測定装置、評価方法、および評価プログラム
【課題】測定された血圧値から算出されたABIの信憑性を評価する測定装置を提供する。
【解決手段】測定装置100は、上肢の血圧と下肢の血圧とを測定するための血圧測定部106と、上肢の脈波と下肢の脈波とを測定するための脈波測定部102と、上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率を算出してABIを算出するための第1指標算出部108と、上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための第2の指標を算出するための第2指標算出部104と、ABIと第2の指標とを用いてABIの信憑性を評価するための評価部110と、ABIを評価結果と共に出力させるための出力部4とを備える。
【解決手段】測定装置100は、上肢の血圧と下肢の血圧とを測定するための血圧測定部106と、上肢の脈波と下肢の脈波とを測定するための脈波測定部102と、上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率を算出してABIを算出するための第1指標算出部108と、上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための第2の指標を算出するための第2指標算出部104と、ABIと第2の指標とを用いてABIの信憑性を評価するための評価部110と、ABIを評価結果と共に出力させるための出力部4とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は測定装置、評価方法、および評価プログラムに関し、特に、ABI(下肢上肢血圧指標:Ankle Brachial Blood Pressure Index)を算出する測定装置、その評価方法、および評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ABI(下肢上肢血圧指標:Ankle Brachial Blood Pressure Index)は上肢血圧と下肢血圧との比率であって、動脈における狭窄の有無や狭窄度合いを表わす指標として用いられる。
【0003】
たとえば特開2004−261319号公報(以下、特許文献1)にも開示されているように、従来ABIは、血圧測定装置で仰臥位状態の被測定者の上肢および下肢それぞれから血圧を測定し、その血圧比を算出することで得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−261319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の測定方法では、動脈の石灰化が高度である場合に動脈の圧迫が不十分となり、精度よく血圧測定ができない場合がある。その結果、その血圧値を用いて算出されたABIの信憑性が低下するという問題があった。
【0006】
また、不整脈による脈振幅の乱れや血管狭窄によって脈振幅が小さい場合にも、精度よく血圧測定ができない場合がある。そのため、その血圧値を用いて算出されたABIの信憑性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、測定された血圧値から算出されたABIの信憑性を評価する測定装置、評価方法、および評価プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、測定装置は、生体値を測定し、前記生体値から動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)を算出するための測定装置であって、上肢に装着するための第1のカフと、下肢に装着するための第2のカフと、第1のカフの内圧を検出するための第1のセンサと、第2のカフの内圧を検出するための第2のセンサと、第1のカフおよび第2のカフそれぞれの内圧を調整するための調整装置と、第1のセンサおよび第2のセンサと接続され、それぞれの検出値から生体値を測定し、生体値を用いて指標を算出する演算を実行するための演算装置と、演算装置と接続され、演算装置での演算結果を出力するための出力装置とを備える。演算装置は、第1のセンサの検出値を用いて上肢の血圧を測定し、第2のセンサの検出値を用いて下肢の血圧を測定するための血圧測定手段と、第1のセンサの検出値を用いて上肢の脈波を測定し、第2のセンサの検出値を用いて下肢の脈波を測定するための脈波測定手段と、上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率を算出してABIを算出するための第1の算出手段と、上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するための第2の算出手段と、第1の算出手段で算出されたABIと、第2の算出手段で算出された判定指標とを用いてABIの信憑性を評価するための評価手段と、出力装置に、ABIを評価手段での評価結果と共に出力させるための出力手段とを含む。
【0009】
好ましくは、評価手段は、ABIと判定指標とのそれぞれについて、予め規定されている範囲内にあるか否かを判断することでABIの信憑性を評価する。
【0010】
より好ましくは、評価手段は、ABIと判定指標とのいずれもが予め規定されている範囲内にある場合にABIの信憑性を高いと評価し、そうでない場合に低いと評価する。
【0011】
好ましくは、評価手段は、ABIが判定指標から予め規定されている範囲内にある場合にABIの信憑性を高いと評価し、そうでない場合に低いと評価する。
【0012】
好ましくは、判定指標は、脈波の先鋭度を表わす指標である%MAP(正規化脈波面積)と、足首脈波の上昇特徴値を表わす指標であるUT(UT:upstroke Time)と、脈振幅と、上肢から下肢への脈波の伝達関数である下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値とのうちの少なくとも1つを用いる。
【0013】
より好ましくは、判定指標は、%MAPと、UTと、脈振幅と、下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値とのうちの2以上を組み合わせて算出される指標である。
【0014】
より好ましくは、判定指標は、下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値と、%MAP、UT、および脈振幅のうちの少なくとも1つとを組み合わせて算出される指標である。
【0015】
好ましくは、出力手段は、出力装置に、ABIと共に第2の算出手段で算出されたABIの推定値を出力させる。
【0016】
本発明の他の局面に従うと、評価方法は、生体値から算出された、動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)の信憑性を評価するための評価方法であって、上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率で算出されたABIを取得するステップと、上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するステップと、ABIと、判定指標とを用いてABIの信憑性を評価するステップと、出力装置に、ABIを評価結果と共に出力するステップとを含む。
【0017】
本発明のさらに他の局面に従うと、評価プログラムは、コンピュータに、生体値から算出された、動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)の信憑性を評価する処理を実行させるためのプログラムであって、上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率で算出されたABIを取得するステップと、上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するステップと、ABIと、判定指標とを用いてABIの信憑性を評価するステップと、出力装置に、ABIを評価結果と共に出力するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、測定された血圧値から算出されたABIの信憑性を、簡易に、かつ精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態にかかる測定装置の構成の具体例を示す図である。
【図2】測定装置の機能構成の具体例を示すブロック図である。
【図3】ABIと%MAPとの相関関係を表わした図である。
【図4】ABIとUTとの相関関係を表わした図である。
【図5】ABIと脈振幅との相関関係を表わした図である。
【図6】ABIと脈波から算出された第2の指標であるEABIとの相関関係を表わした図である。
【図7】図6のP1に示された測定値が測定された被測定者について詳しい測定結果を表わした図である。
【図8】図6のP2に示された測定値が測定された被測定者について詳しい測定結果を表わした図である。
【図9】図6のP3に示された測定値が測定された被測定者について詳しい測定結果を表わした図である。
【図10】健常者の右足首(A)および左足首(B)での脈波の測定結果を表わす図である。
【図11】図10(A)の右足首で測定された脈波と右上腕で測定された脈波とから算出された右上腕−右足首でのステップ応答(右ステップ応答)を表わす図である。
【図12】図10(B)の左足首で測定された脈波と左上腕で測定された脈波とから算出された左上腕−左足首でのステップ応答(左ステップ応答)を表わす図である。
【図13】図11の右ステップ応答と図12の左ステップ応答との比較を表わす図である。
【図14】測定対象の閉塞性動脈硬化症患者の動脈状態を表わしたX線撮影写真である。
【図15】図14の患者の右上腕(A)および右足首(B)での脈波の測定結果を表わす図である。
【図16】図14の患者の左上腕(A)および左足首(B)での脈波の測定結果を表わす図である。
【図17】図15の右上腕および右足首で測定された脈波から算出された右ステップ応答を表わす図である。
【図18】図16の左上腕および左足首で測定された脈波から算出された左ステップ応答を表わす図である。
【図19】図17の右ステップ応答と図18の左ステップ応答との比較を表わす図である。
【図20】Avolioモデルの模式図である。
【図21】発明者らの算出に用いた、Avolioモデルにおいて要素番号82,104,111(図20中の丸印)で表わされた区間に与えた狭窄度を表わす図である。
