説明

温度ヒューズ

【課題】温度ヒューズにおいて、ヒューズ素子の表面とケースの内周面とが接触しないようにする。
【解決手段】温度ヒューズは、可溶部と、可溶部の両端からそれぞれ延伸する第1および第2のリード導体と、第1のリード導体に形成された第1の段部および第2のリード導体に形成された第2の段部と、可溶部と第1のリード導体と第2のリード導体とが一端の開口から挿入され、第1および第2のリード導体の端部が外部に導出された状態で、可溶部が収納される筒状のケースと、ケースの他端の近傍の内面に形成され、第1のリード導体側を係止する凸部と、第2のリード導体に挿通され、第2の段部により係止される蓋体とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度ヒューズに関する。例えば、可溶部を含むヒューズ素子の表面とケースの内周面とが接触しない温度ヒューズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気機器や電子機器などに対する熱的保護部品として温度ヒューズが使用されている。例えば、下記特許文献1および下記特許文献2には、両端からリード導体が延伸する可溶合金を、ケースの内部に収納した温度ヒューズが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−151873号公報
【特許文献2】特開平05−174680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度ヒューズの過電流に対する耐性を高め、定格電圧や定格電流を高くするには、ケースの内面と、可溶合金を含むヒューズ素子の表面とが離れていることが望ましい。温度ヒューズの可溶合金が溶断したときに発生するアーク放電により、可溶合金にコーティングされているフラックスが炭化する。ケースの内面とヒューズ素子の表面とが離れていることにより、炭化したフラックスを介して電流が流れることを防止でき、絶縁抵抗が低下することを防止できる。
【0005】
さらに、温度ヒューズが動作する際に発生するアーク放電により、溶断した可溶合金が飛散する。ケースの内面とヒューズ素子の表面とが離れていることにより、飛散した可溶合金を分散させてケースの内面に付着させることができる。このため、溶断した可溶合金による再導通を防止することができ、絶縁抵抗の低下を防止できる。さらに、温度ヒューズが動作する際に発生するアーク放電によりケースが破壊する場合がある。ケースの内面とヒューズ素子の表面とが離れていることによりアーク放電の影響を直接受けず、ケースの破壊を防止できる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されているような、両端を樹脂で封止するだけの温度ヒューズでは、ヒューズ素子を正確に位置決めすることができない。このため、温度ヒューズを樹脂で封止した際に、ケースの内面とヒューズ素子の表面とが接触してしまう問題があった。
【0007】
同様に、特許文献2に記載されているように、先端が凹部とされるリード線に可溶合金の先端を受け止めるだけでは、ヒューズ素子を正確に位置決めすることが困難である。特に、筒体内における感温素子の垂直方向の位置決めに治具を使用しなければならないという問題があった。
【0008】
したがって、本開示の目的の一つは、可溶合金等の可溶部の位置決めを正確に行うことができ、可溶部を含むヒューズ素子の表面とケースの内面とが接触しない温度ヒューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本開示は、例えば、
可溶部と、
可溶部の両端からそれぞれ延伸する第1および第2のリード導体と、
第1のリード導体に形成された第1の段部および第2のリード導体に形成された第2の段部と、
可溶部と第1のリード導体と第2のリード導体とが一端の開口から挿入され、第1および第2のリード導体の端部が外部に導出された状態で、可溶部が収納される筒状のケースと、
ケースの他端の近傍の内面に形成され、第1のリード導体側を係止する凸部と、
第2のリード導体に挿通され、第2の段部により係止される蓋体と
からなる温度ヒューズである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ヒューズ素子の表面とケースの内面とが接触しない。したがって、温度ヒューズが動作して可溶部が溶断した際に絶縁抵抗の低下をまねくことなく、温度ヒューズが適用される回路を確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本開示の第1の実施形態における温度ヒューズの構成例を示す略線図である。
