説明

温度センサの校正方法、記録ヘッドの製造方法及びインクジェット記録装置

【課題】記録ヘッドに設けられた温度センサの校正精度を高めるとともに、ヘッド交換時の装置の立ち上げ時間を短縮する。
【解決手段】ノズルから液体を吐出するインクジェット方式の記録ヘッドに設けられた温度センサであって、該記録ヘッド内の液体の温度を測定するための温度センサの校正方法において、前記記録ヘッドの置かれた環境温度を取得する環境温度取得工程と、前記記録ヘッド内に液体が充填された状態において前記温度センサの出力値を取得するセンサ出力値取得工程と、前記環境温度と前記出力値とに基づいて、前記出力値を補正するための補正係数を算出する算出工程と、前記補正係数を前記記録ヘッドの記憶手段に記憶させる記憶工程とを備えた温度センサの校正方法によって上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は温度センサの校正方法、記録ヘッドの製造方法及びインクジェット記録装置に係り、特に記録ヘッドに設けられたインクの温度を測定するための温度センサを校正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置で用いられるインクは、温度に応じて粘度が変化する。したがって、記録ヘッドに供給されるインクの温度に変化が生じると、インクの粘度の変化により、インクの吐出特性に変化が生じる。例えば、インクの温度が低下するとインクの粘度が高くなり、インクの吐出量の減少や飛翔速度の低下を招いてしまう。このため、インクを温調してから記録ヘッドに供給することにより、記録ヘッドの吐出特性の安定化を図ることが行われている。
【0003】
特許文献1には、インクジェットヘッドに搭載されるインクジェットヘッド温度を検出する検出手段と、インクジェット記録装置に搭載される環境温度を検出する検出手段とを備え、環境温度を検出する検出手段からの値を基準にして、インクジェットヘッドの温度を検出する検出手段からの値を補正する補正手段を有し、この補正値に基づいてインクジェットヘッドの温度検出を行うインクジェット記録装置が開示されている。
【0004】
この技術によれば、インクジェットヘッド温度を検出する温度センサに製造上のばらつきがあっても、精度良くインクジェットヘッドの温度を検出することができる。また、新規のインクジェットヘッドが搭載された場合であっても、その都度補正動作が行われるため、自動的にインクジェットヘッドの温度センサのばらつきを判断することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−256894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術には、インクジェットヘッドがラインヘッド等のように大型になると、ヘッド内部で温度分布が生じるために、環境温度とヘッド温度とが異なってしまい、校正精度が悪化するという欠点があった。
【0007】
また、ヘッドの交換時は、新規ヘッドの保存状態が不明であるため、交換後のヘッドの温度等が安定する前に校正を行ってしまうと、校正精度が悪化する可能性があった。これに対し、交換後のヘッドの温度等が安定するまで待つ場合には、次の印刷が可能になるまで時間がかかってしまうというという問題点が発生する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、温度センサの校正精度を高めるとともに、ヘッド交換時の装置の立ち上げ時間を短縮する温度センサの校正方法、記録ヘッドの製造方法及び画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために請求項1に記載の温度センサの校正方法は、ノズルから液体を吐出するインクジェット方式の記録ヘッドに設けられた温度センサであって、該記録ヘッド内の液体の温度を測定するための温度センサの校正方法において、前記記録ヘッドの置かれた環境温度を取得する環境温度取得工程と、前記記録ヘッド内に液体が充填された状態において前記温度センサの出力値を取得するセンサ出力値取得工程と、前記環境温度と前記出力値とに基づいて、前記出力値を補正するための補正係数を算出する算出工程と、前記補正係数を前記記録ヘッドの記憶手段に記憶させる記憶工程とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、環境温度と温度センサの出力値とに基づいて、出力値を補正するための補正係数を算出し、算出した補正係数を記録ヘッドの記憶手段に記憶させるようにしたので、記憶手段に記憶された補正係数を読み出して温度センサの出力値を補正することができ、温度センサの校正精度を高めるとともに、ヘッド交換時の装置の立ち上げ時間を短縮することができる。
【0011】
請求項2に示すように請求項1に記載の温度センサの校正方法において、前記センサ出力値取得工程は、前記記録ヘッドによる液体の吐出が行われていない状態において前記温度センサの出力値を取得することを特徴とする。
【0012】
これにより、適切な補正係数を算出することができる。
【0013】
請求項3に示すように請求項1又は2に記載の温度センサの校正方法において、前記記録ヘッドは液体を循環させるための循環流路を備え、前記温度センサ出力値取得工程は、前記循環流路に液体が循環されていない状態において前記温度センサの出力値を取得することを特徴とする。
【0014】
これにより、適切な補正係数を算出することができる。
【0015】
前記目的を達成するために請求項4に記載のインクジェット記録装置は、ノズルから液体を吐出するインクジェット方式の記録ヘッドであって、該記録ヘッド内の液体の温度を測定するための温度センサを有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドに液体を導入する導入手段と、前記導入手段に対して液体流路を介して連通する貯留手段と、前記貯留手段から前記記録ヘッドへ液体を供給する送液手段と、前記記録ヘッドの置かれた環境温度を取得する環境温度取得手段と、前記記録ヘッド内に液体が充填された状態において前記温度センサの出力値を取得するセンサ出力値取得手段と、前記環境温度と前記出力値とに基づいて、前記出力値を補正するための補正係数を算出する算出手段と、前記温度センサの出力値を取得し、該取得した出力値を前記補正係数に基づいて補正して前記記録ヘッド内の液体の温度を算出する液体温度測定手段と、前記記録ヘッドを制御してノズルから液体を吐出させる制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、環境温度と温度センサの出力値とに基づいて、出力値を補正するための補正係数を算出し、取得した出力値を前記補正係数に基づいて補正して記録ヘッド内の液体の温度を算出するようにしたので、記録ヘッド内の液体の温度を精密に測定することができる。
【0017】
請求項5に示すように請求項4に記載のインクジェット記録装置において、前記補正係数を記憶する記憶手段を備え、前記制御手段がノズルから液体を吐出させる際には、前記補正係数は予め記憶手段に記憶されていることを特徴とする。
【0018】
これにより、予め記憶されている補正係数を用いることにより、ヘッド交換時の装置の立ち上げ時間を短縮することができる。
【0019】
請求項6に示すように請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドは複数の温度センサを有し、前記液体温度測定手段は、前記複数の温度センサから前記記録ヘッド内の液体の温度分布を算出し、前記温度分布が正常か否かを判定する判定手段を備えたことを特徴とする。
