説明

測定したい大面積表面上の薄膜層の厚さを測定する方法およびデバイス

【課題】大面積の測定したい表面の薄膜層の厚さを測定する方法およびデバイスを提供すること。
【解決手段】本発明は、大面積の測定される表面(12)の薄膜層の厚さを測定する方法およびデバイスに関し、少なくとも1つのセンサ要素(29)、およびセンサ要素(29)に関連付けられた少なくとも1つの接触球状キャップ(31)を備えた少なくとも1つの測定プローブ(28)は、測定値を得るために測定される表面(12)に宛てがわれ、大面積の測定される表面(12)は、個別の部分領域(14)に分割され、測定点(16)の行列は検査される各部分領域(14)に対して決定され、少なくとも1つの測定プローブ(28)を担持するデバイス(21)を使用して、部分領域(14)の行列の少なくとも1つの行(17)に沿って、等距離測定点(16)で測定値が探知され、測定値は、前部分領域(14)内の前記行列の全ての行(17)に対して連続的に探知され、この部分領域(14)に対して評価される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の船体などの、測定したい大面積表面上の薄膜層の厚さを測定する方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも1つのセンサ要素、およびセンサ要素に割り当てられた少なくとも1つの接触球状キャップを備えた測定プローブを使用して、薄膜層の厚さの測定をすることは、例えばドイツ特許第10 2005 054 593A1号で知られている。このような測定プローブの結果、基材およびコーティングによって、磁気誘導法、または渦電流法により測定を行なうことができる。例えば、このような測定プローブが、層の厚さを測定するように、測定したい表面に手動で宛てがわれる。このような方法は、例えば船の船体または航空機の翼のような大面積のコーティングまたは表面についての測定および検査には、適合していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許第10 2005 054 593A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明によって対処される問題は、薄膜層の厚さを測定する方法およびデバイスを提示することであり、それによって測定および検査される表面は、単純な方法で総合的に測定される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、特許請求の範囲第1項の特徴による方法、および特許請求の範囲第6項の特徴によるデバイスによって達成される。別の有利な実施形態が、特許請求の範囲の従属項それぞれに開示されている。
【0006】
本発明による方法では、大面積の測定される表面は個別の部分領域に分割され、測定点の行列は各部分領域で決定され、測定値は測定プローブを担持する少なくとも1つのデバイスを使用して、行列(マトリックス)の少なくとも1つの行に沿って等距離測定点で得られ、測定値は部分的領域内で行列の全ての行に対して順次に得られ、この部分的領域に対して評価される。複数の行に沿って等距離測定値を得ることによって、単純な方法で、個別の部分領域に対する測定点の格子または行列を形成することが可能であり、それによってこの部分的領域の層の厚さが評価される。大面積の測定される表面を総合的に評価するために、測定される表面全体の面積に対応する個別に選択した部分的領域または他の全ての部分的領域を調べることができる。部分的領域内の層の厚さの変化を、行列内に配置された測定点により評価することもできる。さらに、第1の部分的領域評価と同時に、所定の最小層厚さと比較して測定層厚さに関する結果を導き出すことが可能である。
【0007】
方法の好ましい実施形態によると、測定を行なうためのデバイスは、少なくとも1つの連続表面を備えた少なくとも1つの回転体を備え、少なくとも1つの測定プローブを受けるものであり、その測定を行なうためのデバイスは、少なくとも1つの測定プローブがサイクロイド経路の最低点で測定される表面に対して接触されるように、測定される表面上に位置されて、行に沿って転動される。したがって、連続的測定を行なうことができ、したがって、測定時間の短縮化が可能になる。さらに、回転体への測定プローブの配設の結果、同じ接触状態、したがって薄膜層の厚さを測定する測定条件を各測定点で保証することができる。部分的領域の全ての測定点において測定値が得られると、測定点の行列における測定のために、デバイスは次の部分的領域に動的に運ばれる。このような測定方法は、例えば、それ自体を処理するのが非常に厳しい物体またはデバイスの大きな測定表面で行なわれる。
【0008】
