説明

測定スティック、及び、測定装置

【課題】正確な測定に寄与する測定スティック、及び、この測定スティックを用いた測定装置を提供する。
【解決手段】ベース部材54Aは、略平行四辺形の板状とされており、長尺の2端辺が誘電体ブロック52の長尺方向Nと平行になるように配置されている。ベース部材54Aは、ベース部材54Aの長尺方向Nに沿った中心線と、誘電体ブロック52の長尺方向Nに沿った中心線Mとが一致するように誘電体ブロック52上に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体流路内に構成された光照射領域へ光を照射して測定データを得る測定装置、及び、この測定装置に用いられる測定スティックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測定セル上にリガンドとしての生理活性物質を固定し、リガンドの固定された部分に流路を構成して、この流路にアナライトを含んだ化合物溶液を供給すると共に、流路の逆側から光ビームを入射させることにより、リガンドとアナライトとの相互作用を測定することが行われている(特許文献1参照)。ここでの流路は、流路溝の形成された流路部材を測定セル上に密着させて構成されている。
【0003】
ところで、流路を構成する流路部材は、前述の流路溝を形成するための部材であり、通常、流路に沿った外形を有している。したがって、流路が測定セルの測定面の中心線に平行でない場合、すなわち測定セルの中心線に対して傾斜している場合には、流路部材の外形も測定セルの中心に対して傾斜している。そのため、測定セル上に流路部材を密着させるために押圧力を加えると、押圧力による測定セルの変形に偏りが生じて、測定が不正確になる可能性がある。
【特許文献1】特許第3468091号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記事実を考慮してなされたものであり、正確な測定に寄与する測定スティック、及び、この測定スティックを用いた測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の測定スティックは、上面に測定面の構成された長尺の誘電体ブロックと、前記誘電体ブロックの前記長尺方向と直交する幅方向に並ぶように配置され前記長尺方向に沿った中心線に対して傾斜した少なくとも2本の流路溝が形成され、前記測定面と密着して前記測定面と前記流路溝とにより液体流路を構成する流路部材と、を備え、各々の前記液体流路内には光ビームが照射される光照射領域が構成され、各々の前記液体流路内における前記光照射領域を含んだ前記幅方向の全幅領域は、前記流路部材の前記中心線を挟んで両側が対称形状とされていること、を特徴とする。
【0006】
本発明の測定スティックは、誘電体ブロックと流路部材とを備えている。誘電体ブロックは長尺とされ、上面に測定面が構成されている。流路部材は、誘電体ブロックの測定面と密着して液体流路を構成する部材である。
【0007】
流路部材には、誘電体ブロックの幅方向に並ぶように少なくとも2本の流路溝が形成されている。この流路溝は、誘電体ブロックの中心線に対して傾斜している。すなわち、中心線と平行になっていない部分を有している。なお、流路溝は、直線状でもよいし、湾曲、屈曲形状でもよい。この流路溝と測定面との間に液体流路が構成され、液体流路内の中心線付近に光照射領域が構成される。
【0008】
ところで、前述の液体流路を構成する際には、流路部材と誘電体ブロックとを密着させるために、流路部材と誘電体ブロックとの間に押圧力を作用させる。このため、誘電体ブロックの測定面に変形が生じることが、出願人の調査により判明している。
【0009】
そこで、本発明では、光照射領域を含んだ幅方向の全幅領域において、中心線を挟んだ両側の流路部材を対称形状とした。この構成によれば、光照射領域において、誘電体ブロックの幅方向の変形が、中心線を挟んだ両側でほぼ同様の変形となる。したがって、幅方向に並べて配置された液体流路の光照射領域間の変形の差異が少なくなり、正確に測定をおこなうことができる。
【0010】
本発明の請求項2に記載の測定スティックは、前記全幅領域における前記幅方向の長さが、前記流路部材の前記幅方向の長さの最大値であること、を特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、光照射領域を含んだ全幅領域の幅方向が、流路部材のとりうる最大幅となるので、全幅領域に対応した部分の流路部材が誘電体ブロックの幅方向に接する面積も大きくなる。したがって、押圧力が分散されて誘電体ブロックの変形量が減少し、より正確に測定を行うことができる。
