説明

温度測定装置及び温度測定方法

【課題】ひとつの簡単な構造の装置で、正確に深部温度と外気温度とを測定できる温度測定装置を提供する。
【解決手段】温度測定装置は、第1表面温度として測定する第1表面温度測定手段20Aと、第1参照温度として測定する第1参照温度測定手段24Aと、第1外気温度として測定する第1外気温度測定手段25Aと、第2表面温度を測定する第2表面温度測定手段20Bと、第2参照温度として測定する第2参照温度測定手段24Bと、第2外気温度として測定する第2外気温度測定手段25Bと、第1表面温度、第1参照温度、第2表面温度、及び第2参照温度値を用いて被測定対象の深部温度を演算する深部温度演算手段42と、第1表面温度、第1参照温度、第2表面温度、第2参照温度、第1外気温度、及び第2外気温度値を用いて外気の外気温度を演算する外気温度演算手段43と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度測定装置及び温度測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯用の温度計測装置、特に腕時計型等の人体に接触して利用する温度計測装置では、ケース内部あるいはケース外周部に設けた温度センサーによって外気温度を検出している。しかし、これまでの温度計測装置では、携帯時あるいは装着時にケースを通して温度センサーが体温の影響を受け、外気温度を正確に測定することができない虞があった。
【0003】
感熱部がケースから突出し、ケースと所定の隙間を設けることで、ケースを通した体温の影響を排除する。また、身につけているかいないかを検出することで、身につけている場合に温度補正の処理を行うというものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
簡単な構成により人体深部の温度を計測する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−254579号公報
【特許文献2】特開2006−308538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、温度センサーの位置を工夫することで、体温の影響を少なくすることを目的としているが、腕時計として身につける以上、ケースやセンサー支持部の熱伝導による体温の影響をなくすことはできない虞がある。また、特許文献2においては、同時に外気温を正確に計測することが出来ない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]被測定対象の表面温度を第1表面温度として測定する第1表面温度測定手段と、前記第1表面温度の測定位置との間に所定の熱抵抗値を有し、かつ外気との間に第1熱抵抗値を有する位置の温度を第1参照温度として測定する第1参照温度測定手段と、前記第1参照温度の測定位置との間に前記第1熱抵抗値を有し、かつ外気との間に所定の熱伝達係数を有する位置の温度を第1外気温度として測定する第1外気温度測定手段と、前記第1表面温度の測定位置とは異なる表面位置の第2表面温度を測定する第2表面温度測定手段と、前記第2表面温度の測定位置との間に所定の熱抵抗値を有し、かつ外気との間に前記第1熱抵抗値とは異なる第2熱抵抗値を有する位置の温度を第2参照温度として測定する第2参照温度測定手段と、前記第2参照温度の測定位置との間に前記第2熱抵抗値を有し、かつ外気との間に所定の熱伝達係数を有する位置の温度を第2外気温度として測定する第2外気温度測定手段と、前記第1表面温度、前記第1参照温度、前記第2表面温度、及び前記第2参照温度値を用いて前記被測定対象の深部温度を演算する深部温度演算手段と、前記第1表面温度、前記第1参照温度、前記第2表面温度、前記第2参照温度、前記第1外気温度、及び前記第2外気温度値を用いて外気の外気温度を演算する外気温度演算手段と、を含むことを特徴とする温度測定装置。
【0009】
これによれば、2つの異なる熱流を計測するセンサー部を用いることで、身につけている場合でも、ひとつの装置で正確な深部温度と外気温度とが測定できる。また人体などに設置して測定する腕時計型、パッチ型などの温度測定装置においても、ひとつの簡単な構造の装置で、正確に深部温度と外気温度とを測定できる。
【0010】
ここで、被測定対象の深部とは、体表面における温度に比べてより温度変化が少なく温度分布が安定した部位をいい、例えば核心部などのことをいう。したがって、深部体温とは、例えば核心温を意味する。なお、核心温とは、恒温動物の生態内部の温度状態において、循環調節や生体の外殻部に影響する環境への熱放散の変化によって変わらない温度をいい、理論的には核心部の平均温度をいう。
【0011】
[適用例2]上記温度測定装置であって、前記第1表面温度の測定位置と前記第1参照温度の測定位置との間、及び前記第2表面温度の測定位置と前記第2参照温度の測定位置との間には、共通の前記所定の熱抵抗値を有する断熱部が設けられ、前記第1参照温度の測定位置と外気との間には、前記第1熱抵抗値を有する第1放熱制御部が設けられ、前記第2参照温度の測定位置と外気との間には、前記第2熱抵抗値を有する第2放熱制御部が設けられ、前記第1放熱制御部の外気との接触面、及び前記第2放熱制御部の外気との接触面は、所定の熱伝達係数が等しくなるように構成されていることを特徴とする温度測定装置。
【0012】
これによれば、第1表面温度測定手段と第2表面温度測定手段とは、共通の熱抵抗値を有する断熱部に覆われている。ここで、それぞれの断熱部は、表面温度の測定位置と参照温度の測定位置との間に位置している。そして、それぞれの参照温度の測定位置と外気との間にそれぞれ互いに異なる熱抵抗値を有する第1、第2放熱制御部が設けられている。ここで、それぞれの放熱制御部は、参照温度の測定位置と外気温度の測定位置との間に位置している。したがって、第1表面温度測定位置と第1参照温度測定位置と第1外気温度測定位置との間の熱流束値と第2表面温度測定位置と第2参照温度測定位置と第2外気温度測定位置との間の熱流束値が異なる。つまり、第1表面温度、第1参照温度、第2表面温度、第2参照温度、第1外気温度、及び第2外気温度も互いに異なる値が測定される。
