説明

測位システム

【課題】ジッタによる影響を低減し、精度のよい測位を行う。
【解決手段】測位システム8は、電波信号を送受信する移動局10と、電波信号を送受信する基地局12A〜Dと、予め算出された、受信信号の時間分散と受信信号強度との相関を格納保持した記憶部45とを有する。移動局10は、測距用電波信号に先立ち調整用電波信号を送信し、基地局12A〜Dは、調整用電波信号の受信信号強度に応じて、上記相関に基づき、移動局10からの測距用電波信号の出力制御指示信号を送信し、移動局10は、出力制御指示信号に対応した出力値で測距用電波信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局と基地局との間で行われる無線通信の結果に基づき、それらの間の距離の算出可能な測位システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動局と基地局との間の無線通信において、移動局からの送信出力を基地局から制御する従来技術として、例えば特許文献1に記載のものがある。
【0003】
この従来技術によるCDMA方式の無線通信システムでは、基地局が、移動局(移動機)に対し、移動局の送信電力を制御するための制御信号(パイロット信号)送信し、移動局は、当該制御信号に基づき、基地局への送信電力を制御するようになっている。
【0004】
一方、移動局と基地局との間の無線通信の結果に基づいて、移動局の位置の算出(測位)を行う測位システムが既に提唱されている。その手法としては、例えば、TOA(Time of Arrival)方式や、TDOA(Time Difference of Arrival)方式等がある。TOA方式は、ある移動局における電波の送信時刻と複数の基地局における電波の受信時刻とに基づいて算出した、電波の伝搬時間に基づいて移動局と複数の基地局との間の距離をそれぞれ算出し移動局の測位を行う方式である。TDOA方式は、複数の基地局それぞれの受信時刻の相対受信時刻を用いて、移動局と複数の基地局との間の距離をそれぞれ算出し、移動局の測位を行う方式である。
【0005】
このような測位システムでは、例えば、特許文献2記載のように、移動局(被測定体)からの送信信号を、異なる位置に配置された複数の基地局(受信局)で受信する。そして、各基地局での受信信号の到達時間差を検出することにより、移動局までの距離を算出するようになっている(TDOA方式)。
【特許文献1】特開平7-221700号公報
【特許文献2】特開2004−233063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、無線通信における電波信号の送受信においては、信号波形の揺らぎによる信号の時間軸方向の揺れが避けられない。上記測位システムにおいても、移動局からの信号を複数の基地局で受信する際、時間分散(いわゆるジッタ)がそれぞれ生じる場合がある。一般に、電波は光速c(=約3.0×10m/s)の速度で進むことが知られているが、仮に、このジッタによって、受信信号の信号波形が本来の信号波形とずれると、移動局と各基地局との検出距離においてそれぞれ大きな誤差が生じる。
【0007】
上記特許文献2においては、このようなジッタによる受信信号の検出精度の低下を配慮してしない。このため、測距精度を向上させることが困難である。
【0008】
また、上記特許文献1では、基地局が1つの移動局に対し出力制御を行うものに過ぎず、上記測位システムのように複数の基地局と1つの移動局との間の無線通信の制御にそのまま適用できるものではない。
【0009】
本発明の目的は、移動局から複数の基地局との通信に基づき測位を行う際のジッタによる影響を低減し、測距精度を向上できる測位システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明は、電波信号を送信する第1送信部と電波信号を受信する第1受信部とを備えた移動局と、電波信号を送信する第2送信部と受信アンテナを介し電波信号を受信する第2受信部とを備えた複数の基地局と、前記複数の基地局の前記第2受信部で受信した前記電波信号に基づき、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれまでの測距処理を行う測距処理手段とを有する測位システムであって、予め算出された、受信信号の時間分散と受信信号強度との相関を格納保持した相関記憶手段を有し、前記移動局は、測距用の前記電波信号に先立ち、調整用の前記電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御する第1制御手段を備え、前記基地局は、前記移動局より送信され前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じて、前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記移動局からの前記測距用の電波信号の出力を制御するための出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御する第2制御手段を備え、前記移動局の前記第1制御手段は、前記基地局より送信され前記第1受信部で受信された前記出力制御指示信号に対応した出力値で前記測距用の電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御することを特徴とする。
【0011】
移動局から測距用電波信号が送信されると、その信号が複数の基地局にて受信される。そして、それら複数の基地局でそれぞれ受信された信号に基づき、測距処理手段が、移動局から基地局までの距離を算出する測距処理を行う。
【0012】
ここで、無線通信における電波信号の送受信においては信号の時間軸方向の揺れが不可避であり、このため上記の基地局での測距用電波信号の受信時に、時間分散(いわゆるジッタ)が生じる。このジッタは、受信信号強度の相関として表すことができる。すなわち、受信信号強度が増加するとともにジッタは減少していき、ある受信信号強度でジッタは極小値となり、これを超えると受信信号強度の増加と共にジッタが増加する挙動となる。
【0013】
本願第1発明においては、予め上記のジッタと受信信号強度との相関を相関記憶手段に格納保持しておく。そして、移動局では、第1制御手段の制御に基づき、測距に先立ってまず調整用の電波信号を送信する。複数の基地局は、この調整用電波信号を第2受信部で受信すると、第2制御手段の制御に基づき、後に移動局から送信される測距用電波信号の出力を制御するための出力制御指示信号をそれぞれ第2送信部から移動局へと送信する。移動局では、この出力制御指示信号を第1受信部より受信すると、その指示に対応した出力値で測距用の電波信号を第1送信部から複数の基地局それぞれへ個別に送信する。
【0014】
以上のように、複数の基地局それぞれにおける調整用の電波信号の受信強度に応じて移動局からの測距用の電波信号の出力値の調整を個別に行うことで、上記のような挙動に基づく、基地局受信時のジッタ低減を図ることが可能となる。この結果、上記ジッタによる測距への悪影響を低減し、測距精度を向上することができる。
【0015】
上記目的を達成するために、第2発明は、電波信号を送信する第1送信部と電波信号を受信する第1受信部とを備えた移動局と、電波信号を送信する第2送信部と受信アンテナを介し電波信号を受信する第2受信部とを備えた複数の基地局と、前記複数の基地局の前記第2受信部で受信した前記電波信号に基づき、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれまでの測距処理を行う測距処理手段とを有する測位システムであって、予め算出された、受信信号の時間分散と受信信号強度との相関を格納保持した相関記憶手段を有し、前記移動局は、測距用の前記電波信号に先立ち調整用の前記電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御する第1制御手段を備え、前記複数の基地局のそれぞれは、前記移動局より送信され前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じて、前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記第2受信部の受信感度を制御する第3制御手段を備え、前記移動局の前記第1制御手段は、前記複数の基地局の前記第3制御手段による前記第2受信部の受信感度制御が行われた後に前記測距用の電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御することを特徴とする。
【0016】
移動局から測距用電波信号が送信されると、その信号が複数の基地局にて受信される。そして、それら複数の基地局で受信された信号に基づき、測距処理手段が、移動局から基地局までの距離を算出する測距処理を行う。
【0017】
ここで、無線通信における電波信号の送受信においては信号の時間軸方向の揺れが不可避であり、このため上記の基地局での測距用電波信号の受信時に、時間分散(いわゆるジッタ)が生じる。このジッタは、受信信号強度の相関として表すことができる。すなわち、受信信号強度が増加するとともにジッタは減少していき、ある受信信号強度でジッタは極小値となり、これを超えると受信信号強度の増加と共にジッタが増加する挙動となる。
【0018】
本願第2発明においては、予め上記のジッタと受信信号強度との相関を相関記憶手段に格納保持しておく。そして、移動局では、第1制御手段の制御に基づき、測距に先立ってまず調整用の電波信号を送信する。複数の基地局では、この調整用電波信号を第2受信部で受信すると、それぞれの第3制御手段が、後に移動局から送信される測距用電波信号を受信するために(上記相関のジッタ挙動に基づき)第2受信部の受信感度を個別に調整する。そして移動局は、上記複数の基地局それぞれでの受信感度制御が全て終わった後に、測距用の電波信号を第1送信部から複数の基地局へ送信する。
【0019】
以上のように、複数の基地局それぞれにおける調整用の電波信号の受信強度に応じて各基地局で個別に第2受信部の受信感度の調整を行うことで、移動局からの測距用電波信号を、ジッタの少ない最適な感度で受信するように設定可能となる。この結果、上記ジッタによる測距への悪影響を低減し、測距精度を向上することができる。
【0020】
上記目的を達成するために、第3発明は、電波信号を送信する第1送信部と電波信号を受信する第1受信部とを備えた移動局と、電波信号を送信する第2送信部と受信アンテナを介し電波信号を受信する第2受信部とを備えた複数の基地局と、前記複数の基地局の前記第2受信部で受信した前記電波信号に基づき、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれまでの測距処理を行う測距処理手段とを有する測位システムであって、予め算出された、受信信号の時間分散と受信信号強度との相関を格納保持した相関記憶手段を有し、前記移動局は、測距用の前記電波信号に先立ち、調整用の前記電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御する第1制御手段を備え、前記複数の基地局のそれぞれは、前記移動局より送信され前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じて、前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記移動局からの前記測距用の電波信号の出力を制御するための出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御する第2制御手段と、前記移動局より送信され前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じて、前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記第2受信部の受信感度を制御する第3制御手段とを備え、前記移動局の前記第1制御手段は、前記複数の基地局の前記第3制御手段による前記第2受信部の受信感度制御が行われた後、前記基地局より送信され前記第1受信部で受信された前記出力制御指示信号に対応した出力値で前記測距用の電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御することを特徴とする。
