説明

温度管理システム

【課題】治験薬その他の各種物体を所定の温度を保持して管理できる温度管理システムを提供する。
【解決手段】断熱性収納器2と、物体6を収納して前記収納器内2に出し入れ可能に収容する熱伝導性の内容器3と、所望数の下部側及び上部側の蓄冷剤5A,5Bと、所望数の下部側及び上部側の蓄熱剤4A,4Bとを備える。下部側の蓄冷剤5Aと蓄熱剤4Aを面接触させ、蓄冷剤5Aを前記収納器2内の底部側に位置して配置し、内容器3を収納器2内の蓄熱剤4A上に載置する。上部側の蓄冷剤5B及び蓄熱剤4Bは面接触させ、蓄熱剤4Bを内容器3上に接触載置して配置する。上下の蓄冷剤5A,5Bの冷熱を上下の蓄熱剤4A,4Bに吸収させ、上下の蓄熱剤4Aの凝固熱を内容器3内へ熱伝導させて内容器3内を所定の温度に保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度管理システムに関する。さらに詳しくは、治験薬その他の薬剤,血液,体液,尿,ヒトの臓器、その他所望の各種物体を収容して所望の温度に管理する温度管理システムに関する。本発明は主に移送,配送,輸送用として用いるが、保管用としても用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、治験薬等の薬剤や各種の検体その他の温度管理を必要とする各種物体を移送,配送,輸送する場合、断熱性容器や断熱性コンテナその他の断熱性収納器が一般使用されている。上記目的に使用される断熱性収納器は、従来より種々の構造や型式のものが数多く提案されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0003】
例えば、ある種の治験薬等は特定の温度(2℃〜8℃)を保持するように温度管理して配送,輸送することが要求されている。前記治験薬等の下限の2℃以下の温度に過剰冷却すると問題が生じると共に上限の8℃をオーバーしても問題が生じる。
【0004】
そこで、従来は、例えば図6に示すような温度管理方法が実施され、或いは試みられている。以下、図6を参照して従来法の問題点を説明する。
【0005】
図6に示す温度管理方法は、いずれも断熱性容器や断熱性コンテナ等の断熱性収納器1内に蓄熱剤10(蓄冷剤)を収容して温度管理する方法が開示されている。前記蓄熱剤10は融点0℃の蓄熱剤(蓄冷剤)で構成されている。この蓄冷剤を−15℃〜−25℃に冷却して使用される。図6の各収納器1は横断面図を示す。
【0006】
図6(a)は、収納器1内の後部側に蓄熱剤10(以下、「蓄冷剤10」という場合もある)を収容した例(第1の方法)を示す。
図6(b)は収納器1内の前部側及び後部側に蓄冷剤1を収容した例(第2の方法)を示す。
図6(c)は収納器1内の前後部側及び両側部側に蓄冷剤1を収容した例(第3の方法)を示す。
図6(d)は収納器1内の前後部側及び両側部側に、第3の方法より枚数を増量して蓄冷剤を収容した例(第4の方法)を示す。
【0007】
しかし、第1〜第4の方法は次のような問題を有している。
(1)器内温度のバラつきの問題
第1の方法は蓄冷剤1との間隔(距離)差に比例して器内温度にバラつきが生じる。即ち、蓄冷剤との間隔差に比例して器内温度が高くなる。前記温度差は収納器の断熱性能が低いほど大になる。
(2)輸送初期の過剰な冷却の問題
第2及び第3の方法は輸送初期の過剰な冷却の問題を有している。即ち、マイナス15℃〜25℃に冷却した蓄冷剤をそのまま使用すると、初期の段階においては器内、したがって、器内の収容物(治験薬等)を過剰に冷却する問題を有している。過剰冷却は蓄冷剤の枚数に比例して高くなると共に収納器の断熱性能が高いほど大になる。上記問題は蓄冷剤を、その融点温度近くになるまで恒温環境に一定時間放置した後に使用することにより解消できる。しかし、この方法は手間な作業が増え、運用効率の悪化を招く問題が発生する。また、蓄冷剤を融点温度にして使用すると、保冷有効時間が短くなる問題が生じる。
