説明

温度測定装置

【課題】被検者や測定者に負担をかけることなく体温を常時測定できる温度測定装置を提供する。
【解決手段】感温素子21と第1のコイル11を備える温度測定部10と、この温度測定部10に電力を供給する第2のコイル31を備えた電力供給部30とを有する温度測定装置において、温度測定部10と電力供給部30とを断熱部32を介して一体的な構成とし、さらに、感温素子21からの温度情報を第1のコイル11を介して第2のコイル31に伝達する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体の温度を測定する温度測定装置に関し、特に温度の常時測定を容易に実現できる温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、病院等では定期的に患者の体温を測定し、体温の管理を行っている。一般に、体温の測定に際しては、体温計を被検者の測定部位に装着し、測定が完了するまでの一定時間、静止した状態を維持させる。また、測定が完了すると、測定者が測定結果を確認し記録するといった作業を行う。
【0003】
しかしながら、被検者が幼児や重病の患者の場合、体温計を測定部位に装着させつづけることは困難であり、正確な体温測定を行うことは容易ではない。また、測定結果を確認し記録する作業は、測定者にとって負担が大きく、測定者の手を煩わせることなく記録できることが望まれている。
このような背景から、被検者の身体に直に接触させる感温素子と、この感温素子にリード線を介して接続された体温測定部を有する体温ピックアップが開示されている(例えば特許文献1参照)。この特許文献1の体温ピックアップ(体温計)は、粘着パッドを有する円盤状の感温素子と、感温素子にリード線を介して接続された体温測定部によって構成される。感温素子と体温測定部は、リード線によって体温測定部と常時接続されており、感温素子により検出された温度(体温)を測定する。この体温計は、粘着パッドを容易に被検者の身体に貼り付けることができるので、身体を不動に保ちにくい患者の体温測定に適していることが示されている。
【0004】
また、半導体温度センサを含む無線タグ(無線通信手段)を有する体温計と、携帯可能なデータ読み取り装置とを備えた体温測定システムが開示されている(例えば特許文献2参照)。以下、この特許文献2に開示されている従来の体温測定システムの概略を図10を用いて説明する。図10において、従来の体温測定システムは、温度センサを含む無線タグが配された体温計(アンテナを備える貼り付け型の体温計)100と、測定者によって携帯可能なデータ読み取り装置110で構成されている。
【0005】
体温計100は、表面のフィルム101と裏面のフィルム102との間に、無線タグである体温タグ103が挟まれて固定された構成となっている。体温タグ103は、アンテナ部104と温度センサを含む処理部105とを備える。
【0006】
ここで、体温タグ103は、データ読み取り装置110から、アンテナ部104を介して電力供給(電磁波による誘導起電力の発生による電力供給:矢印A)を受けることで、処理部105に電源が供給されて、温度センサによって測定された温度情報をアンテナ部104を介してデータ読み取り装置110に送信する(矢印B)。これにより、体温タグ103はデータ読み取り装置110からの電力供給を受けて作動するので、内部に電源を搭載しておく必要がなく、小型・軽量化を実現出来ることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平09−126905号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】特開2010−197244号公報(第4頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の体温計は、感温素子に接続するリード線が熱流路となり、感温素子の温度自体がリード線を介して体温測定部に逸散して正確な体温測定が困難となる課題を有している。
【0009】
また、特許文献2の体温測定システムは、無線タグとデータ読み取り装置の動作可能距離が短いので(5mm〜15mm程度)、無線タグを身体の表面に装着した被検者が厚手の衣服を着ていたり、毛布や布団をかけて寝ていた場合などでは、無線タグとデータ読み取り装置との距離が離れて通信が出来ず、使用上の制約が大きいという問題がある。また、動作可能距離を広げるために無線通信の出力を大きくすると、消費電力が増大すると共に、他の無線タグとの混線を招くという問題がある。
【0010】
また、近年、患者の病状の常時観察や病状の急変などに即対応するために、患者の体温を24時間常時測定して、体温の推移を常に把握し記憶出来る体温測定が要望されている。しかしながら、特許文献1の体温計では、感温素子を患者に常時装着できたとしても、体温の読み取りと記録は、従来と変わらず、測定者がその都度、患者のそばに行っておこなわなければならないので、体温の24時間常時測定に対応することは極めて難しい。
