温度センサアレイ回路用のアレイ素子、該アレイ素子を用いた温度センサアレイ回路、および、該温度センサアレイ回路を含むAM−EWOD装置
【課題】温度センサアレイ回路のためのアレイ素子に関し、より小型に形成され、解像度が向上した、製造歩留まりを改善し、コストを低減できるアレイ素子を提供する。
【解決手段】アレイ素子164は、スイッチトランジスタ172と、温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子110とを含み、温度センサ素子は、スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。温度センサ素子のカソードは出力回路と結合されており、上記スイッチトランジスタがオフにされるとき、上記出力回路は、上記温度センサ素子を通してバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定し、上記スイッチトランジスタがオンにされるとき、上記バイアス電流は、上記温度センサ素子の周囲で短絡される
【解決手段】アレイ素子164は、スイッチトランジスタ172と、温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子110とを含み、温度センサ素子は、スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。温度センサ素子のカソードは出力回路と結合されており、上記スイッチトランジスタがオフにされるとき、上記出力回路は、上記温度センサ素子を通してバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定し、上記スイッチトランジスタがオンにされるとき、上記バイアス電流は、上記温度センサ素子の周囲で短絡される
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルマイクロ流体工学の分野に適用されるものであり、より詳細には、アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(AM−EWOD:active matrix electrowetting-on-dielectric)に適用されるものである。誘電体エレクトロウェッティング(EWOD)とは、アレイ上の液滴を操作する公知の技術である。AM−EWODは、EWODを、アクティブマトリクスアレイにおいて、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を用いることによって実施することを指す。
【背景技術】
【0002】
最近の数十年間において、小型電気機械システム、いわゆるMEMs技術に、大きな関心が寄せられてきた。MEMsの1つの有望な分野は、マイクロ流体工学の分野、すなわち、マイクロリットルの容積の液体の制御、操作、および検知である。この分野における用途は、多数あり、化学合成、並びに少量の成分の化学分析および生物学的分析、いわゆるラボオンチップ(LoaC:Lab-on-a-chip)を含む。この分野への一般的な導入は、例えば“Introduction to Microfluidics”, Patrick Tabeling, Oxford University PRESS (2006年1月), ISBN 0-19-856864-9といった、多くの標準的な教科書に見出すことができる。
【0003】
デジタルマイクロ流体工学とは、個々の基板上の液滴を制御、操作、および検知することに関する。この分野への導入は、“Microfluidics for Biotechnology”, Berthier and Silberzan, Artech House (2006年), ISBN-10:1-58053-961-0の第2章に見出すことができる。
【0004】
この参照文献は、アレイベースの構造体における小滴を制御および操作する、誘電体エレクトロウェッティング(EWOD)法についても記載している。EWODを実行するための簡単な構造体が、図1に示されている。基板25は、その上に配置された導電性電極22を有しており、導電性電極22の上部には、絶縁体層20が配置されている。絶縁体層20は、導電性電極22を、イオン小滴4が載った疎水性層16から分離させる。小滴4は、疎水性層16の表面に対して接触角θを生成する。この接触角の値は、表面の疎水性に依存している。導電性電極22に電圧Vを印加することによって、接触角6(θ)を調節することが可能である。接触角をEWODによって操作することの利点は、DC電流が流れる経路が存在しないため、消費電力が低いという点である。
【0005】
図2は、疎水性層26で被覆された電極28を含む上部基板36がさらに設けられた、改善された他の一構成を示す図である。上部電極に電圧V2を印加することを、小滴4と疎水性層16,26との界面における電界が、V2とVとの間の電位差の関数になるように行うことが可能である。スペーサ32を用いて、小滴4を閉じ込めるチャネル体積の高さを固定することが可能である。幾つかの実施形態では、小滴4の周りのチャネル体積は、非イオン液体、例えば油34によって充填されていてよい。図2の構成は、2つの理由において、図1の構成よりも有利である。第1の理由は、小滴4が疎水性層16,26に接触する表面に、より大きく、且つ、より良好に制御された電界を生成可能な点である。第2の理由は、小滴4が装置内に密閉され、蒸発などによる損失が回避される点である。
【0006】
米国特許公報第6565727号(A. Shenderov;2003年5月20日発行)には、小滴を、アレイを通して移動させるためのパッシブマトリクス型のEWOD装置が開示されている。この装置は、図3に示されるように構成されている。下部基板25の導電性層は、複数の電極22,38が形成されるようにパターニングされている。これらの電極は、EW駆動素子と呼ばれる。異なる電極(例えば、電極22および電極38)に、EW駆動電圧(例えばVおよびV3)と呼ばれる異なる電圧を印加することによって、疎水性層16,26の表面の疎水性を制御して、小滴4を横方向に移動させることが可能になる。米国特許公報第6911132号(V. Pamula et al.;2005年6月28日発行)は、図4に示される構成を開示している。ここでは、下部基板上の導電性層は、2次元アレイ42を形成するようにパターニングされている。異なる電極の内の幾つかまたは全てに、時間依存性の電圧パルスを印加することによって、小滴4を、アレイを通して、経路44上を移動させることが可能である。経路44は、電圧パルスの連続によって規定される経路である。米国特許公報第6565727号はさらに、小滴の分裂および合体させること、並びに、異なる材料の小滴を混合すること、を含む他の小滴操作方法を開示している。一般に、典型的な小滴操作を行うために必要な電圧は、比較的高い。従来技術(例えば、米国特許公報第7329545号(V. Pamula et al.,2008年2月12日発行))では、絶縁体層および疎水性層を生成するために用いられる技術に応じて、20〜60Vの範囲の値が引用されている。
【0007】
同様に、米国特許公報第7255780号(A. Shenderov;2007年8月14日発行)には、異なる化学成分の小滴を組み合わせることによって、化学反応または生化学反応を行うために用いられるパッシブマトリクス型のEWOD装置が開示されている。
【0008】
薄膜トランジスタ(TFT)に基づいた薄膜電子工学は、非常によく知られた技術であり、例えば、液晶(LC)ディスプレイを制御するために用いられ得る。図5に示される標準的なディスプレイ画素回路を使用して、TFTを用いて、ノードの上で電圧を切替る、および保持することが可能である。この画素回路は、スイッチTFT68およびストレージキャパシタ58から構成されている。ソース線62およびゲート線64に電圧パルスを印加することによって、電圧Vwrite66がプログラムされ、画素内に保存され得る。別の電圧を対向基板CP70に印加することによって、(静電容量CLCによって表される)液晶56を横断する電圧が、画素位置内に維持される。
【0009】
現在の多くのディスプレイは、ディスプレイの各画素にスイッチトランジスタが設けられたアクティブマトリクス(AM)配置を用いている。このようなディスプレイには、行線および列線に電圧パルスを供給する(それゆえ、アレイ内の画素にプログラム電圧を供給する)ために、集積ドライバ回路が組み込まれている場合も多い。これらの集積ドライバ回路は、薄膜電子工学において実現されており、TFT基板上に集積されている。集積ディスプレイドライバ回路の回路設計は、非常に良く知られている。TFT、ディスプレイドライバ回路、およびLCディスプレイのさらなる詳細については、例えば“Introduction to Flat Panel Displays”, (Wiley Series in Display Technology, WileyBlackwell (2009年1月), ISBN 0470516933)といった標準的な教科書に見出すことが可能である。
【0010】
米国特許公報第7163612号(J. Sterling et al.;2007年1月16日発行)には、TFTベースの電子部品を利用して、AMディスプレイ技術において用いられる回路配置に極めて類似した回路配置を用いることによって、どのようにEWODアレイへの電圧パルスのアドレスを制御すればよいかについて記載されている。図6は、取られるその手法を示す図である。図3に示されたEWOD装置と対比すると、底部基板25は、薄膜電子部品74が上に配置された基板72に、置き換えられている。薄膜電子部品74は、エレクトロウェッティングを制御するために用いられるパターニングされた導電性層電極22,38に、選択的に電圧をプログラムするために用いられる。薄膜電子部品74は、公知の多数の加工技術、例えばシリコンオンインシュレータ(SOI)、ガラス上のアモルファスシリコン、またはガラス上の低温度多結晶シリコン(LTPS)によっても形成され得ることは明らかである。
【0011】
このような手法は、「アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング」(AM−EWOD)と呼ばれることもある。TFTベースの電子部品を用いてEWODアレイを制御することには、幾つかの利点がある。すなわち、
・ドライバ回路を、AM−EWODアレイ基板の上に集積させることが可能な点。典型的な構成については、図7に示されている。EWODアレイ42の制御は、集積された行ドライバ回路76および列ドライバ回路78によって実施される。シリアル入力データストリームを処理するため、および、必要とされる電圧をアレイ42に書き込むために、シリアルインターフェース80が設けられていてもよい。アレイ基板と、外部駆動電子部品や電源装置などとの間の接続ワイヤ82の数は、アレイサイズが大きい場合でも、比較的少なくすることが可能である。
・TFTベースの電子部品は、AM−EWOD用途に好適である点。これらの部品は、製造が安価であるため、比較的大きな基板領域を、比較的低コストで生成することが可能である。
・TFTベースのセンサを、アクティブマトリクス制御アレイの中に組み入れることが可能な点。例えば米国特許出願公報第20080085559号(J. Hartzell et al.;2008年4月10日公開)は、カンチレバーベースのアレイを用いたTFTベースのアクティブマトリクスバイオセンサについて記載している。
・標準的なプロセスにおいて製造されたTFTは、標準的なCMOSプロセスにおいて製造されたトランジスタよりもはるかに高い電圧において動作するように設計可能である点。このことは、多くのEWOD技術では、20Vを上回るEWOD作動電圧を印加する必要があるため、重要である。
【0012】
多数のEWOD用途では、アレイ内の小滴の温度を検知および/または制御することが重要であり得る。このようなEWOD用途の例には、次のものが含まれる。
・化学合成または生化学合成。ここでは、化学反応または生化学合成を開始および/または制御するために、温度制御が必要であり得る。
・小滴の間の吸熱性化学反応または発熱性化学反応の検出(すなわち、この反応は、熱を吸収または放出するので、その検出は、反応の発生を示すものである)。
【0013】
特に重要なことの一例は、DNAの増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の技術である。PCRは、非常に良く知られた技術であり、該技術の詳細については、例えば“The basics: PCR”, McPherson and Moller, Taylor and Francis (2nd Edition, 2006年), ISBN 0-4153-5547-8の第1章などの従来技術に記載されている。PCRを実施するために、増幅されるDNA試料を様々な化学試薬と混合し、その後、連続的な一連の加熱および冷却サイクルを受けさせる必要がある。熱サイクルの総数は、典型的には、20〜30である。PCRを正確且つ効果的に行うためには、一般には、化学試薬の温度を、かなり正確に(典型的には、数摂氏温度の範囲内に)制御することが必要である。これを行うためには、一般に、幾つかのフィードバック制御手段を実施することが有効である。その一例が、図8に示されている。温度が変更/制御される化学試薬84が、表面86と熱的接触するように設置されている。この表面86の上には、加熱素子88および温度センサ素子90が、化学試薬84と良好に熱的接触して配置されている。加熱素子88は、94を介して、加熱器ドライバ回路92に電気的に接続されている。次に、加熱器ドライバ回路92は、102を介して、処理装置104、例えばCPUに接続されている。温度センサ素子90は、96を介して、温度測定回路98に接続されている。次に、温度測定回路98は、100を介して、処理装置104に接続されている。
【0014】
この構成全体は、加熱素子88に供給された電流が、センサ素子90によって測定される温度に応じて決定されるように動作する。従って、その温度は、加熱素子の性能だけを含む構成の場合よりも正確に制御され得る。好適なフィードバック制御回路を構成するための多数の手段が知られている。例えば、国際公開第2009/019658号(D. Fish et al.,2009年2月12日公開)には、温度が制御されている化学試薬の熱的安定性を最適化するための、比例積分(PI:proportional integral)の概要および比例積分微分(PID:proportional integral differential)の概要について記載されている。
【0015】
周囲温度を検知するための公知の技術が多数存在している。これらの方法のうちの多くは、“Principles and methods of Temperature Measurement”, Thomas D. McGee, Wiley Interscience (1988年)の記載に見出され得る。この公開文献の230頁には、特に有用な、順方向バイアスされたPN接合(このPN接合は、ダイオードであってもよいし、または、ダイオードに接続されたトランジスタであってもよい)を用いて温度を測定する技術が記載されている。この装置の回路図は、図9に示されている。この装置は、アノード106およびカソード108という2つの端子を備えている。順方向バイアス動作は、カソード108からアノード106に印加される陽電位Vに相当する。
【0016】
順方向バイアス動作では、ダイオード電流Iは、おおよそ次の数式によって求められる。
【0017】
【数1】
【0018】
ここで、qは電荷であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度(ケルビン)であり、mはダイオード理想係数であり、拡散電流および再結合電流の相対的寄与率を表すプロセス依存係数を示すものであり、Wはダイオードの幅であり、Sはプロセス依存定数(温度依存性も含まれ得る)である。数式(1)の関係は、Iが(装置の形状およびプロセスの詳細によって決定される)所定の最大限度を越えると、有効でなくなる。なぜなら、電流は、ダイオード自体の自己抵抗によって制御されるからである。
【0019】
このような装置が、一定の電流吸い込みを伴って、順方向バイアスされると(アノード電圧は、カソード電圧に対して正である)、ダイオードを横断する電圧降下が、絶対温度(ケルビン)に比例することが、具体的には数式2から容易に見て取れる。
【0020】
【数2】
【0021】
図10は、薄膜プロセスにおいて形成されたダイオードの予想され得る構成を示す図である。この装置は、p+型ドープ領域112、n−型ドープ領域116、およびn+型ドープ領域114から構成される半導体材料の層から形成されている。p+ドープ領域112およびn+ドープ領域116には、例えば金属の電気接続点が形成されており、装置のアノード106端子およびカソード108端子を形成している。従って、p+型ドープ領域112とn−型ドープ領域116との間の界面において、ダイオードPN接合118が形成される。
