説明

温調マット用基板、温調マット及びその施工構造

【課題】低コストでコールドゾーンを小さくすることができる温調マット用基板、温調マット及びその施工構造を提供する。
【解決手段】温調マット用基板1は、長方形状であり、板状の基板本体10と、該基板本体10の裏面(下面)に接着剤等により貼着された透明又は半透明なシート11とを有する。基板本体10には、端辺20aと、辺1a又は1bとに連なる連絡管用溝31,32,33,34が設けられている。また、基板本体10には、端辺20b又は20dから出て、長く延在した後、端辺20b又は20dに戻る放熱配管用溝41,42,43,44が設けられている。最近接部分Sにおける溝34,44同士の間隔は好ましくは30mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の部屋の床、壁、天井等の暖房や冷房を行うための温調マットと、そのための基板と、温調マットの施工構造とに関する。
【背景技術】
【0002】
板状の基板の上面の溝に温水配管(放熱配管)を引き回した温調マットを床面上に敷設した温水床暖房が周知である。
【0003】
この温水床暖房にあっては、発泡合成樹脂などからなる基板の配管用溝に、温水を通す可撓性合成樹脂管を埋設した温調マット(床暖房用パネル)を用いる。この温調マットを建造物の床の上に敷設し、その上面にカーペットや木製化粧板などの表面被覆材を敷設して、暖房床を構成する。基板に埋設された樹脂管(放熱配管)内には、給湯機からの温水を循環させる。
【0004】
上記した給湯機からの温水は、基板の周縁部に組み込まれたヘッダを経由して放熱配管に循環される。建物の温水循環配管とヘッダとの間は連絡管によって接続される。この連絡管を建造物の床の下地面に直接配置した状態、または床面に露出した状態とするのは好ましくない。そこで、連絡管ガイド用パネルを準備し、連絡管をこの連絡管ガイド用パネルに刻設した溝に埋設して敷設する方法が採用されている(特開2002−228168)。
【0005】
この温水循環配管は部屋の床の隅や壁の下部から室内に突出しているが、この突出位置は現場により種々様々である。そのため、ヘッダに連なる連絡管を温調マットから引き出す方向も種々様々となる。
【0006】
特開2002−228168では、温調マットに隣接する、温調マットとは別体の連絡管ガイド用パネルの上面に、複数方向に枝分れするように連絡管埋設用の溝を設けている。
【0007】
第7図は同号公報の連絡管ガイド用パネルの配管構造を示す平面図である。この連絡管ガイド用パネル90は、温調マット80に突き合わされている。温調マット80には、ヘッダ配置用スペース81と、このヘッダ配置用スペース81に連なる放熱配管用溝82とが設けられている。ヘッダ配置用スペース81は温調マット80の1つの隅角の切欠状部分に臨んでおり、このスペース81内にヘッダ83が配置されている。ヘッダ83の二次側ノズル83bに対し放熱配管84が接続され、溝82内を引き回されている。
【0008】
ヘッダ83の一次側ノズル83aに連絡管(図示略)が接続される。この連絡管は、連絡管用溝90の溝91,92又は溝93,94を通って建物側の温水循環配管に接続される。連絡管用溝91,92はノズル63aの突出方向に直線的に延在している。溝93,94は、溝91,92から分岐し、円弧状にカーブしながら溝91,92と直交方向に延在している。
【特許文献1】特開2002−228168
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特開2002−228168では、温調マット80と別体に連絡管ガイド用パネル90を設けており、パネル数が多くなるため、コスト高になると共に、パネルの敷設施工に手間がかかる。
【0010】
また、第7図から明らかなように、放熱配管用溝82と連絡管用溝94との間において温調マット80と連絡管ガイド用パネル90との突き合わせ線PLが存在している。
【0011】
基板80の溝82やパネル90の溝94をこの突き合わせ線PLを超えて設けた場合、パネル80側の溝とパネル90側の溝とが突き合わせ線PLで食い違わないように高精度にパネル及び溝を設ける必要性が生じ、極めてコスト高となってしまう。
