説明

温度ヒューズおよびその温度ヒューズの製造方法

【課題】基本的性能を維持しつつ高定格に対してもオーバーロード特性の保証のもとで動作させ得、動作後の耐圧特性や絶縁特性を充分に有する温度ヒューズを提供する。
【手段】絶縁ケース50のリード線10・20上および低融点可溶合金40上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて塗布される分割フラックス35・35・・・と、絶縁ケース50の開口部50a・50bと、その位置の開口部を挿通している各リード線10・20とを封着する封着剤70・70とを有する。このように構成することにより、IEC規格60691を満たし、高定格でも不具合を発生させず、アーク等を発生して放電したり、絶縁破壊しない。絶縁ケース50内を炭化フラックスの浮遊または飛散を抑える。絶縁ケース50または温度ヒューズの破損を防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度ヒューズおよびその温度ヒューズの製造方法に関する。特に、オーバーロード特性、および、ヒューズ動作後の絶縁特性、耐圧特性が優れている高定格の温度ヒューズおよびその温度ヒューズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定格以上の大電流から電気回路を保護、あるいは加熱や発火といった事故を防止する過熱保護部品としてヒューズが知られている。ヒューズは電気回路内に置かれ、普段は導体として振る舞う。しかし何らかの異常によって電気回路に定格以上の電流が流れると、自らを流れる電流によって発生したジュール熱が自らを溶かし、自らが置かれる回路を遮断して電気回路に流れる電流を断つ。
【0003】
図4は、従来のアキシャル型温度ヒューズ100cを示す断面図である。図4(a)はその一実施例を示す図であり、(b)はその他の実施例を示す図である。アキシャル型温度ヒューズ100cは筒型ケ−スタイプであり、その外装体である絶縁ケース50は耐熱性・良熱伝導性の絶縁筒状で、長手方向一方および他方それぞれに開口した開口部50a・50bを有している。
【0004】
一方のリード線10の一端部10aおよび他方のリード線20の他端部20bは、互いに長手方向に所定の間隔Mを隔てて長手方向直列状に対向し、低融点可溶合金40により接合されている。さらに動作性能を長期間にわたって維持するため、ロジン(松脂)を主成分とする特殊樹脂からなるフラックス30を低融点可溶合金40の表面全体40aに亘って塗布・乾燥し、このフラックス塗布可溶合金を絶縁ケース50に挿通し、外部から水などの浸入を防止するため、かつ、気密性を保つために、その絶縁ケース50の長手方向両端開口部50a・50bとリ−ド線の端部10a・20bそれぞれとの間を封着剤70・70で封着した構造をしている。
【0005】
一般的な温度ヒューズ100の動作機構について、図5に基づき説明する。図5は、図4(a)に示す従来例のアキシャル型温度ヒューズ100cにおいて、温度ヒューズ100cの周囲の温度上昇によって可溶合金40の変化を示した断面図であり、図5(a)は溶融前、(b)は溶融途中、(c)は溶融後の状態を示した図である。
【0006】
温度ヒューズ100cは内部抵抗が非常に低いので電流による自己発熱は殆どなく、温度ヒューズ100cを備える電気機器や回路素子が過電流により発熱することにより、図5(b)に示すように、温度ヒューズ100cの周囲の温度上昇により低融点可溶合金40が融点に達して溶断し、温度ヒューズ100cのリード線10・20間の導通が遮断されて、機器の電気回路が開路する構成になっている。
【0007】
低融点可溶合金40が融点に達して溶断する際、温度ヒューズ100cの周囲の温度上昇によって融点に達し溶融した低融点可溶合金40がその表面全体40aに塗布しているフラックス30の作用により溶融合金の表面張力が促進されて、両端のリード線10・20への濡れにより分断球状化される。
なお、温度ヒューズの低融点可溶合金40上のフラックス30においては、その融点が低融点可溶合金40の融点よりも低く、低融点可溶合金40の溶融時には、既に溶融して強力な活性を発現し、低融点可溶合金40に酸化物が含まれていても、その酸化物を可溶化し、上記溶融合金の球状化分断作用を促進する。したがって、温度ヒューズ100においてフラックス30は不可欠である。
【0008】
以上の動作機構を経て、図5(c)に示すように、低融点可溶合金40の分断球状化の進行により過電流の通電が遮断され、この通電遮断による機器の降温で分断溶融合金42・42が凝固されて非復帰のカットオフが終結される。
したがって、電気機器等の許容温度と低融点可溶合金40の分断温度とがほぼ等しくなるように設定されており、電気機器や回路素子の加熱破損を未然に防止している。
【0009】
また、従来の温度ヒューズ100の他の一例として、ラジアル型温度ヒューズ100dの断面図を図6に示す。図6(a)はその平面断面図であり、(b)はその側面断面図である。
【0010】
上記アキシャル型温度ヒューズ100cとの相違点としては、主に、ラジアル型温度ヒューズ100dは有底筒型ケ−スタイプであり、絶縁ケース55は長手方向一方側または他方側のいずれか一方向(本実施形態では長手方向他方側)のみに開口した開口部55aを有している点、一方のリード線10の一端部10aと他方のリード線20の一端部20aとの端部同士10a・20aが幅方向に所定の間隔Nを隔てて並行に低融点可溶合金40により溶接されて接合されている点、が異なる。
なお、ラジアル型温度ヒューズの動作機構と上記アキシャル型温度ヒューズの動作機構とはほぼ同じである。
【0011】
このような電機部品の電気回路に配設される温度ヒューズとしては、例えば、特許文献1に挙げられる温度ヒューズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開WO2002/099827公報(図2、図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来において、温度ヒューズにおけるフラックスと低融点可溶合金に対する考えは、上述したように、低融点可溶合金上のほぼ全域に亘ってフラックスを塗布し、過剰な温度を感知した際にはより早く球状化して分断する、というものであった。
そのため、図5(a)、(b)、(c)に示すように、周囲の温度が上昇して温度ヒューズが動作する時、まず、フラックスが溶融し、低融点可溶合金上を移動可能な溶融状態になる。更に周囲の温度が増すことで、低融点可溶合金が溶融する。リード線の一端部にて低融点可溶合金は球状化し、フラックスはその球状化を促進する。したがって、リード線間の導通が分断される、というのが一般的な温度ヒューズの構成であった。
【0014】
しかしながら、最近では、電気製品の高機能化が進み、高電力を消費するようになりつつある。そのため、高い電力の定格に対応できる温度ヒューズが要求されており、その要求されている高定格に対応できる温度ヒューズの早期商品化が望まれている。そこで、さらに研究した結果、次の(A)〜(C)の課題が存在することが知見された。
【0015】
(A)フラックスの炭化、アークの発生による影響
定格を越える高い電力では、温度ヒューズ動作時のアーク発生による破壊、ヒューズ動作後での耐電圧・絶縁不良が顕著となる可能性が高い。すなわち、アークの温度はフラックスの融点よりかなり高温であるため、フラックスは炭化または気化する。よって、絶縁ケース内を炭化フラックスが浮遊状態で存在する場合もあり、飛散した炭化フラックスは炭化しているがゆえに導通性を有している。そのため、浮遊状態の炭化フラックスを通じて一対のリード線間がアーク電流により再導通する虞がある。
また、浮遊状態の炭化フラックスが絶縁ケースの壁内面に付着することにより、高温のアーク熱が絶縁ケースを加熱することになり絶縁ケースが破損する虞がある。特に、リード線と絶縁ケースとが近いほど炭化フラックスとリード線との間でアーク電流により導通経路が形成されて、その導通経路に電流が流れそのジュール発生熱のために絶縁ケースまたは温度ヒューズが損傷・破壊してしまう可能性も充分に考え得る。
たとえ、損傷・破壊に至らなくても、動作後の絶縁性が悪いために高電圧がかかると再導通してしまい、重大な問題になる蓋然性がある。
【0016】
また、低融点可溶合金の溶断時、液相化低融点可溶合金が微細粒子となって動作時アークによる炭化フラックスを伴いながら周囲に飛散し、絶縁ケースの壁内面等に多数付着することで動作後の絶縁距離が保てず上述したように高電圧印加による再導通や再遮断時の再アーク発生が原因と推定される障害の発生が懸念される。
【0017】
(B)温度ヒューズ内の内圧上昇による影響
また、アークのエネルギーにより低融点可溶合金上のほぼ全域に亘って塗布されているフラックスの気化または分解により、封着剤で封着されている絶縁ケース内のフラックスの気体分子数が急増し、温度ヒューズ内部の空間の圧力が上昇する。特にアークのエネルギーが大きい場合は、温度ヒューズ内の内圧上昇により、温度ヒューズの密封の劣化や、温度ヒューズを構成する絶縁ケースが破損する虞がある。
【0018】
したがって、従来の温度ヒューズは上記理由のために定格電流の値を下げて対処せざるをえなかった。
【0019】
(C)オーバーロード試験
また、温度ヒューズにおいては、上記アークに対してオーバーロード特性及び耐圧特性が要求されている。これらの特性は温度ヒューズの電気定格を定めるうえで重要な役割を担っている。
「オーバーロード特性」とは、温度ヒューズに規定の電流、電圧を印加している状態で周囲温度が上昇して動作する時にヒューズが損傷したり、アーク、炎等を発生して危険な状態にならないといった外形的安定性のことである。「耐圧特性」とは、動作した温度ヒューズが規定の高電圧が掛かっても絶縁破壊を起こすことなく維持できるといった絶縁安定性のことである。
【0020】
