説明

温水式床暖房装置

【技術課題】
耐久性があり、リサイクル可能な搬送管及び放熱管を用いた床暖房装置を提供する。
【解決手段】
搬送往き管14a、還り管14b及び(又は)放熱管12は、PE又はPE−RT樹脂管1で成形し、この外に酸素バリア層2としてEVOH層を形成し、この外に保護層3としてPE又はPE−RT層を形成すると共に各層間に接着性樹脂層(アドマー層)4を形成する。
このように、搬送往き管14a、還り管14b及び(又は)放熱管12にすべてリサイクル可能なPE又はPE−RT樹脂及びEVOHを用いることにより、熱溶融して再成形品にリサイクル利用ができ、省資源、環境保全に寄与できると共にPE−RT管を用いることにより耐久性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源機で発生させた約60℃(立ち上り時のみ約80℃の場合もある)の温水を部屋の床に敷設した温水マット内の放熱管内に循環させることにより床暖房を行う装置であって、前記熱源機と温水マット間を結ぶ温水搬送管及び前記温水マット内に温水を循環させて放熱を行う放熱管にリサイクル可能な樹脂管を用いた温水式床暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温水式床暖房装置の場合、建物の耐久性との関係で数10年の耐久性が求められていることから、この装置に用いられている熱源機と温水マットを結ぶ搬送管及び温水マットの放熱管には耐熱性と耐久性を考慮して架橋ポリエチレン樹脂管が用いられている。
【0003】
また、温水式床暖房装置の場合、熱媒体としては通常の水道水が用いられ、この水は夏期等の不使用時にはそのまま装置内に封入したままであることから、経年的に空気が管内に侵入して熱搬送効率が低下したり、熱源機の金属部分の腐食の原因になったりするという問題がある。
【0004】
そこで、従来は架橋したポリエチレン樹脂管の外には酸素バリア性を付与するためにエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)層を形成している(特許第3723188号公報)。
【0005】
また、このEVOH層は外傷に弱いため、保護層としてこの表面にポリエチレン層を形成したものもある。
【0006】
また、前記搬送管の場合、建物の壁や床下を通したりする関係から、往路と復路を構成する2本の管は、断熱のためにアルミテープを捲きつけて一体化し、これをポリエチレン樹脂製のサヤ管に収めて配管を行っている。
【0007】
以上で説明したように、温水式床暖房装置に用いられている搬送管及び放熱管には架橋ポリエチレン樹脂管が用いられ、また搬送管の場合アルミテープが捲きつけられていることから、通常のプラスチックのリサイクル手法である溶解再処理が不可能で、一部サーマルリサイクルにより燃料として利用されているものの、その殆んどが産業廃棄物として埋め立て処理されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3723188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、温水式床暖房装置において用いられる熱源機と温水マット間を結ぶ搬送管及び前記温水マットに配管されている放熱管の双方、又は片方をリサイクル処理可能な樹脂製とすることにより省資源及び環境保全に寄与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の温水式床暖房装置は、熱源機と床暖房用温水マット間を結ぶ搬送管及び(又は)前記床暖房用温水マットに蛇行配管されている放熱管をポリエチレン樹脂にて形成したことを特徴とするものである。
【0011】
この発明によると、架橋処理が行われていないため、搬送管及び放熱管のリサイクル処理が可能になる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の温水式床暖房装置において、搬送管及び(又は)放熱管を耐熱ポリエチレン樹脂にて形成したことを特徴とするものである。
【0013】
この発明によると、熱負荷に対する耐久性が向上する。
【0014】
この発明によると、熱劣化に強い搬送管及び放熱管を得ることができるため、数10年間の耐用年数が要求される温水式床暖房装置に用いることができると共にリサイクル処理も可能になる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の温水式床暖房装置において、搬送管及び(又は)放熱管の外に酸素バリア層を形成したことを特徴とするものである。
【0016】
この発明によると、管内に酸素が入り込まないため、耐腐蝕性が向上する。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の温水式床暖房装置において、酸素バリア層をエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂にて形成したことを特徴とするものである。
【0018】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の温水式床暖房装置において、酸素バリア層の外に保護層を形成したことを特徴とするものである。
【0019】
