説明

測定装置

【課題】赤外線を簡素な構成で二次元走査可能な測定装置を提供する。
【解決手段】赤外線を反射する反射面81を備え軸CL3を中心にして揺動自在な反射部材8と、軸CL5を中心にして揺動自在であると共に反射部材8で反射された赤外線を検出可能なセンサー7と、モータの回転出力軸が一定の方向に回転することによってセンサー7が一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に反射部材8を複数回揺動させる揺動機構10とを有する測定装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定装置に係り、たとえば、空間に存在する物体から放射される赤外線を二次元的に走査して検出するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定の第1の軸まわりを揺動する第1の部材に、所定の第2の軸まわりを揺動する第2の部材を設け、この第2の部材に赤外線温度センサーを設けて構成された二次元走査赤外線温度測定装置が知られている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−107227号公報
【特許文献2】特開2002−139382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来の二次元走査赤外線温度測定装置では、揺動する第1の部材にモータを設ける必要があり、また、第1の軸と第2の軸とを中心にして2次元的に駆動する第2の部材の先端部に赤外線温度センサーを設ける必要があるので、前記モータや赤外線温度センサーへの配線が複雑である等、装置の構成が複雑になっているという問題がある。
【0004】
なお、前記問題は、赤外線温度センサーを用いて赤外線を二次元走査する装置だけでなく、赤外線の代わりに、電波(たとえば、マイクロ波)、可視光線、紫外線、X線、γ線等の電磁波や超音波等の音波等、すなわち、物体から発射されもしくは物体で反射されて空間を伝播する波を検出可能なセンサーを設けて、マイクロ波等の前記波のうちのいずれかの波を二次元走査する装置においても同様に発生する問題である。
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、物体から発射されもしくは物体で反射されて空間を伝播する波を、簡素な構成で二次元走査して検出可能な測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、空間を伝播する波を反射する反射面を備え、第1の軸を中心にして第1の範囲で揺動自在な反射部材と、前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして第2の範囲で揺動自在であると共に、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーと、アクチュエータの回転出力軸が一定の方向に回転することによって、前記センサーが前記第2の範囲で一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に前記反射部材を前記第1の範囲で複数回揺動させるか、または、前記反射部材が前記第1の範囲で一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に前記センサーを前記第2の範囲で複数回揺動させる揺動機構とを有する測定装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、フレームと、空間を伝播する波を反射する反射面を備え、第1の軸を中心にして前記フレームに対し第1の範囲で揺動自在な反射部材と、前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして前記フレームに対し第2の範囲で揺動自在であると共に、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーとを有する測定装置である。
【0008】
請求項3に記載の発明は、フレームと、空間を伝播する波を反射する反射面を備え、第1の軸を中心にして前記フレームに対し第1の範囲で揺動自在な反射部材と、前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして前記フレームに対し第2の範囲で揺動自在であると共に、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーと、アクチュエータの回転出力軸が一定の方向に回転することによって、前記センサーが前記第2の範囲で一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に前記反射部材を前記第1の範囲で複数回揺動させるか、または、前記反射部材が前記第1の範囲で一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に前記センサーを前記第2の範囲で複数回揺動させる揺動機構とを有する測定装置である。