このオーバーロード特性および耐圧特性の評価方法として代表的な規格であるIEC(International Electrotechnical Commission)規格60691には、定格電圧×1.1、定格電流×1.5を印加しながら2±1K/minの速度で昇温させて作動させた際、アーク、炎等を発生して危険な状態にならないこと、および動作後のヒューズボディーに巻装した金属箔とリード線間に定格電圧×2+1000Vを、両リード線間に定格電圧×2をそれぞれ1分間印加しても、放電したり、絶縁破壊したりしないことが規定されている。
しかしながら、従来の温度ヒューズでは、定格電力を越えて上記規格を満たすことは至難である。
【0021】
よって、製造した温度ヒューズが上記高定格において不具合を発生させることなく高定格の電圧に対応できるか否かの判断基準として、オーバーロード特性および耐圧特性の評価方法の基準を満たす必要がある。
【0022】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、温度ヒューズとしての基本的性能を維持しつつ高定格に対してもオーバーロード特性の保証のもとで迅速に動作させ得、かつ動作後の耐圧特性や絶縁特性を満足に保証できる温度ヒューズを提供することにある。また、別の目的は、その温度ヒューズの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するための手段として、本発明に係る温度ヒューズ100aは、一方のリード線10の端部10aと他方のリード線20の端部20bとが間隔Mを隔てて互いに対向する一対のリード線10・20と、前記一方のリード線10の端部10aと前記他方のリード線20の端部20bの間に溶接されてそのリード線の端部同士10a・20bを接合する低融点可溶合金40と、絶縁ケース50の開口部50a・50bからその絶縁ケース50内に挿入される前記リード線10・20上および前記低融点可溶合金40上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて塗布されている分割フラックス35・35・・・と、前記絶縁ケース50の開口部50a・50bと、その位置の開口部50a・50bを挿通している各リード線10・20とを封着する封着剤70・70と、を有していることを特徴している。
【0024】
また、上記目的を達成するための方法として、本発明に係る温度ヒューズの製造方法は、一対のリード線10・20において、一方のリード線10の端部10aと他方のリード線20の端部20bとを間隔Mを隔てて互いに対向させ、前記一方のリード線10の端部10aと前記他方のリード線20の端部20bの間を溶接して前記一対のリード線10・20の端部同士10a・20bを低融点可溶合金40で接合し、前記リード線10・20上および前記低融点可溶合金40上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて分割フラックス35・35・・・を塗布し、前記分割フラックス35・35・・・を塗布した前記リード線10・20および前記低融点可溶合金40のいずれか一方または両方を、挿入用に開口した開口部50a・50bを有する前記絶縁ケース50に挿入し、絶縁ケース50内にて、前記低融点可溶合金40の表面40bと、該絶縁ケース50の壁内面50dとの間に空間Pを設けて対向させ、前記絶縁ケース50の開口部50a・50bと、その位置の開口部50a・50bを挿通している各リード線10・20とを封着剤70・70で封着することを特徴としている。
【0025】
本発明は、上記(A)〜(C)の課題を解決し、以下の作用を奏するものである。
【0026】
上記課題(A)に関し、本発明の温度ヒューズおよび本発明の製造方法により製造した温度ヒューズは、絶縁ケースの開口部からその絶縁ケース内に挿入されるリード線上および低融点可溶合金上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて分割フラックスを塗布することができ、絶縁ケース内にて、低融点可溶合金の表面と、その絶縁ケースの壁内面との間に空間を設けて対向している。
このような構成にしたことにより、低融点可溶合金上の表面全域にフラックスを塗布していた従来の温度ヒューズに比べて、フラックスを分割し、その分割したフラックスを低融点可溶合金上だけでなくリード線上にも塗布することを想定した発明であり、分割フラックスを塗布する箇所を絶縁ケース内において、適宜選択して複数箇所に間隔を隔てて塗布することができる。
これによって、溶断時にアークが発生していた低融点可溶合金の一端間に相当する箇所にフラックスを塗布する必要がなく、さらに、そのアークが発生する箇所から離れた箇所に複数の分割フラックスを塗布することができる。例えば、敢えてアークが発生する低融点可溶合金上にフラックスを塗布せず、低融点可溶合金の両端部のリード線上にそれぞれフラックスを塗布するといったこともできる。
その結果、アークによる溶融フラックスの炭化や気化するような事態が解消または最小限に抑えることができる。また、その分、従来に比べてフラックスの全体としての必要量が少なく済むためコスト面でも優れている。
【0027】
上記課題(B)に関し、本発明の温度ヒューズおよび本発明の製造方法により製造した温度ヒューズでは、アークの発生場所から離れた箇所にフラックスを複数箇所塗布する構成であるというのと、従来に比べてフラックスの全体としての必要量が少なく済むため、従来の温度ヒューズに比べて、アークのエネルギーにより可溶合金の表面に塗布されているフラックスが気化または分解する虞もなく、温度ヒューズ内部の空間の圧力が上昇することを抑えることができる。
【0028】
上記課題(C)に関し、本発明の温度ヒューズおよび本発明の製造方法により製造した温度ヒューズは、後述する各実施例1ないし5に示すように、オーバーロード特性および耐圧特性の評価方法の代表的な規格であるIEC規格60691の判定基準を満たすものである。そして、後述する実施例に示すように、本発明に係る温度ヒューズおよびその製造方法により製造された温度ヒューズは、この規格に優れた成績で合格している。
したがって、本発明の温度ヒューズは、高定格においても不具合を発生させることなく高定格の電圧に対応できる判定基準を満たしており、本温度ヒューズを作動させた際、アーク、炎等を発生して危険な状態にならないこと、および、放電したり、絶縁破壊しないことが保証された温度ヒューズである。
【発明の効果】
【0029】
以上のとおり、本発明の温度ヒューズおよび本発明の製造方法により製造した温度ヒューズは、オーバーロード特性および耐圧特性の評価方法の代表的な規格であるIEC規格60691の判定基準を満たす。このため、本発明の温度ヒューズは、高定格においても不具合を発生させることなく高定格の電圧に対応できる判定基準を満たしており、本温度ヒューズを作動させた際、アーク、炎等を発生して危険な状態にならないこと、および、放電したり、絶縁破壊しないことが保証された。
さらに、フラックスを分割させて塗布する構成であるため、従来のように一塊のフラックスにアークエネルギーを伝達するのではなく、分割したフラックスそれぞれに分散させて塗布しそれぞれに熱を伝達する構成でもあるので、フラックスが炭化または気化するのを抑えることができ、絶縁ケース内を炭化フラックスの浮遊または飛散を抑えることができるため、浮遊状態の炭化フラックスを通じてリード線間がアーク電流により再導通することを防止できる。
また、浮遊状態の炭化フラックスが従来に比べて非常に少なくすることができるため、絶縁ケースの壁内面に付着したとしても、絶縁ケースの壁内面に付着した炭化フラックスとリード線との間にアーク電流の導通経路が形成されることは抑えられ、絶縁ケースまたは温度ヒューズが破損してしまう可能性を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係るアキシャル型温度ヒューズの断面図であり、(a)は第1実施例、(b)は第2実施例、(c)は第3実施例の側面断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るに係るラジアル型温度ヒューズの断面図であり、(a)は第4実施例の平面断面図、(b)は第4実施例の側面断面図、(c)は第5実施例の平面断面図、(d)は第5実施例の側面断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係るラジアル型温度ヒューズの断面図であり、(a)は平面断面図、(b)はその側面断面図で、(c)は更に他の実施形態に係るラジアル型温度ヒューズの平面断面図である。
【図4】従来のアキシャル型温度ヒューズの断面図であり、(a)はその一実施例を示す図であり、(b)はその他の実施例を示す図である。
【図5】図4(a)に示すアキシャル型温度ヒューズにおいて、温度ヒューズの周囲の温度上昇による可溶合金の変化を示した断面図であり、(a)は溶融前、(b)は溶融途中、(c)は溶融後の状態を示した断面図である。
【図6】従来のラジアル型温度ヒューズの断面図であり、(a)は平面断面図であり、(b)はその側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、
(イ) 本発明の一実施形態に係るアキシャル型温度ヒューズの構成について
(ロ) 発明の一実施形態に係るラジアル型温度ヒューズの構成について
(ハ) 温度ヒューズの各構成部材について
(ニ) IEC60691に規定された試験に基づき評価した実施例と比較例との説明
(ホ) 実施例と比較例との対比
の流れに従い説明する。
【0032】
(イ) 本発明の一実施形態に係るアキシャル型温度ヒューズの構成について
図1は、本発明の一実施形態に係るアキシャル型温度ヒューズの断面図である。