【0020】
これにより、記録ヘッド内の温度分布の異常を検出することができる。
【0021】
請求項7に示すように請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドはそれぞれノズルを有する複数のモジュールから構成されるとともに、該モジュール毎に温度センサを有し、前記モジュール毎の温度センサから得られたモジュール毎の液体の温度に基づいて、前記モジュール毎の液体の温度を制御する温度制御手段を備えたことを特徴とする。
【0022】
これにより、記録ヘッド内の温度分布を低減することができる。
【0023】
請求項8に示すように請求項7に記載のインクジェット記録装置において、前記導入手段は前記モジュール毎に液体を導入する個別流路を備え、前記温度制御手段は、前記個別流路において液体を加熱及び/又は冷却する温調手段であることを特徴とする。
【0024】
これにより、モジュール毎に温度を調整することができ、記録ヘッド内の温度分布を低減することができる。
【0025】
請求項9に示すように請求項7に記載のインクジェット記録装置において、前記導入手段は、前記モジュール毎に液体を導入する個別流路と、該個別流路毎に電磁バルブを備え、前記温度制御手段は、前記電磁バルブにより液体を加熱する電磁バルブ制御手段であることを特徴とする。
【0026】
これにより、モジュール毎に温度を調整することができ、記録ヘッド内の温度分布を低減することができる。
【0027】
請求項10に示すように請求項7に記載のインクジェット記録装置において、前記導入手段は、前記モジュール毎に液体を導入する個別流路と、該個別流路毎に液体の流量を制御可能な流量制御手段を備え、前記温度制御手段は、前記流量制御手段により液体の流量を制御することにより前記モジュール毎の温度分布を均一にすることを特徴とする。
【0028】
これにより、モジュール毎に温度を調整することができ、記録ヘッド内の温度分布を低減することができる。
【0029】
請求項11に示すように請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置において、前記記録ヘッドはそれぞれノズルを有する複数のモジュールから構成されるとともに、該モジュール毎に温度センサを有し、前記モジュール毎の温度センサから得られた液体の温度に基づいて、モジュール毎にノズルからの液体の吐出率を変更する吐出率変更手段を備えたことを特徴とする。
【0030】
これにより、記録ヘッド内に温度分布があっても、印字品質を保つことができる。
【0031】
請求項12に示すように請求項11に記載のインクジェット記録装置において、ノズルから液体を吐出させるための駆動信号を生成する駆動信号生成手段を備え、前記吐出率変更手段は、前記温度センサから得られた液体温度に応じてモジュール毎に前記駆動信号を変更して前記吐出率を変更することを特徴とする。
【0032】
これにより、適切にモジュール毎の吐出率を変更することができる。
【0033】
前記目的を達成するために請求項13に記載の記録ヘッドの製造方法は、ノズルから液体を吐出するインクジェット方式の記録ヘッドであって、該記録ヘッド内の液体の温度を測定するための温度センサを有する記録ヘッドの製造方法において、前記記録ヘッドの置かれた環境温度を取得する環境温度取得工程と、前記記録ヘッド内に液体が充填された状態において前記温度センサの出力値を取得するセンサ出力値取得工程と、前記環境温度と前記出力値とに基づいて、前記出力値を補正するための補正係数を算出する算出工程と、前記補正係数を前記記録ヘッドの記憶手段に記憶させる記憶工程とを備えたことを特徴とする。
【0034】
請求項13に記載の発明によれば、内蔵された温度センサの校正精度を高めた記録ヘッドを製造することができるとともに、当該記録ヘッドを用いる記録装置において、記録ヘッド交換時の装置の立ち上げ時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、温度センサの校正精度を高めるとともに、ヘッド交換時の装置の立ち上げ時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】インクジェット記録装置の構成例を示す全体構成図
【図2】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図3】インク室ユニットの立体的構成を示す断面図
【図4】ヘッド内部の流路構造を示す流路構成図
【図5】インクジェット記録装置のインク供給系の構成を示した概要図
【図6】インクジェット記録装置の制御系を示す要部ブロック図
【図7】ヘッド温度センサの校正処理を示すフローチャート
【図8】ヘッド内部の状態と校正後の温度ばらつきとの関連を示すグラフ
【図9】温度センサの校正前後の測定温度バラツキを示すグラフ
【図10】個別温度調整部を備えたインク供給系の構成を示した概要図
【図11】電磁バルブを備えたインク供給系の構成を示した概要図
【図12】電磁バルブに印加される電流の一例を示した波形図
【図13】電磁バルブに印加される制御電流の他の例を示した波形図
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0038】
<インクジェット記録装置の構成例>
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の構成例を示す全体構成図である。同図に示すように、本例のインクジェット記録装置100は、主として、給紙部112、処理液付与部(プレコート部)114、描画部116、乾燥部118、定着部120、及び排紙部122から構成されている。
【0039】
インクジェット記録装置100は、描画部116の圧胴(描画ドラム170)に保持された記録媒体124(以下、便宜上「用紙」と呼ぶ場合がある。)に長尺のインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成するシングルパス方式のインクジェット記録装置であり、インクの打滴前に記録媒体124上に処理液(ここでは凝集処理液)を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体124上に画像形成を行う2液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
【0040】
(給紙部)
給紙部112には、枚葉紙である記録媒体124が積層されており、給紙部112の給紙トレイ150から記録媒体124が一枚ずつ処理液付与部114に給紙される。記録媒体124として、紙種や大きさ(用紙サイズ)の異なる複数種類の記録媒体124を使用することができる。給紙部112において各種の記録媒体をそれぞれ区別して集積する複数の用紙トレイ(不図示)を備え、これら複数の用紙トレイの中から給紙トレイ150に送る用紙を自動で切り換える態様も可能であるし、必要に応じてオペレータが用紙トレイを選択し、若しくは交換する態様も可能である。なお、本例では、記録媒体124として、枚葉紙(カット紙)を用いるが、連続用紙(ロール紙)から必要なサイズに切断して給紙する構成も可能である。
【0041】
(処理液付与部)
処理液付与部114は、記録媒体124の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部116で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