【図2】本開示におけるヒューズ素子およびリード導体の一例を説明するための略線図である。
【図3】本開示におけるケースの一例を説明するための略線図である。
【図4】本開示における蓋体の一例を説明するための略線図である。
【図5】本開示の温度ヒューズの動作例を説明するための略線図である。
【図6】本開示の第2の実施形態における温度ヒューズの構成例を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、説明は、以下の順序で行う。
<第1の実施形態>
<第2の実施形態>
<変形例>
なお、以下に説明する実施の形態は、本開示の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本開示の範囲は、以下の説明において、特に本開示を限定する旨の記載がない限り、これらの実施の形態に限定されないものとする。
【0013】
<第1の実施形態>
「温度ヒューズの概要」
始めに、本開示の第1の実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態における温度ヒューズ1の断面の構成例を示す。温度ヒューズ1は、例えば、各種の電子機器の回路に組み込まれる。詳細は後述するが、機器の異常温度を感知すると温度ヒューズ1が動作し、回路に流れる電流を遮断する。なお、温度ヒューズ1が動作する温度は、65℃、75℃、100℃等、適宜、設定される。
【0014】
温度ヒューズ1は、例えば、断面がほぼ正方形である角筒状のケース2を有する。ケース2の一端には、例えば、ほぼ円形の開口が形成されている。ケース2の他端には、例えば、ほぼ正方形の開口が形成されている。図1に示す例では、ケース2の、図面に向かって右側の端面に、ほぼ円形の開口が形成されている。ケース2の、図面に向かって左側の端面に、ほぼ正方形の開口が形成されている。なお、開口の形状は、適宜、変更できる。
【0015】
ケース2のほぼ正方形の開口からケース2の内部に向かって、凹部C1が形成されている。凹部C1の底面のほぼ中央には、挿通孔H1が形成されている。この結果、ケース2の他端の近傍の内周面の全てに、凸部3が形成される。挿通孔H1の径は、後述するリード導体7の径よりやや大とされる。ケース2のほぼ円形の開口からケース2の内部に向かって、ほぼ円筒状の空間S1が形成されている。挿通孔H1を介して、凹部C1と空間S1とが連通している。
【0016】
空間S1には、可溶部4が収納されている。可溶部4の表面には、フラックス5がコーディングされている。なお、フラックス5がコーティングされた可溶部4を、適宜、ヒューズ素子6と称する。可溶部4の一端には、第1のリード導体であるリード導体7が溶接されている。可溶部4とリード導体7との溶接箇所(溶接部)からケース2の外部に向かって、リード導体7が延伸している。リード導体7の端部が、ケース2のぼほ正方形の開口を介してケース2の外部に導出されている。リード導体7には、第1の段部の一例である段部8が形成されている。
【0017】
リード導体7の径は、挿通孔H1の径よりやや小とされる。また、段部8の幅(リード導体7の延長方向と直交する方向の長さ)は、挿通孔H1の径よりやや大とされる。したがって、挿通孔H1にリード導体7が挿通されると、段部8は凸部3により係止される。
【0018】
可溶部4の他端には、第2のリード導体であるリード導体9が溶接されている。可溶部4とリード導体9との溶接部からケース2の外部に向かって、リード導体9が延伸している。リード導体9の端部が、ケース2のほぼ円形の開口を介してケース2の外部に導出されている。リード導体9には、第2の段部の一例である段部10が形成されている。
【0019】
リード導体9に対して、蓋体11が挿通されている。詳細は後述するが、蓋体11は、例えば、中空部を有する円盤状のものである。蓋体11の径は、ケース2のほぼ円形の開口の径よりやや小である。蓋体11の中空部の径は、リード導体9の径のよりやや大とされ、段部10の幅(リード導体9の延長方向と直交する方向の長さ)よりやや小とされる。リード導体9に挿通された蓋体11は、ほぼ円形の開口から空間S1に挿入され、空間S1に収納される。
【0020】
リード導体9に挿通された蓋体11は、空間S1において段部10により係止される。このとき、ケース2のほぼ円形の開口と蓋体11との間に空間S2が形成される。凹部C1および空間S2に対して、エポキシ樹脂等の封止剤がそれぞれ充填されて温度ヒューズ1が形成される。