この方法の好ましい一実施形態では、回転体より大きな直径を有する停止デバイス、特に停止ワッシャまたは連結リングは、回転体に取り付けられており、停止デバイスを備えたデバイスは、測定される表面の縁部に沿って案内される。したがって、測定を行なうために、回転プローブを直近の縁部領域内で測定される表面の縁部上に配置し、これに沿って案内することが可能である。この配置の結果、縁部と縁部に沿った順次測定点の間に規定の間隔を作り出すことが可能である。特に腐食の危険性がある船舶および二重壁船舶の場合特に、縁部から所定の距離で薄膜層の厚さを測定することが極めて重要である。規定の間隔は、例えば、停止ワッシャまたは連結リングなどによって、または、特に交換可能であるスペーサ・リングによって、得ることができる。別の方法では、停止ワッシャまたは停止リングが上に配置される回転体を備えたデバイスに沿った案内の代わりに、この回転体は、不連続または連続経路速度で移動される帯状材料に対して定位置に固定されるように位置決めされている。この方法の代替実施形態では、薄膜層の厚さを測定し、少なくとも1つの測定プローブを備えたデバイスは、所定の時間間隔で回転する測定される表面上、または帯状の測定される表面上に配置される。この方法により行なわれる測定の結果、測定値はまた等距離測定点で得られる。等距離測定点が、走行ホイールの周面などの幾何変数によって決定される上記実施形態に対して、本実施形態では、測定点間の距離は現時点で時間サイクルによって決定される。
【0009】
この方法の別の好ましい構成では、平均値x(上バー)および標準偏差sが、各部分的領域の測定値から決定され、これにより、コーティングの品質を評価するための評価チャートを備えた比較値として比較される、この変動係数V=100×s/x(上バー) %が確定される。コーティングの品質を評価するために、変動係数が安全要件にしたがって決定され、したがって最小層厚さが存在する。変動係数のパーセント範囲は、評価チャートで異なるグループ、例えば「優れている」、「良い」、「適当である」、および「しばしば不適当である」などに分割され、それぞれの場合で、変動変数の対応する値が割り当てられる。各部分的領域の変動変数の確定により、得られた数値は所定の数値と比較され、コーティングに関して、特にコーティング品質が部分的に要件に対応するだけである、全くこれらに対応しない、または例えばこれらに完全に対応するという旨の結果が迅速に導き出される。
【0010】
本発明によって対処される問題はさらに、走行面を備えた回転体が少なくとも1つの測定プローブを備えているデバイスによって解決され、測定プローブの接触球状キャップは走行面から少なくとも僅かに径方向外側に突出し、測定プローブが測定される表面上でサイクロイド経路に沿って案内される方法で、回転体上で同時回転するように配置される。このデバイスの結果、回転体の直径の関数として規則的な間隔で測定される表面に対して接触される回転プローブを提供することができる。測定プローブは、サイクロイド経路に沿って移動する。測定される表面上に沿って案内される回転体の走行面は単に、測定プローブが等距離測定点で適用され、測定値が得られることを保証する。回転体自体は、測定に必要なものではない。回転体は代わりに、行列を形成するために評価手段でその後に組み合わされる等距離測定点を単に保証するように働く。
【0011】
デバイスの有利な構成では、共通の軸上に回転可能に取り付けられ、案内される少なくとも2つ以上の回転体が提供され、1つの回転体のみが少なくとも1つの測定プローブを備えている。共通の軸に沿った2つ以上の回転体のこのような配置は、したがって測定される表面に対する傾斜に対する安全性が与えられ、測定点で測定される表面に垂直に測定プローブを位置決めすることが可能であるという利点を提供する。
【0012】
デバイスの別の好ましい実施形態では、それぞれ少なくとも1つの測定プローブを受ける2つ以上の回転体が剛性軸によって連結され、測定プローブは同じ角度位置に配向される。このデバイスにより、例えば互いに隣接して配置された2つの回転体、およびそれぞれの場合において1つの測定プローブで、隣接行に配置された2つの測定点の測定値を同時に得ることができる利点がもたらされる。したがって、部分的領域内で測定点に沿って測定値を得る場合に、さらなる時間の節約を行なうことができる。いわば多重測定を行なうために、それぞれ少なくとも1つの測定プローブを備えた3つ以上の回転体を設けることもできる。この配置は、個々の測定点に対する時間間隔を、所定のやり方で空けて置けるという利点を提供する。さらに、デバイスには、行に沿って一度だけ移動することによって、部分的領域の各測定点で測定値が得られるように、部分的領域の行数に従った数の回転体を備えることが好ましい。各測定点が全て同じ列に来るように、回転体は相互にしっかり連結され、測定プローブの角度位置も、相互に隣接て配置の回転体内において等しく配設される。