【0042】
処理液付与部114は、給紙胴152、処理液ドラム(「プレコート胴」とも言う)154、及び処理液塗布装置156を備えている。処理液ドラム154は、記録媒体124を保持し、回転搬送させるドラムである。処理液ドラム154は、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)155を備え、この保持手段155の爪と処理液ドラム154の周面の間に記録媒体124を挟み込むことによって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。処理液ドラム154は、その外周面に吸引孔を設けるとともに、吸引孔から吸引を行う吸引手段を接続してもよい。これにより記録媒体124を処理液ドラム154の周面に密着保持することができる。
【0043】
処理液ドラム154の外側には、その周面に対向して処理液塗布装置156が設けられる。処理液塗布装置156は、処理液が貯留された処理液容器と、この処理液容器の処理液に一部が浸漬されたアニックスローラと、アニックスローラと処理液ドラム154上の記録媒体124に圧接されて計量後の処理液を記録媒体124に転移するゴムローラとで構成される。この処理液塗布装置156によれば、処理液を計量しながら記録媒体124に塗布することができる。
【0044】
本実施形態では、ローラによる塗布方式を適用した構成を例示したが、これに限定されず、例えば、スプレー方式、インクジェット方式などの各種方式を適用することも可能である。
【0045】
処理液付与部114で処理液が付与された記録媒体124は、処理液ドラム154から中間搬送部126を介して描画部116の描画ドラム170へ受け渡される。
【0046】
(描画部)
描画部116は、描画ドラム(「描画胴」或いは「ジェッティング胴」とも言う)170、用紙抑えローラ174、及びインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yを備えている。描画ドラム170は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)171を備える。描画ドラム170に固定された記録媒体124は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yからインクが付与される。
【0047】
インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yはそれぞれ、記録媒体124における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)であり、そのインク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルが複数配列されたノズル列(2次元配列ノズル)が形成されている。各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yは、記録媒体124の搬送方向(描画ドラム170の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
【0048】
インクジェットヘッド172M、172K、172C、172Yの吐出タイミングは、描画ドラム170に配置された回転速度を検出するエンコーダ(不図示)に同期させる。これにより、高精度に着弾位置を決定することができる。
【0049】
描画ドラム170上に密着保持された記録媒体124の記録面に向かって各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部114で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体124上での色材流れなどが防止され、記録媒体124の記録面に画像が形成される。
【0050】
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0051】
描画部116で画像が形成された記録媒体124は、描画ドラム170から中間搬送部128を介して乾燥部118の乾燥ドラム176へ受け渡される。
【0052】
(乾燥部)
乾燥部118は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図1に示すように、乾燥ドラム(「乾燥胴」とも言う)176、及び溶媒乾燥装置178を備えている。乾燥ドラム176は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)177を備え、この保持手段177によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0053】
溶媒乾燥装置178は、乾燥ドラム176の外周面に対向する位置に配置され、複数のハロゲンヒータ180と、各ハロゲンヒータ180の間にそれぞれ配置された温風噴出しノズル182とで構成される。
【0054】
各温風噴出しノズル182から記録媒体124に向けて吹き付けられる温風の温度と風量、各ハロゲンヒータ180の温度を適宜調節することにより、様々な乾燥条件を実現することができる。
【0055】
また、乾燥ドラム176の表面温度は50℃以上に設定されている。記録媒体124の裏面から加熱を行うことによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができる。なお、乾燥ドラム176の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム176の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75度以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
【0056】
乾燥ドラム176の外周面に、記録媒体124の記録面が外側を向くように(即ち、記録媒体124の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)記録媒体124を保持し、回転搬送しながら乾燥することで、記録媒体124のシワや浮きの発生を防止でき、これらに起因する乾燥ムラを確実に防止することができる。
【0057】
乾燥部118で乾燥処理が行われた記録媒体124は、乾燥ドラム176から中間搬送部130を介して定着部120の定着ドラム184へ受け渡される。
【0058】
(定着部)
定着部120は、定着ドラム(「定着胴」とも言う)184、ハロゲンヒータ186、定着ローラ188、及びインラインセンサ190で構成される。定着ドラム184は、処理液ドラム154と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)185を備え、この保持手段185によって記録媒体124の先端を保持できるようになっている。
【0059】
定着ドラム184の回転により、記録媒体124は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ハロゲンヒータ186による予備加熱と、定着ローラ188による定着処理と、インラインセンサ190による検査が行われる。
【0060】
ハロゲンヒータ186は、所定の温度(例えば、180℃)に制御される。これにより、記録媒体124の予備加熱が行われる。
【0061】