【0021】
本願第3発明においては、上記第1発明と同様の、基地局における調整用の電波信号の受信強度に応じた移動局からの測距用の電波信号の出力値の調整と、上記第2発明と同様の、複数の基地局それぞれにおける調整用の電波信号の受信強度に応じた第2受信部の受信感度の調整とを併せて行う。これにより、さらに確実にジッタによる測距への悪影響を低減し、測距精度をさらに向上することができる。
【0022】
第4発明は、上記第1又は第3発明において、前記基地局の前記第2制御手段は、前記相関に基づき、前記第2受信部での受信信号強度を所定値とするか若しくは前記所定値に近づけるための前記出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御することを特徴とする。
【0023】
基地局における調整用の電波信号の受信強度に応じて、移動局の第1送信部の送信出力を制御し、基地局の第2受信部での測距用電波信号の受信信号強度を所定値に(又は所定値に近づくように)調整する。この結果、移動局からの測距用電波信号を、ジッタの少ない受信強度で基地局で受信できるので、ジッタによる測距への悪影響を低減して測距精度を向上することができる。
【0024】
第5発明は、上記第4発明において、前記基地局の前記第2制御手段は、前記相関に基づき、前記第2受信部での受信信号強度を、受信信号の時間分散が最小となる前記所定値とするか若しくは当該所定値に近づけるための前記出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御することを特徴とする。
【0025】
これにより、移動局からの測距用電波信号を、ジッタが最小となる最適強度で基地局で受信できる。この結果、ジッタによる測距への悪影響を最小限にして測距精度を確実に向上することができる。
【0026】
第6発明は、上記第4又は第5発明において、前記移動局の前記第1制御手段は、前記調整用の電波信号を最大出力で送信するように、前記第1送信部を制御することを特徴とする。
【0027】
移動局は調整用の電波信号を最大出力で送信し、基地局ではその受信強度に応じて出力制御指示信号を出力し、移動局からの測距用電波信号をジッタの少ない強度で受信するように設定する。これにより、ジッタによる測距への悪影響を低減し、測距精度を向上することができる。また、移動局が最大出力で調整用電波信号を送信することにより、基地局側での受信強度を(同一条件で受信可能な限りの)最大強度とすることができる。この結果、上記相関におけるジッタ挙動に対応し、移動局の送信出力制御において、送信出力を増大させるべきか減少させるべきか、またそれらの増減量はいずれか等の見極めを容易にし、制御性を向上することができる。
【0028】
第7発明は、上記第6発明において、前記基地局の前記第2制御手段は、前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度が、前記記憶手段に記憶された前記相関における前記受信信号の時間分散が最小となる最適受信信号強度よりも大きかった場合には、前記移動局の前記第1送信部からの前記測距用の電波信号の送信出力値を減少させるための前記出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御することを特徴とする。
【0029】
基地局の第2受信部における調整用の電波信号の受信強度が、ジッタが最小となる最適受信信号強度より大きかった場合には、受信強度を当該最適受信信号強度とする(あるいは近づける)ように、移動局の第1送信部の送信出力を減少制御する。これにより、移動局からの測距用電波信号を、よりジッタの少ない強度で基地局で受信することができる。
【0030】
第8発明は、上記第6発明において、前記基地局の前記第2制御手段は、前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度が、前記記憶手段に記憶された前記相関における前記受信信号の時間分散が最小となる最適受信信号強度よりも小さかった場合には、前記移動局の前記第1送信部から同一出力値の前記測距用の電波信号を出力させるための前記出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御するとともに、前記測距用の電波信号の受信時に、当該測距用電波信号に対し所定の重み付けを行うよう、前記第2受信部を制御することを特徴とする。
【0031】
基地局の第2受信部における調整用の電波信号の受信強度が、ジッタが最小となる最適受信信号強度より小さかった場合には、受信強度を当該最適受信信号強度とする(あるいは近づける)ためには、移動局の第1送信部の送信出力を増大させなければならない。しかしながら、移動局が調整用の電波信号を最大出力で送信している場合には、さらに送信出力を増大させるのは不可能である。したがって、測距用の電波信号を再び同一強度にて送信させるとともに、この信号ではジッタ低減が十分図られていないことから、対応する重み付けを行うようにする。これにより、複数の基地局においてそれぞれ測距用電波信号を受信している場合等においては、当該ジッタ低減不十分の電波信号の重み付けを他のものより軽くする(例えば4つの基地局で受信する場合にはジッタが十分に低減された残りの3つの基地局のデータを使って測位する)等の方策をとることで、ジッタの存在による測位精度への影響を最小限にとどめることが可能となる。
【0032】
第9発明は、上記第4乃至第8発明のいずれかにおいて、前記移動局の前記第1送信部は、出力電力を制御できる可変増幅手段とを備えており、前記第1制御手段は、前記基地局の前記第2送信部からの前記出力制御指示信号に基づき、前記可変増幅手段の増幅率を制御することを特徴とする。
【0033】
基地局における調整用の電波信号の受信強度に応じて、移動局の第1送信部からの出力増幅率を制御して出力値を変化させることで、基地局での測距用電波信号の受信信号強度をジッタが少なくなるような値に制御することができる。また、IC出力後の増幅器を制御することにより、ICを制御する必要がなくIC自体は一定出力値で足りるので、ICの構成や制御を簡素化することができる。
【0034】
第10発明は、上記第4乃至第8発明のいずれかにおいて、前記移動局の前記第1送信部は、ICと、前記ICの出力側に接続され増幅器又は減衰器を備えた第1伝達路と、前記ICの出力側に接続され増幅器又は減衰器を備えない第2伝達路と、前記ICと前記第1伝達路又は前記第2伝達路とを選択的に接続する切替手段とを備えており、前記第1制御手段は、前記基地局の前記第2送信部からの前記出力制御指示信号に基づき、前記切替手段を切替制御することを特徴とする。
【0035】
移動局の第1送信部に、増幅器や減衰器のある第1伝達路と、それらのない第2伝達路とを設けておき、基地局における調整用の電波信号の受信強度に応じて、それら2つの伝達路を切替可能に構成する。これにより、基地局における調整用の電波信号の受信強度に応じて、第1伝達路と第2伝達路とを切り替え(さらには適宜増幅率・減衰量を制御し)最終的な第1送信部からの出力値を変化させることで、基地局での測距用電波信号の受信信号強度をジッタが少なくなるような値に制御することができる。
【0036】
第11発明は、上記第2又は第3発明において、前記基地局の前記第3制御手段は、前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じ、前記受信アンテナのアンテナ感度を変化させるアンテナ感度制御手段であることを特徴とする。
【0037】
基地局における調整用の電波信号の受信強度に応じて、アンテナ感度制御手段が、受信アンテナのアンテナ感度を制御する。これにより、結果として第2受信部での測距用電波信号の受信信号強度を所定値に(又は所定値に近づくように)調整することができる。この結果、移動局からの測距用電波信号を、ジッタの少ない受信強度で基地局で受信できるので、ジッタによる測距への悪影響を低減して測距精度を向上することができる。
【0038】
第12発明は、上記第2又は第3発明において、前記基地局の前記第2受信部は、前記受信アンテナを介して受信した前記測距用の電波信号を減衰させる可変減衰手段を備え、前記第3制御手段は、前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じ、前記可変減衰手段の減衰率を変化させる減衰制御手段であることを特徴とする。
【0039】
基地局における調整用の電波信号の受信強度に応じて、減衰制御手段が、第2受信部に設けた可変減衰手段の減衰率を制御する。これにより、結果として第2受信部での測距用電波信号の受信信号強度を所定値に(又は所定値に近づくように)調整することができる。この結果、移動局からの測距用電波信号を、ジッタの少ない受信強度で基地局で受信できるので、ジッタによる測距への悪影響を低減して測距精度を向上することができる。
【0040】
第13発明は、上記第4乃至第12発明のいずれかにおいて、前記基地局は、前記第2受信部で受信した前記測距用の電波信号の受信時刻に基づき到来時間を検出する到来時間検出部を備えていることを特徴とする。
【0041】
移動局に備えられた送信部から測距用電波信号を送信すると、その信号が受信アンテナを介し基地局の第2受信部で受信され、このときの測距用電波信号の受信時刻に基づき、電波信号の到来時間が到来時間検出部で検出される。この方式は、移動局と基地局との時計合わせを行ない、移動局の送信時刻と基地局の上記受信時刻の差を測定して移動局から基地局までの伝搬時間を算出し、これに基づき測距処理手段で測距処理を行うこと(いわゆるTOA方式)が可能となる。また、別の測位方法として、移動局と基地局との時計合わせを行わず、例えば2次元測位においては移動局から同一の測距用電波信号で最低3つの基地局への信号到達時間差から移動局と基地局間の距離を求める方法(いわゆるTDOA方式)がある。ただし、この方式では複数の基地局間同士で時計あわせを行う必要がある。
【0042】
第14発明は、上記第13発明において、前記測距処理手段は、前記基地局と信号送受可能に接続された測位サーバに設けられ、前記各基地局毎の前記到来時間検出部で検出された前記測距用の電波信号の到来時間に基づき前記測距処理を行うことを特徴とする。
【0043】
移動局からの測距用電波信号に基づき各基地局の到来時間検出部で検出された到来時間データは、測位サーバへ出力される。測位サーバに設けた測距処理手段がその入力された到来時間データに基づき測距処理を行ない、移動局から各基地局までの距離を算出して、さらにそれら複数の距離データに基づいて移動局の位置を算出する。
【0044】
第15発明は、上記第13発明において、前記測距処理手段は、前記基地局に設けられ、前記到来時間検出部で検出された前記測距用の電波信号の到来時間データに基づき前記測距処理を行い、その測距処理結果を、前記基地局と信号送受可能に接続された測位サーバに出力することを特徴とする。