【0012】
本発明の請求項3に記載の測定スティックは、前記流路部材が、前記中心線を挟んだ両側が同一形状とされていること、を特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、流路部材の全体が中心線を挟んだ両側で同一形状とされているので、誘電体ブロックの変形を中心線を挟んだ両側でほぼ同一の状態とすることができる。したがって、より正確に測定を行うことができる。
【0014】
本発明の請求項4に記載の測定装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の測定スティックを用いて生理活性物質と化合物との相互作用を測定する測定装置であって、前記測定スティックの前記流路部材を上部から押圧して前記誘電体ブロックの測定面に密着させる押圧部材と、前記液体流路へアクセスして液体の供給を行う液体供給部材と、
前記光照射領域へ光ビームを照射する光照射手段と、前記光照射領域で反射された光ビームを受光する受光手段と、を備えている。
【0015】
本発明の測定装置によれば、光照射領域における誘電体ブロックの変形が、中心線を挟んだ両側でほぼ同様の変形となる測定スティックが用いられているので、正確に測定をおこなうことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記構成としたので、正確な測定に寄与する測定スティック、及び、この測定スティックを用いた測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0018】
本発明に係る測定装置としてのバイオセンサー10は、金属膜の表面に発生する表面プラズモン共鳴を利用して、タンパクTaと試料Aとの相互作用を測定する、いわゆる表面プラズモンセンサーである。本発明に係る測定スティック上にタンパクTaを固定し、このタンパクTaへ試料Aを供給して信号変化を検出することにより、相互作用を測定する。
【0019】
図1〜図3に示すように、バイオセンサー10は、分注ヘッド20、測定部30、試料ストック部40、ピペットチップストック部42、バッファストック部44、冷蔵部46、測定スティックストック部48、ラジエータ60を備えている。
【0020】
試料ストック部40は、試料積層部40A及び試料セット部40Bで構成されている。試料積層部40Aには、個々のセルに各々異なるアナライト溶液をストックする試料プレート40Pが、Z方向に積層されて収容されている。試料セット部40Bには、1枚の試料プレート40Pが、図示しない搬送機構により試料積層部40Aから搬送されてセットされる。
【0021】
ピペットチップストック部42は、ピペットチップ積層部42A及びピペットチップセット部42Bで構成されている。ピペットチップ積層部42Aには、複数のピペットチップを保持するピペットチップストッカー42Pが、Z方向(鉛直方向)に積層されて収容されている。ピペットチップセット部42Bには、1枚のピペットチップストッカー42Pが、図示しない搬送機構によりピペットチップ積層部42Aから搬送されてセットされる。
【0022】
バッファストック部44は、ボトル収容部44A及びバッファ供給部44Bで構成されている。ボトル収容部44Aには、バッファー液が貯留された複数本のボトル44Cが収容されている。バッファ供給部44Bには、バッファプレート44Pがセットされている。バッファプレート44Pは、複数筋に区画されており、各々の区画には濃度の異なるバッファー液が貯留されている。また、バッファプレート44Pの上部には、分注ヘッド20のアクセス時にピペットチップCPが挿入される孔Hが構成されている。バッファプレート44Pへは、ホース44Hによりボトル44Cからバッファ液が供給される。
【0023】
バッファ供給部44Bの隣には、補正用プレート45が配置され、その隣に冷蔵部46が配置されている。補正用プレート45は、バッファー液の濃度調整を行うためのプレートであり、マトリクス状に複数セルが構成されている。冷蔵部46には、冷蔵の必要な試料が配置される。冷蔵部は低温とされており、この上で試料は低温状態に保たれる。
【0024】