【0021】
「温度ヒューズの組立方法」
温度ヒューズ1の組立方法の一例について説明する。なお、温度ヒューズ1の組立は、例えば、リード導体7およびリード導体9を可溶部4にそれぞれ溶接して一体化し、可溶部4にフラックス5をコーティングした上で行われる。はじめに、ケース2のほぼ円形の開口から空間S1に向かって、リード導体7が挿入される。リード導体7が挿入されていくと、ヒューズ素子6およびリード導体9の一部が順次、空間S1へと収納されていく。リード導体7は、挿通孔H1に挿通される。そして、凹部C1およびケース2のほぼ正方形の開口を介して、リード導体7の先端がケース2の外部に導出される。
【0022】
リード導体7がケース2の内部に挿入されていくと、凸部3により段部8が係止される。段部8が係止されることで、リード導体7をそれ以上、挿入することができなくなる。リード導体7における段部8の形成位置を適切に設定することで、段部8が係止された際のヒューズ素子6の位置をケース2の内部のほぼ中央とすることができる。
【0023】
続いて、蓋体11が、リード導体9の先端からリード導体9に対して挿通される。リード導体9に挿通された蓋体11は、ケース2のほぼ円形の開口を介して空間S1へと収納され、段部10により係止される。蓋体11によりヒューズ素子6が浮く状態で支持され、ヒューズ素子6の表面とケース2の内周面とが接触しない。
【0024】
続いて、凹部C1および空間S2にエポキシ樹脂等の封止剤が充填される。ケース2のほぼ正方形の開口を介して凹部C1に封止剤が充填される。ケース2のほぼ円形の開口を介して空間S2に封止剤が充填される。ここで、挿通孔H1にリード導体7が挿通されているため、ほぼ正方形の開口から充填された封止剤が、挿通孔H1を介して空間S1に流れ込むことはない。また、ほぼ円形の開口から充填された封止剤は蓋体11により遮断され、それ以上空間S1内に流れ込むことはない。充填された封止剤が硬化することで、温度ヒューズ1が組み立てられる。なお、上述した温度ヒューズ1の組立方法は一例であり、適宜、変更できる。例えば、はじめに蓋体11をリード導体9に挿通した後に、リード導体7等をケース2に対して挿入してもよい。
【0025】
以上のようにして形成される温度ヒューズ1は、ヒューズ素子6の表面とケース2の内面とが接触せず離れている。このため、耐絶縁性が増加する。さらに、ヒューズ素子6の表面とケース2の内周面とが離れているため、アーク放電により炭化したフラックスを介して電流が流れることを防止でき、絶縁抵抗が低下することを防止できる。
【0026】
さらに、ヒューズ素子6の表面とケース2の内周面とが離れているため、アーク放電により飛散した可溶合金を分散させてケースの内周面に付着させることができる。このため、溶断した可溶合金による再導通を防止することができ、絶縁抵抗の低下を防止できる。さらに、ヒューズ素子6の表面とケース2の内周面とが離れているため、温度ヒューズが動作する際に発生するアーク放電の影響を直接受けず、ケース2の破壊を防止できる。なお、温度ヒューズ1は、例えば、定格電圧:AC(Alternating Current)250V(ボルト)、定格電流:10A(アンペア)による耐性試験にも対応可能である。
【0027】
「ヒューズ素子およびリード導体」
次に、温度ヒューズ1の各部について詳細に説明する。図2は、ヒューズ素子6、リード導体7およびリード導体9の構成の一例を示す。上述したように、ヒューズ素子6は、可溶部4と、可溶部4にコーティングされたフラックス5とを含む。
【0028】
可溶部4の端部に対して、リード導体7の端部が溶接され、可溶部4の端部からリード導体7が延伸する。可溶部4の他方の端部に対して、リード導体9の端部が溶接され、可溶部4の他方の端部からリード導体9が延伸する。リード導体7およびリード導体9が可溶部4にそれぞれ溶接されることで、可溶部4の両端には、溶接部としての球状の膨らみが若干、生じる。
【0029】
可溶部4とリード導体7とは、例えば、抵抗溶接により溶接される。抵抗溶接では、リード導体7に電流を流し、その電流により可溶部4の端部を溶融させる。溶融した可溶部4の端部を冷却することで、可溶部4とリード導体7とが溶接される。同様に、可溶部4とリード導体9とは、例えば、抵抗溶接によって溶接される。
【0030】
可溶部4は、例えば、はんだ合金が使用される。近年、環境保護の観点から、カドミウム(Cd)や鉛(Pb)などの人体に有害な重金属を含有しない錫(Sn)−ビスマス(Bi)系などのはんだ合金が、可溶部4として使用される。なお、インジウム(In)や銅(Cu)が一部含まれるはんだ合金が、可溶部4として使用されてもよい。可溶部4の表面には、例えば、松脂(ロジン)を主成分とするフラックス5がコーティングされる。