【図22】発明者らの算出結果をグラフ化した図である。
【図23】ステップ応答の区間で定義された、上側面積、上側面積/下側面積比、および区間最大値を説明するための図である。
【図24】ABIと、ステップ応答の上側面積との相関関係を表わした図である。
【図25】ABIと、ステップ応答の上側面積/下側面積比との相関関係を表わした図である。
【図26】ABIと、ステップ応答の区間最大値との相関関係を表わした図である。
【図27】ABIとEABIとの相関関係を表わした図である。
【図28】測定装置での動作の流れの具体例を表わすフローチャートである。
【図29】図28のステップS113での動作の具体例を表わしたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0021】
<装置構成>
図1は、本実施の形態にかかる測定装置100の構成の具体例を示す図である。
【0022】
図1を参照して、測定装置100は、情報処理ユニット1と、4つの検出ユニット20ar,20al,20br,20blと、4つのカフ24ar,24al,24br,24blとを含む。
【0023】
カフ24br,24bl,24ar,24alは、それぞれ被測定者200の肢部に装着される。具体的には、それぞれ、右上腕(右上肢)、左上腕(左上肢)、右足首(右下肢)および左足首(左下肢)に装着される。なお、「肢部」とは、四肢に含まれる部位を表わし、手首や指尖部などであってもよい。カフ24ar,24al,24br,24blは、特に区別する必要がない限り、これらを総称して、「カフ24」と呼ぶ。
【0024】
検出ユニット20ar,20al,20br,20blは、それぞれ、被測定者200の肢部の脈波を検出するために必要なハードウェアを含む。検出ユニット20ar,20al,20br,20blの構成は全て同様であってよいので、特に区別する必要がない限り、これらを総称して、「検出ユニット20」と呼ぶ。
【0025】
情報処理ユニット1は、制御部2と、出力部4と、操作部6と、記憶装置8とを含む。
制御部2は、測定装置100全体の制御を行なう装置であり、代表的に、CPU(Central Processing Unit)10と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)14とを含むコンピュータで構成される。
【0026】
CPU10は、演算処理部に相当し、ROM12に予め格納されているプログラムを読出して、RAM14をワークメモリとして使用しながら、当該プログラムを実行する。
【0027】
また、制御部2には、出力部4、操作部6および記憶装置8が接続されている。出力部4は、測定された脈波や脈波解析結果などを出力する。出力部4は、LED(Light Emitting Diode)またはLCD(Liquid Crystal Display)などで構成される表示デバイスであってもよいし、プリンタ(ドライバ)であってもよい。
【0028】
操作部6は、ユーザからの指示を受付ける。記憶装置8は、各種データやプログラムを保持する。制御部2のCPU10は、記憶装置8に記録されたデータやプログラムの読み出しや書き込みを行なう。記憶装置8は、たとえば、ハードディスク、不揮発性メモリ(たとえば、フラッシュメモリ)、あるいは、着脱可能な外部記録媒体などにより構成されてよい。
【0029】
ここで、各検出ユニット20の構成について具体的に説明する。
検出ユニット20brは、被測定者200の右上腕に装着されたカフ24brの内圧(以下、「カフ圧」という)の調整および検出を行なうことで、右上腕における脈波を検出する。カフ24brは、図示のない流体袋(たとえば空気袋)を内包している。
【0030】
検出ユニット20brは、圧力センサ28brと、調圧弁26brと、圧力ポンプ25brと、A/D(analog to digital)変換部29brと、配管27brとを含む。カフ24brと、圧力センサ28br,調圧弁26brとは、配管22brによって接続されている。
【0031】
圧力センサ28brは、配管22brを介して伝達される圧力変動を検出するための検出部位であり、一例として、単結晶シリコンなどからなる半導体チップを用いて構成することができる。圧力センサ28brによって検出された圧力変動信号は、A/D変換部29brによってデジタル信号に変換されて、脈波信号pbr(t)として制御部2に入力される。
【0032】
調圧弁26brは、圧力ポンプ25brとカフ24brとの間に介挿され、測定時にカフ24brの加圧に用いられる圧力を所定の範囲に維持する。圧力ポンプ25brは、制御部2からの検出指令に応じて作動し、カフ24brを加圧するためにカフ24br内の流体袋(図示せず)に空気を供給する。
【0033】
この加圧によって、カフ24brは測定部位に押圧され、右上腕の脈波に応じた圧力変化がそれぞれ配管22brを介して検出ユニット20brへ伝達される。検出ユニット20brは、この伝達される圧力変化を検出することで、右上腕の脈波を検出する。
【0034】
検出ユニット20blも同様に、圧力センサ28blと、調圧弁26blと、圧力ポンプ25blと、A/D変換部29blと、配管27blとを含む。カフ24blと、圧力センサ28bl,調圧弁26blとは、配管22blによって接続されている。
【0035】
また、検出ユニット20arは、圧力センサ28arと、調圧弁26arと、圧力ポンプ25arと、A/D変換部29arと、配管27arとを含む。カフ24arと、圧力センサ28ar,調圧弁26arとは、配管22arによって接続されている。
【0036】
検出ユニット20alも同様に、圧力センサ28alと、調圧弁26alと、圧力ポンプ25alと、A/D変換部29alと、配管27alとを含む。カフ24alと、圧力センサ28al,調圧弁26alとは、配管22alによって接続されている。
【0037】
検出ユニット20bl,20ar,20al内の各部の機能は、検出ユニット20brと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。また、検出ユニット20内の各部についても、特に区別する必要がない限り、“ar”,“br”などの記号は省略して説明する。
【0038】
なお、本実施の形態では、圧力センサ28を用いて脈波を検出する構成について説明するが、動脈容積センサ(図示せず)を用いて脈波を検出する構成であってもよい。この場合、動脈容積センサは、たとえば、動脈に対して光を照射する発光素子と、発光素子によって照射された光の動脈の透過光または反射光を受光する受光素子とを含んでよい。あるいは、複数の電極を含み、被測定者200の測定部位に微少の一定電流を流すとともに、脈波の伝播に応じて生じるインピーダンス(生体インピーダンス)の変化によって生じる電圧変化を検出するようにしてもよい。
【0039】
<動作概要>
本実施の形態にかかる測定装置100では、上肢および下肢で測定された血圧値から、第1の指標としてその比率であるABI(下肢上肢血圧指標:Ankle Brachial Blood Pressure Index)を算出する。第1の指標は、動脈における狭窄の有無や狭窄度合いを表わす指標として用いられる。
【0040】
ここで、上述のように、血圧値は動脈の石灰化の影響を受けやすいことが知られている。また、不整脈によって脈振幅が乱れたり、血管狭窄によって脈振幅が小さくなったりする場合もあり、これらの影響も受けやすいことが知られている。
【0041】
これに対して、脈波は数拍分の波形に基づいて算出されるものであるため、このような影響を受け難い。そこで、測定装置100では、上肢および下肢で測定された脈波から、第2の指標を算出し、第2の指標を用いて第1の指標として算出されたABIの信憑性を評価する。第2の指標は、ABIと比較し得る動脈狭窄の指標として用いられる。その内容については後述する。
【0042】
測定装置100は、その評価結果と共に、第1の指標として算出されたABIを出力する。
【0043】
<機能構成>
図2は、上記動作を行なうための測定装置100の機能構成の具体例を示すブロック図である。
【0044】
図2に示される各機能は、CPU10がROM12に格納されているプログラムを読出してRAM14をワークメモリとして使用しながら実行することで、主に、CPU10上に形成される機能である。しかしながら、少なくとも一部が、図1に示された装置構成や電気回路等のハードウェアで形成されてもよい。
【0045】
図2を参照して、測定装置は、その機能として、調整部30、脈波測定部102、上記第2の指標を算出するための第2指標算出部104、血圧測定部106、上記第1の指標を算出するための第1指標算出部108、評価部110、および出力部4を含む。
【0046】
調整部30は、カフ24内の圧力を調整する機能部である。調整部30の機能は、たとえば、図1に示した圧力ポンプ25および調圧弁26により達成される。
【0047】
脈波測定部102は、調整部30およびA/D変換部29と接続され、各肢部における脈波(PVR)を測定するための処理を行なう。脈波測定部102は、調整部30に指令信号を与えることでカフ24の内圧を調整するとともに、当該指令信号に応答して検出されたカフ圧信号Par(t),Pal(t),Pbr(t),Pbl(t)を受信する。そして、受信したカフ圧信号Par(t),Pal(t),Pbr(t),Pbl(t)を時系列に記録することで、肢部ごとに、複数拍分の脈波波形を取得する。脈波の測定は、たとえば所定時間(たとえば10秒程度)行なわれる。
【0048】
評価部110は、第2の指標を用いて、第1の指標であるABIの信憑性を評価する。そして、その結果を出力部4に渡す。
【0049】
評価部110での評価方法としては、様々な方法が挙げられる。一例として、評価部110は予め、ABIの正常範囲、および第2の指標の正常範囲を記憶しており、算出されたABIおよび第2の指標をそれぞれ正常範囲と比較して、いずれも正常範囲にある場合にはABIの信憑性が高いと評価し、そうでない場合にはABIの信憑性が低いと評価する方法が挙げられる。
【0050】
他の例として、算出されたABIおよび第2の指標を比較し、これらが一致、またはABIが第2の指標から所定範囲内にある場合にはABIの信憑性が高いものと判定し、そうでない場合にABIの信憑性が低いものと判定するものであってもよい。
【0051】
ここで、上記第2の指標について説明する。
脈波を用いた動脈狭窄の指標としては、脈振幅の他、たとえば、%MAP(正規化脈波面積)と言われる脈波の先鋭度を表わす指標が挙げられる。%MAPは、たとえば、脈波のピーク高さHすなわち脈圧に対する、脈波面積を均等にならしたときの最低血圧からの高さMの割合(=M/H×100)として算出される。動脈狭窄や動脈閉塞がある場合、%MAPの指標値は大きくなる。