【0022】
順方向バイアスモードにおける動作では、デバイス特性は、数式2によって記載された特性に近似している。しかしながら、Sという用語は、典型的には温度依存性を有しており、このため、定電流において装置を横断する全バイアス降下は、おおよそ次の数式3によって求められる。
【0023】
【数3】
【0024】
ここで、aおよびbは、吸い込まれた電流およびプロセス依存定数に依存している。
【0025】
ダイオードを通して一定の順方向電流を吸い込むための1つの可能な回路形態が、図11に示されている。
【0026】
演算増幅器124の非反転端子に、DC基準電圧Vref126が印加される。演算増幅器124は、反転端子においても同一の電位を維持するように機能する。従って、電位Vrefは、抵抗素子128の端子を横断して生成される。抵抗素子128の抵抗はRである。オームの法則に基づき、この抵抗素子128を流れる電流は、I=Vref/Rである。(理想的には)演算増幅器の入力電流がゼロであるので、ダイオード110を流れる電流もIに等しい。ダイオード110のアノードは、ソースまたは電源装置電圧VDD123に結合されている。従って、この回路は、ダイオード110を流れる定電流を吸い込み、カソードにおける電圧は、VDD−Vになる。ここで、Vは、上述の数式(2)によって求められる。
【0027】
この電圧は、その後、好適なアナログ−デジタル変換器(ADC)132によって、デジタル信号に変換され得る。このADC132は、標準的な種類のものであってよく、例えば、比較器の後にカウンタが設けられたものであってよい。ADCの入力部におけるDC電圧レベルは、デジタル化された出力信号に変換される。このデジタル化された出力信号は、測定された温度の値を示すものである。この回路の一部は、列出力回路131と呼ばれる。列出力回路131の入力部は、ダイオード110のカソードに接続されており、このため、定電流を吸い込むと共に、その入力部における電位を測定する機能を実行する。
【0028】
列出力回路131の形態には、この機能を実行するために想到し得る多くの可能な代替例が存在することが、当業者には明らかであろう。
【0029】
図11の回路の実用的な形態では、ダイオード110を通って吸い込まれた電流の値に依存して、抵抗素子128が必要とする抵抗値は、極めて大きくなる。幾つかの例では、このことは、例えば抵抗素子の物理的配置寸法により、実施に不適切な場合もある。さらなる欠点は、抵抗素子128を形成するために用いられる材料の抵抗率が、望ましくない温度依存性を有している点である。これら両方の問題を回避するための公知の技術は、スイッチキャパシタ回路を使用して、抵抗素子を模倣することである。図12は、このようなスイッチキャパシタ抵抗素子の単純な実施形態を示す図である。この構成は、方形波パルスΦを一方のトランジスタ134のゲートに印加すると共に、逆位相パルスΦbarを他方のトランジスタ136のゲートに印加することによって、抵抗素子を模倣するように形成されている。この技術は、“MOS Switched Capacitor Filters”, Brodersen et al, Proceedings of the IEEE, Vol. 67, num. 1 (1979年1月)に、詳細に記載されている。実効抵抗値は、ΦおよびΦbarが切替えられるときの周波数、および、キャパシタ135の値から判定される。抵抗素子のスイッチキャパシタの形態の1つの利点は、これを具現化するために必要な配置面積が、従来の抵抗素子の配置面積よりも小さくてよい点である。さらなる利点は、スイッチキャパシタ抵抗素子が、比較的、温度非依存性であり得る点である。さらなる利点は、パルスΦおよびΦbarの周波数を変更することによって、抵抗の値を変化させることが可能な点である。方形波パルスΦおよびΦbarの周波数を調節することによって抵抗を変更可能であるため、ΦおよびΦbarを調節する幾つかの簡素な手段、例えば簡素なデジタルタイミング回路が利用可能であるならば、この装置は、可変抵抗として機能し得ることは理解されよう。
【0030】
図11の回路のさらなる欠点は、所定の温度変化の場合に、ダイオード110のカソードにおける出力電圧の変化が、極めて小さく、例えば1ケルビンつきに数ミリボルトだけであるという点である。この欠点は、温度センサが薄膜回路部品を有して製造されている場合に、特に当てはまる傾向がある。TFT部品の品質および可変性が比較的良くないことは、アナログ電圧レベルを数ミリボルトの精度で検知することが可能なADCの設計を、極めて困難にする。このため、図11の回路は、それほど感度がよくない。米国特許公報第3791217号(B. Stout et al.;1974年2月12日発行)および特開2006−073887号(T. Kuwabara et al.;2006年3月16日公開)には、単一のダイオード素子が、直列に接続されたn個の多数のダイオード素子に置き換えられた、当該形態の変形例が記載されている。この場合、直列の薄膜ダイオードを横断する電圧降下は、次の数式4によって求められる。
【0031】
【数4】
【0032】
ここで、nは、直列に接続されたダイオード素子の数である。従って、所定の温度変化の場合の出力電圧の変化は、係数nだけ増大する。温度センサを実用的に設計するためのnの値の選択は、ダイオードの設計およびプロセスの詳細な構成、回路形態、および作動電圧、および、センサが作動しなければならない範囲に依存することになる。例えば、図11の回路を考慮すると、nは、可能な限り大きくする必要があるが、次の点に留意する必要がある。すなわち、第1に、ダイオードを通って吸い込まれた電流がそれほど大きくならないので、ダイオードの自己抵抗が重要となり、その結果数式(5)が有効にならないことを確実にする、および、第2に、センサの出力における飽和が生じるのであれば、(5)によって示されるダイオードを横断する電圧降下が、VDD−Vrefを超えないことを確実にするように留意する必要がある。
【0033】
図11の形態のさらなる欠点は、出力電圧が、試料に応じて大きく変動し得るプロセスパラメータSに依存している点である。結果的に、正確な温度測定をするには、幾つかの形態の初期較正が必要となるので、製造の見地から言うと高コストとなり得る。米国特許公報第3430077号(D. Bargen;1969年2月25日発行)および米国特許公報第3812717号(G. Miller et al.;1974年5月28日発行)には、この欠点を克服するための方法が記載されている。これは、ダイオードを横断する電圧降下の2つの測定を、それぞれI1およびI2で示される、吸い込まれた異なる電流で行うことによって、克服するものである。ダイオードが、数式(1)によって示される特性を有しているとすると、第1の測定の場合、出力電圧は、次の数式5によって求められる。
【0034】
【数5】
【0035】
第2の測定の場合、出力電圧は、次の数式6によって求められる。
【0036】
【数6】
【0037】
これら2つの電圧レベルV1およびV2を測定した後、これらの電圧レベルを減算して、次の結果を求める。
【0038】
【数7】
【0039】
電圧差VSは、これら2つの電流の比率に依存しており、プロセス依存パラメータSは排除される。
【0040】
この技術を実施するための予想し得る多数の方法が存在することは、当業者には明らかであろう。例えば、列出力回路を、図13に示される構成141に変更してもよい。デジタル減算回路133が、図11の回路の出力部に加えられており、抵抗素子128は、上述のスイッチキャパシタ構成によって実施される可変抵抗素子140に置き換えられている。本形態では、温度センサ素子(ダイオード110)を横断する電圧降下の2つの別個の測定を、各温度センサ素子を通して吸い込まれた異なる値の電流によって行うことが可能である。電流は、次のいずれかによって、変動し得る。
・Vref126の値を変化させること。これによって、吸い込まれた電流は、2つのVrefの値に対してそれぞれ、Vref1/RおよびVref2/Rとなる。ここで、Rは抵抗素子140の抵抗である。
・抵抗素子140として用いられるスイッチキャパシタ構成に印加されるパルスの周波数を変化させること。これによって、2つの各測定の実効抵抗は、例えば、値R1およびR2のように、異なるものになり得る。従って、第1および第2の測定のそれぞれの場合のVref/R1およびVref/R2に等しい電流は、ダイオード110を通って吸い込まれることになる。
【0041】
数式7によれば、得られた2つの電圧測定値を減算して、プロセス依存パラメータSが排除された結果を得ることが可能である。これは、多数の標準的な技術によって実現可能である。例えば、これら2つの電圧を、アナログ域において、基準キャパシタ上の中間記憶装置によって減算してもよいし、または、これら2つの電圧を、単純なデジタル減算回路133によってデジタル信号に変換した後に、減算してもよい。
【0042】
パラメータSに依存する測定値を排除するための同様の技術は、米国特許公報第5829879号(H. Sanchez et al.;1998年11月3日発行)に記載されている。これは、回路内で切り替えられたダイオードの異なる幅で出力電圧の2つの測定を実行することによって、実現される。
【0043】
最初の測定では、ダイオードの全幅はW1であり、ダイオードを横断する電圧降下は、次の数式8によって求められる。
【0044】
【数8】
【0045】
第2の測定では、ダイオードの全幅はW2であり、電圧降下は、次のとおりである。
【0046】
【数9】
【0047】
従って、これらの電圧の間の差は、次のとおりである。
【0048】
【数10】
【0049】
ここでも、パラメータSへの依存性は排除されており、電圧VSは、W1およびW2の比率に依存する。
【0050】
多くの用途では、多数の空間的位置において、すなわちアレイベースのフォーマット内において、温度を個別に検知可能であることが都合がよい。このような機能を、上述の方法を用いて温度センサ素子および測定回路の複数の複製を形成することによって実行することは可能であるが、これは、概して、大きな寸法のアレイが必要とされる場合には、基板に非常に多くの接続点を形成する必要があるため、実用的ではないし、また、物理的に小さい寸法のアレイ素子が必要とされる場合にも実用的ではない。
【0051】
国際公開第2009019658号には、薄膜プロセスにおいて集積させたアレイベースの温度センサが記載されている。記載されるセンサ素子は、(温度依存性の)抵抗素子、順方向バイアスされたダイオード、または、ダイオードに接続されたトランジスタであってよい。記載されるアレイ素子回路は、図14に示されている。このアレイ素子回路は、温度センサ素子(ダイオード)142、スイッチトランジスタ144、および第2のスイッチトランジスタ146から構成されている。各スイッチトランジスタのゲートは、152において行選択線RWSに接続されている。行選択線RWSは、同一の行内の各アレイ素子に共通である。温度センサ素子142は、示されるスイッチトランジスタ間に接続されている。2つの列電極148,150は、各素子148および140に接続されている。これらの接続点は、アレイの同一列内の各素子に共通である。
【0052】
図15に示されるように、アレイを動作させるために、外部回路が設けられている。第1の列電極148は、電源電圧VDD156に接続されている。第2の列電極150は、定電流を吸い込むため、および、生じた電圧を測定するための列出力回路141に接続されている。列出力回路141は、例えば上述したような標準的な回路技術を用いて、電流源158および出力増幅器160から構成されていてよい。出力回路141の構成は、アレイの各列に対して繰り返し配置される。動作中は、高レベルの電圧が、行素子を読み出すために、RWS線に印加される。これによって、スイッチトランジスタ144および146は、どちらもオンにされる。従って、電源電圧VDD156と温度センサ素子142のアノードとの間、および、温度センサ素子142のカソードと列出力回路141との間に、電気接続が行われる。その後、この構成は、既に説明した単一素子の温度センサと同様に動作する。単一素子の温度センサの場合に記載した較正技術は、アレイベースの構造体にも容易に適用され、これによって、アレイ内の各素子が、既に記載した1つまたは複数の技術を用いて個別に較正され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0053】
国際公開第2009019658号のアレイの形態では、各アレイ素子に3つの別々の電圧線を供給しなければならず、各アレイ素子内に2つのスイッチトランジスタが必要なことに留意されたい。この構成の欠点は、多数のスイッチ素子およびバイアス線を有しているため、より少ない装置および接続点が用いられる場合よりも製造歩留まりが低いという点である。さらなる欠点は、アレイ素子の物理的配置面積もまた、より少ない装置および接続点が用いられる場合よりも大きいという点である。
【0054】
国際公開第2009019658号はさらに、図16に示される、異なる寸法の2つのダイオード145および147を用いた画素回路の変形例について記載している。第1のスイッチング素子トランジスタ146は、第1のダイオード145を読出線148に接続させており、第2のスイッチング素子144は、第2のダイオード147を第2の列電極線150に接続させている。これら2つのトランジスタ144および146のゲートは、同一の行選択線RWSに接続されている。第1のダイオード145のカソードおよび第2のダイオード147のカソードは、どちらも、接地GRDに結合されている。同一の電流が、各ダイオード145,147を通って流れ、アノード間の電圧差は、温度に比例すると共に、既に説明した構成によって測定可能である。
【0055】
アレイベースの温度センサの他の構成も知られている。例えば米国特許公報第6633656号(F. Picard;2003年10月14日発行)は、指紋検知用のサーミスタのアレイについて記載している。温度センサアレイを、記載されている公知の手段に従って、指紋の検出および認識のために用いてもよい。指が、温度センサアレイに熱的接触して設置されると、アレイ内の個々の素子が、位置的に、指先構造の隆線に近接しているか、または谷間に近接しているかに基づいて、異なる温度変化を記録することが可能である。従って、アレイ内の多数の素子を走査することによって、熱的手段を、指紋の記録および撮像のために用いることが可能である。
【0056】
国際公開第2009019658号はさらに、電流を加熱素子に供給するためのアレイベースの回路についても記載している。この基本的な回路素子は、図17に示されている。A1において接続された書き込み線510および行選択線512によって、スイッチ素子トランジスタ514がアドレスされる。A1における行選択線によってスイッチがオンにされると、電圧がキャパシタ516を通るようにプログラムされている。プログラムされた電圧の値に応じて、トランジスタ508は、幾分オン状態になり得る。これは、結果的に、VCC506からトランジスタ508および抵抗性加熱素子518を通って接地線502に流れる電流を生じさせる。
【発明の概要】
【0057】
[発明の目的]
本発明の一目的は、1つのアレイ素子につき、より少ないスイッチトランジスタとより少ない列電極接続点とを備えて具現化され得るアレイ素子回路を提供することにある。他の一目的は、より小型の配置面積を提供し、接続点の数を低減することにある。
【0058】
[発明の概要]
本発明の基本的な態様は、アレイベースの温度センサのための構成である。アレイ素子は、それぞれ、1つのセンサ素子、1つの行選択スイッチトランジスタ、1つの行選択線、および、1つの列電極を用いて具現化され得る。行選択スイッチトランジスタは、センサ素子に並列接続されており、アレイの同一列内の各センサ素子は、直列接続されている。
【0059】
本発明のアレイ素子回路の、例えば国際公開第2009019658号に記載された従来技術のアレイ素子回路と比べた際の利点は、本発明のアレイ素子回路が、1つのアレイ素子につき、1つ少ないスイッチトランジスタと、1つ少ない列電極接続点とを有して具現化可能な点にある。
【0060】
回路トポロジーが簡素であることによる利点は、
・回路をより小さい配置面積で具現化することが可能な点。従って、アレイ素子を、より小型にすることが可能であり、これによって、温度センサアレイの解像度が向上される。
・接続点および回路素子の数を減らすことは、製造歩留まりを改善し、これによってコストを低減するために有効である点。
【0061】
本発明の一態様によれば、温度センサアレイ回路のためのアレイ素子が提供される。アレイ素子は、スイッチトランジスタと、温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子とを含む。この温度センサ素子は、スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。
【0062】
