測位誤差を含む位置情報から対象エリアを特定するデータベースサーバ、システム、プログラム及び方法
【課題】各移動端末から、測位誤差を含む少数回の位置情報しか取得されていない場合であっても、多数の移動端末の位置情報に基づいて、対象エリアを特定することができるデータベースサーバ等を提供する。
【解決手段】移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積手段を有し、対象エリアを特定するデータベースサーバであって、所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段とを有する。
【解決手段】移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積手段を有し、対象エリアを特定するデータベースサーバであって、所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末の位置情報に基づいて対象エリアを特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおける移動端末の無線通信品質は、基地局との間の遮蔽物のような周辺通信環境に大きく影響を受ける。従来、通信事業者の調査員が自ら、基地局との間の無線通信品質を測定するために、各地域を訪れる必要があった。このとき、通信事業者は、無線通信品質及び位置情報を対応付けて管理するために、その位置情報の正確性が極めて重要となる。
【0003】
従来、位置情報の算出や、位置情報の正確性の判断について、様々な技術がある。
【0004】
現在位置を算出するシステムについて、車両の現在位置を正確に判定する技術がある(例えば特許文献1及び2参照)。この技術によれば、車両の進行方位や走行距離、道路データを用いて、特に分岐点のような信頼度の高い候補点を算出する。また、相対変位を更に用いて候補点を算出する技術もある(例えば特許文献3及び4参照)。更に、車両が所定角度以上旋回したか否かの判定結果を、マップマッチングに基づいて信頼度の高い候補点を算出する技術もある(例えば特許文献5参照)。
【0005】
また、携帯電話システムの基地局からの電界強度を複数回測定し、平滑化した測定電界強度から携帯電話機の移動方向を同定することによって、現在位置を推定するマップマッチングの技術がある(例えば特許文献6参照)。この技術によれば、電界−座標変換を用いた電界強度データと、移動方向に基づく移動トレースとに基づいて、現在位置を推定する。
【0006】
更に、GPS(Global Positioning System)測位における信頼度を判定し、車両位置を修正する技術もある(例えば特許文献7参照)。この技術によれば、自立航法によって得られる所定区間の走行距離と、GPSによって得られるその所定区間に相当する区間の距離とを比較し、その差分値に応じてGPS測位の信頼度を算出する。
【0007】
更に、地図表示装置について、測位データの信頼度を判定する技術もある(例えば特許文献8参照)。この技術によれば、地殻変動等によって同一基準電圧における位置が、経時変化している事実を用いる。過去の複数回の測位データについて、その取得時刻の変化と共に、一定の方向に向かっているか否かによって、その信頼度を判定する。また、新たに取得された測位データについて、その過去の複数回の測定データ値の一定方向に合致するか否かによって、その信頼度を判定する。
【0008】
更に、現在位置表示装置について、環状道路を走行中でも、車両の現在位置を確実に環状道路上に表示する技術もある(例えば特許文献9参照)。この技術によれば、環状道路に形成されたリンクのリンクデータと、車両の走行距離及び進行方位の測定値とを用いて、現在位置を算出する。
【0009】
更に、位置情報検出システムについて、当該移動端末の位置情報を地図画面上に表示する際に、表示する地点の大きさを、位置情報の確度に応じた大きさとして表示する技術もある(例えば特許文献10参照)。この技術によれば、携帯電話網、無線LAN、GPSのような複数種類の移動体無線通信システムから得られる位置情報を用いる。そして、各種の位置情報の推定精度に基づく重みと、位置情報の頻度分布とから、補正頻度分布を作成する。この補正頻度分布の平均位置は、移動端末の位置情報として判定される。そして、この補正頻度の分布に基づいて、当該位置情報の確度を決定する。
【0010】
更に、位置特定装置について、距離センサや、方位センサ、高度センサなどを用いて、歩行者の歩行挙動を判定し、歩行者の位置を推定する技術もある(例えば特許文献11参照)。
【0011】
前述した特許文献1〜11に記載された技術によれば、測位された位置情報と、無線通信品質とを対応付けて管理することによって、無線通信品質の劣化箇所を検出することができる。尚、他の技術として、携帯端末を所持したユーザの有意位置を推定する技術もある(例えば非特許文献2〜4参照)。「有意位置」とは、例えば「自宅と最寄り駅周辺一帯」のようにユーザにとって意味のある位置範囲をいう。この技術によれば、携帯端末における連続・非連続な位置情報を取得し、それら取得時間の近接度合いからクラスタリングしている。これによって、ユーザの行動をモデル化し且つトレース化し、滞在時間が比較的長い地域範囲(有意位置)を抽出する。
【0012】
前述したような技術に対して、移動端末がサーバへ位置情報を送信することによって、無線通信品質の劣化箇所(不感地帯)を測定する技術がある(例えば特許文献12及び14参照)。この技術によれば、移動端末は、基地局のサービスエリアから外れたことを検出した際に、GPS機能によって測位し、その位置情報を記憶する。その後、移動端末は、再び、基地局のサービスエリアに進入したことを検出した際に、既に記憶している位置情報を、ネットワークを介してサーバへ送信する。これによって、そのサーバを運用する通信事業者は、無線通信品質の劣化箇所の位置情報を収集することができる。
【0013】
また、無線通信品質に基づくエリアマップを作成する技術がある(例えば特許文献13参照)。この技術によれば、通信システムの種別に応じて、移動端末がサーバへ送信する無線通信品質の範囲を変更することによって、移動端末からの情報送信数/量及びネットワーク負荷を低減することができる。例えばセルラシステムのような広域システムについては、移動端末は、所定品質以下に無線通信品質が劣化した際に、無線通信品質及び位置情報を取得する。また、無線LANのような狭域システムについては、所定品質以上に無線通信品質が上回った際に、無線通信品質及び位置情報を取得する。移動端末は、これら取得した無線通信品質及び位置情報をサーバへ送信し、サーバは、異なる通信システムにおけるエリアマップを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平08−292050号公報
【特許文献2】特開平08−334336号公報
【特許文献3】特開平08−334367号公報
【特許文献4】特開平08−334370号公報
【特許文献5】特開平08−334372号公報
【特許文献6】特開2000−213948号公報
【特許文献7】特開2003−279362号公報
【特許文献8】特開2004−144711号公報
【特許文献9】特開2006−292928号公報
【特許文献10】特開2009−272742号公報
【特許文献11】特開2009−229204号公報
【特許文献12】特開2005−210530号公報
【特許文献13】特開2008−306240号公報
【特許文献14】特開2010−088074号公報
【特許文献15】特開2009−284495号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Hybrid Positioning In CDMA Networks, Invitational Workshop onOpportunistic RF Localization for Next Generation Wireless Devices」、[online]、[平成23年1月6日検索]、インターネット<URL:http://www.cwins.wpi.edu/workshop08/pres/tech_3.pdf>
【非特許文献2】「A User-Centered Location Model, Personal and Ubiquitous Computing2002」
【非特許文献3】遠山緑生、服部隆志、萩野達也、「携帯電話の測位機能を用いた有意位置の学習」、[online]、[平成23年1月7日]、インターネット<URL:http://www.tom.sfc.keio.ac.jp/~next/papers/2005-ipsj.pdf>
【非特許文献4】黒川茂莉、横山浩之、吉井和佳、麻生英樹、「疎な位置情報履歴からの有意位置抽出方式に関する検討」、第13回情報論的学習理論ワークショップ (IBIS 2010)、[online]、[平成23年1月7日]、インターネット<http://ibisml.org/ibis2010/preview/P4-6.pdf>
【非特許文献5】統計学入門、「9.4多変量の場合」、[online]、[平成23年1月7日検索]、インターネット<URL:http://www.snap-tck.com/room04/c01/stat/stat09/stat0904.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述した特許文献12〜14に記載された技術によれば、広域無線通信システムについて所定閾値以上の無線劣化が発生したエリアや、狭域無線通信システムについて無線通信可能なエリアを大まかには特定することができる。
【0017】
しかしながら、GPS測位方式、複数基地局測位方式、ハイブリッド測位方式のように、移動端末で実現可能ないずれの測位方式であっても、測位誤差は生じる。そのために、無線通信品質の劣化等が検出されたとしても、その位置情報には誤差を含んでいることを許容しなければならず、正確な位置を取得することは比較的難しい。例えば、これら各測位方式に基づく測位誤差は、数十mから数百mに及ぶ場合がある(例えば非特許文献1参照)。
【0018】
この主な理由は、携帯電話網のような広域無線通信システムについては、無線通信品質劣化は屋内や建物の陰で発生したり、無線LANのような狭域システムについては、利用可能な場所は屋内であることが多くためである。GPS測位、複数基地局測位、ハイブリッド測位などいずれの測位方式であっても、屋内等で測位する場合、その測位誤差は、通常に比して大きくなる。
【0019】
特に、特許文献12〜14に記載された技術によれば、無線通信品質の劣化箇所の位置情報を取得することを目的としたものであって、位置情報にどの程度の誤差が含まれているかを推定することは極めて困難である。
【0020】
また、特許文献10に記載された技術によれば、携帯電話網、無線LAN、GPSのような複数種類の移動体無線通信システムから得られる複数の位置情報を用いて補正頻度分布を作成する。そして、その補正頻度分布に基づく位置情報の確度に従って、地図画面上に表示する地点の大きさを変化させて、ユーザに相対的な確度を理解させている。
【0021】
図1は、所定閾値以上の無線劣化が発生した際に移動端末から通知された位置情報を表す地図である。
【0022】
広域無線通信システムについて、移動端末は、所定閾値以上の無線劣化(無線通信品質の低下)を検出する。そして、移動端末は、無線劣化が発生した際の位置情報を、基地局を介してデータベースサーバへ送信する。これによって、データベースサーバでは、移動端末の無線劣化の位置を、地図上にプロットすることができる。