【0013】
デバイスの別の好ましい構成では、測定プローブは、回転体内にその走行面に対して嵌入するように、弾力性および可撓性があるように取り付けられている。したがって、測定される表面に対する測定プローブの等しい押圧力が、各測定点で保証され、それによって各測定点で一貫した測定条件を与える。センサ要素は、2つの平行で相互に間隔を置いて配置されたばね要素、特に板ばねで形成されたばねアセンブリによって保持されることが好ましい。したがって、接触球状キャップが測定される表面に対して接触されると、変位ないし嵌入動作がセンサ要素のシャフトの長さ方向に案内される。したがって、接触点で測定される表面に垂直に測定プローブを配置することができる。2つの平行なばね要素、特に板ばねの格納の代替形態として、センサ要素のダイアフラム状ばねアセンブリを、接触球状キャップ上に設けることもできる。このような実施形態は、例えば、ドイツ特許第10 2005 054 593A1号で知られており、参照としてその範囲全体を本明細書に援用する。
【0014】
デバイスの別の好ましい構成では、得られる測定値のための少なくとも1つの格納手段が回転体内に設けられている。したがって、評価ユニットへのライン接続の必要なく、測定値を局所的に得ることができる。さらに、測定値を読み出す格納手段に接続されたインターフェイス、および/または評価手段への無線データ伝送のための送受信手段が、回転体に設けられていることが好ましい。例えば、このインターフェイスをシリアル・インターフェイスまたはUSBインターフェイスとして構成することができる。さらに、送受信手段は、無線、ブルートゥースなどを介したデータ伝送を可能にすることができる。
【0015】
デバイスの好ましい構成では、停止デバイス、特に停止ワッシャまたは停止リングを1つの回転体に配置することができ、停止デバイスの周は回転体の直径より大きい。したがって、縁部からの所定の距離で薄膜層の厚さの規定の測定を行なうように、回転体を測定される物体の縁部に沿って所定の距離で選択的に案内することが可能である。
【0016】
さらに、スペーサ・リングは停止リング上、または停止デバイス上に交換可能に配置されている。このスペーサ・リングは、特定の応用例によって、外縁部から始まる層厚さの測定のために所定の距離を設定することを可能にする。したがって、例えば停止リングまたは停止ワッシャを回転体上にしっかり配置した状態で、距離をさらに変更することができる。スペーサ・リングおよび停止ワッシャまたは停止リングがユニットを形成する場合、測定とコーティングの縁部の間の距離をその後、調節することができ、回転体上に配置することができる停止リングまたは停止ワッシャの厚さの関数として規定することができる。
【0017】
デバイスの有利な発展形態では、少なくとも1つの測定プローブを備えた少なくとも1つの回転体は、少なくとも1つのガイド・ローラを備えた測定キャリッジ上に設けられている。特に1つまたは複数の回転体および/またはガイド・ローラの結果、3点支持が用いられる場合、このような測定キャリッジをその後、傾斜を避けるために使用することができる。さらに、回転体を、ガイド・ローラの助けをかりて規定の方法で適用および案内することができる。アンダーキャリッジは、1つまたは複数の回転体とガイド・ローラの間に設けられていることが好ましく、アンダーキャリッジの上には、例えば保持磁石を配置することができる。このような配置の結果、検査される部分領域が急勾配の場合に、測定される表面を測定することが可能である。というのは、測定キャリッジは保持磁石によって測定される表面に対して保持されているからである。
【0018】
デバイスの別の好ましい構成では、洗浄デバイスは回転体の走行面に付随しており、その面は少なくとも1つの測定プローブから突出し、前記洗浄デバイスは少なくとも測定プローブの接触球状キャップを洗浄する。接触球状キャップは、そして、多数の部分的領域を順次に検査することができ、測定値を得るための一貫した条件を与えるように、回転体の各回転で洗浄される。例えば、洗浄デバイスは、接触球状キャップに貼り付く汚れを除去するように、剛毛または回転剛毛によって形成されている。
【0019】
本発明と、その別の有利な実施形態および発展形態を、図面で例示した実施例を参照して以下により詳細に記載および説明する。説明および図面から推測される特徴は、本発明により、個別にまたは任意の組合せのいずれかで適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】そのコーティングが、測定される表面として部分的領域に分割される、被覆された船体を備えた船舶の略側面図である。
【図2】測定点の行列を備えた部分的領域を示す図である。