他の一態様によれば、温度センサ素子は、少なくとも1つのダイオードを含む。
【0063】
他の一態様によれば、温度センサ素子は、直列接続された複数のダイオードを含む。
【0064】
さらに他の一態様によれば、アレイ素子はさらに、第2のスイッチトランジスタに直列接続された、温度に応じて変動するインピーダンスを有する第2の温度センサ素子を含む。直列接続された第2の温度センサ素子および第2のスイッチトランジスタは、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。
【0065】
さらに他の一態様によれば、アレイ素子は、出力回路と結合されている。ここで、スイッチトランジスタがオフにされるとき、出力回路は、温度センサ素子を通るバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定し、スイッチトランジスタがオンにされるとき、バイアス電流は、温度センサ素子の周囲で短絡されるように、構成されている。
【0066】
他の一態様によれば、M行およびN列に配置されたアレイ素子のM×N個のアレイを含む温度センサアレイ回路が提供される。各アレイ素子は、スイッチトランジスタと、温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子とを備えている。温度センサ素子は、スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。ここで、各列内のアレイ素子について、複数の温度センサ素子は、第1の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子と直列接続されており、第1の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子は、温度センサアレイ回路内に含まれる列出力回路に接続されており、M番目の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子は、電源電圧に接続されている。各行内のアレイ素子のためのスイッチトランジスタのゲートは、同一の行選択線に接続されている。
【0067】
他の一態様によれば、温度センサアレイ回路は、各行選択線に、対応する行選択信号を選択的に供給するための行ドライバを含む。ここで、所定の行内の所定のアレイ素子によって得られる温度を測定するために、行ドライバは、所定の行の行選択線に行選択信号を供給して、所定の行内の各アレイ素子に含まれるスイッチトランジスタをオフにすると共に、所定の行以外の行内のアレイ素子のスイッチトランジスタをオンにするように構成されており、所定のアレイ素子と同一の列の第1の行内に含まれるアレイ素子に接続された列出力回路は、所定の温度センサ素子を通してバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定するように構成されている。
【0068】
他の一態様によれば、列出力回路は、M×N個のアレイ内の異なる列のための異なる列出力回路を含む。
【0069】
さらに他の一態様によれば、列出力回路は、M×N個のアレイ内の異なる列によって共有される同一の列出力回路を含む。
【0070】
他の一態様によれば、各アレイ素子内の温度センサ素子は、少なくとも1つのダイオードを備える。
【0071】
さらに他の一態様によれば、各アレイ素子内の温度センサ素子は、直列接続された複数のダイオードを備える。
【0072】
他の一態様によれば、各アレイ素子は、直列接続された、温度に応じて変動するインピーダンスを有する第2の温度センサ素子と、第2のスイッチトランジスタとをさらに含む。これらの直列接続された第2の温度センサ素子および第2のスイッチトランジスタは、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。
【0073】
本発明の他の一態様によれば、アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(AM−EWOD)装置が提供される。アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(AM−EWOD)装置は、その上に置かれた小滴を操作するためのアクティブマトリクスアレイと、本明細書に記載される温度センサアレイ回路とを備えている。温度センサアレイ回路は、アクティブマトリクスアレイ上の温度を測定するように構成されている。
【0074】
さらに他の一態様によれば、アクティブマトリクスアレイ制御電子部品および温度センサアレイ回路電子部品は、同一の基板上に配置されている。
【0075】
従って、上述および関連する目的を達成するために、本発明は、本明細書において十分に説明され、特に特許請求の範囲において指摘される特徴を含む。以下の説明および添付の図面は、本発明の特定の典型的な実施形態を詳細に示すものである。これらの実施形態は、説明のためのであるが、本発明の原理を用いることができる様々な方法のうちのいくつかに過ぎない。本発明の他の目的、利点、および新規の特徴は、以下の発明の詳細な説明を図面と共に考慮することによって、明らかとなろう。また、添付の図面では、同様の参照番号は、同様の部材または特徴を示すものである。
【0076】
[発明の効果]
本発明の温度センサアレイ回路は、より小さな配置面積によって具現化可能な簡略化された回路トポロジーを提供する。従って、アレイ素子は、より小型に形成され、温度センサアレイの解像度が向上される。本発明は、製造歩留まりを改善し、これによってコストを低減するという利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、従来技術を示し、誘電体エレクトロウェッティングを実施するための構成を示すものである。
【図2】図2は、従来技術を示し、上部基板および底部基板を用いて誘電体エレクトロウェッティングを実施するための改善された構成を示す図である。
【図3】図3は、従来技術を示し、パッシブマトリクス型のEWOD装置を示す図である。
【図4】図4は、従来技術を示し、EWOD装置における小滴の横方向の運動を示す図である。
【図5】図5は、従来技術を示し、標準的なディスプレイ画素回路を示す図である。
【図6】図6は、従来技術を示し、アクティブマトリクス型のEWOD装置を示す図である。
【図7】図7は、従来技術を示し、AM−EWODドライバ回路構成の一例を示す図である。
【図8】図8は、従来技術を示し、フィードバック制御のための温度測定によって、大量の液体を加熱するための構成を示す図である。
【図9】図9は、従来技術を示し、アノード接続点およびカソード接続点を示すダイオードの回路図を示す図である。
【図10】図10は、従来技術を示し、薄膜プロセスにおいて製造されたダイオード装置の予想され得る構造を示す図である。
【図11】図11は、従来技術を示し、ダイオードを温度センサ素子として用いて温度を測定するための回路構成を示す図である。
【図12】図12は、従来技術を示し、大きな値を有する抵抗素子に相当する性能を有する回路素子を具現化するためのスイッチキャパシタ構成を示す図である。
【図13】図13は、従来技術を示し、ダイオードを温度センサ素子として用いていると共に、較正手段を使用している、温度を測定するための回路構成を示す図である。
【図14】図14は、従来技術を示し、アレイベースの温度センサのための画素回路を示す図である。
【図15】図15は、従来技術を示し、温度センサアレイ用の回路構成を示す図である。
【図16】図16は、従来技術を示し、温度センサアレイ用のさらなる回路構成を示す図である。
【図17】図17は、従来技術を示し、加熱素子用のアレイ素子回路を示す図である。
【図18】図18は、本発明の第1の実施形態のアレイ素子回路を示す図である。
【図19】図19は、第1の実施形態の一形態例を示す図である。
【図20】図20は、本発明の第2の実施形態のアレイ素子回路を示す図である。
【図21】図21は、本発明の第3の実施形態の一形態例を示す図である。ここでは、列出力回路は、多数の列間で共有されていてよい。
【図22】図22は、本発明の第5の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明の第1の実施形態は、図18に示されている。本実施形態は、温度センサアレイ回路用のアレイ素子164のための回路である。アレイ素子164は、スイッチトランジスタ172および温度センサ素子110を含む。温度センサ素子110は、図示されるようにダイオードであってよい。他の一実施形態では、温度センサ素子110は、本発明の範囲から逸脱することのない、他の任意の種類の公知の温度センサ素子であってよいことは、当業者に明らかであろう。例えば、温度センサ素子110は、温度に応じて変動するインピーダンスを有する公知の任意の種類の温度センサ素子であってよい。
【0079】
アレイ素子164の接続は次のとおりである。温度センサ素子110は、スイッチトランジスタ172のドレインと、該トランジスタ172のソースとの間に接続されている。スイッチトランジスタ172のゲートは、170において行選択線RWSに接続されている。この行選択線RWSは、アレイの同一行内の各アレイ素子に共通の線である。アレイ素子は、RWS、A、およびCで表される3つの接続点を有している。RWS、A、およびCは、それぞれ、行選択線、温度センサ素子110のアノード、および、温度センサ素子110のカソードに対応している。
【0080】
多数のアレイ素子164を一緒に接続させて、図19に示される温度センサアレイ回路が形成される。この特定の実施例では、温度センサアレイ回路は、2×2個のアレイであるが、実際には、アレイが任意の寸法のアレイであってよいことは、当業者には明らかであろう。アレイの第2の行(図19の最も上の行)の各温度センサ素子110のアノード接続点は、電源電圧VDD156用のレールに接続されている。この第2の行内の各温度センサ素子110のカソード接続点は、隣接する第1の行(図19の最も下の行)の同一列内の対応する温度センサ素子110のアノード接続点に接続されている。第1の行内の温度センサ素子110のカソード接続点は、列出力回路131の入力部に接続されている。列出力回路131は、例えば、従来技術の箇所において説明したような標準的な手段によって構成され得る。本実施形態では、アレイの各列のために、別々の列出力回路131が設けられている。
【0081】
温度センサアレイ回路の動作は次のとおりである。
【0082】
各温度が測定される所定の行内のアレイ素子では、当該行のためのRWS信号(行選択信号)は低くなり、その結果、当該行内の全てのアレイ素子のスイッチトランジスタ172がオフになり、当該アレイ内の行素子および温度センサ素子110が選択される。当該アレイ内の他の全ての行素子では、RWS信号は、高レベルで維持されるので、これら他の行内の全てのアレイ素子内のスイッチトランジスタ172は、オン状態であり、その結果、これらのアレイ内の行素子および温度センサ素子110は選択されない。選択されなかった行では、スイッチトランジスタ172は、これらの行内の対応する温度センサ素子110を短絡させるように機能する。従って、実際には、選択された行の温度センサ素子110のアノードは、電源電圧VDD156用のレールに接続されており、選択された行内の温度センサ素子110のカソードは、列出力回路131の入力部に接続されている。その後、回路は、従来技術において既に説明したように機能する。各列の列出力回路131は、選択された行の当該列内の温度センサ素子110を流れるバイアス電流を吸い込むと共に、このように選択された温度センサ素子110のカソードにおいて結果として生じる電圧を測定するように機能する。温度センサ素子110が図示されるようにダイオードである場合、電流の符号は、ダイオードが順方向バイアスにあるように選択され得る。この電圧は、電源電圧VDDから温度センサ素子110の接続点AとCとの間の電位差を減算したものと等しい。この量が、従来技術に関連して説明したように、温度依存性である。所定の列増幅器160の出力部162をサンプリングすることによって、選択された行およびサンプリングされた列の位置内の温度センサ素子110の温度を示す量が測定される。
【0083】
本構造が、任意のM×N個の寸法のアレイに容易に生成可能であることは、当業者には明らかであろう。この場合、第1の行内のセンサ素子110のカソードは、対応する列の列出力回路131に接続されており、M番目の行内のセンサ素子110のアノードは、電源電圧VDDに接続されており、k番目の行内の温度センサ素子110のアノードは、同一列のk+1番目の行内のセンサ素子のカソードに接続されている。ここでは、kの全ての値は、1とM−1との間である。結果として、各列内の温度センサ素子110は、直列接続されている。その後、温度センサアレイ回路の動作は、実質的には、上述の2×2個のアレイの場合と同じである。
【0084】
温度センサアレイ回路を正常に動作させるには、列出力回路131によって吸い込まれたバイアス電流Iが正確に選択されることが重要である。バイアス電流Iは、次の基準が満たされる程度に十分に低いように選択される必要がある。
・選択されなかった行内の直列結合されたM−1個のスイッチトランジスタ172を横断するバイアス降下が、選択された行内の温度センサ素子110を横断するバイアス降下と比べて小さいこと。この基準は、所望の全ての温度範囲内において順守されている必要がある。
・温度を検知するために必要な範囲内の全ての温度に対して、列出力回路131の増幅回路160の入力電圧が、その設計動作範囲内で維持される必要があること。
・温度センサ素子110自身の抵抗による自己発熱が最小でなければならない。
【0085】
さらに、バイアス電流Iはまた、次の基準が満たされる程度に十分に高いように選択される必要がある。
・必要とされるVDDの値は、大きすぎず、回路を製造するために用いられる加工技術のための典型的な電源バイアスの範囲を超えていないこと。(一般に、バイアス電流Iの値が大きければ大きいほど、高い電源電圧VDDが必要とされる。)
・温度を検知するために必要な範囲内の全ての温度に対して、列出力回路131の増幅回路160の入力電圧が、その設計動作範囲内で維持される必要があること。
・選択された行内の温度センサ素子110を流れるバイアス電流Iは、選択されていない行内の温度センサ素子110を流れる任意の逆リーク電流よりも大幅に大きいこと。
【0086】
実用的な設計において用いられるバイアス電流Iの最適な値は、温度センサアレイが動作することが求められる温度範囲、アレイの寸法、アレイを製造するために用いられるプロセス技術に依存している。概して、バイアス電流Iの値は、比較的小さいこと(典型的には、センサアレイを製造するために用いられるプロセス技術に応じて、ピコアンプからマイクロアンプの範囲内)が都合がよい。
【0087】
上述の基準を満たすように選択されたバイアス電流Iの値で動作することの利点は、典型的には、次のとおりである。
・温度センサ素子110が、従来技術に記載されているように薄膜ダイオードであるならば、その動作は、温度に対する感度が最大で、且つリニアな範囲内において、行われ得る。この場合には、バイアス電流Iの値は、温度センサ素子110を横断するバイアス降下が、PN接合の作用により優勢になるように、および、ダイオードの自己抵抗による電圧降下が比較的小さくなるように、十分に小さい値である必要がある。
・アレイ素子部品内の抵抗損失による回路電力消散が最小である。
・温度センサ素子110内の電力消散による自己発熱が最小である。温度を測定する動作がその温度自体の影響を好適に受けないので、自己発熱は回避される。
・回路は、広範囲の温度値にわたってリニアな出力特性を提供するように設計されていてよい。
・VDDの最適化された値は、典型的には、回路を製造するために用いられるプロセス技術において使用されるバイアス電圧の典型的な範囲よりも大きい必要はない、または、該範囲以外である必要はない。
【0088】
本実施形態において用いることが可能であると共に、この動作モードに極めて適している列出力回路131を具現化するために適した技術については、既に、従来技術の箇所において記載されている。
【0089】
本実施形態の利点は、次のとおりである。
・温度センサアレイ回路を、従来技術に記載された温度センサアレイ回路よりも小さい配置面積で具現化することが可能である点。この場合、アレイ素子が小型に形成されるので、温度センサアレイ回路の解像度が向上する。
・接続点および回路素子の数を低減することが、製造歩留まりを改善し、これによってコストを低減することにとって有効である点。
【0090】
アレイ素子内のスイッチトランジスタ172は、用いられる製造プロセスに応じて、例えばMOS、TFT、バイポーラなどの多数のトランジスタ技術のうちの任意の1つの技術によって具現化可能であり、上記スイッチトランジスタ172が、n型装置であってもよいし、またはp型装置であってもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0091】