(3)蓄冷剤による下限温度の逸脱の問題
第4の方法のように使用する蓄冷剤の枚数を多くすると下限温度(2℃)を逸脱する問題が生じる。また、逆に蓄冷剤の使用枚数を少なくすると、上限逸脱の問題が生じる。
(4)マイナス外気温による下限温度の逸脱の問題
第1ないし第4のいずれの方法によっても、外気温が蓄冷剤の融点以下の場合には、下限温度を逸脱する問題が生じる。
(5)プラス→マイナス外気温による上下限温度逸脱の問題
第1ないし第4のいずれの方法においても、例えば出発地と到達地等の外気温が異なる場合、下限温度又は上限温度の逸脱の問題が生じる。
【0008】
また、例えば、10℃〜15℃、或いは15℃〜25℃の温度を保持するように温度管理して配送,輸送することを要求される物体がある。従来は、上記温度帯内の温度に対応した融点温度の蓄冷剤(蓄熱剤)を使用する温度管理方法が試みられている。しかし、前記蓄冷剤(蓄熱剤)は、一般的に融解潜熱が低く、保冷効果が低いため、多量の蓄冷剤(蓄熱剤)を必要とする。また、前処理が必要で運用が困難であり、コスト高になる問題を有している。さらにまた、マイナス外気温では効果を発揮できない問題も有している。
【0009】
上記のように前記温度管理方法は、上述した問題を有している。しかるに、上記問題を解消し得る温度管理システムは未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実用新案登録第3162492号公報
【特許文献2】特開2007−126188号公報
【特許文献3】特開2002−29573号公報
【特許文献4】実用新案登録第3052676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、上述した諸問題を解消し、所望の各種物体を所定の温度を保持して安定かつ良好に管理できる温度管理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のうち1つの発明(第1の発明)は、所望の各種物体を収納して所定の温度に管理する温度管理システムであって、
開閉蓋部を有する断熱性収納器と、
開閉蓋部を有し、前記物体を収納して前記収納器内に出し入れ可能に収容される熱伝導性の内容器と、
略同一融点の所望数の下部側及び上部側の第1の蓋熱剤と、
略同一融点の所望数の下部側及び上部側の第2の蓋熱剤とを備え、
前記第2の蓋熱剤は、前記第1の蓋熱剤の融点温度より低温融点の蓄熱剤で構成され、
前記下部側の第1及び第2の蓋熱剤は、面接触して重合すると共に第2の蓋熱剤を前記収納器内の底部側に位置して配置され、
前記内容器は、前記収納器内に配置した前記第1の蓋熱剤上に接触載置して配置され、
前記上部側の第1及び第2の蓋熱剤は、面接触して重合すると共に第1の蓋熱剤を前記内容器上に接触載置して配置するように構成したことを特徴とする。
【0013】
本発明の他の1つの発明(第2の発明)は、所望の各種物体を収納して前記物体を所定の温度に保持して管理する温度管理システムであって、
断熱性を有する収納器本体と、断熱性を有し、前記収納器本体の開口部を開閉する開閉蓋部とを備えた断熱性収納器と、
熱伝導性の容器本体と、熱伝導性の開閉蓋部とを有し、前記物体を収納して前記収納器本体内に出し入れ可能に収容される熱伝導性の内容器と、
所望数の下部側の第1及び第2の蓄熱剤と、
所望数の上部側の第1及び第2の蓄熱剤とを備え、
前記下部側及び上部側の各第1の蓄熱剤は略同一融点の蓄熱剤で構成され、
前記下部側及び上部側の各第2の蓄熱剤は略同一融点、かつ、前記第1の蓄熱剤の融点温度より低温融点の蓄熱剤で構成され、
前記下部側の第2の蓄熱剤は、前記収納器本体内の底部側に配置され、
前記下部側の第1の蓄熱剤は、前記下部側の第2の蓄熱剤上に面接触させて重合載置して配置され、