【0011】
また同様に、特許文献2の体温測定システムにおいても、無線タグを被検者の身体に常時装着したとしても、実際の体温測定は、測定者がデータ読み取り装置を無線タグの至近距離に持っていき、測定動作を行う必要があるので、被検者の体温を24時間常時測定することは極めて困難である。
【0012】
本発明の目的は上記課題を解決し、被検者や測定者に負担をかけることなく体温を常時測定できる温度測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の温度測定装置は、下記記載の構成を採用する。
【0014】
本発明の温度測定装置は、感温素子と第1のコイルを備える温度測定部とこの温度測定部に電力を供給する第2のコイルを備えた電力供給部とを有する温度測定装置において、温度測定部と電力供給部とを断熱部を介して一体的に構成したことを特徴とする。
【0015】
また、断熱部と温度測定部又は断熱部と電力供給部とを着脱自在にしても良い。
【0016】
また、電力供給部は、電源を備えた測定装置本体と接続可能にされる。電力供給部と測定装置本体は、ケーブルを介して接続されるようにしても良いし、電力供給部と測定装置本体とを一体となるに構成しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、温度測定部と電力供給部との間は断熱部によって熱的に分離されているので、温度測定部から電力供給部への熱流路が存在せず、温度測定部は被検者の体温を高精度に測定することが出来る。また、電力供給部に測定装置本体を接続した場合であっても、温度測定部の熱が本体に伝わることがなく、温度測定部は被検者の体温を高精度に測定することが出来る。
【0018】
さらに、温度測定部と電力供給部が断熱部を介して一体的に構成されることにより、温度測定部と電力供給部の位置関係は、きわめて至近距離に配置できる。これにより、電力
供給部からの電力が小さくても、コイルによって必要十分な電力を温度測定部に伝達することが出来る。また同様に、コイルによって温度測定部からの温度情報を電力供給部に小さな電力で送信し伝達できるので、他の温度測定装置との識別を必要としない情報伝達が可能である。これにより、温度測定部と電力供給部の通信手段の簡素化と省電力化とを実現できる。
【0019】
また、温度測定部と電力供給部は、コイルによる無接点での電力供給手段を備えており、構造が簡単で薄型軽量を実現でき、被検者の身体に装着しても邪魔にならず違和感も少ないので、常時装着が可能である。
【0020】
また、電力供給部が測定装置本体と接続することで温度測定を行うことができる。これにより、被検者の体温の常時測定が実現でき、被検者の体温の推移を24時間測定できるので、被検者の急な容態の変化や、長期間の容態の推移等を把握でき、被検者に対して、より適切な医療を実施することが可能となる。
【0021】
また、電力供給部と測定装置本体は、ケーブルを介して接続することができる。この場合、測定装置本体を取り外すときは、測定部と電力供給部と切り離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の温度測定装置の基本構成を説明する模式的な側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の温度測定装置の断熱材の配設場所と着脱自在構造を説明する模式的な側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の温度測定装置の内部構成を説明するブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の変形例を説明する模式的な側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の温度測定装置を説明する模式的な側面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の温度測定装置の着脱自在構造を説明する模式的な側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態の温度測定装置の体温測定例を説明する斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の本体部の内部構成を説明するブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の温度測定装置の構成を説明する模式的な側面図である。