【0012】
そのため、従来は、溝82は基板80にのみ設け、溝91〜94はパネル90にのみ設けるようにしている。
【0013】
この結果、溝82と溝94との間に、配管が存在しないコールドゾーンが広範囲に存在する。
【0014】
なお、ヘッダ83は、給湯によって熱くなり、ヘッダ83付近はホットゾーンとなる。このホットゾーンと上記コールドゾーンとが隣り合っているため、両者に触れたときの体感温度差が大きく、利用者の快適性が損なわれる。
【0015】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消し、低コストでコールドゾーンを小さくすることができる温調マット用基板、温調マット及びその施工構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明(請求項1)の温調マット用基板は、ヘッダ配置用スペースと、該ヘッダ配置用スペースに連なる放熱配管用溝及び連絡管用溝とを有する温調マット用基板であって、
該連絡管用溝は、該基板の周縁部の近傍に設けられ、該ヘッダ配置用スペースと該周縁部とに連なるように延設されており、この連絡管用溝を設けた基板周縁部の近傍部分と、前記放熱配管用溝を設けた基板主部とが連続して一体となっていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項2の温調マット用基板は、請求項1において、前記基板は略方形板状であり、前記連絡管用溝は、該基板の1つの隅角の近傍に設けられており、該連絡管用溝は、この隅角で交わる基板の第1の辺と第2の辺との少なくとも一方に連なっていることを特長とするものである。
【0018】
請求項3の温調マット用基板は、請求項1において、前記基板の周縁部から一体的に側方へ延出した張出片が設けられており、前記連絡管用溝は、該張出片の周縁部に連なっていることを特徴とするものである。
【0019】
請求項4の温調マット用基板は、請求項3において、前記基板は略方形板状であり、前記張出片は、該基板の少なくとも一辺から延出しており、前記連絡管用溝は、該張出片の延出方向先端側の先端辺及びこれと交叉する側辺の少なくとも一方に連なっていることを特徴とするものである。
【0020】
請求項5の温調マット用基板は、請求項4において、前記連絡管用溝は、前記基板の1つの隅角の近傍に設けられており、前記張出片は、この隅角に向かう基板の第1の辺及び第2の辺の少なくとも一方の該隅角の近傍部分から延出していることを特徴とするものである。
【0021】
請求項6の温調マット用基板は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記放熱配管用溝のうち、前記基板の周縁部の近傍において前記連絡管用溝に最も近接する溝(以下、放熱配管用溝Aということがある。)と、該連絡管用溝との最近接部における距離が30mm以下となっていることを特徴とするものである。
【0022】
請求項7の温調マット用基板は、請求項6において、該距離が2〜25mmであることを特徴とするものである。
【0023】
請求項8の温調マット用基板は、請求項6又は7において、前記基板は略方形板状であり、前記連絡管用溝は、前記基板の前記隅角の近傍に設けられており、前記ヘッダ配置用スペースは、基板の前記第1の辺に対向する第1の端辺と、前記第2の辺に対向する第2の端辺とを有しており、該連絡管用溝は該第1の端辺に連なっており、前記放熱配管用溝は該第2の端辺に連なっており、前記放熱配管用溝Aは、前記隅角の近傍において、該第2の端辺から前記第2の辺に向って延出し、次いで前記第1の辺及び第2の辺に接近するように湾曲し、その後、該第1の辺から離れ且つ第2の辺に接近するように湾曲していることを特徴とするものである。
【0024】
請求項9の温調マット用基板は、請求項8において、前記連絡管用溝は、少なくとも一部が前記第1の端辺から前記第1の辺及び第2の辺に接近するように延出し、次いで該第1の辺から離れ且つ第2の辺に向かうように湾曲していることを特徴とするものである。
【0025】