本発明に係るアレイ素子の第2の実施形態は、図20に示されている。本実施形態は、従来技術に記載されているように、温度センサ素子110が、直列接続された複数のダイオードを含む第1の実施形態と同様である。このため、本実施形態の動作は、第1の実施形態について記載されたものと同様である。
【0092】
この第2の実施形態の利点は、多数のダイオードの使用によって、所定の温度変動の場合の出力電圧の変動が増大され、アレイ素子回路の感度が向上する点である。このことにより、温度測定の精度が増大され得る。
【0093】
本発明の第3の実施形態は、図21に示されている。本実施形態では、列出力回路131は、温度センサアレイ回路内の多数の列間で共有されている。図21は、3×4個のアレイの場合を示すものである。ここでは、さらなる列選択トランジスタ174の使用によって、アレイ内のそれぞれ4つの列が、単一の列出力回路131を共有している。
【0094】
温度センサアレイ回路は、次のように接続されており、すなわち、アレイ素子回路は、第1の実施形態(図19)に記載された回路と同様に配置および接続されている。各列内の第1の行アレイ素子のカソード接続点は、列選択トランジスタ174に接続されている。各列選択トランジスタ174のゲートは、列選択線176に接続されている。各列内の列選択トランジスタ176のソースは、まとめて接続され、列出力回路131の入力部に接続されている。
【0095】
第3の実施形態の温度センサアレイ回路の動作は、第1の実施形態の場合に説明した動作と同様である。アレイ素子は、アレイ素子の位置に適した行選択線RWSおよび列選択CSELにロジックハイ信号を印加することによって、選択される。列選択スイッチトランジスタを付加することは、アレイ内の幾つかの列が、同一の列出力回路131を共有することが可能であることを意味している。このため、選択された列素子は、適切な列選択トランジスタ174によって、回路に切替えられる。
【0096】
本実施形態の一利点は、列出力回路131を共有することによって、構成部品の総数をさらに低減することが可能な点である。これは、基本的寸法を低減すると共に製造歩留まりを改善することに役立つ。さらなる利点は、列出力回路131による消費電力が低減される点である。本発明の他の一実施形態では、温度センサアレイ回路は、多数の列出力回路131を含み、これらの各列出力回路131が、アレイ内の多数の列によって共有されることは、理解されよう。従って、ここでも、温度センサアレイ回路内では、列の数よりも少ない列出力回路131が必要とされる。
【0097】
第4の実施形態は、上述の実施形態のうち、列出力回路が、図13に示されると共に従来技術において説明された構成141から構成されている場合の実施形態のいずれか1つと同様である。列出力回路141は、列出力回路141の入力部において生じた電圧の2つの測定を行うと共に、これらの結果を減算するように構成されている。これは、第1の測定として、バイアス電流I1が温度センサ素子110を通って吸い込まれた時に、列出力回路141の入力部における電圧を測定するように、列出力回路141を構成することによって行われる。第2の測定として、列出力回路141は、別の値のバイアス電流I2を吸い込み、この場合の電圧を測定するように構成されている。測定されたこれら2つの電圧を減算することによって、特定のプロセス依存パラメータに無関係な温度の測定が行われる。この特定のプロセス依存パラメータは、従来技術の箇所において既に説明したとおりであり、数式(7)に示されている。
【0098】
本実施形態の一利点は、プロセス依存パラメータに対する依存を排除することによって、絶対温度のより正確な測定が、実現され得る点である。
【0099】
第5の実施形態は、上述の実施形態のうち、回路が図22に示される構成からなる場合の実施形態のいずれか1つと同様である。本実施形態によれば、アレイ素子回路の一変形例が、実施される。
【0100】
アレイ素子は、次のように接続されている。温度センサ素子110のアノードは、アレイ素子のアノード端子166、スイッチトランジスタ172のドレイン、および、第2のスイッチトランジスタ180のドレインに接続されている。温度センサ素子110のカソードは、アレイ素子のカソード端子168、スイッチトランジスタ172のソース、および、第2の温度センサ素子178のカソードに接続されている。スイッチトランジスタ180のソースは、温度センサ素子178のアノードに接続されている。170における第1の行選択線RWSは、スイッチトランジスタ172のゲートに接続されている。182における第2の行選択線RWS2は、スイッチトランジスタ180のゲートに接続されている。
【0101】
図22に示されるタイプのアレイ素子を含む温度センサアレイ回路の動作は、第4の実施形態について説明した動作と同様である。回路は、既に説明したように、アレイ素子のアノード端子166とカソード端子168との間のバイアス電流Iを吸い込むように構成されていてよい。その後、列出力回路141の入力部において生成された電圧の2つの別個の測定が行われる。より詳細には、第1の測定では、選択された行のアレイ素子のスイッチトランジスタ172はオフにされて、スイッチ素子180がオフになる。この場合、測定された電圧は、温度センサ素子110を横断して降下した電圧と等しい。第2の測定では、スイッチトランジスタ172がオフにされ、スイッチトランジスタ180がオンにされる。この場合、温度センサ素子110および178は、並列接続されており、異なる出力電圧が測定される。
【0102】
この状態は、従来技術の箇所において説明した、温度センサ素子の幅が、2つの測定の場合において異なる状態と同様である。測定されたこれら2つの電圧を減算することによって、絶対温度を示す量が得られる。数式10および従来技術において提示された意見によれば、測定されたこの量は、特定のプロセス依存パラメータとは無関係である。本実施形態の一利点は、プロセス依存パラメータに対する依存性を排除することによって、絶対温度をより正確に測定することが可能な点である。
【0103】
本実施形態によれば、アレイ素子が選択されていない場合には、スイッチトランジスタ172がオンにされて、温度センサ素子110および178を短絡させる。スイッチトランジスタ180は、オンにされてもよいし、または、オフにされてもよい。これについては、理解されよう。
【0104】
本実施形態を最適に実施するために、温度センサ素子110および178は、同様の電気特性を有しているように設計されている必要があり、このため、単位当たりほぼ同一の電流が、各装置を流れる。
【0105】
上述の実施形態のうちのいずれかを、従来技術に記載されたAM−EWODのアクティブマトリクスアレイ装置において実施してもよいことは、当業者には明らかであろう。従来技術に記載されたAM−EWODのアクティブマトリクスアレイ装置では、AM−EWOD制御電子部品および温度センサアレイ電子部品は、同一の基板上に配置されている。例えば、本発明に係るAM−EWOD装置は、図18〜22に関連して説明したような、対応するアレイ素子を有する温度センサアレイ回路を用いている。AM−EWOD装置の基本的構造は、例えば、図7および8に関連して説明した構造である。しかしながら、本発明によれば、温度センサ素子90および温度測定回路98は、当該部分において、温度センサ素子110、スイッチトランジスタ172、列出力回路131などのアレイと置き換えられる。集積された行ドライバ76および列ドライバ78は、対応する行選択線RWS信号を所望のタイミングで供給して、AM−EWODの各画素における温度を測定し、所望の機能、例えば、温度フィードバックなどを提供するように構成されている。従って、装置全体は、固有のアレイベースの温度センサ能力の機能をさらに備える標準的なAM−EWODとして機能し得る。温度センサ能力が含まれていることによって、装置が、次の機能のうちの幾つかまたは全てを実行することが、助長され得る。
・AM−EWODアレイ内の個々の小滴の温度を測定する機能。
・小滴の間に生じる吸熱反応または発熱反応の存在を検出する機能。
・アレイ内の個々の小滴の温度を制御する機能。
・例えば、従来技術の説明の箇所に記載された技術を用いてフィードバックを実施することによって、加熱素子の動作を制御する機能。
・熱的制御の使用を必要とする、または、この熱的制御の使用によって支援される分析(assay)を行う機能。
【0106】
また、記載した実施形態のうちの任意の実施形態の温度センサアレイが、例えば、従来技術に記載されるように、加熱素子を含むシステムにおいて実施可能であることは、当業者には明らかであろう。フィードバックシステムにおいて、温度センサアレイを用いて、システム内の1つまたは複数の空間的位置における温度を制御することが可能である。
【0107】
また、記載した実施形態のうちの任意の実施形態に記載された温度センサアレイが、PCRによるDNA増幅を実行するためのシステムの一部を形成可能であることは、当業者には明らかであろう。本発明の温度センサアレイをPCRシステムに組み入れることによって、PCRを受ける液体試薬の温度を、正確に制御することが可能である。アレイベースの温度センサの利点は、温度を、多数の空間的位置において監視可能な点である。これは、システムの特定の領域に対して局所的に温度制御を行うことを容易にする。このことは、熱サイクルが必要とされるPCRシステムにおいて都合がよいことであり、効率を上げるため、反応時間を長くするため、処理能力を高くするためといった理由のために、システムの異なる領域を異なる温度で維持するために有用である。
【0108】
また、記載した実施形態のうちの任意の実施形態の温度センサアレイを、システム内の任意の空間的位置において生じる1つまたは複数の化学反応または生化学合成を検出するためのシステムにおいて実施してもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0109】
また、記載した実施形態のうちの任意の実施形態の温度センサアレイが、従来技術に記載されるような標準的な技術を用いて、指紋の画像を走査、測定、または検出するためのシステムにおいて実施可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0110】
既に指摘したように、温度センサ素子110が、本発明の範囲から逸脱することのない、他の種類の公知の温度センサ素子であってもよいことは、明らかであろう。例えば、本発明は、主に、温度に応じて変動する抵抗を有する少なくとも1つのダイオードを備える温度センサ素子に関連して記載されている。しかしながら、より一般的には、温度センサ素子は、温度に応じて変動するインピーダンスを有する、任意の種類の公知の温度センサ素子であってもよい。
【0111】
本発明を、特定の1つのまたは複数の実施形態を参照しながら図示すると共に説明したが、当業者は、本明細書および添付の図面を読解することによって、同等の代替例および変形例に想到可能であろう。特に、上述の素子(構成部品、アセンブリ、装置、構造など)によって実行される様々な機能に関して、このような素子を説明するために用いられる用語(「手段」への言及を含む)は、他に記載がない限り、開示される、本発明の典型的な1つまたは複数の実施形態における機能を実行する構成と、構造的に同等でなくても、当該特定の機能を実行する任意の素子(すなわち、機能的に同等の素子)に対応することが意図される。さらに、本発明の特定の特徴を、1つまたは複数の実施形態だけを参照して説明してきたが、このような特徴は、他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と、所望のように、および、所定のまたは特定の用途にとって都合がよいように、組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の温度センサアレイ回路は、より小さい配置面積で具現化可能な簡略化された回路トポロジーを提供する。したがって、アレイ素子は、より小型になり、このため、温度センサアレイの解像度は向上する。本発明は、製造歩留まりを改善し、これによってコストを低減するという利点を提供する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルマイクロ流体工学の分野に適用されるものであり、より詳細には、アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(AM−EWOD:active matrix electrowetting-on-dielectric)に適用されるものである。誘電体エレクトロウェッティング(EWOD)とは、アレイ上の液滴を操作する公知の技術である。AM−EWODは、EWODを、アクティブマトリクスアレイにおいて、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を用いることによって実施することを指す。
【背景技術】
【0002】
最近の数十年間において、小型電気機械システム、いわゆるMEMs技術に、大きな関心が寄せられてきた。MEMsの1つの有望な分野は、マイクロ流体工学の分野、すなわち、マイクロリットルの容積の液体の制御、操作、および検知である。この分野における用途は、多数あり、化学合成、並びに少量の成分の化学分析および生物学的分析、いわゆるラボオンチップ(LoaC:Lab-on-a-chip)を含む。この分野への一般的な導入は、例えば“Introduction to Microfluidics”, Patrick Tabeling, Oxford University PRESS (2006年1月), ISBN 0-19-856864-9といった、多くの標準的な教科書に見出すことができる。
【0003】
デジタルマイクロ流体工学とは、個々の基板上の液滴を制御、操作、および検知することに関する。この分野への導入は、“Microfluidics for Biotechnology”, Berthier and Silberzan, Artech House (2006年), ISBN-10:1-58053-961-0の第2章に見出すことができる。
【0004】
この参照文献は、アレイベースの構造体における小滴を制御および操作する、誘電体エレクトロウェッティング(EWOD)法についても記載している。EWODを実行するための簡単な構造体が、図1に示されている。基板25は、その上に配置された導電性電極22を有しており、導電性電極22の上部には、絶縁体層20が配置されている。絶縁体層20は、導電性電極22を、イオン小滴4が載った疎水性層16から分離させる。小滴4は、疎水性層16の表面に対して接触角θを生成する。この接触角の値は、表面の疎水性に依存している。導電性電極22に電圧Vを印加することによって、接触角6(θ)を調節することが可能である。接触角をEWODによって操作することの利点は、DC電流が流れる経路が存在しないため、消費電力が低いという点である。
【0005】
図2は、疎水性層26で被覆された電極28を含む上部基板36がさらに設けられた、改善された他の一構成を示す図である。上部電極に電圧V2を印加することを、小滴4と疎水性層16,26との界面における電界が、V2とVとの間の電位差の関数になるように行うことが可能である。スペーサ32を用いて、小滴4を閉じ込めるチャネル体積の高さを固定することが可能である。幾つかの実施形態では、小滴4の周りのチャネル体積は、非イオン液体、例えば油34によって充填されていてよい。図2の構成は、2つの理由において、図1の構成よりも有利である。第1の理由は、小滴4が疎水性層16,26に接触する表面に、より大きく、且つ、より良好に制御された電界を生成可能な点である。第2の理由は、小滴4が装置内に密閉され、蒸発などによる損失が回避される点である。
【0006】
米国特許公報第6565727号(A. Shenderov;2003年5月20日発行)には、小滴を、アレイを通して移動させるためのパッシブマトリクス型のEWOD装置が開示されている。この装置は、図3に示されるように構成されている。下部基板25の導電性層は、複数の電極22,38が形成されるようにパターニングされている。これらの電極は、EW駆動素子と呼ばれる。異なる電極(例えば、電極22および電極38)に、EW駆動電圧(例えばVおよびV3)と呼ばれる異なる電圧を印加することによって、疎水性層16,26の表面の疎水性を制御して、小滴4を横方向に移動させることが可能になる。米国特許公報第6911132号(V. Pamula et al.;2005年6月28日発行)は、図4に示される構成を開示している。ここでは、下部基板上の導電性層は、2次元アレイ42を形成するようにパターニングされている。異なる電極の内の幾つかまたは全てに、時間依存性の電圧パルスを印加することによって、小滴4を、アレイを通して、経路44上を移動させることが可能である。経路44は、電圧パルスの連続によって規定される経路である。米国特許公報第6565727号はさらに、小滴の分裂および合体させること、並びに、異なる材料の小滴を混合すること、を含む他の小滴操作方法を開示している。一般に、典型的な小滴操作を行うために必要な電圧は、比較的高い。従来技術(例えば、米国特許公報第7329545号(V. Pamula et al.,2008年2月12日発行))では、絶縁体層および疎水性層を生成するために用いられる技術に応じて、20〜60Vの範囲の値が引用されている。