【0013】
深部温度演算手段では、第1及び第2表面温度測定手段を覆う断熱部の熱抵抗値を共通にすることで、この熱抵抗値が演算上消去され、第1表面温度、第1参照温度、第2表面温度、及び第2参照温度値を用いて被測定対象の深部温度が演算される。
【0014】
外気温度演算手段では、第1放熱制御部の外気との接触面、及び第2放熱制御部の外気との接触面を熱伝達係数が等しくなるように構成することで、この熱伝達係数が演算上消去され、第1表面温度、第1参照温度、第2表面温度、第2参照温度、第1外気温度、及び第2外気温度値を用いて被測定対象の深部温度が演算される。
【0015】
したがって、被測定対象固有の深部から表面までの熱抵抗値にかかわらず被測定対象の深部温度及び外気の外気温度が演算されるので、被測定対象の型の違いによる伝熱特性に変化があっても、断熱部及び放熱制御部に設けられた複数の測定温度手段を利用して、被測定対象の深部温度及び外気温度が正確に算出される。
【0016】
[適用例3]上記温度測定装置であって、前記深部温度演算手段で演算された前記深部温度、及び前記外気温度演算手段で演算された前記外気温度を表示する表示部を有する表示装置と、前記第1表面温度測定手段、前記第2表面温度測定手段、前記第1参照温度測定手段、前記第2参照温度測定手段、前記第1外気温度測定手段、及び前記第2外気温度測定手段を有する温度計本体と、を含み、前記表示装置と前記温度計本体とは、別体で構成されていることを特徴とする温度測定装置。
【0017】
これによれば、表示装置と温度計本体とが別体で構成されているので、被測定対象の表面に接触する必要がある第1及び第2表面温度測定手段を有する温度計本体の軽量化が促進される。したがって、被測定対象の表面に温度計本体を長時間接触させても負担とはならず、長時間にわたって連続的な温度のモニタリングが可能となる。
【0018】
[適用例4]上記温度測定装置であって、前記深部温度演算手段及び前記外気温度演算手段は、前記表示装置に設けられていることを特徴とする温度測定装置。
【0019】
これによれば、深部温度演算手段及び外気温度演算手段が表示装置に設けられているので、温度計本体の構成部品が最小限に抑制される。したがって、温度計本体の軽量化、小型化が促進され、被測定対象の表面に接触させる際にも、長時間の測定であっても負担がより一層低減される。
【0020】
[適用例5]上記温度測定装置であって、前記表示装置及び前記温度計本体は、無線通信により互いに情報の送受信が可能な送受信部をそれぞれ含んでいることを特徴とする温度測定装置。
【0021】
これによれば、表示装置及び温度計本体がそれぞれ送受信部を備え、互いに無線通信が可能に構成されているので、表示装置を温度計本体に対してある程度離して設置することが可能となる。表示装置が温度計本体と配線されないため、温度計本体を表示装置から完全に分離できるので、温度計本体の軽量化がより一層促進され、温度計本体の取扱い性が向上する。
【0022】
[適用例6]上記温度測定装置であって、前記温度計本体は、前記被測定対象の表面に貼付可能に構成されていることを特徴とする温度測定装置。
【0023】
これによれば、温度計本体が被測定対象の表面に貼付可能に構成されているので、温度計本体の操作性、携帯性が向上する。
【0024】
[適用例7]被測定対象の第1表面温度を測定するとともに、該第1表面温度の測定位置との間に所定の熱抵抗値を有し、かつ外気との間に第1熱抵抗値を有する位置の温度を第1参照温度、及び該第1参照温度の測定位置との間に前記第1熱抵抗値を有し、外気との間に所定の熱伝達係数を有する位置の温度を第1外気温度として測定する第1温度測定工程と、前記第1表面温度の測定位置とは異なる表面位置の第2表面温度を測定するとともに、該第2表面温度の測定位置との間に所定の熱抵抗値を有し、かつ外気との間に前記第1熱抵抗値とは異なる第2熱抵抗値を有する位置の温度を第2参照温度、及び該第2参照温度の測定位置との間に前記第2熱抵抗値を有し、外気との間に所定の熱伝達係数を有する位置の温度を第2外気温度として測定する第2温度測定工程と、前記第1表面温度、前記第1参照温度、前記第2表面温度、及び前記第2参照温度値に基づいて前記被測定対象の深部温度を演算する深部温度演算工程と、及び、前記第1表面温度、前記第1参照温度、前記第2表面温度、前記第2参照温度、前記第1外気温度、及び前記第2外気温度値に基づいて外気の外気温度を演算する外気温度演算工程と、を含むことを特徴とする温度測定方法。
【0025】
これによれば、2つの異なる熱流を計測するセンサー部を用いることで、身につけている場合でも、ひとつの装置で正確な深部温度と外気温度とが測定できる。また人体などに設置して測定する腕時計型、パッチ型などの温度測定装置において、ひとつの簡単な構造の装置で、正確に深部温度と外気温度とを測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施形態に係る電子体温計を示すブロック構成図。
【図2】第1の実施形態に係る温度計本体が人体に装着された状態を示す拡大図。
【図3】第1の実施形態に係る温度計本体及び表示装置が装着された状態を示す図。
【図4】第1の実施形態に係る電子体温計の動作を示すフローチャート。
【図5】実施例1に係る温度計本体及び測定結果を示す図。
【図6】第2の実施形態に係る温度計本体及び測定結果を示す図。
【図7】第3の実施形態に係る温度計本体及び測定結果を示す図。
【図8】第4の実施形態に係る温度計本体及び測定結果を示す図。
【図9】第5の実施形態に係る腕装着型温度計測装置の要部を拡大して示す平面図。
【図10】図9のA−A′線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本実施形態に係る電子体温計について、図を参照しながら説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る温度測定装置としての電子体温計を示すブロック構成図である。