請求項10の温調マット用基板は、請求項1ないし9のいずれか1項において、該温調マット用基板は、板状の基板本体と、該基板本体の裏面に貼着された透明又は半透明なシートとを備えており、前記連結管用溝は、該基板本体を厚み方向に貫くスリットよりなり、前記シートは該スリットを塞ぐように基板本体に貼着されていることを特徴とするものである。
【0026】
請求項11の温調マットは、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の温調マット用基板と、該基板のヘッダ配置用スペース内に配置されたヘッダと、該ヘッダに連なり、前記放熱配管用溝内に配置された放熱配管とを備えてなるものである。
【0027】
請求項12の温調マットの施工構造は、請求項11の温調マットを建物の床に敷設し、前記連絡管用溝に配設した連絡管を介してヘッダと建物の温水循環配管とを接続してなるものである。
【0028】
請求項13の温調マットの施工構造は、請求項12において、該温水循環配管は該床から立ち上がっており、該温調マット用基板には、該温水循環配管の立ち上がり位置と重なるように孔が基板厚み方向に貫設されており、該温水循環配管は、該孔内に引き込まれて該連絡管と接続されていることを特徴とするものである。
【0029】
請求項14の温調マットの施工構造は、請求項12又は13において、前記連絡管用溝のうち連絡管が配置されていない箇所に埋戻材を充填したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の温調マット用基板、温調マット及びその施工構造にあっては、上記従来の連絡管ガイド用パネルを省略し、連絡管ガイド用パネルに相当する部分を温調マット用基板と連続させて一体に設けている。そのため、基板が安価になり、基板の施工も容易となる。
【0031】
なお、本発明においては、連絡管用溝が連なる基板の周縁部は、一直線状に延在したものであってもよく、少なくとも部分的に湾曲又は屈曲していたり、クランク状、凹形状又は凸形状などとなっていてもよい。
【0032】
請求項2の温調マット用基板によると、基板の周囲に配設されるダミー材等を基板の各辺に突き合わせるようにして配設することができる。
【0033】
請求項3〜5の温調マット用基板によると、張出片に連絡管ガイド用パネルを連結することができる。なお、この張出片は、請求項5のように基板隅角近傍に設けられてもよく、基板の辺の途中部に設けられてもよい。
【0034】
本発明によれば、連絡管用溝と放熱配管用溝とを請求項6,7のように近接させることができ、コールドゾーンを小さくしたり、解消したりすることができる。
【0035】
請求項8,9のように、放熱配管用溝Aと連絡管用溝とを湾曲させて延設することにより、連絡管用溝と放熱配管用溝とを十分に近接させることができる。
【0036】
請求項10の温調マット用基板によると、溝がスリットよりなり、このスリットを裏から塞ぐように透明又は半透明のシートが設けられているので、このシートを透かして基板の下側(裏側)を視認することができる。そのため、建物の床から温水循環配管先端部が上方へ突出している場合、溝部分を透かして温水循環配管先端部を視認することができる。その結果、温水循環配管を通すための孔を基板に穿孔するときに、この孔の位置を温水循環配管に正確に且つ容易に合致させることができる。
【0037】
なお、請求項14のように、連絡管が配置されていない連絡管用溝内に埋戻材を充填することにより、連絡管用溝部分の上に人が乗ったときの沈み込みが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0039】
[第1の実施の形態]
第1図(a)は第1の実施の形態に係る温調マット用基板の平面図、第1図(b)は第1図(a)のB−B線に沿う断面図である。
【0040】
この温調マット用基板1は、長方形状であり、板状の基板本体10と、該基板本体10の裏面(下面)に接着剤等により貼着された透明又は半透明なPET等の合成樹脂のフィルム又は不織布等よりなるシート11とを有する。基板本体10は、基板1と同一大きさの長方形である。
【0041】