【図10】従来の体温測定システムを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面により本発明の実施の形態を詳述する。
[各実施形態の特徴]
第1の実施形態の特徴は、本発明の基本形であり、構造が簡単で被検者に違和感なく装着できる構成である。第2の実施形態の特徴は、電源等を備えた本体部をケーブルを介して接続した構成である。第3の実施形態の特徴は、電源等を備えた本体部を直接接続して一体化した構成である。
【実施例1】
【0024】
[第1の実施形態の温度測定装置の構成説明:図1]
第1の実施形態の温度測定装置の基本構成について図1を用いて説明する。図1において、1は第1の実施形態の温度測定装置である。温度測定装置1は、温度測定部10と電力供給部30を備えている。温度測定部10は、体温を測定する被検者の皮膚6に直接接触して体温を測定する機能を備えており、第1のコイル11と感温素子21とを有している。また、温度測定部10の下面12には、被検者の皮膚6に温度測定部10を貼り付けて装着するためのシート状の粘着材13が配設されている。
【0025】
また、電力供給部30は、温度測定部10に電力を供給するための第2のコイル31を有している。温度測定部10と電力供給部30の間には、熱抵抗が高くシート状の薄い断熱部32が配設され、温度測定部10と電力供給部30は、この断熱部32を介して一体的に構成される。このように、温度測定部10と電力供給部30の間には、断熱部32が配設されているので、温度測定部10と電力供給部30が一体的に構成されても、熱的には温度測定部10と電力供給部30とは、分離した状態を保つことが出来る。これにより、温度測定部10から電力供給部30への熱流路が存在せず、温度測定部10の感温素子21は、被検者の体温を高精度に測定することが出来る。
【0026】
また、温度測定部10と電力供給部30は、被検者に装着されたとき、被検者に違和感を与えることがないように薄型に構成される。また、温度測定部10と電力供給部30は一体的であるので、温度測定部10に内蔵する第1のコイル11と電力供給部30に内蔵する第2のコイル31は、近接して配設される。この構成によって、電力供給部30の第2のコイル31から温度測定部10の第1のコイル11に電磁波による誘導起電力によって電力が供給されるが、その電力供給効率は、たいへん優れている。
【0027】
また同様に、温度測定部10の第1のコイル11からは、感温素子21で得た温度情報が電磁波による誘導起電力によって電力供給部30の第2のコイル31に伝達されるが、その伝達効率もたいへん優れている。また、前述したように、温度測定部10と電力供給部30は一体的に構成されるので、温度測定部10と電力供給部30の位置関係がずれることがなく、内蔵する第1のコイル11と第2のコイル31の位置関係もずれることがない。これによって、第1のコイル11と第2のコイル31の電磁波による送受信のレベルは変動することがなく、きわめて安定した電力供給と情報伝達を実現することが出来る。[第1の実施形態の温度測定装置の断熱材の配設と着脱自在構成の説明:図2]
次に、第1の実施形態の温度測定装置の断熱材の2つの配設例と着脱自在構成を図2(a)と図2(b)を用いて説明する。図2(a)において、断熱部32は電力供給部30の下面33に固着された構成である。そして、断熱部32は対向する温度測定部10の上面14と、図示しない手段によって矢印Mのように着脱自在である。
【0028】
この構成によって、温度測定部10と電力供給部30は着脱自在となる。ここで、温度測定部10と電力供給部30の着脱自在を実現するために、一例として、温度測定部10の上面14の全体、または一部に粘着力の弱い粘着材(図示せず)を貼り付けるか、または、温度測定部10の上面14の表面全体、または表面一部に粘着処理を施す。これにより、温度測定部10の上面14と、電力供給部30の下面33の断熱部32を密着させることで、温度測定部10と電力供給部30は固着することができる。
【0029】
また、温度測定部10と電力供給部30が固着した状態で、電力供給部30を温度測定部10から所定の力で引き離すならば、粘着材または粘着処理の粘着力は弱いので、電力供給部30は温度測定部10から分離することが出来る。この結果、温度測定部10と電力供給部30は着脱自在となるのである。
【0030】
また同様に、図2(b)において、断熱部32は温度測定部10の上面14に固着された構成である。そして、断熱部32は電力供給部30の下面33と、図示しない手段によって矢印Mのように着脱自在である。この構成によって、温度測定部10と電力供給部30は着脱自在となる。そして、温度測定部10と電力供給部30の着脱自在を実現するために、図2(a)と同様に、温度測定部10の上面14の断熱部32の表面全体、または断熱部32の表面の一部に粘着材(図示せず)を貼り付けるか、また、断熱部32の表面全体、または断熱部32の表面の一部に粘着処理を施す。
