説明

温度補償方法およびそれを用いた温度補償回路ならびにセンサおよび給湯器

【課題】感熱素子の周囲温度と、感熱素子の温度補償のための処理を行う処理手段(処理回路)の周囲温度とが互いに無関係に変化しても、適切な温度補償が行えるようにする。
【解決手段】検出対象の温度に関する情報から感熱素子1の温度補償を行う一方、前記感熱素子1の温度補償のための処理および検出対象に対する所望の検出を行う処理手段(これには、例えば差動増幅器7が含まれる)に対してもそれ自身の温度に関する情報から温度補償を行うようにした。前記処理手段は、当該処理手段のオフセット調整および/またはゲイン調整をするための感温素子R9,R2を有していることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱素子を通電動作して計測を行う場合、周囲温度の影響を排除するよう温度補償する温度補償方法およびそれを用いた温度補償回路ならびにセンサおよび給湯器に関する。感熱素子を利用した各種センサとしては流速(流量含む)、気体や液体の種別、圧力、湿度等のように、感熱素子に触れる気体または液体の分子数の単位時間、単位面積当たりの変化を検出するものであれば、本発明のセンサに含まれる。
【背景技術】
【0002】
感熱素子を流速(流量)センサ等の各種センサに利用して流速、圧力、湿度等の検出を行う装置においては、感熱素子の周囲温度依存性を排除するため温度補償回路で温度補償するようになっているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
こうした温度補償回路の従来には、感熱素子を2つ用い、一方の感熱素子を検出用感熱素子として検出対象の検出信号を出力し、他方の感熱素子を温度補償用感熱素子として周囲温度の検出信号を出力し、両出力の演算処理で感熱素子の周囲温度依存性を補償して検出対象を周囲温度に影響されることなく検出できるようにした方式のものがある。
【特許文献1】特開平7−318364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような方式にあってはあらかじめ2つの感熱素子のオフセットを調整したり、ゲインを調整する必要があるが、このオフセットの調整後にゲインの調整をする際に事前に調整したオフセット値がずれてしまい、ゲインの調整後に、再度、オフセットを調整する工程を何度か繰り返して調整する必要があり、大変に手間のかかるものであった。また、調整工程において感熱素子の周囲温度を変える必要があり、そのための設備が必要となること、また、検出対象をそれぞれの温度環境下でなじませるための時間が必要である等の問題がある。
【0005】
また、感熱素子の周囲温度と、前記感熱素子の温度補償のための処理等を行う処理手段(処理回路)の周囲温度とが互いに無関係に変化する場合は、適切な温度補償が行えない、という問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するために、本発明の温度補償方法においては、検出対象の温度に関する情報から感熱素子の温度補償を行う一方、前記感熱素子の温度補償のための処理および検出対象に対する所望の検出を行う処理手段に対してもそれ自身の温度に関する情報から温度補償を行うことを特徴としている。
【0007】
また、本発明の温度補償回路においては、検出対象に対する所望の検出を行うための感熱素子と、前記検出対象の温度に関する情報から前記感熱素子の温度補償の処理をする処理手段とを有し、前記処理手段自身の温度に関する情報から当該処理手段に対する温度補償を行うことを特徴としている。
【0008】
上記本発明の温度補償回路においては、前記処理手段は、当該処理手段のオフセット調整および/またはゲイン調整をするための感温素子を有していることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、検出対象の温度に関する情報から感熱素子の温度補償を行う一方、前記感熱素子の温度補償のための処理および検出対象に対する所望の検出を行う処理手段に対してもそれ自身の温度に関する情報から温度補償を行うようにしたから、感温素子と処理回路とが互い無関係に周囲温度が変化しても、より適切な温度補償が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