【0052】
また、UT(UT:upstroke Time)と言われる足首脈波の上昇特徴値を表わす指標が挙げられる。UTは、立ち上がり点からピークまでの足首脈波が上昇する期間として算出される。動脈狭窄や動脈閉塞がある場合には上記期間が延長されるため、UTの指標値は大きくなる。
【0053】
発明者らは、これら指標と第1の指標であるABIとの相関性について検証を行なった。図3〜図5は、ABIと%MAP、UT、および脈振幅との相関関係を表わした図である。この値は、成人男女200人を対象としてそれぞれ血圧、脈波を測定して、ABI、%MAP、UT、および脈振幅を算出することで得られたものである。
【0054】
図3〜図5より、%MAP、UT、および脈振幅のいずれの指標もABIとある程度の相関があることが検証された。そのため、%MAP、UT、および脈振幅のそれぞれを、第1の指標としてのABIの信憑性を評価するための第2の指標として用いることが可能であると考察される。または、より相関性を高めるため、%MAP、UT、および脈振幅のうちの少なくとも2つを組み合わせて第2の指標として用いることも可能と考察される。
【0055】
発明者らは、一例として、%MAP(A)、UT(B)、および脈振幅(C)のそれぞれの値に変換係数を乗じた値(EABI)を第2の指標として算出し、この指標と第1の指標であるABIとの相関性について検証を行なった。すなわち、EABI=aA+bB+cC+d(a〜dは係数)として第2の指標を算出し、この指標とABIとを比較した。図6は、ABIとEABIとの相関関係を表わした図である。
【0056】
図6より、%MAP(A)、UT(B)、および脈振幅(C)を組み合わせて算出した第2の指標はABIとある程度の相関があることが検証され、さらに、%MAP、UT、および脈振幅それぞれ1つを用いた場合よりもABIとの相関性が高くなることも検証された。
【0057】
なお、図6においてP1〜P3に示されたように、いくつか、回帰直線から大きく外れた測定値が存在する。図7〜図9は、P1〜P3に示された測定値が測定された被測定者について詳しい測定結果を表わした図である。図7〜図9においては、それぞれの被測定者に関して、右上腕血圧値および右足首血圧値から算出されたABI(右ABI)と、右足首血圧値から得られた最高血圧値、および右上腕と右足首とのそれぞれの脈波図が示されている。また、測定された脈波振幅の時間変化がグラフで表わされている。
【0058】
図7の例では、脈波振幅の時間変化グラフが不完全な状態であり、右足首の血圧測定が正確にできていない可能性がある。また、図8および図9の例では脈波振幅の時間変化グラフがガタついており、右足首の血圧が正しく測定できていない可能性がある。
【0059】
この検証より、回帰直線より大きく外れた測定値は、血圧測定が正しくできていない可能性がある。そのため、このような例を除くと、相関性がさらに高くなると考えられる。つまり、第2の指標として、%MAP、UT、および脈振幅のうちのいずれか一つ以上を用いることが可能であることが検証された。
【0060】
第2の指標となり得る他の指標として、上肢から下肢への脈波の伝達関数(下肢上肢脈波伝達関数)が考えられる。これは、上肢脈波を系(血管経路)への入力、下肢脈波を系からの出力とした伝達関数において、その系に血管狭窄があれば、ステップ応答に変化が現れると考えられるからである。すなわち、このステップ応答を第1の指標として算出されたABIの信憑性を評価することに用いることが可能と考えられる。
【0061】
これを検証するため、発明者らは、実際に健常者および閉塞性動脈硬化症(ASO:arteriosclerosis obliterans)患者それぞれの脈波を測定し、ステップ応答を算出した。
【0062】
図10は、健常者の右足首(A)および左足首(B)での脈波の測定結果を表わしており、図11および図12は、それらと、左右上腕で測定された脈波とから算出された右上腕−右足首でのステップ応答(右ステップ応答)、左上腕−左足首でのステップ応答(左ステップ応答)を表わしている。これらを比較すると、図13に示されるように、ほぼ同一であることが分かる。
【0063】
図14は、測定対象の閉塞性動脈硬化症患者の動脈状態を表わしたX線撮影写真である。図14の丸印部分に動脈閉塞が見られる。
【0064】
図15は当該患者の右上腕(A)および右足首(B)での脈波の測定結果を表わしており、図16は左上腕(A)および左足首(B)での脈波の測定結果を表わしている。そして、図17および図18は、図15の右上腕および右足首で測定された脈波から算出された右ステップ応答、図16の左上腕および左足首で測定された脈波から算出された左ステップ応答を表わしている。これらを比較すると、図19に示されるように、大きく異なっていることが分かる。
【0065】
つまり、このことより、左右のステップ応答の相関性が高いほど動脈の閉塞がなく、相関性が低いほど動脈硬化症の可能性が高い、と言える。
【0066】
そこで、発明者らは、動脈狭窄の度合いとステップ応答の変化とを、循環系モデルを用いて算出した。ここで用いた循環系モデルは、生体を構成する血管を複数の区間に分割してモデル化したものである。このような循環系モデルの代表的なものとして、参考文献1「Avolio,A.P, Multi-branched Model of Human Arterial System, 1980, Med. & Biol. Engng. & Comp., 18,796」に記載されている、いわゆる「Avolioモデル」が知られており、発明者らはこの演算に、循環系モデルとして、このAvolioモデルを採用した。
【0067】
図20は、Avolioモデルの模式図である。
図20を参照して、Avolioモデルでは、全身の動脈を128の血管要素(区間)に分割し、各区間を代表する形状値を規定している。Avolioモデルは、形状値として、各区間に対応付けられた、長さ・半径・管壁の厚さ・ヤング率を含む。
【0068】
発明者らは、図20のAvolioモデルにおいて要素番号82,104,111(図20中の丸印)で表わされた区間に様々な狭窄度での狭窄を発生させるようパラメータを設定し、ステップ応答変化を算出した。図21は、発明者らの算出に用いた、Avolioモデルにおいて要素番号82,104,111(図20中の丸印)で表わされた区間に与えた狭窄度を表わす図である。データID「82/104/111−0」で表わされた狭窄度は、各区間に狭窄を与えておらず、健常者のステップ応答を算出するものである。データIDが大きくなるほど各区間に与える狭窄度が大きくなり、動脈硬化症が進んだ状態におけるステップ応答を算出するものとなる。
【0069】
図22は、算出結果をグラフ化したものである。図22より、健常であるほど立ち上がりの傾きが大きく、いったん極大値に達した後に急速に値が減少するという変化が見られ、狭窄度が大きくなるほど上記立ち上がりが緩やかになり、極大値からの変化も小さくなることが分かる。
【0070】
そこで、発明者らは、図23に示されるようにステップ応答の区間で、上側面積、上側面積/下側面積比、および区間最大値の3つの値を定義し、これら3つの値が上記第2の指標となり得るか否かを検討した。
【0071】
図24〜図26は、それぞれ、ABIと、上側面積、上側面積/下側面積比、および区間最大値との相関関係を表わした図である。このときの測定値も、図3〜図5に用いられた成人男女200人を対象とした測定結果を用いている。
【0072】
図24〜図26より、いずれの値もABIとある程度の相関があることが検証され、特に、上側面積がABIとの相関性が高いことが検証された。そこで、ステップ応答で得られる値は第2の指標として用いることが可能であり、特に、ステップ応答から算出される上側面積はABIの信憑性を評価するための第2の指標として用いることが可能であると考察される。または、より相関性を高めるため、上述の%MAP、UT、脈振幅、およびステップ応答から算出される指標のうちの少なくとも2つを組み合わせて第2の指標として用いることも可能と考察される。
【0073】
発明者らは、一例として、%MAP(A)、UT(B)、脈振幅(C)、およびステップ応答から算出される指標(上側面積)(D)のそれぞれの値に変換係数を乗じた値(EABI)を第2の指標として算出し、この指標と第1の指標であるABIとの相関性について検証を行なった。すなわち、EABI=aA+bB+cC+dD+e(a〜eは係数)として第2の指標を算出し、この指標とABIとを比較した。図27は、ABIとEABIとの相関関係を表わした図である。
【0074】
図27より、%MAP(A)、UT(B)、脈振幅(C)、およびステップ応答から算出される指標(上側面積)(D)を組み合わせて算出した第2の指標はABIとかなり相関性が高いことが検証され、先に検証した、%MAP、UT、および脈振幅それぞれ1つを用いた場合や、これらを組み合わせた場合よりも相関性が高いことが検証された。
【0075】
なお、図27においても、図6と同様に、Q1〜Q4に示されたような回帰直線から大きく外れた測定値が存在する。これらそれぞれについて測定結果を検証すると、いずれも、上述と同様に、血圧測定の信憑性が低いことがわかった。そのため、このような例を除くと、相関性がさらに高くなると考えられる。
【0076】
<動作フロー>
図28は、測定装置100での動作の流れの具体例を表わすフローチャートである。図28のフローチャートに表わされる動作は、CPU10がROM12に格納されているプログラムを読出してRAM14をワークメモリとして使用しながら実行し、図2に示される各機能を発揮させることによって実現される。
【0077】
図28を参照して、ステップS101でCPU10はカフ24の加圧を開始し、所定カフ圧に達するとステップS103で減圧を開始する。この所定カフ圧は、少なくとも一般的な最高血圧値よりも高い圧力であり、予め規定されているものであってもよいし、加圧過程において推定される最高血圧値に所定圧力を加えた値であってもよい。
【0078】
そして、CPU10はステップS105で、カフ24の加圧過程におけるカフ圧変化に基づいて、上肢・下肢の血圧を測定し、ステップS107でこれらを用いて、第1の指標であるABIを算出する。
【0079】
血圧が測定されると、CPU10はステップS109でカフ圧を脈波の測定に適した圧力に維持するためのホールド制御を行なう。この圧力としては、たとえば、50〜60mmHg程度の一定圧や、最低血圧値より5〜10mmHg程度低い圧などが相当する。そして、ステップS111でCPU10は、ホールド制御中のカフ圧変化に基づいて得られた脈波を分析し、ステップS113で第1の指標として算出されたABIの信憑性を評価するための第2の指標として用いる指標値を算出する。