この発明によると、搬送管及び放熱管において、酸素バリア層の損傷を防ぐことができると共に、配管性が向上する。
【0020】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の温水式床暖房装置において、保護層をポリエチレン又は耐熱ポリエチレン樹脂にて形成したことを特徴とするものである。
【0021】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の温水式床暖房装置において、搬送管及び(又は)放熱管として、内層に耐熱ポリエチレン、この外にエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂から成る酸素バリア層、この外にポリエチレン又は耐熱ポリエチレン樹脂から成る保護層を形成したことを特徴とするものである。
【0022】
この発明によると、リサイクル性、耐腐蝕性、配管性の高い搬送管及び放熱管を得ることができる。
【0023】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1に記載の温水式床暖房装置において、搬送管は、耐熱ポリエチレン管の外にエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂から成る酸素バリア層、この外にポリエチレン又は耐熱ポリエチレン樹脂から成る保護層を形成した2本を沿わせてこの外にポリエチレン樹脂テープを螺旋状に捲きつけて一体化され、これがポリエチレン樹脂製のサヤ管内に通して前記熱源機と温水マット間に配管されていることを特徴とするものである。
【0024】
また、請求項9に記載の発明は、請求項3乃至8のいずれか1項に記載の温水式床暖房装置において、各層間には接着性樹脂層が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
以上のとおり、本発明は、床暖房装置用搬送管及び(又は)温水マットの放熱管にポリエチレン樹脂管又は、耐熱ポリエチレン樹脂管を用いることにより、熱溶解再処理して新しい製品にリサイクル利用ができ、省資源及び環境保全に寄与できる。
【0026】
また、従来のようにポリエチレン樹脂を架橋処理していないため、搬送管及び放熱管の製造においてコストを削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(A)実施例1の説明図(B)実施例2の説明図
【図2】実施例3の説明図
【図3】(A)実施例4の説明図(B)実施例5の説明図
【図4】搬送管の説明図
【図5】本発明搬送管及び放熱管を用いた温水式床暖房装置の説明図
【図6】フローリング床の下に本発明に係る放熱管を用いた温水マットが施工された状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
温水式床暖房装置は、図5に示すように熱源機10と部屋に敷設された温水マット11から成り、温水マット11には放熱管12が蛇行配管され、前記熱源機10と温水マット11間は搬送管14a、14bで結ばれている。そして、温水マット11は、図6に示すように表面に均熱シート17を貼り合せた上に、例えば、フローリング材18が施工される。
【0029】
この温水式床暖房装置において、熱源機10で発生した約60℃の温水は、搬送管の往き側14aを経由して温水マット11のヘッダー13まで送られ、ここで放熱管12ごとに分配されて温水マット11を一巡してヘッダー13に戻り、このヘッダー13から還り側14bを経由して熱源機10に入り、再加熱されて温水マット11側に送出される。但し、運転開始時の立ち上がりの悪さを改善するために、運転を開始してから2〜7分間、80℃の温水を循環させる場合もある。
【0030】
なお、上記温水マット11には、ヘッダー13を中間において1回路の放熱管12が描かれているが、通常は2〜4回路の場合もあり、また、ヘッダー13は温水マット11の中央ではなく、角に位置している場合もあり、図6の温水マット11の形態はあくまでもイメージを現わしたにすぎない。
【0031】
また、この図6の温水マット11には小根太と称されるフローリング床材の支持材が描かれていないが、温水マット11にはこの小根太入りのものと小根太の入っていない所謂ネダレスタイプのものがあり、本発明は、この2つのタイプの温水マット11の放熱管12に適用することができる。
【0032】
前記熱源機10と温水マット11のヘッダー13間を結ぶ搬送管14a、14bは、図4に示すように、温水往き側14aと戻り側14bが従来のアルミテープに替えてポリエチレン又は耐熱ポリエチレンテープ15を螺旋巻きすることにより一体化されており、ポリエチレン樹脂製のサヤ管(コルゲート管)16内に通して配管されている。
【実施例1】
【0033】
本実施例1は、請求項1、2に対応し、図1(A)にその断面構造が示されている。この図1において、符号の1は、搬送管14a、14b及び(又は)放熱管12用樹脂管であって、その材質はポリエチレン樹脂(以下「PE」と称す。)または耐熱ポリエチレン樹脂(以下「PE−RT」と称す。)製である。
【実施例2】
【0034】