測定スティックストック部48には、測定スティック収容プレート48Pがセットされている。測定スティック収容プレート48Pには、測定スティック50が複数本収納されている。
【0025】
測定スティックストック部48と測定部30との間には、測定スティック搬送機構49が備えられている。測定スティック搬送機構49は、測定スティック50を両側から挟み込んで保持する保持アーム49A、回転により保持アーム49AをY方向に移動させるボールねじ49B、Y方向に配置され、測定スティック50が載せられる搬送レール49C、を含んで構成されている。測定の際には、1本の測定スティック50が測定スティック搬送機構49により測定スティック収容プレート48Pから搬送レール49C上に載せられ、保持アーム49Aにより挟持されつつ測定部30へ移動してセットされる。
【0026】
測定スティック50は、図4及び図5に示すように、誘電体ブロック52、流路部材54、及び、保持部材56、で構成されている。
【0027】
誘電体ブロック52は、光ビームに対して透明な透明樹脂等で構成されており、断面が台形の棒状とされたプリズム部52A、及び、プリズム部52Aの両端部にプリズム部52Aと一体的に形成された被保持部52Bを備えている。プリズム部52Aは長尺とされており、この長尺方向を矢印Nで、長尺方向と直交する幅方向を矢印Wで示す。
【0028】
プリズム部52Aの互いに平行な2面の内の広い側の測定面には、金属膜57が形成されている。誘電体ブロック52は、いわゆるプリズムとして機能し、バイオセンサー10での測定の際には、プリズム部52Aの対向する互いに平行でない2つの側面の内の一方から光ビームが入射され、他方から金属膜57との界面で全反射された光ビームが出射される。
【0029】
金属膜57の表面には、タンパクTaを金属膜57上に固定化するための、リンカー層57Aが形成されている。
【0030】
プリズム部52Aの両側面には、上側の端辺に沿って保持部材56と係合される係合凸部52Cが形成されている。また、プリズム部52Aの下側には、側端辺に沿って搬送用レール49Cと係合されるフランジ部52Dが形成されている。
【0031】
図5に示すように、流路部材54は、6個のベース部材54Aを備えている。ベース部材54Aは、略平行四辺形の板状とされており、長尺の2端辺が誘電体ブロック52の長尺方向Nと平行になるように配置されている。ベース部材54Aは、ベース部材54Aの長尺方向Nに沿った中心線と、誘電体ブロック52の長尺方向Nに沿った中心線(以下「中心線M」という)とが一致するように誘電体ブロック52上に配置される。
【0032】
ベース部材54Aの各々には4本の円筒部材54Bが立設されている。ベース部材54Aは、3個のベース部材54A毎に、立設された円筒部材54Bのうちの1本の上部が連結部材54Dによって連結されている。流路部材54は、軟質で弾性変形可能な材料、例えば非晶質ポリオフィレンエラストマーで構成することができる。
【0033】
ベース部材54Aには、図6及び図7に示すように、底面側に略S字状の2本の流路溝54Cが形成されている。流路溝54Cは、誘電体ブロック52の幅方向Wに2本が並ぶように形成されている。また、流路溝54Cは、S字状であることから、誘電体ブロック52の長尺方向Nに沿った中心線Mに対して傾斜している(角度を有している)。
【0034】
流路溝54Cの端部の各々は1の円筒部材54Bの中空部と連通されている。ベース部材54Aは、底面が誘電体ブロック52の測定面(上面)と密着され、流路溝54Cと誘電体ブロック52の測定面との間に構成される空間と前記中空部とで、液体流路55が構成される。1個のベース部材54Aには、2本の液体流路55が構成される。各々の液体流路55において、円筒部材54Bの上端面に液体流路55の出入口53が構成される。
【0035】
ここで、2本の液体流路55のうち、1本は測定流路55Aとして用いられ、他の1本は参照流路55Rとして用いられる。測定流路55Aの金属膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaが固定され、参照流路55Rの金属膜57上(リンカー層57A上)にはタンパクTaが固定されない状態で測定が行われる。測定流路55A及び参照流路55Rには、図6に示すように、各々光ビームL1、L2が入射される。光ビームL1、L2は、図7に示すように、ベース部材54Aの中心線M上に配置されるS字の屈曲部分に照射される。以下、測定流路55Aにおける光ビームL1の照射領域を測定領域E1、参照流路55Rにおける光ビームL2の照射領域を参照領域E2という。参照領域E2は、タンパクTaの固定された測定領域E1から得られるデータを補正するための測定を行う領域である。