図示は省略するが、この実施の形態では、基板本体10は、発泡合成樹脂製の複数枚の小マットと、小マット間に介在された小根太とから構成されている。
【0042】
基板1の長辺1aと短辺1bとが交わる一つの隅角(コーナー)の近傍にヘッダ配置用スペース20が設けられている。この実施の形態では、ヘッダ配置用スペース20は長方形状であり、その端辺20a,20cが基板1の長辺1aと平行となっている。また、端辺20b,20dが基板1の短辺1bと平行となっている。
【0043】
基板本体10には、端辺20aと、辺1a又は1bとに連なる連絡管用溝31,32,33,34が設けられている。また、基板本体10には、端辺20b又は20dから出て、長く延在した後、端辺20b又は20dに戻る放熱配管用溝41,42,43,44が設けられている。
【0044】
連絡管用溝31〜34は、いずれも基板本体10を厚み方向に貫くスリットよりなり、シート11が溝31〜34を裏側から塞いでいる。ヘッダ配置用スペース20も同様に基板本体10を厚み方向に貫いており、裏からシート11が塞いでいる。
【0045】
連絡管用溝31,32は、第1の端辺20aと基板1の長辺1aとを結ぶように第1の端辺20aと略直交方向に延在している。長辺1aの近傍では、連絡管用溝31,32に湾曲した分岐部が設けられ、長辺1aには4個の溝端部30a,30b,30c,30dが臨んでいる。
【0046】
連絡管用溝33,34は、第1の端辺20aと基板1の短辺1bとを結ぶように湾曲して延在している。
【0047】
連絡管用溝33は端辺20a部分において連絡管用溝31から分岐し、連絡管用溝32を横切るように長辺1aに徐々に近づき、次いで長辺1aから徐々に離れ、その後、長辺1aと略平行に延在するようにして短辺1bに達している。連絡管用溝34は、端辺20a部分において連絡管用溝32から分岐し、長辺1aに徐々に近づき、次いで長辺1aから徐々に離れ、その後、長辺1aと略平行に延在するようにして短辺1bに達している。
【0048】
短辺1bの近傍では、連絡管用溝33,34には湾曲した分岐部が設けられており、短辺1bには3個の溝端部30e,30f,30gが臨んでいる。溝端部30fは、2本の連絡管を通すことができる幅を有している。
【0049】
放熱配管用溝41〜44のうち、端辺20bの最も端辺20a側から延在する溝Aは、端辺20bの近傍においてまず長辺1aに接近するように湾曲し、その後長辺1aと略平行となるように湾曲し、その後、長辺1aから徐々に離れるように湾曲しながら、短辺1bに接近し、その後は、短辺1bと平行に長辺1aから離反する方向に延在している。
【0050】
この溝Aとしての放熱配管用溝41と連絡管用溝34とは、溝34が長辺1aと平行となる部分付近において最も近接している。この最近接部分Sにおける溝34,44同士の間隔は好ましくは2〜30mm特に好ましくは2〜10mmとなっている。
【0051】
端辺20dに連なる放熱配管用溝44のうち、符号Bを付した、最も長辺1a側の溝44は、端辺20dから出た後、まず端辺20dから離れ、次いで再び端辺20d及び連絡管用溝31に接近するように略々半円弧状に湾曲し、次いで連絡管用溝31から離れるように湾曲し、その後、長辺1aと平行に、連絡管用溝31から離反する方向に延在している。
【0052】
図示は省略するが、放熱配管用溝41〜44内には、溝41〜44内の放熱配管71〜74の熱を基板1の上面側に伝達させるための均熱板が設けられている。
【0053】
この均熱板としては、放熱配管用溝41〜44の内面に沿うU字部と、該U字部の両端(上端)から基板1の上面に沿って側方に延出する1対のフランジ部とを有した略Ω字形断面形状のものなどを用いることができる。
【0054】
この均熱板のU字部が放熱配管用溝41〜44内に配置され、その上から、配管71〜74がこのU字部内に嵌め込まれるようにして溝41〜44に収容される。
【0055】
この均熱板は、アルミや銅等の金属箔よりなり、厚さが40〜200μm、特に70〜150μm、とりわけ100μm程度のものが好ましい。
【0056】