【0023】
図1によれば、測位された移動端末の無線劣化の位置が、●で表されており、その中の数字は、移動端末の識別子を意味する。即ち、図1によれば、無線劣化が検出された位置はそれぞれ、別の移動端末によって検出されたものである。また、図1によれば、移動端末と通信する基地局3の位置も表されており、基地局識別子A〜Cが付与されている。
【0024】
図2は、所定閾値以上の無線劣化が現実に発生している場所を表す地図である。
【0025】
図2によれば、3カ所ア〜ウの場所について、所定閾値以上の無線劣化が発生している。
移動端末1〜9 :無線劣化場所アについて、所定閾値以上の無線劣化を経験した。
移動端末10〜15:無線劣化場所イについて、所定閾値以上の無線劣化を経験した。
移動端末16〜18:無線劣化場所ウについて、所定閾値以上の無線劣化を経験した。
【0026】
図3は、所定閾値以上の無線劣化が理想的に検出されるべき場所を表す地図である。
【0027】
本来、図3のように測位されるのが理想的である。しかしながら、現実的には、図1及び図2のように、測位された位置情報が、無線劣化場所(ア、イ又はウ)と同一場所にならない。これは、測位誤差を要因とするものである。
【0028】
以上のように、従来技術によれば、測位誤差の影響によって、所定閾値以上の無線劣化が1カ所のエリアで発生している場合であっても、現実の無線劣化のエリアを特定することは難しい。ましてや、無線劣化のエリアが複数存在する場合、移動端末がいずれの場所で無線劣化を経験したかを特定することは更に難しい。
【0029】
また、前述したいずれの従来技術(前述した特許文献1〜11及び非特許文献2〜3を含む)であっても、同一の移動端末が、同一の場所で連続した複数の位置情報を取得することを前提としている。そのために、1つの移動端末が、1、2回など少数回の位置情報しか取得していないことまでは想定していない。特に、特許文献10に記載された技術によれば、1、2回など少数回の位置情報では、補正頻度分布を作成することもできない。
【0030】
前述の例によれば、無線劣化のエリアを特定するものであるが、無線通信品質に限られず、所定条件を満たしたことを条件とするエリアの特定であっても同じ課題が生じる。即ち、測位誤差が影響するためである。
【0031】
そこで、本発明によれば、測位誤差を含む少数回の各移動端末の位置情報しか蓄積できていない場合であっても、多数の移動端末の位置情報を利用することによって、現実の対象エリアをできる限り正確に特定することができるデータベースサーバ、システム、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明によれば、移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積手段を有し、対象エリアを特定するデータベースサーバであって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、
クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段と
を有することを特徴とする。
【0033】
本発明のデータベースサーバにおける他の実施形態によれば、
エリア抽出手段について、信頼楕円エリアは、2次元正規分布に基づく母集団の代表値の範囲を推定するものであって、信頼水準値は、楕円内部に母集団の代表値が含まれる確率であることも好ましい。
【0034】
本発明のデータベースサーバにおける他の実施形態によれば、
位置情報蓄積手段は、位置情報に更に測位精度を対応付けて蓄積しており、
地図画像に重畳する信頼楕円エリアを、測位精度に基づいて且つ端末の数に基づいて、視覚的に識別できるように重畳した地図画像を出力する地図出力手段を更に有することも好ましい。
【0035】
本発明のデータベースサーバにおける他の実施形態によれば、
位置情報蓄積手段は、所定条件に達した移動端末の位置情報を蓄積したものであることも好ましい。
【0036】
本発明のデータベースサーバにおける他の実施形態によれば、
位置情報蓄積手段について、所定条件として、
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となった際、
(トリガ2)所定のデータ通信が実行された際、又は、
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となった際
における移動端末に係る位置情報を蓄積したものであることも好ましい。
【0037】
本発明によれば、前述のデータベースサーバと、該データベースサーバへ位置情報を送信する移動端末とを有するシステムであって、
移動端末は、
所定条件に達した際に、現在の位置情報を取得する測位手段と、
位置情報と、該位置情報が測位された際における接続/隣接基地局の基地局識別子とを、データベースサーバへ送信する位置情報送信手段と
を有することを特徴とする。
【0038】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
移動端末の測位手段は、
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となった際に、
(トリガ2)所定のデータ通信が実行された際に、
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となった際に、又は、
(トリガ4)所定のユーザ操作が実行された際に、
位置情報を測位することも好ましい。
【0039】
本発明によれば、移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積部を有し、対象エリアを特定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、
クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0040】
本発明によれば、移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積部を有し、対象エリアを特定する装置における対象エリア表示方法であって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類する第1のステップと、
クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出する第2のステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明のデータベースサーバ、システム、プログラム及び方法によれば、測位誤差を含む少数回の各移動端末の位置情報しか蓄積されていない場合であっても、多数の移動端末の位置情報に基づいて、対象エリアを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】所定閾値以上の無線劣化が発生した際に移動端末から通知された位置情報を表す地図である。
【図2】所定閾値以上の無線劣化が現実に発生している場所を表す地図である。
【図3】所定閾値以上の無線劣化が理想的に検出されるべき場所を表す地図である。
【図4】本発明におけるシステム構成図である。
【図5】本発明におけるシーケンス図である。
【図6】データベースサーバに蓄積された位置情報のテーブルである。
【図7】群平均法を用いた場合のデンドログラムである。
【図8】2次元正規分布と、母集団の代表(平均)値の95%信頼楕円エリアとを表す説明図である。
【図9】図7における[クラスタ−ア]として分類された位置情報のみ表す地図である。
【図10】図7における[クラスタ−イ]として分類された位置情報のみ表す地図である。
【図11】図7における[クラスタ−ウ]として分類された位置情報のみ表す地図である。
【図12】図9における[クラスタ−ア]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
【図13】図9における[クラスタ−イ]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
【図14】図9における[クラスタ−ウ]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
【図15】図2の無線劣化場所と、図12〜14の信頼楕円とを重畳した地図である。
【図16】本発明における移動端末及びデータベースサーバの機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0044】
図4は、本発明におけるシステム構成図である。
【0045】
図4は、前述した図1を多元的に表したものである。図4によれば、複数の基地局3が配置されており、各基地局3は、そのサービスエリア内に位置する移動端末1と通信する。全ての基地局3は、通信事業者の移動通信網に接続される。移動通信網は、例えば広域をカバーする携帯電話網であって、移動端末1は、例えば携帯電話機であってもよい。
【0046】
複数の基地局3のサービスエリアは、不感地帯が生じないように、重畳的に配置される。しかし、移動端末と基地局との間に、ビルのような建造物が介在することによって電波が遮断され、不感地帯が生じてしまう。通信事業者としては、このような不感地帯をできる限り検出したいと考える。尚、以下では、本発明によって特定すべき「対象エリア」を、通信事業者における「無線劣化」エリアとして説明するが、勿論、これに限られるものではない。
【0047】
図4によれば、2次元の地図(エリアマップ)上に、無線通信品質が表されている。無線通信品質を表すz軸は、高い値になるほど、無線通信品質が良い状態を表す。図4によれば、無線通信品質は、基地局3を中心に、ピラミッド状の階層的に表されている。これは、移動端末1の位置が基地局3に近いほど、無線通信品質が良いことを表している。
【0048】
また、図4によれば、移動通信網には、移動端末の位置情報を蓄積したデータベースサーバ(LAS−DB (Location information and Available System information Data Base))2が接続されている。データベースサーバ2は、移動端末1から、位置情報及び無線通信品質を受信することによって、対象エリアを特定したエリアマップを作成することができる。
【0049】
携帯電話機のような移動端末1は、測位部を搭載しており、現在位置を測位することができる。測位部としては、例えば以下のようなものがある。
「GPS測位方式」:GPS衛星からの測位電波によって測位する
「複数基地局測位方式」 :複数の周辺基地局との通信電波によって測位する
「ハイブリッド測位方式」:GPS測位方式+複数基地局測位方式
【0050】
また、移動端末1は、基地局3に対する無線通信インタフェース部によって、無線通信品質を測定する。無線通信品質としては、例えば、受信品質、再送回数又はデータ誤り率、スループット、遅延時間がある。受信品質としては、例えばRSS(Received Signal Strength:受信信号強度)、C/I(搬送波対干渉波比)、Ec/Io(PNチップ当たりの平均エネルギー対全受信パワースペクトル密度)がある。
【0051】
「良い状態の無線通信品質」としては、受信信号強度が大きく、信号対干渉雑音比が大きく、再送回数が少なく、データ誤り率が低く、スループットが高く、又は、遅延時間が小さい場合である。
「悪い状態の無線通信品質」としては、受信信号強度が小さく、信号対干渉雑音比が小さく、再送回数が多く、データ誤り率が高く、スループットが低く、又は、遅延時間が大きい場合である。