前記内容器は前記下部側の第1の蓄熱剤上に接触載置して配置され、
前記上部側の第1の蓄熱剤は、前記内容器上に接触載置して配置され、
前記上部側の第2の蓄熱剤は、前記上部側の第1の蓄熱剤上に面接触させて重合載置して配置され、前記内容器内に収納した前記物体を温度管理するように構成したことを特徴とする。
【0014】
なお、本発明において、「断熱性収納器」の用語は、断熱性容器,断熱性コンテナ,断熱性収納ボックス,断熱性収納庫、或いは断熱性バック等を含む概念として用いられている。
また、「下部側の第1、第2の蓄熱剤」及び「上部側の第1、第2の蓄熱剤」の「下部側及び上部側」の用語は、説明を理解し易くするために便宜上用いたものである。即ち、本発明においては、「下部側の第1の蓄熱剤」と「上部側の第1の蓄熱剤」は同質ないし略同質の蓄熱剤で構成されている。したがって、両者は区別することなく下部側及び上部側の部位に共通して使用可能なものである。さらにまた、「下部側及び上部側の第2の蓄熱剤」についても第1の蓄熱剤と同様に区別することなく、上下に共通して使用可能なものである。
【0015】
上記のように構成すると、第1の蓄熱剤からの冷熱は第2の蓄熱剤に吸収され、第2の蓄熱剤の凝固点の凝固熱を前記内容器内へ熱伝導される。このように、第1の蓄熱剤の冷熱を内容器へ直接熱伝導するものではなく、第2の蓄熱剤が一旦吸収し、第2の蓄熱剤の凝固熱を内容器内へ熱伝導するものである。したがって、第2の蓄熱剤からの所定温度の凝固熱を内容器内へ効率よく熱伝導させることが可能になる。
【0016】
上記のように第2の蓄熱剤の冷熱を第1が吸収し、第1の蓄熱剤の凝固熱を内容器内へ熱伝導するので、内容器へ収納されている物体を所定の下限以下の温度に冷却するのを防止できる。また、器内温度を均一に保持できる。
【0017】
本発明の他の1つの発明(第3の発明)は第1及び第2の発明において、前記各第1の蓄熱剤は、当該蓄熱剤の凝固点より所望値高温の熱を蓄熱させると共に前記各第2の蓄熱剤は、当該蓄熱剤の凝固点より所望値低温の熱を蓄熱させて使用することを特徴とする。
【0018】
本発明のさらに他の1つの発明(第4の発明)は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記第2の蓄熱剤は、前記第1の蓄熱剤の融点温度より3℃ないし10℃低温融点の蓄熱剤で構成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明のさらに他の1つの発明(第5の発明)は、温度管理方法であって、第1〜第4のいずれかの温度管理システムを利用して所望の各種物体を所定の温度に保持して管理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、次のような作用効果を奏する。
(1)治験薬,検体,その他の各種物体を所定の設定温度を保持して安定、かつ良好に温度管理することができる。
(2)蓄熱剤による温度保持時間を長くすることができる。
(3)器内温度のバラつきの問題を解消し、略均一に保持できる。
(4)初期の段階における過剰冷却を防止できる。
(5)マイナス外気温による下限温度の逸脱の問題を解消できる。
(6)外気温の変動による上下限温度の逸脱の問題を解消できる。
(7)運用効率性を向上することが可能になる。
(8)設備コストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態の温度管理システムの基本構成部を概略的に示す図であって、同図(a)は断熱性収納器の一例の構成を概略的に示す斜視図、同図(b)は熱伝導性の内容器の一例の構成を概略的に示す斜視図、同図(c)は第1及び第2の蓄熱剤を概略的に示す説明図である。
【図2】図1(a)に示す断熱性収納器の構成を概略的に示す図であって、同図(a)は閉蓋状態の中央縦断面説明正面図、同図(b)は収納器本体の横断面説明平面図である。