本発明の一実施形態に係るアキシャル型温度ヒューズ100aは、その外装体が筒型ケ−スタイプであり、一方のリード線10の一端部10aと他方のリード線20の他端部20bとが長手方向直列状に所定の間隔Mを隔てて互いに対向する一対のリード線10・20と、一方のリード線10の一端部10aと他方のリード線20の他端部20bの間に溶接されてそのリード線10・20の端部同士10a・20bを長手方向に接合する低融点可溶合金40と、長手方向一方側および他方側それぞれに開口した開口部50a・50bからその絶縁ケース50内に挿入されるリード線10・20上および低融点可溶合金40上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて塗布されている分割フラックス35・35・・・(本実施形態では二箇所に分割フラックス35・35が塗布)と、絶縁ケース50の開口部50a・50bと、その位置の開口部50a・50bを挿通している各リード線10・20とを封着する封着剤70・70と、を有し、絶縁ケース50内にて、低融点可溶合金40の表面40bと、絶縁ケース50の幅方向一方側の壁内面50dとの幅方向の間、および、低融点可溶合金40の表面40bと、絶縁ケース50の幅方向他方側の壁内面50eとの幅方向の間、の少なくとも一方にそれぞれ空間P・Pを設けて対向させている。本実施形態では、両方に空間P・Pを設けている。
【0033】
また、絶縁ケース50内において、一対のリード線10・20の間に接合される低融点可溶合金40の長手方向の中心部は、その絶縁ケース50の長手方向の中心部Oに重なるように位置している。図1において、絶縁ケース50の長手方向一端部および他端部から絶縁ケース50の長手方向中心部Oにかけて、長手方向一方側および他方側からも同位置に低融点可溶合金40の長手方向の中心部が位置している。つまり、絶縁ケース50の中心部Oを境に長手方向一方側および他方側それぞれに位置する低融点可溶合金40の体積や長手方向の寸法が同一である(その寸法を符号「D」で示す)。
なお、ここでいう「低融点可溶合金40の長手方向の中心部」が「絶縁ケース50の長手方向の中心部O」に「重なるように位置している」の「重なる」という文言は、互いの中心部が完全一致という意味だけではなく、重なりのズレが多少大きいまたは少ない寸法である場合も含む。
つまり、絶縁ケース50の中心部Oを境に、長手方向一方側に位置する低融点可溶合金40の体積や長手方向の寸法、長手方向他方側に位置する低融点可溶合金40の体積や長手方向の寸法、それぞれ互いの値の公差の範囲を逸脱しない程度の寸法を含む。
このように構成することにより、低融点可溶合金40が各リード線10・20の一端部10aおよび他端部20bそれぞれにて溶融分断するときに、低融点可溶合金40が絶縁ケース50内にて体積を偏らせることなく、溶融分断させることができる。したがって、偏って分断したことにより生じる不具合を未然に防止することができる。
【0034】
(ロ) 発明の一実施形態に係るラジアル型温度ヒューズの構成について
図2は、本発明の一実施形態に係るラジアル型温度ヒューズの断面図である。図2(a)は第4実施例の平面断面図であり、(b)は第4実施例の側面断面図である。
本発明の一実施形態に係るラジアル型温度ヒューズ100bは、図2に示すように、温度ヒューズ100bは有底筒型ケ−スタイプであり、長手方向一方側および他方側のいずれか(本実施形態では長手方向他方側)に開口部55aを有する外装体である絶縁ケース55と、一方のリード線10の一端部10aと他方のリード線20の一端部20aとが幅方向並列状に所定の間隔Nを隔てて互いに対向する一対のリード線10・20と、一方のリード線10の一端部10aと他方のリード線20の一端部20aの間に溶接されてそのリード線10・20の端部同士端部同士10a・20aを幅方向に並行に接合する低融点可溶合金40と、絶縁ケース55の開口部55aからその絶縁ケース55内に挿入されるリード線10・20上および低融点可溶合金40上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて塗布されている分割フラックス35・35・・・(本実施形態では二箇所に分割フラックス35・35が塗布)と、絶縁ケース55の一方側のみに開口した開口部55aと、その位置の開口部55aを挿通している各リード線10・20とを封着する封着剤70と、を有し、絶縁ケース55内にて、低融点可溶合金40の表面40bと絶縁ケース55の長手方向の内奥側端面55fとの間に空間Qを、並びに、一方のリード線10の一端部10aの表面と絶縁ケース55の幅方向一方側の壁内面55dとの間、および、他方のリード線20の一端部20aの表面と絶縁ケース55の幅方向他方側の壁内面55eとの間のいずれか一方または両方(本実施形態では両方)に空間R、Rを、それぞれ設けており、低融点可溶合金40の表面40bと絶縁ケース55の長手方向の内奥側端面、並びに、一方のリード線10の一端部10aの表面と絶縁ケース55の幅方向一方側の壁内面55d、および、他方のリード線20の一端部20aの表面と絶縁ケース55の幅方向他方側の壁内面55e、とが非接触状態にあるように設定している。
【0035】
さらに、本実施形態では、ラジアル型温度ヒューズ100bの製造方法の簡素化を考慮し、絶縁ケース55内に、低融点可溶合金40で溶接固定した各リード線10・20が挿入し易いよう、一対に並行なリード線10・20の幅方向の寸法の大きさが、絶縁ケース55の長手方向内奥側端面55f側と、長手方向開口部55a側とで異なるように設定し、絶縁ケース55内にて折曲部12・22が位置するように、各リード線10・20に折曲部12・22を設けている。
折曲部12または22はリード線10または20それぞれの一部であり、折曲部12または22を介して、低融点可溶合金40側のリード線の符号を「11」、「21」とし、開口部55a側のリード線の符号を「13」、「23」と細分化する。そして、符号11、12、13の総称を「リード線10」とし、符号21、22、23の総称を「リード線20」とする。
その折曲部12・22を境に、低融点可溶合金40側の各リード線11・21の幅方向の間隔の寸法の大きさXよりも絶縁ケース55の開口部55a側の各リード線13・23の幅方向の間隔の寸法の大きさYを広く(大きく)設定している。
なお、開口部55a側のリード線13が絶縁ケース55の幅方向一方側の壁内面55d、開口部55a側のリード線23が絶縁ケース55の幅方向他方側の壁内面55eに接触している。
なお、折曲部12・22の形状は、傾斜状でも直角状でも構わない。本実施形態では、リード線11(21)からリード線13(23)にかけて傾斜状に折曲部12(22)を設けている。
【0036】
(ハ) 温度ヒューズの各構成部材について
次に、本発明の実施形態に係る温度ヒューズ100の各構成部材について説明する。
【0037】
リード線10・20は、その材質が導線であるSnメッキ軟銅線を用いている。なお、リード線としては、Snメッキ銅線、SnメッキCP線、Niメッキ銅線、Snメッキニッケル線などを使用することができる。また、リード線には、汎用の銅線のほかに、アルミニウム線、銅被覆鉄線等も使用できる。
【0038】
分割フラックス35には、通常、融点が低融点可溶合金40の融点よりも低いものが使用される。この場合、ロジン系を主成分とし、活性剤を添加したものを使用する。例えば、ロジンには、天然ロジン、変性ロジン(例えば、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン)またはこれらの精製ロジンを使用できる。活性剤には、ジエチルアミン等のアミン類の塩酸塩や臭化水素酸塩、ジカルボン酸(例えば、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、シュウ酸等)の有機酸を使用できる。
分割フラックス35の低融点可溶合金40上への塗布は加熱軟化したものを塗布し、冷却凝固させることにより行うか、イソプロピルアルコールや酢酸ブチル等の有機溶剤で液状化したものを塗布することにより行うことができる。
【0039】
なお、上記の本実施形態に係る温度ヒューズが、筒型ケースタイプのアキシャル型温度ヒューズ100aの場合、図1に示すように、リード線10・20を筒型絶縁ケース50に対し偏芯なく配設することが図1に示す正常な球状化分断を行わせるための前提条件であり、ヒューズ動作後、絶縁ケース50の壁内面50d・50eにフラックス炭化物を含むフラックスや飛散した合金が付着し易く、絶縁抵抗値の低下や耐圧特性の悪化が懸念される。
そこで、かかる不具合を防止するために、低融点可溶合金40を絶縁ケース50に対し実質的に同心に配置させることが有効である。
絶縁ケース50内において、一対のリード線10・20の間に接合される低融点可溶合金40の長手方向に垂直な幅方向の中心部は、その絶縁ケース50の幅方向の中心部Sに重なるように位置している。図1において、絶縁ケース50の幅方向一端部および他端部から絶縁ケース50の幅方向中心部Sにかけて、幅方向一方側および他方側からも同位置に低融点可溶合金40の幅方向の中心部が位置している。つまり、絶縁ケース50の幅方向中心部Sを境に幅方向一方側および他方側それぞれに位置する低融点可溶合金40の体積や幅方向の寸法が同一である(その寸法を符号「F」で示す)。
なお、ここでいう「低融点可溶合金40の幅方向の中心部」が「絶縁ケース50の幅方向の中心部S」に「重なるように位置している」の「重なる」という文言は、互いの中心部が完全一致という意味だけではなく、重なりのズレが多少大きいまたは少ない寸法である場合も含む。
つまり、絶縁ケース50の中心部Sを境に、幅方向一方側に位置する低融点可溶合金40の体積や幅方向の寸法、幅方向他方側に位置する低融点可溶合金40の体積や幅方向の寸法、それぞれ互いの値の公差の範囲を逸脱しない程度の寸法を含む。
このように構成することにより、低融点可溶合金40が各リード線10・20の一端部10aおよび他端部20bそれぞれにて溶融分断するときに、低融点可溶合金40が絶縁ケース50内にて体積を偏らせることなく、溶融分断させることができる。したがって、偏って分断したことにより生じる不具合を未然に防止することができる。
さらに、ヒューズ動作後、フラックス炭化物を含むフラックスや飛散した合金の絶縁ケース50の壁内面50d・50eへの付着を抑制することができ、更なる絶縁特性、耐圧特性の向上が期待できる。
【0040】
絶縁ケース50・55には、耐熱性・良熱伝導性を有するものであれば特に制限無く使用できる。例えば、アルミナセラミックスのようなセラミックス、耐熱性プラスチック、繊維強化プラスチック、表面に絶縁膜を有する金属などが使用できる。
上記絶縁ケース50・55には、セラミックスやガラス等の無機質製のほか、繊維強化フエノール樹脂などのFRP製も使用できる。