【0045】
移動局からの測距用電波信号に基づき基地局の到来時間検出部で到来時間が検出される。そして、その検出された到来時間に基づき、基地局に設けられた測距処理手段が測距処理を行って移動局から基地局までの距離を算出し、算出した距離データを測位サーバへ出力することができる。測位サーバでは、それら距離データに基づいて移動局の位置を算出することができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、ジッタによる測距への影響を低減し、測距精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0048】
(A)測位システムの基本構成
図1は、本実施形態の測位システム8の構成の一例を表す説明図である。
【0049】
図1において、平面上の任意の形状(この例では一辺30(m)の正方形状)を備えた移動可能領域50が設けられる。この移動可能領域50には、3つの移動局10A,10B,10Cと、4つの基地局12(第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、第4基地局12D)と、測位サーバ14とが設けられている。
【0050】
移動局10A〜10Cは、移動可能領域50内を移動可能に配置されている。第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12C、及び第4基地局12Dは、正方形の移動可能領域50の既知の位置に(この例では4つの基地局を4隅それぞれに1つずつ)固定的に配置されている。
【0051】
測位サーバ14は、例えば有線ケーブル52により各基地局12A〜12Dと接続され、互いに情報通信可能となっている。そして、測位サーバ14は、移動局10によって送信された電波(=測距用電波信号;詳細は後述)が上記基地局12A〜12Dによって受信されるときの受信時刻情報に基づき、移動可能領域50内における移動局10の位置を算出する(=測位)。
【0052】
図2は、上記位置算出のために、移動可能領域50において便宜上設定される座標系を表す説明図である。
【0053】
図2において、x軸及びy軸を備えた座標系が定義されており、移動可能領域50上の位置はこれらxy座標系において規定される。この例では、(理解の容易のため)x座標y座標の値は、原点(0,0)からの距離[m]に対応させてある。すなわち、第1基地局12Aは座標(0,0)に配置され、第2基地局12Bは座標(0,30)に配置され、第3基地局12Cは座標(30,30)に配置され、第4基地局12Dは座標(30,0)に配置されている。
【0054】
図3は、移動局10の機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。
【0055】
図3において、移動局10は、電波を送受信するために用いるアンテナ部20と、平衡不平衡変換器22と、送受信切換部24と、送信アンプ部26と、無線部28と、制御部32と、電源部40と、増幅率一定の低雑音増幅器27と、コントローラ401と、時計41と、時計同期部55と、ゲインコントローラ51(可変増幅手段)と、検波回路53とを有する。
【0056】
平衡不平衡変換器22は、例えばバラン(Balun)で構成される。この平衡不平衡変換器22は、送受信切換部24の不平衡線路をアンテナ部20に適合するように平衡線路に変換する。
【0057】
送受信切換部24は、移動局10の送信状態と受信状態とを切り換える。すなわち、送受信切換部24が移動局10を送信状態に切り換えると、移動局10は送信機として機能し、送受信切換部24が移動局10を受信状態に切り換えると、移動局10は受信機として機能する。
【0058】
コントローラ401は、周知のマイコン及びその周辺回路からなる制御回路であり、送受信切換部24を制御して移動局10の動作を制御する。
【0059】
無線部28は、移動局10が送信機として機能する場合には、制御部32によって生成される信号を無線通信を行うための形式に変換する。移動局10が受信機として機能する場合には、アンテナ部20によって受信された受信波から制御部32によって処理されるための信号に変換する。この無線部28は、この例では、PLL回路(phase locked loop)回路29、VCO(voltage controlled oscillator)回路31、及びデジタル変調復調部30などを備えたIC等によって実装される。
【0060】
PLL回路29は、コントローラ401からの指令により所定の周波数の搬送波を発生させるものである。デジタル変調復調部30は、制御部32によって生成される信号をデジタル変調する。またデジタル変調復調部30は、受信された受信信号の復調を行い、生成されたデジタルデータを制御部32に出力する。これにより、移動局10と基地局12との間の無線通信がデジタル通信によって実行される。
【0061】
送信アンプ部26は、移動局10が送信機として機能する場合に、上記無線部28によって生成された信号波を増幅する。検波回路53は、その送信アンプ部26で増幅された信号波の出力を検波し、検波結果をゲインコントローラ51へフィードバックする。ゲインコントローラ51は、その入力された検波結果に基づき、制御部32からの制御信号に応じて送信電力の大きさを制御する。
【0062】
制御部32は、スペクトラム拡散部34と、逆拡散処理部341と、ベースバンド信号生成復元部36と、拡散符号発生部38とを有する。この制御部32は、例えば、これら各機能部を制御し拡散符号を発生する機能を有するゲートアレイやマイコンなどによって実装される。
【0063】
ベースバンド信号生成復元部36は、移動局10が送信機として機能する場合には、伝送したい情報を符号化しベースバンド信号を生成する。またベースバンド信号生成復元部36は、移動局10が受信機として機能する場合には、逆拡散処理部341によって復号されたベースバンド信号から、伝送された情報を取りだす。
【0064】
拡散符号発生部38は、スペクトラム拡散部34によってスペクトラム拡散を行うための拡散符号を発生させる。この発生させる拡散符号の第1条件は、自己相関関数に高いピークを持つ符号であることである。すなわち、位相差がゼロである場合において自己相関が大きな値となる一方、位相差がゼロでない場合には自己相関が十分に小さいような符号が用いられる。発生させる拡散符号の第2条件は、相互相関が小さい符号であることである。すなわち、符号間における相関が全ての位相差において十分小さい符号列が用いられる。これら2つの条件を満たす符号としては、例えば、M系列符号や、GPSにおいても使用されているGold系列符号等を用いることができる。このGold系列符号は疑似雑音符号(pseudo−noise code;PN信号)とも呼ばれる。
【0065】
スペクトラム拡散部34は、移動局10が送信機として機能する場合に、ベースバンド信号生成復元部36が生成したベースバンド信号を、拡散符号発生部38が発生した拡散符号を用いてスペクトラム拡散を行い、送信のための信号を生成する。具体的には、例えば、上記ベースバンド信号と上記拡散符号との排他的論理和を用いる直接拡散(direct spread)方式が用いられる。
【0066】
逆拡散処理部341は、移動局10が受信機として機能する場合に、上記デジタル変調復調部30によって復調された受信波に対し、上記拡散符号を用いてスペクトラム逆拡散を行い、ベースバンド信号を取りだす。この受信の場合も、上記送信の場合と同じ拡散符号が用いられる。
【0067】
このようなスペクトラム拡散を利用し本来よりも広い帯域に拡散して送受信することで、正確な受信タイミングの検出が可能になり、時計と合わせて受信時刻の判定を行うことができるのである。
【0068】
電源部40は、上述した送信アンプ26、無線部28、制御部32、時計41等の各機能部に対し、必要な電力を供給する。
【0069】
時計41は、例えばリファレンスクロック等により構成される。この時計41は、制御部32ほかの各機能部の動作時や、電波の送信・受信時において参照可能な時刻情報を供給する。上記測距用電波信号の送信時にもこの時計41が参照されることで、電波の送信時刻が決定される。
【0070】
時計同期部55は、自局の時計41の時計の時刻といずれか1つの基地局12の時計41(後述)の時刻とを同期させる時計合わせ処理を行なうものである。この時計同期部55は、時計合わせ処理の対象であるいずれか1つの基地局12の時計同期部49(後述)と協調して作動する(詳細は後述)。
【0071】
なお、上記アンテナ部20、平衡不平衡切換器22、送受信切換部24、送信アンプ26、ゲインコントローラ51、検波回路53、無線部28、制御部32等の、電波の送信及び受信のための機能部が各請求項記載の第1送信部及び第1受信部に相当する。
【0072】
図4は、基地局12A〜12Dの機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。図3と同等の部分については同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0073】
図4において、基地局12A〜12Dは、移動局10に備えられたものと共通の機能である、アンテナ部20(受信アンテナ)、平衡不平衡変換器22、送受信切換部24、送信アンプ26、無線部28、低雑音増幅器27、制御部32、時計41、電源部40等を有する。すなわち、基地局12A〜12Dも、上述の移動局10と同様、送信機(第2送信部)及び受信機(第2受信部)としての両方の機能を有する。
【0074】
また基地局12A〜12Dは、上記以外に、到来時間検出部42と、測位サーバ14との通信を行うための有線通信部43と、記憶部(メモリ)45と、時計同期部49とを有する。
【0075】
時計同期部49は、自局の時計41の時刻と、他の基地局12が有する時計41の時刻とを同期させる処理である時計合わせ処理を行なう。この時計同期部49は、時計合わせ処理の対象である他の基地局12の時計同期部49と協調して作動するものである。
【0076】
すなわち例えば、自局から他の基地局12に対し電波を送信し、他の基地局12における電波の受信時刻と自局における電波の送信時刻と基地局間の距離(本実施例では30m)に基づいて自局から他の基地局12への電波の到来時間(伝搬時間)を算出する。これとともに、同様に他の基地局12から自局に対し電波を送信し、他の基地局12から自局への電波の到来時間(伝搬時間)を算出する。そして、これら2つの到来時間を比較することによって自局の時計41と他の基地局12の時計41との時刻のずれを算出する。この結果、算出された時刻のずれに基づいて自局の時計41あるいは他の基地局12の時計41の時刻を補正することによって、自局の時計41の時刻と、他の基地局12が有する時計41の時刻とを同期させる。
【0077】
より具体的には、図5を参照して説明する。自局の時計41の時刻が、他の基地局12の時計41の時刻よりもtd(秒)だけ進んでいる場合において、自局と他の基地局12との間の電波の到来時間はtl=30/C(秒)であるので自局が自身の時計でt1に送信した電波は他の基地局において他の基地局の時計でt1−td+30/Cに受信される。同様に他の基地局12がt2に送信した電波は自局ではt2+td+tlにおいて受信される。前者では他の基地局は時刻t1+tlに受信されるべきであるので自身の時計をtdだけ進めて時計を合わせることができる。後者においても同様に時計合わせを行うことができる。このように自局の時計41の時刻と他の基地局12の時計41の時刻とは同期されるのである。
【0078】
なお、移動局10の時計41は、時計同期部55が図示しないGPSシステムを用いることにより、時計同期部49を介し全ての基地局12の時計41と同期される(詳細な説明は省略)。