放熱配管用溝41〜44は、連絡管用溝31〜34と同様に基板本体10を厚み方向に貫くスリットであってもよく、基板本体11の上面から凹陥する凹部として設けられてもよい。
【0057】
溝41〜44を凹部として設ける場合、シート11は、基板本体10の裏面のうち連絡管用溝31〜34及びヘッダ配置用スペース20付近にのみ貼着してもよい。溝41〜44もスリットとして設けた場合には、シート11を溝41〜44の裏側も塞ぐように設け、特に、基板本体10の裏面全体に設けるのが好ましい。
【0058】
ヘッダ配置用スペース20内に配置されたヘッダ50は、連絡管61,62の接続用の一次側ノズル51,52と、放熱配管(温水配管)71〜74の接続用の二次側ノズル53〜60とを有している。
【0059】
放熱配管71は放熱配管用溝41に配設され、放熱配管72は放熱配管用溝42に配設され、放熱配管73は放熱配管用溝43に配設され、放熱配管74は放熱配管用溝74に配設されている。この放熱配管71〜74の直径は、5〜10mm特に6〜7mm程度が好ましい。
【0060】
[連結管61,62の配設例]
第3図〜第5図を参照して、連結管61,62の配設例を説明する。
【0061】
第3図では、連絡管61,62は連絡管用溝33,34に配設され、溝端部30fから短辺1bの側方へ引き出されている。
【0062】
第4図では、連絡管61,62は連絡管用溝31,32を通り、溝端部30a,30bから長辺1aと斜交方向に引き出されている。
【0063】
図示はしないが、連絡管61,62を溝端部30f,30g又は溝端部30e,30fから第4図の矢印a又はbのように短辺1bと斜交方向に延出させることができ、また、第4図の矢印c,dのように溝端部30c,30dから斜めに又は溝端部30b,30cから長辺1aと直交方向に延出させることもできる。
【0064】
第5図のように、この温調マット用基板1は、温水循環配管が床面から上方に突出している場合にも対応することができる。
【0065】
この場合は、基板1のうち床面からの温水循環配管端部の立ち上がり箇所と重なる位置に孔71,72を板厚み方向に穿設する。この穿孔作業を行うに際しては、温水循環配管の突出位置をよく確認し、もしくは透明又は半透明のシート11を透視して位置を決め、基板1を刳り抜くようにして孔71,72を開ける。この孔71,72内において連絡管61,62と温水循環配管先端とを接続する。連絡管61,62の接続後は、温調マット1の上にアルミニウム等よりなる均熱シートを介してカーペットや木製化粧材などの表面被覆材を敷設する。または、温調マット1上に捨て貼りをして、表面被覆剤を敷設する。この均熱シートは、ヘッダ配置用スペース20及び連絡管用溝31〜34を設けたコーナー部以外の基板上面に予め接着しておくのが好ましい。
【0066】
[第1の実施の形態の効果]
以上説明した通り、この実施の形態にあっては、従来の連絡管ガイド用パネルに相当する部分を温調マット用基板1と連続させて一体に設けている。そのため、基板1が安価になり、基板1の施工も容易となる。さらに、連絡管用溝34と放熱配管用溝41とを近接させ、連結管用溝31と放熱配管用溝44とを近接させることができ、コールドゾーンを小さくしたり、解消したりすることができる。
【0067】
また、この実施の形態では、連絡管用溝31〜34がスリットよりなり、このスリットを裏から塞ぐように透明又は半透明のシート11が設けられているので、このシート11を透かして基板1の下側(裏側)を視認することができる。そのため、建物の床から温水循環配管先端部が上方へ突出している場合、シート11を透かして温水循環配管先端部を視認することができ、孔71,72を温水循環配管に正確に且つ容易に合致させて穿設することができる。
【0068】
なお、この実施の形態では、連絡管用溝31〜34は、基板1の長辺1a及び短辺1bのうち前記隅角の近傍部分に連なっているが、隅角から離隔した部分(例えば長辺1a又は短辺1bの延在方向の中間付近など)に連なっていてもよい。
【0069】
連絡管用溝は、基板1の長辺1a及び短辺1bのいずれか一方にのみ連なるよう設けられてもよい。
【0070】
[別の実施の形態]