なお、「FRP」とは(Fiber Reinforced Plastics)」の略称であり、いわば、繊維強化プラスチックを意味する。FRPは、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などの強化材(繊維)と、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などのマトリックス(樹脂)との複合材のことである。強化材の種類で機械的特性が決まり、樹脂の種類で性質が決まる。
【0041】
封着剤70は、例えばエポキシ樹脂等の硬化型樹脂、紫外線硬化性樹脂、シリコン樹脂等を使用することができる。一般的に常温硬化性もしくは熱硬化性の封着剤が用いられる。
【0042】
低融点可溶合金40の材質としては、In−Sn−Bi三元系の合金を使用する。または、In−Bi系、Bi−Sn系、Sn−In系、Sn−Bi−Sb系合金も使用できる。場合によっては他の元素を添加した低融点可溶合金を使用することができる。例えば、上記合金組成にAu、Ag、Cu、Al、Sb、Zn等のうちの一種または二種以上の元素を添加することにより、温度ヒューズの作動温度を調整することができる。それに加え、低融点可溶合金の比抵抗を低くしたり、その機械的強度を高めることができる。
また、環境に配慮してPb、Cdが添加されていない低融点可溶合金を使用することが好ましい。
【実施例】
【0043】
(ニ) IEC60691に規定された試験に基づき評価した実施例と比較例との説明
以下、本発明の好適な一実施形態に係る温度ヒューズ、及び、参考として述べる従来例の実施形態に係る温度ヒューズについて説明する。本発明の一実施形態を実施例および比較例をあげて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
なお、比較例として開示している「従来例の実施形態に係る温度ヒューズ」とは、上記[背景技術]に開示している従来例の実施形態に係る温度ヒューズであり、[発明が解決しようとする課題]を有する温度ヒューズである。
図1〜図3は本発明の一実施形態に係る温度ヒューズに関する図であり、実施例1〜5として説明する。図4〜図6は従来例の実施形態に係る温度ヒューズに関する図であり、比較例1〜5として説明する。表1〜5は、上記する評価方法により得られた実施例1〜5および比較例1〜5それぞれの実験データの結果をまとめた表である。
【0044】
まず、各実施例および比較例にて行ったオーバーロード特性および耐圧特性の評価実験について説明する。
【0045】
合金に熱エネルギーを一定の速度で加えると固相または液相状態を保つ限り、その熱エネルギーが昇温のみに費やされる。そして、溶け始めると、そのエネルギーの一部が相変化にも費やされつつ昇温され、液相化が完了すると、相状態不変のもとで昇温のみに熱エネルギーが費やされ、この昇温/熱エネルギーの状態は示差走査熱量分析〔基準試料(不変化)と測定試料をNガス容器内に納め、容器ヒータに電力を供給して両試料を一定速度で昇温させ、測定試料の状態変化に伴う熱エネルギー入力量の変化を示差熱電対により検出する分析であり、以下、「DSC」と称す〕により求めることができる。
DSC測定の結果は合金組成により異なり、各種組成のBi−In−Sn系合金のDSCを測定した場合、最大吸熱ピーク点の近傍で低融点可溶合金40を集中的に溶断動作させ得、しかも優れたオーバーロード特性および耐圧特性が得られる。
【0046】
本発明に対する評価実験では、低融点可溶合金40の最大吸熱ピーク温度(以下、「DSCピーク温度」と称す)は、昇温速度5度/minの条件でDSCにより測定した。
【0047】
また、試料数を50箇とし、0.1アンペアの検知電流を通電しつつ、昇温速度1度/minのオイルバスに浸漬し、低融点可溶合金40の溶断による通電遮断時のオイル温度Toを測定し、To度を温度ヒューズの低融点可溶合金40の動作温度とした。
【0048】
(ホ) 実施例と比較例との対比
オーバーロード特性及び温度ヒューズ動作後の絶縁安定性、所謂、温度ヒューズ動作時の異常モードに対する評価は、IEC60691に規定されたオーバーロード試験法及び耐圧試験法に準じた試験(以下、単に「オーバーロード試験」と称す)に基づき評価した(オーバーロード試験前の湿度試験は省略した)。
すなわち、試料に1.1×定格電圧、1.5×定格電流を印加しながら周囲温度を(2±1)K/minの速度で上昇させて動作させた際の破壊や物理的損傷の有無を確認した。リード線間が定格電圧×2(500V)に1分間耐え、かつ動作後のヒューズボディーに巻着した金属箔とリード線間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間耐えたものを耐圧特性に対し合格とし、また直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード線間の絶縁抵抗が0.2MΩ以上で、かつ動作後のヒューズボディーに巻着した金属箔とリード線間の絶縁抵抗が2MΩ以上のものを絶縁特性に対し合格とし、耐圧特性及び絶縁特性共に合格したものを絶縁安全性に合格とした。試料数を50箇とし、50箇全てが絶縁安定性に合格した場合のみを○、1箇でも不合格となった場合を×と評価した。
【実施例1】
【0049】
実施例1として、図1(a)に示す定格電圧が250Vのアキシャル型温度ヒューズ100aについて、オーバーロード特性および耐圧特性の評価実験を行った。
実施例1に係るアキシャル型温度ヒューズ100aは、絶縁ケース50内にて、一方のリード線10の一端部10aおよび他方のリード線20の他端部20bは、互いに所定の間隔Mを隔てて長手方向直列状に対向し、低融点可溶合金40により接合されている。このとき、低融点可溶合金40の表面40bと該絶縁ケース50の幅方向一方側の壁内面50dとの間、低融点可溶合金40の表面40bと該絶縁ケース50の幅方向他方側の壁内面50eとの間にそれぞれに空間P・Pを設けてあり、その空間Pを介して、低融点可溶合金40と該絶縁ケース50とが非接触状態にある。
さらに、実施例1に係る温度ヒューズ100aは、絶縁ケース50内において、一対のリード線10・20上両方に分割フラックス35・35がそれぞれ塗布され、一方のリード線10上の分割フラックス35と、他方のリード線20上の分割フラックス35とが、低融点可溶合金40を間に介して互いに長手方向に間隔を隔てている。
【0050】
次に、実施例1および比較例1において、オーバーロード試験で使用したアキシャル型温度ヒューズ100aの各構成部材の材料について説明する。
実施例1および比較例1において評価したアキシャル型温度ヒューズ100aについて、低融点可溶合金40は、135度近辺で動作するIn−Sn−Bi三元系で配合した低融点合金を使用し、外径1mmφ、長さ2mmで、かつ、その合金ベースは質量百分率のもとでIn2%、Sn46%、Bi52%の組成からなる合金を使用した。
また、絶縁ケース50が外径3mmφ、内径2mmφ、ケース長さ13.2mmのアルミナセラミック管、リード線10・20が外径1mmφのSnメッキ軟銅線、分割フラックス35はロジン系フラックスで、封着剤70に常温硬化型のエポキシ樹脂を使用した。
【比較例1】
【0051】
実施例1に対し、フラックスを分割せず低融点可溶合金のほぼ全域に塗布している以外、実施例1と同様に温度ヒューズを製造した。実施例1および比較例1のアキシャル型温度ヒューズ100aはいずれも定格電圧が250Vであるのに対し、実施例1の定格電流は6.0A、比較例1の定格電流は3.0Aとした。
実施例1および比較例1それぞれに流した試験電流は、定格電流の1.5倍、つまり、実施例1のアキシャル型温度ヒューズ100aに対しては9.0A、比較例1のアキシャル型温度ヒューズ100aに対しては4.5Aの試験電流を流して実験を行った。
【0052】
上記実施例1、比較例1の実験結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
[実施例1、比較例1の実験結果について]
実施例1の温度ヒューズにおいては、前記したオーバーロード試験を行っても、破壊等の物理的損傷を全く伴うことなく動作させ得た。そのため、外観の評価は○であった。この動作後の耐圧試験についても、リード線間が定格電圧×2(500V)に1分間以上耐え、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間以上耐えたことから合格であり、絶縁特性についても直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード線間の絶縁抵抗が0.2MΩ以上で、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間の絶縁抵抗値が2MΩ以上であって、共に合格であることから耐圧特性、絶縁安定性の評価は○であった。
このように良好なオーバーロード特性及び動作後の絶縁安定性が得られた理由は、前記通電昇温中においてもリード線上の長手方向二箇所に所定の間隔を隔てて、フラックスを分割させて塗布する構成であるために、動作直後に発生したアーク熱が、分割フラックスそれぞれに分散して熱を伝達し、動作直後のアーク発生がよく抑制されて急激な昇温が発生し難くなっている。このため、それに起因するフラックスの気化に伴う圧力上昇やフラックスの炭化等が抑制され、物理的破壊が惹起されることもなく、溶融合金や炭化フラックスの通電動作による飛散等もよく抑制でき、充分な絶縁距離を確保できたためである。
したがって、絶縁ケース内を炭化フラックスの浮遊または飛散を抑えることができるため、浮遊状態の炭化フラックスを通じてリード線間がアーク電流により再導通することを防止できる。
また、浮遊状態の炭化フラックスが従来に比べて非常に少なくすることができるため、絶縁ケースの壁内面に付着したとしても、絶縁ケースの壁内面に付着した炭化フラックスとリード線との間にアーク電流の導通経路が形成されることは抑えられ、絶縁ケースまたは温度ヒューズが破損してしまう可能性を防ぐことができる。
なお、DSC測定によるDSCピーク温度は135度であった。
【0055】