【0009】
請求項4に記載の発明は、フレームと、前記フレームに回転自在に設けられ、アクチュエータで一定の方向に回転するカムと、空間を伝播する波を反射する反射面と前記カムに係合する従動節とを備え、第1の軸を中心にして前記フレームに対し揺動自在に設けられていると共に、前記カムの一定の方向への回転による前記従動節の従動によって揺動する反射部材と、前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして前記フレームに対し回転自在に設けられていると共に、前記アクチュエータで前記カムよりも遅い回転角速度で回転する支持部材と、前記支持部材に一体的に設けられ、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーとを有する測定装置である。
【0010】
請求項5に記載の発明は、フレームと、前記フレームに回転自在に設けられ、アクチュエータで一定の方向に回転する第1のカムと、空間を伝播する波を反射する反射面と前記第1のカムに係合する従動節とを備え、第1の軸を中心にして前記フレームに対し揺動自在に設けられていると共に、前記第1のカムの一定の方向への回転による前記従動節の従動によって揺動する反射部材と、前記フレームに回転自在に設けられ、前記アクチュエータで一定の方向に回転する第2のカムと、前記第2のカムに係合する従動節を備え、前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして前記フレームに対し揺動自在に設けられていると共に、前記第2のカムの一定の方向への回転による前記従動節の従動によって揺動する支持部材と、前記支持部材に一体的に設けられ、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーとを有する測定装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、物体から発射されもしくは物体で反射されて空間を伝播する波を、簡素な構成で二次元走査して検出可能な測定装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る測定装置1の概略構成を示す斜視図である。
【0013】
以下、説明の便宜のために、空間内の所定の一方向をX軸方向とし、X軸方向に垂直な他の所定の一方向をY軸方向とし、X軸方向よびY軸方向に垂直な方向をZ軸方向とする場合がある。
【0014】
測定装置1は、赤外線温度センサー(サーモパイル)7を用いて二次元的な走査し、空間の温度分布を測定する装置であり、たとえば、防犯やエアコンの制御のために室内にいる人等の物体の位置を検出する場合や、電子レンジ等で食品等の物体を加熱する際の物体の温度むらを検出する場合に使用されるものである。
【0015】
測定装置1は、エアコンや電子レンジ等の機器の筐体に一体的に固定されるフレーム(図示せず)を備えており、このフレームには、反射部材の例である反射板8と、赤外線温度センサー7と、反射板8や赤外線温度センサー7を図1に示す矢印AR1〜AR4の方向に揺動するための揺動機構10とが設けられている。
【0016】
反射板8は、物体から発射され空間を伝播してくる赤外線を反射する反射面81を備え、所定の方向(X軸方向)に直線状に延びている第1の軸CL3を中心にして前記フレームに対し揺動自在になっている。
【0017】
なお、第1の軸CL3を中心にして反射板8が揺動したときに、反射板8の反射面81の姿勢が変化(一定方向から入射した赤外線が反射しこの反射した光が出ていく方向が変化)するような方向であれば、X軸方向以外の方向に、第1の軸CL3が延びていてもよい。たとえば、反射板8の反射面81が平面である場合には、第1の軸CL3が、この平面に対して平行に延びているかまたは直角以外の角度で交差する方向に延びていてもよい。
【0018】
赤外線温度センサー7は、物体から発射され空間を伝播して反射板8の反射面81で反射された赤外線(たとえば赤外線の強度)を、前記物体に接触することなく検出することができるセンサーである。また、赤外線温度センサー7は、第1の軸CL3とは異なる所定の方向(たとえばY軸方向)に直線状に延びている第2の軸CL5を中心にして前記フレームに対し揺動自在になっている。なお、必要に応じて、反射板8と赤外線温度センサー7との間に集光レンズが設けてあってもよい。
【0019】
