説明

温風暖房機

【課題】いかなる条件の着火動作時においても本体ケース内部の温度上昇を抑えて安全性を確保できると共に、着火動作時に発生する未燃ガスの臭気成分により使用者に不快感を与えることを防止できる温風暖房機を提供すること。
【解決手段】着火動作開始から所定の遅延時間を経て送風装置を駆動させる制御部を備えた温風暖房機において、通常燃焼後の消火時から再運転時までの時間を計時する計時手段を設け、この計時手段の計時結果に基づいて送風装置の遅延時間を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着火動作時の未燃ガスによる臭気を低減する温風暖房機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
温風暖房機は、一般に次のような構成である。
【0003】
図1に示すように、1は温風暖房機の本体ケース、2は液体燃料の気化ガスと空気の混合ガスを燃焼させて燃焼ガスを発生するバーナ、3はバーナ2の火炎を覆い燃焼ガスを上方に排出する燃焼室本体、4は燃焼室本体3を覆うように設けられた燃焼室遮熱板、5は本体ケース1内に空気取込口6から空気を取り込む送風装置、7は燃焼室本体3と燃焼室遮熱板4の間に形成され燃焼ガスと送風装置5からの空気とを混合し温風として本体ケース1前面へ導く温風通路、8は室内に温風を放出すための温風吹出口である。
【0004】
また、図2より、9は液体燃料(灯油)を貯蔵した油受皿10の上部に設けた電磁ポンプ、11は電磁ポンプ9から供給される液体燃料をヒータ加熱して気化する気化部12とソレノイド13によって可動する開閉杆14により開閉するノズル部15からなる気化装置である。さらに、16はバーナ混合管で気化装置9からの気化ガスと一次空気を混合して混合ガスするためのものであり、17はこの混合ガスにバーナ2の火口部18で着火するための着火装置である。
【0005】
次に、この温風暖房機の着火動作について説明する。図示しない運転スイッチをオンすると気化装置11のヒータに通電がおこなわれ、ヒータの発熱により気化部12が加熱される。そして、気化部12が液体燃料を気化し得る温度まで上昇すると電磁ポンプ9が始動して気化部12内に液体燃料が送油され、液体燃料は加熱気化して気化ガスとなる。
【0006】
また、電磁ポンプ9の始動に相前後してソレノイド13に通電が行われるため開閉杆14がノズル15を開放して気化部12からの気化ガスはノズル部15よりバーナ混合管16に向かって噴出する。そして、この気化ガスの噴出力によってバーナ混合管16へ一次空気が供給され混合ガスとなり、この混合ガスをバーナ2の火口部18にて着火装置17によって着火させ燃焼するようにしている。
【0007】
ところで、着火動作時は火口部18から噴出する混合ガスに着火して燃焼を開始するが、この時、混合ガスの全てを火口部18で燃焼させることは困難であり、燃え残りの混合ガス(未燃ガス)が燃焼ガスと共に送風装置5により温風吹出口8より室内に放出されることから、本体ケース1前面にいる使用者に未撚ガスの臭気成分を直接吹き付けることになるため、臭気成分により使用者に不快感を与えてしまうことになる。
【0008】
そこで、従来の着火時における臭気対策として、着火動作時に一定時間の遅延時間を経て送風装置5を駆動させる方式がある。
【0009】
図1の矢印で示すように、気化ガスと空気との混合ガスの燃焼が開始されると、送風装置5は停止しているため、未燃ガスは燃焼室本体3内で滞留している間に燃焼された後、燃焼室本体3の上部から温風通路7に排出され、空気吸込口6から燃焼ガスと一緒に自然対流により放出される。その後、予め設定した遅延時間が経過すると、送風装置5が駆動して空気取込口6からの空気と燃焼ガスとを温風通路7で混合して温風とし温風吹出口8から室内に放出することになる。
【0010】
つまり、着火動作時に発生した未燃ガスの臭気成分は、送風装置5が停止している間に燃焼室本体3内で燃焼された後、燃焼本体ケース1背面に設けられた空気取込口6から放出して拡散するため、本体ケース1前面にいる使用者に多量の臭気成分を直接吹き付けることが無くなるのである。従って、着火動作時の送風装置5の遅延時間を長くするほど臭気成分が、燃焼室本体3内で燃焼され易くなり、さらに本体ケース1背面の空気取込口6から放出され易くなることから、使用者に吹き付けられる臭気成分の量が少なくなるため、使用者に不快感を与えることを防止できるのである。
【特許文献1】特開平11−63677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前述の着火動作時に一定の遅延時間を設定して送風装置を停止する方法において、送風装置が停止している間に、本体ケース背面の空気取込口から放出される燃焼ガスにより本体ケース内部の温度が高温となるため、遅延時間は安全性を考慮して本体ケース内部に設けられた安全装置の作動温度以下で送風装置を駆動させる時間に設定する必要があった。
【0012】