【0036】
図7に示すように、測定領域E1を含む流路部材54の幅方向Wの両端辺までの全幅を含む全幅領域Z1、及び、参照領域E2の幅方向Wの両端辺までの全幅を含む流路部材54の全幅領域Z2は、中心線Mを挟んで対称形状とされている。
【0037】
測定スティック50の保持部材56は、長尺とされ、上面部材56A及び2枚の側面板56Bが蓋状に構成された形状とされている。側面板56Bには、誘電体ブロック52の係合凸部52Cと係合される係合孔56C、及び、光ビームL1、L2の光路に対応する部分に窓56Dが形成されている。保持部材56は、係合孔56Cと係合凸部52Cとが係合されて、誘電体ブロック52に取り付けられる。流路部材54は、保持部材56と一体成形されており、保持部材56と誘電体ブロック52の間に配置される。
【0038】
図8に示すように、測定部30において、測定スティック50は後述する光学定盤32上にセットされ、上側から押さえ部材80により押圧される。この押圧により、流路部材54と誘電体ブロック52とが密着されて、液体流路55が構成される。
【0039】
上面部材56Aには、流路部材54の円筒部材54Bに対応する位置に、受部59が形成されている。受部59は略円筒状とされている。
【0040】
図1及び図3に示すように、分注ヘッド20は、水平駆動機構22により矢印X方向に移動可能とされている。水平駆動機構22は、ボールねじ22A、モータ22B、ガイドレール22Cにより構成されている。ボールねじ22A及びガイドレール22Cは、X方向に配置されている。ガイドレール22Cは平行に2本配置され、そのうちの1本はボールねじ22Aの下側に所定間隔離れて配置されている。分注ヘッド20は、ボールねじ22Aの回転により、ガイドレール22Cに沿ってX方向に移動される。
【0041】
分注ヘッド20には、分注ヘッド20を矢印Z方向に移動させる鉛直駆動機構24が設けられている。鉛直駆動機構24は、図9に示すように、モータ24A及びZ方向に配置された駆動軸24Bを含んで構成され、分注ヘッド20をZ方向に移動させる。
【0042】
図9に示すように、分注ヘッド20は、12本の分注管20Aを備えている。分注管20Aは、X方向と直交する矢印Y方向に沿って1列に配置されている。分注管20Aは、隣り合う2本で一対とされ、一方が液体供給用、他方が液体排出用とされている。分注管20Aの先端部には、ピペットチップCPが取り付けられる。ピペットチップCPは、ピペットチップストッカー42Pにストックされており、必要に応じて交換可能とされている。
【0043】
測定時には、分注管20Aにより、測定スティック50へ試料やバッファー液が供給される。これらの液体の供給は、分注ヘッド20を、保冷部46、試料セット部40A、バッファ供給部44B上へ移動させ、液体供給用の6本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPで試料やバッファー液を吸引する。このときの吸引量は、2本分の流路に供給するための量である。そして、試料やバッファー液を吸引した6本の分注管20A側のピペットチップCPを、測定スティック50の測定流路55A側の片方の出入口53(以下「供給口53A」という)へ挿入すると共に、排出用の6本の分注管20Aに取り付けられたピペットチップCPを他方の出入口53(以下「排出口53B」という)へ挿入する。そして、供給口53A側の分注管20Aから半量の液体を吐出すると共に、排出口53B側の分注管20Aで液体を吸入することにより行われる。続いて、参照流路55R側へも、同様にしてピペットチップCPの残り半量の液体が供給される。
【0044】
図3に示すように、測定部30は、光学定盤32、光出射部34、受光部36を含んで構成されている。光学定盤32には、図8にも示すように、側方向から見て、上部中央の水平平面で構成される上部台32A、上部台32Aから離れる方向に向かって低くなる出射傾斜部32B、上部台32Aを挟んで出射傾斜部32Bと逆側に配置される受光傾斜部32Cが形成されている。上部台32Aには、Y方向沿って測定スティック50がセットされる。光学定盤32の出射傾斜部32Bには、測定スティック50へ向かって光ビームL1、L2を出射する光出射部34が設置されている。また、受光傾斜部32Cには、受光部36が設置されている。光学定盤32の隣には、光学定盤32を冷却する水冷ジャケット32Jが設けられている(図3参照)。