【0079】
到来時間検出部42は、移動局10から上記電波(測距用電波信号)が送信された時刻とその電波が基地局12A〜12Dで受信された時刻との時刻差を検出する。この到来時間検出部42は例えばマッチドフィルタを含んで構成され、この例では、レプリカ符号発生部44と、遅延回路46と、相関計算部50と、RSSI部47とを備えている。
【0080】
レプリカ符号発生部44は、レプリカ符号を発生する。このレプリカ符号は、移動局10の拡散符号発生部38により発生されスペクトラム拡散部34で用いられた拡散符号と同一の符号である。
【0081】
遅延回路46は、例えば周知のシフトレジスタにより構成される。この遅延回路46は、移動局10から送信され基地局12A〜12Dで受信された電波に含まれる信号波を入力し、その信号波を予め定められた所定の時間間隔ごとにサンプリングして遅延させる。
【0082】
相関計算部50は、遅延回路46によって遅延された受信波とレプリカ符号との相関値を算出する。そして、算出された相関値が最大となった際の時刻を、移動局10からの電波(測距用電波信号)の到来時刻(=受信時刻)とする。このとき、移動局10での電波の送信時刻は、例えば制御部32のベースバンド信号生成復元部36によりベースバンド信号を復元することにより得ることができる。なお、例えば移動局10と各基地局12A〜12Dとで、予め所定の時隔で移動局10から送信する旨の事前設定をしておき、これに基づき基地局12A〜12D側で移動局10からの送信時刻を決定する等、他の手法でもよい。相関計算部50は、上記受信時刻と上記送信時刻とにより、上記時刻差を算出する。前述のようにして基地局12A〜12Dの時計41と移動局10の時計41とは同期されているので、正確な時刻差を算出することができる。
【0083】
なお、RSSI部47については、後述する。
【0084】
有線通信部43は、例えばLANケーブルなどの有線ケーブル52によって測位サーバ14と接続されている。これにより、基地局12は、有線通信部43を介し、到来時間検出部42によって測定された上記測距用電波信号の時刻差情報や、基地局12各部の動作に関する情報などを、測位サーバ14と送受信可能となっている。
【0085】
図6は、測位サーバ14の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【0086】
測位サーバ14は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えたいわゆるコンピュータにより構成されている。これにより、測位サーバ14は、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行い、移動局10の位置の算出(=測位)を実行する。この測位サーバ14は、機能的構成として、インターフェース部82と、測位部84と、記憶部86とを備えている。
【0087】
インターフェース部82は、通信ケーブル52を介し接続された基地局12との間で必要となる情報を入出力する。例えば測位サーバ14は、基地局12の作動を指令するコマンド等を上記インターフェース部82を介し出力し、基地局12の到来時間検出部42で検出された上記時刻差情報をインターフェース部82を介し入力する。
【0088】
記憶部86は、いわゆるメモリなどの記憶手段であり、測位部84等を実行する際に必要となる情報や、インターフェース部82を介して基地局12などから得られた情報を読み出し可能に記憶する。例えば、基地局12の位置に関する情報や、基地局12から取得した時刻差情報等が記憶される。
【0089】
測位部84は、各基地局12で取得した前述の時刻差情報に基づき、移動可能領域50中の移動局10と各基地局12との距離を算出(=測距)する。
【0090】
なお、図6においては、本実施形態の測位に関する制御作動に直接関係のない機能についてはその記載が省略されている。例えばサーバ14には、図示しない電源が設けられ、各機能部に対して必要となる電力が供給されている。
【0091】
図7は、上記測位部84による測距原理の手法を説明するための説明図である。この例では第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cの3つを用いる場合を例にとって説明する。
【0092】
まず、移動可能領域50が前述の図1に示すような平面である場合を考え、座標(x1,y1)に位置する第1基地局12Aと座標(x,y)に位置する移動局10との距離をr1、座標(x2,y2)に位置する第2基地局12Bと移動局10との距離をr2、座標(x3,y3)に位置する第3基地局12Cと移動局10との距離をrとする。また、第1〜第3基地局12A〜12Cの時計がそれぞれ有する時刻のずれに基づく誤差sとする。なお、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cのそれぞれが有する上記時計41は、前述のように同期されているため、上記誤差sは各基地局12に共通となっている。この条件においては、下記の式(1)で表される関係が成り立つ。
(x−x12+(y−y12=(r1+s)2
(x−x22+(y−y22=(r2+s)2
(x−x32+(y−y32=(r3+s)2 …(1)
【0093】
上記3つの式を例えばニュートンラプソン法などにより解くことにより、x,y,sの値を算出し、移動局10の位置のx座標、y座標を特定することができる。
【0094】
なお、各基地局12A〜12Cの測距部42が測定した各基地局12A〜12Cと移動局10との距離r1,r2,r3はそれぞれ、移動局10と基地局12とがそれぞれ有する時計41の時刻のずれに基づく誤差sが考慮されていない、いわゆる疑似距離と呼ばれるものである。そこで、これらに代えて、距離r1,r2,r3として、上記時計のずれに基づく誤差sが補正された正確な距離を用いるようにしてもよい。
【0095】
なお、基地局12が4つ以上存在する場合には、より精度のよい移動局10の位置の算出が可能である。
【0096】
(B)ジッタの影響、及びジッタ回避の手法原理
ところで、一般に、無線通信における電波信号の送受信においては、信号波形の揺らぎによる信号の時間軸方向の揺れが避けられない。上記測位システム8においても、移動局10からの信号(上記測距用電波信号等)を基地局12A〜12Dで受信する際、時間分散(いわゆるジッタ)が生じる場合がある。
【0097】
図8は、このようなジッタの挙動を説明するための説明図である。この例では、横軸に時間をとったパルス波形の例を示している。図8において、破線で表す本来の波形が、上記ジッタの影響により、(ジッタを含む)実線で示す波形となった場合を表している。電波は光速c(=約3.0×10m/s)の速度で進むため、仮に上記2つの波形(本来の波形とジッタを含む波形)のずれ△tが1μ(10−6)秒だけずれていても測距において約300mの誤差が生じる。
【0098】
ここで、上記の時間分散(ジッタ)の発生原因としては種々の原因が考えられ、それらが複合的に作用している。例えば比較的強度が大きい信号の場合、信号の増幅時において、入力信号の増幅以外にひずみ成分やノイズの増幅が行われたことが考えられる。また比較的強度が小さい信号の場合、信号対ノイズ比(SN比)が小さく信号波形にノイズ成分が重畳しやすいため、必要な信号にノイズが混入してジッタが大きくなる傾向となる。
【0099】
図9は、発明者が実験により測定した上記のような信号強度とジッタとの相関関係を表す図である。横軸に受信信号強度(Received Signal Strength Indicator)を(対数軸で)とっており、図示左側ほど受信信号強度が大きく、図示右側ほど受信信号強度が弱くなっている。縦軸にはジッタの大きさをとっている。図9において、図示左端の受信信号強度が大きくジッタの値も大きい状態から、受信信号強度が小さくになるにつれて、ジッタの値も右下がりに減少する。そのジッタの減少度合いは受信信号強度が小さくなるほど徐々に小さくなり(右下がりが緩やかになり)、ある信号強度Soで下げ止まってジッタは極小値Zminとなる。この状態の後は、受信信号強度が小さくになるにつれて、ジッタの値は右上がりに増大する。そして、このジッタの増加度合いは受信信号強度が大きくなるほど徐々に大きくなる(右上がりが急になる)。
【0100】
(C)本発明に関わる要部構成
本実施形態においては、上記のような受信信号強度の大きさによって変化するジッタの特性に基づき、ジッタが小さな値となるような信号強度において、通信を行うものである。
【0101】
具体的には、移動局10が、まず、ある所定の出力の調整用電波信号の送信を行い、各基地局12A〜12Dで受信したその調整用電波信号の受信信号強度を測定し、ジッタが最小となる受信電力Soとの差から受信電力がSoとなる送信出力値を算出する。その後、各基地局12A〜12Dごとに、ジッタが小さな値となる受信信号強度Soに対応する出力値を移動局10に対して指定して測距用電波信号を送信させる。
【0102】
本実施形態では、これに対応して、上記図4で前述したように基地局12にRSSI部(Received Signal Strength Indicator)47が設けられ、また図3で前述したように移動局10にゲインコントローラ51及び検波回路53が設けられている。
【0103】
図4に示す基地局12のRSSI部47は、アンテナ20を介して無線部28によって受信された受信波の受信強度を測定する。例えば具体的には、RSSI部47は、電力計等を用いて受信波を受信した際の受信電力(W)を測定し、この測定された受信電力を1mWを基準とするデシベル単位に変換し、受信電力Vr(dBm)を得る。
【0104】
このとき、各基地局12A〜12Dの記憶部45では、上記図9で示したようなジッタと受信信号強度との相関を格納保持している(=相関記憶手段)。そして、各基地局12A〜12Dの制御部32は、記憶部45の上記相関を参照しつつ、ジッタが最小となるように(あるいは最小値に近づくように、若しくはジッタを十分に低減できる所定値に近づくかその所定値となるように)、移動局10からの上記測距用電波信号の出力制御を指示する電波信号(出力制御指示信号)を送信する。移動局10の制御部32は、その受信した出力制御指示信号で指示される指示値となるように、ゲインコントローラ51を介して測距用電波信号の出力を増減制御する。図10はこのような出力制御の手法原理を表す説明図であり、図9に対応する図である。
【0105】
図10において、調整用電波信号が受信されたときの例として3つの例が示されており、それぞれの受信信号強度がS1,S2,S3の(図中「×」で表される)互いに異なる3つの測定点となっている。そして、図示のように、ジッタが最も小さくなるのは前述したように受信信号強度Soの(図中「◎」で表される)測定点である。受信信号強度S1,S2は上記Soよりも大きく、受信信号強度S3は上記Soよりも小さい。したがって、基地局12A〜12Dの制御部32は、受信信号強度S1,S2の調整用電波信号を受信したときには移動局10に対し送信出力をS1−S0,S2−S0に相当する分だけ小さくし(受信信号強度S3の調整用電波信号を受信したときには移動局10に対しS0−S3に相当する分だけ送信出力を大きくし)、後の測距用電波信号の受信信号強度がSoとなるような出力制御信号(図10中のSoに向かう矢印参照)を移動局10に対し出力する。これに応じて受信信号強度がSoとなるような出力値の測距用電波信号(各基地局12A〜12Dごとにその出力値は異なる)が移動局10より出力されると、これを受信して上記到来時間検出部42でその信号についての時刻差情報を前述のようにして算出する。算出された時刻差情報は、(適宜記憶部45へ記憶するとともに)有線通信部43及び有線ケーブル52を介しサーバ14へと出力される。