なお、本発明においては、説明を簡単にするために検出対象として例えば流速であれば流速ゼロの状態での調整方法を例に挙げて説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1にかかる温度補償方法は、少なくとも2つの感熱素子のうちの一方を検出用感熱素子とし、他方を温度補償用感熱素子とし、前記両感熱素子それぞれを異なる加熱温度となるように処理する第1ステップと、任意の周囲温度のもとで前記両感熱素子の出力電圧が一致するようにオフセット調整する第2ステップと、前記オフセット調整を維持した状態で前記両感熱素子の出力電圧が他の任意の周囲温度のもとで一致するようにゲイン調整する第3ステップとを少なくとも含むものである。この温度補償方法について図1で示される温度補償回路と図2の周囲温度に対する感熱素子の出力電圧特性とに基づいて説明することにする。
【0013】
まず、図1の温度補償回路は、検出用感熱素子1と、温度補償用感熱素子2と、定電流源3,4と、オフセット調整回路5と、ゲイン調整回路6と、差動増幅器7とを備えて構成されている。
【0014】
ここで説明を簡単にするために検出用感熱素子1と温度補償用感熱素子2は共に同じ特性を有しているものとする。温度補償用感熱素子2は、検出用感熱素子1とは検出対象(例えば給湯器内のガス流量等)に対して同一の環境下に配置される。検出用感熱素子1は、定電流源3からの通電電流I1とそれの周囲温度とに対応した出力電圧Vout1を発生している。温度補償用感熱素子2は、定電流源4からの通電電流I2(<I1)と周囲温度とに対応した出力電圧Vout2を発生している。検出用感熱素子1への通電電流I1を温度補償用感熱素子2への通電電流I2より大きくしているのは、温度補償用感熱素子2の検出対象に対する感度を、検出用感熱素子1の検出対象に対する感度よりも小さくするためである。
【0015】
ここで周囲温度がT1のときにおいて検出用感熱素子1は通電電流I1が供給されることでその出力電圧はVout1となっている。温度補償用感熱素子2には通電電流I1より小さい通電電流I2が供給されることでその出力電圧はVout1より小さいVout2となっている。すなわち、前述のように両感熱素子1,2が同じ特性であったとすると、検出用感熱素子1への通電電流I1が温度補償用感熱素子2への通電電流I2より大きくしているため、通電による素子1での発熱量は素子2でのそれより大きく、したがって、感熱素子1の抵抗値R1
は感熱素子2の抵抗値R2より大きくなっている。よって各出力電圧は
Vout1=I1×R1
Vout2=I2×R2
となり、これを変形すると
Vout1={I2×(I1/I2)}×{R2+(R1−R2)}
=[I2×{R2+(R1−R2)}]×(I1/I2)
={Vout2+I2×(R1−R2)}×(I1/I2)
となる。
【0016】
したがって、この周囲温度T1においては両感熱素子1,2にはその出力電圧Vout1、Vout2にオフセットがある。このオフセットはオフセット調整回路5で調整される。オフセット調整回路5は可変抵抗8と増幅器9とを有しており、温度補償用感熱素子2の出力電圧Vout2は、両感熱素子1,2の抵抗値差(R1−R2)に相当する分をオフセット調整回路5の可変抵抗器8によって、また、両感熱素子1,2への通電電流比(I1/I2)に相当する分をオフセット調整回路5の増幅器9によって調整され、結果として、オフセット調整回路5によってVout1と同一のVout3に調整される。
【0017】
周囲温度がT1で変化が無ければ、このオフセット調整によりオフセット調整回路5の出力電圧Vout3と検出用感熱素子1の出力電圧Vout1は互いに同一であるから、両出力電圧Vout1とVout3とを差動増幅器7に入力することで、差動増幅器7の出力電圧Vout5がゼロとなり、検出用感熱素子1に対する温度補償がされることになる。
【0018】