この孔71,72を穿設してもよい領域を、基板1の上面に設けた線や色分けによって表示するようにしてもよい。色分けの代りに、基板1の上面にシボ面の如き凹凸を設けてもよい。穿孔可能位置を示すシールを貼着してもよい。
【0071】
なお、本発明では、連絡管用溝31〜34のうち、連絡管61,62が配置されていない部分に埋戻材を充填することにより、その上側に人が乗ったときの沈み込みが防止される。この埋戻材としては、溝31〜34の深さと略同等の直径を有した発泡合成樹脂製の棒状材などを用いることができる。この棒状材を、空の溝長さに合わせて切断し、溝内に充填する。埋戻材としては、溝31〜34に嵌合するように枝状に分岐した枝状体を用いてもよい。この場合、枝状体のうち、連絡管61,62を引き回した部分に対応する部位を切断除去し、残余の部分を空の溝31〜34に嵌合させる。
【0072】
[さらに別の実施の形態]
本発明では、第6図の温調マット1Aのように、長辺1aと短辺1bとが交わるコーナー部を側方に拡張させてもよい。この実施の形態では、長辺1aの該コーナー部近傍部分から第6図の下方へ直交状に延出する略長方形状の張出片1cと、短辺1bの該コーナー部近傍部分から第6図の左方へ直交状に延出する略長方形状の張出片1dとが形成されている。これらの張出片1c,1b同士は、該コーナー部において連なっており、張出片1cの該コーナー部側の側辺と、張出片1dの延出方向先端側の先端辺とが連続していると共に、張出片1dの該コーナー部側の側辺と、張出片1cの延出方向先端側の先端辺とが連続している。
【0073】
この実施の形態では、連絡管用溝31,32は、それぞれ、第6図の右方、下方及び左方の3方に分岐しており、該連絡管用溝31の端部30j,30k,30l及び連絡管用溝32の端部30m,30n,30oがそれぞれ張出片1cの周縁部に臨んでいる。これらのうち端部30k〜30oは張出片1cの先端辺に臨んでおり、端部30jは、この張出片1cの前記コーナー部と反対側の側辺に臨んでいる。連絡管用溝31のうち端部30kに連なる部分は、連絡管用溝32のうち端部30mに連なる部分と交わっており、連絡管用溝31のうち端部30lに連なる部分は、連絡管用溝32のうち端部30mに連なる部分及び端部30kに連なる部分と交わっている。即ち、張出片1cの先端辺には、前記コーナー部と反対側から端部30m,30k,30n,30l,30oの順に配置されている。
【0074】
この端部30j,30mから連絡管61,62を長辺1aに沿うように前記コーナー部と反対方向に引き出すことができる。また、端部30k,30nから連絡管61,62を長辺1aと直交方向に引き出すことができる。さらに、端部30l,30oから連絡管61,62を張出片1cの先端辺に沿うように前記コーナー部側へ向って引き出すことができる。
【0075】
連絡管用溝33,34は、それぞれ、第6図の下方、左方及び上方の3方に分岐しており、該連絡管用溝33の端部30p,30q,30r及び連絡管用溝34の端部30s,30t,30uがそれぞれ張出片1dの周縁部に臨んでいる。これらのうち端部30q〜30tは張出片1dの先端辺に臨んでおり、端部30pは、この張出片1dの前記コーナー部側の側辺(即ち張出片1cの先端辺)に臨んでおり、端部30uは、この張出片1dの前記コーナー部と反対側の側辺に臨んでいる。連絡管用溝33のうち端部30qに連なる部分は、連絡管用溝34のうち端部30sに連なる部分と交わっており、連絡管用溝33のうち端部30rに連なる部分は、連絡管用溝34のうち端部30sに連なる部分及び端部30tに連なる部分と交わっている。即ち、張出片1dの先端辺には、前記コーナー部側から端部30q,30s,30t,30rの順に配置されている。
【0076】
この端部30p,30sから連絡管61,62を前記コーナー部よりも第6図の下方へ引き出すことができる。また、端部30q,30tから連絡管61,62を短辺1bと直交方向に引き出すことができる。さらに、端部30r,30uから連絡管61,62を短辺1bに沿うように前記コーナー部と反対方向に引き出すことができる。
【0077】