【0007】
同様に、米国特許公報第7255780号(A. Shenderov;2007年8月14日発行)には、異なる化学成分の小滴を組み合わせることによって、化学反応または生化学反応を行うために用いられるパッシブマトリクス型のEWOD装置が開示されている。
【0008】
薄膜トランジスタ(TFT)に基づいた薄膜電子工学は、非常によく知られた技術であり、例えば、液晶(LC)ディスプレイを制御するために用いられ得る。図5に示される標準的なディスプレイ画素回路を使用して、TFTを用いて、ノードの上で電圧を切替る、および保持することが可能である。この画素回路は、スイッチTFT68およびストレージキャパシタ58から構成されている。ソース線62およびゲート線64に電圧パルスを印加することによって、電圧Vwrite66がプログラムされ、画素内に保存され得る。別の電圧を対向基板CP70に印加することによって、(静電容量CLCによって表される)液晶56を横断する電圧が、画素位置内に維持される。
【0009】
現在の多くのディスプレイは、ディスプレイの各画素にスイッチトランジスタが設けられたアクティブマトリクス(AM)配置を用いている。このようなディスプレイには、行線および列線に電圧パルスを供給する(それゆえ、アレイ内の画素にプログラム電圧を供給する)ために、集積ドライバ回路が組み込まれている場合も多い。これらの集積ドライバ回路は、薄膜電子工学において実現されており、TFT基板上に集積されている。集積ディスプレイドライバ回路の回路設計は、非常に良く知られている。TFT、ディスプレイドライバ回路、およびLCディスプレイのさらなる詳細については、例えば“Introduction to Flat Panel Displays”, (Wiley Series in Display Technology, WileyBlackwell (2009年1月), ISBN 0470516933)といった標準的な教科書に見出すことが可能である。
【0010】
米国特許公報第7163612号(J. Sterling et al.;2007年1月16日発行)には、TFTベースの電子部品を利用して、AMディスプレイ技術において用いられる回路配置に極めて類似した回路配置を用いることによって、どのようにEWODアレイへの電圧パルスのアドレスを制御すればよいかについて記載されている。図6は、取られるその手法を示す図である。図3に示されたEWOD装置と対比すると、底部基板25は、薄膜電子部品74が上に配置された基板72に、置き換えられている。薄膜電子部品74は、エレクトロウェッティングを制御するために用いられるパターニングされた導電性層電極22,38に、選択的に電圧をプログラムするために用いられる。薄膜電子部品74は、公知の多数の加工技術、例えばシリコンオンインシュレータ(SOI)、ガラス上のアモルファスシリコン、またはガラス上の低温度多結晶シリコン(LTPS)によっても形成され得ることは明らかである。
【0011】
このような手法は、「アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング」(AM−EWOD)と呼ばれることもある。TFTベースの電子部品を用いてEWODアレイを制御することには、幾つかの利点がある。すなわち、
・ドライバ回路を、AM−EWODアレイ基板の上に集積させることが可能な点。典型的な構成については、図7に示されている。EWODアレイ42の制御は、集積された行ドライバ回路76および列ドライバ回路78によって実施される。シリアル入力データストリームを処理するため、および、必要とされる電圧をアレイ42に書き込むために、シリアルインターフェース80が設けられていてもよい。アレイ基板と、外部駆動電子部品や電源装置などとの間の接続ワイヤ82の数は、アレイサイズが大きい場合でも、比較的少なくすることが可能である。
・TFTベースの電子部品は、AM−EWOD用途に好適である点。これらの部品は、製造が安価であるため、比較的大きな基板領域を、比較的低コストで生成することが可能である。
・TFTベースのセンサを、アクティブマトリクス制御アレイの中に組み入れることが可能な点。例えば米国特許出願公報第20080085559号(J. Hartzell et al.;2008年4月10日公開)は、カンチレバーベースのアレイを用いたTFTベースのアクティブマトリクスバイオセンサについて記載している。
・標準的なプロセスにおいて製造されたTFTは、標準的なCMOSプロセスにおいて製造されたトランジスタよりもはるかに高い電圧において動作するように設計可能である点。このことは、多くのEWOD技術では、20Vを上回るEWOD作動電圧を印加する必要があるため、重要である。
【0012】
多数のEWOD用途では、アレイ内の小滴の温度を検知および/または制御することが重要であり得る。このようなEWOD用途の例には、次のものが含まれる。
・化学合成または生化学合成。ここでは、化学反応または生化学合成を開始および/または制御するために、温度制御が必要であり得る。
・小滴の間の吸熱性化学反応または発熱性化学反応の検出(すなわち、この反応は、熱を吸収または放出するので、その検出は、反応の発生を示すものである)。
【0013】
特に重要なことの一例は、DNAの増幅のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の技術である。PCRは、非常に良く知られた技術であり、該技術の詳細については、例えば“The basics: PCR”, McPherson and Moller, Taylor and Francis (2nd Edition, 2006年), ISBN 0-4153-5547-8の第1章などの従来技術に記載されている。PCRを実施するために、増幅されるDNA試料を様々な化学試薬と混合し、その後、連続的な一連の加熱および冷却サイクルを受けさせる必要がある。熱サイクルの総数は、典型的には、20〜30である。PCRを正確且つ効果的に行うためには、一般には、化学試薬の温度を、かなり正確に(典型的には、数摂氏温度の範囲内に)制御することが必要である。これを行うためには、一般に、幾つかのフィードバック制御手段を実施することが有効である。その一例が、図8に示されている。温度が変更/制御される化学試薬84が、表面86と熱的接触するように設置されている。この表面86の上には、加熱素子88および温度センサ素子90が、化学試薬84と良好に熱的接触して配置されている。加熱素子88は、94を介して、加熱器ドライバ回路92に電気的に接続されている。次に、加熱器ドライバ回路92は、102を介して、処理装置104、例えばCPUに接続されている。温度センサ素子90は、96を介して、温度測定回路98に接続されている。次に、温度測定回路98は、100を介して、処理装置104に接続されている。
【0014】
この構成全体は、加熱素子88に供給された電流が、センサ素子90によって測定される温度に応じて決定されるように動作する。従って、その温度は、加熱素子の性能だけを含む構成の場合よりも正確に制御され得る。好適なフィードバック制御回路を構成するための多数の手段が知られている。例えば、国際公開第2009/019658号(D. Fish et al.,2009年2月12日公開)には、温度が制御されている化学試薬の熱的安定性を最適化するための、比例積分(PI:proportional integral)の概要および比例積分微分(PID:proportional integral differential)の概要について記載されている。
【0015】
周囲温度を検知するための公知の技術が多数存在している。これらの方法のうちの多くは、“Principles and methods of Temperature Measurement”, Thomas D. McGee, Wiley Interscience (1988年)の記載に見出され得る。この公開文献の230頁には、特に有用な、順方向バイアスされたPN接合(このPN接合は、ダイオードであってもよいし、または、ダイオードに接続されたトランジスタであってもよい)を用いて温度を測定する技術が記載されている。この装置の回路図は、図9に示されている。この装置は、アノード106およびカソード108という2つの端子を備えている。順方向バイアス動作は、カソード108からアノード106に印加される陽電位Vに相当する。
【0016】
順方向バイアス動作では、ダイオード電流Iは、おおよそ次の数式によって求められる。
【0017】
【数1】
【0018】
ここで、qは電荷であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度(ケルビン)であり、mはダイオード理想係数であり、拡散電流および再結合電流の相対的寄与率を表すプロセス依存係数を示すものであり、Wはダイオードの幅であり、Sはプロセス依存定数(温度依存性も含まれ得る)である。数式(1)の関係は、Iが(装置の形状およびプロセスの詳細によって決定される)所定の最大限度を越えると、有効でなくなる。なぜなら、電流は、ダイオード自体の自己抵抗によって制御されるからである。
【0019】
このような装置が、一定の電流吸い込みを伴って、順方向バイアスされると(アノード電圧は、カソード電圧に対して正である)、ダイオードを横断する電圧降下が、絶対温度(ケルビン)に比例することが、具体的には数式2から容易に見て取れる。
【0020】
【数2】
【0021】
図10は、薄膜プロセスにおいて形成されたダイオードの予想され得る構成を示す図である。この装置は、p+型ドープ領域112、n−型ドープ領域116、およびn+型ドープ領域114から構成される半導体材料の層から形成されている。p+ドープ領域112およびn+ドープ領域116には、例えば金属の電気接続点が形成されており、装置のアノード106端子およびカソード108端子を形成している。従って、p+型ドープ領域112とn−型ドープ領域116との間の界面において、ダイオードPN接合118が形成される。
【0022】
順方向バイアスモードにおける動作では、デバイス特性は、数式2によって記載された特性に近似している。しかしながら、Sという用語は、典型的には温度依存性を有しており、このため、定電流において装置を横断する全バイアス降下は、おおよそ次の数式3によって求められる。
【0023】
【数3】
【0024】
ここで、aおよびbは、吸い込まれた電流およびプロセス依存定数に依存している。
【0025】
ダイオードを通して一定の順方向電流を吸い込むための1つの可能な回路形態が、図11に示されている。
【0026】
演算増幅器124の非反転端子に、DC基準電圧Vref126が印加される。演算増幅器124は、反転端子においても同一の電位を維持するように機能する。従って、電位Vrefは、抵抗素子128の端子を横断して生成される。抵抗素子128の抵抗はRである。オームの法則に基づき、この抵抗素子128を流れる電流は、I=Vref/Rである。(理想的には)演算増幅器の入力電流がゼロであるので、ダイオード110を流れる電流もIに等しい。ダイオード110のアノードは、ソースまたは電源装置電圧VDD123に結合されている。従って、この回路は、ダイオード110を流れる定電流を吸い込み、カソードにおける電圧は、VDD−Vになる。ここで、Vは、上述の数式(2)によって求められる。
【0027】
この電圧は、その後、好適なアナログ−デジタル変換器(ADC)132によって、デジタル信号に変換され得る。このADC132は、標準的な種類のものであってよく、例えば、比較器の後にカウンタが設けられたものであってよい。ADCの入力部におけるDC電圧レベルは、デジタル化された出力信号に変換される。このデジタル化された出力信号は、測定された温度の値を示すものである。この回路の一部は、列出力回路131と呼ばれる。列出力回路131の入力部は、ダイオード110のカソードに接続されており、このため、定電流を吸い込むと共に、その入力部における電位を測定する機能を実行する。
【0028】
列出力回路131の形態には、この機能を実行するために想到し得る多くの可能な代替例が存在することが、当業者には明らかであろう。
【0029】
図11の回路の実用的な形態では、ダイオード110を通って吸い込まれた電流の値に依存して、抵抗素子128が必要とする抵抗値は、極めて大きくなる。幾つかの例では、このことは、例えば抵抗素子の物理的配置寸法により、実施に不適切な場合もある。さらなる欠点は、抵抗素子128を形成するために用いられる材料の抵抗率が、望ましくない温度依存性を有している点である。これら両方の問題を回避するための公知の技術は、スイッチキャパシタ回路を使用して、抵抗素子を模倣することである。図12は、このようなスイッチキャパシタ抵抗素子の単純な実施形態を示す図である。この構成は、方形波パルスΦを一方のトランジスタ134のゲートに印加すると共に、逆位相パルスΦbarを他方のトランジスタ136のゲートに印加することによって、抵抗素子を模倣するように形成されている。この技術は、“MOS Switched Capacitor Filters”, Brodersen et al, Proceedings of the IEEE, Vol. 67, num. 1 (1979年1月)に、詳細に記載されている。実効抵抗値は、ΦおよびΦbarが切替えられるときの周波数、および、キャパシタ135の値から判定される。抵抗素子のスイッチキャパシタの形態の1つの利点は、これを具現化するために必要な配置面積が、従来の抵抗素子の配置面積よりも小さくてよい点である。さらなる利点は、スイッチキャパシタ抵抗素子が、比較的、温度非依存性であり得る点である。さらなる利点は、パルスΦおよびΦbarの周波数を変更することによって、抵抗の値を変化させることが可能な点である。方形波パルスΦおよびΦbarの周波数を調節することによって抵抗を変更可能であるため、ΦおよびΦbarを調節する幾つかの簡素な手段、例えば簡素なデジタルタイミング回路が利用可能であるならば、この装置は、可変抵抗として機能し得ることは理解されよう。
【0030】
図11の回路のさらなる欠点は、所定の温度変化の場合に、ダイオード110のカソードにおける出力電圧の変化が、極めて小さく、例えば1ケルビンつきに数ミリボルトだけであるという点である。この欠点は、温度センサが薄膜回路部品を有して製造されている場合に、特に当てはまる傾向がある。TFT部品の品質および可変性が比較的良くないことは、アナログ電圧レベルを数ミリボルトの精度で検知することが可能なADCの設計を、極めて困難にする。このため、図11の回路は、それほど感度がよくない。米国特許公報第3791217号(B. Stout et al.;1974年2月12日発行)および特開2006−073887号(T. Kuwabara et al.;2006年3月16日公開)には、単一のダイオード素子が、直列に接続されたn個の多数のダイオード素子に置き換えられた、当該形態の変形例が記載されている。この場合、直列の薄膜ダイオードを横断する電圧降下は、次の数式4によって求められる。
【0031】
【数4】
【0032】
ここで、nは、直列に接続されたダイオード素子の数である。従って、所定の温度変化の場合の出力電圧の変化は、係数nだけ増大する。温度センサを実用的に設計するためのnの値の選択は、ダイオードの設計およびプロセスの詳細な構成、回路形態、および作動電圧、および、センサが作動しなければならない範囲に依存することになる。例えば、図11の回路を考慮すると、nは、可能な限り大きくする必要があるが、次の点に留意する必要がある。すなわち、第1に、ダイオードを通って吸い込まれた電流がそれほど大きくならないので、ダイオードの自己抵抗が重要となり、その結果数式(5)が有効にならないことを確実にする、および、第2に、センサの出力における飽和が生じるのであれば、(5)によって示されるダイオードを横断する電圧降下が、VDD−Vrefを超えないことを確実にするように留意する必要がある。
【0033】
図11の形態のさらなる欠点は、出力電圧が、試料に応じて大きく変動し得るプロセスパラメータSに依存している点である。結果的に、正確な温度測定をするには、幾つかの形態の初期較正が必要となるので、製造の見地から言うと高コストとなり得る。米国特許公報第3430077号(D. Bargen;1969年2月25日発行)および米国特許公報第3812717号(G. Miller et al.;1974年5月28日発行)には、この欠点を克服するための方法が記載されている。これは、ダイオードを横断する電圧降下の2つの測定を、それぞれI1およびI2で示される、吸い込まれた異なる電流で行うことによって、克服するものである。ダイオードが、数式(1)によって示される特性を有しているとすると、第1の測定の場合、出力電圧は、次の数式5によって求められる。