【0031】
リード導体7は、例えば、錫メッキ軟銅線が使用される。リード導体7の径は、例えば、1mm(ミリメートル)である。リード導体7には、段部8が形成される。段部8は、例えば、ほぼ板状とされ、リード導体7の一部を加圧することで形成される。リード導体7の一部を加圧するだけなので、段部8を形成するために新たな部品を使用する必要がない。段部8の幅は、例えば、1.2mmとされる。段部8は、リード導体7の先端から例えば、1.6mmの箇所に形成される。段部8の長さ(リード導体7の延長方向と同一方向の長さ)は、例えば、1mmとされる。
【0032】
段部8の幅、長さ、形成箇所などは、温度ヒューズ1の大きさ等に応じて適宜、変更できる。例えば、図2に示す例では、可溶部4とリード導体7との溶接部から所定距離をもって、段部8が形成されている。所定距離をもたせず、例えば、可溶部4とリード導体7との溶接部の近傍から段部8が形成されてもよい。
【0033】
リード導体9は、例えば、錫メッキ軟銅線が使用される。リード導体9の径の大きさは、例えば、1mmである。リード導体9には、段部10が形成される。段部10は、例えば、ほぼ板状とされ、リード導体9の一部を加圧することで形成される。リード導体9の一部を加圧するだけなので、段部10を形成するために新たな部品を使用する必要がない。段部10の幅は、例えば、1.2mmとされる。段部10は、リード導体9の先端から例えば、1.6mmの箇所に形成され、長さ(リード導体9の延長方向と同一方向の長さ)は、例えば、1mmとされる。
【0034】
段部10の幅、長さ、形成箇所などは、温度ヒューズ1の大きさ等に応じて適宜、変更できる。例えば、図2に示す例では、可溶部4とリード導体9との溶接部から所定距離をもって段部10が形成されている。所定距離をもたせず、例えば、可溶部4とリード導体9との溶接部の近傍から段部10が形成されてもよい。
【0035】
「ケース」
次に、ケース2について説明する。図3Aは、ケース2の断面の一例を示し、図3Bは、ケース2の左側面を示す。ケース2は、例えば、角筒状とされる。ケース2は、円筒状など他の形状とされてもよい。ケース2の材料としては、例えば、セラミックスの一つであり、機械的強度、耐熱性、電気絶縁性、化学的安定性などに優れたアルミナセラミックス(Al23)が使用される。ケース2の材料として、樹脂等の他の材料が使用されてもよい。例えば、アルミナセラミックスの粉末を焼成加工することで、所望の形状のケース2が形成される。
【0036】
ケース2の他端には、ほぼ正方形の開口が形成されている。ほぼ正方形の開口を介してケース2の内部に向かって、凹部C1が形成される。凹部C1の底面のほぼ中央には挿通孔H1が形成される。挿通孔H1の径は、ほぼ正方形の開口の幅より小とされ、例えば、1.1mmとされる。この結果、ケース2の内周面の全てに凸部3が形成される。
【0037】
また、挿通孔H1の径は、リード導体7の径よりやや大きく、段部8の幅よりやや小さい。このため、リード導体7を挿通孔H1に対して挿通することができる。そして、挿通孔H1に対してリード導体7を挿通していくと、段部8が凸部3により係止される。
【0038】
なお、凸部3は、温度ヒューズ1の大きさやリード導体7に形成される段部8の位置などに応じて、適切な位置に形成される。凸部3の形状は、適宜、変更できる。ケース2の内周面の全てに凸部3が形成されていなくてもよい。例えば、ケース2が角筒状である場合には、ケース2の内部において対向する2面のみに凸部3が形成されるようにしてもよい。
【0039】
凹部C1に対して、エポキシ樹脂などの封止剤が充填される。封止剤は、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂が使用されてもよい。ケース2の内部に形成される凹部C1に封止剤が充填されることで、ケース2の内周面と封止剤との接着面積を増やすことができ、接合強度を高めることができる。なお、封止剤が充填されるときは、挿通孔H1にリード導体7が挿通されている。したがって、凹部C1に充填された封止剤が挿通孔H1を介して空間S1に流れ込むことはない。
【0040】
さらに、ケース2の内部に形成される凹部C1に対して封止剤が充填されて接合強度が向上するため、負荷に対する温度ヒューズ1の機械的強度が向上する。例えば、ケース2の外部に導出されたリード導体7にフォーミング加工がなされ、フォーミング加工にともなう負荷が封止剤に対してかかる場合に、負荷により封止剤が破壊されることを防止できる。