しかしながら、比較例1の温度ヒューズにおいては、実施例1に比べ、オーバーロード試験及び耐圧試験に対しては、温度ヒューズに定格電流以上の過負荷となる試験電流を加電し動作させたところ、破壊や絶縁不良が多発し、定格電流以上での使用は難しい結果となり、外観、耐圧特性、および、絶縁安定性の評価は×であった。その理由は、比較例1の温度ヒューズは、図4に示すように、絶縁ケース内のリード線上および低融点可溶合金上の両方のほぼ全域に亘ってフラックスを塗布する構成であったために、動作直後にアークが発生し、一塊のフラックスにアーク熱が伝達し、局所的且つ急激な昇温のためにフラックスが炭化し、動作時に飛散した合金や炭化フラックスに起因しての絶縁距離不保持のために絶縁抵抗値が低く、電圧印加時、再導通して絶縁破壊に至ったと推定される。
【実施例2】
【0056】
次に、実施例2として、図1(b)に示す定格電圧が250Vのアキシャル型温度ヒューズ100aについて、オーバーロード特性および耐圧特性の評価実験を行った。
実施例2に係るアキシャル型温度ヒューズ100aは、絶縁ケース50内にて、一方のリード線10の一端部10aおよび他方のリード線20の他端部20bは、互いに所定の間隔Mを隔てて長手方向直列状に対向し、低融点可溶合金40により接合されている。このとき、低融点可溶合金40の表面40bと該絶縁ケース50の幅方向一方側の壁内面50dとの間、低融点可溶合金40の表面40bと該絶縁ケース50の幅方向他方側の壁内面50eとの間にそれぞれに空間P・Pを設けてあり、その空間Pを介して、低融点可溶合金40と該絶縁ケース50とが非接触状態にある。
さらに、実施例2に係る温度ヒューズ100aは、絶縁ケース50内において、一対のリード線10・20上両方に分割フラックス35・35がそれぞれ塗布され、一方のリード線10上の分割フラックス35と、他方のリード線20上の分割フラックス35とが、低融点可溶合金40を間に介して互いに長手方向に間隔を隔てている。
絶縁ケース50の開口部50a・50bと、その位置の開口部50a・50bを挿通している各リード線10・20とは、封着剤70・70により封着している。
そのうえ、その封着されている長手方向一方の封着剤70の内周側部70aと、長手方向一方のリード線10上に塗布されている分割フラックス35の長手方向の側面部35aと、が接触または対向するように近接している。また、封着されている長手方向他方の封着剤70の内周側部70bと、長手方向他方のリード線20上に塗布されている分割フラックス35の長手方向の側面部35bと、が接触または対向するように近接している。
【0057】
次に、実施例2および比較例2において、オーバーロード試験で使用したアキシャル型温度ヒューズ100aの各構成部材の材料について説明する。
実施例2および比較例2において評価したアキシャル型温度ヒューズ100aについて、低融点可溶合金40は、In−Sn−Bi三元系で配合した低融点合金を使用し、線径が0.6mmφで、かつ、その合金ベースは質量百分率のもとでIn48.2%、Sn44.4%、Bi7.4%の組成からなる合金を使用した。
また、絶縁ケース50が外径2.5mmφ、内径1.5mmφ、ケース長さ9mmのアルミナセラミック管、リード線10・20が外径0.6mmφのSnメッキ軟銅線、分割フラックス35はロジン系フラックスで、封着剤70に常温硬化型のエポキシ樹脂を使用した。
【比較例2】
【0058】
実施例2に対し、フラックスを分割せず低融点可溶合金のほぼ全域に塗布している以外、実施例2と同様に温度ヒューズを製造した。実施例2および比較例2のアキシャル型温度ヒューズ100aはいずれも定格電圧が250Vであるのに対し、実施例2の定格電流は4.5A、比較例2の定格電流は2.5Aとした。
実施例2および比較例2それぞれに流した試験電流は、定格電流の1.5倍、つまり、実施例2のアキシャル型温度ヒューズ100aに対しては6.75A、比較例2のアキシャル型温度ヒューズ100aに対しては3.75Aの試験電流を流して実験を行った。
【0059】
上記実施例2、比較例2の実験結果を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
[実施例2、比較例2の実験結果について]
実施例2の温度ヒューズにおいては、前記したオーバーロード試験を行っても、破壊等の物理的損傷を全く伴うことなく動作させ得た。そのため、外観の評価は○であった。この動作後の耐圧試験についても、リード線間が定格電圧×2(500V)に1分間以上耐え、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間以上耐えたことから合格であり、絶縁特性についても直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード線間の絶縁抵抗が0.2MΩ以上で、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間の絶縁抵抗値が2MΩ以上であって、共に合格であることから耐圧特性、絶縁安定性の評価は○であった。
このように良好なオーバーロード特性及び動作後の絶縁安定性が得られた理由は、前記通電昇温中においてもリード線上の長手方向二箇所に所定の間隔を隔てて、フラックスを分割させて塗布する構成であるために、動作直後に発生したアーク熱が、分割フラックスそれぞれに分散して熱を伝達し、動作直後のアーク発生がよく抑制されて急激な昇温が発生し難くなっている。このため、それに起因するフラックスの気化に伴う圧力上昇やフラックスの炭化等が抑制され、物理的破壊が惹起されることもなく、溶融合金や炭化フラックスの通電動作による飛散等もよく抑制でき、充分な絶縁距離を確保できたためである。
したがって、絶縁ケース内を炭化フラックスの浮遊または飛散を抑えることができるため、浮遊状態の炭化フラックスを通じてリード線間がアーク電流により再導通することを防止できる。
また、浮遊状態の炭化フラックスが従来に比べて非常に少なくすることができるため、絶縁ケースの壁内面に付着したとしても、絶縁ケースの壁内面に付着した炭化フラックスとリード線との間にアーク電流の導通経路が形成されることは抑えられ、絶縁ケースまたは温度ヒューズが破損してしまう可能性を防ぐことができる。
特に、実施例2の構成は、実施例1に比べて、分割フラックス35・35が長手方向中央部Oよりも長手方向外側に離れた位置にあるので、仮に分割フラックス35が炭化したとしても、その炭化フラックスが絶縁ケース50の長手方向中央部Oにきて再導通経路となる虞は少ない。
【0062】
しかしながら、比較例2の温度ヒューズにおいては、実施例2に比べ、オーバーロード試験及び耐圧試験に対しては、温度ヒューズに定格電流以上の過負荷となる試験電流を加電し動作させたところ、破壊や絶縁不良が多発し、定格電流以上での使用は難しい結果となり、外観、耐圧特性、および、絶縁安定性の評価は×であった。その理由は、比較例2の温度ヒューズは、図4に示すように、絶縁ケース内のリード線上および低融点可溶合金上の両方のほぼ全域に亘ってフラックスを塗布する構成であったために、動作直後にアークが発生し、一塊のフラックスにアーク熱が伝達し、局所的且つ急激な昇温のためにフラックスが炭化し、動作時に飛散した合金や炭化フラックスに起因しての絶縁距離不保持のために絶縁抵抗値が低く、電圧印加時、再導通して絶縁破壊に至ったと推定される。
【実施例3】
【0063】
次に、実施例3として、図1(c)に示す定格電圧が250Vのアキシャル型温度ヒューズ100aについて、オーバーロード特性および耐圧特性の評価実験を行った。
実施例3に係るアキシャル型温度ヒューズ100aは、絶縁ケース50内にて、一方のリード線10の一端部10aおよび他方のリード線20の他端部20bは、互いに所定の間隔Mを隔てて長手方向直列状に対向し、低融点可溶合金40により接合されている。このとき、低融点可溶合金40の表面40bと該絶縁ケース50の幅方向一方側の壁内面50dとの間、低融点可溶合金40の表面40bと該絶縁ケース50の幅方向他方側の壁内面50との間にそれぞれに空間P・Pを設けてあり、その空間Pを介して、低融点可溶合金40と該絶縁ケース50とが非接触状態にある。
さらに、絶縁ケース50内の低融点可溶合金40上に、分割フラックス35・35が長手方向に間隔を隔てて二箇所に塗布されている。
【0064】
次に、実施例3および比較例3において、オーバーロード試験で使用したアキシャル型温度ヒューズ100aの各構成部材の材料について説明する。
実施例3および比較例3において評価したアキシャル型温度ヒューズ100aについて、低融点可溶合金40は、In−Sn−Bi三元系で配合した低融点合金を使用し、線径が0.6mmφで、かつ、その合金ベースは質量百分率のもとでIn48.2%、Sn44.4%、Bi7.4%の組成からなる合金を使用した。
また、絶縁ケース50が外径2mmφ、内径1.3mmφ、ケース長さ6mmのアルミナセラミック管、リード線10・20が外径0.53mmφのSnメッキ軟銅線、分割フラックス35はロジン系フラックスで、封着剤70に常温硬化型のエポキシ樹脂を使用した。
【比較例3】
【0065】
実施例3に対し、フラックスを分割せず低融点可溶合金のほぼ全域に塗布している以外、実施例3と同様に温度ヒューズを製造した。実施例3および比較例3のアキシャル型温度ヒューズ100aはいずれも定格電圧が250Vであるのに対し、実施例3の定格電流は2.0A、比較例3の定格電流は1.2Aとした。
実施例3および比較例3それぞれに流した試験電流は、定格電流の1.5倍、つまり、実施例3のアキシャル型温度ヒューズ100aに対しては3.0A、比較例3のアキシャル型温度ヒューズ100aに対しては1.8Aの試験電流を流して実験を行った。
【0066】
上記実施例3、比較例3の実験結果を表3に示す。
【0067】
【表3】

【0068】
[実施例3、比較例3の実験結果について]