【0034】
【数5】
【0035】
第2の測定の場合、出力電圧は、次の数式6によって求められる。
【0036】
【数6】
【0037】
これら2つの電圧レベルV1およびV2を測定した後、これらの電圧レベルを減算して、次の結果を求める。
【0038】
【数7】
【0039】
電圧差VSは、これら2つの電流の比率に依存しており、プロセス依存パラメータSは排除される。
【0040】
この技術を実施するための予想し得る多数の方法が存在することは、当業者には明らかであろう。例えば、列出力回路を、図13に示される構成141に変更してもよい。デジタル減算回路133が、図11の回路の出力部に加えられており、抵抗素子128は、上述のスイッチキャパシタ構成によって実施される可変抵抗素子140に置き換えられている。本形態では、温度センサ素子(ダイオード110)を横断する電圧降下の2つの別個の測定を、各温度センサ素子を通して吸い込まれた異なる値の電流によって行うことが可能である。電流は、次のいずれかによって、変動し得る。
・Vref126の値を変化させること。これによって、吸い込まれた電流は、2つのVrefの値に対してそれぞれ、Vref1/RおよびVref2/Rとなる。ここで、Rは抵抗素子140の抵抗である。
・抵抗素子140として用いられるスイッチキャパシタ構成に印加されるパルスの周波数を変化させること。これによって、2つの各測定の実効抵抗は、例えば、値R1およびR2のように、異なるものになり得る。従って、第1および第2の測定のそれぞれの場合のVref/R1およびVref/R2に等しい電流は、ダイオード110を通って吸い込まれることになる。
【0041】
数式7によれば、得られた2つの電圧測定値を減算して、プロセス依存パラメータSが排除された結果を得ることが可能である。これは、多数の標準的な技術によって実現可能である。例えば、これら2つの電圧を、アナログ域において、基準キャパシタ上の中間記憶装置によって減算してもよいし、または、これら2つの電圧を、単純なデジタル減算回路133によってデジタル信号に変換した後に、減算してもよい。
【0042】
パラメータSに依存する測定値を排除するための同様の技術は、米国特許公報第5829879号(H. Sanchez et al.;1998年11月3日発行)に記載されている。これは、回路内で切り替えられたダイオードの異なる幅で出力電圧の2つの測定を実行することによって、実現される。
【0043】
最初の測定では、ダイオードの全幅はW1であり、ダイオードを横断する電圧降下は、次の数式8によって求められる。
【0044】
【数8】
【0045】
第2の測定では、ダイオードの全幅はW2であり、電圧降下は、次のとおりである。
【0046】
【数9】
【0047】
従って、これらの電圧の間の差は、次のとおりである。
【0048】
【数10】
【0049】
ここでも、パラメータSへの依存性は排除されており、電圧VSは、W1およびW2の比率に依存する。
【0050】
多くの用途では、多数の空間的位置において、すなわちアレイベースのフォーマット内において、温度を個別に検知可能であることが都合がよい。このような機能を、上述の方法を用いて温度センサ素子および測定回路の複数の複製を形成することによって実行することは可能であるが、これは、概して、大きな寸法のアレイが必要とされる場合には、基板に非常に多くの接続点を形成する必要があるため、実用的ではないし、また、物理的に小さい寸法のアレイ素子が必要とされる場合にも実用的ではない。
【0051】
国際公開第2009019658号には、薄膜プロセスにおいて集積させたアレイベースの温度センサが記載されている。記載されるセンサ素子は、(温度依存性の)抵抗素子、順方向バイアスされたダイオード、または、ダイオードに接続されたトランジスタであってよい。記載されるアレイ素子回路は、図14に示されている。このアレイ素子回路は、温度センサ素子(ダイオード)142、スイッチトランジスタ144、および第2のスイッチトランジスタ146から構成されている。各スイッチトランジスタのゲートは、152において行選択線RWSに接続されている。行選択線RWSは、同一の行内の各アレイ素子に共通である。温度センサ素子142は、示されるスイッチトランジスタ間に接続されている。2つの列電極148,150は、各素子148および140に接続されている。これらの接続点は、アレイの同一列内の各素子に共通である。
【0052】
図15に示されるように、アレイを動作させるために、外部回路が設けられている。第1の列電極148は、電源電圧VDD156に接続されている。第2の列電極150は、定電流を吸い込むため、および、生じた電圧を測定するための列出力回路141に接続されている。列出力回路141は、例えば上述したような標準的な回路技術を用いて、電流源158および出力増幅器160から構成されていてよい。出力回路141の構成は、アレイの各列に対して繰り返し配置される。動作中は、高レベルの電圧が、行素子を読み出すために、RWS線に印加される。これによって、スイッチトランジスタ144および146は、どちらもオンにされる。従って、電源電圧VDD156と温度センサ素子142のアノードとの間、および、温度センサ素子142のカソードと列出力回路141との間に、電気接続が行われる。その後、この構成は、既に説明した単一素子の温度センサと同様に動作する。単一素子の温度センサの場合に記載した較正技術は、アレイベースの構造体にも容易に適用され、これによって、アレイ内の各素子が、既に記載した1つまたは複数の技術を用いて個別に較正され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0053】
国際公開第2009019658号のアレイの形態では、各アレイ素子に3つの別々の電圧線を供給しなければならず、各アレイ素子内に2つのスイッチトランジスタが必要なことに留意されたい。この構成の欠点は、多数のスイッチ素子およびバイアス線を有しているため、より少ない装置および接続点が用いられる場合よりも製造歩留まりが低いという点である。さらなる欠点は、アレイ素子の物理的配置面積もまた、より少ない装置および接続点が用いられる場合よりも大きいという点である。
【0054】
国際公開第2009019658号はさらに、図16に示される、異なる寸法の2つのダイオード145および147を用いた画素回路の変形例について記載している。第1のスイッチング素子トランジスタ146は、第1のダイオード145を読出線148に接続させており、第2のスイッチング素子144は、第2のダイオード147を第2の列電極線150に接続させている。これら2つのトランジスタ144および146のゲートは、同一の行選択線RWSに接続されている。第1のダイオード145のカソードおよび第2のダイオード147のカソードは、どちらも、接地GRDに結合されている。同一の電流が、各ダイオード145,147を通って流れ、アノード間の電圧差は、温度に比例すると共に、既に説明した構成によって測定可能である。
【0055】
アレイベースの温度センサの他の構成も知られている。例えば米国特許公報第6633656号(F. Picard;2003年10月14日発行)は、指紋検知用のサーミスタのアレイについて記載している。温度センサアレイを、記載されている公知の手段に従って、指紋の検出および認識のために用いてもよい。指が、温度センサアレイに熱的接触して設置されると、アレイ内の個々の素子が、位置的に、指先構造の隆線に近接しているか、または谷間に近接しているかに基づいて、異なる温度変化を記録することが可能である。従って、アレイ内の多数の素子を走査することによって、熱的手段を、指紋の記録および撮像のために用いることが可能である。
【0056】
国際公開第2009019658号はさらに、電流を加熱素子に供給するためのアレイベースの回路についても記載している。この基本的な回路素子は、図17に示されている。A1において接続された書き込み線510および行選択線512によって、スイッチ素子トランジスタ514がアドレスされる。A1における行選択線によってスイッチがオンにされると、電圧がキャパシタ516を通るようにプログラムされている。プログラムされた電圧の値に応じて、トランジスタ508は、幾分オン状態になり得る。これは、結果的に、VCC506からトランジスタ508および抵抗性加熱素子518を通って接地線502に流れる電流を生じさせる。
【発明の概要】
【0057】
[発明の目的]
本発明の一目的は、1つのアレイ素子につき、より少ないスイッチトランジスタとより少ない列電極接続点とを備えて具現化され得るアレイ素子回路を提供することにある。他の一目的は、より小型の配置面積を提供し、接続点の数を低減することにある。
【0058】
[発明の概要]
本発明の基本的な態様は、アレイベースの温度センサのための構成である。アレイ素子は、それぞれ、1つのセンサ素子、1つの行選択スイッチトランジスタ、1つの行選択線、および、1つの列電極を用いて具現化され得る。行選択スイッチトランジスタは、センサ素子に並列接続されており、アレイの同一列内の各センサ素子は、直列接続されている。
【0059】
本発明のアレイ素子回路の、例えば国際公開第2009019658号に記載された従来技術のアレイ素子回路と比べた際の利点は、本発明のアレイ素子回路が、1つのアレイ素子につき、1つ少ないスイッチトランジスタと、1つ少ない列電極接続点とを有して具現化可能な点にある。
【0060】
回路トポロジーが簡素であることによる利点は、
・回路をより小さい配置面積で具現化することが可能な点。従って、アレイ素子を、より小型にすることが可能であり、これによって、温度センサアレイの解像度が向上される。
・接続点および回路素子の数を減らすことは、製造歩留まりを改善し、これによってコストを低減するために有効である点。
【0061】
本発明の一態様によれば、温度センサアレイ回路のためのアレイ素子が提供される。アレイ素子は、スイッチトランジスタと、温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子とを含む。この温度センサ素子は、スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。
【0062】
他の一態様によれば、温度センサ素子は、少なくとも1つのダイオードを含む。
【0063】
他の一態様によれば、温度センサ素子は、直列接続された複数のダイオードを含む。
【0064】
さらに他の一態様によれば、アレイ素子はさらに、第2のスイッチトランジスタに直列接続された、温度に応じて変動するインピーダンスを有する第2の温度センサ素子を含む。直列接続された第2の温度センサ素子および第2のスイッチトランジスタは、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。
【0065】
さらに他の一態様によれば、アレイ素子は、出力回路と結合されている。ここで、スイッチトランジスタがオフにされるとき、出力回路は、温度センサ素子を通るバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定し、スイッチトランジスタがオンにされるとき、バイアス電流は、温度センサ素子の周囲で短絡されるように、構成されている。
【0066】
他の一態様によれば、M行およびN列に配置されたアレイ素子のM×N個のアレイを含む温度センサアレイ回路が提供される。各アレイ素子は、スイッチトランジスタと、温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子とを備えている。温度センサ素子は、スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。ここで、各列内のアレイ素子について、複数の温度センサ素子は、第1の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子と直列接続されており、第1の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子は、温度センサアレイ回路内に含まれる列出力回路に接続されており、M番目の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子は、電源電圧に接続されている。各行内のアレイ素子のためのスイッチトランジスタのゲートは、同一の行選択線に接続されている。
【0067】
他の一態様によれば、温度センサアレイ回路は、各行選択線に、対応する行選択信号を選択的に供給するための行ドライバを含む。ここで、所定の行内の所定のアレイ素子によって得られる温度を測定するために、行ドライバは、所定の行の行選択線に行選択信号を供給して、所定の行内の各アレイ素子に含まれるスイッチトランジスタをオフにすると共に、所定の行以外の行内のアレイ素子のスイッチトランジスタをオンにするように構成されており、所定のアレイ素子と同一の列の第1の行内に含まれるアレイ素子に接続された列出力回路は、所定の温度センサ素子を通してバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定するように構成されている。
【0068】
他の一態様によれば、列出力回路は、M×N個のアレイ内の異なる列のための異なる列出力回路を含む。
【0069】
さらに他の一態様によれば、列出力回路は、M×N個のアレイ内の異なる列によって共有される同一の列出力回路を含む。
【0070】
他の一態様によれば、各アレイ素子内の温度センサ素子は、少なくとも1つのダイオードを備える。
【0071】
さらに他の一態様によれば、各アレイ素子内の温度センサ素子は、直列接続された複数のダイオードを備える。
【0072】
他の一態様によれば、各アレイ素子は、直列接続された、温度に応じて変動するインピーダンスを有する第2の温度センサ素子と、第2のスイッチトランジスタとをさらに含む。これらの直列接続された第2の温度センサ素子および第2のスイッチトランジスタは、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている。
【0073】
本発明の他の一態様によれば、アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(AM−EWOD)装置が提供される。アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(AM−EWOD)装置は、その上に置かれた小滴を操作するためのアクティブマトリクスアレイと、本明細書に記載される温度センサアレイ回路とを備えている。温度センサアレイ回路は、アクティブマトリクスアレイ上の温度を測定するように構成されている。
【0074】
さらに他の一態様によれば、アクティブマトリクスアレイ制御電子部品および温度センサアレイ回路電子部品は、同一の基板上に配置されている。
【0075】
従って、上述および関連する目的を達成するために、本発明は、本明細書において十分に説明され、特に特許請求の範囲において指摘される特徴を含む。以下の説明および添付の図面は、本発明の特定の典型的な実施形態を詳細に示すものである。これらの実施形態は、説明のためのであるが、本発明の原理を用いることができる様々な方法のうちのいくつかに過ぎない。本発明の他の目的、利点、および新規の特徴は、以下の発明の詳細な説明を図面と共に考慮することによって、明らかとなろう。また、添付の図面では、同様の参照番号は、同様の部材または特徴を示すものである。
【0076】
[発明の効果]
本発明の温度センサアレイ回路は、より小さな配置面積によって具現化可能な簡略化された回路トポロジーを提供する。従って、アレイ素子は、より小型に形成され、温度センサアレイの解像度が向上される。本発明は、製造歩留まりを改善し、これによってコストを低減するという利点を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、従来技術を示し、誘電体エレクトロウェッティングを実施するための構成を示すものである。
【図2】図2は、従来技術を示し、上部基板および底部基板を用いて誘電体エレクトロウェッティングを実施するための改善された構成を示す図である。
【図3】図3は、従来技術を示し、パッシブマトリクス型のEWOD装置を示す図である。
【図4】図4は、従来技術を示し、EWOD装置における小滴の横方向の運動を示す図である。
【図5】図5は、従来技術を示し、標準的なディスプレイ画素回路を示す図である。
【図6】図6は、従来技術を示し、アクティブマトリクス型のEWOD装置を示す図である。
【図7】図7は、従来技術を示し、AM−EWODドライバ回路構成の一例を示す図である。
【図8】図8は、従来技術を示し、フィードバック制御のための温度測定によって、大量の液体を加熱するための構成を示す図である。
【図9】図9は、従来技術を示し、アノード接続点およびカソード接続点を示すダイオードの回路図を示す図である。