【0031】
これにより、温度測定部10の上面14の断熱部32と、電力供給部30の下面33を密着させることで、温度測定部10と電力供給部30は固着し、また、所定の力で引き離すならば、電力供給部30は温度測定部10から分離することが出来る。
【0032】
ここで、温度測定部10と電力供給部30を着脱自在とする粘着材、または粘着処理は、使い捨て使用となる温度測定部10の上面14に形成するほうがよい。これは、温度測定部10と電力供給部30の着脱を繰り返すと、粘着材の粘着力が弱まるが、使い捨てをする温度測定部10の側に粘着材または粘着処理を形成すれば、温度測定部10を使い捨てして、新しい温度測定部10を使用するごとに、粘着材も新しくなって所定の粘着力を維持できるからである。なお、粘着材または粘着処理の形成位置は限定されるものではない。
【0033】
また、温度測定部10と電力供給部30の着脱自在は、粘着材ではなく、磁石を配設することで実現しても良い。すなわち、図2(a)または図2(b)において、電力供給部30の下面33近傍に図示しないが薄型の磁石を配設し、この磁石に対向して温度測定部10の上面14の近傍にも図示しないが薄型の磁石を配設する。これにより、それぞれの磁石が引き合う磁力によって温度測定部10と電力供給部30は、着脱自在を実現することが出来る。
【0034】
このように、温度測定部10と電力供給部30は、断熱部32を介して着脱自在に構成できるので、温度測定部10を被検者の皮膚6(図1参照)に粘着材13によって貼り付け装着したあとで、電力供給部30を必要に応じて着脱することが可能である。なお、温度測定部10と電力供給部30の着脱手段は、粘着材や磁石を用いる方法に限定されず、確実に着脱出来るものであれば、その方式は限定されない。
[第1の実施形態の温度測定装置の内部構成の説明:図3]
次に、第1の実施形態の温度測定装置の内部構成を図3のブロック図を用いて説明する。図3において、温度測定装置1の温度測定部10は、制御IC20と、前述した第1のコイル11によって構成される。制御IC20は、半導体集積回路であり、前述の感温素子21と制御部22、及び電源部23を内蔵している。
【0035】
制御IC20に内蔵する感温素子21は、半導体温度センサであり、温度測定部10の下面12に密着する被検者の皮膚6(図1参照)の温度が効率よく伝達されるように、温度測定部10の下面12に近接した位置に配設されると良い。この感温素子21からは、被検者の温度情報である温度信号P1が出力する。なお、感温素子21は、制御IC20に内蔵せず、サーミスターなどを制御IC20の外部に配設しても良い。
【0036】
制御IC20の制御部22は、感温素子21からの温度信号P1を入力し、その温度情報に基づいた高周波の送信信号P2を出力する。制御IC20の電源部23は、第1のコイル11からの高周波の起電力P3を入力し、電源電圧V1を出力して制御部22に電源として供給する。
【0037】
第1のコイル11は、電力供給部30の第2のコイル31からの電磁波(矢印C)によって誘導起電力を発生し、起電力P3を電源部23に供給する。また、第1のコイル11は、制御部22からの送信信号P2を入力して電磁波(矢印D)を放射する。このように、温度測定部10の内部は、第1のアンテナ11と制御IC20だけで構成するので、薄型軽量である。
【0038】
電力供給部30は、第2のコイル31と、この第2のコイル31に接続する入出力端子34を備えている。第2のコイル31は、外部から入出力端子34に供給される高周波の電力信号P4を入力して電磁波(矢印C)を放射し、温度測定部10に電力を供給する。また、第2のコイル31は、温度測定部10の第1のコイル11が発生する電磁波(矢印D)を受信して受信信号P5を入出力端子34から出力する。なお、入出力端子34は、温度測定装置1の本体部に接続されるが、本体部の説明は後述する。このように、電力供給部30の内部は、第2のアンテナ31だけで構成するので、薄型軽量である。
【0039】
ここで、温度測定部10と電力供給部30の間には、前述したように、両者を熱的に分離する断熱部32が配設されているが、断熱部32は電磁波を通すので、第2のコイル31からの電磁波(矢印C)も第1のコイル11からの電磁波(矢印D)も妨げられることなく断熱部32を通過できる。これにより、電力供給部30から温度測定部10へワイヤレスで電力供給が出来、また、温度測定部10から電力供給部30へワイヤレスで温度情報を伝達することが出来る。
【0040】
なお、第1のコイル11は、本実施形態においては、電力を供給する電磁波(C)の受信と、送信信号P2の電磁波(矢印D)の放射をひとつのコイルで兼ねているが、この構成に限定されず、受信と放射を2つのコイルに分けて構成しても良い。また同様に、第2のコイル31においても、受信と放射を2つのコイルで構成しても良い。これにより、受信コイルと放射コイルをそれぞれ最適の形状と位置に構成できるので、それぞれの伝達効率が向上する可能性がある。