実施例3の温度ヒューズにおいては、前記したオーバーロード試験を行っても、破壊等の物理的損傷を全く伴うことなく動作させ得た。そのため、外観の評価は○であった。この動作後の耐圧試験についても、リード線間が定格電圧×2(500V)に1分間以上耐え、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間以上耐えたことから合格であり、絶縁特性についても直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード線間の絶縁抵抗が0.2MΩ以上で、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間の絶縁抵抗値が2MΩ以上であって、共に合格であることから耐圧特性、絶縁安定性の評価は○であった。
このように良好なオーバーロード特性及び動作後の絶縁安定性が得られた理由は、前記通電昇温中においてもリード線上の長手方向二箇所に所定の間隔を隔てて、フラックスを分割させて塗布する構成であるために、動作直後に発生したアーク熱が、分割フラックスそれぞれに分散して熱を伝達し、動作直後のアーク発生がよく抑制されて急激な昇温が発生し難くなっている。このため、それに起因するフラックスの気化に伴う圧力上昇やフラックスの炭化等が抑制され、物理的破壊が惹起されることもなく、溶融合金や炭化フラックスの通電動作による飛散等もよく抑制でき、充分な絶縁距離を確保できたためである。
したがって、絶縁ケース内を炭化フラックスの浮遊または飛散を抑えることができるため、浮遊状態の炭化フラックスを通じてリード線間がアーク電流により再導通することを防止できる。
また、浮遊状態の炭化フラックスが従来に比べて非常に少なくすることができるため、絶縁ケースの壁内面に付着したとしても、絶縁ケースの壁内面に付着した炭化フラックスとリード線との間にアーク電流の導通経路が形成されることは抑えられ、絶縁ケースまたは温度ヒューズが破損してしまう可能性を防ぐことができる。
【0069】
しかしながら、比較例3の温度ヒューズにおいては、実施例3に比べ、オーバーロード試験及び耐圧試験に対しては、温度ヒューズに定格電流以上の過負荷となる試験電流を加電し動作させたところ、破壊や絶縁不良が多発し、定格電流以上での使用は難しい結果となり、外観、耐圧特性、および、絶縁安定性の評価は×であった。その理由は、比較例3の温度ヒューズは、図4に示すように、絶縁ケース内のリード線上および低融点可溶合金上の両方のほぼ全域に亘ってフラックスを塗布する構成であったために、動作直後にアークが発生し、一塊のフラックスにアーク熱が伝達し、局所的且つ急激な昇温のためにフラックスが炭化し、動作時に飛散した合金や炭化フラックスに起因しての絶縁距離不保持のために絶縁抵抗値が低く、電圧印加時、再導通して絶縁破壊に至ったと推定される。
【0070】
なお、実施例2と実施例3とは、いずれも低融点可溶合金の合金組成が同一であるため、DSC測定によるDSCピーク温度は105度と同一であった。
【実施例4】
【0071】
実施例4として、図2(a)、(b)に示す定格電圧が250Vのラジアル型温度ヒューズ100bについて、オーバーロード特性および耐圧特性の評価実験を行った。
実施例4に係るラジアル型温度ヒューズ100bは、一方のリード線10の一端部10aと他方のリード線20の一端部20aとを幅方向並列状に所定の間隔Nを隔てて互いに対向しており、その間を溶接されて低融点可溶合金40が各リード線10・20を幅方向に並行に接合している。
絶縁ケース55内において、幅方向一方側のリード線11上および低融点可溶合金40の幅方向一方側部上の両方、いわゆる幅方向一方側の接合部位38上に分割フラックス35が塗布されており、かつ、幅方向他方側のリード線11上および低融点可溶合金40の幅方向他方側部上の両方、いわゆる幅方向他方側の接合部位39上に分割フラックス35が塗布されている。
絶縁ケース55内にて、低融点可溶合金40の表面40bと長手方向の絶縁ケース55の内奥側端面55fとの間に空間Q、並びに、低融点可溶合金40の表面40bと絶縁ケース55の幅方向一方側および他方側の壁内面55dおよび55eとの間に空間R、Rのいずれか一方または両方をを設けて対向させ、絶縁ケース55の一方側のみに開口した開口部55aと、その位置の開口部55aを挿通している各リード10・20とを封着剤70で封着している。
【0072】
次に、実施例4および比較例4において、オーバーロード試験で使用したラジアル型温度ヒューズ100bの各構成部材の材料について説明する。
実施例4および比較例4において評価したラジアル型温度ヒューズ100bについて、低融点可溶合金40は、In−Sn−Bi三元系で配合した低融点合金を使用し、線径が0.6mmφで、かつ、その合金ベースは質量百分率のもとでIn48.2%、Sn44.4%、Bi7.4%の組成からなる合金を使用した。
また、絶縁ケース55は、6mm×7mm×3mmのアルミナセラミックケース、リード線10・20は、外径0.6mmφのSnメッキ軟銅線、分割フラックス35はロジン系フラックスで、封着剤70に常温硬化型のエポキシ樹脂を使用した。
【比較例4】
【0073】
実施例4に対し、図6に示すように、フラックスを分割せず低融点可溶合金のほぼ全域に塗布している以外、実施例4と同様に温度ヒューズを製造した。実施例4および比較例4のラジアル型温度ヒューズ100bはいずれも定格電圧が250Vであるのに対し、実施例4の定格電流は3.5A、比較例4の定格電流は2.5Aとした。
実施例4および比較例4それぞれに流した試験電流は、定格電流の1.5倍、つまり、実施例4のラジアル型温度ヒューズ100bに対しては5.25A、比較例4のラジアル型温度ヒューズ100bに対しては3.75Aの試験電流を流して実験を行った。
【0074】
上記実施例4、比較例4の実験結果を表4に示す。
【0075】
【表4】

【0076】
[実施例4、比較例4の実験結果について]
実施例4の温度ヒューズにおいては、前記したオーバーロード試験を行っても、破壊等の物理的損傷を全く伴うことなく動作させ得た。そのため、外観の評価は○であった。この動作後の耐圧試験についても、リード線間が定格電圧×2(500V)に1分間以上耐え、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間以上耐えたことから合格であり、絶縁特性についても直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード線間の絶縁抵抗が0.2MΩ以上で、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間の絶縁抵抗値が2MΩ以上であって、共に合格であることから耐圧特性、絶縁安定性の評価は○であった。
このように良好なオーバーロード特性及び動作後の絶縁安定性が得られた理由は、前記通電昇温中においてもリード線上の長手方向二箇所に所定の間隔を隔てて、フラックスを分割させて塗布する構成であるために、動作直後に発生したアーク熱が、分割フラックスそれぞれに分散して熱を伝達し、動作直後のアーク発生がよく抑制されて急激な昇温が発生し難くなっている。このため、それに起因するフラックスの気化に伴う圧力上昇やフラックスの炭化等が抑制され、物理的破壊が惹起されることもなく、溶融合金や炭化フラックスの通電動作による飛散等もよく抑制でき、充分な絶縁距離を確保できたためである。
したがって、絶縁ケース内を炭化フラックスの浮遊または飛散を抑えることができるため、浮遊状態の炭化フラックスを通じてリード線間がアーク電流により再導通することを防止できる。
また、浮遊状態の炭化フラックスが従来に比べて非常に少なくすることができるため、絶縁ケースの壁内面に付着したとしても、絶縁ケースの壁内面に付着した炭化フラックスとリード線との間にアーク電流の導通経路が形成されることは抑えられ、絶縁ケースまたは温度ヒューズが破損してしまう可能性を防ぐことができる。
【0077】
しかしながら、比較例4の温度ヒューズにおいては、実施例4に比べ、オーバーロード試験及び耐圧試験に対しては、温度ヒューズに定格電流以上の過負荷となる試験電流を加電し動作させたところ、破壊や絶縁不良が多発し、定格電流以上での使用は難しい結果となり、外観、耐圧特性、および、絶縁安定性の評価は×であった。その理由は、比較例4の温度ヒューズは、図6に示すように、絶縁ケース内のリード線上および低融点可溶合金上の両方のほぼ全域に亘ってフラックスを塗布する構成であったために、動作直後にアークが発生し、一塊のフラックスにアーク熱が伝達し、局所的且つ急激な昇温のためにフラックスが炭化し、動作時に飛散した合金や炭化フラックスに起因しての絶縁距離不保持のために絶縁抵抗値が低く、電圧印加時、再導通して絶縁破壊に至ったと推定される。
【実施例5】
【0078】
実施例5として、図2(c)、(d)に示す定格電圧が250Vのラジアル型温度ヒューズ100bについて、オーバーロード特性および耐圧特性の評価実験を行った。
実施例5に係るラジアル型温度ヒューズ100bは、一方のリード線10の一端部10aと他方のリード線20の一端部20aとを幅方向並列状に所定の間隔Nを隔てて互いに対向させ、一方のリード線10の一端部10aと他方のリード線20の一端部20aの間を溶接して一対のリード線10・20の端部同士10a・20aを幅方向に並行に低融点可溶合金40で接合している。
さらに、絶縁ケース55内において、幅方向一方側の折曲部12上および幅方向他方側の折曲部22上の両方に、それぞれ分割フラックス35・35を塗布している。
また、絶縁ケース55内にて、低融点可溶合金40の表面40bと長手方向の絶縁ケース55の内奥側端面55fとの間に空間Q、並びに、低融点可溶合金40の表面40bと絶縁ケース55の幅方向一方側および他方側の壁内面55dおよび55eとの間に空間R、Rのいずれか一方または両方を設けて対向させ、絶縁ケース55の一方側のみに開口した開口部55aと、その位置の開口部55aを挿通している各リード10・20とを封着剤70で封着している。
なお、絶縁ケース55内において、一対のリード線10・20の間に接合される低融点可溶合金40の幅方向の中心部は、その絶縁ケース55の幅方向の中心部Lに重なるように位置している。図2(c)において、絶縁ケース55の幅方向側部から絶縁ケース55の幅方向の中心部Lにかけて、幅方向一方側および他方側からも同位置に低融点可溶合金40の幅方向の中心部が位置している(その寸法を符号「E」で示す)。