【0052】
図4によれば、移動端末1は、無線通信品質が所定閾値以下に劣化した際に、そのときの位置を測位し、記憶する。そして、移動端末1は、無線通信品質が良好な状態に戻った際、無線通信品質が劣化した時の位置情報を、その無線通信品質と共に、データベースサーバ2へ送信する。
【0053】
通信事業者としては、図4のようなエリアマップを作成することによって、移動端末の位置に対応する無線通信品質が把握でき、設備設計やサービス品質向上に役立てることができる。
【0054】
図5は、本発明におけるシーケンス図である。
【0055】
図5によれば、移動端末1は、基地局3のサービスエリアから不感地帯へ移動したとする。
(S11)移動端末1は、所定条件に達したことをトリガとして、現在の位置情報を取得する。ここで、所定条件とは、抽出しようとしている対象エリアの用途に応じて、例えば以下のようなものがある。
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となったこと
(トリガ2)所定のデータ通信が実行されたこと
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となったこと
(トリガ4)所定のユーザ操作が実行されたこと
【0056】
図2によれば、無線通信品質の劣化箇所を抽出しようとするものであるので、(トリガ1)が適用される。移動端末1は、不感地帯に入ることによって、無線通信品質が所定閾値以下となった際に、測位部を起動し、現在位置を測位する。
【0057】
また、抽出しようとしている対象エリアの他の用途として、携帯ゲーム端末による「すれ違い通信」が多く行われている場所を抽出しようとする場合、(トリガ2)が適用される。「すれ違い通信」とは、携帯型ゲーム機が、ゲームの進行等に影響する他のプレイヤのゲーム機との間で、無線LANを用いて自動且つ瞬時に通信する機能をいう。移動端末1は、すれ違い通信が実行された際に、測位部を起動し、現在位置を測位する。また、所定のアプリケーションが使われている場所を抽出しようとする場合にも、(トリガ2)が適用される。
【0058】
更に、データ通信量の多いエリアを抽出しようとする場合、(トリガ3)が適用される。
【0059】
更に、抽出しようとしている対象エリアの他の用途として、特定の写真が多く撮影されている場所を抽出しようとする場合、(トリガ4)が適用される。移動端末1は、アプリケーションを用いて特定の写真がカメラによって撮影された際に、測位部を起動し、現在位置を測位する。
【0060】
(S12)移動端末1は、取得した位置情報における測位精度を更に取得することも好ましい。測位精度は、例えば以下のように3段階に設定されてもよい。
(精度良)GPS測位方式による測位
(精度中)ハイブリッド測位方式による測位
(精度悪)複数基地局測位方式による測位
【0061】
また、GPS測位方式のみを用いる場合、推定される平均二乗誤差値(RMSE(Root Mean Square Error))に基づいて、測位精度の「良」「悪」を判定するものであってもよい。平均二乗誤差値は、真値Xとの差を評価したものであって、例えば以下の式で表される。
RMSE=√(Σ[i=1,n](X−xi)^2/n)
【0062】
(S13)その後、移動端末1は、更に移動し、基地局3との通信が回復した際に、[位置情報、無線通信品質情報、補足基地局情報、基地局との無線品質情報、測位精度]を、データベースサーバ2へ送信する。
【0063】
(S21)データベースサーバ2は、移動端末1から、例えば以下の情報を受信する。
位置情報(緯度・経度)
無線通信品質情報(例えば受信強度)
補足基地局情報(接続基地局及び隣接基地局の基地局識別子)
測位精度
これら位置情報は、位置情報蓄積部に蓄積される。
【0064】
ここで、図5の実施形態によれば、移動端末の位置情報等は、移動端末によって測位及び検出され、データベースサーバ2へ送信されている。しかしながら、本発明のデータベースサーバは、移動端末1から位置情報等を受信することに限られない。即ち、本発明のデータベースサーバは、測位誤差を含むであろう多数の移動端末の位置情報を蓄積していればよい。移動端末の位置情報等は、通信事業者網によって取得して蓄積しているものであってもよい。
【0065】
S11によれば、移動端末1内の測位部が「GPS測位方式」、「複数基地局測位方式」、「ハイブリッド測位方式」等の方式を用いることによって、位置情報を取得するべく説明した。一方で、無線基地局が、携帯電話機からの電波の到着時間及び到着方向の情報を測定し、これら情報を用いて通信事業者網内のサービスノードが移動端末1の位置を測位するものもある(例えば特許文献15参照)。本発明が利用する移動端末の位置情報は、移動端末1によって測位されたものに限られず、通信事業者網内で測位された位置情報を用いることもできる。この場合、移動端末1が測位部を有することも不要である。また、この場合、測位発動のトリガは、通信事業者網側、例えばサービスノードから発出することも好ましい。これには、サービスノードが、基地局と移動端末間の通信品質を監視し、所定閾値以下に品質が劣化することをトリガとすることを含む。
【0066】
尚、移動端末の位置情報等は、通信事業者網によって取得して蓄積しているものである場合、対象エリアの用途に基づくトリガは、前述の(トリガ4)を除き、例えば以下の3つとなる。
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となったこと
(トリガ2)所定のデータ通信が実行されたこと
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となったこと
【0067】
図6は、データベースサーバに蓄積された位置情報のテーブルである。
【0068】
図6によれば、18個の位置情報のログが蓄積されており、各ログは、異なる端末(端末ID)によって測位されていることが理解できる。例えばログ番号1について、端末ID1によって緯度・経度が取得されており、その端末(ID=1)は、受信強度20で接続基地局Aに接続すると共に、受信強度17の隣接基地局Bと、受信強度7の隣接基地局Cとが見えている。
【0069】
図6のように蓄積される位置情報のログは、所定範囲毎に区分されたものである。ここで、「所定範囲」とは、数百メートルから数キロ程度の四方の範囲を示す。例えば図1〜3によれば、地図全体が1つの所定範囲を表しており、その中に18個の位置情報が蓄積されていることを表す。
【0070】
(S22)データベースサーバ2は、所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子を要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類する。ここで、類似度を算出する要素しては、接続先/隣接基地局の基地局識別子と共に、その基地局毎の無線品質値を更に含むことも好ましい。図6の所定範囲毎に含まれる位置情報(18個)は、接続基地局/隣接基地局と、その無線品質情報(例えば受信強度)との類似度によって分類される。
【0071】
図7は、群平均法を用いた場合のデンドログラムである。
【0072】
デンドログラムとは、クラスタ分析について、各個体(ログ)がクラスタにまとめられていくさまを樹形図の形で表したものをいう。図7によれば、縦に並ぶ番号は、ログ番号(図6参照)を意味し、横軸は、接続基地局/隣接基地局とその無線品質情報(例えば受信強度)との類似度を意味する(左側に寄るほど類似度が高く、右側に寄るほど類似度が低い)。
【0073】
図7によれば、所定の距離を意味する破線で階層が切られている。これによって、3つのクラスタに区分される。この「クラスタ」の意味は、測位結果(位置)に依存することなく、当該位置情報が大凡どの場所で実際に測位されたか、を表すことに特徴がある。
【0074】
例えば、図2によれば、移動端末識別子7の位置情報7は、[無線劣化場所ア]で測位されたものである。しかしながら、移動端末識別子7の位置情報7は、測位誤差の影響によって、[無線劣化場所ア]よりも離れた場所を表している。[無線劣化場所ア]から見て、移動端末識別子7の位置情報7は、[無線劣化場所イ]で測位された移動端末識別子15の位置情報15よりも遠くに位置している。
【0075】
しかしながら、位置情報7は、[無線劣化場所ア]で測位されたものである。そのために、接続先基地局及び隣接基地局の識別子と、それらとの無線品質値(例えば受信強度)は、[無線劣化場所ア]に基づくものである。そこで、それら識別子と無線品質値とを用いて、類似度を算出・比較するクラスタ分析を実行する。これによって、位置情報7は、[無線劣化場所ア]で測位された他の位置情報(例えば位置情報3)との類似度が高くなる。即ち、図7に表されているように、[無線劣化場所ア]で測位された位置情報として分類することができる。
【0076】
(S23)次に、データベースサーバ2は、クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値(好ましくは複数の信頼水準値)に基づく信頼楕円エリアを抽出する。上述したように、通信事業者は、複数の基地局3を、不感地帯が生じないように、そのサービスエリアが重畳するように配置する。しかしながら、移動端末と基地局との間に、ビルのような建造物が介在することによって電波が遮断され、一部で不感地帯が生じ得る。つまり、クラスタリングされた位置情報は、当該一部の不感地帯(エリア)で取得されたものと考えるのが好ましい。そのため、母代表(平均)位置が当該エリアと仮定し、上述のように、母代表(平均)位置が所定の確率で存在する範囲を楕円として算出する。データベースサーバ2は、(クラスタ毎だけでなく、それに加え)更に、位置情報における測位精度毎(つまり同一クラスタ内の位置情報かつ「良」「中」「悪」の精度毎にまとめて)に信頼楕円エリアを算出することも好ましい。
【0077】
ここで、信頼楕円エリアの算出方法について説明する。
[信頼楕円エリアの算出方法]
移動端末によって測位された位置情報は、2次元によって表される。位置情報には上述のように測位誤差が含まれているため、測位データは、2次元正規分布(多変量正規分布(multivariate normal distribution))に従うという観測に基づく。ここで、信頼水準値βで、母集団の代表(平均)値の信頼楕円エリアを推定する。尚、「100・(1-β))%の信頼楕円エリア」と称する。信頼度「100・(1-β)%」は、母集団の代表(平均)値が楕円内部に含まれる確率である。この際、所定の範囲内に収まる複数の位置情報の分散値と、位置情報における測位精度とから、用いるべきβ値を決定することも好ましい。例えば、測位精度が「良」(良の比率が多かったり、良のみでまとめた場合)であるのに、分散値が大きい場合は、比較的小さいβ値を用いる。一方で、測位精度が「高」で且つ分散値が小さい場合は、比較的大きいβ値を用いる。測位精度が「悪」の場合(悪の比率が多かったり、悪のみでまとめた場合)も、分散値が大きいものほど、比較的小さなβ値を用いる。
【0078】
図8は、2次元正規分布と、母集団の代表(平均)値の95%信頼楕円エリアとを表す説明図である。
【0079】
当該信頼楕円は、以下の式により算出される。
(1/n)*F(2,φ,β)=(V(ly)*X^2-2*C(lx, ly)*X*Y+V(lx)*Y^2)/
2*(V(lx)*V(ly)-C(lx, ly)^2)
lx :移動端末によって測位された位置情報の経度方向代表(平均)値