測定装置1もしくはこの測定装置1が設置される機器には制御装置(図示せず)が設けられており、この制御装置と赤外線温度センサー7との間はケーブル(配線)KBLで接続されており、このケーブルKBLを介して、前記制御装置から赤外線温度センサー7への電力の供給や、前記制御装置と赤外線温度センサー7との間での信号やりとりがなされるようになっている。ケーブルKBLは、図1に示す赤外線温度センサー7の下側から延出している。なお、赤外線温度センサー7と前記制御装置との間に、必要に応じて増幅回路等が設けてあってもよい。
【0020】
揺動機構10は、アクチュエータの例であるモータ(たとえば、DCモータ)Mによって、赤外線温度センサー7が所定の角度範囲の一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に、反射板8を所定の角度範囲で複数回揺動(一方の側の揺動端と他方の側の揺動端との間を複数往復揺動)させる機構である。なお、モータMの回転出力軸が一定の方向に、所定の回転量(n回転;nはある程度大きいたとえば10以上の自然数;360°の整数倍の角度)だけ回転すると、赤外線温度センサー7が一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動するようになっている。
【0021】
モータMの回転出力軸の回転角速度は、ほぼ一定であることが望ましい。また、揺動機構10を、反射板8が一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に赤外線温度センサー7を複数回揺動させるように、揺動機構10を構成してもよい。
【0022】
上述したように構成されていることによって、測定装置1は、空間を伝播する赤外線を、赤外線温度センサー7を用いて平面的(二次元的)に走査可能になっている。すなわち、反射板8が軸CL3を中心にして揺動することによって、空間を伝播する赤外線を赤外線温度センサー7で一次元的に走査することができ、また、赤外線温度センサー7が軸CL5を中心にして揺動することによって、反射板8の揺動による一次元の方向とは異なる方向(たとえば直交する方向)で、空間を伝播する赤外線を赤外線温度センサー7を用いて一次元的に走査することができるので、この結果、空間を伝播する赤外線を二次元的に走査することができる。
【0023】
測定装置1の揺動機構10等について、例を掲げてより詳しく説明する。
【0024】
図2は、測定装置1のカムギヤ3の構成を示す図であり、図2(a)は、図1の場合とほぼ同じ方向から眺めたカムギヤ3の概略構成を示す斜視図であり、図2(b)は、カムギヤ3を裏側から眺めた斜視図であり、図2(c)は、カムギヤ3に形成されているカム31のカム線図(カム曲線の展開図)である。
【0025】
揺動機構10は、カムギヤ3とウォームギヤ4と揺動台(赤外線温度センサー支持部材)6とを備えて構成されている。
【0026】
カムギヤ3は、外周に歯が設けられている大歯車(たとえば、平歯車)32と、この大歯車32に形成されているカム31とで構成されている。大歯車32は、X軸方向に延びている軸CL2を中心にして回転するようにフレームに設けられており、カム31は、正面カムであり、大歯車32の一方の側面(X軸+方向の円形状の平面)に形成されている。すなわち、大歯車32の前記一方の側面には、大歯車32の回転中心軸CL2を囲むような環状の溝(所定の幅で所定の深さの溝)が設けられており、前記環状の溝が正面カムであるカム31を構成している。
【0027】
前記環状の溝と、大歯車32の回転中心軸CL2との距離Lは、中心軸CL2を中心とした回動角度にしたがって徐々にしかも滑らかに変化している。
【0028】
たとえば、中心軸CL2と前記環状の溝との間の距離が最も近いところにおける前記環状の溝の部位Pkと中心軸CL2とをお互いに結ぶ線分を基準線CLkとする。また、中心軸CL2と前記環状の溝の任意部位Pxとをお互いに結ぶ線分CLxと基準線CLkとの交差角度を「θ」とし、中心軸CL2と前記環状の溝のある部位Pxとの間の距離を「L」とすると、図2(c)に示すように、交差角度θが「0°」から「180°」の間では、交差角度θの増加量と距離Lの増加量との比は一定の値になっている。すなわち、「L=aθ+b」の関係を満たすようになっている。一方、交差角度θが「180°」から「360°」の間では、交差角度θの増加量と距離Lとの減少量との比が前記一定の値になっている。すなわち、「L=−aθ+360a+b」の関係を満たすようになっている。なお、「a」は、正の値の比例定数であり、「b」は、正の値の所定の定数(中心軸CL2と前記環状の溝との間の距離が最も近いところにおける前記距離)である。
【0029】