【図3a】部分的領域の測定点での測定値を得るためのデバイスの略側面図である。
【図3b】部分的領域の測定点での測定値を得るためのデバイスの略側面図である。
【図3c】部分的領域の測定点での測定値を得るためのデバイスの略側面図である。
【図4】図3aと比較した測定デバイスの代替実施形態の略側面図である。
【図5】図3aからcによるデバイスの代替実施形態の略図である。
【図6】測定点の行列を備えた部分的領域を示す図である。
【図7a】図3aと比較した測定デバイスの別の代替実施形態の略図である。
【図7b】図3aと比較した測定デバイスの別の代替実施形態の略図である。
【図8】不足量が15%、20%および25%の変動係数に対する関係x(上バー)/Tminの関数として与えられているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、船舶11の略図を示している。船舶の船体上のコーティングは、例えば、大面積の測定される表面12を形成する。増大した安全性要件により、また腐食を避けるために、特に船舶への損傷をそのようにして防ぐことができるので、船舶の船体上のコーティングの品質は非常に重要である。したがって、このようなコーティングは、コーティングの層厚さの最小値を有していなければならない。層厚さの平均値が最小値よりも十分大きい場合にこのような最小値が観察されることを保証することしかできない。層厚さの平均値と最小値の間の必要な間隔は、コーティング過程に内在する分散に左右される。変動係数Vは、分散の尺度として使用すると好都合である。この変動係数は、測定される層厚さ値の平均値x(上バー)に対する標準偏差sの比である。この変動係数から、コーティングの品質に関する、より特殊には、最小層厚さが所要の範囲で完全に存在するか、部分的に存在するか、または全く存在しないかに関する結論を導き出すことが可能である。探知された変動係数は、評価過程結果に基づいて編集された評価チャートと比較させることができ、異なる説明に分類される。例えば、説明は「優れている」、「良い」、「適当である」、または「しばしば不適当である」であってもよく、変動係数のパーセント値の最大の上限値がこれらの説明にそれぞれ割り当てられる。したがって、そこから算出した変動係数の得られた個別の測定値に基づいて、評価した過程結果を評価チャートと比較することによって、コーティングの品質に関する迅速な説明を行なうことができる。
【0022】
合理的評価のために、測定される表面12は、大面積コーティングでは、測定される表面12より数倍小さい個別の部分領域40に分割される。測定される表面は、同じ寸法の部分領域40に分割されることが好ましい。
【0023】
このような大面積の測定される表面12の部分領域40は、図2では拡大して示されている。この部分領域40は、行17に沿って等距離Δ・Ihの間隔で設けられている測定点16の行列を含んでいる。行17は次に、測定点16の行列または測定点16のネットワークが部分領域14上に均一に分布されるように、等距離A・Ivで互いに平行に配置されていることが好ましい。したがって、全表面上で層厚さを測定する必要なく、層厚さ、またはこの部分領域14に対する層厚さの変動に関する適切な結論に至るであろう。
【0024】
本発明によると、等距離測定点16での測定値を得るためには、走行面23を有する回転体22を備えた、図3aからcによるデバイス21または測定デバイスが提供される。回転体22は、ユーザがロッド(棒)26を介して測定される表面12上に回転体22の走行面23を置き、これを前記測定される表面に沿って案内することができるように、例えば枢動ピン24周りで回転可能にロッド26に取り付けられている。一方または双方の側に取り付けられた枢動ピンによりロッド26に対して回転するように、回転体22を配置することができる。回転体22は、走行ホイールとして構成されていることが好ましく、走行面23に割り当てられた測定プローブ28を回転体22内に収容する。測定プローブ28は、回転体22で外面的に構成できる。回転体22はディスク形であることが好ましい。走行面23は、プラスチック材料コーティング、ゴム・コーティングなどを含み得る。損傷を防ぐために、走行面23の表面を検査されるコーティングの関数として選択することもできる。
【0025】
回転体22を例えば、走行ローラないし走行ホイールとして形成することができる。回転体22を、少なくとも部分的に中空体として形成することもできる。測定プローブ、および/またはICモジュール、機能モジュールなどの制御構成部品のための個別の収納空間を備えたこのような回転体22を一体的に形成することができ、この空間をカバーで閉じることができる。例えば、中に入れられた収納空間を備えた二重胴式回転体を形成することもできる。