【0041】
ケース2の一端には、例えば、ほぼ円形である開口が形成されている。ほぼ円形の開口からケース2の内部に向かって、空間S1が形成される。空間S1は、例えば、円筒状とされる。挿通孔H1を介して、空間S1と凹部C1とが連通している。
【0042】
「蓋体」
次に、蓋体11について説明する。図4Aは、蓋体11の断面を示し、図4Bは、蓋体11の側面を示す。蓋体11の材料としては、例えば、機械的強度、耐熱性、電気絶縁性、化学的安定性などに優れ、セラミックスの一つである、アルミナセラミックス(Al23)が使用される。蓋体11の材料として、樹脂等の他の材料が使用されてもよい。例えば、アルミナセラミックスの粉末を焼成加工することで、所望の形状の蓋体11が形成される。
【0043】
蓋体11は、例えば、ほぼ中央に中空部H2を有する円盤状とされる。蓋体11の径は、ケース2のほぼ円形の開口の径よりやや小とされている。このため、ほぼ円形の開口からケース2内へと蓋体11を挿入できる。中空部H2は、例えば、ほぼ円形とされる。中空部H2の径は、リード導体9の径よりやや大とされており、中空部H2にリード導体9を通すことで、蓋体11をリード導体9に挿通できる。中空部H2の径は、段部10の幅よりやや小とされる。このため、リード導体9に挿通された蓋体11は、段部10により係止される。中空部H2の径は、例えば、1.1mmとされる。なお、リード導体9に蓋体11を挿通し易くするために、蓋体11の中空部H2の周辺箇所に、面取り加工CHが施されてもよい。
【0044】
リード導体9に挿通された蓋体11は、ケース2のほぼ円形の開口から挿入され、空間S1に収納される。そして、ケース2のほぼ円形の開口から所定距離、ケース2の内側の位置で、蓋体11は、段部10により係止される。ケース2のほぼ円形の開口から蓋体11までの間に空間S2が形成される。空間S2に対して、エポキシ樹脂等の封止剤が充填される。ケース2の内部に形成された空間S2に封止剤を充填することで、ケース2の内周面と封止剤との接着面積を増やすことができ、接合強度を高めることができる。
【0045】
さらに、ケース2の内部に形成される空間S2に対して封止剤が充填され接合強度が向上するため、負荷に対する温度ヒューズ1の機械的強度が向上する。例えば、ケース2の外部に導出されたリード導体9にフォーミング加工がなされ、フォーミング加工にともなう負荷が封止剤に対してかかる場合に、負荷により封止剤が破壊されることを防止できる。
【0046】
以上のように、第1の実施形態における温度ヒューズ1は、ヒューズ素子6をケース2のほぼ中央に位置決めすることができる。さらに、ヒューズ素子6とケース2の内周面とが接触しない。したがって、温度ヒューズ1の耐絶縁性が向上する。さらに、封止剤が充填される空間を、ケース2の内部に形成される凹部C1およびケース2の内部に形成される空間S2とすることができ、封止剤の接合強度を高めることができる。したがって、リード導体7やリード導体9に対してフォーミング加工等が行われた場合に、フォーミング加工等にともなう負荷により封止剤が破壊されることを防止できる。
【0047】
「温度ヒューズの動作」
温度ヒューズ1の動作の一例について説明する。図5は、温度ヒューズ1が動作した後の状態の一例を示したものである。温度ヒューズ1が適用される機器の異常な温度や自身の発熱による温度が可溶部4の融点に達すると、可溶部4が溶融する。溶融した可溶部4は、フラックス5の促進作用により表面張力が発揮され溶接部付近で球状化して溶断する。可溶部4が溶断することで、温度ヒューズ1が適用される回路が遮断される。
【0048】
なお、段部10が形成されていることにより、可溶部4とリード導体9との溶接部付近と、蓋体11との間に所定距離を保つことができる。ここで、段部10が形成されていないと、リード導体9に挿通された蓋体11は、例えば、溶接部の膨らみにより係止され、可溶部4と蓋体11とが接することになる。可溶部4と蓋体11とが接していると、可溶部4が球状化する作用が蓋体11により阻害され、動作不良が起きるおそれがある。しかしながら、段部10により可溶部4と蓋体11との間に所定距離を保つことができ、上述した不具合を防止することができる。段部8についても同様である。段部8により、凸部3と溶接部との間に所定距離を保つことができ、可溶部4が球状化する作用が凸部3により阻害されることを防止できる。
【0049】
<第2の実施形態>
「温度ヒューズの構成」