[第1の実施形態の温度測定装置の動作説明:図3]
次に、第1の実施形態の温度測定装置の動作を図3を用いて説明する。図3において、温度測定部10を被検者の皮膚6(図1参照)に装着し、温度測定部10と電力供給部30を結合して一体化した状態で外部から電力供給部30に電力信号P4が供給されると、電力供給部30の第2のコイル31から電磁波(矢印C)が放射する。この電磁波が温度測定部10の第1のコイル11に伝達すると誘導起電力が発生し、第1のコイル11から高周波の起電力P3が出力する。制御IC20の電源部23は起電力P3を入力し、内部で整流して直流の電源電圧V1を出力する。
【0041】
次に制御IC20の制御部22は、この電源電圧V1が印加されることで動作を開始し、感温素子21からの温度信号P1を入力する。ここで、感温素子21は、被検者の皮膚6(図1参照)に近接して配設されているので、被検者からの体温(矢印E)が効率よく感温素子21に伝達され、感温素子21は体温を高精度に温度信号P1に変換することが出来る。
【0042】
更に制御部22は、温度信号P1によって得た温度情報を含んだ高周波の送信信号P2を第1のコイル11に出力する。第1のコイル11が送信信号P2を入力して電磁波(矢印D)を放射すると、その電磁波は電力供給部30の第2のコイル31に伝達して誘導起電力が発生し、第2のコイル31から受信信号P5が出力して、温度情報が電力供給部30に伝達されることになる。このようにして、温度測定部10と電力供給部30は、無接点で電力の供給と温度情報の伝達を行うことが出来る。
【0043】
また、前述したように、温度測定部10と電力供給部30の間には、断熱部32が配設
されているので、温度測定部10から電力供給部30への熱流路が存在しないために、被検者の体温(矢印E)が電力供給部30に伝わることがなく、温度測定部10の感温素子21は、被検者の体温を高精度に測定することが出来る。
【0044】
また、前述したように、温度測定部10と電力供給部30の間の断熱部32は、薄いシート状であるので、温度測定部10と電力供給部30の物理的な距離は非常に短い距離で構成出来る。これにより、温度測定部10と電力供給部30との無接点による電力の供給と温度情報の伝達は、距離が短いので伝達効率が高く、安定した動作を実現することが出来る。
[第1の実施形態の変形例の構成説明:図4]
次に、第1の実施形態の温度測定装置の2つの変形例の構成を図4(a)と図4(b)を用いて説明する。なお、第1の実施形態の温度測定装置1と同一要素には同一番号を付し、重複する説明は省略する。図4(a)において、2は第1の実施形態の変形例の温度測定装置である。温度測定装置2の温度測定部10と電力供給部30は、樹脂部材15によって成形されて一体化しており、温度測定部10と電力供給部30との間に断熱部32が形成されている。
【0045】
この構造によって、温度測定装置2の温度測定部10と電力供給部30は、固着して分離することが出来ないが、薄型構造であるので、温度測定部10の下面の粘着材13によって被検者の皮膚6に装着されても、被検者に大きな違和感を与えることはない。また、温度測定部10と電力供給部30が、一体化することで構造が簡単になり、薄型化が容易である。なお、この第1の実施形態の変形例の温度測定装置2の内部の基本構成と機能は、前述の第1の実施形態の温度測定装置1と同様であるので、説明は省略する。
【0046】
次に、第1の実施形態の温度測定装置の他の変形例を図4(b)を用いて説明する。
図4(b)において、3は第1の実施形態の他の変形例の温度測定装置である。温度測定装置3は温度測定部10と電力供給部30を有し、接続部材16によって結合され一体化している。また、温度測定部10と電力供給部30との間に断熱部32が形成されている。なお、図4(b)においては、断熱材32は、温度測定部10の上面14に配設しているが、断熱材32は、電力供給部30の下面33に配設しても良い。
【0047】
この構造によって、温度測定装置3の温度測定部10と電力供給部30は、接続部材16によって固着され分離することは出来ないが、薄型構造であるので、温度測定部10の下面の粘着材13によって被検者の皮膚6に装着されても、被検者に大きな違和感を与えることはない。なお、この第1の実施形態の変形例の温度測定装置3の内部の基本構成と機能は、前述の第1の実施形態の温度測定装置1と同様であるので、説明は省略する。また、温度測定部10と電力供給部30の間に接続部材16が配設されることで、前述の温度測定装置2より厚みが若干増すことが考えられるが、僅かな増加であるので、温度測定装置としての機能や特性に影響を及ぼすことはない。
【実施例2】
【0048】