本実施形態に係る電子体温計2は、被測定対象である人体4の体表面4A(図3参照)に接触する温度計本体10と、温度計本体10とは別体に設けられる表示装置12とを備えている。本実施形態では、表示装置12と温度計本体10とが別体で構成されているので、人体4の表面に接触する必要がある温度計本体10の軽量化が促進される。したがって、人体4の表面に温度計本体10を長時間接触させても負担とはならず、長時間にわたって連続的な温度のモニタリングが可能となっている。
【0029】
図2は、本実施形態に係る温度計本体10が人体4に装着された状態を示す拡大図であり、また図3は、本実施形態に係る温度計本体10及び表示装置12が装着された状態を示す図である。
【0030】
先ず、図2に示すように、温度計本体10は、二つ(一対)の温度測定部14A,14Bを備えている。温度測定部14Aは、人体4の体表面4Aに接触する接触面16Aを有している断熱部18と、断熱部18と外気との間に設けられた第1放熱制御部18Aとを備えている。一方、温度測定部14Bは、温度測定部14Aの接触位置とは異なる位置の体表面4Aに接触する接触面16Bを有している断熱部18と、断熱部18と外気との間に第2放熱制御部18Bを備えている。すなわち、断熱部18は、温度測定部14Aと温度測定部14Bとで共通しており、共通の熱抵抗値を有している。また、第1放熱制御部18Aの外気と接触する接触面23A、及び第2放熱制御部18Bの外気と接触する接触面23Bは、熱伝達係数が等しくなるように、その構造、表面積、及び粗さなどが構成されている。
【0031】
本実施形態に係る温度測定部14A,14Bは縦積みである。本実施形態では、温度計本体10の面積は温度測定部の個数で2個分である。温度計本体10の縦方向長さは1温度測定部あたり断熱材の個数で2個分である。1つの温度測定部のセンサーの個数は3個である。本実施形態では、面積効率、上部の断熱材が要らない分、材料効率がよい。
【0032】
温度測定部14Aは、体表面4Aの温度を第1表面温度としての第1体表面温度として測定する第1表面温度測定手段としての体表面センサー20Aと、断熱部18と第1放熱制御部18Aとの界面22Aの温度を第1参照温度として測定する第1参照温度測定手段としての中間センサー24Aと、第1放熱制御部18Aの外気との接触面23Aの温度を第1外気温度として測定する第1外気温度測定手段としての外気センサー25Aとを備えている。
【0033】
また、温度測定部14Bは、体表面4Aの温度を第2表面温度としての第2体表面温度として測定する第2表面温度測定手段としての体表面センサー20Bと、断熱部18と第2放熱制御部18Bとの界面22Bの温度を第2参照温度として測定する第2参照温度測定手段としての中間センサー24Bと、第2放熱制御部18Bの外気との接触面23Bの温度を第2外気温度として測定する第2外気温度測定手段としての外気センサー25Bとを備えている。
【0034】
これらの温度測定部14A,14Bからなる温度計本体10は、粘着剤などによって接触面16A,16Bが人体4にそれぞれ貼付可能となっており、この粘着剤などにより、体表面4Aに良好な接触圧力で密着できるように構成されている。本実施形態では、温度計本体10は幼児(人体4)の胸部に密着されている。
【0035】
ここで、温度計本体10の貼付位置は、比較的安定して体表面温度を測定できる額や後頭部、胸部、背中などの部位に設定されることが望ましい。また、温度計本体10の上に衣服を着用していても、温度計本体10が寝具と接触していてもよい。本実施形態では、温度計本体10が人体4の表面に貼付可能に構成されているので、温度計本体10の操作性、携帯性が向上する。
【0036】
また、温度測定部14Aの第1放熱制御部18Aと、温度測定部14Bの第2放熱制御部18Bとは異なる材料で構成され、これにより、第1放熱制御部18Aの熱抵抗値と第2放熱制御部18Bの熱抵抗値とは異なる値に設定されている。
【0037】
体表面センサー20A,20B、中間センサー24A,24B、及び外気センサー25A,25Bは、体表面4Aの温度、界面22A,22Bの温度、及び接触面23A,23Bの温度を抵抗値に変換するものや、温度値を電圧値に変換するものなどが採用できる。なお、温度を抵抗値に変換するものとしては、チップサーミスターや、サーミスターパターンがプリントされたフレキシブル基板、白金測温抵抗体などが採用できる。また、温度を電圧値に変換するものとしては、熱電対素子や、PN接合素子、ダイオードなどが採用できる。本実施形態では、温度測定部14Aと温度測定部14Bとは、体表面センサー20Aの位置と外気センサー25Aの位置との間及び体表面センサー20Bの位置と外気センサー25Bの位置との間の熱流束値が異なる。つまり、第1表面温度及び第2表面温度、第1参照温度及び第2参照温度、第1外気温度及び第2外気温度も互いに異なる値が測定される。
【0038】
また、温度測定部14A,14Bは、体表面センサー20A,20B、中間センサー24A,24B、及び外気センサー25A,25Bの他に、前述の図1に示されるように、A/D変換部26A,26Bと、送受信部28A,28Bと、をそれぞれ備えている。なお、温度測定部14A,14Bが一体で形成されているので、A/D変換部26A,26Bを共通のA/D変換部、送受信部28A,28Bを共通の送受信部として組み込むことも可能である。
【0039】
A/D変換部26A,26Bは、体表面センサー20A,20B、中間センサー24A,24B、及び外気センサー25A,25Bで変換された抵抗値や電圧値のアナログ信号をデジタル信号に変換し、送受信部28A,28Bに出力する。
【0040】
送受信部28A,28Bは、それぞれアンテナコイル30A,30Bを備え、A/D変換部26A,26Bでデジタル信号に変換された温度値(抵抗値や電圧値)の信号を表示装置12側に電波送信する。なお、アンテナコイル30A,30Bも共通のアンテナコイルとすることも可能である。
【0041】
表示装置12は、図3に示すように、腕時計型で携帯可能に構成されており、温度計本体10を装着した幼児を抱いた操作者6が装着できるようになっている。表示装置12は、前述の図1に示すように、温度計本体10との間で信号を送受信する送受信部28と、体温の測定結果などを表示する表示部32と、表示装置12を外部から操作する操作部34と、表示装置12の動作を制御する制御部36と、送受信部28や制御部36などから得られた情報を蓄積する記憶部38とを備えている。