【0106】
次に、上記の動作を実行するための制御内容を、図11〜図14により説明する。
【0107】
図11は、4つの基地局12A〜12Dが移動局10からの調整用電波信号や測距用電波信号を受信し、対応する時刻差情報を測位サーバ14へ出力する際の通信の流れを表すタイムチャートである。縦線で表された第1〜第4基地局12A〜12D、移動局10、測位サーバ14との間を横方向に結ぶ矢印が、各基地局12A〜12D、移動局10、測位サーバ14の間の通信の挙動を示す。矢印の向きは通信方向を示しており、矢印の先が向いている機器が受信側である。また、波線で表された矢印は無線による通信を表している。また、図中下向きに時間軸がとられており、下へ行くほど長い時間が経過したことを表す。
【0108】
図11において、まず時刻t11で、測位サーバ14の上記測位部84が、第1基地局12Aに対し、上記測距用電波信号を移動局10から無線送信させるための情報送信命令をインターフェース部82を介し出力する。これに対応し、時刻t12で、第1基地局12Aの制御部32が、無線部28を介し、移動局10に対し、上記調整用電波信号を無線を介し送信させる情報送信要求信号を送信する。
【0109】
そして、時刻t13において、測位サーバ14の上記測位部84が、第1基地局12Aに対し、時刻情報を無線を介し受信させるための情報受信命令をインターフェース部82を介し出力する。その後、時刻t14で、移動局10の制御部32が、無線部28を介し、調整用電波信号を無線により送信する。その後、第1基地局12Aがその送信された調整用電波信号を受信する。
【0110】
第1基地局12Aは、上記受信した調整用電波信号の受信信号強度をRSSI部47で測定し、制御部32が、時刻t15で、測定した信号強度値に対応した(ジッタを最小とするための)出力制御指示信号を無線部28を介して移動局10へ送信する。これに対応して、時刻t16で、移動局10の制御部32が、上記出力制御指示信号の指示に対応した送信出力で、無線部28を介し、測距用電波信号を無線により送信する。その後、第1基地局12Aがその送信された測距用電波信号を受信して、到来時刻検出部42で送信時刻と受信時刻とから時刻差情報を算出する。
【0111】
そして、時刻t17で、第1基地局12Aの制御部32が、上記時刻差情報を、測位サーバ14へ有線通信部43を介し出力する。
【0112】
その後、第2基地局12Bと測位サーバ14及び移動局10との間で、上記時刻t11〜t17と同様の手順を時刻t21〜t27において実行する。
【0113】
すなわち、時刻t21で測位サーバ14から第2基地局12Bに対し情報送信命令が出力され、時刻t22で第2基地局12Bから移動局10に対し情報送信要求が送信される。そして時刻t23で測位サーバ14から第2基地局12Bに対し情報受信命令が出力され、時刻t24で移動局10から調整用電波信号が送信されて第2基地局12Bで受信される。その後時刻t25で受信信号強度値に対応した出力制御指示信号が第2基地局12Bから移動局10へ送信され、時刻t26で、移動局10からの測距用電波信号が送信されて第2基地局12Bで受信され、時刻差情報が算出される。そして、時刻t27で、第2基地局12Bから時刻差情報が測位サーバ14へ出力される。
【0114】
その後、時刻t31〜t37において、上記と同様にして、測位サーバ14から第3基地局12Cへの情報送信命令の出力、第3基地局12Cから移動局10への情報送信要求の送信、測位サーバ14から第3基地局12Cへの情報受信命令の出力、移動局10から第3基地局12Cへの調整用電波信号の送信、第3基地局12Cから移動局10への出力制御指示信号の送信、移動局10から第3基地局12Cへの測距用電波信号の送信、第3基地局12Cから測位サーバ14への時刻差情報の出力が実行される。
【0115】
さらに、時刻t41〜t47において、上記と同様にして、測位サーバ14から第4基地局12Dへの情報送信命令の出力、第4基地局12Dから移動局10への情報送信要求の送信、測位サーバ14から第4基地局12Dへの情報受信命令の出力、移動局10から第4基地局12Dへの調整用電波信号の送信、第4基地局12Dから移動局10への出力制御指示信号の送信、移動局10から第4基地局12Dへの測距用電波信号の送信、第4基地局12Dから測位サーバ14への時刻差情報の出力が実行される。
【0116】
図12は、上記基地局12A,12B,12C,12Dのそれぞれの制御部32が実行する制御手順の要部を表すフローチャートである。
【0117】
まず、ステップS110において、無線部28を介し、移動局10に対する情報送信要求信号を無線により送信する(図11の時刻t12,t22,t32,t42参照)。
【0118】
そして、ステップS120に移り、到来時間検出部42に制御信号を出力し、上記送信要求信号に対応した移動局10からの調整用電波信号が、アンテナ部20を介し無線部28で受信されたかどうか(図11の時刻t14,t24,t34,t44参照)を判定する。このときの判定は、前述したように、相関計算部50が算出した、遅延回路46で遅延された受信波とレプリカ符号発生部44のレプリカ符号との相関値に基づいて行う。調整用電波信号が受信されるまでステップS120の判定が満たされずループ待機し、調整用電波信号が受信されたら判定が満たされて、ステップS130に移る。
【0119】
ステップS130では、到来時間検出部42に制御信号を出力し、RSSI部47において、上記ステップS120で受信した調整用電波信号の信号強度を測定する。そして、測定された信号強度を記憶部45に記憶させる。
【0120】
その後、S140に移り、上記信号強度に対応した出力制御指示信号の送信を行う。すなわち、記憶部45に記憶された(図9に一例を示した)信号強度とジッタとの相関を参照しつつ、記憶部45に記憶された受信信号強度に基づき、受信信号強度をジッタが最も少なくなる値(図10の信号強度So)とするための出力制御指示信号(送信出力増大指示又は送信出力減少指示)を生成する。そして、その生成した出力制御指示信号を、無線部28を介し、移動局10に対して無線により送信する(図11の時刻t15,t25,t35,t45参照)。なおこのステップS140が、各請求項記載の第2制御手段を構成する。
【0121】
そして、ステップS150に移り、到来時間検出部42に制御信号を出力し、上記出力制御指示信号に基づく出力値である移動局10からの測距用電波信号が、アンテナ部20を介し無線部28で受信されたかどうか(図11の時刻t16,t26,t36,t46参照)を判定する。このときの判定も、上記と同様、相関計算部50が算出した、遅延回路46で遅延された受信波とレプリカ符号発生部44のレプリカ符号との相関値に基づいて行う。測距用電波信号が受信されるまでステップS150の判定が満たされずループ待機し、調整用電波信号が受信されたら判定が満たされて、ステップS160に移る。
【0122】
ステップS160では、上記測距用電波信号受信時の時計41による時刻(受信時刻)と、測距用電波信号に含まれる前述の送信時刻とから、それら2つの時刻差情報(受信時刻−送信時刻)を算出する。そして、算出された時刻差情報を記憶部45に記憶させる。その後、ステップS170に移る。
【0123】
ステップS170では、上記ステップS160で記憶した時刻差情報を記憶部45から読み出して測位サーバ14へ出力し(上記図11の時刻t17,t27,t37,t47参照)、このフローを終了する。
【0124】
図13は、上記移動局10の制御部32が実行する制御手順の要部を表すフローチャートである。
【0125】
まず、ステップS10において、アンテナ部20を介し、いずれかの基地局12からの情報送信要求信号を無線部28で受信したかどうかを判定する(図11の時刻t12,t22,t32,t42参照)。情報送信要求信号を受信するまでステップS10の判定が満たされずループ待機し、情報送信要求信号を受信したら判定が満たされて、ステップS20に移る。
【0126】
ステップS20では、移動局10内に設けた図示しない公知の加速度センサ等により、自局が停止状態にあるか(移動状態にあるか)どうかを判定する。移動状態であれば判定が満たされず、(基地局12へ無線による信号を送信することなく)このフローを終了する。停止状態であればステップS20の判定が満たされ、次のステップS30へ移る。
【0127】
ステップS30では、上記ステップS20での判定を受けて停止状態である旨の識別子(フラグ)を含んだ調整用電波信号を、予め固定的に設定した適宜の出力値(例えば通信規格最大の出力値。後述する移動局の性能上の最大出力値よりも小さい)で、無線部28を介しアンテナ部20から対応する基地局12へ送信する(上記図11の時刻t14,t24,t34,t44参照)。
【0128】
そして、ステップS40に移り、アンテナ部20を介し、上記ステップS30で調整用信号を送信した基地局12からの出力制御指示信号を無線部28で受信したかどうかを判定する(図11の時刻t15,t25,t35,t45参照)。出力制御指示信号を受信するまでステップS40の判定が満たされずループ待機し、出力制御指示信号を受信したら判定が満たされて、ステップS50に移る。
【0129】
ステップS50では、ゲインコントローラ51に制御信号を出力して上記ステップS40で受信した出力制御指示信号に対応した出力値(言い換えれば受信信号強度Soとなる出力値)となるように増幅制御を行い、当該出力値の測距用電波信号を無線部28を介しアンテナ部20から対応する基地局12へ送信する(上記図11の時刻t16,t26,t36,t46参照)。なお上記ステップS30とステップS50とが、各請求項記載の第1制御手段を構成する。このステップS50が終わったら、このフローを終了する。
【0130】
図14は、上記測位サーバ14の測位部84が実行する制御手順の要部を表すフローチャートである。
【0131】
まず、ステップS210において、上述したようにして移動局10から各基地局12A〜12Dへ順次測距用電波信号を送信させ、対応する時刻差情報を順次取得する時刻差情報取得処理を行う。具体的には、図11を用いて前述したように、基地局12に移動局10からの電波信号の送信を促す情報送信命令を出力する(時刻t11,t21,t31,t41参照)。その後、基地局12Dに対して上記移動局10からの電波信号の受信待機状態を促す情報受信命令を出力し(時刻t13,t23,t33,t43参照)、受信後の基地局12からの時刻差情報を入力する(時刻t17,t27,t37,t47参照)。この一連の手順を各基地局12ごとに順次行う。
【0132】
そして、ステップS220において、上記ステップS210で取得した全基地局12A〜12Dからの時刻差情報に対し、式(1)や図7を用いて説明した手法を適用し、各基地局12A〜12Dから移動局10までの距離を算出する(=測距処理手段)。全基地局12A〜12Dの位置は既知であり、例えば図2に示した座標系における各基地局12A〜12Dのx座標y座標を適用することで、移動局10の当該座標系における位置、すなわち座標(x,y)を算出することができる(=測位処理手段)。
【0133】