[第2の実施形態の温度測定装置の構成説明:図5]
次に、第2の実施形態の温度測定装置の構成について図5を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同一要素には同一番号を付し、重複する説明は一部省略する。図5において、温度測定装置1の温度測定部10と電力供給部30は、前述の第1の実施形態と同一であるが、電力供給部30の入出力端子34に有線であるケーブル35の一方の端部が接続され、このケーブル35の他方の端部は、温度測定装置1の本体部40に接続される。
【0049】
この本体部40は、内部に電池等で構成される電源41を備えており、この電源41からの所定の電力がケーブル35を通って電力供給部30に供給される。このように、温度
測定部10と電力供給部30は、本体部40に接続して電源の供給を受けて動作することが出来る。
[第2の実施形態の温度測定装置の分離構造の説明:図6]
次に、第2の実施形態の着脱自在構造を図6を用いて説明する。図6において、本実施形態の温度測定装置1は、前述の実施形態1と同様に、温度測定部10と電力供給部30が、矢印Mで示すように着脱自在であって、必要に応じて分離できる構成である。ここで、温度測定部10は、下面12の粘着材13によって被検者の皮膚6に常時貼り付けることができる。一方、電力供給部30の下面33には断熱部32が固着されており、電力供給部30はケーブル35を介して本体部40に接続している。
【0050】
このように、第2の実施形態の温度測定装置1は、電力供給部30と本体部40がケーブル35によって接続されており、温度測定部10と電力供給部30が着脱自在であるので、第2の実施形態の温度測定装置1は、図5で示すように温度測定部10と電力供給部30が一体化した形態と、図6で示すように、温度測定部10と電力供給部30が分離した形態の2つの形態を有している。
【0051】
すなわち、温度測定部10は、被検者の皮膚6に常時装着することが出来、被検者の体温を測定する場合は、図5に示すように、温度測定部10と電力供給部30を一体化して体温の測定を行う。また、被検者が移動する場合や、体温の測定が不必要である場合などでは、図6に示すように、温度測定部10と電力供給部30とを分離して、被検者は薄い温度測定部10のみを装着した状態にすることができる。
【0052】
このように、体温の測定の有無に応じて温度測定装置が2つの形態を備えることで、測定を開始するごとに、温度測定部10を被検者に装着し直す必要がなく、被検者と測定者にとって、使い勝手の良い温度測定装置を提供できる。また、温度測定部10と電力供給部30が着脱自在であり、温度測定部10を被検者に常時装着できることは、温度測定部10の装着位置や装着状態を一定に保つことが出来るので、測定バラツキの要因を排除して、再現性に優れた体温測定を実現することが可能である。
[第2の実施形態の温度測定装置の体温測定例の説明:図7]
次に、第2の実施形態の体温測定例を図7を用いて説明する。図7は、前述した図5のように、温度測定部10と電力供給部30が一体化して、被検者の体温を測定している状態を示している。
【0053】
図7において、温度測定部10と電力供給部30は、断熱部32を介して一体化している。すなわち、温度測定部10の上面14に断熱部32を挟んで電力供給部30が密着している。また、電力供給部30の側面にケーブル35の一方の端部が接続し、ケーブル35の他方の端部は、本体部40に接続している。本体部40は、電源41(破線で示す)と、測定した体温を表示する表示部42を備えている。なお、46は外部の機器(図示せず)と無線によって送受信するアンテナであるが、このアンテナ46については後述する。
【0054】
ここで、本体部40の電源41からケーブル35を介して電力供給部30に電力が供給されると、前述したように、電力供給部30の第2のコイル31(図1参照)から温度測定部10の第1のコイル11(図1参照)に電磁波によって電力が供給される。また、温度測定部10は電力の供給を受けると、感温素子21(図1)が被検者の体温を測定して、その温度情報を第1のコイル11から電力供給部30の第2のコイル31に伝達し、電力供給部30に伝達された温度情報は、ケーブル35を介して本体部40に伝達され、本体部40の内部で処理を行い、表示部42に測定された体温が表示される。
【0055】
このように、被検者に装着される温度測定部10と電力供給部30は、図示するように
薄型であるので、被検者に違和感を与えずに常時装着できる。また、本体部40は、ケーブル35によって、温度測定部10と電力供給部30から離れた位置に置くことが出来、これによって、被検者から所定の離れた距離で、測定者(図示せず)は測定結果を読み取ることが出来る。なお、ケーブル35の長さは任意であって、測定者が本体部40を操作しやすいように最適の長さにすることが出来る。