【0042】
送受信部28は、アンテナコイル30を備え、温度計本体10のアンテナコイル30A,30Bとの間でそれぞれ電波の送受信を行う。また、アンテナコイル30は、アンテナコイル30A,30Bに対して電波を送信することにより、アンテナコイル30A,30Bに電磁誘導によって起電力を発生させ、温度測定部14A,14Bのチャージを行う。このため、温度計本体10はこの起電力によって駆動され、内部に電池などの電源を必要としない。本実施形態では、表示装置12及び温度計本体10がそれぞれ送受信部28,28A,28Bを備え、互いに無線通信が可能に構成されているので、表示装置12を温度計本体10に対してある程度離して設置することが可能となっている。表示装置12が温度計本体10と配線されないため、温度計本体10を表示装置12から完全に分離できるので、温度計本体10の軽量化がより一層促進され、温度計本体10の取扱い性が向上する。
【0043】
表示部32は、液晶画面などによって温度情報や操作画面を表示するものであり、例えば測定された体表面温度や、演算された深部温度としての深部体温や、外気の外気温度などが表示可能となっている。本実施形態では、腕時計の通常文字板に相当する部分に表示部32が設けられ、操作者6が表示装置12を腕につけた状態で表示部32が視認可能となっている。
【0044】
操作部34は、ボタンやレバー、キーなどによって外部から表示装置12に情報を入力可能に構成されており、例えば表示部32に表示される画面にしたがってメニューを選択したり、その他被測定者(本実施形態では幼児)の氏名、年齢、体温の測定日時などの情報を入力したりすることができる。
【0045】
制御部36は、第1体表面温度、第2体表面温度、第1参照温度、及び第2参照温度に基づいて、人体4の深部体温を演算する深部温度演算手段としての深部体温演算手段42を備えている。
【0046】
また、制御部36は、第1体表面温度、第2体表面温度、第1外気温度、第2外気温度、第1参照温度、及び第2参照温度に基づいて、外気の外気温度を演算する外気温度演算手段43を備えている。本実施形態では、深部体温演算手段42及び外気温度演算手段43が表示装置12に設けられているので、温度計本体10の構成部品が最小限に抑制される。したがって、温度計本体10の軽量化、小型化が促進され、人体4の表面に接触させる際にも、長時間の測定であっても負担がより一層低減される。
【0047】
上記の構成から、定常状態では温度測定部14Aあるいは温度測定部14Bにおける熱流束は一定となるため、第1体表面温度をT1、第2体表面温度をT3、第1参照温度をT2、及び第2参照温度をT4、及び深部体温をTcoreとすることで深部体温に関して、人体4の深部から体表面4Aまでの熱抵抗をRb、断熱部18の熱抵抗をRsとして次の式(1)及び式(2)の関係式が得られる。
【0048】
【数1】

よって、深部体温Tcoreは、式(3)の関係式が得られる。
【0049】
【数2】

また、第1外気温度をT5、第2外気温度をT6、及び外気温度をToutとすることで外気温度に関して次の式(4)及び式(5)の関係式が得られる。
【0050】
【数3】

なおhは、接触面23A,23Bの熱伝達係数である。よって、外気温度Toutは、式(6)の関係式が得られる。
【0051】
【数4】

【0052】
したがって、深部体温演算手段42には、上述の式(3)が、深部体温Tcoreの演算式として記憶されている。また、外気温度演算手段43には、上述の式(6)が、外気温度Toutの演算式として記憶されている。
【0053】
記憶部38には、温度計本体10から送信された第1体表面温度T1、第2体表面温度T3、第1参照温度T2、第2参照温度T4、第1外気温度T5、及び第2外気温度T6が記憶される。また、深部体温演算手段42で演算された人体4の深部体温Tcore及び外気温度演算手段43で演算された外気の外気温度Toutも記憶される。
【0054】
ここで、記憶部38は、複数の人体4に関する温度情報を記憶可能に構成されており、深部体温Tcoreなどが、人体4ごとに記憶されている。また、記憶部38は、深部体温Tcoreを算出する際に測定した第1体表面温度T1及び第2体表面温度T3など、及び外気温度Toutを算出する際に測定した第1外気温度T5及び第2外気温度T6などの測定位置を記憶可能となっている。なお、記憶部38には、前述の温度情報以外にも、例えば被測定者(人体4、幼児)の氏名、年齢、測定日時などの測定情報を記憶させてもよい。この場合に、これらの測定情報は、操作部34から入力されてもよい。
【0055】
このような電子体温計2は、次のように動作する。
図4は、本実施形態に係る電子体温計2の動作を示すフローチャートである。
人体4(本実施形態では幼児の胸部)に温度計本体10を装着し、幼児を抱いた電子体温計2の操作者6は表示装置12を腕に装着する。操作者6が表示装置12の操作部34を操作することにより表示装置12のスイッチがONされると、アンテナコイル30を介して送受信部28が温度計本体10(温度測定部14A及び温度測定部14B)に電波を送信する。この電波による電磁誘導でアンテナコイル30A,30Bに起電力を発生させることにより温度計本体10にチャージを行う(ステップS10)。
【0056】
起電力により温度計本体10が起動し(ステップS20)、体表面センサー20A,20B、中間センサー24A,24B、及び外気センサー25A,25Bが起動する。
【0057】
これらのセンサー20A,20B,24A,24B,25A,25Bが起動すると、温度計本体10は、アンテナコイル30A,30Bを介して送受信部28A,28Bから表示装置12にスタンバイ信号を送信する(ステップS30)。
【0058】
表示装置12の制御部36は、このスタンバイ信号を受信すると温度測定開始信号を送受信部28からアンテナコイル30を介して送信する(ステップS40)。
【0059】