反射板8は、矩形な薄い板状に形成されており、厚さ方向の一方の面(Z軸で−(マイナス)方向、Y軸で+方向の面)に平面状の反射面81が形成されている。また、反射板8は、この幅方向がX軸方向になるようにして、大歯車32からX軸+方向に離れて設けられている。反射板8の揺動中心軸CL3は、反射板8の中心もしくはこの中心の近くを通ってX軸方向に延びている。さらに、X軸方向から眺めた場合、反射板8の長さ方向が斜めな方向(Z軸−(マイナス)側かつY軸−(マイナス)側からZ軸+側かつY軸+側に向かう斜めな方向)になっている。
【0030】
反射板8には、カム31に係合する駆動ピン(従動節)82が一体的に設けられている。駆動ピン82は、反射板8の幅方向の一端部(大歯車32側の端部)かつ反射板8の長さ方向の一端部(Z軸+側かつY軸+側の端部)に設けられている。駆動ピン82は、たとえば、円柱形状に形成されており、この外形は、カム31の幅よりもごく僅かに小さくなっており、駆動ピン82とカム31とはお互いが滑り対偶をなしている。なお、駆動ピン82に回転ローラを設け、駆動ピン82とカム31とがころがり対偶をなす構成であってもよい。さらに、反射板8の反射面81は必ずしも平面である必要はなく、凹面や凸面であってもよい。
【0031】
大歯車32には、大歯車32よりも端数の少ない小歯車(たとえば、平歯車)33が一体的に設けられている(図2(b)参照)。小歯車33は、X軸−(マイナス)方向で大歯車32に設けられており、大歯車32の回転中心軸と小歯車33の回転中心軸とがお互いに一致している。
【0032】
ウォームギヤ4は、小歯車33よりも歯数の多い歯車(たとえば平歯車)41と、ウォーム42とを備えて構成されており、ウォームギヤ4は、X軸方向に延びた軸CL4を回転中心にして、前記フレームに回転自在に設けられている。歯車41は、小歯車33と噛み合っており、ウォーム42は、歯車41に対してX軸+方向に位置して歯車41に一体的に設けられている。
【0033】
ウォームホイール5は、ウォーム42と噛み合っていると共に、Y軸方向に延びた軸CL5を中心にして回転するように前記フレームに設けられている。ウォームホイール5の回転中心軸の延長線は、反射板8の中心かこの中心の近くを通るようになっている。また、ウォームホイール5は、X軸方向やZ軸方向では、反射板8とほぼ同じところに位置しており、Y軸方向では、反射板8よりも−(マイナス)側に位置している。
【0034】
ウォームホイール5には、揺動台(支持部材)6が一体的に設けられている。揺動台6は、細長い薄い板状の部材を長さ方向の中間部でほぼ直角に折り曲げた「L」字状に形成されており、長さ方向の一端部側がウォームホイール5に係合しており、長さ方向の他端部側に、赤外線温度センサー7が一体的に設けられている。このようにして設けられた赤外線温度センサー7は、X軸方向およびY軸方向では、反射板8とほぼ同じところに位置しており、Z軸方向では、反射板8から離れて反射板8に対して−(マイナス)側に置している。なお、赤外線温度センサー7の赤外線検出部は、反射板8の側を向いており、赤外線温度センサー7のケーブルKBLは、反射板8とは反対側から延出している。
【0035】
モータMの筐体は、前記フレームに一体的に設けられており、モータMの回転出力軸には、大歯車32よりも歯数が少なく大歯車32と噛み合っている原動ギヤ2が圧入等によって一体的に設けられている。なお、原動ギヤ2は、X軸方向に延びた中心軸CL1を中心にして回転するようになっている。
【0036】
このように構成されていることによって、モータMの回転出力軸が一定の方向に所定の時間回転すると、モータMの回転出力軸の回転力で、大歯車32(カム31)が一定の方向に複数の回転数回転し駆動ピン82が従動して反射板8が軸CL3を中心にして複数回揺動すると共に、ウォームホイール5が大歯車32よりも小さい回転角速度で回転(回動)して赤外線温度センサー7が、軸CL5を中心にして一方の揺動端から他方の揺動端まで揺動するようになっている。
【0037】
また、図3(a)で示すように、大歯車32の厚さ方向の他方の面(小歯車33が設けられている側の面)には、複数の反射部材(反射シール)34が一体的に設けられている。反射シール34は、大歯車32の歯の内側でかつカム31の外側で、歯車32の円周を等分配する位置に、たとえば貼り付けられて設けられている。各反射シール34のうちで、カム31と回転中心軸CL2との間の距離が最短になるところに位置している反射シール34aは、他の反射シール34よりも大歯車32の円周方向で小さくなっている。一方、各反射シール34のうちで、カム31と回転中心軸CL2との間の距離が最長になるところに位置している反射シール34bは、他の反射シール34よりも大歯車32の円周方向で大きくなっている。
【0038】
そして、前記フレームに設けられたフォトセンサー(図示せず)によって、各反射シール34を検出することができるようになっており、前記フォトセンサーの出力信号を前記制御装置に送ることによって、前記制御装置で、大歯車の32の回転角度、反射板の揺動回数や揺動角度、赤外線温度センサー7の揺動角度を検知することができるようになっている。