しかしながら、周囲温度がT1からΔTだけ変化した場合、検出用感熱素子1の出力電圧Vout1が図2の特性(1)のように変化してVout1'となるのに対し、オフセット調整回路5の出力電圧Vout3は特性(2)のように変化してVout3'となるために、検出用感熱素子1の出力電圧Vout1'とオフセット調整回路5の出力電圧Vout3'とが一致しなくなる。これについて詳しく説明すると、検出用感熱素子1の抵抗R1はこのΔTの温度変化に伴いΔR1だけその抵抗値が増加し、また、温度補償用感熱素子2の抵抗値R2は同様にΔR2だけ増加する。ここで、ΔR1/R1とΔR2/R2はほぼ同じ値になるため、この値をaとすると、
Vout1'=I1×(R1+ΔR1)
=I1×R1+I1×R1×(ΔR1/R1)
=Vout1×(1+a)
また、前記より
Vout3'={I2×(R2+ΔR2)+
I2×(R1−R2)}×(I1/I2)
={Vout2×(1+a)+I2×(R1−R2)×
(1+a)}×(I1/I2)−I2×(R1−R2)×
a×(I1/I2)
=Vout3×(1+a)−I2×(R1−R2)×
a×(I1/I2)
ここで、Vout3=Vout1であることから、
Vout3'=Vout1'−I2×(R1−R2)×a×(I1/I2)
また、R1>R2であり、I1,I2,aはすべて正の値であることから
Vout3'<Vout1'となる。
【0019】
そこで、この周囲温度T1+ΔTにおけるオフセット調整回路5の出力電圧Vout3'をゲイン調整回路6に入力し、ゲイン調整回路6の出力電圧Vout4がVout1'となるようにゲイン調整するのである。このゲイン調整について説明する。まず、基準電圧Vrefを周囲温度T1における検出用感熱素子1の出力電圧Vout1に一致させるように可変抵抗10で調整する。それから、ゲイン調整回路6の出力電圧Vout4が周囲温度がT1+ΔTのときの検出用感熱素子1の出力電圧Vout1'に一致させるように可変抵抗11を調整する。これによって、ゲイン調整回路6の出力電圧Vout4は検出用感熱素子1の出力電圧Vout1'に一致するのである。その結果、差動増幅器7からは周囲温度の変化に依存することなく、検出用感熱素子1で検出した検出対象に対応した出力電圧Vout5が出力できることになる。
【0020】
以上のような温度補償方法および回路において温度ゲイン調整後においても事前に調整したVout3が変化しないことについて説明する。今、温度ゲイン調整後において周囲温度をT1に戻したとすると、検出用感熱素子1の抵抗値はR1となり、Vout1=I1×R1でオフセット調整時の電圧Vout1に戻る。また、温度補償用感熱素子2の抵抗値はR2となり、Vout2=I2×R2でVout1と同様にオフセット調整時の電圧Vout2に戻る。ここで、オフセット調整回路5の各設定値はオフセット調整時のままなのでVout3=Vout1である。さてここで、温度ゲイン調整回路6の基準電圧Vrefは周囲温度T1における検出用感熱素子1の出力電圧Vout1に一致させるように既に可変抵抗器11で調整されているため、オペアンプの動作原理にのっとってVout4=Vref=Vout3となる。よって、Vout4=Vout1となり、Vout5は周囲温度T1においてもゼロとなり、温度補償されるのが分かる。
【0021】
なお、この実施の形態では、感熱素子を2つ用いたが、図3で示すように、感熱素子13を1つとし、その感熱素子13と定電流源3,4との間にスイッチ14,15を設け、このスイッチ14,15を制御部16でオンオフすることで、定電流源3に接続された第1スイッチ14がオン、定電流源4に接続された第2スイッチ15がオフのときに定電流源3からは感熱素子13に通電電流I1を、第1スイッチ14がオフ、第2スイッチ15がオンのときに定電流源4から通電電流I2を感熱素子13に供給することで、1つの感熱素子13を制御部16で異なるタイミング(前記両スイッチ14,15のオンオフ)で異なる温度に制御処理し、この感熱素子13の異なるタイミングにおけるそれぞれの出力電圧を前記オフセット調整回路5で任意の周囲温度のもとでオフセット調整し、感熱素子13の前記異なるタイミングにおけるそれぞれの出力電圧を他の任意の周囲温度のもとでゲイン調整回路6でゲイン調整する温度補償方法として、上述と同様の温度補償を行わせることができる。