温度計本体10は、この温度測定開始信号を受信して、体表面センサー20A,20B、中間センサー24A,24B、及び外気センサー25A,25Bを駆動し、体表面4Aの第1体表面温度T1、第2体表面温度T3、界面22A,22Bの第1参照温度T2、第2参照温度T4、及び接触面23A,23Bの第1外気温度T5、第2外気温度T6を測定する(ステップS50、第1温度測定工程及び第2温度測定工程)。これらの体表面温度T1,T3、参照温度T2,T4、及び外気温度T5,T6の温度情報は、A/D変換部26A,26Bでアナログ信号からデジタル信号に変換され、送受信部28A,28Bによって表示装置12にアンテナコイル30A,30Bを介して送信される。なお、体表面温度T1,T3、及び参照温度T2,T4は、人体4の深部から体表面4Aまでの伝熱が定常状態(平衡状態)となるように、所定時間経過後に測定することが望ましい。
【0060】
制御部36の深部体温演算手段42では、体表面温度T1,T3、及び参照温度T2,T4を式(3)のT1、T2、T3、及びT4に代入することによって深部体温Tcoreを演算する(ステップS60、深部温度演算工程)。
【0061】
また、制御部36の外気温度演算手段43では、体表面温度T1,T3、参照温度T2,T4、及び外気温度T5,T6を式(6)のT1、T2、T3、T4、T5、及びT6に代入することによって外気温度Toutを演算する(ステップS60、外気温度演算工程)。
【0062】
制御部36は、記憶部38に深部体温Tcore及び外気温度Toutを記憶させるとともに(ステップS70)、表示部32に深部体温Tcore及び外気温度Toutを表示する(ステップS80)。操作者6は、幼児を抱いた状態で、腕時計型の表示装置12の表示部32で、深部体温Tcore及び外気温度Toutを確認できる。
【0063】
制御部36は、内蔵されたタイマーにより体表面温度T1,T3の測定時からの経過時間をカウントし、所定時間経過したか否かを監視する(ステップS90)。経過時間が所定時間以上となると、ステップS40に戻って、制御部36は温度計本体10に温度測定開始信号を送信し、再度体表面温度T1,T3、参照温度T2,T4、及び外気温度T5,T6の測定を行う。
【0064】
このようにして所定時間ごとに体表面温度T1,T3、参照温度T2,T4、及び外気温度T5,T6を測定し、深部体温Tcore及び外気温度Toutを演算し、記憶部38に蓄積する。本実施形態では、2つの異なる熱流を計測するセンサー部を用いることで、身につけている場合でも、ひとつの装置で正確な深部体温Tcoreと外気温度Toutとが測定できる。また人体4などに設置して測定する腕時計型、パッチ型などの電子体温計においても、ひとつの簡単な構造の装置で、正確に深部体温Tcoreと外気温度Toutとを測定できる。また温度計本体10は、電池を搭載し、外部からチャージすること無しに、温度を測定することもできる。
【0065】
(実施例1)
図5は、本実施例に係る温度計本体10及び測定結果を示す図である。
次に、本実施例では、温度計本体10を用いた測定結果について説明する。
本実施例における測定環境は次の通りである。設定値として外気温度は25℃である。また人体4の深部温度(10mm下)は37℃、熱伝導率は0.3(W/mK)である。温度測定部14A,14Bは其々直径50mmの円柱状である。温度測定部14Aには体表面4A側から断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、第1放熱制御部18Aの熱伝導率は0.01(W/mK)を積層する。温度測定部14Bには体表面4A側から断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、第2放熱制御部18Bの熱伝導率は0.02(W/mK)を積層する。各厚さは2mmである。
【0066】
本実施例では、図5に示すように、体表面センサー20A,20Bは体表面4Aから0mmの位置にある。中間センサー24A,24Bは体表面4Aから2mmの位置にある。外気センサー25A,25Bは体表面4Aから4mmの位置にある。
【0067】
各センサーの測定結果のうち第1体表面温度T1、第1参照温度T2、第2体表面温度T3、及び第2参照温度T4を式(3)に代入して深部体温Tcoreを計算する。また、第1体表面温度T1、第1参照温度T2、第2体表面温度T3、第2参照温度T4、第1外気温度T5、及び第2外気温度T6を式(6)に代入して外気温度Toutを計算する。その結果、深部体温Tcoreは、36.81497で設定値との誤差は、−0.18503である。また、外気温度Toutは、24.98655で設定値との誤差は、−0.01345である。
【0068】
(第2の実施形態)
図6は、本実施形態に係る温度計本体及び測定結果を示す図である。
本実施形態に係る温度計本体50は、図6に示すように、二つ(一対)の温度測定部14A,14Bを備えている。温度測定部14Aは、断熱部18の間に設けられた第1放熱制御部18Aを備えている。一方、温度測定部14Bは、断熱部18の間に設けられた第2放熱制御部18Bを備えている。なお、熱伝達係数hが等しくなるように、各断熱部18の外気と接触する接触面の構造、表面積、及び粗さなどが構成されている。温度測定部14Aは、断熱部18の外気との接触面23Aの温度を第1外気温度として測定する外気センサー25Aとを備えている。また、温度測定部14Bは、断熱部18の外気との接触面23Bの温度を第2外気温度として測定する外気センサー25Bとを備えている。その他の構成については実施例1と同様である。
【0069】
本実施形態に係る温度測定部14A,14Bは縦積みである。本実施形態では、温度計本体50の面積は温度測定部の個数で2個分である。温度計本体50の縦方向長さは1温度測定部あたり断熱材の個数で3個分である。1つの温度測定部のセンサーの個数は3個である。
【0070】
(実施例2)
次に、本実施例では、温度計本体50を用いた測定結果について説明する。