【0026】
測定プローブ28は、センサ要素29およびその長手シャフトに配置された接触球状キャップ31を備えており、測定プローブ28は、接触球状キャップ31が開始位置で走行面23から少なくとも僅かに外側に突出するように、回転体22に位置決めされている。これは、例えば図3bに示されている。センサ要素29を、例えば、コイルを受けるカップ状コアとして形成することができる。ドイツ特許第10 2005 054 593A1号は、センサ要素の構成、および磁気誘導測定プローブまたは渦電流測定プローブとしての実施形態に関して全体の範囲が参照されている。別の方法では、同一または異なる構成の複数のセンサ要素29はまた、同一または異なる測定法に対する測定プローブ28を形成することができる。
【0027】
測定プローブ28は、回転体22に対して弾力性および可撓性があるように取り付けられている、すなわち、センサ要素29は 角度範囲33内で当てられている移動中には嵌入し、再び外側へと案内される。接触球状キャップ31は、測定される表面27上で転動する。センサ要素29のこのような弾力性および可撓性配置は、規定の最大測定力が加えられ、センサ要素29を各測定点16において測定される表面に対してしっかり宛てがうことができるという利点を与える。
【0028】
第1の実施形態によると、測定プローブ28は、センサ要素29を支軸36に平行に移動させることを可能にする、2つの相互に平行なばね要素35、特に板ばね要素によって受けられる。センサ要素29は、測定点16で測定される表面23に垂直に向けられている。
【0029】
別の方法では、ドイツ特許第10 2005 054 593A1号による測定プローブを、ダイアフラム状ばね要素によって受けられる接触球状キャップ31を備えたセンサ要素29に使用することができる。この配置はさらに、水密構造を得られるという利点を提供し、センサ要素29が弾力性および可撓性のある方法で取り付けられており、測定プローブ28のハウジングの縁部に対する水密構造、または、回転体22の(測定プローブ28の配置される)収納空間に対する水密構造が、ダイアフラム状ばね要素を介して可能になることを意味する。したがって、水中で測定を行なうこともできる。図3aおよびbに記載された測定プローブおよびばね支軸は、回転体内で収納空間に配置されている。
【0030】
デバイス21内には、個別の測定点16の測定値の格納(記憶)用の少なくとも1つの記憶媒体が、特にICチップが、設けられているのが良い。送受信手段38はまた、回転体22内に一体化させることができ、その結果、得られる測定値が評価手段(詳細には図示せず)に無線で伝送される。1つまたは複数のデータ・インターフェイスを、回転体22の外面上に設けることもできる。
【0031】
図3aからcによる実施形態では、回転体22は1つの測定プローブ28を収容する。センサ要素19は、測定される表面12に沿って回転体22が転動された場合にサイクロイド経路に沿って案内され、それにより測定プローブ28は、測定値を得るために等距離測定点16において接触する。図3aは、測定プローブ28と測定される表面12の間の接触の直前における、測定プローブ28の回転体22の位置を示している。図3bは、回転体22が測定される表面12に沿ってさらに転動された場合の、測定点16における、測定される表面12に対しての測定プローブ28の接触を示している。測定点16に到達する直前で、接触球状キャップ31は測定される表面12に接触するに至り、測定プローブ28は、測定点16の直後において、測定される表面から完全に外される。ここで、センサ要素29は、測定される表面12に沿っては変位させられない。測定される表面12に対して接触球状キャップ31が当たる角度範囲33は、回転体22の周面、および/または接触球状キャップ31が回転体22の走行面23から突出する範囲によって決まる。
【0032】
2つ以上の測定プローブ28を、回転体22内に配設し、周面上に均一に分布させることができる。例えば、大きな直径を備えた回転体22は、3つの測定プローブ28を備えることができ、小さな直径を備えた回転体22は、1つの測定プローブ28を備えることしかできない。何れの場合でも、部分領域14の同じ等距離測定点での両方の回転体で測定値を得ることができる。
【0033】
測定値を得る場合、測定値は各行に順次に沿って同時に割り当てられ、各行はまた部分領域内でその他に割り当てられる。測定値を評価する場合、割当てはしたがって、例えば部分領域内の層厚さの変化を認識することができるように、行列内のそれぞれの測定点で行なうことができる。
【0034】
図3aからcに示すデバイスは、単純な処理を可能にする回転プローブを示している。このような回転プローブは、手によって案内させることができるだけでなく、機械によって保持される、または処理手段によって表面に沿って移動させることができる。