【0022】
ここで異なるタイミングにおけるそれぞれの出力電圧は例えばサンプル・ホールド回路等を用いてそれぞれ保持する構成としてもよいし、マイクロコンピュータ等を用いて保持する構成としてもよい。
【0023】
(実施の形態2)
上述した実施の形態1では、調整ステップが多いために手間がかかることが考えられること、また、検出対象を温度が異なる2つの環境下に置く必要があるので、そのための設備が必要となること、また、検出対象をそれぞれの温度環境下でなじませるための時間が必要となること、さらに、可変抵抗で調整する作業が大変である、といった問題がある。本発明の実施の形態2の温度補償方法においては、実施の形態1のそうした問題を解消している。
【0024】
以下、説明すると、本発明の実施の形態2にかかる温度補償方法は、少なくとも2つの感熱素子のうちの一方を検出用感熱素子とし、他方を温度補償用感熱素子とし、前記両感熱素子それぞれを異なる加熱温度となるように処理する手段と、前記両感熱素子それぞれの出力電圧のうち、少なくともいずれか一方が他方に対する過不足分を加算または減算する手段とを少なくとも含むものであり、これについて図4ないし図6を参照して説明する。
【0025】
まず、この実施の形態2の実施に用いられる温度補償回路は、例えば図4で示すように検出用感熱素子21と、温度補償用感熱素子22と、定電流源23,24と、調整回路25と、加算回路26と、差動増幅器27とを備えて構成されている。そして、本実施の形態2においては、実施の形態1と同様にして感熱素子が検出用感熱素子21と温度補償用感熱素子22との2つが使用されている。それぞれの感熱素子21,22は対応する定電流源23,24から通電電流I1,I2が供給される。ここでI1>I2の関係である。ここで説明を簡単にするために、両感熱素子21,22それぞれの特性は同じとする。
【0026】
同一の周囲温度環境下であってこのような通電電流I1,I2において加熱された場合の検出用感熱素子21と温度補償用感熱素子22それぞれの抵抗値は図5で示すようにR1,R2(R2<R1)となっている。このとき、検出用感熱素子21と温度補償用感熱素子22それぞれの出力電圧はVout6,Vout7であり、調整回路25の出力電圧はVout8であり、加算回路26の出力電圧はVout9であり、差動増幅器27の出力電圧はVout10であるが、以下の説明では容易な理解のため抵抗値で説明することにする。
【0027】
そして、両感熱素子21,22の周囲温度がΔTだけ変化した場合、それぞれの感熱素子21,22の抵抗値もそれぞれΔR1,ΔR2と変化するが、検出用感熱素子21と温度補償用感熱素子22の特性が同じであっても通電電流I1,I2によって抵抗値がR1,R2と異なるために、ΔR1>ΔR2である。前述実施の形態1での説明においてΔR1/R1とΔR2/R2はほぼ同じと記したが、現実には若干の差異があり、この差異が正確な温度補償を行ううえで無視できない場合がある。例えば微流速を検出対象とする場合等である。ここではΔR1/R1<ΔR2/R2の場合を例に挙げ、このときの抵抗値R1,ΔR1,R2,ΔR2の関係について図6を参照して説明する。
【0028】
図6(a)には検出用感熱素子21の抵抗値として、R1と前記周囲温度変化ΔTによる抵抗値変化分であるΔR1との合計抵抗値TR1が示されている。また、図6(b)には温度補償用感熱素子22の抵抗値として、R2と前記周囲温度変化ΔTによる抵抗値変化分であるΔR2との合計抵抗値TR2が示されている。ここで、調整回路25で図6(c)で示すように抵抗値変化分ΔR2をΔR1に一致させるようにΔR2'に調整して合計抵抗値をTR2からTR2'とする。このとき、抵抗値R2も調整回路25で調整される結果、R2'となっているが、図6(a)の合計抵抗値TR1に対して、図6(c)の合計抵抗値TR2'は抵抗値R3だけ小さい。そこで、あらかじめ実験等により抵抗値R3(加算電圧Vadd)を把握し、加算回路26によって抵抗値R3分(加算電圧Vadd)だけ加算する回路構成とすることで、R2'+R3+ΔR2'に相当するVout9がR1+ΔR1に相当するVout6に一致するように調整回路25を調整するだけで差動増幅器27には合計抵抗値が同じとなる電圧が入力されることになってその出力電圧Vout10はゼロとなるのである。