本実施例における測定環境は次の通りである。温度測定部14Aには体表面4A側から断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、第1放熱制御部18Aの熱伝導率は0.01(W/mK)、断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、を積層する。温度測定部14Bには体表面4A側から断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、第2放熱制御部18Bの熱伝導率は0.02(W/mK)、断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、を積層する。各厚さは2mmである。その他の測定環境については実施例1と同様である。
【0071】
本実施例では、図6に示すように、体表面センサー20A,20Bは体表面4Aから0mmの位置にある。中間センサー24A,24Bは体表面4Aから2mmの位置にある。外気センサー25A,25Bは体表面4Aから6mmの位置にある。
【0072】
各センサーの測定結果のうち第1体表面温度T1、第1参照温度T2、第2体表面温度T3、及び第2参照温度T4を式(3)に代入して深部体温Tcoreを計算する。また、第1体表面温度T1、第1参照温度T2、第2体表面温度T3、第2参照温度T4、第1外気温度T5、及び第2外気温度T6を式(6)に代入して外気温度Toutを計算する。その結果、深部体温Tcoreは、36.83293で設定値との誤差は、−0.16707である。また、外気温度Toutは、24.97185で設定値との誤差は、−0.02815である。
【0073】
(第3の実施形態)
図7は、本実施形態に係る温度計本体及び測定結果を示す図である。
本実施形態に係る温度計本体60は、図7に示すように、二つ(一対)の温度測定部14A,14Bを備えている。その他の構成については実施例2と同様である。
【0074】
温度測定部14Aは、第1放熱制御部18Aと断熱部18との界面46Aの温度を第1外参照温度として測定する外中間センサー44Aを備えている。また、温度測定部14Bは、第2放熱制御部18Bと断熱部18との界面46Bの温度を第2外参照温度として測定する外中間センサー44Bを備えている。その他の構成については実施例1と同様である。
【0075】
本実施形態に係る温度測定部14A,14Bは縦積みである。本実施形態では、温度計本体60の面積は温度測定部の個数で2個分である。温度計本体60の縦方向長さは1温度測定部あたり断熱材の個数で3個分である。1つの温度測定部のセンサーの個数は4個である。
【0076】
上記の構成から、定常状態では各部における熱流束は一定となるため、外気温度Toutに関して次の式(7)及び式(8)の関係式が得られる。
【0077】
【数5】

よって、外気温度Toutは、式(9)の関係式が得られる。
【0078】
【数6】

【0079】
したがって、外気温度演算手段43には、この式(9)が、外気温度Toutの演算式として記憶されている。
【0080】
(実施例3)
次に、本実施例では、温度計本体60を用いた測定結果について説明する。
本実施例における測定環境は実施例2と同様である。
本実施例では、図7に示すように、体表面センサー20A,20Bは体表面4Aから0mmの位置にある。中間センサー24A,24Bは体表面4Aから2mmの位置にある。外中間センサー44A,44Bは体表面4Aから4mmの位置にある。外気センサー25A,25Bは体表面4Aから6mmの位置にある。
【0081】
各センサーの測定結果のうち第1体表面温度T1、第1参照温度T2、第2体表面温度T3、及び第2参照温度T4を式(3)に代入して深部体温Tcoreを計算する。また、第1外気温度T5、第1外参照温度T7、第2外気温度T6、及び第2外参照温度T8を式(9)に代入して外気温度Toutを計算する。その結果、深部体温Tcoreは、36.83293で設定値との誤差は、−0.16707である。また、外気温度Toutは、24.99394で設定値との誤差は、−0.00606である。
【0082】
(第4の実施形態)
図8は、本実施形態に係る温度計本体及び測定結果を示す図である。
本実施形態に係る温度計本体70は、図8に示すように、四つ(二対)の温度測定部14A,14B,14C,14Dを備えている。温度測定部14Aは、断熱部18と外気との間に設けられた第1放熱制御部18Aとを備えている。一方、温度測定部14Bは、断熱部18と外気との間に第2放熱制御部18Bを備えている。また、温度測定部14Cは、温度測定部14A,14Bの接触位置とは異なる位置の体表面4Aに接触する接触面16Cを有している第1放熱制御部18Aと、第1放熱制御部18Aと外気との間に設けられた断熱部18とを備えている。一方、温度測定部14Dは、温度測定部14A,14B,14Cの接触位置とは異なる位置の体表面4Aに接触面16Dを有している第2放熱制御部18Bと、第2放熱制御部18Bと外気との間に設けられた断熱部18とを備えている。すなわち、断熱部18は、温度測定部14A,14B,14C,14Dで共通しており、共通の熱抵抗値を有している。
【0083】
温度測定部14Aは、体表面4Aの温度を測定する体表面センサー20Aと、断熱部18と第1放熱制御部18Aとの界面22Aの温度を測定する中間センサー24Aと、を備えている。
【0084】
温度測定部14Bは、体表面4Aの温度を測定する体表面センサー20Bと、断熱部18と第2放熱制御部18Bとの界面22Bの温度を測定する中間センサー24Bと、を備えている。
【0085】
温度測定部14Cは、断熱部18の外気との接触面23Aの温度を測定する外気センサー25Aと、第1放熱制御部18Aと断熱部18との界面46Aの温度を測定する外中間センサー44Aと、を備えている。
【0086】
温度測定部14Dは、断熱部18の外気との接触面23Bの温度を測定する外気センサー25Bと、第2放熱制御部18Bと断熱部18との界面46Bの温度を測定する外中間センサー44Bと、を備えている。その他の構成については実施例1と同様である。
【0087】
本実施形態に係る温度測定部14A,14B,14C,14Dは単純に横に並べてある。本実施形態では、温度計本体70の面積は温度測定部の個数で4個分である。温度計本体70の縦方向長さは1温度測定部あたり断熱材の個数で2個分である。1つの温度測定部のセンサーの個数は4個である。
【0088】
(実施例4)
次に、本実施例では、温度計本体70を用いた測定結果について説明する。