定着ローラ188は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体124を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ188は、定着ドラム184に対して圧接するように配置されており、定着ドラム184との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体124は、定着ローラ188と定着ドラム184との間に挟まれ、所定のニップ圧(例えば、0.15MPa)でニップされ、定着処理が行われる。
【0062】
また、定着ローラ188は、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成され、所定の温度(例えば60〜80℃)に制御される。この加熱ローラで記録媒体124を加熱することによって、インクに含まれるラテックスのTg温度(ガラス転移点温度)以上の熱エネルギーが付与され、ラテックス粒子が溶融される。これにより、記録媒体124の凹凸に押し込み定着が行われるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、光沢性が得られる。
【0063】
なお、図1の実施形態では、定着ローラ188を1つだけ設けた構成となっているが、画像層厚みやラテックス粒子のTg特性に応じて、複数段設けた構成でもよい。
【0064】
一方、インラインセンサ190は、記録媒体124に記録された画像(テストパターンなども含む)について、吐出不良チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
【0065】
上記の如く構成された定着部120によれば、乾燥部118で形成された薄層の画像層内のラテックス粒子が定着ローラ188によって加熱加圧されて溶融されるので、記録媒体124に固定定着させることができる。また、定着ドラム184の表面温度は50℃以上に設定されている。定着ドラム184の外周面に保持された記録媒体124を裏面から加熱することによって乾燥が促進され、定着時における画像破壊を防止することができるとともに、画像温度の昇温効果によって画像強度を高めることができる。
【0066】
なお、高沸点溶媒及びポリマー微粒子(熱可塑性樹脂粒子)を含んだインクに代えて、UV露光にて重合硬化可能なモノマー成分を含有していてもよい。この場合、インクジェット記録装置100は、ヒートローラによる熱圧定着部(定着ローラ188)の代わりに、記録媒体124上のインクにUV光を露光するUV露光部を備える。このように、UV硬化性樹脂などの活性光線硬化性樹脂を含んだインクを用いる場合には、加熱定着の定着ローラ188に代えて、UVランプや紫外線LD(レーザダイオード)アレイなど、活性光線を照射する手段が設けられる。
【0067】
(排紙部)
図1に示すように、定着部120に続いて排紙部122が設けられている。排紙部122は、排出トレイ192を備えており、この排出トレイ192と定着部120の定着ドラム184との間に、これらに対接するように渡し胴194、搬送ベルト196、張架ローラ198が設けられている。記録媒体124は、渡し胴194により搬送ベルト196に送られ、排出トレイ192に排出される。搬送ベルト196による用紙搬送機構の詳細は図示しないが、印刷後の記録媒体124は無端状の搬送ベルト196間に渡されたバー(不図示)のグリッパーによって用紙先端部が保持され、搬送ベルト196の回転によって排出トレイ192の上方に運ばれてくる。
【0068】
また、図1には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部114に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド172M,172K,172C,172Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体124の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
【0069】
<インクジェットヘッドの構造>
次に、ヘッド172K、172C、172M、172Yの構造について説明する。なお、各ヘッド172K、172C、172M、172Yの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
【0070】
図2(a)は、ヘッド50を構成するヘッドモジュール(ヘッドチップ)50’の構造例を示す平面透視図であり、図2(b)は、その一部の拡大図であり、図2(c)は、ヘッド50全体の構造例を示す平面透視図である。また、図3は、インク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図2(a)、(b)中、4−4線に沿う断面図)であり、図4は、ヘッドモジュール50’内部の流路構造を示す流路構成図(図3中、A方向から見た平面透視図)である。
【0071】
記録紙面上に形成されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッドモジュール50’は、図2(a)、(b)に示すように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙搬送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0072】
図2(c)に示すように、このように構成された短尺のヘッドモジュール50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで、記録紙16の全幅に対応する長さのノズル列を有するヘッド50を構成する。また、図示は省略するが、短尺のヘッドを一列に並べてヘッドを構成してもよい。
【0073】
なお、紙搬送方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、複数のヘッドモジュール50’を配列するのではなく、図2(a)に示すノズル列構造を持つ単独のヘッドモジュール50’に相当する長尺のラインヘッドとしてもよい。
【0074】
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51とインク流入口54が設けられている。各圧力室52はインク流入口54を介して共通流路55と連通されている。また、各圧力室52に連通するノズル流路60は個別流路62を介して循環共通流路64と連通されている。ヘッドモジュール50’には供給口66及び排出口68が設けられており、供給口66は共通流路55と連通され、排出口68は循環共通流路64と連通されている。
【0075】
換言すれば、ヘッドモジュール50’の供給口66及び排出口68は、共通流路55、インク流入口54、圧力室52、ノズル流路60、個別流路62、及び循環共通流路64を含むインク流路(内部流路)を介して連通された構成となっている。このため、ヘッドモジュール外部から供給口66に供給されたインクの一部は各ノズル51から吐出されるとともに、残りのインクは共通流路55、ノズル流路60、個別流路62、及び循環共通流路64を順に経由して(即ち、ヘッドモジュール内部のインク流路を循環して)、排出口68からヘッドモジュール外部に排出される。
【0076】
図3に示すように、ノズル流路60のノズル51近傍に個別流路62が接続される構成が好ましく、ノズル51近傍をインクが循環するようになるので、ノズル51内部のインク増粘が防止され、安定吐出が可能となる。
【0077】