【0039】
なお、上記構成では、複数片の各反射シール34を、大歯車32に設けているが、1つのリング状(ドーナツ状)の反射シールを用意し、このリング状の反射シールの反射面に、周方向で間隔をあけて、前記フォトセンサーが検出する光を反射しない非反射部を塗装などによって設け、この非反射部を設けたリング状の反射シールを、各反射シール34の代わりに大歯車32に設けてあってもよい。
【0040】
前記非反射部が設けられた反射シールを大歯車32に設けた場合には、図3(a)に示す34、34a、34bの部分に、光を反射しない前記非反射部が存在しているものとする。そして、大歯車32が一定の方向に一定の回転角速度で回転すると、図3(b)に示すような周期Tの出力を前記フォトセンサーが前記制御装置に出力するようになっている。図3(b)の横軸は、時刻の経過を示しており、縦軸は、前記フォトセンサーの出力を示している。非反射部34aに対応する信号の時間Taは、他の非反射部34に対応する信号の時間Tcよりも短くなっており、非反射部34bに対応する信号の時間Tbは、他の非反射部34に対応する信号の時間Tcよりも長くなっている。
【0041】
前述したような非反射部を設けたリング状の反射シールを用いることによって、図3(b)に示すような周期Tの出力を得るための各反射部の設置(大歯車32への設置)を正確かつ容易に行うことができる。
【0042】
なお、前記塗装に代えて、リング状の反射シールにスリットもしくは孔を設けた構成であってもよい。さらに、前記フォトセンサーが検出する光を反射しないリング状のシールを用意し、前記フォトセンサーが検出する光を反射する反射部を塗装などによって、図3(a)に示す34、34a、34bの部分に設けた構成であってもよい。
【0043】
前記リング状の反射シールは、たとえば、大円から小円(前記大円と同一平面に存在しかつ前記大円と中心が一致している小円)を取り除いた形状に形成されており、大歯車32に設けられた状態では、前記リング状の反射シールの中心は、大歯車32の中心CL1とほぼ一致しており、前記リング状の反射シールは、図3(a)の紙面に直角な方向で所定の薄い厚さを備えている。
【0044】
ところで、図3(a)に示す各反射シール34の代わりに、大歯車に複数の貫通孔(反射シール34aに対応する貫通孔は他の貫通孔よりも小さい径にし、反射シール34bに対応する貫通孔は他の貫通孔よりも大きい径にしてある貫通孔)を設けて大歯車の32の回転角度等を検出するようにしてもよいし、反射シールやフォトセンサーの代わりに、ポテンショメータやロータリエンコーダを用いて、大歯車の32の回転角度等を検出するようにしてもよい。さらに、赤外線温度センサー7の揺動端を検出するセンサー(たとえば、リミットスイッチや近接スイッチ)を別途設けてあってもよい。
【0045】
次に、測定装置1の動作について説明する。
【0046】
図4、図5は、測定装置1の動作の概略を示す図であり、図6は、反射板8の揺動角度θvと赤外線温度センサー7の揺動角度θhとを示す図である。なお、図6の横軸は、時刻の経過を示している。図7は、図6の領域Sにおける反射板8の揺動角度θvの詳細を示す図である。
【0047】
測定装置1における1サイクルの稼動は、図6に示す時刻t1〜時刻t3の間で行なわれるようになっている。
【0048】
初期状態である時刻t1においては、図4(b)に示すように、反射板8の揺動角度は、反射板8の揺動角度範囲のほぼ中央の角度になっており、赤外線温度センサー7の揺動角度は、図5(a)に示すように、赤外線温度センサー7の揺動角度範囲の一端部側の角度になっている。すなわち、赤外線温度センサー7は一方の側の揺動端に位置している。
【0049】
前記初期状態から、前記制御装置の制御の下、モータMの回転出力軸を一定の角速度で一方向に回転すると、反射板8が、図4(c)に示すように、反射板8の揺動角度範囲の一端部側の角度になるまで揺動すると共に、揺動台6と赤外線温度センサー7とは前記一方の側の揺動端から僅かな角度だけ揺動する。
【0050】
モータMの回転出力軸を一定の角速度でさらに前記一方向に回転すると、反射板8が、図4(b)に示すような揺動角度の中央部を経由して、図4(a)に示すように、反射板8の揺動角度範囲の他端部側の角度になるまで揺動すると共に、揺動台6と赤外線温度センサー7とは前記一方の側の揺動端からさらなる僅かな角度だけ揺動する。
【0051】
時刻t2が到来するまでモータMの回転出力軸を一定の角速度でさらに前記一方向に回転すると、反射板8が、図4や図6(a)に示すように複数回揺動すると共に、揺動台6と赤外線温度センサー7とが、図5(b)に示すように、揺動台6と赤外線温度センサー7との揺動角度範囲の中央の角度になるまで揺動する。
【0052】