本実施例2は、請求項3、4に対応し、図1(B)に示すように、前記樹脂管1の外には、酸素バリア層2が形成されている。酸素バリア層2としては、本実施例2の場合、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂(以下「EVOH」と称す。)が利用されているが、酸素バリア機能を有し、PE又はPE−RTと一緒にリサイクル可能な樹脂であるならば他の樹脂で形成するようにしても良い。
【0035】
このように、酸素バリア層2を樹脂管1の外に形成することにより、樹脂管1の肉厚を経由して内部に酸素が侵入して温水に混入し、伝熱効率が悪化したり、熱源機10において温水と接する回路及び機器類が腐食するのを防ぐことができる。
【実施例3】
【0036】
本実施例3は、請求項5、6、7に対応し、図2に示すように樹脂管1の外に酸素バリア層2が形成され、この酸素バリア層2の外にPE製の保護層3が形成されている。
【0037】
このように保護層3を形成することにより、酸素バリア層2にEVOHを用いた場合、EVOHは軟かく損傷に弱いので、この点を補うことで配管時、あるいは温水マット11の製作時に酸素バリア層2に傷をつけてバリア性能の低下を招くのを防ぐことができる。
【0038】
なお、保護層3は、PE以外にPE−RTで形成しても良い(請求項7)。
【実施例4】
【0039】
本実施例4は、請求項9に対応し、図3(A)(B)に示すように樹脂管1と酸素バリア層2及びこの酸素バリア層2と保護層3間に接着性樹脂としてアドマー(三井化学株式会社登録商標)層4を形成したものである。
【0040】
なお、酸素バリア層2形成用樹脂にPEあるいはPE−RTとの接着性を付与するために接着性樹脂を練り込むように構成しても良い。
【実施例5】
【0041】
本実施例5は、請求項8に対応し、図4に示すように、熱源機10と温水マット11のヘッダー13間に配管する温水循環用の搬送管に関するもので、2本の温水往き側14aと還り側14bは、PE製のテープ15を螺旋状に捲き付けることにより一体化されてPE製のサヤ管15内に通されている。
【0042】
本実施例5の場合、テープ15を従来のアルミテープからPEテープ15に替えたことにより、温水の往きと戻りの矢印等を直接テープ15に印刷することができる。この点、アルミテープの場合は、直接印刷を行うことができないため、別に印刷したものをこのアルミテープの表面に貼り付けており、コスト高になると共に注意して貼り付けないと矢印方向を間違ってしまったりするという問題があった。
【産業上の利用分野】
【0043】
・温水式床暖房装置の搬送管及び(又は)温水マットの放熱管。
・温水式放熱器(ラジエーター)
【符号の説明】
【0044】
1 樹脂管
2 酸素バリア層
3 保護層
4 アドマー層
10 熱源機
11 温水マット
12 放熱管
13 ヘッダー
14a 搬送往き管
14b 搬送還り管
15 PEテープ
16 サヤ管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源機と床暖房用温水マット間を結ぶ搬送管及び(又は)前記床暖房用温水マットに蛇行配管されている放熱管をポリエチレン樹脂にて形成して成る温水式床暖房装置。
【請求項2】
前記搬送管及び(又は)放熱管を耐熱ポリエチレン樹脂にて形成して成る請求項1に記載の温水式床暖房装置。
【請求項3】
前記搬送管及び(又は)放熱管の外に酸素バリア層を形成して成る請求項1又は2に記載の温水式床暖房装置。
【請求項4】
前記酸素バリア層をエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂にて形成して成る請求項3に記載の温水式床暖房装置。
【請求項5】
前記酸素バリア層の外に保護層を形成して成る請求項3又は4に記載の温水式床暖房装置。
【請求項6】
前記保護層をポリエチレン又は耐熱ポリエチレン樹脂にて形成して成る請求項5に記載の温水式床暖房装置。
【請求項7】
前記搬送管及び(又は)放熱管として、内層に耐熱ポリエチレン、この外にエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂から成る酸素バリア層、この外にポリエチレン又は耐熱ポリエチレン樹脂から成る保護層を形成して成る請求項1に記載の温水式床暖房装置。
【請求項8】
前記搬送管は、耐熱ポリエチレン管の外にエチレン−ビニルアルコール共重合樹脂から成る酸素バリア層、この外にポリエチレン又は耐熱ポリエチレン樹脂から成る保護層を形成した2本を沿わせてこの外にポリエチレン樹脂テープを螺旋状に捲きつけて一体化され、これがポリエチレン樹脂製のサヤ管内に通して前記熱源機と温水マット間に配管されていることを特徴とする請求項1に記載の温水式床暖房装置。
【請求項9】
前記各層間に接着性樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項3乃至8のいずれか1項に記載の温水式床暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−196650(P2011−196650A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−66174(P2010−66174)
【出願日】平成22年3月23日(2010.3.23)
【出願人】(000183071)住商メタレックス株式会社 (27)
【Fターム(参考)】