を滑って引き下げられる。また、中段ハンド機構32の下動途中で苗の子葉展開基部が上段ハンド機構31に当接して所定位置で支持された後の中段ハンド機構32の下動端までの下動では、苗が所定位置に保持されたままで苗の胚軸Aが中段ハンド機構32内を滑るようになっている。中段ハンド機構32の把持面は、一対のハンド32aの各々に前後2個の弾性体(スポンジ)47を固着して構成され、前記弾性体(スポンジ)47により苗の胚軸A位置を中心とする4方向から苗の胚軸Aを押圧して把持する構成となっている。この弾性体(スポンジ)47により、中段ハンド機構32の把持力を大きく設定できると共に、太い胚軸Aでは把持面の面積が大きくなり細い胚軸Aでは把持面の面積が小さくなるため、苗の大きさ(胚軸Aの太さ)に応じて中段ハンド機構32の把持力が設定され、該中段ハンド機構32による苗の引き下げを適正に行える。
【0049】
受渡保持機構15の上方で穂木苗の子葉を受ける位置に整列部材となる主整列部材16を配置する。主整列部材16は、双葉状の子葉展開方向を規制する平板状の部材であり、その中心位置に上下に延びる突条によるガイド部35を形成する。このガイド部35は受けた穂木苗の子葉を左右に振り分けるために、断面形状が山形でその表面を平滑に低摩擦に形成する。
【0050】
上記構成の整列保持手段における受渡し動作は、把持ハンド12の進出動作によって受渡保持機構15に穂木苗Wを渡す際に、穂木苗Wの子葉L,Lが主整列部材16に押し付けられるとともに、ガイド部35により子葉L,Lが左右に振り分けられて子葉展開軸線が主整列部材16に沿うように整列される。
【0051】
上記受渡し動作を図29の動作手順図に従って詳細に説明すると、搬入機構11から穂木苗を取込み、その胚軸を把持した把持ハンド12を受渡保持機構15の正面に位置を合わせた後、まず、図30(a)(b)の第一の整列動作の前後の平面図に示すように、カッタ機構23を含めて把持ハンド12を閉じた状態、すなわち、胚軸Aの下端をカッタ機構23上に受けつつ中段のハンド機構22の把持を緩めた状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで往復する(S11)ことにより主整列部材16を介して子葉展開方向が整列される。
【0052】
次いで、図31(a)(b)の第二の整列動作の前後の平面図に示すように、カッタ機構23を開く(S12)ことにより把持ハンド12のハンド機構21に子葉L,Lを受けて穂木苗Wの高さ位置を合わせる。この状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで往復する(S13)ことにより、主整列部材16に子葉が当たって子葉展開方向が整列される。
【0053】
上記のように進退機構12bの進退動作で把持ハンド12が往復すると、図32(a)の整列動作の前後の平面図に示すように、把持ハンド12の進出位置の主整列部材16と合わせて把持ハンド12側となる後退位置にも同様の副整列部材46を対向配置しているので、把持ハンド12の1往復につき苗の子葉が整列部材に2回接当することになり、進退動作により能率の良い整列動作が可能となる。尚、前記進退機構12bには、進退用シリンダと、把持ハンド12で把持された苗が主整列部材16に当たる位置に前記進退用シリンダが伸長したことを検出する伸長位置センサと、把持ハンド12で把持された苗が副整列部材46に当たる位置すなわち移送機構13で苗を移送するとき等の通常位置に前記進退用シリンダが収縮したことを検出する収縮位置センサとを備えている。従って、前記伸長位置センサと収縮位置センサとが交互に検出するべく進退用シリンダの伸縮作動を繰り返すことにより、把持ハンド12が往復作動する。
【0054】
尚、図面では、副整列部材46を所望の子葉の整列方向と同一方向としたものについて示したが、前記整列方向に対して方向修正部材14で修正する前の子葉方向側に若干斜めに構成してもよい。これにより、主整列部材16に子葉を当てて整列させる前に、副整列部材46により段階的に所望の子葉方向に近づけることができ、無理に子葉の向きを修正しようとすることにより苗が損傷するようなことを防止でき、子葉の向きの修正を円滑に且つ安定しておこなうことができる。また、副整列部材46のガイド部35を無くしてもよい。これにより、苗が横移動して前記ガイド部35に当たることにより損傷するようなことを防止できると共に、苗の横移動で平板状の副整列部材46にならって子葉の向きを円滑に修正することができる。
【0055】
整列動作の後、把持ハンド12を受渡保持機構15まで進出(S14)した上でカッタ機構23を閉じる(S15)ことにより、胚軸Aが所定位置で切断されて長さが揃えられる。この時、胚軸Aの曲がりがあっても、両ハンド機構31、32の中間高さ位置のストッパ33が胚軸Aの過大な進入を規制することから、胚軸Aを確実に切断することができる。