【0035】
図4は、図3aからcに示されるものの代替実施形態を示している。このデバイス21は、例えば、共通の剛性軸41によって相互連結された2つの回転体22を備えている。これらの回転体22はそれぞれ、少なくとも1つの測定プローブ28を備えている。これらは、その角度位置に関して互いに等しく配向されている。回転体22の間の距離は、部分領域14の2つの行17の間の距離Δ・Ivに対応していることが好ましい。この配置は、回転体22が2点支持の結果、測定される表面12に対して傾斜のない方法で配置されるという利点を提供する。
【0036】
別の方法では、2つの回転体22の第1のものが、少なくとも1つの測定プローブ28を収納し、第2の回転体22は、容易な方法で、測定される表面12に対して測定プローブ28を備えた回転体22を、転向および案内する。
【0037】
図5は、例えば図4から発展させたデバイス21の略図を示している。図5の本デバイス21には、停止ワッシャ49ないし停止リングの形の停止デバイス48を、回転体22に取り付け得るか、一体成形またはその上に一体的に配設できる、という点で異なり、したがって、デバイス21を、この停止デバイス48を介して測定される表面12の縁部51に沿って案内可能である。停止ワッシャ49ないし停止リングは、交換可能に回転体22に設けることが好ましく、回転体22より大きい外周を備えている。停止ワッシャ49は、周壁上にスペーサ・リング50を備えることが好ましく、そのスペーサ・リングの結果、回転デバイス内の測定プローブ28と検査される縁部51の間の距離を正確に調節することができる。これは、測定される表面の縁部からの距離に関して、異なる厚さおよび幅を有する、このようなスペーサ・リング50を介して測定プローブ28を調節することができるということを意味している。
【0038】
例えば、距離ΔIh間隔で順次に配置された測定点16の行列を図6で見ることができ、この行列を、回転デバイス22の間にΔIvの距離を設定したデバイス21によって検出できる。測定点16の間の(測定表面の縁部に直接的に関連する)距離を、例えば、0.2から2mmの距離を観察できるように、スペーサ・リング50を介して調節することができる。
【0039】
停止デバイス48は、回転体22を1つだけ備えた11内のデバイス上に配置させることができる。
【0040】
図7aおよびbは、デバイス21の代替実施形態の別の略図を示す。デバイス21は、軸41をアンダーキャリッジ43で受ける測定キャリッジとして構成されている。ガイド・ローラ45は、アンダーキャリッジ43に設けられており、2つの回転体22と共に、測定キャリッジ用の3点支持を形成する。そして、測定キャリッジを、ロッド26を介して部分領域に沿って案内できる。測定される表面12の向きによって、特に、船舶の船体などの急勾配では、1つまたは複数の保持磁石46をアンダーキャリッジ43上に設けることができ、したがって、デバイス21と測定される表面12の間の確実な接触をさらに保証することができる。
【0041】
別の方法では、図7aおよびbによる測定キャリッジは、部分領域14の行17に沿って独立して移動するように、内蔵型ドライブを備えることができる。
【0042】
さらに、測定キャリッジは、デバイス21の移動をそれに応じて制御および操作することができるように、無線制御により動作可能であることが好ましい。
【0043】
例えば船舶の船体上のコーティングの品質を検出するために、図3aからcによる回転プローブ28は、最初に、部分領域14の各行17を通過させられる。測定点16で得られる測定値は、この部分領域14に対して得られ、保存される。部分領域14に対する層厚さの平均値x(上バー)は、前記測定値から探知される。コーティングの品質をさらに評価するために、層厚さの平均値x(上バー)をコーティングの所定の最小値より十分に大きくする必要がある。平均値と最小値の間の必要な間隔は、コーティング過程に内在する分散Sによって左右される。変動係数Vは、分散Sの尺度として使用されることが好ましい。これは、測定される層厚さ値の平均値x(上バー)に対する標準偏差sの比、すなわち
V = 100 × s/x(上バー) %
である。この変動係数Vをしたがって、コーティングの品質値または比較値として考えることができる。
【0044】
変動係数のパーセントの異なる範囲を、応用および評価のそれぞれの領域に対する評価過程結果から決定することができる。例えば、最大1%までの範囲を優れている、最大5%までの範囲を良い、最大10%までの範囲を適当である、15%の変動係数を不適当であると分類することができる。これらの範囲は、色で等級付けすることができる。対応する変動係数がそれぞれの部分領域14に対して探知されると、範囲を比較することによって、部分領域14が良い、適当、または不適当なコーティングを呈するかどうかを決定することが可能である。