ly :移動端末によって測位された位置情報の緯度方向の代表()値
X=x−lx
Y=y−ly
V(lx):lx(経度方向の標本平均)の分散
V(ly):ly(緯度方向の標本平均)の分散
C(lx,ly):lx、lyの共分散
F(2,φ,β):第一自由度2、第二自由度φ(残差の自由度)に従う
F分布における100β%点の値
【0080】
(S24)そして、データベースサーバ2は、信頼楕円エリアを重畳した地図画像を出力する。
【0081】
位置情報蓄積部21が、位置情報に更に測位精度を対応付けて蓄積している場合、地図画像に重畳する信頼楕円エリアを、測位精度に基づいて、視覚的に識別できるように重畳した地図画像を出力することができる。信頼楕円エリアにおける測位精度としては、例えば、その信頼楕円エリアに含まれる複数の位置情報における測位精度の平均値であってもよい。例えば、以下のように、信頼楕円の表示形式を、測位精度によって変更することも好ましい。
[破線]/[実線]:[位置情報数:少]/[位置情報数:多]
[細線]/[太線]:[測位精度:低] /[測位精度:高]
[破線・細線] 位置情報数:少 測位精度:低
[破線・太線] 位置情報数:少 測位精度:高
[実線・細線] 位置情報数:多 測位精度:低
[実線・太線] 位置情報数:多 測位精度:高
これにより、監視者は、地図を一見するだけで、測位精度も含めて理解することができる。
【0082】
図9は、図7における[クラスタ−ア]として分類された位置情報のみ表す地図である。
図10は、図7における[クラスタ−イ]として分類された位置情報のみ表す地図である。
図11は、図7における[クラスタ−ウ]として分類された位置情報のみ表す地図である。
【0083】
図12は、図9における[クラスタ−ア]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
図13は、図9における[クラスタ−イ]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
図14は、図9における[クラスタ−ウ]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
【0084】
図15は、図2の無線劣化場所と、図12〜14の信頼楕円とを重畳した地図である。図15によれば、現実の無線劣化場所が、信頼楕円によって絞り込まれていることが理解できる。
【0085】
図16は、本発明における移動端末及びデータベースサーバの機能構成図である。
【0086】
図16によれば、移動端末1は、基地局3とエアを介して通信する無線通信インタフェース部101と、GPS衛星4や基地局から受信した測位電波によって現在位置を算出する測位部102とを有する。また、移動端末1は、測位起動部11と、測位精度取得部12と、位置情報送信部13とを更に有する。これら機能構成部は、移動端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0087】
測位起動部11は、所定条件に達したことをトリガとして、測位部102を起動し、現在の位置情報を取得させる(図5のS11と同様の処理を実行する)。例えば、無線通信品質が所定閾値以下に劣化したことをトリガとするものであってもよい。
【0088】
測位精度取得部12は、取得した位置情報における測位精度を更に取得する(図5のS12と同様の処理を実行する)。例えば、測位方式に基づいて又はGPSの平均二乗誤差値に基づいて、測位精度の「良」「悪」を判定する。その測位精度は、位置情報送信部13へ出力される。
【0089】
位置情報送信部13は、端末毎に、位置情報、補足基地局識別子(接続/隣接基地局の識別子)及び測位精度を、データベースサーバ2へ送信する(図5のS13と同様の処理を実行する)。
【0090】
データベースサーバ2は、ネットワーク(図16によれば移動通信網)に接続される通信インタフェース部201と、監視者へ地図を表示するディスプレイ部202とを有する。
【0091】
また、データベースサーバ2は、位置情報蓄積部21と、クラスタリング部22と、エリア抽出部23と、地図出力部24とを有する。これら機能構成部は、サーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0092】
位置情報蓄積部21は、移動端末1の[位置情報、無線通信品質情報、補足基地局情報、基地局との無線品質情報、測位精度]を蓄積する。(図5のS21と同様の処理を実行する)。
【0093】
クラスタリング部22は、所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子を要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類する(図5のS22と同様の処理を実行する)。ここで、類似度を算出する要素しては、接続先/隣接基地局の基地局識別子と共に、該基地局毎の無線品質値を更に含むことも好ましい。
【0094】
エリア抽出部23は、クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出する(図5のS23と同様の処理を実行する)。この際、予め設定された、測位精度と位置情報の分散値に応じたβ値を用いる。
【0095】
地図出力部24は、信頼楕円エリアを重畳した地図画像を出力する(図5のS24と同様の処理を実行する)。ここで、データベースサーバ2は、地図画像に重畳する信頼楕円エリアを、測位精度に基づいて、視覚的に識別できるように地図上に明示することも好ましい。例えば、クラスタに含まれる位置情報の測位精度の平均値によって、信頼楕円の表示形式を変更することができる。これによって、閲覧者に、視覚的に識別できるように重畳した地図画像を出力することができる。
【0096】
以上、詳細に説明したように、本発明のデータベースサーバ、システム、プログラム及び方法によれば、測位誤差を含む少数回の各移動端末の位置情報しか蓄積できていない場合であっても、多数の移動端末の位置情報を利用することによって、現実の対象エリアをできる限り正確に特定することができる。
【0097】
本発明によれば、特定のエリアで発生するイベントに対し、当該対象エリアを特定することができる。これは、例えば無線通信品質の劣化エリアの調査に限られず、マーケティングにも役立てることができる。例えば、携帯ゲーム端末による「すれ違い通信」が多く行われている場所を抽出することもできる。この場合、当該ゲームタイトル毎に処理されることが好ましい。また、同様に所定のアプリの利用場所の抽出などにも利用することができる。更に、所定時間内に所定のデータ量を超えるデータ通信がなされるエリアの抽出などにも利用することができる。更に、抽出しようとしている対象エリアの他の用途として、特定の写真が多く撮影されている場所を抽出することもできる。この場合、画像認識処理によって「東京タワー」「レインボーブリッジ」のように解析された特定の写真毎に処理されることが好ましい。
【0098】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のデータベースサーバ、システム、プログラム及び方法は、特定のエリアで発生するイベントに対し、当該対象エリアを特定することできるために、例えば通信エリア対策やマーケティングに利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 移動端末
101 無線通信インタフェース部
102 測位部
11 測位起動部
12 測位精度取得部
13 位置情報送信部
2 データベースサーバ
201 通信インタフェース部
202 ディスプレイ部
21 位置情報蓄積部
22 クラスタリング部
23 エリア抽出部
24 地図出力部
3 基地局
4 GPS衛星
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末の位置情報に基づいて対象エリアを特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおける移動端末の無線通信品質は、基地局との間の遮蔽物のような周辺通信環境に大きく影響を受ける。従来、通信事業者の調査員が自ら、基地局との間の無線通信品質を測定するために、各地域を訪れる必要があった。このとき、通信事業者は、無線通信品質及び位置情報を対応付けて管理するために、その位置情報の正確性が極めて重要となる。
【0003】
従来、位置情報の算出や、位置情報の正確性の判断について、様々な技術がある。
【0004】
現在位置を算出するシステムについて、車両の現在位置を正確に判定する技術がある(例えば特許文献1及び2参照)。この技術によれば、車両の進行方位や走行距離、道路データを用いて、特に分岐点のような信頼度の高い候補点を算出する。また、相対変位を更に用いて候補点を算出する技術もある(例えば特許文献3及び4参照)。更に、車両が所定角度以上旋回したか否かの判定結果を、マップマッチングに基づいて信頼度の高い候補点を算出する技術もある(例えば特許文献5参照)。
【0005】
また、携帯電話システムの基地局からの電界強度を複数回測定し、平滑化した測定電界強度から携帯電話機の移動方向を同定することによって、現在位置を推定するマップマッチングの技術がある(例えば特許文献6参照)。この技術によれば、電界−座標変換を用いた電界強度データと、移動方向に基づく移動トレースとに基づいて、現在位置を推定する。
【0006】
更に、GPS(Global Positioning System)測位における信頼度を判定し、車両位置を修正する技術もある(例えば特許文献7参照)。この技術によれば、自立航法によって得られる所定区間の走行距離と、GPSによって得られるその所定区間に相当する区間の距離とを比較し、その差分値に応じてGPS測位の信頼度を算出する。
【0007】
更に、地図表示装置について、測位データの信頼度を判定する技術もある(例えば特許文献8参照)。この技術によれば、地殻変動等によって同一基準電圧における位置が、経時変化している事実を用いる。過去の複数回の測位データについて、その取得時刻の変化と共に、一定の方向に向かっているか否かによって、その信頼度を判定する。また、新たに取得された測位データについて、その過去の複数回の測定データ値の一定方向に合致するか否かによって、その信頼度を判定する。
【0008】
更に、現在位置表示装置について、環状道路を走行中でも、車両の現在位置を確実に環状道路上に表示する技術もある(例えば特許文献9参照)。この技術によれば、環状道路に形成されたリンクのリンクデータと、車両の走行距離及び進行方位の測定値とを用いて、現在位置を算出する。
【0009】
更に、位置情報検出システムについて、当該移動端末の位置情報を地図画面上に表示する際に、表示する地点の大きさを、位置情報の確度に応じた大きさとして表示する技術もある(例えば特許文献10参照)。この技術によれば、携帯電話網、無線LAN、GPSのような複数種類の移動体無線通信システムから得られる位置情報を用いる。そして、各種の位置情報の推定精度に基づく重みと、位置情報の頻度分布とから、補正頻度分布を作成する。この補正頻度分布の平均位置は、移動端末の位置情報として判定される。そして、この補正頻度の分布に基づいて、当該位置情報の確度を決定する。
【0010】
更に、位置特定装置について、距離センサや、方位センサ、高度センサなどを用いて、歩行者の歩行挙動を判定し、歩行者の位置を推定する技術もある(例えば特許文献11参照)。
【0011】