なお、ここでいう「低融点可溶合金40の幅方向の中心部」が「絶縁ケース55の幅方向の中心部L」に「重なるように位置している」の「重なる」という文言は、互いの中心部が完全一致という意味だけではなく、重なりのズレが多少大きいまたは少ない寸法である場合も含む。
つまり、絶縁ケース55の中心部Lを境に、幅方向一方側に位置する低融点可溶合金40の体積や幅方向の寸法、幅方向他方側に位置する低融点可溶合金40の体積や幅方向の寸法、それぞれ互いの値の公差の範囲を逸脱しない程度の寸法を含む。
このように構成することにより、低融点可溶合金40が一対のリード線10・20の端部同士10a・20a間を溶融分断するときに、低融点可溶合金40が絶縁ケース55内にて体積を偏らせることなく、溶融分断させることができる。したがって、偏って分断したことにより生じる不具合を未然に防止することができる。
【0079】
次に、実施例5および比較例5において、オーバーロード試験で使用したラジアル型温度ヒューズ100bの各構成部材の材料について説明する。
実施例5および比較例5において評価したラジアル型温度ヒューズ100bについて、低融点可溶合金40は、In−Sn−Bi三元系で配合した低融点合金を使用し、線径が0.6mmφで、かつ、その合金ベースは質量百分率のもとでIn48.2%、Sn44.4%、Bi7.4%の組成からなる合金を使用した。
また、絶縁ケース55は、4mm×5mm×2mmのアルミナセラミックケース、リード線10・20は、外径0.53mmφのSnメッキ軟銅線、分割フラックス35はロジン系フラックスで、封着剤70に常温硬化型のエポキシ樹脂を使用した。
【比較例5】
【0080】
実施例5に対し、図6に示すように、フラックスを分割せず低融点可溶合金のほぼ全域に塗布している以外、実施例5と同様に温度ヒューズを製造した。実施例5および比較例5のラジアル型温度ヒューズ100bはいずれも定格電圧が250Vであるのに対し、実施例5の定格電流は1.7A、比較例5の定格電流は1.2Aとした。
実施例5および比較例5それぞれに流した試験電流は、定格電流の1.5倍、つまり、実施例5のラジアル型温度ヒューズ100bに対しては2.55A、比較例5のラジアル型温度ヒューズ100bに対しては1.8Aの試験電流を流して実験を行った。
【0081】
上記実施例5、比較例5の実験結果を表5に示す。
【0082】
【表5】

【0083】
[実施例5、比較例5の実験結果について]
実施例5の温度ヒューズにおいては、前記したオーバーロード試験を行っても、破壊等の物理的損傷を全く伴うことなく動作させ得た。そのため、外観の評価は○であった。この動作後の耐圧試験についても、リード線間が定格電圧×2(500V)に1分間以上耐え、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間が定格電圧×2+1000V(1500V)に1分間以上耐えたことから合格であり、絶縁特性についても直流電圧値が定格電圧×2(500V)印加時のリード線間の絶縁抵抗が0.2MΩ以上で、かつ動作後のヒューズボディーに巻いた金属箔とリード線間の絶縁抵抗値が2MΩ以上であって、共に合格であることから耐圧特性、絶縁安定性の評価は○であった。
このように良好なオーバーロード特性及び動作後の絶縁安定性が得られた理由は、前記通電昇温中においてもリード線上の長手方向二箇所に所定の間隔を隔てて、フラックスを分割させて塗布する構成であるために、動作直後に発生したアーク熱が、分割フラックスそれぞれに分散して熱を伝達し、動作直後のアーク発生がよく抑制されて急激な昇温が発生し難くなっている。このため、それに起因するフラックスの気化に伴う圧力上昇やフラックスの炭化等が抑制され、物理的破壊が惹起されることもなく、溶融合金や炭化フラックスの通電動作による飛散等もよく抑制でき、充分な絶縁距離を確保できたためである。
したがって、絶縁ケース内を炭化フラックスの浮遊または飛散を抑えることができるため、浮遊状態の炭化フラックスを通じてリード線間がアーク電流により再導通することを防止できる。
また、浮遊状態の炭化フラックスが従来に比べて非常に少なくすることができるため、絶縁ケースの壁内面に付着したとしても、絶縁ケースの壁内面に付着した炭化フラックスとリード線との間にアーク電流の導通経路が形成されることは抑えられ、絶縁ケースまたは温度ヒューズが破損してしまう可能性を防ぐことができる。
なお、実施例4と実施例5とは、いずれも低融点可溶合金の合金組成が同一であるため、DSCピーク温度は105度と同一であった。
【0084】
しかしながら、比較例5の温度ヒューズにおいては、実施例5に比べ、オーバーロード試験及び耐圧試験に対しては、温度ヒューズに定格電流以上の過負荷となる試験電流を加電し動作させたところ、破壊や絶縁不良が多発し、定格電流以上での使用は難しい結果となり、外観、耐圧特性、および、絶縁安定性の評価は×であった。その理由は、比較例5の温度ヒューズは、図6に示すように、絶縁ケース内のリード線上および低融点可溶合金上の両方のほぼ全域に亘ってフラックスを塗布する構成であったために、動作直後にアークが発生し、一塊のフラックスにアーク熱が伝達し、局所的且つ急激な昇温のためにフラックスが炭化し、動作時に飛散した合金や炭化フラックスに起因しての絶縁距離不保持のために絶縁抵抗値が低く、電圧印加時、再導通して絶縁破壊に至ったと推定される。
【0085】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変形または修正が可能である。
【0086】
例えば、上記実施形態では、図2の実施例4と実施例5との発明を組み合わせて、図3に示すような温度ヒューズ100bを製造することも可能である。図3(a)、(b)は、本発明の他の実施形態に係るラジアル型温度ヒューズの断面図であり、(a)は平面断面図、(b)はその側面断面図である。
この実施形態に係るラジアル型温度ヒューズ100bは、絶縁ケース55内において、複数の分割フラックス35のうち少なくとも一つ以上は低融点可溶合金40上に塗布されており、残りの分割フラックス35は一方および他方のリード線10(20)上の少なくとも一方に塗布されていることを特徴とする温度ヒューズ100bに応用することも可能である(本実施形態では、低融点可溶合金40上、リード線10上それぞれに分割フラックス35が一つずつ塗布している)。
【0087】
また、例えば、図3(c)に示すラジアル型温度ヒューズ100bのように、絶縁ケース55内において、一方のリード線10上および低融点可溶合金40の一方側部上の両方にまたがる一方側の接合部位39上に分割フラックス35が塗布されており、かつ、他方側のリード線20上および低融点可溶合金40の他方側部上の両方にまたがる他方側の接合部位39上に分割フラックス35が塗布されている温度ヒューズ100bを上記実施形態を応用して製造することができる。
このように構成することにより、リード線10・20を加工することなく、温度ヒューズを製造することができ、急ぎの需要に対応することができるだけでなく、時間的なロスの損失を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、家庭電気製品、OA機器、AV機器(オーディオ・ビジュアル機器)、コンピュータ、通信機器、計測機器および、パーソナル機器の他、モバイル機器や車両部品の電源である二次電池等に利用することができる。最近では、携帯電話等のモバイル機器の高性能化に伴い、各種機器の電源である二次電池、例えば、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池の小型・高容量化が進み、それらの電池の安全保護対策が重要となっている。このような中、本発明は、繰返し充放電が可能な電池、すなわち二次電池の過熱保護に最適な小形・薄形化した保護部品として利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
10 一方のリード線
10a 一端部
20 他方のリード線
20b 他端部
35・35・・・ 分割フラックス
40 低融点可溶合金
70 封着剤
50・55 絶縁ケース
50a・50b・55a 開口部
50d 絶縁ケース50の幅方向一方側の壁内面
50e 絶縁ケース50の幅方向他方側の壁内面
55d 絶縁ケース55の幅方向一方側の壁内面
55e 絶縁ケース55の幅方向他方側の壁内面
55f 絶縁ケース55の長手方向の内奥側端面
100 温度ヒューズ
100a アキシャル型温度ヒューズ
100b ラジアル型温度ヒューズ
M・N 所定の間隔
P・Q・R 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のリード線の端部と他方のリード線の端部とが間隔を隔てて互いに対向する一対のリード線と、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部の間に溶接されてそのリード線の端部同士を接合する低融点可溶合金と、
絶縁ケースの開口部からその絶縁ケース内に挿入される前記リード線上および前記低融点可溶合金上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて塗布されている分割フラックスと、
前記絶縁ケースの開口部と、その位置の開口部を挿通している各リード線とを封着する封着剤と、
を有していることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度ヒューズであって、
前記一対のリード線の間に接合される前記低融点可溶合金は、前記絶縁ケース内において、その絶縁ケースの長手方向または長手方向に垂直な幅方向の寸法の中心部に位置していることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項3】
請求項1に記載の温度ヒューズであって、
前記絶縁ケース内の前記一対のリード線上両方に前記分割フラックスが塗布されており、
一方のリード線上の分割フラックスと、他方のリード線上の分割フラックスとが、前記低融点可溶合金を間に介して、互いに間隔を隔てていることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項4】