【0045】
これに基づき、例えば船舶の船体にコーティングを塗布する場合に、監視および評価処理を行なうことができる。コーティング材料を塗布する場合の実質的な節約は、分散、したがって変動係数が小さくなった場合に常に達成することができる。というのは、平均値に対するデフォルトはしたがって、それに応じて下げることもできるからである。しかし、平均値と決定した最小値との間の間隔が小さすぎる場合、予測される不足量はしたがって、必然的により大きくなる、すなわち、必要なその後の改良はそれに応じてより高価である。これらの検討材料に基づいて、図8のチャートの評価を、パーセントでの所定のリスクに基づいて行なうことができる。このチャートでは、平均値x(上バー)と最小層厚さTminとの間の比は、X軸に沿ってプロットされる。誤差の余裕を持ったパーセントでのリスクは、Y軸に沿ってプロットされる。同時に、最小層厚さの不足量は、最小層厚さに対する平均値の比の関数として、例えばV=15%、V=20%、およびV=25%の変動係数によって与えられる。例えば、1%のリスクが25%の変動係数で選択された場合、約1.85の比が観察される、すなわち、1%の誤差の余裕のリスクでの十分なコーティングを達成するために、平均値と最小層厚さ値との間の間隔の1.8倍が観察される。したがって、船舶の船体の場合に現在塗布される過程にある別の塗布厚さをこの時点で変化させることができるように、コーティング処理のすぐ後に、品質評価を行なうことができる。探知された層厚さが不十分である場合に、これを補償することがさらに可能であるように、さらに塗布される別のコーティングの層厚さを決定することもできる。したがって、製造を少なくし、またコーティング過程を保護することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
11 船舶; 12 表面; 14 部分領域; 16 測定点; 17 行;
19 センサ要素; 21 デバイス; 22 回転体; 23 走行面;
24 枢動ピン; 26 ロッドまたは棒; 28 測定プローブ;
29 センサ要素; 31 接触球状キャップ; 33 角度範囲;
35 ばね要素; 36 軸受; 38 送受信手段; 40 部分領域;
41 軸; 43 アンダーキャリッジ; 45 ガイド・ローラ;
48 停止デバイス; 49 停止ワッシャ;
50 スペーサ・リング; 51 縁部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大面積の測定される表面(12)上の薄膜層の厚さを測定する方法であって、少なくとも1つのセンサ要素(29)および前記センサ要素(29)に取り付けられた少なくとも1つの接触球状キャップ(31)を備えた少なくとも1つの測定プローブ(28)が、測定値を得るために前記測定される表面(12)に宛てがわれ、
前記大面積の測定される表面(12)は、個別の部分領域(14)に分割され、
測定点(16)の行列は、検査される各部分領域(14)に対して決定され、
前記少なくとも1つの測定プローブ(28)を担持するデバイス(21)を使用して、前記部分領域(14)の前記行列の少なくとも1つの行(17)に沿って、等距離測定点(16)で測定値が探知され、
測定値は、前記部分領域(14)内の前記行列の全ての行(17)に対して連続的に探知され、この部分領域(14)に対して評価される、
ことを特徴とする、薄膜層の厚さを測定する方法。
【請求項2】
少なくとも1つの走行面(23)を備えた少なくとも1つの回転体(22)を備え、前記少なくとも1つの測定プローブ(28)を担持する前記デバイス(21)は、前記測定される表面(12)上に載置されて行(17)に沿って転動され、前記測定プローブ(28)は、サイクロイド経路に沿って前記測定される表面(12)上に案内され、前記個別の測定点(16)に対して接触されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記回転体(22)の直径より大きい直径を有する停止デバイス(48)が、前記回転体(22)に取り付けられており、前記停止デバイス(48)を備えた前記デバイス(21)は、前記測定される表面(12)の縁部に沿って案内されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの測定プローブ(28)を備えた前記デバイス(21)は、回転する測定される表面(12)、または帯状に案内される測定される表面(12)上に、所定の通常の時間間隔で配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