【0080】
CPU10は、予め、ABIの正常範囲、および第2の指標であるEABIの正常範囲を記憶している。そして、上記ステップS107で算出されたABIおよび上記ステップS113で算出されたEABIと記憶している正常範囲とを比較する。その結果、これらが共に正常範囲にある場合には(ステップS115でYES)、ステップS119でCPU10は、上記ステップS107で算出されたABIの信憑性が高いものと判定する。
【0081】
一方、ABIとEABIとのうちの一方でも正常範囲にない場合には、ステップS117でCPU10は、上記ステップS107で算出されたABIの信憑性が低いものと判定する。
【0082】
なお、ABIの信憑性の評価の他の例として、上記ステップS107で算出されたABIと上記ステップS113で算出されたEABIとを比較し、ABIがEABIと一致、または所定範囲内にある場合にはABIの信憑性が高いものと判定し、そうでない場合にABIの信憑性が低いものと判定するものであってもよい。
【0083】
そして、ステップS121でCPU10は、その判定結果と共に、第1の指標として算出されたABIを出力する。ここでの出力は、画面表示であってもよいし、PCや外部記録媒体などの他の装置に送信するものであってもよい。また、このときの判定結果として、ABIの信憑性が高い、低いを表わすメッセージやマークと共にABIを出力するものであってもよいし、判定結果に応じた出力態様(たとえば表示態様)で出力するものであってもよいし、判定結果として、算出された第2の指標値と共に出力するものであってもよい。
【0084】
なお、上記ステップS113での第2の指標の算出方法としては、様々な算出方法が挙げられる。なぜなら、上述のように、第2の指標値として、%MAP、UT、脈振幅、および(たとえば上側面積などの)下肢上肢脈波伝達関数のうちのいずれか1つを用いてもよいし、2つ以上の組み合わせであってもよいからである。
【0085】
図29は、一例として、これらすべてを組み合わせて第2の指標値を算出する場合の、上記ステップS113での動作の具体例を表わしたフローチャートである。上述のように、このようにして算出された第2の指標は、第1の指標と高い相関性を有するため、高い精度で信憑性が判定されることになる。
【0086】
図29を参照して、ステップS201〜S207で、CPU10は、%MAP(A)、UT(B)、脈振幅(C)、および(たとえば上側面積などの)下肢上肢脈波伝達関数(D)を順に算出する。もちろん、この算出順は、図29に表わされた順に限定されるものではない。
【0087】
そして、ステップS209でCPU10は、予め規定されている変換係数を用いて、第2の指標EABI=aA+bB+cC+dD+e(a〜eは係数)を算出する。
【0088】
<実施の形態の効果>
測定装置100において以上の動作が行なわれることで、動脈における狭窄の有無や狭窄度合いを表わす指標として算出されたABIの信憑性を、簡易な方法で判定することができる。そのため、ABIを用いて動脈における狭窄の有無や狭窄度合いを判断する医師等に、有用な判断材料を提供することになる。
【0089】
ABIの信憑性を判定する基準として脈波から得られるいずれかの指標値(%MAP、UT、脈振幅、および(たとえば上側面積などの)下肢上肢脈波伝達関数)を用いることでも精度よくABIの信憑性を判定することが可能であるが、これらを組み合わせることで、より精度よくABIの信憑性を判定することが可能である。さらに、発明者らの検証より、特に(たとえば上側面積などの)下肢上肢脈波伝達関数を用いる、または組み合わせることで、特に精度よくABIの信憑性を判定することが可能となる。
【0090】
さらに、上述の第2の指標の算出や、第2の指標を用いたABIの信憑性の判定を測定装置100、または測定装置100からの値を用いてPC(パーソナルコンピュータ)等の演算装置に実行させるためのプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0091】
なお、本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0092】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0093】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0094】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
1 情報処理ユニット、2 制御部、4 出力部、6 操作部、8 記憶装置、12 ROM、14 RAM、20,20al,20ar,20bl,20br 検出ユニット、22al,22ar,22bl,22br,27al,27ar,27bl,27br 配管、24,24al,24ar,24bl,24br カフ、25,25al,25ar,25bl,25br 圧力ポンプ、26,26al,26ar,26bl,26br 調圧弁、28,28al,28ar,28bl,28br 圧力センサ、29,29al,29ar,29bl,29br 変換部、30 調整部、100 測定装置、102 脈波測定部、104 第2指標算出部、106 血圧測定部、108 第1指標算出部、110 評価部。
【技術分野】
【0001】
この発明は測定装置、評価方法、および評価プログラムに関し、特に、ABI(下肢上肢血圧指標:Ankle Brachial Blood Pressure Index)を算出する測定装置、その評価方法、および評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ABI(下肢上肢血圧指標:Ankle Brachial Blood Pressure Index)は上肢血圧と下肢血圧との比率であって、動脈における狭窄の有無や狭窄度合いを表わす指標として用いられる。
【0003】
たとえば特開2004−261319号公報(以下、特許文献1)にも開示されているように、従来ABIは、血圧測定装置で仰臥位状態の被測定者の上肢および下肢それぞれから血圧を測定し、その血圧比を算出することで得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−261319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の測定方法では、動脈の石灰化が高度である場合に動脈の圧迫が不十分となり、精度よく血圧測定ができない場合がある。その結果、その血圧値を用いて算出されたABIの信憑性が低下するという問題があった。
【0006】
また、不整脈による脈振幅の乱れや血管狭窄によって脈振幅が小さい場合にも、精度よく血圧測定ができない場合がある。そのため、その血圧値を用いて算出されたABIの信憑性が低下するという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、測定された血圧値から算出されたABIの信憑性を評価する測定装置、評価方法、および評価プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、測定装置は、生体値を測定し、前記生体値から動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)を算出するための測定装置であって、上肢に装着するための第1のカフと、下肢に装着するための第2のカフと、第1のカフの内圧を検出するための第1のセンサと、第2のカフの内圧を検出するための第2のセンサと、第1のカフおよび第2のカフそれぞれの内圧を調整するための調整装置と、第1のセンサおよび第2のセンサと接続され、それぞれの検出値から生体値を測定し、生体値を用いて指標を算出する演算を実行するための演算装置と、演算装置と接続され、演算装置での演算結果を出力するための出力装置とを備える。演算装置は、第1のセンサの検出値を用いて上肢の血圧を測定し、第2のセンサの検出値を用いて下肢の血圧を測定するための血圧測定手段と、第1のセンサの検出値を用いて上肢の脈波を測定し、第2のセンサの検出値を用いて下肢の脈波を測定するための脈波測定手段と、上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率を算出してABIを算出するための第1の算出手段と、上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するための第2の算出手段と、第1の算出手段で算出されたABIと、第2の算出手段で算出された判定指標とを用いてABIの信憑性を評価するための評価手段と、出力装置に、ABIを評価手段での評価結果と共に出力させるための出力手段とを含む。
【0009】
好ましくは、評価手段は、ABIと判定指標とのそれぞれについて、予め規定されている範囲内にあるか否かを判断することでABIの信憑性を評価する。
【0010】
より好ましくは、評価手段は、ABIと判定指標とのいずれもが予め規定されている範囲内にある場合にABIの信憑性を高いと評価し、そうでない場合に低いと評価する。
【0011】
好ましくは、評価手段は、ABIが判定指標から予め規定されている範囲内にある場合にABIの信憑性を高いと評価し、そうでない場合に低いと評価する。
【0012】
好ましくは、判定指標は、脈波の先鋭度を表わす指標である%MAP(正規化脈波面積)と、足首脈波の上昇特徴値を表わす指標であるUT(UT:upstroke Time)と、脈振幅と、上肢から下肢への脈波の伝達関数である下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値とのうちの少なくとも1つを用いる。
【0013】
より好ましくは、判定指標は、%MAPと、UTと、脈振幅と、下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値とのうちの2以上を組み合わせて算出される指標である。
【0014】
より好ましくは、判定指標は、下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値と、%MAP、UT、および脈振幅のうちの少なくとも1つとを組み合わせて算出される指標である。
【0015】
好ましくは、出力手段は、出力装置に、ABIと共に第2の算出手段で算出されたABIの推定値を出力させる。