本実施例における測定環境は次の通りである。温度測定部14Aには体表面4A側から断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、第1放熱制御部18Aの熱伝導率は0.01(W/mK)、を積層する。温度測定部14Bには体表面4A側から断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、第2放熱制御部18Bの熱伝導率は0.02(W/mK)、を積層する。温度測定部14Cには体表面4A側から第1放熱制御部18Aの熱伝導率は0.01(W/mK)、断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、を積層する。温度測定部14Dには体表面4A側から第2放熱制御部18Bの熱伝導率は0.02(W/mK)、断熱部18としてのシリコン材の熱伝導率は0.05(W/mK)、を積層する。各厚さは2mmである。その他の測定環境については実施例1と同様である。
【0089】
本実施例では、図8に示すように、体表面センサー20A,20Bは体表面4Aから0mmの位置にある。中間センサー24A,24Bは体表面4Aから2mmの位置にある。外中間センサー44A,44Bは体表面4Aから2mmの位置にある。外気センサー25A,25Bは体表面4Aから4mmの位置にある。
【0090】
各センサーの測定結果のうち第1体表面温度T1、第1参照温度T2、第2体表面温度T3、及び第2参照温度T4を式(3)に代入して深部体温Tcoreを計算する。また、第1外気温度T5、第1外参照温度T7、第2外気温度T6、及び第2外参照温度T8を式(9)に代入して外気温度Toutを計算する。その結果、深部体温Tcoreは、36.81314で設定値との誤差は、−0.18686である。また、外気温度Toutは、24.97052で設定値との誤差は、−0.02948である。
【0091】
(第5の実施形態)
図9は、本実施形態に係る温度測定装置としての腕装着型温度計測装置の要部を拡大して示す平面図である。図10は、図9のA−A′線における断面図である。
本実施形態に係る腕装着型温度計測装置8は、図9に示すように、31.5mm×29.0mmの略四角形の平面形状を有する表示装置としての装置本体110と、その両側に連結された腕装着用バンド112とから構成されている。装置本体110は、プラスチックや金属などといった各種の材料からなるケース114を有し、このケース114には、腕時計における9時の方向にやや偏った領域に表示部116を形成するための矩形の窓が形成されている。ケース114では、腕装着用バンド112が連結される縦方向の寸法(腕時計における12時−6時方向の寸法)が横方向の寸法(腕時計における3時−9時方向の寸法)よりも短くなっている。このため、腕装着型温度計測装置8は、腕への装着感が改善されている。
【0092】
表示部116は、全体として3段の表示領域118,120,122を備える液晶表示パネル124で構成されている。ケース114が横長であることから、液晶表示パネル124には、広角パネルを用いてある。また、液晶表示パネル124には、ELバックライト機能を付与してある。
【0093】
腕装着型温度計測装置8は、通常の時計やストップウオッチと同様に、時計機能も有しており、図9に示す状態では、表示部116では、上段の表示領域118に8月25日である旨と月曜日である旨が表示されている。下段の表示領域122には、現在時刻が午前10時08分59秒である旨が表示されている。ここで、下段の表示領域122での表示は、縦寸法が約4.7mmといった通常のストップウオッチ並の大型のセグメントによって行われている。中段の表示領域120は、さらに、上下二段に区分され、そのうちの下段の表示領域126には、温度が24.8℃である旨が表示されている。また、中段の表示領域120のうち、上段の表示領域128には、温度に基づいて今の環境がランニングしやすいか否かをAランクからEランクまでのランクで表示するようになっている。
【0094】
(温度計本体の配置構造)
本実施形態の腕装着型温度計測装置8では、ケース114が横長であるため、腕時計における3時方向側に、感温キャップ130で覆われた温度計本体132が配置されている。このように、横長のケース114を用い、その3時方向の側に温度計本体132を配置すると、その3時方向の側には、腕装着型温度計測装置8を腕に装着したときでも、使用者の服の袖が覆うことがない。したがって、精度の高い計測を行えるという利点がある。
【0095】
ケース114は、図10に示すように、その本体部分に相当する胴部分134、その裏面側に取り付けられた裏蓋136とから構成されており、ケース114の裏蓋136側が温度計本体配置空間138になっている。ここで、温度計本体配置空間138は、ケース114の内部に形成されている。なお、ケース114に対しては、その表面側に感温キャップ130が被せられている。この感温キャップ130のうち、温度計本体配置空間138に相当する領域には、外気が出入りするための孔142が形成されている。このため、温度計本体配置空間138には、感温キャップ130の孔142を通って外気が出入り可能である。それ故、温度計本体132は、常に新しい外気と接するので、外気の温度変化にすばやく応答する。なお、温度計本体132の配置は、深部体温も測定するので、ケース114の上部などではなく、裏蓋136などにより人体4の体表面4Aに接する必要がある。
【0096】
なお、上記実施形態では腕時計型を例として書いているが、深部温度と外気温度とを両方測定するものに対しては応用することができる。工業用途として例えば炉の内部や配管の深部温度、エンジンルームの深部温度の測定と、その際の外気温度の測定に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0097】