時刻t3が到来するまでモータMの回転出力軸を一定の角速度でさらに前記一方向に回転すると、反射板8が、図4や図6(a)に示すように複数回揺動すると共に、揺動台6と赤外線温度センサー7とが、図5(c)に示すように、揺動台6と赤外線温度センサー7との揺動角度範囲の他端部側の角度になるまで揺動する。
【0053】
そして、時刻t1〜時刻t3までの間に、赤外線温度センサー7で赤外線を検出すれば、空間における赤外線を2次元走査して測定することができる。このようにして測定したデータを、たとえば、前記制御装置の出力手段を用いて出力するようになっている。
【0054】
なお、時刻t3の到来後は、モータMの回転出力軸を逆回転すれば、上記動作と同様な動作がなされ、空間における赤外線を2次元走査して別途測定をすることができる。
【0055】
測定装置1によれば、モータMの筐体が前記フレームに一体的に設けられているので、モータMへの配線がしやく簡素化されており、また、赤外線温度センサー7が反射板8とは別個に前記フレームに対してのみ1つの平面内で揺動するようになっているので、赤外線温度センサー7の配線がしやすく(ケーブルKBLのとりまわしがしやすく)簡素化されており、さらに、揺動することがない前記フレームにモータMの筐体を一体的に設けたことによってモータMの設置形態が簡素化されており、装置の全体の構成が簡素になっている。
【0056】
また、測定装置1によれば、赤外線温度センサー7が反射板8とは別個に前記フレームに対してのみ1つの平面内で揺動するようになっているので、赤外線温度センサー7への配線の湾曲する程度(装置の稼動による配線の湾曲の程度)が従来のものよりも小さくなり、赤外線温度センサー7における配線の断線のおそれを回避することができる。
【0057】
さらには、赤外線温度センサー7が一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に反射板8が複数回揺動するようになっているので、赤外線温度センサー7が揺動する頻度を一層少なくすることができ、赤外線温度センサー7における配線の断線のおそれを一層回避することができる。
【0058】
また、測定装置1によれば、カム31を用いて反射板8を揺動するようにしているので、反射板8を揺動する機構の簡素化をはかることができ装置の小型化をはかることができると共に、高速運転にも対応することができる。
【0059】
また、測定装置1によれば、モータMの回転出力軸が一定の方向に回転することによって、赤外線温度センサー7が一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に反射板8が複数回揺動するように構成されているので、エネルギー効率の良い状態で、二次元の走査を行うことができる。
【0060】
より詳しく説明すると、測定装置1を前述した1サイクル稼動するためのエネルギーEは、モータMの回転出力軸の発生トルクTqとモータMの回転出力軸の回転角度θaとの積Tq・θaで表すことができる。
【0061】
ここで、トルクTqは、測定装置1の駆動系(歯車32等)の慣性モーメントIと測定装置1の駆動系の回転角加速度βとの積I・βと、測定装置1の駆動系(歯車32等)の抵抗係数Bと測定装置1の駆動系の回転角速度ωとの積B・ωとの和I・β+B・ωで表すことができる。
【0062】
ここで、反射板8が薄い板状なので反射板8の慣性モーメントは非常に小さくなっており、また、前述した1サイクル稼動する間において、始動するとき以外は、回転角加速度βの値は、ほぼ「0」であるので、積I・βの値は、従来の装置に比べて小さくなっている。したがって、従来の装置に比べて少ないエネルギーで、二次元の走査を行うことができる。
【0063】
また、抵抗係数Bの値も、カム31の圧力角を小さくする等の設計をすれば小さくすることができ、さらに、静摩擦係数に比べて動摩擦係数のほうが値が小さいことから理解されるように、駆動系が駆動し始め一定の速度で駆動していれば、抵抗係数Bの値は駆動のし始めよりも小さくなる。したがって、従来の装置のように、常に、停止と駆動とを繰り返す場合に比べて少ないエネルギーで、二次元の走査を行うことができる。
【0064】
図8に、測定装置1と従来の測定装置の消費エネルギーを比較した一例を示す。
【0065】
図8の横軸は、時刻の経過を示し、縦軸は、消費エネルギーの累積値を示す。破線が、従来の装置の消費エネルギーを示しており、実線が、測定装置1の消費エネルギーを示している。
【0066】
図8から理解されるように、駆動系が駆動し始めるときには、測定装置1のほうが消費エネルギーが大きいが、上述した理由により、その後の消費エネルギーは、測定装置1の方が小さくなっている。
【0067】
[第2の実施形態]
図9は、本発明の第2の実施形態に係る測定装置1aの概略構成を示す斜視図である。
【0068】