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される振動板56には個別電極57を備えた圧電素子58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによって圧電素子58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55からインク流入口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
【0078】
本例では、ヘッドモジュール50’に設けられたノズル51から吐出させるインクの吐出力発生手段として圧電素子58を適用したが、圧力室52内にヒータを備え、ヒータの加熱による膜沸騰の圧力を利用してインクを吐出させるサーマル方式を適用することも可能である。
【0079】
また、ヘッド50には、ヘッドモジュール50’毎にインクの温度を測定するためのヘッド温度センサ40が備えられている。本実施形態においては、ヘッド温度センサ40にはサーミスタが用いられており、共通流路55近傍に配置され、ヘッドモジュール50’内のインクの温度に対応するヘッドモジュール50’の温度を測定している、なお、ヘッドモジュール50’内のインクの温度を直接測定するものであってもよい。
【0080】
かかる構造を有するインク室ユニット53を図2(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0081】
即ち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0082】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されず、副走査方向に1列のノズル列を有する配置構造など、様々なノズル配置構造を適用できる。
【0083】
また、本発明の適用範囲はライン型ヘッドによる印字方式に限定されず、記録紙16の幅方向(主走査方向)の長さに満たない短尺のヘッドを記録紙16の幅方向に走査させて当該幅方向の印字を行い、1回の幅方向の印字が終わると記録紙16を幅方向と直交する方向(副走査方向)に所定量だけ移動させて、次の印字領域の記録紙16の幅方向の印字を行い、この動作を繰り返して記録紙16の印字領域の全面にわたって印字を行うシリアル方式を適用してもよい。
【0084】
<インクの供給系の説明>
図5は、インクジェット記録装置100におけるインク供給系の構成を示した概要図である。同図に示すように、インクジェット記録装置100は、インク供給系としてインク供給タンク200、供給ポンプP1、温度調整部202、マニホールド204、回収ポンプP2、インク回収タンク210を備えている。
【0085】
インク供給タンク200は、ヘッド50にインクを供給する基タンクである。インク供給タンク200の形態には、インク残量が少なくなった場合に不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0086】
供給ポンプP1は、インク供給タンク200内のインクをマニホールド204に供給するためのポンプである。また、供給ポンプP1とマニホールド204との間には、温度調整部202が設けられている。温度調整部202は、マニホールド204に供給されるインクが所定の温度となるように、各温度センサ40の出力値に基づいてインクを温調するための加熱冷却器である。
【0087】
マニホールド204は、インク供給タンク200から供給されたインクを各ヘッドモジュール50’に分配するものであり、マニホールド204と各ヘッドモジュール50’の供給口66とは、供給路206を介して連通されている。供給ポンプP1によってマニホールド204に供給されたインクは、各供給路206を介して各ヘッドモジュール50’に分配供給される。
【0088】
回収ポンプP2は、供給口66から各ヘッドモジュール50’に供給されたインクを、マニホールド204を介して排出口68から回収するためのポンプである。各ヘッドモジュール50’の排出口68とマニホールド204とは排出路208を介して連通されており、各ヘッドモジュール50’に供給されたインクは、各排出口68、各排出路208、マニホールド204を介してインク回収タンク210に回収される。
【0089】
インク回収タンク210は、回収ポンプP2によって回収されたインクを溜めるためのタンクである。回収タンク210に回収されたインクを、図示しない循環手段によってインク供給タンク200に送液することにより、循環経路を構成する態様も可能である。
【0090】
<制御系の構成>
図6は、インクジェット記録装置100の制御系を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置100は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0091】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0092】
ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置100に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0093】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0094】
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0095】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って後乾燥部その他各部のヒータ89を駆動するドライバである。さらに、ポンプドライバ79は、システムコントローラ72からの指示に従って、インク供給系のポンプP1、P2を駆動するドライバである。
【0096】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド50のインク滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0097】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0098】
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられるドットデータに基づいて、各色のヘッド50の圧電素子58(図3参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子58に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバ84にはヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0099】
ヘッド50には、ヘッドモジュール50’毎にインクの温度を測定するためのヘッド温度センサ40が備えられている。ヘッド温度センサ40の測定結果は、システムコントローラ72に入力され、温度調整部202(図5参照)の制御等、各種制御に用いられる。
【0100】
環境温度センサ42は、インクジェット記録装置100が設置されている環境の温度を測定するためのものであり、装置内の各種発熱源を避けて設けられている。環境温度センサ42は、ヘッド温度センサ40よりも高精度の、例えば白金測温体が用いられ、その測定結果はシステムコントローラ72に入力される。