請求項1に記載の温度ヒューズであって、
前記絶縁ケース内の前記低融点可溶合金上に、前記分割フラックスが少なくとも二箇所それぞれ互いに間隔を隔てて塗布されていることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の温度ヒューズであって、
前記絶縁ケース内において、前記複数の分割フラックスのうち少なくとも一つ以上は前記低融点可溶合金上に塗布されており、残りの分割フラックスは前記一方および他方のリード線上の少なくとも一方に塗布されていることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の温度ヒューズであって、
前記絶縁ケース内において、前記一方のリード線上および前記低融点可溶合金の一方側部上の両方にまたがる一方側の接合部位上に分割フラックスが塗布されており、かつ、前記他方側のリード線上および前記低融点可溶合金の他方側部上の両方にまたがる他方側の接合部位上に分割フラックスが塗布されていることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の温度ヒューズであって、
長手方向一方側および他方側それぞれに開口部を有する前記絶縁ケースと、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部とが長手方向直列状に間隔を隔てて互いに対向する一対のリード線と、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部の間に溶接されてそのリード線の端部同士を接合する低融点可溶合金と、
前記絶縁ケースの開口部からその絶縁ケース内に挿入される前記リード線上および前記低融点可溶合金上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて塗布されている分割フラックスと、
前記絶縁ケースの開口部と、その位置の開口部を挿通している各リード線とを封着する封着剤と、
を有し、
前記絶縁ケース内にて、前記低融点可溶合金の表面と、その絶縁ケースの幅方向一方側および他方側の壁内面との間に幅方向の空間を設けて対向していることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項8】
請求項7に記載の温度ヒューズであって、
前記一方の封着剤の長手方向内周側部と、前記一方のリード線上に塗布されている分割フラックスの長手方向の側面部とが接触または対向するように近接していて、
前記他方の封着剤の長手方向内周側部と、前記他方のリード線上に塗布されている分割フラックスの長手方向の側面部とが接触または対向するように近接していることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項9】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の温度ヒューズであって、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部とが幅方向並列状に間隔を隔てて互いに対向する一対のリード線と、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部の間に溶接されてそのリード線の端部同士を接合する低融点可溶合金と、
前記一対のリード線およびその端部同士間を接合している低融点可溶合金が挿入される開口部を有する前記絶縁ケースと、
前記絶縁ケース内に挿入される前記リード線上および前記低融点可溶合金上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて塗布されている分割フラックスと、
前記絶縁ケースの開口部と、その位置の開口部を挿通している各リード線とを封着する封着剤と、
を有し、
前記絶縁ケース内にて、前記低融点可溶合金の表面と前記絶縁ケースの長手方向の内奥側端面との間、
並びに、
前記一方のリード線の端部の表面と前記絶縁ケースの幅方向一方側の壁内面との間、および、前記他方のリード線の端部の表面と前記絶縁ケースの幅方向他方側の壁内面との間、のいずれか一方または両方に空間を備えていることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項10】
請求項9に記載の温度ヒューズであって、
各リード線を折曲することにより各リード線は折曲部を設け、その折曲部を境に、前記低融点可溶合金側の各リード線の幅方向の間隔の寸法の大きさよりも前記絶縁ケースの開口部側の各リード線の幅方向の間隔の寸法の大きさを広く設定し、かつ、前記開口部側の各リード線それぞれが前記絶縁ケースの幅方向壁内面に接触していることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の温度ヒューズであって、
前記絶縁ケース内にて、前記低融点可溶合金の表面と前記絶縁ケースの長手方向の内奥側端面との間に空間を、
並びに、
前記一方のリード線の端部の表面と前記絶縁ケースの幅方向一方側の壁内面との間、および、前記他方のリード線の端部の表面と絶縁ケースの幅方向他方側の壁内面との間のいずれか一方または両方に空間を、
それぞれ設けており、
前記低融点可溶合金の表面と前記絶縁ケースの長手方向の内奥側端面、
並びに、
前記一方のリード線の端部の表面と前記絶縁ケースの幅方向一方側の壁内面、および、前記他方のリード線の端部の表面と前記絶縁ケースの幅方向他方側の壁内面、
とが非接触状態にあるように設定していることを特徴とする温度ヒューズ。
【請求項12】
一対のリード線において、一方のリード線の端部と他方のリード線の端部とを間隔を隔てて互いに対向させ、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部の間を溶接して前記一対のリード線の端部同士を低融点可溶合金で接合し、
前記リード線上および前記低融点可溶合金上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて分割フラックスを塗布し、
前記分割フラックスを塗布した前記リード線および前記低融点可溶合金のいずれか一方または両方を、挿入用に開口した開口部を有する前記絶縁ケースに挿入し、
絶縁ケース内にて、前記低融点可溶合金の表面と、該絶縁ケースの壁内面との間に空間を設けて対向させ、
前記絶縁ケースの開口部と、その位置の開口部を挿通している各リード線とを封着剤で封着することを特徴とする温度ヒューズの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の温度ヒューズの製造方法であって、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部とを長手方向直列状に間隔を隔てて互いに対向させ、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部の間を溶接して前記一対のリード線の端部同士を長手方向に低融点可溶合金で接合し、
前記リード線上および前記低融点可溶合金上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて分割フラックスを塗布し、
前記分割フラックスを塗布した前記リード線および前記低融点可溶合金のいずれか一方または両方を、長手方向一方側および他方側に開口した開口部を有する前記絶縁ケースに挿入し、
絶縁ケース内にて、前記低融点可溶合金の表面と、該絶縁ケースの壁内面との間の幅方向に空間を設けて対向させ、
前記絶縁ケースの開口部と、その位置の開口部を挿通している各リード線とを封着剤で封着することを特徴とする温度ヒューズの製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の温度ヒューズの製造方法であって、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部とを幅方向並列状に間隔を隔てて互いに対向させ、
前記一方のリード線の端部と前記他方のリード線の端部の間を溶接して前記一対のリード線の端部同士を幅方向に並行に低融点可溶合金で接合し、
前記リード線上および前記低融点可溶合金上のいずれか一方または両方に、少なくとも二箇所に間隔を隔てて分割フラックスを塗布し、
前記分割フラックスを塗布した前記リード線および前記低融点可溶合金のいずれか一方または両方を、長手方向一方側または他方側のいずれかが開口した開口部を有する絶縁ケースに挿入し、
前記絶縁ケース内にて、前記低融点可溶合金の表面と、該絶縁ケースの壁内面との間が長手方向および幅方向のいずれか一方または両方に空間を設けて対向させ、
前記絶縁ケースの一方側のみに開口した開口部と、その位置の開口部を挿通している各リード線とを封着剤で封着することを特徴とする温度ヒューズの製造方法。
【請求項15】
請求項12または請求項14に記載の温度ヒューズの製造方法であって、
各リード線を折曲することにより各リード線は折曲部を設け、その折曲部を境に、前記低融点可溶合金側の各リード線の幅方向の間隔の寸法の大きさよりも前記絶縁ケースの開口部側の各リード線の幅方向の間隔の寸法の大きさを広く設定し、かつ、前記開口部側の各リード線それぞれが前記絶縁ケースの幅方向壁内面に接触していることを特徴とする温度ヒューズの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−256569(P2012−256569A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129945(P2011−129945)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【特許番号】特許第4940366号(P4940366)
【特許公報発行日】平成24年5月30日(2012.5.30)
【出願人】(000225337)内橋エステック株式会社 (115)
【Fターム(参考)】