【0045】
図8に示すように、光出射部34には、光源34A、レンズユニット34Bが備えられている。また、受光部36には、レンズユニット36A、CCD36Bが備えられている。光源34Aは制御部70と接続され、CCD36Bは信号処理部38及び制御部70と接続されている。
【0046】
光源34Aからは、発散状態の光ビームLが出射される。光ビームLは、レンズユニット34Bを介して、2本の光ビームL1、L2となり、光学定盤32上に配置された誘電体ブロック52の測定領域E1と参照領域E2に入射される。測定領域E1及び参照領域E2において、光ビームL1、L2は、金属膜57と誘電体ブロック52との界面に対して種々の入射角成分を含み、かつ全反射角以上の角度で入射される。光ビームL1、L2は、誘電体ブロック52と金属膜57との界面で全反射される。全反射された光ビームL1、L2も、種々の反射角成分をもって反射される。この全反射された光ビームL1、L2は、レンズユニット36Aを経てCCD36Bで受光されて、各々光電変換され、光検出信号が信号処理部38へ出力される。信号処理部38では、入力された光検出信号に基づいて所定の処理が行なわれ、測定領域E1及び参照領域E2での屈折率変化データが求められる。
【0047】
ここでの屈折率変化データは、全反射された光ビームL1、L2の暗線位置に基づいて求められるものである。金属膜57の界面に、特定の入射角で入射した光ビームL1、L2は、金属膜57とタンパクTaとの界面に表面プラズモンを励起させ、これにより、この入射角で入射した光ビームL1、L2の反射光の強度が鋭く低下して暗線として観察される。この暗線となる光ビームL1、L2の入射角が全反射減衰角θSPであり、タンパクTaと試料Aとの反応に応じた全反射減衰角θSPの変化が、屈折率変化データとなる。屈折率変化データが制御部70へ出力され、タンパクTaと試料Aとの反応が測定される。
【0048】
バイオセンサー10には、ラジエータ60が設けられている。ラジエータ60には、循環ホース66が連結されサーキュレータ68と連結されている。循環ホース66は、光学定盤32を冷却するための水冷ジャケット32Jにも連結され、サーキュレータ68により温調水の循環が行われている。
【0049】
次に、本実施形態での液体流路55の変形について説明する。
【0050】
測定スティック50は、測定のために光学定盤32上にセットされた後、押さえ部材80により上部から押圧される。この押圧により、流路部材54と誘電体ブロック52とが密着されて、液体流路55が構成される。このとき、押圧により誘電体ブロック52の上面は変形する。本実施形態では、図7に示すように、全幅領域Z1、及び、全幅領域Z2は、中心線Mを挟んだ両側が対称形状とされている。したがって、図11に示すように液体流路55に沿った形状とされている場合と異なり、誘電体ブロックの幅方向Wの変形が、中心線Mを挟んだ両側でほぼ同様の変形となる。したがって、幅方向Wに並ぶように配置された液体流路55の測定領域E1、参照領域E2間の変形の差異が少なくなり、正確に測定をおこなうことができる。
【0051】
また、押さえ部材80には、図8に示すように、ピペットアクセス用の孔80Aが形成されており、この孔80AへピペットチップCPが挿入される。このとき、流路部材54が押されて誘電体ブロック52が変形するが、この場合にも、全幅領域Z1、及び、全幅領域Z2は、中心線Mを挟んだ両側でほぼ同様の変形とすることができる。
【0052】
なお、本実施形態では、流路部材54のベース部材54Aを略平行四辺形の板状としたが、ベース部材は、図10に示すように、全幅領域Z1、及び、全幅領域Z2以外の部分については液体流路55に沿った形状としてもよい(ベース部材54Q)。特に、略平行四辺形状とすることにより、ベース部材54Aの中心線Mを挟んで両側が同一形状となり、誘電体ブロック52の変形をより均一化することができる。
【0053】
なお、本実施形態では、測定装置として、表面プラズモンセンサーを一例として説明したが、測定装置としては、表面プラズモンセンサーに限定されるものではない。その他の例えば、水晶発振子マイクロバランス(QCM)測定技術、金のコロイド粒子から超微粒子までの機能化表面を使用した光学的測定技術など、あらゆるバイオセンサーに本発明は適用することができる。