なお、連絡管用溝32の端部30mも、張出片1c前記コーナー部と反対側の側辺に臨むように設けられてもよい。連絡管用溝34の端部30sも、張出片1d前記コーナー部側の側辺に臨むように設けられてもよい。連絡管用溝33の端部30rも、張出片1d前記コーナー部と反対側の側辺に臨むように設けられてもよい。
【0078】
連絡管用溝は、張出片1c,1dの先端辺及び各側辺のいずれか1辺にのみ連なるように設けられてもよい。連絡管用溝は、基板1の長辺1a及び短辺1bのうち張出片1c,1dが形成されていない部分にも連なるように設けられてもよい。
【0079】
この実施の形態では、張出片1c,1dは、それぞれ、基板1の長辺1a及び短辺1bから直交状に延出する略長方形状のものとなっているが、張出片の延出方向及び形状等の構成はこれに限定されない。
【0080】
この実施の形態では、張出片1c,1dは、それぞれ、基板1の長辺1a及び短辺1bのうち前記コーナー部の近傍部分に設けられているが、コーナー部から離隔した部分に設けられてもよい。
【0081】
張出片は、基板1の長辺1a及び短辺1bのいずれか一方にのみ設けられてもよい。
【0082】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。
【0083】
本発明では、連絡管用溝は、基板1の長辺1a及び短辺1bのいずれか一方にのみ連なるよう設けられてもよい。
【0084】
ヘッダ配置用スペースは、脚の隅角付近から離隔した位置(例えば長辺1a又は短辺1bの中間付近や、これらの辺から離隔した基板中央側など)に設けられてもよい。
【0085】
連絡管用溝及び放熱配管用溝の配設ルートも、図示以外のルートとしてもよい。
【0086】
上記の実施の形態では、基板は、全体として略長方形状となっているが、基板の形状はこれに限定されるものではなく、長方形以外の多角形状や、円形又は楕円形など、種々の形状とすることができる。
【0087】
また、連絡管用溝が連なる基板の周縁部は、一直線状に延在したものでなくてもよく、少なくとも部分的に湾曲又は屈曲していたり、クランク状、凹形状又は凸形状となっていてもよい。
【0088】
上記の実施の形態は、床暖房用の温調マットに関するものであるが、本発明の温調マットは、壁や天井等に配置されてもよい。また、温水ではなく、冷水を配管に通水して冷房するようにしてもよい。水以外のオイル、不凍液等の熱媒体を流通させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】実施の形態に係る温調マットの平面図と断面図である。
【図2】実施の形態に係る温調マットの斜視図である。
【図3】実施の形態に係る温調マットの平面図である。
【図4】実施の形態に係る温調マットの平面図である。
【図5】実施の形態に係る温調マットの平面図である。
【図6】別の実施の形態に係る温調マットの平面図である。
【図7】従来の温調マットを示す平面図である。
【符号の説明】
【0090】
1,1A 温調マット
10 基板本体
11 透明又は半透明シート
20,81 ヘッダ配置用スペース
31〜34,91,92 連絡管用溝
41〜44,82 放熱配管用溝
50,83 ヘッダ
61,62 連絡管
71〜74,84 放熱配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッダ配置用スペースと、該ヘッダ配置用スペースに連なる放熱配管用溝及び連絡管用溝とを有する温調マット用基板であって、
該連絡管用溝は、該基板の周縁部の近傍に設けられ、該ヘッダ配置用スペースと該周縁部とに連なるように延設されており、
この連絡管用溝を設けた基板周縁部の近傍部分と、前記放熱配管用溝を設けた基板主部とが連続して一体となっていることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項2】
請求項1において、前記基板は略方形板状であり、
前記連絡管用溝は、該基板の1つの隅角の近傍に設けられており、
該連絡管用溝は、この隅角で交わる基板の第1の辺と第2の辺との少なくとも一方に連なっていることを特長とする温調マット用基板。
【請求項3】
請求項1において、前記基板の周縁部から一体的に側方へ延出した張出片が設けられており、