【0056】
また、前述したように、温度測定部10と電力供給部30は、着脱自在であるので、体温測定を行わないときは、温度測定部10から電力供給部30を分離して、温度測定部10のみを被検者に装着しておけば、被検者に負担をかけないばかりか、再測定の時には、ただちに、電力供給部30を一体化すれば、すみやかに体温測定を再開することが可能である。
【0057】
また、温度測定部10は、構造が簡単で低コストで製造できるので、被検者の皮膚に直接触れる温度測定部10を被検者ごとに使い捨て使用することが可能である。このため、感染防止などの衛生管理に優れて、使い勝手の良い温度測定装置を提供することが出来る。
【0058】
また、温度測定部10から分離した電力供給部30と本体部40は、他の温度測定部10を装着した被検者に使用することが出来るので、温度測定装置1の電力供給部30と本体部40は、未使用状態を減らして装置の稼働率を向上させることができる。
【0059】
なお、第2の実施形態は、前述した第1の実施形態の変形例(図4参照)のように、温度測定部10と電力供給部30が固着して一体化した形態でも、ケーブル35を接続して本体部40から電源を供給し、使用することができる。この場合、温度測定部10のみを被検者に装着しておくことは出来ないが、装置の構造が簡単であるので、更なる薄型化が容易であり、常に常時測定が必要な被検者に対して好適である。
[第2の実施形態の本体部の内部構成の説明:図8]
次に、第2の実施形態の本体部40の内部構成の一例を図8を用いて説明する。なお、温度測定部10と電力供給部30は図3を参照する。図8において、本体部40は、電源41、制御部43、メモリ44、表示部42、及び送受信部45、アンテナ46等によって構成する。電源41は、二次電池が好ましいが一般的な乾電池でも良い。電源41からは、所定の電源電圧V2が出力して、制御部43に入力し制御部43を駆動する。また、図示しないが電源電圧V2は、表示部42と送受信部45にも供給される。
【0060】
制御部43は、本体部40の全体を制御する機能を備えており、前述の電力供給部30にケーブル35を介して電力信号P4を出力し、また、ケーブル35を介して電力供給部30から受信信号P5を入力する。また、メモリ44は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、温度測定部10で測定した温度情報(体温)を測定時間毎にデジタルデータとして記憶する。
【0061】
また、表示部42は、温度測定部10で測定した温度情報をデジタル表示やグラフ表示で表示する機能を備えている。また、送受信部45は、温度測定部10で測定した温度情報を外部の機器(図示せず)にアンテナ46で無線によって送信する機能を備えている。また、送受信部45は、外部の機器から制御信号を受信する機能も備えることが出来る。
【0062】
なお、メモリ44、表示部42、送受信部45は、必ずしも必要ではなく、温度測定装置の仕様に応じて構成して良い。たとえば、外部の機器と通信する必要がなければ、送受信部45は不要である。また、測定した温度情報を外部の機器に常に送信して、外部の機器で温度情報を確認するのであれば、本体部40の表示部42は無くても良い。
[第2の実施形態の本体部の動作説明:図3、図8]
次に、本体部40の動作を中心に温度測定装置の全体動作の概略を図3と図8を用いて説明する。本体部40の制御部43が電源41からの電源電圧V2の供給を受け、高周波の電力信号P4を出力してケーブル35を介して電力供給部30に出力すると、前述したように、電力供給部30からは、温度測定部10が測定した温度情報を含んだ高周波の受信信号P5が出力されて、ケーブル35を介して本体部40の制御部43に入力する。
【0063】
次に制御部43は、受信した受信信号P5から温度情報を抽出し、予め決められたサンプリング時間毎に温度情報を取得し、必要に応じて平均化等の演算処理を行った後に、メモリ44にデータバスP11を介して記憶する。また、制御部43は、取得した温度情報を表示信号P12として表示部42に出力し、表示部42によって温度情報(体温)を表示する。
【0064】
この表示部42は、取得した温度情報をリアルタイムに表示する機能の他に、所定の期間の最高体温や最低体温、及び平均体温などを表示する機能、または、体温の変化をグラフで表示するなどの機能を備えることができる。
【0065】
また、制御部43は、取得した温度情報を通信信号P13として送受信部45に出力し、送受信部45は、アンテナ46によって外部の機器と送受信を行い、取得した温度情報を順次送信する。なお、制御部43は、外部の機器からの制御信号を送受信部45によって受信し、外部からの制御信号に基づいて、測定の開始や終了、メモリ44内のデータ一括送信等の機能を備えることが出来る。
【0066】