【0016】
本発明の他の局面に従うと、評価方法は、生体値から算出された、動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)の信憑性を評価するための評価方法であって、上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率で算出されたABIを取得するステップと、上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するステップと、ABIと、判定指標とを用いてABIの信憑性を評価するステップと、出力装置に、ABIを評価結果と共に出力するステップとを含む。
【0017】
本発明のさらに他の局面に従うと、評価プログラムは、コンピュータに、生体値から算出された、動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)の信憑性を評価する処理を実行させるためのプログラムであって、上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率で算出されたABIを取得するステップと、上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するステップと、ABIと、判定指標とを用いてABIの信憑性を評価するステップと、出力装置に、ABIを評価結果と共に出力するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、測定された血圧値から算出されたABIの信憑性を、簡易に、かつ精度よく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態にかかる測定装置の構成の具体例を示す図である。
【図2】測定装置の機能構成の具体例を示すブロック図である。
【図3】ABIと%MAPとの相関関係を表わした図である。
【図4】ABIとUTとの相関関係を表わした図である。
【図5】ABIと脈振幅との相関関係を表わした図である。
【図6】ABIと脈波から算出された第2の指標であるEABIとの相関関係を表わした図である。
【図7】図6のP1に示された測定値が測定された被測定者について詳しい測定結果を表わした図である。
【図8】図6のP2に示された測定値が測定された被測定者について詳しい測定結果を表わした図である。
【図9】図6のP3に示された測定値が測定された被測定者について詳しい測定結果を表わした図である。
【図10】健常者の右足首(A)および左足首(B)での脈波の測定結果を表わす図である。
【図11】図10(A)の右足首で測定された脈波と右上腕で測定された脈波とから算出された右上腕−右足首でのステップ応答(右ステップ応答)を表わす図である。
【図12】図10(B)の左足首で測定された脈波と左上腕で測定された脈波とから算出された左上腕−左足首でのステップ応答(左ステップ応答)を表わす図である。
【図13】図11の右ステップ応答と図12の左ステップ応答との比較を表わす図である。
【図14】測定対象の閉塞性動脈硬化症患者の動脈状態を表わしたX線撮影写真である。
【図15】図14の患者の右上腕(A)および右足首(B)での脈波の測定結果を表わす図である。
【図16】図14の患者の左上腕(A)および左足首(B)での脈波の測定結果を表わす図である。
【図17】図15の右上腕および右足首で測定された脈波から算出された右ステップ応答を表わす図である。
【図18】図16の左上腕および左足首で測定された脈波から算出された左ステップ応答を表わす図である。
【図19】図17の右ステップ応答と図18の左ステップ応答との比較を表わす図である。
【図20】Avolioモデルの模式図である。
【図21】発明者らの算出に用いた、Avolioモデルにおいて要素番号82,104,111(図20中の丸印)で表わされた区間に与えた狭窄度を表わす図である。
【図22】発明者らの算出結果をグラフ化した図である。
【図23】ステップ応答の区間で定義された、上側面積、上側面積/下側面積比、および区間最大値を説明するための図である。
【図24】ABIと、ステップ応答の上側面積との相関関係を表わした図である。
【図25】ABIと、ステップ応答の上側面積/下側面積比との相関関係を表わした図である。
【図26】ABIと、ステップ応答の区間最大値との相関関係を表わした図である。
【図27】ABIとEABIとの相関関係を表わした図である。
【図28】測定装置での動作の流れの具体例を表わすフローチャートである。
【図29】図28のステップS113での動作の具体例を表わしたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0021】
<装置構成>
図1は、本実施の形態にかかる測定装置100の構成の具体例を示す図である。
【0022】
図1を参照して、測定装置100は、情報処理ユニット1と、4つの検出ユニット20ar,20al,20br,20blと、4つのカフ24ar,24al,24br,24blとを含む。
【0023】
カフ24br,24bl,24ar,24alは、それぞれ被測定者200の肢部に装着される。具体的には、それぞれ、右上腕(右上肢)、左上腕(左上肢)、右足首(右下肢)および左足首(左下肢)に装着される。なお、「肢部」とは、四肢に含まれる部位を表わし、手首や指尖部などであってもよい。カフ24ar,24al,24br,24blは、特に区別する必要がない限り、これらを総称して、「カフ24」と呼ぶ。
【0024】
検出ユニット20ar,20al,20br,20blは、それぞれ、被測定者200の肢部の脈波を検出するために必要なハードウェアを含む。検出ユニット20ar,20al,20br,20blの構成は全て同様であってよいので、特に区別する必要がない限り、これらを総称して、「検出ユニット20」と呼ぶ。
【0025】
情報処理ユニット1は、制御部2と、出力部4と、操作部6と、記憶装置8とを含む。
制御部2は、測定装置100全体の制御を行なう装置であり、代表的に、CPU(Central Processing Unit)10と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)14とを含むコンピュータで構成される。
【0026】
CPU10は、演算処理部に相当し、ROM12に予め格納されているプログラムを読出して、RAM14をワークメモリとして使用しながら、当該プログラムを実行する。
【0027】
また、制御部2には、出力部4、操作部6および記憶装置8が接続されている。出力部4は、測定された脈波や脈波解析結果などを出力する。出力部4は、LED(Light Emitting Diode)またはLCD(Liquid Crystal Display)などで構成される表示デバイスであってもよいし、プリンタ(ドライバ)であってもよい。
【0028】
操作部6は、ユーザからの指示を受付ける。記憶装置8は、各種データやプログラムを保持する。制御部2のCPU10は、記憶装置8に記録されたデータやプログラムの読み出しや書き込みを行なう。記憶装置8は、たとえば、ハードディスク、不揮発性メモリ(たとえば、フラッシュメモリ)、あるいは、着脱可能な外部記録媒体などにより構成されてよい。
【0029】
ここで、各検出ユニット20の構成について具体的に説明する。
検出ユニット20brは、被測定者200の右上腕に装着されたカフ24brの内圧(以下、「カフ圧」という)の調整および検出を行なうことで、右上腕における脈波を検出する。カフ24brは、図示のない流体袋(たとえば空気袋)を内包している。
【0030】
検出ユニット20brは、圧力センサ28brと、調圧弁26brと、圧力ポンプ25brと、A/D(analog to digital)変換部29brと、配管27brとを含む。カフ24brと、圧力センサ28br,調圧弁26brとは、配管22brによって接続されている。
【0031】
圧力センサ28brは、配管22brを介して伝達される圧力変動を検出するための検出部位であり、一例として、単結晶シリコンなどからなる半導体チップを用いて構成することができる。圧力センサ28brによって検出された圧力変動信号は、A/D変換部29brによってデジタル信号に変換されて、脈波信号pbr(t)として制御部2に入力される。
【0032】
調圧弁26brは、圧力ポンプ25brとカフ24brとの間に介挿され、測定時にカフ24brの加圧に用いられる圧力を所定の範囲に維持する。圧力ポンプ25brは、制御部2からの検出指令に応じて作動し、カフ24brを加圧するためにカフ24br内の流体袋(図示せず)に空気を供給する。
【0033】
この加圧によって、カフ24brは測定部位に押圧され、右上腕の脈波に応じた圧力変化がそれぞれ配管22brを介して検出ユニット20brへ伝達される。検出ユニット20brは、この伝達される圧力変化を検出することで、右上腕の脈波を検出する。
【0034】
検出ユニット20blも同様に、圧力センサ28blと、調圧弁26blと、圧力ポンプ25blと、A/D変換部29blと、配管27blとを含む。カフ24blと、圧力センサ28bl,調圧弁26blとは、配管22blによって接続されている。
【0035】
また、検出ユニット20arは、圧力センサ28arと、調圧弁26arと、圧力ポンプ25arと、A/D変換部29arと、配管27arとを含む。カフ24arと、圧力センサ28ar,調圧弁26arとは、配管22arによって接続されている。
【0036】
検出ユニット20alも同様に、圧力センサ28alと、調圧弁26alと、圧力ポンプ25alと、A/D変換部29alと、配管27alとを含む。カフ24alと、圧力センサ28al,調圧弁26alとは、配管22alによって接続されている。
【0037】
検出ユニット20bl,20ar,20al内の各部の機能は、検出ユニット20brと同様であるので、詳細な説明は繰返さない。また、検出ユニット20内の各部についても、特に区別する必要がない限り、“ar”,“br”などの記号は省略して説明する。
【0038】
なお、本実施の形態では、圧力センサ28を用いて脈波を検出する構成について説明するが、動脈容積センサ(図示せず)を用いて脈波を検出する構成であってもよい。この場合、動脈容積センサは、たとえば、動脈に対して光を照射する発光素子と、発光素子によって照射された光の動脈の透過光または反射光を受光する受光素子とを含んでよい。あるいは、複数の電極を含み、被測定者200の測定部位に微少の一定電流を流すとともに、脈波の伝播に応じて生じるインピーダンス(生体インピーダンス)の変化によって生じる電圧変化を検出するようにしてもよい。