次に、本開示の第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態における温度ヒューズ21の断面の構成例を示す。なお、図6では、第1の実施形態における温度ヒューズ1と同様の箇所には、同様の符号を付している。
【0050】
温度ヒューズ21は、例えば、角筒状とされるケース22を有する。ケース22の一端には、例えば、ほぼ円形の開口が形成されており、ケース22の他端には、例えば、ほぼ正方形の開口が形成されている。なお、開口の形状は適宜、変更できる。ほぼ正方形の開口からケース22の内部に向かって、凹部C2が形成されている。凹部C2の底面のほぼ中央には、挿通孔H3が形成されている。この結果、ケース22の他端の近傍の内周面の全てに、凸部23が形成されることになる。挿通孔H3の径は、リード導体7の径よりやや大とされる。また、挿通孔H3の径は、後述する蓋体24の径よりやや小とされる。このため、蓋体24は、凸部23により係止される。
【0051】
なお、凸部23は、温度ヒューズ21の大きさやリード導体7に形成される段部8の位置などに応じて、適切な位置に形成される。凸部23の形状は、適宜、変更できる。ケース22の他端の近傍の内周面の全てに凸部23が形成されていなくてもよい。例えば、ケース22が角筒状である場合には、ケース22の内部において対向する2面のみに凸部23が形成されてもよい。
【0052】
ケース22のほぼ円形の開口からケース22の内部に向かって、ほぼ円筒状の空間S3が形成される。挿通孔H3を介して、凹部C2と空間S3とが連通している。
【0053】
空間S3には、可溶部4が収納されている。可溶部4は、例えば、ケース22の内部のほぼ中央に収納されている。可溶部4の表面には、フラックス5がコーディングされている。可溶部4の一端には、リード導体7が溶接されている。可溶部4とリード導体7との溶接部からケース22の外部に向かって、リード導体7が延伸している。凹部C2およびほぼ正方形の開口を介して、リード導体7の先端がケース22の外部に導出されている。第1の実施形態と同様に、リード導体7には段部8が形成されている。
【0054】
可溶部4の他端には、リード導体9が溶接されている。可溶部4とリード導体9との溶接部からケース22の外部に向かって、リード導体9が延伸している。ケース22のほぼ円形の開口を介して、リード導体9の先端がケース22の外部に導出されている。第1の実施形態と同様に、リード導体9には段部10が形成されている。なお、可溶部4、フラックス5、リード導体7、段部8、リード導体9、段部10の詳細については、図2を参照して説明した内容と同じであるため、重複した説明を省略する。
【0055】
リード導体7に対して、他の蓋体の一例である蓋体24が挿通されている。蓋体24は、蓋体11と同様に、例えば、円盤状のものとされる。蓋体24の径は、ほぼ円形の開口よりやや小とされ、ケース22のほぼ円形の開口から蓋体24を挿入できるようにされている。また、蓋体24の径は、挿通孔H3の径よりやや大とされる。このため、蓋体24は、挿通孔H3を挿通することができず、凸部23により係止される。
【0056】
蓋体24が有する中空部の径は、例えば、リード導体7の径よりやや大とされ、段部8の幅よりやや小とされる。蓋体24は、例えば、ケース22のほぼ円形の開口から挿入され、空間S3へと収納される。空間S3に収納された蓋体24の一端が凸部23により係止される。蓋体24に対してリード導体7が挿通されると、段部8は、蓋体24により係止される。つまり、蓋体24は、凸部23および段部8により挟み込まれて支持される(狭持される)。
【0057】
リード導体9に対して、蓋体25が挿通される。蓋体25は、例えば、蓋体11と同様に円盤状のものとされる。蓋体25の径は、ケース22のほぼ円形の開口から蓋体25を挿入できるように設定される。蓋体25の有する中空部の径は、例えば、リード導体9の径よりやや大とされ、段部10の幅よりやや小とされる。リード導体9に挿通された蓋体25は、ケース22のほぼ円形の開口から空間S3に挿入される。リード導体9に挿通された蓋体25は、段部10により係止される。
【0058】
ケース22のほぼ円形の開口と蓋体25との間には空間S4が形成される。凹部C2および空間S4に対して、エポキシ樹脂等の封止剤が充填され、封止剤が硬化することで温度ヒューズ21が形成される。ケース22の内部に形成される凹部C2およびケース22の内部に形成される空間S4に封止剤を充填することができ、温度ヒューズ1と同様に、温度ヒューズ21の機械的強度を向上させることができる。
【0059】
「温度ヒューズの組立方法」