前記連絡管用溝は、該張出片の周縁部に連なっていることを特徴とする温調マット。
【請求項4】
請求項3において、前記基板は略方形板状であり、
前記張出片は、該基板の少なくとも一辺から延出しており、
前記連絡管用溝は、該張出片の延出方向先端側の先端辺及びこれと交叉する側辺の少なくとも一方に連なっていることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項5】
請求項4において、前記連絡管用溝は、前記基板の1つの隅角の近傍に設けられており、
前記張出片は、この隅角に向かう基板の第1の辺及び第2の辺の少なくとも一方の該隅角の近傍部分から延出していることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記放熱配管用溝のうち、前記基板の周縁部の近傍において前記連絡管用溝に最も近接する溝(以下、放熱配管用溝Aということがある。)と、該連絡管用溝との最近接部における距離が30mm以下となっていることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項7】
請求項6において、該距離が2〜25mmであることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項8】
請求項6又は7において、前記基板は略方形板状であり、
前記連絡管用溝は、前記基板の前記隅角の近傍に設けられており、
前記ヘッダ配置用スペースは、基板の前記第1の辺に対向する第1の端辺と、前記第2の辺に対向する第2の端辺とを有しており、
該連絡管用溝は該第1の端辺に連なっており、
前記放熱配管用溝は該第2の端辺に連なっており、
前記放熱配管用溝Aは、前記隅角の近傍において、該第2の端辺から前記第2の辺に向って延出し、次いで前記第1の辺及び第2の辺に接近するように湾曲し、その後、該第1の辺から離れ且つ第2の辺に接近するように湾曲していることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項9】
請求項8において、前記連絡管用溝は、少なくとも一部が前記第1の端辺から前記第1の辺及び第2の辺に接近するように延出し、次いで該第1の辺から離れ且つ第2の辺に向かうように湾曲していることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、該温調マット用基板は、板状の基板本体と、該基板本体の裏面に貼着された透明又は半透明なシートとを備えており、
前記連結管用溝は、該基板本体を厚み方向に貫くスリットよりなり、
前記シートは該スリットを塞ぐように基板本体に貼着されていることを特徴とする温調マット用基板。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の温調マット用基板と、
該基板のヘッダ配置用スペース内に配置されたヘッダと、
該ヘッダに連なり、前記放熱配管用溝内に配置された放熱配管と
を備えてなる温調マット。
【請求項12】
請求項11の温調マットを建物の床に敷設し、前記連絡管用溝に配設した連絡管を介してヘッダと建物の温水循環配管とを接続してなる温調マットの施工構造。
【請求項13】
請求項12において、該温水循環配管は該床から立ち上がっており、
該温調マット用基板には、該温水循環配管の立ち上がり位置と重なるように孔が基板厚み方向に貫設されており、
該温水循環配管は、該孔内に引き込まれて該連絡管と接続されていることを特徴とする温調マットの施工構造。
【請求項14】
請求項12又は13において、前記連絡管用溝のうち連絡管が配置されていない箇所に埋戻材を充填したことを特徴とする温調マットの施工構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−127503(P2010−127503A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301141(P2008−301141)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】