【図10】図10は、従来技術を示し、薄膜プロセスにおいて製造されたダイオード装置の予想され得る構造を示す図である。
【図11】図11は、従来技術を示し、ダイオードを温度センサ素子として用いて温度を測定するための回路構成を示す図である。
【図12】図12は、従来技術を示し、大きな値を有する抵抗素子に相当する性能を有する回路素子を具現化するためのスイッチキャパシタ構成を示す図である。
【図13】図13は、従来技術を示し、ダイオードを温度センサ素子として用いていると共に、較正手段を使用している、温度を測定するための回路構成を示す図である。
【図14】図14は、従来技術を示し、アレイベースの温度センサのための画素回路を示す図である。
【図15】図15は、従来技術を示し、温度センサアレイ用の回路構成を示す図である。
【図16】図16は、従来技術を示し、温度センサアレイ用のさらなる回路構成を示す図である。
【図17】図17は、従来技術を示し、加熱素子用のアレイ素子回路を示す図である。
【図18】図18は、本発明の第1の実施形態のアレイ素子回路を示す図である。
【図19】図19は、第1の実施形態の一形態例を示す図である。
【図20】図20は、本発明の第2の実施形態のアレイ素子回路を示す図である。
【図21】図21は、本発明の第3の実施形態の一形態例を示す図である。ここでは、列出力回路は、多数の列間で共有されていてよい。
【図22】図22は、本発明の第5の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明の第1の実施形態は、図18に示されている。本実施形態は、温度センサアレイ回路用のアレイ素子164のための回路である。アレイ素子164は、スイッチトランジスタ172および温度センサ素子110を含む。温度センサ素子110は、図示されるようにダイオードであってよい。他の一実施形態では、温度センサ素子110は、本発明の範囲から逸脱することのない、他の任意の種類の公知の温度センサ素子であってよいことは、当業者に明らかであろう。例えば、温度センサ素子110は、温度に応じて変動するインピーダンスを有する公知の任意の種類の温度センサ素子であってよい。
【0079】
アレイ素子164の接続は次のとおりである。温度センサ素子110は、スイッチトランジスタ172のドレインと、該トランジスタ172のソースとの間に接続されている。スイッチトランジスタ172のゲートは、170において行選択線RWSに接続されている。この行選択線RWSは、アレイの同一行内の各アレイ素子に共通の線である。アレイ素子は、RWS、A、およびCで表される3つの接続点を有している。RWS、A、およびCは、それぞれ、行選択線、温度センサ素子110のアノード、および、温度センサ素子110のカソードに対応している。
【0080】
多数のアレイ素子164を一緒に接続させて、図19に示される温度センサアレイ回路が形成される。この特定の実施例では、温度センサアレイ回路は、2×2個のアレイであるが、実際には、アレイが任意の寸法のアレイであってよいことは、当業者には明らかであろう。アレイの第2の行(図19の最も上の行)の各温度センサ素子110のアノード接続点は、電源電圧VDD156用のレールに接続されている。この第2の行内の各温度センサ素子110のカソード接続点は、隣接する第1の行(図19の最も下の行)の同一列内の対応する温度センサ素子110のアノード接続点に接続されている。第1の行内の温度センサ素子110のカソード接続点は、列出力回路131の入力部に接続されている。列出力回路131は、例えば、従来技術の箇所において説明したような標準的な手段によって構成され得る。本実施形態では、アレイの各列のために、別々の列出力回路131が設けられている。
【0081】
温度センサアレイ回路の動作は次のとおりである。
【0082】
各温度が測定される所定の行内のアレイ素子では、当該行のためのRWS信号(行選択信号)は低くなり、その結果、当該行内の全てのアレイ素子のスイッチトランジスタ172がオフになり、当該アレイ内の行素子および温度センサ素子110が選択される。当該アレイ内の他の全ての行素子では、RWS信号は、高レベルで維持されるので、これら他の行内の全てのアレイ素子内のスイッチトランジスタ172は、オン状態であり、その結果、これらのアレイ内の行素子および温度センサ素子110は選択されない。選択されなかった行では、スイッチトランジスタ172は、これらの行内の対応する温度センサ素子110を短絡させるように機能する。従って、実際には、選択された行の温度センサ素子110のアノードは、電源電圧VDD156用のレールに接続されており、選択された行内の温度センサ素子110のカソードは、列出力回路131の入力部に接続されている。その後、回路は、従来技術において既に説明したように機能する。各列の列出力回路131は、選択された行の当該列内の温度センサ素子110を流れるバイアス電流を吸い込むと共に、このように選択された温度センサ素子110のカソードにおいて結果として生じる電圧を測定するように機能する。温度センサ素子110が図示されるようにダイオードである場合、電流の符号は、ダイオードが順方向バイアスにあるように選択され得る。この電圧は、電源電圧VDDから温度センサ素子110の接続点AとCとの間の電位差を減算したものと等しい。この量が、従来技術に関連して説明したように、温度依存性である。所定の列増幅器160の出力部162をサンプリングすることによって、選択された行およびサンプリングされた列の位置内の温度センサ素子110の温度を示す量が測定される。
【0083】
本構造が、任意のM×N個の寸法のアレイに容易に生成可能であることは、当業者には明らかであろう。この場合、第1の行内のセンサ素子110のカソードは、対応する列の列出力回路131に接続されており、M番目の行内のセンサ素子110のアノードは、電源電圧VDDに接続されており、k番目の行内の温度センサ素子110のアノードは、同一列のk+1番目の行内のセンサ素子のカソードに接続されている。ここでは、kの全ての値は、1とM−1との間である。結果として、各列内の温度センサ素子110は、直列接続されている。その後、温度センサアレイ回路の動作は、実質的には、上述の2×2個のアレイの場合と同じである。
【0084】
温度センサアレイ回路を正常に動作させるには、列出力回路131によって吸い込まれたバイアス電流Iが正確に選択されることが重要である。バイアス電流Iは、次の基準が満たされる程度に十分に低いように選択される必要がある。
・選択されなかった行内の直列結合されたM−1個のスイッチトランジスタ172を横断するバイアス降下が、選択された行内の温度センサ素子110を横断するバイアス降下と比べて小さいこと。この基準は、所望の全ての温度範囲内において順守されている必要がある。
・温度を検知するために必要な範囲内の全ての温度に対して、列出力回路131の増幅回路160の入力電圧が、その設計動作範囲内で維持される必要があること。
・温度センサ素子110自身の抵抗による自己発熱が最小でなければならない。
【0085】
さらに、バイアス電流Iはまた、次の基準が満たされる程度に十分に高いように選択される必要がある。
・必要とされるVDDの値は、大きすぎず、回路を製造するために用いられる加工技術のための典型的な電源バイアスの範囲を超えていないこと。(一般に、バイアス電流Iの値が大きければ大きいほど、高い電源電圧VDDが必要とされる。)
・温度を検知するために必要な範囲内の全ての温度に対して、列出力回路131の増幅回路160の入力電圧が、その設計動作範囲内で維持される必要があること。
・選択された行内の温度センサ素子110を流れるバイアス電流Iは、選択されていない行内の温度センサ素子110を流れる任意の逆リーク電流よりも大幅に大きいこと。
【0086】
実用的な設計において用いられるバイアス電流Iの最適な値は、温度センサアレイが動作することが求められる温度範囲、アレイの寸法、アレイを製造するために用いられるプロセス技術に依存している。概して、バイアス電流Iの値は、比較的小さいこと(典型的には、センサアレイを製造するために用いられるプロセス技術に応じて、ピコアンプからマイクロアンプの範囲内)が都合がよい。
【0087】
上述の基準を満たすように選択されたバイアス電流Iの値で動作することの利点は、典型的には、次のとおりである。
・温度センサ素子110が、従来技術に記載されているように薄膜ダイオードであるならば、その動作は、温度に対する感度が最大で、且つリニアな範囲内において、行われ得る。この場合には、バイアス電流Iの値は、温度センサ素子110を横断するバイアス降下が、PN接合の作用により優勢になるように、および、ダイオードの自己抵抗による電圧降下が比較的小さくなるように、十分に小さい値である必要がある。
・アレイ素子部品内の抵抗損失による回路電力消散が最小である。
・温度センサ素子110内の電力消散による自己発熱が最小である。温度を測定する動作がその温度自体の影響を好適に受けないので、自己発熱は回避される。
・回路は、広範囲の温度値にわたってリニアな出力特性を提供するように設計されていてよい。
・VDDの最適化された値は、典型的には、回路を製造するために用いられるプロセス技術において使用されるバイアス電圧の典型的な範囲よりも大きい必要はない、または、該範囲以外である必要はない。
【0088】
本実施形態において用いることが可能であると共に、この動作モードに極めて適している列出力回路131を具現化するために適した技術については、既に、従来技術の箇所において記載されている。
【0089】
本実施形態の利点は、次のとおりである。
・温度センサアレイ回路を、従来技術に記載された温度センサアレイ回路よりも小さい配置面積で具現化することが可能である点。この場合、アレイ素子が小型に形成されるので、温度センサアレイ回路の解像度が向上する。
・接続点および回路素子の数を低減することが、製造歩留まりを改善し、これによってコストを低減することにとって有効である点。
【0090】
アレイ素子内のスイッチトランジスタ172は、用いられる製造プロセスに応じて、例えばMOS、TFT、バイポーラなどの多数のトランジスタ技術のうちの任意の1つの技術によって具現化可能であり、上記スイッチトランジスタ172が、n型装置であってもよいし、またはp型装置であってもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0091】
本発明に係るアレイ素子の第2の実施形態は、図20に示されている。本実施形態は、従来技術に記載されているように、温度センサ素子110が、直列接続された複数のダイオードを含む第1の実施形態と同様である。このため、本実施形態の動作は、第1の実施形態について記載されたものと同様である。
【0092】
この第2の実施形態の利点は、多数のダイオードの使用によって、所定の温度変動の場合の出力電圧の変動が増大され、アレイ素子回路の感度が向上する点である。このことにより、温度測定の精度が増大され得る。
【0093】
本発明の第3の実施形態は、図21に示されている。本実施形態では、列出力回路131は、温度センサアレイ回路内の多数の列間で共有されている。図21は、3×4個のアレイの場合を示すものである。ここでは、さらなる列選択トランジスタ174の使用によって、アレイ内のそれぞれ4つの列が、単一の列出力回路131を共有している。
【0094】
温度センサアレイ回路は、次のように接続されており、すなわち、アレイ素子回路は、第1の実施形態(図19)に記載された回路と同様に配置および接続されている。各列内の第1の行アレイ素子のカソード接続点は、列選択トランジスタ174に接続されている。各列選択トランジスタ174のゲートは、列選択線176に接続されている。各列内の列選択トランジスタ176のソースは、まとめて接続され、列出力回路131の入力部に接続されている。
【0095】
第3の実施形態の温度センサアレイ回路の動作は、第1の実施形態の場合に説明した動作と同様である。アレイ素子は、アレイ素子の位置に適した行選択線RWSおよび列選択CSELにロジックハイ信号を印加することによって、選択される。列選択スイッチトランジスタを付加することは、アレイ内の幾つかの列が、同一の列出力回路131を共有することが可能であることを意味している。このため、選択された列素子は、適切な列選択トランジスタ174によって、回路に切替えられる。
【0096】
本実施形態の一利点は、列出力回路131を共有することによって、構成部品の総数をさらに低減することが可能な点である。これは、基本的寸法を低減すると共に製造歩留まりを改善することに役立つ。さらなる利点は、列出力回路131による消費電力が低減される点である。本発明の他の一実施形態では、温度センサアレイ回路は、多数の列出力回路131を含み、これらの各列出力回路131が、アレイ内の多数の列によって共有されることは、理解されよう。従って、ここでも、温度センサアレイ回路内では、列の数よりも少ない列出力回路131が必要とされる。
【0097】
第4の実施形態は、上述の実施形態のうち、列出力回路が、図13に示されると共に従来技術において説明された構成141から構成されている場合の実施形態のいずれか1つと同様である。列出力回路141は、列出力回路141の入力部において生じた電圧の2つの測定を行うと共に、これらの結果を減算するように構成されている。これは、第1の測定として、バイアス電流I1が温度センサ素子110を通って吸い込まれた時に、列出力回路141の入力部における電圧を測定するように、列出力回路141を構成することによって行われる。第2の測定として、列出力回路141は、別の値のバイアス電流I2を吸い込み、この場合の電圧を測定するように構成されている。測定されたこれら2つの電圧を減算することによって、特定のプロセス依存パラメータに無関係な温度の測定が行われる。この特定のプロセス依存パラメータは、従来技術の箇所において既に説明したとおりであり、数式(7)に示されている。
【0098】
本実施形態の一利点は、プロセス依存パラメータに対する依存を排除することによって、絶対温度のより正確な測定が、実現され得る点である。
【0099】
第5の実施形態は、上述の実施形態のうち、回路が図22に示される構成からなる場合の実施形態のいずれか1つと同様である。本実施形態によれば、アレイ素子回路の一変形例が、実施される。
【0100】
アレイ素子は、次のように接続されている。温度センサ素子110のアノードは、アレイ素子のアノード端子166、スイッチトランジスタ172のドレイン、および、第2のスイッチトランジスタ180のドレインに接続されている。温度センサ素子110のカソードは、アレイ素子のカソード端子168、スイッチトランジスタ172のソース、および、第2の温度センサ素子178のカソードに接続されている。スイッチトランジスタ180のソースは、温度センサ素子178のアノードに接続されている。170における第1の行選択線RWSは、スイッチトランジスタ172のゲートに接続されている。182における第2の行選択線RWS2は、スイッチトランジスタ180のゲートに接続されている。
【0101】
図22に示されるタイプのアレイ素子を含む温度センサアレイ回路の動作は、第4の実施形態について説明した動作と同様である。回路は、既に説明したように、アレイ素子のアノード端子166とカソード端子168との間のバイアス電流Iを吸い込むように構成されていてよい。その後、列出力回路141の入力部において生成された電圧の2つの別個の測定が行われる。より詳細には、第1の測定では、選択された行のアレイ素子のスイッチトランジスタ172はオフにされて、スイッチ素子180がオフになる。この場合、測定された電圧は、温度センサ素子110を横断して降下した電圧と等しい。第2の測定では、スイッチトランジスタ172がオフにされ、スイッチトランジスタ180がオンにされる。この場合、温度センサ素子110および178は、並列接続されており、異なる出力電圧が測定される。
【0102】
この状態は、従来技術の箇所において説明した、温度センサ素子の幅が、2つの測定の場合において異なる状態と同様である。測定されたこれら2つの電圧を減算することによって、絶対温度を示す量が得られる。数式10および従来技術において提示された意見によれば、測定されたこの量は、特定のプロセス依存パラメータとは無関係である。本実施形態の一利点は、プロセス依存パラメータに対する依存性を排除することによって、絶対温度をより正確に測定することが可能な点である。
【0103】
本実施形態によれば、アレイ素子が選択されていない場合には、スイッチトランジスタ172がオンにされて、温度センサ素子110および178を短絡させる。スイッチトランジスタ180は、オンにされてもよいし、または、オフにされてもよい。これについては、理解されよう。
【0104】
本実施形態を最適に実施するために、温度センサ素子110および178は、同様の電気特性を有しているように設計されている必要があり、このため、単位当たりほぼ同一の電流が、各装置を流れる。
【0105】