以上説明したように、本実施形態においては、予めジッタと受信信号強度との相関(図9参照)を各基地局12A〜12Dの記憶部45に格納保持しておく。移動局10は測距に先立ってまず調整用電波信号を基地局12へ送信する。基地局12の制御部32は、その調整用電波信号を受信すると、その受信信号強度をRSSI部47で検出する。そして、制御部32は、記憶部45に記憶された上記相関を参照し、ジッタが最も小さくなるような受信信号強度(図10のSo)となるような送信信号出力値を実現するための出力制御指示信号を、無線部28を介し移動局10へと送信する。移動局10はこれに応じた出力値(=ジッタが低減される出力値)となるようにゲインコントローラ51で制御された測距用電波信号を出力し、この測距用電波信号が基地局12で受信される。そして、このときの送信時刻及び受信時刻より算出された時刻差情報が、基地局12から測位サーバ14へ出力される。これにより、測位サーバ14では、各基地局12A〜12Dそれぞれにおいてジッタの影響が小さく精度が高かった時刻差情報を元に、測距、測位処理を行うことができる。この結果、測位精度を向上することができる。
【0134】
また、本実施形態では特に、制御部32が、記憶部45の相関を参照し、ジッタが最小となる受信信号強度(図10のSo)となるような送信信号出力値を実現するための出力制御指示信号を、無線部28を介し移動局10へと送信する。そして、移動局10はこれに応じた出力値(=ジッタが最小となる出力値)となるようにゲインコントローラ51で制御された測距用電波信号を出力する。これにより、ジッタによる測距への影響を最小限にして測距、及び測位精度を確実に向上することができる。
【0135】
なお、上記実施形態では、移動局10において、ICからなる無線部28からの出力値(=一定値)を、無線部28外に設けたゲインコントローラ51により可変増幅制御するようにしたが、これに限られない。すなわち、無線部28を構成するICを制御部32で直接制御(言い換えればIC内部の可変増幅手段を制御)して、その無線部28からの出力値自体を可変制御するようにしてもよい。この場合、上記実施形態と同様の効果を得るのに加え、IC外に増幅器や減衰器等が不要となる。逆に本実施形態では、ゲインコントローラ51を用いることでICを制御する必要はなくなり、ICからの出力値は一定であることからICの構成や制御を簡素化できる効果がある。
【0136】
なお、上記実施形態において、特に、調整用電波信号の送信を最大出力値(移動局10の性能上の最大出力値。上記通信規格最大出力値よりも大きい)で行うようにしてもよい。この場合、基地局12側での受信信号強度を(同一条件で受信可能な限りの)最大強度とすることができる。ここで、図9を用いて前述したように、ジッタと受信信号強度との相関は、横軸の受信信号強度を対数軸で表した場合、受信信号強度の減少にしたがって、ジッタ減少→極小値→ジッタ増加という、下に凸の滑らかな曲線(いわゆるバスタブ型曲線)として表される。上記のように調整用電波信号の受信信号強度を最大とすることにより、上記のようなジッタ挙動に対応し、移動局10の送信出力制御において、送信出力を増大させるべきか減少させるべきか、またそれらの増減量はいずれか等の見極めを容易にし、制御性を向上することができる。
【0137】
但しこの場合は、測距用電波信号の送信時に、それまで(調整用電波信号の送信時)よりも出力値を下げることはできても、上げることはできない。すなわち、調整用電波信号の受信信号強度の値が図9におけるSoよりも左側(強度が大きい側)領域Shであった場合には、測距時における測距用電波信号の出力値を下げて受信信号強度の値をSoに近づけることはできるが、調整用電波信号の受信信号強度の値が図9におけるSoよりも右側(強度が小さい側)領域Slであった場合にはそのような制御はできなくなる。このような場合には、測距用電波信号を調整用電波信号と再び同一強度にて送信させるとともに、当該測距用電波信号(受信信号強度をSoに近づけられなかった信号)ではジッタ低減が十分図られていないことから、このことに対応した所定の重み付けを行うようにすればよい。すなわち、基地局12A〜12Dにおいてそれぞれ測距用電波信号を受信したとき、当該ジッタ低減不十分の電波信号の重み付けを他のものより軽くする等の方策をとる(例えばこの1つの基地局12での測距用電波信号は測距には用いず、残りの3つの基地局12で受信したジッタの小さい測距用電波信号のみを使って測位する)。これにより、ジッタの存在による測位精度への影響を最小限にとどめることができる。
【0138】
なお、本発明は上記実施形態に限られず、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0139】
(1)移動局10での伝送路切替により出力値を可変制御する場合
すなわち、上記実施形態での増幅率可変制御に代えて、移動局10での伝送路を切り替えることで増幅率を変化させる場合である。
【0140】
図15は、本変形例における移動局10の機能的構成の概略を表す機能ブロック図であり、上記図3に対応する図である。図3と同等の部分には同一の符号を付している。図15において、本変形例では、図3のゲインコントローラ51及び検波回路53を省略し、伝送路を切り替えるための切替スイッチ59(切替手段)を設けている。切替スイッチ59は、制御部32の切替制御信号により、図示下側の可変減衰器(アッテネータ)57及び送信アンプ部26を含む増幅・減衰伝送路(第1伝送路)と、図示上側の増幅機能を備えない通常伝送路(第2伝送路)とを切り替えられるようになっている。
【0141】
本変形例においても、調整用電波信号を受信した各基地局12A〜12Dの制御部32は、記憶部45の上記相関を参照しつつ、ジッタが最小となるように(あるいは最小値に近づくように、若しくはジッタを十分に低減できる所定値に近づくかその所定値となるように)、移動局10からの上記測距用電波信号の出力制御を指示する電波信号(出力制御指示信号)を送信する。そして、移動局10の制御部32は、出力制御指示信号を受信すると、上記切替スイッチ59を上記増幅・減衰伝送路側へ切り替えるとともに、その受信した出力制御指示信号で指示される指示値となるように、可変減衰器57及び送信アンプ部26を介して測距用電波信号の出力を増減制御する。
【0142】
なお、上記のように可変減衰器57の減衰量調整による送信出力値減少制御と送信アンプ部26の増幅率調整による送信出力値増大制御との両方を利用せず、いずれか一方のみを利用するようにしてもよい。例えば、ジッタを低減するための上記出力制御指示信号が送信出力値の減少を指示している場合に切替スイッチ59を増幅・減衰伝送路側に切り替えて可変減衰器57の機能を利用する一方、出力制御指示信号が送信出力値の増大を指示している場合には切替スイッチ59を通常伝送路側に切り替えて、前述したように無線部28を構成するICを制御部32で直接制御(言い換えればIC内部の可変増幅手段を制御)して、その無線部28からの出力値自体を増大制御するようにしてもよい。逆に、上記出力制御指示信号が送信出力値の増大を指示している場合に切替スイッチ59を増幅・減衰伝送路側に切り替えて送信アンプ部26の機能を利用する一方、出力制御指示信号が送信出力値の減少を指示している場合に切替スイッチ59を通常伝送路側に切り替えて、前述したように無線部28を構成するICを制御部32で直接制御(言い換えればIC内部の可変増幅手段を制御)して、その無線部28からの出力値自体を減少制御するようにしてもよい。
【0143】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。
【0144】
(2)サーバで相関を記憶している場合等
すなわち、上記実施形態において、測位サーバ14側にジッタと受信信号強度との相関を記憶させておく場合である(=相関記憶手段としての機能)。この場合、各基地局12A〜12Dは、出力制御指示信号の生成及び送信を行うにあたり、上記ジッタと受信信号強度との相関を測位サーバ14から取得し、その取得した相関に基づき信号生成を行うようにすればよい(信号生成機能は基地局12に残し、相関の記憶機能のみを測位サーバ14へ移す)。この場合、上記相関のデータが適宜最新のものに更新されうる場合に、測位サーバ14に格納された相関データのみを一括して更新するだけで足りるという効果がある。
【0145】
あるいは、各基地局12A〜12Dが、RSSI部47で検出した各測距用電波信号の受信信号強度情報のみを測位サーバ14へ出力するようにしてもよい。この場合、測位サーバ14が、自ら記憶保持した(あるいは基地局12A〜12Dから取り込んでもよい)上記ジッタと受信信号強度との相関に基づき(各基地局12ごとに)最適な出力制御指示の指示値(どれだけ出力値を増減させるか)の指示情報を各基地局12へ返す。各基地局12では、その指示に応じて、制御部32が出力制御指示信号を生成し、移動局10へ送信する。そして、その出力制御指示信号に対応した出力値の測距用電波信号が基地局12で受信されてその時刻差情報が基地局12から測位サーバ14へ出力され、測位サーバ14で測距、測位処理が行われる。
【0146】
上記の場合も、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0147】
(3)距離データ化を各基地局で行う場合
以上においては、基地局12A〜12Dから取得した時刻差情報に基づき、測位サーバ14が上記式(1)を適用して各基地局12A〜12Dから移動局10までの距離を算出する測距処理(距離データ化)を行ったが、これに限られない。すなわち、基地局12A〜12Dそれぞれが、時刻差情報に基づき前述の式(1)を適用し、距離データ化を行うようにしてもよい(測距処理手段としての機能)。この場合、測位サーバ14は、前述と同様、各基地局12A〜12Dで算出した各基地局12A〜12Dから移動局10までの距離に対し、各基地局12A〜12Dのx座標y座標を適用して、移動局10の座標(x,y)を算出する(測位処理手段としての機能)。
【0148】
なお、この場合も、既に上述した各例と同様、ジッタと受信信号強度との相関を基地局12A〜12Dの記憶部45に格納保持しておいてもよいし、測位サーバ14側で格納保持しておくようにしてもよい。また出力制御指示信号での出力増減指示についても、測位サーバ14で行うようにしてもよい。
【0149】
本変形例によっても、前述と同様の効果を得ることができる。
【0150】
(4)基地局側で受信信号強度の可変制御を行う場合
以上においては、ジッタを低減するための基地局12側での適正な受信信号強度を実現するために、基地局12からの制御指示信号により移動局10からの測距用電波信号の送信出力値を(調整用電波信号と比べて)変化させた。しかしこれに限られない。すなわち、移動局10からの送信出力値は変化させず、測距用電波信号を受信時における基地局12A〜12Dにおける受信感度を(調整用電波信号の受信時と比べて)変化させることにより、送信出力値を変化させる場合と同等の効果を得られるようにしてもよい(なお移動局10からの送信出力も併せて可変としてもよい)。
【0151】
図16は、そのような変形例における基地局12A〜12Dの機能的構成の概略を表す機能ブロック図であり、上記実施形態の図4に相当する図である。図4と同等の部分については同一の符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0152】
図16において、送受信切換部24と無線部28との間に、可変減衰手段としての可変減衰器(アッテネータ)25と、増幅率一定の低雑音増幅器27とが新たに設けられている。
【0153】
可変減衰器25の減衰率は、制御部32によって可変に制御される。各基地局12A〜12Dは、調整用電波信号を移動局10から受信した後、記憶部45の上記相関を参照しつつ、ジッタが最小となるように(あるいは最小値に近づくように、若しくはジッタを十分に低減できる所定値に近づくかその所定値となるように)、可変減衰器25の減衰量制御を指示する信号を出力する。これにより、前述の図10を用いて説明したような、調整用電波信号での受信信号強度S1→測距用電波信号での受信信号強度So、調整用電波信号での受信信号強度S2→測距用電波信号での受信信号強度So、調整用電波信号での受信信号強度S3→測距用電波信号での受信信号強度Soといった受信信号強度の増減制御を行うことができる。