前述した特許文献1〜11に記載された技術によれば、測位された位置情報と、無線通信品質とを対応付けて管理することによって、無線通信品質の劣化箇所を検出することができる。尚、他の技術として、携帯端末を所持したユーザの有意位置を推定する技術もある(例えば非特許文献2〜4参照)。「有意位置」とは、例えば「自宅と最寄り駅周辺一帯」のようにユーザにとって意味のある位置範囲をいう。この技術によれば、携帯端末における連続・非連続な位置情報を取得し、それら取得時間の近接度合いからクラスタリングしている。これによって、ユーザの行動をモデル化し且つトレース化し、滞在時間が比較的長い地域範囲(有意位置)を抽出する。
【0012】
前述したような技術に対して、移動端末がサーバへ位置情報を送信することによって、無線通信品質の劣化箇所(不感地帯)を測定する技術がある(例えば特許文献12及び14参照)。この技術によれば、移動端末は、基地局のサービスエリアから外れたことを検出した際に、GPS機能によって測位し、その位置情報を記憶する。その後、移動端末は、再び、基地局のサービスエリアに進入したことを検出した際に、既に記憶している位置情報を、ネットワークを介してサーバへ送信する。これによって、そのサーバを運用する通信事業者は、無線通信品質の劣化箇所の位置情報を収集することができる。
【0013】
また、無線通信品質に基づくエリアマップを作成する技術がある(例えば特許文献13参照)。この技術によれば、通信システムの種別に応じて、移動端末がサーバへ送信する無線通信品質の範囲を変更することによって、移動端末からの情報送信数/量及びネットワーク負荷を低減することができる。例えばセルラシステムのような広域システムについては、移動端末は、所定品質以下に無線通信品質が劣化した際に、無線通信品質及び位置情報を取得する。また、無線LANのような狭域システムについては、所定品質以上に無線通信品質が上回った際に、無線通信品質及び位置情報を取得する。移動端末は、これら取得した無線通信品質及び位置情報をサーバへ送信し、サーバは、異なる通信システムにおけるエリアマップを作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平08−292050号公報
【特許文献2】特開平08−334336号公報
【特許文献3】特開平08−334367号公報
【特許文献4】特開平08−334370号公報
【特許文献5】特開平08−334372号公報
【特許文献6】特開2000−213948号公報
【特許文献7】特開2003−279362号公報
【特許文献8】特開2004−144711号公報
【特許文献9】特開2006−292928号公報
【特許文献10】特開2009−272742号公報
【特許文献11】特開2009−229204号公報
【特許文献12】特開2005−210530号公報
【特許文献13】特開2008−306240号公報
【特許文献14】特開2010−088074号公報
【特許文献15】特開2009−284495号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】「Hybrid Positioning In CDMA Networks, Invitational Workshop onOpportunistic RF Localization for Next Generation Wireless Devices」、[online]、[平成23年1月6日検索]、インターネット<URL:http://www.cwins.wpi.edu/workshop08/pres/tech_3.pdf>
【非特許文献2】「A User-Centered Location Model, Personal and Ubiquitous Computing2002」
【非特許文献3】遠山緑生、服部隆志、萩野達也、「携帯電話の測位機能を用いた有意位置の学習」、[online]、[平成23年1月7日]、インターネット<URL:http://www.tom.sfc.keio.ac.jp/~next/papers/2005-ipsj.pdf>
【非特許文献4】黒川茂莉、横山浩之、吉井和佳、麻生英樹、「疎な位置情報履歴からの有意位置抽出方式に関する検討」、第13回情報論的学習理論ワークショップ (IBIS 2010)、[online]、[平成23年1月7日]、インターネット<http://ibisml.org/ibis2010/preview/P4-6.pdf>
【非特許文献5】統計学入門、「9.4多変量の場合」、[online]、[平成23年1月7日検索]、インターネット<URL:http://www.snap-tck.com/room04/c01/stat/stat09/stat0904.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述した特許文献12〜14に記載された技術によれば、広域無線通信システムについて所定閾値以上の無線劣化が発生したエリアや、狭域無線通信システムについて無線通信可能なエリアを大まかには特定することができる。
【0017】
しかしながら、GPS測位方式、複数基地局測位方式、ハイブリッド測位方式のように、移動端末で実現可能ないずれの測位方式であっても、測位誤差は生じる。そのために、無線通信品質の劣化等が検出されたとしても、その位置情報には誤差を含んでいることを許容しなければならず、正確な位置を取得することは比較的難しい。例えば、これら各測位方式に基づく測位誤差は、数十mから数百mに及ぶ場合がある(例えば非特許文献1参照)。
【0018】
この主な理由は、携帯電話網のような広域無線通信システムについては、無線通信品質劣化は屋内や建物の陰で発生したり、無線LANのような狭域システムについては、利用可能な場所は屋内であることが多くためである。GPS測位、複数基地局測位、ハイブリッド測位などいずれの測位方式であっても、屋内等で測位する場合、その測位誤差は、通常に比して大きくなる。
【0019】
特に、特許文献12〜14に記載された技術によれば、無線通信品質の劣化箇所の位置情報を取得することを目的としたものであって、位置情報にどの程度の誤差が含まれているかを推定することは極めて困難である。
【0020】
また、特許文献10に記載された技術によれば、携帯電話網、無線LAN、GPSのような複数種類の移動体無線通信システムから得られる複数の位置情報を用いて補正頻度分布を作成する。そして、その補正頻度分布に基づく位置情報の確度に従って、地図画面上に表示する地点の大きさを変化させて、ユーザに相対的な確度を理解させている。
【0021】
図1は、所定閾値以上の無線劣化が発生した際に移動端末から通知された位置情報を表す地図である。
【0022】
広域無線通信システムについて、移動端末は、所定閾値以上の無線劣化(無線通信品質の低下)を検出する。そして、移動端末は、無線劣化が発生した際の位置情報を、基地局を介してデータベースサーバへ送信する。これによって、データベースサーバでは、移動端末の無線劣化の位置を、地図上にプロットすることができる。
【0023】
図1によれば、測位された移動端末の無線劣化の位置が、●で表されており、その中の数字は、移動端末の識別子を意味する。即ち、図1によれば、無線劣化が検出された位置はそれぞれ、別の移動端末によって検出されたものである。また、図1によれば、移動端末と通信する基地局3の位置も表されており、基地局識別子A〜Cが付与されている。
【0024】
図2は、所定閾値以上の無線劣化が現実に発生している場所を表す地図である。
【0025】
図2によれば、3カ所ア〜ウの場所について、所定閾値以上の無線劣化が発生している。
移動端末1〜9 :無線劣化場所アについて、所定閾値以上の無線劣化を経験した。
移動端末10〜15:無線劣化場所イについて、所定閾値以上の無線劣化を経験した。
移動端末16〜18:無線劣化場所ウについて、所定閾値以上の無線劣化を経験した。
【0026】
図3は、所定閾値以上の無線劣化が理想的に検出されるべき場所を表す地図である。
【0027】
本来、図3のように測位されるのが理想的である。しかしながら、現実的には、図1及び図2のように、測位された位置情報が、無線劣化場所(ア、イ又はウ)と同一場所にならない。これは、測位誤差を要因とするものである。
【0028】
以上のように、従来技術によれば、測位誤差の影響によって、所定閾値以上の無線劣化が1カ所のエリアで発生している場合であっても、現実の無線劣化のエリアを特定することは難しい。ましてや、無線劣化のエリアが複数存在する場合、移動端末がいずれの場所で無線劣化を経験したかを特定することは更に難しい。
【0029】
また、前述したいずれの従来技術(前述した特許文献1〜11及び非特許文献2〜3を含む)であっても、同一の移動端末が、同一の場所で連続した複数の位置情報を取得することを前提としている。そのために、1つの移動端末が、1、2回など少数回の位置情報しか取得していないことまでは想定していない。特に、特許文献10に記載された技術によれば、1、2回など少数回の位置情報では、補正頻度分布を作成することもできない。
【0030】
前述の例によれば、無線劣化のエリアを特定するものであるが、無線通信品質に限られず、所定条件を満たしたことを条件とするエリアの特定であっても同じ課題が生じる。即ち、測位誤差が影響するためである。
【0031】
そこで、本発明によれば、測位誤差を含む少数回の各移動端末の位置情報しか蓄積できていない場合であっても、多数の移動端末の位置情報を利用することによって、現実の対象エリアをできる限り正確に特定することができるデータベースサーバ、システム、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明によれば、移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積手段を有し、対象エリアを特定するデータベースサーバであって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、
クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段と
を有することを特徴とする。
【0033】
本発明のデータベースサーバにおける他の実施形態によれば、
エリア抽出手段について、信頼楕円エリアは、2次元正規分布に基づく母集団の代表値の範囲を推定するものであって、信頼水準値は、楕円内部に母集団の代表値が含まれる確率であることも好ましい。
【0034】
本発明のデータベースサーバにおける他の実施形態によれば、
位置情報蓄積手段は、位置情報に更に測位精度を対応付けて蓄積しており、
地図画像に重畳する信頼楕円エリアを、測位精度に基づいて且つ端末の数に基づいて、視覚的に識別できるように重畳した地図画像を出力する地図出力手段を更に有することも好ましい。
【0035】
本発明のデータベースサーバにおける他の実施形態によれば、
位置情報蓄積手段は、所定条件に達した移動端末の位置情報を蓄積したものであることも好ましい。
【0036】
本発明のデータベースサーバにおける他の実施形態によれば、
位置情報蓄積手段について、所定条件として、
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となった際、
(トリガ2)所定のデータ通信が実行された際、又は、
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となった際
における移動端末に係る位置情報を蓄積したものであることも好ましい。
【0037】
本発明によれば、前述のデータベースサーバと、該データベースサーバへ位置情報を送信する移動端末とを有するシステムであって、