温度ヒューズ21の組立方法の一例について説明する。なお、温度ヒューズ21の組立は、例えば、リード導体7およびリード導体9を可溶部4にそれぞれ溶接して一体化し、可溶部4にフラックス5をコーティングした上で行われる。はじめに、ケース22のほぼ円形の開口から蓋体24が挿入される。例えば、蓋体24は、ケース22のほぼ円形の開口から挿入されて空間S3の内部に収納される。空間S3に収納された蓋体24は、凸部23によって係止される。次に、ケース22のほぼ円形の開口からリード導体7が挿入される。リード導体7が挿入されることで、リード導体7、ヒューズ素子6およびリード導体9の一部が、順次、空間S3に収納される。
【0060】
リード導体7は、蓋体24の中空部に挿通される。そして、挿通孔H3、凹部C2を介して、リード導体7の先端がケース22の外部へと導出される。リード導体7の段部8が蓋体24により係止されると、リード導体7をそれ以上、挿通できなくなる。このとき、蓋体24は、凸部23および段部8により狭持され、ヒューズ素子6は、ケース22の内部のほぼ中央に位置決めされる。
【0061】
次に、リード導体9の先端から、蓋体25がリード導体9に対して挿通される。蓋体25は、ケース22のほぼ円形の開口から空間S3に対して挿入される。そして、リード導体9に挿通された蓋体25は、空間S3において段部10により係止される。蓋体24および蓋体25により、ヒューズ素子6の表面とケース22の内周面とが接触しない状態で支持される。
【0062】
次に、ほぼ正方形の開口から凹部C2にエポキシ樹脂等の封止剤が充填される。ほぼ円形の開口から空間S4にエポキシ樹脂等の封止剤が充填される。充填された封止剤が硬化することで、温度ヒューズ21が形成される。なお、上述した温度ヒューズ21の組立方法は一例であり、適宜変更できる。例えば、リード導体7に蓋体24を挿通し、リード導体9に蓋体25を挿通した後に、リード導体7をケース22の内部に挿入してもよい。また、凹部C2および空間S4のそれぞれに封止剤を充填する順序は問わない。
【0063】
<変形例>
以上、本開示の複数の実施形態について具体的に説明したが、本開示は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。上述した実施形態では、リード導体7を加圧することにより段部8を形成するようにしたが、リード導体7に対して樹脂等を塗布することにより段部8を形成してもよい。段部10についても同様である。
【0064】
なお、それぞれの実施形態および変形例における構成は、技術的な矛盾が生じない範囲において、他の実施形態および変形例に適用可能である。さらに、それぞれの実施形態および変形例における効果は、技術的な矛盾が生じない範囲において、他の実施形態においても奏するものである。
【符号の説明】
【0065】
1、21・・・温度ヒューズ
2、22・・・ケース
3、23・・・凸部
7、9・・・リード導体
8、10・・・段部
4・・・可溶部
6・・・ヒューズ素子
11、24、25・・・蓋体
C1、C2・・・凹部
S2、S4・・・空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶部と、
前記可溶部の両端からそれぞれ延伸する第1および第2のリード導体と、
前記第1のリード導体に形成された第1の段部および前記第2のリード導体に形成された第2の段部と、
前記可溶部と前記第1のリード導体と前記第2のリード導体とが一端の開口から挿入され、前記第1および第2のリード導体の端部が外部に導出された状態で、前記可溶部が収納される筒状のケースと、
前記ケースの他端の近傍の内面に形成され、前記第1のリード導体側を係止する凸部と、
前記第2のリード導体に挿通され、前記第2の段部により係止される蓋体と
からなる温度ヒューズ。
【請求項2】
前記第1の段部が、前記凸部により係止される請求項1に記載の温度ヒューズ。
【請求項3】
前記第1のリード導体に他の蓋体が挿通され、前記他の蓋体が前記第1の段部および前記凸部により狭持される請求項1に記載の温度ヒューズ。
【請求項4】
前記ケースの他端と前記凸部との間に、封止剤を充填するための凹部が形成される請求項1乃至3のいずれか1項に記載の温度ヒューズ。
【請求項5】
前記ケースの一端と前記蓋体との間に、封止剤が充填される請求項1乃至4のいずれか1項に記載の温度ヒューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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