上述の実施形態のうちのいずれかを、従来技術に記載されたAM−EWODのアクティブマトリクスアレイ装置において実施してもよいことは、当業者には明らかであろう。従来技術に記載されたAM−EWODのアクティブマトリクスアレイ装置では、AM−EWOD制御電子部品および温度センサアレイ電子部品は、同一の基板上に配置されている。例えば、本発明に係るAM−EWOD装置は、図18〜22に関連して説明したような、対応するアレイ素子を有する温度センサアレイ回路を用いている。AM−EWOD装置の基本的構造は、例えば、図7および8に関連して説明した構造である。しかしながら、本発明によれば、温度センサ素子90および温度測定回路98は、当該部分において、温度センサ素子110、スイッチトランジスタ172、列出力回路131などのアレイと置き換えられる。集積された行ドライバ76および列ドライバ78は、対応する行選択線RWS信号を所望のタイミングで供給して、AM−EWODの各画素における温度を測定し、所望の機能、例えば、温度フィードバックなどを提供するように構成されている。従って、装置全体は、固有のアレイベースの温度センサ能力の機能をさらに備える標準的なAM−EWODとして機能し得る。温度センサ能力が含まれていることによって、装置が、次の機能のうちの幾つかまたは全てを実行することが、助長され得る。
・AM−EWODアレイ内の個々の小滴の温度を測定する機能。
・小滴の間に生じる吸熱反応または発熱反応の存在を検出する機能。
・アレイ内の個々の小滴の温度を制御する機能。
・例えば、従来技術の説明の箇所に記載された技術を用いてフィードバックを実施することによって、加熱素子の動作を制御する機能。
・熱的制御の使用を必要とする、または、この熱的制御の使用によって支援される分析(assay)を行う機能。
【0106】
また、記載した実施形態のうちの任意の実施形態の温度センサアレイが、例えば、従来技術に記載されるように、加熱素子を含むシステムにおいて実施可能であることは、当業者には明らかであろう。フィードバックシステムにおいて、温度センサアレイを用いて、システム内の1つまたは複数の空間的位置における温度を制御することが可能である。
【0107】
また、記載した実施形態のうちの任意の実施形態に記載された温度センサアレイが、PCRによるDNA増幅を実行するためのシステムの一部を形成可能であることは、当業者には明らかであろう。本発明の温度センサアレイをPCRシステムに組み入れることによって、PCRを受ける液体試薬の温度を、正確に制御することが可能である。アレイベースの温度センサの利点は、温度を、多数の空間的位置において監視可能な点である。これは、システムの特定の領域に対して局所的に温度制御を行うことを容易にする。このことは、熱サイクルが必要とされるPCRシステムにおいて都合がよいことであり、効率を上げるため、反応時間を長くするため、処理能力を高くするためといった理由のために、システムの異なる領域を異なる温度で維持するために有用である。
【0108】
また、記載した実施形態のうちの任意の実施形態の温度センサアレイを、システム内の任意の空間的位置において生じる1つまたは複数の化学反応または生化学合成を検出するためのシステムにおいて実施してもよいことは、当業者には明らかであろう。
【0109】
また、記載した実施形態のうちの任意の実施形態の温度センサアレイが、従来技術に記載されるような標準的な技術を用いて、指紋の画像を走査、測定、または検出するためのシステムにおいて実施可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0110】
既に指摘したように、温度センサ素子110が、本発明の範囲から逸脱することのない、他の種類の公知の温度センサ素子であってもよいことは、明らかであろう。例えば、本発明は、主に、温度に応じて変動する抵抗を有する少なくとも1つのダイオードを備える温度センサ素子に関連して記載されている。しかしながら、より一般的には、温度センサ素子は、温度に応じて変動するインピーダンスを有する、任意の種類の公知の温度センサ素子であってもよい。
【0111】
本発明を、特定の1つのまたは複数の実施形態を参照しながら図示すると共に説明したが、当業者は、本明細書および添付の図面を読解することによって、同等の代替例および変形例に想到可能であろう。特に、上述の素子(構成部品、アセンブリ、装置、構造など)によって実行される様々な機能に関して、このような素子を説明するために用いられる用語(「手段」への言及を含む)は、他に記載がない限り、開示される、本発明の典型的な1つまたは複数の実施形態における機能を実行する構成と、構造的に同等でなくても、当該特定の機能を実行する任意の素子(すなわち、機能的に同等の素子)に対応することが意図される。さらに、本発明の特定の特徴を、1つまたは複数の実施形態だけを参照して説明してきたが、このような特徴は、他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と、所望のように、および、所定のまたは特定の用途にとって都合がよいように、組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の温度センサアレイ回路は、より小さい配置面積で具現化可能な簡略化された回路トポロジーを提供する。したがって、アレイ素子は、より小型になり、このため、温度センサアレイの解像度は向上する。本発明は、製造歩留まりを改善し、これによってコストを低減するという利点を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度センサアレイ回路のためのアレイ素子であって、
スイッチトランジスタと、
温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子とを含み、上記温度センサ素子は、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている、アレイ素子。
【請求項2】
上記温度センサ素子は、少なくとも1つのダイオードを含む、請求項1に記載のアレイ素子。
【請求項3】
上記温度センサ素子は、直列接続された複数のダイオードを含む、請求項2に記載のアレイ素子。
【請求項4】
第2のスイッチトランジスタに直列接続された、温度に応じて変動するインピーダンスを有する第2の温度センサ素子をさらに含み、直列接続された上記第2の温度センサ素子および上記第2のスイッチトランジスタは、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレイ素子。
【請求項5】
出力回路と結合されており、上記スイッチトランジスタがオフにされるとき、上記出力回路は、上記温度センサ素子を通してバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定し、上記スイッチトランジスタがオンにされるとき、上記バイアス電流は、上記温度センサ素子の周囲で短絡される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレイ素子。
【請求項6】
温度センサアレイ回路であって、
M行およびN列に配置されたアレイ素子のM×N個のアレイを含み、各アレイ素子は、
スイッチトランジスタと、
温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子とを含み、上記温度センサ素子は、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されており、
各列内の上記アレイ素子について、複数の上記温度センサ素子は、第1の行内のアレイ素子に属する上記温度センサ素子と直列接続されており、第1の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子は、上記温度センサアレイ回路内に含まれる列出力回路に接続されており、M番目の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子は、電源電圧に接続されており、
各行内の上記アレイ素子のための上記スイッチトランジスタのゲートは、同一の行選択線に接続されている、温度センサアレイ回路。
【請求項7】
上記行選択線のそれぞれに、対応する行選択信号を選択的に供給するための行ドライバを備え、
所定の行内の所定のアレイ素子によって得られる温度を測定するために、
上記行ドライバは、上記所定の行の上記行選択線に行選択信号を供給して、上記所定の行内の上記各アレイ素子に含まれる上記スイッチトランジスタをオフにすると共に、上記所定の行以外の行内の上記アレイ素子の上記スイッチトランジスタをオンにするように構成されており、
上記所定のアレイ素子と同一の列の上記第1の行内に含まれる上記アレイ素子に接続された上記列出力回路は、上記所定の温度センサ素子を通してバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定するように構成されている、請求項6に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項8】
上記列出力回路は、上記M×N個のアレイ内の異なる列のための異なる列出力回路を含む、請求項6または7に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項9】
上記列出力回路は、上記M×N個のアレイ内の異なる列によって共有される同一の列出力回路を含む、請求項6または7に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項10】
上記各アレイ素子内の上記温度センサ素子は、少なくとも1つのダイオードを含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項11】
上記各アレイ素子内の上記温度センサ素子は、直列接続された複数のダイオードを含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項12】
各アレイ素子は、直列接続された、温度に応じて変動するインピーダンスを有する第2の温度センサ素子と、第2のスイッチトランジスタとをさらに含み、直列接続された上記第2の温度センサ素子および上記第2のスイッチトランジスタは、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている、請求項6〜11のいずれか1項に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項13】
アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(AM−EWOD)装置であって、
その上に置かれた小滴を操作するためのアクティブマトリクスアレイと、
請求項6に記載の温度センサアレイ回路とを含み、上記温度センサアレイ回路は、上記アクティブマトリクスアレイ上の温度を測定するように構成されている、AM−EWOD装置。
【請求項14】
アクティブマトリクスアレイ制御電子部品および温度センサアレイ回路電子部品が、同一の基板上に配置されている、請求項13に記載のAM−EWOD装置。
【請求項1】
温度センサアレイ回路のためのアレイ素子であって、
スイッチトランジスタと、
温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子とを含み、上記温度センサ素子は、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている、アレイ素子。
【請求項2】
上記温度センサ素子は、少なくとも1つのダイオードを含む、請求項1に記載のアレイ素子。
【請求項3】
上記温度センサ素子は、直列接続された複数のダイオードを含む、請求項2に記載のアレイ素子。
【請求項4】
第2のスイッチトランジスタに直列接続された、温度に応じて変動するインピーダンスを有する第2の温度センサ素子をさらに含み、直列接続された上記第2の温度センサ素子および上記第2のスイッチトランジスタは、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレイ素子。
【請求項5】
出力回路と結合されており、上記スイッチトランジスタがオフにされるとき、上記出力回路は、上記温度センサ素子を通してバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定し、上記スイッチトランジスタがオンにされるとき、上記バイアス電流は、上記温度センサ素子の周囲で短絡される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアレイ素子。
【請求項6】
温度センサアレイ回路であって、
M行およびN列に配置されたアレイ素子のM×N個のアレイを含み、各アレイ素子は、
スイッチトランジスタと、
温度に応じて変動するインピーダンスを有する温度センサ素子とを含み、上記温度センサ素子は、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されており、
各列内の上記アレイ素子について、複数の上記温度センサ素子は、第1の行内のアレイ素子に属する上記温度センサ素子と直列接続されており、第1の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子は、上記温度センサアレイ回路内に含まれる列出力回路に接続されており、M番目の行内のアレイ素子に属する温度センサ素子は、電源電圧に接続されており、
各行内の上記アレイ素子のための上記スイッチトランジスタのゲートは、同一の行選択線に接続されている、温度センサアレイ回路。
【請求項7】
上記行選択線のそれぞれに、対応する行選択信号を選択的に供給するための行ドライバを備え、
所定の行内の所定のアレイ素子によって得られる温度を測定するために、
上記行ドライバは、上記所定の行の上記行選択線に行選択信号を供給して、上記所定の行内の上記各アレイ素子に含まれる上記スイッチトランジスタをオフにすると共に、上記所定の行以外の行内の上記アレイ素子の上記スイッチトランジスタをオンにするように構成されており、
上記所定のアレイ素子と同一の列の上記第1の行内に含まれる上記アレイ素子に接続された上記列出力回路は、上記所定の温度センサ素子を通してバイアス電流を吸い込み、結果として生じる電圧を測定するように構成されている、請求項6に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項8】
上記列出力回路は、上記M×N個のアレイ内の異なる列のための異なる列出力回路を含む、請求項6または7に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項9】
上記列出力回路は、上記M×N個のアレイ内の異なる列によって共有される同一の列出力回路を含む、請求項6または7に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項10】
上記各アレイ素子内の上記温度センサ素子は、少なくとも1つのダイオードを含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項11】
上記各アレイ素子内の上記温度センサ素子は、直列接続された複数のダイオードを含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項12】
各アレイ素子は、直列接続された、温度に応じて変動するインピーダンスを有する第2の温度センサ素子と、第2のスイッチトランジスタとをさらに含み、直列接続された上記第2の温度センサ素子および上記第2のスイッチトランジスタは、上記スイッチトランジスタのソースおよびドレインに並列接続されている、請求項6〜11のいずれか1項に記載の温度センサアレイ回路。
【請求項13】
アクティブマトリクス型の誘電体エレクトロウェッティング(AM−EWOD)装置であって、
その上に置かれた小滴を操作するためのアクティブマトリクスアレイと、
請求項6に記載の温度センサアレイ回路とを含み、上記温度センサアレイ回路は、上記アクティブマトリクスアレイ上の温度を測定するように構成されている、AM−EWOD装置。
【請求項14】
アクティブマトリクスアレイ制御電子部品および温度センサアレイ回路電子部品が、同一の基板上に配置されている、請求項13に記載のAM−EWOD装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−237410(P2011−237410A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−76488(P2011−76488)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76488(P2011−76488)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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