ここで、本体部40からの温度情報を受信する外部の機器(図示せず)に、大容量のメモリやグラフ表示のモニタを備えれば、被検者の体温を長期間記録出来ると共に、リアルタイムで体温の変化等を確認できるので、本発明の温度測定装置によって24時間の常時測定を行い、被検者から離れた場所に設置した外部の機器で、被検者(患者)の病状の常時観察や病状の急変などに即対応することが可能となる。
【実施例3】
【0067】
[第3の実施形態の温度測定装置の構成説明:図9]
次に、第3の実施形態の温度測定装置の構成について図9を用いて説明する。図9において、第3の実施形態の温度測定装置1の本体部50は、電源51と小型の表示部52を内蔵しており、前述した第2の実施形態の本体部40と同様であるが、第3の実施形態の本体部50は、電力供給部30の上面36に固着し、電力供給部30は本体部50と一体になる構成である。
【0068】
このため、第3の実施形態では、温度測定装置1の全体が被検者に装着されるので、温度測定部10と電力供給部30が薄型軽量であることはもちろんであるが、本体部50も薄型軽量であることが好ましい。従って、本体部50の電源51は小型のボタン型電池が好ましく、また、表示部52は、薄型小型の液晶パネルなどが好ましい。なお、表示が必要でない場合は、表示部52の代わりに図示しないが小型の送受信部を組み込んで、外部の機器に無線で温度情報を伝達すると良い。
【0069】
なお、53は接続端子であり、本体部50と電力供給部30は、この接続端子53によって、本体部50からの電力を電力供給部30に伝達し、また、電力供給部30からの温度情報を本体部50に伝達する。
【0070】
このように、第3の実施形態は、本体部50と電力供給部30がケーブルレスで一体であるので、取り扱いが容易であるメリットを有している。なお、温度測定部10と電力供給部30は、第2の実施形態と同様に着脱自在の構造であるので、温度測定部10を被検
者に常時装着し、体温を測定するときだけ、本体部50が一体となった電力供給部30を温度測定部10に密着すれば良いので、第3の実施形態においても、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0071】
また、第3の実施形態において、前述の第1の実施形態の変形例(図4参照)のように、温度測定部10と電力供給部30が固着して一体であっても良い。これによって、温度測定部10と電力供給部30と本体部50のすべてが一体化するので、被検者に装着する装置の形状はある程度大きくなるが、取り扱いは容易となる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の温度測定装置は、薄型軽量であると共に、被検者の体温を高精度に常時測定し記録できるので、被検者に対して常に適切な医療を実施する高精度高機能体温計として幅広く利用することが出来る。
【符号の説明】
【0073】
1、2、3 温度測定装置
6 皮膚
10 温度測定部
11 第1のコイル
12、33 下面
13 粘着材
14、36 上面
15 樹脂部材
16 接続部材
20 制御IC
21 感温素子
22、43 制御部
23 電源部
30 電力供給部
31 第2のコイル
32 断熱部
34 入出力端子
35 ケーブル
40、50 本体部
41、51 電源
42、52 表示部
44 メモリ
45 送受信部
46 アンテナ
53 接続端子
P1 温度信号
P2 送信信号
P3 起電力
P4 電力信号
P5 受信信号
P11 データバス
P12 表示信号
P13 通信信号
V1、V2 電源電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温素子と第1のコイルを備える温度測定部とこの温度測定部に電力を供給する第2のコイルを備えた電力供給部とを有する温度測定装置において、
前記温度測定部と前記電力供給部とを断熱部を介して一体的に構成したことを特徴とする温度測定装置。
【請求項2】
前記断熱部と前記温度測定部又は前記断熱部と前記電力供給部とが着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
前記電力供給部は、電源を備えた本体と有線で接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の温度測定装置。
【請求項4】
前記電力供給部は、電源を備えた本体と一体となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−98258(P2012−98258A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248622(P2010−248622)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】