【0029】
つまり、Vout6,Vout7,Vout8,Vadd,Vout9を抵抗値関係であらわすと、
Vout6=R1+ΔR1
=R2'+R3+ΔR2' … (1)
Vout7=R2+ΔR2 … (2)
Vout8=R2'+ΔR2' … (3)
Vadd =R3 … (4)
Vout9=R2'+R3+ΔR2' … (5)
したがって、差動増幅器27の一方の入力である前記式(1)と、他方の入力である前記式(5)とから明らかであるように、差動増幅器27への両入力は同じであるから周囲温度に依存することなく、差動増幅器27からは検出用感熱素子21で検出した検出対象に対応した出力電圧Vout10が出力できることになる。
【0030】
また、ここでは抵抗値R3(加算電圧Vadd)をあらかじめ把握して設定しておき、調整回路25を調整する例を説明したが、逆に、ΔR1/ΔR2に相当する値をあらかじめ把握して調整回路25を固定値として設定しておき、抵抗値R3に相当する加算電圧Vaddを調整するようにしてもよい。
【0031】
また、ここではTR2'にR3分を加算する形態で、温度補償用感熱素子側に加算回路を設けたが、逆に、TR1からR3分を減算する形態とし、検出用感熱素子側に減算回路を設けても同様の効果が得られる。
【0032】
また、ここでは(ΔR1/R1)<(ΔR2/R2)の場合を例に挙げて説明したが、(ΔR1/R1)>(ΔR2/R2)の場合においては加減算の関係が逆になるだけで同様に温度補償できる。
【0033】
また、感熱素子21,22の特性が違う場合においても感熱素子21のΔR1/R1と感熱素子22のΔR2/R2との関係を把握することで同様に温度補償可能である。
【0034】
なお、この実施の形態2では、感熱素子を2つ用いたが、図3と同様にして感熱素子を1つとし、これを検出用感熱素子と温度補償用感熱素子とに用いるために異なるタイミングで異なる温度に制御処理し、この感熱素子を前記異なるタイミングそれぞれにおいて前記温度から同じ温度分で変化させ、この感熱素子を温度補償用感熱素子とするときにその出力電圧を調整し、前記調整された出力電圧を加算または減算する温度補償方法しても構わない。
【0035】
なお、この実施の形態2では、加算回路26を用いたが、調整の内容によっては減算回路を用いても構わない。
【0036】
次にこの実施の形態2について具体数値例を挙げて説明することにする。
【0037】
検出用感熱素子21の出力電圧Vout6(通電電流I1×抵抗値R1)を10V、補償用感熱素子22の出力電圧Vout7(通電電流I2×抵抗値R2)を4Vとする。周囲温度ΔTの変化で検出用感熱素子21の抵抗値がR1→TR1(=R1+ΔR1)に、補償用感熱素子22の抵抗値がR2→TR2(=R2+ΔR2)と変化し、これによって、Vout6がI1×R1=10VからI1×(R1+ΔR1)=I1×R1+I1×ΔR1=10V+2V=12Vに、Vout7がI2×R1=4VからI2×(R2+ΔR2)=I2×R2+I2×ΔR2=4V+1V=5Vになったとすると、Vout6は周囲温度ΔTの変化で2V上昇、Vout7は1V上昇したことになる。
【0038】
Vout6についての電圧上昇分ΔVout6(=2V)はI1×ΔR1、Vout7についての電圧上昇分ΔVout7(=1V)はI2×ΔR2であるから、調整回路25の増幅率にI1/I2を含めて設定することでそれ以降は抵抗値で説明され得る。
【0039】
ここで、Vout7の電圧上昇分ΔVout7=1VをVout6の電圧上昇分ΔVout7=2Vに等しくなるように調整回路25の増幅率を2倍としたとき、Vout7はこの調整回路25で2倍に増幅されるためにVout8は周囲温度変化ΔTに伴い8Vから10Vに変化することになる。これをVout6の電圧変化10V→12Vと比較すると、変化する電圧値は共に2Vで同じであるが、絶対値としては2V不足している。この不足電圧分をあらかじめ実験、計算等で求めておいて加算回路26でこの不足電圧分が加算されるように設定、設計しておく。このようにすることにより、加算回路26の出力電圧Vout9はΔTの温度変化で10Vから12Vに変化することになる。