特に、通常燃焼後の消火時から短時間で再運転を行なう場合(再着火時)には、本体ケース内部が十分冷却されずに高温となっているため、安全装置の作動温度に到達するまでの時間が冷状態からの着火動作時に比べて短くなる。そのため、遅延時間を冷状態から着火動作時の温度上昇の時間に基づいて設定すると、再着火時の遅延時間の間に、本体ケース内部の温度が安全装置の作動温度以上に上昇して暖房運転を停止することになる。従って、遅延時間は再着火時の本体ケース内部の温度が安全装置の作動温度以下で送風装置を駆動させる時間に設定しなければならなかった。
【0013】
つまり、本体ケース内部の温度が安全装置の作動温度に到達する時間は、冷状態からの着火動作時より再着火時の方が短くなるため、送風装置の遅延時間も短く設定しなければならなかった。従って、冷状態からの着火動作時において遅延時間を長く設定できるにもかかわらず再着火時の短い遅延時間に設定しなければならないため、冷状態からの着火動作時の消臭効果が十分得られないという問題があった。
【0014】
本発明は上記課題を解決するためのもので、いかなる条件の着火動作時においても本体ケース内部の温度上昇を抑えて安全性を確保できると共に、着火動作時に発生する未燃ガスの臭気成分により使用者に不快感を与えることを防止できる温風暖房機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、液体燃料を気化ガスにする気化装置と、前記気化装置に燃料を供給する電磁ポンプと、前記気化装置からの気化ガスと空気との混合ガスを燃焼するバーナと、前記バーナの混合ガスに着火する着火装置と、前記バーナの燃焼ガスを室内に放出する送風装置と、前記気化装置と前記電磁ポンプと前記着火装置と前記送風装置を制御する制御部とを備え、着火動作開始時から所定の遅延時間を経て前記送風装置を駆動させる温風暖房機において、前記制御部は、通常燃焼後の消火時から再運転時までの時間を計時する計時手段を設け、前記計時手段の計時結果に基づいて前記遅延時間を決定することを特徴とする温風暖房機である。
【0016】
また、前記計時手段の計時時間が短い場合には遅延時間を短くし、計時時間が長ければ遅延時間を長くすることを特徴とする請求項1記載の温風暖房機である。
【発明の効果】
【0017】
上述のように構成することにより、着火動作開始から送風装置が駆動するまでの遅延時間を通常燃焼後の消火時から再運転時までの時間により決定するため、いかなる条件の着火動作時においても本体ケース内部の温度上昇を抑えて安全性を確保できると共に、着火動作時に発生する未燃ガスの臭気成分により使用者に不快感を与えることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
好適と考える本発明の最良の形態を、本発明の作用効果を示して簡単に説明する。
【0019】
本発明は、着火動作開始から所定の遅延時間を経て送風装置を駆動させる温風暖房機において、通常燃焼後の消火時から再運転時までの時間を計時する計時手段を設け、この計時手段の計時結果に基づいて遅延時間を決定する温風暖房機である。
【0020】
すなわち、通常燃焼後の消火時から再運転時までの時間を計時することにより着火動作時の本体ケース内部の温度を推定して遅延時間を決定するもので、計時時間が長ければ消火時から十分冷却されているため本体ケース内部の温度は低いと判断して遅延時間を長く設定し、逆に、計時時間が短ければ消火時からほとんど冷却されていないために本体ケース内部の温度は高いと判断して遅延時間を短く設定するのである。
【0021】
従って、通常燃焼後の消火時から再運転時までの時間により遅延時間を決定するため、従来のように遅延時間を固定値にする必要が無くなり、いかなる条件の着火動作時においても本体ケース内部の温度上昇を抑えて安全性を確保できると共に、送風装置が停止している間に未燃ガスの臭気成分は燃焼室本体3内で滞留
している間に燃焼された後、本体ケース背面に設けられた空気取込口6から放出して拡散するため、未燃ガスの臭気成分により使用者に不快感を与えることを防止できるのである。
【実施例】
【0022】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。本実施例に係わる温風暖房機の構成は従来の温風暖房機と制御部19のみが異なり、その他の構造は従来のものと同一であることから、ここではその説明について省略する。
【0023】
図3は本発明の実施例における温風暖房機の制御部19を示すブロック図である。20はマイクロコンピュータ(マイコン)であり、計時手段21を有しており、この計時手段21は運転スイッチ等の入力により計時動作を開始又は停止するものである。22は送風装置駆動回路であり、マイコン20からの信号により送風装置5を駆動させるものである。また、23はソレノイド駆動回路、24は電磁ポンプ駆動回路であり、それぞれマイコン20からの信号によりソレノイド13及び電磁ポンプ9を制御するものである。
【0024】
次に本発明の実施例の着火動作制御について図4のタイムチャートを用いて説明する。まず、マイコン20の計時手段21は通常燃焼後の消火時に押下された運転スイッチ等の入力により計時を開始し(a点)、使用者が再び運転を開始するために運転スイッチを押下した時に計時を終了する(b点)。そして、マイコン20は計時手段21が計時を終了すると同時に、マイコン20内に予め記憶してある計時時間と遅延時間のデータに基づいて、計時された計時時間(t)に対応する遅延時間(T)を決定する。
【0025】