【0101】
なお、環境温度センサ42は、インクジェット記録装置100の外部に設けられていてもよい。この場合は、環境温度センサ42の測定結果をシステムコントローラ72で取得可能に構成する。
【0102】
システムコントローラ72は、環境温度センサ42の測定結果からヘッド温度センサ40の校正を行う。ヘッド温度センサ40の校正の詳細については、後述する。
【0103】
印字検出部24は、インラインセンサ190を含むブロックであり、記録媒体124に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
【0104】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正を行う。
【0105】
ROM90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部290はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。なお、ROM90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0106】
<ヘッド温度センサの校正>
次に、ヘッド温度センサ40の校正方法について説明する。インクの温度、すなわちヘッド50の内部の温度については、吐出性確保、ノズル面結露の防止から、高精度での測定が必要となる。しかし、ヘッド温度センサ40は、その配置場所の制限やコスト上の問題から、高精度のセンサを用いることができない。このため、ヘッド温度センサ40を校正することにより、精密な温度測定を可能にしておく必要となる。
【0107】
ヘッド温度センサ40は、環境温度センサ42の測定値を基準として算出された補正係数を用いて校正される。校正用の補正係数は、インクジェット記録装置100の出荷前に予め算出し、記憶しておくことが好ましい。
【0108】
図7は、ヘッド温度センサ40の校正処理を示すフローチャートである。
【0109】
まず、ヘッド50(各ヘッドモジュール50’)にインクを充填し、静置状態(インクを循環させず、インクの吐出も行わない状態)において、各ヘッドモジュール50’のヘッド温度センサ40の測定値を取得する。また、環境温度センサ42において、ヘッド50の置かれた環境温度の測定を行う(ステップS1)。
【0110】
図8は、各ヘッドモジュール50’のヘッド温度センサ40の測定値を取得する際のヘッドモジュール50’内部の状態と、校正後の温度ばらつきとの関係を示すグラフである。同図に示すように、ヘッドモジュール50’にインクを充填し、インクを循環させた状態で取得した測定値を用いてヘッド温度センサ40の校正を行った場合は、校正後の温度ばらつきは0.87℃であった。これに対し、ヘッドモジュール50’にインクを充填し、静置状態で取得した測定値を用いてヘッド温度センサ40の校正を行った場合は、校正後の温度ばらつきは0.21℃であった。このように、インクを循環させた場合に校正後のばらつきが大きくなるのは、インクを循環させることによりマニホールド204内に温度の勾配ができ、安定した測定値の取得ができなくなることが原因であると考えられる。
【0111】
また、インクを充填しない状態では(インクが無いので当然循環させない静置状態である)、校正後の温度ばらつきは0.36℃であった。インクが充填されていないことでヘッドモジュール50’の熱容量が小さくなり、インク充填での静置状態よりもヘッド温度センサ40の測定値の取得が不安定になるためと考えられる。
【0112】
このように、本願出願人は、温度センサを校正するための測定値の取得は、インクを充填した静置状態で行うことが最適であることを見出した。したがって、本実施形態においても、インクを充填かつ静置状態でヘッド温度センサ40の測定値の取得を行っている。
【0113】
次に、環境温度センサ42の測定値に基づいて、各ヘッド温度センサ40の補正係数を算出する(ステップS2)。
【0114】
補正係数を算出するには、まず、補正係数を求めるヘッド温度センサ40の抵抗値の基準値G0を算出する。G0は、基準となる環境温度センサ42の測定値をTとして、以下の(数1)により算出する。
【0115】
(数1) G0=C2×T+C1×T+C0 [単位:1/kΩ]
ここで、C2〜C0は、正温度(環境温度センサ42の測定値T)に基づいて下記の[表1]から選定する。[表1]に示す係数は、ヘッド温度センサ40に用いているサーミスタの特性を、温度領域毎に近似したときの係数である。
【0116】
【表1】

【0117】
次に、校正対象温度をTsとし、ヘッド温度センサ40の抵抗測定値の逆数Fを以下の(数2)により算出する。
(数2) F=C2×Ts+C1×Ts+C0 [単位:1/kΩ]
(数3) G=(((4095/D)−1)/6.2−1/1000)×A [単位:1/kΩ]
このGを用いると、最終的に校正された温度Tは、
(数4) T=B2×G+B1×G+B0 [単位:℃]
と表される。
【0118】
ここで、B2〜B0は、ヘッドモジュール50’の目標温度Th(環境温度センサ42の測定値T)に基づいて、下記の[表2]から選定する。
【0119】
【表2】

【0120】
上記のようにヘッド温度センサ40の校正を行った結果、図9に示すように校正前に2.02℃あった温度ばらつきが、校正後には0.21℃となった。このように、環境温度センサ42を基準としてヘッド温度センサ40を校正することにより、精度良くヘッドモジュール50’内の温度を測定することが可能となる。
【0121】
この結果、長尺のラインヘッド内の温度分布を精密に監視することができるようになり、温度分布異常による印字不良を事前に検知することが可能となる。温度分布異常を検知した場合には、通信インターフェース70を介してホストコンピュータ86から使用者に報知するように構成してもよい。
【0122】
本実施形態のヘッド50は、インクがヘッド内部の流路を循環することにより、ノズル51近傍をインクが循環するようになっているが、ヘッド50はインクが循環する形態に限定されず、インクの流路がノズル51で終端となる構成でもよい。このような構成のヘッドの場合、インクを充填し、ノズル51からインクの吐出を行わない状態を静置状態として、ヘッド温度センサ40の測定値を取得すればよい。
【0123】
<ヘッドモジュール毎の温度測定値のフィードバック制御>
ヘッドモジュール毎の温度センサの校正により、ラインヘッド内の温度分布を精密に監視できるようになるため、検出した温度分布に基づいて各種フィードバック制御を行うことも可能である。
【0124】
例えば、各ヘッド温度センサ40の校正後の温度測定値に基づいて、各ヘッドモジュール50’の吐出率を変更してもよい。
【0125】
前述したように、インクの温度に変化が生じると、インクの粘度が変化してしまい、その結果インクの吐出特性に変化が生じる。したがって、圧電素子58を駆動するための駆動信号を、各ヘッド温度センサ40の測定温度に応じてヘッドモジュール50’毎に変更することにより、各ヘッドモジュール50’のインクの温度に適した駆動信号を用いることができるので、ノズル51はインクの温度によらずに常に同じ量の液滴を吐出することになり、温度分布にかかわらず印字品質を最適に保つことが可能となる。
【0126】
駆動信号の変更は、その振幅を変更することが考えられる。例えば、温度と、その温度における駆動信号の最適な振幅とが対応付けて記録されたテーブルを参照することにより、ヘッド温度センサ40の校正後の測定温度に基づいて最適な振幅を取得し、取得した振幅の駆動信号を出力すればよい。