【0039】
<動作概要>
本実施の形態にかかる測定装置100では、上肢および下肢で測定された血圧値から、第1の指標としてその比率であるABI(下肢上肢血圧指標:Ankle Brachial Blood Pressure Index)を算出する。第1の指標は、動脈における狭窄の有無や狭窄度合いを表わす指標として用いられる。
【0040】
ここで、上述のように、血圧値は動脈の石灰化の影響を受けやすいことが知られている。また、不整脈によって脈振幅が乱れたり、血管狭窄によって脈振幅が小さくなったりする場合もあり、これらの影響も受けやすいことが知られている。
【0041】
これに対して、脈波は数拍分の波形に基づいて算出されるものであるため、このような影響を受け難い。そこで、測定装置100では、上肢および下肢で測定された脈波から、第2の指標を算出し、第2の指標を用いて第1の指標として算出されたABIの信憑性を評価する。第2の指標は、ABIと比較し得る動脈狭窄の指標として用いられる。その内容については後述する。
【0042】
測定装置100は、その評価結果と共に、第1の指標として算出されたABIを出力する。
【0043】
<機能構成>
図2は、上記動作を行なうための測定装置100の機能構成の具体例を示すブロック図である。
【0044】
図2に示される各機能は、CPU10がROM12に格納されているプログラムを読出してRAM14をワークメモリとして使用しながら実行することで、主に、CPU10上に形成される機能である。しかしながら、少なくとも一部が、図1に示された装置構成や電気回路等のハードウェアで形成されてもよい。
【0045】
図2を参照して、測定装置は、その機能として、調整部30、脈波測定部102、上記第2の指標を算出するための第2指標算出部104、血圧測定部106、上記第1の指標を算出するための第1指標算出部108、評価部110、および出力部4を含む。
【0046】
調整部30は、カフ24内の圧力を調整する機能部である。調整部30の機能は、たとえば、図1に示した圧力ポンプ25および調圧弁26により達成される。
【0047】
脈波測定部102は、調整部30およびA/D変換部29と接続され、各肢部における脈波(PVR)を測定するための処理を行なう。脈波測定部102は、調整部30に指令信号を与えることでカフ24の内圧を調整するとともに、当該指令信号に応答して検出されたカフ圧信号Par(t),Pal(t),Pbr(t),Pbl(t)を受信する。そして、受信したカフ圧信号Par(t),Pal(t),Pbr(t),Pbl(t)を時系列に記録することで、肢部ごとに、複数拍分の脈波波形を取得する。脈波の測定は、たとえば所定時間(たとえば10秒程度)行なわれる。
【0048】
評価部110は、第2の指標を用いて、第1の指標であるABIの信憑性を評価する。そして、その結果を出力部4に渡す。
【0049】
評価部110での評価方法としては、様々な方法が挙げられる。一例として、評価部110は予め、ABIの正常範囲、および第2の指標の正常範囲を記憶しており、算出されたABIおよび第2の指標をそれぞれ正常範囲と比較して、いずれも正常範囲にある場合にはABIの信憑性が高いと評価し、そうでない場合にはABIの信憑性が低いと評価する方法が挙げられる。
【0050】
他の例として、算出されたABIおよび第2の指標を比較し、これらが一致、またはABIが第2の指標から所定範囲内にある場合にはABIの信憑性が高いものと判定し、そうでない場合にABIの信憑性が低いものと判定するものであってもよい。
【0051】
ここで、上記第2の指標について説明する。
脈波を用いた動脈狭窄の指標としては、脈振幅の他、たとえば、%MAP(正規化脈波面積)と言われる脈波の先鋭度を表わす指標が挙げられる。%MAPは、たとえば、脈波のピーク高さHすなわち脈圧に対する、脈波面積を均等にならしたときの最低血圧からの高さMの割合(=M/H×100)として算出される。動脈狭窄や動脈閉塞がある場合、%MAPの指標値は大きくなる。
【0052】
また、UT(UT:upstroke Time)と言われる足首脈波の上昇特徴値を表わす指標が挙げられる。UTは、立ち上がり点からピークまでの足首脈波が上昇する期間として算出される。動脈狭窄や動脈閉塞がある場合には上記期間が延長されるため、UTの指標値は大きくなる。
【0053】
発明者らは、これら指標と第1の指標であるABIとの相関性について検証を行なった。図3〜図5は、ABIと%MAP、UT、および脈振幅との相関関係を表わした図である。この値は、成人男女200人を対象としてそれぞれ血圧、脈波を測定して、ABI、%MAP、UT、および脈振幅を算出することで得られたものである。
【0054】
図3〜図5より、%MAP、UT、および脈振幅のいずれの指標もABIとある程度の相関があることが検証された。そのため、%MAP、UT、および脈振幅のそれぞれを、第1の指標としてのABIの信憑性を評価するための第2の指標として用いることが可能であると考察される。または、より相関性を高めるため、%MAP、UT、および脈振幅のうちの少なくとも2つを組み合わせて第2の指標として用いることも可能と考察される。
【0055】
発明者らは、一例として、%MAP(A)、UT(B)、および脈振幅(C)のそれぞれの値に変換係数を乗じた値(EABI)を第2の指標として算出し、この指標と第1の指標であるABIとの相関性について検証を行なった。すなわち、EABI=aA+bB+cC+d(a〜dは係数)として第2の指標を算出し、この指標とABIとを比較した。図6は、ABIとEABIとの相関関係を表わした図である。
【0056】
図6より、%MAP(A)、UT(B)、および脈振幅(C)を組み合わせて算出した第2の指標はABIとある程度の相関があることが検証され、さらに、%MAP、UT、および脈振幅それぞれ1つを用いた場合よりもABIとの相関性が高くなることも検証された。
【0057】
なお、図6においてP1〜P3に示されたように、いくつか、回帰直線から大きく外れた測定値が存在する。図7〜図9は、P1〜P3に示された測定値が測定された被測定者について詳しい測定結果を表わした図である。図7〜図9においては、それぞれの被測定者に関して、右上腕血圧値および右足首血圧値から算出されたABI(右ABI)と、右足首血圧値から得られた最高血圧値、および右上腕と右足首とのそれぞれの脈波図が示されている。また、測定された脈波振幅の時間変化がグラフで表わされている。
【0058】
図7の例では、脈波振幅の時間変化グラフが不完全な状態であり、右足首の血圧測定が正確にできていない可能性がある。また、図8および図9の例では脈波振幅の時間変化グラフがガタついており、右足首の血圧が正しく測定できていない可能性がある。
【0059】
この検証より、回帰直線より大きく外れた測定値は、血圧測定が正しくできていない可能性がある。そのため、このような例を除くと、相関性がさらに高くなると考えられる。つまり、第2の指標として、%MAP、UT、および脈振幅のうちのいずれか一つ以上を用いることが可能であることが検証された。
【0060】
第2の指標となり得る他の指標として、上肢から下肢への脈波の伝達関数(下肢上肢脈波伝達関数)が考えられる。これは、上肢脈波を系(血管経路)への入力、下肢脈波を系からの出力とした伝達関数において、その系に血管狭窄があれば、ステップ応答に変化が現れると考えられるからである。すなわち、このステップ応答を第1の指標として算出されたABIの信憑性を評価することに用いることが可能と考えられる。
【0061】
これを検証するため、発明者らは、実際に健常者および閉塞性動脈硬化症(ASO:arteriosclerosis obliterans)患者それぞれの脈波を測定し、ステップ応答を算出した。
【0062】
図10は、健常者の右足首(A)および左足首(B)での脈波の測定結果を表わしており、図11および図12は、それらと、左右上腕で測定された脈波とから算出された右上腕−右足首でのステップ応答(右ステップ応答)、左上腕−左足首でのステップ応答(左ステップ応答)を表わしている。これらを比較すると、図13に示されるように、ほぼ同一であることが分かる。
【0063】
図14は、測定対象の閉塞性動脈硬化症患者の動脈状態を表わしたX線撮影写真である。図14の丸印部分に動脈閉塞が見られる。
【0064】
図15は当該患者の右上腕(A)および右足首(B)での脈波の測定結果を表わしており、図16は左上腕(A)および左足首(B)での脈波の測定結果を表わしている。そして、図17および図18は、図15の右上腕および右足首で測定された脈波から算出された右ステップ応答、図16の左上腕および左足首で測定された脈波から算出された左ステップ応答を表わしている。これらを比較すると、図19に示されるように、大きく異なっていることが分かる。
【0065】
つまり、このことより、左右のステップ応答の相関性が高いほど動脈の閉塞がなく、相関性が低いほど動脈硬化症の可能性が高い、と言える。
【0066】
そこで、発明者らは、動脈狭窄の度合いとステップ応答の変化とを、循環系モデルを用いて算出した。ここで用いた循環系モデルは、生体を構成する血管を複数の区間に分割してモデル化したものである。このような循環系モデルの代表的なものとして、参考文献1「Avolio,A.P, Multi-branched Model of Human Arterial System, 1980, Med. & Biol. Engng. & Comp., 18,796」に記載されている、いわゆる「Avolioモデル」が知られており、発明者らはこの演算に、循環系モデルとして、このAvolioモデルを採用した。
【0067】
図20は、Avolioモデルの模式図である。
図20を参照して、Avolioモデルでは、全身の動脈を128の血管要素(区間)に分割し、各区間を代表する形状値を規定している。Avolioモデルは、形状値として、各区間に対応付けられた、長さ・半径・管壁の厚さ・ヤング率を含む。
【0068】
発明者らは、図20のAvolioモデルにおいて要素番号82,104,111(図20中の丸印)で表わされた区間に様々な狭窄度での狭窄を発生させるようパラメータを設定し、ステップ応答変化を算出した。図21は、発明者らの算出に用いた、Avolioモデルにおいて要素番号82,104,111(図20中の丸印)で表わされた区間に与えた狭窄度を表わす図である。データID「82/104/111−0」で表わされた狭窄度は、各区間に狭窄を与えておらず、健常者のステップ応答を算出するものである。データIDが大きくなるほど各区間に与える狭窄度が大きくなり、動脈硬化症が進んだ状態におけるステップ応答を算出するものとなる。