【0056】
胚軸Aの切断の後にカッタ機構23を開くとともに穂木苗Wを受けた受渡保持機構15の両ハンド機構31、32を閉じ(S16)、次いで、把持ハンド12の上下のハンド機構21,22を開くとともに受側の受渡保持機構15の中段ハンド機構32の下動により苗を引き下げて所定の保持高さに合わせ(S17)、その後、把持ハンド12を後退(S18)する。
【0057】
このようにして受渡しの終了後に、把持ハンド12を搬入機構11側に戻すことにより、次の穂木苗についての取込みが可能となる。この一連の動作の繰返しにより、搬入機構11から穂木苗を順次取込んで接木ロボット本体1aにより接木処理することができる。尚、苗受渡し行程において、持上げ具24は、苗の受け渡しの邪魔にならないようにカッタ機構23より下位に下降している。
【0058】
ところで、苗取込部2の作動を制御する操作パネル1pには、苗取込部2の電源の入切を行う電源スイッチ48と、作動モードを設定するモードスイッチ49と、搬入機構11で搬入するセルトレイの種類を設定するトレイ選択スイッチ50と、作動を開始させるスタートスイッチ51と、作動を停止させるストップスイッチ52と、各作動部を初期状態に復帰させるリセットスイッチ53と、セルトレイ上の苗位置及びセルトレイの苗列の数を任意に設定できる設定変更部54とを設けている。前記モードスイッチ49は、前記スタートスイッチ51の操作での作動域を選択する作動域選択手段であり、ストップスイッチ52を操作するまで連続的に順次苗を前処理部3へ供給するべく作動する自動位置と、1株の苗を前処理部3へ供給するまで作動する手動位置と、前記S1〜S7並びにS11〜S18の各作動行程ごとに作動するステップ位置とに切替操作できる。前記トレイ選択スイッチ50は、把持ハンド12が苗を取り出す左右方向の位置及び搬入機構11の搬送ピッチを切り替えて設定する設定切替手段であり、72穴セルトレイ用の72穴位置と、128穴セルトレイ用の128穴位置と、前記設定変更部54により任意に設定する手動設定位置(MS)とに切替操作できる。尚、前記72穴セルトレイとはセルが縦12列、横6列設けられたセルトレイであり、前記128穴セルトレイとはセルが縦16列、横8列設けられたセルトレイである。従って、これらのセルトレイの種類によってセルの配列ピッチが異なるため、各セルトレイに応じて前記トレイ選択スイッチ50により切り替える構成となっている。把持ハンド12はセルトレイの横一列の苗を受渡保持機構15側から順次取り出すが、この苗取出回数を操作パネル1p内の制御装置でカウントし、トレイ選択スイッチ50の設定に基づく横一列の回数になると、搬入機構11によりセルトレイを搬送する。これにより、横一列の苗を全て取り出したことを判断するために、把持ハンド12が取り出す苗の左右位置を確認するべく、制御装置(PLC)から移送機構13のエアシリンダへ左右位置の確認命令出力を行って該エアシリンダからの入力で判断するのに比較して、制御のスピードが向上し、作業能率の向上が図れる。
【0059】
また、接木ロボット本体laには、該接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部2からなる接木苗製造装置1の全体を一括で制御する制御装置を備える制御パネル55を設けている。この制御パネル55に、接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部2の作動の入切を行える切替スイッチ等の作動切替手段を設けている。この作動切替手段により、接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部2のうち、全部を作動させたり一部を作動させたりすることができ、様々な作業形態で接木苗製造作業が行える。例えば、胚軸長が短い場合に苗接合のための切断位置の精度を要する台木を人手で台木前処理部3へ精度良く供給したいとき、接木ロボット本体la及び穂木取込部2を作動させて台木取込部の作動を停止させることができる。あるいは、苗をセルトレイで育苗しなかった場合にその苗の取込部2を停止させて人手で苗供給したり、苗の接合を人手で行いたいときに取込部2を作動させて接木ロボット本体laの作動を停止させたりできる。尚、台木、穂木共に人手で供給したいときは、接木ロボット本体laのみを作動させればよい。
【0060】
以上により、この接木苗製造装置1において、各苗を1株づつ供給する苗供給装置となる取込部2は、受けた苗の根側を切断しつつ苗の胚軸を回動可能に緩く保持可能な把持ハンド12による遊嵌保持機構と、この遊嵌保持機構を支持して横方向に移送動作する移送機構13と、この移送機構13における移送終端部で苗の子葉と干渉することによってその子葉展開方向を移送方向に合わせるための方向修正部材14及び副整列部材46とを設け、前記移送機構13は、移送終端部での移送速度が低速となるよう前記方向修正部材14に苗の子葉が干渉する直前で移送速度が減速される構成としている。