【0127】
また、駆動信号の変更は、信号の幅を変更してもよい。この場合においても、温度と、その温度における駆動信号の最適な信号幅とが対応付けて記録されたテーブルを用いて制御すればよい。
【0128】
このように、各ヘッド温度センサ40の測定温度に応じてヘッドモジュール50’毎に吐出率を変更することができる。
【0129】
<ヘッドモジュール毎の温調>
ラインヘッド内の温度分布に基づいて各ヘッドモジュール50’のインクの温度を制御することで、ヘッド内の温度分布を減少させることができ、その結果印字品質を向上させることができる。
【0130】
図10は、各供給路206に個別温度調整部212を備えた場合のインク供給系の構成を示した概要図である。
【0131】
個別温度調整部212は、供給路206を通じて各ヘッドモジュール50’に供給されるインクをそれぞれ温調するための加熱冷却器である。システムコントローラ72は、各温度センサ40の出力値に基づいて、各ヘッドモジュール50’の温度が均一になるように、個別温度制御部212を制御する。
【0132】
このように、ヘッドモジュール50’毎に温調を行うことにより、ヘッド50内の温度分布を減少させることができ、むら削減等の印字品質向上が達成可能となる。
【0133】
<電磁バルブを用いたヘッドモジュール毎の温調>
個別温度調整部212の代わりに電磁バルブによってインクの温調を行ってもよい。図11は、各供給路206に電磁バルブ214を備えた場合のインク供給系の構成を示した概要図である。
【0134】
この電磁バルブ214は供給路206を開閉可能な弁手段であり、システムコントローラ72から印加される電力に応じて開閉する。電磁バルブ214が開いた状態でマニホールド204から供給路206を通じてヘッドモジュール50’にインクが流れ、閉じた際にそのインクの流れが遮断される。
【0135】
システムコントローラ72は、電磁バルブ214に電力を印加することにより電磁バルブ214を開閉させるとともに、電磁バルブ214の開閉に必要な電力とは異なる電力を電磁バルブ214に印加することによって電磁バルブ214の温度調整を行う。なお、電磁バルブ214の方式は特に限定されず、ノーマルオープン型、ノーマルクローズ型、ラッチ式のいずれでもよい。
【0136】
図12は、電磁バルブ214に印加される電流(制御電流)の一例を示した波形図である。図12(a)は電磁バルブ214がノーマルオープン型の場合に印加される制御電流を示している。ノーマルオープン型の電磁バルブ214は、電流が印加されないときは開いた状態となっており、電磁バルブ214を閉じるために必要な電流(クローズ電流)が印加されたときに閉じた状態となる。このため、クローズ電流よりも小さな制御電流を電磁バルブ214に印加することによって、開いている状態の電磁バルブ214を所定の温度に調整することができる。
【0137】
図12(b)は電磁バルブ214がノーマルクローズ型の場合に印加される制御電流を示している。ノーマルクローズ型の電磁バルブ214は、電流が印加されないときは閉じた状態となっており、電磁バルブ214を開くために必要な電流(オープン電流)が印加されたときに開いた状態となる。このため、オープン電流よりも大きな制御電流を電磁バルブ214に印加することによって、開いている状態の電磁バルブ214を所定の温度に調整することができる。
【0138】
図12(c)は電磁バルブ214がラッチ式の場合に印加される制御電流を示している。ラッチ式の電磁バルブ214は、オープン電流が印加されると開いた状態となり、クローズ電流が印加されると閉じた状態となる。図12(c)に示した例ではオープン電流がクローズ電流よりも大きい場合であり、オープン電流よりも大きな制御電流が電磁バルブ214に印加される。このようにオープン電流がクローズ電流よりも大きい場合には少なくともクローズ電流よりも大きな制御電流を電磁バルブ214に印加することによって、開いている状態の電磁バルブ214を所定の温度に調整することができる。
【0139】
なお、図示は省略するが、ラッチ式の電磁バルブ214が用いられる場合において、オープン電流がクローズ電流よりも小さい場合には、少なくともクローズ電流よりも小さな制御電流を電磁バルブ214に印加することによって、開いている状態の電磁バルブ214を所定の温度に調整することができる。
【0140】
図13は、電磁バルブ214に印加される制御電流の他の例を示した波形図である。図13(a)はノーマルオープン型、(b)はノーマルクローズ型、(c)はラッチ式の電磁バルブ214が用いられる場合に印加される制御電流をそれぞれ示している。これらの図に示すように、クローズ電流又はオープン電流を境にしたパルス状の制御電流を印加することにより、電磁バルブ214を間欠的に開閉させ、間欠動作時に印加する電流、間欠間隔を適宜変化させるようにしてもよい。この場合にも、図12(a)〜(c)に示した例と同様に、電磁バルブ214の温度調整が可能となる。
【0141】
このように電磁バルブ214の各方式(ノーマルオープン型、ノーマルクローズ型、ラッチ式)に対応した制御電流を電磁バルブ214に印加することにより、電磁バルブ214の温度調整が可能となる。したがって、システムコントローラ72は、各ヘッド温度センサ40の測定値に応じて各電磁バルブ214の温度調整を行うことにより、各電磁バルブ214内を通過するインク、即ち、供給路206を通じて各ヘッドモジュール50’に供給されるインクを所望の温度に調整し、ヘッドモジュール50’毎の温度ばらつきを減少させることができる。
【0142】
なお、図12及び図13に示した例では、電磁バルブ214に印加する電流を制御することによって電磁バルブ214の温度調整を行っているが、これに限らず、電磁バルブ214に印加する電圧を制御するようにしてもよい。また、直流による制御方式に限らず、交流による制御方式でもよい。
【0143】
<流量調整によるヘッドモジュール毎の温調>
図11に示すインク供給系の構成において、電磁バルブ214を用いて流量調整を行うことにより、ヘッドモジュール50’毎の温調を行ってもよい。
【0144】
環境温度等に起因して、マニホールド204内部やヘッド50内部には、インクの温度勾配が発生する。ここで、あるヘッドモジュール50’に通じる供給路206のインク流量を電磁バルブ214により少なくすると、インクが供給路206、ヘッドモジュール50’、排出路208を流れる時間が長くなるため、当該ヘッドモジュール50’は、環境温度の影響をより受けることになる。逆に、あるヘッドモジュール50’へのインク流量を多くすると、インクが供給路206、ヘッドモジュール50’、排出路208を流れる時間が短くなり、このヘッドモジュール50’は環境温度の影響を受けにくくなる。
【0145】
このように、インクの流量を各電磁バルブ214によって変更することで、各ヘッドモジュール50’の温度を調整することが可能である。システムコントローラ72は、各ヘッド温度センサ40の測定値に基づいて、各電磁バルブ214を制御してヘッドモジュール50’毎のインクの流量を調整することで、各ヘッドモジュール50’の温度分布を減少させることができ、むら削減等の印字品質向上が達成可能となる。
【0146】
<その他の実施形態>
なお、ヘッド温度センサ40の補正係数の算出は、ヘッド50をインクジェット記録装置100に装着しない状態で行ってもよい。この場合には、各ヘッド温度センサ40の測定値を、図示しないインターフェースによりヘッド50の外部へ出力可能に構成しておけばよい。
【0147】