【0154】
図17は、本変形例における4つの基地局12A〜12Dが調整用電波信号や測距用電波信号を受信し時刻差情報を出力する際の通信の流れを表すタイムチャートであり、上記図11に相当する図である。図11と同等の部分には同一の符号を付している。図17に示すタイムチャートでは、図11における時刻t15,t25,t35,t45における出力制御指示信号の送受信手順が省略されている。その他は図11と同様である。
【0155】
図18は、本変形例における基地局12A,12B,12C,12Dのそれぞれの制御部32が実行する制御手順の要部を表すフローチャートであり、上記図12に相当する図である。図12と同等の手順には同一の符号を付している。
【0156】
図18に示すフローでは、図12のステップS140に変えて、新たなステップS145を設けている。すなわち、ステップS130で、RSSI部47において調整用電波信号の信号強度を測定し記憶部45に記憶させた後は、ステップS145に移る。
【0157】
ステップS145では、記憶部45の上記相関を参照しつつ、ステップS145で記憶部45に記憶した調整用電波信号の信号強度に基づき、可変減衰器25の減衰率制御(減衰量を増減設定する)を指示する信号を出力する(減衰制御手段、第3制御手段)。
【0158】
その後、ステップS150以降は図12と同様であるので、説明を省略する。
【0159】
図19は、本変形例において移動局10の制御部32が実行する制御手順の要部を表すフローチャートであり、上記図13に相当する図である。図13と同等の手順には同一の符号を付している。図19に示すフローでは、図13に示されたステップS40が省略されている。その他の点は図13と同様である。
【0160】
本変形例によっても、上記実施形態と同様の効果を得る。すなわち、所定の送信出力値により調整用電波信号が移動局10より送信され基地局12で受信した後、測距用電波信号が調整用電波信号と略同一出力で移動局10から送信される。このとき、基地局12側の受信感度が(調整用電波信号の受信時とは)異なるよう制御されることで、測距用電波信号の受信信号強度は調整用電波信号の受信信号強度とは異なる値(ジッタが低減されるような値)に制御される。各基地局12A〜12Dは、そのようにジッタが小さくなるように制御された測距用電波信号に係わる時刻差情報を測位サーバ14へ出力する。これにより、測位サーバ14では、各基地局12A〜12Dそれぞれにおいてジッタの影響が最も小さく精度が高くなった時刻差情報を元に、測距処理を行うことができる。この結果、測距精度を向上することができる。
【0161】
なお、上記においては、基地局12A〜12Dに設けた可変減衰器25の減衰量を増減制御することにより受信強度を変更したが、これに限られない。すなわち、測距用電波信号の受信時において、受信アンテナとしてのアンテナ部20のアンテナ感度を(調整用電波信号の受信時とは)変化させるようにしてもよい(=アンテナ感度制御手段、第3制御手段)。この場合も、同様の効果を得ることができる。
【0162】
また、上記のような基地局12側の(減衰量制御やアンテナ感度の制御による)受信信号強度の可変制御と、上記実施形態及び(1)〜(3)の変形例で実行した移動局10における送信出力値の可変制御との、両方を併せて実行するようにしてもよい。
【0163】
(5)TDOA方式で測距を行う場合
上記実施形態及び(1)〜(4)の変形例においては、送信時刻と受信時刻とから算出した時刻差情報を用いるTOA方式を例にとって説明した。しかしながら、上記(5)の変形例のように基地局12側で受信信号強度を変更する場合には、これに限られず、同一の測距用電波信号に対する各基地局12A〜12Dの受信時刻の比較により測距処理を行ういわゆるTDOA方式を適用することもできる。
【0164】
図20は、TDOA方式を行う本変形例における上記測位部84による測距原理の手法を説明するための説明図であり、上記図7に対応する図である。図7と同様、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cの3つを用いる場合を例にとって説明する。
【0165】
図20において、前述の図7と同様、座標(x1,y1)に位置する第1基地局12Aと座標(x,y)に位置する移動局10との距離をr1、座標(x2,y2)に位置する第2基地局12Bと移動局10との距離をr2、座標(x3,y3)に位置する第3基地局12Cと移動局10との距離をrとし、第1〜第3基地局12A〜12Cの時計がそれぞれ有する時刻のずれに基づく誤差sとする。そして、第1基地局12A、第2基地局12B、第3基地局12Cそれぞれにおいて、移動局10から時刻T0で送信された測距用電波信号を受信した受信時刻をT1,T2,T3とする。
【0166】
以上のような条件においては、図20において、
r1+s=√{(x−x1)+(y−y1)} ・・(1A)
r2+s=√{(x−x2)+(y−y2)} ・・(1B)
r3+s=√{(x−x3)+(y−y3)} ・・(1C)
が成り立つ。
【0167】
すると、式(1A)から式(1B)を減じることで、
|r1-r2|=c×|T1-T2| …(1D)
また、式(1A)から式(1C)を減じることで、
|r1-r3|=c×|T1-T3| …(1E)
で表される関係が成り立つ。なお、cは電波速度(光速=2.997×108[m/s])である。
【0168】
このとき、(受信時刻T1,T2,T3は測定値として既知であり)変数はr1,r2,r3の3つのみであるから、上記(1D)(1E)の2つの式を例えばニュートンラプソン法などにより解くことにより、移動局10の位置のx座標、y座標を特定することができる。なお、基地局12が4つ以上存在する場合は、算出における誤差を最小化する最小二乗法等を用いることで、より精度のよい移動局10の位置の算出が可能である。
【0169】
図21は、本変形例における4つの基地局12A〜12Dが移動局10から調整用電波信号や測距用電波信号を受信し、対応する受信時刻情報を測位サーバ14へ出力する際の通信の流れを表すタイムチャートであり、上記図11に対応する図である。上記図11と同様、縦線で表された第1〜第4基地局12A〜12Dと測位サーバ14と移動局10との間を横方向に結ぶ矢印が、各基地局12、測位サーバ14、及び移動局10の間の通信の挙動を示す。
【0170】
図21において、まず時刻t81で、測位サーバ14が、任意の1つの基地局12(この例では第1基地局12A)に対し、上記測距用電波信号を移動局10から無線送信させるための情報送信命令をインターフェース部82を介し出力する。これに対応し、時刻t82で、第1基地局12Aの制御部32が、無線部28を介し、移動局10に対し、上記調整用電波信号を無線を介し送信させる情報送信要求信号を送信する。
【0171】
そして、時刻t83,t84,t85,t86において、測位サーバ14の上記測位部84が、全ての基地局(第1〜第4基地局12A〜12D)のそれぞれに対し、時刻情報を無線を介し受信させるための情報受信命令をインターフェース部82を介し出力する。
【0172】
その後、時刻t87で、移動局10の制御部32が、無線部28を介し、調整用電波信号を無線を介し送信する。その後、第1〜第4基地局12A〜12Dがその送信された調整用電波信号を受信する。これに対応して第1〜第4基地局12A〜12Dは、上記受信した調整用電波信号の受信信号強度をRSSI部47で測定し、制御部32がその測定した信号強度値に対応した(ジッタを最小とするための)減衰量制御指示信号を可変減衰器25に出力する。
【0173】
その後、時刻t88で、移動局10の制御部32が、無線部28を介し、測距用電波信号を無線を介し送信する。その後、第1〜第4基地局12A〜12Dがその送信された測距用電波信号を受信する。なお、この際、各基地局12A〜12Dから所望の(可変減衰器25でジッタを最小とする際に好適な)測距用電波信号の出力要求値を移動局10側に送信するようにしてもよい。この場合、移動局10では、それら基地局12A〜12Dから出力要求値のうち最大の出力で上記測距用電波信号を送信し、それより小さい出力を要求した他の基地局ではその分可変減衰器25によって受信感度を小さくするようにすれば足りる。
【0174】
そして、時刻t89,t90,t91,t92で、第1〜第4基地局12A〜12Dの制御部32が、上記受信した測距用電波信号に係わる受信時刻情報を、測位サーバ14へ有線通信部43を介しそれぞれ出力する。
【0175】
以上のように、本変形例においては、測位サーバ14に対して、測距用電波信号の各基地局12A〜12Dでの受信時刻情報が測位サーバ14へ出力される(このとき、前述と同様にして、各基地局12A〜12Dにおいて測距用電波信号の受信信号強度がジッタが低減されるような値に増減制御されており、それに係わる受信時刻情報を測位サーバ14へ出力する)。そして、測位サーバ14は、全基地局12A〜12Dからの受信時刻情報に対し、上記の式(2A)(2B)(2C)や図20を用いて説明した手法を適用し、各基地局12A〜12Dから移動局10までの距離を算出する(=測距処理手段)。全基地局12A〜12Dの位置は既知であり、例えば図2に示した座標系における各基地局12A〜12Dのx座標y座標を適用することで、移動局10の当該座標系における位置、すなわち座標(x,y)を算出することができる(=測位処理手段)。なお、前述と同様、上記距離算出を基地局12A〜12D側で実行するようにしてもよい。
【0176】
本変形例によっても、上記実施形態や各変形例と同様の効果を得る。
【0177】
(6)その他
上記においては、被測位局として移動可能な移動局が設けられる場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、上記基地局12のように固定的に配置されるものに対し無線通信を介して測位を行う場合であっても、本発明を適用することができる。この場合も、上記同様、ジッタの影響を低減して測距精度を向上することができる。
【0178】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0179】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0180】
【図1】本発明の一実施形態の測位システムの構成の一例を表す説明図である。
【図2】位置算出のために、移動可能領域において便宜上設定される座標系を表す説明図である。
【図3】移動局の機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。
【図4】基地局の機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。
【図5】基地局どうしの時刻ずれを説明するための説明図である。
【図6】測位サーバの機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図7】測距部による測距原理の手法を説明するための説明図である。
【図8】ジッタの挙動を説明するための説明図である。
【図9】信号強度とジッタとの相関関係を表す図である。
【図10】出力制御の手法原理を表す説明図である。
【図11】基地局が移動局からの調整用電波信号や測距用電波信号を受信し、対応する時刻差情報を測位サーバへ出力する際の通信の流れを表すタイムチャートである。
【図12】基地局のそれぞれの制御部が実行する制御手順の要部を表すフローチャートである。