移動端末は、
所定条件に達した際に、現在の位置情報を取得する測位手段と、
位置情報と、該位置情報が測位された際における接続/隣接基地局の基地局識別子とを、データベースサーバへ送信する位置情報送信手段と
を有することを特徴とする。
【0038】
本発明のシステムにおける他の実施形態によれば、
移動端末の測位手段は、
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となった際に、
(トリガ2)所定のデータ通信が実行された際に、
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となった際に、又は、
(トリガ4)所定のユーザ操作が実行された際に、
位置情報を測位することも好ましい。
【0039】
本発明によれば、移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積部を有し、対象エリアを特定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、
クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0040】
本発明によれば、移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積部を有し、対象エリアを特定する装置における対象エリア表示方法であって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類する第1のステップと、
クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出する第2のステップと、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0041】
本発明のデータベースサーバ、システム、プログラム及び方法によれば、測位誤差を含む少数回の各移動端末の位置情報しか蓄積されていない場合であっても、多数の移動端末の位置情報に基づいて、対象エリアを特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】所定閾値以上の無線劣化が発生した際に移動端末から通知された位置情報を表す地図である。
【図2】所定閾値以上の無線劣化が現実に発生している場所を表す地図である。
【図3】所定閾値以上の無線劣化が理想的に検出されるべき場所を表す地図である。
【図4】本発明におけるシステム構成図である。
【図5】本発明におけるシーケンス図である。
【図6】データベースサーバに蓄積された位置情報のテーブルである。
【図7】群平均法を用いた場合のデンドログラムである。
【図8】2次元正規分布と、母集団の代表(平均)値の95%信頼楕円エリアとを表す説明図である。
【図9】図7における[クラスタ−ア]として分類された位置情報のみ表す地図である。
【図10】図7における[クラスタ−イ]として分類された位置情報のみ表す地図である。
【図11】図7における[クラスタ−ウ]として分類された位置情報のみ表す地図である。
【図12】図9における[クラスタ−ア]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
【図13】図9における[クラスタ−イ]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
【図14】図9における[クラスタ−ウ]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
【図15】図2の無線劣化場所と、図12〜14の信頼楕円とを重畳した地図である。
【図16】本発明における移動端末及びデータベースサーバの機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0044】
図4は、本発明におけるシステム構成図である。
【0045】
図4は、前述した図1を多元的に表したものである。図4によれば、複数の基地局3が配置されており、各基地局3は、そのサービスエリア内に位置する移動端末1と通信する。全ての基地局3は、通信事業者の移動通信網に接続される。移動通信網は、例えば広域をカバーする携帯電話網であって、移動端末1は、例えば携帯電話機であってもよい。
【0046】
複数の基地局3のサービスエリアは、不感地帯が生じないように、重畳的に配置される。しかし、移動端末と基地局との間に、ビルのような建造物が介在することによって電波が遮断され、不感地帯が生じてしまう。通信事業者としては、このような不感地帯をできる限り検出したいと考える。尚、以下では、本発明によって特定すべき「対象エリア」を、通信事業者における「無線劣化」エリアとして説明するが、勿論、これに限られるものではない。
【0047】
図4によれば、2次元の地図(エリアマップ)上に、無線通信品質が表されている。無線通信品質を表すz軸は、高い値になるほど、無線通信品質が良い状態を表す。図4によれば、無線通信品質は、基地局3を中心に、ピラミッド状の階層的に表されている。これは、移動端末1の位置が基地局3に近いほど、無線通信品質が良いことを表している。
【0048】
また、図4によれば、移動通信網には、移動端末の位置情報を蓄積したデータベースサーバ(LAS−DB (Location information and Available System information Data Base))2が接続されている。データベースサーバ2は、移動端末1から、位置情報及び無線通信品質を受信することによって、対象エリアを特定したエリアマップを作成することができる。
【0049】
携帯電話機のような移動端末1は、測位部を搭載しており、現在位置を測位することができる。測位部としては、例えば以下のようなものがある。
「GPS測位方式」:GPS衛星からの測位電波によって測位する
「複数基地局測位方式」 :複数の周辺基地局との通信電波によって測位する
「ハイブリッド測位方式」:GPS測位方式+複数基地局測位方式
【0050】
また、移動端末1は、基地局3に対する無線通信インタフェース部によって、無線通信品質を測定する。無線通信品質としては、例えば、受信品質、再送回数又はデータ誤り率、スループット、遅延時間がある。受信品質としては、例えばRSS(Received Signal Strength:受信信号強度)、C/I(搬送波対干渉波比)、Ec/Io(PNチップ当たりの平均エネルギー対全受信パワースペクトル密度)がある。
【0051】
「良い状態の無線通信品質」としては、受信信号強度が大きく、信号対干渉雑音比が大きく、再送回数が少なく、データ誤り率が低く、スループットが高く、又は、遅延時間が小さい場合である。
「悪い状態の無線通信品質」としては、受信信号強度が小さく、信号対干渉雑音比が小さく、再送回数が多く、データ誤り率が高く、スループットが低く、又は、遅延時間が大きい場合である。
【0052】
図4によれば、移動端末1は、無線通信品質が所定閾値以下に劣化した際に、そのときの位置を測位し、記憶する。そして、移動端末1は、無線通信品質が良好な状態に戻った際、無線通信品質が劣化した時の位置情報を、その無線通信品質と共に、データベースサーバ2へ送信する。
【0053】
通信事業者としては、図4のようなエリアマップを作成することによって、移動端末の位置に対応する無線通信品質が把握でき、設備設計やサービス品質向上に役立てることができる。
【0054】
図5は、本発明におけるシーケンス図である。
【0055】
図5によれば、移動端末1は、基地局3のサービスエリアから不感地帯へ移動したとする。
(S11)移動端末1は、所定条件に達したことをトリガとして、現在の位置情報を取得する。ここで、所定条件とは、抽出しようとしている対象エリアの用途に応じて、例えば以下のようなものがある。
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となったこと
(トリガ2)所定のデータ通信が実行されたこと
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となったこと
(トリガ4)所定のユーザ操作が実行されたこと
【0056】
図2によれば、無線通信品質の劣化箇所を抽出しようとするものであるので、(トリガ1)が適用される。移動端末1は、不感地帯に入ることによって、無線通信品質が所定閾値以下となった際に、測位部を起動し、現在位置を測位する。
【0057】
また、抽出しようとしている対象エリアの他の用途として、携帯ゲーム端末による「すれ違い通信」が多く行われている場所を抽出しようとする場合、(トリガ2)が適用される。「すれ違い通信」とは、携帯型ゲーム機が、ゲームの進行等に影響する他のプレイヤのゲーム機との間で、無線LANを用いて自動且つ瞬時に通信する機能をいう。移動端末1は、すれ違い通信が実行された際に、測位部を起動し、現在位置を測位する。また、所定のアプリケーションが使われている場所を抽出しようとする場合にも、(トリガ2)が適用される。
【0058】
更に、データ通信量の多いエリアを抽出しようとする場合、(トリガ3)が適用される。
【0059】
更に、抽出しようとしている対象エリアの他の用途として、特定の写真が多く撮影されている場所を抽出しようとする場合、(トリガ4)が適用される。移動端末1は、アプリケーションを用いて特定の写真がカメラによって撮影された際に、測位部を起動し、現在位置を測位する。
【0060】
(S12)移動端末1は、取得した位置情報における測位精度を更に取得することも好ましい。測位精度は、例えば以下のように3段階に設定されてもよい。
(精度良)GPS測位方式による測位
(精度中)ハイブリッド測位方式による測位
(精度悪)複数基地局測位方式による測位
【0061】
また、GPS測位方式のみを用いる場合、推定される平均二乗誤差値(RMSE(Root Mean Square Error))に基づいて、測位精度の「良」「悪」を判定するものであってもよい。平均二乗誤差値は、真値Xとの差を評価したものであって、例えば以下の式で表される。
RMSE=√(Σ[i=1,n](X−xi)^2/n)
【0062】
(S13)その後、移動端末1は、更に移動し、基地局3との通信が回復した際に、[位置情報、無線通信品質情報、補足基地局情報、基地局との無線品質情報、測位精度]を、データベースサーバ2へ送信する。
【0063】
(S21)データベースサーバ2は、移動端末1から、例えば以下の情報を受信する。
位置情報(緯度・経度)
無線通信品質情報(例えば受信強度)
補足基地局情報(接続基地局及び隣接基地局の基地局識別子)
測位精度
これら位置情報は、位置情報蓄積部に蓄積される。
【0064】
ここで、図5の実施形態によれば、移動端末の位置情報等は、移動端末によって測位及び検出され、データベースサーバ2へ送信されている。しかしながら、本発明のデータベースサーバは、移動端末1から位置情報等を受信することに限られない。即ち、本発明のデータベースサーバは、測位誤差を含むであろう多数の移動端末の位置情報を蓄積していればよい。移動端末の位置情報等は、通信事業者網によって取得して蓄積しているものであってもよい。
【0065】