本発明の第2の実施形態に係る測定装置1aは、支持部材95(第1の実施形態に係る測定装置1の支持部材6に相当する部材)を、カムを用いて揺動することによって、赤外線温度センサー7を揺動している点が、第1の実施形態に係る測定装置1とは異なり、その他の点は、第1の実施形態に係る測定装置1とほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0069】
すなわち、第2の実施形態に係る測定装置1aは、フレーム(図示せず)と、このフレームに回転自在に設けられモータMの回転力で、原動ギヤ2を介して一定の方向に回転する第1のカム31と、赤外線を反射する反射面81と第1のカム31に係合する従動節82とを備え第1の軸CL3を中心にして前記フレームに対し揺動自在に設けられていると共に第1のカム31の一定の方向への回転による従動節82の従動によって揺動する反射板8と、前記フレームに回転自在に設けられモータMの回転力で一定の方向に第1のカム31よりも遅い回転角速度で回転する第2のカム93と、第2のカム93に係合する従動節94を備え第1の軸CL3とは異なる所定の方向(たとえば、Y軸方向)に直線状に延びている第2の軸CL11を中心にして前記フレームに対し揺動自在に設けられていると共に第2のカム93の一定の方向への回転による従動節94の従動によって揺動する支持部材95と、支持部材95に一体的に設けられ反射板8で反射された赤外線を検出可能な赤外線温度センサー(図9では図示せず)とを備えて構成されている。
【0070】
なお、第1のカム31が1回転することによって反射板8が1往復揺動し、第2のカム93が1回転することによって、前記赤外線温度センサーが1往復揺動するようになっている。さらに、第2のカム93は大歯車92に形成されており、大歯車92は、ウォームホイール5に一体的に設けられた小歯車91と噛み合っている。したがって、前記赤外線温度センサーが1往復揺動する間に、反射板8が複数回揺動して、二次元的な走査をすることができるようになっている。
【0071】
測定装置1aによれば、モータMの回転出力軸や各カム31、93を一定の方向にのみ回転させることによって、二次元走査をすることができるので、モータMの制御が容易になっていると共に、エネルギー効率が一層良い状態で、装置を稼動させることができる。
【0072】
なお、前記各実施形態では、赤外線を測定する装置を例に掲げて説明したが、赤外線の代わりに、電波(たとえば、マイクロ波)、可視光線、紫外線、X線もしくはγ線等の電磁波、または、超音波等の音波等、すなわち、物体から発射され、もしくは、物体で反射され、空間を伝播する波(波の強度や波の波長や波の波形)を前記物体に接触することなく検出するセンサーを設け、前述した空間を電波する波を測定する装置としてもよい。
【0073】
また、センサーで受動的に赤外線や超音波等を検出するだけでなく、センサーの近傍もしくはセンサーから離れた箇所に赤外線や超音波等を発射する発射装置を設け、この発射装置が発射し物体で反射したものを反射部材で反射しセンサーで検知するようにしてもよい。そして、前記物体までの距離を二次元的に走査し、前記物体の形状等を測定するようにしてもよい。
【0074】
また、前記各実施形態では、カムを用いて、反射板8等を揺動するようにしていたが、リンク機構を用いて、反射板8等を揺動するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る測定装置1の概略構成を示す斜視図である。
【図2】測定装置1のカムギヤ3の構成を示す図である。
【図3】カムギヤ3に設けられた反射シール34とこの反射シール34を検出したフォトセンサーの出力形態を示す図である。
【図4】測定装置1の動作の概略を示す図である。
【図5】測定装置1の動作の概略を示す図である。
【図6】反射板8の揺動角度θvと赤外線温度センサー7の揺動角度θhとを示す図である。
【図7】図6の領域Sにおける反射板8の揺動角度θvの詳細を示す図である。
【図8】測定装置1と従来の測定装置の消費エネルギーを示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る測定装置1aの概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0076】
1、1a 測定装置
2 原動ギヤ
3 カムギヤ
4 ウォームギヤ
5 ウォームホイール
6 支持部材
7 赤外線温度センサー
8 反射板(反射部材)
10 揺動機構
31 カム
32 大歯車
33 小歯車
34、34a、34b 反射シール
41 歯車
42 ウォーム
81 反射面
82 従動節(駆動ピン)
91 小歯車
92 大歯車
94 従動節
95 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を伝播する波を反射する反射面を備え、第1の軸を中心にして第1の範囲で揺動自在な反射部材と;