2…電子体温計(温度測定装置) 4…人体 4A…体表面 6…操作者 8…腕装着型温度計測装置(温度測定装置) 10…温度計本体 12…表示装置 14A,14B,14C,14D…温度測定部 16A,16B,16C,16D…接触面 18…断熱部 18A…第1放熱制御部 18B…第2放熱制御部 20A…体表面センサー(第1表面温度測定手段) 20B…体表面センサー(第2表面温度測定手段) 22A,22B…界面 23A,23B…接触面 24A…中間センサー(第1参照温度測定手段) 24B…中間センサー(第2参照温度測定手段) 25A…外気センサー(第1外気温度測定手段) 25B…外気センサー(第2外気温度測定手段) 26A,26B…A/D変換部 28,28A,28B…送受信部 30,30A,30B…アンテナコイル 32…表示部 34…操作部 36…制御部 38…記憶部 42…深部体温演算手段(深部温度演算手段) 43…外気温度演算手段 44A,44B…外中間センサー 46A,46B…界面 50,60,70…温度計本体 110…装置本体(表示装置) 112…腕装着用バンド 114…ケース 116…表示部 118,120,122…表示領域 124…液晶表示パネル 126,128…表示領域 130…感温キャップ 132…温度計本体 134…胴部分 136…裏蓋 138…温度計本体配置空間 142…孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象の表面温度を第1表面温度として測定する第1表面温度測定手段と、
前記第1表面温度の測定位置との間に所定の熱抵抗値を有し、かつ外気との間に第1熱抵抗値を有する位置の温度を第1参照温度として測定する第1参照温度測定手段と、
前記第1参照温度の測定位置との間に前記第1熱抵抗値を有し、かつ外気との間に所定の熱伝達係数を有する位置の温度を第1外気温度として測定する第1外気温度測定手段と、
前記第1表面温度の測定位置とは異なる表面位置の第2表面温度を測定する第2表面温度測定手段と、
前記第2表面温度の測定位置との間に所定の熱抵抗値を有し、かつ外気との間に前記第1熱抵抗値とは異なる第2熱抵抗値を有する位置の温度を第2参照温度として測定する第2参照温度測定手段と、
前記第2参照温度の測定位置との間に前記第2熱抵抗値を有し、かつ外気との間に所定の熱伝達係数を有する位置の温度を第2外気温度として測定する第2外気温度測定手段と、
前記第1表面温度、前記第1参照温度、前記第2表面温度、及び前記第2参照温度値を用いて前記被測定対象の深部温度を演算する深部温度演算手段と、
前記第1表面温度、前記第1参照温度、前記第2表面温度、前記第2参照温度、前記第1外気温度、及び前記第2外気温度値を用いて外気の外気温度を演算する外気温度演算手段と、
を含むことを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の温度測定装置において、
前記第1表面温度の測定位置と前記第1参照温度の測定位置との間、及び前記第2表面温度の測定位置と前記第2参照温度の測定位置との間には、共通の前記所定の熱抵抗値を有する断熱部が設けられ、
前記第1参照温度の測定位置と外気との間には、前記第1熱抵抗値を有する第1放熱制御部が設けられ、
前記第2参照温度の測定位置と外気との間には、前記第2熱抵抗値を有する第2放熱制御部が設けられ、
前記第1放熱制御部の外気との接触面、及び前記第2放熱制御部の外気との接触面は、所定の熱伝達係数が等しくなるように構成されていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度測定装置において、
前記深部温度演算手段で演算された前記深部温度、及び前記外気温度演算手段で演算された前記外気温度を表示する表示部を有する表示装置と、
前記第1表面温度測定手段、前記第2表面温度測定手段、前記第1参照温度測定手段、前記第2参照温度測定手段、前記第1外気温度測定手段、及び前記第2外気温度測定手段を有する温度計本体と、
を含み、
前記表示装置と前記温度計本体とは、別体で構成されていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の温度測定装置において、
前記深部温度演算手段及び前記外気温度演算手段は、前記表示装置に設けられていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の温度測定装置において、
前記表示装置及び前記温度計本体は、無線通信により互いに情報の送受信が可能な送受信部をそれぞれ含んでいることを特徴とする温度測定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の温度測定装置において、
前記温度計本体は、前記被測定対象の表面に貼付可能に構成されていることを特徴とする温度測定装置。
【請求項7】
被測定対象の第1表面温度を測定するとともに、該第1表面温度の測定位置との間に所定の熱抵抗値を有し、かつ外気との間に第1熱抵抗値を有する位置の温度を第1参照温度、及び該第1参照温度の測定位置との間に前記第1熱抵抗値を有し、外気との間に所定の熱伝達係数を有する位置の温度を第1外気温度として測定する第1温度測定工程と、
前記第1表面温度の測定位置とは異なる表面位置の第2表面温度を測定するとともに、該第2表面温度の測定位置との間に所定の熱抵抗値を有し、かつ外気との間に前記第1熱抵抗値とは異なる第2熱抵抗値を有する位置の温度を第2参照温度、及び該第2参照温度の測定位置との間に前記第2熱抵抗値を有し、外気との間に所定の熱伝達係数を有する位置の温度を第2外気温度として測定する第2温度測定工程と、
前記第1表面温度、前記第1参照温度、前記第2表面温度、及び前記第2参照温度値に基づいて前記被測定対象の深部温度を演算する深部温度演算工程と、及び、
前記第1表面温度、前記第1参照温度、前記第2表面温度、前記第2参照温度、前記第1外気温度、及び前記第2外気温度値に基づいて外気の外気温度を演算する外気温度演算工程と、
を含むことを特徴とする温度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−215107(P2011−215107A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85852(P2010−85852)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】