【図3】本発明の一実施形態の温度管理システムを実施している状態の構成を概略的に示す説明図である。
【図4】前記温度管理システムの作用説明図である。
【図5】本発明の他の実施形態の温度管理システムを実施している状態の構成を概略的に示す説明図である。
【図6】図6(a)〜同(d)は従来の温度管理方法の一例、及びその問題点を説明するために示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の温度管理システムの実施形態の一例について説明する。
【0023】
図1ないし図4は、本発明の一実施形態の温度管理システムを示す。本実施形態(実施形態1)の温度管理システムは、断熱性収納器2と、熱伝導性の内容器3と、所望数の下部側の第1の蓄熱剤4Aと、所望数の下部側の第2の蓄熱剤5Aと、所望数の上部側の第1の蓄熱剤4Bと、所望数の上部側の第2の蓄熱剤5Bとを備える。
【0024】
前記収納器2は任意数の構造及び型式に構成できるが、断熱性能が高い構成のものを採用することが好ましい。
【0025】
本実施形態の前記収納器2は略四角形の断熱性容器状に形成されている。前記収納器2は、断熱性を有し、上端を開口(開口部21)した収納器本体20と、断熱性を有し、本体20の前記開口部21を開閉する開閉蓋部22とを備える。
【0026】
収納器本体2は前後に対向する前壁23a,後壁23bと、左右に対向する側壁23c,23dと、底壁23e(図2(a)参照)とを備え、略四角形断面に形成されている。前壁23a及び両側壁23c,23dの上端近くの外壁面には面状ファスナ24aが固着して取付けてある。
【0027】
開閉蓋部22は、左右の縁部及び前縁部から延出したフラップ25a,25b,25cを備える。各フラップ25a,25b,25cの内側面には前記ファスナ24aと係脱自在に係着する面状ファスナ24bが固着して取付けてある。
【0028】
本実施形態の収納器2は上記構成を具備し、開閉蓋部22で開口部21を閉蓋し、蓋部22の各フラップを本体20の前壁及び両側壁に押接して面状ファスナ24a,24bで係脱自在に止着するように構成されている。なお、上述したように、収納器2は図示以外の任意の構成のものを採用できるものである。
【0029】
前記収納器2は、所望の大きさに形成される。本実施形態では、図2(a)に示すように、閉蓋した状態において、高さの外側寸法Y:約380cm、内側寸法Y:300cm形成されている。また、本体20は、図2(b)に示すように、横幅(左右幅)の外側寸法X:約500cm、内側寸法X:約420cm、前後幅の外側寸法X:約445cm、内側寸法X:約365cmに形成されている。なお、上述したように、収納器2の大きさは、任意に変更可能なものである。
【0030】
前記内容器3は、熱伝導性を有し、上端を開口(開口部31)した容器本体30と、熱伝導性を有し、開口部31を開閉する開閉蓋部32とを備える。内容器3は熱伝導の高い素材を選択して採用する。
熱伝導が高い素材としては、例えばアルミ,アルミ合金,或いは銅等が挙げられる。本実施形態ではアルミ製の内容器を採用している。但し、上記例示した素材に限定するものではない。
【0031】
内容器3は、目的の所望の各種物体6(図3参照)を収納して収納器2内に出し入れ可能に収容するものである。したがって、内容器3の大きさは、収納器2の器内(収納室内)の大きさに対応して設定される。また、収納器2内には内容器の上下に所望数の第1及び第2の蓄熱剤4A,4B,5A,5Bを配置して収容するものである。したがって、内容器3の大きさは、所望数の蓄熱剤を収容する適当な収容スペースを形成して収容器2内に収容できる大きさに形成される。
【0032】