平均値x(上バー)および標準偏差sが、各部分領域(14)の前記測定値から決定され、これから、変動係数V = 100 × s/x(上バー) %が探知され、コーティングの品質を評価する評価チャートで比較値として比較される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法を行なうために、大面積の測定される表面(12)の薄膜層の厚さを測定するデバイスであって、少なくとも1つのセンサ要素(29)および前記センサ要素(29)に取り付けられた少なくとも1つの接触球状キャップ(31)を備えた少なくとも1つの測定プローブ(28)を備えたデバイスであって、前記少なくとも1つの測定プローブ(28)は、走行面(23)を備えた回転体(22)に配置され、前記測定プローブ(21)の前記接触球状キャップ(31)は、前記測定プローブ(22)が前記測定される表面(12)に対してサイクロイド経路に沿って案内されるように、前記走行面(23)から少なくとも僅かに半径外方に突出し、前記回転体(22)上で同時回転するように配置されていることを特徴とするデバイス。
【請求項7】
共通の軸上に回転可能に取り付けられ、これに案内される2つ以上の回転体(22)が提供され、1つの回転体(22)だけが前記少なくとも1つの測定プローブ(21)を受けることを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
少なくとも1つの測定プローブ(21)をそれぞれ受ける2つ以上の回転体(22)が、剛性軸(41)に連結され、前記測定プローブ(28)は同じ角度位置に配向されていることを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記測定プローブ(28)は、前記走行面(23)に対して前記回転体(22)内に嵌入するように、弾力性および可撓性をもって取り付けられる、ことを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項10】
前記測定プローブ(28)は、2つの平行で相互に間隔を置いて配置された平らなばね要素のばねアセンブリ、またはダイアフラム状ばねアセンブリ(34)を備えている、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
少なくとも1つの記憶手段(37)は、前記少なくとも1つの測定プローブ(28)の前記測定値に対して前記回転体(22)内に設けられており、前記測定値を読み出すためにインターフェイスが前記回転体(22)に設けられており、および/または評価手段への無線データ伝送のために送受信手段(38)が前記回転体(22)内に設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項12】
停止デバイス(48)は1つの回転体(22)に配置されており、前記停止デバイス(48)の外径は、前記回転体(22)より大きいことを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項13】
スペーサ・リング(49)は、周面で前記停止デバイス(48)上に交換可能に配置されていることを特徴とする、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記少なくとも1つの測定プローブを備えた前記少なくとも1つの回転体(22)は、前記少なくとも1つのガイド・ローラ(45)を備えた測定キャリッジ上に設けられていることを特徴とする、請求項6に記載のデバイス。
【請求項15】
前記測定キャリッジは、保持磁石(46)が設けられているアンダーキャリッジ(43)を備えていることを特徴とする、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
洗浄デバイスが前記回転体(22)の前記走行面(23)に関連付けられており、その洗浄デバイスの面が前記少なくとも1つの測定プローブ(28)から突出しており、前記洗浄デバイスは、前記測定プローブ(28)の前記接触球状キャップ(31)を少なくとも洗浄する、ことを特徴とする請求項6に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−237435(P2011−237435A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105014(P2011−105014)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(309007036)ヘルムート・フィッシャー・ゲーエムベーハー・インスティテュート・フューア・エレクトロニク・ウント・メステクニク (5)
【Fターム(参考)】