ヘッド50にインクを充填した状態で、各ヘッド温度センサ40の測定値を取得する。また、同時にヘッド50が置かれた環境の温度を測定する高精度の温度センサの測定値を取得する。この取得した測定値に基づいて、上記の(数1)〜(数3)を用いて、ヘッド温度センサ40毎の補正係数を算出する。この算出した補正係数を、図示しないインターフェースを用いてヘッド50内に備えられたメモリに記憶しておけばよい。
【0148】
その後、ヘッド50がインクジェット記録装置100に装着された場合には、インクジェット記録装置100のシステムコントローラ72が、ヘッド50のメモリに記憶されたヘッド温度センサ40毎の補正係数を読み出すことにより、各ヘッド温度センサ40の測定値を補正することができる。
【0149】
このように構成することで、ヘッド50の製造時等において、インクジェット記録装置100に装着される前に予めヘッド50のヘッド温度センサ40の補正係数を算出しておくことができる。予め補正係数が記憶されているため、インクジェット記録装置100のヘッド50を新たに交換した場合であっても、ヘッド50の状態が安定するまで待つ必要がなく、すぐに新しいヘッド50を用いて印字を行うことができる。
【符号の説明】
【0150】
40…ヘッド温度センサ、42…環境温度センサ、50…ヘッド、50’…ヘッドモジュール、51…ノズル、52…圧力室、55…共通流路、56…振動板、58…圧電素子、72…システムコントローラ、100…インクジェット記録装置、204…マニホールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液体を吐出するインクジェット方式の記録ヘッドに設けられた温度センサであって、該記録ヘッド内の液体の温度を測定するための温度センサの校正方法において、
前記記録ヘッドの置かれた環境温度を取得する環境温度取得工程と、
前記記録ヘッド内に液体が充填された状態において前記温度センサの出力値を取得するセンサ出力値取得工程と、
前記環境温度と前記出力値とに基づいて、前記出力値を補正するための補正係数を算出する算出工程と、
前記補正係数を前記記録ヘッドの記憶手段に記憶させる記憶工程と、
を備えたことを特徴とする温度センサの校正方法。
【請求項2】
前記センサ出力値取得工程は、前記記録ヘッドによる液体の吐出が行われていない状態において前記温度センサの出力値を取得することを特徴とする請求項1に記載の温度センサの校正方法。
【請求項3】
前記記録ヘッドは液体を循環させるための循環流路を備え、
前記温度センサ出力値取得工程は、前記循環流路に液体が循環されていない状態において前記温度センサの出力値を取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の温度センサの校正方法。
【請求項4】
ノズルから液体を吐出するインクジェット方式の記録ヘッドであって、該記録ヘッド内の液体の温度を測定するための温度センサを有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドに液体を導入する導入手段と、
前記導入手段に対して液体流路を介して連通する貯留手段と、
前記貯留手段から前記記録ヘッドへ液体を供給する送液手段と、
前記記録ヘッドの置かれた環境温度を取得する環境温度取得手段と、
前記記録ヘッド内に液体が充填された状態において前記温度センサの出力値を取得するセンサ出力値取得手段と、
前記環境温度と前記出力値とに基づいて、前記出力値を補正するための補正係数を算出する算出手段と、
前記温度センサの出力値を取得し、該取得した出力値を前記補正係数に基づいて補正して前記記録ヘッド内の液体の温度を算出する液体温度測定手段と、
前記記録ヘッドを制御してノズルから液体を吐出させる制御手段と、
を備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記補正係数を記憶する記憶手段を備え、
前記制御手段がノズルから液体を吐出させる際には、前記補正係数は予め記憶手段に記憶されていることを特徴とする請求項4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記記録ヘッドは複数の温度センサを有し、
前記液体温度測定手段は、前記複数の温度センサから前記記録ヘッド内の液体の温度分布を算出し、
前記温度分布が正常か否かを判定する判定手段を備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドはそれぞれノズルを有する複数のモジュールから構成されるとともに、該モジュール毎に温度センサを有し、
前記モジュール毎の温度センサから得られたモジュール毎の液体の温度に基づいて、前記モジュール毎の液体の温度を制御する温度制御手段を備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記導入手段は前記モジュール毎に液体を導入する個別流路を備え、
前記温度制御手段は、前記個別流路において液体を加熱及び/又は冷却する温調手段であることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記導入手段は、前記モジュール毎に液体を導入する個別流路と、該個別流路毎に電磁バルブを備え、
前記温度制御手段は、前記電磁バルブにより液体を加熱する電磁バルブ制御手段であることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
前記導入手段は、前記モジュール毎に液体を導入する個別流路と、該個別流路毎に液体の流量を制御可能な流量制御手段を備え、
前記温度制御手段は、前記流量制御手段により液体の流量を制御することにより前記モジュール毎の温度分布を均一にすることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
【請求項11】
前記記録ヘッドはそれぞれノズルを有する複数のモジュールから構成されるとともに、該モジュール毎に温度センサを有し、
前記モジュール毎の温度センサから得られた液体の温度に基づいて、モジュール毎にノズルからの液体の吐出率を変更する吐出率変更手段を備えたことを特徴とする請求項4又は5に記載のインクジェット記録装置。
【請求項12】
ノズルから液体を吐出させるための駆動信号を生成する駆動信号生成手段を備え、
前記吐出率変更手段は、前記温度センサから得られた液体温度に応じてモジュール毎に前記駆動信号を変更して前記吐出率を変更することを特徴とする請求項11に記載のインクジェット記録装置。
【請求項13】
ノズルから液体を吐出するインクジェット方式の記録ヘッドであって、該記録ヘッド内の液体の温度を測定するための温度センサを有する記録ヘッドの製造方法において、
前記記録ヘッドの置かれた環境温度を取得する環境温度取得工程と、
前記記録ヘッド内に液体が充填された状態において前記温度センサの出力値を取得するセンサ出力値取得工程と、
前記環境温度と前記出力値とに基づいて、前記出力値を補正するための補正係数を算出する算出工程と、
前記補正係数を前記記録ヘッドの記憶手段に記憶させる記憶工程と、
を備えたことを特徴とする記録ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−183689(P2011−183689A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51841(P2010−51841)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】