前記第1及び第2の蓄熱剤4A,4B,5A,5Bは、収納して温度管理する所定の温度帯に対応した融点温度の蓄熱剤を選択して採用する。第1の蓄熱剤は、凝固熱を内容器へ熱伝導させるものである。また、第2の蓄熱剤は冷熱を第1の蓄熱剤に吸収させるものである。
【0033】
第1の蓄熱剤4A,4Bは温度管理する所定の温度帯の範囲内の融点温度、例えば、前記温度帯の下限近くないし中間部程度の融点温度の蓄熱剤を採用することができる。第2の蓄熱剤5A,5Bは、前記温度帯の下限以下の融点温度、例えば前記下限温度より約3℃〜10℃低い温度の融点温度の蓄熱剤を採用することができる。
【0034】
以下、本実施形態では、一例として、2℃〜8℃の温度帯で温度管理する場合について具体的に説明する。第1の蓄熱剤として、例えば、融点3℃〜5℃の蓄熱剤を採用できる。第2の蓄熱剤として融点0℃の蓄熱剤(一般に蓄冷剤と称している)を採用できる。
【0035】
本実施形態では、第1の蓄熱剤4A,4Bとして、融点4℃(凝固点3.5℃)のアサヒファイバー社製の蓄熱剤(商品名:サーモパック、登録商標)を採用した。また、第2の蓄熱剤5A,5Bとして、融点0℃のアデカケミカルサプライ社製の蓄熱剤(商品名:エバクール1000W/500N、登録商標)を採用した。この第2の蓄熱剤は一般に蓄冷剤と称されている。
【0036】
また、本実施形態では、2000g/枚の第1の蓄熱剤を2枚(1枚は下部側用、他の1枚は上部側用)使用した。第2の蓄熱剤は1000g/枚のものを4枚(2枚は下部側用、他の2枚は上部側用)使用した。
【0037】
本実施形態の温度管理システムは、例えば次のような手順で実施される。第2の各蓄熱剤5A,5Bは−15℃以下の冷凍庫に10時間以上保管して約−20℃に冷却する。
第1の各蓄熱剤4A,4Bは、4℃以上(例えば約6.5℃)の冷蔵庫に3時間以上保管して約6.5℃(凝固点以上の温度)に冷却(蓄熱)する。
【0038】
次に、図3に示すように、収納器2の蓋部22を開け、冷凍庫から取り出した下部側の第2の蓄熱剤5A(上部側の第2の蓄熱剤5Bでもよい)を本体20の底部側に投入して配置(図示では2枚の蓄熱剤5Aを並べて配置)する。
次いで、冷蔵庫から取り出した下部側の第1の蓄熱剤4A(上部側の第1の蓄熱剤4Bでもよい)を前記蓄熱剤5A上に面接触させて重合載置して配置する。
【0039】
次に、目的の物体6を収納した内容器3を前記第1の蓄熱剤4A上に接触載置して収納器内に配置する。
次いで、冷蔵庫から取り出した上部側の第1の蓄熱剤4Bを内容器3上に接触載置して収納器内に配置する。
【0040】
次いで、冷凍庫から取り出した上部側の第2の蓄熱剤5Bを前記第1の蓄熱剤4B上に面接触させて重合載置して配置した後、収納器2を閉蓋する。
【0041】
上記により、上下の各第2の蓄熱剤5A,5Bからの冷熱(当初は約−20℃であるが約2ないし3時間程度後に0℃になる)は融解状態の上下の第1の蓄熱剤4A,4Bに吸収され、第1の蓄熱剤4A,ABは凝固する。そして、第1の蓄熱剤の凝固点(3.5℃)の凝固熱(約3.5℃〜約4℃)を内容器3内へ熱伝導させるので、内容器内の物体6は前記温度で冷却される。これにより、物体6は所定の温度を保持して温度管理される。
【0042】
図5は本発明の他の実施形態(実施形態2)の温度管理システムを実施している状態を概略的に示す説明図である。
【0043】
実施形態2の温度管理システムは、下部側及び上部側の第1の蓄熱剤4A,4Bをそれぞれ2枚(合計4枚)づつ面接触させて重合して収納器本体20内に配置して構成したものである。他の構成は実施形態1と同様である。
【0044】
実施形態2のように構成すると、上下の各第2の蓄熱剤5A,5Bからの冷熱は第2の蓄熱剤と接触して配置した第1の蓄熱剤4A,4Bに吸収され、これらの第1の蓄熱剤の凝固熱は内容器3に接触して配置した上下の第2の蓄熱剤4A,4Bに熱伝導される。そして、内容器3に接触した各蓄熱剤4A,4Bの凝固熱を内容器3内へ熱伝導させて内容器内の物体6を前記温度で冷却する。これにより、物体6は所定の温度を保持して温度管理される。