【0069】
図22は、算出結果をグラフ化したものである。図22より、健常であるほど立ち上がりの傾きが大きく、いったん極大値に達した後に急速に値が減少するという変化が見られ、狭窄度が大きくなるほど上記立ち上がりが緩やかになり、極大値からの変化も小さくなることが分かる。
【0070】
そこで、発明者らは、図23に示されるようにステップ応答の区間で、上側面積、上側面積/下側面積比、および区間最大値の3つの値を定義し、これら3つの値が上記第2の指標となり得るか否かを検討した。
【0071】
図24〜図26は、それぞれ、ABIと、上側面積、上側面積/下側面積比、および区間最大値との相関関係を表わした図である。このときの測定値も、図3〜図5に用いられた成人男女200人を対象とした測定結果を用いている。
【0072】
図24〜図26より、いずれの値もABIとある程度の相関があることが検証され、特に、上側面積がABIとの相関性が高いことが検証された。そこで、ステップ応答で得られる値は第2の指標として用いることが可能であり、特に、ステップ応答から算出される上側面積はABIの信憑性を評価するための第2の指標として用いることが可能であると考察される。または、より相関性を高めるため、上述の%MAP、UT、脈振幅、およびステップ応答から算出される指標のうちの少なくとも2つを組み合わせて第2の指標として用いることも可能と考察される。
【0073】
発明者らは、一例として、%MAP(A)、UT(B)、脈振幅(C)、およびステップ応答から算出される指標(上側面積)(D)のそれぞれの値に変換係数を乗じた値(EABI)を第2の指標として算出し、この指標と第1の指標であるABIとの相関性について検証を行なった。すなわち、EABI=aA+bB+cC+dD+e(a〜eは係数)として第2の指標を算出し、この指標とABIとを比較した。図27は、ABIとEABIとの相関関係を表わした図である。
【0074】
図27より、%MAP(A)、UT(B)、脈振幅(C)、およびステップ応答から算出される指標(上側面積)(D)を組み合わせて算出した第2の指標はABIとかなり相関性が高いことが検証され、先に検証した、%MAP、UT、および脈振幅それぞれ1つを用いた場合や、これらを組み合わせた場合よりも相関性が高いことが検証された。
【0075】
なお、図27においても、図6と同様に、Q1〜Q4に示されたような回帰直線から大きく外れた測定値が存在する。これらそれぞれについて測定結果を検証すると、いずれも、上述と同様に、血圧測定の信憑性が低いことがわかった。そのため、このような例を除くと、相関性がさらに高くなると考えられる。
【0076】
<動作フロー>
図28は、測定装置100での動作の流れの具体例を表わすフローチャートである。図28のフローチャートに表わされる動作は、CPU10がROM12に格納されているプログラムを読出してRAM14をワークメモリとして使用しながら実行し、図2に示される各機能を発揮させることによって実現される。
【0077】
図28を参照して、ステップS101でCPU10はカフ24の加圧を開始し、所定カフ圧に達するとステップS103で減圧を開始する。この所定カフ圧は、少なくとも一般的な最高血圧値よりも高い圧力であり、予め規定されているものであってもよいし、加圧過程において推定される最高血圧値に所定圧力を加えた値であってもよい。
【0078】
そして、CPU10はステップS105で、カフ24の加圧過程におけるカフ圧変化に基づいて、上肢・下肢の血圧を測定し、ステップS107でこれらを用いて、第1の指標であるABIを算出する。
【0079】
血圧が測定されると、CPU10はステップS109でカフ圧を脈波の測定に適した圧力に維持するためのホールド制御を行なう。この圧力としては、たとえば、50〜60mmHg程度の一定圧や、最低血圧値より5〜10mmHg程度低い圧などが相当する。そして、ステップS111でCPU10は、ホールド制御中のカフ圧変化に基づいて得られた脈波を分析し、ステップS113で第1の指標として算出されたABIの信憑性を評価するための第2の指標として用いる指標値を算出する。
【0080】
CPU10は、予め、ABIの正常範囲、および第2の指標であるEABIの正常範囲を記憶している。そして、上記ステップS107で算出されたABIおよび上記ステップS113で算出されたEABIと記憶している正常範囲とを比較する。その結果、これらが共に正常範囲にある場合には(ステップS115でYES)、ステップS119でCPU10は、上記ステップS107で算出されたABIの信憑性が高いものと判定する。
【0081】
一方、ABIとEABIとのうちの一方でも正常範囲にない場合には、ステップS117でCPU10は、上記ステップS107で算出されたABIの信憑性が低いものと判定する。
【0082】
なお、ABIの信憑性の評価の他の例として、上記ステップS107で算出されたABIと上記ステップS113で算出されたEABIとを比較し、ABIがEABIと一致、または所定範囲内にある場合にはABIの信憑性が高いものと判定し、そうでない場合にABIの信憑性が低いものと判定するものであってもよい。
【0083】
そして、ステップS121でCPU10は、その判定結果と共に、第1の指標として算出されたABIを出力する。ここでの出力は、画面表示であってもよいし、PCや外部記録媒体などの他の装置に送信するものであってもよい。また、このときの判定結果として、ABIの信憑性が高い、低いを表わすメッセージやマークと共にABIを出力するものであってもよいし、判定結果に応じた出力態様(たとえば表示態様)で出力するものであってもよいし、判定結果として、算出された第2の指標値と共に出力するものであってもよい。
【0084】
なお、上記ステップS113での第2の指標の算出方法としては、様々な算出方法が挙げられる。なぜなら、上述のように、第2の指標値として、%MAP、UT、脈振幅、および(たとえば上側面積などの)下肢上肢脈波伝達関数のうちのいずれか1つを用いてもよいし、2つ以上の組み合わせであってもよいからである。
【0085】
図29は、一例として、これらすべてを組み合わせて第2の指標値を算出する場合の、上記ステップS113での動作の具体例を表わしたフローチャートである。上述のように、このようにして算出された第2の指標は、第1の指標と高い相関性を有するため、高い精度で信憑性が判定されることになる。
【0086】
図29を参照して、ステップS201〜S207で、CPU10は、%MAP(A)、UT(B)、脈振幅(C)、および(たとえば上側面積などの)下肢上肢脈波伝達関数(D)を順に算出する。もちろん、この算出順は、図29に表わされた順に限定されるものではない。
【0087】
そして、ステップS209でCPU10は、予め規定されている変換係数を用いて、第2の指標EABI=aA+bB+cC+dD+e(a〜eは係数)を算出する。
【0088】
<実施の形態の効果>
測定装置100において以上の動作が行なわれることで、動脈における狭窄の有無や狭窄度合いを表わす指標として算出されたABIの信憑性を、簡易な方法で判定することができる。そのため、ABIを用いて動脈における狭窄の有無や狭窄度合いを判断する医師等に、有用な判断材料を提供することになる。
【0089】
ABIの信憑性を判定する基準として脈波から得られるいずれかの指標値(%MAP、UT、脈振幅、および(たとえば上側面積などの)下肢上肢脈波伝達関数)を用いることでも精度よくABIの信憑性を判定することが可能であるが、これらを組み合わせることで、より精度よくABIの信憑性を判定することが可能である。さらに、発明者らの検証より、特に(たとえば上側面積などの)下肢上肢脈波伝達関数を用いる、または組み合わせることで、特に精度よくABIの信憑性を判定することが可能となる。
【0090】
さらに、上述の第2の指標の算出や、第2の指標を用いたABIの信憑性の判定を測定装置100、または測定装置100からの値を用いてPC(パーソナルコンピュータ)等の演算装置に実行させるためのプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0091】
なお、本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0092】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0093】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0094】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0095】
1 情報処理ユニット、2 制御部、4 出力部、6 操作部、8 記憶装置、12 ROM、14 RAM、20,20al,20ar,20bl,20br 検出ユニット、22al,22ar,22bl,22br,27al,27ar,27bl,27br 配管、24,24al,24ar,24bl,24br カフ、25,25al,25ar,25bl,25br 圧力ポンプ、26,26al,26ar,26bl,26br 調圧弁、28,28al,28ar,28bl,28br 圧力センサ、29,29al,29ar,29bl,29br 変換部、30 調整部、100 測定装置、102 脈波測定部、104 第2指標算出部、106 血圧測定部、108 第1指標算出部、110 評価部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体値を測定し、前記生体値から動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)を算出するための測定装置であって、
上肢に装着するための第1のカフと、
下肢に装着するための第2のカフと、
前記第1のカフの内圧を検出するための第1のセンサと、
前記第2のカフの内圧を検出するための第2のセンサと、
前記第1のカフおよび前記第2のカフそれぞれの内圧を調整するための調整装置と、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサと接続され、それぞれの検出値から前記生体値を測定し、前記生体値を用いて指標を算出する演算を実行するための演算装置と、
前記演算装置と接続され、前記演算装置での演算結果を出力するための出力装置とを備え、
前記演算装置は、
前記第1のセンサの検出値を用いて上肢の血圧を測定し、前記第2のセンサの検出値を用いて下肢の血圧を測定するための血圧測定手段と、