【0054】
また、全反射減衰を利用する他のバイオセンサーとしては、漏洩モード検出器をあげることができる。漏洩モードセンサは、誘電体と、この上に順に層設されたクラッド層と光導波層とによって構成された薄膜とからなり、この薄膜の一方の面がセンサ面となり、他方の面が光入射面となる。光入射面に全反射条件を満たすように光を入射させると、その一部が前記クラッド層を透過して前記光導波層に取り込まれる。そして、この光導波層において、導波モードが励起されると、前記光入射面における反射光が大きく減衰する。導波モードが励起される入射角は、表面プラズモン共鳴角と同様に、センサ面上の媒質の屈折率に応じて変化する。この反射光の減衰を検出することにより、前記センサ面上の反応を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの内部の斜視図である。
【図2】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの内部の上面図である。
【図3】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの内部の側面図である。
【図4】本発明に係る実施形態の測定スティックの斜視図である。
【図5】本発明に係る実施形態の測定スティックの分解斜視図である。
【図6】本発明に係る実施形態の測定スティックの測定領域及び参照領域へ光ビームが入射している状態を示す図である。
【図7】本発明に係る実施形態の測定スティックの1の流路部材を下側からみた図である。
【図8】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの測定部付近の概略図である。
【図9】本発明に係る実施形態のバイオセンサーの分注ヘッドの鉛直駆動機構を示す斜視図である。
【図10】本発明に係る実施形態の測定スティックの変形例の1の流路部材を下側からみた図である。
【図11】液体流路に沿って流路部材の外形を形成した場合の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 バイオセンサー
30 測定部
34 光出射部
36 受光部
50 測定スティック
54 流路部材
55 液体流路
80 押さえ部材
M 中心線
N 長尺方向
W 幅方向
Z1 全幅領域
Z2 全幅領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に測定面の構成された長尺の誘電体ブロックと、
前記誘電体ブロックの前記長尺方向と直交する幅方向に並ぶように配置され前記長尺方向に沿った中心線に対して傾斜した少なくとも2本の流路溝が形成され、前記測定面と密着して前記測定面と前記流路溝とにより液体流路を構成する流路部材と、
を備え、
各々の前記液体流路内には光ビームが照射される光照射領域が構成され、各々の前記液体流路内における前記光照射領域を含んだ前記幅方向の全幅領域は、前記流路部材の前記中心線を挟んで両側が対称形状とされていること、を特徴とする測定スティック。
【請求項2】
前記全幅領域における前記幅方向の長さは、前記流路部材の前記幅方向の長さの最大値であること、を特徴とする請求項1に記載の測定スティック。
【請求項3】
前記流路部材は、前記中心線を挟んだ両側が同一形状とされていること、を特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定スティック。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の測定スティックを用いて生理活性物質と化合物との相互作用を測定する測定装置であって、
前記測定スティックの前記流路部材を上部から押圧して前記誘電体ブロックの測定面に密着させる押圧部材と、
前記液体流路へアクセスして液体の供給を行う液体供給部材と、
前記光照射領域へ光ビームを照射する光照射手段と、
前記光照射領域で反射された光ビームを受光する受光手段と、
を備えた測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−64485(P2008−64485A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239789(P2006−239789)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】