【0045】
実施形態2によれば、外気温度の変動による上下限温度の逸脱防止効果を向上させることができる。なお、実施の形態1によっても外気温度の変動による上下限温度の逸脱防止効果を発揮する。
【0046】
上記実施形態では、一例として、2℃〜8℃の温度帯で温度管理する場合について説明したが、本発明は、例えば、10℃ないし15℃、或いは15℃ないし25℃等、所望の温度帯の温度を保持する温度管理システムに適用できる。
【0047】
上記温度帯で温度管理する場合には、それぞれの温度帯に対応する第1及び第2の蓄熱剤を選択して採用し、上述した方法と同様の手順で実施することにより温度管理することができる。なお、第1及び第2の蓄熱剤は、所望に応じて増減可能である。但し、上部側及び下部側の蓄熱剤は、それぞれ少なくとも各1枚の第1と第2の蓄熱剤を組合わせて使用することを条件とする。
【0048】
(試験例)
次に試験例の一例について説明する。この試験例は、2℃ないし8℃の温度管理する場合について、実施形態1で説明した方法に略準じて実施した。この試験例は温度計測試験である。なお、以下の説明では、第1及び第2の蓄熱剤については、下部側及び上部側に区別することなく、単に第1の蓄熱剤及び第2の蓄熱剤の用語で表現する。
【0049】
<温度計測試験実施条件>
使用収納器:実施形態1の断熱性収納器を採用
第1の蓄熱剤:融点4℃(凝固点3.5℃)、2000g/枚の蓄熱剤を2枚使用(上下に1枚づつ使用)
投入条件:6.5℃の冷蔵庫に3時間入れて6.5℃に冷却(蓄熱)し、冷蔵庫から取り出した後、収納器内へ直投入
第2の蓄熱剤:融点0℃(凝固点0℃)、1000g/枚の蓄熱剤を4枚使用(上下に各2枚づつ使用)
投入条件:−20℃の冷凍庫に10時間入れて−20℃に冷却し、冷凍庫から取り出した後、収納器内へ直投入
内容器:アルミ製の内容器を採用
【0050】
上記条件にて収納器内に収容した内容器内の温度を計測した。温度計測は内容器内の中段中央部位P、同下段中央部位P、同中段側面部位P、同下段側面部位Pの各部位について実施(実施時間:48時間)した(図4参照)。その計測結果を下記表1に示す。
なお、下記表1中、最上欄の「R」は試験室内における収納器周囲の温度、最下欄の「T」は時間を示す。また、表1中、P〜Pの各欄の数値は温度(単位:℃)を示す。また、「R」欄の数値は収納器周囲の温度(単位:℃)を示す。
【0051】
【表1】

【0052】
上記表1から明らかなとおり、試験開始時の内容器内のP〜Pの各部位の温度は約18℃であり、開始当初は上限温度(8℃)をオーバーしているが、開始から0.4時間〜0.5時間までの間は温度が急激に下降することが判る。即ち、試験開始から0.4時間後には、各部位P…Pは冷却により約10℃の温度になり、0.5時間後には上限(8℃)内の温度に冷却される。
【0053】
そして、開始から1時間後には約6℃、2時間後には5℃以下になる。また、2時間から約35時間までの間は時間に比例して徐々に下降して約3.5℃〜約3.7℃程度になり、それ以降は徐々に上昇し、48時間後には約4.0〜約4.5℃になる。
【0054】
上記したように、試験開始から0.5時間後には上限内の温度に冷却され、1時間後には約6℃になる。また、2時間から48時間までは約4.8〜約3.5℃の温度に保持される。このように、開始から約0.5時間経過後は、各部位とも上限及び下限温度を逸脱することなく、所定の温度帯(2℃〜8℃)内の温度に安定して保持されることが判明した。また、各部位P〜Pとも略均一の温度に保持できることも実証された。
【0055】
なお、上記した各実施形態は一例として開示したもので、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術思想を越脱しない範囲内において任意に変更可能なものである。