【0061】
従って、前記遊嵌把持機構は、双葉状の展開子葉を有する苗を受けると、これを穂木または台木としてその根側を切断しつつ胚軸を回動可能に緩く把持し、この苗は遊嵌把持機構を支持する移送機構13により移送されるが、この移送速度は方向修正部材14に苗の子葉が干渉する直前で減速されて移送行程の終端部で低速となり、該移送行程の終端部で方向修正部材14及び副整列部材46が苗の子葉と干渉することによってその子葉展開方向が移送方向に揃えられ、この方向規制された苗が前処理部3,4と接着処理部7とにより台木または穂木と接着されて接木苗が製造される。
【0062】
よって、移送機構13の移送行程上で方向修正部材14及び副整列部材46が苗の子葉と干渉することによってその子葉展開方向が移送方向に揃えられるが、移送機構13により遅い速度で方向修正部材14に苗の子葉が干渉することになり、方向修正部材14に苗の子葉が勢いよく当たって苗の胚軸が回転し過ぎるようなことが抑えられ、前処理部3,4へ苗を適正な向きで精度良く安定して供給できる。従って、上記接木苗製造装置により、苗はその配置方向を規制されつつ受渡し位置まで移送されることから、以降の前処理部3,4と接着処理部7とによる接ぎ木処理精度が確保されて煩わしい人手作業を要することなく能率良く接木処理するごとができる。また、移送機構13の移送速度が移送終端部の直前で減速される構成とし、次の苗を取りにいく移送機構13の戻り行程と移送機構13による苗の移送経路の大部分(減速されるまでの大部分)とでは把持ハンド12が高速で移送されるため、接木苗製造における作業能率が向上する。
【0063】
また、方向修正部材14及び副整列部材46を移送機構13による移送終端部に設けているので、方向修正部材14及び副整列部材46で苗の子葉展開方向を修正した後、移送機構13による苗の横方向への移送で苗の子葉展開方向がずれるようなことがなく、苗の子葉展開方向を精度良く揃えることができる。
【0064】
尚、図34乃至図36に示すように、前記副整列部材46を、移送機構13の移送方向(左右方向)へ向く平面状の板材で構成してもよい。このとき、移送機構13の移送終端部に移送された苗の胚軸からの距離lが苗の子葉の長さaより短くて子葉の幅bの2分の1と同等かそれより長くなるように副整列部材46の位置を設定すると、前後方向に向く子葉のみが副整列部材46に当たって子葉の向きを所望の左右方向へ向く状態に修正できる。尚、図36に示すように、この副整列部材46の平面状の板材を移送機構13の移送上手側(左側)ほど苗から離れる側(後側)となるように若干斜めに配置すると、移送機構13で移送される苗が副整列部材46の端部にひっかかるようなことを防止でき、苗を円滑に移送することができる。
【0065】
尚、上述では苗の子葉展開方向を精度良く揃えるためにローラで構成される方向修正部材14と板材で構成される副整列部材46とを共に設けた構成としたが、何れか一方のみを設けて苗の子葉展開方向を変更する構成としてもよい。尚、副整列部材46のみを設けた場合は、該副整列部材46が苗の子葉と干渉してその子葉展開方向を移送方向に合わせる方向修正部材となる。
【0066】
また、上述では主整列部材16と副整列部材46とを対向して複数設けた構成としたが、例えば主整列部材16のみを設ける等、一方の整列部材を設けた構成としてもよい。このとき、把持ハンド12の1往復につき苗の子葉が整列部材16に半分の1回しか接当しないので、把持ハンド12を2倍の4往復作動させて苗の子葉が整列部材16に4回接当させる構成とすればよい。このように把持ハンド12を進退機構12bにより複数回往復作動させる際、伸長位置センサが検出するまで進退用シリンダを伸長させて苗を整列部材16へ接当させるが、戻り行程では、収縮位置センサが検出する手前で進退用シリンダの収縮作動を停止させるべく、タイマにより所定時間だけ進退用シリンダを作動させて停止し、再度進退用シリンダを伸長させて2回目以降の苗の整列部材16への接当を行わせる構成とすることができる。これにより、進退用シリンダの収縮作動及び再度苗を整列部材16に当てるべく進退用シリンダを伸長させる伸長作動において、これらの作動距離並びに作動時間を短縮することができ、所定回数の苗の整列動作に対してこの整列行程の時間短縮が図れ、苗供給作業ひいては接木苗製造作業の作業能率向上が図れる。
【0067】