前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして第2の範囲で揺動自在であると共に、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーと;
アクチュエータの回転出力軸が一定の方向に回転することによって、前記センサーが前記第2の範囲で一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に前記反射部材を前記第1の範囲で複数回揺動させるか、または、前記反射部材が前記第1の範囲で一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に前記センサーを前記第2の範囲で複数回揺動させる揺動機構と;
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
フレームと;
空間を伝播する波を反射する反射面を備え、第1の軸を中心にして前記フレームに対し第1の範囲で揺動自在な反射部材と;
前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして前記フレームに対し第2の範囲で揺動自在であると共に、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーと;
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項3】
フレームと;
空間を伝播する波を反射する反射面を備え、第1の軸を中心にして前記フレームに対し第1の範囲で揺動自在な反射部材と;
前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして前記フレームに対し第2の範囲で揺動自在であると共に、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーと;
アクチュエータの回転出力軸が一定の方向に回転することによって、前記センサーが前記第2の範囲で一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に前記反射部材を前記第1の範囲で複数回揺動させるか、または、前記反射部材が前記第1の範囲で一方の側の揺動端から他方の側の揺動端まで揺動する間に前記センサーを前記第2の範囲で複数回揺動させる揺動機構と;
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項4】
フレームと;
前記フレームに回転自在に設けられ、アクチュエータで一定の方向に回転するカムと;
空間を伝播する波を反射する反射面と前記カムに係合する従動節とを備え、第1の軸を中心にして前記フレームに対し揺動自在に設けられていると共に、前記カムの一定の方向への回転による前記従動節の従動によって揺動する反射部材と;
前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして前記フレームに対し回転自在に設けられていると共に、前記アクチュエータで前記カムよりも遅い回転角速度で回転する支持部材と;
前記支持部材に一体的に設けられ、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーと;
を有することを特徴とする測定装置。
【請求項5】
フレームと;
前記フレームに回転自在に設けられ、アクチュエータで一定の方向に回転する第1のカムと;
空間を伝播する波を反射する反射面と前記第1のカムに係合する従動節とを備え、第1の軸を中心にして前記フレームに対し揺動自在に設けられていると共に、前記第1のカムの一定の方向への回転による前記従動節の従動によって揺動する反射部材と;
前記フレームに回転自在に設けられ、前記アクチュエータで一定の方向に回転する第2のカムと;
前記第2のカムに係合する従動節を備え、前記第1の軸とは異なる第2の軸を中心にして前記フレームに対し揺動自在に設けられていると共に、前記第2のカムの一定の方向への回転による前記従動節の従動によって揺動する支持部材と;
前記支持部材に一体的に設けられ、前記反射部材で反射された波を検出可能なセンサーと;
を有することを特徴とする測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−224623(P2008−224623A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67472(P2007−67472)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】