つまり、通常燃焼後の消火時から再運転時までの時間を計時することにより着火動作時の本体ケース1内部の温度を推定して送風装置5の遅延時間(T)を決定するのである。例えば、計時時間(t)が長ければ消火時から十分冷却されているため本体ケース1内部の温度は低いと判断して遅延時間(T)を長く設定し、逆に、計時時間(t)が短ければ消火時からほとんど冷却されていないために本体ケース1内部の温度は高いと判断して遅延時間(T)を短く設定するのである。
【0026】
ここで、計時手段21の計時時間と遅延時間の関係を図5に示す。図5(A)はある計時時間を境に遅延時間を三段階に設定するものである。また、図5(B)は所定の計時時間までは遅延時間を連続的に変化させるものである。尚、計時時間と遅延時間の関係は本実施例に限定されるものではない。
【0027】
そして、運転スイッチが押下されることにより気化装置11のヒータに通電がおこなわれ、ヒータの発熱により気化部12が加熱される。そして、気化部12が液体燃料を気化し得る温度まで上昇するとマイコン20の信号により電磁ポンプ駆動回路24が電磁ポンプ9を始動する。これにより気化部12内に液体燃料が送油され液体燃料は加熱気化して気化ガスとなる。
【0028】
さらに、電磁ポンプ9の始動に相前後してマイコン20の信号によりソレノイド駆動回路23からソレノイド13に通電が行われるため、開閉杆14がノズル15を開放して気化部12からの気化ガスはノズル部15よりバーナ混合管16に向かって噴出する。そして、この気化ガスの噴出力によってバーナ混合管16へ一次空気が供給され混合ガスとなり、この混合ガスをバーナ2の火口部18にて着火装置17によって着火させ燃焼を開始する(c点)。
【0029】
燃焼開始時には、混合ガスの全てを火口部18で燃焼させることは困難であるが、送風装置5が遅延時間(T)の間は停止しているため、燃え残りの混合ガス(未燃ガス)は燃焼室本体3内で滞留している間に燃焼された後、燃焼ガスと一緒に燃焼室本体3から温風通路7に排出されて空気吸込口6から自然対流により放出されることになる。
【0030】
その後、遅延時間(T)が経過すると(d点)、送風装置5が駆動して空気取込口6からの空気と燃焼ガスとを温風通路7で混合して温風とし、温風吹出口8から室内に放出して室内を暖房することになる。
【0031】
つまり、着火動作時に発生した未燃ガスの臭気成分は、送風装置5が停止している間に燃焼室本体3内で燃焼された後、本体ケース1背面に設けられた空気取込口6から放出して拡散するため、本体ケース1前面にいる使用者に多量の臭気成分を直接吹き付けることが無くなり、臭気成分により使用者に不快感を与えることを防止できるのである。
【0032】
以上のように本発明では、冷状態からの着火動作時において、従来のように遅延時間を長く設定できるにもかかわらず再着火時において本体ケース1内部の安全装置が作動しないように短い遅延時間に設定する必要が無くなることから、いかなる条件の着火動作時においても本体ケース1内部の温度上昇を抑えて安全性を確保できると共に、計時時間に対応した遅延時間を設定できるため、着火時の消臭効果が十分に得られるのである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来例及び本実施例の温風暖房機の側面断面図である。
【図2】従来例及び本実施例の気化装置、燃料供給装置、バーナの概略説明図である。
【図3】本実施例の制御部を示すブロック図である。
【図4】本実施例の制御動作を示すタイミングチャート図である。
【図5】本実施例の制御動作における計時時間と遅延時間の関係図である。
【符号の説明】
【0034】
2 バーナ
5 送風装置
10 気化装置
17 着火装置
19 制御部
21 計時手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料を気化ガスにする気化装置と、前記気化装置に燃料を供給する電磁ポンプと、前記気化装置からの気化ガスと空気との混合ガスを燃焼するバーナと、前記バーナの混合ガスに着火する着火装置と、前記バーナの燃焼ガスを室内に放出する送風装置と、前記気化装置と前記電磁ポンプと前記着火装置と前記送風装置を制御する制御部とを備え、着火動作開始時から所定の遅延時間を経て前記送風装置を駆動させる温風暖房機において、前記制御部は、通常燃焼後の消火時から再運転時までの時間を計時する計時手段を設け、前記計時手段の計時結果に基づいて前記遅延時間を決定することを特徴とする温風暖房機。
【請求項2】
前記計時手段の計時時間が短い場合には遅延時間を短くし、計時時間が長ければ遅延時間を長くすることを特徴とする請求項1記載の温風暖房機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−266572(P2006−266572A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84103(P2005−84103)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(000109026)ダイニチ工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】