図37に示すように、把持ハンド12のハンド機構21,22における左右一方の開閉アーム21a,22aのみの把持面を、該開閉アーム21a,22aが閉じた状態で平面視で斜めになるように設定してもよい。これにより、断面が楕円形状である胚軸Aを把持するとき、該楕円形状の長軸が前後方向に向くように胚軸Aの向きが修正され、該楕円形状の短軸方向に広がる子葉を左右方向に向けることができる。従って、この把持ハンド12が、苗の子葉展開方向を移送方向に合わせるための方向修正部材の一種となる。また、左右一対の開閉アーム21a,22aを閉じた後、該左右一対の開閉アーム21a,22aを互いに前後逆方向に摺動させて苗の胚軸Aの回転を促し、断面の楕円形状の長軸が前後方向に向くように胚軸Aの向きを修正することも考えられる。この場合は、胚軸Aがスムーズに回転できるように、左右一対の開閉アーム21a,22aの把持面を前後方向に向く平面とすることが望ましい。
【0068】
尚、苗を育苗するべくセルトレイのセルに播種する際、所望の方向に苗の子葉が展開するように予め播種される種子の向きを設定すれば、取込部2で苗の子葉展開方向を揃える作業が円滑に行える。具体的には、楕円形の種子の長径方向がセルトレイの長手方向(前後方向)に向くように種子の向きを揃えて播種すれば、育苗される苗の子葉展開方向はセルトレイの長手方向(前後方向)になり、何れの苗も方向修正部材14又は副整列部材46で苗の胚軸を約90度回転させて子葉展開方向を揃えることになり、苗の子葉が方向修正部材14又は副整列部材46に確実に当たって修正されるため、苗の子葉展開方向が精度良く適正に修正できる。あるいは、楕円形の種子の長径方向がセルトレイの短手方向(左右方向)に向くように種子の向きを揃えて播種し、育苗される苗の子葉展開方向をセルトレイの短手方向(左右方向)へ向け、方向修正部材14又は副整列部材46による苗の胚軸の回転角度を小さくし、子葉展開方向の修正の円滑化を図ることもできる。いずれにしても、育苗される苗の子葉展開方向を所望の向きに設定できるので、取込部2で苗の子葉展開方向を揃える作業が円滑に行えるのである。尚、所望の方向に播種する手段としては、播種機の種子整列板を振動させて長径方向が所定の方向に向くように種子を揃え、その種子を種子吸着ノズルにより吸着する等して種子の向きが勝手に変わらないようにセルトレイへ播種することが考えられる。
【符号の説明】
【0069】
101:栽培室(温室)、126:制御部(コントローラ)、131:第一加温装置、132:第二加温装置、133:加温管、134:ポンプ、135:第一供給管、136:第二供給管、137:暖房用管、138:戻り管、172:バイパス管、173:切替弁、175:温水温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化石燃料を燃焼させた熱を利用して温水を加温する第一加温装置(131)と、化石燃料以外の燃料を燃焼させた熱を利用して温水を加温する第二加温装置(132)と、第一加温装置(131)及び第二加温装置(132)に温水を供給する加温管(133)と、加温管(133)により加温された温水をポンプ(134)へ供給するための第一供給管(135)と、ポンプ(134)からの温水を温室内の暖房用管(137)へ供給するための第二供給管(136)と、暖房用管(137)から加温管(133)へ温水を戻すための戻り管(138)を設け、加温管(133)、第一供給管(135)、第二供給管(136)、暖房用管(137)及び戻り管(138)を経由する温水の循環経路を構成すると共に、第一供給管(135)と戻り管(138)を繋ぐバイパス管(172)を設け、加温管(133)を経由せずにバイパス管(172)、第一供給管(135)、第二供給管(136)、暖房用管(137)及び戻り管(138)を経由する温水の循環経路を構成し、バイパス管(172)と第一供給管(135)の接続部には、加温管(133)側から合流する流量の割合とバイパス管(172)側から合流する流量の割合を調節する流量割合調節可能な切替弁(173)を設け、第二供給管(136)を流れる温水の温度を検出する温水温度センサ(175)を設け、該温水温度センサ(175)により検出される温水の温度と設定される温水の目標温度の差が大きいほど加温管(133)側から合流する流量の割合が多くなるように設定される加温管(133)側からの設定流量割合に基づいて切替弁(173)を制御すると共に、前記加温管(133)側からの設定流量割合が所定の割合よりも大きく設定されるときは第一加温装置(131)及び第二加温装置(132)を共に燃焼運転し、前記加温管(133)側からの設定流量割合が所定の割合よりも小さく設定されるときは第二加温装置(132)のみを燃焼運転して第一加温装置(131)の燃焼運転を停止させる制御装置を設けた温室の暖房設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2010−233477(P2010−233477A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83253(P2009−83253)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】