【符号の説明】
【0056】
2 断熱性収納器
3 熱伝導性の内容器
4A 下部側の第1の蓄熱剤
4B 下部側の第2の蓄熱剤
5A 上部側の第1の蓄熱剤
5B 上部側の第2の蓄熱剤
6 物体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の各種物体を収納して所定の温度に管理する温度管理システムであって、
開閉蓋部を有する断熱性収納器と、
開閉蓋部を有し、前記物体を収納して前記収納器内に出し入れ可能に収容される熱伝導性の内容器と、
略同一融点の所望数の下部側及び上部側の第1の蓋熱剤と、
略同一融点の所望数の下部側及び上部側の第2の蓋熱剤とを備え、
前記第2の蓋熱剤は、前記第1の蓋熱剤の融点温度より低温融点の蓄熱剤で構成され、
前記下部側の第1及び第2の蓋熱剤は、面接触して重合すると共に第2の蓋熱剤を前記収納器内の底部側に位置して配置され、
前記内容器は、前記収納器内に配置した前記第1の蓋熱剤上に接触載置して配置され、
前記上部側の第1及び第2の蓋熱剤は、面接触して重合すると共に第1の蓋熱剤を前記内容器上に接触載置して配置するように構成した
ことを特徴とする、温度管理システム。
【請求項2】
所望の各種物体を収納して前記物体を所定の温度に保持して管理する温度管理システムであって、
断熱性を有する収納器本体と、断熱性を有し、前記収納器本体の開口部を開閉する開閉蓋部とを備えた断熱性収納器と、
熱伝導性の容器本体と、熱伝導性の開閉蓋部とを有し、前記物体を収納して前記収納器本体内に出し入れ可能に収容される熱伝導性の内容器と、
所望数の下部側の第1及び第2の蓄熱剤と、
所望数の上部側の第1及び第2の蓄熱剤とを備え、
前記下部側及び上部側の各第1の蓄熱剤は略同一融点の蓄熱剤で構成され、
前記下部側及び上部側の各第2の蓄熱剤は略同一融点、かつ、前記第1の蓄熱剤の融点温度より低温融点の蓄熱剤で構成され、
前記下部側の第2の蓄熱剤は、前記収納器本体内の底部側に配置され、
前記下部側の第1の蓄熱剤は、前記下部側の第2の蓄熱剤上に面接触させて重合載置して配置され、
前記内容器は前記下部側の第1の蓄熱剤上に接触載置して配置され、
前記上部側の第1の蓄熱剤は、前記内容器上に接触載置して配置され、
前記上部側の第2の蓄熱剤は、前記上部側の第1の蓄熱剤上に面接触させて重合載置して配置され、前記内容器内に収納した前記物体を温度管理するように構成した
ことを特徴とする、温度管理システム。
【請求項3】
前記各第1の蓄熱剤は、当該蓄熱剤の凝固点より所望値高温の熱を蓄熱させると共に前記各第2の蓄熱剤は、当該蓄熱剤の凝固点より所望値低温の熱を蓄熱させて使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の温度管理システム。
【請求項4】
前記第2の蓄熱剤は、前記第1の蓄熱剤の融点温度より3℃ないし10℃低温融点の蓄熱剤で構成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の温度管理システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかの温度管理システムを利用して所望の各種物体を所定の温度に保持して管理することを特徴とする、温度管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−10523(P2013−10523A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143449(P2011−143449)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(598039242)株式会社 スギヤマゲン (4)
【Fターム(参考)】