S11によれば、移動端末1内の測位部が「GPS測位方式」、「複数基地局測位方式」、「ハイブリッド測位方式」等の方式を用いることによって、位置情報を取得するべく説明した。一方で、無線基地局が、携帯電話機からの電波の到着時間及び到着方向の情報を測定し、これら情報を用いて通信事業者網内のサービスノードが移動端末1の位置を測位するものもある(例えば特許文献15参照)。本発明が利用する移動端末の位置情報は、移動端末1によって測位されたものに限られず、通信事業者網内で測位された位置情報を用いることもできる。この場合、移動端末1が測位部を有することも不要である。また、この場合、測位発動のトリガは、通信事業者網側、例えばサービスノードから発出することも好ましい。これには、サービスノードが、基地局と移動端末間の通信品質を監視し、所定閾値以下に品質が劣化することをトリガとすることを含む。
【0066】
尚、移動端末の位置情報等は、通信事業者網によって取得して蓄積しているものである場合、対象エリアの用途に基づくトリガは、前述の(トリガ4)を除き、例えば以下の3つとなる。
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となったこと
(トリガ2)所定のデータ通信が実行されたこと
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となったこと
【0067】
図6は、データベースサーバに蓄積された位置情報のテーブルである。
【0068】
図6によれば、18個の位置情報のログが蓄積されており、各ログは、異なる端末(端末ID)によって測位されていることが理解できる。例えばログ番号1について、端末ID1によって緯度・経度が取得されており、その端末(ID=1)は、受信強度20で接続基地局Aに接続すると共に、受信強度17の隣接基地局Bと、受信強度7の隣接基地局Cとが見えている。
【0069】
図6のように蓄積される位置情報のログは、所定範囲毎に区分されたものである。ここで、「所定範囲」とは、数百メートルから数キロ程度の四方の範囲を示す。例えば図1〜3によれば、地図全体が1つの所定範囲を表しており、その中に18個の位置情報が蓄積されていることを表す。
【0070】
(S22)データベースサーバ2は、所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子を要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類する。ここで、類似度を算出する要素しては、接続先/隣接基地局の基地局識別子と共に、その基地局毎の無線品質値を更に含むことも好ましい。図6の所定範囲毎に含まれる位置情報(18個)は、接続基地局/隣接基地局と、その無線品質情報(例えば受信強度)との類似度によって分類される。
【0071】
図7は、群平均法を用いた場合のデンドログラムである。
【0072】
デンドログラムとは、クラスタ分析について、各個体(ログ)がクラスタにまとめられていくさまを樹形図の形で表したものをいう。図7によれば、縦に並ぶ番号は、ログ番号(図6参照)を意味し、横軸は、接続基地局/隣接基地局とその無線品質情報(例えば受信強度)との類似度を意味する(左側に寄るほど類似度が高く、右側に寄るほど類似度が低い)。
【0073】
図7によれば、所定の距離を意味する破線で階層が切られている。これによって、3つのクラスタに区分される。この「クラスタ」の意味は、測位結果(位置)に依存することなく、当該位置情報が大凡どの場所で実際に測位されたか、を表すことに特徴がある。
【0074】
例えば、図2によれば、移動端末識別子7の位置情報7は、[無線劣化場所ア]で測位されたものである。しかしながら、移動端末識別子7の位置情報7は、測位誤差の影響によって、[無線劣化場所ア]よりも離れた場所を表している。[無線劣化場所ア]から見て、移動端末識別子7の位置情報7は、[無線劣化場所イ]で測位された移動端末識別子15の位置情報15よりも遠くに位置している。
【0075】
しかしながら、位置情報7は、[無線劣化場所ア]で測位されたものである。そのために、接続先基地局及び隣接基地局の識別子と、それらとの無線品質値(例えば受信強度)は、[無線劣化場所ア]に基づくものである。そこで、それら識別子と無線品質値とを用いて、類似度を算出・比較するクラスタ分析を実行する。これによって、位置情報7は、[無線劣化場所ア]で測位された他の位置情報(例えば位置情報3)との類似度が高くなる。即ち、図7に表されているように、[無線劣化場所ア]で測位された位置情報として分類することができる。
【0076】
(S23)次に、データベースサーバ2は、クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値(好ましくは複数の信頼水準値)に基づく信頼楕円エリアを抽出する。上述したように、通信事業者は、複数の基地局3を、不感地帯が生じないように、そのサービスエリアが重畳するように配置する。しかしながら、移動端末と基地局との間に、ビルのような建造物が介在することによって電波が遮断され、一部で不感地帯が生じ得る。つまり、クラスタリングされた位置情報は、当該一部の不感地帯(エリア)で取得されたものと考えるのが好ましい。そのため、母代表(平均)位置が当該エリアと仮定し、上述のように、母代表(平均)位置が所定の確率で存在する範囲を楕円として算出する。データベースサーバ2は、(クラスタ毎だけでなく、それに加え)更に、位置情報における測位精度毎(つまり同一クラスタ内の位置情報かつ「良」「中」「悪」の精度毎にまとめて)に信頼楕円エリアを算出することも好ましい。
【0077】
ここで、信頼楕円エリアの算出方法について説明する。
[信頼楕円エリアの算出方法]
移動端末によって測位された位置情報は、2次元によって表される。位置情報には上述のように測位誤差が含まれているため、測位データは、2次元正規分布(多変量正規分布(multivariate normal distribution))に従うという観測に基づく。ここで、信頼水準値βで、母集団の代表(平均)値の信頼楕円エリアを推定する。尚、「100・(1-β))%の信頼楕円エリア」と称する。信頼度「100・(1-β)%」は、母集団の代表(平均)値が楕円内部に含まれる確率である。この際、所定の範囲内に収まる複数の位置情報の分散値と、位置情報における測位精度とから、用いるべきβ値を決定することも好ましい。例えば、測位精度が「良」(良の比率が多かったり、良のみでまとめた場合)であるのに、分散値が大きい場合は、比較的小さいβ値を用いる。一方で、測位精度が「高」で且つ分散値が小さい場合は、比較的大きいβ値を用いる。測位精度が「悪」の場合(悪の比率が多かったり、悪のみでまとめた場合)も、分散値が大きいものほど、比較的小さなβ値を用いる。
【0078】
図8は、2次元正規分布と、母集団の代表(平均)値の95%信頼楕円エリアとを表す説明図である。
【0079】
当該信頼楕円は、以下の式により算出される。
(1/n)*F(2,φ,β)=(V(ly)*X^2-2*C(lx, ly)*X*Y+V(lx)*Y^2)/
2*(V(lx)*V(ly)-C(lx, ly)^2)
lx :移動端末によって測位された位置情報の経度方向代表(平均)値
ly :移動端末によって測位された位置情報の緯度方向の代表()値
X=x−lx
Y=y−ly
V(lx):lx(経度方向の標本平均)の分散
V(ly):ly(緯度方向の標本平均)の分散
C(lx,ly):lx、lyの共分散
F(2,φ,β):第一自由度2、第二自由度φ(残差の自由度)に従う
F分布における100β%点の値
【0080】
(S24)そして、データベースサーバ2は、信頼楕円エリアを重畳した地図画像を出力する。
【0081】
位置情報蓄積部21が、位置情報に更に測位精度を対応付けて蓄積している場合、地図画像に重畳する信頼楕円エリアを、測位精度に基づいて、視覚的に識別できるように重畳した地図画像を出力することができる。信頼楕円エリアにおける測位精度としては、例えば、その信頼楕円エリアに含まれる複数の位置情報における測位精度の平均値であってもよい。例えば、以下のように、信頼楕円の表示形式を、測位精度によって変更することも好ましい。
[破線]/[実線]:[位置情報数:少]/[位置情報数:多]
[細線]/[太線]:[測位精度:低] /[測位精度:高]
[破線・細線] 位置情報数:少 測位精度:低
[破線・太線] 位置情報数:少 測位精度:高
[実線・細線] 位置情報数:多 測位精度:低
[実線・太線] 位置情報数:多 測位精度:高
これにより、監視者は、地図を一見するだけで、測位精度も含めて理解することができる。
【0082】
図9は、図7における[クラスタ−ア]として分類された位置情報のみ表す地図である。
図10は、図7における[クラスタ−イ]として分類された位置情報のみ表す地図である。
図11は、図7における[クラスタ−ウ]として分類された位置情報のみ表す地図である。
【0083】
図12は、図9における[クラスタ−ア]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
図13は、図9における[クラスタ−イ]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
図14は、図9における[クラスタ−ウ]の位置情報から算出された信頼楕円を重畳した地図である。
【0084】
図15は、図2の無線劣化場所と、図12〜14の信頼楕円とを重畳した地図である。図15によれば、現実の無線劣化場所が、信頼楕円によって絞り込まれていることが理解できる。
【0085】
図16は、本発明における移動端末及びデータベースサーバの機能構成図である。
【0086】
図16によれば、移動端末1は、基地局3とエアを介して通信する無線通信インタフェース部101と、GPS衛星4や基地局から受信した測位電波によって現在位置を算出する測位部102とを有する。また、移動端末1は、測位起動部11と、測位精度取得部12と、位置情報送信部13とを更に有する。これら機能構成部は、移動端末に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0087】
測位起動部11は、所定条件に達したことをトリガとして、測位部102を起動し、現在の位置情報を取得させる(図5のS11と同様の処理を実行する)。例えば、無線通信品質が所定閾値以下に劣化したことをトリガとするものであってもよい。
【0088】
測位精度取得部12は、取得した位置情報における測位精度を更に取得する(図5のS12と同様の処理を実行する)。例えば、測位方式に基づいて又はGPSの平均二乗誤差値に基づいて、測位精度の「良」「悪」を判定する。その測位精度は、位置情報送信部13へ出力される。
【0089】
位置情報送信部13は、端末毎に、位置情報、補足基地局識別子(接続/隣接基地局の識別子)及び測位精度を、データベースサーバ2へ送信する(図5のS13と同様の処理を実行する)。
【0090】
データベースサーバ2は、ネットワーク(図16によれば移動通信網)に接続される通信インタフェース部201と、監視者へ地図を表示するディスプレイ部202とを有する。
【0091】
また、データベースサーバ2は、位置情報蓄積部21と、クラスタリング部22と、エリア抽出部23と、地図出力部24とを有する。これら機能構成部は、サーバに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。
【0092】
位置情報蓄積部21は、移動端末1の[位置情報、無線通信品質情報、補足基地局情報、基地局との無線品質情報、測位精度]を蓄積する。(図5のS21と同様の処理を実行する)。
【0093】
クラスタリング部22は、所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子を要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類する(図5のS22と同様の処理を実行する)。ここで、類似度を算出する要素しては、接続先/隣接基地局の基地局識別子と共に、該基地局毎の無線品質値を更に含むことも好ましい。