【0040】
したがって、差動増幅器27の両入力は周囲温度T1からΔTの温度変化で10Vから12Vに変化することになり、温度補償されることになる。
【0041】
なお、上述の各実施の形態における各回路は、定電流源および感熱素子を除いてはマイクロコンピュータによるプログラムを用い、ソフトウエア処理で演算させるようにしても構わない。
【0042】
なお、例えば特開平7−318364号公報に記述のように感熱素子を1つ用い、この感熱素子を加熱、非加熱の処理をすることにより計測対象の検出信号と周囲温度の検出信号とを出力させるようにしたものがある。この公報に記述の方式では感熱素子が1つであるために上記感熱素子を2つ用いた方式のように2つの感熱素子の特性合わせは不要であり、制御が容易となる。
【0043】
しかしながら、この公報に示される方式においては、感熱素子の非加熱処理に通電による温度上昇が無視可能な程度の通電電流を感熱素子に流す必要があるが、そのために、第1に、その通電の電流値が微小であるためにわずかな電流の変動でもそれが検出の大きな誤差要因となること、第2に、その微小な通電電流により感熱素子両端等に出力される電圧も微小となり、その後の信号処理系では非常に高精度の処理が必要となることである。そのために同公報の方式では感熱素子に通電する電流あるいは印加電圧等の設定回路、出力電圧の処理回路の構成の電子部品が非常に高価なものになる。
【0044】
これに比較して、本実施の形態においては、1つの感熱素子を図3で示すようにスイッチでもって検出用感熱素子として用いるタイミングでは、感熱素子にその温度上昇が無視できない程度の通電電流を流して加熱処理し、温度補償用感熱素子としても用いるタイミングでも、その感熱素子にその温度上昇が無視できない程度の通電電流を流して加熱処理しても、実施できるものであるから、通電電流が微小であることによる誤差要因がなく、また、それに伴い、微小な通電電流による感熱素子出力電圧が微小となってその後の信号処理系で高精度な処理が要求されずに済み、簡易で低コストのものが容易に実現可能となる。
【0045】
また、実施の形態1および2において感熱素子への通電方法として定電流方式を挙げたがこれを固定抵抗に代えて定電圧方式としても構わない。また、特開平4−12278号公報の第13図や前述の特開平7−318364号公報の第17図に示すような定温度方式としても構わない。加えて、ここでは通電電流によって自己加熱する場合を例に挙げたが、検出用感熱素子を外部より加熱しても説明文中の抵抗値はR1,R2と異なった値が得られ、実現可能である。
【0046】
ここで検出用感熱素子1と補償用感熱素子2を除く回路を処理回路とした場合に図7で示すように、処理回路そのもののオフセット調整およびゲイン調整を行うことで検出用感熱素子1に対するより適切な温度補償が行えるようにしても構わない。つまり、検出対象の温度に関する情報から検出用感熱素子1の温度補償を行う一方、検出用感熱素子1の温度補償のための処理および検出対象に対する所望の検出を行う処理回路に対してもそれ自身の温度に関する情報から温度補償を行うようにしても構わない。
【0047】
図1で示される実施の形態1および図4で示される実施の形態2においては処理回路の周囲温度が変化しないことを前提にしているが、例えば上述の実施の形態をガス給湯器に適用した場合、ガス給湯器では両感熱素子1,2は空気流量、ガス流量の計測が目的だから検出対象である空気とかガスの管路のように給湯器内部に設置される。これに対して、処理回路は管路には設置されない。したがって、感熱素子1,2の周囲温度つまり管路内の空気やガス等の検出対象の温度とその変化は、処理回路の周囲温度とかその変化とは無関係に独立したものとなるから、処理回路のオフセットとかゲインとかの処理回路自身による温度の影響(変化)を無視したのでは、検出用感熱素子1の周囲温度の変化に対する適切な温度補償および検出対象に対する所望の検出を行う適切な処理とはならない。