前記第1のセンサの検出値を用いて上肢の脈波を測定し、前記第2のセンサの検出値を用いて下肢の脈波を測定するための脈波測定手段と、
前記上肢の血圧値と前記下肢の血圧値との比率を算出してABIを算出するための第1の算出手段と、
前記上肢の脈波と前記下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するための第2の算出手段と、
前記第1の算出手段で算出された前記ABIと、前記第2の算出手段で算出された前記判定指標とを用いて前記ABIの信憑性を評価するための評価手段と、
前記出力装置に、前記ABIを前記評価手段での評価結果と共に出力させるための出力手段とを含む、測定装置。
【請求項2】
前記評価手段は、前記ABIと前記判定指標とのそれぞれについて、予め規定されている範囲内にあるか否かを判断することで前記ABIの信憑性を評価する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記評価手段は、前記ABIと前記判定指標とのいずれもが前記予め規定されている範囲内にある場合に前記ABIの信憑性を高いと評価し、そうでない場合に低いと評価する、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記評価手段は、前記ABIが前記判定指標から予め規定されている範囲内にある場合に前記ABIの信憑性を高いと評価し、そうでない場合に低いと評価する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記判定指標は、脈波の先鋭度を表わす指標である%MAP(正規化脈波面積)と、足首脈波の上昇特徴値を表わす指標であるUT(UT:upstroke Time)と、脈振幅と、上肢から下肢への脈波の伝達関数である下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値とのうちの少なくとも1つを用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の測定装置。
【請求項6】
前記判定指標は、%MAPと、UTと、脈振幅と、下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値とのうちの2以上を組み合わせて算出される指標である、請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記判定指標は、下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値と、%MAP、UT、および脈振幅のうちの少なくとも1つとを組み合わせて算出される指標である、請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記出力装置に、前記ABIと共に前記第2の算出手段で算出された前記ABIの推定値を出力させる、請求項1〜7のいずれかに記載の測定装置。
【請求項9】
生体値から算出された、動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)の信憑性を評価するための評価方法であって、
上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率で算出されたABIを取得するステップと、
上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するステップと、
前記ABIと、前記判定指標とを用いて前記ABIの信憑性を評価するステップと、
出力装置に、前記ABIを前記評価結果と共に出力するステップとを含む、評価方法。
【請求項10】
コンピュータに、生体値から算出された、動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)の信憑性を評価する処理を実行させるためのプログラムであって、
上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率で算出されたABIを取得するステップと、
上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するステップと、
前記ABIと、前記判定指標とを用いて前記ABIの信憑性を評価するステップと、
出力装置に、前記ABIを前記評価結果と共に出力するステップとを前記コンピュータに実行させる、評価プログラム。
【請求項1】
生体値を測定し、前記生体値から動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)を算出するための測定装置であって、
上肢に装着するための第1のカフと、
下肢に装着するための第2のカフと、
前記第1のカフの内圧を検出するための第1のセンサと、
前記第2のカフの内圧を検出するための第2のセンサと、
前記第1のカフおよび前記第2のカフそれぞれの内圧を調整するための調整装置と、
前記第1のセンサおよび前記第2のセンサと接続され、それぞれの検出値から前記生体値を測定し、前記生体値を用いて指標を算出する演算を実行するための演算装置と、
前記演算装置と接続され、前記演算装置での演算結果を出力するための出力装置とを備え、
前記演算装置は、
前記第1のセンサの検出値を用いて上肢の血圧を測定し、前記第2のセンサの検出値を用いて下肢の血圧を測定するための血圧測定手段と、
前記第1のセンサの検出値を用いて上肢の脈波を測定し、前記第2のセンサの検出値を用いて下肢の脈波を測定するための脈波測定手段と、
前記上肢の血圧値と前記下肢の血圧値との比率を算出してABIを算出するための第1の算出手段と、
前記上肢の脈波と前記下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するための第2の算出手段と、
前記第1の算出手段で算出された前記ABIと、前記第2の算出手段で算出された前記判定指標とを用いて前記ABIの信憑性を評価するための評価手段と、
前記出力装置に、前記ABIを前記評価手段での評価結果と共に出力させるための出力手段とを含む、測定装置。
【請求項2】
前記評価手段は、前記ABIと前記判定指標とのそれぞれについて、予め規定されている範囲内にあるか否かを判断することで前記ABIの信憑性を評価する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記評価手段は、前記ABIと前記判定指標とのいずれもが前記予め規定されている範囲内にある場合に前記ABIの信憑性を高いと評価し、そうでない場合に低いと評価する、請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記評価手段は、前記ABIが前記判定指標から予め規定されている範囲内にある場合に前記ABIの信憑性を高いと評価し、そうでない場合に低いと評価する、請求項1に記載の測定装置。
【請求項5】
前記判定指標は、脈波の先鋭度を表わす指標である%MAP(正規化脈波面積)と、足首脈波の上昇特徴値を表わす指標であるUT(UT:upstroke Time)と、脈振幅と、上肢から下肢への脈波の伝達関数である下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値とのうちの少なくとも1つを用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の測定装置。
【請求項6】
前記判定指標は、%MAPと、UTと、脈振幅と、下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値とのうちの2以上を組み合わせて算出される指標である、請求項5に記載の測定装置。
【請求項7】
前記判定指標は、下肢上肢脈波伝達関数を表わす指標値と、%MAP、UT、および脈振幅のうちの少なくとも1つとを組み合わせて算出される指標である、請求項5に記載の測定装置。
【請求項8】
前記出力手段は、前記出力装置に、前記ABIと共に前記第2の算出手段で算出された前記ABIの推定値を出力させる、請求項1〜7のいずれかに記載の測定装置。
【請求項9】
生体値から算出された、動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)の信憑性を評価するための評価方法であって、
上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率で算出されたABIを取得するステップと、
上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するステップと、
前記ABIと、前記判定指標とを用いて前記ABIの信憑性を評価するステップと、
出力装置に、前記ABIを前記評価結果と共に出力するステップとを含む、評価方法。
【請求項10】
コンピュータに、生体値から算出された、動脈狭窄の指標としてのABI(Ankle Brachial Blood Pressure Index)の信憑性を評価する処理を実行させるためのプログラムであって、
上肢の血圧値と下肢の血圧値との比率で算出されたABIを取得するステップと、
上肢の脈波と下肢の脈波とを用いて、ABIの判定に用いるための指標である判定指標を算出するステップと、
前記ABIと、前記判定指標とを用いて前記ABIの信憑性を評価するステップと、
出力装置に、前記ABIを前記評価結果と共に出力するステップとを前記コンピュータに実行させる、評価プログラム。
【図2】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図28】
【図29】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図14】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図28】
【図29】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図14】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2013−94261(P2013−94261A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237573(P2011−237573)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
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