【0094】
エリア抽出部23は、クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出する(図5のS23と同様の処理を実行する)。この際、予め設定された、測位精度と位置情報の分散値に応じたβ値を用いる。
【0095】
地図出力部24は、信頼楕円エリアを重畳した地図画像を出力する(図5のS24と同様の処理を実行する)。ここで、データベースサーバ2は、地図画像に重畳する信頼楕円エリアを、測位精度に基づいて、視覚的に識別できるように地図上に明示することも好ましい。例えば、クラスタに含まれる位置情報の測位精度の平均値によって、信頼楕円の表示形式を変更することができる。これによって、閲覧者に、視覚的に識別できるように重畳した地図画像を出力することができる。
【0096】
以上、詳細に説明したように、本発明のデータベースサーバ、システム、プログラム及び方法によれば、測位誤差を含む少数回の各移動端末の位置情報しか蓄積できていない場合であっても、多数の移動端末の位置情報を利用することによって、現実の対象エリアをできる限り正確に特定することができる。
【0097】
本発明によれば、特定のエリアで発生するイベントに対し、当該対象エリアを特定することができる。これは、例えば無線通信品質の劣化エリアの調査に限られず、マーケティングにも役立てることができる。例えば、携帯ゲーム端末による「すれ違い通信」が多く行われている場所を抽出することもできる。この場合、当該ゲームタイトル毎に処理されることが好ましい。また、同様に所定のアプリの利用場所の抽出などにも利用することができる。更に、所定時間内に所定のデータ量を超えるデータ通信がなされるエリアの抽出などにも利用することができる。更に、抽出しようとしている対象エリアの他の用途として、特定の写真が多く撮影されている場所を抽出することもできる。この場合、画像認識処理によって「東京タワー」「レインボーブリッジ」のように解析された特定の写真毎に処理されることが好ましい。
【0098】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のデータベースサーバ、システム、プログラム及び方法は、特定のエリアで発生するイベントに対し、当該対象エリアを特定することできるために、例えば通信エリア対策やマーケティングに利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 移動端末
101 無線通信インタフェース部
102 測位部
11 測位起動部
12 測位精度取得部
13 位置情報送信部
2 データベースサーバ
201 通信インタフェース部
202 ディスプレイ部
21 位置情報蓄積部
22 クラスタリング部
23 エリア抽出部
24 地図出力部
3 基地局
4 GPS衛星
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積手段を有し、対象エリアを特定するデータベースサーバであって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、
前記クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段と
を有することを特徴とするデータベースサーバ。
【請求項2】
前記エリア抽出手段について、前記信頼楕円エリアは、2次元正規分布に基づく母集団の代表値の範囲を推定するものであって、前記信頼水準値は、楕円内部に母集団の代表値が含まれる確率であることを特徴とする請求項1に記載のデータベースサーバ。
【請求項3】
前記位置情報蓄積手段は、前記位置情報に更に測位精度を対応付けて蓄積しており、
前記地図画像に重畳する前記信頼楕円エリアを、前記測位精度に基づいて且つ前記端末の数に基づいて、視覚的に識別できるように重畳した地図画像を出力する地図出力手段を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のデータベースサーバ。
【請求項4】
前記位置情報蓄積手段は、所定条件に達した移動端末の位置情報を蓄積したものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のデータベースサーバ。
【請求項5】
前記位置情報蓄積手段について、前記所定条件として、
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となった際、
(トリガ2)所定のデータ通信が実行された際、又は、
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となった際
における移動端末に係る位置情報を蓄積したものであることを特徴とする請求項4に記載データベースサーバ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の前記データベースサーバと、該データベースサーバへ位置情報を送信する移動端末とを有するシステムであって、
前記移動端末は、
所定条件に達した際に、現在の位置情報を取得する測位手段と、
前記位置情報と、該位置情報が測位された際における接続/隣接基地局の基地局識別子とを、前記データベースサーバへ送信する位置情報送信手段と
を有することを特徴とする対象エリアを特定するシステム。
【請求項7】
前記移動端末の前記測位手段は、
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となった際に、
(トリガ2)所定のデータ通信が実行された際に、
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となった際に、又は、
(トリガ4)所定のユーザ操作が実行された際に、
位置情報を測位することを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積部を有し、対象エリアを特定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、
前記クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするデータベースサーバ用のプログラム。
【請求項9】
移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積部を有し、対象エリアを特定する装置における対象エリア表示方法であって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類する第1のステップと、
前記クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出する第2のステップと、
を有することを特徴とする対象エリア表示方法。
【請求項1】
移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積手段を有し、対象エリアを特定するデータベースサーバであって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、
前記クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段と
を有することを特徴とするデータベースサーバ。
【請求項2】
前記エリア抽出手段について、前記信頼楕円エリアは、2次元正規分布に基づく母集団の代表値の範囲を推定するものであって、前記信頼水準値は、楕円内部に母集団の代表値が含まれる確率であることを特徴とする請求項1に記載のデータベースサーバ。
【請求項3】
前記位置情報蓄積手段は、前記位置情報に更に測位精度を対応付けて蓄積しており、
前記地図画像に重畳する前記信頼楕円エリアを、前記測位精度に基づいて且つ前記端末の数に基づいて、視覚的に識別できるように重畳した地図画像を出力する地図出力手段を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載のデータベースサーバ。
【請求項4】
前記位置情報蓄積手段は、所定条件に達した移動端末の位置情報を蓄積したものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のデータベースサーバ。
【請求項5】
前記位置情報蓄積手段について、前記所定条件として、
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となった際、
(トリガ2)所定のデータ通信が実行された際、又は、
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となった際
における移動端末に係る位置情報を蓄積したものであることを特徴とする請求項4に記載データベースサーバ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の前記データベースサーバと、該データベースサーバへ位置情報を送信する移動端末とを有するシステムであって、
前記移動端末は、
所定条件に達した際に、現在の位置情報を取得する測位手段と、
前記位置情報と、該位置情報が測位された際における接続/隣接基地局の基地局識別子とを、前記データベースサーバへ送信する位置情報送信手段と
を有することを特徴とする対象エリアを特定するシステム。
【請求項7】
前記移動端末の前記測位手段は、
(トリガ1)無線通信品質が所定閾値以下となった際に、
(トリガ2)所定のデータ通信が実行された際に、
(トリガ3)所定期間のデータ通信量が所定閾値以上となった際に、又は、
(トリガ4)所定のユーザ操作が実行された際に、
位置情報を測位することを特徴とする請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積部を有し、対象エリアを特定するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類するクラスタリング手段と、
前記クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出するエリア抽出手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするデータベースサーバ用のプログラム。
【請求項9】
移動端末の位置情報を蓄積した位置情報蓄積部を有し、対象エリアを特定する装置における対象エリア表示方法であって、
所定位置範囲内の複数の位置情報について、接続先/隣接基地局の基地局識別子と、該基地局毎の無線品質値とを要素とした類似度に基づいて、1つ以上のクラスタに分類する第1のステップと、
前記クラスタ毎に、当該クラスタに含まれる複数の位置情報から、所定の信頼水準値に基づく信頼楕円エリアを抽出する第2のステップと、
を有することを特徴とする対象エリア表示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−34103(P2013−34103A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169269(P2011−169269)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】
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