そこで、図7を参照して説明するように、処理回路そのものの周囲温度に対するオフセット調整をオフセット補償用感温素子である抵抗R9で行い、処理回路そのものの周囲温度の変化に対するゲイン調整をゲイン補償用感温素子である抵抗R2で行う。なお、図7において差動増幅器7は、増幅器A1〜A3と、抵抗R1〜R7で構成されている。このようにして検出用感熱素子1の処理回路によるオフセット調整およびゲイン調整と、処理回路そのもののオフセット調整およびゲイン調整とで、総合的な温度補償が可能となり、より適切な温度補償が可能となる。
【0048】
なお、この場合、処理回路に対する温度補償はオフセット調整だけでもゲイン調整だけでもあるいはこの両調整で行っても構わない。
【0049】
なお、この場合、オフセット調整、ゲイン調整は抵抗R2,R9のような感温素子で調整するのではなく温度変化を電流変化あるいは電圧変化で検出する感温素子でも構わないし、感温素子ではなく回路で行うようにしても構わない。
【0050】
なお、上述の実施の形態の温度補償回路をチップ形態とかその他の形態の流速センサ、流量センサ、その他のセンサとしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る温度補償方法に用いる温度補償回路の回路図
【図2】図1の回路において各部の電圧と周囲温度との関係を示す図
【図3】本発明の他の実施の形態に係る温度補償方法に用いる温度補償回路の要部回路図
【図4】本発明のさらに他の実施の形態に係る温度補償方法に用いる温度補償回路の回路図
【図5】図4の回路において感熱素子の抵抗値とその温度との関係の説明に供する図
【図6】図4の回路にて検出用感熱素子と温度補償用感熱素子それぞれの抵抗値の変化の説明に供する図
【図7】本発明のさらに他の実施の形態に係る温度補償方法に用いる温度補償回路の要部の回路図
【符号の説明】
【0052】
1 検出用感熱素子
2 温度補償用感熱素子
3,4 定電流源
5 オフセット調整回路
6 ゲイン調整回路
7 差動増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の温度に関する情報から感熱素子の温度補償を行う一方、
前記感熱素子の温度補償のための処理および検出対象に対する所望の検出を行う処理手段に対してもそれ自身の温度に関する情報から温度補償を行う、
ことを特徴とする温度補償方法。
【請求項2】
検出対象に対する所望の検出を行うための感熱素子と、
前記検出対象の温度に関する情報から前記感熱素子の温度補償の処理をする処理手段と、
を有し、
前記処理手段自身の温度に関する情報から当該処理手段に対する温度補償を行う、
ことを特徴とする温度補償回路。
【請求項3】
請求項2に記載の温度補償回路において、
前記処理手段は、当該処理手段のオフセット調整および/またはゲイン調整をするための感温素子を有している、
ことを特徴とする温度補償回路。
【請求項4】
請求項2または3に記載の温度補償回路を備えた、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項5】
請求項2または3に記載の温度補償回路を備えた、
ことを特徴とする流速センサ。
【請求項6】
請求項2または3に記載の温度補償回路を備えた、
ことを特徴とする流量センサ。
【請求項7】
請求項5または6に記載のセンサを有する、
ことを特徴とする給湯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−164632(P2008−164632A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−57662(P2008−57662)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【分割の表示】特願平11−78435の分割
【原出願日】平成11年3月23日(1999.3.23)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】