【図13】移動局の制御部が実行する制御手順の要部を表すフローチャートである。
【図14】測位サーバの測距部が実行する制御手順の要部を表すフローチャートである。
【図15】移動局での伝送路切替により出力値を可変制御する変形例における移動局の機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。
【図16】基地局側で受信信号強度の可変制御を行う変形例における基地局の機能的構成の概略を表す機能ブロック図である。
【図17】基地局が移動局から調整用電波信号や測距用電波信号を受信し時刻差情報を出力する際の通信の流れを表すタイムチャートである。
【図18】基地局のそれぞれの制御部が実行する制御手順の要部を表すフローチャートである。
【図19】移動局の制御部が実行する制御手順の要部を表すフローチャートである。
【図20】TDOA方式を行う変形例における測距部による測距原理の手法を説明するための説明図である。
【図21】基地局が移動局から調整用電波信号や測距用電波信号を受信し、対応する受信時刻情報を測位サーバへ出力する際の通信の流れを表すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0181】
8 測位システム
10 移動局
12A〜D 基地局
14 測位サーバ
25 可変減衰器(可変減衰手段、第3制御手段)
42 到来時間検出部
45 記憶部(相関記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波信号を送信する第1送信部と電波信号を受信する第1受信部とを備えた移動局と、
電波信号を送信する第2送信部と受信アンテナを介し電波信号を受信する第2受信部とを備えた複数の基地局と、
前記複数の基地局の前記第2受信部で受信した前記電波信号に基づき、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれまでの測距処理を行う測距処理手段と
を有する測位システムであって、
予め算出された、受信信号の時間分散と受信信号強度との相関を格納保持した相関記憶手段を有し、
前記移動局は、
測距用の前記電波信号に先立ち、調整用の前記電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御する第1制御手段を備え、
前記基地局は、
前記移動局より送信され前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じて、前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記移動局からの前記測距用の電波信号の出力を制御するための出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御する第2制御手段を備え、
前記移動局の前記第1制御手段は、
前記基地局より送信され前記第1受信部で受信された前記出力制御指示信号に対応した出力値で前記測距用の電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御する
ことを特徴とする測位システム。
【請求項2】
電波信号を送信する第1送信部と電波信号を受信する第1受信部とを備えた移動局と、
電波信号を送信する第2送信部と受信アンテナを介し電波信号を受信する第2受信部とを備えた複数の基地局と、
前記複数の基地局の前記第2受信部で受信した前記電波信号に基づき、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれまでの測距処理を行う測距処理手段と
を有する測位システムであって、
予め算出された、受信信号の時間分散と受信信号強度との相関を格納保持した相関記憶手段を有し、
前記移動局は、
測距用の前記電波信号に先立ち調整用の前記電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御する第1制御手段を備え、
前記複数の基地局のそれぞれは、
前記移動局より送信され前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じて、前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記第2受信部の受信感度を制御する第3制御手段を備え、
前記移動局の前記第1制御手段は、
前記複数の基地局の前記第3制御手段による前記第2受信部の受信感度制御が行われた後に前記測距用の電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御する
ことを特徴とする測位システム。
【請求項3】
電波信号を送信する第1送信部と電波信号を受信する第1受信部とを備えた移動局と、
電波信号を送信する第2送信部と受信アンテナを介し電波信号を受信する第2受信部とを備えた複数の基地局と、
前記複数の基地局の前記第2受信部で受信した前記電波信号に基づき、前記移動局から前記複数の基地局のそれぞれまでの測距処理を行う測距処理手段と
を有する測位システムであって、
予め算出された、受信信号の時間分散と受信信号強度との相関を格納保持した相関記憶手段を有し、
前記移動局は、
測距用の前記電波信号に先立ち、調整用の前記電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御する第1制御手段を備え、
前記複数の基地局のそれぞれは、
前記移動局より送信され前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じて、前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記移動局からの前記測距用の電波信号の出力を制御するための出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御する第2制御手段と、
前記移動局より送信され前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じて、前記記憶手段に記憶された前記相関に基づき、前記第2受信部の受信感度を制御する第3制御手段とを備え、
前記移動局の前記第1制御手段は、
前記複数の基地局の前記第3制御手段による前記第2受信部の受信感度制御が行われた後、前記基地局より送信され前記第1受信部で受信された前記出力制御指示信号に対応した出力値で前記測距用の電波信号を送信するように、前記第1送信部を制御する
ことを特徴とする測位システム。
【請求項4】
前記基地局の前記第2制御手段は、
前記相関に基づき、前記第2受信部での受信信号強度を所定値とするか若しくは前記所定値に近づけるための前記出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御する
ことを特徴とする請求項1又は請求項3記載の測位システム。
【請求項5】
前記基地局の前記第2制御手段は、
前記相関に基づき、前記第2受信部での受信信号強度を、受信信号の時間分散が最小となる前記所定値とするか若しくは当該所定値に近づけるための前記出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御する
ことを特徴とする請求項4記載の測位システム。
【請求項6】
前記移動局の前記第1制御手段は、
前記調整用の電波信号を最大出力で送信するように、前記第1送信部を制御する
ことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の測位システム。
【請求項7】
前記基地局の前記第2制御手段は、
前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度が、前記記憶手段に記憶された前記相関における前記受信信号の時間分散が最小となる最適受信信号強度よりも大きかった場合には、前記移動局の前記第1送信部からの前記測距用の電波信号の送信出力値を減少させるための前記出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御する
ことを特徴とする請求項6記載の測位システム。
【請求項8】
前記基地局の前記第2制御手段は、
前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度が、前記記憶手段に記憶された前記相関における前記受信信号の時間分散が最小となる最適受信信号強度よりも小さかった場合には、前記移動局の前記第1送信部から同一出力値の前記測距用の電波信号を出力させるための前記出力制御指示信号を送信するように、前記第2送信部を制御するとともに、
前記測距用の電波信号の受信時に、当該測距用電波信号に対し所定の重み付けを行うよう、前記第2受信部を制御する
ことを特徴とする請求項6記載の測位システム。
【請求項9】
前記移動局の前記第1送信部は、
出力電力を制御できる可変増幅手段とを備えており、
前記第1制御手段は、
前記基地局の前記第2送信部からの前記出力制御指示信号に基づき、前記可変増幅手段の増幅率を制御する
ことを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれか1項記載の測位システム。
【請求項10】
前記移動局の前記第1送信部は、
ICと、前記ICの出力側に接続され増幅器又は減衰器を備えた第1伝達路と、前記ICの出力側に接続され増幅器又は減衰器を備えない第2伝達路と、前記ICと前記第1伝達路又は前記第2伝達路とを選択的に接続する切替手段とを備えており、
前記第1制御手段は、
前記基地局の前記第2送信部からの前記出力制御指示信号に基づき、前記切替手段を切替制御する
ことを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれか1項記載の測位システム。
【請求項11】
前記基地局の前記第3制御手段は、
前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じ、前記受信アンテナのアンテナ感度を変化させるアンテナ感度制御手段
であることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の測位システム。
【請求項12】
前記基地局の前記第2受信部は、
前記受信アンテナを介して受信した前記測距用の電波信号を減衰させる可変減衰手段を備え、
前記第3制御手段は、
前記第2受信部で受信された前記調整用の電波信号の受信信号強度に応じ、前記可変減衰手段の減衰率を変化させる減衰制御手段
であることを特徴とする請求項2又は請求項3記載の測位システム。
【請求項13】
前記基地局は、
前記第2受信部で受信した前記測距用の電波信号の受信時刻に基づき到来時間を検出する到来時間検出部を備えている
ことを特徴とする請求項4乃至請求項12のいずれか1項記載の測位システム。
【請求項14】
前記測距処理手段は、
前記基地局と信号送受可能に接続された測位サーバに設けられ、各基地局毎の前記到来時間検出部で検出された前記測距用の電波信号の到来時間に基づき前記測距処理を行う
ことを特徴とする請求項13記載の測位システム。
【請求項15】
前記測距処理手段は、
前記基地局に設けられ、前記到来時間検出部で検出された前記測距用の電波信号の到来時間データに基づき前記測距処理を行い、その測距処理結果を、前記基地局と信号送受可能に接続された測位サーバに出力する
ことを特徴とする請求項13記載の測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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